第58回(2012) 臨床検査技師国家試験 午前1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第58回 午前1(臨床検査総論)
採血に伴う血管迷走神経反射で正しいのはどれか。
- ①頻脈を呈する。
- ②顔面が紅潮する。
- ③血圧が低下する。
- ④意識消失はみられない。
- ⑤発症時は頭を高くして休ませる。
正答: ③血圧が低下する。
ポイント
血管迷走神経反射は、採血の痛みや恐怖などの精神的・身体的ストレスが引き金となり、迷走神経(副交感神経)が過度に緊張して起こる反射性の循環反応である。副交感神経優位となるため心拍は抑制されて徐脈となり、末梢血管が拡張して血圧が低下する。その結果として脳への血流が一過性に減少し、顔面蒼白・冷汗・悪心・あくび・気分不快が生じ、重症では一過性に意識を失う失神(血管迷走神経性失神)に至る。対応は危険を察知した時点で直ちに採血を中止し、仰臥位として下肢を挙上し脳血流を確保することが基本で、頭を高くする体位は禁忌である。多くは安静で速やかに回復するが、転倒による外傷を防ぐ配慮も要する。●発生機序=痛み・不安・空腹・緊張による迷走神経反射、起立性低血圧とは別だが症状は類似…●臨床所見=徐脈・低血圧・顔面蒼白・冷汗・悪心・失神…●予防と対応=臥位での採血・水分摂取・下肢挙上、回復まで安静観察…
選択肢ごとの解説
- ① 迷走神経の緊張で心拍は抑制されるため、頻脈ではなく徐脈を呈する。
- ② 末梢血管拡張と脳血流減少により顔面は紅潮ではなく蒼白となる。
- ③ 正しい。末梢血管が拡張し副交感神経優位となるため血圧が低下する。
- ④ 脳血流の一過性減少により失神(意識消失)をきたすことがある。
- ⑤ 脳血流を確保するため頭を高くせず下肢を挙上して仰臥位で休ませる。
第58回 午前2(臨床検査総論)
毒物及び劇物取締法で劇物に指定されているのはどれか。2つ選べ。
- ①水銀
- ②塩酸
- ③シアン化合物
- ④アジ化ナトリウム
- ⑤水酸化ナトリウム
正答: ②塩酸・⑤水酸化ナトリウム
ポイント
毒物及び劇物取締法は、毒性の強さに応じて化学物質を「毒物」「劇物」「特定毒物」の三段階に分類し、製造・販売・取扱い・保管・廃棄を規制する法律である。劇物は毒物よりは毒性が低いが人体に有害な物質で、塩酸(10%を超えるもの)や水酸化ナトリウム(5%を超えるもの)などの腐食性の強い酸・アルカリが代表である。一方、水銀やシアン化合物(シアン化ナトリウムなど)、アジ化ナトリウムは毒性が強く毒物に分類される。検査室で扱う試薬の取扱い・保管・廃棄はこの区分に従い、容器表示や施錠管理を徹底する。●毒物の例=水銀・シアン化合物・ヒ素化合物・セレン・アジ化ナトリウム・四アルキル鉛(特定毒物)…●劇物の例=塩酸・硫酸・硝酸・水酸化ナトリウム・水酸化カリウム・アンモニア・ホルムアルデヒド・過酸化水素・フェノール…●管理上の要点=施錠保管・盗難紛失防止・容器表示(『医薬用外毒物/劇物』)…
選択肢ごとの解説
- ① 水銀は毒性が強く毒物に分類され、劇物ではない。
- ② 正しい。塩酸は腐食性の酸で劇物に指定される。
- ③ シアン化合物は強い毒性をもち毒物に分類される。
- ④ アジ化ナトリウムは毒性が強く毒物に指定されている。
- ⑤ 正しい。水酸化ナトリウムは腐食性の強アルカリで劇物に指定される。
第58回 午前3(臨床検査総論)
細菌培養を目的に採取された検体と保存温度の組合せで正しいのはどれか。
- ①便 — 室温
- ②喀痰 — 4℃
- ③髄液 — 4℃
- ④中間尿 — 室温
- ⑤尿道分泌物 — 4℃
正答: ②喀痰 — 4℃
ポイント
細菌培養検体は、目的菌の生存性と雑菌の増殖抑制を両立させる温度で保存する。喀痰や尿などは常在菌や雑菌が混在して時間とともに増殖し、本来の起炎菌の判定を妨げるため、原則4℃冷蔵で速やかに搬送する。一方、低温に弱い菌(淋菌・髄膜炎菌・肺炎球菌・赤痢菌など)を含む検体は冷蔵すると菌が死滅し培養陰性化を招くため、髄液・尿道分泌物・腸管病原菌を含む便などは室温(または保温・保存培地)で速やかに提出する。いずれの検体も採取後できるだけ早く処理し、搬送に時間を要する場合のみ規定温度で保存することが基本である。●冷蔵(4℃)保存=喀痰・中間尿・血液以外の一般検体で迅速処理できない場合…●室温・保温保存=髄液・尿道分泌物(淋菌)・血液培養・嫌気性菌検体…●低温に弱い菌=淋菌・髄膜炎菌・肺炎球菌・インフルエンザ菌・赤痢菌…
選択肢ごとの解説
- ① 便は赤痢菌など低温に弱い菌を含み、室温ないし保存培地で提出する。
- ② 正しい。喀痰は雑菌増殖を防ぐため4℃で保存し速やかに処理する。
- ③ 髄液は髄膜炎菌・肺炎球菌が冷蔵で死滅するため室温・保温で扱う。
- ④ 中間尿は雑菌が増殖しやすく、室温ではなく4℃冷蔵が適切である。
- ⑤ 尿道分泌物は淋菌が低温に弱いため4℃ではなく室温・保温で扱う。
📋 まとめの表を見る:細菌培養検体の採取部位と保存温度
淋菌・髄膜炎菌・肺炎球菌など低温に弱い菌を含む検体は冷蔵すると菌が死滅し培養陰性化するため室温搬送が原則となる。この表はComplete+ MT内で該当箇所を特定できなかったため、確立された臨床微生物学の一般知識に基づき作成。
第58回 午前4(臨床検査総論)
トレーサビリティ連鎖と校正の階層段階について誤っているのはどれか。
- ①最上位の測定法は一次基準測定操作法である。
- ②二次校正物質は二次基準測定操作法で値づける。
- ③日常試料の測定は製造業者製品校正物質で校正する。
- ④トレーサビリティ連鎖には不確かさが表記されている。
- ⑤不確かさの大きさは日常検査法が最も小さい。
正答: ⑤不確かさの大きさは日常検査法が最も小さい。
ポイント
計量トレーサビリティは、測定結果を国際単位系(SI)など上位の標準まで切れ目のない校正の連鎖でつなぎ、施設や測定法が異なっても結果を比較可能にする概念である。最上位にSI単位の定義があり、一次基準測定操作法と一次標準物質、続いて二次基準測定操作法と二次校正物質、製造業者の選定測定操作法・製品校正物質、そして実際の患者検体を測る日常検査法(最下位)へと値が順に伝達される。連鎖の各段階で校正に伴う不確かさが累積して付加されていくため、上位ほど不確かさは小さく保たれ、最下位の日常検査法で不確かさは最大となる。●連鎖の上位から=SI単位→一次基準測定操作法・一次標準物質→二次基準測定操作法・二次校正物質…●下位=製造業者選定法・製品校正物質→日常検査法…●不確かさ=連鎖を下るほど累積して増大、最下位(日常法)で最大…
選択肢ごとの解説
- ① 最上位の測定法は一次基準測定操作法であり、正しい記述である。
- ② 二次校正物質は二次基準測定操作法で値づけられ、正しい記述である。
- ③ 日常試料の測定は製造業者製品校正物質で校正され、正しい記述である。
- ④ トレーサビリティ連鎖には各段階の不確かさが表記され、正しい記述である。
- ⑤ 誤り。不確かさは連鎖を下るほど累積して増大するため、日常検査法が最も大きい。
第58回 午前5(臨床検査総論)
60歳の女性の方が20歳の女性よりも高値を示すのはどれか。
- ①カルシトニン
- ②プロラクチン(PRL)
- ③卵胞刺激ホルモン(FSH)
- ④甲状腺刺激ホルモン(TSH)
- ⑤副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
正答: ③卵胞刺激ホルモン(FSH)
ポイント
60歳女性は閉経後であり、卵巣機能の低下によって卵巣由来のエストロゲンが減少する。エストロゲンによる視床下部・下垂体への負のフィードバックが解除されるため、下垂体前葉からの性腺刺激ホルモン分泌が抑制されずに亢進し、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が著明に上昇する。一方20歳女性は性成熟期で卵巣機能が保たれており、エストロゲンによるフィードバックが働くためFSHは正常範囲にとどまる。プロラクチンは妊娠・授乳期や下垂体腺腫で上昇するが加齢では特に高値とならず、TSH・ACTH・カルシトニンも加齢のみで著しく上昇するホルモンではない。●閉経後に上昇=FSH・LH(フィードバック解除による)…●FSHの臨床的意義=閉経の判定・卵巣機能不全・性腺機能低下症の評価…●加齢で大きく変動しない=TSH・ACTH・PRL・カルシトニン…
選択肢ごとの解説
- ① カルシトニンは加齢で著しく上昇せず、閉経との明確な関連はない。
- ② プロラクチンは妊娠・授乳や下垂体腺腫で上昇し、加齢で高値とはならない。
- ③ 正しい。閉経後はフィードバック解除によりFSHが著明に上昇する。
- ④ 甲状腺刺激ホルモンは加齢のみで著しく上昇するわけではない。
- ⑤ 副腎皮質刺激ホルモンは閉経に伴って高値を示すホルモンではない。
第58回 午前6(臨床検査総論)
尿沈渣のSternheimer染色標本を別に示す。認められるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA006.ae09959e55.jpg

- ①顆粒円柱
- ②脂肪円柱
- ③上皮円柱
- ④赤血球円柱
- ⑤白血球円柱
正答: ④赤血球円柱
ポイント
尿沈渣のSternheimer染色(S染色)は、尿中有形成分を青〜紫紅色に染め分けて細胞や円柱の鑑別を容易にする超生体染色法である。赤血球円柱は、円柱基質(Tamm-Horsfall蛋白を主成分とする硝子様基質)の中に赤血球が封入されたもので、糸球体からの出血した赤血球が尿細管内に流入して固まり形成される。このため糸球体腎炎やネフローゼ症候群など糸球体性の血尿の確実な証拠となり、膀胱や尿路からの出血(非糸球体性血尿)との鑑別に有用である。そもそも円柱は尿細管腔で形成されるため、その出現自体が腎実質由来であることを意味する。●円柱の種類=硝子円柱(基質のみ)・顆粒円柱・上皮円柱・赤血球円柱・白血球円柱・脂肪円柱・蝋様円柱…●赤血球円柱の意義=糸球体腎炎・IgA腎症・急速進行性糸球体腎炎など糸球体性血尿…●白血球円柱の意義=腎盂腎炎・間質性腎炎など上行性・実質性の感染や炎症…
選択肢ごとの解説
- ① 顆粒円柱は基質に変性した顆粒状物質を含む円柱で、本標本の所見と異なる。
- ② 脂肪円柱は脂肪滴を含みネフローゼで出現するが、本標本の所見と異なる。
- ③ 上皮円柱は尿細管上皮細胞を含む円柱で、本標本の所見と異なる。
- ④ 正しい。円柱基質中に赤血球が封入された赤血球円柱で糸球体性血尿を示す。
- ⑤ 白血球円柱は白血球を含み腎盂腎炎などで出現するが、本標本の所見と異なる。
第58回 午前7(臨床検査総論)
肺炎球菌による髄膜炎の髄液検査所見でみられるのはどれか。
- ①髄液圧 80 mmH2O
- ②外観 黄色透明
- ③糖 20 mg/dl
- ④蛋白 30 mg/dl
- ⑤クロール 130 mEq/l
正答: ③糖 20 mg/dl
ポイント
肺炎球菌などの細菌性(化膿性)髄膜炎では、髄膜の強い炎症により髄液所見が大きく変化する。髄液圧は上昇し(正常は約70〜180mmH2O)、外観は多核球の増加により混濁(膿性)となる。細菌が髄液中の糖を消費し、また浸潤した炎症細胞の解糖が亢進するため髄液糖は著明に低下し、髄液糖が血糖の40%以下となるのが特徴で、本問の20mg/dlはこれに合致する。血液脳関門の破綻と滲出により蛋白は増加し、細胞は多核白血球(好中球)が優位となる。これらはウイルス性髄膜炎(糖は正常、リンパ球優位、蛋白軽度上昇)との重要な鑑別点である。●細菌性髄膜炎=髄液圧上昇・混濁・多核球優位・糖低下・蛋白増加…●ウイルス性髄膜炎=リンパ球優位・糖正常・蛋白軽度増加・髄液圧正常〜軽度上昇…●結核性・真菌性髄膜炎=リンパ球優位・糖低下・蛋白著明増加・クロール低下…
選択肢ごとの解説
- ① 細菌性髄膜炎では髄液圧が上昇するため、80mmH2Oは正常域で合致しない。
- ② 炎症で多核球が増加し外観は混濁するため、黄色透明は合致しない。
- ③ 正しい。細菌の糖消費と解糖亢進により髄液糖は20mg/dlと著明に低下する。
- ④ 炎症で蛋白は増加するため、30mg/dlの正常値は合致しない。
- ⑤ クロールが低下するのは結核性で、130mEq/lは正常域で本症と合致しない。
第58回 午前8(臨床検査総論)
ヒトに経皮感染するのはどれか。
- ①Westerman肺吸虫
- ②日本住血吸虫
- ③横川吸虫
- ④肝吸虫
- ⑤肝蛭
正答: ②日本住血吸虫
ポイント
日本住血吸虫は、水中を遊泳するセルカリア(幼虫)がヒトの皮膚から直接侵入して感染する経皮感染の代表的な寄生虫である。中間宿主であるミヤイリガイ(宮入貝)の生息する水域で、ヒトが農作業などで水に触れるとセルカリアが経皮的に侵入し、血流を経て門脈・腸間膜静脈に達して成虫となり産卵する。虫卵が肝や腸壁に沈着して炎症と線維化を起こし、肝硬変・門脈圧亢進・腸管病変をもたらす。これに対し、横川吸虫・肝吸虫・肺吸虫・肝蛭などの多くの吸虫は、中間宿主に被嚢したメタセルカリアを摂取する経口感染である。●経皮感染=日本住血吸虫(セルカリア)・鉤虫(フィラリア型幼虫)・糞線虫…●経口感染(魚介・植物由来)=横川吸虫(アユ)・肝吸虫(コイ科)・肺吸虫(カニ)・肝蛭(水生植物)…●感染経路の確認=中間宿主と侵入門戸(皮膚・経口)を結びつけて理解する…
選択肢ごとの解説
- ① Westerman肺吸虫はモクズガニなどの摂食による経口感染である。
- ② 正しい。日本住血吸虫はセルカリアがヒトの皮膚から侵入し経皮感染する。
- ③ 横川吸虫はアユなど淡水魚の生食による経口感染である。
- ④ 肝吸虫はコイ科淡水魚の生食による経口感染である。
- ⑤ 肝蛭はセリなど水生植物に付着したメタセルカリアの経口摂取で感染する。
📋 まとめの表を見る:寄生虫・原虫の感染経路の分類
第58回 午前9(臨床検査総論)
心窩部の激痛を訴える患者の上部消化管内視鏡検査で虫体を確認した。虫体の写真を別に示す。この寄生虫はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA009.fd94204455.jpg

- ①回虫
- ②旋毛虫
- ③アニサキス
- ④ズビニ鉤虫
- ⑤エキノコックス
正答: ③アニサキス
ポイント
アニサキスは、サバ・アジ・イカ・サンマなど海産魚介類に寄生するアニサキス幼虫が、生食により胃や腸の粘膜に刺入して急性アニサキス症を起こす線虫である。ヒトは固有宿主ではないため幼虫は成虫になれず、胃壁・腸壁に刺入して局所のアレルギー性炎症と浮腫を起こす。摂食後数時間で心窩部の激痛・悪心・嘔吐をきたし、上部消化管内視鏡では白色糸状の虫体が胃粘膜に刺入し周囲が発赤・浮腫している像が確認される。胃アニサキス症は診断・治療を兼ねて内視鏡的に虫体を摘出するのが原則で、これにより症状は速やかに軽快する。●形態的特徴=白色〜半透明の糸状、長さ約2〜3cm、らせん状に丸まることがある…●臨床像=生食後数時間の心窩部激痛・悪心・嘔吐、蕁麻疹などアレルギー反応を伴うことも…●原因魚介=サバ・アジ・イワシ・サンマ・イカなど、内視鏡的摘出が治療…
選択肢ごとの解説
- ① 回虫は腸管寄生の大型線虫で、胃粘膜に刺入する本症の所見と異なる。
- ② 旋毛虫は筋肉内に被嚢する線虫で、内視鏡で胃に虫体を認める像と異なる。
- ③ 正しい。海産魚介の生食で胃粘膜に刺入する白色糸状虫体はアニサキスである。
- ④ ズビニ鉤虫は十二指腸に寄生する鉤虫で、本症の所見と異なる。
- ⑤ エキノコックスは肝などに包虫を形成する条虫で、胃の虫体所見と異なる。
📋 まとめの表を見る:主な寄生虫と中間宿主・終宿主
アニサキス・広東住血線虫・顎口虫・Manson裂頭条虫はヒトが本来の宿主でないため幼虫のまま体内を移行し(幼虫移行症)、皮膚爬行症や好酸球性髄膜炎などを起こす。
第58回 午前10(臨床検査総論)
バンクロフト糸状虫のミクロフィラリアを検出するための採血時間帯として適切なのはどれか。
- ①6時〜9時
- ②10時〜13時
- ③14時〜17時
- ④18時〜21時
- ⑤22時〜1時
正答: ⑤22時〜1時
ポイント
バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)は、成虫がリンパ系に寄生してリンパ管炎・リンパ浮腫・象皮病・陰嚢水腫を起こす糸状虫である。雌成虫が産んだミクロフィラリアは、媒介蚊が吸血する夜間に末梢血中へ出現し日中は肺などの深部血管に潜む、いわゆる夜間定期出現性を示す。これは媒介蚊(イエカ属など)が夜間に吸血する習性に同調して感染環を効率化する現象であり、ミクロフィラリアの検出を目的とする採血は夜間、おおむね22時〜翌2時頃に行うのが適切である。日中採血では陰性となりうるため、採血時間帯の選択が検出率を左右する。●夜間定期出現性=バンクロフト糸状虫・マレー糸状虫、夜間採血で末梢血検出…●検査法=夜間採血の塗抹・集虫法(メンブランフィルター法)でミクロフィラリア検出…●臨床像=リンパ管炎・リンパ浮腫・象皮病・陰嚢水腫…
選択肢ごとの解説
- ① 6時〜9時は日中に当たり、夜間定期出現性のミクロフィラリア検出に適さない。
- ② 10時〜13時は日中で、末梢血中のミクロフィラリアが少なく適さない。
- ③ 14時〜17時は日中で、ミクロフィラリアの検出には適さない。
- ④ 18時〜21時は出現が増え始める時間帯だが、検出のピークには早い。
- ⑤ 正しい。夜間定期出現性のため22時〜1時の夜間採血が最も適切である。
第58回 午前11(臨床検査医学総論)
一次救命処置はどれか。
- ①導尿
- ②胸骨圧迫
- ③昇圧薬投与
- ④静脈路確保
- ⑤心電図モニタリング
正答: ②胸骨圧迫
ポイント
一次救命処置(BLS)は、特別な器具や薬剤を用いずに発見者が誰でも実施できる救命の初期対応で、心停止傷病者の救命と社会復帰、脳の不可逆的障害の防止を目的とする。中核は胸骨圧迫による心臓マッサージで、胸の中央を強く(約5cm)・速く(100〜120回/分)・絶え間なく圧迫し、可能なら人工呼吸とAED(自動体外式除細動器)による電気ショックを組み合わせる。これに対し、昇圧薬などの薬剤投与・静脈路確保・気管挿管・心電図モニタリングは、医療従事者が器具・薬剤を用いて行う二次救命処置(ALS)に分類される。●一次救命処置(BLS)=胸骨圧迫・人工呼吸・AEDによる除細動・気道確保(用手)…●二次救命処置(ALS)=静脈路確保・昇圧薬や抗不整脈薬投与・気管挿管・心電図モニタリング…●BLSの要点=反応確認→応援要請→胸骨圧迫開始→AED装着…
選択肢ごとの解説
- ① 導尿は救命処置ではなく排尿管理のための医療手技である。
- ② 正しい。胸骨圧迫は器具を要さず誰でも行える一次救命処置の中核である。
- ③ 昇圧薬投与は薬剤を用いる二次救命処置に分類される。
- ④ 静脈路確保は医療従事者が行う二次救命処置に分類される。
- ⑤ 心電図モニタリングは器具を要する二次救命処置に分類される。
第58回 午前12(臨床検査医学総論)
下垂体後葉から分泌されるのはどれか。
- ①成長ホルモン(GH)
- ②抗利尿ホルモン(ADH)
- ③卵胞刺激ホルモン(FSH)
- ④甲状腺刺激ホルモン(TSH)
- ⑤副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
正答: ②抗利尿ホルモン(ADH)
ポイント
下垂体後葉は、視床下部の神経細胞(視索上核・室傍核)で産生されたホルモンが軸索を通って運ばれ、神経終末で貯蔵・分泌される神経下垂体である。後葉そのものはホルモンを合成せず、放出の場として働く点が前葉と異なる。後葉から分泌されるのは抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)とオキシトシンの2つで、ADHは腎集合管での水再吸収を促進して尿量を調節し血漿浸透圧を一定に保ち、オキシトシンは子宮収縮や射乳を促す。一方、成長ホルモン・FSH・TSH・ACTH・プロラクチン・LHはいずれも下垂体前葉(腺下垂体)から分泌される。●下垂体後葉ホルモン=抗利尿ホルモン(ADH)・オキシトシン…●下垂体前葉ホルモン=GH・PRL・ACTH・TSH・FSH・LH…●ADH異常=分泌過剰でSIADH(低Na血症)、欠乏で尿崩症(多尿・低比重尿)…
選択肢ごとの解説
- ① 成長ホルモンは下垂体前葉から分泌され、後葉ホルモンではない。
- ② 正しい。抗利尿ホルモンは下垂体後葉から分泌され水再吸収を調節する。
- ③ 卵胞刺激ホルモンは下垂体前葉から分泌され、後葉ホルモンではない。
- ④ 甲状腺刺激ホルモンは下垂体前葉から分泌され、後葉ホルモンではない。
- ⑤ 副腎皮質刺激ホルモンは下垂体前葉から分泌され、後葉ホルモンではない。
第58回 午前13(臨床検査医学総論)
バナナの摂取で上昇するのはどれか。
- ①癌胎児性抗原(CEA)
- ②血漿レニン活性(PRA)
- ③副甲状腺ホルモン(PTH)
- ④バニリルマンデル酸(VMA)
- ⑤脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
正答: ④バニリルマンデル酸(VMA)
ポイント
バニリルマンデル酸(VMA)は、カテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)が体内で分解されて生じる最終代謝産物で、尿中に排泄されるため褐色細胞腫や神経芽腫の診断・経過観察に用いられる蓄尿検査項目である。バナナ・コーヒー・チョコレート・バニラ・柑橘類などには、カテコールアミン代謝に影響する成分やVMAと構造の類似した物質が含まれ、これらを摂取すると蓄尿中のVMAやHVAが見かけ上高くなり、腫瘍がなくても陽性と誤判定する原因となる。このため検査前数日は該当食品の摂取を制限し、正確な値を得る必要がある。●VMA上昇をきたす病態=褐色細胞腫・傍神経節腫・神経芽腫…●検査前に制限する食品=バナナ・バニラ・コーヒー・紅茶・チョコレート・柑橘類・ナッツ類…●関連代謝産物=HVA(ドパミン代謝産物)、メタネフリン・ノルメタネフリン…
選択肢ごとの解説
- ① 癌胎児性抗原はバナナ摂取で上昇する腫瘍マーカーではない。
- ② 血漿レニン活性は体位・塩分摂取で変動するが、バナナで上昇はしない。
- ③ 副甲状腺ホルモンはカルシウム代謝に関与し、バナナ摂取とは関連しない。
- ④ 正しい。バナナはカテコールアミン代謝に影響しVMAを偽高値にする。
- ⑤ 脳性ナトリウム利尿ペプチドは心負荷の指標でバナナ摂取と関連しない。
第58回 午前14(臨床検査医学総論)
Ⅰ型アレルギーを引き起こすのはどれか。
正答: ③IgE
ポイント
Ⅰ型アレルギー(即時型・アナフィラキシー型)は、抗原(アレルゲン)に感作されて産生されたIgE抗体が肥満細胞・好塩基球の表面のFcε受容体に結合し、再度同じ抗原が架橋することで細胞が脱顆粒を起こし、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出されて生じる反応である。発症は抗原曝露後数分以内と速く、気管支喘息・花粉症・アレルギー性鼻炎・蕁麻疹・食物アレルギー・アナフィラキシーショックが代表である。アレルギーはクームス分類で、関与する抗体や機序によりⅠ〜Ⅳ型に分けられる。●Ⅰ型=IgE・肥満細胞、即時型(喘息・花粉症・アナフィラキシー)…●Ⅱ型=IgG/IgM・補体、細胞傷害型(自己免疫性溶血性貧血・血液型不適合)…●Ⅲ型=免疫複合体(血清病・糸球体腎炎)、Ⅳ型=T細胞・遅延型(ツベルクリン反応・接触皮膚炎)…
選択肢ごとの解説
- ① IgAは粘膜免疫の主体で、Ⅰ型アレルギーを直接引き起こさない。
- ② IgDはB細胞表面に存在するが、Ⅰ型アレルギーには関与しない。
- ③ 正しい。IgEが肥満細胞に結合し脱顆粒を起こしてⅠ型アレルギーを引き起こす。
- ④ IgGはⅡ型・Ⅲ型アレルギーに関与し、Ⅰ型の主役ではない。
- ⑤ IgMはⅡ型アレルギーや補体活性化に関与し、Ⅰ型の主役ではない。
第58回 午前15(臨床検査医学総論)
血清コリンエステラーゼ活性が低下するのはどれか。
- ①鉛中毒
- ②水銀中毒
- ③ヒ素中毒
- ④有機リン中毒
- ⑤カドミウム中毒
正答: ④有機リン中毒
ポイント
有機リン剤は、神経終末でアセチルコリンを分解するコリンエステラーゼ(ChE)を不可逆的に阻害する農薬・神経毒で、中毒では血清コリンエステラーゼおよび赤血球(真性)コリンエステラーゼ活性がともに著明に低下する。ChE阻害により分解されないアセチルコリンがシナプスに蓄積し、縮瞳・流涙・流涎・気道分泌増加・徐脈などのムスカリン様症状と、筋線維束攣縮や筋力低下などのニコチン様症状を呈し、重症では呼吸筋麻痺をきたす。血清ChE活性は有機リン中毒の診断と重症度評価、回復判定の指標となる。●ChE低下=有機リン・カーバメート中毒、肝硬変・肝障害、低栄養…●ChE上昇=ネフローゼ症候群・脂肪肝・甲状腺機能亢進症…●有機リン中毒治療=アトロピン(ムスカリン症状)・PAM(プラリドキシム、酵素再賦活)…
選択肢ごとの解説
- ① 鉛中毒は貧血やδアミノレブリン酸尿などを起こすが、ChE低下は特徴でない。
- ② 水銀中毒は腎障害や神経症状を起こすが、ChE低下は特徴でない。
- ③ ヒ素中毒は消化器症状や末梢神経障害を起こすが、ChE低下は特徴でない。
- ④ 正しい。有機リン中毒はコリンエステラーゼを阻害し血清活性を低下させる。
- ⑤ カドミウム中毒は腎尿細管障害や骨軟化症を起こすが、ChE低下は特徴でない。
第58回 午前16(臨床生理学)
心電計の特性で正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①弁別比は60 dB未満である。
- ②接地抵抗線は0.1 Ω以下である。
- ③患者保護回路のヒューズは5mAである。
- ④周波数特性は90〜200 Hzにおける振幅が95〜105 %の範囲にある。
- ⑤時定数は校正用電圧の3.2秒後の振れを100 %として1/eの高さまでの時間を表す。
正答: ②接地抵抗線は0.1 Ω以下である。・③患者保護回路のヒューズは5mAである。
ポイント
心電計は数百μV程度の微小な生体電位を交流雑音や体動の中から安定して記録するため、各種の安全・性能基準が定められている。両入力に等しく加わる同相成分(外来交流雑音)を除去する能力を示す弁別比(同相除去比)は60dB以上が要求され、患者の安全のため接地(アース)の抵抗は十分小さく保たれる。漏れ電流対策として患者と回路の間に患者保護回路を備え、ヒューズや絶縁により過大電流の流入を防いで感電を防止する。周波数特性や時定数は波形の忠実な再現に関わる基本特性で、低周波域から高周波域まで規格に沿って平坦さが保たれるよう定められている。●安全性能=弁別比60dB以上・接地抵抗を低く・患者保護回路・漏れ電流の制限…●波形再現性=周波数特性(おおむね0.05〜100Hz)・時定数(約3.2秒以上)・標準感度…●記録の留意点=交流障害・基線動揺・筋電図混入の除去…
選択肢ごとの解説
- ① 弁別比(同相除去比)は60dB以上が求められ、60dB未満は誤りである。
- ② 正しい。接地抵抗線は十分小さく0.1Ω以下に保たれる。
- ③ 正しい。患者保護回路には過大電流を防ぐヒューズが設けられる。
- ④ 周波数特性は低周波域を含む広い帯域で平坦さが求められ、90〜200Hzの記述は誤りである。
- ⑤ 時定数は校正電圧の振れを基準に1/eまでの時間で、3.2秒後を基準とする記述は誤りである。
第58回 午前17(臨床生理学)
心拍数が60回/分の健常成人の心電図でみられるのはどれか。2つ選べ。
- ①P幅0.2秒
- ②PQ間隔 — 0.3秒
- ③QRS幅 — 0.1秒
- ④QT時間 — 0.5秒
- ⑤R-R間隔 — 1.0秒
正答: ③QRS幅 — 0.1秒・⑤R-R間隔 — 1.0秒
ポイント
心拍数60回/分の健常成人の心電図では、心周期に当たるR-R間隔は60秒÷60回=1.0秒となる。各波の正常値は、心房興奮を表すP幅が約0.1秒以内、房室伝導時間を表すPQ(PR)間隔が0.12〜0.20秒、心室興奮を表すQRS幅が0.06〜0.10秒、心室の脱分極から再分極までを表すQT時間がおおむね0.36〜0.44秒(心拍数で補正)である。本問ではQRS幅0.1秒とR-R間隔1.0秒が正常範囲に合致する。各間隔は心房・房室結節・心室の興奮伝導の時間的指標であり、延長や短縮は伝導障害や不整脈の評価に用いられる。●正常値=P幅≦0.10秒・PQ0.12〜0.20秒・QRS0.06〜0.10秒・QT約0.36〜0.44秒…●R-R間隔=60÷心拍数(秒)、HR60で1.0秒…●異常=PQ延長(房室ブロック)・QRS幅延長(心室内伝導障害)・QT延長(不整脈リスク)…
選択肢ごとの解説
- ① P幅の正常は約0.1秒以内で、0.2秒は延長であり正常所見と合致しない。
- ② PQ間隔の正常は0.12〜0.20秒で、0.3秒は延長であり合致しない。
- ③ 正しい。QRS幅0.1秒は正常範囲の上限内であり合致する。
- ④ QT時間の正常は約0.36〜0.44秒で、0.5秒は延長であり合致しない。
- ⑤ 正しい。心拍数60回/分ではR-R間隔は1.0秒となり合致する。
📋 まとめの表を見る:心電図の各波形・時間と成因
心房の再分極(Ta波)は振幅が小さくQRS波に重なるため、通常の心電図には明瞭に現れない。
第58回 午前18(臨床生理学)
心電図を別に示す。平均電気軸で最も近いのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA018.d4550441b7.jpg

正答: ④90度
ポイント
心電図の平均電気軸は、心室の興奮(脱分極)が向かう平均的な方向を前額面(六軸座標)で表したもので、四肢誘導(特にⅠ誘導とaVF誘導)のQRS波の振れの向きと大きさから判定する。正常軸はおおむね−30度〜+90度の範囲にある。Ⅰ誘導とaVF誘導がともに上向き(陽性優位)であれば軸は正常範囲にあり、そのうちⅠ誘導よりaVF誘導の陽性成分が大きいほど軸は下方(+90度方向)に偏る。一般にR波が最も大きく振れる誘導の向きが軸の方向にほぼ一致し、QRSがほぼ等高二相となる誘導に直交する方向が軸となるため、本図はaVF優位で約90度に最も近い所見と判断される。●軸の判定=Ⅰ誘導とaVF誘導の主棒の向きで象限を決める…●正常軸=−30〜+90度、左軸偏位=−30度より左、右軸偏位=+90度より右…●偏位の原因=左室肥大・左脚前枝ブロック(左軸)、右室肥大・肺疾患(右軸)…
選択肢ごとの解説
- ① −30度は左軸偏位寄りの正常域で、本図の所見とは合致しない。
- ② 0度はⅠ誘導が最も陽性となる方向で、本図の所見とは合致しない。
- ③ 45度は正常軸の中間で、本図の最も近い値ではない。
- ④ 正しい。aVF優位の所見から平均電気軸は約90度に最も近い。
- ⑤ 180度は右軸偏位を超える方向で、本図の所見とは合致しない。
📋 まとめの表を見る:心電図の各波形・時間と成因
心房の再分極(Ta波)は振幅が小さくQRS波に重なるため、通常の心電図には明瞭に現れない。
第58回 午前19(臨床生理学)
運動負荷心電図検査で正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①双極四肢誘導のみ記録すればよい。
- ②STが2mm以上低下すれば中止する。
- ③トレッドミル運動負荷試験中の血圧測定は必要ない。
- ④マスター負荷試験の昇降回数は年齢、性別および体重で求められる。
- ⑤マスターダブル負荷試験はシングルと同じ昇降回数で3分間実施する。
正答: ②STが2mm以上低下すれば中止する。・④マスター負荷試験の昇降回数は年齢、性別および体重で求められる。
ポイント
運動負荷心電図検査は、階段昇降やトレッドミルなどの運動によって心筋酸素需要を増やし、安静時には現れない虚血性のST変化を誘発して冠動脈疾患を評価する検査である。虚血を示すST低下が一定基準(おおむね2mm以上)に達した場合や、強い胸痛・危険な不整脈・過度の血圧上昇または低下が出現した場合は、安全のため検査を直ちに中止する。マスター負荷試験では、運動量の指標となる階段の昇降回数を年齢・性別・体重から定められた換算表で求める。記録は標準12誘導で行い、運動中から回復期にかけて血圧と心電図を継続的に監視することが必須である。●中止基準=ST低下2mm以上・強い胸痛・危険な不整脈・血圧の過度上昇や低下・極度の疲労…●マスター負荷=年齢・性別・体重で昇降回数を決定、ダブルはシングルの2倍を約3分…●監視項目=12誘導心電図・血圧・自覚症状を運動中・回復期とも継続…
選択肢ごとの解説
- ① 標準12誘導で記録するのが原則で、双極四肢誘導のみでは不十分である。
- ② 正しい。虚血を示すST低下が2mm以上になれば検査を中止する。
- ③ トレッドミル運動中も血圧測定は必須で、不要とする記述は誤りである。
- ④ 正しい。マスター負荷の昇降回数は年齢・性別・体重から求める。
- ⑤ ダブル負荷はシングルの2倍の昇降回数で行い、同じ回数とする記述は誤りである。
第58回 午前20(臨床生理学)
フローボリューム曲線について正しいのはどれか。
- ①横軸に時間を、縦軸に肺気量をとる。
- ②閉塞性肺疾患では上方に凸の呼出曲線がみられる。
- ③ピークフローは被験者の努力に関係なく再現性がある。
- ④V50はV25よりも末梢側気道の気流制限の程度を反映する。
- ⑤複数回の測定で、FVCとFEV1.0とが最も大きい測定値を採用する。
正答: ⑤複数回の測定で、FVCとFEV1.0とが最も大きい測定値を採用する。
ポイント
フローボリューム曲線は、横軸に肺気量(容量)、縦軸に呼出気流速度(フロー)をとり、最大努力呼出の気流動態を一回の呼出で連続的に表す検査である。再現性を確保するため複数回測定し、そのうちFVC(努力肺活量)とFEV1.0(1秒量)はそれぞれ最も大きい値を採用するのが原則である。閉塞性肺疾患では気道狭窄により呼出後半の気流が低下して下方に凹んだ(下に凸の)曲線となり、末梢気道病変ではV25など低肺気量域の流速がより鋭敏に低下する。一方、拘束性障害では曲線全体が小さく相似形に縮む。曲線の立ち上がりであるピークフローは被験者の呼出努力に強く依存し、努力が不十分だと低く出るため努力依存性の指標である。●曲線の軸=横軸=肺気量、縦軸=気流速度…●閉塞性パターン=下に凸(凹型)・ピーク後の急減、拘束性=全体が小さく相似形…●指標=V50・V25は末梢気道の気流制限を反映、V25がより末梢を反映…
選択肢ごとの解説
- ① 横軸は肺気量、縦軸は気流速度で、横軸に時間をとる記述は誤りである。
- ② 閉塞性肺疾患では下方に凹む曲線となり、上方に凸の記述は誤りである。
- ③ ピークフローは被験者の努力に依存し、努力に関係なく再現するは誤りである。
- ④ より末梢の気流制限を反映するのはV25で、V50がより末梢とするは誤りである。
- ⑤ 正しい。複数回測定でFVCとFEV1.0が最も大きい測定値を採用する。
📋 まとめの表を見る:換気機能障害の分類(%肺活量〈%VC〉・1秒率〈FEV1%〉による判定)
閉塞性換気障害ではフローボリューム曲線が下に凸の形となる。機能的残気量〈FRC〉は肺の過膨張により上昇する(肺気腫・COPDなど)。
第58回 午前21(臨床生理学)
血液ガス分析装置で実測されるのはどれか。2つ選べ。
- ①pH
- ②SaO₂
- ③HCO₃⁻
- ④PaCO₂
- ⑤Base Excess
正答: ①pH・④PaCO₂
ポイント
血液ガス分析装置は、専用の電極を用いて限られた項目を直接実測し、それをもとに残りの指標を計算で導出する仕組みである。電極で実測されるのはpH(ガラス電極)、PaCO₂(Severinghaus電極=CO₂電極)、PaO₂(Clark電極=O₂電極)の3項目で、いずれも血液中のイオンや分圧を電気化学的に検出する。これに対し、重炭酸イオン(HCO₃⁻)やBase Excessは実測のpHとPaCO₂からHenderson-Hasselbalchの式を用いて、酸素飽和度(SaO₂)はPaO₂から酸素解離曲線を用いて算出される計算値である。実測か計算かの区別は値の信頼性評価に関わる。●実測項目=pH・PaCO₂・PaO₂(各専用電極)…●計算項目=HCO₃⁻・Base Excess・SaO₂(実測値から算出)…●検体の取扱い=ヘパリン採血・気泡混入を避け・氷冷で速やかに測定…
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。pHはガラス電極で直接実測される項目である。
- ② SaO₂は酸素解離曲線を用いて算出される計算値で、実測ではない。
- ③ HCO₃⁻はpHとPaCO₂から計算される計算値で、実測ではない。
- ④ 正しい。PaCO₂はCO₂電極(Severinghaus電極)で直接実測される。
- ⑤ Base ExcessはpHとPaCO₂から算出される計算値で、実測ではない。
第58回 午前22(臨床生理学)
終夜睡眠ポリグラフィで正しいのはどれか。
- ①REM睡眠時には急速眼球運動はみられない。
- ②脳波上の覚醒は睡眠呼吸障害の重症度とは関係しない。
- ③non REM睡眠では、睡眠ステージ4はステージ1よりも浅い睡眠である。
- ④無呼吸指数は、10秒以上持続する無呼吸が1時間当たりに出現する回数である。
- ⑤経皮的動脈血酸素飽和度が90 %以下になったら検査を中止しなければならない。
正答: ④無呼吸指数は、10秒以上持続する無呼吸が1時間当たりに出現する回数である。
ポイント
終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)は、脳波・眼球運動・オトガイ筋筋電図・呼吸(気流・胸腹部運動)・酸素飽和度・心電図などを一晩同時記録し、睡眠の深さや構造と睡眠呼吸障害を総合的に評価する検査である。無呼吸指数(AI)は10秒以上持続する無呼吸が睡眠1時間当たりに出現する回数で、低呼吸を加えた無呼吸低呼吸指数(AHI)とともに睡眠時無呼吸症候群の重症度判定に用いる。REM睡眠では急速眼球運動と骨格筋緊張の低下がみられ、non-REM睡眠ではステージが進むほど深い睡眠(徐波睡眠)になり、ステージ4はステージ1より深い。●睡眠ステージ=non-REM(N1〜N3、深くなるほど徐波増加)とREM(急速眼球運動・骨格筋緊張低下)…●呼吸指標=無呼吸指数(AI)・無呼吸低呼吸指数(AHI)で重症度判定…●関連所見=覚醒反応(arousal)増加は重症度と関連、低酸素血症の評価…
選択肢ごとの解説
- ① REM睡眠では急速眼球運動がみられ、みられないとする記述は誤りである。
- ② 脳波上の覚醒(arousal)は睡眠呼吸障害の重症度と関連し、無関係は誤りである。
- ③ ステージ4はステージ1より深い睡眠であり、浅いとする記述は誤りである。
- ④ 正しい。無呼吸指数は10秒以上の無呼吸が1時間当たり出現する回数である。
- ⑤ 酸素飽和度90%以下で直ちに中止するという基準は適切でない。
第58回 午前23(臨床生理学)
大脳皮質運動野の神経細胞の軸索が通過しない部位はどれか。
正答: ⑤神経筋接合部
ポイント
大脳皮質運動野(一次運動野)の錐体細胞から出た軸索は、随意運動の指令を伝える皮質脊髄路(錐体路)を下行する。経路は、内包後脚→中脳大脳脚→橋→延髄錐体を通り、延髄下部の錐体交叉で大部分が対側へ交叉して脊髄側索を下行(外側皮質脊髄路)し、一部は交叉せず前索を下行(前皮質脊髄路)する。これらはいずれも脊髄前角の運動ニューロンに連絡する上位運動ニューロンの経路である。一方、神経筋接合部は前角細胞から出た下位運動ニューロンの軸索が骨格筋と接続する部位であり、運動野の神経細胞の軸索そのものはここを通過しない。●錐体路の経路=運動野→内包後脚→大脳脚→橋→延髄錐体→錐体交叉→側索(外側路)/前索(前路)→脊髄前角…●上位運動ニューロン=運動野から脊髄前角まで、障害で痙性麻痺…●下位運動ニューロン=前角細胞→神経筋接合部→筋、障害で弛緩性麻痺…
選択肢ごとの解説
- ① 内包(後脚)は錐体路が通過する部位であり、軸索は通過する。
- ② 側索は外側皮質脊髄路が下行する部位で、軸索は通過する。
- ③ 前索は前皮質脊髄路が下行する部位で、軸索は通過する。
- ④ 錐体交叉は皮質脊髄路が対側へ交叉する部位で、軸索は通過する。
- ⑤ 正しい。神経筋接合部は下位運動ニューロンと筋の接続部で、運動野の軸索は通過しない。
第58回 午前24(臨床生理学)
14 Hzの連続する波を認める脳波を別に示す。所見として正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA024.1f720b8df0.jpg

- ①呼びかけると返事をする。
- ②薬剤の影響による速波である。
- ③てんかん性の波が出現している。
- ④急速眼球運動が持続的に出現している。
- ⑤K複合波が出現している睡眠段階である。
正答: ⑤K複合波が出現している睡眠段階である。
ポイント
脳波における14Hz前後の連続する律動波は、睡眠紡錘波(睡眠スピンドル)に相当する。睡眠紡錘波は12〜14Hzの波が一過性に増減する紡錘状の群発波で、K複合波とともにnon-REM睡眠のステージ2を特徴づける指標である。K複合波は高振幅で陰性に続いて陽性となる二相性の鋭波で、睡眠中に外的刺激や自発的に出現し、睡眠紡錘波と同じくステージ2でみられる。したがって14Hzの連続する波を認める本記録は、睡眠紡錘波とK複合波が出現する睡眠段階すなわちステージ2の所見と判断され、覚醒や速波、てんかん性放電とは区別される。●睡眠段階の指標=N1(低振幅・θ波)→N2(睡眠紡錘波・K複合波)→N3(高振幅徐波=δ波)→REM(低振幅・急速眼球運動)…●睡眠紡錘波=12〜14Hzの紡錘状群発、ステージ2の特徴…●K複合波=高振幅二相性鋭波、ステージ2に出現…
選択肢ごとの解説
- ① 14Hzの紡錘波は睡眠中の所見で、呼びかけに返事をする覚醒状態とは異なる。
- ② 薬剤性速波はβ帯域でびまん性に持続するが、紡錘状の群発波とは異なる。
- ③ てんかん性の波は棘波・鋭波・棘徐波複合で、律動的な紡錘波とは異なる。
- ④ 急速眼球運動はREM睡眠の所見で、紡錘波が主体の本記録とは異なる。
- ⑤ 正しい。14Hzの紡錘波はK複合波を伴う睡眠ステージ2の所見である。
📋 まとめの表を見る:睡眠段階(AASM分類)と脳波所見
睡眠ステージ1(N1)からステージ2(N2)への移行は、紡錘波の出現で判断する。旧Rechtschaffen & Kales分類のStage3・4はAASM分類でStage N3に統一された。
第58回 午前25(臨床生理学)
大脳誘発電位を示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA025.e6b007c14a.jpg

- ①視覚誘発電位
- ②事象関連電位
- ③聴覚脳幹誘発電位
- ④上肢刺激体性感覚誘発電位
- ⑤下肢刺激体性感覚誘発電位
正答: ③聴覚脳幹誘発電位
ポイント
聴覚脳幹誘発電位(ABR)は、クリック音などの聴覚刺激を多数回与えて加算平均し、刺激後約10ミリ秒以内に出現する一連の小さな波(Ⅰ〜Ⅴ波)を記録する短潜時の誘発電位である。各波は聴神経から脳幹の聴覚伝導路の各部位に由来し、Ⅰ波は蝸牛神経、Ⅲ波は橋下部、Ⅴ波は下丘付近を反映するとされ、波の潜時や有無から伝導路の障害部位を推定できる。潜時が短く振幅が小さい連続した波形が特徴で、覚醒・睡眠状態の影響を受けにくいため、客観的な聴力評価・脳幹機能評価・聴神経腫瘍の検出、新生児聴覚スクリーニングに広く用いられる。●代表的誘発電位=視覚誘発電位(VEP)・聴覚脳幹誘発電位(ABR)・体性感覚誘発電位(SEP)・事象関連電位(P300など)…●ABRの構成=Ⅰ〜Ⅴ波、潜時10ms以内、Ⅰ波=蝸牛神経・Ⅴ波=下丘…●臨床応用=聴力評価・脳幹機能・聴神経腫瘍・新生児聴覚スクリーニング…
選択肢ごとの解説
- ① 視覚誘発電位は光刺激で後頭部にP100を記録するもので、本波形と異なる。
- ② 事象関連電位はP300など認知課題で生じる長潜時成分で、本波形と異なる。
- ③ 正しい。刺激後10ms以内にⅠ〜Ⅴ波が連続する短潜時波形は聴覚脳幹誘発電位である。
- ④ 上肢刺激体性感覚誘発電位は正中神経刺激で得られ、本波形とは異なる。
- ⑤ 下肢刺激体性感覚誘発電位は脛骨神経刺激で得られ、本波形とは異なる。
📋 まとめの表を見る:誘発電位の種類と特徴
意識や睡眠の影響を受けにくいのはABR。ABRは聴覚障害・脳幹障害・脳死判定などに用いる。
第58回 午前26(臨床生理学)
超音波の伝播速度が最も大きいのはどれか。
正答: ①骨
ポイント
音速は媒質の弾性率が高く分子が密に結合した固体ほど大きく、気体では分子間隔が広いため極端に小さい。生体内では概ね固体(骨)>軟部組織>気体(肺・腸管ガス)の順で、骨は約4000m/s前後と最も速く、含気のため超音波を強く反射・散乱する肺は数百m/s以下と最も遅い。超音波診断装置は軟部組織の平均音速を約1530m/sと仮定して反射波の往復時間から距離(深さ)を逆算しているため、音速の大きく異なる組織(骨・脂肪・含気部)では深さの表示にずれが生じ、音響陰影や多重反射などのアーチファクトの原因にもなる。●音速が速い=骨・石灰化・軟骨など固く密な構造(後方に音響陰影を伴いやすい)●軟部組織=肝・腎・脾・筋など約1530m/s前後でほぼ同等のため境界の反射が弱い●音速が遅い=肺・消化管ガスなど含気組織(強反射でその先が描出不能となる)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。骨は弾性率が高く密な固体で、生体の中で音速が最も大きい(約4000m/s前後)。強反射のため後方に音響陰影を伴いやすい。
- ② 誤り。肺は含気組織で音波がほとんど空気で反射・散乱されるため、生体で音速が最も遅い部類に入り、深部の描出は困難である。
- ③ 誤り。肝臓は軟部組織で音速は約1530m/s前後。装置の基準音速に近く、減衰も小さいため超音波検査の標準的な観察対象となる。
- ④ 誤り。骨格筋も軟部組織で音速は約1540〜1580m/s程度。軟部組織同士では音速差が小さく、骨のような大きな値にはならない。
- ⑤ 誤り。皮下脂肪は約1450m/sと軟部組織の中ではやや遅く、骨の約4000m/sと比べると明らかに小さい音速を示す。
第58回 午前27(臨床生理学)
超音波検査で正しいのはどれか。
- ①伝播媒質は空気が適している。
- ②サイドローブは虚像の原因となる。
- ③周波数が高いと深部の像が鮮明になる。
- ④パルス幅を大きくすると分解能が高まる。
- ⑤パルスドプラ法は高速血流の測定に適している。
正答: ②サイドローブは虚像の原因となる。
ポイント
サイドローブは超音波ビームの主方向(メインローブ)の周囲に放射状に生じる副次的なビームで、本来の走査線上にない強い反射体を主方向上にあるかのように描出してしまうため、実在しない虚像(アーチファクト)の原因となる。超音波は空気や骨で強く反射・減衰するため伝播媒質には軟部組織や水が適し、空気は不適でプローブと体表はゼリーを介して密着させる。周波数を高くすると分解能は向上するが減衰が大きく深部到達は悪くなるため、深部観察には低めの周波数が用いられる。パルス幅は短い(小さい)ほど距離分解能が高い。●虚像の主なアーチファクト=サイドローブ・多重反射(コメットエコー)・鏡面(ミラー)像・音響陰影・後方エコー増強●分解能の規定因子=距離分解能はパルス幅が短いほど良く、方位分解能はビーム幅が狭いほど良い●周波数の関係=高周波は分解能高・深達度低、低周波は分解能低・深達度高。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。空気は超音波をほぼ全反射し伝播に不適である。プローブと体表はゼリーで密着させ、軟部組織や水が伝播媒質に適する。
- ② 正しい。サイドローブは主ビーム周囲の副ビームで、走査線外の反射体を主方向上に描出してしまい、実在しない虚像を生じる。
- ③ 誤り。周波数が高いと分解能は上がるが減衰が大きく深部に届かない。深部の鮮明な像を得るには低めの周波数が適している。
- ④ 誤り。パルス幅を小さく(短く)すると距離分解能が高まる。パルス幅を大きくすると分解能はむしろ低下してしまう。
- ⑤ 誤り。パルスドプラ法は折り返し(エイリアシング)により高速血流の正確な測定が困難である。高速血流には連続波ドプラが適する。
第58回 午前28(臨床生理学)
左腎の超音波縦断面像を別に示す。矢印で示す病変の超音波所見で正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA028.e22699a7fe.jpg

- ①形状は不整である。
- ②境界は明瞭である。
- ③内部は高エコーである。
- ④辺縁に低エコー帯を認める。
- ⑤後方エコーは減弱している。
正答: ②境界は明瞭である。
ポイント
別冊の左腎縦断像で矢印の病変は、辺縁が滑らかで境界が明瞭、内部が無〜低エコーを呈し、嚢胞に典型的な所見を示している。境界明瞭・形状整・辺縁平滑は良性病変(単純性腎嚢胞など)を示唆する所見であり、悪性(腎細胞癌など)では形状不整・境界不明瞭・内部不均一が問題となる。単純性腎嚢胞では内部が無エコーで液体貯留を反映し、後方エコー増強や側方陰影を伴い、充実性腫瘤とは描出が明瞭に異なる。●良性を示唆する超音波所見=境界明瞭・形状整・辺縁平滑・内部均一●悪性を疑う所見=形状不整・境界不明瞭・内部不均一・浸潤性辺縁・ハロー●嚢胞性病変の特徴=内部無エコー・後方エコー増強・側方陰影で、類円形・境界明瞭の充実病変との鑑別点となる。多房性や内部エコーを伴う複雑性嚢胞では悪性の可能性も考慮し、充実成分や隔壁の有無を慎重に評価する必要がある。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。形状が不整なのは悪性腫瘍を疑う所見である。本病変は辺縁が滑らかで形状が整っており、その特徴には当てはまらない。
- ② 正しい。境界が明瞭で平滑なのは良性病変(嚢胞など)に典型的な所見であり、本病変の超音波所見の特徴に合致している。
- ③ 誤り。本病変は嚢胞性で内部は無〜低エコーである。内部高エコーは脂肪成分の多い充実性腫瘤などで問題となる所見である。
- ④ 誤り。辺縁の低エコー帯(ハロー)は被膜を有する充実性腫瘤で問題となる所見であり、嚢胞性の本病変の特徴ではない。
- ⑤ 誤り。嚢胞では液体貯留により後方エコーはむしろ増強する。後方エコーの減弱は石灰化やガスなど強反射体で問題となる。
📋 まとめの表を見る:腹部超音波検査:疾患と特徴的なエコー所見
肝血管腫のカメレオンサイン(体位変換による内部エコー変化)とコメット様エコー(胆嚢腺筋症などでみられる多重反射)は別の所見であり混同しない。
第58回 午前29(臨床化学)
日内変動が小さいのはどれか。2つ選べ。
- ①中性脂肪
- ②血漿浸透圧
- ③血清カルシウム
- ④血漿グルコース
- ⑤血漿コルチゾール
正答: ②血漿浸透圧・③血清カルシウム
ポイント
日内変動とは血中濃度が時刻によって生理的に変化する現象で、ホルモンの分泌リズムや食事・体位・活動の影響を受ける成分で大きくなる。血漿浸透圧は体液量と電解質濃度を一定に保つ恒常性が強く働くため日内変動が小さく、血清カルシウムも副甲状腺ホルモンやカルシトニン・ビタミンDなどにより厳密に調節されるため日内変動が小さい。一方、中性脂肪と血漿グルコースは食事の影響を強く受けて食後に上昇し、血漿コルチゾールは早朝高値・夜間低値の明瞭な日内リズムを示すため変動が大きい。●日内変動が小さい=血漿浸透圧・血清カルシウム・総蛋白・電解質(恒常性で厳密調節)●日内変動が大きい=コルチゾール(早朝高値)・ACTH・成長ホルモン・血清鉄・好酸球数●食事の影響が大きい=血糖・中性脂肪・インスリン(食後に上昇するため空腹時採血で評価)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。中性脂肪は食事の影響を強く受け食後に上昇するため、日内変動は大きい。評価には空腹時採血を行うのが原則である。
- ② 正しい。血漿浸透圧は体液恒常性により厳密に一定に保たれるため、日内変動は小さく時刻によらず安定した値を示す。
- ③ 正しい。血清カルシウムは副甲状腺ホルモンやビタミンDなどにより厳密に調節されるため、日内変動は小さい。
- ④ 誤り。血漿グルコースは食事に伴って大きく変動し日内変動が大きいため、空腹時採血により標準化して評価する。
- ⑤ 誤り。血漿コルチゾールは早朝に高く夜間に低い明瞭な日内リズムを示すため、日内変動が大きい代表的な物質である。
第58回 午前30(臨床化学)
正しいのはどれか。
- ①溶血によって血清AST活性は上昇する。
- ②全血冷蔵保存によって乳酸値は低下する。
- ③血清鉄は夜間の方が早朝よりも高値を示す。
- ④血清アルブミンは立位の方が臥位よりも低値を示す。
- ⑤ヘパリン採血した血漿中のカルシウムは低値を示す。
正答: ①溶血によって血清AST活性は上昇する。
ポイント
溶血では赤血球内成分が血清・血漿中へ逸脱する。ASTは赤血球内濃度が血清の約10〜40倍と高く、溶血により血清AST活性は偽性に上昇する。LD・カリウム・無機リンなど赤血球内に多い成分も同様に溶血で上昇する。全血を放置・冷蔵保存すると赤血球の解糖が続くためグルコースは低下し乳酸は上昇する。血清鉄は早朝高値・夜間低値の日内変動を示し、立位では水分が血管外へ移動して血漿が濃縮されるためアルブミンなど高分子はむしろ高値となる。ヘパリンはカルシウムをキレートせず、抗凝固でカルシウムを低下させるのはEDTAやクエン酸である。●溶血で上昇する成分=AST・LD・カリウム・無機リンなど赤血球内に多い物質●採血・保存による変化=全血放置でグルコース低下・乳酸上昇・カリウム上昇●体位の影響=立位で高分子(蛋白・脂質・酵素)が濃縮し高値となる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。ASTは赤血球内に高濃度で存在し、溶血により血清中へ逸脱するため、血清AST活性は偽性に上昇してしまう。
- ② 誤り。全血を放置・冷蔵保存しても赤血球の解糖により乳酸は上昇する。逆に低下するのはグルコース(血糖)である。
- ③ 誤り。血清鉄は早朝に高く夜間(午後から夜)に低い日内変動を示す。夜間が早朝より高値というのは逆の記述である。
- ④ 誤り。立位では水分が血管外へ移動して血漿が濃縮するため、アルブミンなど高分子は臥位よりむしろ高値となる。
- ⑤ 誤り。ヘパリンはカルシウムをキレートしないため低値にはしない。カルシウムを低下させるのはEDTAやクエン酸である。
第58回 午前31(臨床化学)
免疫化学的測定において偽陽性反応を示すのはどれか。
- ①地帯現象
- ②異好性抗体
- ③電気浸透現象
- ④光量補正効果
- ⑤分子ふるい効果
正答: ②異好性抗体
ポイント
異好性抗体は動物の免疫グロブリンや種を越えて反応する抗体で、免疫測定系に用いられる動物由来抗体に非特異的に結合し、検体中に被測定物質が存在しなくても見かけ上の反応を生じさせて偽陽性(あるいは偽の高値・低値)の原因となる。免疫化学的測定は抗原抗体反応の特異性を利用するため、このような交差反応・非特異反応が測定誤差をもたらす。地帯現象(プロゾーン)は抗原過剰で凝集が抑制され偽性低値を生じる現象である。●免疫測定の誤差要因=異好性抗体・ヒト抗マウス抗体(HAMA)・リウマトイド因子などによる非特異反応で偽陽性をきたす●過不足による誤差=抗原過剰の地帯現象(プロゾーン)・抗体過剰による偽低値●物理的要因=電気浸透・分子ふるい・光学補正は分離や検出の手法であり、偽陽性反応そのものの主因ではなく、対策には測定系へのブロッキング試薬の添加や希釈再検が用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。地帯現象(プロゾーン)は抗原過剰により凝集が抑制されて偽性低値を生じる現象であり、偽陽性の原因ではない。
- ② 正しい。異好性抗体は測定系の動物由来抗体に非特異的に結合し、被測定物質がなくても反応を生じて偽陽性反応をきたす。
- ③ 誤り。電気浸透現象は電気泳動などにおける溶媒の移動現象であり、免疫測定における偽陽性反応の原因とはならない。
- ④ 誤り。光量補正効果は測定上の光学的な補正であって、それ自体が偽陽性反応を直接生じさせるものではない。
- ⑤ 誤り。分子ふるい効果はゲル濾過など分子量による分離の原理であり、免疫測定における偽陽性反応の原因ではない。
第58回 午前32(臨床化学)
低アルブミン血症で検査値の補正が必要なのはどれか。
- ①ナトリウム
- ②カリウム
- ③クロール
- ④カルシウム
- ⑤無機リン
正答: ④カルシウム
ポイント
血清カルシウムは約半分がアルブミンと結合しており、測定される総カルシウムにはこの蛋白結合分が含まれている。低アルブミン血症では結合分が減少するため総カルシウムが見かけ上低下するが、生理活性をもつイオン化カルシウムは保たれていることが多い。そのため低アルブミン血症では補正式(Payneの式:補正Ca=実測Ca+0.8×(4−アルブミン))を用いて補正したうえで評価する必要がある。●アルブミンと結合し補正が必要=カルシウム(総量の約半分が結合型のため低アルブミンで偽性低下する)●補正不要の電解質=ナトリウム・カリウム・クロールは主に遊離イオンとして存在し蛋白結合の影響が小さい●関連事項=低アルブミン血症ではカルシウム以外にも蛋白結合する薬物やホルモンの遊離型割合が変化しうるため解釈に注意を要する。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。ナトリウムは主に遊離イオンとして存在しアルブミン結合の影響をほとんど受けないため、補正の必要はない電解質である。
- ② 誤り。カリウムも遊離イオンが主体で蛋白結合の影響が小さいため、低アルブミン血症において補正を行う必要はない。
- ③ 誤り。クロールも遊離イオンとして存在し蛋白結合の影響を受けないため、アルブミン濃度による補正を要しない電解質である。
- ④ 正しい。カルシウムは約半分がアルブミン結合型のため、低アルブミン血症では総カルシウムが偽性低下し補正式での補正が必要となる。
- ⑤ 誤り。無機リンは主に遊離型で存在しアルブミン濃度の影響を受けないため、低アルブミン血症で補正を行う必要はない。
第58回 午前33(臨床化学)
血漿浸透圧への寄与が最も大きいのはどれか。
- ①無機リン
- ②アルブミン
- ③カルシウム
- ④ナトリウム
- ⑤マグネシウム
正答: ④ナトリウム
ポイント
血漿浸透圧は溶質の粒子数(モル濃度)の総和で決まるため、最も濃度の高い溶質ほど寄与が大きい。血漿中で最も濃度が高い溶質はナトリウムイオンで、対イオンの陰イオン(クロールなど)とともに浸透圧の大部分を占める。浸透圧の推算式(2×[Na⁺]+グルコース/18+尿素窒素/2.8など)でもナトリウムが2倍されることからその支配的な寄与がわかる。アルブミンは分子量が大きくモル濃度が低いため全浸透圧への寄与はわずかだが、毛細血管壁を通過しにくいことから血管内に水を保持する膠質浸透圧の主役となる。●血漿浸透圧への寄与が大きい=ナトリウム(と対陰イオン)、次いでグルコース・尿素●膠質浸透圧の主役=アルブミン(高分子で血管内に水を保持する)●浸透圧の推算=2×[Na⁺]+Glu/18+BUN/2.8でナトリウムが最も支配的に働く。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。無機リンは血漿中の濃度が低くモル濃度も小さいため、血漿浸透圧への寄与はごくわずかで主役にはならない。
- ② 誤り。アルブミンは分子量が大きくモル濃度が低いため全浸透圧への寄与は小さい。ただし血管内に水を保持する膠質浸透圧の主役である。
- ③ 誤り。カルシウムは血漿中濃度が低くモル濃度も小さいため、血漿浸透圧への寄与は小さく主役にはならない。
- ④ 正しい。ナトリウムは血漿中で最も濃度の高い溶質で、対陰イオンとともに血漿浸透圧の大部分を担っている。
- ⑤ 誤り。マグネシウムは血漿中濃度が低くモル濃度も小さいため、血漿浸透圧への寄与はごくわずかで主役にはならない。
第58回 午前34(臨床化学)
血糖測定について正しいのはどれか。
- ①毛細管血よりも静脈血の方が高値を示す。
- ②フッ化ナトリウムはムタロターゼを阻害する。
- ③グルコースオキシダーゼはα-D-グルコースに作用する。
- ④グルコキナーゼはグルコースとマンノースとに作用する。
- ⑤ヘキソキナーゼはD-グルコースのα、β型の両方に作用する。
正答: ⑤ヘキソキナーゼはD-グルコースのα、β型の両方に作用する。
ポイント
ヘキソキナーゼ(HK)法はグルコース定量に広く用いられ、HKはD-グルコースのα型・β型の両方に作用してグルコース-6-リン酸を生成し、続くグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)の反応で生じるNADPHの吸光度から測定する。一方グルコースオキシダーゼ(GOD)はβ-D-グルコースに特異的に作用するため、α型を平衡化するムタロターゼを併用する。血糖はフッ化ナトリウム(解糖阻害)添加管で採血し、動脈血に近い毛細管血は静脈血より高めに出る。●グルコース測定酵素=HK法(α・β両型に作用しG6PDと共役)/GOD法(β型に特異的でムタロターゼ併用)●採血・保存=フッ化ナトリウムが解糖系のエノラーゼを阻害、放置で偽性低下●標準=血糖は空腹時の静脈血漿で測定するのが基本となり、全血のまま放置すると解糖により低下するため血漿分離や解糖阻害剤の使用が必要となる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。動脈血に近い毛細管血の方が静脈血より高値を示す。組織で消費される前の血糖を反映するため高めに出るのである。
- ② 誤り。フッ化ナトリウムは解糖系のエノラーゼを阻害して解糖を抑制する。ムタロターゼを阻害するという記述は誤りである。
- ③ 誤り。グルコースオキシダーゼはβ-D-グルコースに特異的に作用する。α型に作用させるにはムタロターゼの併用が必要である。
- ④ 誤り。グルコキナーゼは主にグルコースに作用する。グルコースとマンノースの両方に作用するのはヘキソキナーゼである。
- ⑤ 正しい。ヘキソキナーゼはD-グルコースのα型・β型の両方に作用し、グルコース-6-リン酸を生成する反応を触媒する。
第58回 午前35(臨床化学)
室温下で血清を静置した。LCATによって生じる変化はどれか。
- ①中性脂肪の減少
- ②遊離脂肪酸の減少
- ③グリセロールの増加
- ④遊離型コレステロールの減少
- ⑤リゾホスファチジルコリン(リゾレシチン)の減少
正答: ④遊離型コレステロールの減少
ポイント
LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)はHDL上で働く酵素で、レシチン(ホスファチジルコリン)の脂肪酸を遊離型コレステロールに転移させ、コレステロールエステルとリゾレシチン(リゾホスファチジルコリン)を生成する。したがって血清を室温で静置するとLCATの作用により遊離型コレステロールが減少し、エステル型コレステロールとリゾレシチンが増加する。この反応は末梢から肝へのコレステロール逆転送(HDLによる)に関与し、アポA-Iにより活性化される。●LCATの基質=遊離型コレステロール+レシチン(いずれも反応で減少する)●LCATの産物=コレステロールエステル+リゾレシチン(いずれも反応で増加する)●関連=LCATはHDLのアポA-Iで活性化され、コレステロール逆転送系で重要な役割を担い、欠損症では角膜混濁などをきたす。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。中性脂肪の分解はリパーゼによる作用である。LCATは中性脂肪を基質とせず、その減少には関与しない酵素である。
- ② 誤り。遊離脂肪酸はリパーゼによる中性脂肪の分解で増加する成分であり、LCATの作用によって減少するわけではない。
- ③ 誤り。グリセロールはリパーゼによる中性脂肪の分解で生じる成分である。LCATの触媒する反応では生成されない。
- ④ 正しい。LCATはレシチンの脂肪酸を遊離型コレステロールに転移するため、遊離型コレステロールは減少しエステル型が増加する。
- ⑤ 誤り。LCATの反応ではリゾレシチン(リゾホスファチジルコリン)はむしろ生成されて増加する。減少という記述は逆である。
第58回 午前36(臨床化学)
血漿蛋白について正しいのはどれか。
- ①α₁-アンチトリプシンは炎症で低値となる。
- ②ハプトグロビンは溶血性貧血で高値となる。
- ③トランスサイレチンは低栄養で低値となる。
- ④トランスフェリンは鉄欠乏性貧血で低値となる。
- ⑤フェリチンはヘモクロマトーシスで低値となる。
正答: ③トランスサイレチンは低栄養で低値となる。
ポイント
トランスサイレチン(プレアルブミン)は半減期が約2〜4日と短く肝で合成される蛋白で、低栄養(蛋白栄養状態の悪化)で速やかに低値となるため、栄養状態の鋭敏な指標(RTP:rapid turnover protein)として用いられる。α₁-アンチトリプシンやハプトグロビンは急性相反応蛋白で炎症時に上昇し、ハプトグロビンは溶血時に遊離ヘモグロビンと結合して消費されるため低値となる。トランスフェリンは鉄欠乏で代償性に増加して高値となり、フェリチンは鉄貯蔵を反映するため鉄過剰のヘモクロマトーシスで高値となる。●低栄養で低下する指標(RTP)=トランスサイレチン・レチノール結合蛋白・トランスフェリン●急性相反応蛋白(炎症で上昇)=CRP・α₁-アンチトリプシン・ハプトグロビン・フィブリノゲン●鉄代謝=鉄欠乏でトランスフェリン上昇・フェリチン低下、鉄過剰でフェリチン上昇。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。α₁-アンチトリプシンは急性相反応蛋白であり、炎症ではむしろ高値となる。低値となるのは先天的欠損症などである。
- ② 誤り。ハプトグロビンは溶血時に遊離ヘモグロビンと結合して消費されるため、溶血性貧血ではむしろ低値となる。
- ③ 正しい。トランスサイレチン(プレアルブミン)は半減期が短く、低栄養で速やかに低値となる栄養状態の鋭敏な指標である。
- ④ 誤り。トランスフェリンは鉄欠乏性貧血では鉄を運ぶ需要に応じて代償性に増加し高値となる。低値という記述は逆である。
- ⑤ 誤り。フェリチンは体内の鉄貯蔵を反映するため、鉄過剰のヘモクロマトーシスでは高値となる。低値という記述は逆である。
第58回 午前37(臨床化学)
アンモニアについて正しいのはどれか。
- ①筋肉でリン酸化される。
- ②溶血で血漿中濃度が上昇する。
- ③TCA回路によって解毒される。
- ④プリン体の最終代謝産物である。
- ⑤食物摂取によって血中濃度が低下する。
正答: ②溶血で血漿中濃度が上昇する。
ポイント
アンモニアは赤血球内に血漿の数倍含まれるため、溶血すると赤血球内アンモニアが逸脱して血漿中濃度が偽性に上昇する。またアンモニアは採血後の時間経過とともに増加しやすく、専用容器での採血・氷冷・速やかな測定が必要である。アンモニアは主にアミノ酸の脱アミノ反応や腸内細菌により生じ、肝臓の尿素回路(オルニチン回路)で尿素に変換されて解毒される(TCA回路ではない)。高蛋白食など食物摂取後は血中濃度が上昇しうる。●アンモニアの生成と解毒=アミノ酸の脱アミノや腸内細菌で生成し、肝の尿素回路で尿素に変換され解毒される●測定上の注意=溶血や放置で偽性上昇するため氷冷・迅速測定が必要●関連=肝不全や尿素回路酵素欠損で高アンモニア血症となり、意識障害や羽ばたき振戦を伴う肝性脳症を引き起こすため、肝機能評価の指標として用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。筋肉でリン酸化されるのはクレアチンなど別の物質である。アンモニアは肝の尿素回路で尿素に変換されて処理される。
- ② 正しい。アンモニアは赤血球内に高濃度で存在するため、溶血により赤血球内成分が逸脱し血漿中濃度が偽性に上昇する。
- ③ 誤り。アンモニアは肝臓の尿素回路(オルニチン回路)で尿素に変換されて解毒される。TCA回路によって解毒されるのではない。
- ④ 誤り。プリン体の最終代謝産物は尿酸である。アンモニアはアミノ酸代謝などで生じる物質で、プリン体の代謝産物ではない。
- ⑤ 誤り。高蛋白食などの食物摂取によりアンモニアの血中濃度はむしろ上昇しうる。食物摂取で低下するという記述は誤りである。
第58回 午前38(臨床化学)
血清CKについて正しいのはどれか。
- ①4℃で保存すると失活しない。
- ②甲状腺機能亢進症では高値を示す。
- ③男性よりも女性の方が高値を示す。
- ④多発性筋炎ではCK-BBが上昇する。
- ⑤急性心筋梗塞ではLDよりも早く上昇する。
正答: ⑤急性心筋梗塞ではLDよりも早く上昇する。
ポイント
CK(クレアチンキナーゼ)は筋に由来する酵素で、急性心筋梗塞では発症後数時間で上昇し始め半日〜1日でピークに達する。LD(乳酸脱水素酵素)は上昇開始もピークもより遅れるため、CKはLDよりも早く上昇する。CKは不安定な酵素で低温でも徐々に失活し、筋肉量を反映して女性より男性で高値、甲状腺機能低下症で高値・亢進症で低値となる。骨格筋疾患(多発性筋炎など)で上昇するのはCK-MMで、脳由来はCK-BBである。●心筋梗塞マーカーの推移=早期(心筋トロポニン・H-FABP・CK-MB)→CK→LD(遅れて上昇し遷延する)●CKアイソザイム=CK-MM(骨格筋)・CK-MB(心筋)・CK-BB(脳・平滑筋)●CKに影響する因子=筋肉量(男>女)・甲状腺機能低下で上昇・激しい運動や筋疾患で上昇するほか、筋肉内注射後にも一過性に上昇するため解釈には病歴を考慮する。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。CKは不安定な酵素で、4℃で保存しても徐々に失活する。安定化のためSH基保護剤を添加するのが一般的である。
- ② 誤り。甲状腺機能亢進症ではCKはむしろ低値傾向を示す。CKが高値となるのは甲状腺機能低下症の方である。
- ③ 誤り。CKは筋肉量を反映するため、一般に女性よりも男性の方が高値を示す。女性が高値という記述は逆である。
- ④ 誤り。多発性筋炎は骨格筋疾患でCK-MM(骨格筋型)が上昇する。CK-BBは脳由来であり本疾患で上昇するものではない。
- ⑤ 正しい。急性心筋梗塞ではCKはLDよりも早く上昇する。LDは遅れて上昇し、ピークも遷延して長く持続する。
第58回 午前39(臨床化学)
酵素の分類の組合せで正しいのはどれか。
- ①CK — 水解酵素
- ②LD — 酸化還元酵素
- ③ALP — 酸化還元酵素
- ④アミラーゼ — 転移酵素
- ⑤コリンエステラーゼ — 転移酵素
正答: ②LD — 酸化還元酵素
ポイント
LD(乳酸脱水素酵素)は乳酸とピルビン酸の間で水素(電子)の授受を触媒する酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)に分類される。酵素はEC番号で7つの大分類に分けられ(出題当時は6分類。2018年にEC7輸送酵素が追加)、CK・アミラーゼ・コリンエステラーゼ・ALPはいずれもこれとは別の群に属する。CKはリン酸基を転移する転移酵素、アミラーゼ・ALP・コリンエステラーゼは結合を加水分解する加水分解酵素(水解酵素)である。●酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)=LD・G6PDなど水素・電子の授受を触媒する●転移酵素(トランスフェラーゼ)=CK・AST・ALT・γ-GTなど基を転移する●加水分解酵素(ヒドロラーゼ)=アミラーゼ・ALP・ACP・コリンエステラーゼ・リパーゼ・ペプチダーゼなど水を加えて結合を加水分解する反応を触媒する。なお同じ酵素でも触媒する反応の種類によって分類が決まる点に注意する。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。CKはクレアチンにリン酸基を転移する転移酵素であり、結合を加水分解する水解酵素には分類されない。
- ② 正しい。LDは乳酸とピルビン酸の間の水素(電子)の授受を触媒する酸化還元酵素に分類される酵素である。
- ③ 誤り。ALPはリン酸エステルを加水分解する加水分解酵素である。水素の授受を触媒する酸化還元酵素ではない。
- ④ 誤り。アミラーゼはデンプンを加水分解する加水分解酵素である。基を転移する転移酵素には分類されないため組合せが誤りである。
- ⑤ 誤り。コリンエステラーゼはエステル結合を加水分解する加水分解酵素である。基を転移する転移酵素ではない。
📋 まとめの表を見る:酵素の分類(EC番号)
CKはリン酸基を、AST・ALTはアミノ基を、γ-GTはγ-グルタミル基を転移するため、名称に「トランスフェラーゼ」を含まなくてもEC2(転移酵素)に分類される。同様に、-キナーゼ/-トランスフェラーゼの語尾はEC2、-エステラーゼ/-ホスファターゼの語尾はEC3、-デヒドロゲナーゼ/-オキシダーゼの語尾はEC1、-アルドラーゼの語尾はEC4に対応する。
第58回 午前40(臨床化学)
免疫抑制薬はどれか。2つ選べ。
- ①フェニトイン
- ②タクロリムス
- ③バンコマイシン
- ④シクロスポリン
- ⑤プロカインアミド
正答: ②タクロリムス・④シクロスポリン
ポイント
タクロリムスとシクロスポリンはいずれもカルシニューリンを阻害してT細胞のインターロイキン2産生を抑え、臓器移植後の拒絶反応抑制や自己免疫疾患の治療に用いられる免疫抑制薬である。いずれも有効血中濃度域が狭く副作用(腎障害など)もあるため、血中濃度モニタリング(TDM)の対象となる。フェニトインは抗てんかん薬、バンコマイシンはグリコペプチド系抗菌薬、プロカインアミドは抗不整脈薬で、これらもTDM対象ではあるが免疫抑制薬ではない。●免疫抑制薬(カルシニューリン阻害)=タクロリムス・シクロスポリン●その他の免疫抑制薬=ミコフェノール酸モフェチル・シロリムス・アザチオプリン・副腎皮質ステロイド●TDM対象の他系統=抗てんかん薬(フェニトイン)・抗菌薬(バンコマイシン)・抗不整脈薬(プロカインアミド)・ジゴキシンなど。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。フェニトインは抗てんかん薬であり、免疫抑制薬ではない。有効域が狭くTDMの対象とはなる薬剤である。
- ② 正しい。タクロリムスはカルシニューリンを阻害する免疫抑制薬で、臓器移植後の拒絶反応抑制などに用いられTDM対象となる。
- ③ 誤り。バンコマイシンはグリコペプチド系抗菌薬であり、免疫抑制薬ではない。腎毒性などからTDMの対象とはなる。
- ④ 正しい。シクロスポリンはカルシニューリンを阻害する免疫抑制薬で、移植後の拒絶反応抑制などに用いられTDM対象となる。
- ⑤ 誤り。プロカインアミドは抗不整脈薬であり、免疫抑制薬ではない。有効域が狭くTDMの対象とはなる薬剤である。
第58回 午前41(臨床化学)
インスリンで正しいのはどれか。
- ①核内受容体に結合する。
- ②ステロイドホルモンに分類される。
- ③消化管の内分泌細胞から分泌される。
- ④分解を受けてC-ペプチドが産生される。
- ⑤筋肉におけるグルコースの取り込みを促進する。
正答: ⑤筋肉におけるグルコースの取り込みを促進する。
ポイント
インスリンは膵ランゲルハンス島B(β)細胞から分泌されるペプチドホルモンで、細胞膜上のインスリン受容体(受容体型チロシンキナーゼ)に結合し、骨格筋や脂肪組織でグルコース輸送担体GLUT4の細胞膜移行を促してグルコースの取り込みを促進し、血糖を低下させる。前駆体プロインスリンが切断される際にインスリンとC-ペプチドが等モルで生成されるため、C-ペプチドは内因性インスリン分泌の指標となる。●インスリンの作用=筋・脂肪でのグルコース取り込み促進、肝での糖新生抑制・グリコーゲン合成促進、脂肪・蛋白合成の促進●受容体=細胞膜の受容体型チロシンキナーゼ(核内受容体はステロイドや甲状腺ホルモンが結合する)●関連指標=C-ペプチドはプロインスリン由来で内因性のインスリン分泌能を反映するため、インスリン製剤使用中でも自己の分泌能を評価できる利点がある。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。インスリンは細胞膜上のインスリン受容体に結合する。核内受容体に結合するのはステロイドや甲状腺ホルモンである。
- ② 誤り。インスリンはアミノ酸が連なるペプチドホルモンであり、コレステロール由来のステロイドホルモンには分類されない。
- ③ 誤り。インスリンは膵ランゲルハンス島のB(β)細胞から分泌される。消化管の内分泌細胞から分泌されるわけではない。
- ④ 誤り。C-ペプチドはインスリンの分解で生じるのではなく、前駆体プロインスリンの切断時にインスリンと等モルで産生される。
- ⑤ 正しい。インスリンは筋肉や脂肪組織でGLUT4を介してグルコースの取り込みを促進し、血糖を低下させる作用をもつ。
第58回 午前42(臨床化学)
低ナトリウム血症をきたすのはどれか。2つ選べ。
- ①尿崩症
- ②Addison病
- ③Cushing症候群
- ④原発性アルドステロン症
- ⑤抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
正答: ②Addison病・⑤抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
ポイント
Addison病(原発性副腎皮質機能低下症)はアルドステロン分泌の低下により腎でのナトリウム再吸収が減ってナトリウムを喪失し、低ナトリウム血症と高カリウム血症をきたす。SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)はADHの過剰分泌により水が過剰に再吸収され、希釈性の低ナトリウム血症をきたす。尿崩症はADHの不足・作用不全で水利尿が進み高ナトリウム血症傾向、Cushing症候群・原発性アルドステロン症はコルチゾールやアルドステロンの過剰でナトリウムが貯留し高ナトリウム傾向となる。●低ナトリウム血症をきたす=Addison病(アルドステロン低下でNa喪失)・SIADH(水貯留による希釈性)●高ナトリウム血症傾向=尿崩症(水喪失)・Cushing症候群・原発性アルドステロン症(鉱質コルチコイド作用過剰でNa貯留)●整理=Na喪失か水過剰で低Na、水喪失かNa貯留で高Naとなる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。尿崩症はADHの不足や作用不全により水利尿が進んで水を失うため、高ナトリウム血症の傾向となる疾患である。
- ② 正しい。Addison病はアルドステロンの低下によりナトリウムを喪失するため、低ナトリウム血症(と高カリウム血症)をきたす。
- ③ 誤り。Cushing症候群はコルチゾール過剰の鉱質コルチコイド作用などによりナトリウムが貯留し、高ナトリウム傾向となる。
- ④ 誤り。原発性アルドステロン症はアルドステロン過剰でナトリウム再吸収が亢進するため、高ナトリウム傾向・低カリウム血症となる。
- ⑤ 正しい。SIADHはADHの過剰分泌により水が過剰に再吸収されるため、希釈性の低ナトリウム血症をきたす病態である。
第58回 午前43(臨床化学)
ICG残存率の5分、10分、15分値をプロットした図を示す。ICG消失率として最も近いのはどれか。ただし、消失率は0.693を半減時間(分)で除した値とする。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA043.bfebc6c167.jpg

- ①0.051
- ②0.180
- ③0.217
- ④0.395
- ⑤0.803
正答: ②0.180
ポイント
ICG(インドシアニングリーン)試験は肝の色素排泄能を評価する検査で、静注後の血中濃度(残存率)が指数関数的に減衰する。残存率の経時プロットから残存率が半分になる半減時間を求め、消失率K=0.693÷半減時間(分)で算出する。本問では5・10・15分値のプロットから読み取った半減時間が約3.85分前後となり、0.693÷3.85≒0.18が消失率に最も近い値となる。健常者の消失率Kは概ね0.168〜0.206(/分)で、肝障害があると排泄能の低下により値が小さくなる。●ICG試験の指標=消失率K=0.693/半減時間(分)、ほかに15分停滞率(R15)がある●基準=Kは健常で約0.18前後、R15は10%以下が目安となる●意義=肝予備能(肝切除の適応評価など)や肝血流の評価に用いられ、消失率の低下や停滞率の上昇は肝障害や肝血流低下を反映する。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。0.051は半減時間が約13.6分に相当し、本プロットの傾きより緩やかすぎる。重度肝障害域の値で本問の読み取りには合わない。
- ② 正しい。プロットから半減時間が約3.85分と読み取れ、0.693÷3.85≒0.18となるため消失率に最も近い。健常域の値である。
- ③ 誤り。0.217は半減時間が約3.2分に相当し、本プロットの読み取り値より速い消失を表すため、最も近い値とはいえない。
- ④ 誤り。0.395は半減時間が約1.75分と極端に速い消失に相当し、生理的なICG消失より速すぎるため該当しない。
- ⑤ 誤り。0.803は半減時間が約0.86分と非現実的に速い消失に相当し、ICGの消失率としてはあり得ない値である。
第58回 午前44(臨床化学)
遺伝子検査とその目的の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①RT-PCR法 — DNAの定量
- ②RFLP法 — 遺伝子多型の解析
- ③サザンブロット法 — mRNAの解析
- ④ノーザンブロット法 — DNAの解析
- ⑤in situハイブリダイゼーション法 — 組織での遺伝子発現の局在
正答: ②RFLP法 — 遺伝子多型の解析・⑤in situハイブリダイゼーション法 — 組織での遺伝子発現の局在
ポイント
RFLP(制限酵素断片長多型)法は、制限酵素の切断部位における塩基配列の違いによって生じる断片長の差を検出する手法で、遺伝子多型の解析に用いられる。in situハイブリダイゼーション法は標識プローブを組織切片や細胞上で標的核酸とハイブリダイズさせ、組織内の標的DNAやRNAの局在を可視化する。遺伝子発現を調べる場合は主にmRNAを標的とする。RT-PCRはmRNAを逆転写して増幅する手法(RNAの検出・定量)、サザンブロットはDNAの解析、ノーザンブロットはRNA(mRNA)の解析で、これらの選択肢の組合せはそれぞれ逆になっている。●ブロット法の対応=サザン=DNA、ノーザン=RNA、ウェスタン=蛋白を解析する●増幅・定量=PCR=DNA増幅、RT-PCR=mRNAを逆転写し検出・定量する●局在解析=in situハイブリダイゼーション=組織での核酸の局在、免疫組織化学=蛋白の局在を可視化する。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。RT-PCR法はmRNAを逆転写して増幅・検出する手法で扱うのはRNAである。DNAの定量という組合せは正しくない。
- ② 正しい。RFLP法は制限酵素切断による断片長の差を検出する手法で、遺伝子多型の解析に用いられるため組合せは正しい。
- ③ 誤り。サザンブロット法はDNAの解析に用いる手法である。mRNAの解析に用いるのはノーザンブロット法であり組合せが逆である。
- ④ 誤り。ノーザンブロット法はRNA(mRNA)の解析に用いる手法である。DNAの解析に用いるのはサザンブロット法であり組合せが逆である。
- ⑤ 正しい。in situハイブリダイゼーション法は標識プローブにより組織での遺伝子発現の局在を可視化する手法で組合せは正しい。
📋 まとめの表を見る:遺伝子解析法のまとめ
RFLP法は教科書の該当ページを特定できなかったため、確立した分子生物学の知識として記載した(他の行はComplete+ MT Vol.3のコピー p.389の要点表で確認済み)。
第58回 午前45(病理組織細胞学)
H-E染色標本を別に示す。この臓器はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA045.0571adb164.jpg

正答: ④大腸
ポイント
別冊のH-E染色標本は、表面を吸収上皮で覆われ多数の杯細胞を含む腺管(陰窩・腸腺)が密に直線状に並び、絨毛をもたず粘膜筋板・筋層を伴う構造を示しており、大腸の組織像に合致する。大腸粘膜は陰窩が試験管を並べたように規則正しく配列し、杯細胞が豊富なのが特徴で、絨毛をもつ小腸とは明確に区別される。なお大腸に絨毛はないが、吸収上皮細胞の表面には短い微絨毛(刷子縁)が存在する。●消化管の組織学的特徴=食道は重層扁平上皮、胃は腺窩と胃腺(壁細胞・主細胞)、小腸は絨毛と刷子縁、大腸は絨毛がなく杯細胞豊富で直線状の陰窩をもつ●大腸の鑑別点=杯細胞が多く陰窩が整然と並び、絨毛を欠く●その他=尿管は移行上皮(尿路上皮)、気管は多列線毛上皮で、いずれも消化管の腺管とは内腔を覆う上皮が異なるため、内腔を覆う上皮の種類・腺管の配列・絨毛や杯細胞の有無を手がかりに臓器を判別することができる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。気管は多列線毛上皮で覆われ軟骨を伴う器官である。本標本の杯細胞が豊富な腺管構造とは内腔上皮が異なる。
- ② 誤り。食道は重層扁平上皮で覆われる器官である。本標本の腺管や杯細胞を含む腺上皮の像とは構造が合致しない。
- ③ 誤り。胃は腺窩と胃腺(壁細胞・主細胞)からなる。本標本の直線状の陰窩や杯細胞豊富な像とは構造が異なる。
- ④ 正しい。杯細胞が豊富で絨毛をもたず、陰窩(腸腺)が整然と直線状に並ぶ像は大腸の組織像に合致している。
- ⑤ 誤り。尿管は移行上皮(尿路上皮)で覆われる尿路の器官である。消化管の腺管や杯細胞を含む本標本とは異なる。
📋 まとめの表を見る:臓器・部位と被覆上皮の対応
内皮は血管・リンパ管、中皮は体腔(漿膜)の表面を被覆する単層扁平上皮で、局在により呼び分ける。肺胞の内面は中皮ではなく肺胞上皮(Ⅰ型・Ⅱ型肺胞上皮細胞)が覆う。
第58回 午前46(病理組織細胞学)
横紋筋がみられるのはどれか。
正答: ①心臓
ポイント
横紋筋は筋原線維のアクチンとミオシンが規則的に配列して光学顕微鏡で横紋(縞模様)を示す筋で、骨格筋と心筋がこれに属する。心臓の心筋は横紋を有する不随意筋で、介在板(境界板)で細胞が連結し電気的に同期して収縮する点が特徴で、自動能をもつ。胃・胆管・膀胱・子宮はいずれも管腔や内臓の壁を構成する平滑筋からなり、横紋を示さない不随意筋である。●横紋筋=骨格筋(随意筋・多核)・心筋(不随意筋・単〜二核・介在板で連結し自動能をもつ)●平滑筋(横紋なし・不随意)=胃腸・胆管・膀胱・尿管・子宮・血管壁など内臓や管腔の壁を構成する●整理=横紋の有無で横紋筋と平滑筋を区別し、随意・不随意の別とは必ずしも一致しない(骨格筋は横紋筋かつ随意筋、心筋は横紋筋だが不随意筋で自動能をもち、平滑筋は横紋をもたない不随意筋である)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。心臓の心筋は横紋を有する不随意筋で、介在板で細胞が連結し電気的に同期して収縮する自動能をもつ筋である。
- ② 誤り。胃の壁を構成するのは平滑筋であり横紋を示さない。蠕動運動を行う不随意筋で、横紋筋には分類されない。
- ③ 誤り。胆管の壁は平滑筋で構成されており横紋はみられない。胆汁の輸送に関わる不随意筋で、横紋筋ではない。
- ④ 誤り。膀胱の排尿筋(排尿筋)は平滑筋からなり横紋を示さない。蓄尿と排尿を担う不随意筋で、横紋筋ではない。
- ⑤ 誤り。子宮の筋層(子宮筋)は平滑筋からなり横紋を示さない。分娩時に収縮する不随意筋で、横紋筋ではない。
第58回 午前47(病理組織細胞学)
臓器の構造・機能について正しいのはどれか。
- ①食道は気管の腹側に位置する。
- ②胸腺は新生児よりも成人の方が大きい。
- ③副腎は内分泌部と外分泌部とを有する。
- ④血液酸素分圧は肺動脈よりも肺静脈の方が低い。
- ⑤肝臓の全血流量の半分以上は門脈から供給される。
正答: ⑤肝臓の全血流量の半分以上は門脈から供給される。
ポイント
肝臓には肝動脈と門脈の二重の血流があり、全血流量の約2/3〜3/4を門脈が、残りを肝動脈が供給する。門脈は消化管・脾からの栄養に富む静脈血を運び、肝動脈は酸素に富む動脈血を供給する。したがって肝臓の全血流量の半分以上は門脈由来である。食道は気管の背側(脊柱側)に位置し、胸腺は思春期以後に退縮して新生児・小児で相対的に大きく、副腎は内分泌器官で外分泌部をもたず、肺静脈血はガス交換後で肺動脈血より酸素分圧が高い。●肝の血流=門脈(約2/3以上で栄養に富む静脈血)+肝動脈(酸素を供給する動脈血)●位置関係=食道は気管の背側、心臓はやや左寄りに位置する●その他の要点=胸腺は加齢で退縮し脂肪に置き換わる、副腎は皮質・髄質ともに内分泌器官のみで外分泌部をもたない、酸素分圧はガス交換後の肺静脈血が肺動脈血より高くなる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。食道は気管の背側(脊柱側)に位置する器官である。気管の腹側に位置するという記述は前後関係が逆である。
- ② 誤り。胸腺は思春期以後に退縮していくため、成人よりも新生児・小児で相対的に大きい。成人で大きいという記述は逆である。
- ③ 誤り。副腎は皮質・髄質ともに内分泌部であり、外分泌部はもたない。内分泌部と外分泌部を有するという記述は誤りである。
- ④ 誤り。肺静脈はガス交換を終えた血液を運ぶため肺動脈より酸素分圧は高い。肺静脈で低いという記述は逆である。
- ⑤ 正しい。肝臓の全血流量の約2/3以上は栄養に富む門脈から供給されており、肝動脈分を上回り半分以上を占めている。
第58回 午前48(病理組織細胞学)
循環障害でないのはどれか。
正答: ①化生
ポイント
化生は分化した細胞・組織が別の系統の成熟細胞・組織へ可逆的に置き換わる適応性の変化(例:気管支の扁平上皮化生、Barrett食道における腸上皮化生)であり、循環障害ではなく細胞・組織の適応の範疇に分類される。虚血・梗塞・塞栓・浮腫はいずれも血流や体液の循環の異常に基づく循環障害であり、化生のみが性質を異にする。●循環障害=充血・うっ血・虚血・梗塞・血栓・塞栓・出血・浮腫・ショック・側副循環など血流や体液動態の異常●細胞・組織の適応性変化=肥大・過形成・萎縮・化生(環境や刺激の変化に対する細胞・組織の可逆的な反応)●関連=化生は刺激が持続すると異形成や腫瘍化につながりうるが、本問では循環障害でないものとして区別される変化であり、肥大・過形成・萎縮と並ぶ細胞・組織の適応性変化のひとつに分類される。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。化生は分化した細胞が別系統の成熟細胞へ可逆的に置き換わる適応性の変化であり、循環障害には分類されない。
- ② 誤り。虚血は組織への血流が減少・途絶する病態であり、血流の異常に基づく循環障害に分類される変化である。
- ③ 誤り。梗塞は血流の途絶により組織が壊死に陥る病態であり、循環障害に分類される。化生とは性質が異なる。
- ④ 誤り。塞栓は血流に運ばれた栓子が血管を閉塞する病態であり、循環障害に分類される。化生とは性質が異なる。
- ⑤ 誤り。浮腫は組織間隙への過剰な体液貯留であり、体液の循環(動態)の障害として循環障害に分類される変化である。
第58回 午前49(病理組織細胞学)
胃癌で正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①スキルス癌(硬癌)は予後が良い。
- ②早期癌にはBorrmann分類を用いる。
- ③胃ポリープは前癌病変であることが多い。
- ④卵巣への転移巣をKruckenberg腫瘍という。
- ⑤早期癌の定義ではリンパ節転移の有無を問わない。
正答: ④卵巣への転移巣をKruckenberg腫瘍という。・⑤早期癌の定義ではリンパ節転移の有無を問わない。
ポイント
胃癌の早期癌は癌の深達度が粘膜下層までにとどまるものと定義され、リンパ節転移の有無は問わない(深達度のみで定義する)。卵巣への転移巣はKruckenberg腫瘍とよばれ、印環細胞癌などが両側卵巣に転移したものを指す。スキルス癌(硬癌)はびまん性に浸潤し進行が速いため予後不良、Borrmann分類は進行癌の肉眼分類で早期癌には用いず、胃ポリープ(多くは過形成性や胃底腺ポリープ)は一般に前癌病変ではない。●胃癌の定義・分類=早期癌=深達度が粘膜下層まで(リンパ節転移を問わない)、進行癌の肉眼分類=Borrmann分類●転移=Kruckenberg腫瘍(両側卵巣への転移)・Virchow転移(左鎖骨上窩リンパ節)●予後=スキルス(硬癌)はびまん浸潤で予後不良となり、胃壁が硬く肥厚する革袋状の所見を呈することがある。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。スキルス癌(硬癌)はびまん性に浸潤し進行が速く、診断時に進行していることが多いため予後は不良である。
- ② 誤り。Borrmann分類は進行癌の肉眼分類である。早期癌には別の肉眼分類(0型の亜分類)を用いるため組合せが誤りである。
- ③ 誤り。胃ポリープの多くは過形成性ポリープや胃底腺ポリープで、一般に前癌病変ではない。前癌病変が多いという記述は誤りである。
- ④ 正しい。印環細胞癌などの胃癌が両側卵巣に転移した腫瘍をKruckenberg腫瘍といい、播種性・血行性転移として知られる。
- ⑤ 正しい。胃癌の早期癌は深達度が粘膜下層までと定義され、リンパ節転移の有無は問わない(深達度のみで定義される)。
第58回 午前50(病理組織細胞学)
固定液と組成の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①ブアン液 — エタノール
- ②カルノア液 — メタノール
- ③PLP固定液 — パラホルムアルデヒド
- ④等張ホルマリン — 炭酸カルシウム
- ⑤中性緩衝ホルマリン — 第一リン酸ナトリウム
正答: ③PLP固定液 — パラホルムアルデヒド・⑤中性緩衝ホルマリン — 第一リン酸ナトリウム
ポイント
PLP固定液はパラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)にリジンと過ヨウ素酸ナトリウムを加えた固定液で、糖鎖や抗原性の保持に優れるため免疫組織化学や電子顕微鏡に用いられる。中性緩衝ホルマリンはホルムアルデヒドを第一・第二リン酸ナトリウムのリン酸緩衝液でpH約7に調整したもので、組織を中性域で固定し色素や抗原の保持に優れる汎用の固定液である。ブアン液はピクリン酸・ホルマリン・酢酸からなりエタノールは含まず、カルノア液はエタノール・クロロホルム・酢酸からなり主成分はメタノールではない。●アルデヒド系固定=中性緩衝ホルマリン(リン酸緩衝)・PLP(パラホルムアルデヒド+リジン+過ヨウ素酸)●ピクリン酸系=ブアン液(ピクリン酸+ホルマリン+酢酸)●アルコール系=カルノア液(エタノール+クロロホルム+酢酸)・純アルコール固定など。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。ブアン液はピクリン酸・ホルマリン・酢酸からなる固定液であり、エタノールは含まないため組成の組合せが正しくない。
- ② 誤り。カルノア液はエタノール・クロロホルム・酢酸からなる固定液である。主成分はメタノールではなくエタノールである。
- ③ 正しい。PLP固定液はパラホルムアルデヒドにリジンと過ヨウ素酸ナトリウムを加えた固定液であり、組成の組合せは正しい。
- ④ 誤り。等張ホルマリンはホルマリンを生理食塩液などで等張に調整したものであり、炭酸カルシウムを組成とはしない。
- ⑤ 正しい。中性緩衝ホルマリンはホルムアルデヒドを第一・第二リン酸ナトリウムで緩衝し中性に調整した固定液であり組合せは正しい。
📋 まとめの表を見る:主な固定液の種類と対象