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第58回(2012) 臨床検査技師国家試験 午前51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第58回 午前51(病理組織細胞学)
迅速脱灰液(Plank-Rychlo法)に使用されるのはどれか。2つ選べ。
正答: ①塩酸・②ギ酸
ポイント Plank-Rychlo法は塩酸と硝酸ではなく塩酸とギ酸(蟻酸)に塩化アルミニウムを加えた強酸性の迅速脱灰液で、数時間〜1日程度で骨組織の脱灰を完了させる。脱灰とは石灰化したカルシウム塩を酸やキレート剤で除去し、薄切可能な硬度にする操作で、酸の解離度が高いほど速いが組織傷害(染色性低下・核濃縮)も強い。迅速性を優先する術中迅速や骨髄生検でPlank-Rychlo法が選ばれる一方、抗原性・形態保持を優先する場面ではキレート脱灰を用いる。●酸性脱灰液=強酸の塩酸・硝酸や、弱酸のギ酸などを用いる。Plank-Rychlo法は塩酸+ギ酸+塩化アルミニウムで、迅速だが組織傷害に注意する。●キレート脱灰=EDTA(緩徐だが形態・抗原・核酸保持に優れ免疫染色やFISH向き)。●脱灰終点判定=シュウ酸アンモニウム法・エックス線撮影・触診で確認する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。塩酸はPlank-Rychlo法の主成分の一つで、強酸として石灰塩を速やかに溶解し迅速脱灰を担う。 ② 正しい。ギ酸(蟻酸)もPlank-Rychlo法の構成成分で、塩化アルミニウムとともに用いられ脱灰を促進する。 ③ 硝酸は迅速脱灰に有効な強酸だが、Plank-Rychlo法ではなく単独脱灰液や他処方で用いられる成分である。 ④ 過ヨウ素酸はPAS染色で糖鎖の隣接水酸基を酸化しアルデヒドを生じさせる酸化剤で、脱灰には用いない。 ⑤ トリクロル酢酸は弱い脱灰作用と固定作用をもつが、Plank-Rychlo法の構成成分ではない。
第58回 午前52(病理組織細胞学)
特殊染色標本を別に示す。染色法はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA052.d5e5df49d3.jpg
①azan染色 ②elastica van Gieson染色 ③PAM染色 ④PAS染色 ⑤PTAH染色
正答: ②elastica van Gieson染色
ポイント elastica van Gieson染色(EVG染色)はレゾルシン・フクシンなどで弾性線維を黒紫〜濃青に、van Gieson液で膠原線維を赤、筋線維・細胞質を黄に染め分ける重染色で、血管壁の内弾性板・外弾性板や弾性線維の増減評価に用いる。図では弾性線維が黒く波状に染まり膠原線維が赤を呈する所見が弾性線維染色を示す。線維成分の染め分けは病理診断の基本で、染色法ごとに標的が異なる。●弾性線維の染色=elastica van Gieson・Weigert弾性線維染色(黒〜紫)。●膠原線維の染色=Masson trichrome(青〜緑)・azan(青)・van Gieson(赤)。●細網線維(好銀線維)の染色=鍍銀法(渡辺の鍍銀法・黒色)で肝・骨髄の支持組織を評価する。
選択肢ごとの解説
① azan染色は膠原線維をアニリン青で青く染める三色染色で、弾性線維の選択的黒染は示さない。 ② 正しい。図の弾性線維が黒紫、膠原線維が赤に染め分けられる所見はelastica van Gieson染色に一致する。 ③ PAM(過ヨウ素酸メセナミン銀)染色は糸球体基底膜や細網線維を黒く描出する鍍銀染色で本図とは異なる。 ④ PAS染色は多糖類・基底膜・グリコーゲンを赤紫に染める糖染色で、弾性線維の黒染は示さない。 ⑤ PTAH(リンタングステン酸ヘマトキシリン)染色は横紋筋・グリア線維・フィブリンを青染するが弾性線維選択性はない。
📋 まとめの表を見る:病理組織の主な特殊染色と対象
第58回 午前53(病理組織細胞学)
PAS染色で使用しないのはどれか。
①塩酸 ②アニリン ③過ヨウ素酸 ④塩基性フクシン ⑤重亜硫酸ナトリウム
正答: ②アニリン
ポイント PAS(過ヨウ素酸シッフ)反応は、過ヨウ素酸が多糖類・糖蛋白の隣接する2つの水酸基(1,2-グリコール)を酸化してアルデヒドを生じさせ、これにSchiff試薬が反応して赤紫の色素を形成する反応である。Schiff試薬は塩基性フクシン(パラローズアニリン)を重亜硫酸ナトリウムで脱色した無色のロイコ体で、アルデヒドと結合して発色する。塩酸はSchiff試薬調製や発色の安定化に関与する。アニリンはazan染色などの媒染・染色に用いる試薬でPAS反応には不要である。●PAS反応の必須試薬=過ヨウ素酸(酸化)・Schiff試薬(塩基性フクシン+重亜硫酸ナトリウム)・塩酸。●PAS陽性物質=グリコーゲン・中性粘液・基底膜・真菌の細胞壁。●ジアスターゼ消化=グリコーゲンのみPAS陰性化させ、グリコーゲンと他の多糖を鑑別する。
選択肢ごとの解説
① 塩酸はSchiff試薬の調製や発色安定化に用いられ、PAS染色の過程で使用される。 ② 誤り。アニリンはazan染色等で用いる試薬で、PAS染色の反応系には使用しない。 ③ 過ヨウ素酸は隣接水酸基を酸化してアルデヒドを生じさせる、PAS反応の第一段階に必須の酸化剤である。 ④ 塩基性フクシン(パラローズアニリン)はSchiff試薬の母体色素で、PAS染色に不可欠である。 ⑤ 重亜硫酸ナトリウムは塩基性フクシンを脱色して無色のSchiff試薬とするため、PAS染色に用いられる。
📋 まとめの表を見る:PAS反応(過ヨウ素酸シッフ反応)の陽性物質・臓器別所見・試薬
第58回 午前54(病理組織細胞学)
肺のホルマリン固定後の肉眼像とH-E染色標本とを別に示す。病原体の検出に有効な染色はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA054.a9fe72c654.jpg
①Gram染色 ②mucicarmine染色 ③Victoria blue染色 ④Warthin-Starry染色 ⑤Ziehl-Neelsen染色
正答: ⑤Ziehl-Neelsen染色
ポイント Ziehl-Neelsen染色は石炭酸フクシンを加温浸透させ、塩酸アルコールで脱色しても色素が抜けない抗酸性(抗酸菌のミコール酸を含む厚い脂質細胞壁による)を利用して抗酸菌を赤く染め、メチレンブルー等で対比染色する。肺の空洞性病変や乾酪壊死を背景とする肉芽腫で、病原体(結核菌・非結核性抗酸菌)の検出に有効である。病原体の種類ごとに有効な特殊染色が異なる。●抗酸菌=Ziehl-Neelsen染色・蛍光染色(auramine-rhodamine)。●真菌=Grocott(メセナミン銀染色・黒)・PAS(赤紫)。●莢膜をもつ菌・真菌=mucicarmine(Cryptococcusの莢膜を赤)。●らせん菌・細菌=Warthin-Starry鍍銀(Helicobacter・スピロヘータを黒)、Gram染色(一般細菌)。
選択肢ごとの解説
① Gram染色は一般細菌をグラム陽性(紫)・陰性(赤)に染め分けるが、抗酸菌の染色には不適である。 ② mucicarmine染色は酸性粘液やCryptococcusの莢膜を赤染する染色で、結核菌などの検出には用いない。 ③ Victoria blue染色は弾性線維やHBs抗原を青染する染色で、病原体の一般的検出法ではない。 ④ Warthin-Starry染色はスピロヘータやHelicobacterを黒く描出する鍍銀法で、抗酸菌検出の第一選択ではない。 ⑤ 正しい。空洞性病変での病原体(抗酸菌)検出にはZiehl-Neelsen染色が有効で、菌体が赤染される。
第58回 午前55(病理組織細胞学)
免疫組織化学染色で内因性ペルオキシダーゼの不活化に用いるのはどれか。
①アミラーゼ ②プロナーゼ ③オートクレーブ ④ヒアルロニダーゼ ⑤過酸化水素
正答: ⑤過酸化水素
ポイント 酵素抗体法(免疫組織化学)では西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗体とDAB等の発色基質を用いるが、組織内に存在する内因性ペルオキシダーゼ(赤血球・好中球・肝などに豊富)が非特異的に発色して偽陽性となるため、染色前に過酸化水素(メタノールや水で希釈した過酸化水素水)で処理してこれを不活化する。これと混同しやすいのが抗原賦活で、ホルマリン固定で生じた架橋を解除して抗原性を回復させる操作である。●内因性酵素・反応のブロック=内因性ペルオキシダーゼ→過酸化水素、内因性ビオチン→アビジン・ビオチンブロック。●抗原賦活(熱処理)=オートクレーブ・電子レンジ・圧力鍋による加熱賦活。●抗原賦活(酵素処理)=プロナーゼ・トリプシンなどの蛋白分解酵素や、ヒアルロニダーゼ(ヒアルロン酸などの糖鎖を分解する糖質分解酵素)による賦活。
選択肢ごとの解説
① アミラーゼ(ジアスターゼ)はグリコーゲン消化に用いる酵素で、内因性ペルオキシダーゼの不活化には用いない。 ② プロナーゼは蛋白分解酵素による抗原賦活に用いる試薬で、内因性ペルオキシダーゼ不活化の目的ではない。 ③ オートクレーブは加熱による抗原賦活に用いる操作で、内因性ペルオキシダーゼの不活化ではない。 ④ ヒアルロニダーゼは酵素的抗原賦活に用いられ、内因性ペルオキシダーゼ不活化の手段ではない。 ⑤ 正しい。過酸化水素は内因性ペルオキシダーゼを分解・不活化し、非特異的発色による偽陽性を防ぐ。
第58回 午前56(病理組織細胞学)
電子顕微鏡検査が病理診断に汎用されるのはどれか。
①ウイルス性肝炎 ②潰瘍性大腸炎 ③気管支肺炎 ④糸球体腎炎 ⑤急性膵炎
正答: ④糸球体腎炎
ポイント 電子顕微鏡は数nm単位の超微細構造を観察でき、糸球体腎炎(腎生検)の病理診断で電子密度沈着物(沈着の局在=上皮下・内皮下・メサンギウム)や基底膜の肥厚・二重化・スパイク形成、足突起の癒合・消失を評価するために光学顕微鏡・蛍光抗体法と並んで汎用される。腎臓病理は光学顕微鏡(組織型)・蛍光抗体法(免疫沈着のパターン)・電子顕微鏡(微細構造)の三者を組み合わせて確定診断する点が特徴で、沈着物の局在は病型分類に直結する。●電子顕微鏡が診断に有用な病変=糸球体腎炎(沈着物の局在評価)・線毛機能異常症・各種封入体(ウイルス・代謝病)・腫瘍の細胞間結合や分泌顆粒。●糸球体腎炎の診断三本柱=光学顕微鏡・蛍光抗体法・電子顕微鏡。●一般感染症・炎症=通常は光学顕微鏡と培養・血清学で診断し、電子顕微鏡は不要である。
選択肢ごとの解説
① ウイルス性肝炎は血清ウイルスマーカー・免疫染色・光学顕微鏡で診断され、電子顕微鏡が病理診断に汎用される疾患ではない。 ② 潰瘍性大腸炎は内視鏡所見と光学顕微鏡的な組織像(陰窩膿瘍など)で診断し、電子顕微鏡は通常用いない。 ③ 気管支肺炎は胸部画像・喀痰培養・光学顕微鏡で診断され、電子顕微鏡を病理診断に要する病変ではない。 ④ 正しい。糸球体腎炎は電子顕微鏡で沈着物の局在・基底膜変化・足突起癒合を評価し、病理診断に汎用される。 ⑤ 急性膵炎は臨床症状・血液生化学(膵酵素上昇)・画像で診断され、電子顕微鏡が病理診断に汎用される疾患ではない。
📋 まとめの表を見る:電子顕微鏡検査が有用な対象・有用でない対象
腎生検は光学顕微鏡・蛍光抗体法・電子顕微鏡の3手法を組み合わせて評価するのが基本。
第58回 午前57(病理組織細胞学)
胸水細胞診のPapanicolaou染色標本とGiemsa染色標本とを別に示す。矢印で示すのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA057.53192b0128.jpg
①組織球 ②腺癌細胞 ③小細胞癌細胞 ④扁平上皮癌細胞 ⑤反応性中皮細胞
正答: ⑤反応性中皮細胞
ポイント 反応性中皮細胞は、胸膜・腹膜の刺激や炎症・体腔液貯留に伴い増殖した良性の中皮細胞で、細胞質辺縁の刷子縁様構造、細胞間の窓(window)、ライトグリーン好性の二相性細胞質、軽度の核腫大と明瞭な核小体を示すが、N/C比は保たれ集塊辺縁が滑らかな点で腺癌細胞と鑑別される。腺癌細胞は核の偏在・大型核小体・細胞質内空胞(印環様)・辺縁が外方膨隆する集塊を示す。体腔液細胞診では良悪の鑑別が中心となる。●良性で出現する細胞=反応性中皮細胞・組織球(マクロファージ)・中皮細胞集塊。●悪性で問題となる細胞=腺癌細胞(細胞質内空胞・集塊の外方膨隆)・小細胞癌細胞(裸核状・木目込み)・扁平上皮癌細胞(オレンジG好性の角化)。●鑑別の補助=免疫染色(中皮=calretinin・D2-40陽性、腺癌=CEA・MOC-31陽性)。
選択肢ごとの解説
① 組織球(マクロファージ)は泡沫状細胞質と腎形核をもつ良性細胞で、本問の所見とは異なる。 ② 腺癌細胞は細胞質内空胞や外方膨隆する集塊を示すが、矢印の二相性細胞質・窓構造を伴う良性像とは異なる。 ③ 小細胞癌細胞は裸核状で核の鋳型現象を示す高悪性度細胞で、本図の良性所見には合致しない。 ④ 扁平上皮癌細胞はオレンジG好性の角化や奇怪な濃染核を示すが、本図の二相性細胞質を伴う良性像とは異なる。 ⑤ 正しい。窓構造・二相性細胞質・滑らかな集塊辺縁は反応性中皮細胞に一致する所見である。
📋 まとめの表を見る:体腔液細胞診における良性(反応性中皮細胞)と悪性細胞の鑑別
体腔液細胞診では転移性腺癌が最多。
第58回 午前58(病理組織細胞学)
病理解剖中の術者の結核感染防止に有効なのはどれか。
①手指消毒 ②空気清浄機の使用 ③ツベルクリン反応 ④微粒子用マスクの着用 ⑤剖検室のホルマリンくん蒸消毒
正答: ④微粒子用マスクの着用
ポイント 結核は飛沫核(5μm以下の微粒子)を吸入する空気感染(飛沫核感染)で伝播するため、剖検など曝露の場では微粒子用マスク(N95等の高性能微粒子マスク)の着用が術者の感染防止に有効である。N95は微小な飛沫核を高率に捕集し、顔面に密着させて吸気の漏れを防ぐことで吸入を抑える。手指消毒は接触感染への対策、ツベルクリン反応は感染の有無を調べる検査であって、いずれも吸入を防ぐ防護策ではない。●空気感染(飛沫核)対策=N95微粒子用マスクの着用・陰圧の隔離環境・十分な換気。●結核の検査=ツベルクリン反応・インターフェロンγ遊離試験(IGRA)は感染診断であり防護ではない。●消毒の使い分け=手指消毒は接触感染対策、ホルマリンくん蒸は環境消毒で、いずれも飛沫核の吸入防止にはならない。
選択肢ごとの解説
① 手指消毒は接触感染の対策であり、空気感染(飛沫核感染)する結核の吸入防止には直接寄与しない。 ② 空気清浄機は補助的な環境対策にすぎず、術者が吸入する結核の飛沫核を確実に防ぐ手段とはならない。 ③ ツベルクリン反応は結核感染の有無を調べる検査であり、感染を防止する防護措置ではない。 ④ 正しい。微粒子用マスク(N95等)は飛沫核を捕集し、空気感染する結核の吸入を防ぐのに有効である。 ⑤ ホルマリンくん蒸は剖検室の環境消毒であり、術者が吸入する飛沫核を防ぐ個人防護ではない。
第58回 午前59(臨床血液学)
体重50 kgの健常成人における循環血液量の近似値はどれか。
①1リットル ②2リットル ③4リットル ④6リットル ⑤8リットル
正答: ③4リットル
ポイント 健常成人の循環血液量は体重の約1/13(おおよそ7〜8%、約80mL/kg)とされ、体重50kgでは約4L(50×0.08=4L)となる。循環血液量は血圧・組織灌流を保つ循環動態の基盤で、急速に全体の15〜20%以上を失うと出血性ショックに至る。血液は液体成分の血漿(約55%)と細胞成分の血球(約45%、大部分が赤血球)からなり、両者の容積比はヘマトクリットで示される。●血液量の概算=体重の約8%(80mL/kg)、体重50kg=約4L、60kg=約5L。●血液の組成=血漿(水・蛋白・電解質)約55%、血球(赤血球・白血球・血小板)約45%。●循環血漿量・赤血球量の測定=色素希釈法(血漿)・放射性標識赤血球法で算定する。
選択肢ごとの解説
① 1リットルは体重50kgの循環血液量の概算(約4L)より大幅に少なく、近似値として合致しない。 ② 2リットルも概算の約4Lより少なく、健常成人50kgの循環血液量の近似値としては不適である。 ③ 正しい。体重の約8%として50×0.08=4Lとなり、健常成人50kgの循環血液量の近似値に一致する。 ④ 6リットルは体重50kgでは過大で、おおよそ体重75kg相当の循環血液量にあたり合致しない。 ⑤ 8リットルは体重50kgの循環血液量としては大きすぎ、近似値として合致しない。
第58回 午前60(臨床血液学)
血友病Aの患者で異常値を示すのはどれか。
①血小板数 ②フィブリノゲン ③第Ⅴ因子活性 ④von Willebrand因子活性 ⑤活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
正答: ⑤活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
ポイント 血友病Aは第Ⅷ因子(内因系凝固因子)の先天的欠乏によるX連鎖劣性遺伝の出血性疾患で、関節内・筋肉内などの深部出血を特徴とし、内因系・共通系の経路を反映する活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長する。第Ⅷ因子は内因系に属するためAPTTのみが延長し、外因系を反映するプロトロンビン時間(PT)、血小板数、フィブリノゲン、von Willebrand因子は正常である。●APTT延長(内因系・共通系の異常)=血友病A(第Ⅷ因子)・血友病B(第Ⅸ因子)・第Ⅺ/Ⅻ因子欠乏・ヘパリン。●PT延長(外因系・共通系の異常)=第Ⅶ因子欠乏・ビタミンK欠乏・ワルファリン・肝障害。●PT・APTT両者延長=共通系(第Ⅹ・Ⅴ・Ⅱ因子、フィブリノゲン)の異常・DIC・重症肝障害。
選択肢ごとの解説
① 血小板数は血友病Aでは正常で、一次止血を担う血小板系には異常を生じず凝固因子のみが障害される。 ② フィブリノゲン(第Ⅰ因子)は血友病Aでは正常で、第Ⅷ因子欠乏の影響を受けない共通系の因子である。 ③ 第Ⅴ因子活性は共通系に属する凝固因子で、第Ⅷ因子欠乏である血友病Aでは正常に保たれる。 ④ von Willebrand因子活性は血友病Aでは正常で、これが低下する場合はvon Willebrand病を示唆する。 ⑤ 正しい。APTTは内因系を反映し、第Ⅷ因子欠乏の血友病Aで延長する唯一の異常値である。
📋 まとめの表を見る:PT・APTTの延長パターンと欠乏(異常)凝固因子
PTは外因系・共通系、APTTは内因系・共通系の凝固活性を反映する。
第58回 午前61(臨床血液学)
自動血球計数器で血小板数が偽低値を示すのはどれか。
①白血球減少症 ②血小板無力症 ③巨大血小板の出現 ④破砕赤血球の出現 ⑤パイログロブリン血症
正答: ③巨大血小板の出現
ポイント 自動血球計数器は通過する粒子の大きさで血球を識別するため、巨大血小板が出現すると小型赤血球の閾値域を超えて血小板としてカウントされず、血小板数が偽低値となる(同時に赤血球側に誤計数されることもある)。このサイズ依存の計数原理に起因する偽値は、末梢血塗抹標本での目視確認によって補正・確認する必要がある。●血小板偽低値の原因=巨大血小板(Bernard-Soulier症候群等)・EDTA依存性血小板凝集(採血管由来の偽性血小板減少)・血小板衛星現象。●血小板偽高値の原因=破砕赤血球・小型赤血球・白血球破砕片・寒冷凝集などが血小板サイズに誤計数される。●確認法=末梢血塗抹標本の鏡検、クエン酸採血での再検、用手法での計数で真値を確認する。
選択肢ごとの解説
① 白血球減少症は白血球数の減少であり、血小板計数の偽低値を直接引き起こす要因とはならない。 ② 血小板無力症は血小板の凝集機能の異常(一次止血障害)で、血小板数自体は正常に計数される。 ③ 正しい。巨大血小板はサイズ閾値を外れて血小板として計数されず、血小板数が偽低値となる。 ④ 破砕赤血球は小型のため血小板サイズに誤計数され、むしろ血小板数を偽高値にする要因である。 ⑤ パイログロブリン血症は加温で析出する蛋白で、粒子として誤計数され血小板偽高値の原因となりうる。
第58回 午前62(臨床血液学)
ビタミンK欠乏で異常を示すのはどれか。2つ選べ。
①出血時間 ②第XIII因子活性 ③フィブリノゲン ④プロテインC活性 ⑤プロトロンビン時間(PT)
正答: ④プロテインC活性・⑤プロトロンビン時間(PT)
ポイント ビタミンKは第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子およびプロテインC・プロテインSのγ-カルボキシル化(グルタミン酸残基の修飾)に必須の補酵素で、欠乏するとこれら因子が活性を失う。外因系・共通系を反映するプロトロンビン時間(PT)が延長し、抗凝固因子であるプロテインC活性も低下する。第Ⅷ因子・第XIII因子・フィブリノゲン・出血時間(血小板・血管系)はビタミンK非依存性であり正常に保たれる。●ビタミンK依存性凝固因子=第Ⅱ(プロトロンビン)・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子。●ビタミンK依存性抗凝固因子=プロテインC・プロテインS。●ビタミンK欠乏で延長する検査=PT(半減期の短い第Ⅶ因子を反映し最も鋭敏)・進行するとAPTTも延長する。
選択肢ごとの解説
① 出血時間は血小板・血管系による一次止血を反映する検査で、ビタミンK欠乏では正常である。 ② 第XIII因子はビタミンK非依存性の凝固因子で、ビタミンK欠乏でも活性は正常に保たれる。 ③ フィブリノゲンはビタミンK非依存性の第Ⅰ因子で、ビタミンK欠乏では正常である。 ④ 正しい。プロテインCはビタミンK依存性の抗凝固因子で、欠乏により活性が低下する。 ⑤ 正しい。PTはビタミンK依存性の外因系因子(特に第Ⅶ因子)を反映し、欠乏で延長する。
📋 まとめの表を見る:ビタミンK依存性の凝固因子と欠乏時の検査所見
ビタミンKは肝臓での凝固因子・抗凝固因子の産生時に、グルタミン酸残基をγ-カルボキシル化する反応の補酵素として働く。
第58回 午前63(臨床血液学)
23歳の女性。血液所見:Hb 9.8 g/dl、MCV 72 fl、MCHC 29 g/dl。白血球数と血小板数とに異常を認めない。血清鉄は上昇し、総鉄結合能は低下している。考えられるのはどれか。2つ選べ。
①サラセミア ②鉄欠乏性貧血 ③鉄芽球性貧血 ④再生不良性貧血 ⑤巨赤芽球性貧血
正答: ①サラセミア・③鉄芽球性貧血
ポイント 本例はHb低値、MCV 72fL・MCHC 29g/dLの小球性低色素性貧血で、白血球・血小板は正常。血清鉄上昇かつ総鉄結合能(TIBC)低下という鉄過剰型の鉄動態を示す。小球性低色素性貧血のうち鉄が低下する鉄欠乏性貧血とは逆のパターンで、鉄利用障害のサラセミア(グロビン合成障害)と鉄芽球性貧血(ヘム合成障害で環状鉄芽球を生じ鉄が利用されず蓄積)が該当する。●小球性低色素性貧血の鑑別=鉄欠乏性貧血(血清鉄低下・TIBC上昇・フェリチン低下)/サラセミア(鉄正常〜高値・標的赤血球・HbA2上昇)/鉄芽球性貧血(鉄高値・TIBC低下・環状鉄芽球)/慢性炎症に伴う貧血(鉄低下・TIBC低下・フェリチン上昇)。●鉄過剰を示す小球性貧血=サラセミア・鉄芽球性貧血。
選択肢ごとの解説
① 正しい。サラセミアはグロビン合成障害による小球性低色素性貧血で、鉄利用障害により血清鉄が高値となる。 ② 鉄欠乏性貧血も小球性低色素性だが、血清鉄低下・総鉄結合能上昇を示し本例の鉄動態と逆である。 ③ 正しい。鉄芽球性貧血はヘム合成障害で鉄が利用されず蓄積し、血清鉄上昇・総鉄結合能低下を示す。 ④ 再生不良性貧血は汎血球減少を伴う正球性貧血で、白血球・血小板正常の本例には合致しない。 ⑤ 巨赤芽球性貧血はビタミンB₁₂・葉酸欠乏による大球性貧血で、小球性の本例には合致しない。
第58回 午前64(臨床血液学)
悪性貧血の所見でないのはどれか。
①過分葉好中球増加 ②間接ビリルビン高値 ③乳酸脱水素酵素高値 ④血清ビタミンB₆低値 ⑤尿中メチルマロン酸排泄量増加
正答: ④血清ビタミンB₆低値
ポイント 悪性貧血はビタミンB₁₂欠乏(自己免疫性胃炎・内因子欠乏による吸収障害)に起因する巨赤芽球性貧血で、低下するのは血清ビタミンB₆ではなくビタミンB₁₂である。ビタミンB₁₂欠乏ではDNA合成障害により大球性貧血と過分葉好中球を生じ、無効造血により間接ビリルビンと乳酸脱水素酵素(LDH)が上昇し、メチルマロン酸代謝が障害されて尿中メチルマロン酸排泄が増加する。●悪性貧血(ビタミンB₁₂欠乏)の所見=大球性・過分葉好中球・血清ビタミンB₁₂低下・尿中メチルマロン酸増加・血中ホモシステイン上昇。●無効造血を反映する所見=間接ビリルビン高値・LDH高値・網赤血球は不適切に低い。●合併症=亜急性連合性脊髄変性症などの神経症状(葉酸欠乏では神経症状を欠く点が鑑別)。
選択肢ごとの解説
① 過分葉好中球増加はビタミンB₁₂欠乏によるDNA合成障害を反映する悪性貧血の所見である。 ② 間接ビリルビン高値は骨髄内での無効造血による赤芽球の崩壊を反映する悪性貧血の所見である。 ③ 乳酸脱水素酵素高値は骨髄内での無効造血による細胞崩壊を反映する悪性貧血の所見である。 ④ 誤り。悪性貧血で低下するのはビタミンB₁₂であり、ビタミンB₆低値は所見として合致しない。 ⑤ 尿中メチルマロン酸排泄量増加はビタミンB₁₂欠乏によるメチルマロン酸代謝障害を反映する所見である。
📋 まとめの表を見る:赤血球指数(MCV)による貧血の分類と主な疾患
基準値の目安:MCV 83〜99fL、MCH 28〜35pg、MCHC 31〜36g/dL
第58回 午前65(臨床血液学)
骨髄異形成症候群で特徴的なのはどれか。2つ選べ。
①環状鉄芽球 ②赤血球連銭形成 ③微小骨髄巨核球 ④中毒性顆粒好中球 ⑤毛状突起リンパ球
正答: ①環状鉄芽球・③微小骨髄巨核球
ポイント 骨髄異形成症候群(MDS)は造血幹細胞のクローン性異常により無効造血と血球の異形成(dysplasia)を生じる疾患群で、赤芽球系では鉄がミトコンドリアに蓄積した環状鉄芽球、巨核球系では微小(単核)巨核球が特徴的な異形成所見である。末梢血では血球減少を示しつつ骨髄は正〜過形成を呈し、芽球増加や染色体異常を伴って急性白血病へ移行しうる前白血病状態である。●MDSの三系統の異形成=赤芽球系(環状鉄芽球・多核・核辺縁不整)/顆粒球系(偽Pelger-Huët核・脱顆粒)/巨核球系(微小巨核球・分離多核巨核球)。●環状鉄芽球=鉄染色でミトコンドリア鉄が核周囲を環状に取り囲む像で、鉄芽球性貧血やMDSの一部で出現。●予後評価=芽球比率・血球減少の系統数・染色体核型でリスク層別化する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。環状鉄芽球は鉄がミトコンドリアに蓄積した赤芽球で、MDSの赤芽球系異形成を示す特徴的所見である。 ② 赤血球連銭形成は高グロブリン血症(多発性骨髄腫等)でみられる所見で、MDSに特徴的なものではない。 ③ 正しい。微小骨髄巨核球は単核・小型の巨核球で、巨核球系の異形成を示すMDSの特徴的所見である。 ④ 中毒性顆粒好中球は重症感染症などでみられる反応性の変化で、MDSに特徴的な異形成所見ではない。 ⑤ 毛状突起リンパ球(毛様細胞)は細胞質に絨毛状突起をもち、ヘアリーセル白血病の所見でMDSとは異なる。
📋 まとめの表を見る:骨髄異形成症候群〈MDS〉の血球系統別 異形成所見
骨髄は多くの場合、正〜過形成(低形成の病型もある)、芽球比率は20%未満(20%以上は急性骨髄性白血病)。染色体異常は5q-・-7/7q-・+8など多様で、病型特異的なものは少ない。
第58回 午前66(臨床血液学)
34歳の男性。血液所見:白血球5,200/μl、Hb 7.5 g/dl、血小板1.1万/μl、血清FDP 42 μg/ml、血漿フィブリノゲン95 mg/dl。骨髄血のWright-Giemsa染色標本(別冊No.10)を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA066.48ddf8e708.jpg
①再生不良性貧血 ②巨赤芽球性貧血 ③播種性血管内凝固(DIC) ④先天性無フィブリノゲン血症 ⑤血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
正答: ③播種性血管内凝固(DIC)
ポイント 本例は貧血と著明な血小板減少(1.1万/μL)に加え、血清FDP高値・フィブリノゲン低値という消費性凝固障害を示し、骨髄に異常細胞(Auer小体集簇=faggot細胞を伴う前骨髄球)が出現することから、急性前骨髄球性白血病(APL、AML-M3)に合併した播種性血管内凝固(DIC)が考えられる。APLは異常前骨髄球の顆粒に組織因子・プロテアーゼが豊富で、強いDICを高頻度に併発する。●DICの所見=血小板減少・FDP(およびDダイマー)上昇・フィブリノゲン低下・PT/APTT延長・血中分解産物の増加。●DICを来しやすい病態=APL(M3)・敗血症・産科的合併症・固形癌・大量組織損傷。●類縁との鑑別=先天性無フィブリノゲン血症はFDP上昇を伴わず、TTPは凝固系正常で破砕赤血球・神経症状が前景となる。
選択肢ごとの解説
① 再生不良性貧血は汎血球減少を来すが、FDP上昇・フィブリノゲン低下という消費性凝固障害は伴わない。 ② 巨赤芽球性貧血はビタミンB₁₂・葉酸欠乏による大球性貧血で、本例の凝固異常と前骨髄球の所見には合致しない。 ③ 正しい。血小板減少・FDP上昇・フィブリノゲン低下の消費性凝固障害はDICに合致し、APLに併発した像である。 ④ 先天性無フィブリノゲン血症はフィブリノゲン欠乏だが、FDP上昇や前骨髄球増加は伴わない。 ⑤ TTPは凝固系正常で破砕赤血球・血小板減少・神経症状を呈し、FDP高値・フィブリノゲン低下は来さない。
第58回 午前67(臨床血液学)
34歳の男性。血液所見:白血球5,200/μl、Hb 7.5 g/dl、血小板1.1万/μl、血清FDP 42 μg/ml、血漿フィブリノゲン95 mg/dl。骨髄血のWright-Giemsa染色標本(別冊No.10)を別に示す。この患者で予想される遺伝子異常はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA067.48ddf8e708.jpg
①AML1/ETO ②BCR/ABL ③BCL2/IgH ④MYC/IgH ⑤PML/RARα
正答: ⑤PML/RARα
ポイント 本例は急性前骨髄球性白血病(APL、AML-M3)と考えられ、その本態はt(15;17)転座により15番染色体のPML遺伝子と17番染色体のレチノイン酸受容体α(RARα)遺伝子が融合したPML/RARαキメラ遺伝子である。この融合蛋白が骨髄系細胞の前骨髄球段階での分化を停止させる。全トランス型レチノイン酸(ATRA)が分化誘導療法として奏効する分子標的の根拠でもある。●白血病・リンパ腫の代表的融合遺伝子=APL(M3)=PML/RARα[t(15;17)]/AML(M2)=AML1/ETO[t(8;21)]/慢性骨髄性白血病・一部ALL=BCR/ABL[t(9;22)=Philadelphia染色体]。●リンパ系の転座=濾胞性リンパ腫=BCL2/IgH[t(14;18)]/Burkittリンパ腫=MYC/IgH[t(8;14)]。●APLの治療標的=PML/RARαに対しATRA・亜ヒ酸が分化・アポトーシスを誘導する。
選択肢ごとの解説
① AML1/ETOはt(8;21)による融合遺伝子で、APLではなくAML(M2)に特徴的である。 ② BCR/ABLはPhiladelphia染色体[t(9;22)]の融合遺伝子で、慢性骨髄性白血病等にみられAPLとは異なる。 ③ BCL2/IgHはt(14;18)による融合で、濾胞性リンパ腫に特徴的でありAPLとは異なる。 ④ MYC/IgHはt(8;14)による融合で、Burkittリンパ腫に特徴的でありAPLとは異なる。 ⑤ 正しい。PML/RARαはt(15;17)による融合遺伝子で、急性前骨髄球性白血病(APL)に特徴的な遺伝子異常である。
📋 まとめの表を見る:急性骨髄性白血病〈AML〉のFAB分類と特徴
急性リンパ性白血病(ALL)はMPO陰性(3%未満)で鑑別する。染色体異常・融合遺伝子は既存の『白血病の染色体異常と融合遺伝子』表を参照。
第58回 午前68(臨床微生物学)
RNAとDNAのいずれかのみを有するのはどれか。2つ選べ。
①ウイルス ②クラミジア ③リケッチア ④マイコプラズマ ⑤バクテリオファージ
正答: ①ウイルス・⑤バクテリオファージ
ポイント 細菌・リケッチア・クラミジア・マイコプラズマなど細胞構造をもつ生物はDNAとRNAの両方の核酸を有するが、ウイルスとバクテリオファージ(細菌に感染するウイルス)は核酸としてDNAかRNAのいずれか一方のみをもつ。ウイルスは核酸とそれを包むカプシド蛋白からなる非細胞性の感染因子で、自己のエネルギー産生系や蛋白合成系をもたず宿主細胞内でのみ増殖する。●両核酸(DNA+RNA)をもつ=細菌・リケッチア・クラミジア・マイコプラズマ(いずれも原核生物で細胞構造をもつ)。●片方の核酸のみ=ウイルス・バクテリオファージ(DNAウイルスかRNAウイルスのいずれか)。●偏性細胞内寄生=リケッチア・クラミジアはエネルギー代謝の一部を宿主に依存するが、核酸は両方をもつ点でウイルスと異なる。
選択肢ごとの解説
① 正しい。ウイルスは核酸としてDNAかRNAのいずれか一方のみをもつ非細胞性の感染因子である。 ② クラミジアは偏性細胞内寄生だが、原核生物でありDNAとRNAの両方の核酸をもつ。 ③ リケッチアも偏性細胞内寄生する細菌で、DNAとRNAの両方の核酸をもつ。 ④ マイコプラズマは細胞壁を欠く最小の細菌だが、DNAとRNAの両方の核酸をもつ。 ⑤ 正しい。バクテリオファージは細菌に感染するウイルスで、DNAかRNAのいずれか一方のみをもつ。
第58回 午前69(臨床微生物学)
抗酸性を示すのはどれか。
①Actinomyces spp. ②Corynebacterium spp. ③Listeria spp. ④Nocardia spp. ⑤Propionibacterium spp.
正答: ④Nocardia spp.
ポイント Nocardia(ノカルジア)は土壌に存在する好気性放線菌で、菌糸状に発育しグラム陽性に染まるとともに、細胞壁に脂質(短鎖のミコール酸)を含むため弱い抗酸性(変法Ziehl-Neelsen=Kinyoun法で陽性)を示す。免疫不全者で肺ノカルジア症や脳膿瘍を起こす。同じ放線菌でも嫌気性のActinomycesは抗酸性を示さない点が鑑別となる。●抗酸性を示す=抗酸菌(Mycobacterium、強い抗酸性)・Nocardia(部分/弱抗酸性)・一部の原虫のオーシスト(Cryptosporidium等)。●抗酸性を示さないグラム陽性桿菌=Actinomyces(嫌気性放線菌)・Corynebacterium・Listeria・Propionibacterium。●抗酸性の機序=細胞壁ミコール酸が石炭酸フクシンを保持し酸アルコールで脱色されない性質による。
選択肢ごとの解説
① Actinomyces spp.は嫌気性の放線菌で硫黄顆粒を形成するが、抗酸性は示さない。 ② Corynebacterium spp.はグラム陽性桿菌でジフテリア菌等を含むが、抗酸性は示さない。 ③ Listeria spp.はグラム陽性桿菌で通性嫌気性、低温発育性をもつが、抗酸性は示さない。 ④ 正しい。Nocardia spp.は好気性放線菌で細胞壁にミコール酸を含み、弱い(部分)抗酸性を示す。 ⑤ Propionibacterium spp.は嫌気性グラム陽性桿菌で痤瘡等に関与するが、抗酸性は示さない。
第58回 午前70(臨床微生物学)
消毒用エタノール〈70〜80 %エタノール〉に対して抵抗性を有するのはどれか。
正答: ③炭疽菌
ポイント 消毒用エタノール(70〜80%)は栄養型細菌・多くのウイルス・真菌に有効な中水準消毒薬だが、芽胞には無効である。炭疽菌(Bacillus anthracis)は芽胞を形成する菌で、芽胞は厚い殻と低含水率により乾燥・熱・消毒薬に強い抵抗性を示すため、エタノールに抵抗性をもつ。芽胞の殺滅にはオートクレーブ等の高水準処理を要する。●エタノール(中水準)が無効=芽胞(炭疽菌・Clostridium・Bacillus属)・一部のエンベロープをもたないウイルス(ノロウイルス等)。●エタノールが有効=栄養型細菌(大腸菌・緑膿菌・結核菌)・エンベロープウイルス・真菌(カンジダ)。●芽胞対策=高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)・過酢酸・高濃度次亜塩素酸ナトリウムなどを用いる。
選択肢ごとの解説
① 大腸菌は栄養型のグラム陰性桿菌で芽胞を作らず、消毒用エタノールにより速やかに殺菌される。 ② 結核菌はミコール酸に富む細胞壁をもつが、消毒用エタノールに対しては感受性があり殺菌される。 ③ 正しい。炭疽菌は芽胞を形成し、芽胞は厚い殻と低含水率により消毒用エタノールに抵抗性を示す。 ④ 緑膿菌は栄養型のグラム陰性桿菌で、消毒用エタノールにより殺菌され抵抗性はない。 ⑤ カンジダは真菌だが消毒用エタノールに感受性があり、栄養型として殺菌される。
第58回 午前71(臨床微生物学)
β-ラクタム環を有する抗菌薬はどれか。2つ選べ。
①セフェム系 ②ポリペプチド系 ③マクロライド系 ④モノバクタム系 ⑤アミノグリコシド系
正答: ①セフェム系・④モノバクタム系
ポイント β-ラクタム系抗菌薬はβ-ラクタム環を共通構造としてもち、細菌の細胞壁ペプチドグリカン合成酵素(ペニシリン結合蛋白)に結合して細胞壁合成を阻害する。セフェム系とモノバクタム系はいずれもβ-ラクタム環をもつβ-ラクタム系に属する。一方ポリペプチド系・マクロライド系・アミノグリコシド系はβ-ラクタム環をもたない別系統である。●β-ラクタム系(β-ラクタム環あり)=ペニシリン系・セフェム(セファロスポリン)系・カルバペネム系・モノバクタム系。●細胞壁合成阻害(β-ラクタム以外)=グリコペプチド系(バンコマイシン)・ホスホマイシン。●β-ラクタム環をもたない=マクロライド系・アミノグリコシド系(蛋白合成阻害)・キノロン系(核酸合成阻害)・ポリペプチド系(細胞膜障害)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。セフェム系(セファロスポリン系)はβ-ラクタム環を有するβ-ラクタム系抗菌薬である。 ② ポリペプチド系(ポリミキシン等)は細胞膜を障害する薬剤で、β-ラクタム環をもたない。 ③ マクロライド系は蛋白合成(50Sリボソーム)を阻害する薬剤で、β-ラクタム環をもたない。 ④ 正しい。モノバクタム系(アズトレオナム)は単環性のβ-ラクタム環を有するβ-ラクタム系抗菌薬である。 ⑤ アミノグリコシド系は蛋白合成(30Sリボソーム)を阻害する薬剤で、β-ラクタム環をもたない。
第58回 午前72(臨床微生物学)
β-ラクタマーゼ試験を実施する必要がないのはどれか。
①Haemophilus influenzae ②Moraxella catarrhalis ③Neisseria gonorrhoeae ④Staphylococcus aureus ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ⑤Streptococcus pneumoniae
ポイント β-ラクタマーゼ試験はβ-ラクタム環を加水分解してペニシリン系を不活化する酵素の産生を検出し、薬剤選択に用いる。検査対象となるのはβ-ラクタマーゼ産生がペニシリン耐性に直結するHaemophilus influenzae・Moraxella catarrhalis・Neisseria gonorrhoeae・Staphylococcus aureus(ブドウ球菌)である。肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)のペニシリン耐性はβ-ラクタマーゼ産生ではなくペニシリン結合蛋白(PBP)の変異によるため、β-ラクタマーゼ試験を行う必要がない。●β-ラクタマーゼ試験が有用な菌=H. influenzae・M. catarrhalis・N. gonorrhoeae・S. aureus(ブドウ球菌・腸内細菌の一部)。●β-ラクタマーゼ非産生で耐性化する菌=肺炎球菌(PBPの変異=PRSP)。●検出法=ニトロセフィン法(発色基質の加水分解で赤色化)が代表的。
選択肢ごとの解説
① Haemophilus influenzaeはβ-ラクタマーゼ産生でペニシリン耐性を示すことがあり、試験が必要である。 ② Moraxella catarrhalisは高率にβ-ラクタマーゼを産生するため、試験が必要である。 ③ Neisseria gonorrhoeae(淋菌)はβ-ラクタマーゼ産生株があり、試験が必要である。 ④ Staphylococcus aureus(ブドウ球菌)はβ-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)を産生するため、試験が必要である。 ⑤ 正しい。肺炎球菌のペニシリン耐性はPBP変異によるため、β-ラクタマーゼ試験は不要である。
第58回 午前73(臨床微生物学)
85歳の男性。肺の空洞性病変を認めたため気管支鏡検査を行った。生検組織のPAS染色標本を別に示す。原因菌として考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA073.bf7d93dc8a.jpg
①Aspergillus spp. ②Cryptococcus spp. ③Legionella spp. ④Mycoplasma spp. ⑤Pneumocystis spp.
正答: ①Aspergillus spp.
ポイント 肺の空洞性病変で、生検組織のPAS染色(および鍍銀のGrocott染色)でY字状に鋭角分岐し隔壁を有する菌糸が検出される所見はAspergillus(アスペルギルス)属に合致する。アスペルギルスは空洞内に菌球(アスペルギローマ)を形成したり、免疫不全者では侵襲性肺アスペルギルス症を起こす糸状真菌である。真菌は形態(菌糸か酵母か、莢膜の有無)と染色性で鑑別する。●糸状真菌(菌糸)=Aspergillus(鋭角分岐・有隔菌糸)・ムーコル(鈍角分岐・無隔の幅広菌糸)。●酵母様真菌=Cryptococcus(厚い莢膜・mucicarmine陽性)・Candida(仮性菌糸と出芽)。●その他の肺病原体=Pneumocystis(嚢子をGrocottで黒染・蜂巣状滲出物)・Legionella(細菌、培養・尿中抗原で診断)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。空洞性病変でPAS陽性の鋭角分岐・有隔菌糸を示す所見はAspergillus spp.に合致する。 ② Cryptococcus spp.は厚い莢膜をもつ酵母様真菌で、菌糸を形成せず本図の所見とは異なる。 ③ Legionella spp.は細胞内寄生の細菌で、PAS染色での菌糸像は示さない。 ④ Mycoplasma spp.は細胞壁を欠く最小の細菌で、組織内に菌糸を形成せず本図の所見とは異なる。 ⑤ Pneumocystis spp.は嚢子をGrocottで黒染するが菌糸は作らず、蜂巣状滲出物を背景とし本図とは異なる。
第58回 午前74(臨床微生物学)
腸管出血性大腸菌が産生するのはどれか。
①志賀毒素(Vero toxin) ②表皮剝離毒素(exfoliative toxin : ET) ③耐熱性腸管毒(heat-stable enterotoxin : ST) ④易熱性腸管毒(heat-labile enterotoxin : LT) ⑤毒素性ショック症候群毒素(toxic shock syndrome toxin-1 : TSST-1)
正答: ①志賀毒素(Vero toxin)
ポイント 腸管出血性大腸菌(EHEC、代表はO157:H7)は志賀毒素(Vero毒素、Shiga toxin)を産生し、これが血管内皮細胞を傷害して出血性大腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こす。Vero毒素は赤痢菌の志賀毒素と同等の60Sリボソーム不活化作用をもち蛋白合成を阻害する。各細菌が産生する毒素は病型と直結する。●毒素と原因菌=志賀毒素(Vero毒素)=腸管出血性大腸菌・赤痢菌/易熱性腸管毒(LT)・耐熱性腸管毒(ST)=毒素原性大腸菌(下痢症)。●黄色ブドウ球菌の毒素=表皮剝離毒素(ET、SSSS)・TSST-1(毒素性ショック症候群)・腸管毒(食中毒)。●作用機序=Vero毒素はリボソーム不活化で細胞死、LTはcAMP上昇で水分分泌亢進する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。志賀毒素(Vero毒素)は腸管出血性大腸菌が産生し、出血性大腸炎やHUSの原因となる。 ② 表皮剝離毒素(ET)は黄色ブドウ球菌が産生しブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群を起こす毒素である。 ③ 耐熱性腸管毒(ST)は毒素原性大腸菌が産生する下痢原性毒素で、腸管出血性大腸菌の主病原ではない。 ④ 易熱性腸管毒(LT)は毒素原性大腸菌が産生しcAMP上昇で水様性下痢を起こす毒素である。 ⑤ TSST-1は黄色ブドウ球菌が産生し毒素性ショック症候群を起こすスーパー抗原で、腸管出血性大腸菌とは無関係である。
第58回 午前75(臨床微生物学)
Acinetobacter baumanniiについて誤っているのはどれか。
①運動性がある。 ②偏性好気性である。 ③グルコースを分解する。 ④オキシダーゼ陰性である。 ⑤グラム陰性球桿菌である。
正答: ①運動性がある。
ポイント Acinetobacter baumanniiは鞭毛をもたず運動性がないグラム陰性球桿菌で、偏性好気性、ブドウ糖を酸化的に分解し、オキシダーゼ陰性を示す。環境や医療環境に広く分布し、多剤耐性アシネトバクターとして院内感染の原因となる。設問の「運動性がある」が誤りで、本菌は非運動性である(ただし固形面を滑走するtwitching様運動を示すことはある)。●Acinetobacter baumanniiの性状=グラム陰性球桿菌・偏性好気性・非運動性・オキシダーゼ陰性・カタラーゼ陽性・ブドウ糖酸化。●オキシダーゼ陰性のブドウ糖非発酵/酸化菌=Acinetobacter・Stenotrophomonas。●オキシダーゼ陽性のブドウ糖非発酵菌=緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)で、本菌との鑑別点となる。
選択肢ごとの解説
① 誤り。Acinetobacter baumanniiは鞭毛をもたず非運動性で、運動性があるという記述は正しくない。 ② 偏性好気性であり酸素を利用して発育するという記述は正しく、本菌の性状に合致する。 ③ グルコースを酸化的に分解する(ブドウ糖酸化、非発酵)という記述は正しく本菌の性状に合致する。 ④ オキシダーゼ陰性であるという性状の記述は正しく、オキシダーゼ陽性の緑膿菌との鑑別点となる。 ⑤ グラム陰性球桿菌であるという形態の記述は正しく、本菌の典型的な形態に合致する。
第58回 午前76(臨床微生物学)
Orientia tsutsugamushiについて正しいのはどれか。2つ選べ。
①尿中抗原検査で検出できる。 ②培養には血液寒天培地を用いる。 ③病原体はダニによって媒介される。 ④治療にはテトラサイクリンを用いる。 ⑤細胞壁にペプチドグリカンを有する。
正答: ③病原体はダニによって媒介される。・④治療にはテトラサイクリンを用いる。
ポイント Orientia tsutsugamushiはツツガムシ病(恙虫病)の病原体で、リケッチア科に近縁の偏性細胞内寄生菌。発育鶏卵や培養細胞内でのみ増殖し、人工培地では培養できない。媒介はツツガムシ(恙虫=ダニの一種であるアカツツガムシ・タテツツガムシ等)の幼虫の刺咬により、発熱・発疹・刺し口が主要な三徴で、所属リンパ節腫脹を伴うことが多い。細胞壁はペプチドグリカンやリポ多糖を欠き、グラム染色性に乏しい。治療はテトラサイクリン系(ドキシサイクリンなど)が第一選択で、細胞内移行性のよい薬剤を要する。●ダニ媒介性疾患=ツツガムシ病・日本紅斑熱・ライム病・回帰熱・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)。●細胞内寄生で人工培地培養不能な細菌=リケッチア・クラミジア・コクシエラ(Q熱)。
選択肢ごとの解説
① 尿中抗原検査は確立されておらず、診断は血清抗体価の上昇やPCRによる遺伝子検出で行う。 ② 偏性細胞内寄生菌であり血液寒天培地を含む人工培地では培養できず、発育鶏卵や培養細胞を用いる。 ③ 正しい。ツツガムシ(ダニの一種)の幼虫の刺咬により媒介され、刺し口を形成する。 ④ 正しい。テトラサイクリン系(ドキシサイクリン等)が第一選択で、細胞内移行性のよい薬剤が有効である。 ⑤ 細胞壁にペプチドグリカンを欠くため、これを標的とするβ-ラクタム系は無効である。
第58回 午前77(臨床微生物学)
手足口病の原因となるのはどれか。
正答: ②ウイルス
ポイント 手足口病はエンテロウイルス属のコクサッキーウイルスA群(CA16・CA6等)やエンテロウイルス71(EV71)を主な原因とするピコルナウイルス科のウイルス感染症である。乳幼児に多く、手のひら・足底・口腔粘膜の水疱性発疹と発熱を特徴とし、夏季に流行する。多くは数日で自然軽快するが、EV71では無菌性髄膜炎・脳炎・急性弛緩性麻痺など中枢神経合併症を起こすことがある。飛沫・接触・糞口感染で伝播し、回復後も便中に長くウイルスが排泄される。●エンテロウイルス属による主な疾患=手足口病・ヘルパンギーナ・無菌性髄膜炎・急性灰白髄炎(ポリオ)・心筋炎・流行性筋痛症。●小児に多い発疹性ウイルス疾患=麻疹(麻疹ウイルス)・風疹(風疹ウイルス)・水痘(水痘・帯状疱疹ウイルス)・突発性発疹(ヒトヘルペスウイルス6)・伝染性紅斑(パルボウイルスB19)。
選択肢ごとの解説
① プリオンは異常型蛋白質による伝達性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病等)の原因であり、手足口病とは無関係である。 ② 正しい。コクサッキーウイルスA群やエンテロウイルス71などのエンテロウイルス属が原因である。 ③ 細菌は手足口病の原因ではない。猩紅熱などは細菌(A群溶連菌)によるが本症とは別である。 ④ 真菌は皮膚糸状菌症やカンジダ症などの原因であり、手足口病の病原体ではない。 ⑤ 原虫はマラリアやトキソプラズマ症などの原因であり、手足口病の病原体ではない。
第58回 午前78(臨床微生物学)
DNA分解酵素(DNase)検査で陽性となるのはどれか。
①Citrobacter koseri ②Enterobacter cloacae ③Escherichia coli ④Klebsiella pneumoniae ⑤Serratia marcescens
正答: ⑤Serratia marcescens
ポイント DNase(デオキシリボヌクレアーゼ)検査は、菌が産生するDNA分解酵素の有無を調べる試験で、DNAを含む培地に発育させ、酸やトルイジンブルーでDNAの分解を可視化して判定する。腸内細菌目では、Serratia marcescensがDNase陽性を示す代表菌である。Serratiaは赤色色素(プロジギオシン)産生、DNase・ゼラチナーゼ・リパーゼ陽性、オルニチン脱炭酸陽性などが特徴で、日和見感染・院内感染の原因となる。●DNase陽性の代表菌=Serratia・Staphylococcus aureus・Moraxella catarrhalis・一部のProteus。●腸内細菌目の鑑別性状=インドール・VP反応・クエン酸利用能・尿素分解・リジン/オルニチン脱炭酸・H₂S産生・運動性などの組合せ(IMViC等)で属・種を同定する。
選択肢ごとの解説
① Citrobacter koseriはクエン酸利用陽性・インドール陽性などが特徴だが、DNase検査では陰性である。 ② Enterobacter cloacaeはVP陽性・オルニチン脱炭酸陽性などを示すが、DNaseは陰性である。 ③ Escherichia coliはインドール陽性・乳糖分解陽性が典型で、DNaseは陰性である。 ④ Klebsiella pneumoniaeは莢膜を有し非運動性・VP陽性だが、DNaseは陰性である。 ⑤ 正しい。Serratia marcescensはDNase陽性を示す代表的な腸内細菌で、赤色色素産生やゼラチナーゼ陽性も特徴である。
📋 まとめの表を見る:腸内細菌科における特殊な生化学反応の陽性菌群(IPA反応・DNase試験)
第58回 午前79(臨床免疫学)
T細胞について正しいのはどれか。2つ選べ。
①即時型アレルギーに関与する。 ②移植された非自己細胞を攻撃する。 ③ヘルパーT細胞にはTh1とTh2とがある。 ④健常成人の末梢血中ではB細胞よりも少ない。 ⑤キラーT細胞はMHCクラスⅡ抗原と反応する。
正答: ②移植された非自己細胞を攻撃する。・③ヘルパーT細胞にはTh1とTh2とがある。
ポイント T細胞は胸腺で分化・成熟する細胞性免疫の中心的リンパ球で、表面にT細胞受容体(TCR)とCD3を発現する。CD4陽性のヘルパーT細胞はサイトカイン産生によりTh1(細胞性免疫・マクロファージ活性化)とTh2(液性免疫・好酸球・IgE誘導)などに分化し、CD8陽性のキラーT細胞(細胞傷害性T細胞)はMHCクラスⅠを介して提示された抗原を認識し、ウイルス感染細胞・腫瘍細胞・移植非自己細胞を傷害する。健常成人末梢血リンパ球の約70〜80%はT細胞で、B細胞(約10〜20%)より多い。●T細胞サブセット=ヘルパー(CD4:Th1・Th2・Th17)・細胞傷害性(CD8)・制御性T細胞(Treg)。●MHC拘束性=CD4+T細胞はMHCクラスⅡ、CD8+T細胞(キラーT細胞)はMHCクラスⅠを認識する。
選択肢ごとの解説
① 即時型(Ⅰ型)アレルギーはIgEと肥満細胞が関与する反応であり、T細胞が主役ではない。 ② 正しい。キラーT細胞は移植された非自己細胞を非自己MHC等を介して認識・攻撃し、移植拒絶に関与する。 ③ 正しい。ヘルパーT細胞は産生サイトカインの違いによりTh1とTh2などに分化する。 ④ 健常成人の末梢血ではT細胞が約70〜80%を占め、B細胞より多い。 ⑤ キラーT細胞(CD8陽性)はMHCクラスⅠ抗原と反応する。MHCクラスⅡと反応するのはヘルパーT細胞である。
第58回 午前80(臨床免疫学)
IgGについて正しいのはどれか。2つ選べ。
①胎盤通過性がある。 ②分子量は約90万である。 ③分泌成分と結合している。 ④4つのサブクラスがある。 ⑤H鎖の定常部ドメインは4個からなる。
正答: ①胎盤通過性がある。・④4つのサブクラスがある。
ポイント IgGは血清中の免疫グロブリンの約70〜80%を占める主要抗体で、分子量約15万の単量体(モノマー)であり、H鎖(γ鎖)の定常部はCH1〜CH3の3ドメインからなる。胎盤を通過できる唯一の免疫グロブリンクラスで、母体IgGが胎児へ移行し新生児期の受動免疫を担う。IgG1〜IgG4の4つのサブクラスがあり、補体活性化能やFc受容体結合性、半減期がそれぞれ異なる。感染やワクチンに対する二次免疫応答で主体となり、長期間血中に維持されて免疫記憶を反映する。●免疫グロブリンの分子量と構造=IgM(五量体・約90万・CH4まで・補体活性化能が強い)・IgA(分泌型は二量体+分泌成分)・IgGとIgEとIgDは単量体。●胎盤通過=IgGのみ可能。分泌成分(secretory component)と結合するのは粘膜分泌液中の分泌型IgA。
選択肢ごとの解説
① 正しい。IgGは胎盤を通過できる唯一の免疫グロブリンで、胎児への受動免疫を担う。 ② 分子量約90万は五量体構造のIgMの特徴であり、IgGは単量体で約15万である。 ③ 分泌成分と結合するのは粘膜分泌液中の分泌型IgAであり、IgGではない。 ④ 正しい。IgGにはIgG1〜IgG4の4つのサブクラスがあり、機能特性が異なる。 ⑤ IgGのH鎖定常部ドメインはCH1〜CH3の3個である。4個(CH1〜CH4)はIgMとIgEの特徴である。
第58回 午前81(臨床免疫学)
補体でオプソニン作用があるのはどれか。
正答: ③C3b
ポイント 補体C3は活性化されるとC3aとC3bに分解され、C3bは標的微生物表面に共有結合してオプソニンとして働く。食細胞表面の補体受容体(CR1等)がC3bを認識することで貪食が促進される(オプソニン化)。一方C3aやC4a、C5aはアナフィラトキシンとして肥満細胞・好塩基球からのヒスタミン遊離や血管透過性亢進、白血球遊走を起こす低分子断片である。補体活性化は古典経路・第二経路・レクチン経路があり、いずれもC3で合流し、最終的に膜侵襲複合体(C5b-9)を形成して溶菌に至る。●オプソニン作用=C3b(および分解産物iC3b)が中心、IgGのFcもオプソニンとして働く。●アナフィラトキシン=C3a・C4a・C5a。●膜侵襲複合体=C5b・C6・C7・C8・C9。
選択肢ごとの解説
① C2bはC2の活性化断片だが、オプソニン作用の主体ではない。古典経路ではC2aが酵素活性に関与する。 ② C3aはアナフィラトキシンであり、肥満細胞からのヒスタミン遊離など炎症反応を起こすがオプソニン作用はない。 ③ 正しい。C3bは微生物表面に結合し、食細胞の補体受容体に認識されて貪食を促進するオプソニンである。 ④ C4aはアナフィラトキシン活性をもつ低分子断片であり、オプソニン作用はない。 ⑤ C4bは古典経路でC2と結合しC3転換酵素を構成する断片で、オプソニン作用の主体はC3bである。
第58回 午前82(臨床免疫学)
検査結果と解釈の組合せで正しいのはどれか。
①HBe抗体陽性 — B型肝炎の発症 ②HBs抗体陽性 — B型肝炎ウイルスの感染初期 ③HCV抗体陽性 — C型肝炎の治癒 ④IgG-HA抗体陽性 — A型肝炎の発症 ⑤IgM-HBc抗体陽性 — B型肝炎の発症
正答: ⑤IgM-HBc抗体陽性 — B型肝炎の発症
ポイント 肝炎ウイルスマーカーは病期や感染状態の判定に用いられる。IgM-HBc抗体(IgM型HBコア抗体)はB型肝炎ウイルス感染後に早期かつ一過性に出現し、急性B型肝炎(発症)の指標となる。HBs抗原は感染の存在、HBs抗体は感染既往または免疫獲得、HBe抗原は活発な増殖・感染力、HBe抗体はセロコンバージョン後の増殖低下を示す。C型ではHCV抗体は感染既往または現感染を意味し治癒の指標にはならず、HCV-RNAで増殖を確認する。A型ではIgM-HA抗体が急性感染、IgG-HA抗体は既往感染・免疫を示す。●B型肝炎マーカー=HBs抗原(感染)・HBs抗体(既往・免疫)・HBe抗原(増殖)・HBe抗体(増殖低下)・IgM-HBc抗体(急性期)。●A型肝炎=IgM-HA抗体(急性)・IgG-HA抗体(既往)。
選択肢ごとの解説
① HBe抗体陽性はセロコンバージョン後のウイルス増殖低下を示し、発症の指標ではない。 ② HBs抗体陽性は感染既往またはワクチンによる免疫獲得を示し、感染初期の指標ではない。 ③ HCV抗体陽性は感染既往または現感染を示すのみで、治癒の判定はHCV-RNA陰性化で行う。 ④ IgG-HA抗体陽性はA型肝炎の既往感染・免疫を示し、発症(急性期)はIgM-HA抗体で判定する。 ⑤ 正しい。IgM-HBc抗体陽性は急性B型肝炎(発症)の指標で、感染早期に一過性に出現する。
📋 まとめの表を見る:肝炎ウイルスマーカーの解釈
第58回 午前83(臨床免疫学)
腫瘍マーカーと癌の組合せで正しいのはどれか。
①PSA — 膀胱癌 ②CA125 — 乳癌 ③CA15-3 — 食道癌 ④CA19-9 — 甲状腺癌 ⑤PIVKA-Ⅱ — 肝細胞癌
正答: ⑤PIVKA-Ⅱ — 肝細胞癌
ポイント PIVKA-Ⅱ(protein induced by vitamin K absence or antagonist-Ⅱ)はビタミンK欠乏や拮抗状態で産生される異常プロトロンビンで、肝細胞癌で上昇する腫瘍マーカーである。AFP(α-フェトプロテイン)とともに肝細胞癌の診断・経過観察に用いられ、両者は産生機序が異なるため併用される。腫瘍マーカーは特定の癌に特異性をもつものが多く、組合せの正確な理解が必要である。●腫瘍マーカーと主な対象癌=PSA・前立腺癌/CA125・卵巣癌/CA15-3・乳癌/CA19-9・膵癌や胆道癌/CEA・消化器癌全般/AFPとPIVKA-Ⅱ・肝細胞癌/SCC・扁平上皮癌/NSEとProGRP・小細胞肺癌/CA72-4・胃癌。
選択肢ごとの解説
① PSA(前立腺特異抗原)は前立腺癌のマーカーであり、膀胱癌ではない。 ② CA125は卵巣癌のマーカーであり、乳癌ではない。乳癌にはCA15-3が用いられる。 ③ CA15-3は乳癌のマーカーであり、食道癌ではない。 ④ CA19-9は膵癌・胆道癌のマーカーであり、甲状腺癌ではない。甲状腺髄様癌ではカルシトニンやCEAが用いられる。 ⑤ 正しい。PIVKA-Ⅱは肝細胞癌で上昇する異常プロトロンビンで、AFPと併用される。
📋 まとめの表を見る:主な腫瘍マーカーと高値を示す代表疾患
第58回 午前84(臨床免疫学)
疾患とアレルギーの分類の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
①気管支喘息 — Ⅱ型 ②重症筋無力症 — Ⅱ型 ③接触性皮膚炎 — Ⅰ型 ④ループス腎炎 — Ⅲ型 ⑤自己免疫性溶血性貧血 — Ⅳ型
正答: ②重症筋無力症 — Ⅱ型・④ループス腎炎 — Ⅲ型
ポイント アレルギーはCoombs-Gell分類でⅠ〜Ⅳ型に分けられる。Ⅱ型(細胞傷害型)は細胞表面抗原に対するIgG・IgM抗体が補体やNK細胞・貪食を介して細胞を傷害する反応で、自己免疫性溶血性貧血・特発性血小板減少性紫斑病・重症筋無力症(抗アセチルコリン受容体抗体)・Goodpasture症候群が該当する。Ⅲ型(免疫複合体型)は抗原抗体複合体が組織に沈着し補体活性化で炎症を起こす反応で、ループス腎炎(SLE)・血清病・糸球体腎炎が該当する。●Ⅰ型(即時型・IgE)=気管支喘息・アトピー・アナフィラキシー・花粉症。●Ⅱ型=自己免疫性溶血性貧血・重症筋無力症・Goodpasture症候群。●Ⅲ型=ループス腎炎・血清病・過敏性肺炎。●Ⅳ型(遅延型・T細胞)=接触性皮膚炎・ツベルクリン反応・移植拒絶。
選択肢ごとの解説
① 気管支喘息はIgEを介する即時型(Ⅰ型)アレルギーであり、Ⅱ型ではない。 ② 正しい。重症筋無力症は抗アセチルコリン受容体抗体による細胞傷害型(Ⅱ型)アレルギーである。 ③ 接触性皮膚炎はT細胞を介する遅延型(Ⅳ型)アレルギーであり、Ⅰ型ではない。 ④ 正しい。ループス腎炎は免疫複合体の組織沈着による免疫複合体型(Ⅲ型)アレルギーである。 ⑤ 自己免疫性溶血性貧血は赤血球膜抗原に対する抗体による細胞傷害型(Ⅱ型)であり、Ⅳ型ではない。
📋 まとめの表を見る:アレルギー(過敏症)の分類(Coombs-Gell分類)
第58回 午前85(臨床免疫学)
HEp-2細胞を核材に用いた蛍光抗体法による抗核抗体の染色パターンを別に示す。この所見はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA085.887e17051b.jpg
①斑紋(speckled)型 ②辺縁(peripheral)型 ③核小体(nucleolar)型 ④均質(homogeneous)型 ⑤セントロメア(discrete speckled)型
正答: ④均質(homogeneous)型
ポイント 抗核抗体の蛍光抗体法(間接蛍光抗体法)では、HEp-2細胞を核材として血清中の自己抗体を反応させ、染色パターンから対応抗原を推定する。均質(homogeneous)型は核全体が均一に染まるパターンで、抗DNA抗体(二本鎖DNA抗体)や抗ヒストン抗体に対応し、全身性エリテマトーデス(SLE)や薬剤誘発性ループスでみられる。各パターンは対応抗原・関連疾患が異なるため、所見の読み分けが診断に重要である。●抗核抗体の主な染色型と対応=均質(homogeneous)型・抗dsDNA/抗ヒストン抗体(SLE)/斑紋(speckled)型・抗Sm/抗U1-RNP/抗SS-A・SS-B抗体(混合性結合組織病・Sjögren症候群)/核小体(nucleolar)型・抗RNAポリメラーゼ等(強皮症)/辺縁(peripheral)型・抗dsDNA抗体/セントロメア(discrete speckled)型・抗セントロメア抗体(CREST症候群・限局型強皮症)。
選択肢ごとの解説
① 斑紋(speckled)型は核内に顆粒状の染色を示し、抗Sm・抗RNP・抗SS-A/SS-B抗体に対応する。 ② 辺縁(peripheral)型は核の辺縁が濃く染まり、抗dsDNA抗体に対応するがリング状の所見が特徴である。 ③ 核小体(nucleolar)型は核小体が選択的に染まるパターンで、全身性強皮症などでみられる。 ④ 正しい。核全体が均一に染まる均質(homogeneous)型で、抗dsDNA・抗ヒストン抗体に対応しSLEでみられる。 ⑤ セントロメア(discrete speckled)型は分裂期に整列したセントロメアが点状に染まり、CREST症候群に対応する。
📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患
第58回 午前86(臨床免疫学)
58歳の男性。腰痛を主訴に来院した。血清総蛋白6.0 g/dl、IgG 400 mg/dl(基準870〜1,700)、IgA 10 mg/dl(基準110〜410)、IgM 5 mg/dl(基準35〜220)、尿蛋白は試験紙法(±)、色素法300 mg/dl(基準20以下)。この患者の検査所見として考えられるのはどれか。
①血清C3高値 ②血清クリオグロブリン陽性 ③血清トランスフェリン高値 ④血清α₂-マクログロブリン高値 ⑤尿中Bence Jones蛋白陽性
正答: ⑤尿中Bence Jones蛋白陽性
ポイント 本症例は総蛋白が低めにもかかわらずIgG・IgA・IgMがいずれも基準値を大きく下回り、試験紙法で尿蛋白陰性なのに色素法(ピロガロールレッド・モリブデン法など。スルホサリチル酸法は色素法ではなく沈殿法である)で高度蛋白を検出する乖離を示す。これは多発性骨髄腫において、単クローン性形質細胞が産生する遊離軽鎖(L鎖)が尿中に排泄され、正常免疫グロブリンが抑制された病態を示唆する。尿中Bence Jones蛋白(遊離L鎖)はアルブミンに反応する試験紙法では検出されにくく、加熱で56℃前後に凝固し100℃で再溶解する性質や色素法・免疫電気泳動で確認される。●試験紙法陰性/色素法陽性の乖離=Bence Jones蛋白(遊離L鎖)の存在を示唆。●多発性骨髄腫の検査所見=M蛋白・正常免疫グロブリン低下・高カルシウム血症・腎障害・骨融解像・赤沈亢進。
選択肢ごとの解説
① 血清C3高値は急性炎症や感染で生じるが、本症例の免疫グロブリン低下と尿蛋白乖離を説明しない。 ② クリオグロブリンは低温で析出する免疫グロブリンで原発性マクログロブリン血症等でみられ、本症例の所見と一致しない。 ③ 血清トランスフェリン高値は鉄欠乏でみられるが、本症例の病態を説明する所見ではない。 ④ α₂-マクログロブリン高値はネフローゼ症候群で相対的に増加するが、本症例の免疫グロブリン低下とは合致しない。 ⑤ 正しい。試験紙法陰性・色素法陽性の乖離は尿中Bence Jones蛋白(遊離L鎖)の存在を示唆し、多発性骨髄腫に合致する。
第58回 午前87(臨床免疫学)
58歳の男性。腰痛を主訴に来院した。血清総蛋白6.0 g/dl、IgG 400 mg/dl、IgA 10 mg/dl、IgM 5 mg/dl、尿蛋白は試験紙法(±)・色素法300 mg/dl。考えられる疾患はどれか。
①多発性骨髄腫 ②ネフローゼ症候群 ③無γ-グロブリン血症 ④原発性マクログロブリン血症 ⑤全身性エリテマトーデス(SLE)
正答: ①多発性骨髄腫
ポイント 前問と同一症例で、腰痛(骨病変)に加え、IgG・IgA・IgMがすべて低下し正常免疫グロブリンが抑制され、試験紙法陰性・色素法陽性の尿蛋白(Bence Jones蛋白=遊離軽鎖)を認める。これらは単クローン性形質細胞の腫瘍性増殖によりM蛋白(この症例ではBence Jones型)が産生され、正常抗体産生が抑制される多発性骨髄腫に典型的である。骨髄腫では破骨細胞活性化による溶骨性骨病変(腰痛・病的骨折)、高カルシウム血症、腎障害、貧血を伴う。●多発性骨髄腫の診断=血清・尿の蛋白電気泳動でMピーク、免疫固定法でクローン性確認、骨髄での形質細胞増加、CRAB(高Ca・腎障害・貧血・骨病変)。●Bence Jones型骨髄腫=血清M蛋白が目立たず尿に遊離L鎖が排泄される亜型。
選択肢ごとの解説
① 正しい。腰痛(骨病変)、正常免疫グロブリン低下、尿中Bence Jones蛋白を示し多発性骨髄腫に合致する。 ② ネフローゼ症候群はアルブミン主体の高度蛋白尿で試験紙法も陽性となり、本症例の乖離とは異なる。 ③ 無γ-グロブリン血症はB細胞欠損による抗体産生不全だが、Bence Jones蛋白や骨病変は伴わない。 ④ 原発性マクログロブリン血症はIgM単独高値が特徴で、本症例の全免疫グロブリン低下とは合致しない。 ⑤ 全身性エリテマトーデス(SLE)は多臓器の自己免疫疾患で、Bence Jones蛋白や正常Ig一律低下は典型でない。
第58回 午前88(臨床免疫学)
輸血検査について正しいのはどれか。2つ選べ。
①試験管法の赤血球浮遊液の濃度は10 %になるように調整する。 ②冷蔵庫から取り出した試薬は温度が上昇する前に使用する。 ③凝集判定の遠心条件は3,400 rpm、15秒である。 ④凝集塊の大きさは抗原抗体反応の強さを表す。 ⑤生理食塩液の濃度は0.5 %である。
正答: ③凝集判定の遠心条件は3,400 rpm、15秒である。・④凝集塊の大きさは抗原抗体反応の強さを表す。
ポイント 輸血検査(血液型・交差適合試験)は試験管法で行われ、適切な手技条件が結果の信頼性を左右する。凝集判定の遠心条件は3,400 rpm(約900〜1,000×g相当)で15秒前後が標準で、適切な遠心により抗原抗体反応による凝集塊を形成させて判定する。凝集塊の大きさ(凝集強度)は抗原抗体反応の強さを反映し、4+〜±や溶血の有無を含めて判定する。赤血球浮遊液は通常2〜5%濃度に調整し、生理食塩液は0.85〜0.9%である。●試験管法の基本条件=赤血球浮遊液2〜5%・生理食塩液0.85〜0.9%・遠心3,400 rpm 15秒程度。●凝集判定=凝集強度(0〜4+)と溶血の有無を評価し、反応の強さを表す。●不規則抗体や弱い抗原検出には間接抗グロブリン試験(クームス試験)を併用する。
選択肢ごとの解説
① 試験管法の赤血球浮遊液は通常2〜5%に調整し、10%では濃すぎて適切な判定ができない。 ② 冷蔵保存試薬は室温に戻してから使用する。低温のまま使用すると冷式抗体による偽陽性等の原因となる。 ③ 正しい。凝集判定の遠心条件は3,400 rpmで15秒前後が標準である。 ④ 正しい。凝集塊の大きさ(凝集強度)は抗原抗体反応の強さを反映し、判定の指標となる。 ⑤ 生理食塩液の濃度は0.85〜0.9%であり、0.5%では低張で溶血を生じる。
第58回 午前89(臨床免疫学)
母児間血液型不適合による新生児溶血性疾患について正しいのはどれか。2つ選べ。
①血管内で溶血する。 ②交換輸血で治療する。 ③ABO不適合では起こらない。 ④D不適合の場合は初回妊娠時から起こる。 ⑤母親は間接抗グロブリン試験陽性となる。
正答: ②交換輸血で治療する。・⑤母親は間接抗グロブリン試験陽性となる。
ポイント 母児間血液型不適合による新生児溶血性疾患(HDN)は、母体が胎児赤血球抗原に対するIgG抗体を産生し、胎盤を通過した抗体が胎児・新生児赤血球を感作・破壊する病態である。Rh(D)不適合では母体が初回妊娠等で感作され、二回目以降の妊娠で発症することが多く、感作された母親は間接抗グロブリン試験(不規則抗体スクリーニング)陽性となる。治療は高度溶血・高ビリルビン血症に対し光線療法や交換輸血を行う。ABO不適合でもO型母から生まれるA型・B型児で軽症のHDNが起こりうる。●HDNの主な原因=Rh(D)不適合(重症化しやすい)・ABO不適合(軽症が多い)・その他Rh(c・E)やKell等の不規則抗体。●検査=母体の間接抗グロブリン試験、児の直接抗グロブリン試験陽性。●予防=Rh陰性妊婦への抗D免疫グロブリン投与。
選択肢ごとの解説
① HDNの溶血は主に脾臓などで抗体感作赤血球が破壊される血管外溶血であり、血管内溶血が主体ではない。 ② 正しい。高度の溶血・高ビリルビン血症に対しては交換輸血で治療する。 ③ ABO不適合でもO型母からのA型・B型児で軽症のHDNが起こりうる。 ④ D不適合では通常初回妊娠での感作後、二回目以降の妊娠で発症することが多い。 ⑤ 正しい。胎児赤血球で感作された母親は不規則抗体をもち、間接抗グロブリン試験陽性となる。
📋 まとめの表を見る:新生児溶血性疾患〈HDN〉:ABO不適合とRh不適合の比較
Rh不適合はRh陰性の母がRh陽性の胎児に感作されて産生したIgG型抗D抗体が胎盤を通過して起こる。ABO不適合は自然抗体(IgG)によることが多く、Rh不適合より一般に軽症。
第58回 午前90(公衆衛生学)
医療機関における患者個人情報の取り扱いで正しいのはどれか。
①漏洩しても問題のない情報に限って保存する。 ②あらかじめ定めた利用目的の範囲内で使用する。 ③患者本人からの情報開示請求には応じる必要がない。 ④登録した情報は誤りが判明しても修正すべきではない。 ⑤取り扱いに関する苦情は医療機関外の第三者機関に委ねる。
正答: ②あらかじめ定めた利用目的の範囲内で使用する。
ポイント 医療機関における患者個人情報は個人情報保護法および医療・介護関係事業者向けガイドラインに基づき取り扱われる。個人情報はあらかじめ特定し公表した利用目的の範囲内でのみ使用することが原則で、目的外利用には原則として本人の同意が必要である。本人からの開示・訂正・利用停止の請求には応じる義務があり、登録内容に誤りが判明すれば訂正しなければならない。取扱いに関する苦情には事業者自らが適切・迅速に対応する責務があり、外部に丸投げすることは認められない。患者の診療情報は機微情報として高い安全管理措置が求められる。●個人情報取扱いの基本原則=利用目的の特定・目的内利用・適正取得・正確性の確保・安全管理措置・第三者提供の制限・開示等への対応。●本人の権利=開示請求・訂正請求・利用停止請求への対応義務。
選択肢ごとの解説
① 重要性の高低にかかわらず必要な診療情報を保存・管理し、漏洩しない安全管理措置を講じる必要がある。 ② 正しい。患者情報はあらかじめ定め公表した利用目的の範囲内で使用するのが原則である。 ③ 本人からの情報開示請求には原則として応じる義務がある。 ④ 登録情報に誤りが判明した場合は訂正する義務があり、放置してはならない。 ⑤ 取扱いに関する苦情には医療機関自らが適切・迅速に対応する責務がある。
📋 まとめの表を見る:個人情報保護の基本原則(医療機関における取扱い)
第58回 午前91(公衆衛生学)
統計指標と調査の組合せで正しいのはどれか。
①受療率 — 患者調査 ②出生率 — 国勢調査 ③人口 — 人口動態調査 ④婚姻率 — 国民生活基礎調査 ⑤通院率 — 国民健康・栄養調査
正答: ①受療率 — 患者調査
ポイント 保健統計は調査ごとに把握される指標が法令で定められている。受療率(人口10万対の推計患者数)は患者調査によって把握される代表的指標で、医療施設に対する全国標本調査により、ある特定の日に医療施設で受療した患者数から算出される。出生率・死亡率・婚姻率などは人口動態調査(出生・死亡・婚姻・離婚・死産の届出に基づく)、人口や世帯構成は国勢調査、通院率や有訴者率は国民生活基礎調査、栄養摂取状況や肥満は国民健康・栄養調査で把握される。調査の主体・周期・対象が異なるため、指標と調査の対応を正確に把握する必要がある。●主な統計調査と指標=患者調査・受療率や推計患者数や平均在院日数/人口動態調査・出生率や死亡率や婚姻率や合計特殊出生率/国勢調査・人口や世帯数/国民生活基礎調査・有訴者率や通院率や世帯所得/国民健康・栄養調査・栄養摂取量や肥満や生活習慣。
選択肢ごとの解説
① 正しい。受療率は患者調査により把握される指標である。 ② 出生率は人口動態調査で把握される指標であり、国勢調査ではない。 ③ 人口は国勢調査で把握される指標であり、人口動態調査ではない。 ④ 婚姻率は人口動態調査で把握される指標であり、国民生活基礎調査ではない。 ⑤ 通院率は国民生活基礎調査で把握される指標であり、国民健康・栄養調査ではない。
📋 まとめの表を見る:保健統計調査の対象と主な把握指標
受療率・平均在院日数は患者調査、通院者率・有訴者率は国民生活基礎調査で得られる指標であり、混同しやすい。国民健康・栄養調査は健康増進法に基づき実施される。
第58回 午前92(公衆衛生学)
無作為比較対照試験(RCT)を用いるべき研究テーマはどれか。
①喫煙率の国際比較 ②未成年喫煙者の心理 ③禁煙プログラムの有効性 ④受動喫煙と先天異常の関連性 ⑤喫煙とアルツハイマー(Alzheimer)病の関連性
正答: ③禁煙プログラムの有効性
ポイント 無作為比較対照試験(RCT)は対象を無作為に介入群と対照群に割り付け、介入(治療や予防プログラム)の効果を比較する研究デザインで、交絡を最小化でき因果関係の証明力が最も高い介入研究である。禁煙プログラムの有効性のように、人為的に介入を割り付けてアウトカムを比較できるテーマに適する。一方、喫煙と疾患の関連性のように曝露を割り付けられない(倫理的に喫煙させられない)テーマには観察研究(コホート研究・症例対照研究)を用いる。●研究デザインの選択=介入を割り付けられる→RCT(介入研究)/曝露を割り付けられない要因と疾患の関連→コホート研究や症例対照研究(観察研究)/実態把握→横断研究や記述疫学。●エビデンスレベル=メタ解析・RCT>コホート>症例対照>横断>症例報告。
選択肢ごとの解説
① 喫煙率の国際比較は既存統計を比較する記述・横断的研究であり、RCTは用いない。 ② 未成年喫煙者の心理は質的・記述的研究の対象であり、介入割り付けを行うRCTには適さない。 ③ 正しい。禁煙プログラムは介入を無作為に割り付けて有効性を比較できるためRCTが適する。 ④ 受動喫煙と先天異常の関連は曝露を割り付けられないため観察研究(コホート等)を用いる。 ⑤ 喫煙とアルツハイマー病の関連は曝露を割り付けられないため観察研究で検討する。
第58回 午前93(公衆衛生学)
水質汚濁が悪化するほど低値を示す指標はどれか。
①BOD(生物化学的酸素要求量) ②COD(化学的酸素要求量) ③DO(溶存酸素量) ④SS(浮遊物質量) ⑤大腸菌群数
正答: ③DO(溶存酸素量)
ポイント DO(溶存酸素量)は水中に溶けている酸素の量で、有機物汚濁が進むと水中微生物による分解(好気的分解)で酸素が大量に消費されるため低下する。したがって水質汚濁が悪化するほど低値を示す指標であり、魚介類の生息環境の良否を反映する。これに対しBOD(生物化学的酸素要求量)やCOD(化学的酸素要求量)は有機汚濁の指標で汚濁が進むほど高値、SS(浮遊物質量)や大腸菌群数も汚濁が進むほど高値を示す。これらは公共用水域の水質環境基準として測定される。●汚濁が進むと高値となる指標=BOD(生物化学的酸素要求量・河川の有機汚濁指標)・COD(化学的酸素要求量・湖沼や海域の指標)・SS(浮遊物質量)・大腸菌群数(し尿汚染指標)。●汚濁が進むと低値となる指標=DO(溶存酸素量・酸素消費で減少)。
選択肢ごとの解説
① BODは有機物を微生物が分解する際の酸素消費量で、汚濁が進むほど高値を示す。 ② CODは酸化剤で有機物を酸化する際の消費量で、汚濁が進むほど高値を示す。 ③ 正しい。DO(溶存酸素量)は汚濁が進むと有機物分解で酸素が消費され低値を示す。 ④ SS(浮遊物質量)は水中の懸濁物質量で、汚濁が進むほど高値を示す。 ⑤ 大腸菌群数はし尿等による汚染指標で、汚濁が進むほど高値を示す。
第58回 午前94(公衆衛生学)
世界保健機関(WHO)の活動に含まれるのはどれか。
①食料援助の推進 ②地球温暖化対策 ③二国間協力の調整 ④たばこ対策の推進 ⑤国際的な労使紛争の調停
正答: ④たばこ対策の推進
ポイント 世界保健機関(WHO)は国連の専門機関で、すべての人々の健康水準の向上を目的とし、感染症対策、保健医療体制の支援、国際保健規則の策定、健康基準・統計の整備などを行う。たばこ対策では「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)」を主導し、たばこ規制を推進している。食料援助はFAO・WFP、地球温暖化対策はUNEP・UNFCCC、労使紛争の調停や労働基準はILO、二国間協力は各国の援助機関などが主に担う。●WHOの主な活動=感染症対策(天然痘根絶・新興感染症対応)・国際保健規則・たばこ規制枠組条約・必須医薬品・予防接種拡大計画・健康統計や基準設定。●他機関=食料はFAO・WFP/環境はUNEP/労働はILO/児童はUNICEF。
選択肢ごとの解説
① 食料援助の推進は国連食糧農業機関(FAO)や世界食糧計画(WFP)が担う活動である。 ② 地球温暖化対策は国連環境計画(UNEP)や気候変動枠組条約(UNFCCC)が担う。 ③ 二国間協力の調整は各国の政府開発援助(ODA)機関が担い、WHOの主活動ではない。 ④ 正しい。WHOはたばこの規制に関する枠組条約(FCTC)を主導したばこ対策を推進している。 ⑤ 国際的な労使紛争の調停や労働基準の設定は国際労働機関(ILO)が担う。
📋 まとめの表を見る:国連関連機関の役割分担
二国間協力は各国の援助機関(日本ではJICA)が行い、WHOなど国連機関は多国間協力が中心である。
第58回 午前95(医用工学概論)
導電率が最も大きいのはどれか。
正答: ②血液
ポイント 生体組織の導電率(電気の通しやすさ)は、組織に含まれる水分量と電解質(ナトリウムやカリウムなどのイオン)量に依存する。血液は水分と電解質を豊富に含む液体であり、生体組織の中で導電率が最も大きい。骨格筋もイオンを多く含み導電率は比較的高いが、筋線維方向で値が異なる異方性があり血液より低い。脂肪は水分が少なく導電率は低く、骨はカルシウム塩を主体とし水分・電解質が乏しいため導電率が最も低い。これらの差は生体電気インピーダンス測定や電気メス・除細動の電流分布の基礎となる。●導電率(高い順の目安)=血液・体液>骨格筋などの軟部組織>肝臓など実質臓器>脂肪>骨。●導電率は水分・電解質量に比例し、その逆数である抵抗率は骨や脂肪で大きくなる。
選択肢ごとの解説
① 骨はカルシウム塩主体で水分・電解質が乏しく、導電率は最も小さい部類である。 ② 正しい。血液は水分と電解質を豊富に含み、生体組織の中で導電率が最も大きい。 ③ 肝臓は実質臓器で導電率は中等度であり、血液より低い。 ④ 脂肪は水分が少なく導電率が低い組織である。 ⑤ 骨格筋はイオンを多く含み導電率は高いが、血液には及ばず異方性をもつ。
📋 まとめの表を見る:生体組織・体液の導電率の比較
導電率は組織の含水量・電解質(イオン)量が多いほど大きくなる。骨格筋・肝臓など軟部組織間の細かな順位は周波数や測定方向に依存するため、固定した順位では覚えない。細胞膜や緻密骨は絶縁体に近い。
第58回 午前96(医用工学概論)
信号波を示す。パルス振幅変調(PAM)はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58aA096.f4a5a6a2da.jpg
正答: ②
ポイント パルス振幅変調(PAM:pulse amplitude modulation)は、一定間隔で並んだパルス列の振幅(高さ)を信号波の瞬時値に応じて変化させる変調方式である。標本化(サンプリング)した信号値をパルスの大きさとして表現するもので、パルス幅やパルス位置は一定のまま振幅のみが信号に従って変わる波形となる。設問の図では、パルスの間隔・幅は一定で高さだけが元の信号波形に沿って増減している波形が該当する。●パルス変調の種類=PAM(振幅変調・パルスの高さを変える)・PWM/PDM(幅変調・パルスの幅を変える)・PPM(位置変調・パルスの位置をずらす)・PCM(符号変調・標本値を数値符号化する)。●PCMはPAMで標本化した値を量子化・符号化したもので、ディジタル伝送の基礎となる。
選択肢ごとの解説
① ①は周波数変調(FM)。搬送波の振幅はほぼ一定で、波の間隔(周波数)が信号に応じて変化している。 ② 正しい。②はパルス振幅変調(PAM)。一定間隔のパルスの高さが信号に応じて変化している。 ③ ③はパルス幅変調(PWM)。パルスの高さは一定で、幅が信号に応じて変化している。 ④ ④はパルス周波数変調(PFM)。パルスの高さと幅は一定で、単位時間あたりのパルスの数(密度)が信号に応じて変化している。 ⑤ ⑤はパルス符号変調(PCM)。標本値を量子化し、2進符号のパルス列で表している。
📋 まとめの表を見る:パルス変調方式の分類
PCMは、PAMで標本化した値を量子化・符号化したもので、ディジタル伝送の基礎となる。
第58回 午前97(医用工学概論)
病院電気設備(JIS T 1022)で定められている特別非常電源の立ち上がり時間と最小の連続運転時間との組合せで正しいのはどれか。(立ち上がり時間 — 連続運転時間)
①0.5秒以内 — 10分以上 ②10秒以内 — 1時間以上 ③10秒以内 — 10時間以上 ④40秒以内 — 10時間以上 ⑤40秒以内 — 24時間以上
正答: ③10秒以内 — 10時間以上
ポイント 病院電気設備(JIS T 1022)では、医用接地方式や非常電源の要件が定められている。非常電源は瞬時特別非常電源・特別非常電源・一般非常電源に区分される。特別非常電源は立ち上がり(電圧確立)時間が10秒以内、連続運転時間が10時間以上と定められ、自家発電設備により手術室・集中治療室などの重要負荷へ電力を供給する。瞬時特別非常電源は無停電電源装置(UPS)等で0.5秒以内に切り替わる。●非常電源の区分(JIS T 1022)=瞬時特別非常電源(0.5秒以内・UPS等)・特別非常電源(10秒以内・連続10時間以上・自家発電)・一般非常電源(40秒以内・連続10時間以上)。●これらに応じてコンセントの色(赤・緑など)で区別され、生命維持装置等の重要機器に接続する。
選択肢ごとの解説
① 0.5秒以内は瞬時特別非常電源(UPS等)の立ち上がり時間で、特別非常電源とは異なる。 ② 立ち上がり10秒以内は特別非常電源として正しいが、連続運転時間の要件は10時間以上であり、1時間以上では不足する。 ③ 正しい。特別非常電源は立ち上がり10秒以内・連続運転10時間以上と定められている(一般非常電源は40秒以内・10時間以上)。 ④ 40秒以内・10時間以上は一般非常電源の要件であり、特別非常電源の立ち上がり時間としては誤り。 ⑤ 40秒以内24時間以上という組合せは規定の要件と一致しない。
📋 まとめの表を見る:病院電気設備(JIS T1022)の非常電源の区分
本表はJIS T1022:2007〜2018時点(第58回=2012年・第61回=2015年出題当時)の区分。2018年改正で「瞬時特別非常電源」は「無停電非常電源」に名称変更され、2023年改正では「特別非常電源」が「一般非常電源」に統合された。立ち上がり時間が短いほど瞬断が許されない生命維持管理装置・手術灯等(無停電)、脳波計・心電図等の重要機器(特別)、照明・非常用エレベーター等(一般)に対応する。
第58回 午前98(医用工学概論)
PCと周辺機器とをつなぐインターフェースでないのはどれか。
①Bluetooth ②IEEE1394 ③RS-232 C(recommended standard 232 version C) ④SSD(silicon storage device) ⑤USB(universal serial bus)
正答: ④SSD(silicon storage device)
ポイント PCと周辺機器を接続するインターフェースは、データの入出力をつなぐ規格・端子を指す。Bluetoothは無線、IEEE 1394(FireWire)・RS-232C(シリアル通信)・USB(universal serial bus)はいずれもPCと周辺機器を接続するインターフェース規格である。一方SSD(solid state drive:半導体記憶装置)は記憶装置(ストレージ)そのものであり、接続規格ではない。SSDはSATAやNVMe等のインターフェースを介して接続される記憶媒体である。●代表的な周辺機器インターフェース=USB・IEEE 1394・RS-232C・Bluetooth(無線)・HDMI/DisplayPort(映像)・SATAやPCIe(内部接続)。●記憶装置(インターフェースではない)=SSD・HDD・光学ドライブ・USBメモリなど。
選択肢ごとの解説
① Bluetoothは近距離無線通信のインターフェース規格で、周辺機器接続に用いられる。 ② IEEE 1394(FireWire)は高速シリアル転送のインターフェース規格である。 ③ RS-232Cはシリアル通信の標準インターフェース規格である。 ④ 正しい。SSD(半導体記憶装置)はインターフェースではなく記憶装置であり、SATA等を介して接続される。 ⑤ USB(universal serial bus)は最も普及した周辺機器接続インターフェースである。
第58回 午前99(医用工学概論)
コンピュータシステムにおいて処理要求を一定時間蓄積し、時間や期日を決めた上でまとめて一括処理する方式はどれか。
①タイムシェアリング処理 ②サブトラクション処理 ③リアルタイム処理 ④オンライン処理 ⑤バッチ処理
正答: ⑤バッチ処理
ポイント バッチ処理は、処理要求(データやジョブ)を一定時間ためておき、決められた時刻や期日にまとめて一括処理する方式である。給与計算や月次集計、夜間のデータ集計など即時応答を要しない大量処理に適し、コンピュータ資源を効率的に利用できる。これに対しリアルタイム処理は要求発生時に即座に応答し、タイムシェアリング処理は複数利用者にCPU時間を細かく割り当てて同時利用を可能にする方式、オンライン処理は端末と中央装置を結んで即時にやり取りする方式である。●処理方式の分類=バッチ処理(一括・後処理)・リアルタイム処理(即時応答)・オンライン処理(端末との即時連携)・タイムシェアリング処理(時分割で多人数同時利用)。●バッチ処理は応答性より処理効率を重視する用途に向く。
選択肢ごとの解説
① タイムシェアリング処理はCPU時間を時分割し複数利用者が同時に使う方式で、一括処理ではない。 ② サブトラクション処理は画像の差分処理などを指す用語で、本問の処理方式分類には該当しない。 ③ リアルタイム処理は要求発生時に即座に応答する方式で、まとめて処理する方式ではない。 ④ オンライン処理は端末と中央装置を結び即時にやり取りする方式で、一括処理ではない。 ⑤ 正しい。バッチ処理は要求を蓄積し、決めた時刻・期日にまとめて一括処理する方式である。
第58回 午前100(医用工学概論)
電子天秤について正しいのはどれか。2つ選べ。
①高温多湿の場所に保管する。 ②気流の生じない場所で使用する。 ③振動のない水平な台に設置する。 ④認識できる最小の質量を秤量と呼ぶ。 ⑤安全で正確に測定できる最大質量を感量と呼ぶ。
正答: ②気流の生じない場所で使用する。・③振動のない水平な台に設置する。
ポイント 電子天秤は電磁力平衡方式等で質量を精密に測定する機器で、正確な測定には設置・使用環境の管理が不可欠である。気流があると皿が揺れて測定値が変動するため、気流の生じない(風防内など)場所で使用する。また振動は測定値の不安定化や誤差の原因となるため、振動のない水平な台に設置し水準器で水平を調整する。高温多湿は電子部品の劣化や結露の原因となるため避ける。なお、認識できる最小の質量変化は「感量(最小表示)」、安全に測定できる最大質量は「秤量(ひょうりょう)」と呼び、設問の用語の対応は逆である。●電子天秤の使用条件=水平・無振動・無気流・温湿度安定・直射日光や熱源を避ける・定期的な校正(分銅による)。●用語=秤量(測定可能な最大質量)・感量(識別できる最小質量=最小表示)。
選択肢ごとの解説
① 高温多湿は電子部品の劣化や結露を招くため避け、温湿度の安定した場所に保管する。 ② 正しい。気流があると測定値が変動するため、気流の生じない場所で使用する。 ③ 正しい。振動は誤差の原因となるため、振動のない水平な台に設置する。 ④ 認識できる最小の質量(最小表示)は感量と呼び、秤量ではない。 ⑤ 安全で正確に測定できる最大質量は秤量と呼び、感量ではない。用語の対応が逆である。
📋 まとめの表を見る:天秤(上皿天秤・電子天秤)の測定誤差要因・使用条件
電子天秤は設置場所の重力加速度や磁場の影響を受ける点が上皿天秤と異なる。
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