第58回(2012) 臨床検査技師国家試験 午後51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版

第58回 午後51(病理組織細胞学)

クリオスタットによる凍結標本作製法で誤っているのはどれか。

正答: ③薄切に適した温度は−4℃である。

ポイント
クリオスタットは庫内を冷却した装置内でミクロトームを操作し、未固定の組織を急速凍結して薄切する迅速標本作製法で、術中迅速診断や脂肪・酵素・抗原の保存に用いる。薄切に適した温度は組織の硬さで調整するが、一般組織でおおむね−20℃前後を基準とし、脂肪が多い組織ではさらに低温を要する。−4℃では氷晶が大きく組織が軟らかすぎて良好な切片が得られず、誤りである。凍結を急速に行うほど氷晶は微細となり組織損傷が小さくなる。●凍結標本の要点=水溶性包埋剤(OCTコンパウンド等)で組織を支持・回転式ミクロトームを庫内に設置・薄切温度はおよそ−15〜−25℃。●はがれやすさの要因=ホルマリン固定組織は凍結切片が剥離しやすく未固定新鮮材料が適する・凍結速度が遅いと氷晶が大きく組織が破壊される。

選択肢ごとの解説

第58回 午後52(病理組織細胞学)

肝組織標本を別に示す。染色法はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB052.ee505d763a.jpg
第58回 午後52 の図

正答: ⑤渡辺鍍銀法

ポイント
本問は肝組織の染色標本から染色法を判定する図問題である。正答とされる渡辺鍍銀法は鍍銀(銀含浸)法の一つで、細網線維(Ⅲ型コラーゲンを主体とする好銀線維)を黒色に描出する手法であり、肝では類洞周囲や小葉構築を反映する細網線維網が黒く染め出される。膠原線維の量や走行を評価する目的で用いられ、肝硬変での線維化評価や腫瘍の間質構造の把握に有用である。●結合組織を染める手法の対比=azan染色(膠原線維=青)・elastica van Gieson染色(弾性線維=黒紫・膠原線維=赤)・Masson trichrome染色(膠原線維=青または緑)。●銀を用いる手法=渡辺鍍銀法など鍍銀法は細網線維を黒色に描出。PTAH染色は横紋・グリア線維・フィブリンなどを青紫に染め、結合組織染色とは目的が異なる。

選択肢ごとの解説

第58回 午後53(病理組織細胞学)

脂肪染色はどれか。2つ選べ。

正答: ③Nile blue染色・⑤SudanⅢ染色

ポイント
脂肪染色は中性脂肪などの脂質を可溶性色素で着色する手法で、新鮮組織またはホルマリン固定組織から作製した凍結切片などに行う。通常のパラフィン包埋過程では有機溶媒で脂質が溶出するため、これを避けることが重要である。SudanⅢ染色はズダン系色素が脂質に溶け込み中性脂肪を橙赤色に染める代表的脂肪染色である。Nile blue染色(ナイルブルー)も脂質染色で、中性脂肪を赤、酸性脂質(リン脂質・脂肪酸)を青に染め分けられる。両者がこの選択肢中の脂肪染色である。●脂質を染める手法=SudanⅢ・SudanⅣ・Sudan black B・oil red O・Nile blue。●それ以外の特殊染色の対象=Grocott染色(鍍銀=真菌・ニューモシスチスを黒色)・mucicarmine染色(酸性粘液=赤、クリプトコッカス莢膜にも陽性)・orcein染色(弾性線維・HBs抗原を染色)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:病理組織の主な特殊染色と対象

染色法主な対象
HE染色核・細胞質の基本染色
EVG染色弾性線維(黒紫)・膠原線維(赤)
Masson trichrome・azan染色膠原線維(青)
PAS染色糖原・中性粘液・基底膜
PAM染色糸球体基底膜・細網線維
PTAH染色横紋筋・グリア線維・フィブリン
鍍銀法細網線維(好銀線維)
Ziehl-Neelsen染色抗酸菌

第58回 午後54(病理組織細胞学)

神経組織の染色法はどれか。2つ選べ。

正答: ④Bodian染色・⑤Holzer染色

ポイント
神経組織の染色には神経細胞・軸索を描出する鍍銀法と、グリア線維(星状膠細胞の線維)を描出する方法がある。Bodian染色は鍍銀法で神経原線維・軸索・神経細胞を黒色に描出し、末梢・中枢の神経線維の評価に用いる。Holzer染色はグリア線維(星状膠細胞の細胞突起内にある、GFAPなどからなる中間径フィラメント)を青紫に染め、グリオーシス(神経膠症)の評価に適する。両者が神経組織の染色法である。●神経・軸索を染める手法=Bodian染色・Bielschowsky染色などの鍍銀法(同じ鍍銀法でも渡辺鍍銀法は細網線維の描出に用いる)。●グリアを染める手法=Holzer染色(グリア線維)・PTAH染色(グリア線維)。●他系統=Alcian blue染色(酸性粘液=青)・azan染色(膠原線維=青)・Berlin blue染色(ベルリン青反応=三価鉄を青)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:病理組織の主な特殊染色と対象

染色法主な対象
HE染色核・細胞質の基本染色
EVG染色弾性線維(黒紫)・膠原線維(赤)
Masson trichrome・azan染色膠原線維(青)
PAS染色糖原・中性粘液・基底膜
PAM染色糸球体基底膜・細網線維
PTAH染色横紋筋・グリア線維・フィブリン
鍍銀法細網線維(好銀線維)
Ziehl-Neelsen染色抗酸菌

第58回 午後55(病理組織細胞学)

疾患と免疫組織化学染色で検討すべき抗原の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ①B細胞リンパ腫 — CD20・⑤乳癌 — HER2

ポイント
免疫組織化学染色は組織内の特定抗原を抗体で検出し、腫瘍の由来や分子標的の有無を判定する手法である。B細胞リンパ腫ではB細胞系統マーカーであるCD20が陽性となり、リツキシマブの適応判定にも関わる。乳癌ではHER2(ヒト上皮成長因子受容体2型)の過剰発現がトラスツズマブなど分子標的薬の適応と予後判定に用いられ、いずれも組合せとして正しい。●代表的な腫瘍マーカー抗原=B細胞系=CD20・CD79a/T細胞系=CD3・CD5/上皮性=サイトケラチン・EMA/消化管間質腫瘍(GIST)=c-kit(CD117)・DOG1。●臓器特異マーカー=前立腺癌=PSA(前立腺特異抗原)・肝細胞癌や胚細胞腫瘍=AFP(αフェトプロテイン)・甲状腺・肺=TTF-1。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:腫瘍と免疫組織化学的マーカーの対応

マーカー陽性となる代表的な腫瘍由来・意義
CD20B細胞リンパ腫B細胞系マーカー
CD3T細胞リンパ腫T細胞系マーカー
HER2乳癌過剰発現が分子標的治療の適応判定に関与
エストロゲン受容体〈ER〉乳癌ホルモン受容体・内分泌療法の適応判定
AFP肝細胞癌・卵黄嚢腫瘍胚細胞・肝細胞由来マーカー
CEA大腸癌など消化管腺癌腺癌に共通するマーカー
PSA前立腺癌前立腺特異抗原
CA125卵巣漿液性癌卵巣癌マーカー
hCG絨毛癌栄養膜(トロホブラスト)由来
c-kit(CD117)消化管間質腫瘍〈GIST〉カハール介在細胞由来、分子標的治療の適応判定
ALK肺腺癌の一部・未分化大細胞リンパ腫遺伝子融合(EML4-ALK等)を反映
S100蛋白悪性黒色腫・神経鞘腫瘍神経堤由来細胞マーカー
サイトケラチン・EMAは上皮性腫瘍全般に、CD45は造血器腫瘍全般に陽性となる。免疫組織化学は形態のみでは由来判別が難しい低分化腫瘍・転移巣の原発巣推定や、分子標的治療の適応判定に用いる。

第58回 午後56(病理組織細胞学)

肺組織診と比較したとき、喀痰細胞診の特徴でないのはどれか。

正答: ②最終診断となる。

ポイント
喀痰細胞診は喀出された痰中の剥離・自然脱落細胞を観察する細胞診で、組織を採取する肺生検(組織診)と比べ低侵襲・安価・標本作製が短時間で、反復採取も容易という利点がある。一方、細胞の集塊や個々の異型から推定診断はできるが、組織構築や浸潤の有無を評価できないため確定(最終)診断には組織診が必要であり、「最終診断となる」は細胞診の特徴ではなく誤りである。●細胞診の利点=低侵襲・安価・迅速・反復可能・スクリーニングに適する。●細胞診の限界=組織構築や間質浸潤の評価が困難で確定診断は組織診が担う・採取部位の代表性に左右される。●検体の種類=剥離細胞診(喀痰・尿・体腔液)と穿刺吸引細胞診(FNA)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:細胞診と組織診の比較

項目細胞診組織診
侵襲少ない大きい(生検・切除を要する)
検体剝離・擦過・穿刺吸引で採取した細胞組織片
液状検体(尿・喀痰・体腔液等)可不可
腫瘍の組織型推定可能確定可能
病期(深達度・浸潤の評価)判定不可判定可能
反復採取容易容易ではない
細胞診は組織構築を評価できないため、悪性の有無や組織型の推定はできても病期(ステージ)の確定はできない。

第58回 午後57(病理組織細胞学)

病理解剖業務で臨床検査技師が実施可能なのはどれか。2つ選べ。

正答: ①皮膚縫合・③臓器からの細菌培養

ポイント
病理解剖(剖検)は医師(病理医)の主導下で行われ、臨床検査技師は死体解剖保存法に基づく資格や医師の指示のもとで補助的業務を担う。臓器の取り出し・縫合などの介助や、無菌的に採取した臓器からの細菌培養などの検体処理は技師が実施しうる。一方、死因の特定や病理診断、遺族への所見説明は医師が行う医行為であり、病理医不在時の代理解剖も認められない。本問では皮膚縫合(解剖後の縫合介助)と臓器からの細菌培養が技師の実施可能業務である。●技師が担える業務=解剖の介助・縫合・標本作製・検体採取と培養などの検査処理。●医師が担う業務=執刀責任・死因や病理診断の確定・遺族への病状/所見説明。

選択肢ごとの解説

第58回 午後58(病理組織細胞学)

法令で保管庫の施錠が義務付けられているのはどれか。2つ選べ。

正答: ③キシレン・⑤ホルマリン

ポイント
病理検査で扱う試薬には、消防法の危険物や、有害性ゆえに保管に施錠等の管理が法令で求められる物質がある。ホルマリン(ホルムアルデヒド水溶液)もキシレンも毒物及び劇物取締法の劇物に指定されており、盗難・紛失を防ぐため施錠できる保管庫での管理が義務付けられる。両者が該当する。なおホルムアルデヒドは特定化学物質障害予防規則、キシレンは有機溶剤中毒予防規則の対象でもあるが、これらは作業環境管理の規定であり本問の施錠義務の根拠ではない。●施錠管理を要する代表物質=ホルムアルデヒド(1%以下を含有する製剤を除く)・キシレンなどの劇物で、「医薬用外劇物」の表示と施錠保管が必要。●一般的な可燃性溶剤=アセトン・エタノールは引火性危険物だが本問の施錠義務の文脈では該当外。●パラフィン=包埋剤の固形ろうで、毒劇物管理の対象ではない。

選択肢ごとの解説

第58回 午後59(臨床血液学)

貯蔵鉄はどれか。

正答: ③フェリチン

ポイント
体内の鉄は機能鉄と貯蔵鉄に大別される。フェリチンはアポフェリチン蛋白の殻の内部に多数の鉄原子を取り込んで貯蔵する可溶性蛋白で、肝・脾・骨髄のマクロファージや実質細胞に多く存在し、血清フェリチン値は体内貯蔵鉄量をよく反映するため鉄欠乏性貧血や鉄過剰(ヘモクロマトーシス等)の指標となる。これが貯蔵鉄の本体である。●貯蔵鉄=フェリチン(可溶性の貯蔵蛋白)とヘモジデリン(フェリチンが変性・凝集した不溶性集合体でPrussian blue反応陽性)。●鉄の輸送=トランスフェリンが血中で三価鉄を結合して運搬する。●機能鉄=ヘモグロビン(赤血球で酸素運搬)・ミオグロビン(筋肉で酸素貯蔵)に含まれる鉄が大部分を占める。●ハプトグロビンは遊離ヘモグロビンと結合する蛋白で、貯蔵鉄ではない。

選択肢ごとの解説

第58回 午後60(臨床血液学)

血栓形成を促進するのはどれか。2つ選べ。

正答: ①組織因子・④トロンボキサンA2

ポイント
止血・血栓形成は凝固系の活性化と血小板の活性化が中心で、これに対して抗凝固系や線溶系が血栓形成を抑制する。組織因子(第Ⅲ因子)は外因系凝固の起点で、第Ⅶ因子と複合体を形成して凝固カスケードを開始し、血栓形成を促進する。トロンボキサンA2は活性化血小板から産生され、血小板凝集と血管収縮を促し血栓形成を促進する。両者が促進因子である。●血栓形成を促進=組織因子(凝固開始)・トロンボキサンA2(血小板凝集)・血小板第4因子(ヘパリン中和・抗凝固抑制)など。●血栓形成を抑制=プロテインC(活性化第Ⅴ/Ⅷ因子を分解する抗凝固因子)・組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA、プラスミン産生で線溶促進)。

選択肢ごとの解説

第58回 午後61(臨床血液学)

赤血球沈降速度が遅延するのはどれか。2つ選べ。

正答: ②真性多血症・⑤無フィブリノゲン血症

ポイント
赤血球沈降速度(赤沈)は抗凝固血を静置した際の赤血球の沈降速度で、血漿蛋白(特にフィブリノゲンやγグロブリン)が増えて赤血球の連銭形成が進むと亢進し、赤血球数が増加したりフィブリノゲンが減少すると遅延する。真性多血症では赤血球数が著増し、粘度上昇と連銭形成抑制により赤沈が遅延する。無フィブリノゲン血症ではフィブリノゲンが欠如して連銭形成が起こらず赤沈が遅延する。両者が遅延する。●赤沈が遅延=赤血球増多(真性多血症)・フィブリノゲン低下(無/低フィブリノゲン血症・DICの一部)・著明な赤血球形態異常。●赤沈が亢進=炎症/感染(結核)・多発性骨髄腫(M蛋白増加)・亜急性甲状腺炎・貧血・妊娠など。

選択肢ごとの解説

第58回 午後62(臨床血液学)

線溶マーカーはどれか。

正答: ④フィブリン分解産物(FDP)

ポイント
線溶(線維素溶解)はプラスミンが安定化フィブリンや フィブリノゲンを分解する過程で、その産物が線溶マーカーとなる。フィブリン分解産物(FDP)はフィブリノゲンおよびフィブリンがプラスミンで分解されて生じる断片の総称で、線溶活性化を反映する代表的マーカーである。播種性血管内凝固症候群(DIC)などで上昇する。●線溶系マーカー=FDP・Dダイマー(安定化フィブリン由来でクロスリンク部を含む)・プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)。●凝固活性化マーカー=可溶性フィブリン(SF)・トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)。●血小板活性化マーカー=β-トロンボグロブリン・血小板第4因子。●トロンボモジュリンは血管内皮の抗凝固系に関わる。

選択肢ごとの解説

第58回 午後63(臨床血液学)

末梢血液像を別に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB063.8b00bb3d4d.jpg
第58回 午後63 の図

正答: ⑤血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

ポイント
本問は末梢血液像から疾患を推定する図問題で、正答とされる血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)では破砕赤血球(分裂赤血球・シストサイト)と血小板減少が特徴的所見となる。TTPはADAMTS13(von Willebrand因子切断酵素)の活性低下により超巨大vWF多量体が残存し、細小血管に血小板血栓が多発する血栓性微小血管症で、機械的に赤血球が破壊されて破砕赤血球が出現する。微小血管症性溶血性貧血・血小板減少・動揺する神経症状・腎障害・発熱が古典的5徴とされる。●破砕赤血球を伴う病態=TTP・溶血性尿毒症症候群(HUS)・DICなど血栓性微小血管症。●他疾患の特徴=寒冷凝集素症や自己免疫性溶血性貧血(赤血球凝集や球状赤血球)・遺伝性楕円赤血球症(楕円赤血球)・PNH(補体感受性亢進による血管内溶血)。

選択肢ごとの解説

第58回 午後64(臨床血液学)

疾患と白血球分画パターンの組合せで正しいのはどれか。

正答: ④急性心筋梗塞 — 好中球増加

ポイント
白血球分画は疾患により特徴的な増減を示し、原因の推定に役立つ。急性心筋梗塞では心筋の組織壊死に伴う炎症反応とカテコラミン等によるストレス反応により好中球が増加するため、組合せとして正しい。好中球は細菌感染・急性炎症・組織壊死・ストレス・ステロイド投与で増加する。●ストレス/ステロイド反応=Cushing症候群や副腎皮質ステロイド過剰では好中球増加とともに好酸球減少・リンパ球減少を示す。●好酸球増加=寄生虫感染・アレルギー疾患・薬剤アレルギー・好酸球増多症候群など。●好塩基球の動向=アレルギー疾患や慢性骨髄性白血病で増加し、Cushing症候群では減少する。●真性多血症=骨髄増殖性腫瘍で赤血球とともに好中球・血小板も増加する汎血球増多を呈する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:疾患・病態と白血球分画の変化パターン

病態主な変化
細菌感染・急性炎症・ストレス・ステロイド好中球増加
Cushing症候群好中球増加・好酸球/リンパ球減少
寄生虫感染・アレルギー疾患好酸球増加
アレルギー疾患・慢性骨髄性白血病好塩基球増加
ウイルス感染リンパ球増加
真性多血症好中球・血小板・赤血球とも増加

第58回 午後65(臨床血液学)

60歳の男性。発熱が持続したため来院した。血液所見:白血球22,000/μl、赤血球420万/μl、血小板14万/μl。末梢血のWright-Giemsa染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB065.d84529c094.jpg
第58回 午後65 の図

正答: ②成人T細胞白血病

ポイント
本問は発熱が持続する60歳男性の末梢血Wright-Giemsa染色像から疾患を推定する図問題で、正答とされる成人T細胞白血病(ATL)ではflower cell(花弁状・分葉状の核をもつ異常リンパ球)が特徴的に出現する。ATLはヒトTリンパ好性ウイルス1型(HTLV-1)感染を背景とするCD4陽性T細胞の腫瘍で、九州・沖縄などの流行地域に多く、高カルシウム血症・皮膚病変・リンパ節腫大・易感染性を伴う。●ATLの所見=flower cell・抗HTLV-1抗体陽性・CD4陽性・高Ca血症。●鑑別=伝染性単核症(異型リンパ球とEBウイルス)・慢性リンパ性白血病(成熟小型Bリンパ球の増加とsmudge cell)・ヘアリー細胞白血病(毛様突起をもつB細胞)・原発性マクログロブリン血症(IgM単クローン性増加とリンパ形質細胞)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:ウイルス感染に関連する血液・リンパ系疾患

疾患原因ウイルス特徴的所見
成人T細胞白血病リンパ腫〈ATL/L〉HTLV-1flower細胞(CD3・CD4・CD25陽性)、高カルシウム血症、九州・沖縄地区に多い
Burkittリンパ腫EBウイルス高悪性度のB細胞性リンパ腫
伝染性単核症EBウイルス異型リンパ球(活性化した細胞傷害性CD8陽性T細胞)、Paul-Bunnell反応陽性

第58回 午後66(臨床血液学)

染色体の核型分析を実施するのに適した細胞周期はどれか。

正答: ③分裂中期

ポイント
染色体の核型分析(G分染など)は、染色体が最も凝縮して一本ずつ独立に観察できる時期に行う。分裂中期(中期)では各染色体が紡錘体の赤道面に整列し、それぞれが最大に凝縮して大きさ・動原体位置・縞模様などの形態が明瞭となるため、核型分析に最も適する。実際にはコルヒチン(コルセミド)処理で紡錘体形成を阻害して細胞を中期に停止させ、低張処理で細胞を膨化させて染色体を広げ、固定・分染して観察する。●細胞周期と染色体の状態=間期(DNA複製が進み染色体は糸状で個別観察不可)→分裂前期(凝縮開始)→分裂中期(最大凝縮・赤道面整列=観察最適)→分裂後期(姉妹染色分体が両極へ分配)→分裂終期(核膜再形成・脱凝縮)。●核型分析の手順=細胞培養→コルヒチンで中期停止→低張処理→固定→分染・観察。

選択肢ごとの解説

第58回 午後67(臨床血液学)

55歳の男性。健康診断の血液検査で異常を指摘されたため来院した。血液所見:白血球32,000/μl、赤血球420万/μl、血小板62万/μl。骨髄血のWright-Giemsa染色標本を別に示す。骨髄細胞の染色体検査で予想される所見はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB067.001daee325.jpg
第58回 午後67 の図

正答: ③t(9;22)

ポイント
本問は白血球と血小板の増加を伴う55歳男性の骨髄像から、染色体異常を推定する図問題である。白血球32,000/μlの増加・血小板62万/μlの増加と骨髄の所見から慢性骨髄性白血病(CML)が想定され、その染色体異常はt(9;22)(q34;q11)であるフィラデルフィア染色体で、BCR-ABL1融合遺伝子を生じて恒常的チロシンキナーゼ活性をもたらす。チロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ等)が分子標的治療となる。●白血病と特徴的染色体転座=慢性骨髄性白血病=t(9;22)BCR-ABL1・急性前骨髄球性白血病(M3)=t(15;17)PML-RARA・急性骨髄性白血病(M2)=t(8;21)RUNX1-RUNX1T1。●リンパ系腫瘍=Burkittリンパ腫=t(8;14)MYC・濾胞性リンパ腫=t(14;18)BCL2。

選択肢ごとの解説

第58回 午後68(臨床微生物学)

グラム陽性桿菌はどれか。2つ選べ。

正答: ④Listeria monocytogenes・⑤Nocardia asteroides

ポイント
細菌はグラム染色性(陽性=紫・陰性=赤)と形態(球菌・桿菌)で大別され、菌種同定の基本となる。Listeria monocytogenesはグラム陽性桿菌で、低温でも増殖し妊婦・新生児・高齢者・免疫低下者に髄膜炎や敗血症を起こす食品由来感染症の原因菌である。Nocardia asteroidesもグラム陽性の分枝状桿菌で、部分的抗酸性を示し、免疫低下者に肺・脳のノカルジア症を起こす。両者がグラム陽性桿菌である。●グラム陽性桿菌=Listeria・Nocardia・Bacillus・Clostridium・Corynebacterium・Lactobacillus。●本問の他菌(グラム陰性)=Bordetella pertussis(百日咳)・Helicobacter pylori(らせん状)・Legionella pneumophila(レジオネラ肺炎)はいずれもグラム陰性桿菌。

選択肢ごとの解説

第58回 午後69(臨床微生物学)

芽胞を形成するのはどれか。2つ選べ。

正答: ②Bacillus cereus・③Clostridium difficile

ポイント
芽胞(内生胞子)は栄養環境の悪化に応じて一部の細菌が形成する耐久型構造で、熱・乾燥・消毒薬に強い抵抗性を示し、通常の消毒では死滅しないため滅菌が必要となる。芽胞を形成する代表は好気性のBacillus属と嫌気性のClostridium属である。Bacillus cereusは食中毒を起こす芽胞形成菌であり、Clostridium difficileは抗菌薬関連腸炎(偽膜性大腸炎)の原因となる芽胞形成菌である。両者が該当する。●芽胞形成菌=Bacillus(炭疽菌・セレウス菌)・Clostridium(破傷風菌・ボツリヌス菌・ウェルシュ菌・ディフィシル菌)。●非芽胞形成菌=Actinomyces israelii(放線菌症)・Mycobacterium tuberculosis(結核菌・抗酸菌)・Nocardia asteroidesはいずれも芽胞を作らない。

選択肢ごとの解説

第58回 午後70(臨床微生物学)

粘膜の消毒に適しているのはどれか。

正答: ②ポビドンヨード

ポイント
消毒薬は適用部位と微生物への効力で使い分ける。粘膜は刺激や毒性に弱いため、刺激の少ない消毒薬を用いる必要がある。ポビドンヨードはヨウ素を担体に結合させた消毒薬で、創傷・皮膚に加え口腔・咽頭などの粘膜にも適用でき、細菌・真菌・ウイルスに幅広く有効な中水準消毒薬である。本問では粘膜に適している。●粘膜の消毒=その部位への適応があるポビドンヨードやベンザルコニウム塩化物などを、製品で定められた濃度・方法で用いる。クロルヘキシジンを単に「低濃度なら粘膜に使用可能」と覚えない。国内の一般的なクロルヘキシジン消毒薬では口腔・腟・膀胱等の粘膜面が禁忌であり、個々の製剤の承認された適用部位を確認する。●粘膜に不適=消毒用エタノール(刺激が強い)・フェノール(組織傷害性)・グルタールアルデヒド(器具用の高水準消毒薬で生体粘膜には適さない)・次亜塩素酸ナトリウム(粘膜刺激が強い)。

選択肢ごとの解説

第58回 午後71(臨床微生物学)

髄液の墨汁染色標本を別に示す。この病原体に有効なのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB071.f015105225.jpg
第58回 午後71 の図

正答: ④アムホテリシンB

ポイント
本問は髄液の墨汁染色標本を示す図問題で、墨汁染色は黒い背景の中に厚い莢膜が抜けて見える所見からCryptococcus neoformans(クリプトコッカス)を検出する手法である。クリプトコッカスは厚い莢膜をもつ酵母様真菌で、特にAIDSなど免疫低下者に髄膜炎を起こす。真菌であるため抗真菌薬が有効で、アムホテリシンBが第一選択となり、しばしばフルシトシンと併用される。●クリプトコッカス髄膜炎=墨汁染色で莢膜陰性像・ムチカルミン陽性莢膜・治療はアムホテリシンB+フルシトシン。●他薬剤の対象=アシクロビル(ヘルペスウイルス)・アンピシリン/ゲンタマイシン/ストレプトマイシン(細菌)で、いずれも真菌には無効。

選択肢ごとの解説

第58回 午後72(臨床微生物学)

新生児髄膜炎患者の髄液からグラム陽性レンサ球菌が分離された。起因菌として考えられるのはどれか。

正答: ⑤Streptococcus agalactiae

ポイント
新生児髄膜炎の主要起因菌は母体産道からの感染で伝播するB群レンサ球菌(GBS)とされ、グラム陽性レンサ球菌が分離された場合に第一に考えられる。Streptococcus agalactiaeはB群レンサ球菌で、CAMP試験陽性・馬尿酸加水分解陽性・β溶血を示し、新生児の早発型・遅発型の髄膜炎や敗血症の原因となる。●新生児髄膜炎の起因菌=B群レンサ球菌(S. agalactiae)・大腸菌・Listeria monocytogenes。●他のグラム陽性球菌=Enterococcus faecalis(腸球菌・尿路感染等)・Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌・カテーテル感染)・Peptococcus/Peptostreptococcus(嫌気性球菌)はいずれも新生児髄膜炎の典型起因菌ではない。

選択肢ごとの解説

第58回 午後73(臨床微生物学)

健常人における市中肺炎の起因菌となり得るのはどれか。2つ選べ。

正答: ②Haemophilus influenzae・③Mycoplasma pneumoniae

ポイント
市中肺炎は地域社会で日常生活を送る人に発症する肺炎で、健常者でも起因菌となりうる病原体が原因となる。Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)はグラム陰性桿菌で、肺炎球菌と並ぶ市中肺炎の代表的起因菌である。Mycoplasma pneumoniae(肺炎マイコプラズマ)は細胞壁をもたない非定型病原体で、若年者に多い異型肺炎を起こす市中肺炎の主要原因である。両者が健常人の市中肺炎起因菌となりうる。●市中肺炎の起因菌=肺炎球菌・インフルエンザ菌・マイコプラズマ・クラミジア・モラクセラ。●日和見・院内型病原体=Burkholderia cepacia・Stenotrophomonas maltophiliaは免疫低下者や院内環境での感染が主・Pneumocystis jiroveciiは細胞性免疫低下(AIDS等)で肺炎を起こす日和見真菌。

選択肢ごとの解説

第58回 午後74(臨床微生物学)

緑膿菌が産生するのはどれか。

正答: ②ピオシアニン

ポイント
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)はブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌で、色素産生が特徴の一つである。ピオシアニン(青緑色色素)を産生し、これがピオベルジン(蛍光性の黄緑色色素)と相まって培地や膿に青緑色を呈する。ピオシアニンは緑膿菌に特異性が高く、同定の手がかりとなる。緑膿菌は日和見感染・院内感染の代表で、多剤耐性を示しやすい。●緑膿菌の特徴=ピオシアニン(青緑)・ピオベルジン(蛍光緑)産生・オキシダーゼ陽性・ブドウ糖非発酵・特有の芳香。●他の色素の産生菌=プロジギオシン(赤色色素)はSerratia marcescens・カロチノイド系色素はブドウ球菌等が産生し、緑膿菌の色素ではない。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:細菌が産生する色素と代表菌

色素産生菌色調
ピオシアニンPseudomonas aeruginosa青緑色
ピオベルジン(フルオレセイン)Pseudomonas aeruginosa黄緑色(蛍光性)
プロジギオシンSerratia marcescens赤色
Pseudomonas aeruginosaはアシルアミダーゼ試験も陽性を示す。

第58回 午後75(臨床微生物学)

気管支肺胞洗浄液のGiemsa染色標本を別に示す。矢印で示す菌はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB075.c7f876737a.jpg
第58回 午後75 の図

正答: ④Pneumocystis jirovecii

ポイント
本問は気管支肺胞洗浄液(BALF)のGiemsa染色標本で矢印の菌を判定する図問題である。免疫低下者(AIDS等)のBALFでGiemsa染色により嚢子(シスト)や栄養体(トロフォゾイト)が集塊状にみられる像はPneumocystis jirovecii(ニューモシスチス・イロベチイ)を示す。ニューモシスチス肺炎(PCP)は細胞性免疫低下を背景に起こる日和見感染で、ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)が治療・予防の第一選択となる。●ニューモシスチスの染色=Grocott染色(嚢子壁を黒色)・トルイジン青O・Giemsa(栄養体と嚢子内小体)。●鑑別する真菌=Candida albicans/glabrata(出芽酵母・仮性菌糸)・Cryptococcus neoformans(厚い莢膜)・Trichosporon asahii(関節分生子をもつ)で、いずれも形態と染色性が異なる。

選択肢ごとの解説

第58回 午後76(臨床微生物学)

ウイルスと侵入門戸の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ③デング熱ウイルス — 皮膚・④B型肝炎ウイルス — 血液

ポイント
ウイルスは感染を成立させる際、それぞれ固有の侵入門戸(感染経路)を介して宿主に侵入する。デング熱ウイルスはネッタイシマカ・ヒトスジシマカなどの吸血により皮膚(経皮)から侵入する蚊媒介性のフラビウイルスであり、B型肝炎ウイルスは血液・体液を介して侵入する血液媒介性のヘパドナウイルスで、輸血・針刺し・性的接触・母子感染が経路となる。侵入門戸とウイルスの組合せは感染対策の基盤となる。●呼吸器粘膜から侵入する代表=インフルエンザウイルス・麻疹ウイルス。●経口的に侵入する代表=ポリオウイルス(主として糞口感染)。●接触・粘膜から侵入=ヒトパピローマウイルス(性的接触で性器・子宮頸部の扁平上皮)・EBウイルス(唾液を介した口腔咽頭粘膜)など。●節足動物(ベクター)媒介で経皮侵入=デング熱ウイルス・日本脳炎ウイルス・黄熱ウイルスなど。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:感染経路と主な病原体

感染経路代表的な病原体・感染症
接触感染MRSA、黄色ブドウ球菌、ノロ/ロタウイルス、アデノウイルス(流行性角結膜炎)
飛沫感染インフルエンザウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルス、百日咳菌、髄膜炎菌
空気感染(飛沫核感染)結核菌、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス
血液感染(血液媒介感染)B型/C型/D型肝炎ウイルス、HIV、梅毒トレポネーマ
経口感染A型/E型肝炎ウイルス、ノロウイルス、赤痢菌、腸管出血性大腸菌
ベクター(節足動物)感染デングウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルス、マラリア原虫
垂直感染(経胎盤・産道・母乳)風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、トキソプラズマ、B型肝炎ウイルス(産道)
ウイルスの「侵入門戸」も基本的にこの感染経路の分類に対応する(例:デングウイルスは蚊媒介で皮膚から、B型肝炎ウイルスは血液から侵入)。

第58回 午後77(臨床微生物学)

121 ℃、20分のオートクレーブ処理後も感染力を有するのはどれか。

正答: ①プリオン

ポイント
プリオンは核酸を持たず、正常プリオン蛋白(PrPc)が異常型(PrPSc)へ構造変化した感染性蛋白粒子で、Creutzfeldt-Jakob病などの伝達性海綿状脳症の病原体である。蛋白質のみからなり加熱・乾燥・通常の消毒に極めて強い抵抗性を示すため、121℃・20分という通常のオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)の条件では不活化されず感染力を保持する。不活化には134℃・18分以上の高温高圧滅菌や水酸化ナトリウム・次亜塩素酸ナトリウムへの浸漬が必要とされる。●核酸を持つ一般病原体(ウイルス・細菌・真菌・原虫)=栄養型は熱・消毒に比較的弱く、121℃・20分のオートクレーブで死滅する。●芽胞形成菌(Bacillus・Clostridiumなど)=栄養型より耐性が高いが、通常のオートクレーブ条件で死滅する。●通常の滅菌に抵抗するもの=プリオン(蛋白質のみ)が代表で、別格の処理を要する。

選択肢ごとの解説

第58回 午後78(臨床微生物学)

喀痰のGram染色標本の鏡検所見で、培養検査の検体として適していると考えられるのはどれか。

正答: ②多核白血球が多い。

ポイント
喀痰のGram染色で培養検体としての適否を判定する指標がGeckler分類であり、白血球(多核白血球=好中球)が多く扁平上皮細胞が少ない検体が下気道由来の良質な喀痰とされる。多核白血球が多いことは下気道の感染・炎症の存在を反映し、上気道(口腔)由来の汚染が少ないことを示すため、培養検査に適すると判定される。逆に扁平上皮細胞が多い検体は唾液混入が多く、口腔内常在菌で汚染されているため培養に不適である。●下気道由来を示唆する所見(良質)=多核白血球(好中球)が多い・扁平上皮細胞が少ない(Geckler 4・5群)。●上気道(唾液)汚染を示唆する所見(不適)=扁平上皮細胞が多い・白血球が少ない(Geckler 1・2群)。●判定に直接用いない所見=赤血球・円柱上皮細胞・マクロファージの多寡は喀痰の質判定の主指標とはしない。

選択肢ごとの解説

第58回 午後79(臨床免疫学)

免疫反応について正しいのはどれか。

正答: ②IgG抗体は一次反応よりも二次反応の方が高値である。

ポイント
抗原刺激に対する抗体産生応答は一次反応と二次反応に分けられる。同一抗原の再刺激で起こる二次反応では、メモリーB細胞により応答が速やかで強く、産生される抗体は主にIgGで、その量は一次反応より著しく高値となる(ブースター効果)。一方、一次反応では数日の潜伏期の後にまずIgMが出現し、遅れてIgGが少量産生される。免疫記憶を利用したこの二次反応こそ予防接種(ワクチン)の原理である。●一次反応の特徴=潜伏期が長く、まずIgMが先行して出現し、IgGは遅く少量、応答は弱い。●二次反応(ブースター)の特徴=メモリー細胞により速く強く、IgGが主体で高親和性・高値、IgMは少ない。●応答は抗原特異的=二次反応は最初に感作した抗原と同一の抗原でのみ増強され、異なる抗原では起こらない。

選択肢ごとの解説

第58回 午後80(臨床免疫学)

ヒト同種抗原はどれか。

正答: ②HLA抗原

ポイント
抗原は宿主との関係で自己抗原・同種抗原(同種異系抗原)・異種抗原などに分類される。同種抗原とは同一種の個体間で遺伝的に異なる抗原をいい、ヒトではHLA(ヒト白血球抗原)抗原や血液型抗原が代表で、輸血・臓器移植における拒絶反応や移植片対宿主反応の標的となる。HLAは第6染色体短腕の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)にコードされ多型性に富むため、個体間で抗原性が異なる同種抗原として働く。●同種抗原(個体間で異なる)=HLA抗原・ABO/Rhなどの血液型抗原など、移植・輸血で問題となる。●自己抗原(本来寛容で自己抗体の標的となる)=DNA抗原・RNP抗原・水晶体蛋白抗原・ミトコンドリア抗原など、自己免疫疾患で自己抗体が産生される。●異種抗原=他種生物由来の抗原で、動物血清・微生物成分などが該当する。

選択肢ごとの解説

第58回 午後81(臨床免疫学)

地帯現象がみられるのはどれか。2つ選べ。

正答: ②免疫比ろう法・⑤ラテックス凝集比濁法

ポイント
地帯現象(zone phenomenon)とは抗原抗体反応で抗原または抗体が過剰なときに格子(凝集塊・免疫複合体)が形成されず、見かけ上反応が弱く(陰性に)出る現象で、抗体過剰側をプロゾーン、抗原過剰側を後地帯という。抗原抗体の量比で生じる沈降・凝集・濁度を直接測定する反応で起こるため、免疫比濁(比ろう)法やラテックス凝集比濁法のように免疫複合体の量を光学的に測る方法で問題となり、高濃度検体で偽低値を招く。●地帯現象がみられる(量比で複合体形成が左右される)反応=免疫比濁法・免疫比ろう法・ラテックス凝集比濁法・沈降反応・凝集反応など。●地帯現象が原則問題になりにくい(標識量を測る)方法=酵素免疫測定法・発光免疫測定法・蛍光抗体法など(ただしサンドイッチ法では超高濃度でフック効果が生じうる)。●回避策=検体希釈による再測定で複合体の量比を最適化する。

選択肢ごとの解説

第58回 午後82(臨床免疫学)

酵素免疫測定法で標識に用いられるのはどれか。2つ選べ。

正答: ④ペルオキシダーゼ・⑤アルカリホスファターゼ

ポイント
酵素免疫測定法(EIA・ELISA)では抗原または抗体に酵素を標識し、その酵素活性により基質を発色・発光させて検出する。標識酵素には反応特異性が高く安定で発色基質が利用でき活性が強いものが用いられ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とアルカリホスファターゼ(ALP)が代表である。ペルオキシダーゼは過酸化水素存在下でTMB等の基質を発色させ、アルカリホスファターゼはp-ニトロフェニルリン酸などを分解して発色・発光させる。●標識に用いる酵素=ペルオキシダーゼ(HRP)・アルカリホスファターゼ(ALP)・β-ガラクトシダーゼ・グルコースオキシダーゼなど。●標識に用いない酵素(測定対象や別目的の酵素)=リパーゼ・リゾチーム・ノイラミニダーゼなど。●他の標識法=蛍光物質(蛍光抗体法)・放射性同位元素(RIA)・化学発光物質(化学発光免疫測定法)など。

選択肢ごとの解説

第58回 午後83(臨床免疫学)

細胞性免疫のみが障害されるのはどれか。

正答: ③DiGeorge症候群

ポイント
DiGeorge症候群は第22染色体の微小欠失(22q11.2欠失)により胸腺の低形成・無形成を来し、T細胞が成熟できず細胞性免疫が選択的に障害される原発性免疫不全症である。B細胞・抗体産生(液性免疫)や食細胞機能は比較的保たれるため、細胞性免疫のみが障害される代表例となる。胸腺低形成のほか心大血管奇形・低カルシウム血症(副甲状腺低形成)・特徴的顔貌を伴う。原発性免疫不全は障害される系統で分類される。●細胞性免疫(T細胞)の選択的障害=DiGeorge症候群(胸腺低形成)。●液性免疫(B細胞・抗体)の障害=X連鎖無γ-グロブリン血症(Bruton病)・分類不能型免疫不全症など。●食細胞機能の障害=慢性肉芽腫症(NADPHオキシダーゼ欠損)・白血球接着不全症など。●T細胞とB細胞の複合障害=重症複合免疫不全症(SCID)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:原発性免疫不全症の分類(障害される免疫系統別)

障害される免疫系統代表疾患遺伝形式主な特徴
T細胞系+B細胞系(複合型)重症複合型免疫不全症〈SCID〉主にXRT細胞・抗体産生能がともに低下、乳児期から重症感染を繰り返す
T細胞系(細胞性免疫)DiGeorge症候群(胸腺低形成症)主にAD胸腺低形成でT細胞が減少、心奇形・低Ca血症を合併しうる
B細胞系(液性免疫・抗体産生)X連鎖無γ-グロブリン血症(Bruton病)XR(男児のみ)B細胞分化に必要なBTK遺伝子の変異、全クラスの免疫グロブリンが低下
食細胞機能慢性肉芽腫症主にXRNADPHオキシダーゼ異常で好中球の殺菌能が障害(遊走能・貪食能は正常)、カタラーゼ陽性菌に反復感染
Wiskott-Aldrich症候群(XR、T細胞機能低下+血小板減少)や毛細血管拡張性失調症(AR、進行性小脳失調)もT細胞系機能不全に分類される。

第58回 午後84(臨床免疫学)

自己免疫疾患と自己抗体の組合せで正しいのはどれか。

正答: ①全身性エリテマトーデス — 抗DNA抗体

ポイント
自己免疫疾患では疾患特異性の高い自己抗体がみられ、診断や病型分類の指標となる。全身性エリテマトーデス(SLE)では抗DNA抗体(特に抗ds-DNA抗体)が出現し、抗Sm抗体とともに疾患特異性が高く疾患活動性とも相関する。各疾患には特徴的な自己抗体の対応関係がある。●全身性エリテマトーデス=抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体。●原発性胆汁性胆管炎=抗ミトコンドリア抗体(M2)。●Sjögren症候群=抗SS-A(Ro)抗体・抗SS-B(La)抗体。●多発性筋炎・皮膚筋炎=抗Jo-1抗体(抗ARS抗体)。●混合性結合組織病=抗U1-RNP抗体。●橋本病(慢性甲状腺炎)=抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体。●ANCA関連血管炎=抗好中球細胞質抗体(ANCA)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患

染色パターン推定される抗体代表的な疾患
辺縁(peripheral)型抗DNA抗体全身性エリテマトーデス〈SLE〉
均質(homogeneous)型抗ヒストン抗体/抗DNP抗体SLE・薬剤誘発性ループス/SLE・RA・全身性強皮症
斑紋(speckled)型 — 抗U1-RNP抗体抗ENA抗体混合性結合組織病〈MCTD〉
斑紋(speckled)型 — 抗Sm抗体抗ENA抗体SLE
斑紋(speckled)型 — 抗SS-B抗体抗ENA抗体Sjögren症候群
斑紋(speckled)型 — 抗Scl-70抗体抗ENA抗体全身性強皮症
核小体(nucleolar)型抗核小体抗体・抗PM-Scl抗体全身性強皮症
散在斑紋(discrete speckled)型抗セントロメア抗体CREST症候群
細胞質(cytoplasmic)型抗ミトコンドリア抗体/抗Jo-1抗体/抗SS-A抗体原発性胆汁性胆管炎/多発性筋炎・皮膚筋炎/Sjögren症候群

第58回 午後85(臨床免疫学)

リウマトイド因子(RF)で正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ③変性IgGに対する自己抗体である。・④ラテックス凝集反応で検出できる。

ポイント
リウマトイド因子(RF)はIgG分子のFc部分に対する自己抗体で、変性したIgGを認識して結合する。クラスはIgMが主体であり、変性IgG(Fc)と結合した複合体はラテックス凝集反応(RF感作ラテックス)で検出される。関節リウマチで高頻度に陽性となるが、Sjögren症候群やその他の膠原病・慢性感染症・健常高齢者でも陽性となるため、関節リウマチに特異的ではない。●RFの性状=IgGのFc部に対する自己抗体・変性IgGに反応・主クラスはIgM。●検出法=ラテックス凝集反応・比濁法・酵素免疫測定法など。●RF陽性となる病態=関節リウマチのほかSjögren症候群・全身性エリテマトーデス・慢性肝疾患・感染性心内膜炎・健常高齢者など(特異性は高くない)。●関節リウマチでより特異的な指標=抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)。

選択肢ごとの解説

第58回 午後86(臨床免疫学)

免疫電気泳動検査(Grabar法)について正しいのはどれか。

正答: ④分子量の小さい蛋白の沈降線は抗血清側に形成される。

ポイント
免疫電気泳動(Grabar法)は支持体(寒天・アガロース)上での蛋白の電気泳動と、その後に抗血清を溝に入れて行うゲル内沈降反応とを組み合わせた方法で、血清蛋白を分離してから各成分に対する沈降弧を形成させ、M蛋白の検出や蛋白異常の解析に用いる。泳動で分離された各蛋白は抗血清に向かって拡散し、抗血清側に近い位置に沈降線を形成するのは拡散の速い分子量の小さい蛋白である。●原理=支持体電気泳動(一次元分離)+抗血清との二重拡散による沈降反応の組合せ。●沈降弧の位置を決める因子=蛋白の泳動度(移動位置)と拡散速度(分子量が小さいほど速く拡散し抗血清側に弧を作る)。●主な血清蛋白の泳動分画=アルブミン、α1(α₁-アンチトリプシン等)、α2(ハプトグロビン・α₂-マクログロブリン)、β(トランスフェリン・補体C3)、γ(免疫グロブリン)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:免疫電気泳動法〈IEP〉の原理と特徴

項目内容
原理電気泳動(荷電差による分離)とゲル内沈降反応(抗原抗体反応)を組み合わせた分析法
電気浸透現象影響を受ける(支持体の荷電により泳動距離が変化する)
拡散速度と分子量の関係分子量が大きいほど拡散速度は遅い(小分子ほど速く抗血清側へ拡散し沈降線を作る)
検査所要時間約12時間
M蛋白の検出感度IEPは約100 mg/dL以上、免疫固定法は約5 mg/dL以上(免疫固定法の方が高感度)
血清免疫電気泳動の5分画アルブミン・α1(α1-アンチトリプシン)・α2(α2-マクログロブリン)・β(トランスフェリン)・γ(IgG)
免疫固定法は蛋白質分画後に抗血清を直接反応させる方法でIEPより簡便かつ高感度。

第58回 午後87(臨床免疫学)

Rh血液型について正しいのはどれか。

正答: ⑤D陰性の確認は間接抗グロブリン試験で行う。

ポイント
Rh血液型のうち臨床的に最も重要なのがD抗原で、D抗原を欠く場合をD陰性(Rh陰性)という。日本人のD陰性頻度は約0.5%と低い。D陰性の確定にはD抗原の有無を慎重に確認する必要があり、生理食塩液法(直接凝集)で陰性でもweak DやpartialDを見逃さないため、間接抗グロブリン試験(不完全抗体を検出するクームス法)で確認してD陰性と判定する。これによりweak Dの誤判定を防ぐ。●D抗原の確認=直接(食塩液)法で陰性なら間接抗グロブリン試験を追加してweak Dを除外しD陰性を確定する。●weak Dの取扱い=受血者(患者)にはD陰性血を輸血し、供血者では原則D陽性として扱う。●日本人の頻度=D陰性は約0.5%(白人約15%より著しく低い)。●日本人の不規則抗体=抗E・抗Le(a)などが多く、D陰性が少ないため抗Dは欧米ほど多くない。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:Rh血液型(D抗原)のポイント

項目内容
D陰性頻度日本人約0.5%(白人は約15%)
D陰性の確定直接凝集陰性→間接抗グロブリン試験でweak D除外
weak Dの輸血受血者にはD陰性血/供血者はD陽性扱い
日本人の不規則抗体抗Dは少なく抗Eなどが多い
D陽性の遺伝D陽性の親からD陰性児もありうる

第58回 午後88(臨床免疫学)

輸血用血液の管理で誤っているのはどれか。

正答: ③血小板濃厚液の振盪保管は2〜6℃とする。

ポイント
輸血用血液製剤は成分ごとに保存条件と有効期限が定められており、適切な温度管理が安全な輸血の前提となる。血小板濃厚液は機能維持のため室温(20〜24℃)で水平振盪しながら保存するのが原則であり、低温保存(2〜6℃)では血小板が活性化・凝集して機能が低下するため不適である。したがって「血小板濃厚液の振盪保管は2〜6℃とする」は誤りである(2〜6℃は赤血球製剤の保存温度)。●赤血球製剤=2〜6℃で保存(凍結すると溶血する)。●血小板濃厚液=20〜24℃の室温で水平振盪保存し、保存期間は短い。●新鮮凍結血漿=−20℃以下で凍結保存し、使用時は30〜37℃の恒温槽で速やかに融解して凝固因子活性を保つ。●温度管理の要点=赤血球は2〜6℃冷蔵、血漿は−20℃以下冷凍、血小板は20〜24℃室温で振盪保存と製剤ごとに条件が異なり、いずれも逸脱すると品質低下や輸血副作用につながる。●有効期間の制度変更(出題後)=赤血球液は2023年3月採血分から採血後28日間、濃厚血小板は2025年7月供給分から採血後6日間(洗浄血小板は4日間のまま)に延長された。

選択肢ごとの解説

第58回 午後89(臨床免疫学)

移植のドナーに行うべき検査はどれか。2つ選べ。

正答: ②HIV抗体検査・④HLAタイピング検査

ポイント
臓器・組織移植のドナー(提供者)には、移植による感染症の伝播を防ぐための感染症スクリーニングと、レシピエントとの組織適合性を確認する検査が必須である。HIV抗体検査はウインドウ期に注意しつつドナー由来の感染症伝播を防ぐために行い、HLAタイピング検査はドナーとレシピエントの主要組織適合抗原の一致度を調べて拒絶反応のリスクを評価するために行う。これらは移植の安全性と成功率に直結する。●ドナーに行う感染症スクリーニング=HIV抗体・HBs抗原/HBc抗体・HCV抗体・HTLV-1抗体・梅毒・サイトメガロウイルスなど。●組織適合性検査=HLAタイピング・リンパ球交差適合試験(クロスマッチ)・抗HLA抗体検査。●移植の適合確認=ドナー・レシピエント双方のHLAを照合し拒絶リスクを評価する。

選択肢ごとの解説

第58回 午後90(公衆衛生学)

世界保健機関(WHO)の定める国際生活機能分類(ICF)で「活動制限」に分類されるのはどれか。

正答: ④歩行障害

ポイント
国際生活機能分類(ICF)は人間の生活機能を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3レベルで捉え、それぞれの障害を「機能障害(構造障害)」「活動制限」「参加制約」と呼ぶ。「活動」は個人による課題や行為の遂行を指し、その困難を活動制限という。歩行障害は移動という個人レベルの行為が制限された状態であり、活動制限に分類される。●心身機能・身体構造の障害(機能障害)=血行障害・不安障害・肝機能障害など、身体・精神の機能や構造のレベルの問題。●活動の制限(活動制限)=歩行障害・食事や入浴などのADL困難など、個人による行為遂行レベルの問題。●参加の制約(参加制約)=休職・就労困難・社会参加の困難など、社会的役割レベルの問題。●ICFの特徴=環境因子・個人因子を含め生活機能を相互作用的に捉える。

選択肢ごとの解説

第58回 午後91(公衆衛生学)

我が国の主要死因別の粗死亡率の年次推移を示す。矢印で示す死因はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB091.8e11181ee0.jpg
第58回 午後91 の図

正答: ③肺炎

ポイント
我が国の主要死因別粗死亡率の年次推移では、各死因が時代背景を反映した特徴的な曲線を描く。肺炎は高齢化に伴い高齢者の誤嚥性肺炎などを中心に死亡数が増加し、近年では主要死因の上位を占めるまでに粗死亡率が上昇してきた経緯があり、年次推移のグラフで近年明瞭な上昇を示す曲線として読み取れる(本問では矢印が示す上昇曲線が肺炎に相当する)。粗死亡率は人口構成、特に高齢者の増加の影響を強く受ける点に注意して読む。●戦後に激減した死因=結核(公衆衛生の改善・抗結核薬の普及で著明に低下)。●高齢化で上昇した死因=肺炎・老衰など、高齢者数の増加を反映して粗死亡率が上昇。●比較的横ばい〜変動する死因=自殺・不慮の事故など社会的要因の影響を受ける。●粗死亡率の解釈=人口の高齢化の影響を強く受けるため、年齢調整死亡率と区別して読む必要がある。

選択肢ごとの解説

第58回 午後92(公衆衛生学)

物理環境と影響の組合せで誤っているのはどれか。

正答: ②赤外線 — 緑内障

ポイント
物理的環境因子はそれぞれ特徴的な健康影響(職業病・環境性疾患)を引き起こす。赤外線は強い熱作用をもち、長期曝露により水晶体の混濁すなわち白内障(硝子工白内障・熱性白内障)を起こすのが特徴であり、眼圧上昇による緑内障の原因とはならない。したがって「赤外線—緑内障」は誤った組合せである。物理環境と健康影響の対応は産業保健・環境保健の基礎となる。●電離放射線=皮膚潰瘍・脱毛・造血障害・発癌などの確定的・確率的影響。●赤外線=熱性白内障・皮膚熱傷(緑内障ではない)。●紫外線=電気性眼炎(角結膜炎)・皮膚紅斑・皮膚癌。●振動=白ろう病(レイノー現象)など末梢循環障害。●騒音=騒音性難聴(c5dip)。●異常気圧=潜函病(減圧症)・空気塞栓。●高温・低温=熱中症・凍傷など。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:物理的環境要因と健康影響(職業病・環境性疾患)

物理的要因主な健康影響
電離放射線(X線・γ線等)皮膚潰瘍・脱毛・造血障害・発がん
赤外線熱性白内障(硝子工白内障)・皮膚熱傷
紫外線電気性眼炎(角結膜炎)・皮膚紅斑・皮膚がん
振動白ろう病(レイノー現象)など末梢循環障害
騒音騒音性難聴(感音性難聴)
異常気圧(高圧)潜函病(減圧症)・空気塞栓
高温・低温熱中症・凍傷
赤外線は水晶体の混濁による白内障(熱性白内障)を起こすが、眼圧上昇による緑内障の原因とはならない。

第58回 午後93(公衆衛生学)

疾患とリスクファクターの組合せで誤っているのはどれか。

正答: ③膀胱癌 — サイトメガロウイルス

ポイント
悪性腫瘍には感染や環境因子などの明らかなリスクファクターをもつものがある。膀胱癌の主なリスクファクターは喫煙や芳香族アミン(職業性のベンジジン・β-ナフチルアミンなど)であり、サイトメガロウイルスは膀胱癌の原因とはならないため「膀胱癌—サイトメガロウイルス」は誤った組合せである。●胃癌=Helicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)の持続感染。●咽頭癌・喉頭癌・肺癌=喫煙・飲酒(咽頭癌ではHPVも関与)。●膀胱癌=喫煙・芳香族アミン(職業性曝露)。●中皮腫・肺癌=アスベスト(石綿)曝露。●子宮頸癌=高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)。●肝細胞癌=B型・C型肝炎ウイルス。●成人T細胞白血病=HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)。●バーキットリンパ腫・上咽頭癌=EBウイルス。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な悪性腫瘍の危険因子(生活習慣・感染性病原体)

悪性腫瘍主な危険因子
胃がんヘリコバクター・ピロリ、喫煙、塩辛い食品、薫製品
食道がん喫煙、飲酒、熱い飲食物
肝がんHBV・HCVキャリア、喫煙、アフラトキシン、飲酒
肺がん喫煙(特に扁平上皮がん)、職業的曝露(石綿・クロム・ラドン等)、大気汚染
咽頭がんEBウイルス(上咽頭がん)、喫煙、飲酒
喉頭がん喫煙、飲酒、男性
子宮頸がんヒトパピローマウイルス、多産、喫煙
膀胱がん喫煙、鎮痛剤過剰摂取、ベンジジンなどの芳香族アミン
中皮腫石綿(アスベスト)
膀胱がんの危険因子はサイトメガロウイルスではなく喫煙・芳香族アミン(ベンジジン等)である。

第58回 午後94(公衆衛生学)

保健所の業務はどれか。2つ選べ。

正答: ④精神保健に関する業務・⑤人口動態統計に関する業務

ポイント
保健所は地域保健法に基づき都道府県・指定都市等が設置する広域的・専門的・技術的な公衆衛生の拠点で、精神保健、感染症・結核対策、難病対策、食品衛生・環境衛生、人口動態統計などの広域的業務を担う。精神保健に関する業務(精神保健福祉相談・措置入院に関する事務など)と人口動態統計に関する業務(死亡・出生などの統計の集計・分析)は保健所の業務に含まれる。●保健所の業務(広域・専門的)=精神保健・感染症(結核・エイズ等)対策・難病対策・食品衛生・環境衛生・人口動態統計など。●市町村(保健センター)の業務(住民に身近なサービス)=母子健康手帳の交付・乳幼児健診・予防接種・健康相談など。●他機関の業務=身体障害者手帳の交付(福祉事務所等が関与)・医療保険業務(保険者)。

選択肢ごとの解説

第58回 午後95(医用工学概論)

交流回路における、電圧および電流の最大振幅値の積に対する平均電力の割合として正しいのはどれか。

正答: ①1/2

ポイント
正弦波交流における平均電力(有効電力)は、抵抗負荷では電圧実効値と電流実効値の積で表される。実効値(RMS)は瞬時値の二乗平均平方根であり、正弦波では最大振幅値の1/√2となる。したがって平均電力は(最大電圧/√2)×(最大電流/√2)=(最大電圧×最大電流)/2となり、電圧と電流の最大振幅値の積に対する平均電力の割合は1/2である。これは正弦波の二乗平均が最大値の二乗の1/2であることに対応する。●実効値の定義=正弦波では最大値の1/√2(約0.707倍)。●平均電力(抵抗負荷)=実効値電圧×実効値電流=最大値の積の1/2。●力率=抵抗のみなら1、リアクタンスを含むと平均電力はさらにcosθ倍に低下する。●瞬時電力=時間とともに変動し、その一周期平均が平均電力となる。

選択肢ごとの解説

第58回 午後96(医用工学概論)

測定される物理量が起電力に変換されるトランスデューサはどれか。2つ選べ。

正答: ①熱電対・③ホール素子

ポイント
トランスデューサ(変換器)は物理量を電気量に変換する素子で、変換後の出力形式(起電力=電圧として出力するか、抵抗変化など受動的変化として出力するか)で分類できる。測定される物理量が起電力(電圧)として出力されるものには、温度差を起電力に変える熱電対(ゼーベック効果)と、磁界に比例した電圧を出力するホール素子(ホール効果)がある。ただしホール素子は駆動電流(または駆動電圧)を与えて動作させる素子であり、熱電対のような外部電源不要の自己発電型ではない。●起電力(電圧)を出力するトランスデューサ=熱電対(ゼーベック効果)・圧電素子(圧電効果)・光電池(いずれも自己発電型)・ホール素子(ホール効果、駆動電流が必要)。●抵抗・容量などの変化を生じる受動型トランスデューサ=サーミスタ(温度→抵抗)・ストレンゲージ(ひずみ→抵抗)・ポテンショメータ(変位→抵抗)など、別途電源を要する。●選択の要点=出力が電圧(起電力)そのものか、抵抗などの変化かで見分ける。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:トランスデューサ(センサ)の変換原理による分類

変換後の出力主なトランスデューサ検出する物理量
電気抵抗サーミスタ温度
電気抵抗ストレンゲージ・ポテンショメータ力・変位
電気抵抗CdS・CdSe(光導電素子)光量
電気抵抗HgCdTe赤外線
起電力(電圧)熱電対(ゼーベック効果)温度差
起電力(電圧)圧電素子力・振動
起電力(電圧)Hall素子磁場
起電力(電圧)太陽電池・LiTaO3光量・赤外線
電流フォトダイオード・フォトトランジスタ・光電管光量
電流SQUID磁場(リング電流)
電流半導体放射線検出素子・Geiger計数管放射線
その他差動トランス(変位→相互インダクタンス)・可動極板型コンデンサ(変位→容量)変位

第58回 午後97(医用工学概論)

最高周波数成分が100 Hzである生体信号をAD変換するのに、理論上使うことができるサンプリング周波数〔Hz〕の下限はどれか。

正答: ④200

ポイント
アナログ信号をデジタル化(AD変換)する際、原信号を正しく復元するにはサンプリング定理(標本化定理)に従い、信号に含まれる最高周波数成分の2倍を超えるサンプリング周波数で標本化する必要がある。最高周波数成分が100Hzの信号では、理論上の下限はその2倍の200Hz(=0.2kHz)となる。これより低いと折り返し雑音(エイリアシング)が生じ原信号を再現できない。●サンプリング定理=サンプリング周波数は信号最高周波数の2倍より高くする(ナイキスト周波数=サンプリング周波数の1/2)。●下限の計算=最高周波数100Hz×2=200Hz。●エイリアシング=サンプリング周波数が不足すると高周波が低周波に折り返って混入する。●実務=余裕をもって2倍以上の周波数を用い、前段に折り返し防止フィルタ(アンチエイリアシングフィルタ)を入れる。

選択肢ごとの解説

第58回 午後98(医用工学概論)

静止画像ファイルの保存に用いられるフォーマットはどれか。

正答: ③JPEG

ポイント
ファイルフォーマットは扱うデータの種類(静止画・動画・音声・文字・表)ごとに規格が異なり、拡張子から内容を推測できる。JPEG(Joint Photographic Experts Group)は静止画像の非可逆圧縮フォーマットで、写真など連続階調の静止画像の保存・配信に広く用いられ、圧縮率を高めると画質が劣化する特徴をもつ。●静止画像フォーマット=JPEG(非可逆圧縮)・PNG(可逆圧縮)・GIF・BMP・TIFFなど。●動画フォーマット=AVI・MP4・MOVなど。●音声フォーマット=MP3・WAV・AACなど。●文字・テキスト=TXT(プレーンテキスト)。●表形式データ=CSV(カンマ区切り)。●医用画像分野=DICOM(医用画像と付帯情報の標準規格)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:ファイル形式の分類(静止画像・動画・音声・表形式)

種類主なファイル形式
静止画像JPEG・TIFF・BMP・GIF・PNG
動画AVI・FLV・MP4・MOV・WMV
音声MP3・AAC・WAV・MIDI
表形式データCSV
テキストTXT

第58回 午後99(医用工学概論)

紙媒体のカルテと比較した電子カルテ導入の効果として誤っているのはどれか。

正答: ⑤個人情報漏洩の危険性が減る。

ポイント
電子カルテは診療情報を電子的に記録・管理する仕組みで、情報の共有・検索・統計利用・スペース節約・警告機能などの利点をもたらす。一方で診療情報を電子データとして集約・ネットワーク化するため、不正アクセスや大量データの一括流出といった新たなリスクが生じ、個人情報漏洩の危険性はむしろ高まりうる。したがって「個人情報漏洩の危険性が減る」は効果として誤りである。●電子カルテの利点=重大所見の警告(アラート)機能・診療統計など二次利用の容易化・多職種間の情報共有・保管スペースの節約・判読性向上。●新たに生じる課題(欠点)=不正アクセスや大量流出による個人情報漏洩リスク・システム障害時の閲覧不能・導入運用コスト。●対策=アクセス制御・ログ管理・暗号化・バックアップなどのセキュリティ整備が必須。

選択肢ごとの解説

第58回 午後100(医用工学概論)

滅菌について正しいのはどれか。

正答: ①エチレンオキサイドガスはウイルスの滅菌に有効である。

ポイント
滅菌はすべての微生物を死滅・除去する操作で、対象物の耐熱性・耐湿性に応じて方法を使い分ける。エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌は常温に近い低温で行えるガス滅菌で、芽胞を含む細菌・真菌・ウイルスなど広範な微生物に有効であり、熱や湿気に弱いプラスチック製品・内視鏡などの滅菌に用いられる。したがって「エチレンオキサイドガスはウイルスの滅菌に有効である」は正しい。●高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)=121℃・20分等で芽胞を含む微生物に有効、耐熱・耐湿物に用いる。●乾熱滅菌=高温乾燥でガラス器具・金属に用いる(培地は変性するため不適)。●ガス滅菌(EOG・過酸化水素低温プラズマ)=低温で熱に弱い器材に用い芽胞・ウイルスにも有効。●濾過滅菌=加熱できない血清・薬液から微生物を除去する(ウイルスは孔径によっては通過)。●放射線滅菌(γ線)=照射後に放射能は残らず使用時被曝の心配はない。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:滅菌法の種類・条件・対象

滅菌法条件主な対象・特徴
高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)121℃、15〜20分(湿熱)耐熱・耐湿の器具、水、培地。芽胞にも有効
乾熱滅菌160〜170℃で120分、170〜180℃で60分、180〜190℃で30分など温度と時間を組で設定(250℃・60分でエンドトキシン不活化)ガラス器具・耐熱性器具。培地は不可
酸化エチレンガス(EOG)滅菌50〜60℃、湿度40%(低温)熱に弱いプラスチック・カテーテル。要エアレーション(残留毒性)
過酸化水素低温プラズマ滅菌低温カテーテル・ゴム製品・電子機器。芽胞にも有効
濾過滅菌加熱しない血清・培地など熱に弱い液体。ウイルス等は孔径により除去できない場合がある
放射線(γ線)滅菌常温包装後の製品にも滅菌可能
高圧蒸気滅菌は芽胞形成菌を含め有効だが、プリオンは通常の方法では不活化できない。