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第59回(2013) 臨床検査技師国家試験 午後51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第59回 午後51(病理組織細胞学)
パラフィン包埋法で正しいのはどれか。
①脱水時間は短い方がよい。 ②硬パラフィンの融点は50 ℃以下である。 ③パラフィン浸透前には脱アルコール操作が必要である。 ④固定不十分な組織はパラフィン包埋で追加固定される。 ⑤アルコール脱水法では水洗後に組織を直接、無水アルコールに浸漬する。
正答: ③パラフィン浸透前には脱アルコール操作が必要である。
ポイント パラフィン包埋では、固定後の組織を上行アルコール系列で十分に脱水し、キシレンなどの中間剤でアルコールを置換(透徹・脱アルコール)してから融解パラフィンを浸透させて包埋する。パラフィンは親水性をもたず水やアルコールとは混和しないため、浸透前に脱アルコール操作を行ってアルコールを中間剤に置き換える操作が必須となる。固定が不十分な組織は包埋後に追加固定はできず、固定の不良はそのまま標本の不良につながるため、固定は包埋前に完了させておく必要がある。硬パラフィンの融点は56〜58℃前後で50℃を超え、薄切に適した硬さをもつ。●脱水=アルコール濃度を段階的に上げて組織内の水を除く操作で、急ぐと収縮・硬化を招く●透徹(中間剤)=キシレン等でアルコールを置換しパラフィンと親和させる●浸透・包埋=融解パラフィンを組織内に行き渡らせてブロックに固める。
選択肢ごとの解説
① 脱水は組織を傷めない範囲で十分な時間をとって水を完全に除く必要があり、ただ短ければよいというものではない。 ② 硬パラフィンの融点は56〜58℃前後で50℃を超え、薄切に適した硬さをもつため、50℃以下とするのは誤りである。 ③ 正しい。パラフィンは水やアルコールと混和しないため、浸透の前にキシレン等で脱アルコール(透徹)する操作が必要である。 ④ 固定は包埋の前に完了させておくべきもので、固定が不十分な組織が包埋の過程で追加固定されて補われることはない。 ⑤ アルコール脱水法では低濃度から段階的に濃度を上げていくのが原則で、水洗後にいきなり無水アルコールに浸すと収縮・硬化を起こす。
第59回 午後52(病理組織細胞学)
術中迅速診断用の凍結切片標本について正しいのはどれか。2つ選べ。
①凍結前にホルマリン固定する。 ②ドライアイス・アセトンは凍結に適している。 ③薄切前に脱水操作を行う。 ④薄切温度は−20 ℃前後が適している。 ⑤May-Giemsa染色が適している。
正答: ②ドライアイス・アセトンは凍結に適している。・④薄切温度は−20 ℃前後が適している。
ポイント 術中迅速診断では固定・脱水を行わず、新鮮組織を急速凍結してクリオスタットで凍結切片を作製し短時間で診断する。急速凍結には氷晶形成を抑える低温寒剤が適し、ドライアイス・アセトンは約−79℃で組織を素早く凍らせ氷晶を小さく保つため凍結に適している。薄切はクリオスタット庫内で−20℃前後に保って行うと適度な硬さで連続切片が得られる。ホルマリン固定や脱水は迅速性を損ない組織を硬化させるため凍結切片には不向きである。組織を凍結させる包埋剤としてはOCTコンパウンドが用いられ、薄切後はただちにHE染色を行って鏡検する。●凍結切片の利点=迅速(数分〜十数分)で術中に良悪性や切除断端を判定できる●欠点=氷晶による形態のひずみで恒久標本より細胞像が劣り微細構造の評価には限界がある●染色=時間のかからない迅速HE染色が標準で用いられる。
選択肢ごとの解説
① 凍結前のホルマリン固定は組織を硬化させ迅速性も損なうため、迅速診断では新鮮組織をそのまま凍結するのが原則である。 ② 正しい。ドライアイス・アセトンは約−79℃で急速凍結ができ氷晶形成を抑えられるため、凍結に適している。 ③ 凍結切片は脱水を行わず新鮮組織をそのまま凍結して薄切するものであり、脱水すると組織が硬化し凍結切片には不向きとなるため薄切前の脱水操作は不要である。 ④ 正しい。薄切はクリオスタット庫内で−20℃前後の温度に保つと組織が適度な硬さとなり、連続切片が安定して得られるため適切である。 ⑤ 凍結切片の迅速診断には短時間の迅速HE染色が用いられ、時間を要するMay-Giemsa染色は適していない。
第59回 午後53(病理組織細胞学)
内分泌細胞の染色法はどれか。2つ選べ。
①Berlin blue染色 ②Grimelius染色 ③Kossa反応 ④Masson-Fontana染色 ⑤Victoria blue染色
正答: ②Grimelius染色・④Masson-Fontana染色
ポイント 神経内分泌細胞の分泌顆粒には、銀染色で検出できる成分が含まれる。Grimelius染色は外来性の還元剤を用いる好銀性(argyrophil)反応で、膵島や消化管の神経内分泌顆粒を黒褐色に描出する。Masson-Fontana染色は組織成分自体の還元性を利用する銀親和性(argentaffin、嗜銀性とも呼ばれる)反応で、銀親和性顆粒やメラニンを黒色に染める。銀の還元は染色中の反応であり、ホルモンを貯蔵する生理機能ではない。●好銀性=Grimelius、外来還元剤を要する。●銀親和性=Masson-Fontana、外来還元剤を要しない。●鉄=Berlin blue。●カルシウム塩=Kossa反応。●弾性線維=Victoria blue・orcein。
選択肢ごとの解説
① Berlin blue染色はヘモジデリンなど三価鉄を青く染める鉄染色であり、内分泌細胞の証明には用いない。 ② 正しい。Grimelius染色は好銀性を示す銀染色で、膵島や消化管の神経内分泌細胞を黒褐色に描出する。 ③ Kossa反応はリン酸カルシウムなどのカルシウム塩(石灰化)を黒色に染める検出法であり、内分泌細胞の証明には用いない。 ④ 正しい。Masson-Fontana染色は嗜銀性顆粒やメラニンを黒色に染め、神経内分泌細胞を同定できる。 ⑤ Victoria blue染色は弾性線維やHBs抗原を染める色素であり、内分泌細胞の染色には用いられない。
第59回 午後54(病理組織細胞学)
真菌の染色法はどれか。2つ選べ。
①Grocott染色 ②orcein染色 ③PAS染色 ④Warthin-Starry染色 ⑤Ziehl-Neelsen染色
正答: ①Grocott染色・③PAS染色
ポイント 真菌の細胞壁はキチンやグルカンなどの多糖類に富み、酸化で生じたアルデヒド基を検出する反応や金属銀の沈着を利用した銀染色によって組織内で証明できる。Grocott染色(グロコット・メセナミン銀)は真菌細胞壁を黒色に明瞭に染め、PAS染色は過ヨウ素酸で多糖類を酸化して赤紫色に染め菌体を浮き上がらせる。いずれも組織内真菌の検出に広く用いられる基本的な染色であり、菌体の輪郭や形態を観察するのに有用である。●真菌=Grocott(銀・黒色)・PAS(多糖・赤紫色)●弾性線維=orcein●スピロヘータやらせん菌=Warthin-Starry(鍍銀法)●抗酸菌=Ziehl-Neelsen(赤色)。これらは染める対象が互いに異なる染色である。
選択肢ごとの解説
① 正しい。Grocott染色は真菌細胞壁を黒色に染める銀染色で、組織内真菌の検出に用いる代表的染色である。 ② orcein染色は弾性線維やHBs抗原を茶褐色に染める色素であるため、真菌の検出・染色には用いられない染色である。 ③ 正しい。PAS染色は真菌細胞壁の多糖類を赤紫色に染めるため、組織内の菌体を明瞭に描出でき真菌の検出に用いられる。 ④ Warthin-Starry染色はスピロヘータやらせん菌を黒く染める鍍銀法であるため、対象が異なり真菌染色には用いない染色である。 ⑤ Ziehl-Neelsen染色は抗酸菌を赤色に染める染色であり、真菌の検出には用いられない。
第59回 午後55(病理組織細胞学)
乳癌組織の免疫組織化学染色標本(別冊No.9)を別に示す。使用された抗体はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB055.bfd3857edb.jpg
①抗Ki67抗体 ②抗HER2/neu抗体 ③抗p53抗体 ④抗エストロゲンレセプター(ER)抗体 ⑤抗プロゲステロンレセプター(PgR)抗体
正答: ②抗HER2/neu抗体
ポイント 乳癌では細胞膜上のHER2/neu(ErbB2)蛋白の過剰発現を抗HER2/neu抗体で免疫染色し、腫瘍細胞膜が全周性に強く染まれば陽性(3+)と判定する。膜が均一かつ全周性に染色されるパターンはHER2に特徴的で、本標本のように膜が縁取られて染まる像はHER2過剰発現を示す。HER2過剰発現は予後不良因子であると同時に抗HER2薬の適応を決める治療標的である。HER2は上皮成長因子受容体ファミリーに属する膜貫通型の受容体型チロシンキナーゼである。●核に染まる=Ki-67(増殖能)・p53・エストロゲン受容体(ER)・プロゲステロン受容体(PgR)(ホルモン受容体は核)●細胞膜に染まる=HER2/neu●乳癌の代表的免疫染色=ER・PgR・HER2・Ki-67の組合せで治療方針を決定する。
選択肢ごとの解説
① 抗Ki-67抗体は増殖期の細胞核を染めて増殖能を評価するもので、膜が染まる本標本とは染色様式が異なる。 ② 正しい。抗HER2/neu抗体は細胞膜の蛋白過剰発現を染めるものであり、全周性で強い膜染色像を示すため本標本に合致する。 ③ 抗p53抗体は変異により安定化したp53蛋白の核内蓄積を染めるものであり、膜染色を示すHER2とは染色部位が異なる。 ④ 抗エストロゲン受容体(ER)抗体は核を染めるホルモン受容体染色であり、膜が染まる本標本とは異なる。 ⑤ 抗プロゲステロン受容体(PgR)抗体も核を染めるホルモン受容体染色であり、膜染色像とは染色部位が異なる。
📋 まとめの表を見る:腫瘍と免疫組織化学的マーカーの対応
サイトケラチン・EMAは上皮性腫瘍全般に、CD45は造血器腫瘍全般に陽性となる。免疫組織化学は形態のみでは由来判別が難しい低分化腫瘍・転移巣の原発巣推定や、分子標的治療の適応判定に用いる。
第59回 午後56(病理組織細胞学)
乳癌組織の免疫組織化学染色標本(別冊No.9)を別に示す。この免疫組織化学染色が判定するのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB056.c0b8728554.jpg
①組織型 ②増殖能 ③間質浸潤 ④治療薬適応 ⑤リンパ管侵襲
正答: ④治療薬適応
ポイント HER2/neuの免疫組織化学染色は、抗HER2薬であるトラスツズマブなどの分子標的治療の適応を判定するために行うコンパニオン診断である。膜染色が3+の過剰発現例や、2+でFISHにより遺伝子増幅が確認された例が治療の対象となる。HER2は予後因子であると同時に治療標的としての意義が大きく、この染色は治療薬適応の決定を目的とする。判定が2+(境界域)の場合はFISHやISHで遺伝子増幅の有無を確認して陽性かどうかを最終判定する。●治療薬適応を判定=HER2(抗HER2薬)・ER/PgR(内分泌療法の適応)●増殖能を判定=Ki-67●組織型・間質浸潤・脈管侵襲=HE染色や形態学的観察で評価するものであり、HER2免疫染色の主目的ではない。
選択肢ごとの解説
① 組織型はHE染色など形態学的観察によって判定するもので、HER2免疫染色が直接判定する項目ではない。 ② 増殖能は増殖期の核を染めるKi-67の免疫染色で評価するものであり、膜を染めるHER2染色の主たる目的ではない。 ③ 間質浸潤の有無はHE染色での形態観察によって判定するもので、HER2免疫染色が判定する項目ではない。 ④ 正しい。HER2免疫染色は抗HER2薬(トラスツズマブ等)の適応を決めるために行うコンパニオン診断であり、治療薬適応を判定する。 ⑤ リンパ管侵襲はHE染色やD2-40などの脈管マーカーで評価するもので、HER2染色の目的ではない。
📋 まとめの表を見る:腫瘍と免疫組織化学的マーカーの対応
サイトケラチン・EMAは上皮性腫瘍全般に、CD45は造血器腫瘍全般に陽性となる。免疫組織化学は形態のみでは由来判別が難しい低分化腫瘍・転移巣の原発巣推定や、分子標的治療の適応判定に用いる。
第59回 午後57(病理組織細胞学)
子宮頸部細胞診のPapanicolaou染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB057.4d66b268c9.jpg
①ヘルペス感染細胞 ②中等度異形成 ③上皮内癌 ④扁平上皮癌 ⑤腺癌
正答: ③上皮内癌
ポイント 本像ではN/C比が著しく高く、クロマチン増量と核形不整を示す小型の異型扁平上皮細胞がみられ、選択肢では上皮内癌を考える。現在のベセスダ分類ではHSILに相当する所見である。上皮内癌は組織学的には強い異型を示す細胞が上皮全層を置換し、基底膜を越える浸潤を欠く。しかし、擦過細胞診では上皮の層構造や間質浸潤を直接判定できないため、確定には組織診が必要である。壊死性背景が乏しいことだけで浸潤癌を除外しない。●異形成=組織学的に核異型が軽〜中等度で、異型細胞が上皮の一部にとどまる●上皮内癌=強い異型細胞が上皮全層を置換するが浸潤はない●浸潤癌=基底膜を越えて浸潤し、細胞診では壊死性背景(tumor diathesis)が参考所見となる。これらの段階の確定は組織診で行う。
選択肢ごとの解説
① ヘルペス感染細胞は多核・すりガラス状核・核内封入体を示すもので、強い核異型を示す本例の像とは異なる。 ② 中等度異形成でも核異型を示すが、本像はN/C比が非常に高く核異型の強い小型細胞が目立ち、選択肢では上皮内癌を考える。細胞診だけで異型細胞の上皮内分布を直接観察することはできない。 ③ 正しい。N/C比の増大、クロマチン増量、核形不整を示す小型の異型扁平上皮細胞がみられ、選択肢では上皮内癌を考える。現在の細胞診判定ではHSILに相当する所見であり、浸潤の有無は組織診で評価する。 ④ 浸潤性扁平上皮癌では壊死性背景や多彩な異型細胞が参考になるが、細胞診だけで浸潤の有無を確定することはできない。本像の小型でN/C比の高い異型細胞から、選択肢では上皮内癌を考える。 ⑤ 腺癌は腺腔形成や粘液空胞をもつ細胞集塊を示すもので、扁平上皮系の本例とは細胞像が異なる。
📋 まとめの表を見る:子宮頸部細胞診 Bethesdaシステムの分類
上皮内癌(CIS)は従来分類のIVに相当し、Bethesdaシステムでは概ねHSILに含まれる。
第59回 午後58(病理組織細胞学)
感染症とその一次予防の組合せで正しいのはどれか。
①AIDS — 抗HIV薬 ②Creutzfeldt-Jakob病 — ギ酸 ③B型肝炎 — γ-グロブリン ④C型肝炎 — インターフェロン ⑤結核 — BCG
正答: ⑤結核 — BCG
ポイント 一次予防とは感染そのものの発生を防ぐ対策をいい、ワクチン接種がその代表である。結核に対するBCGは弱毒化したウシ型結核菌の生ワクチンで、乳児期の接種により結核、特に重症となりやすい粟粒結核や結核性髄膜炎の発症を予防する一次予防である。インターフェロンによるC型肝炎治療は一次予防ではない。一方、現在のHIV予防では抗HIV薬によるPrEP・PEPも用いられ、薬剤名だけで予防の段階を決めることはできない。一次予防には予防接種のほか生活環境の改善や健康教育も含まれる。●一次予防=ワクチン(BCG・B型肝炎ワクチンなど)で発症を未然に防ぐ●二次予防=検診などによる早期発見・早期治療●三次予防=発症後の治療や重症化・再発の防止(抗HIV薬・インターフェロンなど)。曝露後のγ-グロブリン投与は受動免疫による緊急予防にあたる。
選択肢ごとの解説
① 本問の登録正答は結核―BCGである。ただし、現在はHIV未感染者に抗HIV薬を用いる曝露前予防(PrEP)や曝露後予防(PEP)があるため、抗HIV薬は感染予防に用いられないとはいえない。出題時の解答と現在の予防法を区別する。 ② Creutzfeldt-Jakob病はプリオン病で有効なワクチンはなく、ギ酸は予防薬ではなく組合せは成り立たない。 ③ B型肝炎の予防にはB型肝炎ワクチンを用い、曝露後予防等では抗HBs人免疫グロブリン(HBIG)も用いる。通常のγ-グロブリン製剤とHBIGを区別する必要がある。「曝露後の受動免疫だから一次予防ではない」という説明は適切でない。 ④ インターフェロンはC型肝炎の治療に用いる薬剤であるため、感染の発症を未然に防ぐ一次予防には該当しない治療法である。 ⑤ 正しい。BCGは弱毒生ワクチンで、接種により結核の発症を予防する一次予防として用いられる。
📋 まとめの表を見る:感染症対策における一次予防・二次予防・三次予防
曝露後のγ-グロブリン投与(受動免疫)による緊急予防は一次予防に含めて扱われる。
第59回 午後59(臨床血液学)
血球産生について正しいのはどれか。
①胎生期の造血は肝臓で開始される。 ②骨髄での血球産生は出生後から始まる。 ③形質細胞は骨髄系幹細胞から分化する。 ④エリスロポエチンは脾臓で産生される。 ⑤髄外造血では末梢血に幼若な血球が出現する。
正答: ⑤髄外造血では末梢血に幼若な血球が出現する。
ポイント 髄外造血とは骨髄以外の臓器、主に肝臓や脾臓で血球が産生される状態で、骨髄線維症や重度の溶血など骨髄での造血が需要に追いつかないときにみられる。髄外造血では造血環境が未熟なため末梢血に幼若な赤芽球や骨髄球などの幼若血球が出現し、白赤芽球症と呼ばれる像を呈する。胎生期の造血は卵黄嚢で始まり肝臓・脾臓を経て骨髄へ移行し、出生後は骨髄が主要な造血の場となる。●胎生造血の場の移行=卵黄嚢→肝臓・脾臓→骨髄●エリスロポエチンの産生=主に腎臓(一部肝臓)で低酸素に応じて分泌される●形質細胞=リンパ系幹細胞由来のB細胞が分化したものであり骨髄系ではない。これらが造血の基本的知識となる。
選択肢ごとの解説
① 胎生期の造血は卵黄嚢で開始され、その後肝臓・脾臓へ移行するため、肝臓で開始するとするのは誤りである。 ② 骨髄での造血は胎生中期以降に始まり出生時には主要な造血の場であり、出生後に始まるとするのは誤りである。 ③ 形質細胞はリンパ系幹細胞に由来するB細胞が抗原刺激を受けて分化したものであるため、骨髄系幹細胞から分化するのではない。 ④ エリスロポエチンは主に腎臓(一部は肝臓)で低酸素に応じて産生されるホルモンであるため、脾臓で産生されるのではない。 ⑤ 正しい。髄外造血では造血環境が未熟なため幼若な赤芽球や骨髄球が末梢血に出現し、白赤芽球症と呼ばれる像を示す。
第59回 午後60(臨床血液学)
血小板活性化マーカーはどれか。
①可溶性フィブリン ②β-トロンボグロブリン(β-TG) ③プロトロンビンフラグメントF1⁺2(PF1⁺2) ④トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT) ⑤プラスミン・プラスミンインヒビター複合体(PIC)
正答: ②β-トロンボグロブリン(β-TG)
ポイント β-トロンボグロブリン(β-TG)は血小板のα顆粒に含まれる蛋白で、血小板が活性化して脱顆粒すると血漿中に放出されるため、血小板の活性化を反映するマーカーとなる。同じα顆粒由来の血小板第4因子(PF4)とともに血小板の活性化・消費の程度を表す指標として用いられる。他の選択肢はいずれも凝固系または線溶系の活性化を示す分子マーカーである。これらの分子マーカーは血栓性疾患やDICの病態把握に用いられる。●血小板活性化=β-TG・PF4(α顆粒からの放出)●凝固活性化=可溶性フィブリン・プロトロンビンフラグメントF1+2・トロンビン-アンチトロンビン複合体(トロンビン生成を反映)●線溶活性化=プラスミン-プラスミンインヒビター複合体・Dダイマー・FDP。
選択肢ごとの解説
① 可溶性フィブリンはトロンビンによるフィブリン生成を示す凝固活性化マーカーであり、血小板活性化の指標ではない。 ② 正しい。β-TGは血小板α顆粒由来の蛋白で、活性化・脱顆粒により放出され血小板活性化を反映するマーカーである。 ③ プロトロンビンフラグメントF1+2はプロトロンビンからのトロンビン生成を示す凝固活性化マーカーである。 ④ トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)はトロンビン生成を反映する凝固活性化マーカーであり血小板指標ではない。 ⑤ プラスミン・プラスミンインヒビター複合体(PIC)はプラスミン生成を反映する線溶活性化マーカーであり、血小板活性化の指標ではない。
第59回 午後61(臨床血液学)
骨髄染色標本を別に示す。考えられる診断はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB061.9bce35abc3.jpg
①急性骨髄性白血病 ②急性リンパ性白血病 ③慢性骨髄性白血病 ④慢性リンパ性白血病 ⑤成人T細胞白血病
正答: ②急性リンパ性白血病
ポイント 急性リンパ性白血病(ALL)では、核/細胞質比が高く明瞭な核小体を有し細胞質に乏しい均一なリンパ系芽球が骨髄を占拠する。芽球の細胞質には顆粒やAuer小体を欠き、ミエロペルオキシダーゼは陰性で、小児に好発する点が特徴である。骨髄系芽球にみられる顆粒やAuer小体を欠いた均一なリンパ系芽球の像から本診断が考えられる。確定には表面抗原解析による細胞系統の同定が行われる。●急性白血病の芽球=核小体が明瞭でN/C比が高い、AML系はAuer小体やアズール顆粒をもちMPO陽性、ALLはMPO陰性●慢性骨髄性白血病=顆粒球系の各成熟段階が連続的に増加し好塩基球も増える●慢性リンパ性白血病=成熟した小型リンパ球の単調な増加。
選択肢ごとの解説
① 急性骨髄性白血病はAuer小体やアズール顆粒をもちペルオキシダーゼ陽性の芽球を示すため、本例の像とは異なる。 ② 正しい。急性リンパ性白血病は顆粒やAuer小体を欠く均一なリンパ系芽球が骨髄を占める像を示し本例に合致する。 ③ 慢性骨髄性白血病は顆粒球系の各成熟段階が連続的に増加する像を示すものであり、芽球が主体の本例とは細胞像が異なる。 ④ 慢性リンパ性白血病は成熟した小型リンパ球が単調に増える像を示すものであり、芽球が主体となる本例とは細胞像が異なる。 ⑤ 成人T細胞白血病は花弁状核(flower cell)の異型リンパ球を末梢血に示すもので、本例の像とは異なる。
📋 まとめの表を見る:急性骨髄性白血病〈AML〉のFAB分類と特徴
急性リンパ性白血病(ALL)はMPO陰性(3%未満)で鑑別する。染色体異常・融合遺伝子は既存の『白血病の染色体異常と融合遺伝子』表を参照。
第59回 午後62(臨床血液学)
血球とその形態の特徴の組合せで誤っているのはどれか。
①骨髄芽球 — 核小体 ②前骨髄球 — 好塩基性斑点 ③好中球 — drumstick(太鼓のばち) ④好塩基球 — トルイジン青による異染性 ⑤形質細胞 — 核周明庭
正答: ②前骨髄球 — 好塩基性斑点
ポイント 好塩基性斑点(好塩基性点状赤血球)はリボソームRNAの残存により赤血球内に青色顆粒が点在する所見で、鉛中毒やサラセミアなどでみられる赤血球の異常である。前骨髄球は顆粒球系の幼若細胞でアズール顆粒(一次顆粒)を多数もつのが特徴であり、好塩基性斑点は前骨髄球の特徴ではないため、この組合せは誤りである。好塩基性斑点は鉛がヘム合成酵素を阻害してRNAが残存することにより生じる。●正しい組合せ=骨髄芽球は明瞭な核小体をもつ、好中球の核付属物drumstick(女性のX染色体由来)、好塩基球はトルイジン青で異染性(メタクロマジー)、形質細胞はGolgi装置による核周明庭をもつ●好塩基性斑点=赤血球にみられる所見で前骨髄球とは関係がない。
選択肢ごとの解説
① 骨髄芽球はクロマチンが繊細で明瞭な核小体を複数もつ顆粒球系の幼若細胞であるため、核小体との組合せは正しい記述である。 ② 誤り。好塩基性斑点は赤血球にみられる所見であり、前骨髄球の特徴ではない(前骨髄球はアズール顆粒が特徴)。 ③ 好中球の核にみられるdrumstickは女性のX染色体に由来する核付属物であり、この組合せは正しい。 ④ 好塩基球はヘパリンを含む顆粒のためトルイジン青染色で赤紫に染まる異染性(メタクロマジー)を示すので、この組合せは正しい。 ⑤ 形質細胞は核の傍に発達したGolgi装置による明るい核周明庭(perinuclear halo)をもつため、この組合せは正しい記述である。
📋 まとめの表を見る:血球の核・細胞質にみられる特徴的所見
第59回 午後63(臨床血液学)
造血幹細胞に特徴的な細胞表面抗原はどれか。
正答: ④CD34
ポイント CD34は造血幹細胞や前駆細胞のほか血管内皮細胞に発現する細胞表面抗原で、未分化な造血幹細胞のマーカーとして用いられ、末梢血幹細胞移植では採取される幹細胞数の指標となる。細胞の成熟に伴い発現が消失するため、CD34陽性は細胞の幼若性を示す指標となる。CD分類はモノクローナル抗体で認識される白血球の表面抗原を統一的に分類したものである。●系統を示すマーカー=CD4(ヘルパーT細胞・単球)・CD10(CALLA、Bリンパ芽球やALL)・CD33(骨髄系細胞)●共通白血球抗原=CD45(白血球全般に発現)●幹細胞・前駆細胞=CD34(未分化な造血細胞や血管内皮)。これらは細胞系統や分化段階の判定に用いられる。
選択肢ごとの解説
① CD4はヘルパーT細胞や単球などに発現する抗原でありT細胞系統を示すため、造血幹細胞に特徴的なマーカーではない。 ② CD10(CALLA)はBリンパ芽球やALL細胞に発現する抗原であり、造血幹細胞に特異的なものではない。 ③ CD33は顆粒球や単球など骨髄系細胞に発現する抗原で骨髄系統を示すため、造血幹細胞に特徴的なマーカーではない。 ④ 正しい。CD34は造血幹細胞・前駆細胞や血管内皮に発現し、未分化な造血細胞のマーカーとして用いられる表面抗原である。 ⑤ CD45は白血球全般に広く発現する共通白血球抗原(LCA)であるため、造血幹細胞に特異的なマーカーではない。
📋 まとめの表を見る:主な細胞表面マーカー(CD分類)と発現細胞
第59回 午後64(臨床血液学)
血液中のリンパ球が増加するのはどれか。2つ選べ。
①Cushing症候群 ②腎盂腎炎 ③心筋梗塞 ④伝染性単核症 ⑤百日咳
正答: ④伝染性単核症・⑤百日咳
ポイント 末梢血のリンパ球が増加するのはウイルス感染症や一部の細菌感染である。伝染性単核症はEBウイルス感染症で、異型リンパ球を伴う絶対的リンパ球増多を示すのが特徴である。百日咳は百日咳菌の産生する毒素の作用により小型成熟リンパ球が著明に増加する。一方でCushing症候群、化膿性の細菌感染、心筋梗塞などでは好中球が増加する。リンパ球増多の評価では絶対数(個/μL)の増加で判定するのが原則である。●リンパ球増多=ウイルス感染(伝染性単核症など)・百日咳・結核●好中球増多=細菌性化膿性感染・心筋梗塞・Cushing症候群(ステロイド作用)●好酸球増多=アレルギー疾患や寄生虫感染。これらは増加する白血球の種類で鑑別される。
選択肢ごとの解説
① Cushing症候群はコルチゾール過剰により好中球が増加し、リンパ球はむしろ減少するため該当しない。 ② 腎盂腎炎は大腸菌などによる化膿性の細菌感染であり主に好中球が増加するため、リンパ球増多は示さない。 ③ 心筋梗塞では心筋の組織壊死に伴う急性炎症反応として好中球が増加するため、リンパ球の増加はみられない。 ④ 正しい。伝染性単核症はEBウイルス感染症であり、異型リンパ球を伴う絶対的なリンパ球増多を示すため該当する。 ⑤ 正しい。百日咳は百日咳菌の産生する毒素の作用により小型成熟リンパ球が著明に増加するため該当する。
📋 まとめの表を見る:疾患・病態と白血球分画の変化パターン
第59回 午後65(臨床血液学)
次の文により65、66の問いに答えよ。78歳の男性。強打した前腕の激しい痛みと急速に増大する皮下血腫を主訴に救急外来を受診した。生来健康であった。血液所見:白血球9,200/μl、Hb 12.0 g/dl、血小板29万/μl、PT 10秒(正常対照10秒)、APTT 81秒(正常対照30秒)。考えられるのはどれか。
①血小板無力症 ②プロテインC欠損症 ③異常フィブリノゲン症 ④抗リン脂質抗体症候群 ⑤後天性血友病A(第Ⅷ因子インヒビター)
正答: ⑤後天性血友病A(第Ⅷ因子インヒビター)
ポイント 後天性血友病A(第Ⅷ因子インヒビター)は、生来健康な高齢者などに突然発症し、第Ⅷ因子に対する自己抗体(インヒビター)が産生されて第Ⅷ因子活性が低下する後天性の出血性疾患である。本例はPT正常・APTT延長(81秒)の内因系単独異常で、急速に増大する皮下血腫など重篤な出血を呈しており後天性血友病Aに合致する。先天性血友病と異なり高齢で発症し性別を問わない。自己抗体が第Ⅷ因子の機能を阻害するため重篤な出血を起こしやすい。●PT正常・APTT延長=内因系因子(第Ⅷ・Ⅸ因子など)の異常やインヒビター●PT・APTTともに延長=共通系の異常や複合的な凝固異常●血小板数が正常で出血傾向がある=凝固因子の異常や機能異常を考える。
選択肢ごとの解説
① 血小板無力症は血小板膜GPⅡb/Ⅲa異常による血小板機能異常でAPTTは延長せず、本例の所見とは合わない。 ② プロテインC欠損症は抗凝固因子の欠損により血栓傾向を示す疾患であり、出血傾向の本例とは病態が逆である。 ③ 異常フィブリノゲン症はフィブリノゲンの機能異常でトロンビン時間が延長するもので、APTT単独延長の本例と合わない。 ④ 抗リン脂質抗体症候群はAPTTが延長するが血栓傾向を示す疾患であり、皮下血腫の出血傾向とは合致しない。 ⑤ 正しい。後天性血友病A(第Ⅷ因子インヒビター)は生来健康な高齢者に突発し、PT正常・APTT延長と重篤な出血を呈するため合致する。
第59回 午後66(臨床血液学)
次の文により65、66の問いに答えよ。78歳の男性。強打した前腕の激しい痛みと急速に増大する皮下血腫を主訴に救急外来を受診した。生来健康であった。血液所見:白血球9,200/μl、Hb 12.0 g/dl、血小板29万/μl、PT 10秒(正常対照10秒)、APTT 81秒(正常対照30秒)。この患者に必要な検査はどれか。
①Dダイマー ②血小板凝集能 ③クロスミキシング試験 ④抗カルジオリピン抗体 ⑤ループスアンチコアグラント
正答: ③クロスミキシング試験
ポイント 後天性血友病Aを疑う際は、APTT延長が凝固因子の欠乏によるものか、インヒビター(抗体)の存在によるものかを区別するクロスミキシング試験が必要である。患者血漿と正常血漿を混合し、APTTが補正されれば因子欠乏、補正されなければインヒビターの存在を示す。本例はインヒビターによる延長のためAPTTは補正されない。インヒビターは時間とともに作用するため即時と加温(37℃・2時間)の両方で判定する。●クロスミキシング試験=補正される=因子欠乏型、補正されない=インヒビター型と判別できる●確定診断にはさらに第Ⅷ因子活性の測定とインヒビター力価(Bethesda法)の測定を行う●抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントは抗リン脂質抗体症候群の検査で本例では補助的である。
選択肢ごとの解説
① Dダイマーは安定化フィブリンの分解を反映し線溶亢進やDICの指標となる検査であるため、第Ⅷ因子インヒビターの証明には用いられない。 ② 血小板凝集能は血小板機能異常を調べる検査であり、凝固因子インヒビターを疑う本例には適さない。 ③ 正しい。クロスミキシング試験はAPTT延長が因子欠乏かインヒビターかを区別でき、本例に必要な検査である。 ④ 抗カルジオリピン抗体は抗リン脂質抗体症候群の検査であり、後天性血友病Aの鑑別では補助的にとどまる。 ⑤ ループスアンチコアグラントも抗リン脂質抗体症候群の検査であり、本例の主たる鑑別検査とはならない。
第59回 午後67(臨床血液学)
減数分裂を行う細胞はどれか。
①精母細胞 ②前赤芽球 ③骨髄芽球 ④破骨細胞 ⑤骨髄巨核芽球
正答: ①精母細胞
ポイント 減数分裂は染色体数を半減させて配偶子を形成する特殊な細胞分裂で、生殖細胞でのみ行われる。精母細胞は精子形成の過程で減数分裂を行い、二倍体(2n)の細胞から一倍体(n)の精子細胞を生じる。前赤芽球・骨髄芽球・破骨細胞・巨核芽球などの体細胞系の細胞は体細胞分裂(有糸分裂)のみを行い、染色体数は変わらない。●減数分裂=生殖細胞(精母細胞・卵母細胞)で配偶子形成のため染色体数を半減させる●体細胞分裂=それ以外の体細胞で染色体数を保ったまま増殖する●巨核球の核内分裂=核内倍加(DNA倍加)で多倍体の核となるもので減数分裂ではない。
選択肢ごとの解説
① 正しい。精母細胞は精子形成の過程で減数分裂を行い、染色体数を半減させて精子細胞を生じる。 ② 前赤芽球は赤血球系の幼若細胞であり体細胞分裂を行うもので、減数分裂は行わない。 ③ 骨髄芽球は顆粒球系の幼若細胞であり体細胞分裂を行うもので、減数分裂は行わない。 ④ 破骨細胞は単球系由来の多核巨細胞で分裂能に乏しく、減数分裂を行うことはない。 ⑤ 骨髄巨核芽球は核内倍加(DNA倍加)で多倍体化するが、減数分裂を行うわけではない。
第59回 午後68(臨床微生物学)
肺炎患者の喀痰Gram染色標本を別に示す。起因菌と考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB068.8b177ab190.jpg
①Haemophilus influenzae ②Moraxella catarrhalis ③Mycoplasma pneumoniae ④Staphylococcus aureus ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ②Moraxella catarrhalis
ポイント Moraxella catarrhalisはグラム陰性の双球菌で、喀痰のGram染色では好中球の内外に並ぶそら豆状の陰性双球菌として観察される。慢性気道感染や高齢者・COPD患者の肺炎の起因菌となり、形態はNeisseriaに似るがオキシダーゼ陽性・DNase陽性などで鑑別される。本例のように陰性に染まる双球菌の像から本菌が考えられる。●グラム陰性双球菌=Moraxella catarrhalis・Neisseria(淋菌・髄膜炎菌)●グラム陽性双球菌=Streptococcus pneumoniae(莢膜をもつランセット状)●グラム陰性小桿菌=Haemophilus influenzae●細胞壁を欠きGram染色されない=Mycoplasma pneumoniae。
選択肢ごとの解説
① Haemophilus influenzaeはグラム陰性の多形性小桿菌であり、双球菌として描出される本例とは形態が異なる。 ② 正しい。Moraxella catarrhalisはグラム陰性双球菌で、好中球に伴うそら豆状の陰性双球菌として観察される。 ③ Mycoplasma pneumoniaeは細胞壁を欠くためGram染色では染まらず、本標本では菌体として観察されない。 ④ Staphylococcus aureusはグラム陽性球菌でぶどう房状に集簇するため、陰性双球菌の本例とは異なる。 ⑤ Streptococcus pneumoniaeはグラム陽性のランセット状双球菌であり、陰性に染まる本例とは染色性が異なる。
📋 まとめの表を見る:Neisseria属・Moraxella属の糖分解パターンによる鑑別
Haemophilus influenzaeもグルコース・マルトースをともに分解するが、双球菌ではなく多形性の球桿菌である点で鑑別する。
第59回 午後69(臨床微生物学)
下痢便のGram染色標本を別に示す。矢印で示すグラム陰性菌はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB069.947c8f69ae.jpg
①Aeromonas hydrophila ②Campylobacter jejuni ③Helicobacter pylori ④Vibrio parahaemolyticus ⑤Yersinia enterocolitica
正答: ②Campylobacter jejuni
ポイント Campylobacter jejuniはグラム陰性のらせん状(S字状・カモメ翼状)の細い湾曲桿菌で、下痢便のGram染色では矢印で示されるような特徴的な曲がった細菌として観察される。微好気性で42℃で発育し、鶏肉などを介した細菌性腸炎の主要な起因菌である。Guillain-Barré症候群の先行感染としても重要である。●らせん・湾曲した菌=Campylobacter(カモメ翼状)・Helicobacter(らせん状)・Vibrio(コンマ状)●Vibrio parahaemolyticusはコンマ状で海産物による食中毒の原因●Yersinia enterocolitica・Aeromonas hydrophilaはグラム陰性桿菌で湾曲は目立たない。
選択肢ごとの解説
① Aeromonas hydrophilaはグラム陰性桿菌で湾曲は目立たず、らせん状を示す本例とは形態が異なる。 ② 正しい。Campylobacter jejuniはグラム陰性のらせん状(カモメ翼状)桿菌で、下痢便に特徴的に観察される。 ③ Helicobacter pyloriはらせん状だが胃に定着する菌であり、下痢便から検出される本例とは病態が異なる。 ④ Vibrio parahaemolyticusはコンマ状の湾曲桿菌であり、らせん状を示す本例とは形態がやや異なる。 ⑤ Yersinia enterocoliticaはグラム陰性桿菌で湾曲は目立たず、らせん状を示す本例とは形態が異なる。
📋 まとめの表を見る:便のGram染色でみられる彎曲・らせん状グラム陰性桿菌の鑑別
第59回 午後70(臨床微生物学)
光発色性のあるのはどれか。
①Mycobacterium avium ②Mycobacterium bovis ③Mycobacterium kansasii ④Mycobacterium leprae ⑤Mycobacterium tuberculosis
正答: ③Mycobacterium kansasii
ポイント Mycobacterium kansasiiは光発色菌(photochromogen)に分類される非結核性抗酸菌で、暗所で培養すると無色だが光に曝すと黄橙色のカロテノイド系色素を産生する性質をもつ。Runyon分類のⅠ群にあたり、肺結核に類似した慢性肺感染症を起こす。●Runyon分類=Ⅰ群光発色菌(M. kansasii・M. marinum)・Ⅱ群暗発色菌(M. scrofulaceum)・Ⅲ群非発色菌(M. avium-intracellulare)・Ⅳ群迅速発育菌(M. fortuitumなど)●結核菌群(M. tuberculosis・M. bovis)は色素を産生しない●M. lepraeは人工培地に発育しないらい菌で発色性を論じる対象ではない。
選択肢ごとの解説
① Mycobacterium aviumはRunyonⅢ群の非発色菌であり、光に曝しても色素を産生しないため光発色性はない。 ② Mycobacterium bovisはウシ型結核菌で結核菌群に属し、色素を産生せず光発色性はない。 ③ 正しい。Mycobacterium kansasiiは光発色菌であり、光に曝すと黄橙色の色素を産生する性質をもつ。 ④ Mycobacterium lepraeはらい菌で人工培地に発育せず、光発色性を論じる対象とはならない。 ⑤ Mycobacterium tuberculosisは結核菌で色素を産生せず、光発色性をもたない。
第59回 午後71(臨床微生物学)
真菌をTween 80加コンミール寒天培地でスライド培養した。顕微鏡写真を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB071.7fe2cb2b87.jpg
①Aspergillus fumigatus ②Candida albicans ③Cryptococcus neoformans ④Trichophyton mentagrophytes ⑤Trichosporon asahii
正答: ②Candida albicans
ポイント Candida albicansはコーンミール・Tween80加寒天でのスライド培養で、仮性菌糸とその先端や節に形成される厚壁胞子(厚膜分生子、chlamydospore)を作るのが特徴で、これにより同定される。この厚壁胞子の形成は他のCandida属との重要な鑑別点となる。さらに血清中での発芽管(germ tube)形成試験も本菌の同定に有用である。●Candida albicans=仮性菌糸+厚壁胞子+発芽管陽性●Cryptococcus neoformans=厚い莢膜をもつ出芽酵母(墨汁法で証明)●Aspergillus=有隔菌糸と分生子頭●Trichophyton=皮膚糸状菌で大分生子・小分生子を形成する。
選択肢ごとの解説
① Aspergillus fumigatusは有隔菌糸とフラスコ型の分生子頭を形成する糸状菌であり、厚壁胞子を作る本例とは異なる。 ② 正しい。Candida albicansは仮性菌糸の先端や節に厚壁胞子(厚膜分生子)を形成し、これにより同定される。 ③ Cryptococcus neoformansは厚い莢膜をもつ出芽酵母であり、仮性菌糸や厚壁胞子を作る本例とは形態が異なる。 ④ Trichophyton mentagrophytesは皮膚糸状菌で大分生子やらせん器官を作るもので、本例の像とは異なる。 ⑤ Trichosporon asahiiは関節分生子(アルトロ胞子)を形成する酵母様真菌であり、厚壁胞子を作る本例とは異なる。
📋 まとめの表を見る:酵母様真菌の鑑別(Cryptococcus・Candida・Trichosporon)
Candida albicansの厚膜胞子・仮性菌糸の証明にはlactophenol cotton blue染色を用いる(墨汁法はCryptococcusの莢膜証明に用いる)。
第59回 午後72(臨床微生物学)
原因となるウイルスと疾病の組合せで正しいのはどれか。
①アデノウイルス — 乳児嘔吐下痢症 ②コクサッキーウイルス — ヘルパンギーナ ③パルボウイルス — 突発性発疹 ④ヘルペスウイルス — 伝染性紅斑 ⑤ライノウイルス — 帯状疱疹
正答: ②コクサッキーウイルス — ヘルパンギーナ
ポイント コクサッキーウイルス(特にA群)はエンテロウイルス属のウイルスで、口腔粘膜の小水疱や潰瘍と発熱を呈するヘルパンギーナの主要な原因であり、夏かぜとして乳幼児に流行する。手足口病の原因にもなる。他の選択肢は原因ウイルスと疾患の対応が一致しない。●正しい対応=コクサッキーウイルス=ヘルパンギーナ・手足口病●突発性発疹=ヒトヘルペスウイルス6・7●伝染性紅斑(リンゴ病)=パルボウイルスB19●乳児嘔吐下痢症=ロタウイルス●帯状疱疹=水痘・帯状疱疹ウイルス。これらは原因ウイルスと疾患の正しい組合せである。
選択肢ごとの解説
① アデノウイルスは咽頭結膜熱や流行性角結膜炎の原因であり、乳児嘔吐下痢症はロタウイルスによるものである。 ② 正しい。コクサッキーウイルスはヘルパンギーナの主要な原因であり、夏に乳幼児に流行する。 ③ パルボウイルス(B19)は伝染性紅斑(リンゴ病)の原因であり、突発性発疹はヒトヘルペスウイルス6/7による。 ④ ヘルペスウイルスは口唇ヘルペスなどの原因であり、伝染性紅斑はパルボウイルスB19によるものである。 ⑤ ライノウイルスは普通感冒(鼻かぜ)の原因であり、帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスによるものである。
📋 まとめの表を見る:主なウイルスと疾患
第59回 午後73(臨床微生物学)
HIVの確認検査はどれか。
①酵素免疫測定法 ②イムノクロマト法 ③ウイルス分離培養法 ④ウエスタンブロット法 ⑤感作ゼラチン粒子凝集法
正答: ④ウエスタンブロット法
ポイント HIV感染の診断は、まずスクリーニング検査(酵素免疫測定法など)で陽性となった検体について確認検査を行う手順をとる。確認検査にはウエスタンブロット法が用いられ、HIVの各構造蛋白(gp160・gp120・p24など)に対する抗体を個別のバンドとして検出し、特異的に判定する。近年は核酸増幅検査(NAT)も確認に併用される。●スクリーニング=酵素免疫測定法・イムノクロマト法(感度を重視する)●確認=ウエスタンブロット法(特異性を重視する)や核酸増幅検査●感作ゼラチン粒子凝集法(PA法)はスクリーニングに用いる凝集反応である。
選択肢ごとの解説
① 酵素免疫測定法は感度の高いスクリーニング検査であり、特異性を重視する確認検査としては用いない。 ② イムノクロマト法は迅速で簡便なスクリーニング検査であり、確認検査としては用いられない。 ③ ウイルス分離培養法はHIVでは煩雑で実用的でないため、確認検査として標準的には用いられない。 ④ 正しい。ウエスタンブロット法は各HIV蛋白に対する抗体をバンドとして検出し、確認検査に用いられる。 ⑤ 感作ゼラチン粒子凝集法(PA法)はスクリーニングに用いる凝集反応であり、確認検査ではない。
第59回 午後74(臨床微生物学)
プリオンが感染因子となる疾患はどれか。2つ選べ。
①Creutzfeldt-Jacob病 ②ウシ海綿状脳症 ③狂犬病 ④日本脳炎 ⑤ラッサ熱
正答: ①Creutzfeldt-Jacob病・②ウシ海綿状脳症
ポイント プリオン病は異常プリオン蛋白(PrPSc)が感染因子となり、正常プリオン蛋白を次々と異常型に変換して海綿状脳症を起こす疾患である。Creutzfeldt-Jakob病はヒトのプリオン病、ウシ海綿状脳症(BSE)はウシのプリオン病であり、いずれも核酸をもたない蛋白のみが感染因子となって伝播する点が特徴である。他の選択肢はいずれもウイルスによる感染症である。●プリオン病=Creutzfeldt-Jakob病・ウシ海綿状脳症・クールー・スクレイピー(核酸をもたない蛋白性感染因子)●ウイルス感染症=狂犬病(ラブドウイルス)・日本脳炎(フラビウイルス)・ラッサ熱(アレナウイルス)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。Creutzfeldt-Jakob病は異常プリオン蛋白が感染因子となるヒトのプリオン病である。 ② 正しい。ウシ海綿状脳症(BSE)は異常プリオン蛋白によるウシの海綿状脳症(プリオン病)である。 ③ 狂犬病はラブドウイルスによるウイルス感染症であり、プリオンが原因のプリオン病ではない。 ④ 日本脳炎はフラビウイルスによる蚊媒介性のウイルス感染症であり、プリオン病ではない。 ⑤ ラッサ熱はアレナウイルスによるウイルス性出血熱であり、プリオン病ではない。
第59回 午後75(臨床微生物学)
髄液とその他の検査材料で感受性判定基準(感性、中間、耐性)が異なるのはどれか。
①Escherichia coli ②Haemophilus influenzae ③Neisseria meningitidis ④Streptococcus agalactiae ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ⑤Streptococcus pneumoniae
ポイント Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)は、ペニシリン耐性化(PRSP)が問題となるため、感染部位によって感受性の判定基準(ブレイクポイント)が分けられている。髄膜炎では血液脳関門により薬剤の移行が制限され重篤化しやすいことから、髄液由来株には非髄膜炎例より厳しい(低い)ペニシリンのブレイクポイントが設定され、髄液とその他の検査材料で耐性判定が異なる。●感受性判定=原則として統一した基準値(MIC)で判定する●肺炎球菌のペニシリン=髄膜炎(髄液)か非髄膜炎かで判定基準が異なる●他の菌(大腸菌・インフルエンザ菌・髄膜炎菌・B群溶連菌)は部位別の二重基準を設けていない。
選択肢ごとの解説
① Escherichia coliは感染部位による感受性判定基準の使い分けはなく、統一した基準で判定される。 ② Haemophilus influenzaeは髄膜炎の起因菌だが、部位別に異なる感受性判定基準は設けられていない。 ③ Neisseria meningitidisは髄膜炎の起因菌だが、髄液とその他で異なる判定基準は設定されていない。 ④ Streptococcus agalactiae(B群溶連菌)は感染部位別の感受性判定基準の使い分けはない。 ⑤ 正しい。肺炎球菌のペニシリンは髄膜炎(髄液)か否かによって感受性の判定基準が異なる。
第59回 午後76(臨床微生物学)
微生物を含むエアロゾルが発生する操作はどれか。2つ選べ。
①微生物検査用容器の輸送と保存 ②検査材料の遠沈 ③白金耳の火炎滅菌 ④分離培地のコロニー観察 ⑤オートクレーブ終了後の使用済み培地の廃棄
正答: ②検査材料の遠沈・③白金耳の火炎滅菌
ポイント 微生物を含むエアロゾルとは、病原体を含む微細な液滴(飛沫核)が空気中に浮遊した状態をいい、吸入による実験室内感染(ラボラトリ感染)の主要な経路となる。液体検体を機械的に攪拌・加圧・加熱・噴霧するような操作で発生しやすく、検体を高速で回転させる遠心分離では容器の破損や遠心後の開栓時に菌を含む飛沫が飛び散り、白金耳を炎にかざす火炎滅菌では白金耳に付着した検体液が急激な加熱で弾けて周囲にエアロゾルを生じる。感染性エアロゾルを生じうる検体操作には生物学的安全キャビネットを用いる。遠心では密閉ローターや密閉式安全カップを使用し、必要な装填・開封操作をキャビネット内で行う。キャビネット内の開放炎は気流を乱すため原則として避け、使い捨て白金耳相当品や適切な電気式滅菌器を用いる。●エアロゾルが生じやすい操作=遠心分離、白金耳の火炎滅菌、ピペッティング、激しい混和、容器の開栓、超音波による菌体破砕。●飛沫がほとんど生じない操作=密封容器の運搬・保存、固形培地上のコロニーの目視観察、滅菌済み廃棄物の処理。
選択肢ごとの解説
① 密封容器による検体の輸送・保存は液体が密閉されて外気に触れないため、菌を含むエアロゾルはほとんど発生しない操作である。 ② 正しい。検体の遠心は高速回転中の容器漏れや遠心後の開栓の際に菌を含む微細な飛沫が飛び散り、エアロゾルが発生する操作である。 ③ 正しい。白金耳の火炎滅菌は付着した検体液が炎の急激な加熱で弾けて周囲に飛散するため、菌を含むエアロゾルを生じやすい操作である。 ④ 分離培地のコロニー観察は固形培地上の集落を目視で確認するだけの操作であり、液滴の飛散がなくエアロゾルは発生しない操作である。 ⑤ オートクレーブ終了後の使用済み培地は高圧蒸気で既に滅菌されているため、廃棄時に病原性のあるエアロゾルは発生しない操作である。
第59回 午後77(臨床微生物学)
血液培養において汚染菌の可能性が高いのはどれか。
①Citrobacter freundii ②Enterococcus faecalis ③Propionibacterium acnes ④Pseudomonas aeruginosa ⑤Serratia marcescens
正答: ③Propionibacterium acnes
ポイント 血液培養で検出された菌が真の起因菌か汚染菌(コンタミネーション)かは、その菌が皮膚常在菌か否か、複数セット採取での陽性率や陽性化までの時間などから総合的に判断する。Propionibacterium acnes(現Cutibacterium acnes)は皮膚の毛包や脂腺に常在する嫌気性グラム陽性桿菌で、採血の穿刺時に皮膚から血液培養ボトルへ混入しやすく、複数セット中1セットのみの単独陽性であれば汚染の可能性が高いと考える。検出された場合は患者背景や他セットの結果と併せて意義を評価する。●汚染菌になりやすい皮膚常在菌=コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、Cutibacterium(Propionibacterium)acnes、Corynebacterium属、Bacillus属。●真の起因菌になりやすい菌=腸内細菌目、緑膿菌、腸球菌、黄色ブドウ球菌、Candida属。
選択肢ごとの解説
① Citrobacter freundiiは腸内細菌目のグラム陰性桿菌で、血液培養での検出は真の菌血症を示すことが多く、汚染菌とは考えにくい。 ② Enterococcus faecalisは腸管由来の腸球菌で、検出されれば真の起因菌として臨床的意義が高く、皮膚由来の汚染菌とは考えにくい。 ③ 正しい。Cutibacterium(Propionibacterium)acnesは皮膚に常在する嫌気性菌で、穿刺時の混入による汚染菌の可能性が高い。 ④ Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)は病原性の強いグラム陰性桿菌で、血液培養での検出は真の感染を示すことが多く汚染とは考えにくい。 ⑤ Serratia marcescensは院内感染や敗血症の起因菌となるグラム陰性桿菌で、検出は臨床的意義が高く、皮膚由来の汚染菌とは考えにくい。
第59回 午後78(臨床微生物学)
PCR法で使用しないのはどれか。
①制限酵素 ②プライマー ③マグネシウムイオン ④耐熱性DNAポリメラーゼ ⑤デオキシリボヌクレオチド三リン酸
正答: ①制限酵素
ポイント PCR(polymerase chain reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)は、標的DNAを試験管内で指数関数的に増幅する手法で、二本鎖を解離させる高温の熱変性、プライマーを結合させるアニーリング、新しい鎖を合成する伸長という3段階の温度サイクルを繰り返す。反応に必須の成分は、鋳型となるDNA、標的領域の両端を挟む一対のプライマー、高温に耐えて働く耐熱性DNAポリメラーゼ、合成の基質となるデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、そしてポリメラーゼの活性に必要な補因子であるマグネシウムイオンである。制限酵素はDNAを特定の塩基配列で切断する酵素で、クローニングや制限断片長解析で用いるがPCRの増幅反応そのものには使用しない。●PCRに必須=プライマー、耐熱性DNAポリメラーゼ(Taq等)、dNTP、Mg²⁺、緩衝液。●PCRには用いない=制限酵素、DNAリガーゼ。
選択肢ごとの解説
① 誤り。制限酵素はDNAを特定の塩基配列で認識して切断する酵素であり、断片解析やクローニングに用いるがPCRの増幅反応では使用しない。 ② プライマーは標的配列の両端に相補的に結合してDNA合成の起点となるため、PCRには必須の成分であり反応に使用する。 ③ マグネシウムイオンは耐熱性DNAポリメラーゼの酵素活性に不可欠な補因子であり、PCR反応液には必須の成分として使用する。 ④ 耐熱性DNAポリメラーゼは高温の熱変性段階に耐えてDNA鎖を伸長合成する中心的な酵素であり、PCRには必須の成分として使用する。 ⑤ デオキシリボヌクレオチド三リン酸はDNA鎖を合成する際の材料となる基質であるため、PCRには必須の成分として使用する。
第59回 午後79(臨床免疫学)
抗原提示細胞はどれか。2つ選べ。
①B細胞 ②好中球 ③樹状細胞 ④肥満細胞 ⑤キラーT細胞
正答: ①B細胞・③樹状細胞
ポイント 抗原提示細胞は、取り込んだ抗原を細胞内で分解し、MHCクラスII分子にペプチド断片を載せてヘルパーT細胞に提示することで、獲得免疫応答を始動させる細胞である。MHCクラスIIを恒常的に発現し、T細胞を活性化する共刺激分子をもつプロフェッショナル抗原提示細胞は、樹状細胞・マクロファージ・B細胞の3種であり、なかでも樹状細胞は最も強力でナイーブT細胞をも活性化できる。B細胞はB細胞受容体で特異的に捕えた抗原を効率よく提示する。●プロフェッショナル抗原提示細胞=樹状細胞、マクロファージ、B細胞。●抗原提示を主としない細胞=好中球(細菌の貪食殺菌が主体)、肥満細胞(IgE依存性の即時型アレルギー)、キラーT細胞(感染細胞や腫瘍細胞の傷害が役割)。●関連=マクロファージも貪食した抗原をMHCクラスIIで提示するプロフェッショナル抗原提示細胞であり、樹状細胞・B細胞とともに獲得免疫の起点を担う。
選択肢ごとの解説
① 正しい。B細胞はB細胞受容体で捕えた抗原をMHCクラスIIで提示するプロフェッショナル抗原提示細胞であり、抗体産生も担う。 ② 好中球は細菌などの異物を貪食して殺菌することを主な役割とする細胞であり、MHCクラスIIによる抗原提示は主要な機能ではない。 ③ 正しい。樹状細胞はMHCクラスIIと共刺激分子を高発現する最も強力な抗原提示細胞で、ナイーブT細胞を活性化できる。 ④ 肥満細胞はIgEが結合しヒスタミンなどを放出して即時型アレルギーを起こす細胞であり、抗原提示細胞としての役割は担わない。 ⑤ キラーT細胞はMHCクラスIに提示された抗原を認識して感染細胞や腫瘍細胞を傷害する細胞であり、抗原提示は行わない。
第59回 午後80(臨床免疫学)
J鎖をもつ免疫グロブリンはどれか。2つ選べ。
正答: ①IgA・⑤IgM
ポイント J鎖(joining chain)は、免疫グロブリンの単量体どうしを連結する小さなポリペプチドで、多量体を形成するIgAとIgMにのみ含まれる。IgAは粘膜分泌時にJ鎖を介して二量体を形成して分泌型IgAとなり、IgMは血中でJ鎖を介して五量体を形成する。J鎖は多量体化と分泌に必須であり、IgMの五量体構造は強い補体活性化能をもたらす。一方、単量体として存在するIgG・IgD・IgEはJ鎖をもたない。●J鎖をもつ免疫グロブリン=分泌型IgA(二量体)、IgM(五量体)。●J鎖をもたない単量体の免疫グロブリン=IgG、IgD、IgE。●関連事項=分泌型IgAは上皮細胞由来の分泌成分(secretory component)も付与され、粘膜面で分解を受けにくく安定化する。また五量体のIgMは分子量が大きく血管内にとどまりやすいため、感染初期に最初に産生される抗体となる。
選択肢ごとの解説
① 正しい。IgAは粘膜分泌時にJ鎖で連結された二量体を形成し、分泌型IgAとして局所の粘膜免疫を担う主要な免疫グロブリンである。 ② IgDはB細胞表面で抗原受容体として機能する単量体の免疫グロブリンであり、多量体を形成せずJ鎖をもたないため誤りである。 ③ IgEは肥満細胞に結合して即時型アレルギーを起こす単量体の免疫グロブリンであり、多量体を形成せずJ鎖をもたないため誤りである。 ④ IgGは血中で最も多く胎盤通過性をもつ主要抗体だが、単量体として存在し多量体を形成せずJ鎖をもたないため誤りである。 ⑤ 正しい。IgMはJ鎖で連結された五量体を形成し、十個の抗原結合部位と強い補体活性化能をもつ免疫グロブリンである。
第59回 午後81(臨床免疫学)
散乱光の強度を測定原理とするのはどれか。
①免疫比濁法 ②蛍光抗体法 ③免疫比ろう法 ④酵素免疫測定法 ⑤化学発光免疫測定法
正答: ③免疫比ろう法
ポイント 免疫比ろう法(ネフェロメトリー)は、抗原抗体反応によって形成された微小な免疫複合体に光を照射し、複合体の粒子によって散乱した光(散乱光)の強度を測定して抗原量を定量する方法である。散乱光の強度は免疫複合体の量に応じて増加するため、微量の抗原を高感度に測定できる。これに対し免疫比濁法(タービジメトリー)は、複合体による濁りで減弱した透過光の量(濁度・吸光度)を測定する方式であり、両者は同じ抗原抗体反応を用いるが測定する光が異なる。●散乱光を測定原理とする=免疫比ろう法(ネフェロメトリー)。●透過光(濁度・吸光度)を測定原理とする=免疫比濁法(タービジメトリー)。●標識物質を用いて検出する=蛍光抗体法、酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法。●補足=免疫比ろう法は感度が高く微量蛋白の定量に適し、免疫比濁法は自動分析装置で多検体を迅速に処理できる利点があり、測定対象の濃度域に応じて使い分けられる。
選択肢ごとの解説
① 免疫比濁法は抗原抗体複合体による濁りで生じる透過光の減弱(濁度・吸光度)を測定する方法であり、散乱光を測定原理とはしない。 ② 蛍光抗体法は蛍光色素で標識した抗体を用い、抗原に結合した標識の蛍光を検出する方法であり、散乱光を測定原理とはしない。 ③ 正しい。免疫比ろう法(ネフェロメトリー)は抗原抗体複合体によって生じる散乱光の強度を測定原理とする方法である。 ④ 酵素免疫測定法は酵素で標識した抗体と基質の発色や蛍光・発光を利用して測定する方法であり、散乱光を測定原理とはしない。 ⑤ 化学発光免疫測定法は標識物質の化学反応によって生じる発光量を測定する方法であり、散乱光を測定原理とはしないため誤りである。
第59回 午後82(臨床免疫学)
能動免疫はどれか。2つ選べ。
①感染による抗体獲得 ②ワクチン接種による抗体獲得 ③γ-グロブリン製剤による抗体獲得 ④母乳を介した母親から児への抗体の移行 ⑤胎盤を介した母親から胎児への抗体の移行
正答: ①感染による抗体獲得・②ワクチン接種による抗体獲得
ポイント 能動免疫は、生体自身が抗原の刺激に応答して抗体や記憶細胞を産生して獲得する免疫であり、効果の発現は遅いものの免疫記憶が成立するため長期間持続する。病原体への自然感染による抗体獲得と、ワクチン接種による抗体獲得がこれにあたる。これに対し受動免疫は、他者や他個体が産生済みの抗体を受け取って獲得する免疫であり、即効性はあるが免疫記憶が残らないため効果は一時的で、抗体が代謝されると失われる。●能動免疫=自然感染による抗体獲得、ワクチン接種(自ら抗体を産生し長期持続)。●受動免疫=γ-グロブリン製剤の投与、母乳(初乳IgA)を介した移行、胎盤を介したIgGの移行(他者の抗体を受け取り効果は一時的)。●補足=胎盤を通過できるのはIgGのみであり、新生児は生後しばらく母由来のIgGに守られるが、自らの免疫が成熟するまで一過性に低ガンマグロブリン血症となる時期がある。
選択肢ごとの解説
① 正しい。感染による抗体獲得は、生体自身が病原体の抗原に応答して抗体と記憶細胞を産生する能動免疫であり長期持続する。 ② 正しい。ワクチン接種による抗体獲得は、無毒化した抗原で刺激して生体が自ら抗体を産生する能動免疫であり長期持続する。 ③ γ-グロブリン製剤による抗体獲得は、外部で作られた抗体を投与して得る受動免疫であり、即効性はあるが効果は一時的である。 ④ 母乳を介した母親から児への抗体の移行は、母由来の抗体を受け取る受動免疫であり、児自身が抗体を産生したものではない。 ⑤ 胎盤を介した母親から胎児へのIgGの移行は、母由来の抗体を受け取る受動免疫であり、胎児自身が抗体を産生したものではない。
第59回 午後83(臨床免疫学)
臓器特異的な自己免疫疾患はどれか。
①SLE ②強皮症 ③橋本病 ④関節リウマチ ⑤結節性多発性動脈炎
正答: ③橋本病
ポイント 自己免疫疾患は、標的とする自己抗原の分布によって、特定の臓器に存在する自己抗原を標的とする臓器特異的自己免疫疾患と、核成分など全身の細胞に共通する自己抗原を標的とする全身性(非臓器特異的)自己免疫疾患に大別される。橋本病(慢性甲状腺炎)は甲状腺を標的とし、抗サイログロブリン抗体や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体によって甲状腺組織が破壊され、甲状腺機能低下症をきたす代表的な臓器特異的自己免疫疾患である。●臓器特異的自己免疫疾患=橋本病、Basedow病、1型糖尿病、重症筋無力症、悪性貧血、原発性胆汁性胆管炎。●全身性(非臓器特異的)自己免疫疾患=SLE、強皮症、関節リウマチ、結節性多発性動脈炎、Sjögren症候群、多発性筋炎。●補足=全身性の疾患では抗核抗体など全身の細胞核成分に対する自己抗体が陽性となることが多く、臓器特異的な疾患では橋本病の抗甲状腺抗体のように標的臓器に対応した自己抗体が検出される。
選択肢ごとの解説
① SLE(全身性エリテマトーデス)は抗核抗体が陽性となり皮膚・腎・関節など多臓器を侵す代表的な全身性自己免疫疾患である。 ② 強皮症は皮膚や肺・消化管・腎など全身の結合組織に線維化をきたす全身性自己免疫疾患であり、臓器特異的ではないため誤りである。 ③ 正しい。橋本病は甲状腺を標的とし抗甲状腺抗体によって甲状腺機能低下をきたす、臓器特異的な自己免疫疾患である。 ④ 関節リウマチは全身の関節滑膜を侵して関節破壊をきたす全身性自己免疫疾患であり、臓器特異的ではないため誤りである。 ⑤ 結節性多発性動脈炎は全身の中小動脈を侵す血管炎で複数臓器に虚血を起こす全身性疾患であり、臓器特異的ではないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:臓器特異的自己抗体と自己免疫疾患
サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉は甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己抗体の標的とはならない。
第59回 午後84(臨床免疫学)
抗セントロメア抗体陽性血清が蛍光抗体法による抗核抗体検査で示す染色パターンはどれか。
①均一型(homogeneous) ②斑紋型(speckled) ③核小体型(nucleolar) ④細胞質型(cytoplasmic) ⑤散在斑紋型(discrete speckled)
正答: ⑤散在斑紋型(discrete speckled)
ポイント 抗核抗体検査を蛍光抗体間接法(HEp-2細胞などを基質とする)で行うと、患者血清中の自己抗体が標的とする核内抗原の局在に応じて、特徴的な染色パターンが観察される。抗セントロメア抗体は、細胞分裂期に凝集する染色体の動原体(セントロメア)に局在するため、間期細胞では核内に多数の小さな点状の蛍光が散在する散在斑紋型(discrete speckled、dot状)を示し、CREST症候群を含む限局性強皮症と関連が深い。●代表的な染色パターンと対応する抗体=均一型→抗ds-DNA抗体・抗ヒストン抗体、斑紋型→抗U1-RNP・抗Sm・抗SS-A/SS-B抗体、核小体型→抗Scl-70抗体等、散在斑紋型→抗セントロメア抗体、細胞質型→抗ミトコンドリア抗体・抗Jo-1抗体。●補足=染色パターンは含まれる自己抗体の種類を推定する手がかりとなり、続いて二重免疫拡散法や特異的抗体測定で対応抗原を同定し、疾患の鑑別に役立てる。
選択肢ごとの解説
① 均一型は核全体が一様に染まるパターンで、抗ds-DNA抗体や抗ヒストン抗体でみられ、抗セントロメア抗体が示す像ではない。 ② 斑紋型は核内が細かい斑紋状に染まるパターンで、抗U1-RNP・抗Sm・抗SS-A/SS-B抗体でみられ、散在斑紋型とは区別される像である。 ③ 核小体型は核小体が選択的に染まるパターンで、抗Scl-70抗体などでみられ、抗セントロメア抗体が示す像ではないため誤りである。 ④ 細胞質型は核外の細胞質が染まるパターンで、抗ミトコンドリア抗体や抗Jo-1抗体でみられ、核内に局在する像ではないため誤りである。 ⑤ 正しい。散在斑紋型は間期核内に点状の蛍光が散在するパターンで、抗セントロメア抗体に特徴的な染色像である。
📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患
第59回 午後85(臨床免疫学)
Bence Jones蛋白について正しいのはどれか。
①補体結合性を持つ。 ②100 ℃加温で白濁する。 ③抗Fc抗体と反応する。 ④単クローン性の遊離L鎖である。 ⑤定常部ドメインは3個からなる。
正答: ④単クローン性の遊離L鎖である。
ポイント Bence Jones蛋白は、形質細胞の単クローン性(腫瘍性)増殖に伴って過剰に産生される、単クローン性の遊離L鎖(免疫グロブリン軽鎖、κまたはλのいずれか一方)である。分子量が小さいため腎糸球体を通過して尿中に排泄され、多発性骨髄腫やマクログロブリン血症でみられる。約56℃で白濁・凝固し、100℃近くまで加温すると再び溶解するという熱凝固性が古典的な特徴である。●Bence Jones蛋白の性質=形質細胞由来の単クローン性遊離L鎖、低分子で尿中に排泄、56℃で凝固し100℃で再溶解。●免疫グロブリン軽鎖の構造=可変部1ドメインと定常部1ドメインの計2ドメインからなる(定常部が3〜4ドメインあるのは重鎖である)。●補足=多発性骨髄腫では血清・尿の蛋白電気泳動でM蛋白の鋭いピーク(Mピーク)を認め、免疫電気泳動や免疫固定法で単クローン性であることを確認する。
選択肢ごとの解説
① 遊離L鎖単独では補体結合性をもたない。補体結合には重鎖のFc部分を含む完全な抗体分子が必要であるため、この記述は誤りである。 ② 100℃加温では白濁せず再溶解する。約56℃で白濁・凝固し加熱を続けると再溶解するのがBence Jones蛋白の特徴であり誤りである。 ③ 抗Fc抗体とは反応しない。L鎖は重鎖のFc部分をもたず、反応するのは抗L鎖(抗κ・抗λ)抗体であるため、この記述は誤りである。 ④ 正しい。Bence Jones蛋白は形質細胞の単クローン性増殖によって過剰産生される、単クローン性の遊離L鎖である。 ⑤ L鎖の定常部ドメインは1個である。定常部ドメインが3個以上あるのは重鎖(H鎖)であり、L鎖の記述としては誤りである。
第59回 午後86(臨床免疫学)
免疫電気泳動像を別に示す。疾患として考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB086.eeb84cf56e.jpg
①H鎖〈μ鎖〉病 ②IgA型多発性骨髄腫 ③IgG型多発性骨髄腫 ④原発性マクログロブリン血症 ⑤Bence Jones蛋白型多発性骨髄腫
正答: ④原発性マクログロブリン血症
ポイント 原発性マクログロブリン血症(Waldenströmマクログロブリン血症)は、リンパ形質細胞性リンパ腫が単クローン性のIgMを大量に産生する疾患である。免疫電気泳動では、IgMを構成するμ鎖の沈降線と、κまたはλいずれか一方のL鎖の沈降線とが、同じ移動位置で限局性に膨隆した異常弧(M弧)を示し、両者が一致することで分泌型IgMによるM蛋白と判定できる。はμ鎖と単一L鎖が対応して突出する像を呈する。●M蛋白の同定=重鎖の型(γ・α・μ)と軽鎖の型(κ・λ)の組合せから疾患を判定する。●μ+単一L鎖=原発性マクログロブリン血症、γ+単一L鎖=IgG型骨髄腫、α+単一L鎖=IgA型骨髄腫、L鎖のみ=Bence Jones蛋白型骨髄腫。●補足=原発性マクログロブリン血症ではIgMが大量に増えるため血液粘稠度が上昇し、過粘稠度症候群による視力障害や出血傾向、神経症状をきたすことがある。
選択肢ごとの解説
① H鎖病はμ鎖などの重鎖のみが異常増加してL鎖弧を伴わない像を示すため、μ鎖と単一L鎖が対応する本図とは合致しないため誤りである。 ② IgA型多発性骨髄腫ではα鎖と単一L鎖の異常弧を示すため、μ鎖の異常弧を呈する本図とは合致せず、考えにくいため誤りである。 ③ IgG型多発性骨髄腫ではγ鎖と単一L鎖の異常弧を示すため、μ鎖の異常弧を呈する本図とは合致せず、考えにくいため誤りである。 ④ 正しい。μ鎖と単一L鎖が同じ位置で対応した異常弧を示し、単クローン性IgMによる原発性マクログロブリン血症と考えられる。 ⑤ Bence Jones蛋白型多発性骨髄腫はL鎖のみが増加し重鎖の異常弧を伴わない像を示すため、μ鎖弧を呈する本図とは合致しないため誤りである。
第59回 午後87(臨床免疫学)
不規則抗体について正しいのはどれか。
①生理食塩液法で検査する。 ②輸血歴がない人では検出されない。 ③IgGクラスの抗体が臨床的に重要である。 ④日本人では抗D抗体が最も多く検出される。 ⑤日本人ではDiego血液型a抗原に対する抗体は検出されない。
正答: ③IgGクラスの抗体が臨床的に重要である。
ポイント 不規則抗体は、ABO血液型抗原以外の赤血球血液型抗原に対する抗体の総称で、輸血や妊娠による免疫感作で産生される免疫抗体が主体である。臨床的に問題となるのはIgGクラスの抗体で、37℃で反応し胎盤も通過するため、間接抗グロブリン試験(クームス試験)で検出され、溶血性輸血副作用や新生児溶血性疾患の原因となる。輸血前にはこの間接抗グロブリン試験を含む不規則抗体スクリーニングが行われる。●臨床的に重要な不規則抗体(IgG・37℃反応・間接抗グロブリン試験で検出)=抗Rh(D・E・c等)、抗Duffy、抗Kidd、抗Diego(a)。●日本人で頻度が高いもの=抗E抗体、抗Lewis抗体、抗Di(a)抗体。●検出法=間接抗グロブリン試験(生理食塩液法ではIgG抗体の多くを見逃す)。●補足=不規則抗体スクリーニングで陽性となった場合は抗体同定検査でその特異性を決定し、対応抗原が陰性の血液を選んで交差適合試験を行ったうえで輸血する。
選択肢ごとの解説
① 生理食塩液法では臨床的に重要なIgG抗体の多くを検出できないため、間接抗グロブリン試験(クームス試験)で検査するのが適切である。 ② 輸血歴がなくても妊娠による感作や自然抗体として不規則抗体が検出されることがあるため、検出されないという記述は誤りである。 ③ 正しい。IgGクラスの抗体は37℃で反応し胎盤も通過して溶血を起こすため、不規則抗体のなかで臨床的に最も重要である。 ④ 日本人で最も多く検出される不規則抗体は抗E抗体であり、抗D抗体が最も多く検出されるという記述は誤りである。 ⑤ 日本人ではDiego(a)抗原に対する抗体(抗Di(a))が比較的多く検出されるため、検出されないという記述は誤りである。
📋 まとめの表を見る:不規則抗体同定検査:反応相と抗体推定の原則
同定は既知抗原表(アンチグラム)とパネル赤血球の反応を照合し、陰性反応を示した赤血球がもつ抗原に対応する抗体を消去していく消去法で行う。消去されずに残った抗体が「否定できない抗体」であり、陽性反応を示した赤血球に共通する抗原に対応する抗体を「可能性の高い抗体」と推定する。抗原量が少ないと反応が弱まる量的効果(dosage)があるため、量的効果のある抗原はホモ接合の血球で陰性の場合に消去するのが原則である。間接抗グロブリン試験の反応増強剤にはLISS(低イオン強度溶液)やPEG(ポリエチレングリコール)が用いられる。
第59回 午後88(臨床免疫学)
輸血副作用とその予防策または対処法の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
①輸血後肝炎 — 核酸増幅検査(NAT) ②輸血後GVHD — 血球洗浄処理 ③非溶血性発熱反応 — 紫外線照射 ④溶血性輸血副作用 — 不規則抗体検査 ⑤輸血関連急性肺傷害 — 抗IgA抗体検査
正答: ①輸血後肝炎 — 核酸増幅検査(NAT)・④溶血性輸血副作用 — 不規則抗体検査
ポイント 輸血副作用は機序ごとに予防策・対処法が異なるため、機序と対策を正確に対応づける必要がある。輸血後肝炎はドナー血中の肝炎ウイルス混入が原因で、核酸増幅検査(NAT)によるスクリーニングでウイルスの検出感度を高めて発生を低減する。溶血性輸血副作用は赤血球抗原に対する抗体による血管内・血管外溶血で、輸血前の不規則抗体検査と交差適合試験によって不適合を回避し、発症時には原因抗体の検索を行う。●機序と対策の正しい対応=輸血後肝炎→核酸増幅検査(NAT)、溶血性輸血副作用→不規則抗体検査・交差適合試験、輸血後GVHD→血液製剤への放射線照射、非溶血性発熱反応→白血球除去、輸血関連急性肺傷害(TRALI)→抗白血球抗体陰性ドナーの選択。●補足=輸血後GVHDは輸血されたドナーリンパ球が患者組織を攻撃する致死的合併症で、放射線照射でリンパ球の増殖能を失わせて予防する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。輸血後肝炎はドナー血の肝炎ウイルス混入が原因であり、核酸増幅検査(NAT)によるスクリーニングで発生を低減できる。 ② 輸血後GVHDの予防は血液製剤への放射線照射でドナーリンパ球を不活化することであり、血球洗浄処理ではリンパ球を除去できず予防にならない。 ③ 非溶血性発熱反応の予防は白血球除去フィルタによる白血球の除去であり、紫外線照射は予防策として正しくないため誤りである。 ④ 正しい。溶血性輸血副作用は赤血球抗体による溶血が機序であり、不規則抗体検査と交差適合試験で予防および原因検索を行う。 ⑤ 輸血関連急性肺傷害は主にドナー血中の抗白血球抗体が関与し、抗IgA抗体検査はIgA欠損者のアナフィラキシー対策であるため対応が誤りである。
📋 まとめの表を見る:輸血副作用の機序・発症時期と予防・対策
輸血副作用は「溶血性/非溶血性」×「免疫学的/非免疫学的」×「即時型/遅発型」で整理できる。
第59回 午後89(臨床免疫学)
新生児溶血性疾患の新生児へ赤血球を輸血する際に、実施する必要がない検査はどれか。
①児の血液型 ②父親の血液型 ③母親の血液型 ④父親の不規則抗体 ⑤母親の不規則抗体
正答: ④父親の不規則抗体
ポイント 新生児溶血性疾患(新生児溶血性黄疸)は、母児間の血液型不適合により、母親が産生したIgGクラスの抗体が胎盤を通過して児に移行し、児の赤血球を破壊することで生じる病態である。児への輸血用血液を選択するには、児の血液型、母児双方の血液型、そして溶血の原因となった抗体を特定するための母親の不規則抗体検査が必要となる。父親の不規則抗体は児の溶血に直接関与しないため、輸血実施に必須の検査ではない。●新生児への輸血で必要な検査=児の血液型、母親の血液型と母親の不規則抗体(原因抗体の特定)、父親の血液型(児がもつ抗原の由来の推定)。●実施する必要がない検査=父親の不規則抗体(児の溶血の原因は母親由来の抗体であるため)。●補足=児への輸血では、母由来の原因抗体に対応する抗原をもたない血液を選び、母親の血液とも交差適合試験を行うことで、移行した抗体による溶血を防ぐ配慮が必要である。
選択肢ごとの解説
① 児の血液型は、輸血する赤血球製剤を児に適合させて選択するために必須の検査であり、新生児への輸血で実施する必要がある。 ② 父親の血液型は、児がもつ血液型抗原の由来を推定し溶血の原因抗原を特定する手がかりとなるため、実施する必要がある検査である。 ③ 母親の血液型は、母児間の血液型不適合の有無を判定するために必要な検査であり、新生児への輸血で実施する必要がある。 ④ 正しい。父親の不規則抗体は児の溶血に関与せず原因抗体ではないため、新生児への輸血の際に実施する必要がない検査である。 ⑤ 母親の不規則抗体は、児に溶血を起こした原因抗体を特定するために必須の検査であり、新生児への輸血で実施する必要がある。
第59回 午後90(公衆衛生学)
部位別にみた悪性新生物の年齢調整死亡率を1960年と2010年で比較した。女性において2010年で低下がみられるのはどれか。2つ選べ。
正答: ①胃・④子宮
ポイント 年齢調整死亡率は、集団の年齢構成の違いによる影響を取り除いて死亡リスクを比較するための指標で、基準人口に合わせて補正した死亡率である。女性において1960年から2010年にかけて低下したのは胃と子宮であり、胃は冷蔵庫の普及による食塩・塩蔵品摂取の減少やHelicobacter pylori感染への対策が、子宮は子宮頸癌検診の普及などが背景にある。●女性で年齢調整死亡率が低下した部位=胃、子宮。●年齢調整死亡率が上昇した部位=気管・気管支および肺、乳房、大腸。●変化の背景=食生活の改善とがん検診の普及により胃・子宮が減少し、喫煙の影響や脂肪摂取の増加など生活様式の欧米化により肺・乳房・大腸が増加した。●補足=年齢調整死亡率は高齢化が進む集団どうしや経年変化を公平に比較するために用いられ、実数の粗死亡率とは増減の傾向が異なる場合がある点に注意する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。胃癌の年齢調整死亡率は、食塩摂取の減少やHelicobacter pylori対策、検診の普及を背景に大きく低下した部位である。 ② 気管・気管支および肺の死亡率は、喫煙の影響などを背景に1960年から2010年にかけて上昇しており、低下していないため誤りである。 ③ 乳房の死亡率は、出産・授乳様式の変化など生活様式の欧米化を背景に上昇しており、低下していないため該当しない。 ④ 正しい。子宮癌の年齢調整死亡率は、子宮頸癌検診の普及などを背景に1960年から2010年にかけて低下した部位である。 ⑤ 大腸の死亡率は、脂肪摂取の増加など食生活の欧米化を背景に上昇しており、低下していないため該当しないため誤りである。
第59回 午後91(公衆衛生学)
化学物質と曝露の生体指標の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
①カドミウム — 尿中β₂-ミクログロブリン ②トルエン — 尿中フェノール ③ニトロベンゼン — 血中メトヘモグロビン ④マンガン — 尿中δ-アミノレブリン酸 ⑤有機塩素系農薬 — 血清コリンエステラーゼ
正答: ①カドミウム — 尿中β₂-ミクログロブリン・③ニトロベンゼン — 血中メトヘモグロビン
ポイント 生体指標(バイオマーカー)は、化学物質への曝露量や生体への影響を、尿や血液などの生体試料中の物質量で評価する指標であり、物質ごとに特異的な指標が用いられる。カドミウム曝露では近位尿細管が障害されて再吸収が低下するため尿中β₂-ミクログロブリンが増加し、ニトロベンゼンやアニリンは赤血球内のヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンを生成するため血中メトヘモグロビンが増加する。●正しい組合せ=カドミウム→尿中β₂-ミクログロブリン、ニトロベンゼン→血中メトヘモグロビン。●他の代表的な組合せ=トルエン→尿中馬尿酸、ベンゼン→尿中フェノール、鉛→尿中δ-アミノレブリン酸、有機リン系農薬→血清コリンエステラーゼ低下、水銀→尿中水銀。●補足=生体指標は曝露量の把握だけでなく早期の健康影響の検出にも用いられ、特殊健康診断や作業環境管理における曝露評価の重要な手段となっている。
選択肢ごとの解説
① 正しい。カドミウムは近位尿細管を障害して再吸収を低下させ尿中β₂-ミクログロブリンを増加させるため、曝露の生体指標となる。 ② トルエン曝露の生体指標は尿中馬尿酸であり、尿中フェノールはベンゼン曝露の指標であるため、この組合せは誤りである。 ③ 正しい。ニトロベンゼンは赤血球のヘモグロビンを酸化してメトヘモグロビンを生成するため、血中メトヘモグロビンが曝露の指標となる。 ④ 尿中δ-アミノレブリン酸は鉛曝露でヘム合成が阻害されて増加する指標であり、マンガン曝露の指標ではないため組合せが誤りである。 ⑤ 血清コリンエステラーゼの低下は有機リン系農薬曝露の指標であり、有機塩素系農薬の指標ではないため、この組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:化学物質・有機溶剤と生体曝露指標(生物学的モニタリング)
有機リン系農薬は血清コリンエステラーゼ活性の低下、メチル水銀は毛髪中・血中水銀が曝露指標となる。尿中水銀は主として金属水銀・無機水銀の曝露評価に用い、メチル水銀と区別する。生物学的モニタリングは血液・尿・毛髪など生体試料から作業者の化学物質曝露量を評価する手法である。
第59回 午後92(公衆衛生学)
介護保険について正しいのはどれか。
①介護保険料は国が定める。 ②被保険者は75歳以上である。 ③ケアプランは本人が作成できる。 ④要支援者は介護老人保健施設に入所できる。 ⑤介護老人福祉施設への入所は市町村長の許可が必要である。
正答: ③ケアプランは本人が作成できる。
ポイント 介護保険は市町村および特別区を保険者とする社会保険で、要介護・要支援の認定を受けた被保険者に介護サービスを給付する制度である。サービスの利用にはケアプラン(居宅サービス計画)が必要だが、これは介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成するほか、被保険者本人が自ら作成して市町村に届け出ることもできる(セルフケアプラン)。●介護保険の要点=保険者は市町村・特別区、第1号被保険者は65歳以上、第2号被保険者は40〜64歳の医療保険加入者、ケアプランは本人が作成することも可能。●施設サービス=要介護者は介護老人保健施設や介護老人福祉施設等を利用でき、施設への入所は施設との契約によって行われる。●補足=介護保険の財源は被保険者の保険料と公費(国・都道府県・市町村)でまかなわれ、利用者は原則として費用の一部を自己負担してサービスを受ける仕組みである。
選択肢ごとの解説
① 介護保険料は保険者である市町村が条例に基づいて定めるものであり、国が一律に定めるという記述は誤りである。 ② 第1号被保険者は65歳以上、第2号被保険者は40〜64歳であり、被保険者を75歳以上とする記述は誤りである。 ③ 正しい。ケアプラン(居宅サービス計画)は介護支援専門員が作成するほか、被保険者本人が自ら作成することもできる。 ④ 要支援者は介護老人保健施設に入所できず、入所の対象となるのは要介護者であるため、この記述は誤りである。 ⑤ 介護老人福祉施設への入所は施設との契約によって行われるものであり、市町村長の許可が必要であるという記述は誤りである。
第59回 午後93(公衆衛生学)
臨床検査技師が採血を行うことができない部位はどれか。
①肘静脈 ②大腿静脈 ③耳朶の毛細血管 ④手背の表在静脈 ⑤足背の表在静脈
正答: ②大腿静脈
ポイント 臨床検査技師は、医師の具体的な指示の下で採血を行うことができるが、その採血部位は臨床検査技師等に関する法令や関係通知によって限定されている。採血が認められているのは、肘静脈などの四肢の表在静脈と、耳朶・指頭などの毛細血管に限られ、大腿静脈のような深部の静脈や動脈からの採血は認められていない。大腿静脈は鼠径部の深部を走行し、大腿動脈や神経に近接して穿刺の危険が大きいため、その採血は医師が行う。●臨床検査技師が採血できる部位=肘静脈、手背・足背などの四肢の表在静脈、耳朶や指頭の毛細血管。●臨床検査技師が採血できない部位=大腿静脈などの深部の静脈・動脈(これらは医師が行う)。●補足=臨床検査技師が採血を行えるのはあくまで医師または歯科医師の具体的な指示があった場合に限られ、検体検査に必要な範囲で四肢の表在静脈や毛細血管からの採血が認められている。
選択肢ごとの解説
① 肘静脈は上肢の表在静脈であり、臨床検査技師が医師の指示の下で採血を行うことができる代表的な部位である。 ② 正しい。大腿静脈は四肢の表在静脈ではなく深部を走行する静脈であり、法令で認められた採血部位(四肢の表在静脈・耳朶や指頭の毛細血管)に含まれないため、臨床検査技師が採血を行うことができない部位である。 ③ 耳朶の毛細血管は、臨床検査技師が医師の指示の下で採血を行うことができる部位であり、採血が認められている。 ④ 手背の表在静脈は、臨床検査技師が医師の指示の下で採血を行うことができる部位であり、採血が認められている。 ⑤ 足背の表在静脈は、臨床検査技師が医師の指示の下で採血を行うことができる部位であり、採血が認められている。
第59回 午後94(公衆衛生学)
公衆衛生の事業と、それを規定する法律の組合せで正しいのはどれか。
①保健所の設置 — 医療法 ②医療計画の策定 — 地域保健法 ③労働者への健康診断の実施 — 労働基準法 ④工場の大気汚染物質の排出規制 — 環境基本法 ⑤公共の場所での受動喫煙の防止 — 健康増進法
正答: ⑤公共の場所での受動喫煙の防止 — 健康増進法
ポイント 公衆衛生の各事業は、それぞれ根拠となる法律によって規定されており、事業と法律の対応を正確に把握することが求められる。公共の場所での受動喫煙の防止は健康増進法に定められており、多数の者が利用する施設の管理者に対し、受動喫煙を防止するための措置を講じることを求めている。●正しい組合せ=公共の場所での受動喫煙の防止→健康増進法。●他の正しい対応=保健所の設置や地域保健対策→地域保健法、医療計画の策定→医療法、労働者への健康診断の実施→労働安全衛生法、工場の大気汚染物質の排出規制→大気汚染防止法。●環境基本法は環境保全の基本理念や施策の枠組みを定める法律で、個別の排出規制は大気汚染防止法などが担う。●補足=労働基準法は労働条件の最低基準を定める法律であり、労働者の健康管理や健康診断などの具体的な実施事項は労働安全衛生法に分けて規定されている。
選択肢ごとの解説
① 保健所の設置を規定するのは地域保健法であり、医療法ではないため、保健所の設置と医療法というこの組合せは誤りである。 ② 医療計画の策定を規定するのは医療法であり、地域保健法ではないため、医療計画と地域保健法というこの組合せは誤りである。 ③ 労働者への健康診断の実施を規定するのは労働安全衛生法であり、労働基準法ではないため、この組合せは誤りである。 ④ 工場の大気汚染物質の排出規制を規定するのは大気汚染防止法であり、環境基本法ではないため、この組合せは誤りである。 ⑤ 正しい。公共の場所での受動喫煙の防止は健康増進法に規定されており、施設管理者に防止措置を求めている。
📋 まとめの表を見る:公衆衛生の事業と根拠法
労働基準法は労働時間・賃金など労働条件の最低基準を定める法律で、健康診断など具体的な安全衛生対策は労働安全衛生法が別に規定する。環境基本法は環境保全の基本理念・施策の枠組みを定める法律で、個別の排出規制は大気汚染防止法などが担う。
第59回 午後95(医用工学概論)
バイポーラトランジスタで正しいのはどれか。2つ選べ。
①電圧制御形である。 ②周囲温度の影響を受けない。 ③入力抵抗は数M Ω以上である。 ④電子と正孔のキャリアを利用して動作する。 ⑤エミッタ、ベース、コレクタの3端子をもつ。
正答: ④電子と正孔のキャリアを利用して動作する。・⑤エミッタ、ベース、コレクタの3端子をもつ。
ポイント バイポーラトランジスタ(接合型トランジスタ)は、エミッタ・ベース・コレクタの3端子をもち、小さなベース電流によって大きなコレクタ電流を制御する電流制御形の半導体素子である。電子と正孔の両方(バイポーラ=二極性)のキャリアが伝導に関与する点が、電圧制御で多数キャリアのみを利用する電界効果トランジスタ(FET)と本質的に異なる。●バイポーラトランジスタの特徴=電流制御形、電子と正孔の両キャリアを利用、入力抵抗が低い、温度の影響を受けやすい、エミッタ・ベース・コレクタの3端子をもつ。●電界効果トランジスタ(FET)の特徴=電圧制御形、単一キャリアを利用、入力抵抗が高い(数MΩ以上)、ソース・ゲート・ドレインの3端子をもつ。●補足=バイポーラトランジスタは増幅作用やスイッチング作用をもち、温度上昇でコレクタ電流が増えて発熱がさらに進む熱暴走を起こしうるため、回路には温度補償が組み込まれることが多い。
選択肢ごとの解説
① 電圧制御形なのは電界効果トランジスタ(FET)であり、バイポーラトランジスタはベース電流で制御する電流制御形であるため誤りである。 ② バイポーラトランジスタは温度依存性が大きく、周囲温度の上昇でコレクタ電流が変化するため、温度の影響を受けるので誤りである。 ③ 入力抵抗が数MΩ以上と高いのは電界効果トランジスタ(FET)であり、バイポーラトランジスタの入力抵抗は比較的低いため誤りである。 ④ 正しい。バイポーラトランジスタは電子と正孔という二種類のキャリアを利用して動作する、二極性の半導体素子である。 ⑤ 正しい。バイポーラトランジスタはエミッタ・ベース・コレクタの3つの端子をもつ半導体素子であり、これは正しい記述である。
第59回 午後96(医用工学概論)
NOR回路はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k59pB096.74b7df1e75.jpg
正答: ③3
ポイント NOR回路は、論理和(OR)の出力を反転した論理回路で、全ての入力が0のときだけ出力が1となり、いずれか一つでも入力が1になれば出力は0になる否定論理和(NOT-OR)のゲートである。回路記号では、ORゲートの後縁が曲線的な盾形の形状の出力側に、否定(反転)を示す小円(バブル)が付く点が特徴である。【別冊の図】では、OR形状の出力端に小円を伴う記号がNOR回路にあたる。●基本論理ゲート=AND(論理積)、OR(論理和)、NOT(否定・反転)。●否定を伴う複合ゲート=NAND(ANDの出力を反転)、NOR(ORの出力を反転)、これらは出力側の小円で否定を表す。●NORの真理値=全ての入力が0のときのみ出力1、それ以外はすべて0となる。
選択肢ごとの解説
① ①はNAND(否定論理積)。ANDゲートの出力側に反転を示す小円が付いている。 ② ②はNOT(否定)。1入力の値を反転する。 ③ 正しい。③はNOR(否定論理和)。ORゲートの出力側に反転を示す小円が付いており、両入力が0のときだけ出力が1となる。 ④ ④はAND(論理積)。両入力が1のときだけ出力が1となる。 ⑤ ⑤はOR(論理和)。少なくとも一方の入力が1なら出力が1となる。
第59回 午後97(医用工学概論)
人体の電撃反応(商用交流・1秒間通電)でマクロショック(心室細動)が生じる電流値[mA]の大きさはどれか。
正答: ⑤100
ポイント 電撃反応は、電流が流れる部位と電流値によって生体への影響が大きく異なる。マクロショックは体表から体内へ電流が流入する通常の感電であり、商用交流(50/60Hz)を1秒間通電した場合、おおむね100mA以上で心室細動が誘発される。一方、心臓カテーテルなどを介して心筋へ直接微小電流が流れるミクロショックでは、約0.1mAという桁違いに小さい電流で心室細動を起こすため、心臓に直接導線が達する状況では特に注意が必要である。●体表通電(マクロショック・商用交流1秒間)の目安=約1mAで最小感知電流、約10mAで離脱限界電流、約100mAで心室細動。●心臓直接通電(ミクロショック)=約0.1mAで心室細動。同じ心室細動でも通電部位によって閾値の桁が大きく異なる。●補足=ミクロショックを防ぐため医用電気機器には漏れ電流の厳しい基準が定められ、確実な接地や絶縁、保護手段の二重化によって患者の安全が確保されている。
選択肢ごとの解説
① 0.01mAは最小感知電流よりも小さく感知すらされない値であり、マクロショックで心室細動を起こす電流値ではないため誤りである。 ② 0.1mAは心臓へ直接通電するミクロショックで心室細動を起こす値であり、体表通電のマクロショックの値ではないため誤りである。 ③ 1.0mAは体表通電での最小感知電流の目安であり、わずかに感じる程度で心室細動には至らない値であるため誤りである。 ④ 10mAは体表通電での離脱限界電流の目安であり、筋収縮で手が離せなくなる程度で心室細動の値ではないため誤りである。 ⑤ 正しい。マクロショックでは商用交流を1秒間通電した場合、約100mAで心室細動(心臓のけいれん)が生じる。
第59回 午後98(医用工学概論)
無停電電源装置の略号として正しいのはどれか。
正答: ⑤UPS
ポイント 無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)は、停電や瞬時電圧低下が生じた際に内蔵バッテリから自動的に電力を供給し、接続された機器を一定時間動作させ続ける装置である。医療現場ではコンピュータのデータ保護や生命維持装置の継続運転、機器を安全に停止させるための時間の確保などに用いられる。●UPS=無停電電源装置(停電時にバッテリから給電して機器の動作を維持する)。●紛らわしい略語の意味=CPU(中央処理装置、演算と制御を担う)、LCD(液晶ディスプレイ、表示装置)、OMR(光学式マーク読取装置、マークシートの読取り)、PDA(携帯情報端末)。いずれも電源装置とは機能が全く異なる略語である。●補足=UPSの方式には常時商用給電方式・ラインインタラクティブ方式・常時インバータ給電方式などがある。常時インバータ給電方式は停電時にも原則として無瞬断で給電できるが、他の方式では切替時間が生じる機種がある。
選択肢ごとの解説
① CPUは中央処理装置(Central Processing Unit)の略であり、コンピュータの演算と制御を担う装置で電源装置ではないため誤りである。 ② LCDは液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)の略であり、画面を表示する装置で電源装置ではないため誤りである。 ③ OMRは光学式マーク読取装置(Optical Mark Reader)の略であり、マークシートを読み取る装置で電源装置ではないため誤りである。 ④ PDAは携帯情報端末(Personal Digital Assistant)の略であり、電源装置を指す略語ではないため誤りである。 ⑤ 正しい。UPSは無停電電源装置(Uninterruptible Power Supply)の略であり、停電時にバッテリから給電する装置である。
第59回 午後99(医用工学概論)
表形式のデータを保存、変換するためのフォーマットはどれか。
正答: ②CSV
ポイント CSV(Comma-Separated Values)は、各項目の値をカンマで区切って、行と列からなる表形式のデータを記録するテキスト形式である。表計算ソフトやデータベース、各種アプリケーション間でのデータの交換・変換に広く用いられ、テキストベースであるため特定のソフトに依存せず読み書きできる汎用性の高さが特徴である。●表形式データの保存・変換に用いる形式=CSV(カンマ区切りのテキスト)。●他のファイル形式とその用途=AVI(映像と音声を含む動画)、JPEG(静止画像の圧縮)、MP3(音声の圧縮)、TIFF(高画質の静止画像)。これらはいずれもマルチメディアデータを扱う形式であり、表形式データの保存・変換には用いない。●補足=CSVは構造が単純で人間にも読みやすく、検査データや患者情報を別システムへ移行・取込みする際の汎用的な中間形式として臨床現場でも広く利用されている。
選択肢ごとの解説
① AVIは映像と音声を格納する動画ファイルの形式であり、表形式のデータを保存・変換するための形式ではないため誤りである。 ② 正しい。CSVは各値をカンマで区切って行と列の表形式データを保存・変換するためのテキストフォーマットである。 ③ JPEGは写真などの静止画像を圧縮して保存する形式であり、表形式のデータを保存・変換する形式ではないため誤りである。 ④ MP3は音声を圧縮して保存するための形式であり、表形式のデータを保存・変換する形式ではないため誤りである。 ⑤ TIFFは高画質の静止画像を保存するための形式であり、表形式のデータを保存・変換する形式ではないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:ファイル形式の分類(静止画像・動画・音声・表形式)
第59回 午後100(医用工学概論)
滅菌について正しいのはどれか。2つ選べ。
①乾熱滅菌は95〜100 ℃で行う。 ②γ線は包装後の滅菌に有効である。 ③濾過滅菌は血清の滅菌には適さない。 ④高圧蒸気滅菌は芽胞を有する細菌には無効である。 ⑤過酸化水素プラズマ滅菌はカテーテル製品の滅菌に有効である。
正答: ②γ線は包装後の滅菌に有効である。・⑤過酸化水素プラズマ滅菌はカテーテル製品の滅菌に有効である。
ポイント 滅菌は、芽胞を含むすべての微生物を死滅または除去する処理であり、対象物の耐熱性や耐湿性に応じて適切な方法を選択する。γ線滅菌は透過力が高いため、包装した後の医療器材を密封したまま滅菌でき、使い捨て製品の工業的な滅菌に用いられる。過酸化水素低温プラズマ滅菌は低温・短時間で行えるため、熱に弱いプラスチック製のカテーテルや内視鏡関連器材の滅菌に適する。●滅菌法と対象の対応=高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)→芽胞を含む耐熱・耐湿の器材、乾熱滅菌(160〜190℃)→ガラスや金属、γ線滅菌→包装済みの製品、過酸化水素プラズマ滅菌や酸化エチレンガス滅菌→熱に弱い器材。●濾過滅菌=加熱できない血清や培地などの液体に用いる。●補足=滅菌の効果はインジケータや生物学的指標(芽胞)を用いて確認し、対象物の材質と用途に合わない方法を選ぶと滅菌不良や器材の損傷を招くため、方法の選択が重要である。
選択肢ごとの解説
① 乾熱滅菌は160〜190℃の高温で一定時間行うものであり、95〜100℃では滅菌できないため、この記述は誤りである。 ② 正しい。γ線は透過力が高く包装後の製品を密封したまま滅菌できるため、使い捨て製品などの包装後の滅菌に有効である。 ③ 濾過滅菌は加熱できない血清やタンパク質溶液の滅菌に適しており、血清の滅菌に適さないとする記述は誤りである。 ④ 高圧蒸気滅菌は芽胞を有する細菌に対しても有効であり、芽胞を有する細菌に無効であるとする記述は誤りである。 ⑤ 正しい。過酸化水素プラズマ滅菌は低温で行えるため、熱に弱いカテーテル製品などの滅菌に有効な方法である。
📋 まとめの表を見る:滅菌法の種類・条件・対象
高圧蒸気滅菌は芽胞形成菌を含め有効だが、プリオンは通常の方法では不活化できない。
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