第59回(2013) 臨床検査技師国家試験 午後1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第59回 午後1(臨床検査総論)
黄色のバイオハザードマークが貼付されている容器に廃棄するのはどれか。
- ①胸水が入った試験管
- ②血液が入った採血管
- ③血液が付着したガーゼ
- ④使用済みの骨髄穿刺針
- ⑤圧迫止血に用いた酒精綿
正答: ④使用済みの骨髄穿刺針
ポイント
黄色のバイオハザードマークは、注射針・メス刃・骨髄穿刺針・割れたガラスなどの「鋭利物(鋭利な感染性廃棄物)」を示す表示であり、刺傷による針刺し事故や血液媒介感染のリスクを伴うため、耐貫通性をもつ専用の容器へ廃棄することを義務づけている。使用済みの骨髄穿刺針は金属製の鋭利物であるから、黄色容器に廃棄するのが正しい。バイオハザードマークは内容物の性状によって三色に色分けされ、取扱時の危険度と廃棄すべき容器を明確に区別する仕組みになっている。●赤=液状・泥状の感染性廃棄物(血液・血清・体液・胸水など流動性のあるもの)。●橙=固形状の感染性廃棄物(血液が付着したガーゼ・酒精綿・チューブ類など)。●黄=鋭利物(注射針・メス刃・骨髄穿刺針・割れたガラスなど刺傷を起こすもの)。性状で容器を分けることが要点である。
選択肢ごとの解説
- ① 赤色のマークが貼付された容器に該当する。胸水などの液状・泥状の検体は赤マークの容器へ廃棄するもので、鋭利物には分類されない。
- ② 赤色のマークが貼付された容器に該当する。血液という液状検体を含む採血管は赤マークの容器で処理し、鋭利物の黄色容器には入れない。
- ③ 橙色のマークが貼付された容器に該当する。血液が付着したガーゼは固形状の感染性廃棄物であり、鋭利物には分類されない。
- ④ 正しい。使用済みの骨髄穿刺針は金属製の鋭利物であるため、黄色のバイオハザードマークが貼付された耐貫通性の容器に廃棄する。
- ⑤ 橙色のマークが貼付された容器に該当する。圧迫止血に用いた酒精綿は固形状の感染性廃棄物であり、鋭利物には分類されない。
第59回 午後2(臨床検査総論)
24時間室温に放置した血清で測定結果が変わらないのはどれか。2つ選べ。
- ①CK
- ②尿素窒素
- ③アルブミン
- ④アンモニア
- ⑤酸ホスファターゼ
正答: ②尿素窒素・③アルブミン
ポイント
血清を24時間室温に放置すると、酵素活性の失活や解糖・脱炭酸といった残存成分の代謝、揮発や分解などにより多くの測定項目の値が変動する。一方、尿素窒素とアルブミンは室温放置に対して安定で、24時間程度では測定値がほぼ変わらないため正答となる。尿素窒素は低分子の代謝終末産物で常温でも安定であり、アルブミンは安定な血漿蛋白で短時間の室温放置では変性しない。●室温で不安定(避けるべき)=アンモニア(産生・揮発で速やかに上昇)、酸ホスファターゼ(酸性域で安定だが中性・室温では失活)、CK(不安定な酵素で活性が低下)、血糖(解糖で低下)。●室温で比較的安定=尿素窒素、アルブミン、総蛋白、Na・Clなどの電解質。検体は採取後速やかに血清分離・冷却して保存するのが原則であり、室温で長時間放置した検体では、安定な項目のみが信頼でき、その他の項目は再採血が望ましい場合があることに留意する必要がある。
選択肢ごとの解説
- ① CK(クレアチンキナーゼ)は不安定な酵素であり、室温放置によって活性が低下するため、測定結果は変動してしまう。
- ② 正しい。尿素窒素は低分子の安定な代謝終末産物であり、24時間室温に放置しても測定結果はほとんど変わらない。
- ③ 正しい。アルブミンは安定な血漿蛋白であり、24時間程度の室温放置では変性せず、測定結果はほとんど変わらない。
- ④ アンモニアは室温で産生と揮発が進んで速やかに上昇するため、迅速な測定や氷冷が必要であり、室温放置で結果が変動する。
- ⑤ 酸ホスファターゼは酸性条件では比較的安定だが室温・中性域では失活しやすいため、室温放置によって値が低下してしまう。
第59回 午後3(臨床検査総論)
内部精度管理法で管理血清を用いるのはどれか。2つ選べ。
- ①累積和法
- ②x-R管理図法
- ③項目間チェック法
- ④デルタチェック法
- ⑤ナンバープラス法
正答: ①累積和法・②x-R管理図法
ポイント
内部精度管理のうち、既知濃度の管理血清を測定して日々の精密度や正確度を監視する手法が累積和法とx-R管理図法であり、これらが管理血清を用いる手法に該当する。両者とも管理血清の実測値を継続的にプロットし、管理限界からの逸脱や系統誤差・偶然誤差を検出する。これに対し、患者検体のデータのみを利用する手法は管理血清を必要としない。●管理血清を用いる法=x-R管理図法(平均値と範囲を管理限界と比較する)、累積和(CUSUM)法(偏差を累積して系統誤差を鋭敏に検出する)など。●患者データを用いる法=項目間チェック法(同一検体内の関連項目の整合性をみる)、デルタチェック法(同一患者の前回値との差をみる)、ナンバープラス法(多数患者値の分布を監視する)。両系統を組み合わせて誤差を総合的に検出することが要点である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。累積和法は管理血清の測定値の偏差を累積してプロットし、わずかな系統誤差を鋭敏に検出できる管理血清を用いる手法である。
- ② 正しい。x-R管理図法は管理血清を反復測定し、その平均値と範囲を管理限界と比較して誤差を監視する、管理血清を用いる手法である。
- ③ 項目間チェック法は同一の患者検体内における関連項目の整合性をみる手法であり、管理血清は用いずに患者データのみで評価する。
- ④ デルタチェック法は同一患者の前回値との差を比較して異常を検出する手法であり、管理血清は用いずに患者データで評価する。
- ⑤ ナンバープラス法は多数の患者測定値の分布を監視して異常を検出する手法であり、管理血清は用いずに患者データで評価する。
📋 まとめの表を見る:内部精度管理法の分類(管理試料を用いる方法・用いない方法)
累積和法は微小で持続的な偏りの検出に優れる。x̄-R管理図法は標準液の劣化・機器異常等の系統誤差/偶然誤差を検出するが、正確度(真度)そのものの評価には別途標準物質・標準法との比較が必要。
第59回 午後4(臨床検査総論)
正確度の管理法はどれか。2つ選べ。
- ①標準法との比較
- ②管理血清の測定
- ③重複再現性の比較
- ④日差再現性の比較
- ⑤標準血清による検定
正答: ①標準法との比較・⑤標準血清による検定
ポイント
正確度(真度)は測定値が真値にどれだけ近いかを示す指標であり、真値が既知の方法や試料を基準とする標準法(基準分析法)との比較や、値付けされた標準血清による検定によって評価する。これらは真の値との一致度を確認できるため正確度の管理に用いられる。一方、再現性に関する評価は測定値のばらつき、すなわち精密度の管理であり、正確度とは概念が異なる。●正確度の管理=標準法との比較、標準血清による検定、回収試験、添加試験など真値との照合による方法。●精密度の管理=管理血清の反復測定、重複再現性(同時再現性)の評価、日差再現性の評価などばらつきの大きさを確認する方法。正確度と精密度は混同しやすいが、真値への近さを表す正確度と、繰り返し測定したときの値のばらつきの小ささを表す精密度という、互いに別の概念として明確に区別してとらえる必要がある。両者をそろえて評価することで検査の信頼性が担保される。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。標準法(基準分析法)との比較は、真値に近い基準となる方法と照合して測定値の偏りをみる正確度の管理法である。
- ② 管理血清の測定は反復によるばらつきを評価するものであり、正確度ではなく精密度の管理に該当する方法である。
- ③ 重複再現性の比較は同時に測定した値のばらつきを評価するものであり、正確度ではなく精密度の管理に該当する方法である。
- ④ 日差再現性の比較は日間で測定した値のばらつきを評価するものであり、正確度ではなく精密度の管理に該当する方法である。
- ⑤ 正しい。標準血清による検定は、値付けされた標準物質と照合して測定値の偏りをみる正確度の管理法である。
📋 まとめの表を見る:測定法の性能評価:正確度(真度)と精密度の違い
正確度と精密度を総合したものを「精確さ」という。
第59回 午後5(臨床検査総論)
次の検査結果でパニック値はどれか。
- ①血糖 — 250 mg/dl
- ②血清K — 5.0 mmol/l
- ③血清Na — 147 mmol/l
- ④血清ALT — 200 U/l
- ⑤動脈血酸素分圧(PaO₂) — 45 torr
正答: ⑤動脈血酸素分圧(PaO₂) — 45 torr
ポイント
パニック値(緊急異常値)は、放置すれば生命に直結する危険な状態を示し、確認後ただちに主治医へ報告すべき検査値をいう。動脈血酸素分圧(PaO₂)45Torrは著明な低酸素血症であり、呼吸不全として緊急の酸素投与や対応を要するためパニック値に該当する。他の値はいずれも軽度から中等度の異常にとどまり、ただちに生命に関わるものではない。●パニック値の例=PaO₂の著減、血糖の著明な低下や高度高値、血清Kの著明高値や低値、血小板の著減、白血球の著減など生命危機に直結する値。●本問の非該当値=血糖250mg/dl、血清K5.0mmol/l(正常上限付近)、Na147mmol/l(軽度高値)、ALT200U/l(肝障害だが緊急域ではない)。生命危機との直結性の有無が、パニック値かどうかを判定する要点となる。
選択肢ごとの解説
- ① 血糖250mg/dlは高値ではあるが、ただちに生命に関わるパニック値の域には達しておらず、緊急性は高くない値である。
- ② 血清K5.0mmol/lは正常上限付近の値であり、緊急対応を要するパニック値には該当しない、ほぼ基準内の値である。
- ③ 血清Na147mmol/lは軽度の高値にとどまる値であり、パニック値とされるような著明な異常には該当しない。
- ④ 血清ALT200U/lは肝障害の存在を示す値ではあるが、それ自体は直ちに生命に関わる緊急のパニック値とはいえない。
- ⑤ 正しい。PaO₂45Torrは著明な低酸素血症で呼吸不全を示し、緊急の対応を要するパニック値に該当する値である。
第59回 午後6(臨床検査総論)
磁気共鳴画像検査(MRI)で胆管を描出した際に得られた画像を別に示す。この患者の尿中に増加するのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB006.4b5cd683a1.jpg

- ①蛋白
- ②亜硝酸塩
- ③ビリルビン
- ④ミオグロビン
- ⑤ウロビリノゲン
正答: ③ビリルビン
ポイント
MRCP(MR胆管膵管撮影)で胆管描出が行われた本例は胆管の閉塞による閉塞性黄疸が示唆される。閉塞性黄疸では抱合型(直接)ビリルビンが胆汁中へ排泄されず血中に逆流し、抱合型は水溶性であるため尿中にビリルビンとして増加する。一方、閉塞により腸への胆汁流入が途絶するため、尿中ウロビリノゲンはむしろ減少するのが特徴である。●尿中ビリルビン陽性=抱合型ビリルビン上昇を示す閉塞性黄疸や肝細胞性黄疸でみられる所見。●尿中ウロビリノゲン増加=溶血性黄疸や肝細胞障害で腸肝循環が亢進した場合にみられる所見。閉塞性黄疸では腸内でのウロビリノゲン生成自体が低下するため尿中で減少する点が、尿中ウロビリノゲンが増加する溶血性黄疸との鑑別における重要な要点となる。血清では抱合型ビリルビンが優位に上昇し、便は灰白色を呈することも多い。
選択肢ごとの解説
- ① 蛋白尿は糸球体障害やネフローゼ症候群などで生じる所見であり、本例の胆管閉塞による尿の変化の主体とはならない。
- ② 亜硝酸塩は尿路に細菌感染がある場合に陽性となる所見であり、本例の胆管閉塞による尿の変化とは関係しない。
- ③ 正しい。閉塞性黄疸では水溶性の抱合型ビリルビンが血中に逆流し、尿中にビリルビンとして増加してくる。
- ④ ミオグロビン尿は横紋筋融解症などの筋障害で生じる所見であり、本例の胆管閉塞による尿の変化とは関係しない。
- ⑤ 閉塞性黄疸では胆汁の腸内への流入が途絶するため、尿中ウロビリノゲンは増加ではなくむしろ減少してくる。
📋 まとめの表を見る:黄疸の種類と尿中ビリルビン・ウロビリノゲンの変化
第59回 午後7(臨床検査総論)
尿沈渣の無染色標本を別に示す。考えられる疾患はどれか。2つ選べ。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB007.83742b83e6.jpg

- ①膀胱癌
- ②尿管結石
- ③血管炎症候群
- ④横紋筋融解症
- ⑤慢性糸球体腎炎
正答: ③血管炎症候群・⑤慢性糸球体腎炎
ポイント
図では辺縁不整や大小不同を伴う変形赤血球が目立ち、糸球体性血尿を考える。血管炎症候群と慢性糸球体腎炎が該当する。この図自体から赤血球円柱の存在までは確認できない。これらは赤血球が糸球体基底膜を通過する際に物理的・浸透圧的に変形を受けるため、変形赤血球が出現するのが特徴である。●糸球体性血尿(変形赤血球・赤血球円柱)を示す疾患=慢性糸球体腎炎、血管炎症候群(ANCA関連腎炎など)、IgA腎症などの糸球体疾患。●非糸球体性血尿(均一な形の赤血球)を示す疾患=膀胱癌、尿管結石など下部尿路や尿路系からの出血。尿沈渣の赤血球の形態と赤血球円柱の有無により、出血部位が糸球体由来なのか尿路由来なのかを推定することが要点である。糸球体性血尿では蛋白尿を伴うことも多く、円柱は尿細管腔で形成されるため腎実質由来の所見として重要である。
選択肢ごとの解説
- ① 膀胱癌は均一な形の赤血球を示す非糸球体性血尿を生じる疾患であり、変形赤血球や赤血球円柱を主体とする所見とは異なる。
- ② 尿管結石は均一な形の赤血球を示す非糸球体性血尿を生じる疾患であり、変形赤血球や赤血球円柱は典型的な所見ではない。
- ③ 正しい。血管炎症候群は糸球体障害を起こす疾患であり、変形赤血球や赤血球円柱を伴う糸球体性血尿を呈する。
- ④ 横紋筋融解症はミオグロビン尿を呈する病態であり、変形赤血球や赤血球円柱を示す糸球体性血尿の所見とは異なる。
- ⑤ 正しい。慢性糸球体腎炎は糸球体性血尿を呈する疾患であり、変形赤血球や赤血球円柱を尿沈渣に認める。
第59回 午後8(臨床検査総論)
脳脊髄液中にみられた病原性微生物の染色標本を別に示す。この患者の髄液検査所見として考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB008.b2e71011f9.jpg

- ①髄液圧 — 85 mmH2O
- ②細胞多形核白血球
- ③蛋白135 mg/dl
- ④糖 — 65 mg/dl
- ⑤クロール125 mmol/l
正答: ③蛋白135 mg/dl
ポイント
標本は墨汁法によるもので、周囲の厚い莢膜が明るい暈(ハロー)として抜けて見える円形の酵母、すなわちクリプトコックス・ネオフォルマンスを示しており、クリプトコックス髄膜炎(真菌性髄膜炎)が考えられる。その髄液所見は蛋白の増加(基準15〜45mg/dlに対し135mg/dlは高値)、糖の低下、単核球(リンパ球)優位の細胞増多、髄液圧の上昇が特徴で、本問では蛋白135mg/dlが合致する。●クリプトコックス(真菌性)髄膜炎の髄液所見=糖の低下、蛋白の増加、リンパ球優位の細胞増多、髄液圧の上昇が特徴。●細菌性髄膜炎の髄液所見=糖の低下、蛋白の著明な増加、好中球優位の細胞増多、髄液圧の上昇、外観の混濁が特徴。●ウイルス性髄膜炎の髄液所見=糖は正常、蛋白は軽度上昇、リンパ球優位の細胞増多、外観は透明が特徴。髄液の糖が正常か低下か、細胞分画が好中球優位かリンパ球優位かが、細菌性とウイルス性を鑑別する中心的な所見となる。なお結核性髄膜炎では糖低下とリンパ球優位、蛋白の著増を呈し、外観は日光微塵様となることがある。
選択肢ごとの解説
- ① 髄液圧85mmH₂Oはほぼ正常範囲の値であり、クリプトコックス髄膜炎では髄液圧の上昇がみられることが多いため、この所見は合致しない。
- ② クリプトコックス髄膜炎では単核球(リンパ球)優位の細胞増多が典型であり、多形核白血球優位は合致しない。多形核白血球優位の増多は細菌性髄膜炎でみられる所見である。
- ③ 正しい。蛋白135mg/dlは基準を大きく超える上昇であり、クリプトコックス髄膜炎でみられる蛋白増加に合致する値である。
- ④ 糖65mg/dlは正常からやや高値の値であり、クリプトコックス髄膜炎に典型的な髄液糖の低下を示しておらず合致しない。
- ⑤ クロール125mmol/lは正常範囲に近い値であり、クリプトコックス髄膜炎でみられるクロール低下を示しておらず合致しない。
📋 まとめの表を見る:髄液検査所見と疾患の鑑別(正常・出血・細菌性/結核性/真菌性/ウイルス性髄膜炎)
細菌性髄膜炎ではLD(乳酸脱水素酵素)も上昇する。髄液糖を評価する際は必ず同時測定した血糖値と比較する(髄液糖/血糖比は正常で約0.6)。
第59回 午後9(臨床検査総論)
性行為感染症はどれか。
- ①サイクロスポーラ症
- ②トリパノソーマ症
- ③リーシュマニア症
- ④トキソプラズマ症
- ⑤赤痢アメーバ症
正答: ⑤赤痢アメーバ症
ポイント
赤痢アメーバ症は原虫Entamoeba histolyticaによる感染症で、汚染された水や食物による糞口感染に加え、男性同性間の性交渉などを介した性行為感染症としても伝播し、本邦では性感染症としての側面が重視されている。アメーバ性大腸炎やアメーバ性肝膿瘍を起こす疾患である。●性行為で伝播しうる原虫=赤痢アメーバ、腟トリコモナス、ランブル鞭毛虫など。●性行為感染を主としない原虫=サイクロスポーラ(水・食物による媒介)、トキソプラズマ(経胎盤や食肉による感染)、トリパノソーマやリーシュマニア(吸血昆虫が媒介するベクター感染)。それぞれの原虫がどの感染経路で伝播するかの違いにより、各原虫感染症を鑑別することが要点となる。赤痢アメーバは栄養型と嚢子の二形態をとり、嚢子が経口的に取り込まれて感染が成立し、大腸粘膜に潰瘍を形成する。
選択肢ごとの解説
- ① サイクロスポーラ症は汚染された水や食物による経口感染で広がる疾患であり、性行為感染症には分類されない。
- ② トリパノソーマ症はサシガメやツェツェバエが媒介するベクター感染症であり、性行為感染症には分類されない。
- ③ リーシュマニア症はサシチョウバエが媒介するベクター感染症であり、性行為感染症には分類されない疾患である。
- ④ トキソプラズマ症は食肉の摂取や経胎盤感染が主体の疾患であり、性行為感染症には分類されない疾患である。
- ⑤ 正しい。赤痢アメーバ症は性行為を介して伝播しうる原虫感染症であり、性感染症としての側面をもつ疾患である。
第59回 午後10(臨床検査総論)
野ネズミの耳道から多数の小形虫体(0.3〜0.5 mm)が確認された。虫体の写真を別に示す。関連する疾患はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB010.adbbd52f93.jpg

正答: ⑤ツツガムシ病
ポイント
野ネズミに寄生する0.3〜0.5mmの小形の虫体はツツガムシ(ダニの一種)であり、その幼虫が媒介するツツガムシ病(Orientia tsutsugamushiによるリケッチア感染症)に関連する。発熱・発疹・刺し口(焼痂)を三徴とし、所属リンパ節腫脹を伴うこともある。重症化する場合がある。●ダニが媒介する感染症=ツツガムシ病(ツツガムシの幼虫が媒介)、日本紅斑熱(マダニが媒介)、ライム病(マダニが媒介)、Q熱(マダニや動物が関与)。●ノミが媒介する感染症=ペスト。●蚊が媒介する感染症=マラリア。病原体とそれを媒介する節足動物の組合せを正しく対応させることが、これらの媒介性感染症を鑑別するうえでの要点である。ツツガムシ病はリケッチアによる感染症であり、診断には血清抗体価の測定が、治療にはテトラサイクリン系抗菌薬が用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① Q熱はCoxiella burnetiiによる感染症で、主に動物や塵埃から感染するものであり、本問のツツガムシが媒介する虫体ではない。
- ② ペストはノミが媒介する細菌Yersinia pestisによる感染症であり、本問のツツガムシが媒介する虫体とは関係しない。
- ③ マラリアはハマダラカが媒介する原虫感染症であり、本問のツツガムシが媒介する虫体とは関係しない疾患である。
- ④ ライム病はマダニが媒介するボレリア感染症であり、本問のツツガムシとは媒介するダニの種類が異なる疾患である。
- ⑤ 正しい。本虫体はツツガムシであり、その幼虫が媒介するツツガムシ病に関連するリケッチア感染症を起こす。
第59回 午後11(臨床検査医学総論)
疾患と病原体の組合せで正しいのはどれか。
- ①梅毒 — リケッチア
- ②淋疾 — スピロヘータ
- ③オウム病 — クラミジア
- ④ツツガムシ病 — ナイセリア
- ⑤Weil病 — トレポネーマ
正答: ③オウム病 — クラミジア
ポイント
オウム病はクラミジア(Chlamydophila psittaci)による感染症であり、この組合せが正しい。感染した鳥類との接触により経気道感染し、非定型肺炎を起こす人獣共通感染症である。他の組合せは病原体の分類が誤っている。●正しい疾患と病原体の組合せ=梅毒(Treponema=スピロヘータ)、淋疾(Neisseria=ナイセリア)、ツツガムシ病(Orientia=リケッチア)、Weil病(Leptospira=スピロヘータ)。●オウム病=クラミジア。病原体の分類であるスピロヘータ・リケッチア・クラミジア・ナイセリアと、それぞれが起こす疾患を正しく対応させることが、この種の組合せ問題を鑑別するうえでの要点となる。クラミジアは細胞内寄生性の微生物であり、オウム病のほかにトラコーマや性器クラミジア感染症の原因ともなる。
選択肢ごとの解説
- ① 梅毒の病原体はトレポネーマ(スピロヘータの一種)であり、リケッチアではないため、この組合せは誤っている。
- ② 淋疾の病原体は淋菌(ナイセリア属)であり、スピロヘータではないため、この組合せは誤っている。
- ③ 正しい。オウム病はクラミジア(Chlamydophila psittaci)による感染症であり、疾患と病原体の組合せが正しい。
- ④ ツツガムシ病の病原体はリケッチア(Orientia)であり、ナイセリアではないため、この組合せは誤っている。
- ⑤ Weil病の病原体はレプトスピラ(スピロヘータの一種)であり、トレポネーマではないため、この組合せは誤っている。
📋 まとめの表を見る:疾患と病原体の分類(スピロヘータ・リケッチア等)
クラミジアは細胞内寄生性の微生物である。この分類表はComplete+ MT内で該当箇所を特定できなかったため、確立された細菌分類学の一般知識に基づき作成。
第59回 午後12(臨床検査医学総論)
ペプチドホルモンはどれか。
- ①アドレナリン
- ②コルチゾール
- ③サイロキシン
- ④テストステロン
- ⑤副甲状腺ホルモン
正答: ⑤副甲状腺ホルモン
ポイント
副甲状腺ホルモン(PTH)はアミノ酸が連なって構成されるペプチドホルモンであり、骨吸収の促進や腎での再吸収・活性型ビタミンD産生の促進を介して血中カルシウム濃度を上昇させる。ペプチドホルモンは水溶性で細胞膜表面の受容体に作用する。他はアミンまたはステロイドである。●ペプチド(蛋白)ホルモン=副甲状腺ホルモン、インスリン、成長ホルモン、ACTHなど。●ステロイドホルモン=コルチゾール、テストステロン、アルドステロンなどコレステロール由来で脂溶性のもの。●アミンホルモン=アドレナリン(チロシン由来のカテコールアミン)、サイロキシン(チロシン由来の甲状腺ホルモン)。化学構造の違いによってホルモンを分類できることが要点である。ペプチドホルモンは水溶性で血中を遊離状態で輸送され、ステロイドや甲状腺ホルモンは脂溶性で多くが結合蛋白に結合して輸送される点も両者の違いである。
選択肢ごとの解説
- ① アドレナリンはチロシンから合成されるカテコールアミン(アミンホルモン)であり、ペプチドホルモンには該当しない。
- ② コルチゾールは副腎皮質で合成されるコレステロール由来のステロイドホルモンであり、ペプチドホルモンには該当しない。
- ③ サイロキシンはチロシンから合成される甲状腺ホルモン(アミン系)であり、ペプチドホルモンには該当しない。
- ④ テストステロンは精巣で合成されるコレステロール由来のステロイドホルモンであり、ペプチドホルモンには該当しない。
- ⑤ 正しい。副甲状腺ホルモンはアミノ酸が連なるペプチドホルモンであり、血中カルシウム濃度を上昇させる作用をもつ。
第59回 午後13(臨床検査医学総論)
メタボリックシンドロームの診断基準項目でないのはどれか。
- ①血圧
- ②血糖
- ③中性脂肪
- ④HDL-コレステロール
- ⑤LDL-コレステロール
正答: ⑤LDL-コレステロール
ポイント
メタボリックシンドロームの診断は、必須項目である内臓脂肪蓄積(ウエスト周囲径=腹囲)に加え、血圧・血糖・脂質(高トリグリセリド血症または低HDL-コレステロール血症)の3項目のうち2項目以上を満たすことで判定する。LDL-コレステロールは診断基準の項目には含まれないため、含まれないものを問う本問の正答となる。●診断基準の項目=腹囲(必須)、高血圧、高血糖、高トリグリセリド血症または低HDL-コレステロール血症。●含まれない項目=LDL-コレステロール、総コレステロールなど。LDL-コレステロールは動脈硬化の重要な危険因子ではあるが、メタボリックシンドロームの診断基準そのものには用いない点が、本問を判別するうえでの要点である。メタボリックシンドロームは内臓脂肪蓄積を基盤として複数の危険因子が重なる病態として定義されている。
選択肢ごとの解説
- ① 血圧(高血圧)はメタボリックシンドロームの診断基準項目に含まれるため、診断基準でないものには該当しない。
- ② 血糖(空腹時高血糖)はメタボリックシンドロームの診断基準項目に含まれるため、診断基準でないものには該当しない。
- ③ 中性脂肪(高トリグリセリド血症)は脂質に関する診断基準項目に含まれるため、診断基準でないものには該当しない。
- ④ HDL-コレステロールの低値は脂質に関する診断基準項目に含まれるため、診断基準でないものには該当しない。
- ⑤ 誤り。LDL-コレステロールはメタボリックシンドロームの診断基準項目には含まれず、診断基準でないものに該当する。
📋 まとめの表を見る:メタボリックシンドロームの診断基準
腹囲基準に加え、血中脂質・血圧・血糖のうち2項目以上に該当する場合にメタボリックシンドロームと診断する。メタボリックシンドロームの診断基準と特定保健指導の対象者選定基準は異なる。BMI25以上は特定保健指導の対象者選定で用いる条件の一つであり、それだけでメタボリックシンドローム予備群と判定しない。総コレステロール・LDL-コレステロール・遊離脂肪酸は本診断基準には含まれない。
第59回 午後14(臨床検査医学総論)
腎臓で産生されるのはどれか。
- ①レニン
- ②グルカゴン
- ③コルチゾール
- ④バソプレッシン
- ⑤アルドステロン
正答: ①レニン
ポイント
レニンは腎臓の傍糸球体装置で産生・分泌される蛋白分解酵素であり、肝由来のアンジオテンシノーゲンを分解してアンジオテンシンⅠを生成し、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を介して血圧と体液量を調節する。本問の他の選択肢はいずれも腎臓以外の臓器で産生される。●腎臓で産生される物質=レニン、エリスロポエチン、活性型ビタミンDなど。●腎臓以外で産生される物質=グルカゴン(膵島α細胞で産生)、コルチゾールやアルドステロン(副腎皮質で産生)、バソプレッシン(視床下部で産生され下垂体後葉から分泌)。各物質の産生臓器と作用部位を区別して理解することが、本問を判別するうえでの要点となる。腎臓は排泄器官であると同時に内分泌器官でもあり、レニン分泌による血圧調節、エリスロポエチンによる造血調節、ビタミンD活性化を担う。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。レニンは腎臓の傍糸球体装置で産生される酵素であり、血圧や体液量の調節に重要な役割を果たす。
- ② グルカゴンは膵ランゲルハンス島のα細胞で産生されるホルモンであり、腎臓では産生されない物質である。
- ③ コルチゾールは副腎皮質の束状帯で産生されるステロイドホルモンであり、腎臓では産生されない物質である。
- ④ バソプレッシンは視床下部で産生され下垂体後葉から分泌されるホルモンであり、腎臓では産生されない物質である。
- ⑤ アルドステロンは副腎皮質の球状帯で産生されるステロイドホルモンであり、腎臓では産生されない物質である。
第59回 午後15(臨床検査医学総論)
血液pHの算出に必要なのはどれか。2つ選べ。
- ①Cl⁻
- ②HCO₃⁻
- ③Na⁺
- ④PaCO₂
- ⑤PaO₂
正答: ②HCO₃⁻・④PaCO₂
ポイント
血液pHは、Henderson-Hasselbalchの式により重炭酸イオン(HCO₃⁻)と動脈血二酸化炭素分圧(PaCO₂)の比から算出される。式はpH=6.1+log(HCO₃⁻/(0.03×PaCO₂))で表され、代謝性因子であるHCO₃⁻と呼吸性因子であるPaCO₂が血液pHの決定要因となるため、この2つが正答となる。●pHの算出に必要な項目=HCO₃⁻(代謝性因子)、PaCO₂(呼吸性因子)。●pHの算出に直接関与しない項目=Na⁺やCl⁻(電解質やアニオンギャップには関わるがpHの式には不要)、PaO₂(酸素化の指標でpH算出には用いない)。酸塩基平衡の評価は、HCO₃⁻とPaCO₂の関係を中心にとらえることが要点である。PaCO₂の異常が原発であれば呼吸性、HCO₃⁻の異常が原発であれば代謝性の酸塩基平衡障害と判断し、代償の有無もあわせて評価する。
選択肢ごとの解説
- ① Cl⁻は電解質バランスやアニオンギャップの算出には関わるが、血液pHを算出する式に直接用いる項目ではない。
- ② 正しい。HCO₃⁻は代謝性因子としてHenderson-Hasselbalchの式に含まれており、血液pHの算出に必要な項目である。
- ③ Na⁺は電解質バランスに関わる項目ではあるが、血液pHを算出する式に直接用いる項目ではない。
- ④ 正しい。PaCO₂は呼吸性因子としてHenderson-Hasselbalchの式に含まれており、血液pHの算出に必要な項目である。
- ⑤ PaO₂は血液の酸素化の状態を示す指標であり、血液pHを算出する式に用いる項目ではない。
第59回 午後16(臨床生理学)
心拍数が減少するのはどれか。2つ選べ。
- ①歩行
- ②吸気
- ③眼球圧迫
- ④神経興奮状態
- ⑤頸動脈洞圧迫
正答: ③眼球圧迫・⑤頸動脈洞圧迫
ポイント
眼球圧迫と頸動脈洞圧迫はいずれも迷走神経反射を介して副交感神経を賦活し、洞結節の自動能を抑制して心拍数を減少させる(眼球心臓反射・頸動脈洞反射)。迷走神経の緊張が高まることで心拍が低下する仕組みであり、この2つが正答となる。●心拍数を減少させる(副交感神経・迷走神経優位)=眼球圧迫、頸動脈洞圧迫、安静時や睡眠時など。●心拍数を増加させる(交感神経優位)=歩行や運動、吸気時(呼吸性洞性不整脈では吸気時に増加する)、神経興奮・緊張状態、発熱など。自律神経の交感神経と副交感神経のどちらが優位になるかによって心拍数の応答方向が決まる点が、本問を判別するうえでの要点である。迷走神経刺激は洞結節の脱分極を抑制して心拍数を下げ、交感神経刺激は逆に心拍数と心収縮力をともに高める。
選択肢ごとの解説
- ① 歩行は運動に伴って交感神経が賦活される状況であり、心拍数を増加させる要因であって減少させる要因ではない。
- ② 吸気時は呼吸性洞性不整脈により心拍数が増加する時相であり、心拍数を減少させるのは吸気ではなく呼気時である。
- ③ 正しい。眼球圧迫は眼球心臓反射により迷走神経を介して洞結節を抑制し、心拍数を減少させる手技である。
- ④ 神経興奮状態は交感神経が優位となる状況であり、心拍数を増加させる要因であって減少させる要因ではない。
- ⑤ 正しい。頸動脈洞圧迫は頸動脈洞反射により迷走神経を介して洞結節を抑制し、心拍数を減少させる手技である。
第59回 午後17(臨床生理学)
最も緊急性が高い心電図所見はどれか。
- ①PQ短縮
- ②心房細動
- ③心室細動
- ④上室性期外収縮
- ⑤Ⅲ度房室ブロック
正答: ③心室細動
ポイント
心室細動は心室筋が無秩序に細かく震えるのみで協調的な収縮が失われ、有効な心拍出が完全に消失する致死性不整脈である。放置すれば数分で脳血流が途絶して死に至るため最も緊急性が高く、直ちに電気的除細動と心肺蘇生を要する。●最も緊急(致死性で拍出が消失)=心室細動、無脈性心室頻拍など。●緊急性はあるが拍出が保たれることが多い=Ⅲ度房室ブロック(高度徐脈ならペーシングを要する)。●比較的緊急性が低い=PQ短縮、上室性期外収縮、慢性の心房細動など。血行動態の破綻の有無とその程度が緊急度を決定するため、拍出が完全に失われる心室細動が本問では最優先となる。心室細動の心電図は基線が無秩序に揺れて明瞭なQRS波を欠き、ただちに胸骨圧迫と除細動を開始する必要がある。
選択肢ごとの解説
- ① PQ短縮はWPW症候群などでみられる所見ではあるが、それ自体はただちに生命に関わる緊急性の高い所見ではない。
- ② 心房細動は塞栓症や心不全を起こす危険はあるが、本問の選択肢の中では最も緊急性が高い所見とはいえない。
- ③ 正しい。心室細動は有効な心拍出が完全に消失する致死性不整脈であり、本問の中で最も緊急性が高い心電図所見である。
- ④ 上室性期外収縮はしばしば無害で経過観察となることが多い所見であり、緊急性は低い心電図所見である。
- ⑤ Ⅲ度房室ブロックは緊急性を伴う所見ではあるが、拍出が完全に消失する心室細動に比べると緊急度は劣る。
第59回 午後18(臨床生理学)
不整脈を訴える成人女性に心電図検査を実施した。心電図を別に示す。下線の所見はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB018.4863d18e9a.jpg

- ①心房細動
- ②心室細動
- ③心室頻拍
- ④房室ブロック
- ⑤ペースメーカー調律
正答: ③心室頻拍
ポイント
心室頻拍は心室を起源とする幅広いQRS波(wide QRS)が規則的に連続して出現する頻拍であり、房室解離を伴うことがあり、血行動態の悪化や心室細動への移行の危険がある重篤な不整脈である。本図の下線部の所見はこの心室頻拍に該当する。●幅広いQRSを示す頻拍=心室頻拍、変行伝導や脚ブロックを伴う上室頻拍など。●狭いQRSを示す不整脈=心房細動(RR間隔が不規則)、上室性頻拍など。●基線が無秩序で規則的なQRSを欠く=心室細動。QRS幅・規則性・房室関係(房室解離の有無)に着目することで、本図の所見が心室頻拍であると判別できることが要点である。心室頻拍は持続すると血圧低下や失神を生じ、心室細動へ移行する危険があるため、速やかな対応を要する不整脈である。
選択肢ごとの解説
- ① 心房細動はP波の消失と不規則なRR間隔が特徴であり、規則的に連続する幅広QRS頻拍を示す本図の所見とは異なる。
- ② 心室細動は無秩序な基線で規則的なQRS波を示さない所見であり、規則的に連続する心室頻拍とは波形が明確に異なる。
- ③ 正しい。幅広いQRS波が規則的に連続して出現する本図の所見は、心室頻拍に合致する所見である。
- ④ 房室ブロックはPQ間隔の延長やQRSの脱落を示す所見であり、頻拍を主体とする本図の所見とは異なる。
- ⑤ ペースメーカー調律はスパイク波に続いてQRSが出現する所見であり、本図の心室頻拍を示す所見とは異なる。
第59回 午後19(臨床生理学)
長時間の心電図記録が最も有効なのはどれか。
- ①異型狭心症
- ②拡張型心筋症
- ③動脈管開存症
- ④大動脈弁狭窄症
- ⑤心室中隔欠損症
正答: ①異型狭心症
ポイント
異型狭心症(冠攣縮性狭心症)は安静時や夜間から早朝にかけて冠動脈の攣縮により一過性の発作を起こす病態であり、発作が短時間かつ予測困難なため通常の安静時心電図では捉えにくい。そのため長時間心電図(ホルター心電図)で発作時の一過性ST上昇などの変化を記録するのが最も有効である。●長時間心電図が有効な病態=異型狭心症、発作性不整脈、原因不明の失神や動悸など一過性・発作性の病態。●長時間心電図が主体とならない病態=拡張型心筋症・動脈管開存症・大動脈弁狭窄症・心室中隔欠損症など、心エコーによる構造や機能の評価が中心となる疾患。発作の一過性と出現の予測困難さが、長時間記録の適応を決定する要点である。異型狭心症の発作時には冠攣縮により一過性にST上昇を示すことがあり、これを日常生活下で捉えるために長時間記録が有用となる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。異型狭心症は一過性の発作を長時間心電図で記録するのが最も有効であり、安静時心電図では捉えにくい。
- ② 拡張型心筋症は心エコーによる心機能の評価が診断の中心であり、長時間心電図が第一に有効な検査とはならない。
- ③ 動脈管開存症は心エコーで診断する先天性の構造疾患であり、長時間心電図が最も有効な検査の主たる適応ではない。
- ④ 大動脈弁狭窄症は心エコーで評価する弁膜症であり、長時間心電図が診断の主体となる疾患ではない。
- ⑤ 心室中隔欠損症は心エコーで診断する先天性の構造疾患であり、長時間心電図が最も有効な検査の主たる適応ではない。
第59回 午後20(臨床生理学)
一回呼吸法による肺拡散能(DLCO)の検査で誤っているのはどれか。
- ①肺気腫では低下する。
- ②肺高血圧症では上昇する。
- ③吸入する混合ガスには微量の一酸化炭素(CO)が含まれる。
- ④肺活量が1l未満の被験者では測定値の信頼度が低下する。
- ⑤混合ガス吸入後10秒間の息止めをさせ、一気に呼出させる。
正答: ②肺高血圧症では上昇する。
ポイント
一回呼吸法による肺拡散能(DLCO)は、低濃度の一酸化炭素を含む混合ガスを吸入して約10秒間息止めさせ、一気に呼出させて、ガスが肺胞-毛細血管膜を通過する能力(拡散能)を測定する検査である。肺高血圧症では肺血管床の減少や血流障害により肺毛細血管血液量が低下しDLCOは低下するため、上昇とする記述は誤り。●DLCOが低下する病態=肺気腫、間質性肺炎、肺高血圧症、貧血、肺塞栓など。●DLCOが上昇する病態=肺胞出血、多血症、左右短絡など。肺胞膜の面積と肺毛細血管血液量がDLCOの値を規定する。一酸化炭素はヘモグロビンへの親和性が高く拡散律速となるため、肺胞膜のガス交換能を評価する指標として用いられている。
選択肢ごとの解説
- ① 肺気腫では肺胞壁の破壊によりガス交換に使える面積が減少するためDLCOは低下するので、この記述は正しい。
- ② 誤り。肺高血圧症では肺血管床の減少により肺毛細血管血液量が低下するため、DLCOは上昇ではなくむしろ低下する。
- ③ 吸入する混合ガスに微量の一酸化炭素を含めるというのは正しい測定法であり、この記述は誤りではない。
- ④ 肺活量が1l未満の被験者では測定値の信頼度が低下するというのは正しい記述であり、この記述は誤りではない。
- ⑤ 混合ガス吸入後に約10秒間息止めさせ一気に呼出させるというのは正しい測定手技であり、この記述は誤りではない。
第59回 午後21(臨床生理学)
動脈血ガス分析において検体を室温に1時間放置した後に認められる数値の変動はどれか。pH PaO₂(Torr) PaCO₂(Torr)
- ①上昇 — 上昇 — 上昇
- ②上昇 — 低下 — 低下
- ③不変 — 不変 — 上昇
- ④低下 — 低下 — 上昇
- ⑤不変 — 上昇 — 不変
正答: ④低下 — 低下 — 上昇
ポイント
動脈血ガス分析の検体を室温に1時間放置すると、検体中の血球が解糖や好気的代謝を続けるため、乳酸などの酸の産生によりpHが低下し、酸素が消費されてPaO₂が低下し、二酸化炭素が産生されてPaCO₂が上昇する。したがってpH低下・PaO₂低下・PaCO₂上昇の組合せとなる。●室温放置による変動=pH低下、PaO₂低下、PaCO₂上昇(いずれも血球の解糖や細胞代謝が原因となる)。●適切な対策=採血後は速やかに測定する。直ちに測定できない場合の保存条件は採血器材の材質と測定までの時間に応じて選び、プラスチック製シリンジの検体は氷冷せず室温のまま30分以内に測定し、30分を超える保存が必要な場合はガラス製シリンジに採取して氷水中(0〜4℃)で冷却する。すべての検体に一律に氷冷を勧めない。検体は代謝活性をもつ血球を含むため、短時間でも値が変化することから、迅速な処理が原則であるという点が要点となる。とくに白血球数が著しく多い検体では代謝による変化が速いため、より一層の迅速測定や氷冷保存が求められる。
選択肢ごとの解説
- ① pHは低下するため、pH・PaO₂・PaCO₂をすべて上昇とする本選択肢の組合せは誤りである。
- ② pHは低下しPaO₂も低下しPaCO₂は上昇するため、上昇・低下・低下とする本選択肢の組合せは誤りである。
- ③ pHは低下するため、pHを不変としPaCO₂のみ上昇とする本選択肢の組合せは誤りである。
- ④ 正しい。室温放置によりpHは低下、PaO₂は低下、PaCO₂は上昇するという組合せになる。
- ⑤ PaO₂は低下しPaCO₂は上昇するため、PaO₂上昇でPaCO₂不変とする本選択肢の組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:動脈血ガス分析:検体の取扱いと保存の注意点
検体は代謝活性をもつ血球を含むため、短時間でも値が変化する。白血球数が著しく多い検体では変化がより速い。
第59回 午後22(臨床生理学)
78歳の男性。息切れの悪化と意識障害とを認め入院した。室内気吸入時の動脈血ガス分析の結果を以下に示す。pH 7.24, PaO₂ 52 Torr, PaCO₂ 64 Torr, HCO₃⁻ 25 mEq/l 入院6か月前の安定期のフローボリューム曲線を別に示す。正しいのはどれか。2つ選べ。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB022.fac3fd918d.jpg

- ①炭酸ガス分圧は正常である。
- ②代謝性アシドーシスの状態である。
- ③このアシドーシスは代償が働いている。
- ④フローボリューム曲線は下に凸である。
- ⑤慢性閉塞性肺疾患の増悪が疑われる。
正答: ④フローボリューム曲線は下に凸である。・⑤慢性閉塞性肺疾患の増悪が疑われる。
ポイント
pH7.24と低値でPaCO₂64Torrと高値を示す高二酸化炭素血症は呼吸性アシドーシスであり、低酸素血症と意識障害(CO₂ナルコーシス)を伴うことから慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪が疑われる。COPDの閉塞性換気障害では呼出の後半に気流が急峻に低下し、フローボリューム曲線が下に凸の形を示す。●COPDの特徴=閉塞性換気障害、下に凸のフローボリューム曲線、呼気の延長、肺拡散能の低下など。●呼吸性アシドーシス=PaCO₂の上昇によりpHが低下し、慢性ではHCO₃⁻の上昇による代償が働く。本例のHCO₃⁻25mEq/lはほぼ正常で十分な代償とはいえず、炭酸ガス分圧も著明高値で正常ではない点が要点である。COPDの増悪では低酸素血症の補正に伴う換気抑制でさらにPaCO₂が上昇し、CO₂ナルコーシスを招くため酸素投与には注意を要する。
選択肢ごとの解説
- ① PaCO₂64Torrは著明な高値であり、炭酸ガス分圧が正常であるとする本記述は誤りで、正しいものには該当しない。
- ② 高PaCO₂によるpHの低下は呼吸性アシドーシスであり、代謝性アシドーシスとする本記述は誤りで該当しない。
- ③ HCO₃⁻25mEq/lはほぼ正常範囲で十分な代償とはいえず、代償が働いているとする本記述は適切ではない。
- ④ 正しい。COPDの閉塞性換気障害では呼出後半に気流が低下し、フローボリューム曲線が下に凸の形を示す。
- ⑤ 正しい。高炭酸ガス血症・低酸素血症と意識障害という所見から、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪が疑われる。
📋 まとめの表を見る:酸塩基平衡異常の4パターン(pH・一次性変化・代償性変化)
代償は血液pHを基準範囲(7.35〜7.45)へ戻そうとする働き。呼吸性代償は換気量の増減により数時間単位、代謝性(腎性)代償はHCO₃-の排泄調節により数日単位で生じる。代償が予測範囲を超える場合は混合性障害を疑う。
📋 まとめの表を見る:換気機能障害の分類(%肺活量〈%VC〉・1秒率〈FEV1%〉による判定)
閉塞性換気障害ではフローボリューム曲線が下に凸の形となる。機能的残気量〈FRC〉は肺の過膨張により上昇する(肺気腫・COPDなど)。
第59回 午後23(臨床生理学)
体性感覚誘発脳波測定の際にインパルスが通過する部位はどれか。2つ選べ。
正答: ④視床・⑤内包
ポイント
体性感覚誘発電位(SEP)は末梢神経を電気刺激し、後索-内側毛帯路を上行して大脳皮質感覚野に至る求心性経路を反映する検査である。インパルスは後根から脊髄後索を上行し、延髄で毛帯交叉を経て内側毛帯となり、視床(後外側腹側核)で中継され、内包を通って大脳皮質感覚野へ到達するため、視床と内包が正答となる。●体性感覚(後索-内側毛帯路)が通過する部位=後根、後索、内側毛帯、視床、内包、感覚野。●この経路に含まれない部位=前根(運動の遠心性出力路)、側索(脊髄視床路や錐体路など別の経路)、黒質(錐体外路系の運動調節核)。求心性の感覚伝導路の走行を順にたどることが、本問を判別するうえでの要点である。
選択肢ごとの解説
- ① 前根は運動神経の遠心性の出力路であり、体性感覚を伝える求心性の伝導路には含まれない部位である。
- ② 側索は脊髄視床路や錐体路などを含む部位であり、体性感覚を伝える後索-内側毛帯路の主たる経路ではない。
- ③ 黒質は錐体外路系に属する運動調節核であり、体性感覚を伝える求心性の伝導路には含まれない部位である。
- ④ 正しい。求心性の感覚インパルスは中継核である視床(後外側腹側核)を通過してから皮質へ向かう。
- ⑤ 正しい。視床から大脳皮質感覚野へ向かう感覚線維は内包を通過してから感覚野に到達する。
第59回 午後24(臨床生理学)
前腕の手首(A点)と肘(B点)で正中神経を電気刺激した際に短母指外転筋から得られた複合筋活動電位を別に示す。A点とB点の距離は21 cmであった。この神経の運動神経伝導速度(m/s)はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB024.0d1d9e870b.jpg

- ①46.5
- ②48.2
- ③50.0
- ④52.6
- ⑤55.3
正答: ⑤55.3
ポイント
運動神経伝導速度(MCV)は、近位(肘B点)と遠位(手首A点)の二点を刺激して短母指外転筋から得た複合筋活動電位の潜時差と、二刺激点間の距離から、伝導速度=刺激点間距離÷潜時差で算出する。距離21cm=0.21mを潜時差で除すると約55m/sとなり、正中神経運動線維の正常範囲(おおむね50m/s以上)に合致する。●運動神経伝導速度=近位刺激と遠位刺激の距離を両者の潜時差で除して求める。●伝導速度の低下=Guillain-Barré症候群などの脱髄性ニューロパチー。●振幅の低下=軸索障害。潜時差と刺激点間距離から伝導速度を算出する。
選択肢ごとの解説
- ① 46.5m/sは潜時差を実際より大きく見積もった場合の値であり、本例の距離と潜時差から得られる計算結果とは一致しない。
- ② 48.2m/sは本例の距離21cmと潜時差から導かれる運動神経伝導速度の計算結果とは一致しない値である。
- ③ 50.0m/sは正常下限付近の値ではあるが、本例の距離と潜時差から得られる伝導速度の計算結果とは一致しない。
- ④ 52.6m/sは本例の計算結果に近い値ではあるが、距離と潜時差から正確に得られる正答とは一致しない値である。
- ⑤ 正しい。距離0.21mを複合筋活動電位の潜時差で除すると約55.3m/sとなり、本例の運動神経伝導速度に一致する。
第59回 午後25(臨床生理学)
経頭蓋磁気刺激検査と関係があるのはどれか。2つ選べ。
- ①渦電流
- ②近赤外光
- ③ラジオ波
- ④超伝導磁石
- ⑤円形コイル
正答: ①渦電流・⑤円形コイル
ポイント
経頭蓋磁気刺激(TMS)は、円形コイルや8字コイルに急速に変化する電流を流して変動磁場を発生させ、頭蓋を介して大脳皮質に渦電流(誘導電流)を誘起することで神経を非侵襲的に刺激する手技であり、渦電流と円形コイルが正答となる。●経頭蓋磁気刺激に関係する要素=円形コイルや8字コイル、電磁誘導によって生じる渦電流、運動誘発電位の記録など。●関係しない要素=近赤外光(近赤外分光法NIRSで用いる)、ラジオ波や超伝導磁石(いずれもMRIで用いる要素)。コイルの変動磁場が電磁誘導により頭蓋内に渦電流を生じさせ、それが皮質の神経を刺激するという原理を理解することが、本問を判別するうえでの要点となる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。コイルの変動磁場が電磁誘導により頭蓋内に渦電流を誘起し、その渦電流が大脳皮質の神経を刺激する。
- ② 近赤外光は近赤外分光法(NIRS)で用いられる要素であり、経頭蓋磁気刺激検査とは直接関係しない要素である。
- ③ ラジオ波はMRIで信号を励起するのに用いられる要素であり、経頭蓋磁気刺激検査とは直接関係しない要素である。
- ④ 超伝導磁石はMRIの静磁場を発生させるのに用いられる要素であり、経頭蓋磁気刺激検査とは直接関係しない。
- ⑤ 正しい。円形コイルに急速に変化する電流を流して変動磁場を発生させ、その磁場で大脳皮質を刺激する。
第59回 午後26(臨床生理学)
超音波検査で、狭窄部の圧較差をΔ P(mmHg)、最大流速をV(m/s)とすると、圧較差Δ Pを求めるための正しい式はどれか。
- ①Δ P=V²
- ②Δ P=2V²
- ③Δ P=3V²
- ④Δ P=4V²
- ⑤Δ P=5V²
正答: ④Δ P=4V²
ポイント
簡易ベルヌーイ式では、狭窄部前後の圧較差ΔP(mmHg)は狭窄部の最大流速V(m/s)を用いてΔP=4V²で近似される。血流が狭窄を通過すると流速が増し、その際に圧エネルギーが運動エネルギーへ変換されるため、圧較差は流速の二乗に比例して大きくなる。連続波ドプラ法で狭窄部の最大流速を計測すれば、カテーテルを用いず非侵襲的に圧較差を推定でき、大動脈弁狭窄症や僧帽弁狭窄症など弁膜症の重症度評価に広く用いられている。●式の成り立ち=流体力学のベルヌーイの定理から導かれ、係数4には血液密度とmmHgへの単位換算がまとめられた簡略値である。●臨床応用=弁狭窄部の圧較差算出のほか、三尖弁逆流の最大流速から右室収縮期圧(推定肺動脈圧)を求める際にも用いられる。●適用上の限界=狭窄手前の流速が大きい場合や長いトンネル状狭窄では誤差を生じやすく、補正が必要となる。
選択肢ごとの解説
- ① ΔP=V²は係数が欠落しており、密度と単位の換算を満たさず圧較差を大きく過小評価するため誤りである。
- ② ΔP=2V²は係数2で、簡易ベルヌーイ式の正しい係数4の半分にあたり圧較差を過小評価するため誤りである。
- ③ ΔP=3V²は係数3であり、流速の二乗に対する正しい比例係数4とは一致せず成立しないため誤りである。
- ④ 正しい。ΔP=4V²が簡易ベルヌーイ式で、最大流速の二乗に4を乗じて狭窄部前後の圧較差を求める式である。
- ⑤ ΔP=5V²は係数が過大で圧較差を過大評価するため、正しい近似式とはいえず狭窄評価には用いられない。
第59回 午後27(臨床生理学)
腹部超音波検査所見と疾患の組合せで正しいのはどれか。
- ①デブリ — 肝囊胞
- ②ハロー — 胆石症
- ③音響陰影 — 肝腫瘍
- ④多重エコー — 急性胆囊炎
- ⑤コメットエコー — 胆囊腺筋腫症
正答: ⑤コメットエコー — 胆囊腺筋腫症
ポイント
コメットエコーは、ごく小さな反射体内で超音波が多重反射を繰り返して尾を引く彗星状の高エコーで、胆囊腺筋腫症のRokitansky-Aschoff洞内に蓄積したコレステロール結晶を反映する特徴的な所見である。胆囊壁の限局性あるいはびまん性の肥厚とともにみられ、本症の超音波診断に有用な所見として知られている。腹部超音波では各所見がそれぞれ特定の病態と結びついて観察されるため、所見と疾患の対応を正確に理解しておく必要がある。●壁・内腔の所見=音響陰影は結石やガスの後方に生じる無エコー帯で胆石症などを示し、コメットエコーは胆囊腺筋腫症を示唆する所見である。●腫瘤性病変の所見=ハローは転移性肝腫瘍周囲にみられる低エコー帯、デブリは胆汁内容物の沈殿で胆囊炎や胆囊蓄膿などに伴う。●多重エコーは消化管ガスなどで生じる反射であり、特定の疾患に固有のものではない点に注意して評価する。
選択肢ごとの解説
- ① デブリは胆囊内容物などの沈殿エコーであり、内部が無エコーとなる肝囊胞とは組合せが合わないため誤りである。
- ② ハローは転移性肝腫瘍の周囲にみられる低エコー帯を指す所見であり、胆石症に固有の像ではないため誤りである。
- ③ 音響陰影は結石やガスの後方に生じる無エコー帯であり、肝腫瘍に特異的な所見とはいえないため誤りである。
- ④ 多重エコーはガスなどで生じる反射であり、急性胆囊炎を特定する所見とはいえず組合せが合わず誤りである。
- ⑤ 正しい。コメットエコーは胆囊腺筋腫症のコレステロール結晶による多重反射を反映する特徴的な所見である。
📋 まとめの表を見る:腹部超音波検査:エコー像パターンと対応所見
第59回 午後28(臨床生理学)
MRIにおいて、T1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示すのはどれか。
正答: ④膀胱
ポイント
膀胱は内部に尿という自由水を大量に含むため、MRIではT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示す。これは水分子の縦緩和時間(T1)が長くT1強調像で信号が低くなり、横緩和時間(T2)も長いためT2強調像で信号が高くなることによるもので、囊胞や脳脊髄液など水分の豊富な構造に共通してみられる信号特性である。実質臓器は水含有量や組成により信号の現れ方が異なるため、信号パターンの違いから臓器や病変を推定できる。●水・液体成分=膀胱内の尿・各種囊胞・脳脊髄液はT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示すのが基本的なパターンである。●実質臓器=肝臓・膵臓・腎臓・大動脈壁などは膀胱ほど明瞭な自由水の信号パターンを示さない。●脂肪組織=T1強調像で高信号を示し、自由水とは対照的な信号特性をもつため病変の鑑別に役立つ。
選択肢ごとの解説
- ① 肝臓は実質臓器でT1強調像は比較的高信号を示し、自由水主体ではないため信号パターンが合わず誤りである。
- ② 膵臓は実質臓器でT1強調像でやや高信号を示すため、膀胱のような自由水の信号パターンとは異なり誤りである。
- ③ 腎臓は実質と尿を含むが臓器全体としては膀胱のような明瞭な自由水の信号パターンを示さないため誤りである。
- ④ 正しい。膀胱は内部の尿という自由水によりT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示す代表的な構造である。
- ⑤ 大動脈は流れる血液により信号が変動するため、典型的な自由水の信号パターンには当てはまらず誤りである。
第59回 午後29(臨床化学)
検査値への影響で正しいのはどれか。
- ①遊離脂肪酸は食後に高値となる。
- ②総蛋白は立位よりも臥位で高い。
- ③カリウムは全血冷蔵保存で低値となる。
- ④プロラクチンは睡眠中に最高値を示す。
- ⑤クレアチンキナーゼ(CK)は運動後低下する。
正答: ④プロラクチンは睡眠中に最高値を示す。
ポイント
プロラクチンは下垂体前葉から分泌される乳汁分泌ホルモンで、明瞭な日内変動を示し睡眠中に分泌が亢進して最高値となる。このため採血の時刻によって測定値が大きく変動し、評価の際には採血条件への十分な配慮が必要となる。臨床検査値は食事・体位・保存条件・運動など、いわゆる分析前変動の影響を受けて大きく変化することがある。●体位の影響=立位では血漿水分が間質へ移動して血液が濃縮するため、蛋白や血球など高分子成分は立位で高く臥位で低くなる。●運動の影響=骨格筋に由来するクレアチンキナーゼ(CK)は激しい運動の後に細胞から逸脱して上昇する。●保存・食事の影響=カリウムは全血の冷蔵保存で赤血球から逸脱して高値となり、遊離脂肪酸は空腹時に脂肪分解が進んで上昇する。なお随時血糖や酵素活性なども採血や保存の条件で変わるため、検査前の状態を確認したうえで結果を解釈する必要がある。
選択肢ごとの解説
- ① 遊離脂肪酸は空腹時にインスリン低下で脂肪分解が進み上昇し、食後はむしろ低下するため記述は誤りである。
- ② 総蛋白など高分子成分は立位で血漿が濃縮して高くなり、臥位ではやや低くなるため、記述が逆であり誤りである。
- ③ カリウムは全血の冷蔵保存で赤血球から逸脱して高値となるため、低値となるとする記述は逆であり誤りである。
- ④ 正しい。プロラクチンは明瞭な日内変動を示し、睡眠中に分泌が亢進して最高値を示すホルモンである。
- ⑤ クレアチンキナーゼ(CK)は骨格筋由来で激しい運動後に逸脱して上昇するため、低下とする記述は誤りである。
第59回 午後30(臨床化学)
分子の大きさを分離分画の原理とするのはどれか。
- ①逆相クロマトグラフィ
- ②疎水性クロマトグラフィ
- ③ゲル濾過クロマトグラフィ
- ④イオン交換クロマトグラフィ
- ⑤アフィニティクロマトグラフィ
正答: ③ゲル濾過クロマトグラフィ
ポイント
ゲル濾過クロマトグラフィ(サイズ排除クロマトグラフィ)は、多孔質ゲルの細孔への分子の入りやすさの差を利用し、分子の大きさ(分子量)によって分離する手法である。大きい分子は細孔に入れず素通りするため先に溶出し、小さい分子は細孔内を通って移動するため遅れて溶出する。このようにクロマトグラフィは固定相と分子の相互作用の種類、すなわち分離原理ごとに分類して理解することができる。●分子サイズによる分離=ゲル濾過(サイズ排除)クロマトグラフィが該当し、蛋白の分子量の推定などに用いられる。●電荷による分離=イオン交換クロマトグラフィで、イオン交換基と荷電分子との静電的相互作用を利用する。●特異的結合・疎水性による分離=アフィニティ(抗原抗体や酵素基質などの特異的親和性)や疎水性・逆相(疎水性相互作用)クロマトグラフィがある。
選択肢ごとの解説
- ① 逆相クロマトグラフィは固定相と分子の疎水性相互作用に基づく分離であり、分子の大きさが原理ではないため誤り。
- ② 疎水性クロマトグラフィは分子表面の疎水性の差を利用する分離であり、大きさによる分離ではないため誤りである。
- ③ 正しい。ゲル濾過クロマトグラフィは多孔質ゲルの細孔への入りやすさの差により分子の大きさで分離する手法である。
- ④ イオン交換クロマトグラフィは荷電基との静電的相互作用すなわち電荷の差で分離するため、該当せず誤りである。
- ⑤ アフィニティクロマトグラフィは抗原抗体などの特異的親和性に基づく分離であり、大きさが原理ではなく誤りである。
📋 まとめの表を見る:クロマトグラフィの分離原理
第59回 午後31(臨床化学)
カルシウムについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①尿細管で再吸収されない。
- ②ビタミンDを活性化する。
- ③食事中のカルシウムは胃から吸収される。
- ④骨ではリン酸カルシウムとして存在する。
- ⑤血清カルシウムの約半分はイオン型である。
正答: ④骨ではリン酸カルシウムとして存在する。・⑤血清カルシウムの約半分はイオン型である。
ポイント
骨組織のカルシウムは大部分がリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)として沈着しており、体内カルシウムの約99%が骨・歯に蓄えられている。また血清カルシウムは約半分が遊離のイオン型(生理活性をもつ活性型)として存在し、残りはアルブミン結合型とクエン酸などとの複合体型に分かれる。体内のカルシウムは消化管での吸収・腎での再吸収・骨代謝のバランスによって厳密に調節されている。●吸収・再吸収=食事中のカルシウムは主に小腸で活性型ビタミンDの作用下に吸収され、腎尿細管で大部分が再吸収される。●調節ホルモン=副甲状腺ホルモンと活性型ビタミンDが協調して血中濃度を一定に維持している。●存在様式=血清カルシウムはイオン型・蛋白結合型・複合体型に分かれ、このうちイオン型が生理活性を担っている。こうした調節機構が破綻すると高カルシウム血症や低カルシウム血症を生じ、骨代謝や神経筋の興奮性に影響を及ぼす。
選択肢ごとの解説
- ① カルシウムは腎尿細管で大部分が再吸収されて体内に保持されるため、再吸収されないとする記述は誤りである。
- ② ビタミンDは腎などで活性化されてカルシウム吸収を促すのであり、カルシウムがビタミンDを活性化するのではない。
- ③ 食事中のカルシウムは主に小腸で活性型ビタミンDの作用下に吸収されるため、胃から吸収されるは誤りである。
- ④ 正しい。骨ではカルシウムがリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)の形で沈着して存在している。
- ⑤ 正しい。血清カルシウムは約半分が生理活性をもつ遊離のイオン型として血中に存在している成分である。
第59回 午後32(臨床化学)
TCA回路で生成されないのはどれか。
- ①リンゴ酸
- ②コハク酸
- ③アセト酢酸
- ④オキサロ酢酸
- ⑤2-オキソグルタル酸
正答: ③アセト酢酸
ポイント
アセト酢酸はケトン体の一種であり、脂肪酸のβ酸化で生じたアセチルCoAから肝臓のケトン体生成経路で合成される代謝産物で、TCA回路(クエン酸回路)の中間代謝産物ではない。TCA回路はアセチルCoAを段階的に酸化してエネルギーを取り出す循環経路であり、各中間体は回路内で順次相互に変換されていく。●TCA回路の主な中間体=クエン酸・イソクエン酸・2-オキソグルタル酸(α-ケトグルタル酸)・スクシニルCoA・コハク酸・フマル酸・リンゴ酸・オキサロ酢酸が含まれる。●回路の意義=酸化の過程でNADHやFADH₂を生じ、これらが電子伝達系を介したATP産生に寄与する。●ケトン体=アセト酢酸・βヒドロキシ酪酸・アセトンであり、絶食時や糖尿病で増加する回路外の代謝産物として区別される。ケトン体は肝で生成されたのち肝外組織でエネルギー源として利用される点で、回路内の中間体とは役割が異なる。
選択肢ごとの解説
- ① リンゴ酸はTCA回路でフマル酸の水和により生成され、続いてオキサロ酢酸へ酸化される回路の中間体である。
- ② コハク酸はTCA回路の中間体であり、コハク酸脱水素酵素の作用によってフマル酸へ酸化される代謝産物である。
- ③ 誤り。アセト酢酸はケトン体でありTCA回路では生成されず、肝でアセチルCoAから合成される代謝産物である。
- ④ オキサロ酢酸はTCA回路の中間体で、アセチルCoAと縮合してクエン酸を生成する出発かつ再生成物質である。
- ⑤ 2-オキソグルタル酸はTCA回路の中間体で、酸化的脱炭酸を受けてスクシニルCoAへ変換される代謝産物である。
📋 まとめの表を見る:TCA回路の中間体とケトン体の区別
ケトン体は脂肪酸のβ酸化で生じたアセチルCoAから肝臓で合成される、TCA回路とは別の代謝産物である。
第59回 午後33(臨床化学)
直ちに糖尿病と診断できるのはどれか。
- ①空腹時血糖120 mg/dl、HbA1c(NGSP)7.0 %
- ②空腹時血糖140 mg/dl、HbA1c(NGSP)6.7 %
- ③随時血糖190 mg/dl、HbA1c(NGSP)7.2 %
- ④随時血糖210 mg/dl、HbA1c(NGSP)6.0 %
- ⑤75 g経口ブドウ糖負荷試験2時間値180 mg/dl、HbA1c(NGSP)6.6 %
正答: ②空腹時血糖140 mg/dl、HbA1c(NGSP)6.7 %
ポイント
糖尿病の診断では、空腹時血糖126mg/dl以上・随時血糖200mg/dl以上・75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dl以上のいずれか(糖尿病型)と、HbA1c(NGSP値)6.5%以上が同一の採血で同時に確認されれば、一回の検査で糖尿病と診断できる。空腹時血糖140mg/dl(≧126)かつHbA1c6.7%(≧6.5)の組合せは、血糖とHbA1cの両基準をともに満たすため即日に診断できる。●血糖の基準=空腹時126以上、随時200以上、OGTT2時間値200以上のいずれかが糖尿病型に該当する。●HbA1cの基準=NGSP値で6.5%以上が糖尿病型である。●診断手順=血糖とHbA1cの双方が糖尿病型なら即日に診断でき、いずれか一方のみが糖尿病型のときは別日の再検査が必要となる。
選択肢ごとの解説
- ① 空腹時120mg/dlは126未満で血糖が糖尿病型でなく、HbA1c7.0%のみでは即日に診断できないため誤りである。
- ② 正しい。空腹時140mg/dlとHbA1c6.7%はいずれも糖尿病型の基準を満たし、即日に糖尿病と診断できる。
- ③ 随時190mg/dlは200未満で血糖が糖尿病型でなく、HbA1c7.2%のみでは即日に確定できないため誤りである。
- ④ 随時210mg/dlは血糖が糖尿病型だがHbA1c6.0%が6.5%未満であり、即日診断の要件を満たさず誤りである。
- ⑤ OGTT2時間値180mg/dlは200未満で糖尿病型でなく、HbA1c6.6%のみでは即日に確定できないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:糖尿病型の判定基準と診断
血糖値①〜③のいずれかとHbA1cが同一採血で同時に糖尿病型なら1回で診断確定。血糖値のみ糖尿病型の場合は別日再検査や典型症状・網膜症・既往の確認が必要。
第59回 午後34(臨床化学)
LDL-コレステロールについて正しいのはどれか。
- ①食後5時間たてばFriedewaldの式を適用できる。
- ②トリグリセリドに比べて日内変動が少ない。
- ③甲状腺機能亢進症で高値を示す。
- ④閉経後に徐々に低下する。
- ⑤高値では血清が混濁する。
正答: ②トリグリセリドに比べて日内変動が少ない。
ポイント
LDLコレステロールはコレステロールを肝臓から末梢組織へ運ぶリポ蛋白で、トリグリセリドに比べて日内変動や食事の影響が小さく、比較的安定した検査値を示すのが特徴である。LDLコレステロールは動脈硬化性疾患の重要な危険因子として臨床的に重視されている指標である。●測定法=直接法のほか、総コレステロールからHDLコレステロールとトリグリセリド/5を差し引くFriedewald式があるが、空腹時採血でトリグリセリドが高値でない条件下で用いる必要がある。●変動要因=甲状腺機能低下症で高値、機能亢進症で低下し、女性は閉経後にエストロゲンの低下を背景として上昇する傾向がある。●性状=コレステロールは血清を混濁させず、血清の混濁はトリグリセリド(カイロミクロンやVLDL)の増加によって生じる。このためLDLコレステロールはトリグリセリドより検査値が安定し、脂質異常症の評価に用いやすい指標である。
選択肢ごとの解説
- ① Friedewald式は空腹時採血が前提であり、食後はトリグリセリドが上昇するため適用が不適切で誤りである。
- ② 正しい。LDLコレステロールはトリグリセリドに比べて日内変動が少なく、安定した検査値を示す指標である。
- ③ 甲状腺機能亢進症では脂質代謝が亢進してコレステロールはむしろ低下するため、高値を示すとするのは誤りである。
- ④ 閉経後はエストロゲンの低下によりLDLコレステロールは上昇する傾向があり、徐々に低下するとするのは誤りである。
- ⑤ 血清の混濁はトリグリセリドの増加によって生じるもので、コレステロール高値では混濁を示さず誤りである。
📋 まとめの表を見る:主なリポ蛋白の分類(比重・脂質構成・アポ蛋白・蛋白含有量)
電気泳動での移動度は陽極側からHDL(α)>VLDL(preβ)>LDL(β)>原点(カイロミクロン)の順。アポA1はLCATを活性化、アポC2はLPLを活性化、アポC3はLPLを抑制、アポEはLDL受容体・レムナント受容体に認識される。LDL-コレステロールは日内変動が少なく、血清混濁はLDL自体ではなくトリグリセライド(カイロミクロン・VLDL)による。
第59回 午後35(臨床化学)
血清中のトリグリセリドをグリセロール消去法とグリセロール非消去法の2法で測定したところ、測定値はそれぞれ148 mg/dl、177 mg/dlであった。この血清のグリセロール濃度に最も近いのはどれか。ただし、オレイン酸およびグリセロールの分子量はそれぞれ282、92とする。
- ①3 mg/dl
- ②5 mg/dl
- ③9 mg/dl
- ④17 mg/dl
- ⑤29 mg/dl
正答: ①3 mg/dl
ポイント
グリセロール非消去法(177mg/dl)には血清中の遊離グリセロールが加算され、消去法(148mg/dl)は遊離グリセロールをあらかじめ消去した真のトリグリセリド値を示す。したがって両者の差29mg/dlは、トリグリセリド当量として表された遊離グリセロール量にあたる。トリグリセリド1分子はグリセロール1分子と脂肪酸3分子からなり、トリオレインの分子量は約884(92+3×282−3×18)と計算される。実際の遊離グリセロール濃度は29×(92/884)≒3mg/dlとなる。●測定法の違い=消去法は内因性グリセロールをあらかじめ消去し、非消去法はこれを含めて測定する。●差の意味=両法の差はグリセロール由来分であり、トリグリセリド当量から分子量比により実グリセロール量へ換算する。●臨床的意義=高グリセロール血症や検体の保存条件などで両法の差が拡大する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。差29mg/dlに分子量比92/884を乗じると、遊離グリセロール濃度は約3mg/dlと算出される。
- ② 5mg/dlは分子量比による換算で得られる値より大きく、計算結果とは一致しないため正しくない値である。
- ③ 9mg/dlは両法の差をそのまま用いた誤った換算に近い値で、分子量比補正後の値とは合致せず正しくない。
- ④ 17mg/dlは計算上得られる値より過大であり、遊離グリセロール濃度として正しくないため適切でない。
- ⑤ 29mg/dlは消去法と非消去法の差そのものであり、分子量比による換算前の値であるため正しくない値である。
第59回 午後36(臨床化学)
栄養評価蛋白として用いられるRapid Turnover Protein(RTP)はどれか。2つ選べ。
- ①ハプトグロビン
- ②セルロプラスミン
- ③トランスサイレチン
- ④レチノール結合蛋白
- ⑤α₁-アンチトリプシン
正答: ③トランスサイレチン・④レチノール結合蛋白
ポイント
Rapid Turnover Protein(RTP)は半減期が短く、体内の蛋白栄養状態を鋭敏に反映する血清蛋白の総称で、トランスサイレチン(プレアルブミン、半減期約2日)とレチノール結合蛋白(半減期約半日)が代表である。半減期が短いため短期間の栄養状態の変化を反映でき、栄養評価の指標として臨床で用いられている。●RTPの代表=トランスサイレチン、レチノール結合蛋白、トランスフェリンが挙げられる。●急性相反応蛋白=ハプトグロビン・セルロプラスミン・α₁-アンチトリプシンは炎症で上昇するため、炎症の影響を受けやすく栄養指標には不向きである。●従来の栄養指標=アルブミンは半減期が約3週間と長く、長期的な栄養状態を反映する蛋白として用いられ、RTPとは性質が異なる点に注意する。したがってRTPは半減期の短さを利用して近時の栄養状態を評価できる一方、炎症の影響を受ける点には注意する。
選択肢ごとの解説
- ① ハプトグロビンは急性相反応蛋白で炎症時に上昇するため、栄養評価に用いるRTPには該当せず誤りである。
- ② セルロプラスミンは銅結合蛋白であり急性相反応蛋白でもあるため、栄養評価のRTPには分類されず誤りである。
- ③ 正しい。トランスサイレチン(プレアルブミン)は半減期が短く、RTPとして栄養評価に用いられる蛋白である。
- ④ 正しい。レチノール結合蛋白は半減期が極めて短く、RTPとして鋭敏な栄養評価の指標に用いられる蛋白である。
- ⑤ α₁-アンチトリプシンは急性相反応蛋白で炎症時に上昇するため、栄養評価のRTPには含まれず誤りである。
第59回 午後37(臨床化学)
血清蛋白について正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①アルブミンの半減期は3日である。
- ②アルブミンは遊離脂肪酸を運搬する。
- ③アルブミンとカルシウムは負の相関をする。
- ④乳幼児の免疫グロブリン濃度は成人より高い。
- ⑤免疫グロブリンは大部分がγ分画に含まれる。
正答: ②アルブミンは遊離脂肪酸を運搬する。・⑤免疫グロブリンは大部分がγ分画に含まれる。
ポイント
アルブミンは肝臓で合成される最も主要な血清蛋白で、遊離脂肪酸・ビリルビン・各種薬物・カルシウムなど多くの物質と結合してこれらを運搬する役割をもつ。また免疫グロブリンは血清蛋白電気泳動において、その大部分がγ分画に泳動されるという分布上の特徴がある。これらは血清蛋白の機能と分布に関する基本的な事項である。●アルブミンの性質=半減期は約3週間で、膠質浸透圧の維持と種々の物質の運搬という二つの主要な機能を担う。●カルシウムとの関係=血清カルシウムの一部はアルブミンと結合するため、アルブミンとカルシウムは正の相関を示す。●免疫グロブリン=主にγ分画へ泳動され、出生時は母体由来IgGをもつものの乳幼児期に一旦低下し成人より低い値をとる。このようにアルブミンと免疫グロブリンは合成部位や半減期、泳動上の分画が異なり、それぞれの性質を踏まえて評価する。
選択肢ごとの解説
- ① アルブミンの半減期は約3週間であり、3日とする記述は実際の半減期の値と大きく異なるため誤りである。
- ② 正しい。アルブミンは遊離脂肪酸をはじめビリルビンや各種薬物など多くの物質を結合して運搬する蛋白である。
- ③ 血清カルシウムの一部はアルブミンと結合し両者は正の相関を示すため、負の相関とする記述は逆であり誤りである。
- ④ 乳幼児の免疫グロブリン濃度は生後一旦低下して成人より低くなるため、成人より高いとする記述は誤りである。
- ⑤ 正しい。免疫グロブリンは血清蛋白電気泳動において、その大部分がγ分画に含まれて泳動される蛋白である。
📋 まとめの表を見る:血清総蛋白・アルブミンの定量法と主な性質
第59回 午後38(臨床化学)
Michaelis-Mentenの式に従う酵素反応において、最大反応速度(Vmax)の80 %となる基質濃度はミカエリス定数(Km)の何倍か。
正答: ②4倍
ポイント
Michaelis-Mentenの式 v=Vmax・[S]/(Km+[S]) において、反応速度が最大反応速度Vmaxの80%となる基質濃度を求める。0.8Vmax=Vmax・[S]/(Km+[S]) を整理すると 0.8(Km+[S])=[S] となり、0.8Km=0.2[S]、すなわち[S]=4Kmが得られる。したがって求める基質濃度はミカエリス定数Kmの4倍である。●Kmの定義=反応速度がVmaxの半分(50%)になるときの基質濃度であり、酵素と基質の親和性の指標として用いられる。●式の性質=低い基質濃度では一次反応的に、高い基質濃度では酵素が飽和して零次反応的にふるまう。●代表的な点=速度がVmaxの50%でKm、80%で4Km、90%で9Kmと、必要な基質濃度は速度の上昇とともに増大する。
選択肢ごとの解説
- ① 2倍ではv=Vmax・2/(1+2)≒0.67VmaxとなりVmaxの80%に達しないため、求める基質濃度ではなく誤りである。
- ② 正しい。[S]=4Kmのときv=Vmax・4/(1+4)=0.8VmaxとなりVmaxの80%にちょうど一致する。
- ③ 6倍ではv=Vmax・6/(1+6)≒0.86Vmaxで80%を上回るため、求める基質濃度とは一致せず誤りである。
- ④ 8倍ではv=Vmax・8/(1+8)≒0.89Vmaxで80%より大きいため、該当する基質濃度ではなく誤りである。
- ⑤ 10倍ではv=Vmax・10/(1+10)≒0.91Vmaxで80%を超えるため、求める基質濃度には当てはまらず誤りである。
第59回 午後39(臨床化学)
原発性副甲状腺機能亢進症の際に上昇するのはどれか。
正答: ①ALP
ポイント
原発性副甲状腺機能亢進症では副甲状腺ホルモンの過剰分泌により骨吸収が亢進し、これに伴う骨芽細胞の活性上昇を反映して骨型のALP(アルカリホスファターゼ)が上昇する。本症では同時に高カルシウム血症や低リン血症もしばしば併発するため、これらと併せて評価される。●ALPの由来と上昇=ALPには骨・肝胆道系・胎盤・小腸の各由来があり、骨型は骨形成や骨吸収の亢進により上昇するため、本症で増加する。●逸脱酵素=ALTは主に肝細胞障害で、ASTは肝・心筋・骨格筋の障害で上昇する酵素であり、副甲状腺機能亢進症の指標とはならない。●胆道系酵素=LAPとγ-GTは胆汁うっ滞やアルコール摂取などで上昇する酵素であり、本症で特異的に上昇するものではない。したがって本症ではALPの上昇に加え、高カルシウム血症や低リン血症を併せて評価することが診断上有用となる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。ALPは骨吸収と骨形成の亢進を反映するため、原発性副甲状腺機能亢進症において上昇する酵素である。
- ② ALTは主に肝細胞障害で上昇する逸脱酵素であり、副甲状腺機能亢進症で特異的に上昇する酵素ではなく誤りである。
- ③ ASTは肝・心筋・骨格筋の障害で上昇する酵素であり、本症で特異的に上昇するものではないため誤りである。
- ④ LAPは胆道系酵素であり胆汁うっ滞などで上昇する酵素で、副甲状腺機能亢進症の指標とはならず誤りである。
- ⑤ γ-GTは胆道系障害やアルコール摂取で上昇する酵素であり、本症で上昇する酵素ではないため誤りである。
第59回 午後40(臨床化学)
血清コリンエステラーゼ活性が低下するのはどれか。
- ①肥満
- ②肝硬変
- ③糖尿病
- ④高脂血症
- ⑤ネフローゼ症候群
正答: ②肝硬変
ポイント
血清コリンエステラーゼは肝臓で合成されて血中に分泌される酵素であり、肝硬変など肝の蛋白合成能が低下する病態ではその合成が減少して活性が低下する。このため血清コリンエステラーゼは肝の予備能を評価する有用な指標として臨床で用いられている。●活性が低下する病態=肝硬変や劇症肝炎など肝合成能の低下、有機リン剤中毒(酵素活性の阻害による)、低栄養状態などで活性が低下する。●活性が上昇する病態=ネフローゼ症候群・脂肪肝・糖尿病・肥満・高脂血症など脂質代謝が亢進する状態では合成が増えて活性が上昇する。●臨床的意義=肝の蛋白合成能の評価のほか、有機リン剤中毒の診断や経過観察にも利用される酵素である。このため血清コリンエステラーゼは合成能を反映する酵素として、肝疾患や中毒の評価において重要な意味をもつ。
選択肢ごとの解説
- ① 肥満では脂質代謝の亢進に伴いコリンエステラーゼはむしろ上昇するため、活性が低下するとする記述は誤りである。
- ② 正しい。肝硬変では肝の蛋白合成能の低下を反映して、血清コリンエステラーゼの活性が低下する病態である。
- ③ 糖尿病では脂質代謝の亢進を反映してコリンエステラーゼは上昇傾向を示すため、低下するとする記述は誤りである。
- ④ 高脂血症ではコリンエステラーゼは上昇する傾向にあり、活性が低下するものではないため記述は誤りである。
- ⑤ ネフローゼ症候群では肝での合成の代償的亢進により活性が上昇するため、低下するとする記述は誤りである。
第59回 午後41(臨床化学)
誤っているのはどれか。
- ①コバルトはビタミンB₆の構成成分である。
- ②ヨウ素は甲状腺ホルモンの構成成分である。
- ③血漿中の鉄はトランスフェリンに結合している。
- ④血漿マグネシウムの50 %以上はイオン化している。
- ⑤銅はスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の構成成分である。
正答: ①コバルトはビタミンB₆の構成成分である。
ポイント
コバルトはビタミンB₁₂(コバラミン)の構成成分であり、ビタミンB₆の構成成分ではないため記述は誤りである。ビタミンB₆はピリドキシンを基本骨格とする水溶性ビタミンで、分子内に金属を含まない物質である。微量元素は各種の金属酵素やホルモンなどの構成成分として生体内で重要な役割を果たしている。●微量元素の役割=ヨウ素は甲状腺ホルモン、銅はスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やセルロプラスミン、コバルトはビタミンB₁₂の構成成分となる。●鉄の輸送=血漿中の鉄は鉄輸送蛋白であるトランスフェリンに結合した状態で全身に運搬される。●マグネシウム=血漿中の半分以上がイオン化して存在し、多くの酵素反応における補因子として働いている。このように微量元素は金属酵素やホルモンの構成成分として働くため、その対応関係を正確に理解しておく必要がある。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。コバルトはビタミンB₁₂(コバラミン)の構成成分であり、ビタミンB₆には含まれていないため記述は誤り。
- ② ヨウ素は甲状腺ホルモン(T3・T4)の構成成分であり、記述は正しいため誤っているものには該当しない。
- ③ 血漿中の鉄は鉄輸送蛋白であるトランスフェリンに結合して運搬されるため、記述は正しく該当しないため誤り。
- ④ 血漿マグネシウムは50%以上がイオン化して存在しているため、記述は正しく誤っているものには該当しない。
- ⑤ 銅はスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の構成成分であり、記述は正しいため誤っているものには該当しない。
第59回 午後42(臨床化学)
下垂体後葉ホルモンはどれか。
- ①成長ホルモン
- ②プロラクチン
- ③バソプレッシン
- ④甲状腺刺激ホルモン
- ⑤副腎皮質刺激ホルモン
正答: ③バソプレッシン
ポイント
バソプレッシン(抗利尿ホルモン)は視床下部で産生され下垂体後葉から分泌される後葉ホルモンであり、腎集合管での水の再吸収を促進して尿を濃縮する働きをもつ。下垂体後葉から分泌されるホルモンはオキシトシンとバソプレッシンの2種に限られている。●下垂体後葉ホルモン=バソプレッシン(抗利尿)とオキシトシン(子宮収縮・射乳)であり、いずれも視床下部で合成され神経軸索を通じて後葉から放出される。●下垂体前葉ホルモン=成長ホルモン・プロラクチン・甲状腺刺激ホルモン・副腎皮質刺激ホルモン・性腺刺激ホルモンなどが含まれる。●分泌調節=前葉ホルモンは視床下部から放出される放出ホルモンによる液性の調節を受けて分泌される。このように下垂体は前葉と後葉で分泌様式が異なり、後葉ホルモンは視床下部由来である点を踏まえて区別する。
選択肢ごとの解説
- ① 成長ホルモンは下垂体前葉から分泌されるホルモンであり、下垂体後葉ホルモンではないため該当せず誤りである。
- ② プロラクチンは下垂体前葉から分泌される乳汁分泌ホルモンであり、下垂体後葉ホルモンではないため誤りである。
- ③ 正しい。バソプレッシン(抗利尿ホルモン)は視床下部で産生され下垂体後葉から分泌されるホルモンである。
- ④ 甲状腺刺激ホルモンは下垂体前葉から分泌されるホルモンであり、下垂体後葉ホルモンではないため誤りである。
- ⑤ 副腎皮質刺激ホルモンは下垂体前葉から分泌されるホルモンであり、下垂体後葉ホルモンではないため誤りである。
第59回 午後43(臨床化学)
ビタミンの基本的性質について正しいのはどれか。
- ①ビタミンAは水溶性ビタミンである。
- ②ビタミンB₆はASTの補酵素として働く。
- ③ビタミンKは抗トロンビン作用を有する。
- ④βカロチンはビタミンEの前駆物質である。
- ⑤ビタミンB₁₂は胃の壁細胞から吸収される。
正答: ②ビタミンB₆はASTの補酵素として働く。
ポイント
ビタミンB₆(活性型はピリドキサールリン酸)は、アミノ基転移反応を触媒するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)やアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の補酵素として働く水溶性ビタミンであり、アミノ酸代謝に必須の役割を果たす。ビタミンはその溶解性によって脂溶性と水溶性に大別される。●脂溶性ビタミン=A・D・E・Kの4種で、Aは視覚や上皮の維持、Dはカルシウム代謝、Kは血液凝固因子の合成に関与する。●水溶性ビタミン=B群とCで、B6はアミノ基転移酵素の補酵素として働き、B12は赤血球の産生に関与し胃壁細胞由来の内因子と結合して回腸で吸収される。●前駆物質=βカロチンはビタミンAの前駆体(プロビタミンA)であり、ビタミンEの前駆体ではない点に注意する。このようにビタミンは脂溶性と水溶性で性質や作用が異なるため、それぞれの代謝上の役割を踏まえて理解する。
選択肢ごとの解説
- ① ビタミンAはA・D・E・Kの脂溶性ビタミンに属するため、水溶性ビタミンであるとする記述は誤りである。
- ② 正しい。ビタミンB₆(ピリドキサールリン酸)はASTの補酵素としてアミノ基転移反応に関与する物質である。
- ③ ビタミンKは血液凝固因子の合成を促進する作用をもち、抗トロンビン作用は有しないため記述は誤りである。
- ④ βカロチンはビタミンAの前駆物質(プロビタミンA)であり、ビタミンEの前駆体ではないため記述は誤りである。
- ⑤ ビタミンB₁₂は壁細胞由来の内因子と結合し回腸で吸収されるため、胃の壁細胞から吸収されるとするのは誤り。
📋 まとめの表を見る:ビタミンの分類・化学名・主な働き
脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は肝・脂肪組織に蓄積しやすく過剰症を起こしうる(例:ビタミンA過剰で脳圧亢進・催奇形性、ビタミンD過剰で高カルシウム血症)。水溶性ビタミン(B群・C)は尿中に排泄されやすく過剰症は起こしにくい。β-カロチンはビタミンA(レチノール)の前駆体〈プロビタミンA〉であり、ビタミンEの前駆体ではない。
第59回 午後44(臨床化学)
染色体異常による疾患はどれか。2つ選べ。
- ①鎌状赤血球症
- ②Bartter症候群
- ③Turner症候群
- ④Klinefelter症候群
- ⑤フェニルケトン尿症
正答: ③Turner症候群・④Klinefelter症候群
ポイント
Turner症候群は性染色体がX一本のみ(45,X)となる染色体数の異常、Klinefelter症候群はX染色体が過剰な47,XXYの染色体数異常であり、いずれも染色体異常による疾患である。疾患は染色体レベルの異常によるものか、遺伝子レベルの変異によるものかで分類できる。●染色体異常症=Turner(45,X)・Klinefelter(47,XXY)・Down症候群(21トリソミー)など、染色体の数や構造の異常による疾患である。●単一遺伝子病=鎌状赤血球症(βグロビン遺伝子の点変異)・フェニルケトン尿症(フェニルアラニン水酸化酵素の欠損)・Bartter症候群(尿細管輸送体の遺伝子変異)など、遺伝子変異による疾患である。●区別の要点=顕微鏡で確認できる染色体の異常か、塩基配列レベルの変異かで分類する。
選択肢ごとの解説
- ① 鎌状赤血球症はβグロビン遺伝子の点変異による単一遺伝子病であり、染色体異常ではないため該当せず誤りである。
- ② Bartter症候群は腎尿細管の輸送体遺伝子変異による単一遺伝子病であり、染色体異常ではないため誤りである。
- ③ 正しい。Turner症候群は性染色体がX一本のみ(45,X)となる染色体数の異常によって生じる疾患である。
- ④ 正しい。Klinefelter症候群はX染色体が過剰な47,XXYの染色体数の異常によって生じる疾患である。
- ⑤ フェニルケトン尿症は酵素の欠損による単一遺伝子病であり、染色体異常ではないため該当せず誤りである。
📋 まとめの表を見る:染色体数的異常症候群の分類と核型
鎌状赤血球症、フェニルケトン尿症、Bartter症候群などは染色体異常ではなく単一遺伝子の変異による疾患(単一遺伝子病)であり、区別して覚える必要がある。
第59回 午後45(病理組織細胞学)
円柱上皮で被覆されているのはどれか。2つ選べ。
正答: ②大腸・③胆管
ポイント
大腸は単層円柱上皮で被覆されて水分の吸収と粘液の分泌を担い、胆管も単層円柱上皮で覆われて肝で産生された胆汁を輸送する。上皮の種類は各臓器が果たす機能に応じて異なっており、その分布には一定の規則があるため、臓器と上皮の組合せを理解しておく必要がある。●円柱上皮=大腸・小腸・胆管・胃・子宮頸管内など、吸収や分泌を行う組織を覆う上皮である。●重層扁平上皮=舌・食道・膣など、機械的な摩擦を受ける部位を保護するための上皮である。●移行上皮(尿路上皮)=腎盂・尿管・膀胱を覆い、内容量の変化に応じて伸縮することで尿の貯留に適応する上皮であり、円柱上皮や重層扁平上皮とは区別される。このように上皮の種類は臓器の機能と密接に対応しているため、臓器と被覆上皮の組合せを踏まえて評価する。
選択肢ごとの解説
- ① 舌は重層扁平上皮で被覆されて機械的刺激から保護される組織であり、円柱上皮ではないため該当せず誤りである。
- ② 正しい。大腸は単層円柱上皮で被覆されており、水分の吸収と粘液の分泌を担う消化管である。
- ③ 正しい。胆管は単層円柱上皮で被覆されており、肝で産生された胆汁を十二指腸へ輸送する管である。
- ④ 腎盂は移行上皮(尿路上皮)で被覆されて伸縮する上皮であり、円柱上皮ではないため該当せず誤りである。
- ⑤ 膣は重層扁平上皮で被覆されて摩擦から保護される組織であり、円柱上皮ではないため該当せず誤りである。
📋 まとめの表を見る:臓器・部位と被覆上皮の対応
内皮は血管・リンパ管、中皮は体腔(漿膜)の表面を被覆する単層扁平上皮で、局在により呼び分ける。肺胞の内面は中皮ではなく肺胞上皮(Ⅰ型・Ⅱ型肺胞上皮細胞)が覆う。
第59回 午後46(病理組織細胞学)
横紋筋がみられるのはどれか。
正答: ①横隔膜
ポイント
横隔膜は呼吸運動を担う骨格筋であり、自らの意思で動かせる随意筋すなわち横紋筋から構成される。横紋筋は顕微鏡下で明瞭な横縞構造を示すのが特徴で、骨格筋と心筋の二つがこれに含まれる。筋組織は横紋の有無や随意性の違いによって骨格筋・心筋・平滑筋の三種に分類される。●横紋筋=骨格筋(横隔膜や四肢の筋など随意筋)と心筋(不随意であるが横紋をもつ)が該当する。●平滑筋=十二指腸・胆囊・子宮・血管壁などの内臓や脈管の壁を構成する不随意筋で、横紋をもたず紡錘形の細胞からなる。●組織学的区別=顕微鏡下で横縞の有無、核の位置と数、細胞の形状などによって骨格筋・心筋・平滑筋の三者を判別する。このように筋組織は横紋の有無と随意性により分類されるため、各臓器を構成する筋の種類を踏まえて判別する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。横隔膜は呼吸運動を担う随意筋であり、明瞭な横紋を示す骨格筋から構成される器官である。
- ② 十二指腸の筋層は不随意の平滑筋で構成されており、横紋筋はみられないため該当せず誤りである。
- ③ 胆囊壁は不随意の平滑筋で構成されており、横紋筋はみられないため該当せず誤りである。
- ④ 子宮の筋層は不随意の平滑筋で構成されており、横紋筋はみられないため該当せず誤りである。
- ⑤ 血管壁の中膜は不随意の平滑筋で構成されており、横紋筋はみられないため該当せず誤りである。
📋 まとめの表を見る:筋組織の分類(骨格筋・心筋・平滑筋)と分布
第59回 午後47(病理組織細胞学)
特異性炎でないのはどれか。
- ①Hansen病
- ②アメーバ赤痢
- ③結核
- ④サルコイドーシス
- ⑤梅毒
正答: ②アメーバ赤痢
ポイント
アメーバ赤痢は赤痢アメーバの感染による腸炎であり、潰瘍の形成を主体とする感染症で、特徴的な肉芽腫を形成する特異性炎には含まれない。特異性炎とは、類上皮細胞や多核巨細胞からなる特徴的な肉芽腫を形成し、その組織像から起炎病態を推定できる慢性炎症のことをいう。●特異性炎=結核(乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫)・サルコイドーシス(非乾酪性肉芽腫)・梅毒(ゴム腫)・Hansen病(らい菌による肉芽腫)が代表である。●非特異性炎=アメーバ赤痢などのように、特定の肉芽腫像を示さない一般的な炎症反応である。●意義=特異性炎では組織像そのものが起炎病態の推定に役立つため、病理診断において重要な意味をもつ。このように特異性炎は組織像から起炎病態を推定できる点で、非特異性炎であるアメーバ赤痢とは明確に区別される。
選択肢ごとの解説
- ① Hansen病はらい菌による肉芽腫を形成する特異性炎であり、特異性炎でないものには該当しないため誤りである。
- ② 誤り。アメーバ赤痢は潰瘍性の腸炎であり肉芽腫を形成せず、特異性炎には含まれない非特異性炎である。
- ③ 結核は乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫を形成する代表的な特異性炎であり、該当しないため誤りである。
- ④ サルコイドーシスは非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫を形成する特異性炎であり、該当しないため誤りである。
- ⑤ 梅毒はゴム腫などの肉芽腫を形成する特異性炎であり、特異性炎でないものには該当しないため誤りである。
第59回 午後48(病理組織細胞学)
悪性腫瘍と転移好発部位の組合せで誤っているのはどれか。
- ①肺癌 — 脳
- ②胃癌 — 脾臓
- ③腎癌 — 肺
- ④大腸癌 — 肝臓
- ⑤前立腺癌 — 骨
正答: ②胃癌 — 脾臓
ポイント
胃癌の転移好発部位は肝臓・所属リンパ節・腹膜(播種)であり、脾臓への転移はまれで好発部位とはいえないため、胃癌と脾臓の組合せは誤りである。悪性腫瘍は血行性・リンパ行性・播種性の経路で転移し、原発巣ごとに好発する転移部位が異なることを理解しておく必要がある。●血行性転移の好発=肺癌は脳・骨・肝へ、腎癌・甲状腺癌・前立腺癌は骨や肺へ転移しやすい。●門脈系を介する転移=大腸癌や胃癌は門脈を経て肝臓へ転移する。●播種性転移=胃癌や卵巣癌は腹膜播種を起こしやすい。なお脾臓は血流構造の特性から転移が少ない臓器として知られ、胃癌の好発部位ではないとされる。このように悪性腫瘍は原発巣ごとに好発する転移部位が異なるため、原発巣と転移先の対応を踏まえて評価する。
選択肢ごとの解説
- ① 肺癌は脳へ血行性に転移を起こしやすく、組合せは正しいため誤っているものには該当しないため誤りである。
- ② 誤り。胃癌は肝臓や腹膜への転移が多く、脾臓は好発部位ではないため、この組合せが誤っているといえる。
- ③ 腎癌は肺へ血行性に転移を起こしやすく、組合せは正しいため誤っているものには該当しないため誤りである。
- ④ 大腸癌は門脈を介して肝臓へ転移しやすく、組合せは正しいため誤っているものには該当しないため誤りである。
- ⑤ 前立腺癌は骨へ造骨性の転移を起こしやすく、組合せは正しいため誤っているものには該当しないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:悪性腫瘍の転移経路と好発転移部位
胃癌の転移は肝臓・所属リンパ節・腹膜播種・卵巣(Krukenberg腫瘍)が中心で、脾臓は好発部位ではない。
第59回 午後49(病理組織細胞学)
上皮性腫瘍はどれか。2つ選べ。
正答: ①腺腫・④乳頭腫
ポイント
腺腫は腺上皮に由来し、乳頭腫は扁平上皮や移行上皮など被覆上皮に由来する良性腫瘍であり、いずれも上皮性腫瘍に分類される。腫瘍は発生母組織が上皮性であるか非上皮性(間葉系)であるかによって大きく二つに分類される。●上皮性腫瘍=腺腫や乳頭腫(良性)、腺癌や扁平上皮癌(悪性)など、上皮細胞に由来する腫瘍である。●非上皮性腫瘍(間葉系)=脂肪腫・線維腫・平滑筋腫(良性)や各種の肉腫(悪性)など、結合組織・筋・脂肪などに由来する腫瘍である。●命名の原則=上皮性の悪性腫瘍を癌腫、非上皮性の悪性腫瘍を肉腫と呼んで区別し、発生母組織の違いを名称に反映させている。このように腫瘍は発生母組織が上皮性か非上皮性かで分類されるため、各腫瘍の由来を踏まえて判別することが重要である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。腺腫は腺上皮に由来する良性腫瘍であり、上皮細胞に由来する上皮性腫瘍に分類される。
- ② 脂肪腫は脂肪組織に由来する非上皮性(間葉系)腫瘍であり、上皮性腫瘍ではないため該当せず誤りである。
- ③ 線維腫は線維結合組織に由来する非上皮性(間葉系)腫瘍であり、上皮性腫瘍ではないため該当せず誤りである。
- ④ 正しい。乳頭腫は被覆上皮に由来する良性腫瘍であり、上皮細胞に由来する上皮性腫瘍に分類される。
- ⑤ 平滑筋腫は平滑筋に由来する非上皮性(間葉系)腫瘍であり、上皮性腫瘍ではないため該当せず誤りである。
第59回 午後50(病理組織細胞学)
H-E染色標本を別に示す。この臓器はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB050.e6ec84f3a6.jpg

正答: ③膵臓
ポイント
膵臓のH-E染色標本では、外分泌部の腺房細胞が好酸性の分泌顆粒を豊富にもって密に集まり、その中に淡明で円形の細胞集塊であるランゲルハンス島(内分泌部)が島状に散在するのが特徴である。この好酸性の外分泌腺房と淡明な内分泌島とが混在する組織像が、膵臓に固有の所見である。●膵臓の構造=消化酵素を分泌する腺房と導管系からなる外分泌部と、ランゲルハンス島からなる内分泌部とで構成される。●類似臓器との鑑別=甲状腺はコロイドを容れる濾胞、副腎は皮質・髄質の層構造、肝臓は索状に配列する肝細胞と類洞を示す。●精巣は精細管とその間質に存在するLeydig細胞を示し、膵臓とは組織構造が明確に異なるため鑑別できる。このように臓器ごとに固有の組織像があるため、外分泌腺房とランゲルハンス島の混在像から膵臓と判別できる。
選択肢ごとの解説
- ① 甲状腺はコロイドを容れる濾胞構造を示す臓器であり、膵臓の腺房とランゲルハンス島の像とは異なるため誤りである。
- ② 肝臓は肝細胞索と類洞、中心静脈を示す臓器であり、ランゲルハンス島はみられないため該当せず誤りである。
- ③ 正しい。膵臓は好酸性の腺房とランゲルハンス島が混在する固有の組織像を示す臓器である。
- ④ 副腎は球状帯・束状帯・網状帯と髄質からなる層構造を示す臓器であり、膵臓とは異なるため該当せず誤りである。
- ⑤ 精巣は精細管とその間質のLeydig細胞を示す臓器であり、膵臓の組織像とは異なるため該当せず誤りである。