第58回(2012) 臨床検査技師国家試験 午前1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版

第58回 午前1(臨床検査総論)

採血に伴う血管迷走神経反射で正しいのはどれか。

正答: ③血圧が低下する。

ポイント
血管迷走神経反射は、採血の痛みや恐怖などの精神的・身体的ストレスが引き金となり、迷走神経(副交感神経)が過度に緊張して起こる反射性の循環反応である。副交感神経優位となるため心拍は抑制されて徐脈となり、末梢血管が拡張して血圧が低下する。その結果として脳への血流が一過性に減少し、顔面蒼白・冷汗・悪心・あくび・気分不快が生じ、重症では一過性に意識を失う失神(血管迷走神経性失神)に至る。対応は危険を察知した時点で直ちに採血を中止し、仰臥位として下肢を挙上し脳血流を確保することが基本で、頭を高くする体位は禁忌である。多くは安静で速やかに回復するが、転倒による外傷を防ぐ配慮も要する。●発生機序=痛み・不安・空腹・緊張による迷走神経反射、起立性低血圧とは別だが症状は類似…●臨床所見=徐脈・低血圧・顔面蒼白・冷汗・悪心・失神…●予防と対応=臥位での採血・水分摂取・下肢挙上、回復まで安静観察…

選択肢ごとの解説

第58回 午前2(臨床検査総論)

毒物及び劇物取締法で劇物に指定されているのはどれか。2つ選べ。

正答: ②塩酸・⑤水酸化ナトリウム

ポイント
毒物及び劇物取締法は、毒性の強さに応じて化学物質を「毒物」「劇物」「特定毒物」の三段階に分類し、製造・販売・取扱い・保管・廃棄を規制する法律である。劇物は毒物よりは毒性が低いが人体に有害な物質で、塩酸(10%を超えるもの)や水酸化ナトリウム(5%を超えるもの)などの腐食性の強い酸・アルカリが代表である。一方、水銀やシアン化合物(シアン化ナトリウムなど)、アジ化ナトリウムは毒性が強く毒物に分類される。検査室で扱う試薬の取扱い・保管・廃棄はこの区分に従い、容器表示や施錠管理を徹底する。●毒物の例=水銀・シアン化合物・ヒ素化合物・セレン・アジ化ナトリウム・四アルキル鉛(特定毒物)…●劇物の例=塩酸・硫酸・硝酸・水酸化ナトリウム・水酸化カリウム・アンモニア・ホルムアルデヒド・過酸化水素・フェノール…●管理上の要点=施錠保管・盗難紛失防止・容器表示(『医薬用外毒物/劇物』)…

選択肢ごとの解説

第58回 午前3(臨床検査総論)

細菌培養を目的に採取された検体と保存温度の組合せで正しいのはどれか。

正答: ②喀痰 — 4℃

ポイント
細菌培養検体は、目的菌の生存性と雑菌の増殖抑制を両立させる温度で保存する。喀痰や尿などは常在菌や雑菌が混在して時間とともに増殖し、本来の起炎菌の判定を妨げるため、原則4℃冷蔵で速やかに搬送する。一方、低温に弱い菌(淋菌・髄膜炎菌・肺炎球菌・赤痢菌など)を含む検体は冷蔵すると菌が死滅し培養陰性化を招くため、髄液・尿道分泌物・腸管病原菌を含む便などは室温(または保温・保存培地)で速やかに提出する。いずれの検体も採取後できるだけ早く処理し、搬送に時間を要する場合のみ規定温度で保存することが基本である。●冷蔵(4℃)保存=喀痰・中間尿・血液以外の一般検体で迅速処理できない場合…●室温・保温保存=髄液・尿道分泌物(淋菌)・血液培養・嫌気性菌検体…●低温に弱い菌=淋菌・髄膜炎菌・肺炎球菌・インフルエンザ菌・赤痢菌…

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:細菌培養検体の採取部位と保存温度

検体保存温度・取扱い
喀痰・中間尿など一般検体4℃冷蔵保存(速やかに処理できない場合)
髄液室温保存(低温に弱い菌が死滅するため)
尿道分泌物(淋菌検査)室温保存・保温搬送
血液培養・便(赤痢菌等腸管病原菌)室温または適切な保存培地で速やかに提出
淋菌・髄膜炎菌・肺炎球菌など低温に弱い菌を含む検体は冷蔵すると菌が死滅し培養陰性化するため室温搬送が原則となる。この表はComplete+ MT内で該当箇所を特定できなかったため、確立された臨床微生物学の一般知識に基づき作成。

第58回 午前4(臨床検査総論)

トレーサビリティ連鎖と校正の階層段階について誤っているのはどれか。

正答: ⑤不確かさの大きさは日常検査法が最も小さい。

ポイント
計量トレーサビリティは、測定結果を国際単位系(SI)など上位の標準まで切れ目のない校正の連鎖でつなぎ、施設や測定法が異なっても結果を比較可能にする概念である。最上位にSI単位の定義があり、一次基準測定操作法と一次標準物質、続いて二次基準測定操作法と二次校正物質、製造業者の選定測定操作法・製品校正物質、そして実際の患者検体を測る日常検査法(最下位)へと値が順に伝達される。連鎖の各段階で校正に伴う不確かさが累積して付加されていくため、上位ほど不確かさは小さく保たれ、最下位の日常検査法で不確かさは最大となる。●連鎖の上位から=SI単位→一次基準測定操作法・一次標準物質→二次基準測定操作法・二次校正物質…●下位=製造業者選定法・製品校正物質→日常検査法…●不確かさ=連鎖を下るほど累積して増大、最下位(日常法)で最大…

選択肢ごとの解説

第58回 午前5(臨床検査総論)

60歳の女性の方が20歳の女性よりも高値を示すのはどれか。

正答: ③卵胞刺激ホルモン(FSH)

ポイント
60歳女性は閉経後であり、卵巣機能の低下によって卵巣由来のエストロゲンが減少する。エストロゲンによる視床下部・下垂体への負のフィードバックが解除されるため、下垂体前葉からの性腺刺激ホルモン分泌が抑制されずに亢進し、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が著明に上昇する。一方20歳女性は性成熟期で卵巣機能が保たれており、エストロゲンによるフィードバックが働くためFSHは正常範囲にとどまる。プロラクチンは妊娠・授乳期や下垂体腺腫で上昇するが加齢では特に高値とならず、TSH・ACTH・カルシトニンも加齢のみで著しく上昇するホルモンではない。●閉経後に上昇=FSH・LH(フィードバック解除による)…●FSHの臨床的意義=閉経の判定・卵巣機能不全・性腺機能低下症の評価…●加齢で大きく変動しない=TSH・ACTH・PRL・カルシトニン…

選択肢ごとの解説

第58回 午前6(臨床検査総論)

尿沈渣のSternheimer染色標本を別に示す。認められるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA006.ae09959e55.jpg
第58回 午前6 の図

正答: ④赤血球円柱

ポイント
尿沈渣のSternheimer染色(S染色)は、尿中有形成分を青〜紫紅色に染め分けて細胞や円柱の鑑別を容易にする超生体染色法である。赤血球円柱は、円柱基質(Tamm-Horsfall蛋白を主成分とする硝子様基質)の中に赤血球が封入されたもので、糸球体からの出血した赤血球が尿細管内に流入して固まり形成される。このため糸球体腎炎やネフローゼ症候群など糸球体性の血尿の確実な証拠となり、膀胱や尿路からの出血(非糸球体性血尿)との鑑別に有用である。そもそも円柱は尿細管腔で形成されるため、その出現自体が腎実質由来であることを意味する。●円柱の種類=硝子円柱(基質のみ)・顆粒円柱・上皮円柱・赤血球円柱・白血球円柱・脂肪円柱・蝋様円柱…●赤血球円柱の意義=糸球体腎炎・IgA腎症・急速進行性糸球体腎炎など糸球体性血尿…●白血球円柱の意義=腎盂腎炎・間質性腎炎など上行性・実質性の感染や炎症…

選択肢ごとの解説

第58回 午前7(臨床検査総論)

肺炎球菌による髄膜炎の髄液検査所見でみられるのはどれか。

正答: ③糖 20 mg/dl

ポイント
肺炎球菌などの細菌性(化膿性)髄膜炎では、髄膜の強い炎症により髄液所見が大きく変化する。髄液圧は上昇し(正常は約70〜180mmH2O)、外観は多核球の増加により混濁(膿性)となる。細菌が髄液中の糖を消費し、また浸潤した炎症細胞の解糖が亢進するため髄液糖は著明に低下し、髄液糖が血糖の40%以下となるのが特徴で、本問の20mg/dlはこれに合致する。血液脳関門の破綻と滲出により蛋白は増加し、細胞は多核白血球(好中球)が優位となる。これらはウイルス性髄膜炎(糖は正常、リンパ球優位、蛋白軽度上昇)との重要な鑑別点である。●細菌性髄膜炎=髄液圧上昇・混濁・多核球優位・糖低下・蛋白増加…●ウイルス性髄膜炎=リンパ球優位・糖正常・蛋白軽度増加・髄液圧正常〜軽度上昇…●結核性・真菌性髄膜炎=リンパ球優位・糖低下・蛋白著明増加・クロール低下…

選択肢ごとの解説

第58回 午前8(臨床検査総論)

ヒトに経皮感染するのはどれか。

正答: ②日本住血吸虫

ポイント
日本住血吸虫は、水中を遊泳するセルカリア(幼虫)がヒトの皮膚から直接侵入して感染する経皮感染の代表的な寄生虫である。中間宿主であるミヤイリガイ(宮入貝)の生息する水域で、ヒトが農作業などで水に触れるとセルカリアが経皮的に侵入し、血流を経て門脈・腸間膜静脈に達して成虫となり産卵する。虫卵が肝や腸壁に沈着して炎症と線維化を起こし、肝硬変・門脈圧亢進・腸管病変をもたらす。これに対し、横川吸虫・肝吸虫・肺吸虫・肝蛭などの多くの吸虫は、中間宿主に被嚢したメタセルカリアを摂取する経口感染である。●経皮感染=日本住血吸虫(セルカリア)・鉤虫(フィラリア型幼虫)・糞線虫…●経口感染(魚介・植物由来)=横川吸虫(アユ)・肝吸虫(コイ科)・肺吸虫(カニ)・肝蛭(水生植物)…●感染経路の確認=中間宿主と侵入門戸(皮膚・経口)を結びつけて理解する…

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:寄生虫・原虫の感染経路の分類

感染経路代表的な寄生虫
経皮感染糞線虫、日本住血吸虫
経胎盤感染トキソプラズマ

第58回 午前9(臨床検査総論)

心窩部の激痛を訴える患者の上部消化管内視鏡検査で虫体を確認した。虫体の写真を別に示す。この寄生虫はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA009.fd94204455.jpg
第58回 午前9 の図

正答: ③アニサキス

ポイント
アニサキスは、サバ・アジ・イカ・サンマなど海産魚介類に寄生するアニサキス幼虫が、生食により胃や腸の粘膜に刺入して急性アニサキス症を起こす線虫である。ヒトは固有宿主ではないため幼虫は成虫になれず、胃壁・腸壁に刺入して局所のアレルギー性炎症と浮腫を起こす。摂食後数時間で心窩部の激痛・悪心・嘔吐をきたし、上部消化管内視鏡では白色糸状の虫体が胃粘膜に刺入し周囲が発赤・浮腫している像が確認される。胃アニサキス症は診断・治療を兼ねて内視鏡的に虫体を摘出するのが原則で、これにより症状は速やかに軽快する。●形態的特徴=白色〜半透明の糸状、長さ約2〜3cm、らせん状に丸まることがある…●臨床像=生食後数時間の心窩部激痛・悪心・嘔吐、蕁麻疹などアレルギー反応を伴うことも…●原因魚介=サバ・アジ・イワシ・サンマ・イカなど、内視鏡的摘出が治療…

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な寄生虫と中間宿主・終宿主

寄生虫第一中間宿主第二中間宿主(ヒトの位置づけ)終宿主
肝吸虫マメタニシコイ科淡水魚(フナ・モツゴ等)ヒト・イヌ
横川吸虫カワニナアユ等の淡水魚ヒト
肝蛭ヒメモノアラガイ第二中間宿主なし。メタセルカリアが水草などに付着ヒト・ウシ等
宮崎肺吸虫ホラアナミジンニナサワガニヒト
Westerman肺吸虫カワニナサワガニ・モクズガニヒト
日本住血吸虫ミヤイリガイ(中間宿主はこれのみ)—ヒト
日本海裂頭条虫ケンミジンコサケ・マスヒト
無鉤条虫ウシ—ヒト
有鉤条虫ブタ—ヒト
多包条虫(エキノコックス)野ネズミ(エゾヤチネズミ等)(ヒトも中間宿主になりうる)キツネ・イヌ
単包条虫ヒツジ(ヒトも中間宿主になりうる)イヌ
アニサキスオキアミサバ・イカ(ヒトは非固有宿主=幼虫移行のみ)イルカ・クジラ
広東住血線虫アフリカマイマイ・ナメクジ第二中間宿主なし。カエル・エビなどは待機宿主(ヒトは非固有宿主)ネズミ
有棘顎口虫ケンミジンコドジョウなどの淡水魚・カエルなどの両生類(ヒトは非固有宿主)イヌ
Manson裂頭条虫ケンミジンコヘビ・カエル(ヒトは非固有宿主=待機宿主)イヌ・ネコ
マラリア原虫—ヒト(中間宿主)蚊(ハマダラカ)
トキソプラズマ—ヒト・ネズミ(中間宿主)ネコ
アニサキス・広東住血線虫・顎口虫・Manson裂頭条虫はヒトが本来の宿主でないため幼虫のまま体内を移行し(幼虫移行症)、皮膚爬行症や好酸球性髄膜炎などを起こす。

第58回 午前10(臨床検査総論)

バンクロフト糸状虫のミクロフィラリアを検出するための採血時間帯として適切なのはどれか。

正答: ⑤22時〜1時

ポイント
バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)は、成虫がリンパ系に寄生してリンパ管炎・リンパ浮腫・象皮病・陰嚢水腫を起こす糸状虫である。雌成虫が産んだミクロフィラリアは、媒介蚊が吸血する夜間に末梢血中へ出現し日中は肺などの深部血管に潜む、いわゆる夜間定期出現性を示す。これは媒介蚊(イエカ属など)が夜間に吸血する習性に同調して感染環を効率化する現象であり、ミクロフィラリアの検出を目的とする採血は夜間、おおむね22時〜翌2時頃に行うのが適切である。日中採血では陰性となりうるため、採血時間帯の選択が検出率を左右する。●夜間定期出現性=バンクロフト糸状虫・マレー糸状虫、夜間採血で末梢血検出…●検査法=夜間採血の塗抹・集虫法(メンブランフィルター法)でミクロフィラリア検出…●臨床像=リンパ管炎・リンパ浮腫・象皮病・陰嚢水腫…

選択肢ごとの解説

第58回 午前11(臨床検査医学総論)

一次救命処置はどれか。

正答: ②胸骨圧迫

ポイント
一次救命処置(BLS)は、特別な器具や薬剤を用いずに発見者が誰でも実施できる救命の初期対応で、心停止傷病者の救命と社会復帰、脳の不可逆的障害の防止を目的とする。中核は胸骨圧迫による心臓マッサージで、胸の中央を強く(約5cm)・速く(100〜120回/分)・絶え間なく圧迫し、可能なら人工呼吸とAED(自動体外式除細動器)による電気ショックを組み合わせる。これに対し、昇圧薬などの薬剤投与・静脈路確保・気管挿管・心電図モニタリングは、医療従事者が器具・薬剤を用いて行う二次救命処置(ALS)に分類される。●一次救命処置(BLS)=胸骨圧迫・人工呼吸・AEDによる除細動・気道確保(用手)…●二次救命処置(ALS)=静脈路確保・昇圧薬や抗不整脈薬投与・気管挿管・心電図モニタリング…●BLSの要点=反応確認→応援要請→胸骨圧迫開始→AED装着…

選択肢ごとの解説

第58回 午前12(臨床検査医学総論)

下垂体後葉から分泌されるのはどれか。

正答: ②抗利尿ホルモン(ADH)

ポイント
下垂体後葉は、視床下部の神経細胞(視索上核・室傍核)で産生されたホルモンが軸索を通って運ばれ、神経終末で貯蔵・分泌される神経下垂体である。後葉そのものはホルモンを合成せず、放出の場として働く点が前葉と異なる。後葉から分泌されるのは抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)とオキシトシンの2つで、ADHは腎集合管での水再吸収を促進して尿量を調節し血漿浸透圧を一定に保ち、オキシトシンは子宮収縮や射乳を促す。一方、成長ホルモン・FSH・TSH・ACTH・プロラクチン・LHはいずれも下垂体前葉(腺下垂体)から分泌される。●下垂体後葉ホルモン=抗利尿ホルモン(ADH)・オキシトシン…●下垂体前葉ホルモン=GH・PRL・ACTH・TSH・FSH・LH…●ADH異常=分泌過剰でSIADH(低Na血症)、欠乏で尿崩症(多尿・低比重尿)…

選択肢ごとの解説

第58回 午前13(臨床検査医学総論)

バナナの摂取で上昇するのはどれか。

正答: ④バニリルマンデル酸(VMA)

ポイント
バニリルマンデル酸(VMA)は、カテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン)が体内で分解されて生じる最終代謝産物で、尿中に排泄されるため褐色細胞腫や神経芽腫の診断・経過観察に用いられる蓄尿検査項目である。バナナ・コーヒー・チョコレート・バニラ・柑橘類などには、カテコールアミン代謝に影響する成分やVMAと構造の類似した物質が含まれ、これらを摂取すると蓄尿中のVMAやHVAが見かけ上高くなり、腫瘍がなくても陽性と誤判定する原因となる。このため検査前数日は該当食品の摂取を制限し、正確な値を得る必要がある。●VMA上昇をきたす病態=褐色細胞腫・傍神経節腫・神経芽腫…●検査前に制限する食品=バナナ・バニラ・コーヒー・紅茶・チョコレート・柑橘類・ナッツ類…●関連代謝産物=HVA(ドパミン代謝産物)、メタネフリン・ノルメタネフリン…

選択肢ごとの解説

第58回 午前14(臨床検査医学総論)

Ⅰ型アレルギーを引き起こすのはどれか。

正答: ③IgE

ポイント
Ⅰ型アレルギー(即時型・アナフィラキシー型)は、抗原(アレルゲン)に感作されて産生されたIgE抗体が肥満細胞・好塩基球の表面のFcε受容体に結合し、再度同じ抗原が架橋することで細胞が脱顆粒を起こし、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出されて生じる反応である。発症は抗原曝露後数分以内と速く、気管支喘息・花粉症・アレルギー性鼻炎・蕁麻疹・食物アレルギー・アナフィラキシーショックが代表である。アレルギーはクームス分類で、関与する抗体や機序によりⅠ〜Ⅳ型に分けられる。●Ⅰ型=IgE・肥満細胞、即時型(喘息・花粉症・アナフィラキシー)…●Ⅱ型=IgG/IgM・補体、細胞傷害型(自己免疫性溶血性貧血・血液型不適合)…●Ⅲ型=免疫複合体(血清病・糸球体腎炎)、Ⅳ型=T細胞・遅延型(ツベルクリン反応・接触皮膚炎)…

選択肢ごとの解説

第58回 午前15(臨床検査医学総論)

血清コリンエステラーゼ活性が低下するのはどれか。

正答: ④有機リン中毒

ポイント
有機リン剤は、神経終末でアセチルコリンを分解するコリンエステラーゼ(ChE)を不可逆的に阻害する農薬・神経毒で、中毒では血清コリンエステラーゼおよび赤血球(真性)コリンエステラーゼ活性がともに著明に低下する。ChE阻害により分解されないアセチルコリンがシナプスに蓄積し、縮瞳・流涙・流涎・気道分泌増加・徐脈などのムスカリン様症状と、筋線維束攣縮や筋力低下などのニコチン様症状を呈し、重症では呼吸筋麻痺をきたす。血清ChE活性は有機リン中毒の診断と重症度評価、回復判定の指標となる。●ChE低下=有機リン・カーバメート中毒、肝硬変・肝障害、低栄養…●ChE上昇=ネフローゼ症候群・脂肪肝・甲状腺機能亢進症…●有機リン中毒治療=アトロピン(ムスカリン症状)・PAM(プラリドキシム、酵素再賦活)…

選択肢ごとの解説

第58回 午前16(臨床生理学)

心電計の特性で正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ②接地抵抗線は0.1 Ω以下である。・③患者保護回路のヒューズは5mAである。

ポイント
心電計は数百μV程度の微小な生体電位を交流雑音や体動の中から安定して記録するため、各種の安全・性能基準が定められている。両入力に等しく加わる同相成分(外来交流雑音)を除去する能力を示す弁別比(同相除去比)は60dB以上が要求され、患者の安全のため接地(アース)の抵抗は十分小さく保たれる。漏れ電流対策として患者と回路の間に患者保護回路を備え、ヒューズや絶縁により過大電流の流入を防いで感電を防止する。周波数特性や時定数は波形の忠実な再現に関わる基本特性で、低周波域から高周波域まで規格に沿って平坦さが保たれるよう定められている。●安全性能=弁別比60dB以上・接地抵抗を低く・患者保護回路・漏れ電流の制限…●波形再現性=周波数特性(おおむね0.05〜100Hz)・時定数(約3.2秒以上)・標準感度…●記録の留意点=交流障害・基線動揺・筋電図混入の除去…

選択肢ごとの解説

第58回 午前17(臨床生理学)

心拍数が60回/分の健常成人の心電図でみられるのはどれか。2つ選べ。

正答: ③QRS幅 — 0.1秒・⑤R-R間隔 — 1.0秒

ポイント
心拍数60回/分の健常成人の心電図では、心周期に当たるR-R間隔は60秒÷60回=1.0秒となる。各波の正常値は、心房興奮を表すP幅が約0.1秒以内、房室伝導時間を表すPQ(PR)間隔が0.12〜0.20秒、心室興奮を表すQRS幅が0.06〜0.10秒、心室の脱分極から再分極までを表すQT時間がおおむね0.36〜0.44秒(心拍数で補正)である。本問ではQRS幅0.1秒とR-R間隔1.0秒が正常範囲に合致する。各間隔は心房・房室結節・心室の興奮伝導の時間的指標であり、延長や短縮は伝導障害や不整脈の評価に用いられる。●正常値=P幅≦0.10秒・PQ0.12〜0.20秒・QRS0.06〜0.10秒・QT約0.36〜0.44秒…●R-R間隔=60÷心拍数(秒)、HR60で1.0秒…●異常=PQ延長(房室ブロック)・QRS幅延長(心室内伝導障害)・QT延長(不整脈リスク)…

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:心電図の各波形・時間と成因

波形/時間成因(意味)基準範囲
P波心房の脱分極(興奮)幅0.11秒以下・高さ0.25mV未満
PR〈PQ〉時間房室伝導時間0.12〜0.20秒(小児0.11〜0.16秒)
QRS波(時間)心室の脱分極(興奮)0.06〜0.10秒
ST部分心室全体の興奮終了に相当基線に一致するか軽度上昇
T波心室の再分極高さ1.2mV未満かつR波高の10分の1以上
QTc(補正QT時間)電気的収縮時間成人0.35〜0.44秒(女性は男性より長い)
U波T波の後に出現、成因は不明高さ0.2mV未満
心房の再分極(Ta波)は振幅が小さくQRS波に重なるため、通常の心電図には明瞭に現れない。

第58回 午前18(臨床生理学)

心電図を別に示す。平均電気軸で最も近いのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA018.d4550441b7.jpg
第58回 午前18 の図

正答: ④90度

ポイント
心電図の平均電気軸は、心室の興奮(脱分極)が向かう平均的な方向を前額面(六軸座標)で表したもので、四肢誘導(特にⅠ誘導とaVF誘導)のQRS波の振れの向きと大きさから判定する。正常軸はおおむね−30度〜+90度の範囲にある。Ⅰ誘導とaVF誘導がともに上向き(陽性優位)であれば軸は正常範囲にあり、そのうちⅠ誘導よりaVF誘導の陽性成分が大きいほど軸は下方(+90度方向)に偏る。一般にR波が最も大きく振れる誘導の向きが軸の方向にほぼ一致し、QRSがほぼ等高二相となる誘導に直交する方向が軸となるため、本図はaVF優位で約90度に最も近い所見と判断される。●軸の判定=Ⅰ誘導とaVF誘導の主棒の向きで象限を決める…●正常軸=−30〜+90度、左軸偏位=−30度より左、右軸偏位=+90度より右…●偏位の原因=左室肥大・左脚前枝ブロック(左軸)、右室肥大・肺疾患(右軸)…

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:心電図の各波形・時間と成因

波形/時間成因(意味)基準範囲
P波心房の脱分極(興奮)幅0.11秒以下・高さ0.25mV未満
PR〈PQ〉時間房室伝導時間0.12〜0.20秒(小児0.11〜0.16秒)
QRS波(時間)心室の脱分極(興奮)0.06〜0.10秒
ST部分心室全体の興奮終了に相当基線に一致するか軽度上昇
T波心室の再分極高さ1.2mV未満かつR波高の10分の1以上
QTc(補正QT時間)電気的収縮時間成人0.35〜0.44秒(女性は男性より長い)
U波T波の後に出現、成因は不明高さ0.2mV未満
心房の再分極(Ta波)は振幅が小さくQRS波に重なるため、通常の心電図には明瞭に現れない。

第58回 午前19(臨床生理学)

運動負荷心電図検査で正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ②STが2mm以上低下すれば中止する。・④マスター負荷試験の昇降回数は年齢、性別および体重で求められる。

ポイント
運動負荷心電図検査は、階段昇降やトレッドミルなどの運動によって心筋酸素需要を増やし、安静時には現れない虚血性のST変化を誘発して冠動脈疾患を評価する検査である。虚血を示すST低下が一定基準(おおむね2mm以上)に達した場合や、強い胸痛・危険な不整脈・過度の血圧上昇または低下が出現した場合は、安全のため検査を直ちに中止する。マスター負荷試験では、運動量の指標となる階段の昇降回数を年齢・性別・体重から定められた換算表で求める。記録は標準12誘導で行い、運動中から回復期にかけて血圧と心電図を継続的に監視することが必須である。●中止基準=ST低下2mm以上・強い胸痛・危険な不整脈・血圧の過度上昇や低下・極度の疲労…●マスター負荷=年齢・性別・体重で昇降回数を決定、ダブルはシングルの2倍を約3分…●監視項目=12誘導心電図・血圧・自覚症状を運動中・回復期とも継続…

選択肢ごとの解説

第58回 午前20(臨床生理学)

フローボリューム曲線について正しいのはどれか。

正答: ⑤複数回の測定で、FVCとFEV1.0とが最も大きい測定値を採用する。

ポイント
フローボリューム曲線は、横軸に肺気量(容量)、縦軸に呼出気流速度(フロー)をとり、最大努力呼出の気流動態を一回の呼出で連続的に表す検査である。再現性を確保するため複数回測定し、そのうちFVC(努力肺活量)とFEV1.0(1秒量)はそれぞれ最も大きい値を採用するのが原則である。閉塞性肺疾患では気道狭窄により呼出後半の気流が低下して下方に凹んだ(下に凸の)曲線となり、末梢気道病変ではV25など低肺気量域の流速がより鋭敏に低下する。一方、拘束性障害では曲線全体が小さく相似形に縮む。曲線の立ち上がりであるピークフローは被験者の呼出努力に強く依存し、努力が不十分だと低く出るため努力依存性の指標である。●曲線の軸=横軸=肺気量、縦軸=気流速度…●閉塞性パターン=下に凸(凹型)・ピーク後の急減、拘束性=全体が小さく相似形…●指標=V50・V25は末梢気道の気流制限を反映、V25がより末梢を反映…

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:換気機能障害の分類(%肺活量〈%VC〉・1秒率〈FEV1%〉による判定)

分類判定基準主な疾患・病態
正常%VC≧80% かつ FEV1%≧70%―
拘束性換気障害%VC<80% かつ FEV1%≧70%間質性肺炎・肺線維症・胸郭/胸膜病変・呼吸筋力低下など
閉塞性換気障害%VC≧80% かつ FEV1%<70%COPD(肺気腫・慢性気管支炎)・気管支喘息など
混合性換気障害%VC<80% かつ FEV1%<70%拘束性と閉塞性の合併
閉塞性換気障害ではフローボリューム曲線が下に凸の形となる。機能的残気量〈FRC〉は肺の過膨張により上昇する(肺気腫・COPDなど)。

第58回 午前21(臨床生理学)

血液ガス分析装置で実測されるのはどれか。2つ選べ。

正答: ①pH・④PaCO₂

ポイント
血液ガス分析装置は、専用の電極を用いて限られた項目を直接実測し、それをもとに残りの指標を計算で導出する仕組みである。電極で実測されるのはpH(ガラス電極)、PaCO₂(Severinghaus電極=CO₂電極)、PaO₂(Clark電極=O₂電極)の3項目で、いずれも血液中のイオンや分圧を電気化学的に検出する。これに対し、重炭酸イオン(HCO₃⁻)やBase Excessは実測のpHとPaCO₂からHenderson-Hasselbalchの式を用いて、酸素飽和度(SaO₂)はPaO₂から酸素解離曲線を用いて算出される計算値である。実測か計算かの区別は値の信頼性評価に関わる。●実測項目=pH・PaCO₂・PaO₂(各専用電極)…●計算項目=HCO₃⁻・Base Excess・SaO₂(実測値から算出)…●検体の取扱い=ヘパリン採血・気泡混入を避け・氷冷で速やかに測定…

選択肢ごとの解説

第58回 午前22(臨床生理学)

終夜睡眠ポリグラフィで正しいのはどれか。

正答: ④無呼吸指数は、10秒以上持続する無呼吸が1時間当たりに出現する回数である。

ポイント
終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)は、脳波・眼球運動・オトガイ筋筋電図・呼吸(気流・胸腹部運動)・酸素飽和度・心電図などを一晩同時記録し、睡眠の深さや構造と睡眠呼吸障害を総合的に評価する検査である。無呼吸指数(AI)は10秒以上持続する無呼吸が睡眠1時間当たりに出現する回数で、低呼吸を加えた無呼吸低呼吸指数(AHI)とともに睡眠時無呼吸症候群の重症度判定に用いる。REM睡眠では急速眼球運動と骨格筋緊張の低下がみられ、non-REM睡眠ではステージが進むほど深い睡眠(徐波睡眠)になり、ステージ4はステージ1より深い。●睡眠ステージ=non-REM(N1〜N3、深くなるほど徐波増加)とREM(急速眼球運動・骨格筋緊張低下)…●呼吸指標=無呼吸指数(AI)・無呼吸低呼吸指数(AHI)で重症度判定…●関連所見=覚醒反応(arousal)増加は重症度と関連、低酸素血症の評価…

選択肢ごとの解説

第58回 午前23(臨床生理学)

大脳皮質運動野の神経細胞の軸索が通過しない部位はどれか。

正答: ⑤神経筋接合部

ポイント
大脳皮質運動野(一次運動野)の錐体細胞から出た軸索は、随意運動の指令を伝える皮質脊髄路(錐体路)を下行する。経路は、内包後脚→中脳大脳脚→橋→延髄錐体を通り、延髄下部の錐体交叉で大部分が対側へ交叉して脊髄側索を下行(外側皮質脊髄路)し、一部は交叉せず前索を下行(前皮質脊髄路)する。これらはいずれも脊髄前角の運動ニューロンに連絡する上位運動ニューロンの経路である。一方、神経筋接合部は前角細胞から出た下位運動ニューロンの軸索が骨格筋と接続する部位であり、運動野の神経細胞の軸索そのものはここを通過しない。●錐体路の経路=運動野→内包後脚→大脳脚→橋→延髄錐体→錐体交叉→側索(外側路)/前索(前路)→脊髄前角…●上位運動ニューロン=運動野から脊髄前角まで、障害で痙性麻痺…●下位運動ニューロン=前角細胞→神経筋接合部→筋、障害で弛緩性麻痺…

選択肢ごとの解説

第58回 午前24(臨床生理学)

14 Hzの連続する波を認める脳波を別に示す。所見として正しいのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA024.1f720b8df0.jpg
第58回 午前24 の図

正答: ⑤K複合波が出現している睡眠段階である。

ポイント
脳波における14Hz前後の連続する律動波は、睡眠紡錘波(睡眠スピンドル)に相当する。睡眠紡錘波は12〜14Hzの波が一過性に増減する紡錘状の群発波で、K複合波とともにnon-REM睡眠のステージ2を特徴づける指標である。K複合波は高振幅で陰性に続いて陽性となる二相性の鋭波で、睡眠中に外的刺激や自発的に出現し、睡眠紡錘波と同じくステージ2でみられる。したがって14Hzの連続する波を認める本記録は、睡眠紡錘波とK複合波が出現する睡眠段階すなわちステージ2の所見と判断され、覚醒や速波、てんかん性放電とは区別される。●睡眠段階の指標=N1(低振幅・θ波)→N2(睡眠紡錘波・K複合波)→N3(高振幅徐波=δ波)→REM(低振幅・急速眼球運動)…●睡眠紡錘波=12〜14Hzの紡錘状群発、ステージ2の特徴…●K複合波=高振幅二相性鋭波、ステージ2に出現…

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:睡眠段階(AASM分類)と脳波所見

睡眠段階脳波の主な所見区分
Stage W(覚醒)後頭部優位のα波。閉眼安静時に出現覚醒
Stage N1α波が減少し振幅低下、低振幅4〜7Hzのθ波混在。後半に瘤波〈頭頂鋭波〉が出現Non-REM睡眠
Stage N2紡錘波(12〜14Hz)が出現。明瞭な陰性鋭波に続いて陽性成分が現れるK複合(持続0.5秒以上)も出現Non-REM睡眠
Stage N3高振幅δ波(2Hz以下・75μV以上)が1エポックの20%以上を占めるNon-REM睡眠(徐波睡眠)
Stage R(REM)N1に似た低振幅波形だが瘤波は出現しない。急速眼球運動を伴うREM睡眠
睡眠ステージ1(N1)からステージ2(N2)への移行は、紡錘波の出現で判断する。旧Rechtschaffen & Kales分類のStage3・4はAASM分類でStage N3に統一された。

第58回 午前25(臨床生理学)

大脳誘発電位を示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA025.e6b007c14a.jpg
第58回 午前25 の図

正答: ③聴覚脳幹誘発電位

ポイント
聴覚脳幹誘発電位(ABR)は、クリック音などの聴覚刺激を多数回与えて加算平均し、刺激後約10ミリ秒以内に出現する一連の小さな波(Ⅰ〜Ⅴ波)を記録する短潜時の誘発電位である。各波は聴神経から脳幹の聴覚伝導路の各部位に由来し、Ⅰ波は蝸牛神経、Ⅲ波は橋下部、Ⅴ波は下丘付近を反映するとされ、波の潜時や有無から伝導路の障害部位を推定できる。潜時が短く振幅が小さい連続した波形が特徴で、覚醒・睡眠状態の影響を受けにくいため、客観的な聴力評価・脳幹機能評価・聴神経腫瘍の検出、新生児聴覚スクリーニングに広く用いられる。●代表的誘発電位=視覚誘発電位(VEP)・聴覚脳幹誘発電位(ABR)・体性感覚誘発電位(SEP)・事象関連電位(P300など)…●ABRの構成=Ⅰ〜Ⅴ波、潜時10ms以内、Ⅰ波=蝸牛神経・Ⅴ波=下丘…●臨床応用=聴力評価・脳幹機能・聴神経腫瘍・新生児聴覚スクリーニング…

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:誘発電位の種類と特徴

名称刺激主な特徴
視覚誘発電位〈VEP〉パターンリバーサル光・フラッシュ光光刺激で網膜〜大脳視覚領野に出現
聴覚誘発電位〈AEP〉クリック音頭頂中心部(Cz)優位、潜時で短潜時・中間潜時・長潜時の3成分
聴性脳幹反応〈ABR〉クリック音AEPの短潜時成分、音刺激後8ms以内にI〜VI波
体性感覚誘発電位〈SEP〉上肢(正中神経・手関節)、下肢(総腓骨神経・後脛骨神経)短潜時(感覚神経-脊髄-皮質)・長潜時(大脳皮質起源)
事象関連電位〈ERP〉認知課題の負荷P300・随伴陰性変動〈CNV〉、注意・記憶等を反映
意識や睡眠の影響を受けにくいのはABR。ABRは聴覚障害・脳幹障害・脳死判定などに用いる。

第58回 午前26(臨床生理学)

超音波の伝播速度が最も大きいのはどれか。

正答: ①骨

ポイント
音速は媒質の弾性率が高く分子が密に結合した固体ほど大きく、気体では分子間隔が広いため極端に小さい。生体内では概ね固体(骨)>軟部組織>気体(肺・腸管ガス)の順で、骨は約4000m/s前後と最も速く、含気のため超音波を強く反射・散乱する肺は数百m/s以下と最も遅い。超音波診断装置は軟部組織の平均音速を約1530m/sと仮定して反射波の往復時間から距離(深さ)を逆算しているため、音速の大きく異なる組織(骨・脂肪・含気部)では深さの表示にずれが生じ、音響陰影や多重反射などのアーチファクトの原因にもなる。●音速が速い=骨・石灰化・軟骨など固く密な構造(後方に音響陰影を伴いやすい)●軟部組織=肝・腎・脾・筋など約1530m/s前後でほぼ同等のため境界の反射が弱い●音速が遅い=肺・消化管ガスなど含気組織(強反射でその先が描出不能となる)。

選択肢ごとの解説

第58回 午前27(臨床生理学)

超音波検査で正しいのはどれか。

正答: ②サイドローブは虚像の原因となる。

ポイント
サイドローブは超音波ビームの主方向(メインローブ)の周囲に放射状に生じる副次的なビームで、本来の走査線上にない強い反射体を主方向上にあるかのように描出してしまうため、実在しない虚像(アーチファクト)の原因となる。超音波は空気や骨で強く反射・減衰するため伝播媒質には軟部組織や水が適し、空気は不適でプローブと体表はゼリーを介して密着させる。周波数を高くすると分解能は向上するが減衰が大きく深部到達は悪くなるため、深部観察には低めの周波数が用いられる。パルス幅は短い(小さい)ほど距離分解能が高い。●虚像の主なアーチファクト=サイドローブ・多重反射(コメットエコー)・鏡面(ミラー)像・音響陰影・後方エコー増強●分解能の規定因子=距離分解能はパルス幅が短いほど良く、方位分解能はビーム幅が狭いほど良い●周波数の関係=高周波は分解能高・深達度低、低周波は分解能低・深達度高。

選択肢ごとの解説

第58回 午前28(臨床生理学)

左腎の超音波縦断面像を別に示す。矢印で示す病変の超音波所見で正しいのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA028.e22699a7fe.jpg
第58回 午前28 の図

正答: ②境界は明瞭である。

ポイント
別冊の左腎縦断像で矢印の病変は、辺縁が滑らかで境界が明瞭、内部が無〜低エコーを呈し、嚢胞に典型的な所見を示している。境界明瞭・形状整・辺縁平滑は良性病変(単純性腎嚢胞など)を示唆する所見であり、悪性(腎細胞癌など)では形状不整・境界不明瞭・内部不均一が問題となる。単純性腎嚢胞では内部が無エコーで液体貯留を反映し、後方エコー増強や側方陰影を伴い、充実性腫瘤とは描出が明瞭に異なる。●良性を示唆する超音波所見=境界明瞭・形状整・辺縁平滑・内部均一●悪性を疑う所見=形状不整・境界不明瞭・内部不均一・浸潤性辺縁・ハロー●嚢胞性病変の特徴=内部無エコー・後方エコー増強・側方陰影で、類円形・境界明瞭の充実病変との鑑別点となる。多房性や内部エコーを伴う複雑性嚢胞では悪性の可能性も考慮し、充実成分や隔壁の有無を慎重に評価する必要がある。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:腹部超音波検査:疾患と特徴的なエコー所見

疾患特徴的な超音波所見
肝嚢胞類円形・境界明瞭・内部無エコー・後方エコー増強
肝血管腫境界明瞭な高エコー腫瘤、体位変換で内部エコーが変化(カメレオンサイン)
肝膿瘍経過とともに充実性→混合性→嚢胞性へ変化、辺縁不整・境界不明瞭
肝硬変肝表面の凹凸不整・辺縁鈍化、実質エコーの粗雑化、肝内脈管の狭小化・不明瞭化、脾腫
肝細胞癌内部モザイクパターン(nodule in nodule)、辺縁低エコー帯(ハロー)、側方陰影
転移性肝癌類似エコー像の多発結節、幅広い辺縁低エコー帯+中心部高エコーの同心円状像(bull's eye sign/target sign)
脂肪肝肝実質の輝度上昇(bright liver)、肝深部エコーの減衰、肝腎コントラストの増強
急性膵炎膵腫大、内部エコー不均一で低輝度、膵・腎周囲の液体貯留
急性胆嚢炎胆嚢腫大、胆嚢壁肥厚、胆石・胆泥
腎嚢胞類円形・内部無エコー・後方エコー増強
大腸癌(進行例)限局性の壁肥厚がpseudokidney sign〈偽腎徴候〉として描出
肝血管腫のカメレオンサイン(体位変換による内部エコー変化)とコメット様エコー(胆嚢腺筋症などでみられる多重反射)は別の所見であり混同しない。

第58回 午前29(臨床化学)

日内変動が小さいのはどれか。2つ選べ。

正答: ②血漿浸透圧・③血清カルシウム

ポイント
日内変動とは血中濃度が時刻によって生理的に変化する現象で、ホルモンの分泌リズムや食事・体位・活動の影響を受ける成分で大きくなる。血漿浸透圧は体液量と電解質濃度を一定に保つ恒常性が強く働くため日内変動が小さく、血清カルシウムも副甲状腺ホルモンやカルシトニン・ビタミンDなどにより厳密に調節されるため日内変動が小さい。一方、中性脂肪と血漿グルコースは食事の影響を強く受けて食後に上昇し、血漿コルチゾールは早朝高値・夜間低値の明瞭な日内リズムを示すため変動が大きい。●日内変動が小さい=血漿浸透圧・血清カルシウム・総蛋白・電解質(恒常性で厳密調節)●日内変動が大きい=コルチゾール(早朝高値)・ACTH・成長ホルモン・血清鉄・好酸球数●食事の影響が大きい=血糖・中性脂肪・インスリン(食後に上昇するため空腹時採血で評価)。

選択肢ごとの解説

第58回 午前30(臨床化学)

正しいのはどれか。

正答: ①溶血によって血清AST活性は上昇する。

ポイント
溶血では赤血球内成分が血清・血漿中へ逸脱する。ASTは赤血球内濃度が血清の約10〜40倍と高く、溶血により血清AST活性は偽性に上昇する。LD・カリウム・無機リンなど赤血球内に多い成分も同様に溶血で上昇する。全血を放置・冷蔵保存すると赤血球の解糖が続くためグルコースは低下し乳酸は上昇する。血清鉄は早朝高値・夜間低値の日内変動を示し、立位では水分が血管外へ移動して血漿が濃縮されるためアルブミンなど高分子はむしろ高値となる。ヘパリンはカルシウムをキレートせず、抗凝固でカルシウムを低下させるのはEDTAやクエン酸である。●溶血で上昇する成分=AST・LD・カリウム・無機リンなど赤血球内に多い物質●採血・保存による変化=全血放置でグルコース低下・乳酸上昇・カリウム上昇●体位の影響=立位で高分子(蛋白・脂質・酵素)が濃縮し高値となる。

選択肢ごとの解説

第58回 午前31(臨床化学)

免疫化学的測定において偽陽性反応を示すのはどれか。

正答: ②異好性抗体

ポイント
異好性抗体は動物の免疫グロブリンや種を越えて反応する抗体で、免疫測定系に用いられる動物由来抗体に非特異的に結合し、検体中に被測定物質が存在しなくても見かけ上の反応を生じさせて偽陽性(あるいは偽の高値・低値)の原因となる。免疫化学的測定は抗原抗体反応の特異性を利用するため、このような交差反応・非特異反応が測定誤差をもたらす。地帯現象(プロゾーン)は抗原過剰で凝集が抑制され偽性低値を生じる現象である。●免疫測定の誤差要因=異好性抗体・ヒト抗マウス抗体(HAMA)・リウマトイド因子などによる非特異反応で偽陽性をきたす●過不足による誤差=抗原過剰の地帯現象(プロゾーン)・抗体過剰による偽低値●物理的要因=電気浸透・分子ふるい・光学補正は分離や検出の手法であり、偽陽性反応そのものの主因ではなく、対策には測定系へのブロッキング試薬の添加や希釈再検が用いられる。

選択肢ごとの解説

第58回 午前32(臨床化学)

低アルブミン血症で検査値の補正が必要なのはどれか。

正答: ④カルシウム

ポイント
血清カルシウムは約半分がアルブミンと結合しており、測定される総カルシウムにはこの蛋白結合分が含まれている。低アルブミン血症では結合分が減少するため総カルシウムが見かけ上低下するが、生理活性をもつイオン化カルシウムは保たれていることが多い。そのため低アルブミン血症では補正式(Payneの式:補正Ca=実測Ca+0.8×(4−アルブミン))を用いて補正したうえで評価する必要がある。●アルブミンと結合し補正が必要=カルシウム(総量の約半分が結合型のため低アルブミンで偽性低下する)●補正不要の電解質=ナトリウム・カリウム・クロールは主に遊離イオンとして存在し蛋白結合の影響が小さい●関連事項=低アルブミン血症ではカルシウム以外にも蛋白結合する薬物やホルモンの遊離型割合が変化しうるため解釈に注意を要する。

選択肢ごとの解説

第58回 午前33(臨床化学)

血漿浸透圧への寄与が最も大きいのはどれか。

正答: ④ナトリウム

ポイント
血漿浸透圧は溶質の粒子数(モル濃度)の総和で決まるため、最も濃度の高い溶質ほど寄与が大きい。血漿中で最も濃度が高い溶質はナトリウムイオンで、対イオンの陰イオン(クロールなど)とともに浸透圧の大部分を占める。浸透圧の推算式(2×[Na⁺]+グルコース/18+尿素窒素/2.8など)でもナトリウムが2倍されることからその支配的な寄与がわかる。アルブミンは分子量が大きくモル濃度が低いため全浸透圧への寄与はわずかだが、毛細血管壁を通過しにくいことから血管内に水を保持する膠質浸透圧の主役となる。●血漿浸透圧への寄与が大きい=ナトリウム(と対陰イオン)、次いでグルコース・尿素●膠質浸透圧の主役=アルブミン(高分子で血管内に水を保持する)●浸透圧の推算=2×[Na⁺]+Glu/18+BUN/2.8でナトリウムが最も支配的に働く。

選択肢ごとの解説

第58回 午前34(臨床化学)

血糖測定について正しいのはどれか。

正答: ⑤ヘキソキナーゼはD-グルコースのα、β型の両方に作用する。

ポイント
ヘキソキナーゼ(HK)法はグルコース定量に広く用いられ、HKはD-グルコースのα型・β型の両方に作用してグルコース-6-リン酸を生成し、続くグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)の反応で生じるNADPHの吸光度から測定する。一方グルコースオキシダーゼ(GOD)はβ-D-グルコースに特異的に作用するため、α型を平衡化するムタロターゼを併用する。血糖はフッ化ナトリウム(解糖阻害)添加管で採血し、動脈血に近い毛細管血は静脈血より高めに出る。●グルコース測定酵素=HK法(α・β両型に作用しG6PDと共役)/GOD法(β型に特異的でムタロターゼ併用)●採血・保存=フッ化ナトリウムが解糖系のエノラーゼを阻害、放置で偽性低下●標準=血糖は空腹時の静脈血漿で測定するのが基本となり、全血のまま放置すると解糖により低下するため血漿分離や解糖阻害剤の使用が必要となる。

選択肢ごとの解説

第58回 午前35(臨床化学)

室温下で血清を静置した。LCATによって生じる変化はどれか。

正答: ④遊離型コレステロールの減少

ポイント
LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)はHDL上で働く酵素で、レシチン(ホスファチジルコリン)の脂肪酸を遊離型コレステロールに転移させ、コレステロールエステルとリゾレシチン(リゾホスファチジルコリン)を生成する。したがって血清を室温で静置するとLCATの作用により遊離型コレステロールが減少し、エステル型コレステロールとリゾレシチンが増加する。この反応は末梢から肝へのコレステロール逆転送(HDLによる)に関与し、アポA-Iにより活性化される。●LCATの基質=遊離型コレステロール+レシチン(いずれも反応で減少する)●LCATの産物=コレステロールエステル+リゾレシチン(いずれも反応で増加する)●関連=LCATはHDLのアポA-Iで活性化され、コレステロール逆転送系で重要な役割を担い、欠損症では角膜混濁などをきたす。

選択肢ごとの解説

第58回 午前36(臨床化学)

血漿蛋白について正しいのはどれか。

正答: ③トランスサイレチンは低栄養で低値となる。

ポイント
トランスサイレチン(プレアルブミン)は半減期が約2〜4日と短く肝で合成される蛋白で、低栄養(蛋白栄養状態の悪化)で速やかに低値となるため、栄養状態の鋭敏な指標(RTP:rapid turnover protein)として用いられる。α₁-アンチトリプシンやハプトグロビンは急性相反応蛋白で炎症時に上昇し、ハプトグロビンは溶血時に遊離ヘモグロビンと結合して消費されるため低値となる。トランスフェリンは鉄欠乏で代償性に増加して高値となり、フェリチンは鉄貯蔵を反映するため鉄過剰のヘモクロマトーシスで高値となる。●低栄養で低下する指標(RTP)=トランスサイレチン・レチノール結合蛋白・トランスフェリン●急性相反応蛋白(炎症で上昇)=CRP・α₁-アンチトリプシン・ハプトグロビン・フィブリノゲン●鉄代謝=鉄欠乏でトランスフェリン上昇・フェリチン低下、鉄過剰でフェリチン上昇。

選択肢ごとの解説

第58回 午前37(臨床化学)

アンモニアについて正しいのはどれか。

正答: ②溶血で血漿中濃度が上昇する。

ポイント
アンモニアは赤血球内に血漿の数倍含まれるため、溶血すると赤血球内アンモニアが逸脱して血漿中濃度が偽性に上昇する。またアンモニアは採血後の時間経過とともに増加しやすく、専用容器での採血・氷冷・速やかな測定が必要である。アンモニアは主にアミノ酸の脱アミノ反応や腸内細菌により生じ、肝臓の尿素回路(オルニチン回路)で尿素に変換されて解毒される(TCA回路ではない)。高蛋白食など食物摂取後は血中濃度が上昇しうる。●アンモニアの生成と解毒=アミノ酸の脱アミノや腸内細菌で生成し、肝の尿素回路で尿素に変換され解毒される●測定上の注意=溶血や放置で偽性上昇するため氷冷・迅速測定が必要●関連=肝不全や尿素回路酵素欠損で高アンモニア血症となり、意識障害や羽ばたき振戦を伴う肝性脳症を引き起こすため、肝機能評価の指標として用いられる。

選択肢ごとの解説

第58回 午前38(臨床化学)

血清CKについて正しいのはどれか。

正答: ⑤急性心筋梗塞ではLDよりも早く上昇する。

ポイント
CK(クレアチンキナーゼ)は筋に由来する酵素で、急性心筋梗塞では発症後数時間で上昇し始め半日〜1日でピークに達する。LD(乳酸脱水素酵素)は上昇開始もピークもより遅れるため、CKはLDよりも早く上昇する。CKは不安定な酵素で低温でも徐々に失活し、筋肉量を反映して女性より男性で高値、甲状腺機能低下症で高値・亢進症で低値となる。骨格筋疾患(多発性筋炎など)で上昇するのはCK-MMで、脳由来はCK-BBである。●心筋梗塞マーカーの推移=早期(心筋トロポニン・H-FABP・CK-MB)→CK→LD(遅れて上昇し遷延する)●CKアイソザイム=CK-MM(骨格筋)・CK-MB(心筋)・CK-BB(脳・平滑筋)●CKに影響する因子=筋肉量(男>女)・甲状腺機能低下で上昇・激しい運動や筋疾患で上昇するほか、筋肉内注射後にも一過性に上昇するため解釈には病歴を考慮する。

選択肢ごとの解説

第58回 午前39(臨床化学)

酵素の分類の組合せで正しいのはどれか。

正答: ②LD — 酸化還元酵素

ポイント
LD(乳酸脱水素酵素)は乳酸とピルビン酸の間で水素(電子)の授受を触媒する酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)に分類される。酵素はEC番号で7つの大分類に分けられ(出題当時は6分類。2018年にEC7輸送酵素が追加)、CK・アミラーゼ・コリンエステラーゼ・ALPはいずれもこれとは別の群に属する。CKはリン酸基を転移する転移酵素、アミラーゼ・ALP・コリンエステラーゼは結合を加水分解する加水分解酵素(水解酵素)である。●酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)=LD・G6PDなど水素・電子の授受を触媒する●転移酵素(トランスフェラーゼ)=CK・AST・ALT・γ-GTなど基を転移する●加水分解酵素(ヒドロラーゼ)=アミラーゼ・ALP・ACP・コリンエステラーゼ・リパーゼ・ペプチダーゼなど水を加えて結合を加水分解する反応を触媒する。なお同じ酵素でも触媒する反応の種類によって分類が決まる点に注意する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:酵素の分類(EC番号)

EC分類反応の種類代表的な酵素
EC1 酸化還元酵素酸化還元反応LD、GOD、POD、カタラーゼ、ウリカーゼ、デヒドロゲナーゼ類(脱水素酵素)
EC2 転移酵素官能基の転移反応CK、AST、ALT、γ-GT、ヘキソキナーゼ、キナーゼ類(リン酸基転移)
EC3 加水分解酵素脱水結合部位の加水分解ALP、LAP、コリンエステラーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、エステラーゼ類
EC4 脱離酵素(除去付加酵素)加水分解によらない基質の除去アルドラーゼ、エノラーゼ、フマラーゼ
EC5 異性化酵素基質を異性体に変換ホスホグリセリン酸ムターゼ
EC6 合成酵素ATPを用いて2分子を結合DNAリガーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ
EC7 転位酵素(移動酵素)生体膜を介した物質の移動膜輸送体(トランスロカーゼ)
CKはリン酸基を、AST・ALTはアミノ基を、γ-GTはγ-グルタミル基を転移するため、名称に「トランスフェラーゼ」を含まなくてもEC2(転移酵素)に分類される。同様に、-キナーゼ/-トランスフェラーゼの語尾はEC2、-エステラーゼ/-ホスファターゼの語尾はEC3、-デヒドロゲナーゼ/-オキシダーゼの語尾はEC1、-アルドラーゼの語尾はEC4に対応する。

第58回 午前40(臨床化学)

免疫抑制薬はどれか。2つ選べ。

正答: ②タクロリムス・④シクロスポリン

ポイント
タクロリムスとシクロスポリンはいずれもカルシニューリンを阻害してT細胞のインターロイキン2産生を抑え、臓器移植後の拒絶反応抑制や自己免疫疾患の治療に用いられる免疫抑制薬である。いずれも有効血中濃度域が狭く副作用(腎障害など)もあるため、血中濃度モニタリング(TDM)の対象となる。フェニトインは抗てんかん薬、バンコマイシンはグリコペプチド系抗菌薬、プロカインアミドは抗不整脈薬で、これらもTDM対象ではあるが免疫抑制薬ではない。●免疫抑制薬(カルシニューリン阻害)=タクロリムス・シクロスポリン●その他の免疫抑制薬=ミコフェノール酸モフェチル・シロリムス・アザチオプリン・副腎皮質ステロイド●TDM対象の他系統=抗てんかん薬(フェニトイン)・抗菌薬(バンコマイシン)・抗不整脈薬(プロカインアミド)・ジゴキシンなど。

選択肢ごとの解説

第58回 午前41(臨床化学)

インスリンで正しいのはどれか。

正答: ⑤筋肉におけるグルコースの取り込みを促進する。

ポイント
インスリンは膵ランゲルハンス島B(β)細胞から分泌されるペプチドホルモンで、細胞膜上のインスリン受容体(受容体型チロシンキナーゼ)に結合し、骨格筋や脂肪組織でグルコース輸送担体GLUT4の細胞膜移行を促してグルコースの取り込みを促進し、血糖を低下させる。前駆体プロインスリンが切断される際にインスリンとC-ペプチドが等モルで生成されるため、C-ペプチドは内因性インスリン分泌の指標となる。●インスリンの作用=筋・脂肪でのグルコース取り込み促進、肝での糖新生抑制・グリコーゲン合成促進、脂肪・蛋白合成の促進●受容体=細胞膜の受容体型チロシンキナーゼ(核内受容体はステロイドや甲状腺ホルモンが結合する)●関連指標=C-ペプチドはプロインスリン由来で内因性のインスリン分泌能を反映するため、インスリン製剤使用中でも自己の分泌能を評価できる利点がある。

選択肢ごとの解説

第58回 午前42(臨床化学)

低ナトリウム血症をきたすのはどれか。2つ選べ。

正答: ②Addison病・⑤抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)

ポイント
Addison病(原発性副腎皮質機能低下症)はアルドステロン分泌の低下により腎でのナトリウム再吸収が減ってナトリウムを喪失し、低ナトリウム血症と高カリウム血症をきたす。SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)はADHの過剰分泌により水が過剰に再吸収され、希釈性の低ナトリウム血症をきたす。尿崩症はADHの不足・作用不全で水利尿が進み高ナトリウム血症傾向、Cushing症候群・原発性アルドステロン症はコルチゾールやアルドステロンの過剰でナトリウムが貯留し高ナトリウム傾向となる。●低ナトリウム血症をきたす=Addison病(アルドステロン低下でNa喪失)・SIADH(水貯留による希釈性)●高ナトリウム血症傾向=尿崩症(水喪失)・Cushing症候群・原発性アルドステロン症(鉱質コルチコイド作用過剰でNa貯留)●整理=Na喪失か水過剰で低Na、水喪失かNa貯留で高Naとなる。

選択肢ごとの解説

第58回 午前43(臨床化学)

ICG残存率の5分、10分、15分値をプロットした図を示す。ICG消失率として最も近いのはどれか。ただし、消失率は0.693を半減時間(分)で除した値とする。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA043.bfebc6c167.jpg
第58回 午前43 の図

正答: ②0.180

ポイント
ICG(インドシアニングリーン)試験は肝の色素排泄能を評価する検査で、静注後の血中濃度(残存率)が指数関数的に減衰する。残存率の経時プロットから残存率が半分になる半減時間を求め、消失率K=0.693÷半減時間(分)で算出する。本問では5・10・15分値のプロットから読み取った半減時間が約3.85分前後となり、0.693÷3.85≒0.18が消失率に最も近い値となる。健常者の消失率Kは概ね0.168〜0.206(/分)で、肝障害があると排泄能の低下により値が小さくなる。●ICG試験の指標=消失率K=0.693/半減時間(分)、ほかに15分停滞率(R15)がある●基準=Kは健常で約0.18前後、R15は10%以下が目安となる●意義=肝予備能(肝切除の適応評価など)や肝血流の評価に用いられ、消失率の低下や停滞率の上昇は肝障害や肝血流低下を反映する。

選択肢ごとの解説

第58回 午前44(臨床化学)

遺伝子検査とその目的の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ②RFLP法 — 遺伝子多型の解析・⑤in situハイブリダイゼーション法 — 組織での遺伝子発現の局在

ポイント
RFLP(制限酵素断片長多型)法は、制限酵素の切断部位における塩基配列の違いによって生じる断片長の差を検出する手法で、遺伝子多型の解析に用いられる。in situハイブリダイゼーション法は標識プローブを組織切片や細胞上で標的核酸とハイブリダイズさせ、組織内の標的DNAやRNAの局在を可視化する。遺伝子発現を調べる場合は主にmRNAを標的とする。RT-PCRはmRNAを逆転写して増幅する手法(RNAの検出・定量)、サザンブロットはDNAの解析、ノーザンブロットはRNA(mRNA)の解析で、これらの選択肢の組合せはそれぞれ逆になっている。●ブロット法の対応=サザン=DNA、ノーザン=RNA、ウェスタン=蛋白を解析する●増幅・定量=PCR=DNA増幅、RT-PCR=mRNAを逆転写し検出・定量する●局在解析=in situハイブリダイゼーション=組織での核酸の局在、免疫組織化学=蛋白の局在を可視化する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:遺伝子解析法のまとめ

手法対象核酸概要
PCR法DNA2つのプライマーで目的のDNA断片を増幅する
定性RT-PCR法RNA(mRNA)逆転写酵素でmRNAからcDNAを合成し、これを鋳型にPCRを行って標的RNAの有無を検出する。RNA量の定量にはRT-qPCRなどの定量法を用いる
real-Time PCR法DNA蛍光色素やプローブを用い、増幅量をリアルタイムに測定する。電気泳動を必要としない
LAMP法DNA(RNAも逆転写酵素併用で可)4種のプライマーと鎖置換型DNAポリメラーゼで等温増幅。サーマルサイクラー不要
シークエンス法(ジデオキシ法)DNAプライマーでDNAを伸長させ、ddNTPで鎖を停止。断片長を電気泳動で分離し塩基配列を決定
サザンブロット法DNA電気泳動で分離したDNA断片を膜に転写し、標識プローブとハイブリダイズさせ検出する
ノーザンブロット法RNA電気泳動で分離したRNAを膜に転写し、標識プローブとハイブリダイズさせ検出する(DNAの解析ではない)
in situ ハイブリダイゼーション法〈FISH法〉DNA核酸を抽出せず、細胞・組織に蛍光標識プローブを直接反応させ、遺伝子の局在・融合・欠失・重複を蛍光顕微鏡で調べる
DNAマイクロアレイ法DNA基盤に配置した多数の既知DNAに検体DNA(cDNA)をハイブリダイズさせ、網羅的に遺伝子発現・増減を調べる
マイクロサテライトDNA解析法DNA数塩基単位の繰り返し配列(マイクロサテライト)の多型を解析。個人識別や骨髄移植後のキメリズム解析に用いる
RFLP法(制限酵素断片長多型解析)DNA制限酵素の切断部位付近の塩基配列の違いによって生じる断片長の差を検出し、遺伝子多型を解析する
RFLP法は教科書の該当ページを特定できなかったため、確立した分子生物学の知識として記載した(他の行はComplete+ MT Vol.3のコピー p.389の要点表で確認済み)。

第58回 午前45(病理組織細胞学)

H-E染色標本を別に示す。この臓器はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA045.0571adb164.jpg
第58回 午前45 の図

正答: ④大腸

ポイント
別冊のH-E染色標本は、表面を吸収上皮で覆われ多数の杯細胞を含む腺管(陰窩・腸腺)が密に直線状に並び、絨毛をもたず粘膜筋板・筋層を伴う構造を示しており、大腸の組織像に合致する。大腸粘膜は陰窩が試験管を並べたように規則正しく配列し、杯細胞が豊富なのが特徴で、絨毛をもつ小腸とは明確に区別される。なお大腸に絨毛はないが、吸収上皮細胞の表面には短い微絨毛(刷子縁)が存在する。●消化管の組織学的特徴=食道は重層扁平上皮、胃は腺窩と胃腺(壁細胞・主細胞)、小腸は絨毛と刷子縁、大腸は絨毛がなく杯細胞豊富で直線状の陰窩をもつ●大腸の鑑別点=杯細胞が多く陰窩が整然と並び、絨毛を欠く●その他=尿管は移行上皮(尿路上皮)、気管は多列線毛上皮で、いずれも消化管の腺管とは内腔を覆う上皮が異なるため、内腔を覆う上皮の種類・腺管の配列・絨毛や杯細胞の有無を手がかりに臓器を判別することができる。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:臓器・部位と被覆上皮の対応

上皮の種類分布部位
重層扁平上皮(非角化)食道・腟・肛門・口腔
重層扁平上皮(角化)表皮
単層円柱上皮胃・小腸・大腸・胆嚢
単層線毛円柱上皮卵管・子宮
多列線毛上皮(円柱)気管・気管支・鼻腔
移行上皮(尿路上皮)腎盂・尿管・膀胱
単層扁平上皮(内皮)血管・リンパ管の内壁
単層扁平上皮(中皮)胸膜・腹膜・心膜(体腔表面)
単層扁平上皮(肺胞上皮)肺胞(表面の大部分をⅠ型肺胞上皮細胞が覆う)
内皮は血管・リンパ管、中皮は体腔(漿膜)の表面を被覆する単層扁平上皮で、局在により呼び分ける。肺胞の内面は中皮ではなく肺胞上皮(Ⅰ型・Ⅱ型肺胞上皮細胞)が覆う。

第58回 午前46(病理組織細胞学)

横紋筋がみられるのはどれか。

正答: ①心臓

ポイント
横紋筋は筋原線維のアクチンとミオシンが規則的に配列して光学顕微鏡で横紋(縞模様)を示す筋で、骨格筋と心筋がこれに属する。心臓の心筋は横紋を有する不随意筋で、介在板(境界板)で細胞が連結し電気的に同期して収縮する点が特徴で、自動能をもつ。胃・胆管・膀胱・子宮はいずれも管腔や内臓の壁を構成する平滑筋からなり、横紋を示さない不随意筋である。●横紋筋=骨格筋(随意筋・多核)・心筋(不随意筋・単〜二核・介在板で連結し自動能をもつ)●平滑筋(横紋なし・不随意)=胃腸・胆管・膀胱・尿管・子宮・血管壁など内臓や管腔の壁を構成する●整理=横紋の有無で横紋筋と平滑筋を区別し、随意・不随意の別とは必ずしも一致しない(骨格筋は横紋筋かつ随意筋、心筋は横紋筋だが不随意筋で自動能をもち、平滑筋は横紋をもたない不随意筋である)。

選択肢ごとの解説

第58回 午前47(病理組織細胞学)

臓器の構造・機能について正しいのはどれか。

正答: ⑤肝臓の全血流量の半分以上は門脈から供給される。

ポイント
肝臓には肝動脈と門脈の二重の血流があり、全血流量の約2/3〜3/4を門脈が、残りを肝動脈が供給する。門脈は消化管・脾からの栄養に富む静脈血を運び、肝動脈は酸素に富む動脈血を供給する。したがって肝臓の全血流量の半分以上は門脈由来である。食道は気管の背側(脊柱側)に位置し、胸腺は思春期以後に退縮して新生児・小児で相対的に大きく、副腎は内分泌器官で外分泌部をもたず、肺静脈血はガス交換後で肺動脈血より酸素分圧が高い。●肝の血流=門脈(約2/3以上で栄養に富む静脈血)+肝動脈(酸素を供給する動脈血)●位置関係=食道は気管の背側、心臓はやや左寄りに位置する●その他の要点=胸腺は加齢で退縮し脂肪に置き換わる、副腎は皮質・髄質ともに内分泌器官のみで外分泌部をもたない、酸素分圧はガス交換後の肺静脈血が肺動脈血より高くなる。

選択肢ごとの解説

第58回 午前48(病理組織細胞学)

循環障害でないのはどれか。

正答: ①化生

ポイント
化生は分化した細胞・組織が別の系統の成熟細胞・組織へ可逆的に置き換わる適応性の変化(例:気管支の扁平上皮化生、Barrett食道における腸上皮化生)であり、循環障害ではなく細胞・組織の適応の範疇に分類される。虚血・梗塞・塞栓・浮腫はいずれも血流や体液の循環の異常に基づく循環障害であり、化生のみが性質を異にする。●循環障害=充血・うっ血・虚血・梗塞・血栓・塞栓・出血・浮腫・ショック・側副循環など血流や体液動態の異常●細胞・組織の適応性変化=肥大・過形成・萎縮・化生(環境や刺激の変化に対する細胞・組織の可逆的な反応)●関連=化生は刺激が持続すると異形成や腫瘍化につながりうるが、本問では循環障害でないものとして区別される変化であり、肥大・過形成・萎縮と並ぶ細胞・組織の適応性変化のひとつに分類される。

選択肢ごとの解説

第58回 午前49(病理組織細胞学)

胃癌で正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ④卵巣への転移巣をKruckenberg腫瘍という。・⑤早期癌の定義ではリンパ節転移の有無を問わない。

ポイント
胃癌の早期癌は癌の深達度が粘膜下層までにとどまるものと定義され、リンパ節転移の有無は問わない(深達度のみで定義する)。卵巣への転移巣はKruckenberg腫瘍とよばれ、印環細胞癌などが両側卵巣に転移したものを指す。スキルス癌(硬癌)はびまん性に浸潤し進行が速いため予後不良、Borrmann分類は進行癌の肉眼分類で早期癌には用いず、胃ポリープ(多くは過形成性や胃底腺ポリープ)は一般に前癌病変ではない。●胃癌の定義・分類=早期癌=深達度が粘膜下層まで(リンパ節転移を問わない)、進行癌の肉眼分類=Borrmann分類●転移=Kruckenberg腫瘍(両側卵巣への転移)・Virchow転移(左鎖骨上窩リンパ節)●予後=スキルス(硬癌)はびまん浸潤で予後不良となり、胃壁が硬く肥厚する革袋状の所見を呈することがある。

選択肢ごとの解説

第58回 午前50(病理組織細胞学)

固定液と組成の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ③PLP固定液 — パラホルムアルデヒド・⑤中性緩衝ホルマリン — 第一リン酸ナトリウム

ポイント
PLP固定液はパラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)にリジンと過ヨウ素酸ナトリウムを加えた固定液で、糖鎖や抗原性の保持に優れるため免疫組織化学や電子顕微鏡に用いられる。中性緩衝ホルマリンはホルムアルデヒドを第一・第二リン酸ナトリウムのリン酸緩衝液でpH約7に調整したもので、組織を中性域で固定し色素や抗原の保持に優れる汎用の固定液である。ブアン液はピクリン酸・ホルマリン・酢酸からなりエタノールは含まず、カルノア液はエタノール・クロロホルム・酢酸からなり主成分はメタノールではない。●アルデヒド系固定=中性緩衝ホルマリン(リン酸緩衝)・PLP(パラホルムアルデヒド+リジン+過ヨウ素酸)●ピクリン酸系=ブアン液(ピクリン酸+ホルマリン+酢酸)●アルコール系=カルノア液(エタノール+クロロホルム+酢酸)・純アルコール固定など。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な固定液の種類と対象

固定液組成対象利点・欠点
10〜20%ホルマリンホルマリン広範浸透力◎・水溶性物質は溶出
10%中性ホルマリンホルマリン+炭酸Ca(Mg)広範同上・色素沈着は少ない
10%等張ホルマリン中性ホルマリン+NaCl広範同上・色素沈着は少ない
10%中性緩衝ホルマリンホルマリン+リン酸緩衝液広範・免疫組織化学蛋白・核酸が保持されやすい
2〜4%グルタルアルデヒドグルタルアルデヒド+リン酸緩衝液電子顕微鏡固定力◎・浸透性は低い
4%パラホルムアルデヒドパラホルムアルデヒド+リン酸緩衝液免疫組織化学蛋白・糖鎖抗原が保持
PLP液パラホルムアルデヒド+リジン塩酸+メタ過ヨウ素酸免疫組織化学糖蛋白◎・糖鎖抗原は不適
Carnoy液無水エタノール+氷酢酸+クロロホルム糖原・核酸・Nissl顆粒収縮・溶血しやすい・脂肪溶解
Bouin液ピクリン酸+氷酢酸+ホルマリン内分泌顆粒・糖原収縮・硬化しやすい
Zamboni液ピクリン酸+パラホルムアルデヒド+リン酸緩衝液免疫組織化学ポリペプチド抗原保持・収縮しやすい
1〜2%オスミウム酸オスミウム酸+リン酸緩衝液電子顕微鏡毒性強い・酸化染色に不適