第60回(2014) 臨床検査技師国家試験 午前1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第60回 午前1(臨床検査総論)
グルコースの検査に使用する血液はどれか。
- ①無添加全血
- ②シュウ酸加血
- ③ヘパリン加血
- ④EDTA-2Na加血
- ⑤NaF, EDTA-2Na加血
正答: ⑤NaF, EDTA-2Na加血
ポイント
採血後も血球による解糖が続き、全血のまま放置するとグルコース値は経時的に低下する。NaFは解糖系酵素エノラーゼを阻害する解糖阻止剤、EDTA-2Naは主に抗凝固剤であり、本問では両者を含む採血管を選ぶ。ただしNaFの作用発現は遅く、採血後早期の解糖はEDTA併用だけでは十分抑えられないため、速やかな血漿分離が重要である。直ちに分離できない場合は適切な冷却と早期分離、または解糖を迅速に抑えるクエン酸緩衝液等を含む採血管を検査室の手順に従って使用する。●解糖阻止剤=NaF・モノヨード酢酸・マンノースで、いずれも解糖系の酵素反応を抑える。●抗凝固剤の用途別の違い=EDTAは血算、ヘパリンは血液ガスと生化学、クエン酸ナトリウムは凝固検査、シュウ酸塩は旧来の用法で目的に応じて使い分ける。
選択肢ごとの解説
- ① 無添加全血では解糖が進行しグルコース値が経時的に低下するため不適で、用いるなら採血後すぐに血清を分離する必要がある。
- ② シュウ酸加血はカルシウムを除去する抗凝固剤だが解糖阻止作用が弱いため、血糖の経時的低下を防ぐには不十分で適さない。
- ③ ヘパリン加血は血液ガスや一般生化学検査に用いる抗凝固血だが解糖を止める作用がないため、血糖測定の検体保存には向かない。
- ④ EDTA-2Na加血は抗凝固作用が主目的で、単独では解糖抑制が不十分なためグルコースが低下しやすく血糖専用には適さない。
- ⑤ 正しい。NaFは解糖阻止剤、EDTA-2Naは抗凝固剤として働くため、選択肢の中ではこの組合せを用いる。ただしNaFの解糖抑制は即時ではなく、EDTAとの併用だけで採血直後の解糖を十分防げるわけではない。速やかな血漿分離など適切な前処理が必要である。
第60回 午前2(臨床検査総論)
健常人の個体内生理的変動から求めた精密さの許容誤差限界(%)の小さい項目はどれか。2つ選べ。
正答: ③カリウム・④カルシウム
ポイント
個体内生理的変動が小さい項目ほど、それに見合う許容誤差限界も小さく設定され、検査にはより高い精密さが要求される。カリウムやカルシウムは生体の恒常性が厳密に保たれ日内・日間変動が小さいため、わずかな測定誤差でも基準値内外の判定や臨床判断に影響し、許容できる誤差限界は小さくなる。一方、鉄・トリグリセリド・CKは食事・運動・時間帯による生理的変動がもともと大きく、測定誤差が変動に埋もれるため許容幅は広い。●変動が小さく高い精密さが必要な項目=ナトリウム・カリウム・カルシウム・クロール・総蛋白などの電解質系で、恒常性が厳密に維持される。●変動が大きく許容幅が広い項目=鉄(日内変動大)・トリグリセリド(食事性)・CK(運動性)・ALTで、生活要因で大きく動く。恒常性の厳密さの程度で分類する。
選択肢ごとの解説
- ① 鉄は日内変動が大きく朝高く夕方低いなど時間帯や食事で変動するため、許容誤差限界は大きく該当しない項目である。
- ② CK(クレアチンキナーゼ)は運動や筋活動の影響で大きく変動し生理的変動が大きいため、許容誤差限界は大きく該当しない。
- ③ 正しい。カリウムは細胞内外で厳密に調節され生理的変動が小さいため、許容誤差限界が小さく高い精密さが求められる。
- ④ 正しい。カルシウムは恒常性が厳密に維持され変動が小さいため、許容誤差限界が小さく高い精密さが要求される項目である。
- ⑤ トリグリセリドは食事の影響を強く受け食後に大きく上昇するなど変動が大きいため、許容誤差限界は大きく該当しない項目である。
📋 まとめの表を見る:許容誤差限界の考え方
第60回 午前3(臨床検査総論)
感染性医療廃棄物でないのはどれか。
- ①使用済みの注射針
- ②手術使用後の手袋
- ③血液付着ガーゼ
- ④測定終了後の採血管
- ⑤オートクレーブ処理後のシャーレ
正答: ⑤オートクレーブ処理後のシャーレ
ポイント
感染性医療廃棄物とは、血液その他の体液が付着し感染のおそれがある廃棄物を指し、医療機関では他の廃棄物と分別して厳重に処理される。注射針などの鋭利物、血液付着物、検体に触れた採血管はいずれも感染性に分類される。一方、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)処理を済ませたシャーレは、滅菌により病原体が死滅し感染性が消失しているため、感染性廃棄物に該当しなくなる。判定の要点は感染源となる体液の付着の有無と、滅菌処理が済んでいるかどうかである。●感染性廃棄物に該当するもの=血液付着物(ガーゼ・手袋)・鋭利物(注射針・メス)・使用済み採血管・培養容器など。●非感染性化する処理=適切な滅菌・消毒等で感染性を失わせた後も、元の廃棄物の区分に従い、一般廃棄物又は産業廃棄物として処理する。感染性産業廃棄物が滅菌だけで一般廃棄物になるわけではない。処理の有無と付着状況で区別して判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 使用済みの注射針は鋭利物であり血液付着の可能性も高いため、感染性医療廃棄物として厳重に分別・廃棄する必要がある。
- ② 手術使用後の手袋は血液や体液が付着しているおそれが高いため、感染性医療廃棄物に該当し適切に処理する必要がある。
- ③ 血液付着ガーゼは血液が直接付着しており感染源となりうるため、典型的な感染性医療廃棄物として分類される対象である。
- ④ 測定終了後の採血管は内部に血液を含み感染源となりうるため、感染性医療廃棄物として処理されるべき対象である。
- ⑤ 誤り。オートクレーブ処理済みのシャーレは高圧蒸気滅菌で病原体が死滅し感染性が消失しているため、感染性廃棄物に該当しない。
第60回 午前4(臨床検査総論)
尿がアルカリ性を示す原因はどれか。
正答: ⑤尿路感染
ポイント
尿は通常弱酸性(pH6前後)を示すが、尿路感染で尿素分解菌(プロテウスなどのウレアーゼ産生菌)が尿中の尿素をアンモニアへ分解すると、生じたアンモニアにより尿はアルカリ性に傾く。これに対し発熱・飢餓・糖尿病などは代謝性に酸(ケトン体など)を産生するため、尿は酸性側へ傾く。尿pHは食事内容や採取後の経過時間によっても変化するため、新鮮尿での評価が望ましい。●尿がアルカリ性に傾く要因=ウレアーゼ産生菌による尿路感染・嘔吐に伴う代謝性アルカローシス・植物性食中心の食事・採取後の長時間放置。●尿が酸性に傾く要因=飢餓やケトアシドーシス・発熱・糖尿病・激しい運動・動物性蛋白の多い食事。原因となる代謝の変化や細菌の作用に着目して判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 発熱では代謝が亢進し酸性代謝産物が増加するため尿は酸性に傾く傾向にあり、アルカリ性化の原因にはならない。
- ② 飢餓では脂肪分解が進みケトン体が産生されケトアシドーシスとなるため、尿は酸性に傾きアルカリ性化の原因とならない。
- ③ 尿毒症では腎の酸排泄障害により酸が体内に貯留する傾向にあり、尿のアルカリ性化の主たる原因とはならない。
- ④ 糖尿病ではインスリン作用不足でケトン体が増えケトアシドーシスとなるため、尿は酸性に傾きアルカリ性化を起こさない。
- ⑤ 正しい。尿路感染ではウレアーゼ産生菌が尿素を分解してアンモニアを生じ、尿がアルカリ性に傾くため原因となる。
第60回 午前5(臨床検査総論)
寄生虫とその病態の組合せで正しいのはどれか。
- ①旋尾線虫―胸水貯留
- ②多包条虫―粘血便
- ③剛棘顎口虫―皮膚爬行症
- ④広東住血線虫―肝硬変
- ⑤バンクロフト〈Bancroft〉糸状虫―好酸球性髄膜脳炎
正答: ③剛棘顎口虫―皮膚爬行症
ポイント
剛棘顎口虫は幼虫が人体内で皮下を移動し、線状に走行する発赤・腫脹(皮膚爬行症、creeping eruption)を起こす。人は本来の宿主ではなく幼虫が成虫になれずに移行するため、移動性の皮膚病変が生じる。寄生虫はそれぞれ寄生部位に応じた特徴的な病態をとるため、組合せは寄生部位と症状の対応で判断する。●幼虫移行に伴う病態=顎口虫類による皮膚爬行症や幼虫移行症で、幼虫が体内を移動して症状を起こす。●臓器に寄生する病態=多包条虫は肝臓に多包虫症(腫瘤・肝障害)、バンクロフト糸状虫はリンパ系に寄生して象皮症を起こす。●中枢神経の病態=広東住血線虫は好酸球性髄膜脳炎を起こす。寄生部位と病態の正しい対応関係に照らして組合せの正誤を判定する。
選択肢ごとの解説
- ① 旋尾線虫はホタルイカ生食などで腸閉塞や皮膚爬行症を起こすが、胸水貯留との組合せは病態として適切でない。
- ② 多包条虫はキタキツネ等を終宿主とし人では肝臓に多包虫症(腫瘤・肝障害)を起こすため、粘血便との組合せは誤りである。
- ③ 正しい。剛棘顎口虫は幼虫が皮下を移行し線状の発赤を生じる皮膚爬行症を起こすため、この組合せは正しい。
- ④ 広東住血線虫は好酸球性髄膜脳炎を起こす線虫であり、肝硬変との組合せは病態として誤っている対応である。
- ⑤ バンクロフト糸状虫はリンパ系に寄生し象皮症を起こす虫であり、好酸球性髄膜脳炎は広東住血線虫の病態で組合せは誤り。
📋 まとめの表を見る:主な寄生虫と中間宿主・終宿主
アニサキス・広東住血線虫・顎口虫・Manson裂頭条虫はヒトが本来の宿主でないため幼虫のまま体内を移行し(幼虫移行症)、皮膚爬行症や好酸球性髄膜炎などを起こす。
第60回 午前6(臨床検査総論)
健常成人の脳脊髄液の性状で正しいのはどれか。
- ①透明な淡黄色を示す。
- ②クロールは60~90 mmol/lである。
- ③フィブリンが析出する。
- ④総蛋白は10~40 mg/dlである。
- ⑤グルコースは80~120 mg/dlである。
正答: ④総蛋白は10~40 mg/dlである。
ポイント
健常成人の脳脊髄液は無色透明で、総蛋白は約10~40 mg/dlと血漿に比べて著しく低い。グルコースは血糖値の約2/3(おおむね50~80 mg/dl)、クロールは血清より高く約120 mmol/l前後を示し、フィブリノゲンをほとんど含まないためフィブリンは析出しない。これらは血液脳関門により大分子が制限されることを反映している。各項目の基準値と性状を血液と対比して理解することが判定の基本となる。●正常髄液の性状=無色透明・初圧70~180 mmH2O・細胞数5/μl以下・蛋白低値・糖は血糖の約2/3。●代表的な異常所見=化膿性髄膜炎で混濁と糖低下と多核球増加、くも膜下出血で血性とキサントクロミー、結核性髄膜炎で蛋白増加と糖低下とフィブリン析出。各項目の基準値に照らして性状の正誤を判定する。
選択肢ごとの解説
- ① 健常髄液は無色透明であり、淡黄色(キサントクロミー)はくも膜下出血後など赤血球崩壊による異常所見であるため誤り。
- ② 正常髄液のクロールは血清より高く約120 mmol/l前後であり、60~90 mmol/lでは低すぎて基準値に合致しない。
- ③ 正常髄液はフィブリノゲンをほとんど含まないためフィブリンは析出せず、析出は結核性髄膜炎などの異常所見である。
- ④ 正しい。正常髄液の総蛋白は約10~40 mg/dlで血漿より著しく低く、この範囲が健常成人の基準値に合致する。
- ⑤ 正常髄液のグルコースは血糖の約2/3でおおむね50~80 mg/dlであり、80~120 mg/dlでは高すぎて基準に合わない。
📋 まとめの表を見る:髄液検査所見と疾患の鑑別(正常・出血・細菌性/結核性/真菌性/ウイルス性髄膜炎)
細菌性髄膜炎ではLD(乳酸脱水素酵素)も上昇する。髄液糖を評価する際は必ず同時測定した血糖値と比較する(髄液糖/血糖比は正常で約0.6)。
第60回 午前7(臨床検査総論)
喀痰検査所見と疾患の組合せで正しいのはどれか。
- ①三層痰―大葉性肺炎
- ②線維素凝塊―肺水腫
- ③ディットリッヒ〈Dittrich〉栓子―肺吸虫症
- ④クルシュマン〈Curschmann〉らせん体―肺化膿症
- ⑤シャルコー・ライデン〈Charcot-Leyden〉結晶―気管支喘息
正答: ⑤シャルコー・ライデン〈Charcot-Leyden〉結晶―気管支喘息
ポイント
シャルコー・ライデン結晶は好酸球の崩壊産物に由来する両錐形・針状の結晶で、気管支喘息などアレルギー性気道疾患の喀痰中にみられる。好酸球が関与する炎症で出現するため、喀痰中の本結晶は好酸球性炎症の存在を示す所見となる。喀痰所見は背景にある病態と対応して出現するため、所見と疾患の対応関係を押さえることが組合せ問題の鍵となる。●アレルギー・喘息でみられる所見=シャルコー・ライデン結晶・クルシュマンらせん体・好酸球増多で、いずれもアレルギー性炎症を反映する。●化膿・嫌気性感染でみられる所見=ディットリッヒ栓子で、悪臭を伴い肺壊疽や気管支拡張症でみられる。●その他=肺水腫でピンク色泡沫状痰、大葉性肺炎で鉄錆色痰。所見と疾患の対応で組合せの正誤を判定する。
選択肢ごとの解説
- ① 三層痰(上層泡沫・中層漿液・下層膿)は気管支拡張症などでみられる所見であり、大葉性肺炎との組合せは適切でない。
- ② 線維素凝塊は線維素性気管支炎などでみられる所見であり、肺水腫の特徴はピンク色泡沫状痰のため組合せは誤りである。
- ③ ディットリッヒ栓子は肺壊疽や気管支拡張症など嫌気性感染でみられる悪臭ある栓子であり、肺吸虫症とは合致しない。
- ④ クルシュマンらせん体は気管支喘息でみられる粘液のらせん状栓子であり、肺化膿症との組合せは病態として誤っている。
- ⑤ 正しい。シャルコー・ライデン結晶は好酸球由来の針状結晶で気管支喘息など好酸球性炎症の喀痰にみられるため正しい。
📋 まとめの表を見る:喀痰所見と関連疾患
肺化膿症では三層痰・Dittrich栓子が、気管支喘息ではCurschmannらせん体・Charcot-Leyden結晶・好酸球増多がみられる。
第60回 午前8(臨床検査総論)
経胎盤垂直感染を起こすのはどれか。
- ①蟯虫症
- ②糞線虫症
- ③熱帯熱マラリア
- ④トキソプラズマ症
- ⑤腟トリコモナス症
正答: ④トキソプラズマ症
ポイント
トキソプラズマ症では妊娠中の母体初感染により原虫が経胎盤に移行し、胎児に水頭症・脈絡網膜炎・脳内石灰化などの先天性トキソプラズマ症を起こす。妊娠前に感染歴があれば抗体により胎児への移行は通常起こらないため、問題となるのは妊娠中の初感染である。トキソプラズマは経胎盤垂直感染を起こす代表的な原虫であり、母子感染は病原体ごとに主たる経路が異なる。●経胎盤(垂直)感染=トキソプラズマ・風疹ウイルス・サイトメガロウイルス・梅毒トレポネーマで、まとめてTORCH症候群と呼ばれる。●経産道感染=B群溶連菌・淋菌・クラミジアで、分娩時に産道で感染する。●母乳感染=HTLV-1。各病原体の主たる感染経路の違いに着目して母子感染の様式を分類し判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 蟯虫症は肛門周囲に産卵し虫卵の経口摂取による自家感染で広がる感染症であり、経胎盤垂直感染は起こさない。
- ② 糞線虫症は幼虫の経皮感染や体内での自家感染が主な感染経路であり、経胎盤での垂直感染は通常起こさない疾患である。
- ③ 熱帯熱マラリアは経胎盤感染がまれに報告されるが、垂直感染を起こす代表的病原体としては挙げられないため適切でない。
- ④ 正しい。トキソプラズマは妊娠中の母体初感染で経胎盤移行し、先天性トキソプラズマ症を起こす代表的な原虫である。
- ⑤ 腟トリコモナス症は性行為による接触感染が主な感染経路の原虫感染症であり、経胎盤垂直感染は起こさない疾患である。
📋 まとめの表を見る:寄生虫・原虫の感染経路の分類
第60回 午前9(臨床検査総論)
末梢血のGiemsa染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA009.6fcdc908c6.jpg

- ①熱帯熱マラリア
- ②三日熱マラリア
- ③四日熱マラリア
- ④卵形マラリア
- ⑤鎌状赤血球症
正答: ①熱帯熱マラリア
ポイント
図はGiemsa染色の末梢血標本である。熱帯熱マラリアは赤血球内に小型の輪状体(リング状栄養体)が多数みられ、1個の赤血球に複数の原虫が寄生する多重感染を示し、感染赤血球の腫大がなく、末梢血に三日月形(バナナ状)の生殖母体がみられるのが特徴である。熱帯熱では成熟した栄養体や分裂体は末梢血にほとんど出現せず毛細血管に隔離されるため、末梢血ではリング体と生殖母体が中心となる。マラリアの種の鑑別は原虫形態と赤血球変化に基づく。●熱帯熱の所見=小型リング・多重感染・赤血球腫大なし・三日月形生殖母体で重症化しやすい。●三日熱/卵形=感染赤血球が腫大しシュフナー斑点を伴う。●四日熱=バンド型栄養体を示し赤血球腫大はない。原虫形態と赤血球の変化に着目して種を鑑別する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。小型リング状栄養体の多重感染と赤血球腫大を伴わない点、三日月形生殖母体は熱帯熱マラリアに特徴的な所見である。
- ② 三日熱マラリアは感染赤血球が腫大しシュフナー斑点を伴い、アメーバ状栄養体を示すため本図の所見とは合致しない。
- ③ 四日熱マラリアはバンド型栄養体を示し赤血球の腫大はなく72時間周期の発熱をとるため、本図の特徴とは異なる。
- ④ 卵形マラリアは感染赤血球が腫大し辺縁が房状(フリンジ状)となりシュフナー斑点を伴うため、本図とは合致しない。
- ⑤ 鎌状赤血球症は鎌状に変形した赤血球がみられる遺伝性ヘモグロビン異常症であり、マラリア原虫の寄生像とは異なる。
📋 まとめの表を見る:マラリア原虫の種類別 形態・潜伏期・発熱間隔の比較
マラリア原虫はハマダラカに刺されてスポロゾイトが体内に侵入し、まず肝細胞内で増殖(赤外型)した後、赤血球内で輪状体→アメーバ体→分裂体と発育する(無性生殖)。
第60回 午前10(臨床検査総論)
糞便中に検出された虫卵の写真を別に示す。この寄生虫の中間宿主はどれか。2つ選べ。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA010.6e66fea3ba.jpg

- ①ウグイ
- ②カワニナ
- ③マメタニシ
- ④モクズガニ
- ⑤ミヤイリガイ
正答: ②カワニナ・④モクズガニ
ポイント
図は約85 μmの大型で小蓋をもつ黄褐色の虫卵で、ウェステルマン肺吸虫の虫卵に一致する。第1中間宿主はカワニナ、第2中間宿主はモクズガニやサワガニであり、人はこれらのカニを生や不完全な加熱で食べることで感染する。吸虫類は2つの中間宿主を介する複雑な生活史をとるため、寄生虫はその中間宿主の組合せによって特定・分類される。虫卵形態とあわせて宿主を押さえることが鑑別の要点となる。●肺吸虫=第1中間宿主カワニナ・第2中間宿主モクズガニやサワガニ。●肝吸虫=第1中間宿主マメタニシ・第2中間宿主は淡水魚(コイ科)。●横川吸虫=第1中間宿主カワニナ・第2中間宿主アユなどの淡水魚。●日本住血吸虫=中間宿主はミヤイリガイのみで第2中間宿主をもたない。生活史の宿主に着目して判断する。
選択肢ごとの解説
- ① ウグイは淡水魚で横川吸虫など他の吸虫の第2中間宿主となる魚だが、肺吸虫の中間宿主ではないため該当しない。
- ② 正しい。カワニナは肺吸虫の第1中間宿主となる淡水産巻貝であり、生活史の起点としてセルカリアを供給する宿主である。
- ③ マメタニシは肝吸虫の第1中間宿主となる淡水産巻貝であり、肺吸虫の中間宿主には該当しないため誤りである。
- ④ 正しい。モクズガニは肺吸虫の第2中間宿主であり、メタセルカリアを宿しこれを生食することで人へ感染が成立する。
- ⑤ ミヤイリガイは日本住血吸虫の中間宿主となる巻貝であり、肺吸虫の生活史とは関係しないため該当しない宿主である。
📋 まとめの表を見る:主な寄生虫と中間宿主・終宿主
アニサキス・広東住血線虫・顎口虫・Manson裂頭条虫はヒトが本来の宿主でないため幼虫のまま体内を移行し(幼虫移行症)、皮膚爬行症や好酸球性髄膜炎などを起こす。
第60回 午前11(臨床検査医学総論)
一次救命処置はどれか。
- ①導尿
- ②胸骨圧迫
- ③気管挿管
- ④心電図装着
- ⑤静脈路確保
正答: ②胸骨圧迫
ポイント
一次救命処置(BLS)は特別な器具や薬剤を用いず誰でも実施できる救命行為で、胸骨圧迫・気道確保・人工呼吸・AED(自動体外式除細動器)による除細動が含まれる。胸骨圧迫はその中核であり、心停止時に脳と心臓への血流を維持して救命率を高める役割をもつ。これに対し医療従事者が器具・薬剤を用いて行う高度な処置は二次救命処置(ALS)に分類される。両者は実施に器具や薬剤を要するかどうかで区別される。●一次救命処置(BLS)に含まれるもの=胸骨圧迫・人工呼吸・気道確保・AEDによる除細動で、市民でも実施できる。●二次救命処置(ALS)に含まれるもの=気管挿管・静脈路確保・薬剤投与・心電図モニタなどで、医療従事者が器具と薬剤を用いて行う。器具・薬剤の要否でBLSとALSを区別して判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 導尿は尿道へカテーテルを挿入する排尿管理の手技であり、心停止に対する一次救命処置には含まれない医療行為である。
- ② 正しい。胸骨圧迫は器具を要さず誰でも実施でき、心停止時に血流を維持する一次救命処置の中核となる手技である。
- ③ 気管挿管は喉頭鏡などの器具と熟練した技術を要する処置であり、二次救命処置(ALS)に分類される医療行為である。
- ④ 心電図装着はモニタ機器を必要とする医療行為であり、波形評価を行う二次救命処置(ALS)の範疇に含まれる処置である。
- ⑤ 静脈路確保は薬剤投与の経路を確保するための処置であり、医療従事者が行う二次救命処置(ALS)に含まれる行為である。
第60回 午前12(臨床検査医学総論)
拘束性換気障害を呈するのはどれか。
- ①肺気腫
- ②間質性肺炎
- ③気管支喘息
- ④細気管支炎
- ⑤慢性気管支炎
正答: ②間質性肺炎
ポイント
拘束性換気障害は肺が膨らみにくくなることが本態で、スパイロメトリで肺活量(%VC)が80%未満に低下する。間質性肺炎は肺胞壁の線維化により肺が硬く伸展しにくくなるため、肺が十分に拡張できず拘束性を呈する。一方、気道が狭くなって息を吐き出しにくくなる病態は閉塞性換気障害となり、1秒率が低下する。両者は%VCと1秒率のいずれが低下するかで分類されるため、障害の本態が肺の拡張不全か気道閉塞かを見極めることが鑑別の要点となる。●拘束性(%VC低下)を呈する疾患=間質性肺炎・肺線維症・胸郭変形・神経筋疾患・肺切除後。●閉塞性(1秒率低下)を呈する疾患=肺気腫・慢性気管支炎・気管支喘息・細気管支炎などCOPD系の気道閉塞性疾患。スパイロメトリの所見で両者を分類して判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 肺気腫は肺胞破壊と気道の閉塞により肺が過膨張し1秒率が低下する閉塞性換気障害であり、拘束性には該当しない。
- ② 正しい。間質性肺炎は肺胞壁の線維化で肺の伸展性が低下し%VCが下がるため、拘束性換気障害を呈する疾患である。
- ③ 気管支喘息は気道平滑筋の収縮や粘膜浮腫による気道狭窄で1秒率が低下する閉塞性換気障害であり該当しない。
- ④ 細気管支炎は末梢気道の炎症と狭窄により気流制限をきたす閉塞性換気障害であり、拘束性には該当しない疾患である。
- ⑤ 慢性気管支炎は気道分泌の増加と狭窄により1秒率が低下する閉塞性換気障害であり、拘束性換気障害には該当しない。
第60回 午前13(臨床検査医学総論)
疾患と増加する血中ホルモンの組合せで正しいのはどれか。
- ①尿崩症―プロラクチン
- ②橋本病―副甲状腺ホルモン
- ③先端巨大症―バソプレッシン
- ④Addison病―アルドステロン
- ⑤Cushing病―コルチゾール
正答: ⑤Cushing病―コルチゾール
ポイント
Cushing病は下垂体腺腫からのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)過剰分泌により副腎皮質が持続的に刺激され、コルチゾールが増加する病態である。その結果、中心性肥満・満月様顔貌・高血糖・高血圧などの特徴的な症候を呈する。内分泌疾患は、原因となるホルモンが過剰か不足かによって症状と検査値が決まるため、疾患ごとに上昇・低下するホルモンの対応を押さえることが組合せ問題の鍵となる。●ホルモンが増加(過剰)する疾患=Cushing病でコルチゾール、先端巨大症で成長ホルモン、原発性アルドステロン症でアルドステロン。●ホルモンが低下(不足)する疾患=Addison病でコルチゾールとアルドステロン低下、中枢性尿崩症でバソプレッシン低下。疾患でどのホルモンが上昇または低下するかの対応関係で判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 尿崩症はバソプレッシン(抗利尿ホルモン)の分泌または作用不足が本態であり、プロラクチン増加との組合せは誤りである。
- ② 橋本病は甲状腺ホルモンが低下する自己免疫性甲状腺炎であり、副甲状腺ホルモンの増加との組合せは病態として誤り。
- ③ 先端巨大症は下垂体腺腫による成長ホルモンの過剰分泌が本態であり、バソプレッシン増加との組合せは誤った対応である。
- ④ Addison病は副腎皮質機能低下症でアルドステロンやコルチゾールが低下するため、アルドステロン増加との組合せは誤り。
- ⑤ 正しい。Cushing病はACTH過剰分泌により副腎皮質が刺激されコルチゾールが増加するため、この組合せは正しい。
📋 まとめの表を見る:疾患と血中ホルモン濃度の変化
橋本病でカルシトニンは特異的に変化しない。カルシトニン上昇は甲状腺髄様癌でみられる。
第60回 午前14(臨床検査医学総論)
ビタミンとその欠乏症の組合せで誤っているのはどれか。
- ①ビタミンA ―夜盲症
- ②ビタミンB₁ ―脚気
- ③ビタミンB₆ ―巨赤芽球性貧血
- ④ビタミンC ―壊血病
- ⑤ビタミンD ―くる病
正答: ③ビタミンB₆ ―巨赤芽球性貧血
ポイント
巨赤芽球性貧血を起こすのはビタミンB₁₂と葉酸の欠乏であり、これらはDNA合成に必須のためその欠乏で赤芽球の核成熟が障害され大型の赤芽球が出現する。ビタミンB₆欠乏は鉄芽球性貧血や皮膚炎・末梢神経障害を起こすため、ビタミンB₆と巨赤芽球性貧血の組合せは誤りである。各ビタミンの欠乏症は固有であり、組合せの正誤は欠乏症の病態と照合して判断する。●主なビタミン欠乏症=Aで夜盲症、B1で脚気とWernicke脳症、B2で口角炎、B6で皮膚炎と末梢神経障害、Cで壊血病、Dでくる病と骨軟化症、Kで出血傾向。●巨赤芽球性貧血の原因=ビタミンB₁₂・葉酸の欠乏でDNA合成が障害される。これらの対応に照らして組合せの正誤を判断する。
選択肢ごとの解説
- ① ビタミンA欠乏は網膜のロドプシン合成障害により夜盲症を起こすため、この組合せは正しく誤りには該当しない。
- ② ビタミンB₁欠乏は糖代謝障害により脚気や心不全、Wernicke脳症を起こすため、この組合せは正しく誤りではない。
- ③ 誤り。巨赤芽球性貧血はビタミンB₁₂・葉酸欠乏で起こり、ビタミンB₆欠乏は鉄芽球性貧血や皮膚炎を起こすため組合せが誤り。
- ④ ビタミンC欠乏はコラーゲン合成障害により壊血病を起こすため、この組合せは正しく誤りには該当しない記述である。
- ⑤ ビタミンD欠乏は小児でくる病、成人で骨軟化症を起こすため、ビタミンDとくる病の組合せは正しく誤りではない。
📋 まとめの表を見る:ビタミンと主な欠乏症
巨赤芽球性貧血の原因はビタミンB12・葉酸のいずれの欠乏でも生じる。脚気(ビタミンB1欠乏)とペラグラ(ナイアシン欠乏)、悪性貧血(ビタミンB12欠乏)を取り違えないよう注意する。
第60回 午前15(臨床検査医学総論)
患者の血清を4 ℃で一晩放置したところ、上層にクリーム層を認め、下層は混濁していた。該当するWHO脂質異常症タイプ分類はどれか。
正答: ⑤Ⅴ型
ポイント
患者血清を4℃で一晩静置し、上層にクリーム層(比重の小さいカイロミクロンの浮上)を認め、かつ下層も混濁(VLDLの増加)を呈するのはⅤ型脂質異常症で、カイロミクロンとVLDLがともに増加する病型である。静置試験ではリポ蛋白の比重差により、大きく軽いカイロミクロンが上層に浮きクリーム層を形成し、VLDLは全体の混濁として現れる。この層構造の所見からリポ蛋白の増加パターンを推定し病型を判別できる。●WHO(Fredrickson)分類=Ⅰ型はカイロミクロン増加で上層クリーム・下層清明。●Ⅱa型はLDL増加で血清は透明、Ⅱb型はLDLに加えVLDLも増加するため血清は混濁しうる。●Ⅳ型はVLDL増加で全体に混濁。●Ⅴ型はカイロミクロンとVLDLがともに増加し上層クリーム・下層混濁となる。静置試験の層所見で病型を判別する。
選択肢ごとの解説
- ① Ⅰ型はカイロミクロンのみ増加し上層にクリーム層を形成するが、下層は清明で混濁しないため本所見には合致しない。
- ② Ⅱb型はLDLとVLDLが増加して血清は混濁するが、カイロミクロンによる上層クリーム層は形成されないため該当しない。
- ③ Ⅲ型はIDL(レムナント)が増加し血清は全体に混濁するが、上層のクリーム層は典型的でないため本所見には合わない。
- ④ Ⅳ型はVLDL増加により血清全体が混濁するが、上層のクリーム層は形成されないため本所見の上層クリームに合致しない。
- ⑤ 正しい。Ⅴ型はカイロミクロンとVLDLがともに増加し、上層クリーム層と下層混濁の両方を呈するため本所見に合致する。
第60回 午前16(臨床生理学)
心筋の興奮伝導速度が最も速いのはどれか。
- ①心室筋
- ②心房筋
- ③房室結節
- ④ヒス〈His〉束
- ⑤プルキンエ〈Purkinje〉線維
正答: ⑤プルキンエ〈Purkinje〉線維
ポイント
心臓の刺激伝導系のうちプルキンエ線維は伝導速度が最も速く(約2~4 m/s)、心室全体へ興奮をほぼ同時に伝えて同期した収縮を可能にする。この高速伝導により左右心室がそろって収縮し、効率的な拍出が得られる。刺激伝導系は部位ごとに伝導速度が大きく異なり、その速度差が心臓の協調的なポンプ機能を支えている。●伝導が速い部位=プルキンエ線維とヒス束(His束)で、心室内を急速に伝導し効率的な収縮を生む。●伝導が遅い部位=房室結節(約0.05 m/s)で、心房から心室への伝導を意図的に遅延させ、心房収縮が完了してから心室が収縮するよう時間差を作る。固有心筋である心房筋・心室筋は約1 m/sと中間の速度で伝導する。部位ごとの伝導速度の違いで判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 心室筋は固有心筋で伝導速度は約1 m/sと中間程度であり、刺激伝導系のプルキンエ線維より遅いため最速ではない。
- ② 心房筋も固有心筋で伝導速度は約1 m/s前後の中間程度であり、刺激伝導系の特殊心筋より遅いため最速ではない。
- ③ 房室結節は刺激伝導系の中で伝導速度が最も遅く、心房から心室への伝導を遅延させる役割を担う部位である。
- ④ ヒス束は速く伝導するが、最も速いのはその下流に分布するプルキンエ線維であるため、ヒス束は最速とはいえない。
- ⑤ 正しい。プルキンエ線維は約2~4 m/sと刺激伝導系で最も速く、心室全体へ興奮を同期して伝え収縮を効率化する。
第60回 午前17(臨床生理学)
心電図を別に示す。所見で正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA017.e4a818a0b9.jpg

- ①WPW症候群
- ②心室期外収縮
- ③洞房ブロック
- ④左脚ブロック
- ⑤ペースメーカー調律
正答: ④左脚ブロック
ポイント
図は左脚ブロックの心電図である。左脚ブロックでは左脚を介した伝導が途絶え、左室への興奮が右脚経由で遅れて伝わるため、QRS幅が0.12秒以上に延長する。波形ではV5・V6でM字型(ノッチを伴う幅広R波)、V1でrSまたはQS型を示すのが特徴である。心電図の異常波形は、伝導系のどこが障害されたかによってパターンが定まるため、QRS幅と各誘導の形を組み合わせて鑑別する。●脚ブロックの所見=QRS幅0.12秒以上に延長し、左脚ブロックはV5・V6でM字型でI・aVLで幅広R、右脚ブロックはV1でrSR'型のM字波形を示す。●その他の興奮伝導異常=WPW症候群はデルタ波とPQ間隔短縮を示す。QRS幅と各誘導のパターンに着目して波形を鑑別する。
選択肢ごとの解説
- ① WPW症候群はケント束による早期興奮でデルタ波とPQ間隔短縮を示すのが特徴であり、本図の幅広QRS所見とは異なる。
- ② 心室期外収縮は先行P波を伴わない幅広QRSが早期に単発で出現する所見であり、持続的な波形パターンとは異なる。
- ③ 洞房ブロックは洞結節からの興奮伝導が間欠的に欠落しP波ごと脱落する所見であり、本図のQRS幅延長とは異なる。
- ④ 正しい。QRS幅の0.12秒以上への延長とV5・V6のM字型、V1のrS型は左脚ブロックに特徴的な心電図所見である。
- ⑤ ペースメーカー調律はQRS直前にスパイク波(ペーシングスパイク)がみられるのが特徴であり、本図の所見とは異なる。
📋 まとめの表を見る:不整脈・心筋梗塞の心電図所見
第60回 午前18(臨床生理学)
心電図で正しいのはどれか。
- ①Ⅰ誘導は単極誘導である。
- ②健常成人の移行帯はV6にある。
- ③QT時間は心拍数の影響を受ける。
- ④高カリウム血症ではU波が増高する。
- ⑤電気軸が+130°の場合、左軸偏位である。
正答: ③QT時間は心拍数の影響を受ける。
ポイント
QT時間は心室の脱分極の開始から再分極の終了までの時間を反映し、心拍数が速いほど短く遅いほど長くなる。このため心拍数の影響を補正した補正QT(QTc)が評価に用いられ、延長は致死性不整脈のリスクとなる。心電図の各指標は誘導法・電解質・電気軸などの定義に基づいて読むため、それぞれの基本を押さえることが正誤判断の前提となる。●心電図の誘導=双極肢誘導(I・II・III)、単極肢誘導(aVR・aVL・aVF)、胸部誘導は単極誘導で、移行帯は通常V3・V4にある。●電解質と波形=高カリウム血症でテント状T波、低カリウム血症でU波増高。●電気軸=成人では一般に−30°〜+90°を正常範囲とし、−30°より左方向への偏位を左軸偏位、+90°を超える右方向への偏位を右軸偏位とする。各指標の定義に照らして正誤を判断する。
選択肢ごとの解説
- ① I誘導は左右の手の電位差を測定する双極(標準肢)誘導であり、単極誘導であるという記述は定義に反するため誤りである。
- ② 健常成人の移行帯は通常V3・V4にあり、R波とS波の高さがほぼ等しくなる位置で、V6にあるという記述は誤りである。
- ③ 正しい。QT時間は心拍数に依存し速いほど短く遅いほど長くなるため、心拍数で補正した補正QTが用いられる。
- ④ 高カリウム血症ではテント状(先鋭化した)T波が特徴であり、U波の増高は低カリウム血症でみられるため誤りである。
- ⑤ 電気軸+130°は右軸偏位であり、左軸偏位ではない。成人では一般に−30°〜+90°を正常範囲とし、左軸偏位は−30°より左方向への偏位をいう。
第60回 午前19(臨床生理学)
最大または強制努力呼出が不要な呼吸機能検査の指標はどれか。
- ①肺活量〈VC〉
- ②ピークフロー〈PEF〉
- ③フローボリューム曲線
- ④1回呼吸法による肺拡散能〈DLCO〉
- ⑤Heガス希釈法による機能的残気量〈FRC〉
正答: ⑤Heガス希釈法による機能的残気量〈FRC〉
ポイント
Heガス希釈法による機能的残気量(FRC)の測定は、安静換気下で既知濃度のヘリウムガスが肺内で平衡に達することを利用し、希釈度から残気を含む肺気量を算出する方法で、最大吸気や強制努力呼出を必要としない。残気量はスパイロメトリで直接吐き出すことができないため、ガス希釈法や体プレチスモグラフといった間接法で測定される。各検査が努力呼出を要するかどうかは、その測定原理から判断できる。●努力呼出が必要な検査=肺活量(VC)・努力肺活量・ピークフロー(PEF)・フローボリューム曲線・1秒量で、いずれも最大努力での呼出を要する。●努力呼出が不要な検査=Heガス希釈法やボディプレチスモグラフによる機能的残気量測定。DLCO(肺拡散能)は1回呼吸法で深吸気と一定の息こらえを要する。測定原理に着目して要否を判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 肺活量〈VC〉は最大吸気位から最大呼気位まで吐き切って測定するため、最大または強制努力呼出を必要とする指標である。
- ② ピークフロー〈PEF〉は最大努力呼出時に得られる最大呼気流速であり、強制努力呼出を必須とする指標であるため該当しない。
- ③ フローボリューム曲線は努力呼出による流量と肺気量の関係を描く検査であり、強制努力呼出を必要とするため該当しない。
- ④ 1回呼吸法による肺拡散能〈DLCO〉は最大吸気と一定時間の息こらえを要する検査であり、努力を伴うため該当しない。
- ⑤ 正しい。Heガス希釈法によるFRC測定は安静換気下でガスを平衡させて行うため、最大吸気や強制努力呼出を要さない。
第60回 午前20(臨床生理学)
全自動血液ガス分析装置による動脈血ガス分析について適切なのはどれか。2つ選べ。
- ①混入した気泡は測定前に除去する。
- ②39 ℃の発熱患者の検体では温度補正が必要である。
- ③血液が入った注射器は採取直後に撹拌してはいけない。
- ④動脈血酸素飽和度〈SaO₂〉は電極法により直接測定される。
- ⑤室温保存にて酸素分圧の測定値は毎分約10 Torr程度上昇する。
正答: ①混入した気泡は測定前に除去する。・②39 ℃の発熱患者の検体では温度補正が必要である。
ポイント
動脈血ガス分析では、混入した気泡は大気と血液の間でガスがやり取りされ酸素・二酸化炭素分圧を変化させて誤差を生むため、測定前に必ず除去する。また患者体温が標準の37℃と異なる場合、ガスの溶解度や分圧には温度依存性があるため、実際の体温に合わせた温度補正を行って評価する。分析の精度は採取から測定までの前処理と保存条件に大きく左右される。●正確な測定の条件=気泡の除去・空気に触れない嫌気的採取・速やかな測定(保存温度は採血器材の材質と測定までの時間に応じて選択)・患者体温に合わせた温度補正。●主な誤差要因=気泡混入で酸素分圧が上昇、室温での放置では赤血球の代謝により酸素が消費され酸素分圧は低下し二酸化炭素分圧は上昇する。前処理と保存条件を整えて精度を保つ。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。混入した気泡は血液中の酸素・二酸化炭素分圧を変化させ誤差の原因となるため、測定前に必ず除去する必要がある。
- ② 正しい。患者体温が標準の37℃と異なる発熱患者ではガス分圧の温度依存性により、体温に合わせた温度補正が必要である。
- ③ 採血後は凝固防止のため速やかに転倒混和すべきであり、採取直後に撹拌してはいけないという記述は適切でなく誤りである。
- ④ 誤り。酸素飽和度は血液ガス値から計算する方式と、COオキシメータで光学的に測定する方式がある。電極法で直接測定する値ではない。
- ⑤ 室温放置では赤血球の代謝により酸素分圧はむしろ低下するため、毎分約10 Torr上昇するという記述は誤りである。
📋 まとめの表を見る:動脈血ガス分析:検体の取扱いと保存の注意点
検体は代謝活性をもつ血球を含むため、短時間でも値が変化する。白血球数が著しく多い検体では変化がより速い。
第60回 午前21(臨床生理学)
終夜睡眠ポリグラフィに関する記載で正しいのはどれか。
- ①睡眠ステージ4では急速眼球運動がみられる。
- ②睡眠ステージ1ではδ波が1エポックの50%以上を占める。
- ③閉塞型睡眠時無呼吸症候群では胸壁と腹壁の奇異性運動がみられる。
- ④経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉が90%以下になったら検査を中止する。
- ⑤脳波上の覚醒〈arousal〉は睡眠時無呼吸症候群の重症度評価から除外する。
正答: ③閉塞型睡眠時無呼吸症候群では胸壁と腹壁の奇異性運動がみられる。
ポイント
閉塞型睡眠時無呼吸症候群では、上気道が閉塞しても呼吸を続けようとする呼吸努力(横隔膜・呼吸筋の運動)が持続するため、空気が入らないまま胸壁と腹壁が逆方向に動く奇異性(シーソー)運動がみられる。これは呼吸努力そのものが消失する中枢型無呼吸との重要な鑑別点となる。終夜睡眠ポリグラフィでは脳波・眼球運動・呼吸・酸素飽和度などを総合して評価する。●睡眠ステージ=REM睡眠で急速眼球運動が出現し、ステージ3・4(徐波睡眠)でδ波が優勢となる。●無呼吸の型=閉塞型は呼吸努力ありで奇異性運動を伴い、中枢型は呼吸努力が消失する。重症度は無呼吸低呼吸指数(AHI)で評価する。各所見の対応関係に照らして正誤を判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 急速眼球運動はREM睡眠でみられる現象であり、徐波睡眠であるステージ4ではみられないため記述は誤りである。
- ② δ波が1エポックの50%以上を占めるのはステージ3・4(徐波睡眠)の特徴であり、ステージ1の所見ではないため誤り。
- ③ 正しい。閉塞型睡眠時無呼吸症候群では呼吸努力が持続するため胸壁と腹壁の奇異性(シーソー)運動がみられる。
- ④ SpO₂が90%以下になっても検査は中止せず記録を継続し、低酸素の程度は重症度評価に用いるため中止の記述は誤り。
- ⑤ 脳波上の覚醒(arousal)は睡眠の分断を反映し重症度評価の重要な要素であるため、評価から除外するという記述は誤り。
📋 まとめの表を見る:睡眠時無呼吸症候群〈SAS〉の病型分類
無呼吸出現時には(病型によらず)動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉が低下する。
第60回 午前22(臨床生理学)
右利きの人の言語野が存在するのはどれか。
- ①左前頭葉
- ②右前頭葉
- ③左後頭葉
- ④右後頭葉
- ⑤右頭頂葉
正答: ①左前頭葉
ポイント
右利きの人ではほぼ全例で言語野が左半球(優位半球)に存在し、運動性言語中枢であるブローカ野は左前頭葉下部に、感覚性言語中枢であるウェルニッケ野は左側頭葉後部にある。左利きでも多くは左半球が優位半球となる。大脳は部位ごとに担う機能が定まっており(機能局在)、言語・視覚・体性感覚などはそれぞれ特定の領域が処理するため、機能局在に基づいて部位を判断する。●優位半球(右利きでは左)=言語野が局在し、ブローカ野は左前頭葉、ウェルニッケ野は左側頭葉にある。●劣位半球(右利きでは右)=空間認知・図形認識・音楽などに関わる。●その他の領域=後頭葉は視覚野、頭頂葉は体性感覚野が局在する。大脳の機能局在に基づいて言語中枢の存在部位を判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。右利きの人の言語野(ブローカ野)は優位半球である左半球の前頭葉下部に存在するため、この部位が正しい。
- ② 右前頭葉は右利きでは劣位半球側にあたり、言語野は通常存在しないため、言語野の局在部位としては誤りである。
- ③ 左後頭葉は視覚情報を処理する視覚野が存在する部位であり、言語野が局在する部位ではないため誤りである。
- ④ 右後頭葉も視覚情報を処理する視覚野の部位であり、言語の中枢が局在する部位ではないため誤った選択である。
- ⑤ 右頭頂葉は空間認知などに関わる劣位半球側の部位であり、言語野が局在する部位ではないため該当しないものである。
第60回 午前23(臨床生理学)
脳波測定時の賦活法として行われないのはどれか。
正答: ①運動
ポイント
脳波の賦活法は安静時には現れにくい潜在的な異常波を誘発し検出する目的で行われ、開閉眼・過呼吸・光刺激(閃光刺激)・睡眠(睡眠賦活)が標準的に用いられる。これらは脳の活動状態を変化させて異常波を引き出す手技であり、運動は脳波の賦活法としては行われない。各賦活法は誘発を狙う異常波の種類が異なるため、標準的手技に含まれるか否かでこの種の設問を判断する。●脳波の賦活法=開閉眼・過呼吸(約3分間)・光刺激・睡眠・断眠(睡眠遮断)が標準的手技として行われる。●各賦活法の目的=過呼吸は欠神発作の3Hz棘徐波を誘発し、光刺激は光過敏性反応を誘発し、睡眠賦活は睡眠中に出現する異常波の検出を目的とする。標準的手技に含まれるか否かで判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。運動は脳波の賦活法として標準的には行われない手技であり、本設問で問われている該当する答えである。
- ② 睡眠(睡眠賦活)は睡眠中に出現する異常波を誘発・検出する目的で行われる標準的な脳波賦活法であるため行われる。
- ③ 開閉眼はα波の抑制や反応性、異常を評価するために行われる基本的な脳波賦活法であるため標準的に実施される。
- ④ 過呼吸は約3分間行い欠神発作の3Hz棘徐波などの異常波を誘発する目的の標準的な脳波賦活法であるため行われる。
- ⑤ 光刺激(閃光刺激)は光過敏性反応など光誘発性の異常波を検出するために行われる標準的な脳波賦活法である。
第60回 午前24(臨床生理学)
末梢神経をインパルスが伝導する際の特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①長い距離では減衰する。
- ②太い神経ほど伝導速度は遅くなる。
- ③新生児では成人より伝導速度は速い。
- ④温度が低下すると伝導速度は遅くなる。
- ⑤電気刺激した部位から両方向に伝導する。
正答: ④温度が低下すると伝導速度は遅くなる。・⑤電気刺激した部位から両方向に伝導する。
ポイント
末梢神経の興奮伝導は温度が低下すると速度が遅くなる(低温で減速)。これはイオンチャネルの開閉などの反応が低温で鈍るためである。また神経を電気刺激すると、刺激部位から興奮が順行・逆行の両方向に伝わる(両側性伝導)。活動電位は全か無かの法則に従い減衰せず一定の大きさで伝わるため、伝導の速さは線維の太さ・髄鞘の有無・温度といった条件で決まる。●伝導速度を上げる要因=太い線維・有髄線維(跳躍伝導)・体温が高いことで、いずれも伝導を速める。●伝導速度を下げる要因=低温・新生児(髄鞘が未発達で遅い)・脱髄で、いずれも伝導を遅らせる。刺激点からは両方向へ伝導する。線維径・髄鞘・温度の条件に着目して伝導の性質を判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 活動電位は全か無かの法則に従い大きさを保ったまま伝わるため、長い距離でも減衰しない点でこの記述は誤りである。
- ② 末梢神経は太い線維ほど伝導速度が速くなるため、太い神経ほど遅くなるという記述は事実に反し誤りである。
- ③ 新生児は髄鞘の発達が不十分で跳躍伝導が未熟なため伝導速度は成人より遅く、速いという記述は誤りである。
- ④ 正しい。末梢神経の伝導は温度が低下すると速度が遅くなるため、低温で伝導速度が遅くなるこの記述は正しい。
- ⑤ 正しい。神経を電気刺激すると興奮は刺激部位から順行・逆行の両方向に伝導するため、この記述は正しい。
第60回 午前25(臨床生理学)
超音波検査で体表面にゼリーを塗る目的はどれか。
- ①探触子を介した皮膚の感染を防ぐ。
- ②探触子と皮膚の間の空気を排除する。
- ③探触子と皮膚の間で超音波を増幅する。
- ④皮膚表面における電気的雑音を低減する。
- ⑤超音波照射に伴う皮膚の温度上昇を抑える。
正答: ②探触子と皮膚の間の空気を排除する。
ポイント
超音波は空気中をほとんど透過できず、探触子と皮膚の間に空気層があると音響インピーダンスの差が大きい界面で大部分が反射してしまい、体内へ伝わらない。ゼリーは両者の間の空気を排除して音響インピーダンスを整合させ、超音波を体内へ効率よく伝える音響カップリングの役割を持つ。検査の画質は超音波が体内へ確実に伝わることを前提に、周波数やゲインなどの条件で決まる。●超音波の伝達の条件=ゼリーによる空気の除去(音響カップリング)と適切な周波数の選択。●画質に関わる要素=周波数(高いほど分解能が良く深達度は低い)・ゲイン・フォーカスの調整。ゼリーは超音波を増幅したり皮膚の温度上昇を抑えたりするものではなく、あくまで伝達を確保する媒体である。
選択肢ごとの解説
- ① ゼリーの目的は感染防止ではなく、探触子と皮膚の間の空気を排除して超音波を伝えるための音響的媒体としての役割である。
- ② 正しい。ゼリーは探触子と皮膚の間に介在する空気を排除し音響インピーダンスを整合させて、超音波を効率よく体内へ伝える。
- ③ ゼリーは超音波を増幅する作用を持つものではなく、間の空気を除いて反射を防ぎ伝達を確保するためのものであり誤り。
- ④ 超音波検査は心電図と異なり電気的雑音とは無関係であり、ゼリーは雑音低減を目的とするものではないため誤りである。
- ⑤ ゼリーの目的は皮膚の温度上昇の抑制ではなく、音響インピーダンスの整合による超音波の伝達確保であるため誤りである。
第60回 午前26(臨床生理学)
健常成人の腹部超音波検査において、心窩部走査で観察できないのはどれか。
正答: ③脾臓
ポイント
心窩部走査は腹部正中の心窩部に探触子を当て、肝左葉を音響窓として利用しその後方の構造を観察する基本的な走査法である。この走査では肝左葉、その背側に位置する膵体部・膵尾部、脊椎前面を縦走する腹部大動脈と下大静脈、さらに腹腔動脈や上腸間膜動脈の起始部などが描出される。脾臓は左季肋部の背側深部に位置するため、心窩部走査では介在する肝実質や胃内ガスに音波が遮られて描出することができず、左肋間走査や左肋弓下走査といった別の走査法を用いて初めて観察できる臓器である。●心窩部走査で観察できる=肝左葉・膵体尾部・腹部大動脈・下大静脈・腹腔動脈・上腸間膜動脈。●専用の走査が必要な臓器=脾臓(左肋間走査)・腎臓(側腹部走査)・胆嚢(右肋弓下走査)。●走査の基本=呼吸を調整させて音響窓を確保し、消化管ガスを避けて描出することが重要である。
選択肢ごとの解説
- ① 肝左葉は心窩部の音響窓そのものとなり、心窩部走査で最もよく描出される代表的な実質臓器であるため誤りである。
- ② 膵体部・膵尾部は肝左葉のすぐ背側に位置し、心窩部走査で脾静脈を指標として観察できる臓器であるため誤りである。
- ③ 正しい。脾臓は左季肋部の背側深部にあり、心窩部走査では肝や胃ガスに遮られて描出できず左肋間走査を要する臓器である。
- ④ 下大静脈は腹部正中のやや右で脊椎前面を縦走し、心窩部走査の縦断像で内腔とともに明瞭に描出されるため誤りである。
- ⑤ 腹部大動脈は脊椎の前面を縦走する血管で、心窩部走査の縦断像において拍動を伴いながら明瞭に描出されるため誤りである。
第60回 午前27(臨床生理学)
超音波検査における観察部位と用いる探触子の組合せで正しいのはどれか。
- ①乳腺―コンベックス型
- ②甲状腺―セクタ型
- ③頸動脈―リニア型
- ④前立腺―アーク型
- ⑤下肢静脈―ラジアル型
正答: ③頸動脈―リニア型
ポイント
超音波探触子は観察部位の深さと必要とする視野の形状に応じて使い分ける必要がある。リニア型は振動子を直線状に配列し近距離の広い長方形視野を高い分解能で得られるため、頸動脈・甲状腺・乳腺・下肢静脈などの浅在組織の観察に適する。セクタ型は小さな接触面から扇形に広い深部視野を得られるため肋間からの心臓観察に用い、コンベックス型は扇形に近い広い視野で深部まで描出でき腹部臓器の観察に用いる。観察対象の位置と利用できる音響窓の大きさが探触子選択の基準となる。●浅在・体表=リニア型(頸動脈・甲状腺・乳腺・下肢静脈)。●深部で狭い音響窓=セクタ型(心臓)。●腹部の広い視野=コンベックス型。●経直腸・経腟=専用の腔内用探触子を用いる。●周波数の原則=高周波ほど分解能は高いが減衰が大きく深部に届かないため、浅在部は高周波、深部は低周波を用いる。
選択肢ごとの解説
- ① 乳腺は体表に近い浅在組織でありリニア型が適する。コンベックス型は腹部など深部臓器の観察に用いるため誤りである。
- ② 甲状腺は体表に近い臓器でありリニア型が適する。セクタ型は心臓など深部を狭い窓から観察するのに用いるため誤りである。
- ③ 正しい。頸動脈は浅在で高い分解能が必要なため、近距離の長方形高分解能視野が得られるリニア型探触子を用いる。
- ④ 前立腺は経直腸的に観察する臓器で、アーク型ではなく経直腸用の腔内探触子を用いて描出するため本記述は誤りである。
- ⑤ 下肢静脈は浅在でリニア型が適し、ラジアル型は血管内など管腔の内部を走査する特殊な探触子であるため本記述は誤りである。
📋 まとめの表を見る:超音波探触子(プローブ)の走査方式と主な用途
第60回 午前28(臨床生理学)
MRI検査で使用するのはどれか。
- ①微小気泡
- ②ヨード剤
- ③硫酸バリウム
- ④テクネチウム
- ⑤ガドリニウム化合物
正答: ⑤ガドリニウム化合物
ポイント
MRI造影剤として最も広く用いられているのはガドリニウム化合物である。ガドリニウムは多数の不対電子をもち強い常磁性を示すため、周囲に存在する水素原子核の縦緩和時間(T1)を短縮させ、造影された部位をT1強調像で高信号に描出することができる。生体ではキレート化合物として毒性を抑えたうえで静注され、腎機能が低下した患者では腎性全身性線維症のリスクに留意する必要がある。画像検査の種類ごとに用いる造影剤や薬剤の種類はまったく異なっている。●MRI=ガドリニウム化合物(常磁性によるT1短縮)。●超音波=微小気泡(マイクロバブル)。●X線・CT=ヨード造影剤、消化管造影は硫酸バリウム。●核医学(シンチグラフィ)=テクネチウム99mなどの放射性核種。●MRIの原理=強磁場中の水素核の磁気共鳴を利用し、緩和時間の差を信号強度として画像化する。
選択肢ごとの解説
- ① 微小気泡は超音波検査の造影剤であり、血流からのドプラ信号や輝度を増強する目的で静注して用いる物質であるため誤りである。
- ② ヨード剤はX線・CTの血管造影や尿路造影に用いる陽性造影剤であり、MRIの造影剤としては使用しないため本記述は誤りである。
- ③ 硫酸バリウムは消化管X線造影に用いる水に不溶の陽性造影剤であり、MRIの造影剤には用いられない物質であるため誤りである。
- ④ テクネチウムは核医学のシンチグラフィで用いる放射性核種であり、MRIの造影剤として用いる元素ではないため本記述は誤りである。
- ⑤ 正しい。ガドリニウム化合物は強い常磁性により水素核のT1を短縮させ造影部を高信号に描出するMRI造影剤である。
第60回 午前29(臨床化学)
ミトコンドリアの機能はどれか。
- ①糖新生
- ②DNA複製
- ③蛋白合成
- ④嫌気的解糖
- ⑤酸化的リン酸化
正答: ⑤酸化的リン酸化
ポイント
ミトコンドリアは二重の膜をもつ細胞内小器官で、内膜に電子伝達系とF1F0-ATP合成酵素を備え、酸化的リン酸化によってATPを産生する好気的エネルギー産生の中心的な場である。クエン酸回路や脂肪酸のβ酸化で生じたNADHやFADH2の電子を電子伝達系を介して酸素へ受け渡し、その過程で内膜の内外に形成されたプロトン濃度勾配を利用してADPからATPを合成する。それぞれの代謝反応は細胞内の固有の区画で営まれている。●ミトコンドリア=酸化的リン酸化・クエン酸回路・脂肪酸のβ酸化。●細胞質ゾル=嫌気的解糖・糖新生(一部)・脂肪酸合成。●核=DNA複製・転写。●リボソーム(粗面小胞体)=蛋白合成。●ミトコンドリアの特徴=独自のDNAをもち母性遺伝し、好気的代謝が盛んな心筋・肝・骨格筋などに多く分布する小器官である。
選択肢ごとの解説
- ① 糖新生の主要な反応は細胞質ゾルで進行し(一部はミトコンドリアが関与)、主に肝臓と腎臓で営まれる代謝であるため誤りである。
- ② DNA複製は核内で行われる遺伝情報の複製過程であり、ミトコンドリア本来の主たる機能ではない反応であるため誤りである。
- ③ 蛋白合成はリボソーム(粗面小胞体)で行われる過程であり、ミトコンドリアの主たる機能ではない反応であるため誤りである。
- ④ 嫌気的解糖は細胞質ゾルで進行し酸素を必要としない反応で、ミトコンドリアの外で営まれる代謝であるため本記述は誤りである。
- ⑤ 正しい。酸化的リン酸化はミトコンドリア内膜で電子伝達系を介して酸素を用いATPを産生する反応であり、本来の機能である。
第60回 午前30(臨床化学)
1 mol/lの硫酸水溶液を1 l作製するのに必要な硫酸(比重1.84、含量95%)の量はどれか。ただし、硫酸の分子量は98とする。
- ①28 ml
- ②49 ml
- ③56 ml
- ④98 ml
- ⑤112 ml
正答: ③56 ml
ポイント
1 L中に1 molの硫酸を溶かすには、分子量が98であることから98 gの純粋な硫酸が必要である。用いる濃硫酸は比重1.84、含量95%であるから、1 mLあたりに含まれる純硫酸は1.84×0.95=1.748 gとなる。したがって必要量98 gを得るのに要する濃硫酸の体積は98÷1.748=約56 mLと算出される。これは比重と含量から純物質の質量を補正したうえで所要体積を逆算する、溶液調製における基本的な計算手順である。●計算の手順=必要質量(モル数×分子量)を求め、比重と純度を用いて実際の体積へ換算する。●関連事項=規定度は当量に基づき、2価の酸である硫酸は1 mol/L=2 Eq/Lに相当する。●調製時の注意=強い発熱を伴うため、必ず酸を水に少量ずつ加える。●検算=得られた56 mL中の純硫酸量56×1.748≒98 gが分子量98すなわち1 molと一致する。
選択肢ごとの解説
- ① 28 mLでは純硫酸が約49 gにとどまり、1 molに必要な98 gのおよそ半量にしか満たないため、量が不足し誤りである。
- ② 49 mLでは純硫酸が約86 gとなり、1 molに必要な98 gにわずかに達しないため、量が不足しており誤りである。
- ③ 正しい。98÷(1.84×0.95)≒56 mLで純硫酸98 g=1 molが得られ、調製に必要な所要体積として妥当である。
- ④ 98 mLでは純硫酸が約171 gとなり、1 molに必要な98 gを大きく超過してしまうため、量が過剰であり誤りである。
- ⑤ 112 mLでは純硫酸が約196 gとなり、これはほぼ2 mol分に相当する過剰量となってしまうため適切ではなく誤りである。
第60回 午前31(臨床化学)
血糖値が上昇すると低下するのはどれか。
- ①HbA1c
- ②インスリン
- ③C-ペプチド
- ④グリコアルブミン
- ⑤1,5-アンヒドログルシトール〈1,5-AG〉
正答: ⑤1,5-アンヒドログルシトール〈1,5-AG〉
ポイント
1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)は食物由来の糖の一種で、通常は腎尿細管でほぼ完全に再吸収されるため血中濃度は安定して一定に保たれている。しかし血糖が上昇して尿糖が排泄される状態になると、構造のよく似た1,5-AGの尿細管における再吸収が尿中のグルコースによって競合的に阻害され、再吸収されずに尿中へ失われる。その結果、血糖が上昇した時にはむしろ血中1,5-AG濃度が低下し、数日単位という比較的短期の血糖コントロールの状態を鋭敏に反映する指標として用いられる。●血糖上昇で上昇=HbA1c・グリコアルブミン(糖化蛋白)・インスリン・C-ペプチド(分泌亢進による)。●血糖上昇で低下=1,5-AG(尿中への喪失による)。●反映期間=HbA1cは約1〜2か月、グリコアルブミンは約2週間、1,5-AGは数日。
選択肢ごとの解説
- ① HbA1cは赤血球ヘモグロビンの非酵素的な糖化産物であり、血糖が上昇すると産生が増えて値は上昇するため誤りである。
- ② インスリンは血糖の上昇に応じて膵β細胞からの分泌が亢進するため、血中濃度はむしろ上昇する方向に動くため誤りである。
- ③ C-ペプチドはプロインスリン由来でインスリンと等モルに放出されるため、血糖上昇時には上昇する指標であり誤りである。
- ④ グリコアルブミンは血清アルブミンの糖化産物であり、血糖が上昇すると増加する短期コントロール指標であるため誤りである。
- ⑤ 正しい。1,5-AGは尿糖排泄時に尿細管での再吸収が阻害され尿中へ失われるため、血糖上昇時には血中濃度が低下する。
第60回 午前32(臨床化学)
酵素を用いた終点分析法で正しいのはどれか。
- ①盲検が不要である。
- ②Kmが大きい酵素を使用する。
- ③Vmaxが大きい酵素を使用する。
- ④化学的分析法に比べ特異性が劣る。
- ⑤初速度分析法に比べ測定精度が劣る。
正答: ③Vmaxが大きい酵素を使用する。
ポイント
終点分析法(エンドポイント法)は、酵素反応が平衡に達するか基質が完全に消費され尽くした一定の終点における吸光度の変化を測定して被検成分量を求める方法である。一定時間内に基質を反応し切る必要があるため、最大反応速度Vmaxの大きい酵素を用いるのが適切である。一方Kmは基質親和性の指標であり、Kmが小さい酵素ほど低い基質濃度でも反応が進みやすい。また酵素を利用した分析法は、化学的分析法と比較して基質に対する特異性に優れるという利点をもっている。●終点分析法=反応完結後の総変化量を測定し、Vmaxの大きい酵素を用いる。●初速度(レート)分析法=反応初期の速度を測定し、酵素活性の測定に用いる。●酵素法の利点=化学的分析法より特異性が高く、共存物質の干渉を受けにくい。●Kmの意味=最大速度の半分を与える基質濃度であり、小さいほど基質親和性が高いことを示す。
選択肢ごとの解説
- ① 終点分析法でも試料盲検や試薬盲検による補正は必要であり、盲検が不要であるとはいえないため、本記述は誤りである。
- ② Kmが大きいと基質への親和性が低く低基質濃度域で反応が進みにくく、短時間で完結させたい終点法には不利であり誤りである。
- ③ 正しい。終点分析法では一定時間内に基質を速やかに消費し切る必要があるため、最大反応速度Vmaxの大きい酵素を用いる。
- ④ 酵素法は基質に対する特異性が高く、化学的分析法に比べて特異性はむしろ優れるため、劣るとする本記述は誤りである。
- ⑤ 終点分析法は反応の完結まで待って測定するため測定精度はむしろ安定しており、初速度法に劣るとはいえないため誤りである。
第60回 午前33(臨床化学)
アニオンギャップに占める最大の陰イオン(アニオン)はどれか。
正答: ⑤アルブミン
ポイント
アニオンギャップは血漿の主要な陽イオンであるナトリウムから、主要な陰イオンであるクロールと重炭酸を差し引いた値で、ルーチン検査では測定されない陰イオンの総量を反映する指標である。生理的な状態において、これら未測定の陰イオンのうち最も大きな割合を占めるのは、負の電荷を帯びた血漿蛋白すなわちアルブミンである。したがって低アルブミン血症ではアニオンギャップが見かけ上低下するため、その分を加味する補正計算が必要となる。●アニオンギャップの主成分=アルブミン(最大)・リン酸・硫酸・有機酸など。●増加する病態=乳酸(乳酸アシドーシス)・ケトン体(ケトアシドーシス)・腎不全(リン酸・硫酸の貯留)。●補正=アルブミン1 g/dL低下ごとに約2.5を加算する。●基準=アニオンギャップの正常値は概ね12±2 mEq/Lで、開大時は未測定陰イオンの増加を示す。
選択肢ごとの解説
- ① 乳酸は乳酸アシドーシスでアニオンギャップを増加させる陰イオンであるが、生理的に最大を占める成分ではないため誤りである。
- ② 硫酸は腎不全などで貯留して増加しうる陰イオンであるが、生理的にアニオンギャップの最大を占めるわけではないため誤りである。
- ③ リン酸は未測定陰イオンの一部を構成するが、その量はアルブミンには及ばず、最大の成分とはいえない物質であるため誤りである。
- ④ ケトン体は糖尿病性ケトアシドーシスでアニオンギャップを増やすが、生理的な最大成分ではない陰イオンであるため誤りである。
- ⑤ 正しい。負の電荷をもつ血漿蛋白であるアルブミンが、アニオンギャップの最大を占める未測定陰イオンの成分である。
第60回 午前34(臨床化学)
ヘキソキナーゼ・グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ〈HK-G6PD〉法によるグルコース測定について誤っているのはどれか。
- ①NADPHの増加を測定する。
- ②HKはMg²⁺により活性化される。
- ③日本臨床化学会〈JSCC〉の勧告法である。
- ④アスコルビン酸高値による影響が小さい。
- ⑤HKはD-グルコースのβ型とのみ反応する。
正答: ⑤HKはD-グルコースのβ型とのみ反応する。
ポイント
HK-G6PD法は、ヘキソキナーゼ(HK)がグルコースをグルコース6リン酸へと変換し、続いてG6PDがこれを酸化する際に生じるNADPHの増加を波長340 nmで測定するグルコース定量法である。HKはD-グルコースのα型とβ型の両方のアノマーを基質とするため、特定の一型のみと反応するわけではない。本法は日本臨床化学会(JSCC)の勧告法に採用されており、基質特異性が高く、アスコルビン酸などの還元性物質による影響も受けにくいという特長をもつ。●HK-G6PD法の特徴=NADPH生成を測定し、JSCC勧告法であり、高い特異性をもつ。●HKの補因子=Mg²⁺(ATPと複合体を形成して活性化する)。●干渉が小さい=アスコルビン酸・ビリルビン・軽度の溶血の影響が少ない。●測定波長=NADPHの吸収極大である340 nmの吸光度増加を追跡する。
選択肢ごとの解説
- ① HK-G6PD法はNADPHの増加を波長340 nmで測定する反応系であり、記述自体は正しい。本問は誤った記述を選ぶため、この選択肢は正答ではない。
- ② HKはMg²⁺を補因子としてATPと複合体を形成し活性化される酵素であり、記述自体は正しい。本問は誤った記述を選ぶため、この選択肢は正答ではない。
- ③ HK-G6PD法は日本臨床化学会(JSCC)の勧告法として位置づけられており、記述自体は正しい。本問は誤った記述を選ぶため、この選択肢は正答ではない。
- ④ 本法はアスコルビン酸などの還元性物質による影響が小さいことが利点であり、記述自体は正しい。本問は誤った記述を選ぶため、この選択肢は正答ではない。
- ⑤ 誤り。HKはD-グルコースのα型とβ型の両アノマーと反応するため、β型のみと反応するとする本記述が誤っている。
📋 まとめの表を見る:生化学的呈色反応系の比較(Trinder反応とNAD(P)H系)
Trinder反応は色原体の組合せで分析感度を調整できるが、還元性物質による妨害を受けやすい。分光光度法における共存物質影響試験の代表的対象はヘモグロビン(溶血)とアスコルビン酸である。
第60回 午前35(臨床化学)
空腹時血清中の総コレステロール475 mg/dl、トリグリセリド75 mg/dl、HDL-コレステロール60 mg/dlのとき、Friedewaldの計算式から求めたLDL-コレステロール値はどれか。
- ①265 mg/dl
- ②340 mg/dl
- ③390 mg/dl
- ④400 mg/dl
- ⑤415 mg/dl
正答: ④400 mg/dl
ポイント
Friedewaldの計算式はLDL-コレステロール=総コレステロール−HDL-コレステロール−トリグリセリド÷5によって求める(単位はmg/dL)。このうちトリグリセリド÷5はVLDL-コレステロールの近似値に相当する。本問の数値を当てはめると475−60−75÷5=475−60−15=400 mg/dLと算出される。ただしトリグリセリドが400 mg/dL以上の高値であったりⅢ型高脂血症であったりする場合には推定が不正確となるため、本式は適用できない点に注意する。●Friedewald式=LDL-C=総コレステロール−HDL-C−TG/5(mg/dL単位で計算する)。●適用の限界=TGが400 mg/dL以上やⅢ型高脂血症では適用できない。●代替法=直接測定法やnon-HDLコレステロールの利用が有用である。
選択肢ごとの解説
- ① 265 mg/dlはTG/5の減算を誤るなどの計算違いによって生じる値であり、Friedewald式から得られる正しい結果ではない。
- ② 340 mg/dlは計算過程における減算の誤りによって生じる値であり、本式から得られる正しいLDL-C値ではないため誤りである。
- ③ 390 mg/dlは差し引く数値を取り違える誤りによって生じる値であり、正しいLDL-C値ではないため本記述は誤りである。
- ④ 正しい。475−60−(75÷5=15)=400 mg/dlがFriedewaldの計算式から求めたLDL-コレステロール値である。
- ⑤ 415 mg/dlはVLDL分(TG/5)の減算が不足するなどして生じる過大評価の値であり、正しくないため本記述は誤りである。
第60回 午前36(臨床化学)
急性炎症型の血清蛋白電気泳動像の特徴に関与するのはどれか。2つ選べ。
- ①C4
- ②CRP
- ③フィブリノゲン
- ④ハプトグロビン
- ⑤α₁-アンチトリプシン
正答: ④ハプトグロビン・⑤α₁-アンチトリプシン
ポイント
急性炎症では肝臓における産生が増加する急性相蛋白が血中で増え、血清蛋白電気泳動ではα₁分画とα₂分画の上昇として現れる。このうちα₁分画ではα₁-アンチトリプシン、α₂分画ではハプトグロビンが代表的な急性相蛋白であり、これらの増加が急性炎症型の泳動像の特徴を形づくっている。一方でアルブミンは陰性急性相蛋白として低下する。●急性相反応で増加する(陽性)=CRP・フィブリノゲン・ハプトグロビン・α₁-アンチトリプシン・補体成分。●電気泳動で上昇する分画=α₁分画(α₁-アンチトリプシン)・α₂分画(ハプトグロビン)。●減少する(陰性急性相蛋白)=アルブミン・トランスフェリン。●泳動像の特徴=アルブミン分画の減少とα1・α₂分画の増加が組み合わさり、急性炎症型の特徴的なパターンを形成する。●CRPの意義=急性相反応を鋭敏に反映し、別途定量して炎症の評価に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① C4は補体成分で炎症時に増加しうるが、血清蛋白電気泳動の急性炎症型像を特徴づける代表的成分とまではいえないため誤りである。
- ② CRPは代表的な急性相蛋白であるが、通常の血清蛋白電気泳動では独立した分画として明瞭には現れない物質であるため誤りである。
- ③ フィブリノゲンは血漿に存在する凝固因子であり、凝固で除かれた血清の電気泳動像には反映されない蛋白であるため誤りである。
- ④ 正しい。ハプトグロビンはα₂分画に泳動される急性相蛋白であり、急性炎症型の泳動像の特徴形成に関与する成分である。
- ⑤ 正しい。α₁-アンチトリプシンはα₁分画に泳動される急性相蛋白であり、急性炎症型の泳動像の特徴形成に関与する成分である。
📋 まとめの表を見る:急性相蛋白(APR)の変化パターンと血清蛋白電気泳動分画
急性炎症型の血清蛋白電気泳動像は、アルブミン分画の減少とα1・α2分画の増加が特徴。
第60回 午前37(臨床化学)
血清フェリチン濃度が低下するのはどれか。
- ①溶血性貧血
- ②鉄欠乏性貧血
- ③関節リウマチ
- ④血球貧食症候群
- ⑤慢性骨髄性白血病
正答: ②鉄欠乏性貧血
ポイント
血清フェリチンは体内における貯蔵鉄の量を反映する指標であり、貯蔵鉄が枯渇する鉄欠乏性貧血では低下する。フェリチンは同時に急性相蛋白でもあるため、炎症・感染・自己免疫疾患・悪性腫瘍・組織破壊などの病態では貯蔵鉄の量とは無関係に上昇する。したがって低下を示すのは原則として鉄欠乏のみであり、各種貧血の鑑別に有用な指標となる。●フェリチンが低下する=鉄欠乏性貧血(貯蔵鉄の枯渇による)。●フェリチンが上昇する=炎症・感染(急性相反応)・血球貪食症候群・悪性腫瘍・鉄過剰症・溶血や肝障害による細胞からの逸脱。●鉄欠乏の典型像=血清鉄の低下+総鉄結合能(TIBC)の上昇+フェリチンの低下。●注意点=鉄欠乏に炎症が併存するとフェリチンが見かけ上正常化するため、解釈には炎症の有無を考慮する。●役割=フェリチンは鉄を貯蔵する蛋白で、過剰な遊離鉄による酸化障害から細胞を守る。
選択肢ごとの解説
- ① 溶血性貧血では破壊された赤血球に由来する鉄が再利用・蓄積されるため、フェリチンはむしろ上昇する傾向を示すため誤りである。
- ② 正しい。鉄欠乏性貧血では体内の貯蔵鉄が枯渇するため、それを反映する血清フェリチン濃度が低下する病態である。
- ③ 関節リウマチは慢性炎症性疾患であり、急性相反応によって血清フェリチンはむしろ上昇する傾向を示すため、本記述は誤りである。
- ④ 血球貪食症候群ではマクロファージの活性化に伴って著明な高フェリチン血症をきたすことが特徴的であるため誤りである。
- ⑤ 慢性骨髄性白血病などの腫瘍性疾患では、細胞回転の亢進などにより血清フェリチンがむしろ上昇しうる病態であるため誤りである。
第60回 午前38(臨床化学)
血漿アンモニア窒素濃度A[μg/dl]を血漿アンモニア濃度B[μg/dl]に換算する数式はどれか。
- ①B=A
- ②B=A × 17/14
- ③B=A × 14/17
- ④B=A × 35/14
- ⑤B=A × 14/35
正答: ②B=A × 17/14
ポイント
アンモニア窒素濃度とは、アンモニア分子の中に含まれる窒素のみの質量によって表した値であり、アンモニア(NH₃)そのものの濃度へと換算するには分子量の比を乗じる必要がある。窒素の原子量は14、アンモニアの分子量は17であるから、アンモニア濃度B=アンモニア窒素濃度A×17/14と表すことができる。これは窒素を基準として表した値を、化合物そのものを基準とした値へ補正する典型的な換算操作である。●換算の原則=窒素濃度から化合物濃度へは(化合物の分子量÷窒素の原子量)を乗じる。●アンモニア=×17/14。●尿素窒素(BUN)から尿素=×60/28(尿素は窒素を2個もつため)。●逆向きの換算では分母と分子を入れ替える。●意義=アンモニアは肝で尿素に処理されるため、肝不全や門脈大循環シャントで血中濃度が上昇する。
選択肢ごとの解説
- ① B=Aでは窒素分のみの値のままであり、アンモニア分子全体への分子量による補正がなされていないため換算として誤りである。
- ② 正しい。アンモニアの分子量17と窒素の原子量14の比を乗じてB=A×17/14とするのが、正しい換算の数式である。
- ③ B=A×14/17は分子量の比を逆に用いた換算であり、アンモニア濃度をむしろ過小評価してしまうため本記述は誤りである。
- ④ B=A×35/14は分子量の比に基づかない不適切な係数を用いた式であり、正しい換算とはいえないため本記述は誤りである。
- ⑤ B=A×14/35もまた根拠のない係数を用いた式であり、分子量の比に基づく正しい換算とはいえないため本記述は誤りである。
第60回 午前39(臨床化学)
ヒト血清アミラーゼについて正しいのはどれか。
- ①Cl⁻により活性化する。
- ②Zn²⁺を含有する酵素である。
- ③アルブミンより分子量が大きい。
- ④2つのサブユニットからなる酵素である。
- ⑤デンプンの末端グルコースを水解する酵素(エキソ型)である。
正答: ①Cl⁻により活性化する。
ポイント
ヒト血清アミラーゼは、デンプンのα1,4グリコシド結合を分子の内部から加水分解するエンドアミラーゼであり、塩化物イオン(Cl⁻)とカルシウムを必要とし、特に塩化物イオンによって活性化される金属酵素である。膵型(P型)と唾液腺型(S型)の二つのアイソザイムが存在し、その分子量は約5万でアルブミンの約6.6万より小さいため、糸球体を容易に通過して尿中へ排泄される。●アミラーゼの特徴=Cl⁻で活性化され、構造にCaを含み、内部の結合を切るエンドアミラーゼである。●アイソザイム=膵型(P型)と唾液腺型(S型)。●分子量=約5万で糸球体を濾過され尿中へ排泄される。●亜鉛(Zn)を含有する酵素ではない点に注意する。●臨床的意義=急性膵炎や唾液腺疾患で血中・尿中の活性が上昇し、アイソザイム分析で由来を鑑別できる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。ヒト血清アミラーゼは塩化物イオン(Cl⁻)によって活性化される金属酵素であり、本記述は正しい内容である。
- ② アミラーゼは構造にカルシウムを必要とするが、亜鉛(Zn²⁺)を含有する酵素ではないため、本記述は誤った内容である。
- ③ アミラーゼの分子量は約5万でアルブミンの約6.6万よりも小さく、大きいとする本記述は誤った内容であるため正しくない。
- ④ アミラーゼは単量体の酵素であり、2つのサブユニットからなるとする本記述は構造に関して誤った内容であるため正しくない。
- ⑤ アミラーゼは分子内部のα1,4結合を切るエンドアミラーゼで、末端を切るエキソ型とする本記述は誤った内容である。
📋 まとめの表を見る:血清アミラーゼの性質とアイソザイム(P型・S型)比較
第60回 午前40(臨床化学)
妊娠後期に上昇するのはどれか。
正答: ①ALP
ポイント
妊娠後期になると、胎盤において産生される耐熱性のALPアイソザイムである胎盤型が血中に加わるため、血清ALP活性が生理的に上昇する。これは肝型や骨型のALPが増加するためではなく、妊娠に特有の胎盤型アイソザイムが既存の活性に上乗せされるためであり、分娩後には速やかに正常化する。一方でALT・AST・γ-GT・LDといった酵素は、妊娠そのものによって特異的に上昇することはない。●妊娠後期に上昇する=ALP(胎盤型アイソザイムの産生による)。●ALPのアイソザイム=肝型・骨型・小腸型・胎盤型。●他の酵素の妊娠時の変化=AST・ALT・γ-GTは原則として変化せず、上昇する場合はむしろ肝障害や妊娠合併症を疑う。●ALP上昇の他の要因=小児の骨成長期や骨疾患・閉塞性黄疸でも上昇するため、由来はアイソザイムで鑑別する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。妊娠後期には胎盤で産生される胎盤型アイソザイムが既存の活性に加わるため、ALPが生理的に上昇する。
- ② ALTは肝細胞に多く含まれる逸脱酵素であり、妊娠そのものによって生理的に上昇する酵素ではないため、本記述は誤りである。
- ③ ASTは肝・心・骨格筋に由来する逸脱酵素であり、妊娠による生理的な上昇は通常みられないため、本記述は誤りである。
- ④ γ-GTは胆道系や肝に由来する酵素であり、妊娠によって特異的に上昇する酵素ではないため、本記述は誤った内容である。
- ⑤ LDは全身の組織に広く分布する逸脱酵素であり、妊娠後期に特異的な上昇を示すわけではないため、本記述は誤りである。
第60回 午前41(臨床化学)
免疫抑制薬はどれか。2つ選べ。
- ①リドカイン
- ②テオフィリン
- ③タクロリムス
- ④シクロスポリン
- ⑤バンコマイシン
正答: ③タクロリムス・④シクロスポリン
ポイント
タクロリムスとシクロスポリンは、いずれもカルシニューリン阻害薬に分類される代表的な免疫抑制薬である。これらはTリンパ球の細胞内でカルシニューリンを阻害することによってインターロイキン2の産生を抑え、臓器移植後の拒絶反応の抑制や自己免疫疾患の治療に用いられる。有効域と中毒域が近接しているため、血中濃度モニタリング(TDM)の代表的な対象薬でもある。●免疫抑制薬(カルシニューリン阻害)=タクロリムス・シクロスポリン。●TDMの他の対象薬=抗不整脈薬(リドカイン)・気管支拡張薬(テオフィリン)・抗菌薬(バンコマイシン・アミノグリコシド)・抗てんかん薬。●TDMの意義=有効域が狭く中毒域に近い薬剤で血中濃度を測定し投与量を調整する。●採血の留意点=トラフ値(次回投与直前)での測定が基本で、採血時刻を一定にして評価する。
選択肢ごとの解説
- ① リドカインは抗不整脈薬および局所麻酔薬として用いられる薬剤であり、免疫抑制薬には分類されないため本記述は誤りである。
- ② テオフィリンは気管支拡張薬として気管支喘息などに用いられる薬剤であり、免疫抑制薬ではないため本記述は誤った内容である。
- ③ 正しい。タクロリムスはカルシニューリンの阻害により免疫を抑える免疫抑制薬であり、臓器移植後などに用いられる。
- ④ 正しい。シクロスポリンはカルシニューリンの阻害により免疫を抑える免疫抑制薬であり、臓器移植後などに用いられる。
- ⑤ バンコマイシンはグリコペプチド系の抗菌薬であり、免疫抑制薬には分類されない薬剤であるため、本記述は誤った内容である。
📋 まとめの表を見る:治療薬物モニタリング〈TDM〉の対象薬と検体の種類
ワルファリン(抗凝固薬)は血中濃度でなくPT-INRという薬効指標で管理するためTDMの対象としない。
第60回 午前42(臨床化学)
成長ホルモンの分泌を抑制するのはどれか。2つ選べ。
- ①アルギニン
- ②インスリン
- ③グルコース
- ④レボドパ〈L-dopa〉
- ⑤ソマトスタチン
正答: ③グルコース・⑤ソマトスタチン
ポイント
成長ホルモン(GH)の分泌は、視床下部から分泌されるGH放出ホルモンとソマトスタチンによって調節されており、このうちソマトスタチンはGHの分泌を直接的に抑制する。さらにグルコースの投与による高血糖もGHの分泌を抑制するため、ブドウ糖負荷試験は先端巨大症の診断における抑制試験として用いられる。これに対しアルギニン・インスリン誘発性低血糖・レボドパなどはGHの分泌を刺激する。●GH分泌を抑制する=ソマトスタチン・グルコース(高血糖)。●GH分泌を刺激する=アルギニン・インスリン低血糖・レボドパ(L-dopa)・睡眠・運動。●負荷試験=刺激試験はGH分泌不全の評価に、ブドウ糖抑制試験は先端巨大症の評価に用いる。●分泌の特性=GHは拍動的に分泌され夜間睡眠時や運動時に増加するため、単回測定では評価しにくい。
選択肢ごとの解説
- ① アルギニンはGHの分泌を刺激する物質でありGH分泌刺激試験に用いられるため、分泌を抑制するとする本記述は誤りである。
- ② インスリンは誘発した低血糖を介してGHの分泌を刺激する薬剤であり、分泌を抑制するわけではないため本記述は誤りである。
- ③ 正しい。グルコース投与による高血糖はGHの分泌を抑制し、ブドウ糖抑制試験として先端巨大症の診断に用いられる。
- ④ レボドパ(L-dopa)はドパミン系を介してGHの分泌を刺激する薬剤であり、抑制するとする本記述は誤った内容である。
- ⑤ 正しい。ソマトスタチンは視床下部に由来するホルモンであり、GHの分泌を直接的に抑制する作用をもつ調節因子である。
第60回 午前43(臨床化学)
心不全の指標として適切なのはどれか。
- ①AST
- ②BNP
- ③CK-MB
- ④トロポニンT
- ⑤ミオグロビン
正答: ②BNP
ポイント
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は、心室の筋が壁応力すなわち心室の伸展負荷の増大に応じて分泌するホルモンであり、心不全の重症度や治療効果を鋭敏に反映する優れた指標である。利尿作用、血管拡張作用、レニンアンジオテンシン系の抑制作用などをもつ。これに対しトロポニンTやCK-MBは心筋の傷害すなわち心筋梗塞を示すマーカーであり、心不全そのものの指標ではない。●心不全の指標=BNP・NT-proBNP(心室の伸展負荷に応じて分泌される)。●心筋傷害(梗塞)の指標=心筋トロポニンT/I・CK-MB・ミオグロビン(早期に上昇)。●ASTは特異性が低く、現在では心筋梗塞の診断には用いられない。●BNPの利用=心不全の診断・重症度評価・治療効果判定や予後予測に用いられる血液マーカーである。●補足=BNPは前駆体がNT-proBNPとBNPに分かれて血中に放出される。
選択肢ごとの解説
- ① ASTは心筋・肝・骨格筋に広く分布する逸脱酵素であり特異性が低く、心不全の指標としては適さない酵素であるため誤りである。
- ② 正しい。BNPは心室の筋が伸展負荷の増大に応じて分泌するホルモンであり、心不全の重症度を反映する適切な指標である。
- ③ CK-MBは心筋の傷害すなわち心筋梗塞を示すマーカーであり、心不全そのものの指標としては用いられない酵素であるため誤りである。
- ④ トロポニンTは心筋の壊死を反映する心筋傷害マーカーであり、心不全の直接的な指標とはならない蛋白であるため本記述は誤りである。
- ⑤ ミオグロビンは心筋や骨格筋の早期の傷害を反映するマーカーで特異性が低く、心不全の指標とはならない物質であるため誤りである。
第60回 午前44(臨床化学)
一本鎖cDNA合成に必要なのはどれか。2つ選べ。
- ①制限酵素
- ②鋳型DNA
- ③逆転写酵素
- ④DNAポリメラーゼ
- ⑤オリゴ(dT)プライマー
正答: ③逆転写酵素・⑤オリゴ(dT)プライマー
ポイント
一本鎖cDNAの合成は、鋳型となるmRNAから逆転写酵素すなわちRNA依存性DNAポリメラーゼが相補的なDNA鎖を伸長していく反応であり、その合成を開始するためには3'末端の遊離水酸基を提供するプライマーが必要である。真核生物のmRNAは3'末端にポリA配列をもっているため、これに相補的に結合するオリゴ(dT)プライマーが広く用いられる。●一本鎖cDNA合成に必須なもの=逆転写酵素・オリゴ(dT)プライマー(またはランダムプライマー)・鋳型mRNA・基質dNTP。●二本鎖化や増幅に用いる=DNAポリメラーゼ(PCRで使用する)。●制限酵素=DNAの特定配列を切断する酵素でありcDNA合成そのものには不要である。●応用=合成したcDNAはRT-PCRによる遺伝子発現解析やライブラリー作製に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 制限酵素はDNAの特定の塩基配列を認識して切断する酵素であり、一本鎖cDNAの合成には必要のない酵素であるため誤りである。
- ② 一本鎖cDNA合成の鋳型はmRNAであり、鋳型DNAは合成に必須の要素とはいえないため、正答には該当しない選択肢である。
- ③ 正しい。逆転写酵素はmRNAを鋳型として相補的なDNA鎖を合成する、一本鎖cDNA合成に必須の酵素である。
- ④ DNAポリメラーゼは二本鎖化やPCRでの増幅に働く酵素であり、一本鎖cDNAの合成そのものには必須ではない酵素である。
- ⑤ 正しい。オリゴ(dT)プライマーはmRNAのポリA尾部に結合し、cDNA合成の開始点となる必須の要素である。
第60回 午前45(病理組織細胞学)
中胚葉に由来するのはどれか。2つ選べ。
正答: ②骨格筋・③軟骨
ポイント
発生の過程では、三胚葉のうち中胚葉から骨・軟骨・骨格筋・心筋・血管・血液・腎・生殖腺・結合組織などの多様な組織が分化する。本問における骨格筋は中胚葉の体節に由来し、軟骨もまた中胚葉に由来するため、ともに中胚葉由来である。外胚葉からは表皮・神経系・眼の網膜や水晶体などが、内胚葉からは消化管・呼吸器・肝・膵の上皮や膀胱の上皮などが生じる。●中胚葉に由来する=骨・軟骨・骨格筋・心筋・血管・血液・腎・生殖腺・結合組織。●外胚葉に由来する=表皮・神経系・眼の網膜と水晶体・感覚器の上皮。●内胚葉に由来する=消化管・呼吸器・肝・膵・膀胱などの上皮。●発生の基本=受精卵から胞胚を経て三胚葉が形成され、各胚葉から特定の組織・器官が分化していく。●補足=心筋や血管・血液も中胚葉由来であり、間葉系組織の多くが中胚葉から生じる。
選択肢ごとの解説
- ① 眼球の網膜や水晶体は外胚葉に由来し中胚葉ではない(角膜実質や角膜内皮も神経堤〈外胚葉系〉に由来し、眼球で中胚葉由来なのは血管内皮など一部にとどまる)ため誤りである。
- ② 正しい。骨格筋は中胚葉の体節すなわち筋節から分化する組織であり、中胚葉に由来する代表的な構造である。
- ③ 正しい。軟骨は中胚葉から分化する支持組織であり、骨や結合組織とともに中胚葉に由来する間葉系の組織である。
- ④ 膀胱の内面を覆う移行上皮は内胚葉(尿生殖洞)に由来し、中胚葉に由来する構造ではないため、本記述は誤った内容である。
- ⑤ 皮膚の表皮は外胚葉に由来する上皮であり、中胚葉に由来する構造ではないため、正答には該当しない選択肢である。
第60回 午前46(病理組織細胞学)
H-E染色標本を別に示す。臓器はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA046.1014544a80.jpg

正答: ①気管
ポイント
提示されたH-E染色標本は気管の組織像であると判断される。気管壁は内腔側から順に、線毛と杯細胞をもつ多列線毛上皮の粘膜、その下の粘膜下組織、そして特徴的なC字(馬蹄)型の硝子軟骨が背側を欠いた形で配列し、軟骨を欠く後壁の部分は平滑筋すなわち気管筋によって補われている。本写真で同定の根拠となるのは多列線毛上皮と杯細胞である。C字型軟骨輪と後壁の気管筋は気管全体の構造として重要だが、この高倍率の視野には描出されていない。●気管の組織学的特徴=多列線毛上皮と杯細胞、C字型の硝子軟骨輪、後壁の平滑筋(気管筋)。●類似する管腔臓器の鑑別=食道は重層扁平上皮、結腸は単層円柱上皮と腺窩、皮膚は角化重層扁平上皮であり、いずれも軟骨輪をもたない点で区別される。●機能=線毛は粘液とともに異物を咽頭方向へ運ぶ粘液線毛輸送を担い、軟骨輪は気道の虚脱を防ぐ。●杯細胞=粘液を分泌して気道表面を保湿し、異物を捕捉する役割をもつ。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。内腔面の線毛と、核が異なる高さに並ぶ多列円柱上皮、杯細胞がみられ、選択肢では気管に合う。
- ② 結腸粘膜は単層円柱上皮で覆われ、杯細胞を含む直線的な腺窩が並ぶ。本像の多列線毛上皮とは異なる。
- ③ 食道の粘膜は非角化重層扁平上皮で覆われ、本像の多列線毛上皮とは異なる。
- ④ 皮膚の表皮は角化重層扁平上皮であり、本像の多列線毛上皮とは異なる。
- ⑤ 子宮内膜は単層円柱上皮と内膜腺をもつ。線毛細胞を含むことはあるが、本像のような多列線毛上皮ではない。
📋 まとめの表を見る:臓器・部位と被覆上皮の対応
内皮は血管・リンパ管、中皮は体腔(漿膜)の表面を被覆する単層扁平上皮で、局在により呼び分ける。肺胞の内面は中皮ではなく肺胞上皮(Ⅰ型・Ⅱ型肺胞上皮細胞)が覆う。
第60回 午前47(病理組織細胞学)
固定液の組成で正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①PLP固定液―過ヨウ素酸
- ②カルノア〈Carnoy〉液―メタノール
- ③緩衝ホルマリン―炭酸カルシウム
- ④ザンボニ〈Zamboni〉液―エタノール
- ⑤ブアン〈Bouin〉液―ピクリン酸
正答: ①PLP固定液―過ヨウ素酸・⑤ブアン〈Bouin〉液―ピクリン酸
ポイント
PLP固定液はパラホルムアルデヒド・リジン・過ヨウ素酸ナトリウムから構成される固定液で、糖質や細胞膜の抗原性の保持に優れており、その組成として過ヨウ素酸を含んでいる。一方ブアン液はピクリン酸・ホルマリン・酢酸の混合液であり、ピクリン酸を含み、消化管や内分泌組織の固定に適している。各固定液はその主成分によって適する用途が異なる。●固定液とその主成分=PLP(過ヨウ素酸ナトリウム)・ブアン(ピクリン酸)・カルノア(エタノール+クロロホルム+氷酢酸)・ザンボニ(パラホルムアルデヒド+ピクリン酸)。●用途=カルノアは核酸やグリコーゲンの保持に、ブアンは消化管や内分泌組織の固定に適する。●固定の目的=蛋白の凝固や架橋によって自己融解と腐敗を防ぎ、生体の構造を保持することにある。●ホルマリン=最も汎用される固定液で、組織を架橋して安定に保存する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。PLP固定液はパラホルムアルデヒド・リジン・過ヨウ素酸ナトリウムからなり、組成として過ヨウ素酸を含む。
- ② カルノア液はメタノールではなくエタノール・クロロホルム・氷酢酸から構成される固定液であるため、本記述は誤った内容である。
- ③ 緩衝ホルマリンはリン酸塩で緩衝した中性ホルマリンであり、炭酸カルシウムはその組成ではないため、本記述は誤りである。
- ④ ザンボニ液はパラホルムアルデヒドとピクリン酸からなる固定液であり、エタノールが主体ではないため、本記述は誤りである。
- ⑤ 正しい。ブアン液はピクリン酸・ホルマリン・酢酸からなる固定液であり、その組成としてピクリン酸を含んでいる。
第60回 午前48(病理組織細胞学)
慢性炎症の治癒過程で主体でないのはどれか。
- ①好中球
- ②リンパ球
- ③毛細血管
- ④線維芽細胞
- ⑤マクロファージ
正答: ①好中球
ポイント
慢性炎症の治癒すなわち修復の過程では、肉芽組織の形成とそれに続く線維化が主体となる。具体的には、線維芽細胞がコラーゲンを産生し、毛細血管が新生して血管新生が起こり、マクロファージやリンパ球が壊死物質を処理しながらサイトカインによって修復過程を調節して進行する。好中球は急性炎症の初期に最初に動員される主役の細胞であり、慢性炎症の治癒過程における主体ではない。●慢性炎症・修復の主体=マクロファージ・リンパ球・線維芽細胞・新生する毛細血管(これらが肉芽組織を構成する)。●急性炎症の主体=好中球(最初に動員される細胞)。●修復の転帰=肉芽組織の器質化と線維化による瘢痕の形成。●肉芽組織=新生毛細血管・線維芽細胞・炎症細胞からなり、損傷部を埋めて修復を進める組織である。●慢性炎症の特徴=組織破壊と修復が同時に進行し、単核球の浸潤が持続する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。好中球は急性炎症の初期に最初に動員される主役の細胞であり、慢性炎症の治癒過程の主体ではない細胞である。
- ② リンパ球は慢性炎症において持続的に組織へ浸潤し、免疫応答や修復の調節に関与する主体的な細胞であるため誤りである。
- ③ 毛細血管は新生して肉芽組織を構成し、酸素や栄養を供給することで修復を支える主体的な要素であるため、本記述は誤りである。
- ④ 線維芽細胞はコラーゲンを産生して線維化と瘢痕の形成を担う、修復過程における主体的な細胞であるため本記述は誤りである。
- ⑤ マクロファージは壊死物質の貪食処理とサイトカインの産生を通じて、慢性炎症と修復を主導する主体的な細胞であるため誤りである。
第60回 午前49(病理組織細胞学)
H-E染色標本を別に示す。診断として正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA049.826c2273a6.jpg

正答: ①腺癌
ポイント
提示されたH-E染色像は腺癌の所見を示していると判断される。腺癌は腺腔ないし腺管の構造を形成する悪性の上皮性腫瘍であり、不整な腺管、核の腫大、明瞭な核小体、細胞の極性の乱れを示し、しばしば粘液の産生を伴うとともに、周囲の間質への浸潤を呈する。腺上皮をもつ肺・胃・大腸・乳腺・膵などに発生する代表的な癌である。●腺癌の特徴=腺管や腺腔の形成、粘液の産生、周囲間質への浸潤。●他の悪性腫瘍の像との鑑別=扁平上皮癌は角化や細胞間橋、尿路上皮癌は移行上皮様の重層、骨肉腫は腫瘍性の類骨形成、血管肉腫は不整な血管腔の形成を示す。●腺癌の好発=肺・胃・大腸・乳腺・前立腺・膵などの腺上皮をもつ臓器に発生する。●補助診断=免疫染色や粘液染色が腺癌の同定に有用である。●悪性の所見=核異型・核分裂像・構造の異型・間質浸潤が悪性を示す共通の組織学的特徴である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。腺腔や腺管の構造を形成し、粘液の産生や周囲間質への浸潤を伴うこの悪性上皮性腫瘍の像は、腺癌の所見である。
- ② 骨肉腫は腫瘍細胞が類骨や骨基質を産生する間葉系の悪性腫瘍であり、腺管の構造は形成しないため、本記述は誤った内容である。
- ③ 血管肉腫は不整に吻合する血管腔を作る血管内皮由来の悪性腫瘍であり、腺管の構造を示さないため、本記述は誤った内容である。
- ④ 扁平上皮癌は角化や細胞間橋を示す悪性腫瘍であり、本来は明瞭な腺腔の形成を示さないため、腺癌とは区別される腫瘍である。
- ⑤ 尿路上皮癌は移行上皮に似た重層構造を示す悪性腫瘍であり、通常は明瞭な腺管の形成を示さないため、本記述は誤った内容である。
📋 まとめの表を見る:悪性腫瘍細胞にみられる核・細胞質の異型所見(総論)
良性・反応性細胞は核が円形で整い、クロマチンは細顆粒状で核小体は目立たない。
第60回 午前50(病理組織細胞学)
免疫組織化学染色で用いられる標識酵素はどれか。
- ①アミラーゼ
- ②エステラーゼ
- ③酸性ホスファターゼ
- ④ペルオキシダーゼ
- ⑤リパーゼ
正答: ④ペルオキシダーゼ
ポイント
免疫組織化学染色は、抗原抗体反応を利用し、酵素で標識した抗体に対して基質を反応させて発色させることにより、組織内に存在する抗原の局在を可視化する手法である。標識に用いる酵素として最も広く使われているのはペルオキシダーゼ、すなわち西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)であり、基質であるDABを酸化することで褐色の不溶性の沈着を生じる。このほかアルカリホスファターゼも標識酵素として用いられる。●免疫染色の標識酵素=ペルオキシダーゼ(HRP、基質DABで褐色に発色)・アルカリホスファターゼ(基質はNBT/BCIPなど)。●検出法=直接法・間接法・ABC(アビジン-ビオチン)法・ポリマー法。●標識の種類=酵素標識のほかに蛍光標識や金コロイド標識がある。●内因性酵素の対処=内因性ペルオキシダーゼは過酸化水素処理で阻止し、非特異反応を抑えてから検出する。
選択肢ごとの解説
- ① アミラーゼはデンプンを分解する消化酵素であり、免疫組織化学の標識酵素としては用いられないため、本記述は誤った内容である。
- ② エステラーゼは血球などの細胞化学染色に用いられる酵素であり、免疫染色の標識酵素ではないため、本記述は誤った内容である。
- ③ 酸性ホスファターゼは細胞化学的な酵素の検出に用いられる酵素であり、標準的な免疫標識酵素ではないため、本記述は誤りである。
- ④ 正しい。ペルオキシダーゼは基質DABを酸化して褐色に発色させる、免疫組織化学染色で最も汎用される標識酵素である。
- ⑤ リパーゼは脂質を分解する消化酵素であり、免疫組織化学の標識酵素としては用いられないため、本記述は誤った内容である。