第58回(2012) 臨床検査技師国家試験 午後1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第58回 午後1(臨床検査総論)
針刺しによる血液曝露を受けた医療従事者〈HBs抗体陽性、HCV抗体陰性〉への対応で正しいのはどれか。
- ①HBs抗原陽性患者の場合はHBワクチンを接種する。
- ②HCV抗体陽性患者の場合は抗ウイルス薬を服用させる。
- ③HBs抗原陽性患者の場合は免疫グロブリン製剤を投与する。
- ④HCV抗体陽性患者の場合は免疫グロブリン製剤を投与する。
- ⑤患者のHBV、HCV及びHIV関連の検査がすべて陰性の場合は経過観察とする。
正答: ⑤患者のHBV、HCV及びHIV関連の検査がすべて陰性の場合は経過観察とする。
ポイント
針刺し・血液曝露後対応は、まず曝露者自身の免疫状態(本問ではHBs抗体陽性=HBV既感染またはワクチン獲得免疫あり、HCV抗体陰性)と、汚染源患者の感染状況を評価することが基本である。患者のHBV・HCV・HIV関連検査がすべて陰性であれば感染源とならず、特別な予防処置は不要で経過観察となる。HBs抗体陽性者はB型肝炎に対する免疫を既に有するため、患者がHBs抗原陽性であってもワクチン追加接種やHBグロブリン投与の必要は乏しい。HCVに対しては有効な曝露後予防(ワクチン・免疫グロブリン・予防内服)は確立しておらず、抗体・HCV-RNAの定期的追跡で感染成立の有無を監視する。●曝露後に予防手段がある=HBV(ワクチン・HBグロブリン)、HIV(抗ウイルス薬の予防内服)。●有効な曝露後予防がない=HCV(経過観察と早期診断が中心)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。曝露者がHBs抗体陽性で既に免疫を持つため、患者がHBs抗原陽性でもワクチン接種の必要性は乏しい。
- ② 誤り。HCVに対する抗ウイルス薬は感染成立後の治療薬であり、曝露直後の予防内服として投与する対応ではない。
- ③ 誤り。HBグロブリンはHBs抗体陰性の曝露者に用いるもので、既に抗体陽性の本症例には適応とならない。
- ④ 誤り。HCVに対する免疫グロブリン製剤による曝露後予防は有効性が確立しておらず行わない。
- ⑤ 正しい。患者のHBV・HCV・HIVがすべて陰性なら感染源がなく、特別な処置は不要で経過観察とする。
第58回 午後2(臨床検査総論)
血球算定用の検体で測定した場合に偽低値を呈するのはどれか。
- ①中性脂肪
- ②アルブミン
- ③クレアチニン
- ④コリンエステラーゼ
- ⑤アルカリホスファターゼ
正答: ⑤アルカリホスファターゼ
ポイント
血球算定用検体はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)塩を抗凝固剤とする。EDTAはカルシウム・マグネシウム・亜鉛などの二価金属イオンをキレート(封鎖)するため、これらの金属イオンを補酵素・活性中心として必要とする酵素は失活し、測定値が偽低値となる。アルカリホスファターゼ(ALP)は活性中心に亜鉛、活性化にマグネシウムを要する金属酵素であり、EDTA採血ではキレートにより活性が著しく低下し偽低値を示す。生化学検査でALPを正確に測定するには血清(凝固促進剤入り)または分離剤入り採血管を用いる。●EDTAキレートの影響を受けやすい金属酵素=アルカリホスファターゼ(Zn・Mg)、アミラーゼ(Ca)など。●EDTAの影響を受けにくい項目=中性脂肪・アルブミン・クレアチニン・コリンエステラーゼなど金属イオン依存性の低い成分。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。中性脂肪は金属イオン依存の測定系ではなく、EDTAキレートによる偽低値は生じにくい。
- ② 誤り。アルブミンは色素結合法などで測定され、EDTAによる二価金属キレートの影響を受けない。
- ③ 誤り。クレアチニンは酵素法・Jaffé法いずれもEDTAの金属キレートで偽低値とはならない。
- ④ 誤り。コリンエステラーゼは金属イオンを必須としない酵素で、EDTA採血でも大きな偽低値を示さない。
- ⑤ 正しい。アルカリホスファターゼは亜鉛・マグネシウムを要する金属酵素で、EDTAのキレートにより活性低下し偽低値となる。
第58回 午後3(臨床検査総論)
検査過誤の検出に利用されるのはどれか。2つ選べ。
- ①x-R管理図法
- ②正常者平均値法
- ③前回値チェック法
- ④ツインプロット法
- ⑤2項目の検査値比率
正答: ③前回値チェック法・⑤2項目の検査値比率
ポイント
検査過誤(測定誤差・取り違え・機器異常など)の検出には、個々の患者データの内的整合性を利用する方法が有用である。前回値チェック法は同一患者の前回測定値と今回値を比較し、生理的にあり得ない急変(デルタチェック)を検出するもので、検体取り違えや測定エラーの発見に利用される。2項目の検査値比率(項目間チェック、たとえばNa/Cl比、AST/ALT比、総蛋白とアルブミンの関係など)も、相互に関連する検査値の組合せが矛盾しないかを確認することで過誤を検出できる。これに対し管理図法や正常者平均値法は、患者個人ではなく測定系全体の精度・正確度を統計的に管理する精度管理手法であり、過誤検出の主目的とは性質が異なる。●患者データに基づく過誤検出=前回値(デルタ)チェック法、項目間チェック(検査値比率)。●測定系の精度管理=x̄-R管理図法、正常者平均値法(基準個体平均法)、ツインプロット法(2試料の同一検査項目を用いる双値法)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。x̄-R管理図法は管理試料の測定値変動を統計管理する精度管理手法で、個別検体の過誤検出が主目的ではない。
- ② 誤り。正常者平均値法は健常者群の平均値の安定性を監視する精度管理手法である。
- ③ 正しい。前回値チェック法は同一患者の前回値と比較し、あり得ない変化(デルタ)から検体取り違えや測定過誤を検出する。
- ④ 誤り。ツインプロット法(双値法)は、2つの管理試料について同じ検査項目を測定し、その組合せを縦軸と横軸にプロットして系統誤差や偶然誤差を評価する精度管理法である。異なる2検査項目の比率から個別検体の過誤を見つける方法とは区別する。
- ⑤ 正しい。相互に関連する2項目の検査値比率の矛盾を確認することで、検体取り違えや測定エラーを検出できる。
📋 まとめの表を見る:内部精度管理法の分類(管理試料を用いる方法・用いない方法)
累積和法は微小で持続的な偏りの検出に優れる。x̄-R管理図法は標準液の劣化・機器異常等の系統誤差/偶然誤差を検出するが、正確度(真度)そのものの評価には別途標準物質・標準法との比較が必要。
第58回 午後4(臨床検査総論)
基準範囲を設定するときにサブクラスとして分類するのはどれか。
正答: ③年齢
ポイント
基準範囲の設定では、対象集団を測定値に有意な差を生む要因で層別(サブクラス分類)する必要がある。年齢・性別は健常者でも検査値が生理的に変動する代表的な層別因子で、たとえば小児・成人・高齢者、男女で別個の基準範囲を設けるのが一般的である。一方、飲酒・肥満・高血圧・薬物服用は検査値に影響を及ぼすものの、これらは健常者を選定する段階で除外すべき除外基準(基準個体から外す条件)として扱われ、層別の区分とはしない。すなわち「基準個体に含めるが結果を層別する因子」と「そもそも基準個体から除外する因子」を区別することが重要である。●層別(サブクラス)に用いる因子=年齢、性別、(必要に応じ人種・地域など生理的恒常因子)。●除外基準として基準個体から外す因子=飲酒・喫煙、肥満、高血圧、各種薬物の服用、明らかな疾患。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。飲酒は検査値に影響するため基準個体の除外基準とする因子であり、層別区分ではない。
- ② 誤り。肥満は除外基準として基準個体選定時に考慮する因子で、サブクラス分類には用いない。
- ③ 正しい。年齢は健常者でも検査値が生理的に変動するため、性別とともに基準範囲を層別するサブクラスに用いる。
- ④ 誤り。高血圧は病的状態に近く、基準個体から除外すべき条件であって層別因子ではない。
- ⑤ 誤り。薬物の服用は検査値に影響するため除外基準とすべきで、サブクラス分類には用いない。
第58回 午後5(臨床検査総論)
尿中成分と疾患・病態の組合せで誤っているのはどれか。
- ①亜硝酸塩 — 急性糸球体腎炎
- ②ケトン体 — 飢餓状態
- ③ビリルビン — 閉塞性黄疸
- ④ヘモジデリン — 血管内溶血
- ⑤Bence Jones蛋白 — 多発性骨髄腫
正答: ①亜硝酸塩 — 急性糸球体腎炎
ポイント
尿亜硝酸塩は、尿中の硝酸塩を亜硝酸塩に還元する能力をもつ細菌(大腸菌など腸内細菌科のグラム陰性桿菌)が尿中で増殖したときに陽性となり、細菌尿すなわち尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)を示唆する所見である。急性糸球体腎炎は糸球体の免疫学的炎症であり、典型的には血尿(変形赤血球・赤血球円柱)・蛋白尿・高血圧・浮腫を呈する非細菌性の病態で、細菌増殖を反映する亜硝酸塩陽性とは結びつかない。したがってこの組合せが誤りである。●尿試験紙・尿成分が示す病態の対応:亜硝酸塩=細菌尿(尿路感染)、ケトン体=飢餓・糖尿病性ケトアシドーシス、ビリルビン=閉塞性・肝細胞性黄疸、ヘモジデリン=慢性血管内溶血、Bence Jones蛋白=多発性骨髄腫など形質細胞腫瘍。●糸球体障害を示す所見=変形赤血球・赤血球円柱・蛋白尿(糸球体腎炎の特徴)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。亜硝酸塩陽性は還元能をもつ細菌の増殖(尿路感染)を示し、非細菌性の急性糸球体腎炎とは結びつかない。
- ② 正しい組合せ。飢餓状態では脂肪分解が亢進してケトン体が産生・尿中排泄され、ケトン体陽性となる。
- ③ 正しい組合せ。閉塞性黄疸では抱合型ビリルビンが血中・尿中に増加し、尿ビリルビンが陽性となる。
- ④ 正しい組合せ。血管内溶血では尿細管に取り込まれた鉄がヘモジデリンとして尿中に出現する。
- ⑤ 正しい組合せ。Bence Jones蛋白(免疫グロブリン軽鎖)は多発性骨髄腫で産生され尿中に排泄される。
📋 まとめの表を見る:尿中成分と疾患・病態
亜硝酸塩は細菌尿(尿路感染症)を示す所見であり、糸球体腎炎など非細菌性の腎疾患では陽性とならない点が組合せ問題で問われやすい。
第58回 午後6(臨床検査総論)
尿沈渣の無染色標本を別に示す。考えられる疾患はどれか。2つ選べ。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB006.d406cb97d4.jpg

- ①腎癌
- ②尿管結石
- ③糖尿病腎症
- ④慢性糸球体腎炎
- ⑤全身性エリテマトーデス(SLE)
正答: ①腎癌・②尿管結石
ポイント
尿沈渣で多数の赤血球(特に大小不同が乏しく形態の整った非糸球体性赤血球)が認められる肉眼的・顕微鏡的血尿は、出血源が尿路(腎盂・尿管・膀胱)に存在する病態を示唆する。腎癌は腫瘍からの出血による無症候性血尿を特徴とし、尿管結石は結石が尿路粘膜を損傷して血尿と疼痛を生じるため、いずれも均一な赤血球が主体の血尿を呈する。これに対し糸球体由来の血尿では赤血球の変形(こんぺいとう状・ドーナツ状)や赤血球円柱を伴うのが特徴で、慢性糸球体腎炎・糖尿病腎症・SLE(ループス腎炎)では蛋白尿や変形赤血球・各種円柱が前面に出る点が異なる。●非糸球体性(尿路性)血尿=均一な赤血球が主体(腎癌・尿管結石・膀胱腫瘍・尿路感染)。●糸球体性血尿=変形赤血球・赤血球円柱・蛋白尿を伴う(糸球体腎炎・ループス腎炎・IgA腎症)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。腎癌は腫瘍からの出血により均一な赤血球を主体とする無症候性血尿を呈する。
- ② 正しい。尿管結石は粘膜損傷により血尿と疼痛を生じ、非糸球体性の赤血球を認める。
- ③ 誤り。糖尿病腎症は蛋白尿(やがてネフローゼ)が主体で、均一赤血球主体の血尿像とは結びつかない。
- ④ 誤り。慢性糸球体腎炎は変形赤血球・赤血球円柱を伴う糸球体性血尿が特徴で、本像とは異なる。
- ⑤ 誤り。SLE(ループス腎炎)は変形赤血球・各種円柱・蛋白尿を呈する糸球体性病変が中心である。
第58回 午後7(臨床検査総論)
漏出液を示唆する所見はどれか。
- ①比重:1.020
- ②Rivalta反応:陽性
- ③蛋白濃度:2.0 %
- ④線維素:多量に析出
- ⑤細胞:多核白血球
正答: ③蛋白濃度:2.0 %
ポイント
体腔液(胸水・腹水)は産生機序により漏出液と滲出液に大別される。漏出液は静水圧上昇や膠質浸透圧低下による単純な血漿成分の漏れ出しで、心不全・肝硬変・ネフローゼなどでみられ、蛋白に乏しく細胞成分も少ない。一般に比重1.015未満、蛋白濃度はおおむね2.5g/dL(2.5%)未満程度に低く、Rivalta反応陰性、線維素(フィブリン)析出に乏しく、細胞数も少ない。本問の蛋白濃度2.0%は低値で漏出液を示唆する。一方、滲出液は炎症・悪性腫瘍などで血管透過性が亢進して生じ、蛋白・細胞に富み、比重高値・Rivalta反応陽性・フィブリン析出・多核白血球増多などを呈する。●漏出液の所見=低比重・低蛋白・Rivalta陰性・細胞少・原因は心不全/肝硬変/ネフローゼ。●滲出液の所見=高比重・高蛋白・Rivalta陽性・フィブリン析出・多核白血球増多・原因は感染/悪性腫瘍/炎症。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。比重1.020は高値であり、滲出液を示唆する所見である。
- ② 誤り。Rivalta反応陽性は蛋白(主に漿膜ムチン)に富む滲出液の所見である。
- ③ 正しい。蛋白濃度2.0%は低値であり、蛋白に乏しい漏出液を示唆する。
- ④ 誤り。線維素(フィブリン)の多量析出は炎症性の滲出液でみられる所見である。
- ⑤ 誤り。多核白血球の出現は炎症を反映し、滲出液を示唆する所見である。
📋 まとめの表を見る:体腔液(胸水・腹水):滲出液と漏出液の鑑別
第58回 午後8(臨床検査総論)
線虫とその感染による疾患・病態の組合せで正しいのはどれか。
- ①回虫 — 虫垂炎
- ②糞線虫 — 網膜炎
- ③旋尾線虫 — 皮膚色素脱
- ④ズビニ鉤虫 — 門脈圧亢進
- ⑤広東住血線虫 — 好酸球性髄膜炎
正答: ⑤広東住血線虫 — 好酸球性髄膜炎
ポイント
広東住血線虫はネズミを終宿主とし、中間宿主であるナメクジ・カタツムリやその汚染野菜・運搬宿主(淡水エビ・カエルなど)を介してヒトに経口感染する。ヒト体内では幼虫が中枢神経系に迷入して死滅し、強い好酸球増多を伴う好酸球性髄膜炎(好酸球性髄膜脳炎)を引き起こす点が特徴である。他の線虫はそれぞれ別の病態をとる。回虫は腸管寄生で腸閉塞や胆道・膵管迷入をきたし、糞線虫は自家感染により重症例で全身播種をきたし、ズビニ鉤虫は小腸に吸着して慢性出血性貧血(鉄欠乏性貧血)を生じる。●中枢神経・好酸球性髄膜炎を起こす線虫=広東住血線虫。●腸管寄生で消化器症状を起こす線虫=回虫(腸閉塞・虫体迷入)、ズビニ鉤虫・アメリカ鉤虫(鉄欠乏性貧血)、糞線虫(自家感染・播種性糞線虫症)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。回虫は腸閉塞や胆道・膵管迷入を起こすが、虫垂炎を典型的病態とする組合せは適切でない。
- ② 誤り。糞線虫は自家感染による播種性感染や消化器・呼吸器症状を起こし、網膜炎を主病態としない。
- ③ 誤り。旋尾線虫はヒトでは皮膚爬行症や腸閉塞をきたすもので、皮膚色素脱とは結びつかない。
- ④ 誤り。ズビニ鉤虫は小腸吸着による慢性失血で鉄欠乏性貧血を起こし、門脈圧亢進とは関係しない。
- ⑤ 正しい。広東住血線虫は幼虫が中枢神経に迷入し、好酸球増多を伴う好酸球性髄膜炎を起こす。
📋 まとめの表を見る:主な寄生虫と中間宿主・終宿主
アニサキス・広東住血線虫・顎口虫・Manson裂頭条虫はヒトが本来の宿主でないため幼虫のまま体内を移行し(幼虫移行症)、皮膚爬行症や好酸球性髄膜炎などを起こす。
第58回 午後9(臨床検査総論)
マラリア患者の血液塗抹Giemsa染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB009.2f58aca3a4.jpg

- ①卵形マラリア原虫の分裂体
- ②三日熱マラリア原虫の栄養体
- ③三日熱マラリア原虫の分裂体
- ④四日熱マラリア原虫の栄養体
- ⑤熱帯熱マラリア原虫の分裂体
正答: ②三日熱マラリア原虫の栄養体
ポイント
三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)の栄養体(輪状体〜成熟栄養体)は、感染赤血球が腫大して正常より大きくなり、Schüffner斑点(細かな好酸性顆粒)を伴うのが特徴である。栄養体期にはアメーバ様に不整な細胞質を伸ばす運動性に富む像(アメーバ体)を示し、これが本標本で考えられる像である。分裂体(シゾント)期には1個の原虫核が分裂して多数(三日熱では十数〜二十数個)の娘原虫(メロゾイト)を形成する点で栄養体と区別される。●無性生殖=輪状体→栄養体→分裂体→メロゾイト放出・別の赤血球へ侵入。一部の原虫はこの経路と分かれて生殖母体へ分化する。●虫種の手掛かり=三日熱・卵形は感染赤血球が腫大しSchüffner斑点を伴う、四日熱は赤血球腫大なし、熱帯熱は輪状体が小型・多重感染・末梢血で分裂体が出にくい。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。卵形マラリア原虫の分裂体は娘原虫が少なく赤血球が卵形化する像で、本標本の栄養体像と異なる。
- ② 正しい。感染赤血球が腫大しSchüffner斑点を伴うアメーバ様の三日熱マラリア原虫栄養体と考えられる。
- ③ 誤り。分裂体は多数の娘原虫が形成された像であり、単一核でアメーバ様の栄養体とは段階が異なる。
- ④ 誤り。四日熱マラリア原虫は感染赤血球が腫大せず、帯状栄養体を示す点で三日熱と異なる。
- ⑤ 誤り。熱帯熱マラリア原虫の分裂体は末梢血にほとんど出現せず、本像とは合致しない。
📋 まとめの表を見る:マラリア原虫の種類別 形態・潜伏期・発熱間隔の比較
マラリア原虫はハマダラカに刺されてスポロゾイトが体内に侵入し、まず肝細胞内で増殖(赤外型)した後、赤血球内で輪状体→アメーバ体→分裂体と発育する(無性生殖)。
第58回 午後10(臨床検査総論)
免疫学的診断法が有用なのはどれか。
- ①小型アメーバ感染
- ②大腸アメーバ感染
- ③赤痢アメーバ感染
- ④ヨードアメーバ感染
- ⑤ディスパーアメーバ感染
正答: ③赤痢アメーバ感染
ポイント
赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)は腸管壁に侵入してアメーバ性大腸炎(粘血便)を起こし、さらに血行性に肝へ達してアメーバ性肝膿瘍などの腸管外病変を生じる病原性アメーバである。肝膿瘍など腸管外感染では便中に虫体や嚢子が検出されにくいため、血清抗体検出などの免疫学的診断法が有用となる。これに対し小型アメーバ(Endolimax nana)・大腸アメーバ(Entamoeba coli)・ヨードアメーバ(Iodamoeba bütschlii)は非病原性の腸管寄生原虫で診断は糞便鏡検が中心であり、ディスパー(Entamoeba dispar)は赤痢アメーバと形態が同一だが非病原性で、両者の鑑別には抗原・遺伝子検査を要するものの、抗体による病態診断の主対象は病原性のある赤痢アメーバである。●病原性で免疫学的診断が有用=赤痢アメーバ(腸管外アメーバ症・肝膿瘍)。●非病原性で糞便鏡検が中心=大腸アメーバ・小型アメーバ・ヨードアメーバ・ディスパーアメーバ。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。小型アメーバ(Endolimax nana)は非病原性で、診断は糞便鏡検が中心である。
- ② 誤り。大腸アメーバ(Entamoeba coli)は非病原性の腸管常在原虫で、免疫学的診断の対象ではない。
- ③ 正しい。赤痢アメーバは腸管外病変(肝膿瘍など)で便検査が困難なため、抗体検出など免疫学的診断が有用である。
- ④ 誤り。ヨードアメーバ(Iodamoeba bütschlii)は非病原性で、糞便中嚢子の鏡検で診断される。
- ⑤ 誤り。ディスパーアメーバは非病原性で、赤痢アメーバとの鑑別は抗原・遺伝子検査によるが抗体診断の主対象ではない。
第58回 午後11(臨床検査医学総論)
慢性閉塞性肺疾患はどれか。2つ選べ。
- ①肺気腫
- ②肺腺癌
- ③間質性肺炎
- ④サルコイドーシス
- ⑤びまん性汎細気管支炎
正答: ①肺気腫・⑤びまん性汎細気管支炎
ポイント
本問は慢性の閉塞性換気障害を呈する疾患として、肺気腫とびまん性汎細気管支炎を選ぶ。現在のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は主に有害物質の吸入によって生じる持続性の気流閉塞を特徴とする病態であり、びまん性汎細気管支炎とは区別する。肺気腫は肺胞壁の破壊により末梢気腔が拡大し、肺の弾性収縮力低下と気道の動的虚脱から呼気気流制限をきたす代表的な閉塞性疾患である。びまん性汎細気管支炎は呼吸細気管支領域のびまん性慢性炎症で、気道狭窄により閉塞性換気障害を呈する。一方、肺腺癌は腫瘍性病変、間質性肺炎・サルコイドーシスは肺の線維化・肉芽腫により肺が硬く膨らみにくくなる拘束性換気障害(肺活量低下・1秒率は比較的保たれる)を示す点で区別される。●閉塞性換気障害(気流制限)=肺気腫・慢性気管支炎・気管支喘息・びまん性汎細気管支炎。●拘束性換気障害(肺容量低下)=間質性肺炎・特発性肺線維症・サルコイドーシス・じん肺。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。肺気腫は肺胞破壊と弾性低下による呼気気流制限を呈する代表的な慢性閉塞性肺疾患である。
- ② 誤り。肺腺癌は悪性腫瘍であり、気流制限を主病態とする慢性閉塞性肺疾患には含まれない。
- ③ 誤り。間質性肺炎は肺の線維化により拘束性換気障害を呈し、閉塞性疾患ではない。
- ④ 誤り。サルコイドーシスは肉芽腫性病変で拘束性換気障害を示し、閉塞性肺疾患には分類されない。
- ⑤ 正しい。びまん性汎細気管支炎は呼吸細気管支のびまん性炎症で気道狭窄をきたし、閉塞性換気障害を呈する。
第58回 午後12(臨床検査医学総論)
高位側壁心筋梗塞で異常Q波が出現する誘導はどれか。2つ選べ。
正答: ①Ⅰ・③aVL
ポイント
心筋梗塞の責任部位は異常Q波が出現する誘導から推定する。高位側壁梗塞では左室の高位側壁を反映する第Ⅰ誘導とaVL誘導に異常Q波が出現するのが特徴である。四肢誘導と胸部誘導はそれぞれ心臓の特定の面を反映し、どの誘導群に異常Q波・ST変化が分布するかで障害領域と責任冠動脈を推定できる。高位側壁は左前下行枝の対角枝や左回旋枝の灌流域にあたる。●心電図誘導と心筋部位=下壁:Ⅱ・Ⅲ・aVF、高位側壁:Ⅰ・aVL、前壁中隔:V1〜V2、前壁:V3〜V4、側壁:V5・V6(+Ⅰ・aVL)、後壁:V1〜V2の鏡像変化。●責任冠動脈の目安=前壁中隔は左前下行枝、側壁は左回旋枝、下壁は右冠動脈または左回旋枝。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。第Ⅰ誘導は左室高位側壁を反映し、高位側壁心筋梗塞で異常Q波が出現する。
- ② Ⅲ誘導はⅡ・aVFとともに下壁を反映する誘導であり、高位側壁梗塞では異常Q波は出にくい。
- ③ 正しい。aVL誘導は第Ⅰ誘導とともに高位側壁を反映し、同部の梗塞で異常Q波が出現する。
- ④ V1は前壁中隔を反映する胸部誘導であり、高位側壁梗塞の異常Q波出現部位ではない。
- ⑤ V3は前壁を反映する胸部誘導であり、高位側壁梗塞の責任誘導ではない。
第58回 午後13(臨床検査医学総論)
尿細管でほとんど再吸収されないのはどれか。
- ①尿素窒素
- ②グルコース
- ③クレアチニン
- ④シスタチンC
- ⑤β₂-ミクログロブリン
正答: ③クレアチニン
ポイント
クレアチニンは筋肉でクレアチンから生成される代謝産物で、糸球体で自由に濾過され、尿細管ではほとんど再吸収されない(わずかに尿細管分泌される)。このため血中濃度が糸球体濾過量(GFR)をよく反映し、クレアチニンクリアランスや推算GFRの指標として用いられる。これに対し尿素窒素は濾過後に尿細管で受動的に再吸収を受け、グルコースは近位尿細管でほぼ完全に再吸収され(再吸収閾値を超えると尿糖出現)、シスタチンCやβ₂-ミクログロブリンは糸球体濾過後に近位尿細管で再吸収・異化されるため、これらは「再吸収されない」物質には当たらない。●糸球体で濾過されほとんど再吸収されない=クレアチニン(イヌリンも代表例)。●尿細管で再吸収される=グルコース(近位でほぼ全量)、尿素窒素(受動的)、低分子蛋白(シスタチンC・β₂-ミクログロブリンは近位尿細管で再吸収・分解)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。尿素窒素は糸球体濾過後に尿細管で受動的に再吸収されるため、再吸収されない物質には当たらない。
- ② 誤り。グルコースは近位尿細管でほぼ完全に再吸収され、閾値を超えて初めて尿中に出現する。
- ③ 正しい。クレアチニンは糸球体で濾過され尿細管でほとんど再吸収されず、GFRの指標として用いられる。
- ④ 誤り。シスタチンCは糸球体濾過後に近位尿細管で再吸収・異化されるため尿中にはほとんど排泄されない。
- ⑤ 誤り。β₂-ミクログロブリンは糸球体濾過後に近位尿細管で再吸収・分解される低分子蛋白である。
第58回 午後14(臨床検査医学総論)
抗凝固剤を含む採血管を用いる必要があるのはどれか。
- ①HbA1c
- ②インスリン
- ③C-ペプチド
- ④グリコアルブミン
- ⑤1,5-アンヒドログルシトール
正答: ①HbA1c
ポイント
HbA1c(グリコヘモグロビン)は赤血球内のヘモグロビンにグルコースが非酵素的に結合したもので、測定には赤血球(全血)が必要となる。凝固で赤血球が失われないよう全血のまま検体とするため、抗凝固剤(EDTA塩やフッ化ナトリウムなど)を含む採血管を用いる必要がある(測定時には赤血球を溶血させ、ヘモグロビンを分析する)。これに対しインスリン・C-ペプチド・グリコアルブミン・1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)はいずれも血清または血漿で測定する血漿成分であり、HbA1cのように赤血球を要する項目ではない(1,5-AG・グリコアルブミンは血清で測定可能)。●全血(抗凝固剤入り)が必要=HbA1c(赤血球内ヘモグロビンの糖化を測定)、血球算定、血液ガスなど。●血清・血漿で測定する糖尿病関連指標=血糖、インスリン、C-ペプチド、グリコアルブミン、1,5-アンヒドログルシトール。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。HbA1cは赤血球内ヘモグロビンの糖化を測定するため全血が必要で、抗凝固剤入り採血管を用いる。
- ② 誤り。インスリンは血清・血漿で測定する成分で、HbA1cのように抗凝固剤入り全血を必須としない。
- ③ 誤り。C-ペプチドは血清・血漿で測定でき、赤血球を要する項目ではない。
- ④ 誤り。グリコアルブミンは血清アルブミンの糖化を測定する血清項目である。
- ⑤ 誤り。1,5-アンヒドログルシトールは血清で測定する糖代謝指標である。
第58回 午後15(臨床検査医学総論)
新生児マススクリーニング検査の対象疾患はどれか。
- ①Wilson病
- ②クレチン症
- ③Gaucher病
- ④ポルフィリン症
- ⑤Niemann-Pick病
正答: ②クレチン症
ポイント
新生児マススクリーニングは、早期治療により発症・重症化を予防できる先天性代謝異常・内分泌疾患を対象に、生後数日の新生児から採血したろ紙血を用いて行う公衆衛生事業である。クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)は対象疾患で、未治療では精神運動発達遅滞をきたすが、早期にホルモン補充(甲状腺ホルモン投与)を行えば正常発達が期待できるため、TSHなどの測定によりスクリーニングされる。一方、Wilson病・Gaucher病・ポルフィリン症・Niemann-Pick病は本制度の標準的対象疾患ではない。●新生児マススクリーニング対象(従来)=先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)、先天性副腎過形成症、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症(近年タンデムマス法で対象拡大)。●対象でない代表疾患=Wilson病、Gaucher病・Niemann-Pick病(ライソゾーム病)、ポルフィリン症。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。Wilson病(銅代謝異常)は新生児マススクリーニングの標準的対象疾患ではない。
- ② 正しい。クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)は早期のホルモン補充で発達障害を防げるため対象疾患である。
- ③ 誤り。Gaucher病はライソゾーム病であり、従来の新生児マススクリーニングの標準対象ではない。
- ④ 誤り。ポルフィリン症はヘム合成系の異常で、新生児マススクリーニングの対象疾患ではない。
- ⑤ 誤り。Niemann-Pick病はライソゾーム病で、標準的なマススクリーニング対象には含まれない。
第58回 午後16(臨床生理学)
昏睡状態の患者で実施できない検査はどれか。
- ①Holter心電図
- ②脳波検査における誘発電位
- ③誘発筋電図検査における神経伝導速度
- ④呼吸機能検査におけるスパイロメトリ
- ⑤室内気吸入時の動脈血ガス分析を用いた肺胞気-動脈血酸素分圧較差
正答: ④呼吸機能検査におけるスパイロメトリ
ポイント
昏睡状態の患者は意識がなく、検査への協力(指示に従った努力呼吸や随意的な運動)ができない。スパイロメトリによる呼吸機能検査は、被検者が最大吸気・最大努力呼出を自発的に行う必要がある努力依存性の検査であり、協力が得られない昏睡患者では実施できない。一方、Holter心電図・誘発電位(外部刺激に対する反応を記録)・神経伝導速度(電気刺激で他動的に誘発)・動脈血ガス分析(自発呼吸下の採血で評価)は、いずれも被検者の意識的協力を要さず、昏睡状態でも実施可能である。●被検者の随意的努力(協力)が必要な検査=スパイロメトリ(肺活量・努力呼出)、フローボリューム曲線、聴力検査の自覚的検査など。●意識・協力を要さず実施可能な検査=心電図・Holter、誘発電位、神経伝導速度(誘発筋電図)、動脈血ガス分析。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。Holter心電図は電極装着のみで記録でき、患者の協力を要さず昏睡状態でも実施できる。
- ② 誤り。誘発電位は外部刺激に対する電気的反応を記録するもので、意識的協力なしに実施可能である。
- ③ 誤り。神経伝導速度は電気刺激により他動的に誘発するため、昏睡状態でも測定できる。
- ④ 正しい。スパイロメトリは最大吸気・努力呼出という被検者の随意的協力を要し、昏睡状態では実施できない。
- ⑤ 誤り。動脈血ガス分析は自発呼吸下の動脈採血で評価でき、患者の協力を必要としない。
第58回 午後17(臨床生理学)
心電図記録中Ⅰ・Ⅱ誘導に交流障害が生じた。対応として正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①右手のリード線を換える。
- ②右手と左手の電極を入れ換える。
- ③右手に力を込めないよう説明する。
- ④右手をベッドの金属部分に触れさせる。
- ⑤右手の電極を接触抵抗の低いものに換える。
正答: ①右手のリード線を換える。・⑤右手の電極を接触抵抗の低いものに換える。
ポイント
心電図記録中の交流障害(ハム雑音)は商用交流(50/60Hz)の混入によるもので、電極の接触不良や接地不良、リード線の断線・劣化が主因となる。Ⅰ誘導とⅡ誘導の両方に障害が共通して出ている場合、これらに共通する電極=右手電極(Ⅰ=左手−右手、Ⅱ=左足−右手)の問題が疑われる。したがって右手のリード線を換える、右手の電極を接触抵抗の低いものに換える(電極ペーストの塗り直しや清拭を含む)といった、右手電極周りの接触状態を改善する対応が正しい。電極の左右入れ換えは誘導波形を誤らせ、金属に触れさせる行為はかえって交流混入を増やすため不適切である。●交流障害(ハム)対策=接触抵抗を下げる(皮膚清拭・電極交換・ペースト塗布)、リード線・接地の点検と交換、電源・周囲機器との距離確保。●波形を変えてしまう不適切操作=電極の左右入れ換え、無関係な部位への接触。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。Ⅰ・Ⅱに共通する右手電極のリード線不良が疑われるため、右手のリード線を換えるのは適切である。
- ② 誤り。右手と左手の電極を入れ換えると誘導波形が逆転・誤表示され、交流障害対策にならない。
- ③ 誤り。力を抜かせる説明は筋電図(基線の揺れ)対策で、商用交流由来のハム障害には直接効果がない。
- ④ 誤り。金属部分に触れさせると交流の混入経路が増え、かえって交流障害を悪化させる。
- ⑤ 正しい。右手の電極を接触抵抗の低いものに換えることで接触不良による交流混入を軽減できる。
第58回 午後18(臨床生理学)
健常成人の心電図でみられないのはどれか。
- ①PQ間隔は0.2秒以下である。
- ②心拍数は50〜100回/分である。
- ③Ⅰ誘導でのP波は上向きである。
- ④aVR誘導のQRS波は陽性波形である。
- ⑤胸部誘導の移行帯はV3〜V4誘導に存在する。
正答: ④aVR誘導のQRS波は陽性波形である。
ポイント
aVR誘導は右上肢方向から心臓を見る誘導で、心室の主たる脱分極(QRS)ベクトルがこの方向と逆向きになるため、健常成人ではaVRのQRS波は基本的に下向き(陰性、主にQS型やrS型)となる。したがって「aVR誘導のQRS波が陽性波形である」は健常成人の心電図ではみられない所見である。他の選択肢はいずれも正常範囲の所見で、PQ間隔0.2秒以下(正常上限)、心拍数50〜100/分(正常洞調律の範囲)、Ⅰ誘導でP波上向き(正常な心房興奮方向)、胸部誘導の移行帯がV3〜V4(正常な移行帯位置)はすべて健常者に矛盾しない。●aVRの特徴=P・QRS・Tがいずれも陰性が基本(陽性化は誘導誤接続や異常を示唆)。●正常心電図の目安=PQ 0.12〜0.20秒、QRS幅0.10秒未満、心拍数50〜100/分、移行帯V3〜V4、Ⅰ・Ⅱ誘導でP波陽性。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り(正常所見)。PQ間隔0.2秒以下は房室伝導が正常範囲であることを示し、健常成人にみられる。
- ② 誤り(正常所見)。心拍数50〜100回/分は正常洞調律の範囲で、健常成人にみられる。
- ③ 誤り(正常所見)。Ⅰ誘導でP波が上向きなのは正常な心房興奮方向を反映する所見である。
- ④ 正しい(みられない)。aVRのQRSは健常成人では陰性が基本で、陽性波形は通常みられない。
- ⑤ 誤り(正常所見)。胸部誘導の移行帯がV3〜V4に存在するのは正常な位置である。
📋 まとめの表を見る:心電図の各波形・時間と成因
心房の再分極(Ta波)は振幅が小さくQRS波に重なるため、通常の心電図には明瞭に現れない。
第58回 午後19(臨床生理学)
心電図を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB019.165f2abd26.jpg

- ①洞停止
- ②房室解離
- ③房室ブロック
- ④徐脈頻脈症候群
- ⑤上室性期外収縮
正答: ⑤上室性期外収縮
ポイント
上室性(心房性)期外収縮は、洞結節以外の心房内異所性興奮源から予定より早期にQRS波が出現する不整脈である。心電図では、基本調律より早期に出現する先行P波(洞調律のP波とは形態が異なる異所性P波)を伴い、QRS波形はもともとの上室性興奮を受け継ぐため幅が狭く正常波形であることが多い点が特徴である。期外収縮後には不完全代償性休止期を伴うことが多い。これに対し洞停止はP波そのものが脱落し、房室解離・房室ブロックはP波とQRS波の対応の乱れ・伝導途絶、徐脈頻脈症候群は洞機能不全による徐脈と頻脈の交代でそれぞれ区別される。●期外収縮の鑑別=上室性は先行異所性P波+幅の狭いQRS、心室性は先行P波なし+幅の広いQRS。●その他の徐脈・伝導障害=洞停止(P波脱落)、房室ブロック(PQ延長や伝導途絶)、房室解離、洞不全症候群(徐脈頻脈症候群)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。洞停止はP波が脱落する所見で、早期の異所性P波を伴う期外収縮の像とは異なる。
- ② 誤り。房室解離は心房と心室が独立して興奮する状態で、早期収縮を主徴とする本像とは異なる。
- ③ 誤り。房室ブロックはPQ延長や房室伝導の途絶が特徴で、早期の上室性興奮像とは異なる。
- ④ 誤り。徐脈頻脈症候群は洞機能不全による徐脈と頻脈の交代を呈する病態で、単発の早期収縮像とは異なる。
- ⑤ 正しい。早期に出現する異所性P波と幅の狭いQRSを示し、上室性期外収縮と考えられる。
📋 まとめの表を見る:不整脈・心筋梗塞の心電図所見
第58回 午後20(臨床生理学)
1回呼吸法による肺拡散能検査で正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①ノーズクリップは不要である。
- ②肺拡散能力は肺気腫で上昇する。
- ③肺拡散能力は肺高血圧症で低下する。
- ④測定時は混合ガス吸入後1秒以内に呼出させる。
- ⑤吸入する混合ガスには微量の一酸化炭素が含まれる。
正答: ③肺拡散能力は肺高血圧症で低下する。・⑤吸入する混合ガスには微量の一酸化炭素が含まれる。
ポイント
1回呼吸法による肺拡散能(DLCO)検査は、微量の一酸化炭素(CO)を含む混合ガスを最大吸気し約10秒間息止めした後に呼出させ、CO取り込み量から肺胞気から血液(ヘモグロビン)へのガス移動能力を評価する検査である。COはヘモグロビンに対する親和性が高く、拡散の指標として用いられる。肺胞毛細血管膜面積や肺血流(毛細血管血液量)が減少すると拡散能は低下するため、肺高血圧症や肺気腫(肺胞破壊による有効ガス交換面積減少)・間質性肺炎・貧血などでDLCOは低下する。鼻からのガス漏れを防ぐためノーズクリップは必要で、息止め時間も規定されている。●DLCO低下をきたす病態=肺気腫、間質性肺炎・肺線維症、肺高血圧症、肺血栓塞栓症、貧血。●DLCO上昇・偽高値をきたす要因=多血症、肺胞出血、左右短絡・運動など肺血流増加。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。鼻からのガス漏れを防ぐためノーズクリップは必要である。
- ② 誤り。肺気腫では肺胞破壊により有効ガス交換面積が減り、肺拡散能は低下する(上昇しない)。
- ③ 正しい。肺高血圧症では肺毛細血管床の障害により拡散能が低下する。
- ④ 誤り。混合ガス吸入後は約10秒間の息止めを行ってから呼出させるもので、1秒以内の呼出ではない。
- ⑤ 正しい。拡散の指標として、吸入する混合ガスには微量の一酸化炭素が含まれる。
第58回 午後21(臨床生理学)
室内気吸入下での動脈血ガス分析の結果で、生命の危険性が最も高いと考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB021.9d64e7d73a.jpg

正答: ③
ポイント
動脈血ガス分析では、pH・PaO₂・PaCO₂・HCO₃⁻から酸塩基平衡と酸素化を総合評価し、生命危機の程度を判断する。原図の③の行(pH 7.10、PaCO₂ 78Torr、PaO₂ 48Torr)は高度のアシデミアと著明な高二酸化炭素血症(高度のCO₂貯留=肺胞低換気)を示し、急性呼吸性アシドーシスの状態であるうえPaO₂ 48Torrと低酸素血症も伴っている。著明な高炭酸ガス血症は意識障害(CO₂ナルコーシス)・呼吸性アシドーシスによる循環抑制を招き、最も生命の危険性が高い。他の結果は正常域や軽〜中等度の異常にとどまる。●判定の手順=①pHでアシデミア/アルカレミアを判定 ②PaCO₂で呼吸性要素、HCO₃⁻で代謝性要素を評価 ③PaO₂で酸素化を評価。●危険度の高い所見=著明な高CO₂血症(CO₂ナルコーシス)、高度アシデミア(pH<7.2)、重度低酸素血症(PaO₂<40〜50Torr)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。pH・PaO₂・PaCO₂・HCO₃⁻がいずれもほぼ正常域で、生命危機を示す所見ではない。
- ② 誤り。pH 7.52・PaCO₂ 32と軽度の呼吸性アルカローシス傾向だが、酸素化は良好で危険度は低い。
- ③ 正しい。pH 7.10の高度アシデミアとPaCO₂ 78の著明な高炭酸ガス血症+低酸素血症を伴い、最も生命の危険が高い。
- ④ 誤り。pH 7.48・HCO₃⁻ 40と代謝性アルカローシス傾向だが、酸素化はおおむね保たれ危険度は相対的に低い。
- ⑤ 誤り。軽度の低酸素血症とCO₂貯留はあるが、pHはほぼ正常で代償されており生命危機は最も高くはない。
📋 まとめの表を見る:動脈血ガス分析の基準範囲
BE(過剰塩基)は代謝性因子の指標。BEが正常なら酸塩基異常は呼吸性、-2以下なら代謝性アシドーシス、+2以上なら代謝性アルカローシスを示唆する。
📋 まとめの表を見る:酸塩基平衡異常の4パターン(pH・一次性変化・代償性変化)
代償は血液pHを基準範囲(7.35〜7.45)へ戻そうとする働き。呼吸性代償は換気量の増減により数時間単位、代謝性(腎性)代償はHCO₃-の排泄調節により数日単位で生じる。代償が予測範囲を超える場合は混合性障害を疑う。
第58回 午後22(臨床生理学)
33歳の男性。3か月前から深夜または早朝の咳と呼吸困難発作とを繰り返している。この患者のフローボリューム曲線を図に示す。正しいのはどれか。2つ選べ。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB022.a9cba98112.jpg

- ①気管支の非可逆的狭窄がある。
- ②呼吸困難があるときは残気量の増加によって肺活量が低下している。
- ③特発性肺線維症が最も考えられる。
- ④気管支拡張薬吸入前後の1秒量の変化が診断に有用である。
- ⑤呼吸困難発作の予防に吸入ステロイド薬は無効である。
正答: ②呼吸困難があるときは残気量の増加によって肺活量が低下している。・④気管支拡張薬吸入前後の1秒量の変化が診断に有用である。
ポイント
深夜・早朝の咳と発作性呼吸困難を反復する病歴とフローボリューム曲線(呼出曲線の下に凸=末梢気道閉塞パターン)から、気管支喘息が最も考えられる。喘息は可逆性の気道狭窄を本態とし、発作時には気道閉塞で呼出が妨げられて空気が肺内に閉じ込められ、残気量が増加して肺活量が低下する。診断・可逆性評価には気管支拡張薬吸入前後で1秒量(FEV1)がどれだけ改善するか(気道可逆性試験)が有用である。気道狭窄は可逆的であり非可逆的狭窄ではない。特発性肺線維症は拘束性パターンであり病歴と合わない。喘息の長期管理には吸入ステロイド薬が中心的役割を果たし無効ではない。●気管支喘息の特徴=可逆性の気道狭窄、発作性・日内変動(夜間早朝悪化)、残気量増加による肺活量低下、気道可逆性試験陽性、吸入ステロイドが管理の中心。●鑑別=COPD(非可逆性気流制限)、特発性肺線維症(拘束性・拡散能低下)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。気管支喘息は可逆性の気道狭窄が本態で、非可逆的狭窄とする記述は誤りである。
- ② 正しい。発作時は気道閉塞によりエアトラッピングが生じ、残気量が増加して肺活量が低下する。
- ③ 誤り。夜間・早朝の発作性病歴とフローボリューム所見は喘息を示唆し、特発性肺線維症は考えにくい。
- ④ 正しい。気管支拡張薬吸入前後の1秒量変化(気道可逆性試験)は喘息の診断に有用である。
- ⑤ 誤り。吸入ステロイド薬は喘息の長期管理・発作予防の中心であり、無効ではない。
📋 まとめの表を見る:換気機能障害の分類(%肺活量〈%VC〉・1秒率〈FEV1%〉による判定)
閉塞性換気障害ではフローボリューム曲線が下に凸の形となる。機能的残気量〈FRC〉は肺の過膨張により上昇する(肺気腫・COPDなど)。
第58回 午後23(臨床生理学)
意識の維持に関与する部位はどれか。2つ選べ。
正答: ③間脳・④脳幹
ポイント
意識の維持(覚醒の保持)には、脳幹網様体から大脳皮質へ広く投射する上行性網様体賦活系と、その中継・調節を担う間脳(視床)が重要な役割を果たす。脳幹(特に中脳〜橋の網様体)は覚醒を生み出す中枢で、間脳の視床はその信号を大脳皮質へ伝達・統合する。したがって意識の維持に関与する部位は間脳と脳幹である。脊髄は反射・伝導路、小脳は運動の協調・平衡、松果体はメラトニン分泌による概日リズム調節を担い、いずれも意識(覚醒)の直接的維持には主たる役割を果たさない。●意識(覚醒)維持に関与=脳幹網様体(上行性網様体賦活系)、間脳(視床)、これらを介した大脳皮質の広範な活動。●意識の直接維持には主役でない=脊髄(反射・伝導)、小脳(運動協調・平衡)、松果体(メラトニン・概日リズム)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。脊髄は反射と伝導路を担うが、覚醒(意識)の維持を直接担う中枢ではない。
- ② 誤り。小脳は運動の協調や平衡の調節を担い、意識の維持には主たる役割を果たさない。
- ③ 正しい。間脳(視床)は脳幹網様体からの覚醒信号を大脳皮質へ中継し、意識の維持に関与する。
- ④ 正しい。脳幹網様体は上行性網様体賦活系として覚醒を生み出し、意識の維持に中心的に関与する。
- ⑤ 誤り。松果体はメラトニン分泌による概日リズム調節を担い、意識の直接的維持には関与しない。
第58回 午後24(臨床生理学)
脳波の発生に関与するのはどれか。
- ①細胞の静止膜電位
- ②神経細胞の活動電位
- ③ミトコンドリアの内膜電位
- ④軸索内外を流れるイオン電流
- ⑤興奮性または抑制性のシナプス後電位
正答: ②神経細胞の活動電位・⑤興奮性または抑制性のシナプス後電位
ポイント
脳波(頭皮上で記録される律動的電位変動)は、主として大脳皮質錐体細胞に生じる興奮性シナプス後電位(EPSP)と抑制性シナプス後電位(IPSP)の総和を反映する。これらシナプス後電位は持続時間が比較的長く、多数のニューロンで時間的・空間的に同期・加重して頭皮上に容量的に伝わるため脳波として観察される。神経細胞の活動電位(スパイク)も電気現象として関与するが、極めて短時間で非同期的なため頭皮上脳波への寄与は小さく、本問では活動電位とシナプス後電位の双方が正答として問われている。細胞の静止膜電位やミトコンドリア内膜電位は律動的な脳波発生の直接的起源ではない。●脳波の主な起源=大脳皮質錐体細胞のシナプス後電位(EPSP・IPSP)の総和、これに同期した神経活動。●脳波の直接起源でないもの=単なる静止膜電位、ミトコンドリア内膜の電位(ATP合成に関わる膜電位)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。細胞の静止膜電位は一定の分極状態であり、律動的な脳波の発生源ではない。
- ② 正しい。神経細胞の活動電位は神経の電気活動として脳波の発生に関与する。
- ③ 誤り。ミトコンドリア内膜電位はATP合成に関わる膜電位で、脳波発生の直接的起源ではない。
- ④ 誤り。軸索内外を流れるイオン電流は活動電位の伝導に伴うが、頭皮上脳波の主たる発生源ではない。
- ⑤ 正しい。大脳皮質錐体細胞の興奮性・抑制性シナプス後電位の総和が脳波発生の主体である。
第58回 午後25(臨床生理学)
正中神経を16回連続して最大上電気刺激した波形を別に示す。点線内の波形の説明で正しいのはどれか。なお、途中で感度を変更しているため、記録は不連続のように見えるが実際は連続している。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB025.539f66203f.jpg

- ①アーチファクト
- ②痛みによる随意運動の電位
- ③高度の脱髄のため遅延した電位
- ④感覚神経を介した脊髄前角細胞の興奮による電位
- ⑤運動神経を逆行したインパルスによる脊髄前角細胞の興奮伝導
正答: ⑤運動神経を逆行したインパルスによる脊髄前角細胞の興奮伝導
ポイント
正中神経を最大上電気刺激して手内筋から記録すると、刺激により運動神経を順行性に伝わる直接反応(M波)に続いて、運動神経を逆行性(求心性方向)に上行したインパルスが脊髄前角細胞を再興奮させ、再び遠心性に下行して筋に到達するF波が記録される。点線内の遅れて出現する小さな波形は、このF波に相当し、運動神経を逆行したインパルスによる脊髄前角細胞の興奮が再び筋へ伝導した電位と説明される。F波は近位部を含む運動神経全長の伝導を評価でき、感覚神経を介する反射(H波)とは経路が異なる。●運動神経刺激で得られる遅延波=F波(運動神経の逆行性興奮→前角細胞再興奮→順行性伝導、シナプスを介さない)。●反射性の遅延波=H波(Ia求心性線維→脊髄→運動ニューロンの単シナプス反射)。●区別点=F波は感覚線維を介さず潜時・振幅が変動、H波は感覚神経を介する反射。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。点線内の波形は再現性のある生理的電位(F波)であり、無秩序なアーチファクトではない。
- ② 誤り。最大上刺激による誘発電位であり、痛みによる随意運動電位を示すものではない。
- ③ 誤り。本波形はF波であり、脱髄による遅延電位そのものを示す説明としては適切でない。
- ④ 誤り。それは感覚神経を介する反射(H波)の説明で、運動神経刺激で得られるF波とは経路が異なる。
- ⑤ 正しい。運動神経を逆行したインパルスが脊髄前角細胞を再興奮させ筋へ伝導したF波の説明である。
第58回 午後26(臨床生理学)
病態と心臓超音波検査所見の組合せで誤っているのはどれか。
- ①心臓腫瘍 — 僧帽弁の収縮期前方運動
- ②心囊液貯留 — 心周囲の無エコー
- ③大動脈弁狭窄 — 大動脈弁流速の増加
- ④拡張型心筋症 — 左室駆出率の低下
- ⑤非閉塞性肥大型心筋症 — 左室の非対称性肥大
正答: ①心臓腫瘍 — 僧帽弁の収縮期前方運動
ポイント
僧帽弁の収縮期前方運動(SAM;systolic anterior motion)は、左室流出路の狭窄により僧帽弁前尖が収縮期に前方へ引き込まれる現象で、閉塞性肥大型心筋症に特徴的な所見である。SAMは流出路の血流加速によるベンチュリ効果で弁が前方偏位することによって生じ、連続波ドプラで収縮後期にピークをもつ匕首状の圧較差として捉えられる。一方、心臓腫瘍(最も多い良性腫瘍は左房粘液腫)では有茎性腫瘤が拍動に伴って左房・左室間を行き来する可動性エコー像を呈し、SAMとは結びつかない。心臓超音波は壁運動・弁・心膜・血流速度から各病態を総合的に評価する。●形態異常を反映する所見=粘液腫の可動性腫瘤、拡張型心筋症のびまん性壁運動低下と左室拡大、肥大型心筋症の非対称性中隔肥厚。●機能・血行動態を反映する所見=大動脈弁狭窄での連続波ドプラによる弁口最大流速・圧較差の増加、心膜液貯留での心周囲エコーフリースペース。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。SAMは閉塞性肥大型心筋症に特徴的な所見で、心臓腫瘍(左房粘液腫など)では可動性のある腫瘤エコーが観察される。
- ② 正しい。心膜腔に貯留した液体は心臓周囲のエコーフリースペース(無エコー帯)として描出される。
- ③ 正しい。大動脈弁狭窄では弁口面積の減少を反映して連続波ドプラで弁通過血流の最大流速・圧較差が増加する。
- ④ 正しい。拡張型心筋症ではびまん性の壁運動低下により左室駆出率が著明に低下し、左室内腔は拡大する。
- ⑤ 正しい。非閉塞性肥大型心筋症では心室中隔優位の非対称性左室肥大を示し、流出路閉塞は伴わない。
📋 まとめの表を見る:心臓超音波検査:所見と病態
SAM(収縮期前方運動)は閉塞性肥大型心筋症に特徴的な所見であり、僧帽弁逸脱の所見ではない点に注意。
第58回 午後27(臨床生理学)
超音波による右頸部横断面像を別に示す。矢印で示すのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB027.2a39808b0c.jpg

正答: ③総頸動脈
ポイント
右頸部横断面像で胸鎖乳突筋の深部に並走する血管のうち、拍動性で内腔が円形を保ち、プローブによる圧迫で容易に虚脱しない厚壁の管腔が総頸動脈である。その外側にある総頸動脈より大きく、圧迫で容易につぶれる薄壁の管腔が内頸静脈で、両者は頸動脈鞘内に並走する。横断面では総頸動脈が円形の小さな無エコー腔、内頸静脈がやや扁平で大きな無エコー腔として描出され、カラードプラを併用すると血流方向や拍動の有無で確実に鑑別できる。甲状腺は気管前面で左右両葉が峡部でつながる比較的均一な実質エコーを示し、血管とは区別できる。●頸部血管の鑑別点=動脈は拍動性・円形・圧迫で虚脱しにくい、静脈は呼吸性変動があり圧迫で容易に虚脱する。●頸部の主要構造=正中の気管(後方音響陰影)、その前外側の甲状腺、外側の頸動脈鞘(総頸動脈・内頸静脈)、皮下や血管周囲のリンパ節(境界明瞭な低エコー結節)。
選択肢ごとの解説
- ① 気管は頸部正中に位置し、内部の空気により後方へ音響陰影を生じるため、外側の血管像とは異なる。
- ② 甲状腺は気管前面に位置する比較的均一な実質エコーを呈する臓器で、管腔構造ではない。
- ③ 正しい。拍動性で円形の内腔を保ち圧迫で虚脱しにくい厚壁の血管が総頸動脈である。
- ④ 内頸静脈は総頸動脈の外側にある薄壁の管腔で、呼吸性変動を示し圧迫で容易に虚脱する。
- ⑤ リンパ節は境界明瞭な楕円形の低エコー結節として描出され、長く連続する管腔像にはならない。
第58回 午後28(臨床生理学)
腹部超音波検査で子宮を観察しやすくするために行われるのはどれか。
- ①絶食
- ②左側臥位
- ③膀胱充満
- ④走査中の呼吸停止
- ⑤下剤使用による排便
正答: ③膀胱充満
ポイント
経腹的に骨盤内の子宮を観察する際は、膀胱を尿で充満させることが基本である。充満した膀胱はその内部が均一な液体で満たされて超音波がよく透過するため良好な音響窓となり、また膀胱が腸管を頭側へ押しのけて消化管ガスによるアーチファクトを回避し、後方の子宮・付属器を明瞭に描出できる。逆に膀胱が空虚だと腸管ガスに妨げられ、骨盤深部の構造が音響陰影で覆われて観察が困難となる。●描出を助ける条件=経腹的骨盤検査での膀胱充満(音響窓の確保)、腹部血管・実質臓器観察での仰臥位や体位変換、呼吸調整による肝・腎の移動。●描出を妨げる因子=消化管ガス、腸管内容、肥満による減衰、空虚な膀胱による骨盤深部の不明瞭化。なお絶食や下剤・体位変換は胆囊や上腹部臓器の観察目的で用いられる手技である。
選択肢ごとの解説
- ① 絶食は胆囊を収縮させずに大きく保ち観察するための上腹部検査の前処置であり、骨盤内の子宮の描出を目的とする手技ではない。
- ② 左側臥位は上腹部臓器や胃・十二指腸の観察などで用いられる体位であり、経腹的に子宮を見やすくするための主目的の体位ではない。
- ③ 正しい。膀胱を尿で充満させると良好な音響窓となり、腸管を頭側へ排除して子宮・付属器を後方まで明瞭に観察できる。
- ④ 走査中の呼吸停止は横隔膜下にある肝や腎などの体動を抑えるための手技で、骨盤内臓器である子宮の描出条件とは異なる。
- ⑤ 下剤による排便は腸管ガスを減らす一手段ではあるが、経腹的に子宮を見やすくするための標準的な前処置ではない。
第58回 午後29(臨床化学)
酸ホスファターゼを含む細胞内小器官はどれか。
- ①核
- ②ゴルジ体
- ③リソソーム
- ④ミトコンドリア
- ⑤ペルオキシソーム
正答: ③リソソーム
ポイント
酸ホスファターゼをはじめ各種の加水分解酵素(プロテアーゼ・リパーゼ・ヌクレアーゼなど)を含み、細胞内の不要物・取り込んだ異物を消化する酸性環境の細胞内小器官がリソソームである。内部はプロトンポンプ(H⁺-ATPアーゼ)により酸性(pH約5)に保たれ、その酸性領域で最大活性を示す酸性加水分解酵素群を内包する。酸ホスファターゼはこのリソソームの代表的なマーカー酵素として組織化学的にも利用される。●各細胞小器官の主機能=核(DNAの保持と転写)、ミトコンドリア(酸化的リン酸化によるATP産生)、リソソーム(酸性加水分解酵素による分解)、ペルオキシソーム(過酸化水素の生成・分解と脂肪酸のβ酸化)、ゴルジ体(蛋白質の修飾・選別・輸送)。●関連する病態=リソソーム酵素の欠損による先天性代謝異常がライソゾーム病(Gaucher病・Tay-Sachs病など)として知られる。
選択肢ごとの解説
- ① 核はDNAを保持し転写を行う小器官で、酸性加水分解酵素を含む消化の場ではない。
- ② ゴルジ体は蛋白質の修飾・選別・分泌輸送を担い、加水分解酵素を内包する器官ではない。
- ③ 正しい。リソソームは酸ホスファターゼなど酸性加水分解酵素を含み細胞内消化を担う。
- ④ ミトコンドリアは酸化的リン酸化によるATP産生の場で、酸ホスファターゼは含まない。
- ⑤ ペルオキシソームは過酸化水素の代謝や脂肪酸のβ酸化を行い、酸ホスファターゼは含まない。
第58回 午後30(臨床化学)
質量パーセント濃度96 %、比重1.84の濃硫酸を精製水で6倍希釈したときのモル濃度として最も近いのはどれか。ただし、硫酸の分子量を98とする。
- ①1 mol/l
- ②3 mol/l
- ③6 mol/l
- ④9 mol/l
- ⑤12 mol/l
正答: ②3 mol/l
ポイント
溶液のモル濃度は『1000×比重×質量パーセント濃度÷分子量』で求められる。質量パーセント96%・比重1.84の濃硫酸では1000×1.84×0.96÷98≒18mol/Lとなる。これを希釈して使用すると濃度はその希釈倍率に反比例して低下し、本問の希釈条件では選択肢の中で約3mol/Lが最も近い値となる。硫酸は2価の酸であり、規定度(当量濃度)はモル濃度の2倍になる点も計算で混同しやすい。●モル濃度の基本式=1000×比重×質量パーセント濃度(小数)÷分子量。●希釈の関係=希釈後濃度=原液濃度÷希釈倍率(M1V1=M2V2)。●硫酸の当量=分子量÷価数(2)=49で、規定度はモル濃度の2倍。
選択肢ごとの解説
- ① 1mol/Lは本問の希釈条件で得られる値より低く、最も近い値ではない。
- ② 正しい。濃硫酸の原液は約18mol/Lで、本問の希釈条件では約3mol/Lとなり最も近い。
- ③ 6mol/Lは希釈倍率が本問より小さい場合の値で、最も近い値ではない。
- ④ 9mol/Lは原液約18mol/Lを2倍希釈した場合の値で、本問の条件には対応しない。
- ⑤ 12mol/Lは原液に近い高濃度側の値で、希釈後の濃度としては最も近い値ではない。
第58回 午後31(臨床化学)
5mmol/lの溶液を50倍希釈して吸光度を測定したところ0.450であった。この物質の測定波長におけるモル吸光係数〔l/mol・cm〕はどれか。ただし、使用した光路長は1.0 cmとする。
- ①225
- ②450
- ③2,250
- ④4,500
- ⑤9,000
正答: ④4,500
ポイント
モル吸光係数εは、Lambert-Beerの法則 A=ε・c・l(A:吸光度、c:モル濃度、l:光路長)を変形してε=A/(c・l)で求める。5mmol/L=5×10⁻³mol/Lの溶液を50倍希釈すると実際に吸光度を測定した濃度は5×10⁻³÷50=1×10⁻⁴mol/Lとなる。この希釈後濃度を用い、吸光度0.450、光路長1.0cmを代入するとε=0.450/(1×10⁻⁴×1.0)=4500(L/mol・cm)となる。●Lambert-Beerの法則の要点=吸光度は濃度と光路長に比例し、その比例定数がモル吸光係数で物質固有の値。●測定上の注意=希釈倍率を測定時の実濃度に正しく反映すること、吸光度が直線範囲(おおむね1前後以下)にあること、セルの光路長を正確に用いること。本問は希釈後濃度1×10⁻⁴mol/Lを用いる点が要点である。
選択肢ごとの解説
- ① 希釈後の濃度は1×10⁻⁴mol/Lである。ε=0.450÷(1×10⁻⁴×1.0)=4,500 L/(mol・cm)なので、225は一致しない。
- ② 希釈後の濃度1×10⁻⁴mol/Lを用いるとモル吸光係数は4,500 L/(mol・cm)となり、450ではない。なお、希釈を無視して0.005mol/Lを用いると90となる。
- ③ 2,250は中間的な誤りで、希釈後濃度1×10⁻⁴mol/Lを用いた計算とは一致しない。
- ④ 正しい。希釈後濃度1×10⁻⁴mol/L、A=0.450、l=1.0cmからε=4500となる。
- ⑤ 9,000は濃度を半分に見積もるなどの誤りで生じ、正しい計算結果ではない。
第58回 午後32(臨床化学)
無機質とその検査法の組合せで正しいのはどれか。
- ①カルシウム — キシリジルブルー法
- ②ナトリウム — 電量滴定法
- ③カリウム — イオン選択電極法
- ④鉄 — バソクプロイン法
- ⑤無機リン — チタンイエロー法
正答: ③カリウム — イオン選択電極法
ポイント
カリウムをはじめナトリウムやクロールなどの電解質測定には、目的イオンに選択的に応答する膜電位(イオン濃度に対応した電位差)を利用するイオン選択電極法(ISE)が広く用いられている。それ以外の無機質にはそれぞれ固有の比色・分析法が対応しており、誤った組合せを見分けるには各元素の代表的呈色法を対応づける必要がある。●無機質と代表的検査法の対応=カルシウムはオルトクレゾールフタレインコンプレクソン(OCPC)法やアルセナゾⅢ法、マグネシウムはキシリジルブルー法やチタンイエロー法、無機リンはモリブデン酸直接法、鉄はニトロソPSAPやバソフェナントロリン法、銅はバソクプロイン法。●電解質(ナトリウム・カリウム・クロール)=イオン選択電極法が標準で、電量滴定法は主にクロールの測定に用いられる。本問はカリウムとイオン選択電極法の組合せが正しい。
選択肢ごとの解説
- ① キシリジルブルー法はマグネシウムの測定法で、カルシウムにはOCPC法などが用いられる。
- ② 電量滴定法は主にクロールの測定に用いる手法で、ナトリウムの標準法ではない。
- ③ 正しい。カリウムはイオン選択電極法により選択的に測定される。
- ④ バソクプロイン法は銅の測定法で、鉄にはバソフェナントロリン法などが用いられる。
- ⑤ チタンイエロー法はマグネシウムの呈色反応で、無機リンにはモリブデン酸法が用いられる。
📋 まとめの表を見る:無機質とその主な検査法
クロールの電量滴定法はハロゲン化銀を利用するため、臭素・ヨウ素など他のハロゲン族イオンも正誤差の要因となる。
第58回 午後33(臨床化学)
単糖類はどれか。
- ①スクロース
- ②マルトース
- ③ラクトース
- ④セルロース
- ⑤フルクトース
正答: ⑤フルクトース
ポイント
それ以上加水分解されない糖の最小単位が単糖類で、フルクトース(果糖)はグルコース・ガラクトースと並ぶ代表的な六炭糖の単糖である。糖質は構成する単糖の数により単糖類・二糖類・多糖類に分類され、二糖類や多糖類は加水分解により単糖を生じる。フルクトースはケトン基をもつケトースで、グルコース(アルドース)と異性体の関係にある。●単糖類=グルコース・フルクトース・ガラクトース(いずれも六炭糖)、リボース・デオキシリボース(五炭糖)。●二糖類=スクロース(グルコース+フルクトース)、マルトース(グルコース+グルコース)、ラクトース(グルコース+ガラクトース)。●多糖類=デンプン・グリコーゲン・セルロース(いずれもグルコースの重合体)。本問ではフルクトースのみが単糖であり、他は二糖または多糖である。
選択肢ごとの解説
- ① スクロース(ショ糖)はグルコースとフルクトースが結合した二糖類である。
- ② マルトース(麦芽糖)はグルコース2分子が結合した二糖類である。
- ③ ラクトース(乳糖)はグルコースとガラクトースが結合した二糖類である。
- ④ セルロースはグルコースがβ1,4結合で多数重合した多糖類である。
- ⑤ 正しい。フルクトース(果糖)はそれ以上加水分解されない単糖類である。
第58回 午後34(臨床化学)
脂質について正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①脂肪酸はケトン体へ代謝される。
- ②リン脂質は細胞膜の構成成分である。
- ③トリグリセリドは胆汁酸の原料となる。
- ④プロスタグランジンは粗面小胞体で合成される。
- ⑤コレステロールは骨格筋細胞のエネルギー源になる。
正答: ①脂肪酸はケトン体へ代謝される。・②リン脂質は細胞膜の構成成分である。
ポイント
脂肪酸はミトコンドリアでβ酸化を受けアセチルCoAを生じ、肝臓では飢餓時など糖質供給が不足する状況でこのアセチルCoAからアセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトンなどのケトン体が産生される。またリン脂質はグリセロリン脂質・スフィンゴリン脂質として、親水性の頭部と疎水性の脂肪酸鎖をもち生体膜(脂質二重層)の主要な構成成分となる。この2つが正しい。●脂質の生理的役割=中性脂肪(トリグリセリド)はエネルギー貯蔵、リン脂質は膜構成、コレステロールは膜成分かつステロイドホルモン・胆汁酸・ビタミンDの原料。●脂質の代謝=脂肪酸はβ酸化でアセチルCoAとなりエネルギー産生・ケトン体生成へ、プロスタグランジンはアラキドン酸から細胞質や滑面小胞体系の酵素で合成される。なおコレステロールはエネルギー源にはならない。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。脂肪酸はβ酸化で生じたアセチルCoAから肝でケトン体へ代謝される。
- ② 正しい。リン脂質は脂質二重層を形成し細胞膜の主要な構成成分となる。
- ③ 胆汁酸の原料となるのはコレステロールであり、トリグリセリドではない。
- ④ プロスタグランジンはアラキドン酸からシクロオキシゲナーゼ系で合成され、粗面小胞体での産生ではない。
- ⑤ コレステロールは膜成分やホルモン・胆汁酸の原料であり、骨格筋のエネルギー源とはならない。
第58回 午後35(臨床化学)
血清蛋白分画で最も陰極側に泳動されるのはどれか。
- ①アルブミン
- ②ハプトグロビン
- ③セルロプラスミン
- ④トランスフェリン
- ⑤トランスサイレチン
正答: ④トランスフェリン
ポイント
血清蛋白電気泳動(セルロースアセテート膜など)ではアルカリ性緩衝液中で蛋白が陰性に帯電し、陽極(+極)側へ移動する。陽極に近い側から順にアルブミン・α1・α2・β・γの各分画に分かれ、最も陰極(−極)側に位置するのがγ分画である。等電点が低くより強く負に帯電する蛋白ほど陽極側に速く移動する。トランスフェリンはβ分画の主成分で、選択肢中ではアルブミン・トランスサイレチン・α₂分画の蛋白よりも陰極側にあり、最も陰極側に泳動される蛋白に該当する。●泳動位置と代表蛋白=アルブミン(最陽極側)、α1(α₁-アンチトリプシン)、α2(ハプトグロビン・セルロプラスミン)、β(トランスフェリン)、γ(免疫グロブリン)。●補足=トランスサイレチン(プレアルブミン)はアルブミンよりさらに陽極側に泳動される。本問の選択肢ではトランスフェリンが最も陰極側となる。
選択肢ごとの解説
- ① アルブミンは最も陽極側に泳動される分画で、陰極側ではない。
- ② ハプトグロビンはα₂分画に属し、β分画のトランスフェリンより陽極側に泳動される。
- ③ セルロプラスミンはα₂分画に属し、トランスフェリンより陽極側に位置する。
- ④ 正しい。トランスフェリンはβ分画の主成分で、選択肢中で最も陰極側に泳動される。
- ⑤ トランスサイレチン(プレアルブミン)はアルブミンよりさらに陽極側に泳動される。
📋 まとめの表を見る:血清蛋白電気泳動の分画と主な構成蛋白
肝硬変ではアルブミン低下とともにγ分画が増加し、β-γ bridging(β分画とγ分画の谷が埋まる所見)を呈する。ネフローゼ症候群ではアルブミン・免疫グロブリンが低下し、α2・β・プレβ分画が増加する。多発性骨髄腫などのM蛋白血症ではγ分画に鋭いピーク(M蛋白)が出現する。
第58回 午後36(臨床化学)
高エネルギー化合物でないのはどれか。
- ①アセチルCoA
- ②クレアチンリン酸
- ③ピリドキサルリン酸
- ④アデノシン5ʼ-三リン酸
- ⑤1,3-ビスホスホグリセリン酸
正答: ③ピリドキサルリン酸
ポイント
ピリドキサルリン酸はビタミンB₆の活性型で、アミノ基転移反応などの補酵素として働くが、加水分解で大きな自由エネルギーを放出する高エネルギーリン酸結合をもたないため高エネルギー化合物ではない。高エネルギー化合物とは加水分解で多量の自由エネルギー(おおむね30kJ/mol以上)を放出する結合をもつ物質を指し、リン酸無水物結合・チオエステル結合・エノールリン酸結合などがこれにあたる。●高エネルギー化合物の例=ATP(アデノシン5′-三リン酸)・GTPなどのヌクレオシド三リン酸、クレアチンリン酸(筋のエネルギー貯蔵)、アセチルCoAなどのチオエステル結合、1,3-ビスホスホグリセリン酸やホスホエノールピルビン酸などの解糖系中間体。●高エネルギーでない例=グルコース6-リン酸など低エネルギーリン酸エステル、補酵素であるピリドキサルリン酸。本問はピリドキサルリン酸が該当する。
選択肢ごとの解説
- ① アセチルCoAは高エネルギーのチオエステル結合をもつ高エネルギー化合物である。
- ② クレアチンリン酸は筋でATPを再生する高エネルギーリン酸化合物である。
- ③ 正しい。ピリドキサルリン酸はビタミンB₆の補酵素型で、高エネルギー結合をもたない。
- ④ アデノシン5′-三リン酸(ATP)は高エネルギーリン酸結合をもつ代表的な高エネルギー化合物である。
- ⑤ 1,3-ビスホスホグリセリン酸は解糖系で生じる高エネルギーリン酸化合物である。
第58回 午後37(臨床化学)
血清ビリルビンについて正しいのはどれか。
- ①抱合型はタウリンと結合している。
- ②還元されるとビリベルジンとなる。
- ③新生児黄疸では抱合型が高値となる。
- ④非抱合型はジアゾ試薬と直接反応する。
- ⑤バナジン酸酸化法は吸光度の減少を測定する。
正答: ⑤バナジン酸酸化法は吸光度の減少を測定する。
ポイント
バナジン酸酸化法は、バナジン酸(5価のバナジウム)がビリルビンを酸化して黄色のビリルビンを無色のビリベルジン関連物質へ変化させる際の、ビリルビン由来の吸光度の減少を測定する方法である。ビリルビンはヘムの分解で生じ、肝でのグルクロン酸抱合の有無により抱合型(直接型)と非抱合型(間接型)に分けられる。●ビリルビンの代謝=ヘム→ビリベルジン→(還元)→非抱合型ビリルビン→肝でグルクロン酸抱合→抱合型ビリルビンとして胆汁排泄。●臨床的鑑別=新生児黄疸や溶血では非抱合型(間接型)が上昇、閉塞性黄疸や肝細胞障害では抱合型(直接型)が上昇。直接ビリルビン(抱合型)はジアゾ試薬と速やかに反応し、非抱合型は促進剤を加えて反応させる。本問はバナジン酸酸化法が吸光度減少を測定する点が正しい。
選択肢ごとの解説
- ① 抱合型ビリルビンはグルクロン酸と結合しており、タウリンとの結合ではない。
- ② ビリルビンが酸化されるとビリベルジンになり、還元されてビリベルジンになるのではない。
- ③ 新生児黄疸では肝の抱合能未熟により非抱合型(間接型)が高値となる。
- ④ ジアゾ試薬と直接反応するのは抱合型(直接型)で、非抱合型は促進剤を要する。
- ⑤ 正しい。バナジン酸酸化法はビリルビンの酸化に伴う吸光度の減少を測定する。
第58回 午後38(臨床化学)
骨型ALPについて正しいのはどれか。
- ①熱処理で安定である。
- ②蛋白の一次構造は肝型ALPと同じである。
- ③健常成人では血清中ALPの大部分を占める。
- ④電気泳動の移動度はノイラミニダーゼ処理によって変化しない。
- ⑤他のアイソザイムよりもL-フェニルアラニンによって強く阻害される。
正答: ②蛋白の一次構造は肝型ALPと同じである。
ポイント
ALP(アルカリホスファターゼ)のアイソザイムは由来組織により電気泳動移動度や糖鎖が異なるが、骨型と肝型はいずれも組織非特異型ALP遺伝子という同一遺伝子に由来し、蛋白の一次構造(アミノ酸配列)は同一で、付加される糖鎖修飾の違いによってのみ区別される。骨型は熱に不安定で56℃前後の加熱で失活しやすく、ノイラミニダーゼ処理により糖鎖のシアル酸が除かれると電気泳動移動度が変化する。●ALPアイソザイムの由来=肝型・骨型(同一遺伝子・糖鎖の差)、胎盤型、小腸型。●性状の比較=骨型は熱に弱く、胎盤型は熱に安定、L-フェニルアラニンは小腸型・胎盤型を強く阻害する。健常成人の血清ALPは肝型と骨型が主体だが、骨型が大部分を占めるわけではない。本問は骨型と肝型の一次構造が同一である点が正しい。
選択肢ごとの解説
- ① 骨型ALPは熱に不安定であり、熱処理で安定なのは胎盤型である。
- ② 正しい。骨型と肝型は同一遺伝子由来で蛋白の一次構造が同一であり、糖鎖修飾で区別される。
- ③ 健常成人の血清ALPは肝型と骨型が主体だが、骨型が大部分を占めるわけではない。
- ④ 骨型はシアル酸を含む糖鎖をもち、ノイラミニダーゼ処理で電気泳動移動度が変化する。
- ⑤ L-フェニルアラニンは小腸型・胎盤型を強く阻害し、骨型を特に強く阻害するわけではない。
第58回 午後39(臨床化学)
血清LD₅(%)が上昇するのはどれか。
- ①肺癌
- ②悪性貧血
- ③急性肝炎
- ④悪性リンパ腫
- ⑤急性心筋梗塞
正答: ③急性肝炎
ポイント
LD(乳酸脱水素酵素)はH鎖とM鎖の組合せでLD₁〜LD₅の5つのアイソザイムをもち、由来臓器により上昇パターンが異なる。陽極側のLD₁・LD₂は心筋・赤血球・腎に多く、陰極側のLD₅は肝・骨格筋に多い。急性肝炎では肝細胞が崩壊して逸脱酵素が血中に放出され、肝に多いLD₅が上昇する。●LDアイソザイムと由来臓器=LD₁・LD₂(心筋・赤血球・腎)、LD₃(肺・脾・リンパ系・血小板)、LD₄・LD₅(肝・骨格筋)。●疾患との対応=急性心筋梗塞・溶血性貧血・悪性貧血ではLD₁・LD₂優位、肺病変や悪性リンパ腫ではLD₂〜LD₃、急性肝炎・うっ血肝ではLD₅優位。本問は急性肝炎で陰極側のLD₅(設問の指す肝由来アイソザイム)が上昇する点が該当する。アイソザイム分画を調べることで、総LD値の上昇がどの臓器に由来するかを推定できる。
選択肢ごとの解説
- ① 肺の障害ではLD₃付近が上昇しやすく、LD₅優位の上昇は典型的でない。
- ② 悪性貧血は赤血球系の崩壊によりLD₁・LD₂が上昇し、LD₅上昇は主体でない。
- ③ 正しい。急性肝炎では肝細胞崩壊により陰極側のLD₅が上昇する。
- ④ 悪性リンパ腫ではLD₂〜LD₃が上昇しやすく、LD₅が主体の上昇ではない。
- ⑤ 急性心筋梗塞では心筋由来のLD₁・LD₂が上昇し、LD₅上昇は典型的でない。
第58回 午後40(臨床化学)
必須微量元素はどれか。2つ選べ。
正答: ①鉄・②亜鉛
ポイント
必須微量元素とは、生体内に微量(おおむね鉄を上限とする少量)しか存在しないが、欠乏すると特有の生理機能障害をきたし生命維持に不可欠な元素で、鉄と亜鉛がこれに該当する。鉄はヘモグロビンやミオグロビン・チトクロムの構成成分として酸素運搬や電子伝達に関与し、亜鉛は多くの金属酵素(炭酸脱水酵素・ALPなど)の活性中心や転写因子の亜鉛フィンガー構造の維持に関与する。●必須微量元素の例=鉄・亜鉛・銅・マンガン・セレン・ヨウ素・モリブデン・コバルト・クロム。●多量に存在する元素(主要ミネラル)=ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リン・塩素・硫黄で、これらは微量元素には分類されない。本問では鉄と亜鉛が必須微量元素で、無機リン・カルシウム・ナトリウムは多量元素にあたる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。鉄はヘモグロビンやチトクロムの構成成分で必須微量元素である。
- ② 正しい。亜鉛は多くの金属酵素の活性中心となる必須微量元素である。
- ③ 無機リンは骨や核酸・ATPの成分として多量に存在する主要ミネラルで、微量元素ではない。
- ④ カルシウムは骨格の主成分として多量に存在する主要ミネラルで、微量元素ではない。
- ⑤ ナトリウムは細胞外液の主要陽イオンで多量に存在し、微量元素には分類されない。
第58回 午後41(臨床化学)
甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値を示すのはどれか。
- ①Basedow病
- ②低T3症候群
- ③亜急性甲状腺炎
- ④原発性甲状腺機能低下症
- ⑤下垂体性甲状腺機能低下症
正答: ④原発性甲状腺機能低下症
ポイント
甲状腺ホルモン(T3・T4)の低下を視床下部・下垂体が感知すると、ホルモンによる負のフィードバック抑制が解除され下垂体前葉からのTSH分泌が増加する。原発性甲状腺機能低下症では甲状腺自体の機能低下によりT4が低下し、その結果TSHが代償的に高値となるのが特徴で、TSH高値は原発性と中枢性を鑑別する重要な指標となる。●フィードバック機構=甲状腺ホルモン低下→TSH上昇、甲状腺ホルモン上昇→TSH抑制。●病態とTSH=原発性甲状腺機能低下症(橋本病など)はT4低下・TSH高値、Basedow病はT4高値・TSH低値、下垂体性(中枢性)機能低下症はT4低値・TSHも低~正常、亜急性甲状腺炎の破壊期は一過性にT4高値・TSH低値。本問は原発性甲状腺機能低下症でTSHが高値となる点が該当する。
選択肢ごとの解説
- ① Basedow病は甲状腺ホルモンが過剰となり、フィードバックでTSHは低値となる。
- ② 低T3症候群は重症疾患に伴う適応で、TSHは正常~低値にとどまることが多い。
- ③ 亜急性甲状腺炎の破壊期は甲状腺ホルモンが漏出して高値となり、TSHは低値となる。
- ④ 正しい。原発性甲状腺機能低下症ではT4低下を代償してTSHが高値となる。
- ⑤ 下垂体性甲状腺機能低下症ではTSH分泌自体が低下するため、TSHは低~正常となる。
第58回 午後42(臨床化学)
脂溶性ビタミンはどれか。2つ選べ。
- ①葉酸
- ②ビタミンB₆
- ③ビタミンC
- ④ビタミンD
- ⑤ビタミンE
正答: ④ビタミンD・⑤ビタミンE
ポイント
脂溶性ビタミンは水に溶けにくく脂質とともに小腸からミセルを介して吸収・運搬されるビタミンで、ビタミンD(カルシウム・リン代謝と骨形成)とビタミンE(抗酸化作用)がこれに該当する。脂溶性ビタミンは尿中に排泄されにくく肝や脂肪組織に蓄積されやすいため、過剰摂取で過剰症(A・Dなど)をきたすことがある。●脂溶性ビタミン(ADEK)=ビタミンA(視覚・上皮維持)、D(カルシウム・リン代謝)、E(抗酸化)、K(血液凝固因子産生・骨代謝)。●水溶性ビタミン=ビタミンB群(B1・B2・B6・B12・葉酸・ナイアシンなど補酵素として作用)、ビタミンC(抗酸化・コラーゲン合成)。水溶性は過剰分が尿中に排泄されやすく蓄積しにくい。本問ではビタミンDとビタミンEが脂溶性で、葉酸・ビタミンB₆・ビタミンCは水溶性である。
選択肢ごとの解説
- ① 葉酸はビタミンB群に属する水溶性ビタミンで、核酸合成に関与する。
- ② ビタミンB₆は補酵素ピリドキサルリン酸として働く水溶性ビタミンである。
- ③ ビタミンC(アスコルビン酸)はコラーゲン合成や抗酸化に関与する水溶性ビタミンである。
- ④ 正しい。ビタミンDはカルシウム・リン代謝を調節する脂溶性ビタミンである。
- ⑤ 正しい。ビタミンEは抗酸化作用をもつ脂溶性ビタミンである。
📋 まとめの表を見る:ビタミンの分類・化学名・主な働き
脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は肝・脂肪組織に蓄積しやすく過剰症を起こしうる(例:ビタミンA過剰で脳圧亢進・催奇形性、ビタミンD過剰で高カルシウム血症)。水溶性ビタミン(B群・C)は尿中に排泄されやすく過剰症は起こしにくい。β-カロチンはビタミンA(レチノール)の前駆体〈プロビタミンA〉であり、ビタミンEの前駆体ではない。
第58回 午後43(臨床化学)
単一遺伝子病はどれか。2つ選べ。
- ①痛風
- ②統合失調症
- ③2型糖尿病
- ④家族性大腸腺腫症
- ⑤フェニルケトン尿症
正答: ④家族性大腸腺腫症・⑤フェニルケトン尿症
ポイント
単一遺伝子病(メンデル遺伝病)とは、ひとつの遺伝子の変異が主たる原因で発症し、メンデルの法則に従って家系内を遺伝する疾患である。フェニルケトン尿症(フェニルアラニン水酸化酵素の欠損、常染色体劣性)と家族性大腸腺腫症(がん抑制遺伝子APCの変異、常染色体優性)がこれに該当する。前者は無治療では知能障害を、後者は多発性大腸腺腫から高率に大腸癌を生じる。●単一遺伝子病の例=フェニルケトン尿症・鎌状赤血球症(常染色体劣性)、家族性大腸腺腫症・Marfan症候群(常染色体優性)、血友病(X連鎖劣性)。●多因子遺伝病=複数の遺伝子と環境要因が関与する疾患で、2型糖尿病・本態性高血圧・統合失調症・痛風などが含まれる。本問ではフェニルケトン尿症と家族性大腸腺腫症が単一遺伝子病で、他は多因子疾患である。
選択肢ごとの解説
- ① 痛風は尿酸代謝に複数の遺伝因子と食事・生活習慣が関与する多因子疾患である。
- ② 統合失調症は複数の遺伝因子と環境要因が関与する多因子疾患である。
- ③ 2型糖尿病は多数の遺伝因子と生活習慣が関与する代表的な多因子疾患である。
- ④ 正しい。家族性大腸腺腫症はAPC遺伝子変異による常染色体優性の単一遺伝子病である。
- ⑤ 正しい。フェニルケトン尿症は酵素欠損による常染色体劣性の単一遺伝子病である。
第58回 午後44(臨床化学)
β線を放出する核種はどれか。2つ選べ。
正答: ①³H・②³²P
ポイント
β線(原子核から放出される高速の電子)を放出する核種は³H(トリチウム)と³²Pである。³Hは半減期約12年で低エネルギーのβ線のみを、³²Pは半減期約14日で高エネルギーのβ線を放出する純β放出核種であり、いずれもγ線を伴わず液体シンチレーション計測などで測定される。●放出放射線による分類=³H・³²P・¹⁴C・³⁵Sはβ線放出核種、⁹⁹ᵐTc・¹²⁵I・²⁰¹Tl・⁵⁷Coなどはγ線(または特性X線)放出核種、²²Naなどはβ⁺壊変。●臨床利用=⁹⁹ᵐTcはシンチグラフィ(γ線)、¹²⁵IはRIA(γ線)、²⁰¹Tlは心筋シンチ(特性X線・γ線)。本問では³Hと³²Pがβ線放出核種に該当し、他はγ線または特性X線を放出する核種である。β線は飛程が短く透過力が弱いため遮蔽は容易だが、内部被曝に注意を要する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。³H(トリチウム)は低エネルギーのβ線を放出する核種である。
- ② 正しい。³²Pは高エネルギーのβ線を放出する純β放出核種である。
- ③ ⁹⁹ᵐTcは核異性体転移により140keVのγ線を放出する核種である。
- ④ ¹²⁵Iは電子捕獲後に特性X線・γ線を放出する核種で、β線放出核種ではない。
- ⑤ ²⁰¹Tlは電子捕獲により特性X線・γ線を放出する核種で、β線は放出しない。
第58回 午後45(病理組織細胞学)
支持組織でないのはどれか。
正答: ④神経組織
ポイント
支持組織(広義の結合組織)は細胞間質に富み、組織や器官を支え結合する組織群で、結合組織・骨組織・軟骨組織・脂肪組織・血液などが含まれる。いずれも中胚葉由来で、細胞成分に対して細胞間質(線維・基質)が豊富という共通点をもつ。これに対し神経組織は神経細胞(ニューロン)とグリア細胞からなり、刺激の受容・興奮の伝導という機能を担う独立した基本組織であり、間質に乏しく支持組織には含まれない。●人体の四大基本組織=上皮組織(被覆・腺)、支持組織(結合・骨・軟骨・脂肪・血液)、筋組織(骨格筋・心筋・平滑筋)、神経組織(ニューロン・グリア)。●支持組織の共通点=細胞間質が豊富で、機械的支持・結合や物質輸送を担う。神経組織はこれらと異なり、興奮性をもつニューロンが情報処理と伝達を担う点で他の三組織と区別される。本問では神経組織が支持組織でない。
選択肢ごとの解説
- ① 結合組織は線維と基質に富み、組織を結合・支持する代表的な支持組織である。
- ② 骨組織は石灰化した基質をもち身体を支える支持組織である。
- ③ 脂肪組織はエネルギー貯蔵や緩衝・支持を担う支持組織の一種である。
- ④ 正しい。神経組織はニューロンとグリアからなる基本組織で、支持組織には含まれない。
- ⑤ 軟骨組織は弾力性のある基質をもち関節などを支える支持組織である。
第58回 午後46(病理組織細胞学)
扁平上皮で被覆されているのはどれか。2つ選べ。
正答: ①食道・⑤子宮腟部
ポイント
扁平上皮(重層扁平上皮)で被覆される代表的部位は食道と子宮腟部である。食道は食物の通過による機械的刺激に耐える重層扁平上皮で覆われ、子宮腟部(外子宮口周囲)も腟と連続する重層扁平上皮で覆われる。重層扁平上皮は細胞が幾層にも重なり摩擦に強いという特徴をもち、摩擦を受ける部位に分布する。●上皮の種類と部位=重層扁平上皮(皮膚・口腔・食道・腟・子宮腟部)、単層円柱上皮(胃・小腸・大腸・胆囊・子宮頸管内・子宮体部)、移行上皮(尿路:腎盂・尿管・膀胱)、単層立方上皮(甲状腺濾胞・腎尿細管)。●臨床的意義=子宮頸部では扁平上皮(腟部)と円柱上皮(頸管)の境界(扁平円柱上皮境界)が子宮頸癌の好発部位となる。なお膀胱の移行上皮は伸展状態で形を変える尿路特有の上皮である。本問では食道と子宮腟部が扁平上皮に被覆される。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。食道は機械的刺激に耐える重層扁平上皮で被覆される。
- ② 十二指腸は吸収を担う単層円柱上皮で被覆され、扁平上皮ではない。
- ③ 胆囊は単層円柱上皮で被覆され、扁平上皮ではない。
- ④ 膀胱は伸展に対応する移行上皮(尿路上皮)で被覆され、扁平上皮ではない。
- ⑤ 正しい。子宮腟部は腟と連続する重層扁平上皮で被覆される。
📋 まとめの表を見る:臓器・部位と被覆上皮の対応
内皮は血管・リンパ管、中皮は体腔(漿膜)の表面を被覆する単層扁平上皮で、局在により呼び分ける。肺胞の内面は中皮ではなく肺胞上皮(Ⅰ型・Ⅱ型肺胞上皮細胞)が覆う。
第58回 午後47(病理組織細胞学)
X連鎖劣性遺伝疾患はどれか。2つ選べ。
- ①Gaucher病
- ②Klinefelter症候群
- ③血友病A
- ④重症複合免疫不全症
- ⑤糖原病I型
正答: ③血友病A・④重症複合免疫不全症
ポイント
X連鎖劣性(伴性劣性)遺伝はX染色体上の変異遺伝子による遺伝形式で、X染色体を1本しかもたない男性は変異が1つあれば発症するため原則として男性に多く発症し、女性は多くが保因者となる。血友病A(第Ⅷ凝固因子欠乏)と重症複合免疫不全症(X連鎖型;IL-2受容体γ鎖遺伝子変異など)がこれに該当する。●X連鎖劣性遺伝の例=血友病A・B、Duchenne型筋ジストロフィー、赤緑色覚異常、X連鎖型重症複合免疫不全症。●他の遺伝形式=Gaucher病・糖原病Ⅰ型は常染色体劣性、Klinefelter症候群は性染色体数的異常(47,XXY)で単一遺伝子のX連鎖劣性遺伝ではない。本問では血友病AとX連鎖型重症複合免疫不全症がX連鎖劣性遺伝疾患に該当する。なお重症複合免疫不全症にはX連鎖型のほかアデノシンデアミナーゼ欠損などの常染色体劣性型も存在する。
選択肢ごとの解説
- ① Gaucher病はグルコセレブロシダーゼ欠損による常染色体劣性遺伝疾患である。
- ② Klinefelter症候群は47,XXYの性染色体数的異常で、X連鎖劣性遺伝疾患ではない。
- ③ 正しい。血友病Aは第Ⅷ凝固因子欠乏によるX連鎖劣性遺伝疾患である。
- ④ 正しい。X連鎖型重症複合免疫不全症はX染色体上の遺伝子変異によるX連鎖劣性遺伝疾患である。
- ⑤ 糖原病Ⅰ型はグルコース6-ホスファターゼ欠損による常染色体劣性遺伝疾患である。
第58回 午後48(病理組織細胞学)
ホルマリン固定後の臓器割面写真(別冊No.6)を別に示す。この臓器はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB048.b28c66766a.jpg

正答: ①心臓
ポイント
ホルマリン固定臓器の割面に、左右両心室と厚い心筋壁、心室中隔がみられることから、心臓と判断する。本写真は心室レベルの横断面であり、左右の心房は写っていない。心臓は左右の心房・心室の四腔からなり、全身へ血液を送る左室壁は肺へ送る右室壁より厚く、房室弁・乳頭筋・腱索などの内部構造を伴う。割面では赤褐色で緻密な心筋の厚みと心腔の配置が特徴的に観察され、他の管腔臓器や実質臓器と区別できる。●心臓の肉眼割面の特徴=厚い左室壁(右室の約3倍)、左右両室を隔てる心室中隔、心内膜面の乳頭筋・腱索。●他臓器との鑑別=腎は皮質・髄質と腎盂、膵は分葉状の実質、大腸は管腔と粘膜ヒダ、膀胱は袋状の管腔をもつ。本問の割面像は心筋壁と心腔を示す心臓である。●割面像読影の着眼点=臓器の輪郭・大きさ、実質か管腔か、内部構造(中隔・乳頭筋・髄質・腎盂など)の有無、色調と硬さから臓器を同定する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。厚い左心室壁と薄い右心室壁、両室を隔てる心室中隔、内腔へ突出する肉柱・乳頭筋を示す心臓の横断面である。
- ② 大腸は薄壁の管腔臓器で粘膜ヒダや結腸ひも・腸間膜付着部をもち、厚い心筋壁を示す割面像とは異なる。
- ③ 膵臓は分葉状の実質をもつ細長い臓器で、四つの心腔や厚い心筋壁のような構造は示さない。
- ④ 腎臓は皮質・髄質の層構造と腎盂・腎杯からなるそら豆状の割面を示し、心筋壁状の構造とは異なる。
- ⑤ 膀胱は薄い壁の袋状管腔臓器で、厚い心筋壁と複数の心腔を伴う割面像とは明らかに異なる。
第58回 午後49(病理組織細胞学)
ホルマリン固定後の臓器割面写真(別冊No.6)を別に示す。矢印で示す白色部分はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB049.b28c66766a.jpg

- ①壊死
- ②出血
- ③瘢痕
- ④アミロイド沈着
- ⑤ヘモジデリン沈着
正答: ③瘢痕
ポイント
心臓割面で矢印の示す白色部分は瘢痕(線維化巣)である。心筋梗塞などで壊死に陥った心筋は再生能をもたないため、時間経過とともにマクロファージによる吸収・肉芽組織形成を経て膠原線維(コラーゲン)に置換され、白色調で硬く境界のある瘢痕組織となる。陳旧性心筋梗塞では心室壁に白色の線維化巣を認め、壁の菲薄化を伴うこともある。●心筋の経時変化=急性期の凝固壊死(黄色調)→肉芽組織→陳旧期の白色瘢痕(線維化)。●白色を呈する病変の鑑別=瘢痕(膠原線維による白色硬化巣)、アミロイド沈着(ろう様・硝子様)、対して出血は暗赤色、ヘモジデリン沈着は褐色調を示す。本問の心室壁の白色硬化部は瘢痕(線維化)に該当する。●色調による肉眼鑑別=瘢痕は白色・硬、急性壊死は黄色調、出血は暗赤色、ヘモジデリン沈着は褐色、アミロイドはろう様。
選択肢ごとの解説
- ① 壊死巣は急性期には黄色調を呈し凝固壊死を示すため、白色で境界明瞭な硬い線維化巣とは異なる。
- ② 出血は赤血球の漏出により暗赤色~赤褐色を呈し、白色硬化部分という所見とは一致しない。
- ③ 正しい。白色で硬く境界のある部分は壊死心筋が膠原線維に置換された瘢痕(線維化)である。
- ④ アミロイド沈着はろう様・硝子様で均質な沈着を示し、陳旧性梗塞による白色の線維性瘢痕とは病態が異なる。
- ⑤ ヘモジデリン沈着は鉄を含む褐色調の色素沈着であり、白色を呈する硬化部分の所見とは異なる。
第58回 午後50(病理組織細胞学)
内分泌機能をもつ臓器はどれか。
正答: ②膵臓
ポイント
膵臓は導管を介して消化酵素を含む膵液を十二指腸へ分泌する外分泌機能と、ホルモンを血中へ分泌する内分泌機能を併せもつ臓器である。内分泌部である膵島(ランゲルハンス島)はα細胞がグルカゴン、β細胞がインスリン、δ細胞がソマトスタチンを血中に分泌し、血糖の調節に中心的に関与する。●内分泌臓器の例=下垂体・甲状腺・副甲状腺・副腎・膵島・性腺、視床下部もホルモンを分泌する。●選択肢臓器の機能=肝臓は代謝・解毒・胆汁産生(古典的内分泌腺ではない)、脾臓は血液の濾過と免疫、膀胱は蓄尿・排尿、子宮は妊娠維持の生殖器。本問では膵臓が膵島による内分泌機能をもつ臓器に該当する。●代表的内分泌器官=下垂体・甲状腺・副甲状腺・副腎・膵島・性腺で、いずれも分泌物を導管を介さず直接血中へ放出する。●外分泌器官=唾液腺・汗腺・膵外分泌部など導管を介して分泌する。
選択肢ごとの解説
- ① 肝臓は代謝・解毒・胆汁産生を担う臓器であり、ホルモンを血中へ分泌する古典的な内分泌腺には含まれない。
- ② 正しい。膵臓は膵島(ランゲルハンス島)からインスリンやグルカゴンを分泌する内分泌機能をもつ。
- ③ 脾臓は血液の濾過と免疫機能を担う臓器であり、ホルモンを分泌する内分泌機能はもたない。
- ④ 膀胱は尿を蓄え排出する蓄尿・排尿を担う臓器であり、ホルモンを分泌する内分泌機能はもたない。
- ⑤ 子宮は受精卵の着床と妊娠の維持を担う生殖器であり、ホルモン分泌を主機能とする内分泌腺ではない。