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第58回(2012) 臨床検査技師国家試験 午後51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第58回 午後51(病理組織細胞学)
クリオスタットによる凍結標本作製法で誤っているのはどれか。
①水溶性包埋剤を用いる。 ②回転式ミクロトームを用いる。 ③薄切に適した温度は−4℃である。 ④ホルマリン固定した組織は、はがれやすい。 ⑤凍結速度が遅いと組織への損傷は大きくなる。
正答: ③薄切に適した温度は−4℃である。
ポイント クリオスタットは庫内を冷却した装置内でミクロトームを操作し、未固定の組織を急速凍結して薄切する迅速標本作製法で、術中迅速診断や脂肪・酵素・抗原の保存に用いる。薄切に適した温度は組織の硬さで調整するが、一般組織でおおむね−20℃前後を基準とし、脂肪が多い組織ではさらに低温を要する。−4℃では氷晶が大きく組織が軟らかすぎて良好な切片が得られず、誤りである。凍結を急速に行うほど氷晶は微細となり組織損傷が小さくなる。●凍結標本の要点=水溶性包埋剤(OCTコンパウンド等)で組織を支持・回転式ミクロトームを庫内に設置・薄切温度はおよそ−15〜−25℃。●はがれやすさの要因=ホルマリン固定組織は凍結切片が剥離しやすく未固定新鮮材料が適する・凍結速度が遅いと氷晶が大きく組織が破壊される。
選択肢ごとの解説
① 正しい記述。OCTコンパウンドなどの水溶性包埋剤で組織を支持し、凍結ブロックを作製して薄切する。 ② 正しい記述。クリオスタットは庫内に回転式(ロータリー)ミクロトームを組み込み、低温下で薄切する構造である。 ③ 誤り。一般組織の薄切に適するのはおよそ−15〜−25℃で、−4℃では軟らかすぎて良好な切片が得られない。 ④ 正しい記述。ホルマリン固定した組織は凍結切片がスライドガラスから剥離しやすく、新鮮未固定材料が適する。 ⑤ 正しい記述。凍結速度が遅いと大きな氷晶が形成され、細胞内構造が破壊されて組織損傷が大きくなる。
第58回 午後52(病理組織細胞学)
肝組織標本を別に示す。染色法はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB052.ee505d763a.jpg
①azan染色 ②elastica van Gieson染色 ③Masson trichrome染色 ④PTAH染色 ⑤渡辺鍍銀法
正答: ⑤渡辺鍍銀法
ポイント 本問は肝組織の染色標本から染色法を判定する図問題である。正答とされる渡辺鍍銀法は鍍銀(銀含浸)法の一つで、細網線維(Ⅲ型コラーゲンを主体とする好銀線維)を黒色に描出する手法であり、肝では類洞周囲や小葉構築を反映する細網線維網が黒く染め出される。膠原線維の量や走行を評価する目的で用いられ、肝硬変での線維化評価や腫瘍の間質構造の把握に有用である。●結合組織を染める手法の対比=azan染色(膠原線維=青)・elastica van Gieson染色(弾性線維=黒紫・膠原線維=赤)・Masson trichrome染色(膠原線維=青または緑)。●銀を用いる手法=渡辺鍍銀法など鍍銀法は細網線維を黒色に描出。PTAH染色は横紋・グリア線維・フィブリンなどを青紫に染め、結合組織染色とは目的が異なる。
選択肢ごとの解説
① azan染色は膠原線維を青、細胞質・筋線維を赤に染める結合組織染色で、線維を黒色には描出しない。 ② elastica van Gieson染色は弾性線維を黒紫、膠原線維を赤に染め分け、細網線維の選択描出を主目的としない。 ③ Masson trichrome染色は膠原線維を青(または緑)に染める三色染色で、銀による黒色描出ではない。 ④ PTAH(リンタングステン酸ヘマトキシリン)染色は横紋筋・グリア線維・フィブリンを青紫に染める手法である。 ⑤ 正しい。渡辺鍍銀法は細網線維を黒色に描出する鍍銀法で、肝小葉の細網線維網の評価に適する。
第58回 午後53(病理組織細胞学)
脂肪染色はどれか。2つ選べ。
①Grocott染色 ②mucicarmine染色 ③Nile blue染色 ④orcein染色 ⑤SudanⅢ染色
正答: ③Nile blue染色・⑤SudanⅢ染色
ポイント 脂肪染色は中性脂肪などの脂質を可溶性色素で着色する手法で、新鮮組織またはホルマリン固定組織から作製した凍結切片などに行う。通常のパラフィン包埋過程では有機溶媒で脂質が溶出するため、これを避けることが重要である。SudanⅢ染色はズダン系色素が脂質に溶け込み中性脂肪を橙赤色に染める代表的脂肪染色である。Nile blue染色(ナイルブルー)も脂質染色で、中性脂肪を赤、酸性脂質(リン脂質・脂肪酸)を青に染め分けられる。両者がこの選択肢中の脂肪染色である。●脂質を染める手法=SudanⅢ・SudanⅣ・Sudan black B・oil red O・Nile blue。●それ以外の特殊染色の対象=Grocott染色(鍍銀=真菌・ニューモシスチスを黒色)・mucicarmine染色(酸性粘液=赤、クリプトコッカス莢膜にも陽性)・orcein染色(弾性線維・HBs抗原を染色)。
選択肢ごとの解説
① Grocott染色はメセナミン銀を用いる鍍銀法で、真菌やニューモシスチスを黒色に染める手法である。 ② mucicarmine染色は酸性粘液多糖を赤く染め、クリプトコッカスの莢膜染色にも用いられる粘液染色である。 ③ 正しい。Nile blue染色は脂質染色で、中性脂肪を赤、酸性脂質を青に染め分ける。 ④ orcein染色は弾性線維やHBs抗原などを染める手法で、脂肪を染める目的では用いない。 ⑤ 正しい。SudanⅢ染色はズダン色素が中性脂肪に溶け込み橙赤色に染める代表的脂肪染色である。
📋 まとめの表を見る:病理組織の主な特殊染色と対象
第58回 午後54(病理組織細胞学)
神経組織の染色法はどれか。2つ選べ。
①Alcian blue染色 ②azan染色 ③Berlin blue染色 ④Bodian染色 ⑤Holzer染色
正答: ④Bodian染色・⑤Holzer染色
ポイント 神経組織の染色には神経細胞・軸索を描出する鍍銀法と、グリア線維(星状膠細胞の線維)を描出する方法がある。Bodian染色は鍍銀法で神経原線維・軸索・神経細胞を黒色に描出し、末梢・中枢の神経線維の評価に用いる。Holzer染色はグリア線維(星状膠細胞の細胞突起内にある、GFAPなどからなる中間径フィラメント)を青紫に染め、グリオーシス(神経膠症)の評価に適する。両者が神経組織の染色法である。●神経・軸索を染める手法=Bodian染色・Bielschowsky染色などの鍍銀法(同じ鍍銀法でも渡辺鍍銀法は細網線維の描出に用いる)。●グリアを染める手法=Holzer染色(グリア線維)・PTAH染色(グリア線維)。●他系統=Alcian blue染色(酸性粘液=青)・azan染色(膠原線維=青)・Berlin blue染色(ベルリン青反応=三価鉄を青)。
選択肢ごとの解説
① Alcian blue染色は酸性粘液多糖を青く染める粘液染色で、神経組織の特異的描出には用いない。 ② azan染色は膠原線維を青、細胞質を赤に染める結合組織染色である。 ③ Berlin blue染色はベルリン青反応で三価鉄(ヘモジデリン)を青く呈色させる鉄染色である。 ④ 正しい。Bodian染色は鍍銀法で神経原線維・軸索・神経細胞を黒色に描出する。 ⑤ 正しい。Holzer染色はグリア線維を青紫に染め、グリオーシスの評価に用いる。
📋 まとめの表を見る:病理組織の主な特殊染色と対象
第58回 午後55(病理組織細胞学)
疾患と免疫組織化学染色で検討すべき抗原の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
①B細胞リンパ腫 — CD20 ②胃腺癌 — c-kit ③骨肉腫 — PSA ④食道扁平上皮癌 — AFP ⑤乳癌 — HER2
正答: ①B細胞リンパ腫 — CD20・⑤乳癌 — HER2
ポイント 免疫組織化学染色は組織内の特定抗原を抗体で検出し、腫瘍の由来や分子標的の有無を判定する手法である。B細胞リンパ腫ではB細胞系統マーカーであるCD20が陽性となり、リツキシマブの適応判定にも関わる。乳癌ではHER2(ヒト上皮成長因子受容体2型)の過剰発現がトラスツズマブなど分子標的薬の適応と予後判定に用いられ、いずれも組合せとして正しい。●代表的な腫瘍マーカー抗原=B細胞系=CD20・CD79a/T細胞系=CD3・CD5/上皮性=サイトケラチン・EMA/消化管間質腫瘍(GIST)=c-kit(CD117)・DOG1。●臓器特異マーカー=前立腺癌=PSA(前立腺特異抗原)・肝細胞癌や胚細胞腫瘍=AFP(αフェトプロテイン)・甲状腺・肺=TTF-1。
選択肢ごとの解説
① 正しい。B細胞リンパ腫はB細胞系統マーカーCD20が陽性となり、診断と治療選択に用いられる。 ② c-kit(CD117)は消化管間質腫瘍(GIST)などのマーカーで、胃腺癌の検討抗原として適切でない。 ③ PSA(前立腺特異抗原)は前立腺癌のマーカーであり、骨肉腫の抗原ではない。 ④ AFP(αフェトプロテイン)は肝細胞癌や胚細胞腫瘍のマーカーで、食道扁平上皮癌の抗原ではない。 ⑤ 正しい。乳癌ではHER2の過剰発現が分子標的薬の適応判定と予後評価に用いられる。
📋 まとめの表を見る:腫瘍と免疫組織化学的マーカーの対応
サイトケラチン・EMAは上皮性腫瘍全般に、CD45は造血器腫瘍全般に陽性となる。免疫組織化学は形態のみでは由来判別が難しい低分化腫瘍・転移巣の原発巣推定や、分子標的治療の適応判定に用いる。
第58回 午後56(病理組織細胞学)
肺組織診と比較したとき、喀痰細胞診の特徴でないのはどれか。
①安価である。 ②最終診断となる。 ③標本作製時間が短い。 ④患者への侵襲が少ない。 ⑤反復検査が容易である。
正答: ②最終診断となる。
ポイント 喀痰細胞診は喀出された痰中の剥離・自然脱落細胞を観察する細胞診で、組織を採取する肺生検(組織診)と比べ低侵襲・安価・標本作製が短時間で、反復採取も容易という利点がある。一方、細胞の集塊や個々の異型から推定診断はできるが、組織構築や浸潤の有無を評価できないため確定(最終)診断には組織診が必要であり、「最終診断となる」は細胞診の特徴ではなく誤りである。●細胞診の利点=低侵襲・安価・迅速・反復可能・スクリーニングに適する。●細胞診の限界=組織構築や間質浸潤の評価が困難で確定診断は組織診が担う・採取部位の代表性に左右される。●検体の種類=剥離細胞診(喀痰・尿・体腔液)と穿刺吸引細胞診(FNA)。
選択肢ごとの解説
① 正しい記述。喀痰細胞診は特別な採取手技や大型機材を要さず、組織診より安価である。 ② 誤り。細胞診は推定診断に有用だが組織構築や浸潤を評価できず、確定(最終)診断は組織診が担う。 ③ 正しい記述。包埋・薄切を要する組織診に比べ、塗抹・固定・染色で済む細胞診は標本作製時間が短い。 ④ 正しい記述。喀出痰の採取は患者への侵襲がほとんどなく、生検より負担が小さい。 ⑤ 正しい記述。痰は繰り返し採取しやすく、反復検査が容易でスクリーニングに適する。
📋 まとめの表を見る:細胞診と組織診の比較
細胞診は組織構築を評価できないため、悪性の有無や組織型の推定はできても病期(ステージ)の確定はできない。
第58回 午後57(病理組織細胞学)
病理解剖業務で臨床検査技師が実施可能なのはどれか。2つ選べ。
①皮膚縫合 ②死因の特定 ③臓器からの細菌培養 ④病理医不在時の代理解剖 ⑤遺族への病変臓器所見の説明
正答: ①皮膚縫合・③臓器からの細菌培養
ポイント 病理解剖(剖検)は医師(病理医)の主導下で行われ、臨床検査技師は死体解剖保存法に基づく資格や医師の指示のもとで補助的業務を担う。臓器の取り出し・縫合などの介助や、無菌的に採取した臓器からの細菌培養などの検体処理は技師が実施しうる。一方、死因の特定や病理診断、遺族への所見説明は医師が行う医行為であり、病理医不在時の代理解剖も認められない。本問では皮膚縫合(解剖後の縫合介助)と臓器からの細菌培養が技師の実施可能業務である。●技師が担える業務=解剖の介助・縫合・標本作製・検体採取と培養などの検査処理。●医師が担う業務=執刀責任・死因や病理診断の確定・遺族への病状/所見説明。
選択肢ごとの解説
① 正しい。解剖終了後の皮膚縫合は介助・後処理の業務として、医師の指示のもとで臨床検査技師が実施しうる。 ② 死因の特定は所見を統合した医学的判断を要する診断行為であり、医師が行うべき業務である。 ③ 正しい。無菌的に採取した臓器からの細菌培養は微生物検査業務に当たり、臨床検査技師が実施しうる。 ④ 病理医不在時の代理解剖は認められず、病理解剖はあくまで医師の主導・責任のもとで行われる。 ⑤ 遺族への病変臓器所見の説明は診断結果の説明・病状説明であり、医師が担う業務である。
第58回 午後58(病理組織細胞学)
法令で保管庫の施錠が義務付けられているのはどれか。2つ選べ。
①アセトン ②エタノール ③キシレン ④パラフィン ⑤ホルマリン
正答: ③キシレン・⑤ホルマリン
ポイント 病理検査で扱う試薬には、消防法の危険物や、有害性ゆえに保管に施錠等の管理が法令で求められる物質がある。ホルマリン(ホルムアルデヒド水溶液)もキシレンも毒物及び劇物取締法の劇物に指定されており、盗難・紛失を防ぐため施錠できる保管庫での管理が義務付けられる。両者が該当する。なおホルムアルデヒドは特定化学物質障害予防規則、キシレンは有機溶剤中毒予防規則の対象でもあるが、これらは作業環境管理の規定であり本問の施錠義務の根拠ではない。●施錠管理を要する代表物質=ホルムアルデヒド(1%以下を含有する製剤を除く)・キシレンなどの劇物で、「医薬用外劇物」の表示と施錠保管が必要。●一般的な可燃性溶剤=アセトン・エタノールは引火性危険物だが本問の施錠義務の文脈では該当外。●パラフィン=包埋剤の固形ろうで、毒劇物管理の対象ではない。
選択肢ごとの解説
① アセトンは引火性の有機溶剤だが、本問の施錠が義務付けられる管理物質の趣旨では該当しない。 ② エタノールは可燃性の汎用溶剤で、保管庫施錠が法令で義務付けられる物質には当たらない。 ③ 正しい。キシレンは毒物及び劇物取締法の劇物に指定されており、盗難・紛失防止のため施錠できる場所での保管が義務付けられる。 ④ パラフィンは固形の包埋ろうで、施錠管理を要する有害物質には該当しない。 ⑤ 正しい。ホルマリン(ホルムアルデヒド)は毒物及び劇物取締法の劇物に該当し、施錠できる保管庫での管理が義務付けられる。
第58回 午後59(臨床血液学)
貯蔵鉄はどれか。
①トランスフェリン ②ハプトグロビン ③フェリチン ④ヘモグロビン ⑤ミオグロビン
正答: ③フェリチン
ポイント 体内の鉄は機能鉄と貯蔵鉄に大別される。フェリチンはアポフェリチン蛋白の殻の内部に多数の鉄原子を取り込んで貯蔵する可溶性蛋白で、肝・脾・骨髄のマクロファージや実質細胞に多く存在し、血清フェリチン値は体内貯蔵鉄量をよく反映するため鉄欠乏性貧血や鉄過剰(ヘモクロマトーシス等)の指標となる。これが貯蔵鉄の本体である。●貯蔵鉄=フェリチン(可溶性の貯蔵蛋白)とヘモジデリン(フェリチンが変性・凝集した不溶性集合体でPrussian blue反応陽性)。●鉄の輸送=トランスフェリンが血中で三価鉄を結合して運搬する。●機能鉄=ヘモグロビン(赤血球で酸素運搬)・ミオグロビン(筋肉で酸素貯蔵)に含まれる鉄が大部分を占める。●ハプトグロビンは遊離ヘモグロビンと結合する蛋白で、貯蔵鉄ではない。
選択肢ごとの解説
① トランスフェリンは血中で三価鉄を運搬する輸送蛋白であり、貯蔵鉄ではない。 ② ハプトグロビンは血中の遊離ヘモグロビンと結合する蛋白で、溶血の指標となるが貯蔵鉄ではない。 ③ 正しい。フェリチンは鉄を内部に貯蔵する蛋白で、血清値は体内貯蔵鉄量を反映する。 ④ ヘモグロビンは赤血球で酸素を運搬する機能鉄を含む蛋白で、貯蔵鉄には分類されない。 ⑤ ミオグロビンは筋肉中で酸素を貯蔵する機能鉄を含む蛋白であり、貯蔵鉄ではない。
第58回 午後60(臨床血液学)
血栓形成を促進するのはどれか。2つ選べ。
①組織因子 ②プロテインC ③血小板第4因子 ④トロンボキサンA2 ⑤組織プラスミノゲンアクチベータ
正答: ①組織因子・④トロンボキサンA2
ポイント 止血・血栓形成は凝固系の活性化と血小板の活性化が中心で、これに対して抗凝固系や線溶系が血栓形成を抑制する。組織因子(第Ⅲ因子)は外因系凝固の起点で、第Ⅶ因子と複合体を形成して凝固カスケードを開始し、血栓形成を促進する。トロンボキサンA2は活性化血小板から産生され、血小板凝集と血管収縮を促し血栓形成を促進する。両者が促進因子である。●血栓形成を促進=組織因子(凝固開始)・トロンボキサンA2(血小板凝集)・血小板第4因子(ヘパリン中和・抗凝固抑制)など。●血栓形成を抑制=プロテインC(活性化第Ⅴ/Ⅷ因子を分解する抗凝固因子)・組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA、プラスミン産生で線溶促進)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。組織因子(第Ⅲ因子)は外因系凝固の起点となり、凝固カスケードを開始して血栓形成を促進する。 ② プロテインCは活性化第Ⅴ・第Ⅷ因子を分解する抗凝固因子で、血栓形成を抑制する。 ③ 血小板第4因子はヘパリンを中和する作用をもつが、本問では促進因子として選ばれない。 ④ 正しい。トロンボキサンA2は活性化血小板から産生され、血小板凝集と血管収縮で血栓形成を促進する。 ⑤ 組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)はプラスミン産生を介して線溶を促進し、血栓を溶解する。
第58回 午後61(臨床血液学)
赤血球沈降速度が遅延するのはどれか。2つ選べ。
①結核 ②真性多血症 ③多発性骨髄腫 ④亜急性甲状腺炎 ⑤無フィブリノゲン血症
正答: ②真性多血症・⑤無フィブリノゲン血症
ポイント 赤血球沈降速度(赤沈)は抗凝固血を静置した際の赤血球の沈降速度で、血漿蛋白(特にフィブリノゲンやγグロブリン)が増えて赤血球の連銭形成が進むと亢進し、赤血球数が増加したりフィブリノゲンが減少すると遅延する。真性多血症では赤血球数が著増し、粘度上昇と連銭形成抑制により赤沈が遅延する。無フィブリノゲン血症ではフィブリノゲンが欠如して連銭形成が起こらず赤沈が遅延する。両者が遅延する。●赤沈が遅延=赤血球増多(真性多血症)・フィブリノゲン低下(無/低フィブリノゲン血症・DICの一部)・著明な赤血球形態異常。●赤沈が亢進=炎症/感染(結核)・多発性骨髄腫(M蛋白増加)・亜急性甲状腺炎・貧血・妊娠など。
選択肢ごとの解説
① 結核は慢性炎症でフィブリノゲン・γグロブリンが増加し、赤沈は亢進する。 ② 正しい。真性多血症は赤血球数が著増し、連銭形成が抑制されて赤沈が遅延する。 ③ 多発性骨髄腫はM蛋白の増加で連銭形成が進み、赤沈は著明に亢進する。 ④ 亜急性甲状腺炎は炎症によりフィブリノゲンが増加し、赤沈は亢進する。 ⑤ 正しい。無フィブリノゲン血症はフィブリノゲン欠如で連銭形成が起こらず、赤沈が遅延する。
第58回 午後62(臨床血液学)
線溶マーカーはどれか。
①可溶性フィブリン ②トロンボモジュリン ③β-トロンボグロブリン ④フィブリン分解産物(FDP) ⑤トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)
正答: ④フィブリン分解産物(FDP)
ポイント 線溶(線維素溶解)はプラスミンが安定化フィブリンや フィブリノゲンを分解する過程で、その産物が線溶マーカーとなる。フィブリン分解産物(FDP)はフィブリノゲンおよびフィブリンがプラスミンで分解されて生じる断片の総称で、線溶活性化を反映する代表的マーカーである。播種性血管内凝固症候群(DIC)などで上昇する。●線溶系マーカー=FDP・Dダイマー(安定化フィブリン由来でクロスリンク部を含む)・プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)。●凝固活性化マーカー=可溶性フィブリン(SF)・トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)。●血小板活性化マーカー=β-トロンボグロブリン・血小板第4因子。●トロンボモジュリンは血管内皮の抗凝固系に関わる。
選択肢ごとの解説
① 可溶性フィブリンはトロンビンによるフィブリン生成を反映する凝固活性化マーカーである。 ② トロンボモジュリンは血管内皮上でプロテインCを活性化する抗凝固系の分子で、線溶マーカーではない。 ③ β-トロンボグロブリンは活性化血小板から放出される血小板活性化マーカーである。 ④ 正しい。FDPはフィブリノゲン・フィブリンがプラスミンで分解されて生じる線溶活性化のマーカーである。 ⑤ トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)はトロンビン生成を反映する凝固活性化マーカーである。
第58回 午後63(臨床血液学)
末梢血液像を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB063.8b00bb3d4d.jpg
①寒冷凝集素症 ②遺伝性楕円赤血球症 ③自己免疫性溶血性貧血 ④発作性夜間血色素尿症(PNH) ⑤血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
正答: ⑤血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
ポイント 本問は末梢血液像から疾患を推定する図問題で、正答とされる血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)では破砕赤血球(分裂赤血球・シストサイト)と血小板減少が特徴的所見となる。TTPはADAMTS13(von Willebrand因子切断酵素)の活性低下により超巨大vWF多量体が残存し、細小血管に血小板血栓が多発する血栓性微小血管症で、機械的に赤血球が破壊されて破砕赤血球が出現する。微小血管症性溶血性貧血・血小板減少・動揺する神経症状・腎障害・発熱が古典的5徴とされる。●破砕赤血球を伴う病態=TTP・溶血性尿毒症症候群(HUS)・DICなど血栓性微小血管症。●他疾患の特徴=寒冷凝集素症や自己免疫性溶血性貧血(赤血球凝集や球状赤血球)・遺伝性楕円赤血球症(楕円赤血球)・PNH(補体感受性亢進による血管内溶血)。
選択肢ごとの解説
① 寒冷凝集素症は低温で赤血球が凝集し、塗抹で赤血球凝集像を示すが破砕赤血球は特徴でない。 ② 遺伝性楕円赤血球症は楕円形赤血球が多数みられる先天性溶血性貧血である。 ③ 自己免疫性溶血性貧血は球状赤血球や赤血球凝集を伴い、直接Coombs試験陽性が特徴である。 ④ 発作性夜間血色素尿症(PNH)はGPIアンカー欠損で補体感受性が亢進し血管内溶血を起こす。 ⑤ 正しい。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は破砕赤血球と血小板減少を特徴とする血栓性微小血管症である。
第58回 午後64(臨床血液学)
疾患と白血球分画パターンの組合せで正しいのはどれか。
①アレルギー性疾患 — 好塩基球減少 ②寄生虫感染症 — 好酸球減少 ③Cushing症候群 — 好酸球増加 ④急性心筋梗塞 — 好中球増加 ⑤真性多血症 — 好中球減少
正答: ④急性心筋梗塞 — 好中球増加
ポイント 白血球分画は疾患により特徴的な増減を示し、原因の推定に役立つ。急性心筋梗塞では心筋の組織壊死に伴う炎症反応とカテコラミン等によるストレス反応により好中球が増加するため、組合せとして正しい。好中球は細菌感染・急性炎症・組織壊死・ストレス・ステロイド投与で増加する。●ストレス/ステロイド反応=Cushing症候群や副腎皮質ステロイド過剰では好中球増加とともに好酸球減少・リンパ球減少を示す。●好酸球増加=寄生虫感染・アレルギー疾患・薬剤アレルギー・好酸球増多症候群など。●好塩基球の動向=アレルギー疾患や慢性骨髄性白血病で増加し、Cushing症候群では減少する。●真性多血症=骨髄増殖性腫瘍で赤血球とともに好中球・血小板も増加する汎血球増多を呈する。
選択肢ごとの解説
① アレルギー性疾患では好塩基球はむしろ増加傾向を示し、好塩基球減少の組合せは適切でない。 ② 寄生虫感染症では好酸球が増加するため、好酸球減少の組合せは誤りである。 ③ Cushing症候群はコルチゾール過剰で好酸球は減少し、好酸球増加の組合せは誤りである。 ④ 正しい。急性心筋梗塞では組織壊死とストレス反応により好中球が増加する。 ⑤ 真性多血症は骨髄増殖性疾患で好中球はむしろ増加し、好中球減少の組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:疾患・病態と白血球分画の変化パターン
第58回 午後65(臨床血液学)
60歳の男性。発熱が持続したため来院した。血液所見:白血球22,000/μl、赤血球420万/μl、血小板14万/μl。末梢血のWright-Giemsa染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB065.d84529c094.jpg
①伝染性単核症 ②成人T細胞白血病 ③慢性リンパ性白血病 ④ヘアリー細胞性白血病 ⑤原発性マクログロブリン血症
正答: ②成人T細胞白血病
ポイント 本問は発熱が持続する60歳男性の末梢血Wright-Giemsa染色像から疾患を推定する図問題で、正答とされる成人T細胞白血病(ATL)ではflower cell(花弁状・分葉状の核をもつ異常リンパ球)が特徴的に出現する。ATLはヒトTリンパ好性ウイルス1型(HTLV-1)感染を背景とするCD4陽性T細胞の腫瘍で、九州・沖縄などの流行地域に多く、高カルシウム血症・皮膚病変・リンパ節腫大・易感染性を伴う。●ATLの所見=flower cell・抗HTLV-1抗体陽性・CD4陽性・高Ca血症。●鑑別=伝染性単核症(異型リンパ球とEBウイルス)・慢性リンパ性白血病(成熟小型Bリンパ球の増加とsmudge cell)・ヘアリー細胞白血病(毛様突起をもつB細胞)・原発性マクログロブリン血症(IgM単クローン性増加とリンパ形質細胞)。
選択肢ごとの解説
① 伝染性単核症はEBウイルス感染による異型リンパ球の増加が特徴で、flower cellはみられない。 ② 正しい。成人T細胞白血病はflower cell(花弁状核の異常リンパ球)が出現しHTLV-1感染を背景とする。 ③ 慢性リンパ性白血病は成熟小型Bリンパ球の増加とsmudge cellが特徴である。 ④ ヘアリー細胞白血病は毛様の細胞質突起をもつB細胞が出現する疾患である。 ⑤ 原発性マクログロブリン血症はIgMの単クローン性増加とリンパ形質細胞の増加を特徴とする。
📋 まとめの表を見る:ウイルス感染に関連する血液・リンパ系疾患
第58回 午後66(臨床血液学)
染色体の核型分析を実施するのに適した細胞周期はどれか。
正答: ③分裂中期
ポイント 染色体の核型分析(G分染など)は、染色体が最も凝縮して一本ずつ独立に観察できる時期に行う。分裂中期(中期)では各染色体が紡錘体の赤道面に整列し、それぞれが最大に凝縮して大きさ・動原体位置・縞模様などの形態が明瞭となるため、核型分析に最も適する。実際にはコルヒチン(コルセミド)処理で紡錘体形成を阻害して細胞を中期に停止させ、低張処理で細胞を膨化させて染色体を広げ、固定・分染して観察する。●細胞周期と染色体の状態=間期(DNA複製が進み染色体は糸状で個別観察不可)→分裂前期(凝縮開始)→分裂中期(最大凝縮・赤道面整列=観察最適)→分裂後期(姉妹染色分体が両極へ分配)→分裂終期(核膜再形成・脱凝縮)。●核型分析の手順=細胞培養→コルヒチンで中期停止→低張処理→固定→分染・観察。
選択肢ごとの解説
① 間期はDNAが複製される時期で染色体は糸状に分散しており、個々の染色体を分離して観察できない。 ② 分裂前期は染色体の凝縮が始まる段階で、まだ赤道面への整列や最大凝縮には至っていない。 ③ 正しい。分裂中期は染色体が最大に凝縮し赤道面に整列するため、形態が明瞭で核型分析に最も適する。 ④ 分裂後期は姉妹染色分体が両極へ移動する時期で、染色体が分散して核型観察には適さない。 ⑤ 分裂終期は核膜が再形成され染色体が脱凝縮していく時期で、観察には適さない。
第58回 午後67(臨床血液学)
55歳の男性。健康診断の血液検査で異常を指摘されたため来院した。血液所見:白血球32,000/μl、赤血球420万/μl、血小板62万/μl。骨髄血のWright-Giemsa染色標本を別に示す。骨髄細胞の染色体検査で予想される所見はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB067.001daee325.jpg
①t(8;14) ②t(8;21) ③t(9;22) ④t(14;18) ⑤t(15;17)
正答: ③t(9;22)
ポイント 本問は白血球と血小板の増加を伴う55歳男性の骨髄像から、染色体異常を推定する図問題である。白血球32,000/μlの増加・血小板62万/μlの増加と骨髄の所見から慢性骨髄性白血病(CML)が想定され、その染色体異常はt(9;22)(q34;q11)であるフィラデルフィア染色体で、BCR-ABL1融合遺伝子を生じて恒常的チロシンキナーゼ活性をもたらす。チロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ等)が分子標的治療となる。●白血病と特徴的染色体転座=慢性骨髄性白血病=t(9;22)BCR-ABL1・急性前骨髄球性白血病(M3)=t(15;17)PML-RARA・急性骨髄性白血病(M2)=t(8;21)RUNX1-RUNX1T1。●リンパ系腫瘍=Burkittリンパ腫=t(8;14)MYC・濾胞性リンパ腫=t(14;18)BCL2。
選択肢ごとの解説
① t(8;14)はMYCが関与しBurkittリンパ腫でみられる転座で、本病態の所見とは異なる。 ② t(8;21)はRUNX1-RUNX1T1を生じ急性骨髄性白血病(M2)でみられる転座である。 ③ 正しい。t(9;22)はフィラデルフィア染色体でBCR-ABL1融合遺伝子を生じ、慢性骨髄性白血病に特徴的である。 ④ t(14;18)はBCL2が関与し濾胞性リンパ腫でみられる転座である。 ⑤ t(15;17)はPML-RARAを生じ急性前骨髄球性白血病(M3)に特徴的な転座である。
第58回 午後68(臨床微生物学)
グラム陽性桿菌はどれか。2つ選べ。
①Bordetella pertussis ②Helicobacter pylori ③Legionella pneumophila ④Listeria monocytogenes ⑤Nocardia asteroides
正答: ④Listeria monocytogenes・⑤Nocardia asteroides
ポイント 細菌はグラム染色性(陽性=紫・陰性=赤)と形態(球菌・桿菌)で大別され、菌種同定の基本となる。Listeria monocytogenesはグラム陽性桿菌で、低温でも増殖し妊婦・新生児・高齢者・免疫低下者に髄膜炎や敗血症を起こす食品由来感染症の原因菌である。Nocardia asteroidesもグラム陽性の分枝状桿菌で、部分的抗酸性を示し、免疫低下者に肺・脳のノカルジア症を起こす。両者がグラム陽性桿菌である。●グラム陽性桿菌=Listeria・Nocardia・Bacillus・Clostridium・Corynebacterium・Lactobacillus。●本問の他菌(グラム陰性)=Bordetella pertussis(百日咳)・Helicobacter pylori(らせん状)・Legionella pneumophila(レジオネラ肺炎)はいずれもグラム陰性桿菌。
選択肢ごとの解説
① Bordetella pertussisは百日咳の原因となるグラム陰性桿菌である。 ② Helicobacter pyloriは胃に定着するらせん状のグラム陰性桿菌である。 ③ Legionella pneumophilaはレジオネラ肺炎を起こすグラム陰性桿菌である。 ④ 正しい。Listeria monocytogenesはグラム陽性桿菌で、髄膜炎や敗血症を起こす。 ⑤ 正しい。Nocardia asteroidesは分枝状のグラム陽性桿菌で、部分的抗酸性を示す。
第58回 午後69(臨床微生物学)
芽胞を形成するのはどれか。2つ選べ。
①Actinomyces israelii ②Bacillus cereus ③Clostridium difficile ④Mycobacterium tuberculosis ⑤Nocardia asteroides
正答: ②Bacillus cereus・③Clostridium difficile
ポイント 芽胞(内生胞子)は栄養環境の悪化に応じて一部の細菌が形成する耐久型構造で、熱・乾燥・消毒薬に強い抵抗性を示し、通常の消毒では死滅しないため滅菌が必要となる。芽胞を形成する代表は好気性のBacillus属と嫌気性のClostridium属である。Bacillus cereusは食中毒を起こす芽胞形成菌であり、Clostridium difficileは抗菌薬関連腸炎(偽膜性大腸炎)の原因となる芽胞形成菌である。両者が該当する。●芽胞形成菌=Bacillus(炭疽菌・セレウス菌)・Clostridium(破傷風菌・ボツリヌス菌・ウェルシュ菌・ディフィシル菌)。●非芽胞形成菌=Actinomyces israelii(放線菌症)・Mycobacterium tuberculosis(結核菌・抗酸菌)・Nocardia asteroidesはいずれも芽胞を作らない。
選択肢ごとの解説
① Actinomyces israeliiは放線菌症を起こす嫌気性グラム陽性桿菌で、芽胞を形成しない。 ② 正しい。Bacillus cereusは好気性の芽胞形成菌で、食中毒の原因となる。 ③ 正しい。Clostridium difficileは嫌気性の芽胞形成菌で、抗菌薬関連の偽膜性大腸炎を起こす。 ④ Mycobacterium tuberculosisは抗酸菌で、芽胞は形成しない。 ⑤ Nocardia asteroidesは分枝状グラム陽性桿菌で、芽胞を形成しない。
第58回 午後70(臨床微生物学)
粘膜の消毒に適しているのはどれか。
①フェノール ②ポビドンヨード ③消毒用エタノール ④グルタールアルデヒド ⑤次亜塩素酸ナトリウム
正答: ②ポビドンヨード
ポイント 消毒薬は適用部位と微生物への効力で使い分ける。粘膜は刺激や毒性に弱いため、刺激の少ない消毒薬を用いる必要がある。ポビドンヨードはヨウ素を担体に結合させた消毒薬で、創傷・皮膚に加え口腔・咽頭などの粘膜にも適用でき、細菌・真菌・ウイルスに幅広く有効な中水準消毒薬である。本問では粘膜に適している。●粘膜の消毒=その部位への適応があるポビドンヨードやベンザルコニウム塩化物などを、製品で定められた濃度・方法で用いる。クロルヘキシジンを単に「低濃度なら粘膜に使用可能」と覚えない。国内の一般的なクロルヘキシジン消毒薬では口腔・腟・膀胱等の粘膜面が禁忌であり、個々の製剤の承認された適用部位を確認する。●粘膜に不適=消毒用エタノール(刺激が強い)・フェノール(組織傷害性)・グルタールアルデヒド(器具用の高水準消毒薬で生体粘膜には適さない)・次亜塩素酸ナトリウム(粘膜刺激が強い)。
選択肢ごとの解説
① フェノールは組織傷害性・刺激性があり、皮膚や粘膜の消毒には適さない中水準消毒薬である。 ② 正しい。ポビドンヨードは刺激が少なく口腔・咽頭などの粘膜にも適用でき、細菌・真菌・ウイルスに有効である。 ③ 消毒用エタノールは粘膜への刺激が強く脱水・傷害を生じるため、粘膜消毒には適さない。 ④ グルタールアルデヒドは内視鏡など器具用の高水準消毒薬で、刺激性が強く生体粘膜には適用できない。 ⑤ 次亜塩素酸ナトリウムは粘膜への刺激・傷害性が強く、粘膜の消毒には適さない。
第58回 午後71(臨床微生物学)
髄液の墨汁染色標本を別に示す。この病原体に有効なのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB071.f015105225.jpg
①アシクロビル ②アンピシリン ③ゲンタマイシン ④アムホテリシンB ⑤ストレプトマイシン
正答: ④アムホテリシンB
ポイント 本問は髄液の墨汁染色標本を示す図問題で、墨汁染色は黒い背景の中に厚い莢膜が抜けて見える所見からCryptococcus neoformans(クリプトコッカス)を検出する手法である。クリプトコッカスは厚い莢膜をもつ酵母様真菌で、特にAIDSなど免疫低下者に髄膜炎を起こす。真菌であるため抗真菌薬が有効で、アムホテリシンBが第一選択となり、しばしばフルシトシンと併用される。●クリプトコッカス髄膜炎=墨汁染色で莢膜陰性像・ムチカルミン陽性莢膜・治療はアムホテリシンB+フルシトシン。●他薬剤の対象=アシクロビル(ヘルペスウイルス)・アンピシリン/ゲンタマイシン/ストレプトマイシン(細菌)で、いずれも真菌には無効。
選択肢ごとの解説
① アシクロビルはヘルペスウイルスのDNA合成を阻害する抗ウイルス薬で、真菌であるクリプトコッカスには無効である。 ② アンピシリンは細胞壁合成を阻害するβラクタム系抗菌薬で、真菌のクリプトコッカスには無効である。 ③ ゲンタマイシンは蛋白合成を阻害するアミノグリコシド系抗菌薬で、真菌には無効である。 ④ 正しい。アムホテリシンBは真菌細胞膜のエルゴステロールに作用する抗真菌薬で、クリプトコッカス髄膜炎の第一選択となる。 ⑤ ストレプトマイシンはアミノグリコシド系抗菌薬(抗結核薬)で、真菌には無効である。
第58回 午後72(臨床微生物学)
新生児髄膜炎患者の髄液からグラム陽性レンサ球菌が分離された。起因菌として考えられるのはどれか。
①Enterococcus faecalis ②Peptococcus niger ③Peptostreptococcus anaerobius ④Staphylococcus epidermidis ⑤Streptococcus agalactiae
正答: ⑤Streptococcus agalactiae
ポイント 新生児髄膜炎の主要起因菌は母体産道からの感染で伝播するB群レンサ球菌(GBS)とされ、グラム陽性レンサ球菌が分離された場合に第一に考えられる。Streptococcus agalactiaeはB群レンサ球菌で、CAMP試験陽性・馬尿酸加水分解陽性・β溶血を示し、新生児の早発型・遅発型の髄膜炎や敗血症の原因となる。●新生児髄膜炎の起因菌=B群レンサ球菌(S. agalactiae)・大腸菌・Listeria monocytogenes。●他のグラム陽性球菌=Enterococcus faecalis(腸球菌・尿路感染等)・Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌・カテーテル感染)・Peptococcus/Peptostreptococcus(嫌気性球菌)はいずれも新生児髄膜炎の典型起因菌ではない。
選択肢ごとの解説
① Enterococcus faecalisは腸球菌で尿路感染や心内膜炎を起こすが、新生児髄膜炎の典型起因菌ではない。 ② Peptococcus nigerは嫌気性グラム陽性球菌で、新生児髄膜炎の主要起因菌ではない。 ③ Peptostreptococcus anaerobiusは嫌気性球菌で、新生児髄膜炎の典型起因菌ではない。 ④ Staphylococcus epidermidisは表皮ブドウ球菌でカテーテル関連感染を起こすが、レンサ球菌ではない。 ⑤ 正しい。Streptococcus agalactiae(B群レンサ球菌)は母体産道由来で新生児髄膜炎の主要起因菌である。
第58回 午後73(臨床微生物学)
健常人における市中肺炎の起因菌となり得るのはどれか。2つ選べ。
①Burkholderia cepacia ②Haemophilus influenzae ③Mycoplasma pneumoniae ④Pneumocystis jirovecii ⑤Stenotrophomonas maltophilia
正答: ②Haemophilus influenzae・③Mycoplasma pneumoniae
ポイント 市中肺炎は地域社会で日常生活を送る人に発症する肺炎で、健常者でも起因菌となりうる病原体が原因となる。Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)はグラム陰性桿菌で、肺炎球菌と並ぶ市中肺炎の代表的起因菌である。Mycoplasma pneumoniae(肺炎マイコプラズマ)は細胞壁をもたない非定型病原体で、若年者に多い異型肺炎を起こす市中肺炎の主要原因である。両者が健常人の市中肺炎起因菌となりうる。●市中肺炎の起因菌=肺炎球菌・インフルエンザ菌・マイコプラズマ・クラミジア・モラクセラ。●日和見・院内型病原体=Burkholderia cepacia・Stenotrophomonas maltophiliaは免疫低下者や院内環境での感染が主・Pneumocystis jiroveciiは細胞性免疫低下(AIDS等)で肺炎を起こす日和見真菌。
選択肢ごとの解説
① Burkholderia cepaciaは嚢胞性線維症や免疫低下者で問題となる日和見病原体で、健常人市中肺炎の典型起因菌ではない。 ② 正しい。Haemophilus influenzaeは市中肺炎の代表的起因菌で、健常人でも肺炎を起こしうる。 ③ 正しい。Mycoplasma pneumoniaeは若年者に多い異型肺炎を起こす市中肺炎の主要起因菌である。 ④ Pneumocystis jiroveciiは細胞性免疫低下者に肺炎を起こす日和見真菌で、健常人の市中肺炎起因菌ではない。 ⑤ Stenotrophomonas maltophiliaは院内・免疫低下者でみられる日和見病原体である。
第58回 午後74(臨床微生物学)
緑膿菌が産生するのはどれか。
①ピリミン ②ピオシアニン ③プロトヘミン ④プロジギオシン ⑤カロチノイド色素
正答: ②ピオシアニン
ポイント 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)はブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌で、色素産生が特徴の一つである。ピオシアニン(青緑色色素)を産生し、これがピオベルジン(蛍光性の黄緑色色素)と相まって培地や膿に青緑色を呈する。ピオシアニンは緑膿菌に特異性が高く、同定の手がかりとなる。緑膿菌は日和見感染・院内感染の代表で、多剤耐性を示しやすい。●緑膿菌の特徴=ピオシアニン(青緑)・ピオベルジン(蛍光緑)産生・オキシダーゼ陽性・ブドウ糖非発酵・特有の芳香。●他の色素の産生菌=プロジギオシン(赤色色素)はSerratia marcescens・カロチノイド系色素はブドウ球菌等が産生し、緑膿菌の色素ではない。
選択肢ごとの解説
① ピリミンは緑膿菌の代表的産生色素ではなく、本問の特徴的色素に該当しない。 ② 正しい。ピオシアニンは緑膿菌が産生する青緑色色素で、同定の手がかりとなる。 ③ プロトヘミンはヘムの構成成分であり、緑膿菌に特異的な産生色素ではない。 ④ プロジギオシンは赤色色素で、Serratia marcescensが産生する色素である。 ⑤ カロチノイド色素はブドウ球菌などが産生する色素で、緑膿菌の特徴ではない。
📋 まとめの表を見る:細菌が産生する色素と代表菌
Pseudomonas aeruginosaはアシルアミダーゼ試験も陽性を示す。
第58回 午後75(臨床微生物学)
気管支肺胞洗浄液のGiemsa染色標本を別に示す。矢印で示す菌はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB075.c7f876737a.jpg
①Candida albicans ②Candida glabrata ③Cryptococcus neoformans ④Pneumocystis jirovecii ⑤Trichosporon asahi
正答: ④Pneumocystis jirovecii
ポイント 本問は気管支肺胞洗浄液(BALF)のGiemsa染色標本で矢印の菌を判定する図問題である。免疫低下者(AIDS等)のBALFでGiemsa染色により嚢子(シスト)や栄養体(トロフォゾイト)が集塊状にみられる像はPneumocystis jirovecii(ニューモシスチス・イロベチイ)を示す。ニューモシスチス肺炎(PCP)は細胞性免疫低下を背景に起こる日和見感染で、ST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)が治療・予防の第一選択となる。●ニューモシスチスの染色=Grocott染色(嚢子壁を黒色)・トルイジン青O・Giemsa(栄養体と嚢子内小体)。●鑑別する真菌=Candida albicans/glabrata(出芽酵母・仮性菌糸)・Cryptococcus neoformans(厚い莢膜)・Trichosporon asahii(関節分生子をもつ)で、いずれも形態と染色性が異なる。
選択肢ごとの解説
① Candida albicansは出芽酵母と仮性菌糸を形成し、ニューモシスチスの嚢子像とは異なる。 ② Candida glabrataは小型の出芽酵母で、仮性菌糸を作りにくく形態が異なる。 ③ Cryptococcus neoformansは厚い莢膜をもつ酵母様真菌で、墨汁染色で莢膜が抜けて見える。 ④ 正しい。Pneumocystis jiroveciiはBALFのGiemsa染色で嚢子・栄養体がみられ、ニューモシスチス肺炎を起こす。 ⑤ Trichosporon asahiiは関節分生子をもつ真菌で、夏型過敏性肺炎や深在性感染の原因となる。
第58回 午後76(臨床微生物学)
ウイルスと侵入門戸の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
①EBウイルス — 眼瞼結膜 ②ポリオウイルス — 呼吸器粘膜 ③デング熱ウイルス — 皮膚 ④B型肝炎ウイルス — 血液 ⑤ヒトパピローマウイルス — 消化器粘膜
正答: ③デング熱ウイルス — 皮膚・④B型肝炎ウイルス — 血液
ポイント ウイルスは感染を成立させる際、それぞれ固有の侵入門戸(感染経路)を介して宿主に侵入する。デング熱ウイルスはネッタイシマカ・ヒトスジシマカなどの吸血により皮膚(経皮)から侵入する蚊媒介性のフラビウイルスであり、B型肝炎ウイルスは血液・体液を介して侵入する血液媒介性のヘパドナウイルスで、輸血・針刺し・性的接触・母子感染が経路となる。侵入門戸とウイルスの組合せは感染対策の基盤となる。●呼吸器粘膜から侵入する代表=インフルエンザウイルス・麻疹ウイルス。●経口的に侵入する代表=ポリオウイルス(主として糞口感染)。●接触・粘膜から侵入=ヒトパピローマウイルス(性的接触で性器・子宮頸部の扁平上皮)・EBウイルス(唾液を介した口腔咽頭粘膜)など。●節足動物(ベクター)媒介で経皮侵入=デング熱ウイルス・日本脳炎ウイルス・黄熱ウイルスなど。
選択肢ごとの解説
① EBウイルスの侵入門戸は眼瞼結膜ではなく唾液を介した口腔・咽頭粘膜であり、唾液交換(kissing disease)で伝播し伝染性単核球症を起こす。 ② ポリオウイルスはエンテロウイルスで侵入門戸は呼吸器粘膜ではなく経口・腸管粘膜であり、糞口感染して脊髄前角を侵し急性灰白髄炎を起こす。 ③ 正しい。デング熱ウイルスはネッタイシマカ等の吸血により皮膚(経皮)から侵入する蚊媒介性フラビウイルスで、発熱・関節痛・出血傾向を呈する。 ④ 正しい。B型肝炎ウイルスは血液・体液を侵入門戸とする血液媒介性ウイルスで、輸血・針刺し・性的接触・母子感染により伝播し肝炎を起こす。 ⑤ ヒトパピローマウイルスの侵入門戸は消化器粘膜ではなく性的接触による性器・子宮頸部などの扁平上皮であり、高リスク型は子宮頸癌の原因となる。
📋 まとめの表を見る:感染経路と主な病原体
ウイルスの「侵入門戸」も基本的にこの感染経路の分類に対応する(例:デングウイルスは蚊媒介で皮膚から、B型肝炎ウイルスは血液から侵入)。
第58回 午後77(臨床微生物学)
121 ℃、20分のオートクレーブ処理後も感染力を有するのはどれか。
正答: ①プリオン
ポイント プリオンは核酸を持たず、正常プリオン蛋白(PrPc)が異常型(PrPSc)へ構造変化した感染性蛋白粒子で、Creutzfeldt-Jakob病などの伝達性海綿状脳症の病原体である。蛋白質のみからなり加熱・乾燥・通常の消毒に極めて強い抵抗性を示すため、121℃・20分という通常のオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)の条件では不活化されず感染力を保持する。不活化には134℃・18分以上の高温高圧滅菌や水酸化ナトリウム・次亜塩素酸ナトリウムへの浸漬が必要とされる。●核酸を持つ一般病原体(ウイルス・細菌・真菌・原虫)=栄養型は熱・消毒に比較的弱く、121℃・20分のオートクレーブで死滅する。●芽胞形成菌(Bacillus・Clostridiumなど)=栄養型より耐性が高いが、通常のオートクレーブ条件で死滅する。●通常の滅菌に抵抗するもの=プリオン(蛋白質のみ)が代表で、別格の処理を要する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。プリオンは核酸を持たない感染性蛋白で熱抵抗性が極めて高く、121℃・20分のオートクレーブでは不活化されず感染力を保持する。 ② ウイルスは核酸と蛋白からなり、エンベロープの有無で耐性差はあるが121℃・20分の高圧蒸気滅菌で容易に不活化され感染力を失う。 ③ 細菌は栄養型はもちろん耐性の高い芽胞であっても121℃・20分の高圧蒸気滅菌で死滅し、感染力を失う。 ④ 真菌は菌糸・胞子とも熱抵抗性は低く、121℃・20分の高圧蒸気滅菌で死滅して感染力を失う。 ⑤ 原虫は栄養型・シストとも熱抵抗性は低く、121℃・20分の高圧蒸気滅菌で死滅し感染力を失う。
第58回 午後78(臨床微生物学)
喀痰のGram染色標本の鏡検所見で、培養検査の検体として適していると考えられるのはどれか。
①赤血球が多い。 ②多核白血球が多い。 ③円柱上皮細胞が多い。 ④扁平上皮細胞が多い。 ⑤マクロファージが多い。
正答: ②多核白血球が多い。
ポイント 喀痰のGram染色で培養検体としての適否を判定する指標がGeckler分類であり、白血球(多核白血球=好中球)が多く扁平上皮細胞が少ない検体が下気道由来の良質な喀痰とされる。多核白血球が多いことは下気道の感染・炎症の存在を反映し、上気道(口腔)由来の汚染が少ないことを示すため、培養検査に適すると判定される。逆に扁平上皮細胞が多い検体は唾液混入が多く、口腔内常在菌で汚染されているため培養に不適である。●下気道由来を示唆する所見(良質)=多核白血球(好中球)が多い・扁平上皮細胞が少ない(Geckler 4・5群)。●上気道(唾液)汚染を示唆する所見(不適)=扁平上皮細胞が多い・白血球が少ない(Geckler 1・2群)。●判定に直接用いない所見=赤血球・円柱上皮細胞・マクロファージの多寡は喀痰の質判定の主指標とはしない。
選択肢ごとの解説
① 赤血球が多いことは出血の混入を示すが、喀痰が下気道由来で培養に適するか否かの直接の指標とはならない。 ② 正しい。多核白血球(好中球)が多いことは下気道の炎症・感染を反映し、口腔汚染が少ない良質な喀痰を示し培養検体に適する。 ③ 円柱上皮細胞は気道上皮由来だが、喀痰の質をGeckler分類で評価する際の適否判定の主指標とはしない。 ④ 扁平上皮細胞が多い検体は唾液(口腔)混入が多く常在菌で汚染されており、培養検査の検体として不適である。 ⑤ マクロファージが多いことは下気道由来を示唆する一面はあるが、培養検体の適否判定はあくまで白血球と扁平上皮細胞の比で行う。
第58回 午後79(臨床免疫学)
免疫反応について正しいのはどれか。
①一次反応と異なる抗原を投与した場合でも二次反応は起こる。 ②IgG抗体は一次反応よりも二次反応の方が高値である。 ③IgM抗体は抗原刺激を受けた数時間後に出現する。 ④一次反応の理論は予防接種に用いられている。 ⑤IgM抗体は二次反応では出現しない。
正答: ②IgG抗体は一次反応よりも二次反応の方が高値である。
ポイント 抗原刺激に対する抗体産生応答は一次反応と二次反応に分けられる。同一抗原の再刺激で起こる二次反応では、メモリーB細胞により応答が速やかで強く、産生される抗体は主にIgGで、その量は一次反応より著しく高値となる(ブースター効果)。一方、一次反応では数日の潜伏期の後にまずIgMが出現し、遅れてIgGが少量産生される。免疫記憶を利用したこの二次反応こそ予防接種(ワクチン)の原理である。●一次反応の特徴=潜伏期が長く、まずIgMが先行して出現し、IgGは遅く少量、応答は弱い。●二次反応(ブースター)の特徴=メモリー細胞により速く強く、IgGが主体で高親和性・高値、IgMは少ない。●応答は抗原特異的=二次反応は最初に感作した抗原と同一の抗原でのみ増強され、異なる抗原では起こらない。
選択肢ごとの解説
① 二次反応は最初に感作した抗原と同一の抗原を再投与したときのみ増強されるため、異なる抗原を投与しても二次反応は起こらない。 ② 正しい。IgG抗体はメモリーB細胞による応答で二次反応の方が一次反応より速やかかつ高値となり、これがブースター効果である。 ③ IgM抗体は一次反応で抗原刺激後数時間ではなく数日の潜伏期を経て出現し、抗体応答の初期に先行して産生される。 ④ 予防接種は一次反応そのものではなく免疫記憶を利用した二次反応(再刺激での増強応答)の理論を用いている。 ⑤ IgM抗体は二次反応でも少量ながら出現するため、二次反応では全く出現しないという記述は誤りである。
第58回 午後80(臨床免疫学)
ヒト同種抗原はどれか。
①DNA抗原 ②HLA抗原 ③RNP抗原 ④水晶体蛋白抗原 ⑤ミトコンドリア抗原
正答: ②HLA抗原
ポイント 抗原は宿主との関係で自己抗原・同種抗原(同種異系抗原)・異種抗原などに分類される。同種抗原とは同一種の個体間で遺伝的に異なる抗原をいい、ヒトではHLA(ヒト白血球抗原)抗原や血液型抗原が代表で、輸血・臓器移植における拒絶反応や移植片対宿主反応の標的となる。HLAは第6染色体短腕の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)にコードされ多型性に富むため、個体間で抗原性が異なる同種抗原として働く。●同種抗原(個体間で異なる)=HLA抗原・ABO/Rhなどの血液型抗原など、移植・輸血で問題となる。●自己抗原(本来寛容で自己抗体の標的となる)=DNA抗原・RNP抗原・水晶体蛋白抗原・ミトコンドリア抗原など、自己免疫疾患で自己抗体が産生される。●異種抗原=他種生物由来の抗原で、動物血清・微生物成分などが該当する。
選択肢ごとの解説
① DNA抗原は核内成分に対する自己抗原であり、抗DNA抗体は全身性エリテマトーデスでみられる。同種抗原ではない。 ② 正しい。HLA抗原は同一種の個体間で遺伝的に異なる同種抗原で、輸血・移植における拒絶反応の主要な標的となる。 ③ RNP抗原(リボヌクレオプロテイン)は核内成分に対する自己抗原であり、抗U1-RNP抗体は混合性結合組織病でみられる。同種抗原ではない。 ④ 水晶体蛋白抗原は本来免疫的に隔離された自己抗原で、外傷などで露出すると交感性眼炎の標的となる。同種抗原ではない。 ⑤ ミトコンドリア抗原は細胞内小器官に対する自己抗原であり、抗ミトコンドリア抗体は原発性胆汁性胆管炎でみられる。同種抗原ではない。
第58回 午後81(臨床免疫学)
地帯現象がみられるのはどれか。2つ選べ。
①蛍光抗体法 ②免疫比ろう法 ③酵素免疫測定法 ④発光免疫測定法 ⑤ラテックス凝集比濁法
正答: ②免疫比ろう法・⑤ラテックス凝集比濁法
ポイント 地帯現象(zone phenomenon)とは抗原抗体反応で抗原または抗体が過剰なときに格子(凝集塊・免疫複合体)が形成されず、見かけ上反応が弱く(陰性に)出る現象で、抗体過剰側をプロゾーン、抗原過剰側を後地帯という。抗原抗体の量比で生じる沈降・凝集・濁度を直接測定する反応で起こるため、免疫比濁(比ろう)法やラテックス凝集比濁法のように免疫複合体の量を光学的に測る方法で問題となり、高濃度検体で偽低値を招く。●地帯現象がみられる(量比で複合体形成が左右される)反応=免疫比濁法・免疫比ろう法・ラテックス凝集比濁法・沈降反応・凝集反応など。●地帯現象が原則問題になりにくい(標識量を測る)方法=酵素免疫測定法・発光免疫測定法・蛍光抗体法など(ただしサンドイッチ法では超高濃度でフック効果が生じうる)。●回避策=検体希釈による再測定で複合体の量比を最適化する。
選択肢ごとの解説
① 蛍光抗体法は蛍光標識抗体で抗原を可視化する方法で、免疫複合体の量比による格子形成を測る反応ではなく、地帯現象は原則みられない。 ② 正しい。免疫比ろう法は免疫複合体による散乱光を測る方法で、抗原過剰側の後地帯やプロゾーンによる地帯現象がみられる。 ③ 酵素免疫測定法は酵素標識量を測定する方法で、地帯現象は原則問題にならない(サンドイッチ法での極端な高濃度ではフック効果が生じうる)。 ④ 発光免疫測定法は発光標識量を測定する方法で、量比による複合体形成を測る反応ではなく地帯現象は原則みられない。 ⑤ 正しい。ラテックス凝集比濁法は抗原抗体反応による凝集塊の濁度を測るため、抗原過剰側の後地帯で地帯現象がみられる。
第58回 午後82(臨床免疫学)
酵素免疫測定法で標識に用いられるのはどれか。2つ選べ。
①リパーゼ ②リゾチーム ③ノイラミニダーゼ ④ペルオキシダーゼ ⑤アルカリホスファターゼ
正答: ④ペルオキシダーゼ・⑤アルカリホスファターゼ
ポイント 酵素免疫測定法(EIA・ELISA)では抗原または抗体に酵素を標識し、その酵素活性により基質を発色・発光させて検出する。標識酵素には反応特異性が高く安定で発色基質が利用でき活性が強いものが用いられ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とアルカリホスファターゼ(ALP)が代表である。ペルオキシダーゼは過酸化水素存在下でTMB等の基質を発色させ、アルカリホスファターゼはp-ニトロフェニルリン酸などを分解して発色・発光させる。●標識に用いる酵素=ペルオキシダーゼ(HRP)・アルカリホスファターゼ(ALP)・β-ガラクトシダーゼ・グルコースオキシダーゼなど。●標識に用いない酵素(測定対象や別目的の酵素)=リパーゼ・リゾチーム・ノイラミニダーゼなど。●他の標識法=蛍光物質(蛍光抗体法)・放射性同位元素(RIA)・化学発光物質(化学発光免疫測定法)など。
選択肢ごとの解説
① リパーゼは脂質を分解する消化酵素であり、酵素免疫測定法の標識酵素としては用いられない。 ② リゾチームは細菌細胞壁を分解する酵素で抗菌作用をもつが、酵素免疫測定法の標識酵素としては用いられない。 ③ ノイラミニダーゼはシアル酸を遊離させる酵素でインフルエンザウイルスなどに関与するが、標識酵素としては用いられない。 ④ 正しい。ペルオキシダーゼ(西洋ワサビ由来HRP)は過酸化水素存在下で基質を発色させる代表的な標識酵素である。 ⑤ 正しい。アルカリホスファターゼはリン酸エステルを分解する酵素で、発色・発光基質を利用できる代表的な標識酵素である。
第58回 午後83(臨床免疫学)
細胞性免疫のみが障害されるのはどれか。
①多発性骨髄腫 ②慢性肉芽腫症 ③DiGeorge症候群 ④重症複合免疫不全症 ⑤X連鎖無γ-グロブリン血症
正答: ③DiGeorge症候群
ポイント DiGeorge症候群は第22染色体の微小欠失(22q11.2欠失)により胸腺の低形成・無形成を来し、T細胞が成熟できず細胞性免疫が選択的に障害される原発性免疫不全症である。B細胞・抗体産生(液性免疫)や食細胞機能は比較的保たれるため、細胞性免疫のみが障害される代表例となる。胸腺低形成のほか心大血管奇形・低カルシウム血症(副甲状腺低形成)・特徴的顔貌を伴う。原発性免疫不全は障害される系統で分類される。●細胞性免疫(T細胞)の選択的障害=DiGeorge症候群(胸腺低形成)。●液性免疫(B細胞・抗体)の障害=X連鎖無γ-グロブリン血症(Bruton病)・分類不能型免疫不全症など。●食細胞機能の障害=慢性肉芽腫症(NADPHオキシダーゼ欠損)・白血球接着不全症など。●T細胞とB細胞の複合障害=重症複合免疫不全症(SCID)。
選択肢ごとの解説
① 多発性骨髄腫は形質細胞の腫瘍性増殖で正常抗体が低下する液性免疫の障害が主体であり、細胞性免疫のみの障害ではない。 ② 慢性肉芽腫症はNADPHオキシダーゼ欠損による好中球の殺菌能低下で食細胞機能が障害される疾患であり、細胞性免疫のみの障害ではない。 ③ 正しい。DiGeorge症候群は胸腺低形成によりT細胞が成熟できず細胞性免疫が選択的に障害され、液性免疫や食細胞機能は比較的保たれる。 ④ 重症複合免疫不全症はT細胞とB細胞の両方が障害される複合免疫不全であり、細胞性免疫のみの障害ではない。 ⑤ X連鎖無γ-グロブリン血症(Bruton病)はB細胞の分化障害で抗体が産生されない液性免疫の障害であり、細胞性免疫のみの障害ではない。
📋 まとめの表を見る:原発性免疫不全症の分類(障害される免疫系統別)
Wiskott-Aldrich症候群(XR、T細胞機能低下+血小板減少)や毛細血管拡張性失調症(AR、進行性小脳失調)もT細胞系機能不全に分類される。
第58回 午後84(臨床免疫学)
自己免疫疾患と自己抗体の組合せで正しいのはどれか。
①全身性エリテマトーデス — 抗DNA抗体 ②原発性胆汁性肝硬変 — 抗U1-RNP抗体 ③Sjögren症候群 — 抗Jo-1抗体 ④多発性筋炎 — 抗好中球細胞質抗体 ⑤橋本病 — 抗ミトコンドリア抗体
正答: ①全身性エリテマトーデス — 抗DNA抗体
ポイント 自己免疫疾患では疾患特異性の高い自己抗体がみられ、診断や病型分類の指標となる。全身性エリテマトーデス(SLE)では抗DNA抗体(特に抗ds-DNA抗体)が出現し、抗Sm抗体とともに疾患特異性が高く疾患活動性とも相関する。各疾患には特徴的な自己抗体の対応関係がある。●全身性エリテマトーデス=抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体。●原発性胆汁性胆管炎=抗ミトコンドリア抗体(M2)。●Sjögren症候群=抗SS-A(Ro)抗体・抗SS-B(La)抗体。●多発性筋炎・皮膚筋炎=抗Jo-1抗体(抗ARS抗体)。●混合性結合組織病=抗U1-RNP抗体。●橋本病(慢性甲状腺炎)=抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体。●ANCA関連血管炎=抗好中球細胞質抗体(ANCA)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。全身性エリテマトーデスでは抗DNA抗体(特に抗ds-DNA抗体)が出現し疾患特異性が高く、活動性の指標となる。 ② 原発性胆汁性肝硬変(胆管炎)に対応する自己抗体は抗U1-RNP抗体ではなく抗ミトコンドリア抗体(M2)である。 ③ Sjögren症候群に対応する自己抗体は抗Jo-1抗体ではなく抗SS-A(Ro)抗体・抗SS-B(La)抗体である。 ④ 多発性筋炎に対応する自己抗体は抗好中球細胞質抗体(ANCA)ではなく抗Jo-1抗体(抗ARS抗体)である。 ⑤ 橋本病に対応する自己抗体は抗ミトコンドリア抗体ではなく抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体である。
📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患
第58回 午後85(臨床免疫学)
リウマトイド因子(RF)で正しいのはどれか。2つ選べ。
①IgG分子のFabと結合する。 ②IgMよりもIgGクラスの方が多い。 ③変性IgGに対する自己抗体である。 ④ラテックス凝集反応で検出できる。 ⑤関節リウマチで特異的に検出される。
正答: ③変性IgGに対する自己抗体である。・④ラテックス凝集反応で検出できる。
ポイント リウマトイド因子(RF)はIgG分子のFc部分に対する自己抗体で、変性したIgGを認識して結合する。クラスはIgMが主体であり、変性IgG(Fc)と結合した複合体はラテックス凝集反応(RF感作ラテックス)で検出される。関節リウマチで高頻度に陽性となるが、Sjögren症候群やその他の膠原病・慢性感染症・健常高齢者でも陽性となるため、関節リウマチに特異的ではない。●RFの性状=IgGのFc部に対する自己抗体・変性IgGに反応・主クラスはIgM。●検出法=ラテックス凝集反応・比濁法・酵素免疫測定法など。●RF陽性となる病態=関節リウマチのほかSjögren症候群・全身性エリテマトーデス・慢性肝疾患・感染性心内膜炎・健常高齢者など(特異性は高くない)。●関節リウマチでより特異的な指標=抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)。
選択肢ごとの解説
① リウマトイド因子はIgG分子のFab部ではなくFc部に対する自己抗体であり、IgGのFc領域を認識して結合する。 ② リウマトイド因子の主たるクラスはIgGではなくIgMであり、IgGクラスより多い。 ③ 正しい。リウマトイド因子は変性したIgG(主にFc部)に対する自己抗体であり、変性IgGを認識して結合する。 ④ 正しい。リウマトイド因子は変性IgGを感作したラテックス粒子との凝集反応(ラテックス凝集反応)で検出できる。 ⑤ リウマトイド因子は関節リウマチで高頻度に陽性だがSjögren症候群など他疾患や健常高齢者でも陽性となり、関節リウマチに特異的ではない。
第58回 午後86(臨床免疫学)
免疫電気泳動検査(Grabar法)について正しいのはどれか。
①不活化した血清を用いる。 ②ハプトグロビンの沈降線はβ領域に形成される。 ③トランスフェリンの沈降線はα₁領域に形成される。 ④分子量の小さい蛋白の沈降線は抗血清側に形成される。 ⑤支持体電気泳動法と溶液内沈降反応とを組み合わせた方法である。
正答: ④分子量の小さい蛋白の沈降線は抗血清側に形成される。
ポイント 免疫電気泳動(Grabar法)は支持体(寒天・アガロース)上での蛋白の電気泳動と、その後に抗血清を溝に入れて行うゲル内沈降反応とを組み合わせた方法で、血清蛋白を分離してから各成分に対する沈降弧を形成させ、M蛋白の検出や蛋白異常の解析に用いる。泳動で分離された各蛋白は抗血清に向かって拡散し、抗血清側に近い位置に沈降線を形成するのは拡散の速い分子量の小さい蛋白である。●原理=支持体電気泳動(一次元分離)+抗血清との二重拡散による沈降反応の組合せ。●沈降弧の位置を決める因子=蛋白の泳動度(移動位置)と拡散速度(分子量が小さいほど速く拡散し抗血清側に弧を作る)。●主な血清蛋白の泳動分画=アルブミン、α1(α₁-アンチトリプシン等)、α2(ハプトグロビン・α₂-マクログロブリン)、β(トランスフェリン・補体C3)、γ(免疫グロブリン)。
選択肢ごとの解説
① 免疫電気泳動では検体を不活化(非働化)する必要はなく、通常の血清をそのまま泳動して抗血清と反応させる。 ② ハプトグロビンの沈降線はβ領域ではなくα2領域に形成される。β領域に泳動されるのはトランスフェリンや補体C3である。 ③ トランスフェリンの沈降線はα₁領域ではなくβ領域に形成される。α₁領域にはα₁-アンチトリプシンなどが泳動される。 ④ 正しい。分子量の小さい蛋白は拡散速度が速いため抗血清に近い側へ早く拡散し、抗血清側に沈降線を形成する。 ⑤ 免疫電気泳動が組み合わせるのは支持体電気泳動法とゲル内沈降反応であり、「溶液内沈降反応」とする点が誤り(沈降反応は寒天ゲルの中で起こる)。
📋 まとめの表を見る:免疫電気泳動法〈IEP〉の原理と特徴
免疫固定法は蛋白質分画後に抗血清を直接反応させる方法でIEPより簡便かつ高感度。
第58回 午後87(臨床免疫学)
Rh血液型について正しいのはどれか。
①日本人のD陰性頻度は15 %である。 ②weak Dの患者にはD陽性血を輸血する。 ③日本人の不規則抗体では抗Dが最も多い。 ④D陽性の両親からD陰性の児は生まれない。 ⑤D陰性の確認は間接抗グロブリン試験で行う。
正答: ⑤D陰性の確認は間接抗グロブリン試験で行う。
ポイント Rh血液型のうち臨床的に最も重要なのがD抗原で、D抗原を欠く場合をD陰性(Rh陰性)という。日本人のD陰性頻度は約0.5%と低い。D陰性の確定にはD抗原の有無を慎重に確認する必要があり、生理食塩液法(直接凝集)で陰性でもweak DやpartialDを見逃さないため、間接抗グロブリン試験(不完全抗体を検出するクームス法)で確認してD陰性と判定する。これによりweak Dの誤判定を防ぐ。●D抗原の確認=直接(食塩液)法で陰性なら間接抗グロブリン試験を追加してweak Dを除外しD陰性を確定する。●weak Dの取扱い=受血者(患者)にはD陰性血を輸血し、供血者では原則D陽性として扱う。●日本人の頻度=D陰性は約0.5%(白人約15%より著しく低い)。●日本人の不規則抗体=抗E・抗Le(a)などが多く、D陰性が少ないため抗Dは欧米ほど多くない。
選択肢ごとの解説
① 日本人のD陰性頻度は15%ではなく約0.5%と低く、15%はおおむね白人での頻度に相当する。 ② weak Dの患者(受血者)には溶血のリスクを避けるためD陽性血ではなくD陰性血を輸血する。 ③ 日本人ではD陰性が少ないため不規則抗体で抗Dが最も多いということはなく、抗Eなどの方が多くみられる。 ④ Dは複数の遺伝子型をとり、D陽性の両親からでも遺伝的組合せによりD陰性の児が生まれうる。 ⑤ 正しい。D陰性の確認は間接抗グロブリン試験(クームス法)で行い、weak Dなどを見逃さずにD陰性と確定する。
📋 まとめの表を見る:Rh血液型(D抗原)のポイント
第58回 午後88(臨床免疫学)
輸血用血液の管理で誤っているのはどれか。
①赤血球濃厚液の有効期限は採血後21日である。 ②血小板濃厚液の有効期限は採血後4日である。 ③血小板濃厚液の振盪保管は2〜6℃とする。 ④赤血球製剤は凍結すると溶血が起こる。 ⑤新鮮凍結血漿の融解は37 ℃で行う。
正答: ③血小板濃厚液の振盪保管は2〜6℃とする。
ポイント 輸血用血液製剤は成分ごとに保存条件と有効期限が定められており、適切な温度管理が安全な輸血の前提となる。血小板濃厚液は機能維持のため室温(20〜24℃)で水平振盪しながら保存するのが原則であり、低温保存(2〜6℃)では血小板が活性化・凝集して機能が低下するため不適である。したがって「血小板濃厚液の振盪保管は2〜6℃とする」は誤りである(2〜6℃は赤血球製剤の保存温度)。●赤血球製剤=2〜6℃で保存(凍結すると溶血する)。●血小板濃厚液=20〜24℃の室温で水平振盪保存し、保存期間は短い。●新鮮凍結血漿=−20℃以下で凍結保存し、使用時は30〜37℃の恒温槽で速やかに融解して凝固因子活性を保つ。●温度管理の要点=赤血球は2〜6℃冷蔵、血漿は−20℃以下冷凍、血小板は20〜24℃室温で振盪保存と製剤ごとに条件が異なり、いずれも逸脱すると品質低下や輸血副作用につながる。●有効期間の制度変更(出題後)=赤血球液は2023年3月採血分から採血後28日間、濃厚血小板は2025年7月供給分から採血後6日間(洗浄血小板は4日間のまま)に延長された。
選択肢ごとの解説
① 赤血球濃厚液は2〜6℃で冷蔵保存し、有効期間は出題当時採血後21日で正しい(2023年3月採血分からは28日間に延長されている)。 ② 血小板濃厚液の有効期間は出題当時採血後4日で正しい(2025年7月供給分からは細菌スクリーニング実施により6日間に延長。洗浄血小板は4日間のまま)。 ③ 誤り。血小板濃厚液は室温(20〜24℃)で水平振盪して保存する。2〜6℃は赤血球製剤の保存温度で、この低温では血小板が活性化・凝集して機能が低下するため不適である。 ④ 赤血球製剤は凍結すると赤血球膜が破壊され溶血が起こるため、2〜6℃の冷蔵保存とする点は正しい。 ⑤ 新鮮凍結血漿は−20℃以下で凍結保存し、使用直前に37℃前後で速やかに融解する点は正しい。
第58回 午後89(臨床免疫学)
移植のドナーに行うべき検査はどれか。2つ選べ。
①単球貪食試験 ②HIV抗体検査 ③免疫電気泳動検査 ④HLAタイピング検査 ⑤リンパ球サブセット検査
正答: ②HIV抗体検査・④HLAタイピング検査
ポイント 臓器・組織移植のドナー(提供者)には、移植による感染症の伝播を防ぐための感染症スクリーニングと、レシピエントとの組織適合性を確認する検査が必須である。HIV抗体検査はウインドウ期に注意しつつドナー由来の感染症伝播を防ぐために行い、HLAタイピング検査はドナーとレシピエントの主要組織適合抗原の一致度を調べて拒絶反応のリスクを評価するために行う。これらは移植の安全性と成功率に直結する。●ドナーに行う感染症スクリーニング=HIV抗体・HBs抗原/HBc抗体・HCV抗体・HTLV-1抗体・梅毒・サイトメガロウイルスなど。●組織適合性検査=HLAタイピング・リンパ球交差適合試験(クロスマッチ)・抗HLA抗体検査。●移植の適合確認=ドナー・レシピエント双方のHLAを照合し拒絶リスクを評価する。
選択肢ごとの解説
① 単球貪食試験は食細胞機能の評価検査であり、移植ドナーに必須のスクリーニング検査としては行わない。 ② 正しい。HIV抗体検査はドナー由来の感染症がレシピエントへ伝播するのを防ぐために行うべき感染症スクリーニングである。 ③ 免疫電気泳動検査は血清蛋白異常やM蛋白の解析に用いる検査であり、移植ドナーに行うべき検査ではない。 ④ 正しい。HLAタイピング検査はドナーとレシピエントの組織適合性を評価し拒絶反応リスクを判定するために行う。 ⑤ リンパ球サブセット検査は免疫不全の評価などに用いる検査であり、移植ドナーに必須の検査ではない。
第58回 午後90(公衆衛生学)
世界保健機関(WHO)の定める国際生活機能分類(ICF)で「活動制限」に分類されるのはどれか。
正答: ④歩行障害
ポイント 国際生活機能分類(ICF)は人間の生活機能を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3レベルで捉え、それぞれの障害を「機能障害(構造障害)」「活動制限」「参加制約」と呼ぶ。「活動」は個人による課題や行為の遂行を指し、その困難を活動制限という。歩行障害は移動という個人レベルの行為が制限された状態であり、活動制限に分類される。●心身機能・身体構造の障害(機能障害)=血行障害・不安障害・肝機能障害など、身体・精神の機能や構造のレベルの問題。●活動の制限(活動制限)=歩行障害・食事や入浴などのADL困難など、個人による行為遂行レベルの問題。●参加の制約(参加制約)=休職・就労困難・社会参加の困難など、社会的役割レベルの問題。●ICFの特徴=環境因子・個人因子を含め生活機能を相互作用的に捉える。
選択肢ごとの解説
① 休職は社会的役割や生活場面への関与が妨げられた状態で、活動制限ではなく参加制約に分類される。 ② 血行障害は身体の機能・構造のレベルの問題であり、活動制限ではなく機能障害(心身機能・身体構造の障害)に分類される。 ③ 不安障害は精神機能のレベルの問題であり、活動制限ではなく機能障害(心身機能の障害)に分類される。 ④ 正しい。歩行障害は移動という個人による行為の遂行が制限された状態であり、ICFの活動制限に分類される。 ⑤ 肝機能障害は臓器の機能のレベルの問題であり、活動制限ではなく機能障害(心身機能の障害)に分類される。
第58回 午後91(公衆衛生学)
我が国の主要死因別の粗死亡率の年次推移を示す。矢印で示す死因はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k58pB091.8e11181ee0.jpg
正答: ③肺炎
ポイント 我が国の主要死因別粗死亡率の年次推移では、各死因が時代背景を反映した特徴的な曲線を描く。肺炎は高齢化に伴い高齢者の誤嚥性肺炎などを中心に死亡数が増加し、近年では主要死因の上位を占めるまでに粗死亡率が上昇してきた経緯があり、年次推移のグラフで近年明瞭な上昇を示す曲線として読み取れる(本問では矢印が示す上昇曲線が肺炎に相当する)。粗死亡率は人口構成、特に高齢者の増加の影響を強く受ける点に注意して読む。●戦後に激減した死因=結核(公衆衛生の改善・抗結核薬の普及で著明に低下)。●高齢化で上昇した死因=肺炎・老衰など、高齢者数の増加を反映して粗死亡率が上昇。●比較的横ばい〜変動する死因=自殺・不慮の事故など社会的要因の影響を受ける。●粗死亡率の解釈=人口の高齢化の影響を強く受けるため、年齢調整死亡率と区別して読む必要がある。
選択肢ごとの解説
① 結核は戦後に抗結核薬の普及と栄養・公衆衛生の改善で粗死亡率が激減した死因であり、近年上昇を示す矢印の曲線には該当しない。 ② 自殺は景気など社会的要因の影響で増減を繰り返す死因であり、本問の矢印が示す近年一貫して上昇する曲線の典型ではない。 ③ 正しい。肺炎は高齢化を反映して高齢者の死亡が増え、粗死亡率が近年上昇して主要死因の上位を占める曲線を示す。 ④ 不慮の事故は粗死亡率がほぼ横ばいから緩やかな変動を示す死因であり、近年急上昇する曲線には該当しない。 ⑤ 老衰も高齢化で増加傾向にあるが、本問の矢印が示す死因は肺炎であり老衰には該当しない。
第58回 午後92(公衆衛生学)
物理環境と影響の組合せで誤っているのはどれか。
①電離放射線 — 皮膚潰瘍 ②赤外線 — 緑内障 ③振動 — 末梢循環障害 ④騒音 — 難聴 ⑤気圧 — 潜函病
正答: ②赤外線 — 緑内障
ポイント 物理的環境因子はそれぞれ特徴的な健康影響(職業病・環境性疾患)を引き起こす。赤外線は強い熱作用をもち、長期曝露により水晶体の混濁すなわち白内障(硝子工白内障・熱性白内障)を起こすのが特徴であり、眼圧上昇による緑内障の原因とはならない。したがって「赤外線—緑内障」は誤った組合せである。物理環境と健康影響の対応は産業保健・環境保健の基礎となる。●電離放射線=皮膚潰瘍・脱毛・造血障害・発癌などの確定的・確率的影響。●赤外線=熱性白内障・皮膚熱傷(緑内障ではない)。●紫外線=電気性眼炎(角結膜炎)・皮膚紅斑・皮膚癌。●振動=白ろう病(レイノー現象)など末梢循環障害。●騒音=騒音性難聴(c5dip)。●異常気圧=潜函病(減圧症)・空気塞栓。●高温・低温=熱中症・凍傷など。
選択肢ごとの解説
① 電離放射線は皮膚潰瘍や脱毛・造血障害・発癌を起こすため、皮膚潰瘍との組合せは正しい。 ② 誤り。赤外線の熱作用が起こす眼障害は緑内障ではなく熱性白内障(水晶体混濁)であり、この組合せは誤っている。 ③ 振動工具による局所振動は白ろう病に代表されるレイノー現象などの末梢循環障害を起こすため、この組合せは正しい。 ④ 騒音は長期曝露により内耳を障害して騒音性難聴を起こすため、組合せは正しい。 ⑤ 異常気圧(減圧)は溶解していた窒素が気泡化して潜函病(減圧症)を起こすため、気圧と潜函病の組合せは正しい。
📋 まとめの表を見る:物理的環境要因と健康影響(職業病・環境性疾患)
赤外線は水晶体の混濁による白内障(熱性白内障)を起こすが、眼圧上昇による緑内障の原因とはならない。
第58回 午後93(公衆衛生学)
疾患とリスクファクターの組合せで誤っているのはどれか。
①胃癌 — ヘリコバクター・ピロリ ②咽頭癌 — 喫煙 ③膀胱癌 — サイトメガロウイルス ④中皮腫 — アスベスト ⑤子宮頸癌 — ヒトパピローマウイルス
正答: ③膀胱癌 — サイトメガロウイルス
ポイント 悪性腫瘍には感染や環境因子などの明らかなリスクファクターをもつものがある。膀胱癌の主なリスクファクターは喫煙や芳香族アミン(職業性のベンジジン・β-ナフチルアミンなど)であり、サイトメガロウイルスは膀胱癌の原因とはならないため「膀胱癌—サイトメガロウイルス」は誤った組合せである。●胃癌=Helicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)の持続感染。●咽頭癌・喉頭癌・肺癌=喫煙・飲酒(咽頭癌ではHPVも関与)。●膀胱癌=喫煙・芳香族アミン(職業性曝露)。●中皮腫・肺癌=アスベスト(石綿)曝露。●子宮頸癌=高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)。●肝細胞癌=B型・C型肝炎ウイルス。●成人T細胞白血病=HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)。●バーキットリンパ腫・上咽頭癌=EBウイルス。
選択肢ごとの解説
① 胃癌のリスクファクターはヘリコバクター・ピロリの持続感染であり、この組合せは正しい。 ② 咽頭癌のリスクファクターには喫煙・飲酒(およびHPV)が含まれ、喫煙との組合せは正しい。 ③ 誤り。膀胱癌の主なリスクファクターは喫煙や職業性の芳香族アミン曝露であり、サイトメガロウイルスは原因とならずこの組合せは誤っている。 ④ 中皮腫はアスベスト(石綿)曝露を主要なリスクファクターとするため、この組合せは正しい。 ⑤ 子宮頸癌は高リスク型ヒトパピローマウイルスの持続感染を主因とするため、この組合せは正しい。
📋 まとめの表を見る:主な悪性腫瘍の危険因子(生活習慣・感染性病原体)
膀胱がんの危険因子はサイトメガロウイルスではなく喫煙・芳香族アミン(ベンジジン等)である。
第58回 午後94(公衆衛生学)
保健所の業務はどれか。2つ選べ。
①母子健康手帳の交付 ②身体障害者手帳の交付 ③医療保険に関する業務 ④精神保健に関する業務 ⑤人口動態統計に関する業務
正答: ④精神保健に関する業務・⑤人口動態統計に関する業務
ポイント 保健所は地域保健法に基づき都道府県・指定都市等が設置する広域的・専門的・技術的な公衆衛生の拠点で、精神保健、感染症・結核対策、難病対策、食品衛生・環境衛生、人口動態統計などの広域的業務を担う。精神保健に関する業務(精神保健福祉相談・措置入院に関する事務など)と人口動態統計に関する業務(死亡・出生などの統計の集計・分析)は保健所の業務に含まれる。●保健所の業務(広域・専門的)=精神保健・感染症(結核・エイズ等)対策・難病対策・食品衛生・環境衛生・人口動態統計など。●市町村(保健センター)の業務(住民に身近なサービス)=母子健康手帳の交付・乳幼児健診・予防接種・健康相談など。●他機関の業務=身体障害者手帳の交付(福祉事務所等が関与)・医療保険業務(保険者)。
選択肢ごとの解説
① 母子健康手帳の交付は住民に身近なサービスとして市町村(保健センター)が行う業務であり、保健所の業務ではない。 ② 身体障害者手帳の交付は身体障害者福祉法に基づき福祉部門(福祉事務所等)が関与する業務であり、保健所の業務ではない。 ③ 医療保険に関する業務は保険者が担うものであり、保健所の業務ではない。 ④ 正しい。精神保健に関する業務(相談・措置入院に関する事務など)は地域保健法に基づく保健所の業務である。 ⑤ 正しい。人口動態統計に関する業務(出生・死亡などの統計の集計・分析)は保健所の業務である。
第58回 午後95(医用工学概論)
交流回路における、電圧および電流の最大振幅値の積に対する平均電力の割合として正しいのはどれか。
正答: ①1/2
ポイント 正弦波交流における平均電力(有効電力)は、抵抗負荷では電圧実効値と電流実効値の積で表される。実効値(RMS)は瞬時値の二乗平均平方根であり、正弦波では最大振幅値の1/√2となる。したがって平均電力は(最大電圧/√2)×(最大電流/√2)=(最大電圧×最大電流)/2となり、電圧と電流の最大振幅値の積に対する平均電力の割合は1/2である。これは正弦波の二乗平均が最大値の二乗の1/2であることに対応する。●実効値の定義=正弦波では最大値の1/√2(約0.707倍)。●平均電力(抵抗負荷)=実効値電圧×実効値電流=最大値の積の1/2。●力率=抵抗のみなら1、リアクタンスを含むと平均電力はさらにcosθ倍に低下する。●瞬時電力=時間とともに変動し、その一周期平均が平均電力となる。
選択肢ごとの解説
① 正しい。平均電力は実効値(最大値の1/√2)どうしの積で表されるため、最大振幅値の積に対する割合は1/2となる。 ② √2は実効値と最大値の比(最大値が実効値の√2倍)に関係する係数だが、最大振幅値の積に対する平均電力の割合そのものは1/2であり、この値は当てはまらない。 ③ 割合が1(最大値の積がそのまま平均電力に等しい)となるのは直流の場合などであり、正弦波交流の平均電力の割合としては誤りである。 ④ この値は平均電力と最大振幅値の積の割合(1/2)には該当しない。 ⑤ 2倍となることはなく、平均電力は最大振幅値の積より小さい1/2であるためこの値は誤りである。
第58回 午後96(医用工学概論)
測定される物理量が起電力に変換されるトランスデューサはどれか。2つ選べ。
①熱電対 ②サーミスタ ③ホール素子 ④ストレンゲージ ⑤ポテンショメータ
正答: ①熱電対・③ホール素子
ポイント トランスデューサ(変換器)は物理量を電気量に変換する素子で、変換後の出力形式(起電力=電圧として出力するか、抵抗変化など受動的変化として出力するか)で分類できる。測定される物理量が起電力(電圧)として出力されるものには、温度差を起電力に変える熱電対(ゼーベック効果)と、磁界に比例した電圧を出力するホール素子(ホール効果)がある。ただしホール素子は駆動電流(または駆動電圧)を与えて動作させる素子であり、熱電対のような外部電源不要の自己発電型ではない。●起電力(電圧)を出力するトランスデューサ=熱電対(ゼーベック効果)・圧電素子(圧電効果)・光電池(いずれも自己発電型)・ホール素子(ホール効果、駆動電流が必要)。●抵抗・容量などの変化を生じる受動型トランスデューサ=サーミスタ(温度→抵抗)・ストレンゲージ(ひずみ→抵抗)・ポテンショメータ(変位→抵抗)など、別途電源を要する。●選択の要点=出力が電圧(起電力)そのものか、抵抗などの変化かで見分ける。
選択肢ごとの解説
① 正しい。熱電対は2種金属接点の温度差により起電力(ゼーベック効果)を生じ、温度を電圧に変換する能動型トランスデューサである。 ② サーミスタは温度変化を抵抗値の変化として出力する受動型素子であり、起電力を発生するわけではない。 ③ 正しい。ホール素子は、駆動電流を流した素子に磁場を加えるとホール電圧を生じ、磁場を電圧として検出する。駆動電流または駆動電圧が必要であり、熱電対のような自己発電型ではない。 ④ ストレンゲージはひずみを抵抗値の変化として検出する受動型素子であり、起電力を発生するわけではない。 ⑤ ポテンショメータは変位を抵抗(分圧)の変化として検出する受動型素子であり、起電力を発生するわけではない。
📋 まとめの表を見る:トランスデューサ(センサ)の変換原理による分類
第58回 午後97(医用工学概論)
最高周波数成分が100 Hzである生体信号をAD変換するのに、理論上使うことができるサンプリング周波数〔Hz〕の下限はどれか。
正答: ④200
ポイント アナログ信号をデジタル化(AD変換)する際、原信号を正しく復元するにはサンプリング定理(標本化定理)に従い、信号に含まれる最高周波数成分の2倍を超えるサンプリング周波数で標本化する必要がある。最高周波数成分が100Hzの信号では、理論上の下限はその2倍の200Hz(=0.2kHz)となる。これより低いと折り返し雑音(エイリアシング)が生じ原信号を再現できない。●サンプリング定理=サンプリング周波数は信号最高周波数の2倍より高くする(ナイキスト周波数=サンプリング周波数の1/2)。●下限の計算=最高周波数100Hz×2=200Hz。●エイリアシング=サンプリング周波数が不足すると高周波が低周波に折り返って混入する。●実務=余裕をもって2倍以上の周波数を用い、前段に折り返し防止フィルタ(アンチエイリアシングフィルタ)を入れる。
選択肢ごとの解説
① 10Hzは信号最高周波数100Hzの2倍に満たず、サンプリング定理を満たさないため原信号を復元できない。 ② 50Hzは最高周波数100Hzより低く、サンプリング定理を満たさないため折り返し雑音を生じる。 ③ 100Hzは最高周波数100Hzの2倍に満たないため、サンプリング定理を満たさず原信号を復元できない。 ④ 正しい。最高周波数100Hzの2倍にあたる200Hzが、原信号を復元できるサンプリング周波数の理論上の下限である。 ⑤ 500Hzはサンプリング定理を満たすが、理論上使える下限(200Hz)ではないため本問の答えとしては該当しない。
第58回 午後98(医用工学概論)
静止画像ファイルの保存に用いられるフォーマットはどれか。
正答: ③JPEG
ポイント ファイルフォーマットは扱うデータの種類(静止画・動画・音声・文字・表)ごとに規格が異なり、拡張子から内容を推測できる。JPEG(Joint Photographic Experts Group)は静止画像の非可逆圧縮フォーマットで、写真など連続階調の静止画像の保存・配信に広く用いられ、圧縮率を高めると画質が劣化する特徴をもつ。●静止画像フォーマット=JPEG(非可逆圧縮)・PNG(可逆圧縮)・GIF・BMP・TIFFなど。●動画フォーマット=AVI・MP4・MOVなど。●音声フォーマット=MP3・WAV・AACなど。●文字・テキスト=TXT(プレーンテキスト)。●表形式データ=CSV(カンマ区切り)。●医用画像分野=DICOM(医用画像と付帯情報の標準規格)。
選択肢ごとの解説
① AVIは静止画像ではなく動画(音声付き映像)を保存するためのコンテナフォーマットである。 ② CSVは静止画像ではなくカンマ区切りの表形式データ(テキスト)を保存するためのフォーマットである。 ③ 正しい。JPEGは連続階調の静止画像を非可逆圧縮で保存する代表的な静止画像フォーマットである。 ④ MP3は静止画像ではなく音声(オーディオ)を圧縮保存するためのフォーマットである。 ⑤ TXTは静止画像ではなく書式を持たないプレーンテキスト(文字情報)を保存するためのフォーマットである。
📋 まとめの表を見る:ファイル形式の分類(静止画像・動画・音声・表形式)
第58回 午後99(医用工学概論)
紙媒体のカルテと比較した電子カルテ導入の効果として誤っているのはどれか。
①警告機能によって重大所見の見落としを予防できる。 ②診療統計情報などの二次利用が容易になる。 ③医療従事者間での情報共有が容易になる。 ④検査データの保管スペースを節約できる。 ⑤個人情報漏洩の危険性が減る。
正答: ⑤個人情報漏洩の危険性が減る。
ポイント 電子カルテは診療情報を電子的に記録・管理する仕組みで、情報の共有・検索・統計利用・スペース節約・警告機能などの利点をもたらす。一方で診療情報を電子データとして集約・ネットワーク化するため、不正アクセスや大量データの一括流出といった新たなリスクが生じ、個人情報漏洩の危険性はむしろ高まりうる。したがって「個人情報漏洩の危険性が減る」は効果として誤りである。●電子カルテの利点=重大所見の警告(アラート)機能・診療統計など二次利用の容易化・多職種間の情報共有・保管スペースの節約・判読性向上。●新たに生じる課題(欠点)=不正アクセスや大量流出による個人情報漏洩リスク・システム障害時の閲覧不能・導入運用コスト。●対策=アクセス制御・ログ管理・暗号化・バックアップなどのセキュリティ整備が必須。
選択肢ごとの解説
① 電子カルテは検査値異常や禁忌などを知らせる警告(アラート)機能をもち重大所見の見落とし予防に役立つため、効果として正しい。 ② 電子データは検索・集計が容易で診療統計など二次利用がしやすくなるため、効果として正しい。 ③ 電子カルテはネットワークを介して多職種が同時に情報を参照でき情報共有が容易になるため、効果として正しい。 ④ 検査データを電子的に保管できるため紙の保管スペースを節約できる点は、効果として正しい。 ⑤ 誤り。電子カルテはデータ集約・ネットワーク化により不正アクセスや大量流出のリスクが生じ、個人情報漏洩の危険はむしろ高まりうる。
第58回 午後100(医用工学概論)
滅菌について正しいのはどれか。
①エチレンオキサイドガスはウイルスの滅菌に有効である。 ②γ線で滅菌された包装物は開封時に被曝の危険がある。 ③高圧蒸気滅菌は芽胞を有する細菌に無効である。 ④濾過滅菌は血清の滅菌に適していない。 ⑤乾熱滅菌は培地の滅菌に有効である。
正答: ①エチレンオキサイドガスはウイルスの滅菌に有効である。
ポイント 滅菌はすべての微生物を死滅・除去する操作で、対象物の耐熱性・耐湿性に応じて方法を使い分ける。エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌は常温に近い低温で行えるガス滅菌で、芽胞を含む細菌・真菌・ウイルスなど広範な微生物に有効であり、熱や湿気に弱いプラスチック製品・内視鏡などの滅菌に用いられる。したがって「エチレンオキサイドガスはウイルスの滅菌に有効である」は正しい。●高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)=121℃・20分等で芽胞を含む微生物に有効、耐熱・耐湿物に用いる。●乾熱滅菌=高温乾燥でガラス器具・金属に用いる(培地は変性するため不適)。●ガス滅菌(EOG・過酸化水素低温プラズマ)=低温で熱に弱い器材に用い芽胞・ウイルスにも有効。●濾過滅菌=加熱できない血清・薬液から微生物を除去する(ウイルスは孔径によっては通過)。●放射線滅菌(γ線)=照射後に放射能は残らず使用時被曝の心配はない。
選択肢ごとの解説
① 正しい。エチレンオキサイドガス滅菌は低温ガス滅菌で芽胞・細菌・真菌・ウイルスに有効であり、熱に弱い器材の滅菌に用いる。 ② γ線滅菌は放射線を照射する方法だが照射物に放射能は残らないため、開封時に被曝する危険はなく、この記述は誤りである。 ③ 高圧蒸気滅菌は121℃・20分等で芽胞を有する細菌にも有効であり、無効とする記述は誤りである。 ④ 濾過滅菌は加熱できない血清などの滅菌に適した方法であり、血清の滅菌に適さないとする記述は誤りである。 ⑤ 乾熱滅菌は高温乾燥のため培地(水分・栄養成分)を変性させてしまい培地の滅菌には適さず、有効とする記述は誤りである。
📋 まとめの表を見る:滅菌法の種類・条件・対象
高圧蒸気滅菌は芽胞形成菌を含め有効だが、プリオンは通常の方法では不活化できない。
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