第60回(2014) 臨床検査技師国家試験 午前1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版

第60回 午前1(臨床検査総論)

グルコースの検査に使用する血液はどれか。

正答: ⑤NaF, EDTA-2Na加血

ポイント
採血後も血球による解糖が続き、全血のまま放置するとグルコース値は経時的に低下する。NaFは解糖系酵素エノラーゼを阻害する解糖阻止剤、EDTA-2Naは主に抗凝固剤であり、本問では両者を含む採血管を選ぶ。ただしNaFの作用発現は遅く、採血後早期の解糖はEDTA併用だけでは十分抑えられないため、速やかな血漿分離が重要である。直ちに分離できない場合は適切な冷却と早期分離、または解糖を迅速に抑えるクエン酸緩衝液等を含む採血管を検査室の手順に従って使用する。●解糖阻止剤=NaF・モノヨード酢酸・マンノースで、いずれも解糖系の酵素反応を抑える。●抗凝固剤の用途別の違い=EDTAは血算、ヘパリンは血液ガスと生化学、クエン酸ナトリウムは凝固検査、シュウ酸塩は旧来の用法で目的に応じて使い分ける。

選択肢ごとの解説

第60回 午前2(臨床検査総論)

健常人の個体内生理的変動から求めた精密さの許容誤差限界(%)の小さい項目はどれか。2つ選べ。

正答: ③カリウム・④カルシウム

ポイント
個体内生理的変動が小さい項目ほど、それに見合う許容誤差限界も小さく設定され、検査にはより高い精密さが要求される。カリウムやカルシウムは生体の恒常性が厳密に保たれ日内・日間変動が小さいため、わずかな測定誤差でも基準値内外の判定や臨床判断に影響し、許容できる誤差限界は小さくなる。一方、鉄・トリグリセリド・CKは食事・運動・時間帯による生理的変動がもともと大きく、測定誤差が変動に埋もれるため許容幅は広い。●変動が小さく高い精密さが必要な項目=ナトリウム・カリウム・カルシウム・クロール・総蛋白などの電解質系で、恒常性が厳密に維持される。●変動が大きく許容幅が広い項目=鉄(日内変動大)・トリグリセリド(食事性)・CK(運動性)・ALTで、生活要因で大きく動く。恒常性の厳密さの程度で分類する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:許容誤差限界の考え方

項目内容
Tonksの式許容誤差限界(CV%)≒基準範囲の幅×1/4÷基準範囲の中央値×100
個体内変動が小さい項目カリウム、カルシウムなど(許容誤差限界も小さく設定される)

第60回 午前3(臨床検査総論)

感染性医療廃棄物でないのはどれか。

正答: ⑤オートクレーブ処理後のシャーレ

ポイント
感染性医療廃棄物とは、血液その他の体液が付着し感染のおそれがある廃棄物を指し、医療機関では他の廃棄物と分別して厳重に処理される。注射針などの鋭利物、血液付着物、検体に触れた採血管はいずれも感染性に分類される。一方、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)処理を済ませたシャーレは、滅菌により病原体が死滅し感染性が消失しているため、感染性廃棄物に該当しなくなる。判定の要点は感染源となる体液の付着の有無と、滅菌処理が済んでいるかどうかである。●感染性廃棄物に該当するもの=血液付着物(ガーゼ・手袋)・鋭利物(注射針・メス)・使用済み採血管・培養容器など。●非感染性化する処理=適切な滅菌・消毒等で感染性を失わせた後も、元の廃棄物の区分に従い、一般廃棄物又は産業廃棄物として処理する。感染性産業廃棄物が滅菌だけで一般廃棄物になるわけではない。処理の有無と付着状況で区別して判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前4(臨床検査総論)

尿がアルカリ性を示す原因はどれか。

正答: ⑤尿路感染

ポイント
尿は通常弱酸性(pH6前後)を示すが、尿路感染で尿素分解菌(プロテウスなどのウレアーゼ産生菌)が尿中の尿素をアンモニアへ分解すると、生じたアンモニアにより尿はアルカリ性に傾く。これに対し発熱・飢餓・糖尿病などは代謝性に酸(ケトン体など)を産生するため、尿は酸性側へ傾く。尿pHは食事内容や採取後の経過時間によっても変化するため、新鮮尿での評価が望ましい。●尿がアルカリ性に傾く要因=ウレアーゼ産生菌による尿路感染・嘔吐に伴う代謝性アルカローシス・植物性食中心の食事・採取後の長時間放置。●尿が酸性に傾く要因=飢餓やケトアシドーシス・発熱・糖尿病・激しい運動・動物性蛋白の多い食事。原因となる代謝の変化や細菌の作用に着目して判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前5(臨床検査総論)

寄生虫とその病態の組合せで正しいのはどれか。

正答: ③剛棘顎口虫―皮膚爬行症

ポイント
剛棘顎口虫は幼虫が人体内で皮下を移動し、線状に走行する発赤・腫脹(皮膚爬行症、creeping eruption)を起こす。人は本来の宿主ではなく幼虫が成虫になれずに移行するため、移動性の皮膚病変が生じる。寄生虫はそれぞれ寄生部位に応じた特徴的な病態をとるため、組合せは寄生部位と症状の対応で判断する。●幼虫移行に伴う病態=顎口虫類による皮膚爬行症や幼虫移行症で、幼虫が体内を移動して症状を起こす。●臓器に寄生する病態=多包条虫は肝臓に多包虫症(腫瘤・肝障害)、バンクロフト糸状虫はリンパ系に寄生して象皮症を起こす。●中枢神経の病態=広東住血線虫は好酸球性髄膜脳炎を起こす。寄生部位と病態の正しい対応関係に照らして組合せの正誤を判定する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な寄生虫と中間宿主・終宿主

寄生虫第一中間宿主第二中間宿主(ヒトの位置づけ)終宿主
肝吸虫マメタニシコイ科淡水魚(フナ・モツゴ等)ヒト・イヌ
横川吸虫カワニナアユ等の淡水魚ヒト
肝蛭ヒメモノアラガイ第二中間宿主なし。メタセルカリアが水草などに付着ヒト・ウシ等
宮崎肺吸虫ホラアナミジンニナサワガニヒト
Westerman肺吸虫カワニナサワガニ・モクズガニヒト
日本住血吸虫ミヤイリガイ(中間宿主はこれのみ)—ヒト
日本海裂頭条虫ケンミジンコサケ・マスヒト
無鉤条虫ウシ—ヒト
有鉤条虫ブタ—ヒト
多包条虫(エキノコックス)野ネズミ(エゾヤチネズミ等)(ヒトも中間宿主になりうる)キツネ・イヌ
単包条虫ヒツジ(ヒトも中間宿主になりうる)イヌ
アニサキスオキアミサバ・イカ(ヒトは非固有宿主=幼虫移行のみ)イルカ・クジラ
広東住血線虫アフリカマイマイ・ナメクジ第二中間宿主なし。カエル・エビなどは待機宿主(ヒトは非固有宿主)ネズミ
有棘顎口虫ケンミジンコドジョウなどの淡水魚・カエルなどの両生類(ヒトは非固有宿主)イヌ
Manson裂頭条虫ケンミジンコヘビ・カエル(ヒトは非固有宿主=待機宿主)イヌ・ネコ
マラリア原虫—ヒト(中間宿主)蚊(ハマダラカ)
トキソプラズマ—ヒト・ネズミ(中間宿主)ネコ
アニサキス・広東住血線虫・顎口虫・Manson裂頭条虫はヒトが本来の宿主でないため幼虫のまま体内を移行し(幼虫移行症)、皮膚爬行症や好酸球性髄膜炎などを起こす。

第60回 午前6(臨床検査総論)

健常成人の脳脊髄液の性状で正しいのはどれか。

正答: ④総蛋白は10~40 mg/dlである。

ポイント
健常成人の脳脊髄液は無色透明で、総蛋白は約10~40 mg/dlと血漿に比べて著しく低い。グルコースは血糖値の約2/3(おおむね50~80 mg/dl)、クロールは血清より高く約120 mmol/l前後を示し、フィブリノゲンをほとんど含まないためフィブリンは析出しない。これらは血液脳関門により大分子が制限されることを反映している。各項目の基準値と性状を血液と対比して理解することが判定の基本となる。●正常髄液の性状=無色透明・初圧70~180 mmH2O・細胞数5/μl以下・蛋白低値・糖は血糖の約2/3。●代表的な異常所見=化膿性髄膜炎で混濁と糖低下と多核球増加、くも膜下出血で血性とキサントクロミー、結核性髄膜炎で蛋白増加と糖低下とフィブリン析出。各項目の基準値に照らして性状の正誤を判定する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:髄液検査所見と疾患の鑑別(正常・出血・細菌性/結核性/真菌性/ウイルス性髄膜炎)

項目正常髄液出血細菌性髄膜炎結核性髄膜炎真菌性髄膜炎ウイルス性髄膜炎
色調・混濁水様無色透明赤色(新鮮)〜黄色(古い)混濁・フィブリン析出(厚い粘膜様)混濁・フィブリン析出(くもの巣状)--
髄液圧(60〜150mmH2O)基準内↑↑↑↑↑
細胞数(0〜5/µL)基準内(小リンパ球主体)↑(赤血球)↑(好中球)↑(リンパ球)↑(リンパ球)↑(リンパ球)
蛋白(10〜40mg/dL)基準内↑↑↑↑↑
糖(50〜80mg/dL)基準内↑↓↓↓→(変化なし)
クロール(120〜130mEq/L)基準内-↓↓↓↓
トリプトファン反応(-)(-)(-)(+)(-)(-)
細菌性髄膜炎ではLD(乳酸脱水素酵素)も上昇する。髄液糖を評価する際は必ず同時測定した血糖値と比較する(髄液糖/血糖比は正常で約0.6)。

第60回 午前7(臨床検査総論)

喀痰検査所見と疾患の組合せで正しいのはどれか。

正答: ⑤シャルコー・ライデン〈Charcot-Leyden〉結晶―気管支喘息

ポイント
シャルコー・ライデン結晶は好酸球の崩壊産物に由来する両錐形・針状の結晶で、気管支喘息などアレルギー性気道疾患の喀痰中にみられる。好酸球が関与する炎症で出現するため、喀痰中の本結晶は好酸球性炎症の存在を示す所見となる。喀痰所見は背景にある病態と対応して出現するため、所見と疾患の対応関係を押さえることが組合せ問題の鍵となる。●アレルギー・喘息でみられる所見=シャルコー・ライデン結晶・クルシュマンらせん体・好酸球増多で、いずれもアレルギー性炎症を反映する。●化膿・嫌気性感染でみられる所見=ディットリッヒ栓子で、悪臭を伴い肺壊疽や気管支拡張症でみられる。●その他=肺水腫でピンク色泡沫状痰、大葉性肺炎で鉄錆色痰。所見と疾患の対応で組合せの正誤を判定する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:喀痰所見と関連疾患

所見特徴関連疾患
漿液性痰薄いサラサラした泡沫状肺水腫
粘液性痰白色・透明・粘調気管支炎、上気道炎
膿性痰黄色濃厚〜錆色肺化膿症(化膿性疾患)
血性痰血液混入(鮮紅色〜黒色調)肺癌、肺結核、気管支拡張症、肺梗塞
二層痰(粘液性+膿性)層状に分離気管支拡張症
三層痰(粘液性+漿液性+膿性)層状に分離肺化膿症
Dittrich栓子悪臭を伴う塊肺化膿症、肺壊疽
Curschmannらせん体・Charcot-Leyden結晶・好酸球増多-気管支喘息
肺化膿症では三層痰・Dittrich栓子が、気管支喘息ではCurschmannらせん体・Charcot-Leyden結晶・好酸球増多がみられる。

第60回 午前8(臨床検査総論)

経胎盤垂直感染を起こすのはどれか。

正答: ④トキソプラズマ症

ポイント
トキソプラズマ症では妊娠中の母体初感染により原虫が経胎盤に移行し、胎児に水頭症・脈絡網膜炎・脳内石灰化などの先天性トキソプラズマ症を起こす。妊娠前に感染歴があれば抗体により胎児への移行は通常起こらないため、問題となるのは妊娠中の初感染である。トキソプラズマは経胎盤垂直感染を起こす代表的な原虫であり、母子感染は病原体ごとに主たる経路が異なる。●経胎盤(垂直)感染=トキソプラズマ・風疹ウイルス・サイトメガロウイルス・梅毒トレポネーマで、まとめてTORCH症候群と呼ばれる。●経産道感染=B群溶連菌・淋菌・クラミジアで、分娩時に産道で感染する。●母乳感染=HTLV-1。各病原体の主たる感染経路の違いに着目して母子感染の様式を分類し判断する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:寄生虫・原虫の感染経路の分類

感染経路代表的な寄生虫
経皮感染糞線虫、日本住血吸虫
経胎盤感染トキソプラズマ

第60回 午前9(臨床検査総論)

末梢血のGiemsa染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA009.6fcdc908c6.jpg
第60回 午前9 の図

正答: ①熱帯熱マラリア

ポイント
図はGiemsa染色の末梢血標本である。熱帯熱マラリアは赤血球内に小型の輪状体(リング状栄養体)が多数みられ、1個の赤血球に複数の原虫が寄生する多重感染を示し、感染赤血球の腫大がなく、末梢血に三日月形(バナナ状)の生殖母体がみられるのが特徴である。熱帯熱では成熟した栄養体や分裂体は末梢血にほとんど出現せず毛細血管に隔離されるため、末梢血ではリング体と生殖母体が中心となる。マラリアの種の鑑別は原虫形態と赤血球変化に基づく。●熱帯熱の所見=小型リング・多重感染・赤血球腫大なし・三日月形生殖母体で重症化しやすい。●三日熱/卵形=感染赤血球が腫大しシュフナー斑点を伴う。●四日熱=バンド型栄養体を示し赤血球腫大はない。原虫形態と赤血球の変化に着目して種を鑑別する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:マラリア原虫の種類別 形態・潜伏期・発熱間隔の比較

項目三日熱熱帯熱四日熱卵形
末梢血に出現する型輪状体・アメーバ体・分裂体・生殖母体輪状体・生殖母体三日熱に同じ三日熱に同じ
赤血球内の原虫数1個2個(多重感染しやすい)1個1個
赤血球の形円形で大きくなる円形で大きくならない円形で大きくならない卵形でやや大きくなる
アメーバ体(後期栄養体)Schüffner斑点著明末梢血に出現し難い帯状になる(バンド型)卵形で一端が鋸歯状
分裂体内メロゾイト数12〜18個8〜18個8〜10個6〜12個
生殖母体円形半月(ソーセージ)状三日熱に似る三日熱に似る
潜伏期12〜17日7〜21日18〜40日16〜18日
発熱間隔48時間毎48時間毎(不規則)72時間毎48時間毎
マラリア原虫はハマダラカに刺されてスポロゾイトが体内に侵入し、まず肝細胞内で増殖(赤外型)した後、赤血球内で輪状体→アメーバ体→分裂体と発育する(無性生殖)。

第60回 午前10(臨床検査総論)

糞便中に検出された虫卵の写真を別に示す。この寄生虫の中間宿主はどれか。2つ選べ。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA010.6e66fea3ba.jpg
第60回 午前10 の図

正答: ②カワニナ・④モクズガニ

ポイント
図は約85 μmの大型で小蓋をもつ黄褐色の虫卵で、ウェステルマン肺吸虫の虫卵に一致する。第1中間宿主はカワニナ、第2中間宿主はモクズガニやサワガニであり、人はこれらのカニを生や不完全な加熱で食べることで感染する。吸虫類は2つの中間宿主を介する複雑な生活史をとるため、寄生虫はその中間宿主の組合せによって特定・分類される。虫卵形態とあわせて宿主を押さえることが鑑別の要点となる。●肺吸虫=第1中間宿主カワニナ・第2中間宿主モクズガニやサワガニ。●肝吸虫=第1中間宿主マメタニシ・第2中間宿主は淡水魚(コイ科)。●横川吸虫=第1中間宿主カワニナ・第2中間宿主アユなどの淡水魚。●日本住血吸虫=中間宿主はミヤイリガイのみで第2中間宿主をもたない。生活史の宿主に着目して判断する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な寄生虫と中間宿主・終宿主

寄生虫第一中間宿主第二中間宿主(ヒトの位置づけ)終宿主
肝吸虫マメタニシコイ科淡水魚(フナ・モツゴ等)ヒト・イヌ
横川吸虫カワニナアユ等の淡水魚ヒト
肝蛭ヒメモノアラガイ第二中間宿主なし。メタセルカリアが水草などに付着ヒト・ウシ等
宮崎肺吸虫ホラアナミジンニナサワガニヒト
Westerman肺吸虫カワニナサワガニ・モクズガニヒト
日本住血吸虫ミヤイリガイ(中間宿主はこれのみ)—ヒト
日本海裂頭条虫ケンミジンコサケ・マスヒト
無鉤条虫ウシ—ヒト
有鉤条虫ブタ—ヒト
多包条虫(エキノコックス)野ネズミ(エゾヤチネズミ等)(ヒトも中間宿主になりうる)キツネ・イヌ
単包条虫ヒツジ(ヒトも中間宿主になりうる)イヌ
アニサキスオキアミサバ・イカ(ヒトは非固有宿主=幼虫移行のみ)イルカ・クジラ
広東住血線虫アフリカマイマイ・ナメクジ第二中間宿主なし。カエル・エビなどは待機宿主(ヒトは非固有宿主)ネズミ
有棘顎口虫ケンミジンコドジョウなどの淡水魚・カエルなどの両生類(ヒトは非固有宿主)イヌ
Manson裂頭条虫ケンミジンコヘビ・カエル(ヒトは非固有宿主=待機宿主)イヌ・ネコ
マラリア原虫—ヒト(中間宿主)蚊(ハマダラカ)
トキソプラズマ—ヒト・ネズミ(中間宿主)ネコ
アニサキス・広東住血線虫・顎口虫・Manson裂頭条虫はヒトが本来の宿主でないため幼虫のまま体内を移行し(幼虫移行症)、皮膚爬行症や好酸球性髄膜炎などを起こす。

第60回 午前11(臨床検査医学総論)

一次救命処置はどれか。

正答: ②胸骨圧迫

ポイント
一次救命処置(BLS)は特別な器具や薬剤を用いず誰でも実施できる救命行為で、胸骨圧迫・気道確保・人工呼吸・AED(自動体外式除細動器)による除細動が含まれる。胸骨圧迫はその中核であり、心停止時に脳と心臓への血流を維持して救命率を高める役割をもつ。これに対し医療従事者が器具・薬剤を用いて行う高度な処置は二次救命処置(ALS)に分類される。両者は実施に器具や薬剤を要するかどうかで区別される。●一次救命処置(BLS)に含まれるもの=胸骨圧迫・人工呼吸・気道確保・AEDによる除細動で、市民でも実施できる。●二次救命処置(ALS)に含まれるもの=気管挿管・静脈路確保・薬剤投与・心電図モニタなどで、医療従事者が器具と薬剤を用いて行う。器具・薬剤の要否でBLSとALSを区別して判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前12(臨床検査医学総論)

拘束性換気障害を呈するのはどれか。

正答: ②間質性肺炎

ポイント
拘束性換気障害は肺が膨らみにくくなることが本態で、スパイロメトリで肺活量(%VC)が80%未満に低下する。間質性肺炎は肺胞壁の線維化により肺が硬く伸展しにくくなるため、肺が十分に拡張できず拘束性を呈する。一方、気道が狭くなって息を吐き出しにくくなる病態は閉塞性換気障害となり、1秒率が低下する。両者は%VCと1秒率のいずれが低下するかで分類されるため、障害の本態が肺の拡張不全か気道閉塞かを見極めることが鑑別の要点となる。●拘束性(%VC低下)を呈する疾患=間質性肺炎・肺線維症・胸郭変形・神経筋疾患・肺切除後。●閉塞性(1秒率低下)を呈する疾患=肺気腫・慢性気管支炎・気管支喘息・細気管支炎などCOPD系の気道閉塞性疾患。スパイロメトリの所見で両者を分類して判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前13(臨床検査医学総論)

疾患と増加する血中ホルモンの組合せで正しいのはどれか。

正答: ⑤Cushing病―コルチゾール

ポイント
Cushing病は下垂体腺腫からのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)過剰分泌により副腎皮質が持続的に刺激され、コルチゾールが増加する病態である。その結果、中心性肥満・満月様顔貌・高血糖・高血圧などの特徴的な症候を呈する。内分泌疾患は、原因となるホルモンが過剰か不足かによって症状と検査値が決まるため、疾患ごとに上昇・低下するホルモンの対応を押さえることが組合せ問題の鍵となる。●ホルモンが増加(過剰)する疾患=Cushing病でコルチゾール、先端巨大症で成長ホルモン、原発性アルドステロン症でアルドステロン。●ホルモンが低下(不足)する疾患=Addison病でコルチゾールとアルドステロン低下、中枢性尿崩症でバソプレッシン低下。疾患でどのホルモンが上昇または低下するかの対応関係で判断する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:疾患と血中ホルモン濃度の変化

疾患変化するホルモン変化の向き
Cushing病(下垂体ACTH産生腫瘍)ACTH・コルチゾール上昇
副腎性Cushing症候群(副腎腺腫・副腎癌)コルチゾール上昇(ACTHは低下)
異所性ACTH産生腫瘍(肺小細胞癌など)ACTH・コルチゾール上昇
Addison病(原発性副腎皮質機能低下)コルチゾール低下(ACTHは上昇)
Basedow病甲状腺ホルモン〈T3・T4〉上昇(TSHは低下)
橋本病・慢性甲状腺炎甲状腺ホルモン〈T3・T4〉低下(TSHは上昇)
先端巨大症・巨人症成長ホルモン〈GH〉上昇
中枢性尿崩症バソプレシン〈ADH〉低下
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群〈SIADH〉バソプレシン〈ADH〉上昇
原発性アルドステロン症(Conn症候群)アルドステロン上昇(レニンは低下)
腎血管性高血圧症レニン上昇
褐色細胞腫カテコラミン上昇
慢性腎不全パラトルモン〈PTH〉上昇
橋本病でカルシトニンは特異的に変化しない。カルシトニン上昇は甲状腺髄様癌でみられる。

第60回 午前14(臨床検査医学総論)

ビタミンとその欠乏症の組合せで誤っているのはどれか。

正答: ③ビタミンB₆ ―巨赤芽球性貧血

ポイント
巨赤芽球性貧血を起こすのはビタミンB₁₂と葉酸の欠乏であり、これらはDNA合成に必須のためその欠乏で赤芽球の核成熟が障害され大型の赤芽球が出現する。ビタミンB₆欠乏は鉄芽球性貧血や皮膚炎・末梢神経障害を起こすため、ビタミンB₆と巨赤芽球性貧血の組合せは誤りである。各ビタミンの欠乏症は固有であり、組合せの正誤は欠乏症の病態と照合して判断する。●主なビタミン欠乏症=Aで夜盲症、B1で脚気とWernicke脳症、B2で口角炎、B6で皮膚炎と末梢神経障害、Cで壊血病、Dでくる病と骨軟化症、Kで出血傾向。●巨赤芽球性貧血の原因=ビタミンB₁₂・葉酸の欠乏でDNA合成が障害される。これらの対応に照らして組合せの正誤を判断する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:ビタミンと主な欠乏症

ビタミン(主な化学名)主な欠乏症
ビタミンA(レチノール)夜盲症、結膜乾燥症
ビタミンD(カルシフェロール)くる病、骨軟化症、低カルシウム血症
ビタミンE(α-トコフェロール)新生児溶血性貧血
ビタミンK(メナキノン)新生児メレナ、血液凝固障害(第II・VII・IX・X因子とプロテインC・Sの低下)、PIVKA-IIの出現
ビタミンB1(チアミン)脚気、Wernicke脳症、高ピルビン酸血症
ビタミンB2(リボフラビン)口内炎、舌炎、皮膚炎
ナイアシン(ビタミンB3)ペラグラ(日光過敏症を伴う)。Hartnup病(遺伝性の中性アミノ酸輸送障害)ではトリプトファン吸収障害から二次的にナイアシン不足を生じ、ペラグラ様症状を呈する
パントテン酸(ビタミンB5)皮膚炎
ビタミンB6(ピリドキシン)皮膚炎、日光過敏症
ビオチン(ビタミンB7)脱毛、若白髪、湿疹
ビタミンB12(コバラミン)巨赤芽球性貧血、メチルマロン酸血症、高ホモシステイン血症
葉酸(ビタミンBc)巨赤芽球性貧血。妊娠前後の不足は胎児の神経管閉鎖障害リスクを高める
ビタミンC(アスコルビン酸)壊血病
巨赤芽球性貧血の原因はビタミンB12・葉酸のいずれの欠乏でも生じる。脚気(ビタミンB1欠乏)とペラグラ(ナイアシン欠乏)、悪性貧血(ビタミンB12欠乏)を取り違えないよう注意する。

第60回 午前15(臨床検査医学総論)

患者の血清を4 ℃で一晩放置したところ、上層にクリーム層を認め、下層は混濁していた。該当するWHO脂質異常症タイプ分類はどれか。

正答: ⑤Ⅴ型

ポイント
患者血清を4℃で一晩静置し、上層にクリーム層(比重の小さいカイロミクロンの浮上)を認め、かつ下層も混濁(VLDLの増加)を呈するのはⅤ型脂質異常症で、カイロミクロンとVLDLがともに増加する病型である。静置試験ではリポ蛋白の比重差により、大きく軽いカイロミクロンが上層に浮きクリーム層を形成し、VLDLは全体の混濁として現れる。この層構造の所見からリポ蛋白の増加パターンを推定し病型を判別できる。●WHO(Fredrickson)分類=Ⅰ型はカイロミクロン増加で上層クリーム・下層清明。●Ⅱa型はLDL増加で血清は透明、Ⅱb型はLDLに加えVLDLも増加するため血清は混濁しうる。●Ⅳ型はVLDL増加で全体に混濁。●Ⅴ型はカイロミクロンとVLDLがともに増加し上層クリーム・下層混濁となる。静置試験の層所見で病型を判別する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前16(臨床生理学)

心筋の興奮伝導速度が最も速いのはどれか。

正答: ⑤プルキンエ〈Purkinje〉線維

ポイント
心臓の刺激伝導系のうちプルキンエ線維は伝導速度が最も速く(約2~4 m/s)、心室全体へ興奮をほぼ同時に伝えて同期した収縮を可能にする。この高速伝導により左右心室がそろって収縮し、効率的な拍出が得られる。刺激伝導系は部位ごとに伝導速度が大きく異なり、その速度差が心臓の協調的なポンプ機能を支えている。●伝導が速い部位=プルキンエ線維とヒス束(His束)で、心室内を急速に伝導し効率的な収縮を生む。●伝導が遅い部位=房室結節(約0.05 m/s)で、心房から心室への伝導を意図的に遅延させ、心房収縮が完了してから心室が収縮するよう時間差を作る。固有心筋である心房筋・心室筋は約1 m/sと中間の速度で伝導する。部位ごとの伝導速度の違いで判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前17(臨床生理学)

心電図を別に示す。所見で正しいのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA017.e4a818a0b9.jpg
第60回 午前17 の図

正答: ④左脚ブロック

ポイント
図は左脚ブロックの心電図である。左脚ブロックでは左脚を介した伝導が途絶え、左室への興奮が右脚経由で遅れて伝わるため、QRS幅が0.12秒以上に延長する。波形ではV5・V6でM字型(ノッチを伴う幅広R波)、V1でrSまたはQS型を示すのが特徴である。心電図の異常波形は、伝導系のどこが障害されたかによってパターンが定まるため、QRS幅と各誘導の形を組み合わせて鑑別する。●脚ブロックの所見=QRS幅0.12秒以上に延長し、左脚ブロックはV5・V6でM字型でI・aVLで幅広R、右脚ブロックはV1でrSR'型のM字波形を示す。●その他の興奮伝導異常=WPW症候群はデルタ波とPQ間隔短縮を示す。QRS幅と各誘導のパターンに着目して波形を鑑別する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:不整脈・心筋梗塞の心電図所見

疾患心電図所見
心筋梗塞(陳旧性)異常Q波(心筋壊死を反映)
第1度房室ブロックPQ〈PR〉時間の延長(0.21秒以上)、QRS波の脱落なし
完全右脚ブロックQRS幅延長、V1・V2でrsR'型、V5・V6で深いS波
WPW症候群PQ〈PR〉時間の短縮、デルタ波、QRS幅延長
心房細動RR間隔不整(絶対性不整脈)

第60回 午前18(臨床生理学)

心電図で正しいのはどれか。

正答: ③QT時間は心拍数の影響を受ける。

ポイント
QT時間は心室の脱分極の開始から再分極の終了までの時間を反映し、心拍数が速いほど短く遅いほど長くなる。このため心拍数の影響を補正した補正QT(QTc)が評価に用いられ、延長は致死性不整脈のリスクとなる。心電図の各指標は誘導法・電解質・電気軸などの定義に基づいて読むため、それぞれの基本を押さえることが正誤判断の前提となる。●心電図の誘導=双極肢誘導(I・II・III)、単極肢誘導(aVR・aVL・aVF)、胸部誘導は単極誘導で、移行帯は通常V3・V4にある。●電解質と波形=高カリウム血症でテント状T波、低カリウム血症でU波増高。●電気軸=成人では一般に−30°〜+90°を正常範囲とし、−30°より左方向への偏位を左軸偏位、+90°を超える右方向への偏位を右軸偏位とする。各指標の定義に照らして正誤を判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前19(臨床生理学)

最大または強制努力呼出が不要な呼吸機能検査の指標はどれか。

正答: ⑤Heガス希釈法による機能的残気量〈FRC〉

ポイント
Heガス希釈法による機能的残気量(FRC)の測定は、安静換気下で既知濃度のヘリウムガスが肺内で平衡に達することを利用し、希釈度から残気を含む肺気量を算出する方法で、最大吸気や強制努力呼出を必要としない。残気量はスパイロメトリで直接吐き出すことができないため、ガス希釈法や体プレチスモグラフといった間接法で測定される。各検査が努力呼出を要するかどうかは、その測定原理から判断できる。●努力呼出が必要な検査=肺活量(VC)・努力肺活量・ピークフロー(PEF)・フローボリューム曲線・1秒量で、いずれも最大努力での呼出を要する。●努力呼出が不要な検査=Heガス希釈法やボディプレチスモグラフによる機能的残気量測定。DLCO(肺拡散能)は1回呼吸法で深吸気と一定の息こらえを要する。測定原理に着目して要否を判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前20(臨床生理学)

全自動血液ガス分析装置による動脈血ガス分析について適切なのはどれか。2つ選べ。

正答: ①混入した気泡は測定前に除去する。・②39 ℃の発熱患者の検体では温度補正が必要である。

ポイント
動脈血ガス分析では、混入した気泡は大気と血液の間でガスがやり取りされ酸素・二酸化炭素分圧を変化させて誤差を生むため、測定前に必ず除去する。また患者体温が標準の37℃と異なる場合、ガスの溶解度や分圧には温度依存性があるため、実際の体温に合わせた温度補正を行って評価する。分析の精度は採取から測定までの前処理と保存条件に大きく左右される。●正確な測定の条件=気泡の除去・空気に触れない嫌気的採取・速やかな測定(保存温度は採血器材の材質と測定までの時間に応じて選択)・患者体温に合わせた温度補正。●主な誤差要因=気泡混入で酸素分圧が上昇、室温での放置では赤血球の代謝により酸素が消費され酸素分圧は低下し二酸化炭素分圧は上昇する。前処理と保存条件を整えて精度を保つ。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:動脈血ガス分析:検体の取扱いと保存の注意点

項目内容
抗凝固剤ヘパリン(他の抗凝固剤はpHや血液ガスの結果に影響)
気泡検体中の気泡は除去する(気泡自体がO₂・CO₂を含み誤差の原因になる)
保存・測定までの時間直ちに測定できない場合は氷水中に保存し迅速に測定する(室温放置は不可)
室温放置時の変化血球の代謝(解糖など)によりpH低下・PaO₂低下・PaCO₂上昇が生じる
体温の影響発熱など体温が37℃と異なる場合は温度補正が必要
検体は代謝活性をもつ血球を含むため、短時間でも値が変化する。白血球数が著しく多い検体では変化がより速い。

第60回 午前21(臨床生理学)

終夜睡眠ポリグラフィに関する記載で正しいのはどれか。

正答: ③閉塞型睡眠時無呼吸症候群では胸壁と腹壁の奇異性運動がみられる。

ポイント
閉塞型睡眠時無呼吸症候群では、上気道が閉塞しても呼吸を続けようとする呼吸努力(横隔膜・呼吸筋の運動)が持続するため、空気が入らないまま胸壁と腹壁が逆方向に動く奇異性(シーソー)運動がみられる。これは呼吸努力そのものが消失する中枢型無呼吸との重要な鑑別点となる。終夜睡眠ポリグラフィでは脳波・眼球運動・呼吸・酸素飽和度などを総合して評価する。●睡眠ステージ=REM睡眠で急速眼球運動が出現し、ステージ3・4(徐波睡眠)でδ波が優勢となる。●無呼吸の型=閉塞型は呼吸努力ありで奇異性運動を伴い、中枢型は呼吸努力が消失する。重症度は無呼吸低呼吸指数(AHI)で評価する。各所見の対応関係に照らして正誤を判断する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:睡眠時無呼吸症候群〈SAS〉の病型分類

病型特徴
閉塞性〈OSAS〉上気道の狭窄・閉塞による気流停止。換気努力は伴う(胸腹壁の奇異性=シーソー運動がみられる)。肥満・アデノイド・巨舌症等が原因、男性・肥満者に多い
中枢性〈CSAS〉呼吸中枢の障害で呼吸運動そのものが消失(胸郭・腹壁の動きがない)。自律神経障害・正常圧水頭症等が原因
混合性〈MSAS〉閉塞性と中枢性の混合。中枢性で始まり閉塞性に移行することが多い
無呼吸出現時には(病型によらず)動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉が低下する。

第60回 午前22(臨床生理学)

右利きの人の言語野が存在するのはどれか。

正答: ①左前頭葉

ポイント
右利きの人ではほぼ全例で言語野が左半球(優位半球)に存在し、運動性言語中枢であるブローカ野は左前頭葉下部に、感覚性言語中枢であるウェルニッケ野は左側頭葉後部にある。左利きでも多くは左半球が優位半球となる。大脳は部位ごとに担う機能が定まっており(機能局在)、言語・視覚・体性感覚などはそれぞれ特定の領域が処理するため、機能局在に基づいて部位を判断する。●優位半球(右利きでは左)=言語野が局在し、ブローカ野は左前頭葉、ウェルニッケ野は左側頭葉にある。●劣位半球(右利きでは右)=空間認知・図形認識・音楽などに関わる。●その他の領域=後頭葉は視覚野、頭頂葉は体性感覚野が局在する。大脳の機能局在に基づいて言語中枢の存在部位を判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前23(臨床生理学)

脳波測定時の賦活法として行われないのはどれか。

正答: ①運動

ポイント
脳波の賦活法は安静時には現れにくい潜在的な異常波を誘発し検出する目的で行われ、開閉眼・過呼吸・光刺激(閃光刺激)・睡眠(睡眠賦活)が標準的に用いられる。これらは脳の活動状態を変化させて異常波を引き出す手技であり、運動は脳波の賦活法としては行われない。各賦活法は誘発を狙う異常波の種類が異なるため、標準的手技に含まれるか否かでこの種の設問を判断する。●脳波の賦活法=開閉眼・過呼吸(約3分間)・光刺激・睡眠・断眠(睡眠遮断)が標準的手技として行われる。●各賦活法の目的=過呼吸は欠神発作の3Hz棘徐波を誘発し、光刺激は光過敏性反応を誘発し、睡眠賦活は睡眠中に出現する異常波の検出を目的とする。標準的手技に含まれるか否かで判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前24(臨床生理学)

末梢神経をインパルスが伝導する際の特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ④温度が低下すると伝導速度は遅くなる。・⑤電気刺激した部位から両方向に伝導する。

ポイント
末梢神経の興奮伝導は温度が低下すると速度が遅くなる(低温で減速)。これはイオンチャネルの開閉などの反応が低温で鈍るためである。また神経を電気刺激すると、刺激部位から興奮が順行・逆行の両方向に伝わる(両側性伝導)。活動電位は全か無かの法則に従い減衰せず一定の大きさで伝わるため、伝導の速さは線維の太さ・髄鞘の有無・温度といった条件で決まる。●伝導速度を上げる要因=太い線維・有髄線維(跳躍伝導)・体温が高いことで、いずれも伝導を速める。●伝導速度を下げる要因=低温・新生児(髄鞘が未発達で遅い)・脱髄で、いずれも伝導を遅らせる。刺激点からは両方向へ伝導する。線維径・髄鞘・温度の条件に着目して伝導の性質を判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前25(臨床生理学)

超音波検査で体表面にゼリーを塗る目的はどれか。

正答: ②探触子と皮膚の間の空気を排除する。

ポイント
超音波は空気中をほとんど透過できず、探触子と皮膚の間に空気層があると音響インピーダンスの差が大きい界面で大部分が反射してしまい、体内へ伝わらない。ゼリーは両者の間の空気を排除して音響インピーダンスを整合させ、超音波を体内へ効率よく伝える音響カップリングの役割を持つ。検査の画質は超音波が体内へ確実に伝わることを前提に、周波数やゲインなどの条件で決まる。●超音波の伝達の条件=ゼリーによる空気の除去(音響カップリング)と適切な周波数の選択。●画質に関わる要素=周波数(高いほど分解能が良く深達度は低い)・ゲイン・フォーカスの調整。ゼリーは超音波を増幅したり皮膚の温度上昇を抑えたりするものではなく、あくまで伝達を確保する媒体である。

選択肢ごとの解説

第60回 午前26(臨床生理学)

健常成人の腹部超音波検査において、心窩部走査で観察できないのはどれか。

正答: ③脾臓

ポイント
心窩部走査は腹部正中の心窩部に探触子を当て、肝左葉を音響窓として利用しその後方の構造を観察する基本的な走査法である。この走査では肝左葉、その背側に位置する膵体部・膵尾部、脊椎前面を縦走する腹部大動脈と下大静脈、さらに腹腔動脈や上腸間膜動脈の起始部などが描出される。脾臓は左季肋部の背側深部に位置するため、心窩部走査では介在する肝実質や胃内ガスに音波が遮られて描出することができず、左肋間走査や左肋弓下走査といった別の走査法を用いて初めて観察できる臓器である。●心窩部走査で観察できる=肝左葉・膵体尾部・腹部大動脈・下大静脈・腹腔動脈・上腸間膜動脈。●専用の走査が必要な臓器=脾臓(左肋間走査)・腎臓(側腹部走査)・胆嚢(右肋弓下走査)。●走査の基本=呼吸を調整させて音響窓を確保し、消化管ガスを避けて描出することが重要である。

選択肢ごとの解説

第60回 午前27(臨床生理学)

超音波検査における観察部位と用いる探触子の組合せで正しいのはどれか。

正答: ③頸動脈―リニア型

ポイント
超音波探触子は観察部位の深さと必要とする視野の形状に応じて使い分ける必要がある。リニア型は振動子を直線状に配列し近距離の広い長方形視野を高い分解能で得られるため、頸動脈・甲状腺・乳腺・下肢静脈などの浅在組織の観察に適する。セクタ型は小さな接触面から扇形に広い深部視野を得られるため肋間からの心臓観察に用い、コンベックス型は扇形に近い広い視野で深部まで描出でき腹部臓器の観察に用いる。観察対象の位置と利用できる音響窓の大きさが探触子選択の基準となる。●浅在・体表=リニア型(頸動脈・甲状腺・乳腺・下肢静脈)。●深部で狭い音響窓=セクタ型(心臓)。●腹部の広い視野=コンベックス型。●経直腸・経腟=専用の腔内用探触子を用いる。●周波数の原則=高周波ほど分解能は高いが減衰が大きく深部に届かないため、浅在部は高周波、深部は低周波を用いる。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:超音波探触子(プローブ)の走査方式と主な用途

プローブ走査方式の特徴主な用途部位
セクタ型小さい接触面から扇状に走査、狭い肋間から深部まで観察可心臓
リニア型振動子を直線配列し直線状に走査、高分解能だが深部視野は狭い頸動脈・甲状腺・乳腺・体表血管・下肢静脈
コンベックス型リニアと同原理で振動子が凸状配列、扇状に広い視野腹部
ラジアル型管腔内に挿入し振動子を回転させ360度走査経直腸前立腺・経食道消化管
アーク型振動子を円弧状に動かし垂直入射可能だが、現在はほぼ使用されない(かつて)乳腺・甲状腺

第60回 午前28(臨床生理学)

MRI検査で使用するのはどれか。

正答: ⑤ガドリニウム化合物

ポイント
MRI造影剤として最も広く用いられているのはガドリニウム化合物である。ガドリニウムは多数の不対電子をもち強い常磁性を示すため、周囲に存在する水素原子核の縦緩和時間(T1)を短縮させ、造影された部位をT1強調像で高信号に描出することができる。生体ではキレート化合物として毒性を抑えたうえで静注され、腎機能が低下した患者では腎性全身性線維症のリスクに留意する必要がある。画像検査の種類ごとに用いる造影剤や薬剤の種類はまったく異なっている。●MRI=ガドリニウム化合物(常磁性によるT1短縮)。●超音波=微小気泡(マイクロバブル)。●X線・CT=ヨード造影剤、消化管造影は硫酸バリウム。●核医学(シンチグラフィ)=テクネチウム99mなどの放射性核種。●MRIの原理=強磁場中の水素核の磁気共鳴を利用し、緩和時間の差を信号強度として画像化する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前29(臨床化学)

ミトコンドリアの機能はどれか。

正答: ⑤酸化的リン酸化

ポイント
ミトコンドリアは二重の膜をもつ細胞内小器官で、内膜に電子伝達系とF1F0-ATP合成酵素を備え、酸化的リン酸化によってATPを産生する好気的エネルギー産生の中心的な場である。クエン酸回路や脂肪酸のβ酸化で生じたNADHやFADH2の電子を電子伝達系を介して酸素へ受け渡し、その過程で内膜の内外に形成されたプロトン濃度勾配を利用してADPからATPを合成する。それぞれの代謝反応は細胞内の固有の区画で営まれている。●ミトコンドリア=酸化的リン酸化・クエン酸回路・脂肪酸のβ酸化。●細胞質ゾル=嫌気的解糖・糖新生(一部)・脂肪酸合成。●核=DNA複製・転写。●リボソーム(粗面小胞体)=蛋白合成。●ミトコンドリアの特徴=独自のDNAをもち母性遺伝し、好気的代謝が盛んな心筋・肝・骨格筋などに多く分布する小器官である。

選択肢ごとの解説

第60回 午前30(臨床化学)

1 mol/lの硫酸水溶液を1 l作製するのに必要な硫酸(比重1.84、含量95%)の量はどれか。ただし、硫酸の分子量は98とする。

正答: ③56 ml

ポイント
1 L中に1 molの硫酸を溶かすには、分子量が98であることから98 gの純粋な硫酸が必要である。用いる濃硫酸は比重1.84、含量95%であるから、1 mLあたりに含まれる純硫酸は1.84×0.95=1.748 gとなる。したがって必要量98 gを得るのに要する濃硫酸の体積は98÷1.748=約56 mLと算出される。これは比重と含量から純物質の質量を補正したうえで所要体積を逆算する、溶液調製における基本的な計算手順である。●計算の手順=必要質量(モル数×分子量)を求め、比重と純度を用いて実際の体積へ換算する。●関連事項=規定度は当量に基づき、2価の酸である硫酸は1 mol/L=2 Eq/Lに相当する。●調製時の注意=強い発熱を伴うため、必ず酸を水に少量ずつ加える。●検算=得られた56 mL中の純硫酸量56×1.748≒98 gが分子量98すなわち1 molと一致する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前31(臨床化学)

血糖値が上昇すると低下するのはどれか。

正答: ⑤1,5-アンヒドログルシトール〈1,5-AG〉

ポイント
1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)は食物由来の糖の一種で、通常は腎尿細管でほぼ完全に再吸収されるため血中濃度は安定して一定に保たれている。しかし血糖が上昇して尿糖が排泄される状態になると、構造のよく似た1,5-AGの尿細管における再吸収が尿中のグルコースによって競合的に阻害され、再吸収されずに尿中へ失われる。その結果、血糖が上昇した時にはむしろ血中1,5-AG濃度が低下し、数日単位という比較的短期の血糖コントロールの状態を鋭敏に反映する指標として用いられる。●血糖上昇で上昇=HbA1c・グリコアルブミン(糖化蛋白)・インスリン・C-ペプチド(分泌亢進による)。●血糖上昇で低下=1,5-AG(尿中への喪失による)。●反映期間=HbA1cは約1〜2か月、グリコアルブミンは約2週間、1,5-AGは数日。

選択肢ごとの解説

第60回 午前32(臨床化学)

酵素を用いた終点分析法で正しいのはどれか。

正答: ③Vmaxが大きい酵素を使用する。

ポイント
終点分析法(エンドポイント法)は、酵素反応が平衡に達するか基質が完全に消費され尽くした一定の終点における吸光度の変化を測定して被検成分量を求める方法である。一定時間内に基質を反応し切る必要があるため、最大反応速度Vmaxの大きい酵素を用いるのが適切である。一方Kmは基質親和性の指標であり、Kmが小さい酵素ほど低い基質濃度でも反応が進みやすい。また酵素を利用した分析法は、化学的分析法と比較して基質に対する特異性に優れるという利点をもっている。●終点分析法=反応完結後の総変化量を測定し、Vmaxの大きい酵素を用いる。●初速度(レート)分析法=反応初期の速度を測定し、酵素活性の測定に用いる。●酵素法の利点=化学的分析法より特異性が高く、共存物質の干渉を受けにくい。●Kmの意味=最大速度の半分を与える基質濃度であり、小さいほど基質親和性が高いことを示す。

選択肢ごとの解説

第60回 午前33(臨床化学)

アニオンギャップに占める最大の陰イオン(アニオン)はどれか。

正答: ⑤アルブミン

ポイント
アニオンギャップは血漿の主要な陽イオンであるナトリウムから、主要な陰イオンであるクロールと重炭酸を差し引いた値で、ルーチン検査では測定されない陰イオンの総量を反映する指標である。生理的な状態において、これら未測定の陰イオンのうち最も大きな割合を占めるのは、負の電荷を帯びた血漿蛋白すなわちアルブミンである。したがって低アルブミン血症ではアニオンギャップが見かけ上低下するため、その分を加味する補正計算が必要となる。●アニオンギャップの主成分=アルブミン(最大)・リン酸・硫酸・有機酸など。●増加する病態=乳酸(乳酸アシドーシス)・ケトン体(ケトアシドーシス)・腎不全(リン酸・硫酸の貯留)。●補正=アルブミン1 g/dL低下ごとに約2.5を加算する。●基準=アニオンギャップの正常値は概ね12±2 mEq/Lで、開大時は未測定陰イオンの増加を示す。

選択肢ごとの解説

第60回 午前34(臨床化学)

ヘキソキナーゼ・グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ〈HK-G6PD〉法によるグルコース測定について誤っているのはどれか。

正答: ⑤HKはD-グルコースのβ型とのみ反応する。

ポイント
HK-G6PD法は、ヘキソキナーゼ(HK)がグルコースをグルコース6リン酸へと変換し、続いてG6PDがこれを酸化する際に生じるNADPHの増加を波長340 nmで測定するグルコース定量法である。HKはD-グルコースのα型とβ型の両方のアノマーを基質とするため、特定の一型のみと反応するわけではない。本法は日本臨床化学会(JSCC)の勧告法に採用されており、基質特異性が高く、アスコルビン酸などの還元性物質による影響も受けにくいという特長をもつ。●HK-G6PD法の特徴=NADPH生成を測定し、JSCC勧告法であり、高い特異性をもつ。●HKの補因子=Mg²⁺(ATPと複合体を形成して活性化する)。●干渉が小さい=アスコルビン酸・ビリルビン・軽度の溶血の影響が少ない。●測定波長=NADPHの吸収極大である340 nmの吸光度増加を追跡する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:生化学的呈色反応系の比較(Trinder反応とNAD(P)H系)

反応系検出する変化主な酵素・試薬妨害を受けやすい物質
過酸化水素・ペルオキシダーゼ系(Trinder反応)可視部の吸光度増加(キノン色素生成)グルコースオキシダーゼ・コレステロールオキシダーゼ・ウリカーゼ+フェノール+4-アミノアンチピリンビリルビン・アスコルビン酸・ヘモグロビン(溶血)
NAD(P)H系(脱水素酵素系)340nmの吸光度変化ヘキソキナーゼ・グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(HK-G6PD法)など比較的受けにくい
Trinder反応は色原体の組合せで分析感度を調整できるが、還元性物質による妨害を受けやすい。分光光度法における共存物質影響試験の代表的対象はヘモグロビン(溶血)とアスコルビン酸である。

第60回 午前35(臨床化学)

空腹時血清中の総コレステロール475 mg/dl、トリグリセリド75 mg/dl、HDL-コレステロール60 mg/dlのとき、Friedewaldの計算式から求めたLDL-コレステロール値はどれか。

正答: ④400 mg/dl

ポイント
Friedewaldの計算式はLDL-コレステロール=総コレステロール−HDL-コレステロール−トリグリセリド÷5によって求める(単位はmg/dL)。このうちトリグリセリド÷5はVLDL-コレステロールの近似値に相当する。本問の数値を当てはめると475−60−75÷5=475−60−15=400 mg/dLと算出される。ただしトリグリセリドが400 mg/dL以上の高値であったりⅢ型高脂血症であったりする場合には推定が不正確となるため、本式は適用できない点に注意する。●Friedewald式=LDL-C=総コレステロール−HDL-C−TG/5(mg/dL単位で計算する)。●適用の限界=TGが400 mg/dL以上やⅢ型高脂血症では適用できない。●代替法=直接測定法やnon-HDLコレステロールの利用が有用である。

選択肢ごとの解説

第60回 午前36(臨床化学)

急性炎症型の血清蛋白電気泳動像の特徴に関与するのはどれか。2つ選べ。

正答: ④ハプトグロビン・⑤α₁-アンチトリプシン

ポイント
急性炎症では肝臓における産生が増加する急性相蛋白が血中で増え、血清蛋白電気泳動ではα₁分画とα₂分画の上昇として現れる。このうちα₁分画ではα₁-アンチトリプシン、α₂分画ではハプトグロビンが代表的な急性相蛋白であり、これらの増加が急性炎症型の泳動像の特徴を形づくっている。一方でアルブミンは陰性急性相蛋白として低下する。●急性相反応で増加する(陽性)=CRP・フィブリノゲン・ハプトグロビン・α₁-アンチトリプシン・補体成分。●電気泳動で上昇する分画=α₁分画(α₁-アンチトリプシン)・α₂分画(ハプトグロビン)。●減少する(陰性急性相蛋白)=アルブミン・トランスフェリン。●泳動像の特徴=アルブミン分画の減少とα1・α₂分画の増加が組み合わさり、急性炎症型の特徴的なパターンを形成する。●CRPの意義=急性相反応を鋭敏に反映し、別途定量して炎症の評価に用いられる。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:急性相蛋白(APR)の変化パターンと血清蛋白電気泳動分画

蛋白急性炎症での変化電気泳動分画
CRP上昇(鋭敏に反応)分画には含めず別途定量
ハプトグロビン上昇α2分画
α1-アンチトリプシン上昇α1分画
フィブリノゲン上昇血清には存在せず血漿でのみ検出
アルブミン低下(陰性急性相蛋白)アルブミン分画
トランスフェリン低下(陰性急性相蛋白)β分画
急性炎症型の血清蛋白電気泳動像は、アルブミン分画の減少とα1・α2分画の増加が特徴。

第60回 午前37(臨床化学)

血清フェリチン濃度が低下するのはどれか。

正答: ②鉄欠乏性貧血

ポイント
血清フェリチンは体内における貯蔵鉄の量を反映する指標であり、貯蔵鉄が枯渇する鉄欠乏性貧血では低下する。フェリチンは同時に急性相蛋白でもあるため、炎症・感染・自己免疫疾患・悪性腫瘍・組織破壊などの病態では貯蔵鉄の量とは無関係に上昇する。したがって低下を示すのは原則として鉄欠乏のみであり、各種貧血の鑑別に有用な指標となる。●フェリチンが低下する=鉄欠乏性貧血(貯蔵鉄の枯渇による)。●フェリチンが上昇する=炎症・感染(急性相反応)・血球貪食症候群・悪性腫瘍・鉄過剰症・溶血や肝障害による細胞からの逸脱。●鉄欠乏の典型像=血清鉄の低下+総鉄結合能(TIBC)の上昇+フェリチンの低下。●注意点=鉄欠乏に炎症が併存するとフェリチンが見かけ上正常化するため、解釈には炎症の有無を考慮する。●役割=フェリチンは鉄を貯蔵する蛋白で、過剰な遊離鉄による酸化障害から細胞を守る。

選択肢ごとの解説

第60回 午前38(臨床化学)

血漿アンモニア窒素濃度A[μg/dl]を血漿アンモニア濃度B[μg/dl]に換算する数式はどれか。

正答: ②B=A × 17/14

ポイント
アンモニア窒素濃度とは、アンモニア分子の中に含まれる窒素のみの質量によって表した値であり、アンモニア(NH₃)そのものの濃度へと換算するには分子量の比を乗じる必要がある。窒素の原子量は14、アンモニアの分子量は17であるから、アンモニア濃度B=アンモニア窒素濃度A×17/14と表すことができる。これは窒素を基準として表した値を、化合物そのものを基準とした値へ補正する典型的な換算操作である。●換算の原則=窒素濃度から化合物濃度へは(化合物の分子量÷窒素の原子量)を乗じる。●アンモニア=×17/14。●尿素窒素(BUN)から尿素=×60/28(尿素は窒素を2個もつため)。●逆向きの換算では分母と分子を入れ替える。●意義=アンモニアは肝で尿素に処理されるため、肝不全や門脈大循環シャントで血中濃度が上昇する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前39(臨床化学)

ヒト血清アミラーゼについて正しいのはどれか。

正答: ①Cl⁻により活性化する。

ポイント
ヒト血清アミラーゼは、デンプンのα1,4グリコシド結合を分子の内部から加水分解するエンドアミラーゼであり、塩化物イオン(Cl⁻)とカルシウムを必要とし、特に塩化物イオンによって活性化される金属酵素である。膵型(P型)と唾液腺型(S型)の二つのアイソザイムが存在し、その分子量は約5万でアルブミンの約6.6万より小さいため、糸球体を容易に通過して尿中へ排泄される。●アミラーゼの特徴=Cl⁻で活性化され、構造にCaを含み、内部の結合を切るエンドアミラーゼである。●アイソザイム=膵型(P型)と唾液腺型(S型)。●分子量=約5万で糸球体を濾過され尿中へ排泄される。●亜鉛(Zn)を含有する酵素ではない点に注意する。●臨床的意義=急性膵炎や唾液腺疾患で血中・尿中の活性が上昇し、アイソザイム分析で由来を鑑別できる。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:血清アミラーゼの性質とアイソザイム(P型・S型)比較

項目内容
反応様式α-1,4-グリコシド結合をデンプン内部から切断するエンド型酵素
活性化因子塩化物イオン(Cl⁻)で活性化。カルシウムイオンを含有する金属酵素
アイソザイム膵型(P型)・唾液腺型(S型)
分子量P型 約54,000Da、S型 約56,000〜62,000Da(S型の方が大きい。糖鎖を含むため)
尿中排泄分子量の小さいP型の方が排泄されやすい
臨床的意義急性膵炎でP型上昇、流行性耳下腺炎でS型上昇

第60回 午前40(臨床化学)

妊娠後期に上昇するのはどれか。

正答: ①ALP

ポイント
妊娠後期になると、胎盤において産生される耐熱性のALPアイソザイムである胎盤型が血中に加わるため、血清ALP活性が生理的に上昇する。これは肝型や骨型のALPが増加するためではなく、妊娠に特有の胎盤型アイソザイムが既存の活性に上乗せされるためであり、分娩後には速やかに正常化する。一方でALT・AST・γ-GT・LDといった酵素は、妊娠そのものによって特異的に上昇することはない。●妊娠後期に上昇する=ALP(胎盤型アイソザイムの産生による)。●ALPのアイソザイム=肝型・骨型・小腸型・胎盤型。●他の酵素の妊娠時の変化=AST・ALT・γ-GTは原則として変化せず、上昇する場合はむしろ肝障害や妊娠合併症を疑う。●ALP上昇の他の要因=小児の骨成長期や骨疾患・閉塞性黄疸でも上昇するため、由来はアイソザイムで鑑別する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前41(臨床化学)

免疫抑制薬はどれか。2つ選べ。

正答: ③タクロリムス・④シクロスポリン

ポイント
タクロリムスとシクロスポリンは、いずれもカルシニューリン阻害薬に分類される代表的な免疫抑制薬である。これらはTリンパ球の細胞内でカルシニューリンを阻害することによってインターロイキン2の産生を抑え、臓器移植後の拒絶反応の抑制や自己免疫疾患の治療に用いられる。有効域と中毒域が近接しているため、血中濃度モニタリング(TDM)の代表的な対象薬でもある。●免疫抑制薬(カルシニューリン阻害)=タクロリムス・シクロスポリン。●TDMの他の対象薬=抗不整脈薬(リドカイン)・気管支拡張薬(テオフィリン)・抗菌薬(バンコマイシン・アミノグリコシド)・抗てんかん薬。●TDMの意義=有効域が狭く中毒域に近い薬剤で血中濃度を測定し投与量を調整する。●採血の留意点=トラフ値(次回投与直前)での測定が基本で、採血時刻を一定にして評価する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:治療薬物モニタリング〈TDM〉の対象薬と検体の種類

薬剤分類検体
タクロリムス免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬)全血(赤血球内分布が多いため)
シクロスポリン免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬)全血(赤血球内分布が多いため)
ジゴキシン強心配糖体血清
フェノバルビタール抗てんかん薬血清
アミノ配糖体抗菌薬抗菌薬血清
ワルファリン(抗凝固薬)は血中濃度でなくPT-INRという薬効指標で管理するためTDMの対象としない。

第60回 午前42(臨床化学)

成長ホルモンの分泌を抑制するのはどれか。2つ選べ。

正答: ③グルコース・⑤ソマトスタチン

ポイント
成長ホルモン(GH)の分泌は、視床下部から分泌されるGH放出ホルモンとソマトスタチンによって調節されており、このうちソマトスタチンはGHの分泌を直接的に抑制する。さらにグルコースの投与による高血糖もGHの分泌を抑制するため、ブドウ糖負荷試験は先端巨大症の診断における抑制試験として用いられる。これに対しアルギニン・インスリン誘発性低血糖・レボドパなどはGHの分泌を刺激する。●GH分泌を抑制する=ソマトスタチン・グルコース(高血糖)。●GH分泌を刺激する=アルギニン・インスリン低血糖・レボドパ(L-dopa)・睡眠・運動。●負荷試験=刺激試験はGH分泌不全の評価に、ブドウ糖抑制試験は先端巨大症の評価に用いる。●分泌の特性=GHは拍動的に分泌され夜間睡眠時や運動時に増加するため、単回測定では評価しにくい。

選択肢ごとの解説

第60回 午前43(臨床化学)

心不全の指標として適切なのはどれか。

正答: ②BNP

ポイント
BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は、心室の筋が壁応力すなわち心室の伸展負荷の増大に応じて分泌するホルモンであり、心不全の重症度や治療効果を鋭敏に反映する優れた指標である。利尿作用、血管拡張作用、レニンアンジオテンシン系の抑制作用などをもつ。これに対しトロポニンTやCK-MBは心筋の傷害すなわち心筋梗塞を示すマーカーであり、心不全そのものの指標ではない。●心不全の指標=BNP・NT-proBNP(心室の伸展負荷に応じて分泌される)。●心筋傷害(梗塞)の指標=心筋トロポニンT/I・CK-MB・ミオグロビン(早期に上昇)。●ASTは特異性が低く、現在では心筋梗塞の診断には用いられない。●BNPの利用=心不全の診断・重症度評価・治療効果判定や予後予測に用いられる血液マーカーである。●補足=BNPは前駆体がNT-proBNPとBNPに分かれて血中に放出される。

選択肢ごとの解説

第60回 午前44(臨床化学)

一本鎖cDNA合成に必要なのはどれか。2つ選べ。

正答: ③逆転写酵素・⑤オリゴ(dT)プライマー

ポイント
一本鎖cDNAの合成は、鋳型となるmRNAから逆転写酵素すなわちRNA依存性DNAポリメラーゼが相補的なDNA鎖を伸長していく反応であり、その合成を開始するためには3'末端の遊離水酸基を提供するプライマーが必要である。真核生物のmRNAは3'末端にポリA配列をもっているため、これに相補的に結合するオリゴ(dT)プライマーが広く用いられる。●一本鎖cDNA合成に必須なもの=逆転写酵素・オリゴ(dT)プライマー(またはランダムプライマー)・鋳型mRNA・基質dNTP。●二本鎖化や増幅に用いる=DNAポリメラーゼ(PCRで使用する)。●制限酵素=DNAの特定配列を切断する酵素でありcDNA合成そのものには不要である。●応用=合成したcDNAはRT-PCRによる遺伝子発現解析やライブラリー作製に用いられる。

選択肢ごとの解説

第60回 午前45(病理組織細胞学)

中胚葉に由来するのはどれか。2つ選べ。

正答: ②骨格筋・③軟骨

ポイント
発生の過程では、三胚葉のうち中胚葉から骨・軟骨・骨格筋・心筋・血管・血液・腎・生殖腺・結合組織などの多様な組織が分化する。本問における骨格筋は中胚葉の体節に由来し、軟骨もまた中胚葉に由来するため、ともに中胚葉由来である。外胚葉からは表皮・神経系・眼の網膜や水晶体などが、内胚葉からは消化管・呼吸器・肝・膵の上皮や膀胱の上皮などが生じる。●中胚葉に由来する=骨・軟骨・骨格筋・心筋・血管・血液・腎・生殖腺・結合組織。●外胚葉に由来する=表皮・神経系・眼の網膜と水晶体・感覚器の上皮。●内胚葉に由来する=消化管・呼吸器・肝・膵・膀胱などの上皮。●発生の基本=受精卵から胞胚を経て三胚葉が形成され、各胚葉から特定の組織・器官が分化していく。●補足=心筋や血管・血液も中胚葉由来であり、間葉系組織の多くが中胚葉から生じる。

選択肢ごとの解説

第60回 午前46(病理組織細胞学)

H-E染色標本を別に示す。臓器はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA046.1014544a80.jpg
第60回 午前46 の図

正答: ①気管

ポイント
提示されたH-E染色標本は気管の組織像であると判断される。気管壁は内腔側から順に、線毛と杯細胞をもつ多列線毛上皮の粘膜、その下の粘膜下組織、そして特徴的なC字(馬蹄)型の硝子軟骨が背側を欠いた形で配列し、軟骨を欠く後壁の部分は平滑筋すなわち気管筋によって補われている。本写真で同定の根拠となるのは多列線毛上皮と杯細胞である。C字型軟骨輪と後壁の気管筋は気管全体の構造として重要だが、この高倍率の視野には描出されていない。●気管の組織学的特徴=多列線毛上皮と杯細胞、C字型の硝子軟骨輪、後壁の平滑筋(気管筋)。●類似する管腔臓器の鑑別=食道は重層扁平上皮、結腸は単層円柱上皮と腺窩、皮膚は角化重層扁平上皮であり、いずれも軟骨輪をもたない点で区別される。●機能=線毛は粘液とともに異物を咽頭方向へ運ぶ粘液線毛輸送を担い、軟骨輪は気道の虚脱を防ぐ。●杯細胞=粘液を分泌して気道表面を保湿し、異物を捕捉する役割をもつ。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:臓器・部位と被覆上皮の対応

上皮の種類分布部位
重層扁平上皮(非角化)食道・腟・肛門・口腔
重層扁平上皮(角化)表皮
単層円柱上皮胃・小腸・大腸・胆嚢
単層線毛円柱上皮卵管・子宮
多列線毛上皮(円柱)気管・気管支・鼻腔
移行上皮(尿路上皮)腎盂・尿管・膀胱
単層扁平上皮(内皮)血管・リンパ管の内壁
単層扁平上皮(中皮)胸膜・腹膜・心膜(体腔表面)
単層扁平上皮(肺胞上皮)肺胞(表面の大部分をⅠ型肺胞上皮細胞が覆う)
内皮は血管・リンパ管、中皮は体腔(漿膜)の表面を被覆する単層扁平上皮で、局在により呼び分ける。肺胞の内面は中皮ではなく肺胞上皮(Ⅰ型・Ⅱ型肺胞上皮細胞)が覆う。

第60回 午前47(病理組織細胞学)

固定液の組成で正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ①PLP固定液―過ヨウ素酸・⑤ブアン〈Bouin〉液―ピクリン酸

ポイント
PLP固定液はパラホルムアルデヒド・リジン・過ヨウ素酸ナトリウムから構成される固定液で、糖質や細胞膜の抗原性の保持に優れており、その組成として過ヨウ素酸を含んでいる。一方ブアン液はピクリン酸・ホルマリン・酢酸の混合液であり、ピクリン酸を含み、消化管や内分泌組織の固定に適している。各固定液はその主成分によって適する用途が異なる。●固定液とその主成分=PLP(過ヨウ素酸ナトリウム)・ブアン(ピクリン酸)・カルノア(エタノール+クロロホルム+氷酢酸)・ザンボニ(パラホルムアルデヒド+ピクリン酸)。●用途=カルノアは核酸やグリコーゲンの保持に、ブアンは消化管や内分泌組織の固定に適する。●固定の目的=蛋白の凝固や架橋によって自己融解と腐敗を防ぎ、生体の構造を保持することにある。●ホルマリン=最も汎用される固定液で、組織を架橋して安定に保存する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前48(病理組織細胞学)

慢性炎症の治癒過程で主体でないのはどれか。

正答: ①好中球

ポイント
慢性炎症の治癒すなわち修復の過程では、肉芽組織の形成とそれに続く線維化が主体となる。具体的には、線維芽細胞がコラーゲンを産生し、毛細血管が新生して血管新生が起こり、マクロファージやリンパ球が壊死物質を処理しながらサイトカインによって修復過程を調節して進行する。好中球は急性炎症の初期に最初に動員される主役の細胞であり、慢性炎症の治癒過程における主体ではない。●慢性炎症・修復の主体=マクロファージ・リンパ球・線維芽細胞・新生する毛細血管(これらが肉芽組織を構成する)。●急性炎症の主体=好中球(最初に動員される細胞)。●修復の転帰=肉芽組織の器質化と線維化による瘢痕の形成。●肉芽組織=新生毛細血管・線維芽細胞・炎症細胞からなり、損傷部を埋めて修復を進める組織である。●慢性炎症の特徴=組織破壊と修復が同時に進行し、単核球の浸潤が持続する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前49(病理組織細胞学)

H-E染色標本を別に示す。診断として正しいのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA049.826c2273a6.jpg
第60回 午前49 の図

正答: ①腺癌

ポイント
提示されたH-E染色像は腺癌の所見を示していると判断される。腺癌は腺腔ないし腺管の構造を形成する悪性の上皮性腫瘍であり、不整な腺管、核の腫大、明瞭な核小体、細胞の極性の乱れを示し、しばしば粘液の産生を伴うとともに、周囲の間質への浸潤を呈する。腺上皮をもつ肺・胃・大腸・乳腺・膵などに発生する代表的な癌である。●腺癌の特徴=腺管や腺腔の形成、粘液の産生、周囲間質への浸潤。●他の悪性腫瘍の像との鑑別=扁平上皮癌は角化や細胞間橋、尿路上皮癌は移行上皮様の重層、骨肉腫は腫瘍性の類骨形成、血管肉腫は不整な血管腔の形成を示す。●腺癌の好発=肺・胃・大腸・乳腺・前立腺・膵などの腺上皮をもつ臓器に発生する。●補助診断=免疫染色や粘液染色が腺癌の同定に有用である。●悪性の所見=核異型・核分裂像・構造の異型・間質浸潤が悪性を示す共通の組織学的特徴である。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:悪性腫瘍細胞にみられる核・細胞質の異型所見(総論)

所見内容
核細胞質比〈N/C比〉増大(核が細胞質に対し相対的に大きい)
核クロマチン増量・不均等分布(濃染)
核形不整(大小不同・多形性)
核小体腫大・明瞭化
細胞配列極性の乱れ、重積性の集塊
腺癌の所見(例)腺管・腺腔の形成、粘液産生、周囲間質への浸潤
良性・反応性細胞は核が円形で整い、クロマチンは細顆粒状で核小体は目立たない。

第60回 午前50(病理組織細胞学)

免疫組織化学染色で用いられる標識酵素はどれか。

正答: ④ペルオキシダーゼ

ポイント
免疫組織化学染色は、抗原抗体反応を利用し、酵素で標識した抗体に対して基質を反応させて発色させることにより、組織内に存在する抗原の局在を可視化する手法である。標識に用いる酵素として最も広く使われているのはペルオキシダーゼ、すなわち西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)であり、基質であるDABを酸化することで褐色の不溶性の沈着を生じる。このほかアルカリホスファターゼも標識酵素として用いられる。●免疫染色の標識酵素=ペルオキシダーゼ(HRP、基質DABで褐色に発色)・アルカリホスファターゼ(基質はNBT/BCIPなど)。●検出法=直接法・間接法・ABC(アビジン-ビオチン)法・ポリマー法。●標識の種類=酵素標識のほかに蛍光標識や金コロイド標識がある。●内因性酵素の対処=内因性ペルオキシダーゼは過酸化水素処理で阻止し、非特異反応を抑えてから検出する。

選択肢ごとの解説