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第59回(2013) 臨床検査技師国家試験 午前51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第59回 午前51(病理組織細胞学)
検体を脱灰後、水洗せず70 %アルコールに入れるのはどれか。2つ選べ。
①EDTA法 ②ギ酸法 ③トリクロロ酢酸法 ④硝酸法 ⑤迅速脱灰法(Plank-Rychlo法)
正答: ②ギ酸法・③トリクロロ酢酸法
ポイント 脱灰後に水洗を行わず直接70%アルコールへ移せるのは、用いた脱灰液が強酸でなく組織への残存障害が小さい場合に限られる。ギ酸法は弱酸性で組織や抗原への影響が比較的小さく、トリクロロ酢酸法は固定作用を併せもちながら弱い脱灰を行うため、いずれも水洗の工程を省いて直接アルコールへ移行できる。一方で硝酸法やPlank-Rychlo法など強酸を用いる脱灰では、残存した酸が組織を傷め染色性を著しく損なうため、アルコールへ移す前に流水で十分な水洗を行うことが必須となる。脱灰法は使用する薬剤の酸性度や固定性の有無によって、その後の処理工程が分かれてくる点が要点である。●水洗が必要=硝酸法・塩酸法・Plank-Rychlo法など強酸系の脱灰●水洗を省きアルコールへ移行できる=ギ酸法・トリクロロ酢酸法●キレート系=EDTA法は作用が緩徐で抗原や核酸の保存性に優れる。
選択肢ごとの解説
① EDTA法はカルシウムをキレートして除く緩徐な脱灰法で抗原や核酸の保存性に優れるが、本問の水洗省略が許される脱灰法には該当しない選択肢である。 ② 正しい。ギ酸法は弱酸性で組織への障害が小さく、脱灰後に水洗を行わず直接70%アルコールへ移行できる脱灰法である。 ③ 正しい。トリクロロ酢酸法は固定作用を併せもち弱い脱灰作用を示すため、水洗の工程を省いて直接アルコールへ入れることができる。 ④ 硝酸法は強酸を用いるため組織に残存する酸を除く十分な水洗が必要であり、水洗を省いてアルコールへ移すことはできない脱灰法である。 ⑤ 迅速脱灰法(Plank-Rychlo法)は強酸を含み脱灰作用が強いため、組織保護のためアルコールへ移す前に十分な水洗を行う必要がある脱灰法である。
第59回 午前52(病理組織細胞学)
H-E染色標本を別に示す。標本が不良な原因はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59aA052.52c15cc6c4.jpg
①脱灰過剰 ②脱水不足 ③薄切時の室温不適 ④ブロックの固定不備 ⑤パラフィン浸透の不足
正答: ④ブロックの固定不備
ポイント H-E染色標本の不良は固定・脱水・包埋・薄切・染色のどの工程に原因があるかを、所見の特徴から判断していく必要がある。本標本には切片全体に帯状の厚薄むらがみられ、これはミクロトームへのブロックの固定(締め付け)が不十分なために薄切時にブロックが振動し、切片の厚さが周期的に変動して生じたチャタリング(びびり)の像である。ここでいう固定は薬液による組織固定ではなく、ブロックや替刃をミクロトームへ機械的に固定する操作を指し、両者を確実に締め直すことで防ぐことができる。原因の切り分けには、各工程に特有の不良像を一つずつ標本の像と対応させて、矛盾のない原因を導いていくことが要点である。●ブロック・刃の固定(締め付け)不備=薄切時の振動による帯状の厚薄むら(チャタリング)●脱水/包埋の不備=パラフィン浸透不良で薄切が困難●薄切/温度の不備=シワ・厚薄不同・切片の裂け。
選択肢ごとの解説
① 脱灰過剰では核の染色性が低下し石灰化部の微細構造が失われるが、本標本に示された不良像の主たる原因とは異なる変化である。 ② 脱水不足はパラフィン浸透不良につながり薄切を困難にする要因となるが、本標本に示された不良像を説明する主たる原因ではない。 ③ 薄切時の室温不適は切片のシワや裂け、厚薄不同を生じさせる要因となるが、本標本に示された不良像の主たる原因とはいえない。 ④ 正しい。ミクロトームへのブロックの締め付けが不十分だと薄切時にブロックが振動し、本標本のような帯状の厚薄むら(チャタリング)が生じる。 ⑤ パラフィン浸透の不足は薄切時の組織崩れを招く要因となるが、本標本に示された不良像を説明する主たる原因ではない。
第59回 午前53(病理組織細胞学)
腎組織標本を別に示す。染色法はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59aA053.a977f707be.jpg
①elastica van Gieson染色 ②Masson trichrome染色 ③PAM染色 ④PAS染色 ⑤PTAH染色
正答: ②Masson trichrome染色
ポイント 腎組織標本の染色法を色調から判定する問題であり、本標本はMasson trichrome染色である。同染色は膠原線維を青または緑、細胞質・筋線維・赤血球を赤、核を黒褐色に染め分ける三色染色で、糸球体や間質の線維化の評価に広く用いられる。腎の組織では基底膜や間質コラーゲンの増生を鮮やかに描出することができ、線維化の程度を視覚的に判断する手がかりとなる。膠原線維を染める染色は複数あるため、膠原線維と核と細胞質がそれぞれ何色に染まっているかという最終的な色の組合せによって染色法を識別していくことが要点となる。●膠原線維の染め分け=Masson trichrome(膠原は青緑)・elastica van Gieson(膠原は赤・弾性は黒紫)●基底膜の鍍銀=PAM(黒)●糖鎖や基底膜の描出=PAS(赤紫)●ミトコンドリア・横紋=PTAH(青)。
選択肢ごとの解説
① elastica van Gieson染色は弾性線維を黒紫、膠原線維を赤に染める染色であり、本標本に示された青緑の染め分けとは色調が大きく異なる。 ② 正しい。Masson trichrome染色は膠原線維を青緑、細胞質や赤血球を赤、核を黒褐色に染め分ける三色染色である。 ③ PAM染色は鍍銀によって基底膜を黒く描出する染色であり、本標本に示された三色の染め分けとは色調が大きく異なる染色である。 ④ PAS染色は多糖類や基底膜を赤紫に染める染色であり、膠原線維を青緑に染める三色の染め分けは示さない染色である。 ⑤ PTAH染色はミトコンドリアや横紋を青色に染める染色であり、本標本に示された色調や染め分けとは合致しない染色である。
第59回 午前54(病理組織細胞学)
硝酸銀を使用するのはどれか。2つ選べ。
①Bodian染色 ②elastica van Gieson染色 ③Grimelius染色 ④Grocott染色 ⑤Masson trichrome染色
正答: ③Grimelius染色・④Grocott染色
ポイント 硝酸銀を用いる鍍銀染色のうち、本問ではGrimelius染色とGrocott染色が硝酸銀を使用する。Grimelius染色は硝酸銀の還元・沈着を利用して神経内分泌細胞の好銀性顆粒を黒褐色に描出する染色であり、Grocott染色は硝酸銀メセナミン液を用いて、クロム酸による酸化処理の後に真菌の細胞壁を黒く染め出す染色である。いずれも銀イオンが還元されて組織に沈着する反応を基盤としている点が共通している。染色名から使用する主薬を一つずつ対応させて識別していくことが要点となる。●硝酸銀を用いる鍍銀法=Grimelius・Grocott・PAMなど。●蛋白銀を主薬とする鍍銀法=Bodian●硝酸銀を使わない=elastica van Gieson(鉄ヘマトキシリン等を使用)・Masson trichrome(酸性色素による三色染色)。
選択肢ごとの解説
① Bodian染色は蛋白銀を主薬とする神経線維の鍍銀染色であり、硝酸銀を主薬として使用する本問の答えには該当しない染色である。 ② elastica van Gieson染色は弾性線維と膠原線維を染め分ける染色であり、硝酸銀を主薬としては使用しないため本問には該当しない。 ③ 正しい。Grimelius染色は硝酸銀を用いる鍍銀染色であり、神経内分泌細胞の好銀性顆粒を黒褐色に描出する。 ④ 正しい。Grocott染色は硝酸銀メセナミン液を用いる鍍銀染色であり、真菌の細胞壁を黒く染め出す染色である。 ⑤ Masson trichrome染色は酸性色素を用いる三色染色であり、硝酸銀は使用しないため本問の答えには該当しない染色である。
第59回 午前55(病理組織細胞学)
免疫組織化学染色法について誤っているのはどれか。
①洗浄には生理食塩液を用いる。 ②オートクレーブは抗原賦活化に用いられる。 ③ABC法はアビジンとビオチンとの親和性を利用する。 ④3,3 ʼ-diaminobenzidine(DAB)反応は茶褐色の陽性像を示す。 ⑤過酸化水素水は内因性ペルオキシダーゼの抑制に用いられる。
正答: ①洗浄には生理食塩液を用いる。
ポイント 免疫組織化学染色は抗原抗体反応を用いて組織内の特定の抗原を可視化する手法であり、各工程での試薬選択が最終的な結果を大きく左右する。洗浄には抗原抗体反応を妨げず非特異的な反応を抑えるため、生理食塩液ではなくリン酸緩衝生理食塩液(PBS)などの緩衝液を用いるのが原則であり、生理食塩液を用いるとする記述は誤りである。賦活化や検出系、発色、内因性酵素の阻止といった各手順は標準的な方法として確立しており、それぞれの試薬がどの段階でどのような目的のために使われるのかという役割を正確に理解しておくことが要点となる。●抗原賦活化=オートクレーブ・マイクロ波・酵素処理●検出系=ABC法(アビジンとビオチンの親和性)・LSAB法・ポリマー法●発色=DAB(茶褐色)●内因性酵素の阻止=過酸化水素水でペルオキシダーゼを抑制。
選択肢ごとの解説
① 誤り。洗浄には非特異的な反応を抑える緩衝液(PBSなど)を用いるのが原則であり、生理食塩液を用いるとする記述は適切でない。 ② オートクレーブによる加熱処理は架橋固定によって隠れた抗原を露出させる抗原賦活化に用いられるもので、正しい記述である。 ③ ABC法はアビジンとビオチンの強い親和性を利用して検出感度を高める検出法であり、正しい記述である選択肢である。 ④ DAB反応は酸化重合によって茶褐色の不溶性の陽性像を示す発色反応であり、正しい記述である選択肢である。 ⑤ 過酸化水素水は組織中の内因性ペルオキシダーゼを失活させて非特異的な発色を防ぐもので、正しい記述である選択肢である。
📋 まとめの表を見る:免疫組織化学染色法の原理と感度比較
感度は直接法<間接法<PAP法<ABC法<LSAB法・ポリマー法の順に高くなる。ホルマリン固定検体は抗原がマスクされるため、オートクレーブや蛋白分解酵素で抗原賦活化を行う。内因性ペルオキシダーゼは過酸化水素水で失活させ、発色にはジアミノベンジジン〈DAB〉(茶色)やアミノエチルカルバゾール〈AEC〉(赤色)を用いる。凍結切片にも実施可能。
第59回 午前56(病理組織細胞学)
透過型電子顕微鏡試料作製で使用しないのはどれか。
①エタノール ②オスミウム酸 ③クロロホルム ④グルタールアルデヒド ⑤プロピレンオキサイド
正答: ③クロロホルム
ポイント 透過型電子顕微鏡の試料作製では、まずグルタールアルデヒドで前固定を行い、オスミウム酸で後固定をしたうえで、エタノール系列で脱水し、プロピレンオキサイドで置換してから樹脂に包埋するという一連の工程をとる。この標準的な工程の中でクロロホルムは使用しない。クロロホルムは光学顕微鏡標本でのパラフィン透徹などに用いられる溶剤であり、電顕試料の置換にはエポキシ樹脂と親和性の高いプロピレンオキサイドを用いる。グルタールアルデヒドは主に蛋白を、オスミウム酸は主に脂質を固定する役割を担い、両者で微細構造を保持する。各試薬の役割を固定・脱水・置換・包埋という作製工程の流れに対応させて判断していくことが要点となる。●固定=グルタールアルデヒド(前固定)・オスミウム酸(後固定)●脱水=エタノール系列●置換=プロピレンオキサイド●包埋=エポキシ樹脂による包埋を行う。
選択肢ごとの解説
① エタノールは電子顕微鏡試料の脱水に用いる溶媒であり、試料作製の標準的な工程の中で使用する試薬である。 ② オスミウム酸は脂質を固定して膜構造の電子密度を高める後固定剤として、試料作製の工程で使用する試薬である。 ③ 正しい。クロロホルムは透過型電子顕微鏡の試料作製では使用せず、置換にはプロピレンオキサイドを用いる。 ④ グルタールアルデヒドは蛋白を架橋して微細構造を保持する前固定剤として、試料作製の工程で使用する試薬である。 ⑤ プロピレンオキサイドはエタノールでの脱水後に行う置換剤として、樹脂を浸透させる前の段階で使用する試薬である。
第59回 午前57(病理組織細胞学)
病理解剖における臨床検査技師の業務でないのはどれか。
①肉眼所見の記載 ②臓器の重量測定 ③肉眼臓器の写真撮影 ④顕微鏡標本の作製 ⑤遺族への説明
正答: ⑤遺族への説明
ポイント 病理解剖において臨床検査技師は剖検の介助や記録、各種の計測、組織標本の作製などを担うが、遺族への説明は医学的な判断を伴う行為であり医師の業務であって技師の業務ではない。剖検結果や死因の説明には診断や予後に関わる専門的な判断が必要となるため、医師が責任をもって行うこととされている。技師は肉眼所見の記載補助、臓器の重量測定、写真撮影、顕微鏡標本の作製などを担当し、これらの作業を通じて病理医による正確な病理診断を支援する役割を担っている。どこまでが技師の担当でどこからが医師の担当となるのか、業務範囲を医師と技師とで区別して正しく理解しておくことが要点となる。●臨床検査技師が担う業務=肉眼所見の記載・臓器の重量測定・写真撮影・顕微鏡標本の作製●医師が行う業務=執刀・死因の判断・病理診断・遺族への説明。
選択肢ごとの解説
① 肉眼所見の記載は剖検時に技師が補助したり記録したりする業務に含まれるものであり、臨床検査技師の業務である。 ② 臓器の重量測定は剖検において技師が担当する計測業務であり、臨床検査技師の業務に含まれるものである選択肢である。 ③ 肉眼臓器の写真撮影は所見を記録するために技師が行う業務であり、臨床検査技師の業務に含まれるものである。 ④ 顕微鏡標本の作製は病理診断を支える技師の中心的な業務であり、臨床検査技師の業務に含まれるものである。 ⑤ 正しい。遺族への説明は死因や診断に関わる医学的判断を伴い医師が行う業務であり、臨床検査技師の業務ではない。
第59回 午前58(病理組織細胞学)
特定化学物質に分類されるのはどれか。
①アセトン ②キシレン ③メタノール ④エタノール ⑤ホルムアルデヒド
正答: ⑤ホルムアルデヒド
ポイント 特定化学物質障害予防規則によって規制される特定化学物質に分類されるのはホルムアルデヒドである。ホルムアルデヒドは発がん性が指摘されており、特定化学物質(特別管理物質を含む)として作業環境測定や局所排気装置の設置、健康管理などが法令で義務づけられている。これに対しアセトン・キシレン・メタノールは有機溶剤中毒予防規則の対象となる有機溶剤であり、特定化学物質には分類されない。エタノールも化学的には有機溶剤だが、有機溶剤中毒予防規則が列挙する対象物質には含まれていない。病理検査ではホルマリンやキシレンなど人体に有害な薬品を日常的に扱うため発がん性物質の管理が重要であり、どの物質がどの規則の対象となるのかという規則ごとの対象物質を区別して取り扱っていくことが要点となる。●特定化学物質=ホルムアルデヒド等(発がん性等を有する物質)●有機溶剤(有機溶剤中毒予防規則の対象)=アセトン・キシレン・メタノールなど。エタノールは化学的には有機溶剤だが同規則の対象物質には列挙されていない。
選択肢ごとの解説
① アセトンは有機溶剤中毒予防規則の対象となる有機溶剤であり、特定化学物質には分類されない物質である選択肢である。 ② キシレンは透徹などに用いる有機溶剤で有機溶剤中毒予防規則の対象であり、特定化学物質には分類されない物質である。 ③ メタノールは有機溶剤に分類され有機溶剤中毒予防規則の対象となる物質であり、特定化学物質には分類されない。 ④ エタノールは化学的には有機溶剤だが有機溶剤中毒予防規則の列挙対象ではなく、特定化学物質にも分類されない。 ⑤ 正しい。ホルムアルデヒドは発がん性を有し特定化学物質に分類され、作業環境管理が法令で義務づけられている。
第59回 午前59(臨床血液学)
健常成人で造血能が最も低い部位はどれか。
正答: ②脛骨
ポイント 健常成人では加齢とともに造血の場が中軸骨すなわち体幹の骨に限局していき、四肢の長管骨では骨髄が脂肪髄に置き換わって造血能が低下していく。選択肢のうち脛骨は下腿の長管骨であり、成人では脂肪髄化が進んで造血能が最も低い部位となる。これに対し胸骨・腸骨・椎骨・頭蓋骨などの扁平骨や体幹の骨では成人でも赤色髄が残り造血が保たれるため、骨髄穿刺や骨髄生検の部位としては腸骨や胸骨など造血が保たれる部位が選ばれる。成長に伴って造血の場が四肢から体幹へと移っていくという、年齢に伴う赤色髄の分布の変化を理解しておくことが要点となる。●成人で造血が保たれる=胸骨・腸骨・椎骨・肋骨・頭蓋骨などの扁平骨や体幹骨●成人で造血が乏しい=脛骨・大腿骨などの四肢の長管骨(脂肪髄化が進む)。
選択肢ごとの解説
① 胸骨は扁平骨であり成人でも赤色髄が残って造血が盛んな部位であり、骨髄穿刺の部位としても用いられる造血能の高い部位である。 ② 正しい。脛骨は四肢の長管骨であり成人では骨髄が脂肪髄に置き換わるため、造血能が最も低い部位となる骨である。 ③ 腸骨は成人でも赤色髄が保たれて造血が行われる部位であり、骨髄生検や骨髄穿刺の主要な部位として用いられる。 ④ 椎骨は体幹の骨であり成人でも赤色髄が維持されて造血が行われる部位で、造血能が低い部位とはいえない部位である。 ⑤ 頭蓋骨は扁平骨であり成人でも赤色髄が残って造血が保たれる部位であり、造血能が最も低い部位とはいえない部位である。
第59回 午前60(臨床血液学)
血栓形成を抑制するのはどれか。2つ選べ。
①ADP ②コラーゲン ③アンチトロンビン ④プロスタサイクリン ⑤プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1(PAI-1)
正答: ③アンチトロンビン・④プロスタサイクリン
ポイント 血栓形成を抑制するのはアンチトロンビンとプロスタサイクリンである。アンチトロンビンはトロンビンや活性化第Ⅹ因子などのセリンプロテアーゼと結合してこれらを阻害する生理的な凝固抑制因子であり、ヘパリンによってその作用が著しく増強される。プロスタサイクリン(PGI2)は血管内皮細胞が産生する物質で、血小板凝集の抑制と血管の拡張という二つの作用を介して血栓形成を防ぐ。これらに対し血小板を活性化する因子や線溶反応を抑制する因子は、血栓を形成・残存させる促進する側に働く。各因子が血栓形成を促進する側に働くのか抑制する側に働くのかを対立させて整理しておくことが要点となる。●血栓を抑制=アンチトロンビン・プロスタサイクリン・プロテインC/S・トロンボモジュリン●血栓を促進=ADP・コラーゲン(いずれも血小板を活性化)・PAI-1(線溶を抑制)。
選択肢ごとの解説
① ADPは活性化した血小板から放出され他の血小板を活性化・凝集させる作用をもち、血栓形成を促進する側に働く物質である。 ② コラーゲンは血管損傷部で露出して血小板を粘着・活性化させ凝集を促す物質であり、血栓形成を促進する側に働く。 ③ 正しい。アンチトロンビンはトロンビンや活性化第Ⅹ因子を阻害する凝固抑制因子であり、血栓形成を抑制する。 ④ 正しい。プロスタサイクリンは血管内皮が産生して血小板凝集を抑制し血管を拡張させ、血栓形成を抑制する物質である。 ⑤ PAI-1はプラスミノゲンアクチベータを阻害して線溶を抑制する因子であり、血栓を残存・形成させる方向に働く物質である。
第59回 午前61(臨床血液学)
検査結果と疾患の組合せで誤っているのはどれか。
①MCV低値、網赤血球数減少 — 慢性炎症性疾患 ②MCV正常、網赤血球数減少 — 腎性貧血 ③MCV正常、網赤血球数増加 — 溶血性貧血 ④MCV高値、網赤血球数減少 — 巨赤芽球性貧血 ⑤MCV高値、網赤血球数増加 — 再生不良性貧血
正答: ⑤MCV高値、網赤血球数増加 — 再生不良性貧血
ポイント 貧血はMCVすなわち赤血球の大きさと、網赤血球数すなわち骨髄の赤血球産生反応の組合せによって分類される。再生不良性貧血は骨髄が低形成となり赤血球を含む血球全体の産生が低下する病態であるため、網赤血球数は減少し、MCVは正常からやや高値を示す。したがって『MCV高値、網赤血球数増加』を再生不良性貧血とする組合せは誤りである。網赤血球数の増加は骨髄の産生反応が亢進していることを意味し、骨髄低形成である再生不良性貧血とは矛盾する。各貧血の病態に基づいてMCVと網赤血球数という二つの指標の動きを一つずつ対応させていくことが要点となる。●小球性低色素=鉄欠乏性貧血・慢性炎症・サラセミア●正球性=腎性貧血(網赤血球低下)・再生不良性貧血(網赤血球低下)・溶血性貧血(網赤血球増加)●大球性=巨赤芽球性貧血(網赤血球低下)。
選択肢ごとの解説
① MCV低値・網赤血球減少は鉄の利用障害を背景とする慢性炎症性疾患の所見に合致しており、正しい組合せである選択肢である。 ② MCV正常・網赤血球減少はエリスロポエチン不足による産生低下を示す腎性貧血に合致しており、正しい組合せである。 ③ MCV正常・網赤血球増加は破壊に応じて骨髄が産生で反応する溶血性貧血に合致しており、正しい組合せである選択肢である。 ④ MCV高値・網赤血球減少はビタミンB₁₂や葉酸の不足による巨赤芽球性貧血の所見に合致しており、正しい組合せである。 ⑤ 誤り。再生不良性貧血は骨髄低形成で網赤血球が減少するため、網赤血球数増加とする組合せは誤りである選択肢である。
📋 まとめの表を見る:貧血の病態分類(MCV×網赤血球数)
網赤血球数は骨髄の赤血球産生反応を反映する指標。再生不良性貧血は骨髄が低形成となるため網赤血球は増加せず減少する点に注意(骨髄機能の亢進/低下を見誤らないこと)。
第59回 午前62(臨床血液学)
骨髄穿刺液検査結果で異常値はどれか。
①有核細胞数 — 12.8万/μl ②巨核球数 — 95/μl ③M-E比2.4 ④骨髄芽球比率 — 0.5 % ⑤肥満細胞比率 — 5%
正答: ⑤肥満細胞比率 — 5%
ポイント 骨髄穿刺液検査の各値を基準範囲と照合する問題であり、肥満細胞すなわちマスト細胞の比率5%は明らかな高値であって異常値である。健常な骨髄での肥満細胞比率はごく僅か(通常1%未満)であり、その増加は反応性の変化や肥満細胞症などを示唆する所見となる。これに対し有核細胞数・巨核球数・M-E比・骨髄芽球比率の提示値はいずれもおおむね基準範囲内に収まっており、明らかに逸脱した異常値とはいえない値である。骨髄検査の各指標について正常範囲を把握したうえで、提示された値が逸脱しているかどうかを判定していくことが要点となる。●骨髄の主な指標=有核細胞数・巨核球数・M-E比(顆粒球/赤芽球比、約2〜4)・芽球比率(数%以下)●異常を示す=肥満細胞比率の上昇(通常1%未満からの明らかな増加)。
選択肢ごとの解説
① 有核細胞数12.8万/μlは骨髄の有核細胞数としておおむね基準範囲内にある値であり、明らかな異常値とはいえない値である。 ② 巨核球数は骨髄でみられる範囲にある値であり、明らかな増加や減少を示す異常値とはいえない値である選択肢である。 ③ M-E比2.4は顆粒球系と赤芽球系の比としておおむね正常範囲にある値であり、異常値とはいえない値である選択肢である。 ④ 骨髄芽球比率0.5%は正常範囲内にある値であり、芽球の増加を示す異常値とはいえない値である選択肢である。 ⑤ 正しい。肥満細胞比率5%は通常1%未満とされる基準に比べ明らかな高値であり、異常値である選択肢である。
📋 まとめの表を見る:骨髄検査における基準的な値
第59回 午前63(臨床血液学)
プロトロンビン時間(PT)正常、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)延長を呈するのはどれか。
①血友病B ②ワルファリン服用 ③凝固第Ⅶ因子欠損症 ④無フィブリノゲン血症 ⑤特発性血小板減少性紫斑病
正答: ①血友病B
ポイント PTが正常でAPTTのみ延長するのは内因系の凝固因子の異常を示す。血友病Bは第Ⅸ因子の欠損による内因系の障害であり、外因系を反映するPTは正常で、内因系を反映するAPTTが延長する典型的な例である。これに対し第Ⅶ因子欠損やワルファリン服用ではPTが延長し、無フィブリノゲン血症では共通系の障害でPTとAPTTがともに延長する。特発性血小板減少性紫斑病は血小板数の減少が主体の病態であり、凝固因子そのものの異常ではないため凝固時間は基本的に正常である。PTとAPTTのどちらが延長しているかという組合せから、外因系・内因系・共通系のうち障害されている部位を絞り込んでいくことが要点となる。●PTのみ延長=第Ⅶ因子欠損・ワルファリン服用の初期●APTTのみ延長=血友病A/B・第Ⅺ/Ⅻ因子欠損●両方が延長=無フィブリノゲン血症・DIC・肝障害。
選択肢ごとの解説
① 正しい。血友病Bは第Ⅸ因子の欠損で内因系が障害され、PT正常でAPTTのみ延長するパターンを呈する。 ② ワルファリン服用はビタミンK依存性因子(Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)を低下させPTが延長する点で、本問のパターンとは異なる選択肢である。 ③ 第Ⅶ因子欠損症は外因系の障害でPTが延長しAPTTは正常となるため、本問のパターンとは逆の所見を示す選択肢である。 ④ 無フィブリノゲン血症は共通系の障害でPTとAPTTがともに延長するため、本問のパターンとは異なる所見を示す選択肢である。 ⑤ 特発性血小板減少性紫斑病は血小板減少が主体でPTとAPTTは基本的に正常であり、本問のパターンとは異なる選択肢である。
第59回 午前64(臨床血液学)
32歳の男性。深部静脈血栓症と肺塞栓症で入院した。妹も肺塞栓症の既往がある。検査が必要なのはどれか。
①プラスミノゲン ②アンチトロンビン ③第Ⅷ因子インヒビター ④可溶性トロンボモジュリン ⑤von Willebrand因子(VWF)
正答: ②アンチトロンビン
ポイント 若年で深部静脈血栓症と肺塞栓症を発症し、妹にも肺塞栓症の既往があるという家族歴があることから、遺伝性の血栓性素因が強く疑われ、アンチトロンビンの検査が必要となる。アンチトロンビン欠乏症は常染色体顕性遺伝の血栓性素因であり、若年での発症・反復性・家族集積性の静脈血栓症を引き起こす。本例の若年発症・家族歴あり・深部静脈血栓と肺塞栓という臨床像はこの病態によく合致するため、アンチトロンビンなどの凝固抑制因子の活性を測定する必要がある。若年・反復性・家族歴ありという臨床像から、出血傾向の検査ではなく血栓性素因の検索へと検査の方向を向ける点が要点となる。●遺伝性血栓性素因=アンチトロンビン欠乏・プロテインC欠乏・プロテインS欠乏・第Ⅴ因子Leiden変異(欧米)●検査の方向=凝固抑制因子の活性測定を行う。
選択肢ごとの解説
① プラスミノゲンは線溶系の因子であり、その異常も血栓傾向を生じうるが家族性静脈血栓で最初に検索する項目には該当しない。 ② 正しい。アンチトロンビン欠乏症は遺伝性の血栓性素因であり、若年・家族性の静脈血栓症を説明し検査が必要である。 ③ 第Ⅷ因子インヒビターは後天性血友病など出血傾向の原因となるものであり、血栓症の精査項目には該当しない選択肢である。 ④ 可溶性トロンボモジュリンは血管内皮の障害を反映する指標であり、遺伝性の血栓性素因の第一選択検査には該当しない。 ⑤ von Willebrand因子は止血や出血傾向の評価に関わる因子であり、本例の血栓性素因の検索対象には該当しない選択肢である。
第59回 午前65(臨床血液学)
好中球の核の過分葉がみられるのはどれか。
①悪性貧血 ②再生不良性貧血 ③腎性貧血 ④赤芽球癆 ⑤鉄欠乏性貧血
正答: ①悪性貧血
ポイント 好中球の核の過分葉すなわち5分葉以上の核をもつ好中球の出現は、赤血球系だけでなく顆粒球系にもDNA合成障害が及ぶ巨赤芽球性貧血でみられる所見である。悪性貧血は胃の内因子の欠乏によるビタミンB₁₂の吸収障害によって生じる巨赤芽球性貧血であり、過分葉好中球・大球性貧血・汎血球減少などの特徴的な所見を呈する。これに対し産生低下や鉄欠乏による貧血では過分葉好中球は特徴的ではない。DNA合成障害が赤血球系だけでなく顆粒球系にも及んでいるかという観点から核の成熟異常を考えていくことが要点となる。●過分葉好中球がみられる=巨赤芽球性貧血(悪性貧血・葉酸欠乏)●みられにくい=鉄欠乏性貧血(小球性)・腎性貧血・再生不良性貧血・赤芽球癆(いずれも産生低下が主体)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。悪性貧血はビタミンB₁₂欠乏による巨赤芽球性貧血であり、DNA合成障害により好中球の核過分葉がみられる。 ② 再生不良性貧血は骨髄低形成による汎血球減少が主体の病態であり、好中球の核過分葉は特徴的な所見ではない選択肢である。 ③ 腎性貧血はエリスロポエチン不足による正球性正色素性貧血であり、好中球の核過分葉はみられない病態である選択肢である。 ④ 赤芽球癆は赤芽球系の選択的な減少が特徴の病態であり、好中球の核過分葉を呈する病態ではない選択肢である。 ⑤ 鉄欠乏性貧血は小球性低色素性の貧血であり、好中球の核過分葉はみられない貧血である選択肢の一つである。
第59回 午前66(臨床血液学)
34歳の男性。末梢血の普通染色標本を別に示す。矢印で示す血球を多く認めることから、検査結果として考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59aA066.2d2a8e4b3c.jpg
①白血球数偽低値 ②白血球数偽高値 ③血小板数偽低値 ④血小板数偽高値 ⑤破砕赤血球出現
正答: ③血小板数偽低値
ポイント 矢印が示すのは、赤血球と同程度以上に大きい巨大血小板である。サイズによって血球を分類する自動血球計数装置では、血小板の判定範囲を外れた巨大血小板が計数されず、血小板数の偽低値を生じることがある。塗抹標本の鏡検で巨大血小板を確認し、必要に応じて別の計数法で評価する。血小板凝集塊やEDTA依存性血小板凝集も偽低値の原因になるが、本図の矢印はそれらではなく巨大血小板を示している。●血小板数偽低値の原因=巨大血小板・血小板凝集塊・EDTA依存性の血小板凝集。●白血球数への影響=有核赤血球で偽高値・凝集や破砕で計数値が変動するなどがある。
選択肢ごとの解説
① 矢印は巨大血小板であり、白血球数の偽低値を示す所見ではない。 ② 白血球数偽高値は有核赤血球などによって生じる現象であり、矢印が示す血小板関連の所見とは合致しない選択肢である。 ③ 正しい。矢印は赤血球と同程度以上に大きい巨大血小板である。装置の血小板サイズの判定範囲を外れると計数されず、血小板数が偽低値となる。 ④ 血小板数の偽高値は赤血球破砕片などを血小板として誤計数したときに起こる。本図の巨大血小板による計数漏れとは逆である。 ⑤ 破砕赤血球出現は溶血性の病態でみられる所見であり、矢印が示す血小板関連の血球の説明にはならない選択肢である。
📋 まとめの表を見る:自動血球計数装置における主な偽値(測定誤差)要因
第59回 午前67(臨床血液学)
骨髄細胞の染色体核型を別に示す。矢印で示す異常を認めるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59aA067.edafbb5631.jpg
①真性多血症 ②骨髄線維症 ③多発性骨髄腫 ④骨髄異形成症候群 ⑤慢性骨髄性白血病
正答: ④骨髄異形成症候群
ポイント 矢印は5番染色体の長腕欠失(5q−)を示す。この異常を認める代表的な疾患は骨髄異形成症候群である。骨髄異形成症候群では5番染色体長腕の欠失(5q-)、7番染色体のモノソミーや長腕欠失(−7や7q-)、8番染色体トリソミー(+8)など、多様で不均一な染色体異常がみられ、無効造血による血球減少と血球形態の異形成を呈する。慢性骨髄性白血病のt(9;22)のような特定の融合遺伝子に特徴づけられる疾患とは異なり、不均一で多様な核型異常がみられること自体が骨髄異形成症候群の手がかりとなる点が特徴である。どのような染色体異常がどの疾患に対応するのかを結びつけて考えていくことが要点となる。●骨髄異形成症候群=5q-・−7・+8など多様な核型異常●慢性骨髄性白血病=t(9;22)によるPh染色体●真性多血症=JAK2変異●骨髄線維症=骨髄の線維化と涙滴赤血球の出現。
選択肢ごとの解説
① 真性多血症はJAK2 V617F変異を背景とする赤血球増加が主体の病態であり、本問の矢印が示す核型異常像とは合致しない。 ② 骨髄線維症は骨髄の線維化と髄外造血、涙滴赤血球の出現が特徴の病態であり、本問の核型異常を示す所見とは合致しない。 ③ 多発性骨髄腫は骨髄での形質細胞の腫瘍性増殖が主体の病態であり、本問の骨髄系の核型異常を示す所見とは異なる選択肢である。 ④ 正しい。矢印の5番染色体は対となる染色体に比べ長腕が短く、5番染色体長腕欠失(5q−)を示す。5q−は骨髄異形成症候群でみられる代表的な染色体異常の一つである。 ⑤ 慢性骨髄性白血病はt(9;22)によるPh染色体が特徴の病態であり、本問の矢印が示す核型異常とは合致しない選択肢である。
📋 まとめの表を見る:骨髄異形成症候群〈MDS〉の血球系統別 異形成所見
骨髄は多くの場合、正〜過形成(低形成の病型もある)、芽球比率は20%未満(20%以上は急性骨髄性白血病)。染色体異常は5q-・-7/7q-・+8など多様で、病型特異的なものは少ない。
第59回 午前68(臨床微生物学)
TSI培地とSIM培地にグラム陰性桿菌を接種して1日後の写真(別冊No.11)を別に示す。陽性の性状はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59aA068.74658b9be5.jpg
①運動性 ②ガス産生 ③ブドウ糖分解 ④硫化水素産生 ⑤インドールピルビン酸産生
正答: ③ブドウ糖分解
ポイント TSI培地とSIM培地にグラム陰性桿菌を接種した写真から陽性と判断できる性状はブドウ糖分解である。TSI培地は斜面と高層の色の変化によって糖分解を判定するもので、ブドウ糖が分解されると高層部が酸性化して黄変する。SIM培地は運動性・硫化水素・インドールに加え、国内で標準的に用いられる製品ではインドールピルビン酸(IPA)産生も一本の培地で確認できる確認培地である。本問の所見では、TSI培地高層部の黄変によってブドウ糖分解が陽性であることが示されている。TSI培地とSIM培地のそれぞれで判定できる項目とその陽性像を一つずつ対応させて読み取っていくことが要点となる。●TSI=糖分解(黄変)・ガス産生(培地の亀裂や気泡)・硫化水素(黒変)●SIM=運動性(穿刺線からの拡散発育)・硫化水素(黒変)・インドール(試薬を加えて赤色を呈する)・インドールピルビン酸(IPA)産生。
選択肢ごとの解説
① 運動性はSIM培地で穿刺線からの拡散発育として判定する性状であるが、本写真で陽性とされている性状はこれではない選択肢である。 ② ガス産生はTSI培地の亀裂や気泡として判定する性状であるが、本写真で陽性とされている性状には該当しない選択肢である。 ③ 正しい。ブドウ糖分解はTSI培地高層部の黄変として陽性を示しており、これが本問における陽性の性状である。 ④ 硫化水素産生は培地の黒変として判定する性状であるが、本写真で陽性とされている所見には該当しない選択肢である。 ⑤ インドールピルビン酸産生はSIM培地で確認できる性状だが、本写真では陽性を示す所見がなく、本問で陽性とされている性状には該当しない。
📋 まとめの表を見る:TSI培地の判定基準(斜面・高層の変色とガス・硫化水素の読み方)
大腸菌など乳糖分解菌は斜面・高層とも黄変するが、サルモネラ・赤痢菌など乳糖非分解菌は高層のみ黄変し斜面は赤色のまま残る。
第59回 午前69(臨床微生物学)
TSI培地とSIM培地にグラム陰性桿菌を接種して1日後の写真(別冊No.11)を別に示す。考えられる菌種はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59aA069.ec2100161c.jpg
①Citrobacter freundii ②Klebsiella pneumoniae ③Proteus vulgaris ④Serratia marcescens ⑤Shigella dysenteriae
正答: ⑤Shigella dysenteriae
ポイント TSI培地とSIM培地の所見からグラム陰性桿菌の菌種を推定すると、Shigella dysenteriaeすなわち赤痢菌が考えられる。赤痢菌は乳糖非分解、ブドウ糖分解(ガス産生はなし)、硫化水素陰性、非運動性という生化学性状をもっており、本問の所見によく合致する。硫化水素陽性や運動性陽性を示す菌、あるいは乳糖を分解してガスを盛んに産生する菌とは性状が区別される。乳糖分解・ブドウ糖分解・硫化水素・運動性といった各性状の組合せから、矛盾しない菌種を一つずつ絞り込んでいくことが要点となる。●非運動性・H₂S陰性・乳糖非分解=Shigella●H₂S陽性=Citrobacter・Proteus・Salmonella●運動性・尿素分解=Proteus●赤色集落の形成=Serratia(プロジギオシンによる)。
選択肢ごとの解説
① Citrobacter freundiiは硫化水素陽性となることが多い菌であり、硫化水素陰性を示す本問の所見とは合致しにくい選択肢である。 ② Klebsiella pneumoniaeは乳糖分解とガス産生が旺盛で運動性をもたない菌であり、本問の生化学性状とは合致しない選択肢である。 ③ Proteus vulgarisは運動性・尿素分解・硫化水素陽性が特徴の菌であり、本問の所見とは合致しない選択肢である。 ④ Serratia marcescensは赤色集落の形成やDNase陽性が特徴の菌であり、本問の所見とは合致しない選択肢である。 ⑤ 正しい。Shigella dysenteriaeは非運動性・硫化水素陰性・乳糖非分解の菌であり、本問の生化学性状に合致する。
📋 まとめの表を見る:腸内細菌科の生化学的性状の鑑別(乳糖分解・硫化水素・リジン脱炭酸・インドール)
サルモネラ・赤痢菌など乳糖非分解菌はTSI培地で高層部のみ黄変し斜面は赤色のまま残るが、大腸菌など乳糖分解菌は斜面・高層とも黄変する。チフス菌(Typhi)はTSI培地でガスをほとんど産生せず硫化水素も少量にとどまる点が他の多くのSalmonella血清型と異なる。尿素分解(ウレアーゼ)陽性の代表はProteus属・Morganella属・Providencia属。
第59回 午前70(臨床微生物学)
内毒素(endotoxin)活性の主成分となっている菌体の部位はどれか。
①外膜 ②細胞質 ③核様体 ④細胞質膜 ⑤ペプチドグリカン層
正答: ①外膜
ポイント 内毒素すなわちエンドトキシンの活性の本体はグラム陰性菌の外膜に存在するリポ多糖(LPS)のリピドA部分であり、したがって活性の主成分となる菌体の部位は外膜である。LPSは菌体が崩壊すると遊離して、発熱・血圧低下(ショック)・播種性血管内凝固(DIC)などを引き起こす。菌が能動的に分泌する蛋白である外毒素とは異なり、内毒素は菌体の構成成分として存在している点が特徴である。内毒素と外毒素について、毒素の存在する部位とその化学的な性質をそれぞれ区別して理解しておくことが要点となる。●グラム陰性菌の外膜=LPS(内毒素・リピドA)が存在する●細胞壁の骨格=ペプチドグリカン層●外毒素=菌が分泌する蛋白毒素で熱に弱いものが多い。
選択肢ごとの解説
① 正しい。内毒素の活性本体であるLPS(リピドA)はグラム陰性菌の外膜に存在しており、活性の主成分となる部位である。 ② 細胞質は代謝反応の場であり、内毒素活性の主成分であるLPSが存在する部位ではないため本問の答えには該当しない。 ③ 核様体は細菌のDNAが局在する領域であり、内毒素活性の主成分が存在する部位ではないため本問の答えには該当しない。 ④ 細胞質膜は物質の輸送やエネルギー産生を担う膜であり、内毒素活性の主成分が存在する部位ではない選択肢である。 ⑤ ペプチドグリカン層は細胞壁の骨格を構成する部位であり、内毒素LPSが存在する外膜とは異なる部位である選択肢である。
第59回 午前71(臨床微生物学)
細菌の形態と染色法の組合せで正しいのはどれか。
①異染小体 — Leifson法 ②芽胞 — Wirtz法 ③莢膜 — Grocott染色 ④抗酸菌 — Neisser染色 ⑤鞭毛 — Hiss法
正答: ②芽胞 — Wirtz法
ポイント 細菌の形態とそれを染める特殊染色との組合せで正しいのは芽胞−Wirtz法である。Wirtz法(Wirtz-Conklin法)はマラカイトグリーンを加熱して芽胞の内部に浸透させ、芽胞を緑、菌体を赤に染め分ける芽胞染色である。これに対し異染小体はNeisser法やAlbert法、莢膜はHiss法や墨汁法、鞭毛はLeifson法、抗酸菌はZiehl-Neelsen法によって染めるため、他の組合せはいずれも誤りである。芽胞・異染小体・莢膜・鞭毛・抗酸菌という染める対象の構造と、それに対応する染色法を正確に結びつけておくことが要点となる。●芽胞=Wirtz法●異染小体=Neisser法/Albert法●莢膜=Hiss法・墨汁法●鞭毛=Leifson法●抗酸菌=Ziehl-Neelsen法。
選択肢ごとの解説
① 異染小体はNeisser法やAlbert法で染めるものであり、Leifson法は鞭毛染色であるためこの組合せは誤りである選択肢である。 ② 正しい。芽胞はWirtz法(Wirtz-Conklin法)によって緑色に染め分けられ、形態と染色法の組合せが正しい選択肢である。 ③ 莢膜はHiss法や墨汁法で示すものであり、Grocott染色は真菌染色であるためこの組合せは誤りである選択肢である。 ④ 抗酸菌はZiehl-Neelsen法で染めるものであり、Neisser法は異染小体染色であるためこの組合せは誤りである選択肢である。 ⑤ 鞭毛はLeifson法で染めるものであり、Hiss法は莢膜染色であるためこの組合せは誤りである選択肢である。
📋 まとめの表を見る:微生物の染色法と検出対象(構造・真菌・特殊病原体)
第59回 午前72(臨床微生物学)
衛星現象がみられるのはどれか。
①Bordetella pertussis ②Haemophilus influenzae ③Legionella pneumophila ④Pseudomonas aeruginosa ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ②Haemophilus influenzae
ポイント 衛星現象がみられるのはHaemophilus influenzaeである。インフルエンザ菌は発育にX因子(ヘミン)とV因子(NAD)を要求し、黄色ブドウ球菌などがV因子を供給するため、血液寒天培地上でブドウ球菌の集落の周囲でのみ良好に発育し、集落から遠ざかるほど発育が小さくなるという衛星現象を示す。これに対し特殊な発育要件をもつ他の菌は専用の培地で培養され、衛星現象は示さない。どの菌がどの発育因子を要求し、それがどの培地での発育や現象につながるのかという関係を理解しておくことが要点となる。●衛星現象=Haemophilus influenzae(V因子を要求する)●発育因子=X因子・V因子●特殊な発育要件=Legionella(システインと鉄を要求するBCYE培地)・Bordetella(ボルデー・ジャング培地)。
選択肢ごとの解説
① Bordetella pertussisはボルデー・ジャング培地などで発育する菌であり、衛星現象は示さないため本問の答えには該当しない。 ② 正しい。Haemophilus influenzaeはV因子を要求し、ブドウ球菌の集落周囲で発育する衛星現象を示す菌である。 ③ Legionella pneumophilaはシステインと鉄を要するBCYE培地で発育する菌であり、衛星現象は示さない選択肢である。 ④ Pseudomonas aeruginosaは栄養要求が少なく各種の培地でよく発育する菌であり、衛星現象は示さない選択肢である。 ⑤ Streptococcus pneumoniaeは衛星現象を示さず、オプトヒン感受性や胆汁溶解性などで同定される菌である選択肢である。
第59回 午前73(臨床微生物学)
プラスミドで誤っているのはどれか。
①核内で複製する。 ②環状のDNAである。 ③接合によって伝達する。 ④耐性因子の1つである。 ⑤染色体から独立した遺伝体である。
正答: ①核内で複製する。
ポイント プラスミドは細菌の細胞質に存在する、染色体から独立した環状のDNAであり、染色体とは別に自律的に複製する遺伝因子である。真核生物のような明確な核をもたない細菌においては、核内で複製するという記述は誤りである。プラスミドは薬剤耐性遺伝子などを担っており、接合・形質導入・形質転換といった機構によって他の菌へと伝達され、薬剤耐性の拡散に関与する。環状であること・自律複製すること・接合で伝達すること・耐性因子であることなど、プラスミドの構造・複製・伝達・機能の特徴を正しく把握しておくことが要点となる。●プラスミドの特徴=環状のDNA・自律的に複製・染色体から独立・接合で伝達・耐性因子(Rプラスミド)●誤り=核内で複製(細菌には明確な核はない)。
選択肢ごとの解説
① 誤り。細菌には明確な核がなくプラスミドは細胞質で自律的に複製するため、核内で複製するとする記述は誤りである選択肢である。 ② プラスミドは染色体とは別に存在する環状のDNAであるとする記述であり、正しい記述である選択肢である。 ③ プラスミドは接合によって他の菌へと伝達されることがあるものであり、正しい記述である選択肢の一つである。 ④ 薬剤耐性の遺伝子を担うRプラスミドがあり、耐性因子の1つであるとする記述は正しい選択肢である選択肢である。 ⑤ プラスミドは染色体から独立して存在し独自に複製する遺伝体であり、正しい記述である選択肢である選択肢である。
第59回 午前74(臨床微生物学)
薬剤感受性検査に使用するのはどれか。
①普通寒天培地 ②トリプティケースソイ寒天培地 ③ハートインフュージョン寒天培地 ④ブレインハートインフュージョン寒天培地 ⑤Mueller-Hinton寒天培地
正答: ⑤Mueller-Hinton寒天培地
ポイント 薬剤感受性検査すなわちディスク拡散法などに使用する標準的な培地はMueller-Hinton寒天培地である。CLSIなどの標準法によって規定されており、組成が一定で薬剤の拡散性が安定しているため、再現性のある阻止円が得られることから標準培地として採用されている。これに対し普通寒天やトリプティケースソイ、ハートインフュージョンは一般的な発育培地であり、ブレインハートインフュージョンは栄養要求の高い菌の発育に用いる培地であって、いずれも感受性検査の標準培地ではない。検査の目的に応じた適切な培地を選択することが要点となる。●薬剤感受性検査=Mueller-Hinton寒天培地(標準法で規定)●一般的な培養=普通寒天・トリプティケースソイ・ハートインフュージョン●栄養要求の高い菌=ブレインハートインフュージョン。
選択肢ごとの解説
① 普通寒天培地は一般的な細菌の発育に用いる培地であり、薬剤感受性検査の標準培地には該当しない培地である選択肢である。 ② トリプティケースソイ寒天培地は多目的に用いる発育培地であり、薬剤感受性検査の標準培地には該当しない培地である。 ③ ハートインフュージョン寒天培地は栄養に富む発育培地であるが、薬剤感受性検査の標準培地には該当しない培地である。 ④ ブレインハートインフュージョン寒天培地は栄養要求の高い菌の発育に用いる培地であり、感受性検査の標準培地ではない。 ⑤ 正しい。Mueller-Hinton寒天培地は薬剤の拡散性が安定しており、薬剤感受性検査の標準培地として用いられる。
📋 まとめの表を見る:細菌の選択分離培地・輸送/性状確認/感受性検査用培地
第59回 午前75(臨床微生物学)
細菌増殖においてDNA複製を阻害する抗菌薬はどれか。
①アンピシリン ②ミノサイクリン ③ゲンタマイシン ④エリスロマイシン ⑤シプロフロキサシン
正答: ⑤シプロフロキサシン
ポイント 細菌の増殖においてDNA複製を阻害する抗菌薬はシプロフロキサシンすなわちフルオロキノロン系の薬剤である。キノロン系はDNAジャイレース(トポイソメラーゼⅡ)やトポイソメラーゼⅣを阻害して、DNAの超らせん形成や複製を妨げることで抗菌作用を示す。他の選択肢の抗菌薬はそれぞれ細胞壁合成や蛋白合成といった別の作用点をもっている。細胞壁合成阻害・蛋白合成阻害・核酸合成阻害というように、抗菌薬を作用機序ごとに分類して対応させながら識別していくことが要点となる。●DNA複製阻害=キノロン(シプロフロキサシン、ジャイレース阻害)/RNA合成阻害=リファンピシン●細胞壁合成阻害=アンピシリン(βラクタム)●蛋白合成阻害=ミノサイクリン(テトラサイクリン系)・ゲンタマイシン(アミノグリコシド)・エリスロマイシン(マクロライド)。
選択肢ごとの解説
① アンピシリンはβラクタム系で細胞壁のペプチドグリカン合成を阻害する抗菌薬であり、DNA複製を阻害する薬剤ではない。 ② ミノサイクリンはテトラサイクリン系で30Sリボソームに作用して蛋白合成を阻害する抗菌薬であり、DNA複製阻害ではない。 ③ ゲンタマイシンはアミノグリコシド系で30Sリボソームに作用して蛋白合成を阻害する抗菌薬であり、DNA複製阻害ではない。 ④ エリスロマイシンはマクロライド系で50Sリボソームに作用して蛋白合成を阻害する抗菌薬であり、DNA複製阻害ではない。 ⑤ 正しい。シプロフロキサシンはDNAジャイレースを阻害してDNA複製を妨げるフルオロキノロン系の抗菌薬である。
第59回 午前76(臨床微生物学)
カルバペネム系抗菌薬が有効なのはどれか。
①多剤耐性結核菌 ②多剤耐性緑膿菌 ③バンコマイシン耐性腸球菌 ④メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 ⑤基質拡張型βラクタマーゼ産生大腸菌
正答: ⑤基質拡張型βラクタマーゼ産生大腸菌
ポイント カルバペネム系(メロペネム、イミペネムなど)はβラクタム系抗菌薬の中で最も抗菌スペクトルが広く、グラム陽性菌・グラム陰性菌・嫌気性菌に幅広く有効である。多くのβラクタマーゼに対して安定であり、第三世代セフェムを分解する基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌に対しても有効性を保つため、ESBL産生大腸菌感染症の第一選択薬となる。ただしESBLとは異なる機序であるメタロβラクタマーゼやKPC型カルバペネマーゼを産生する菌には無効である。●カルバペネムが無効な代表的耐性菌=多剤耐性緑膿菌・カルバペネム耐性腸内細菌目細菌・MRSA・バンコマイシン耐性腸球菌・多剤耐性結核菌。●ESBLの特徴=ペニシリナーゼが変異して第三世代セフェムやモノバクタムまで分解する酵素で、カルバペネムやセファマイシンには感受性を残すことが多く、クラブラン酸などのβラクタマーゼ阻害薬で活性が抑えられる。
選択肢ごとの解説
① 多剤耐性結核菌はリファンピシンとイソニアジドに耐性を示す結核菌で抗結核薬の多剤併用が必要であり、カルバペネムの治療適応外である。 ② 多剤耐性緑膿菌はカルバペネム・フルオロキノロン・アミノグリコシドの三系統すべてに耐性を示す緑膿菌であり、カルバペネムは効果が期待できない。 ③ バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)はグリコペプチド系に耐性の腸球菌で、もともとβラクタム系の効きが悪くカルバペネムも有効とはいえない。 ④ メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)はβラクタムが結合しにくいPBP2'をもちβラクタム系全般に耐性であるため、カルバペネムは無効である。 ⑤ 正しい。基質拡張型βラクタマーゼ産生大腸菌はセフェムを分解するがカルバペネムには感受性を残すため、カルバペネムが有効な治療薬となる。
第59回 午前77(臨床微生物学)
流行性角結膜炎の主な感染経路はどれか。
①空気感染 ②経口感染 ③血液感染 ④接触感染 ⑤飛沫感染
正答: ④接触感染
ポイント 流行性角結膜炎はアデノウイルス(主に8型・19型・37型など)による急性の角結膜炎で、結膜の強い充血・多量の眼脂・流涙・耳前リンパ節腫脹を伴い、感染力が非常に強いことが特徴である。涙液や眼脂に多量に含まれるウイルスが患者の手指やタオル、点眼器具、ドアノブなどを介して伝播する接触感染が主な経路であり、医療機関内や家庭内での集団発生をきたしやすい。手指衛生と器具の消毒が予防の基本となる。●接触感染する代表=アデノウイルス結膜炎・ノロウイルス・MRSA・緑膿菌・疥癬。●飛沫感染する代表=インフルエンザ・風疹・流行性耳下腺炎・百日咳・髄膜炎菌。●空気(飛沫核)感染する代表=結核・麻疹・水痘。アデノウイルスはアルコール抵抗性が高く次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効で、医療従事者の手指衛生の徹底が集団感染防止に重要である。
選択肢ごとの解説
① 空気感染(飛沫核感染)は結核・麻疹・水痘でみられる経路であり、流行性角結膜炎の主たる感染経路ではない。 ② 経口感染は汚染された飲食物や飲料水を介して伝わる感染経路で、ノロウイルスや食中毒菌などでみられ、本症の主たる感染経路ではない。 ③ 血液感染はB型・C型肝炎ウイルスやHIVなどの経路であり、結膜炎であるこの疾患の伝播経路ではない。 ④ 正しい。眼脂や涙液中のアデノウイルスが手指やタオル・点眼器具を介して伝わる接触感染が主たる感染経路である。 ⑤ 飛沫感染は咳やくしゃみによる飛沫を介する経路で呼吸器感染症が中心であり、本症の主たる感染経路ではない。
第59回 午前78(臨床微生物学)
ウイルス感染症はどれか。2つ選べ。
①結核 ②麻疹 ③ペスト ④ジフテリア ⑤急性灰白髄炎(ポリオ)
正答: ②麻疹・⑤急性灰白髄炎(ポリオ)
ポイント ウイルス感染症は核酸とそれを包むカプシドのみからなり自己増殖能をもたないウイルスが、宿主細胞内に侵入して増殖することで起こる疾患である。麻疹は麻疹ウイルス、急性灰白髄炎(ポリオ)はポリオウイルスによるウイルス感染症で、ともに生ワクチンや不活化ワクチンによる予防が行われている。これに対し結核・ペスト・ジフテリアはいずれも細菌が原因の細菌感染症であり、抗菌薬による治療が対象となる。●ウイルス感染症の代表=麻疹・ポリオ・風疹・インフルエンザ・ウイルス性肝炎・水痘・流行性耳下腺炎。●細菌感染症の代表=結核(抗酸菌)・ペスト(ペスト菌)・ジフテリア(ジフテリア菌)・破傷風・コレラ・百日咳。ウイルスは抗菌薬が無効で抗ウイルス薬やワクチンが対策の中心となり、細菌は培養や薬剤感受性試験に基づく抗菌薬治療が行われる。
選択肢ごとの解説
① 結核は抗酸菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による細菌感染症であり、ウイルス感染症ではない。 ② 正しい。麻疹はパラミクソウイルス科の麻疹ウイルスによるウイルス感染症で、高熱と全身性の発疹を呈する。 ③ ペストはペスト菌(Yersinia pestis)による細菌感染症で、ノミを媒介として伝播する人獣共通感染症である。 ④ ジフテリアはジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)が産生する外毒素による細菌感染症であり、ウイルス感染症ではない。 ⑤ 正しい。急性灰白髄炎(ポリオ)はエンテロウイルス属のポリオウイルスによるウイルス感染症で、弛緩性麻痺を起こす。
第59回 午前79(臨床免疫学)
ヘルパーT細胞について誤っているのはどれか。
①CD4が陽性である。 ②Th1とTh2がある。 ③細胞性免疫に関与する。 ④MHCクラスⅠ抗原と反応する。 ⑤インターロイキン2を産生する。
正答: ④MHCクラスⅠ抗原と反応する。
ポイント ヘルパーT細胞は表面にCD4を発現するT細胞で、抗原提示細胞上のMHCクラスⅡ分子に提示された抗原ペプチドを認識して活性化する。産生するサイトカインのパターンによりTh1とTh2に分化し、Th1はインターロイキン2やインターフェロンγを産生して細胞性免疫を補助し、Th2はインターロイキン4などを産生して液性免疫を補助する。MHCクラスⅠ抗原を認識するのはCD8を発現する細胞傷害性T細胞であり、ヘルパーT細胞ではない。●CD4陽性ヘルパーT細胞=MHCクラスⅡを認識しTh1/Th2に分化してB細胞やマクロファージを補助する。●CD8陽性細胞傷害性T細胞=MHCクラスⅠを認識しウイルス感染細胞や腫瘍細胞を直接傷害する。なおHIVはCD4陽性T細胞に感染してこれを減少させ、細胞性免疫の低下から日和見感染を招く。
選択肢ごとの解説
① ヘルパーT細胞は細胞表面に補助受容体であるCD4分子を陽性に発現するT細胞であるため、この記述は正しい内容である。 ② ヘルパーT細胞は産生サイトカインのパターンによりTh1とTh2に分化するため、この記述は正しい内容である。 ③ Th1サブセットがインターフェロンγなどを産生して細胞性免疫を担うため、細胞性免疫に関与するという記述は正しい。 ④ 誤り。MHCクラスⅠ抗原を認識するのはCD8陽性の細胞傷害性T細胞であり、CD4陽性ヘルパーT細胞はMHCクラスⅡを認識する。 ⑤ ヘルパーT細胞(特にTh1)はインターロイキン2を産生してT細胞の増殖を促すため、この記述は正しい内容である。
第59回 午前80(臨床免疫学)
抗原についての組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
①完全抗原 — カルジオリピン ②自己抗原 — HLA ③同種抗原 — Gm ④細胞質抗原 — ミトコンドリア ⑤不完全抗原 — 蛋白
正答: ③同種抗原 — Gm・④細胞質抗原 — ミトコンドリア
ポイント 抗原は、単独で免疫応答を誘導できる完全抗原と、それ自体は免疫原性をもたず担体蛋白に結合して初めて抗体産生を誘導する不完全抗原(ハプテン)に分けられる。同種抗原は同一種内の個体間で異なる抗原を指し、免疫グロブリン重鎖の遺伝的多型であるGm因子(アロタイプ)がこれに該当する。細胞質抗原は細胞質内の構成成分に対する抗原で、ミトコンドリアはその例であり、抗ミトコンドリア抗体は原発性胆汁性胆管炎で陽性となる。●自己抗原=核・ミトコンドリア・DNAなど自己の構成成分で自己抗体の標的となる。●同種抗原=HLA・赤血球血液型抗原・Gm因子など同一種内で個体間に差がある抗原。●ハプテン(不完全抗原)=薬剤やカルジオリピンなど低分子で、単独では免疫原性をもたず担体蛋白に結合して初めて抗体産生を誘導する物質。抗原と抗体の特異的な結合を利用した免疫測定は、臨床検査における多くの定量・定性検査の基盤となっている。
選択肢ごとの解説
① カルジオリピンはリン脂質のハプテン(不完全抗原)で梅毒血清反応の抗原として用いられるため、完全抗原との組合せは適切でない。 ② HLAは同一種内の個体間で異なる主要組織適合抗原であり、自己抗原ではなく同種抗原に分類されるため組合せが適切でない。 ③ 正しい。Gm因子はIgG重鎖の遺伝的多型である同種抗原(アロタイプ)で個体間で異なるため、同種抗原との組合せは適切である。 ④ 正しい。ミトコンドリアは細胞質内の小器官で抗ミトコンドリア抗体の標的となるため、細胞質抗原との組合せは適切である。 ⑤ 不完全抗原(ハプテン)は低分子物質を指し、高分子の蛋白はそれ自体で免疫原性をもつ完全抗原であるためこの組合せは適切でない。
📋 まとめの表を見る:抗原の分類(完全抗原・不完全抗原・存在形式による分類)
自己抗原はさらに細胞内局在(核・細胞質など)で分類されることがある。抗核抗体検査の染色パターンでいう「細胞質型」は抗ミトコンドリア抗体(原発性胆汁性胆管炎)・抗Jo-1抗体(多発性筋炎/皮膚筋炎)・抗SS-A抗体(Sjögren症候群)などでみられる(Complete+ MT Vol.7 p.70)。
第59回 午前81(臨床免疫学)
血清中の濃度が最も高い補体成分はどれか。
正答: ③C3
ポイント 補体は約20種類の血清蛋白からなる生体防御系で、活性化により炎症惹起・オプソニン化・膜侵襲複合体形成を介した溶菌などの作用を発揮する。このうちC3は古典経路・第二経路(副経路)・レクチン経路の三つの活性化経路が合流する中心的成分で、血清中濃度が約1mg/mLと補体成分の中で最も高い。C3転換酵素により切断されてアナフィラトキシンであるC3aと、オプソニンとして働くC3bを生じる。●古典経路の活性化の順序=C1→C4→C2→C3→C5→C6→C7→C8→C9。●補体の主な生理作用=C3bによるオプソニン化・C3aおよびC5aによるアナフィラトキシンとしての炎症惹起と走化性・C5b-9(膜侵襲複合体)による溶菌。補体の消費(低下)はSLEや溶血性貧血など免疫複合体病の活動性の指標となり、CH50は補体全体の活性を反映する検査として用いられる。
選択肢ごとの解説
① C1は古典経路の最初に抗原抗体複合体を認識して活性化を開始する成分であり、血清中濃度はC3よりも低い。 ② C2は古典経路でC4と協同してC3転換酵素を構成する成分で、血清中濃度はごくわずかでありC3より低い。 ③ 正しい。C3は三つの補体活性化経路が合流する中心成分で、血清中濃度が約1mg/mLと補体成分の中で最も高い。 ④ C4は古典経路でC2とともにC3転換酵素を構成する成分であり、血清中濃度はC3よりも低い値にとどまる。 ⑤ C5は膜侵襲複合体形成の起点となり切断されてC5aとC5bを生じる成分で、血清中濃度はC3より低い。
第59回 午前82(臨床免疫学)
測定法と標識物質の組合せで誤っているのはどれか。
①蛍光抗体法 — アルカリホスファターゼ ②酵素免疫測定法 — ペルオキシダーゼ ③放射免疫測定法 — ¹²⁵I ④化学発光免疫測定法 — ルミノール ⑤生物発光免疫測定法 — ルシフェラーゼ
正答: ①蛍光抗体法 — アルカリホスファターゼ
ポイント 免疫測定法では抗原抗体反応を可視化するために種々の標識物質を用いる。酵素免疫測定法(EIA)ではペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼなどの酵素を標識に用い、蛍光抗体法ではFITCなどの蛍光色素を標識に用いる。アルカリホスファターゼは酵素であって蛍光物質ではないため、蛍光抗体法との組合せは誤りである。●標識物質と測定法の対応=放射免疫測定法→¹²⁵Iなどの放射性同位元素・蛍光抗体法→FITCなどの蛍光色素・化学発光免疫測定法→ルミノールやアクリジニウムエステル・生物発光免疫測定法→ルシフェラーゼ。●酵素免疫測定法の標識酵素=ペルオキシダーゼ・アルカリホスファターゼ・β-ガラクトシダーゼで、基質との反応による発色や発光を検出する。●標識を用いる利点=放射性同位元素を避けられる酵素法や化学発光法は感度が高く取扱いが容易で、現在の自動分析装置で広く用いられている。
選択肢ごとの解説
① 誤り。蛍光抗体法の標識はFITCなどの蛍光色素であり、アルカリホスファターゼは酵素免疫測定法で用いる標識酵素である。 ② 酵素免疫測定法ではペルオキシダーゼを標識酵素として用いるため、この測定法と標識物質の組合せは正しい。 ③ 放射免疫測定法では放射性同位元素である¹²⁵Iなどを標識に用いるため、この測定法と標識物質の組合せは正しい。 ④ 化学発光免疫測定法ではルミノールなどの化学発光物質を標識に用いるため、この測定法と標識物質の組合せは正しい。 ⑤ 生物発光免疫測定法ではルシフェラーゼによる発光反応を利用するため、この測定法と標識物質の組合せは正しい。
📋 まとめの表を見る:免疫測定法と標識物質
アルカリホスファターゼは酵素標識であり蛍光色素ではないため、蛍光抗体法とは組み合わない。
第59回 午前83(臨床免疫学)
ウイルス性肝炎について正しいのはどれか。2つ選べ。
①A型肝炎の発症初期にはIgG型HA抗体測定が有効である。 ②B型肝炎ウイルスはDNAウイルスである。 ③C型肝炎ウイルス抗体は中和抗体である。 ④D型肝炎ウイルスはC型肝炎ウイルスと重複感染する。 ⑤E型肝炎ウイルスは糞便中に検出される。
正答: ②B型肝炎ウイルスはDNAウイルスである。・⑤E型肝炎ウイルスは糞便中に検出される。
ポイント ウイルス性肝炎の鑑別には各ウイルスに対応するマーカーを用いる。B型肝炎ウイルスは肝炎ウイルスの中で唯一のDNAウイルスで、HBs抗原・HBe抗原・HBV-DNAなどを測定する。E型肝炎ウイルスは経口(糞口)感染し糞便中に排出される。A型肝炎の急性期診断にはIgM型HA抗体が有用で、IgG型は既感染や予防接種後を示す。C型肝炎ウイルス抗体は感染の指標であり中和抗体ではない。●経口(糞口)感染するもの=A型肝炎・E型肝炎。●血液・体液を介して感染するもの=B型肝炎・C型肝炎・D型肝炎。●D型肝炎ウイルスはHBs抗原を外被に利用するため、B型肝炎ウイルスとの重複感染で初めて感染が成立する。●慢性化しやすいのはB型・C型で、長期に経過すると肝硬変や肝細胞癌へ進展しうる一方、A型・E型は通常一過性の急性肝炎で慢性化しない。
選択肢ごとの解説
① A型肝炎の発症初期の診断にはIgM型HA抗体が有用であり、IgG型は既感染を示すため、この記述は誤りである。 ② 正しい。B型肝炎ウイルスは各種肝炎ウイルスの中で唯一のDNAウイルスであり、この記述は正しい内容である。 ③ C型肝炎ウイルス抗体は感染の指標として用いられるものであって中和抗体ではないため、この記述は誤りである。 ④ D型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスのHBs抗原を外被に利用するためB型と重複感染し、C型ではないので誤りである。 ⑤ 正しい。E型肝炎ウイルスは経口(糞口)感染し糞便中に排出されるウイルスであり、この記述は正しい内容である。
📋 まとめの表を見る:肝炎ウイルスとその特徴
DNAウイルスはB型(HBV)のみ。A型急性期はIgM型HA抗体が有効(IgG型は既感染・予防接種後)。
第59回 午前84(臨床免疫学)
関節リウマチの診断に有用な自己抗体はどれか。2つ選べ。
①抗基底膜抗体 ②リウマトイド因子 ③抗サイログロブリン抗体 ④抗アセチルコリンレセプター抗体 ⑤抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体
正答: ②リウマトイド因子・⑤抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体
ポイント 関節リウマチは滑膜の慢性炎症による進行性の多関節炎を主徴とする自己免疫疾患で、診断にはリウマトイド因子と抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体が有用である。リウマトイド因子は変性したIgGのFc部分に対する自己抗体で感度は高いが特異度はやや低く、他の膠原病や健常者でも陽性となりうる。抗CCP抗体は特異度が高く、早期診断や予後予測に優れている。●関節リウマチで有用な自己抗体=リウマトイド因子・抗CCP抗体。●他疾患に対応する自己抗体=抗基底膜抗体(Goodpasture症候群)・抗サイログロブリン抗体(橋本病)・抗アセチルコリンレセプター抗体(重症筋無力症)・抗二本鎖DNA抗体(全身性エリテマトーデス)。リウマトイド因子は関節リウマチ以外の膠原病や慢性感染症、健常高齢者でも陽性となることがある。
選択肢ごとの解説
① 抗基底膜抗体は糸球体や肺胞の基底膜を標的とするGoodpasture症候群の自己抗体であり、関節リウマチの診断指標ではない。 ② 正しい。リウマトイド因子は変性IgGのFc部分に対する自己抗体で、関節リウマチの診断に有用な指標である。 ③ 抗サイログロブリン抗体は甲状腺成分に対する自己抗体で橋本病などでみられるものであり、関節リウマチの診断指標ではない。 ④ 抗アセチルコリンレセプター抗体は神経筋接合部を標的とする重症筋無力症の自己抗体であり、関節リウマチの診断指標ではない。 ⑤ 正しい。抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体は特異度が高く、関節リウマチの早期診断に有用な自己抗体である。
📋 まとめの表を見る:臓器特異的自己抗体と自己免疫疾患
サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉は甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己抗体の標的とはならない。
第59回 午前85(臨床免疫学)
CRPについて正しいのはどれか。2つ選べ。
①腎臓で産生される。 ②急性相反応物質である。 ③肺炎球菌に対する抗体である。 ④ラテックス凝集法により測定される。 ⑤電気泳動でα₁-グロブリン分画に含まれる。
正答: ②急性相反応物質である。・④ラテックス凝集法により測定される。
ポイント CRP(C反応性蛋白)は炎症や組織傷害に反応して肝臓での産生が速やかに増加する代表的な急性相反応物質で、肺炎球菌のC多糖体と反応することからその名がつけられた。測定には抗CRP抗体を用いたラテックス凝集法や免疫比濁法が用いられ、細菌感染症や組織壊死で著明に上昇するため炎症の活動性指標となる。電気泳動ではγ-グロブリン分画付近に泳動される。●急性相反応物質の代表=CRP・血清アミロイドA・フィブリノゲン・ハプトグロビン・α₁-アンチトリプシン。●CRPの臨床的意義=細菌感染症や心筋梗塞などの組織壊死で著明に上昇し、炎症や治療効果のモニタリングに用いられる。ウイルス感染では上昇が軽度にとどまることが多く、細菌感染との鑑別の一助となる。半減期が短く炎症の消退に伴って速やかに低下するため、経時的な測定が病勢の評価に役立つ。
選択肢ごとの解説
① CRPは炎症に反応して肝臓で産生される急性相反応物質であり、腎臓で産生されるという記述は誤りである。 ② 正しい。CRPは炎症や組織傷害で速やかに産生が増加する代表的な急性相反応物質であり、この記述は正しい。 ③ CRPは肺炎球菌のC多糖体と反応する蛋白であって肺炎球菌に対する抗体ではないため、この記述は誤りである。 ④ 正しい。CRPは抗CRP抗体を用いたラテックス凝集法により測定されるため、この記述は正しい内容である。 ⑤ CRPは電気泳動でγ-グロブリン分画付近に泳動されるため、α₁-グロブリン分画に含まれるという記述は誤りである。
第59回 午前86(臨床免疫学)
クリオグロブリンについて誤っているのはどれか。
①4℃保存で白濁する。 ②M蛋白型が存在する。 ③免疫複合体を形成する。 ④37 ℃加温でゲル化する。 ⑤C型肝炎患者で陽性率が高い。
正答: ④37 ℃加温でゲル化する。
ポイント クリオグロブリンは低温で析出(白濁・ゲル化・沈殿)し、加温すると再溶解する性質をもつ免疫グロブリンで、4℃保存で白濁・ゲル化し37℃加温で溶解するのが特徴である。したがって37℃加温でゲル化するという記述は誤りで、ゲル化や白濁は低温(4℃)で起こる。単クローン性のM蛋白型(Ⅰ型)や、免疫複合体を形成する混合型(Ⅱ型・Ⅲ型)があり、C型肝炎ウイルス感染者で陽性率が高い。●クリオグロブリンの分類=Ⅰ型(単クローン性M蛋白)・Ⅱ型(単クローン+多クローンの混合)・Ⅲ型(多クローン性)。●関連する疾患=C型肝炎・多発性骨髄腫・原発性マクログロブリン血症・関節リウマチなどの膠原病。検体は採取後37℃を保って血清分離を行わないと、低温でクリオグロブリンが析出して総蛋白や他の測定値に影響するため、採血から測定まで保温する操作が重要である。
選択肢ごとの解説
① クリオグロブリンは低温である4℃保存で白濁・析出する性質をもつ蛋白であり、この記述は正しい内容である。 ② クリオグロブリンには単クローン性免疫グロブリンからなるM蛋白型(Ⅰ型)が存在するため、この記述は正しい内容である。 ③ 混合型クリオグロブリン(Ⅱ型・Ⅲ型)は免疫複合体を形成する性質をもつため、この記述は正しい内容である。 ④ 誤り。クリオグロブリンは低温(4℃)でゲル化し37℃加温で再溶解するため、37℃でゲル化するという記述は誤りである。 ⑤ クリオグロブリンはC型肝炎ウイルス感染者で陽性率が高いことが知られており、この記述は正しい内容である。
📋 まとめの表を見る:クリオグロブリンの分類と関連疾患
いずれも4℃で白濁・ゲル化し37℃で再溶解する性質(温度依存性蛋白)。タイプⅡ・Ⅲは免疫複合体を形成し血管炎・糸球体腎炎を伴いやすい。
第59回 午前87(臨床免疫学)
モノクローナル抗体で正しいのはどれか。2つ選べ。
①交差反応が多い。 ②血液型検査には用いられない。 ③IgGのサブクラスは同一である。 ④1つの抗原エピトープに対する抗体である。 ⑤Bリンパ球とTリンパ球とのハイブリドーマから作製する。
正答: ③IgGのサブクラスは同一である。・④1つの抗原エピトープに対する抗体である。
ポイント モノクローナル抗体は単一のBリンパ球由来クローンが産生する均一な抗体で、ミエローマ(骨髄腫)細胞と免疫したBリンパ球を融合させて作製したハイブリドーマから産生される。一つの抗原エピトープのみを認識するため特異性が高く交差反応が少なく、免疫グロブリンのクラスやサブクラスも均一である。血液型検査の抗A・抗B試薬や各種診断薬にも広く用いられている。●モノクローナル抗体の特徴=単一エピトープを認識・高い特異性・均一なクラスおよびサブクラス。●ポリクローナル抗体の特徴=複数のBリンパ球クローン由来で多種のエピトープを認識し、交差反応が多くロット間差が生じやすい。●応用=モノクローナル抗体は免疫測定の試薬や血液型判定試薬、各種の抗体医薬として広く用いられ、常に均一で同一の品質のものを大量に供給できるという利点がある。
選択肢ごとの解説
① モノクローナル抗体は単一エピトープを認識し特異性が高く交差反応は少ないため、交差反応が多いという記述は誤りである。 ② モノクローナル抗体は抗A・抗B試薬として血液型検査に用いられているため、用いられないという記述は誤りである。 ③ 正しい。モノクローナル抗体は単一クローン由来で均一であり、IgGのサブクラスが同一であるという記述は正しい。 ④ 正しい。モノクローナル抗体は一つの抗原エピトープに対する均一な抗体であり、この記述は正しい内容である。 ⑤ モノクローナル抗体はミエローマ細胞とBリンパ球のハイブリドーマから作製され、Tリンパ球とのハイブリドーマではないため誤りである。
第59回 午前88(臨床免疫学)
抗グロブリン試験の精度管理に用いるのはどれか。
①患者赤血球 ②パネル赤血球 ③IgG感作赤血球 ④補体感作赤血球 ⑤酵素処理赤血球
正答: ③IgG感作赤血球
ポイント 抗グロブリン試験(クームス試験)は、赤血球に結合した不完全抗体や補体を抗ヒトグロブリン試薬で凝集させて検出する検査で、洗浄不十分により残存した血漿が抗グロブリン試薬を中和すると偽陰性を生じうる。そのため陰性結果が正しいことを確認する精度管理として、反応後にIgG感作赤血球(クームス対照赤血球、チェックセル)を添加し、確実に凝集することで試薬の有効性と洗浄操作の適否を保証する。●抗グロブリン試験の精度管理=IgG感作赤血球(チェックセル)を添加し凝集を確認することで偽陰性を排除する。●偽陰性の主な原因=洗浄不足による抗グロブリン試薬の中和・抗グロブリン試薬の失活・遠心条件の不適。●抗グロブリン試験の用途=直接法は赤血球に結合した抗体の検出(自己免疫性溶血性貧血や新生児溶血性疾患)、間接法は血清中の不規則抗体の検出に用いられる。
選択肢ごとの解説
① 患者赤血球は被検対象そのものであって試験系の有効性を確認する目的の精度管理用赤血球ではないため、適切でない。 ② パネル赤血球は既知抗原をもつ赤血球で不規則抗体の同定に用いるものであり、抗グロブリン試験の精度管理用ではない。 ③ 正しい。IgG感作赤血球(チェックセル)を添加して確実な凝集を確認することで偽陰性を排除し精度管理を行う。 ④ 補体感作赤血球は補体結合の検出系で用いられることがあるが、抗グロブリン試験の陰性確認に用いる標準的な精度管理用ではない。 ⑤ 酵素処理赤血球は抗原抗体反応を増強する目的で用いる赤血球であり、抗グロブリン試験の精度管理用赤血球ではない。
第59回 午前89(臨床免疫学)
ABO血液型の反応を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59aA089.b243bd7718.jpg
①アルブミン高値 ②不規則抗体陽性 ③γ-グロブリン低値 ④抗血漿蛋白抗体陽性 ⑤後天的なABO抗原減弱
正答: ②不規則抗体陽性
ポイント ABO血液型は患者赤血球の抗原を調べるオモテ検査と、血清中の抗A・抗B抗体を調べるウラ検査を行い、両者の結果が一致して初めて型を確定する。図のようにオモテ検査とウラ検査が一致しない場合や予期しない凝集を認める場合、その原因を血清側・赤血球側に分けて検討する。血清中に不規則抗体が存在すると、ウラ検査用の赤血球や使用細胞に余分な凝集を生じて反応が乱れる。●オモテ・ウラ不一致の血清(抗体)側の原因=不規則抗体・寒冷凝集素・連銭形成・低γグロブリン血症。●赤血球(抗原)側の原因=亜型・抗原の減弱・後天的B抗原・多凝集赤血球。不一致を認めたときは温度や検体を変えた追加検査を行って原因を究明し、不一致が解消するまで安易に輸血用の血液型を確定しないことが、患者の安全を守る輸血の安全管理上きわめて重要である。
選択肢ごとの解説
① アルブミン高値は連銭形成や非特異的凝集の一因にはなりうるが、図に示されたABO型反応異常の典型的な原因とはいえない。 ② 正しい。血清中に不規則抗体が存在すると予期しない凝集を生じ、ABO血液型の反応に不一致をきたすため考えられる。 ③ γ-グロブリン低値ではむしろウラ検査の抗体が減弱して凝集が弱まる方向であり、図の所見を説明する原因として適さない。 ④ 抗血漿蛋白抗体陽性は血漿成分に対する反応であり、ABO血液型の赤血球凝集異常を説明する典型的な原因ではない。 ⑤ 後天的なABO抗原減弱はオモテ検査側の凝集減弱を起こす病態であり、図に示された反応所見を説明する原因として適さない。
第59回 午前90(公衆衛生学)
チーム医療と臨床検査技師の係わり事例との組合せで適切でないのはどれか。
①栄養サポートチーム — 検査データからみた栄養状態の評価 ②化学療法チーム — 抗悪性腫瘍薬の効用についての情報提供 ③感染制御チーム — 耐性菌や薬剤耐性の調査、報告 ④褥瘡対策チーム — 創傷からの細菌培養結果のモニタリング ⑤糖尿病療養チーム — 自己血糖測定器についての指導
正答: ②化学療法チーム — 抗悪性腫瘍薬の効用についての情報提供
ポイント チーム医療において臨床検査技師は、検査データの提供や解釈、検体採取、微生物検査などを通じて各専門チームに参画する。化学療法チームにおける臨床検査技師の係わりは、薬物血中濃度モニタリング(TDM)や副作用に関する検査データの提供であり、抗悪性腫瘍薬の効用そのものについての情報提供は薬剤師や医師の役割であって、臨床検査技師の業務として適切でない。●臨床検査技師が参画する主なチーム=栄養サポートチーム(栄養評価)・感染制御チーム(耐性菌調査)・褥瘡対策チーム(細菌培養)・糖尿病療養チーム(自己血糖測定指導)。●検査技師の貢献の本質=検査データに基づく評価・モニタリングと微生物情報の提供にあり、薬剤の選択や投与そのものは医師・薬剤師が担う。職種の役割分担を踏まえて連携することがチーム医療を機能させる。
選択肢ごとの解説
① 栄養サポートチームでは血清蛋白などの検査データから栄養状態を評価することが行われ、検査技師の係わりとして適切である。 ② 誤り。抗悪性腫瘍薬の効用についての情報提供は薬剤師や医師の役割であり、臨床検査技師の係わりとしては適切でない。 ③ 感染制御チームでは耐性菌や薬剤耐性の調査・報告を担うことが、微生物検査を行う臨床検査技師の係わりとして適切である。 ④ 褥瘡対策チームでは創傷からの細菌培養結果のモニタリングを行うことが、臨床検査技師の係わりとして適切である。 ⑤ 糖尿病療養チームでは自己血糖測定器の取扱いについての指導を行うことが、臨床検査技師の係わりとして適切である。
📋 まとめの表を見る:チーム医療における臨床検査技師の関わり
抗悪性腫瘍薬の効用そのものについての情報提供は薬剤師・医師の役割であり、臨床検査技師の業務としては適切でない。
第59回 午前91(公衆衛生学)
患者調査で得られるのはどれか。2つ選べ。
①受療率 ②通院者率 ③有訴者率 ④国民医療費 ⑤平均在院日数
正答: ①受療率・⑤平均在院日数
ポイント 患者調査は医療施設を利用する患者を対象とする厚生労働省の基幹統計で、推計患者数・受療率・推計退院患者の平均在院日数・総患者数などが得られる。受療率は人口10万人対の推計患者数で、平均在院日数は入院から退院までの平均日数であり、いずれも患者調査から算出される。これに対し通院者率と有訴者率は国民生活基礎調査、国民医療費は国民医療費統計から得られる。●患者調査で得られる指標=受療率・推計患者数・平均在院日数・総患者数。●国民生活基礎調査で得られる指標=有訴者率・通院者率・健康状態や介護の状況など世帯と個人の自覚に基づく情報。●その他の統計=国民医療費は国民医療費統計、死亡や出生・婚姻は人口動態統計から得られ、どの統計でどの指標が把握できるかを互いに区別して理解しておくことが重要である。
選択肢ごとの解説
① 正しい。受療率は患者調査から得られる人口10万人対の推計患者数を示す指標であり、患者調査で得られる。 ② 通院者率は国民生活基礎調査から得られる指標であり、患者調査からは得られないため、この選択肢は該当しない。 ③ 有訴者率は国民生活基礎調査から得られる自覚症状を有する者の割合を示す指標であり、患者調査からは得られない。 ④ 国民医療費は国民医療費統計から得られる年間の医療費総額を示す指標であり、患者調査からは得られないため該当しない。 ⑤ 正しい。平均在院日数は患者調査から得られる入院から退院までの平均日数を示す指標であり、患者調査で得られる。
第59回 午前92(公衆衛生学)
エビデンスレベルが最も高い疫学研究方法はどれか。
①横断研究 ②コホート研究 ③症例対照研究 ④生態学的研究 ⑤無作為比較対照試験
正答: ⑤無作為比較対照試験
ポイント 疫学研究はバイアスや交絡の少なさによってエビデンスレベルが異なり、ランダム化(無作為化)比較対照試験は対象者を無作為に介入群と対照群に割り付けることで交絡や選択バイアスを最小化できるため、個々の研究デザインの中で最もエビデンスレベルが高い。観察研究であるコホート研究・症例対照研究・横断研究・生態学的研究はこれより証拠力が低い。●研究デザインのエビデンスレベルの高い順=無作為化比較対照試験>コホート研究>症例対照研究>横断研究>生態学的研究。●これらより上位の証拠=複数の無作為化比較対照試験を統合したメタアナリシスおよびシステマティックレビュー。●無作為化比較対照試験の利点=割付を無作為にすることで既知・未知の交絡因子を群間で均等にでき、二重盲検化やプラセボ対照によりさらに観察者や対象者によるバイアスを減らせる。
選択肢ごとの解説
① 横断研究はある一時点で曝露と疾病の有無を同時に調べる観察研究であり、時間的前後が不明で因果関係の証明力は比較的低い。 ② コホート研究は曝露の有無で群を分けて前向きに追跡する観察研究で証拠力は比較的高いが、無作為化試験には劣る。 ③ 症例対照研究は患者群と対照群で過去の曝露を比較する後ろ向きの観察研究であり、想起バイアスなどを受けやすい。 ④ 生態学的研究は集団単位で曝露と疾病の関連をみる研究であり、個人レベルの因果推論ができず証拠力は最も低い。 ⑤ 正しい。無作為化比較対照試験は無作為割付により交絡を最小化でき、研究デザインの中で最もエビデンスレベルが高い。
📋 まとめの表を見る:コホート研究と症例対照研究の比較
研究デザインの証拠の強さは一般に、メタアナリシス・系統的レビュー>介入研究(ランダム化比較対照試験)>コホート研究>症例対照研究>横断研究>生態学的研究の順とされる。観察研究は疾病の頻度や分布を調べる記述疫学(横断研究・生態学的研究等)と、因果関係を検証する分析疫学(コホート研究・症例対照研究)に大別される。
第59回 午前93(公衆衛生学)
大気中のフロンガスの増加と関連しないのはどれか。
①オゾン層破壊 ②感染症拡大 ③酸性雨増加 ④白内障増加 ⑤皮膚がん増加
正答: ③酸性雨増加
ポイント フロンガス(クロロフルオロカーボン)は化学的に安定で成層圏まで達し、紫外線で分解されて生じた塩素がオゾンを連鎖的に破壊するオゾン層破壊の原因物質である。オゾン層の減少により地表に届く紫外線が増加し、白内障や皮膚がんのリスクが高まる。また強力な温室効果ガスとして地球温暖化に関与し、媒介生物の分布拡大を介して感染症拡大とも関連しうる。一方、酸性雨は硫黄酸化物や窒素酸化物が原因でありフロンとは関連しない。●フロンガスと関連する事象=オゾン層破壊・紫外線増加・白内障・皮膚がん・地球温暖化。●酸性雨の原因=化石燃料の燃焼で生じる硫黄酸化物(SOx)と窒素酸化物(NOx)が大気中で硫酸や硝酸となり雨に溶け込むこと。フロンの規制はモントリオール議定書により国際的に進められ、代替物質への転換が図られてきた。
選択肢ごとの解説
① オゾン層破壊はフロンガスが成層圏で塩素を放出して連鎖的にオゾンを分解することで起こり、フロンガスと関連する。 ② 感染症拡大はフロンガスの温室効果による地球温暖化を介して媒介生物が分布を拡大することと関連しうる事象である。 ③ 誤り。酸性雨は化石燃料の燃焼で生じる硫黄酸化物や窒素酸化物が原因であり、フロンガスの増加とは関連しない。 ④ 白内障はオゾン層破壊による地表の紫外線増加で発症リスクが高まるため、フロンガスと関連する事象である。 ⑤ 皮膚がんはオゾン層破壊による地表の紫外線増加でリスクが高まるため、フロンガスの増加と関連する事象である。
第59回 午前94(公衆衛生学)
2009年末現在のHIV感染者数が最も多い地域はどれか。
①北アメリカ ②南アメリカ ③北アフリカ・中東 ④サハラ以南アフリカ ⑤南アジア・東南アジア
正答: ④サハラ以南アフリカ
ポイント HIV/AIDSの流行は地域による偏在が大きく、2009年末時点で世界のHIV感染者の約3分の2がサハラ以南アフリカに集中していた。貧困や医療資源の不足、抗HIV薬へのアクセス困難、母子感染や性感染の高頻度などが背景にあり、感染者数・新規感染者数・死亡者数のいずれも世界で最も多い地域であった。●HIV感染者数の多い地域=サハラ以南アフリカが最多で、これに次ぐのが南アジア・東南アジア。●感染拡大の背景要因=抗HIV薬へのアクセス不足・予防教育の不足・母子感染予防対策の遅れ・貧困と医療体制の脆弱性。●主な感染経路=性的接触・血液(注射器の共用や輸血)・母子(経胎盤・分娩時・母乳)感染で、抗HIV薬による適切な治療と予防策によって母子感染や病態の進行は大きく抑えられるようになっている。
選択肢ごとの解説
① 北アメリカは抗HIV治療や予防対策が普及しており、HIV感染者数はサハラ以南アフリカに比べてはるかに少ない地域である。 ② 南アメリカのHIV感染者数は世界全体の中では限られた規模であり、感染者数が最も多い地域には該当しない。 ③ 北アフリカ・中東はHIV感染者数が比較的少ない地域であり、感染者数が世界で最も多い地域には該当しない。 ④ 正しい。2009年末時点で世界のHIV感染者の多数がサハラ以南アフリカに集中しており、最も多い地域である。 ⑤ 南アジア・東南アジアはサハラ以南アフリカに次ぐ感染者数の地域であり、世界で最も多い地域には該当しない。
第59回 午前95(医用工学概論)
生体組織がもつ特異的な性質はどれか。2つ選べ。
正答: ①異方性・⑤温度依存性
ポイント 生体組織は方向によって電気的・機械的・光学的な性質が異なる異方性をもち、また酵素反応や物性が温度に依存する温度依存性をもつことが、生体に固有の特異的な性質である。これらは生体計測や生体材料との相互作用を考えるうえで重要となる。一方、整合性・耐久性・非毒性は生体内に埋植する人工材料(生体材料)に求められる条件であって、生体組織そのものに固有の性質ではない。●生体組織に特異的な性質=異方性・温度依存性・非線形性・粘弾性。●生体材料に求められる性質=生体適合性(非毒性)・組織との整合性・力学的耐久性・非発がん性・滅菌可能であること。生体組織の異方性や粘弾性、温度依存性を理解することは、生体計測の精度向上や人工臓器・生体材料の設計を行ううえで基礎となる、医用工学における重要な視点である。
選択肢ごとの解説
① 正しい。生体組織は方向によって電気的・機械的性質が異なる異方性をもつため、生体に特異的な性質に該当する。 ② 整合性は生体材料が生体組織と適合するために求められる性質であり、生体組織そのものに固有の特異的性質ではない。 ③ 耐久性は生体内で長期に機能するために生体材料に求められる条件であり、生体組織に固有の特異的性質ではない。 ④ 非毒性は生体材料に求められる生体適合性の条件の一つであり、生体組織そのものに固有の特異的性質ではない。 ⑤ 正しい。生体組織は酵素反応など物性が温度に依存する温度依存性をもつため、生体に特異的な性質に該当する。
第59回 午前96(医用工学概論)
入力電圧10 mVを増幅して出力電圧1Vを得た。この増幅器の利得[dB]はどれか。
正答: ③40
ポイント 電圧の利得(ゲイン)をデシベルで表すときは、出力電圧と入力電圧の比を用いて G〔dB〕=20log10(Vout/Vin)で求める。入力電圧10mV=0.01V、出力電圧1Vでは電圧比は1/0.01=100となり、log10(100)=2であるから、20×2=40dBとなる。電圧比や電流比には20logを、電力比には10logを用いる点が異なるので注意する。●デシベル計算の式=電圧比・電流比は20log10(比)、電力比は10log10(比)。●代表的な対応値(電圧)=比10で20dB・比100で40dB・比1000で60dB・比2で約6dB。●デシベル表示の利点=広い範囲にわたる比を対数で圧縮して扱え、多段の増幅器では各段のデシベル値を足し合わせるだけで総合利得が求められるため、計算や信号レベルの取扱いが容易になる。
選択肢ごとの解説
① 10dBは電圧比でおよそ3.16倍に相当する値であり、電圧比が100となる本問の利得には該当しない。 ② 20dBは出力と入力の電圧比でちょうど10倍に相当する値であり、電圧比が100となる本問の利得には該当しない。 ③ 正しい。出力1V÷入力0.01V=電圧比100であり、20log10(100)=40dBとなるため利得は40dBである。 ④ 80dBは出力と入力の電圧比でちょうど1万倍に相当する値であり、電圧比が100となる本問の利得には該当しない。 ⑤ 100は出力と入力の電圧比そのものの数値であって利得をデシベルで表した値ではないため、利得としては該当しない。
第59回 午前97(医用工学概論)
音響トランスデューサはどれか。
①圧電素子 ②ホール素子 ③サーミスタ ④差動トランス ⑤ストレンゲージ
正答: ①圧電素子
ポイント 音響トランスデューサは音響(機械的振動や超音波)と電気信号を相互に変換する素子で、圧電素子(ピエゾ素子)がその代表である。圧電素子は機械的な圧力を加えると電圧を発生し、逆に電圧を印加すると変形(伸縮)するため、超音波探触子(プローブ)やマイクロホンなどに用いられる。●音響(圧力・振動)を変換するトランスデューサ=圧電素子。●その他のトランスデューサと変換対象=ホール素子(磁界)・サーミスタ(温度)・差動トランス(変位)・ストレンゲージ(ひずみ)。●超音波診断装置では圧電素子で超音波の送受信を行い、反射波が戻るまでの時間と組織内の音速から距離を求めて画像化する。圧電効果と逆圧電効果を併せもつことが、一つの素子で超音波の送信と受信を兼ねられる理由であり、超音波診断装置の探触子に不可欠な特性となっている。
選択肢ごとの解説
① 正しい。圧電素子は圧力と電気を相互に変換する音響トランスデューサであり、超音波探触子などに用いられる。 ② ホール素子は磁界の強さをホール電圧に変換する磁気センサであり、音響を変換するトランスデューサではない。 ③ サーミスタは温度変化を電気抵抗の変化として検出する温度センサであり、音響を変換するトランスデューサではない。 ④ 差動トランスは機械的な変位を電気信号に変換する変位センサであり、音響を変換するトランスデューサではない。 ⑤ ストレンゲージはひずみを電気抵抗の変化として検出するひずみセンサであり、音響を変換するトランスデューサではない。
第59回 午前98(医用工学概論)
CF形装着部を表す医用電気機器の図記号はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59aA098.d71a9db6ae.jpg
正答: ②2
ポイント 医用電気機器の装着部は患者への適用部位と許容漏れ電流の大きさに応じてB形・BF形・CF形に分類され、それぞれ図記号で区別される。CF形は心臓に直接適用することが可能な最も漏れ電流の小さい装着部で、ハート(心臓)を表す図形を四角の枠で囲んだ図記号で表される。BF形はフローティング(F)を示す枠でハートを伴わず、B形は単純な人型の記号で表される。●装着部の分類=B形(体表に適用)・BF形(フローティングで体表に適用)・CF形(心臓に直接適用可)。●許容漏れ電流=CF形が最も小さく、心臓カテーテルや観血式血圧計など心臓に直接適用する機器に用いられる。●分類の意味=心臓に直接ごく微小な電流が流れると心室細動を起こす危険(ミクロショック)があるため、心臓に適用する装着部には最も厳しい漏れ電流の安全基準が課されている。
選択肢ごとの解説
① ①の二重四角はクラスⅡ機器を示す。感電保護のクラス分類の記号で、CF形装着部の記号ではない。 ② 正しい。②の四角枠内のハートはCF形装着部を示す。心臓に直接適用できるフローティング形の装着部である。 ③ ③の四角枠内の人型はBF形装着部を示す。 ④ ④の枠のない人型はB形装着部を示す。 ⑤ ⑤は保護接地の記号で、装着部の分類を表す記号ではない。
📋 まとめの表を見る:装着部の分類(B形・BF形・CF形)と図記号
第59回 午前99(医用工学概論)
コンピュータプログラムに潜む誤りを意味する用語はどれか。
①バグ ②デバッグ ③フリーズ ④クラッシュ ⑤フォーマット
正答: ①バグ
ポイント コンピュータプログラムに潜む誤り(不具合)はバグ(bug)と呼ばれ、その原因を発見して修正する作業をデバッグ(debug)という。バグはプログラムの論理的誤りや記述ミスに起因し、誤動作や異常終了、計算結果の誤りなどを引き起こす。歴史的には実機に紛れ込んだ虫(bug)に由来するとされる。●プログラムの誤りに関する用語=バグ(プログラム中に潜む誤り)・デバッグ(その誤りを発見して修正する作業)。●動作異常に関する用語=フリーズ(応答停止)・クラッシュ(プログラムやシステムの異常終了)・フォーマット(記憶媒体の初期化)。●バグの予防と対処=設計の検証やテストによりバグを減らし、発見されたバグはデバッグの作業によって一つずつ修正し、ソフトウェアの信頼性と安全性を高めていく必要がある。
選択肢ごとの解説
① 正しい。バグはコンピュータプログラムに潜む誤りや不具合を意味する用語であり、これが設問の答えに該当する。 ② デバッグはプログラム中の誤りを発見して取り除き修正する作業を指す用語であり、誤りそのものを指す語ではない。 ③ フリーズはプログラムが応答を停止して操作を受け付けなくなる状態を指す用語であり、誤りそのものではない。 ④ クラッシュはプログラムやシステムが異常終了する状態を指す用語であり、プログラムに潜む誤りそのものではない。 ⑤ フォーマットは記憶媒体を初期化する操作を指す用語であり、コンピュータプログラムに潜む誤りを意味する語ではない。
第59回 午前100(医用工学概論)
光学顕微鏡について誤っているのはどれか。
①開口数が大きいほど分解能が優れている。 ②尿沈渣の観察はコンデンサを下げて行う。 ③像の明るさは対物レンズの開口数の2乗に比例する。 ④総合倍率は接眼レンズと対物レンズの倍率の積で表される。 ⑤実視野は接眼レンズの視野数と対物レンズの倍率の積で表される。
正答: ⑤実視野は接眼レンズの視野数と対物レンズの倍率の積で表される。
ポイント 光学顕微鏡は接眼レンズと対物レンズの組合せによって標本の像を拡大して観察する装置で、総合倍率は接眼レンズの倍率と対物レンズの倍率の積で表される。これに対し実視野(標本上で観察できる範囲)は、接眼レンズの視野数を対物レンズの倍率で割った値であり、積ではないため誤りである。分解能は開口数が大きいほど優れ、像の明るさは対物レンズの開口数の2乗に比例する。●光学顕微鏡の主な式=総合倍率=接眼倍率×対物倍率、実視野=視野数÷対物倍率。●分解能=開口数(NA)が大きく照明光の波長が短いほど高く、油浸対物レンズでNAを高めて分解能を向上させる。位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡は無染色で透明な試料を観察するのに用いられ、観察の目的や試料の性質に応じて顕微鏡の方式を選択することが重要である。
選択肢ごとの解説
① 開口数が大きいほど分解能が優れるという記述は、光学顕微鏡の結像の基本的な性質として正しい内容である。 ② 尿沈渣など低コントラストの試料を観察する際には、コンデンサを下げて行うという記述は正しい内容である。 ③ 像の明るさは対物レンズの開口数の2乗に比例するという記述は、光学顕微鏡の性質として正しい内容である。 ④ 総合倍率は接眼レンズと対物レンズの倍率の積で表されるという記述は光学顕微鏡の性質として正しい内容である。 ⑤ 誤り。実視野は接眼レンズの視野数を対物レンズの倍率で割った値であって、両者の積ではないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:光学顕微鏡の基本公式と用語
視野数は対物レンズではなく接眼レンズの特性を表す値である点に注意。
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