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第60回(2014) 臨床検査技師国家試験 午前51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第60回 午前51(病理組織細胞学)
死後、自家融解を起こしやすい臓器はどれか。
正答: ⑤膵臓
ポイント 膵臓はトリプシン、キモトリプシン、リパーゼ、アミラーゼなどの強力な消化酵素を腺房細胞内に豊富に含むため、死後に酵素が組織自身を分解する自家融解(自己消化)を最も起こしやすい臓器である。胃や腸管も消化酵素と腸内細菌の作用により急速に変化する。自家融解は死後の無酸素状態のもとでリソソーム酵素などの内因性酵素が細胞構成成分を分解していく無菌的な現象であり、組織の構築が早期に崩れて剖検所見の解釈に大きく影響するため、死後はできるだけ速やかな固定が必要となる点が臨床上きわめて重要である。●自家融解が速い臓器=膵臓・胃腸粘膜・副腎髄質。●自家融解が比較的遅い組織=心筋・骨格筋・線維性結合組織。●腐敗との区別=自家融解は内因性酵素による無菌的な自己消化であり、腐敗は外来の細菌の増殖と作用による分解である。
選択肢ごとの解説
① 大脳は消化酵素の含量が比較的少なく、自家融解は膵臓ほど急速ではない。虚血による脳軟化は、生前の脳梗塞などで生じる融解壊死であり、死後の自家融解とは区別する。 ② 甲状腺はコロイドを蓄える濾胞構造をもつ臓器であり、自家融解の進行は強力な消化酵素を含む膵臓に比べて緩やかである。 ③ 心臓は心筋が主体で消化酵素をほとんど含まないため、自家融解は比較的遅く進行する臓器の側に位置づけられる。 ④ 肺は含気組織であり、自家融解そのものよりもうっ血や腐敗、誤嚥などの他の死後変化の影響をより受けやすい臓器である。 ⑤ 正しい。膵臓は強力な消化酵素を自己の組織内に多く含むため、死後の自家融解(自己消化)を最も起こしやすい臓器である。
第60回 午前52(病理組織細胞学)
成人男性の臓器重量で正常範囲内のものはどれか。
①脳 1,200 g ②心臓1,000 g ③肝臓2,500 g ④脾臓 300 g ⑤腎臓 500 g
正答: ①脳 1,200 g
ポイント 成人男性の臓器重量の正常値は、脳が約1,200〜1,400g、心臓が約250〜350g、肝臓が約1,200〜1,500g、脾臓が約100〜150g、腎臓が片側で約120〜150g(両側合わせて約250〜300g)である。これらの基準値は剖検や画像診断において臓器の腫大や萎縮を客観的に判断するための重要な指標となる。設問の各数値をこの基準と照合すると、脳1,200gのみが正常範囲に含まれ、その他はいずれも著しく過大に設定された明らかな異常値であり、重量から病態を読み取ることが求められる。●過大に設定された選択肢=心臓1,000g・肝臓2,500g・脾臓300g・腎臓500g。●臓器重量の増加をきたす病態=うっ血・心肥大・脂肪沈着・腫瘍浸潤・アミロイドーシス。●臓器重量の減少をきたす病態=萎縮・線維化・低形成。
選択肢ごとの解説
① 正しい。脳の正常重量は成人男性で約1,200〜1,400gであり、設問の1,200gは正常範囲内に含まれる値である。 ② 心臓の正常重量は約250〜350gであり、設問の1,000gは著明な心肥大を示す明らかな異常値に相当する。 ③ 肝臓の正常重量は約1,200〜1,500gであり、設問の2,500gは著しい肝腫大を示す過大な異常値である。 ④ 脾臓の正常重量は約100〜150gであり、設問の300gは脾腫を示す過大な異常値に相当する数値である。 ⑤ 腎臓は片側で約120〜150gであり、設問の500gは片腎としても両腎としても過大な明らかな異常値である。
📋 まとめの表を見る:健常成人の主要臓器の大きさと重量(剖検時の概数)
剖検時の目安値。年齢・性差・個体差により変動する。肝臓は体内最大の実質臓器(約1,000~1,300g)。
第60回 午前53(病理組織細胞学)
中和が必要な脱灰法はどれか。2つ選べ。
①ギ酸法 ②硝酸法 ③EDTA法 ④トリクロロ酢酸法 ⑤プランク・リクロ〈Plank-Rychlo〉法
正答: ②硝酸法・⑤プランク・リクロ〈Plank-Rychlo〉法
ポイント 脱灰後に中和が必要なのは酸を用いる脱灰法であり、組織内に残存した酸が後続の染色性を著しく損なうため、流水水洗やアルカリ処理による中和を要する。硝酸法は強酸を用いて脱灰力が強い反面、組織損傷も大きく、染色性を保つために中和が必須となる。プランク・リクロ〈Plank-Rychlo〉法も塩酸・ギ酸・塩化アルミニウムを含む強酸性の脱灰液であり、残存酸を除く中和を要する代表的な脱灰法である。なお中和が不十分だと核がヘマトキシリンで染まらず、組織が褪色して鏡検に支障をきたすため、脱灰後の処理は標本の質を左右する重要な工程である。●酸脱灰法で中和が必要=硝酸法・塩酸法・プランク・リクロ法。●キレート脱灰で中和が不要かつ緩徐=EDTA法。●その他=トリクロロ酢酸法は緩徐な脱灰であり、抗原性や核染色性の保持に優れ、強い中和操作を要さない方法である。
選択肢ごとの解説
① ギ酸法は弱酸による比較的緩徐な脱灰であり、硝酸法のような強い中和操作を必須とはしない緩和な方法である。 ② 正しい。硝酸法は強酸を用いる脱灰力の強い方法であり、組織内に残存した酸を除くための中和操作が必要である。 ③ EDTA法はカルシウムをキレートして除去する緩徐な方法であり、酸を使わないため脱灰後の中和は不要である。 ④ トリクロロ酢酸法は緩徐な脱灰で抗原性や核の染色性を保ちやすく、強い中和操作を要さない緩和な方法である。 ⑤ 正しい。プランク・リクロ法は塩酸とギ酸を含む強酸性の脱灰液であり、染色前に残存酸を除く中和が必要である。
📋 まとめの表を見る:脱灰法の種類と特徴(分類・適温・中和操作)
無機酸(塩酸・硝酸)・Plank-Rychlo液・電気脱灰法は中和操作が必要。有機酸(ギ酸・トリクロロ酢酸)とEDTA法は中和不要で、有機酸は水洗せず直接70%アルコールに浸漬する。EDTA法は唯一の中性脱灰液で、他の酸脱灰法より高い温度(約30℃)で行える。
第60回 午前54(病理組織細胞学)
ホルマリン色素の除去に用いる溶液はどれか。
①塩酸アルコール ②シュウ酸水溶液 ③過ヨウ素酸水溶液 ④アンモニアアルコール ⑤イソプロピルアルコール
正答: ④アンモニアアルコール
ポイント ホルマリン色素(酸性ホルマリン色素、ヘマチン色素)は、血液を豊富に含む組織を酸性化したホルマリンで固定した際に、ヘモグロビンに由来して生じる褐色〜黒褐色の沈着である。この色素はアンモニアアルコール(アルコール性アンモニア水)で除去でき、固定液に中性緩衝ホルマリンを用いれば発生そのものを防止することができる。鏡検時に偽の陰影となって診断の妨げになるため、適切な除去処理と発生予防の両面が重要となる。とくにメラニン色素や血鉄素などとの鑑別が必要であり、偏光顕微鏡で複屈折を示す点も特徴である。●ホルマリン色素の除去=アンモニアアルコール・飽和アルコール性ピクリン酸。●メラニンなど他の色素の漂白=過マンガン酸カリウムによる酸化とシュウ酸による還元の組合せ。●発生の予防=緩衝(中性)ホルマリンの使用と過度な固定の回避。
選択肢ごとの解説
① 塩酸アルコールはヘマトキシリン過染の分別(脱色)に用いる溶液であり、ホルマリン色素の除去には用いない試薬である。 ② シュウ酸水溶液は過マンガン酸カリウムによる酸化後の漂白に用いる還元剤であり、ホルマリン色素の除去には適さない。 ③ 過ヨウ素酸水溶液はPAS反応で糖を酸化するために用いる試薬であり、ホルマリン色素の除去には用いない溶液である。 ④ 正しい。アンモニアアルコールは酸性ホルマリン色素(ヘマチン色素)を除去するために用いる代表的な溶液である。 ⑤ イソプロピルアルコールは脱水や透徹の工程に用いる溶媒であり、ホルマリン色素を除去する作用はもたない溶媒である。
第60回 午前55(病理組織細胞学)
腎組織の特殊染色標本を別に示す。使用する染色液はどれか。2つ選べ。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA055.5b64d37b36.jpg
①マッソン〈Masson〉液 ②ワンギーソン〈van Gieson〉液 ③アゾカルミンG液 ④鉄ヘマトキシリン液 ⑤アニリン青オレンジG液
正答: ③アゾカルミンG液・⑤アニリン青オレンジG液
ポイント 腎組織の特殊染色で糸球体基底膜やメサンギウム基質、膠原線維を青色(アニリン青)に明瞭に描出する代表的な染色がアザン染色である。アザン染色はまずアゾカルミンG液で核・細胞質・フィブリンを赤に染め、続いてアニリン青オレンジG液で膠原線維や基底膜を青に染め分ける二段階の染色法であり、腎生検における基底膜の肥厚やメサンギウム病変の評価に有用である。腎の結合組織や基底膜の異常を赤と青の明瞭なコントラストで観察できる点が大きな特徴であり、膜性腎症や糸球体硬化の評価に役立つ。●膠原線維・基底膜の染め出し=アザン染色(アゾカルミンG+アニリン青オレンジG)・マッソントリクローム・PAM。●弾性線維の染色=EVG染色・ワイゲルト染色。●フィブリンの染色=アザン染色では赤色(アゾカルミンG)、PTAH染色では青〜青紫色に染まる(PTAH染色では膠原線維は赤褐色を呈する)。●糖原や基底膜のPAS陽性物質の描出=PAS反応・PAM染色。
選択肢ごとの解説
① マッソン液はマッソントリクローム染色に用いる染色液であり、本標本のアザン染色を構成する染色液ではない試薬である。 ② ワンギーソン液は膠原線維を赤、筋線維を黄に染め分ける染色液であり、アザン染色を構成する染色液ではない。 ③ 正しい。アゾカルミンG液はアザン染色において核・細胞質・フィブリンを赤色に染める第一段階の染色液である。 ④ 鉄ヘマトキシリン液は核の堅牢な染色や弾性線維の染色に用いる染色液であり、アザン染色を構成する液ではない。 ⑤ 正しい。アニリン青オレンジG液はアザン染色において膠原線維と基底膜を青色に明瞭に染め分ける染色液である。
📋 まとめの表を見る:腎糸球体基底膜を対象とする特殊染色とその呈色
いずれも腎糸球体基底膜・メサンギウム基質を観察できるが、染色法により呈色が異なる。
第60回 午前56(病理組織細胞学)
病原微生物と特殊染色との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
①Aspergillus fumigatus ― Ziehl-Neelsen染色 ②Helicobacter pylori ― Giemsa染色 ③Mycobacterium tuberculosis ― Warthin-Starry染色 ④Pneumocystis jirovecii ― Grocott染色 ⑤Treponema pallidum ― Alcian blue染色
正答: ②Helicobacter pylori ― Giemsa染色・④Pneumocystis jirovecii ― Grocott染色
ポイント 病原微生物と特殊染色の正しい組合せは、Helicobacter pyloriに対するGiemsa染色(胃粘液中の螺旋菌を簡便に検出する)と、Pneumocystis jiroveciiに対するGrocott染色(嚢子壁を銀染色によって褐黒色に描出する)である。各染色は標的微生物の細胞壁や形態を選択的に染め出す点に特徴がある。組合せを誤ると検出感度が大きく低下する。●真菌や嚢子の銀染色=Grocott染色(Pneumocystis・Aspergillus・Candida)。●螺旋菌の検出=Giemsa染色やWarthin-Starry染色(H.pylori)、Warthin-Starry染色(梅毒トレポネーマ)。●抗酸菌の検出=Ziehl-Neelsen染色(結核菌・らい菌)。●酸性粘液多糖の染色=Alcian blue染色。
選択肢ごとの解説
① Aspergillus fumigatusはGrocottやPASで染め、Ziehl-Neelsenは抗酸菌用であるため、この組合せは誤りである。 ② 正しい。Helicobacter pyloriはGiemsa染色によって胃粘膜表層の螺旋菌として簡便に検出することができる。 ③ Mycobacterium tuberculosisはZiehl-Neelsenで染め、Warthin-Starryは螺旋菌用であるため、この組合せは誤りである。 ④ 正しい。Pneumocystis jiroveciiはGrocott銀染色によって嚢子壁が褐黒色に明瞭に描出される真菌である。 ⑤ Treponema pallidumはWarthin-Starry銀染色で検出し、Alcian blueは酸性粘液用であるため、この組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:病原微生物と特殊染色(病理・微生物標本)
Grocott染色は病理標本で真菌検出に主に用いられ、黒褐色に染色される。Alcian blueは特定の病原体ではなく酸性粘液物質の観察に用いる特殊染色である。
第60回 午前57(病理組織細胞学)
細胞診で正しいのはどれか。
①H-E染色が汎用される。 ②組織診より侵襲が大きい。 ③腫瘍の深達度を判定できる。 ④子宮腟部は穿刺吸引細胞診の対象である。 ⑤剝離細胞診は癌のスクリーニングに用いられる。
正答: ⑤剝離細胞診は癌のスクリーニングに用いられる。
ポイント 細胞診で正しいのは、剝離細胞診が癌のスクリーニングに広く用いられるという点である。剝離細胞診は自然剝離した細胞や擦過によって得られた細胞を採取する低侵襲な方法であり、子宮頸部や喀痰・尿などを対象とする集団検診に適している。細胞診の染色はパパニコロウ染色が汎用され、組織の構築は評価できないため腫瘍の深達度を判定することはできない点が組織診との大きな違いである。細胞診は迅速で繰り返し採取しやすく、広い対象に適用できる利点をもつ一方、確定診断には組織診による裏づけが必要となる。●細胞診の採取法=剝離細胞診(擦過・自然剝離)・穿刺吸引細胞診。●細胞診の主な染色=パパニコロウ染色・ギムザ染色。●細胞診の限界=組織構築や深達度・浸潤の評価には組織診が必要であり、細胞診では補うことができない点に留意する。
選択肢ごとの解説
① 細胞診で汎用されるのはパパニコロウ染色であり、H-E染色は主に病理組織標本である組織診で用いられる染色である。 ② 細胞診は剝離・擦過した細胞を扱うため低侵襲であり、組織を切り取る組織診と比較して侵襲は小さい方法である。 ③ 腫瘍の深達度(浸潤の深さ)は組織構築の評価を要するため組織診で判定し、細胞診では判定することができない。 ④ 子宮腟部は擦過による剝離細胞診の対象であり、穿刺吸引細胞診ではなく擦過による剝離細胞診の対象部位である。 ⑤ 正しい。剝離細胞診は低侵襲で多数の検体を扱えるため、癌の集団検診(スクリーニング)に広く用いられる。
📋 まとめの表を見る:細胞診と組織診の比較
細胞診は組織構築を評価できないため、悪性の有無や組織型の推定はできても病期(ステージ)の確定はできない。
第60回 午前58(病理組織細胞学)
病理解剖において臨床検査技師が行える業務はどれか。
①解剖の承諾取得 ②病理解剖の執刀 ③遺体の縫合 ④解剖後の説明 ⑤病理解剖報告書の作成
正答: ③遺体の縫合
ポイント 病理解剖において臨床検査技師が医師の指示のもとで行える業務は、遺体の縫合(解剖後の体腔の閉鎖・整復)である。解剖の承諾取得、執刀、遺族への説明、病理解剖報告書の作成はいずれも解剖を担当する医師が担う行為であり、技師は臓器の計測や切り出しの補助、標本作製、記録、縫合などの補助業務を担当する。臨床検査技師免許だけで単独の執刀が認められるわけではない。なお、死体解剖保存法は保健所長の許可や死体解剖資格など解剖を行うための要件を定めた法律であり、医師と技師の業務分担を一つひとつ明文化したものではない。●医師が担う行為=執刀・解剖の承諾取得・遺族への説明・病理解剖報告書の作成。●技師が担う補助業務=臓器の計測・切り出しの補助・標本作製・遺体の縫合。●死体解剖保存法=解剖に必要な許可・資格等を定めた法律であり、職種間の業務分担を列挙した規定ではない。
選択肢ごとの解説
① 解剖の承諾取得は執刀医である医師が遺族に対して行うべき行為であり、臨床検査技師が行う業務ではない行為である。 ② 病理解剖の執刀は、死体解剖保存法上の許可や死体解剖資格などの要件を満たした者が行う行為である。臨床検査技師免許だけで単独の執刀は認められず、技師が行える業務には該当しない。 ③ 正しい。解剖後の遺体の縫合(体腔の閉鎖・整復)は、医師の指示のもとで臨床検査技師が行える補助業務である。 ④ 解剖後の遺族への説明は病理診断を担う医師が行うべき行為であり、臨床検査技師が行う業務ではない行為である。 ⑤ 病理解剖報告書の作成は病理診断を行う医師の業務であり、臨床検査技師が報告書を作成することはできない。
第60回 午前59(臨床血液学)
健常人の末梢血のWright-Giemsa染色標本を別に示す。矢印で示す細胞の作用で正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA059.35caf2a335.jpg
①抗原提示 ②抗体産生 ③G-CSF産生 ④ヒスタミン放出 ⑤プロスタサイクリン産生
正答: ④ヒスタミン放出
ポイント 末梢血で粗大な好塩基性(暗青紫色)の顆粒を細胞質に密に有する細胞は好塩基球であり、その顆粒の中にはヒスタミンが含まれている。好塩基球はIgEを介した刺激を受けてヒスタミンなどの化学伝達物質を放出し、即時型(Ⅰ型)アレルギー反応に関与する。白血球分画の中で最も比率が低い細胞であり、組織に存在する肥満細胞と類似した機能をもつ点が特徴である。気管支喘息や蕁麻疹などのアレルギー疾患や寄生虫感染で増加することがあり、その動態は病態を反映する指標となる。●ヒスタミンの放出=好塩基球・肥満細胞。●抗原提示=樹状細胞・マクロファージ・B細胞。●抗体産生=形質細胞(B細胞由来)。●プロスタサイクリンの産生=血管内皮細胞。●G-CSFの産生=マクロファージ・線維芽細胞・血管内皮細胞など。●貪食殺菌=好中球・マクロファージ。
選択肢ごとの解説
① 抗原提示は樹状細胞・マクロファージ・B細胞が担う作用であり、矢印で示す好塩基球の主たる作用ではない。 ② 抗体産生は形質細胞(B細胞に由来する)が担う作用であり、矢印で示す好塩基球が行う作用ではない機能である。 ③ G-CSF産生はマクロファージや線維芽細胞などが担う作用であり、矢印で示す好塩基球の主たる作用ではない。 ④ 正しい。好塩基球は顆粒内のヒスタミンを放出し、IgEを介した即時型(Ⅰ型)アレルギー反応に関与する。 ⑤ プロスタサイクリン産生は血管内皮細胞が担う作用であり、矢印で示す好塩基球が行う作用ではない機能である。
📋 まとめの表を見る:白血球・単球系細胞の主な機能
第60回 午前60(臨床血液学)
止血機構について誤っているのはどれか。
①血小板には粘着能がある。 ②プロトロンビンは肝臓で産生される。 ③プラスミンはフィブリンを分解する。 ④血管内皮細胞は抗血栓性の物質を産生する。 ⑤トロンボモジュリンは血小板凝集能を増強する。
正答: ⑤トロンボモジュリンは血小板凝集能を増強する。
ポイント 止血機構について誤っているのは、トロンボモジュリンが血小板凝集能を増強するという記述である。トロンボモジュリンは血管内皮細胞上でトロンビンと結合してプロテインCを活性化し、活性化第Ⅴ因子・第Ⅷ因子を分解する抗凝固系を作動させる因子であり、血小板凝集を増強する作用はもたない。むしろ内皮由来の抗血栓性物質として血栓形成を抑制する側に働く点が要点である。健常な血管内皮は凝固と線溶のバランスを保ち、血流を維持する役割を担っている。●内皮由来の抗血栓性物質=トロンボモジュリン・プロスタサイクリン・一酸化窒素〈NO〉・ヘパラン硫酸。●一次止血=血小板の粘着と凝集。●線溶系=プラスミンによるフィブリンの分解。●凝固因子の産生=肝臓(プロトロンビン・第Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子などのビタミンK依存性因子)。●フィブリンの分解=プラスミンによる線溶反応。
選択肢ごとの解説
① 血小板はGPⅠbとvon Willebrand因子を介して血管壁に粘着する粘着能をもち、一次止血を担うという正しい記述である。 ② プロトロンビンは肝臓で産生されるビタミンK依存性の凝固因子であり、これは事実に合致する正しい記述である。 ③ プラスミンはフィブリンを分解する線溶系の主要な酵素であり、これは事実に合致する正しい記述だといえる。 ④ 血管内皮細胞はトロンボモジュリンやプロスタサイクリンなどの抗血栓性物質を産生するという正しい記述である。 ⑤ 誤り。トロンボモジュリンはプロテインCを活性化する抗凝固因子であり、血小板凝集能を増強する作用はない。
第60回 午前61(臨床血液学)
赤血球形態と疾患の組合せで正しいのはどれか。
①鎌状赤血球―悪性貧血 ②標的赤血球―骨髄線維症 ③涙滴赤血球―鉄芽球性貧血 ④球状赤血球―再生不良性貧血 ⑤破砕赤血球―血栓性血小板減少性紫斑病
正答: ⑤破砕赤血球―血栓性血小板減少性紫斑病
ポイント 赤血球形態と疾患の正しい組合せは、破砕赤血球(断片化赤血球、シストサイト)と血栓性血小板減少性紫斑病〈TTP〉である。TTPではADAMTS13活性の低下により微小血管に血小板血栓が形成され、そこを通過する赤血球が機械的に破砕されることで破砕赤血球が出現する。微小血管症性溶血性貧血を反映する形態異常であり、末梢血塗抹標本での観察が診断の手がかりとなる。赤血球の形態と疾患の対応を把握することは貧血の鑑別に直結する。●破砕赤血球=TTP・溶血性尿毒症症候群〈HUS〉・DIC(微小血管症性溶血性貧血)。●鎌状赤血球=鎌状赤血球症。●標的赤血球=サラセミア・肝疾患・閉塞性黄疸。●涙滴赤血球=骨髄線維症。●球状赤血球=遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血。●連銭形成=多発性骨髄腫・高γグロブリン血症。
選択肢ごとの解説
① 鎌状赤血球は鎌状赤血球症でみられる形態であり、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)と組み合わせるのは誤りである。 ② 標的赤血球はサラセミアや肝疾患、閉塞性黄疸でみられる形態であり、骨髄線維症と組み合わせるのは誤りである。 ③ 涙滴赤血球は骨髄線維症でみられる形態であり、鉄芽球性貧血と組み合わせるのは誤りである形態異常である。 ④ 球状赤血球は遺伝性球状赤血球症や自己免疫性溶血性貧血でみられ、再生不良性貧血と組み合わせるのは誤りである。 ⑤ 正しい。破砕赤血球は血栓性血小板減少性紫斑病〈TTP〉などの微小血管症性溶血性貧血でみられる形態である。
📋 まとめの表を見る:赤血球の形態異常と関連疾患
破砕赤血球はTTP・HUS・DICなど微小血管症性溶血性貧血でみられる。
第60回 午前62(臨床血液学)
血小板リストセチン凝集が欠如し、末梢血に巨大血小板が出現するのはどれか。
①血小板無力症 ②アスピリン服用時 ③von Willebrand病 ④May-Hegglin異常 ⑤Bernard-Soulier症候群
正答: ⑤Bernard-Soulier症候群
ポイント 血小板リストセチン凝集が欠如し、末梢血に巨大血小板が出現するのはBernard-Soulier症候群である。本症は血小板膜糖蛋白GPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体の異常によってvon Willebrand因子と結合できず、リストセチンによる凝集が起こらない一方、ADPやコラーゲンによる凝集は保たれる点が特徴である。常染色体潜性遺伝の先天性血小板機能異常症であり、血小板数の軽度減少を伴うこともある。凝集惹起物質ごとの反応パターンから血小板機能異常症を鑑別できる。●巨大血小板とリストセチン凝集欠如=Bernard-Soulier症候群。●ADP・コラーゲン凝集の欠如かつリストセチン凝集正常=血小板無力症(GPⅡb/Ⅲa異常)。●リストセチン凝集低下とvWF異常=von Willebrand病(後天性・先天性)。
選択肢ごとの解説
① 血小板無力症はGPⅡb/Ⅲa異常でADPやコラーゲンによる凝集が欠如するが、リストセチン凝集は保たれる別の疾患である。 ② アスピリン服用時はシクロオキシゲナーゼ阻害で二次凝集が低下するが、巨大血小板やリストセチン凝集欠如は呈さない。 ③ von Willebrand病はvWF異常でリストセチン凝集が低下するが、巨大血小板の出現は典型的な所見ではない疾患である。 ④ May-Hegglin異常は巨大血小板と白血球の封入体を呈するが、リストセチン凝集欠如は本症の特徴ではない疾患である。 ⑤ 正しい。Bernard-Soulier症候群はGPⅠb/Ⅸ/Ⅴ異常でリストセチン凝集が欠如し、巨大血小板が出現する。
第60回 午前63(臨床血液学)
第Ⅶ因子欠乏症で延長するのはどれか。
①出血時間 ②トロンビン時間 ③プロトロンビン時間 ④カルシウム再加時間 ⑤活性化部分トロンボプラスチン時間
正答: ③プロトロンビン時間
ポイント 第Ⅶ因子は外因系凝固に関与する因子であり、その欠乏では外因系を反映するプロトロンビン時間〈PT〉が延長する。第Ⅶ因子は外因系のみに関与して共通系や内因系には関わらないため、内因系を反映する活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉は正常に保たれ、PTの単独延長が特徴的な所見となる。PTとAPTTの組合せからどの系統の因子が障害されているかを推定でき、欠乏因子の絞り込みに有用である点が臨床的に重要である。●PTで反映(外因系)=第Ⅶ因子・組織因子経路。●APTTで反映(内因系)=第Ⅷ・Ⅸ・Ⅺ・Ⅻ因子。●PT・APTTがともに延長(共通系)=第Ⅹ・Ⅴ・Ⅱ・Ⅰ因子。●出血時間=血小板数・血小板機能・血管壁による一次止血の評価。●フィブリノゲンの量的・質的評価=トロンビン時間・フィブリノゲン定量。
選択肢ごとの解説
① 出血時間は血小板の機能と血管壁の状態を反映する検査であり、第Ⅶ因子の欠乏症では延長しない検査である。 ② トロンビン時間はフィブリノゲンからフィブリンへの転換を反映する検査であり、第Ⅶ因子欠乏症では延長しない。 ③ 正しい。第Ⅶ因子は外因系の凝固因子であり、その欠乏ではプロトロンビン時間〈PT〉が延長する所見を示す。 ④ カルシウム再加時間は主に内因系を反映する古典的な検査であり、第Ⅶ因子欠乏での延長は典型的ではない検査である。 ⑤ 活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉は内因系を反映する検査であり、第Ⅶ因子欠乏症では正常に保たれる。
📋 まとめの表を見る:PT・APTTの延長パターンと欠乏(異常)凝固因子
PTは外因系・共通系、APTTは内因系・共通系の凝固活性を反映する。
第60回 午前64(臨床血液学)
末梢血のWright-Giemsa染色標本を別に示す。最も考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA064.3e94aa247d.jpg
①急性リンパ芽球性白血病 ②急性前骨髄球性白血病 ③急性単球性白血病 ④急性赤白血病 ⑤成人T細胞白血病
正答: ③急性単球性白血病
ポイント 末梢血像で大型の単球様芽球が増加し、核に切れ込みやレース状の繊細なクロマチンを示す像から、急性単球性白血病(FAB分類M5)が最も考えられる。本型はエステラーゼ二重染色で非特異的エステラーゼ陽性(フッ化ナトリウムで阻害される)を示し、歯肉腫脹や髄外浸潤、血清・尿リゾチームの高値を伴いやすい点が特徴である。形態に加えて細胞化学染色や表面マーカーの所見を組み合わせることで病型を確定する。●急性単球性白血病(M5)=非特異的エステラーゼ陽性・歯肉腫脹。●急性前骨髄球性白血病(M3)=粗大アズール顆粒・Auer小体束(faggot細胞)・DIC合併。●急性赤白血病(M6)=異形赤芽球の増生・PAS陽性。●成人T細胞白血病=花弁状核のflower cell・HTLV-1関連・高Ca血症。●急性骨髄性白血病=ミエロペルオキシダーゼ陽性。
選択肢ごとの解説
① 急性リンパ芽球性白血病はミエロペルオキシダーゼ陰性の小型芽球が主体であり、本像の単球様芽球とは異なる病型である。 ② 急性前骨髄球性白血病は粗大なアズール顆粒やAuer小体束を示す病型であり、本像の単球様芽球の所見とは異なる。 ③ 正しい。大型で単球様の芽球が増加する所見から、急性単球性白血病(FAB分類M5)が最も考えられる病型である。 ④ 急性赤白血病は異形赤芽球の著明な増生を特徴とする病型であり、単球様芽球が主体となる本像とは異なる病型である。 ⑤ 成人T細胞白血病は花弁状核を呈するflower cellを特徴とする病型であり、単球様芽球が主体の本像とは異なる。
📋 まとめの表を見る:急性骨髄性白血病〈AML〉のFAB分類と特徴
急性リンパ性白血病(ALL)はMPO陰性(3%未満)で鑑別する。染色体異常・融合遺伝子は既存の『白血病の染色体異常と融合遺伝子』表を参照。
第60回 午前65(臨床血液学)
50歳の男性。リンパ節腫脹を指摘されて受診した。血清免疫電気泳動の所見を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA065.7b6942943d.jpg
①多発性骨髄腫 ②Sjögren症候群 ③Hodgkinリンパ腫 ④大顆粒リンパ球性白血病 ⑤原発性マクログロブリン血症
正答: ⑤原発性マクログロブリン血症
ポイント リンパ節腫脹を伴い、血清免疫電気泳動でIgMの単クローン性M蛋白を示す像から、原発性マクログロブリン血症〈Waldenströmマクログロブリン血症〉が考えられる。本症はリンパ形質細胞様細胞の増殖によって単クローン性IgMが過剰に産生され、過粘稠度症候群やリンパ節腫脹、肝脾腫などを呈する疾患である。M蛋白の免疫グロブリンのクラスを同定することが鑑別の決め手となる。●IgMの単クローン性増加=原発性マクログロブリン血症。●IgG・IgAのM蛋白またはBence Jones蛋白と骨破壊病変=多発性骨髄腫。●多クローン性高γグロブリン血症=Sjögren症候群・慢性炎症。●明瞭な単クローン性M蛋白を示さない=Hodgkinリンパ腫・大顆粒リンパ球性白血病・反応性リンパ節腫脹。
選択肢ごとの解説
① 多発性骨髄腫はIgGやIgAのM蛋白と骨融解病変を呈する疾患であり、IgMが主体を示す本像とは異なる疾患である。 ② Sjögren症候群は多クローン性の高γグロブリン血症を呈する疾患であり、単クローン性M蛋白を示す本像とは異なる。 ③ Hodgkinリンパ腫はリンパ節腫脹をきたすが、明瞭な単クローン性M蛋白は示さないため本像とは異なる疾患である。 ④ 大顆粒リンパ球性白血病は末梢血の大顆粒リンパ球増加が主体であり、IgMのM蛋白を典型としない別の疾患である。 ⑤ 正しい。IgMの単クローン性M蛋白とリンパ節腫脹の所見から、原発性マクログロブリン血症が考えられる。
第60回 午前66(臨床血液学)
播種性血管内凝固〈DIC〉の所見で正しいのはどれか。2つ選べ。
①FDP上昇 ②血小板数増加 ③フィブリノゲン上昇 ④アンチトロンビン上昇 ⑤プロトロンビン時間延長
正答: ①FDP上昇・⑤プロトロンビン時間延長
ポイント 播種性血管内凝固〈DIC〉では全身の微小血管で凝固が亢進し、凝固因子と血小板が消費されるとともに、二次的に線溶系も活性化される。その結果、線溶亢進を反映してフィブリン分解産物〈FDP〉が上昇し、凝固因子の消費によりプロトロンビン時間〈PT〉が延長する。基礎疾患の存在を背景に発症する後天性の重篤な凝固異常であり、出血傾向と臓器障害をきたしうる病態である。複数の検査項目を組み合わせて総合的に診断する必要がある。●DICで上昇・延長する項目=FDP・Dダイマー・PT・APTT。●DICで低下する項目=血小板数・フィブリノゲン・アンチトロンビン。●代表的な基礎疾患=敗血症・産科合併症(常位胎盤早期剝離・羊水塞栓など)・悪性腫瘍・急性前骨髄球性白血病(M3)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。DICでは二次線溶の亢進により、フィブリン分解産物〈FDP〉が上昇するという所見がみられる。 ② DICでは血小板が微小血栓の形成に消費されるため血小板数は減少しており、増加するという記述は誤りである。 ③ DICではフィブリノゲンが凝固反応に消費されて低下するため、上昇するという記述は誤りである所見である。 ④ DICではアンチトロンビンが凝固の抑制に消費されて低下するため、上昇するという記述は誤りである所見である。 ⑤ 正しい。DICでは凝固因子の消費により、プロトロンビン時間〈PT〉が延長するという所見が認められる。
第60回 午前67(臨床血液学)
Down症候群でみられる染色体異常はどれか。
①5番染色体モノソミー ②7番染色体モノソミー ③8番染色体トリソミー ④18番染色体トリソミー ⑤21番染色体トリソミー
正答: ⑤21番染色体トリソミー
ポイント Down症候群でみられる染色体異常は21番染色体トリソミー(21トリソミー)である。21番染色体が3本となることで、特徴的な顔貌、筋緊張低下、知的障害、先天性心疾患などを呈する。多くは標準型トリソミーであるが、ロバートソン転座による転座型や、細胞分裂後の不分離によって生じるモザイク型も存在する点を理解しておく必要がある。母体の高年齢が発症のリスク因子として知られ、染色体検査(核型分析)で確定診断される疾患である。●常染色体トリソミー=21(Down症候群)・18(Edwards症候群)・13(Patau症候群)。●性染色体の数的異常=Turner症候群(45,X)・Klinefelter症候群(47,XXY)。●欠失症候群=5p欠失(猫鳴き症候群)・22q11.2欠失(DiGeorge症候群)。
選択肢ごとの解説
① 5番染色体モノソミーはDown症候群の異常ではなく、5pの部分欠失は猫鳴き症候群の原因として知られる異常である。 ② 7番染色体モノソミーはDown症候群の染色体異常ではなく、本症の発症とは関連しない染色体異常である。 ③ 8番染色体トリソミーは骨髄系腫瘍などでみられる獲得性の異常であり、Down症候群の染色体異常ではない。 ④ 18番染色体トリソミーはEdwards症候群の原因となる染色体異常であり、Down症候群とは異なる疾患の異常である。 ⑤ 正しい。Down症候群は21番染色体トリソミー(21トリソミー)によって生じる代表的な染色体異常である。
📋 まとめの表を見る:先天性染色体異常症候群と核型
Down症候群など常染色体トリソミーと、Turner・Klinefelterなど性染色体異常は「どちらの分類に属するか」が問われやすい。DiGeorge症候群・Angelman症候群は常染色体の微細欠失症であり性染色体異常ではない点に注意。
第60回 午前68(臨床微生物学)
真核細胞はどれか。
①Bacillus anthracis ②Candida albicans ③Chlamydia trachomatis ④Orientia tsutsugamushi ⑤Treponema pallidum
正答: ②Candida albicans
ポイント 真核細胞は核膜に包まれた明瞭な核と膜で囲まれた細胞小器官をもつ細胞であり、選択肢の中ではCandida albicans(真菌・酵母)が該当する。真菌は真核生物に分類され、細胞膜にコレステロールの代わりにエルゴステロールを含む。他の選択肢はいずれも核膜をもたない原核生物(細菌およびリケッチア類)であり、染色体は細胞質中に裸の状態で存在する。真核生物と原核生物の細胞構造の違いを把握することが分類の基本となる。●真核生物=真菌(Candida・Aspergillus)・原虫・寄生虫。●原核生物(細菌)=Bacillus・Treponema・Chlamydia・Orientia(リケッチア類)。●細胞構造をもたず核酸と蛋白からなり偏性細胞内寄生する=ウイルス。●細胞壁にペプチドグリカンをもつ=細菌。
選択肢ごとの解説
① Bacillus anthracisは炭疽の原因となるグラム陽性桿菌の原核生物であり、核膜をもつ真核細胞ではない微生物である。 ② 正しい。Candida albicansは真菌(酵母)であり、核膜と膜で囲まれた細胞小器官をもつ真核細胞に分類される。 ③ Chlamydia trachomatisは偏性細胞内寄生性の原核生物(細菌)であり、核膜をもつ真核細胞ではない微生物である。 ④ Orientia tsutsugamushiはツツガムシ病の病原体でリケッチア類の原核生物であり、真核細胞ではない微生物である。 ⑤ Treponema pallidumは梅毒の病原体であるスピロヘータ(原核生物)であり、真核細胞ではない微生物である。
第60回 午前69(臨床微生物学)
糸状菌はどれか。2つ選べ。
①Aspergillus fumigatus ②Candida albicans ③Cryptococcus neoformans ④Trichophyton rubrum ⑤Trichosporon asahii
正答: ①Aspergillus fumigatus・④Trichophyton rubrum
ポイント 糸状菌(カビ)は菌糸を形成して発育する真菌であり、選択肢の中ではAspergillus fumigatusとTrichophyton rubrumが該当する。Aspergillusは分生子頭をつくる環境真菌で日和見感染の原因となり、Trichophytonは皮膚糸状菌で白癬の原因となる。これに対し酵母様真菌は単細胞で主に出芽により増殖する点で区別される。発育形態の違いを把握することが真菌の分類と同定の基本となる。●糸状菌(菌糸を形成)=Aspergillus・Trichophyton・接合菌(Mucor)。●酵母様真菌(単細胞・出芽)=Candida・Cryptococcus・Trichosporon。●二形性真菌=環境では菌糸、組織内や体温では酵母となる(Histoplasma・Sporothrixなど)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。Aspergillus fumigatusは菌糸を形成して発育し分生子頭をつくる代表的な糸状菌(カビ)である。 ② Candida albicansは主に出芽によって増殖する酵母様真菌であり、典型的な糸状菌には分類されない真菌である。 ③ Cryptococcus neoformansは厚い莢膜をもつ酵母様真菌であり、菌糸を形成する糸状菌には分類されない真菌である。 ④ 正しい。Trichophyton rubrumは菌糸を形成する皮膚糸状菌であり、白癬(水虫など)の原因となる糸状菌である。 ⑤ Trichosporon asahiiは関節分生子を形成する酵母様真菌であり、典型的な糸状菌とは性状が異なる真菌である。
第60回 午前70(臨床微生物学)
Gimenez染色標本(別冊No.10)を別に示す。赤色の桿菌はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA070.db861c1c4d.jpg
①Campylobacter jejuni ②Haemophilus parainfluenzae ③Legionella pneumophila ④Pseudomonas aeruginosa ⑤Vibrio parahaemolyticus
正答: ③Legionella pneumophila
ポイント Gimenez染色は青緑色の背景に菌体を赤色に染め出す染色法であり、通常のグラム染色で染まりにくいLegionellaやリケッチア、クラミジアの検出に用いられる。赤色の桿菌として描出されるのはLegionella pneumophilaで、本菌は喀痰中で染色されにくいためGimenez染色が有用となる。レジオネラ肺炎の起因菌として重要な菌であり、温水や空調設備が感染源となることが知られている。●Gimenez染色で赤染する微生物=Legionella・リケッチア・Chlamydia。●特殊培地を要する菌=Legionella(B-CYE)・百日咳菌(Bordet-Gengou)。●通常のグラム染色では染まりにくい菌=Legionella・抗酸菌・スピロヘータ・マイコプラズマ・リケッチア。
選択肢ごとの解説
① Campylobacter jejuniは湾曲したグラム陰性桿菌であり、Gimenez染色で特異的に赤染する対象菌ではない細菌である。 ② Haemophilus parainfluenzaeはグラム陰性の短桿菌であり、Gimenez染色で赤染する対象菌ではない細菌である。 ③ 正しい。Legionella pneumophilaはGimenez染色により青緑色の背景に赤色の桿菌として明瞭に描出される。 ④ Pseudomonas aeruginosaは通常のグラム染色で容易に染まる桿菌であり、Gimenez染色の対象菌ではない細菌である。 ⑤ Vibrio parahaemolyticusは湾曲したグラム陰性桿菌であり、Gimenez染色の対象となる菌ではない細菌である。
第60回 午前71(臨床微生物学)
Gimenez染色標本(別冊No.10)を別に示す。分離培養に用いるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA071.db861c1c4d.jpg
①B-CYE寒天培地 ②Bordet-Gengou寒天培地 ③Sabouraud寒天培地 ④SS寒天培地 ⑤TCBS寒天培地
正答: ①B-CYE寒天培地
ポイント Gimenez染色で赤染する桿菌Legionella pneumophilaの分離培養には、L-システインと鉄を添加したB-CYE寒天培地(buffered charcoal yeast extract寒天培地)を用いる。Legionellaはシステイン要求性が強く、通常の血液寒天培地などでは発育しないため、専用の特殊培地が分離に必須となる。レジオネラ症の検査においては培養に加えて尿中抗原検査や遺伝子検査も用いられる。●Legionellaの分離=B-CYE寒天培地。●百日咳菌の分離=Bordet-Gengou培地。●真菌の分離=Sabouraud寒天培地。●サルモネラ・赤痢菌の選択分離=SS寒天培地。●腸炎ビブリオやコレラ菌の選択分離=TCBS寒天培地。●一般的な細菌の発育=普通寒天培地・血液寒天培地。
選択肢ごとの解説
① 正しい。Legionella pneumophilaの分離には、システインと鉄を添加したB-CYE寒天培地を用いる必要がある。 ② Bordet-Gengou寒天培地は百日咳菌(Bordetella pertussis)の分離に用いる培地であり、Legionella用ではない。 ③ Sabouraud寒天培地は真菌の分離培養に用いる培地であり、Legionellaの分離に用いる培地ではない培地である。 ④ SS寒天培地はサルモネラや赤痢菌の選択分離に用いる培地であり、Legionellaの分離には用いない培地である。 ⑤ TCBS寒天培地は腸炎ビブリオなどの選択分離に用いる培地であり、Legionellaの分離には用いない培地である。
第60回 午前72(臨床微生物学)
細菌の細胞膜の内側にあるのはどれか。2つ選べ。
正答: ④プラスミド・⑤リボソーム
ポイント 細菌の細胞膜の内側(細胞質側)に存在するのはプラスミドとリボソームである。プラスミドは染色体とは独立した環状DNAで細胞質内に存在し、薬剤耐性遺伝子などを担う遺伝因子である。リボソームは蛋白合成を行う細胞質内の小器官である。一方、莢膜・外膜・ポーリンはいずれも細胞膜よりも外側に位置する構造物である点を区別する必要がある。細胞膜を境とした内外の構造の配置を理解することが、細菌の構造に関する設問を解く基礎となる。●細胞膜の内側(細胞質)にある構造=核様体・プラスミド・リボソーム。●細胞膜の外側にある構造=細胞壁(ペプチドグリカン)・莢膜・線毛・鞭毛。●グラム陰性菌に特有で細胞壁の外側に位置する=外膜・リポ多糖〈LPS〉・ポーリン蛋白。●運動器官=鞭毛。●付着器官=線毛(性線毛・定着線毛)。
選択肢ごとの解説
① 莢膜は細胞壁のさらに外側を覆う多糖体の層であり、細胞膜の内側に存在する構造物ではない外側の構造である。 ② 外膜はグラム陰性菌で細胞壁の外側に存在する膜であり、細胞膜の内側に存在する構造物ではない外側の構造である。 ③ ポーリンは外膜に存在して物質透過孔を形成する蛋白であり、細胞膜の内側に存在する構造物ではない蛋白である。 ④ 正しい。プラスミドは細胞質内に存在する染色体外の環状DNAであり、細胞膜の内側に位置する遺伝因子である。 ⑤ 正しい。リボソームは細胞質内で蛋白合成を行う小器官であり、細胞膜の内側に位置する細胞内の構造物である。
第60回 午前73(臨床微生物学)
抗酸性を示すのはどれか。
①Genus Nocardia ②Genus Actinomyces ③Genus Erysipelothrix ④Genus Corynebacterium ⑤Genus Propionibacterium
正答: ①Genus Nocardia
ポイント 抗酸性は、抗酸菌染色(Ziehl-Neelsen染色など)で酸アルコールによる脱色に抵抗して赤く染まり続ける性質であり、細胞壁に含まれるミコール酸(長鎖脂肪酸)に由来する。選択肢の中ではGenus Nocardia(ノカルジア属)が部分的な抗酸性を示す。ノカルジアは好気性放線菌であり、分枝した菌糸状のグラム陽性桿菌として観察される点が特徴であり、免疫不全者で日和見感染を起こすことがある。●抗酸性を示す菌(部分的を含む)=Mycobacterium・Nocardia。●非抗酸性のグラム陽性桿菌=Actinomyces・Corynebacterium・Propionibacterium・Erysipelothrix・Listeria。●抗酸性の基盤=細胞壁に含まれるミコール酸と高い脂質含量による疎水性の構造。
選択肢ごとの解説
① 正しい。Genus Nocardiaは部分的な抗酸性を示す好気性放線菌であり、分枝した菌糸状の形態を呈する菌属である。 ② Genus Actinomycesは嫌気性の放線菌でありミコール酸を欠くため、抗酸性を示さない菌属に分類される細菌である。 ③ Genus Erysipelothrixはグラム陽性桿菌でありミコール酸をもたないため、抗酸性を示さない菌属である細菌である。 ④ Genus Corynebacteriumはグラム陽性桿菌であり、典型的な抗酸性を示さない菌属に分類される細菌である。 ⑤ Genus Propionibacteriumは嫌気性のグラム陽性桿菌であり、抗酸性を示さない常在菌を含む菌属である細菌である。
📋 まとめの表を見る:抗酸菌(Mycobacterium属)の分類(Runyon分類・発育速度・結核菌の特徴)
抗酸菌は世代時間が長く発育が遅い(培養に数週間を要する)。BCGワクチンには結核菌ではなくMycobacterium bovisの弱毒株が用いられる。Nocardia属は抗酸菌ではないが部分的な抗酸性を示す点で紛らわしい。
第60回 午前74(臨床微生物学)
DHL寒天培地で下痢便を培養したコロニーを別に示す。矢印のコロニー性状から考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA074.4297f75106.jpg
①Aeromonas hydrophila ②Escherichia coli ③Salmonella enterica ④Shigella sonnei ⑤Vibrio parahaemolyticus
正答: ③Salmonella enterica
ポイント DHL寒天培地(デオキシコール酸塩・硫化水素・乳糖寒天培地)は腸内細菌の選択分離培地であり、乳糖非分解菌は無色透明、硫化水素〈H₂S〉産生菌は中心が黒色のコロニーを形成する。中心が黒く乳糖を分解しないコロニーからSalmonella entericaが考えられる。下痢便からの腸内細菌の分離同定に広く用いられる選択分離培地である。コロニーの色調と硫化水素産生の有無から起因菌を推定できる点が有用である。●DHLで黒色中心(H₂S産生)=Salmonella・Proteus。●無色(乳糖非分解・H₂S陰性)=Shigella。●赤色(乳糖分解)=Escherichia coli・Klebsiella。●主な下痢起因菌=サルモネラ・赤痢菌・腸炎ビブリオ・病原性大腸菌・カンピロバクター・エルシニア。
選択肢ごとの解説
① Aeromonas hydrophilaは乳糖分解性を示すことが多く、中心が黒色の硫化水素産生コロニーという所見とは異なる。 ② Escherichia coliは乳糖を分解して赤色のコロニーを形成するため、中心が黒色となる本問の所見とは異なる細菌である。 ③ 正しい。中心が黒く乳糖を分解しないコロニーは、硫化水素を産生するSalmonella entericaが考えられる。 ④ Shigella sonneiは乳糖非分解で無色だが硫化水素を産生しないため、中心が黒色となる所見とは異なる細菌である。 ⑤ Vibrio parahaemolyticusは選択培地としてTCBSを用いる菌であり、DHL上で黒色中心となる所見とは異なる細菌である。
📋 まとめの表を見る:腸内細菌科の生化学的性状の鑑別(乳糖分解・硫化水素・リジン脱炭酸・インドール)
サルモネラ・赤痢菌など乳糖非分解菌はTSI培地で高層部のみ黄変し斜面は赤色のまま残るが、大腸菌など乳糖分解菌は斜面・高層とも黄変する。チフス菌(Typhi)はTSI培地でガスをほとんど産生せず硫化水素も少量にとどまる点が他の多くのSalmonella血清型と異なる。尿素分解(ウレアーゼ)陽性の代表はProteus属・Morganella属・Providencia属。
第60回 午前75(臨床微生物学)
人工培地に発育しないのはどれか。
①Clostridium difficile ②Helicobacter pylori ③Legionella pneumophila ④Mycobacterium leprae ⑤Mycoplasma pneumoniae
正答: ④Mycobacterium leprae
ポイント 人工培地に発育しないのはMycobacterium leprae(らい菌)である。らい菌は偏性細胞内寄生性が非常に強く、現在に至るまで人工培地での培養に成功していないため、アルマジロやマウスの足蹠など動物体内でのみ増殖させて維持される。培養できないことが診断や研究上の大きな制約となっている菌であり、診断は皮膚スメアの抗酸菌染色や病理組織で行う。●人工培地で培養不能=Mycobacterium leprae・梅毒トレポネーマ・偏性細胞内寄生体(リケッチア・クラミジア)。●特殊培地で培養可能=Helicobacter pylori(微好気)・Legionella(B-CYE)・Mycoplasma(無細胞壁・特殊培地)。●嫌気培養で発育=Clostridium difficileなどの偏性嫌気性菌。
選択肢ごとの解説
① Clostridium difficileは嫌気培養によって人工培地(CCFA培地など)で発育する偏性嫌気性のグラム陽性桿菌である。 ② Helicobacter pyloriは微好気条件下で特殊な培地に発育させることができる螺旋状のグラム陰性桿菌である細菌である。 ③ Legionella pneumophilaはシステインと鉄を含むB-CYE寒天培地に発育させることができるグラム陰性桿菌である。 ④ 正しい。Mycobacterium lepraeは人工培地で培養することができず、アルマジロなど動物体内でのみ増殖する菌である。 ⑤ Mycoplasma pneumoniaeは細胞壁を欠くが、ステロールを含む特殊な培地に発育させることができる微生物である。
第60回 午前76(臨床微生物学)
ファージを介して遺伝子が受け渡される現象はどれか。
①接合 ②形質導入 ③形質転換 ④突然変異 ⑤遺伝子組換え
正答: ②形質導入
ポイント 形質導入はバクテリオファージを媒介として細菌から細菌へ遺伝子が運ばれる現象である。ファージが宿主細菌に感染して増殖し新しい粒子を組み立てる際、誤って宿主の染色体DNAやプラスミドの一部を粒子内に取り込み、次に別の細菌へ感染したときその遺伝子を持ち込むことで形質が伝達される。薬剤耐性遺伝子や毒素遺伝子(志賀毒素・ジフテリア毒素など)の細菌間拡散の経路として重要であり、溶原化したプロファージが関与することも多い。●細菌の遺伝子水平伝達の三様式=接合(性線毛を介した直接接触によるプラスミド移行)・形質転換(環境中の裸のDNA断片の取り込み)・形質導入(ファージ媒介の伝達)。●ファージの感染様式=溶菌サイクル(増殖して宿主を破壊する)と溶原サイクル(宿主染色体に組み込まれて潜伏する)があり、後者の解離時に宿主遺伝子を運ぶことがある。
選択肢ごとの解説
① 接合は性線毛(F線毛)を介した細菌どうしの直接接触でプラスミドDNAが移行する伝達様式であり、ファージは関与しないため該当しない。 ② 正しい。形質導入はファージが宿主のDNA断片を粒子内に取り込み、別の細菌へ運ぶことで遺伝子を受け渡す現象である。 ③ 形質転換は環境中に遊離した裸のDNA断片を細菌が直接取り込んで形質が変化する現象で、ファージを介さないため該当しない。 ④ 突然変異は遺伝子そのものの塩基配列が複製誤りなどで変化する現象であり、外部からの遺伝子の受け渡しではないため該当しない。 ⑤ 遺伝子組換えは相同なDNA間で配列が組み換わる分子過程を指し、ファージによる細菌間の受け渡し現象そのものではないため該当しない。
第60回 午前77(臨床微生物学)
B型肝炎ウイルスの消毒薬として効果があるのはどれか。2つ選べ。
①フェノール ②ポビドンヨード ③ホルムアルデヒド ④次亜塩素酸ナトリウム ⑤グルコン酸クロルヘキシジン
正答: ③ホルムアルデヒド・④次亜塩素酸ナトリウム
ポイント B型肝炎ウイルス〈HBV〉はエンベロープを持つDNAウイルスだが消毒薬に対する抵抗性が比較的強く、有効なのは酸化作用や蛋白変性・アルキル化作用の強い薬剤に限られる。次亜塩素酸ナトリウムは強い酸化作用でウイルスの核酸・蛋白を破壊し、ホルムアルデヒドは蛋白・核酸をアルキル化して不活化するため、いずれもHBVに有効な高〜中水準消毒薬である。低水準消毒薬では確実な失活が得られない。●消毒薬の水準分類=高水準(グルタラール・フタラール・過酢酸。芽胞を含む広範な微生物に作用する)、中水準(次亜塩素酸ナトリウム・消毒用アルコール・ヨード系・フェノール系。結核菌にも有効)、低水準(クロルヘキシジン・第四級アンモニウム塩・両性界面活性剤など)。●HBVへの効果=次亜塩素酸ナトリウム・グルタラール・ホルムアルデヒドなどは有効だが、同じ中水準でもフェノールには確実な効果が期待できず、クロルヘキシジンなど低水準消毒薬も無効である。水準の区分だけでなく濃度・接触時間・対象微生物に応じて薬剤を選択する必要がある。
選択肢ごとの解説
① フェノールは低〜中水準消毒薬で一般細菌には有効だが、HBVに対する確実な失活効果は期待できないため正答に含まれない。 ② ポビドンヨードは中水準消毒薬で多くの微生物に有効だが、本問ではHBVに有効な正答肢としては選択されていない。 ③ 正しい。ホルムアルデヒドは蛋白・核酸をアルキル化して不活化する作用をもち、HBVに有効な消毒薬である。 ④ 正しい。次亜塩素酸ナトリウムは強い酸化作用で核酸・蛋白を破壊する作用をもち、HBVに有効な消毒薬である。 ⑤ グルコン酸クロルヘキシジンは低水準消毒薬であり、HBVなど抵抗性のウイルスには効果が不十分で正答に含まれない。
第60回 午前78(臨床微生物学)
β-ラクタマーゼを産生しないのはどれか。
①Klebsiella pneumoniae ②Moraxella catarrhalis ③Neisseria gonorrhoeae ④Stenotrophomonas maltophilia ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ⑤Streptococcus pneumoniae
ポイント β-ラクタマーゼはβ-ラクタム環を加水分解してペニシリン系・セフェム系を不活化する酵素で、多くのグラム陰性桿菌や一部の球菌が産生する。Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)はβ-ラクタマーゼを産生せず、ペニシリン耐性が生じる場合はペニシリン結合蛋白〈PBP〉の変化(PRSP)によるものであり、酵素分解とは機序が異なる点が特徴である。●β-ラクタマーゼを産生する菌=Klebsiella pneumoniae(ESBL産生株を含む)・Moraxella catarrhalis・淋菌の一部(PPNG)・大腸菌・インフルエンザ菌の一部など。●β-ラクタマーゼ非産生で耐性化する菌=肺炎球菌(PBPの変異)・MRSA(PBP2'の獲得)。Stenotrophomonas maltophiliaは金属β-ラクタマーゼを産生し、カルバペネムも分解する。
選択肢ごとの解説
① Klebsiella pneumoniaeはβ-ラクタマーゼを産生し、基質特異性拡張型(ESBL)産生株も知られるため、非産生菌ではない。 ② Moraxella catarrhalisはβ-ラクタマーゼを産生してペニシリンを分解する性質をもつため、非産生菌ではない。 ③ Neisseria gonorrhoeaeにはβ-ラクタマーゼ産生株(PPNG)が存在するため、産生しない菌とは言い切れない。 ④ Stenotrophomonas maltophiliaは金属β-ラクタマーゼを産生してカルバペネムも分解するため、非産生菌ではない。 ⑤ 正しい。Streptococcus pneumoniaeはβ-ラクタマーゼを産生せず、耐性が出る場合もPBPの変化によるものである。
第60回 午前79(臨床免疫学)
自己免疫疾患の発症に最も関連の深い免疫系の特徴はどれか。
正答: ①寛容
ポイント 自己免疫疾患は、本来自己成分には反応しないよう保たれている免疫寛容〈自己トレランス〉が破綻し、自己抗原に対して免疫応答が起こることで発症する。胸腺での自己反応性T細胞の除去(中枢性寛容)や、末梢での制御性T細胞による抑制・アナジー(末梢性寛容)が破綻すると、自己反応性リンパ球が活性化して自己組織を攻撃し、炎症や組織傷害を引き起こす。したがって発症に最も深く関わる免疫系の特徴は寛容である。●免疫系の基本的特徴=特異性(抗原を区別する)・多様性(膨大な抗原に対応する受容体レパートリーをもつ)・記憶(二次応答が増強される)・自己寛容(自己と非自己を識別する)。●寛容の機構=中枢性寛容(胸腺・骨髄での自己反応性細胞の負の選択による除去)と末梢性寛容(アナジー・制御性T細胞による抑制)に大別され、これらの破綻が自己免疫の基盤となる。
選択肢ごとの解説
① 正しい。寛容(自己トレランス)の破綻により自己抗原へ免疫応答が起こることが、自己免疫疾患発症の中心的な機序である。 ② 記憶は一度応答した抗原に対する二次応答を増強する性質であり、自己免疫疾患の発症機序そのものではないため該当しない。 ③ 多様性は多種の抗原に対応できる受容体レパートリーを指す性質で、自己免疫疾患の直接の原因ではないため該当しない。 ④ 特異性は抗原を区別して認識する性質で重要だが、自己免疫の発症に最も深く関わるのは寛容の破綻であるため該当しない。 ⑤ 二次応答は記憶に基づく再応答であり、自己免疫疾患の発症に最も関連の深い特徴とはいえないため該当しない。
第60回 午前80(臨床免疫学)
単独で免疫した場合に抗体が産生され難いのはどれか。
①アルブミン ②インスリン ③コラーゲン ④サイロキシン ⑤ヘモグロビン
正答: ④サイロキシン
ポイント サイロキシンは分子量約780の甲状腺ホルモンで、それ自体では分子量が小さくB細胞・T細胞を十分に刺激できないハプテン的な低分子物質であり、単独で免疫しても抗体が産生されにくい。抗体産生を誘導するには、アルブミンなどの担体蛋白に結合させて分子量を大きくする必要がある。一方アルブミン・インスリン・コラーゲン・ヘモグロビンはいずれも分子量が大きく、十分な免疫原性をもつ蛋白である。●免疫原性を左右する条件=分子量が大きいこと・異物性(自己と化学的に異なること)・構造の化学的複雑性・体内で適度に分解され抗原提示を受けること。●ハプテン=それ自体では抗体産生を誘導できないが、担体蛋白と結合すると免疫原となる低分子物質(薬剤・ホルモン・各種化学物質など)を指し、低分子のサイロキシンもこれに近い性質をもつ。
選択肢ごとの解説
① アルブミンは分子量約66000の血漿蛋白で十分な免疫原性をもつため、単独でも抗体を誘導しやすく該当しない。 ② インスリンは分子量約5800のペプチドホルモンで一定の免疫原性をもつため、単独でも抗体産生が起こり得て該当しない。 ③ コラーゲンは分子量の大きい線維性蛋白で十分な免疫原性をもつため、単独でも抗体が産生され得て該当しない選択肢である。 ④ 正しい。サイロキシンは分子量の小さい甲状腺ホルモンで、単独では抗体が産生され難いハプテン的な物質である。 ⑤ ヘモグロビンは分子量約64000の蛋白で十分な免疫原性をもつため、単独でも抗体を誘導しやすく該当しない。
第60回 午前81(臨床免疫学)
Ouchterlony法〈二重免疫拡散法〉の原理はどれか。
①凝集反応 ②中和反応 ③沈降反応 ④溶解反応 ⑤補体結合反応
正答: ③沈降反応
ポイント Ouchterlony法〈二重免疫拡散法〉は、寒天ゲル中で抗原と抗体をそれぞれ別の穴に入れて互いに拡散させ、両者が適切な濃度比で出会った位置に抗原抗体結合による白い沈降線を形成させて観察する沈降反応を原理とする方法である。沈降線の形(融合・交差・スパー形成)から、複数抗原の同一性・部分同一性・非同一性を判定できる。可溶性抗原と抗体の反応を可視化する基本手技である。●沈降反応を用いる手技=Ouchterlony法(二重免疫拡散)・一元/二元免疫拡散・免疫電気泳動・免疫比濁法・免疫比朧法など。●抗原抗体反応の分類=沈降反応(可溶性抗原)・凝集反応(粒子状抗原)・補体結合反応・中和反応・溶解反応などがあり、抗原の性状と検出系の違いによって区別され、目的に応じて使い分けられる。
選択肢ごとの解説
① 凝集反応は赤血球やラテックスなどの粒子状抗原が抗体で架橋され凝集する反応で、Ouchterlony法の原理ではないため該当しない。 ② 中和反応は毒素やウイルスの生物活性を抗体が打ち消す反応で、ゲル内沈降を観察する本法とは異なるため該当しない。 ③ 正しい。Ouchterlony法はゲル内で拡散した抗原と抗体が出会い沈降線を作る沈降反応を原理とする方法である。 ④ 溶解反応は補体存在下で抗体が標的細胞を溶解する反応であり、ゲル内沈降を用いる本法の原理ではないため該当しない。 ⑤ 補体結合反応は補体の消費量を指標として抗原抗体反応をみる方法で、ゲル内沈降線を観察する本法とは異なるため該当しない。
第60回 午前82(臨床免疫学)
感染の治癒を示す指標はどれか。
①HBs抗体 ②HCV抗体 ③HIV抗体 ④HTLV-1抗体 ⑤IgM型HAV抗体
正答: ①HBs抗体
ポイント HBs抗体はB型肝炎ウイルス〈HBV〉の表面抗原〈HBs抗原〉に対する中和抗体で、感染の治癒や免疫の獲得(ワクチン接種後を含む)を示す指標である。HBs抗原が消失してHBs抗体が出現するセロコンバージョンは、ウイルスが排除され感染が治癒に向かったことを意味する。他のウイルス抗体は感染の存在や既往を示すだけで治癒の証明にはならない。●HBVマーカーの意味=HBs抗原(現在の感染)・HBs抗体(治癒や免疫の獲得)・HBc抗体(既往または持続感染)・HBe抗原(ウイルス増殖が活発)・HBe抗体(増殖が低下)。●抗体陽性が治癒を意味しない例=HCV抗体・HIV抗体・HTLV-1抗体は感染の既往や持続キャリア状態を示すにとどまり、IgM型HAV抗体はA型肝炎の急性期感染を示す指標である。
選択肢ごとの解説
① 正しい。HBs抗体はHBVの表面抗原に対する中和抗体であり、感染の治癒や免疫の獲得を示す指標となる。 ② HCV抗体は感染既往または持続感染を示す指標であり、陽性でも治癒を意味しないため治癒の指標ではない。 ③ HIV抗体は感染の存在を示す指標だが治癒を意味せず、HIV感染は持続するため治癒の指標とはならない。 ④ HTLV-1抗体は持続的なキャリア状態を示す指標であり、感染の治癒を示すものではないため該当しない。 ⑤ IgM型HAV抗体はA型肝炎の急性期感染を示す指標であり、感染の治癒を示す指標ではないため該当しない。
第60回 午前83(臨床免疫学)
臓器特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。
①CEA ②SCC ③CA15-3 ④CA19-9 ⑤PIVKA-Ⅱ
正答: ⑤PIVKA-Ⅱ
ポイント PIVKA-ⅡはビタミンK欠乏状態や肝細胞癌で産生される異常プロトロンビン(凝固活性を欠くプロトロンビン前駆体)で、肝細胞癌に対する臓器特異性の高い腫瘍マーカーである。AFPと組み合わせることで肝細胞癌の診断・治療効果判定・経過観察に用いられる。一方で多臓器の癌で上昇するマーカーは臓器特異性が低い。●臓器特異性の高いマーカー=PIVKA-Ⅱ/AFP(肝)・PSA(前立腺)・CA15-3(乳腺)・CA125(卵巣)・サイログロブリン(甲状腺)。●臓器特異性の低い(広範な癌で上昇する)マーカー=CEA(大腸など消化器を含む多臓器の腺癌)・CA19-9(膵・胆道を中心に消化器癌)・SCC(子宮頸部・肺・食道など扁平上皮癌全般)。これらは複数臓器で上昇するため臓器特異性は低く、補助的な指標として用いられる。
選択肢ごとの解説
① CEAは大腸など消化器癌のほか肺・乳腺など多臓器の腺癌で広く上昇するため、臓器特異性は低く該当しない。 ② SCCは子宮頸部や肺・食道など扁平上皮癌全般で上昇するマーカーで、特定臓器への特異性は高くないため該当しない。 ③ CA15-3は乳癌で上昇するが他の癌でも上昇し得るため、ここでは最も臓器特異性が高い肢とはいえず該当しない。 ④ CA19-9は膵・胆道癌などで上昇するが消化器癌全般で広く上昇するため、臓器特異性は低く該当しない選択肢である。 ⑤ 正しい。PIVKA-Ⅱは肝細胞癌で産生される異常プロトロンビンで、臓器特異性の高い腫瘍マーカーである。
第60回 午前84(臨床免疫学)
Ⅲ型アレルギー性疾患はどれか。
①気管支喘息 ②Basedow病 ③重症筋無力症 ④自己免疫性溶血性貧血 ⑤全身性エリテマトーデス
正答: ⑤全身性エリテマトーデス
ポイント Ⅲ型アレルギーは、可溶性抗原と抗体が結合した抗原抗体複合体(免疫複合体)が組織や血管壁・腎糸球体などに沈着し、補体活性化を介して好中球が集積・脱顆粒して炎症と組織傷害を起こす機序である。全身性エリテマトーデス〈SLE〉は抗DNA抗体などによる免疫複合体が腎糸球体や血管・関節に沈着して傷害を起こす代表的なⅢ型アレルギー疾患であり、ループス腎炎などを生じる。●アレルギーの分類=Ⅰ型(IgE・即時型。気管支喘息やアナフィラキシー)・Ⅱ型(細胞傷害型。自己免疫性溶血性貧血や重症筋無力症)・Ⅲ型(免疫複合体型。SLEや糸球体腎炎・血清病)・Ⅳ型(遅延型・T細胞性。接触皮膚炎やツベルクリン反応)。●Ⅱ型の刺激型=Basedow病(TSH受容体を刺激する抗体によって甲状腺が過剰に活性化される)。
選択肢ごとの解説
① 気管支喘息はIgEを介した即時型のⅠ型アレルギーであり、免疫複合体によるⅢ型ではないため該当しない選択肢である。 ② Basedow病はTSH受容体を刺激する抗体によるⅡ型(刺激型)アレルギーで、Ⅲ型ではないため該当しない。 ③ 重症筋無力症はアセチルコリン受容体に対する抗体によるⅡ型(細胞傷害型)アレルギーで、Ⅲ型ではないため該当しない。 ④ 自己免疫性溶血性貧血は赤血球に対する抗体による細胞傷害型のⅡ型アレルギーで、Ⅲ型ではないため該当しない。 ⑤ 正しい。全身性エリテマトーデスは免疫複合体が組織や腎糸球体に沈着して傷害を起こすⅢ型アレルギー性疾患である。
第60回 午前85(臨床免疫学)
リウマトイド因子の対応抗原はどれか。
①変性IgA ②変性IgD ③変性IgE ④変性IgG ⑤変性IgM
正答: ④変性IgG
ポイント リウマトイド因子〈RF〉は、変性または凝集したIgGのFc部分を抗原として認識する自己抗体で、測定対象となるのは主にIgMクラスのRFである。関節リウマチで高頻度に陽性となるが、他の膠原病(Sjögren症候群など)や慢性感染症、健常高齢者でも陽性となることがあり、疾患特異性は高くない点に注意を要する。●関節リウマチ関連の自己抗体=リウマトイド因子(変性IgGのFcに対する自己抗体)・抗CCP抗体(シトルリン化ペプチドに対する。特異性が高く早期診断に有用)。●代表的な自己抗体とその対応抗原=抗二本鎖DNA抗体(DNA。SLE)・抗ミトコンドリア抗体(原発性胆汁性胆管炎)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(橋本病)・抗アセチルコリン受容体抗体(重症筋無力症)などがある。
選択肢ごとの解説
① 変性IgAはリウマトイド因子の対応抗原ではなく、RFが認識するのはIgGのFc部分であるため該当しない選択肢である。 ② 変性IgDはリウマトイド因子の対応抗原ではなく、RFが認識するのはIgGのFc部分であるため該当しない選択肢である。 ③ 変性IgEはリウマトイド因子の対応抗原ではなく、RFが認識するのはIgGのFc部分であるため該当しない選択肢である。 ④ 正しい。リウマトイド因子は変性または凝集したIgGのFc部分を対応抗原とする自己抗体である。 ⑤ 変性IgMはリウマトイド因子の対応抗原ではなく、RFが認識するのはIgGのFc部分であるため該当しない選択肢である。
第60回 午前86(臨床免疫学)
ABO血液型検査法で正しいのはどれか。
①ガラス板法では3%に希釈した患者血球を用いる。 ②ガラス板法では10%に希釈した抗A、抗B試薬を用いる。 ③試験管法では希釈しない患者血球を用いる。 ④試験管法では抗A、抗B試薬を各1~2滴ずつ滴下する。 ⑤カラム凝集法ではカラムに抗A、抗B試薬を各1滴ずつ添加する。
正答: ④試験管法では抗A、抗B試薬を各1~2滴ずつ滴下する。
ポイント ABO血液型検査の試験管法では、抗A・抗B試薬を試験管に各1〜2滴ずつ滴下し、患者赤血球浮遊液を加えて混和・遠心したのちに凝集の有無を判定するのが正しい手技である。検査では赤血球上の抗原を調べるオモテ検査と、血清中の抗A・抗B抗体を調べるウラ検査の両者を行い、結果が一致することを確認する。●ABO検査法の種類=試験管法(遠心して凝集を判定し感度が高い)・ガラス板法(スライド上で混和して肉眼で判定する)・カラム凝集法(ゲルやガラスビーズの層で凝集を捕捉して判定する)。●判定の原則=オモテ検査とウラ検査の結果の一致を確認し、不一致のときは亜型・寒冷凝集素・連銭形成・後天的変化などを考慮して原因を精査する。
選択肢ごとの解説
① ガラス板法では原則として希釈しない患者血球を用いるため、3%に希釈した血球を用いるという記述は誤りである。 ② ガラス板法では市販濃度の抗A・抗B試薬をそのまま用いるため、10%に希釈して用いるという記述は誤りである。 ③ 試験管法では一般に2〜5%程度に調製した患者赤血球浮遊液を用いるため、希釈しないという記述は誤りである。 ④ 正しい。試験管法では抗A・抗B試薬を各1〜2滴ずつ滴下し、患者赤血球浮遊液と反応させて判定する。 ⑤ カラム凝集法では試薬があらかじめカラムに封入された専用カードを用いることが多く、用手で各1滴添加するとは限らない。
第60回 午前87(臨床免疫学)
間接抗グロブリン試験による不規則抗体スクリーニング検査について正しいのはどれか。
①反応増強剤は通常使用しない。 ②IgM型不規則抗体のみ検出する。 ③10~12種類のパネル血球を使用する。 ④抗グロブリン抗体を加えて直ちに反応させる。 ⑤生理食塩液による不十分な洗浄は偽陽性の原因となる。
正答: ④抗グロブリン抗体を加えて直ちに反応させる。
ポイント 間接抗グロブリン試験〈IAT〉は、患者血清(血漿)とスクリーニング赤血球を37℃で反応させてIgG抗体を感作させ、未結合の血漿蛋白を生理食塩液で十分に洗浄したのちに抗グロブリン抗体(クームス血清)を加えて凝集を判定する検査で、不規則抗体スクリーニングや交差適合試験に用いられる。手順としては感作・洗浄ののちに抗グロブリン抗体を加えて反応させ、遠心して判定する。●不規則抗体スクリーニングの実際=通常2〜3種類のO型既知抗原赤血球を用い、PEGやLISSなどの反応増強剤を併用して臨床的に意義のあるIgG抗体を検出する。陽性のときは10種類前後のパネル血球で抗体同定を行う。●抗グロブリン試験の区別=直接法(in vivoで感作した赤血球の検出)と間接法(in vitroで感作させて検出する。抗体スクリーニングや交差適合試験)。
選択肢ごとの解説
① PEGやLISSなどの反応増強剤を併用することが多いため、反応増強剤を通常使用しないという記述は誤りである。 ② IATは主にIgG型の不規則抗体を検出する検査であるため、IgM型不規則抗体のみを検出するという記述は誤りである。 ③ スクリーニングには通常2〜3種類の赤血球を用い、10〜12種類のパネルは抗体同定に用いるため、この記述は誤りである。 ④ 正しい。感作・洗浄ののちに抗グロブリン抗体を加えて反応させ、遠心して判定するのが本検査の手順である。 ⑤ 生理食塩液による洗浄が不十分だと残存した遊離免疫グロブリンが抗グロブリン抗体を中和し偽陰性の原因となるため、偽陽性とする記述は誤りである。
第60回 午前88(臨床免疫学)
献血血液で核酸増幅検査が行われるのはどれか。2つ選べ。
①成人T細胞白血病ウイルス〈HTLV-1〉 ②ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉 ③サイトメガロウイルス〈CMV〉 ④C型肝炎ウイルス〈HCV〉 ⑤EBウイルス〈EBV〉
正答: ②ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉・④C型肝炎ウイルス〈HCV〉
ポイント 輸血用の献血血液では、抗体産生前のウインドウ期に感染を見逃すことを防ぐ目的で核酸増幅検査〈NAT〉が行われており、対象はヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉・C型肝炎ウイルス〈HCV〉・B型肝炎ウイルス〈HBV〉の3項目である。NATはウイルス遺伝子そのものを増幅して直接検出するため、抗体・抗原検査より早期に感染を捉えられ、輸血感染のリスクを大幅に低減する。●献血スクリーニングの方法=NAT(HIV・HCV・HBV)・血清学的検査(HBs抗原、HTLV-1抗体、梅毒、HBc抗体など)・肝機能検査(ALT)。●NATの利点と限界=ウインドウ期を大きく短縮できる利点があるが、検出限界以下のごく初期の感染では陰性となることがあり、輸血感染を完全には排除できない。
選択肢ごとの解説
① 成人T細胞白血病ウイルス〈HTLV-1〉は抗体検査でスクリーニングされる対象であり、献血血液のNAT対象ではないため該当しない。 ② 正しい。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉は献血血液で核酸増幅検査が行われる3項目のうちのひとつである。 ③ サイトメガロウイルス〈CMV〉は通常の献血血液の核酸増幅検査の定型的な対象には含まれていないため該当しない。 ④ 正しい。C型肝炎ウイルス〈HCV〉は献血血液で核酸増幅検査が行われる3項目のうちのひとつである。 ⑤ EBウイルス〈EBV〉は献血血液の核酸増幅検査の対象には含まれていないため、該当しない選択肢である。
第60回 午前89(臨床免疫学)
母児間血液型不適合による新生児溶血性疾患について正しいのはどれか。
①初回妊娠では起こらない。 ②原因となる赤血球抗体はIgMである。 ③ABO不適合の場合、児はO型である。 ④母親の直接抗グロブリン試験が陽性になる。 ⑤Rh(D)不適合はABO不適合より重症である。
正答: ⑤Rh(D)不適合はABO不適合より重症である。
ポイント Rh(D)不適合による新生児溶血性疾患はABO不適合より重症化しやすい。Rh(D)陰性の母が前回妊娠の分娩時や流産・輸血でD抗原に感作されると抗D抗体(IgG)を産生し、次回以降の妊娠でこのIgGが胎盤を通過して胎児赤血球を破壊し、強い溶血・貧血・胎児水腫・出生後の高ビリルビン血症と核黄疸を起こすためである。●新生児溶血性疾患の機序=母児間の血液型不適合で母が産生した胎盤通過性のIgG抗体が、胎児赤血球の抗原に結合して溶血を起こす。診断は児の直接抗グロブリン試験が陽性となる。●ABO不適合との比較=ABO不適合は自然抗体(IgG)により初回妊娠でも起こり得るが一般に軽症で、Rh(D)不適合は感作後の妊娠で重症化しやすい。予防として分娩後などに抗D免疫グロブリンを投与し、母体の感作を防ぐ。
選択肢ごとの解説
① ABO不適合では自然抗体により初回妊娠でも起こり得るため、初回妊娠では起こらないという記述は誤りである。 ② 胎盤を通過して胎児赤血球を傷害するのは胎盤通過性のIgG抗体であるため、原因抗体がIgMであるという記述は誤りである。 ③ ABO不適合は多くが母O型で児がA型またはB型のときに生じるため、児がO型であるという記述は誤りである。 ④ 溶血するのは児の赤血球であり、陽性となるのは児の直接抗グロブリン試験であるため、母親が陽性という記述は誤りである。 ⑤ 正しい。Rh(D)不適合は感作後の妊娠で重症化しやすく、一般にABO不適合より重症な経過をとる。
📋 まとめの表を見る:新生児溶血性疾患〈HDN〉:ABO不適合とRh不適合の比較
Rh不適合はRh陰性の母がRh陽性の胎児に感作されて産生したIgG型抗D抗体が胎盤を通過して起こる。ABO不適合は自然抗体(IgG)によることが多く、Rh不適合より一般に軽症。
第60回 午前90(公衆衛生学)
日本国憲法第25条に記述されているのはどれか。
①医療倫理 ②環境保健 ③健康増進 ④公衆衛生 ⑤労働衛生
正答: ④公衆衛生
ポイント 日本国憲法第25条は『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』と生存権を定め、第2項で『国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない』と国の責務を規定している。公衆衛生は条文中に明記されており、保健衛生施策の憲法上の根拠となる。●憲法第25条の内容=生存権の保障と、社会福祉・社会保障・公衆衛生の向上増進という国の責務を定めている。●第25条の理念を具体化する個別法=健康増進法(国民の健康づくり)・地域保健法(保健所や市町村保健センター)・感染症法・食品衛生法などが、公衆衛生の向上を図るための具体的な制度を定めている。
選択肢ごとの解説
① 医療倫理は職業倫理や医療法等で扱われる概念であり、憲法第25条の本文に明記された語ではないため該当しない。 ② 環境保健は環境基本法など別の法体系で扱われる事項であり、憲法第25条の本文に記された語ではないため該当しない。 ③ 健康増進は健康増進法の名称で用いられる語だが、憲法第25条の本文そのものに記された語ではないため該当しない。 ④ 正しい。憲法第25条は生存権の保障とともに、国による公衆衛生の向上増進の責務を本文に明記している。 ⑤ 労働衛生は労働安全衛生法で扱われる事項であり、憲法第25条の本文に記された語ではないため該当しない。
第60回 午前91(公衆衛生学)
三次予防はどれか。
①がん検診 ②健康教育 ③予防接種 ④リハビリテーション ⑤新生児マススクリーニング
正答: ④リハビリテーション
ポイント 三次予防は、すでに発症した疾患について悪化や合併症・再発を防ぎ、機能回復と社会復帰を図る段階で、リハビリテーションが代表例である。後遺症の軽減、残存機能の活用、QOLの維持・向上、職場復帰の支援などを含む。●予防の三段階=一次予防(健康増進・予防接種・健康教育・生活習慣改善などで発症そのものを防ぐ)・二次予防(がん検診・新生児マススクリーニングなどによる早期発見と早期治療)・三次予防(リハビリテーション・機能回復・再発予防・社会復帰)。●各段階の具体例=一次予防は禁煙指導や栄養指導、二次予防は各種の検診やスクリーニング、三次予防は理学療法・作業療法や職場への復職支援などが該当する。
選択肢ごとの解説
① がん検診は無症状の段階での早期発見・早期治療を目的とする二次予防であり、三次予防ではないため該当しない。 ② 健康教育は発症そのものを未然に防ぐことを目的とする一次予防に位置づけられ、三次予防ではないため該当しない。 ③ 予防接種は感染症の発症を未然に防ぐことを目的とする一次予防であり、三次予防ではないため該当しない選択肢である。 ④ 正しい。リハビリテーションは発症後の機能回復や社会復帰を図ることを目的とする三次予防に該当する。 ⑤ 新生児マススクリーニングは疾患の早期発見を目的とする二次予防であり、三次予防ではないため該当しない。
第60回 午前92(公衆衛生学)
ある疾患の地域比較研究において、A地区では生理機能検査で有病率が判定され、B地区では問診により有病率が判定された。この疫学研究における最も大きな問題点はどれか。
①交絡 ②有意差 ③偶然誤差 ④情報収集の偏り ⑤標本選択の偏り
正答: ④情報収集の偏り
ポイント A地区では生理機能検査で、B地区では問診で有病率を判定すると、有病率を測定する手段そのものが群間で異なるため、その方法の差が見かけの地域差を生み、地域比較を正しく行えない。これは情報を得る手段や測定・分類の違いに起因する情報バイアス(情報収集の偏り)であり、本研究の最大の問題点である。●バイアス(系統誤差)の分類=選択バイアス(標本選択の偏り。対象の選び方による系統的なずれ)・情報バイアス(情報収集の偏り。測定や分類・情報収集法の違いによる系統的誤差)・交絡(第三因子による見かけの関連)。●誤差の種類=系統誤差(バイアス。一定方向のずれで標本数を増やしても消えない)と偶然誤差(ランダムなばらつきで標本サイズを大きくすれば縮小する)とに分けられる。
選択肢ごとの解説
① 交絡は第三の因子が曝露と結果の両方に関連して見かけの関連を生む現象であり、ここでの最大の問題ではないため該当しない。 ② 有意差は統計的な判定の結果を表す概念であり、研究デザインに内在する偏りそのものではないため該当しない。 ③ 偶然誤差は標本のばらつきによる方向性のない誤差であり、測定方法の系統的な違いを説明できないため該当しない。 ④ 正しい。両地区で有病率の測定方法が異なるため、情報収集の偏り(情報バイアス)がこの研究の最大の問題点となる。 ⑤ 標本選択の偏りは対象の選び方に起因する偏りであり、ここでは測定方法の違いが問題となるため該当しない選択肢である。
第60回 午前93(公衆衛生学)
感染源対策はどれか。
①健康増進 ②出席停止 ③予防接種 ④手洗いの励行 ⑤媒介動物の駆除
正答: ②出席停止・⑤媒介動物の駆除
ポイント 感染症対策は、病原体を出す源を断つ感染源対策、伝播を断つ感染経路対策、宿主の抵抗力を高める感受性者対策の三つに大別される。感染源対策に該当するのは、感染源となる患者を集団から遠ざける出席停止(隔離)と、病原体を保有・運搬する媒介動物の駆除であり、いずれも病原体の供給源を直接断つ対策である。●感染源対策=患者の隔離・出席停止・早期治療、感染動物やリザーバ(保有動物)の駆除や処分。●感染経路対策=手洗い・手指消毒・マスク着用・環境消毒・上下水道の衛生管理など伝播の遮断。●感受性者(宿主)対策=予防接種による免疫の付与・健康増進による抵抗力の向上などがあり、宿主側の防御力を高めることを目的とする。
選択肢ごとの解説
① 健康増進は宿主の抵抗力を高めることを目的とする感受性者対策であり、感染源対策ではないため該当しない選択肢である。 ② 正しい。出席停止は感染源となる患者を集団から遮断して病原体の供給源を断つ感染源対策である。 ③ 予防接種は宿主に免疫を与えることを目的とする感受性者対策であり、感染源対策ではないため該当しない選択肢である。 ④ 手洗いの励行は病原体の伝播経路を断つことを目的とする感染経路対策であり、感染源対策ではないため該当しない。 ⑤ 正しい。媒介動物の駆除は病原体を保有・運搬する供給源を直接断つ感染源対策に該当する。
第60回 午前94(公衆衛生学)
医療計画について定めているのはどれか。
①医療法 ②薬事法 ③健康増進法 ④食品衛生法 ⑤地域保健法
正答: ①医療法
ポイント 医療計画は医療法に基づいて都道府県が策定する計画で、地域における医療提供体制の体系的な確保を目的とし、基準病床数、二次・三次医療圏の設定、5疾病5事業(がん・脳卒中・心筋梗塞等の心血管疾患・糖尿病・精神疾患と、救急・災害・へき地・周産期・小児の各医療)および在宅医療に関する事項などを定める。●医療法の規定内容=医療提供体制の基本法として、医療計画・病院や診療所の開設や管理・医療安全の確保・広告規制などを定める。●他の保健衛生法規=健康増進法(国民の健康づくり)・地域保健法(保健所や市町村保健センター)・食品衛生法(飲食に起因する衛生危害の防止)・医薬品医療機器等法(医薬品や医療機器の品質と安全の確保)などがある。
選択肢ごとの解説
① 正しい。医療計画は医療法に基づいて都道府県が策定する医療提供体制の確保のための計画である。 ② 薬事法(現在の医薬品医療機器等法)は医薬品や医療機器等の品質と安全を規制する法律で、医療計画を定める法ではない。 ③ 健康増進法は国民の健康増進を図ることを目的とする法律であり、医療計画を定める法ではないため該当しない。 ④ 食品衛生法は飲食に起因する衛生上の危害の防止を目的とする法律で、医療計画を定める法ではないため該当しない。 ⑤ 地域保健法は保健所等による地域保健対策の枠組みを定める法律で、医療計画を定める法ではないため該当しない。
第60回 午前95(医用工学概論)
10¹²に相当する接頭語はどれか。
正答: ②テラ
ポイント 10の12乗を表すSI接頭語はテラ〈記号T〉である。SI接頭語は量の大きさを10の整数乗で簡潔に示すための記号で、テラは10¹²を意味し、コンピュータの記憶容量や周波数の表記などに広く用いられる。●大きい側の主なSI接頭語=デカ(da、10¹)・ヘクト(h、10²)・キロ(k、10³)・メガ(M、10⁶)・ギガ(G、10⁹)・テラ(T、10¹²)・ペタ(P、10¹⁵)・エクサ(E、10¹⁸)。●小さい側の主なSI接頭語=デシ(d、10⁻¹)・センチ(c、10⁻²)・ミリ(m、10⁻³)・マイクロ(μ、10⁻⁶)・ナノ(n、10⁻⁹)・ピコ(p、10⁻¹²)・フェムト(f、10⁻¹⁵)であり、これらはいずれも量の大きさを10の整数乗で表すための記号である。
選択肢ごとの解説
① ギガ(記号G)は10⁹を表す接頭語であり、10¹²ではないため該当しない。テラの1000分の1(3桁小さい)にあたる区分である。 ② 正しい。テラ(記号T)は10¹²に相当するSI接頭語であり、ギガの1000倍にあたる大きさである。 ③ デカ(記号da)は10¹を表す接頭語であり、10¹²ではないため該当しない。最も小さい側の倍数接頭語である。 ④ ヘクト(記号h)は10²を表す接頭語であり、10¹²ではないため該当しない。面積のヘクタールなどに用いられる。 ⑤ メガ(記号M)は10⁶を表す接頭語であり、10¹²ではないため該当しない。テラはメガの100万倍にあたる。
第60回 午前96(医用工学概論)
抵抗4個を接続した直流回路を図に示す。回路のa-b間の電位差が0Vであるとき、抵抗Rの両端電圧〔V〕はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA096.3734647f88.jpg
正答: ⑤3.0
ポイント a-b間の電位差が0Vであるホイートストンブリッジは平衡状態にあり、各枝の分圧比が等しくなっている。電源8Vを、100Ωと60Ωの枝、250ΩとRの枝がそれぞれ分圧しており、平衡条件では100/(100+60)=250/(250+R)が成り立つ。これを解くと(250+R)×100=160×250となりR=150Ωが得られる。Rの両端電圧は分圧の関係から8×R/(250+R)=8×150/400=3.0Vと求められる。●ブリッジの平衡条件=向かい合う抵抗の積が等しいこと(R1×R4=R2×R3)、あるいは各枝の分圧比が等しいこと。平衡時には検流計に電流が流れない。●分圧の法則=直列に接続された複数の抵抗にかかる電圧は、それぞれの抵抗値の大きさに比例して配分される。
選択肢ごとの解説
① 1.0Vは平衡条件からR=150Ωとして求まる両端電圧3.0Vと一致しないため、誤った値である。 ② 1.5Vは平衡条件からR=150Ωとして求まる両端電圧3.0Vと一致しないため、誤った値である。 ③ 2.0Vは平衡条件からR=150Ωとして求まる両端電圧3.0Vと一致しないため、誤った値である。 ④ 2.5Vは平衡条件からR=150Ωとして求まる両端電圧3.0Vと一致しないため、誤った値である。 ⑤ 正しい。平衡条件からR=150Ωとなり、Rの両端電圧は8×150/400=3.0Vと求められる値である。
第60回 午前97(医用工学概論)
生体電気現象計測において不分極電極で軽減できるのはどれか。
①基線の動揺 ②高周波雑音 ③電極の発熱 ④時定数の変動 ⑤金属イオンの溶出
正答: ①基線の動揺
ポイント 不分極電極(銀-塩化銀電極が代表)は、電極と電解液(ペースト)の界面で電荷の受け渡しが可逆的かつ円滑に行われ、界面での分極(電流に伴う電位のずれ)がほとんど生じない。このため体動や圧迫による界面電位の変動が小さく、心電図や脳波などの生体電気現象計測で問題となる基線の動揺(ドリフト)を軽減できる。●不分極電極の特徴=Ag/AgCl電極が代表で、分極電圧が小さく直流的な基線変動に強い。表面電極として広く用いられる。●計測上の主な雑音と対策=基線動揺(電極の分極や体動による)、商用交流雑音(シールド・差動増幅・ハムフィルタ)、高周波雑音(低域通過フィルタ)、筋電図の混入などがあり、それぞれ原因に応じた対策が必要である。
選択肢ごとの解説
① 正しい。不分極電極は電極と電解液の界面の分極が小さいため、基線の動揺(ドリフト)を軽減できる電極である。 ② 高周波雑音は低域通過フィルタなどで対応する雑音であり、不分極電極で軽減される主な対象ではないため該当しない。 ③ 電極の発熱は生体電気計測の表面電極で問題となる現象ではなく、不分極電極で軽減する対象ではないため該当しない。 ④ 時定数の変動は主に増幅器側の特性に関わる事項であり、不分極電極の効果として直接挙げられないため該当しない。 ⑤ 金属イオンの溶出はむしろ分極電極で問題となる現象だが、本問で軽減できる現象として最も適切なのは基線の動揺である。
第60回 午前98(医用工学概論)
EPRシステム(等電位接地)で規定されている機器間の電位差はどれか。
①10 μV以下 ②100 μV以下 ③1 mV以下 ④10 mV以下 ⑤100 mV以下
正答: ④10 mV以下
ポイント EPRシステム〈等電位接地〉は、心臓カテーテル室や集中治療室など患者周囲の露出導電部や医用機器の接地を一点に集めて等電位に保ち、機器間のわずかな電位差による微小漏れ電流が患者を介して流れ心室細動(ミクロショック)を起こすことを防ぐ仕組みである。規定では患者環境内の各導電部・機器間の電位差を10mV以下に保つことが求められる。●ミクロショック対策=等電位接地(EPR)・絶縁・心臓直結時の漏れ電流の制限(マクロショックに比べはるかに微小な電流で細動が起こり得る)。●電気安全管理の基準=接地漏れ電流・患者漏れ電流・患者測定電流の許容値、保護接地線の抵抗値、絶縁の確保などが各機器の種別ごとに規定されている。
選択肢ごとの解説
① 10μV以下はEPRシステムで規定される機器間の電位差の値ではないため、該当しない選択肢である。 ② 100μV以下はEPRシステムで規定される機器間の電位差の値ではないため、該当しない選択肢である。 ③ 1mV以下はEPRシステムで規定される機器間の電位差の値ではないため、該当しない選択肢である。 ④ 正しい。EPRシステムでは患者環境内の各機器間の電位差を10mV以下に保つことが規定されている。 ⑤ 100mV以下はEPRシステムで規定される許容値より大きい値であり、規定に適合しないため該当しない。
第60回 午前99(医用工学概論)
デジタル医用画像処理の標準規格はどれか。
①DICOM ②HL7 ③ICD-10 ④MEDLINE ⑤UMIN
正答: ①DICOM
ポイント DICOM〈Digital Imaging and Communications in Medicine〉は、CTやMRI、超音波などの医用画像とその付帯情報(患者情報・撮影条件など)の保存形式と通信手順を定めた国際標準規格である。これにより異なるメーカーの撮影装置・サーバ・ビューアの間で画像を相互運用でき、PACS(医用画像保存通信システム)の基盤となっている。●医療情報の主な標準規格=DICOM(医用画像の保存・通信)・HL7(医療情報システム間で患者情報や検査結果を交換するためのメッセージ規格)・ICD-10(疾病および関連保健問題の国際統計分類コード)。●標準規格でない関連用語=MEDLINEは医学文献の書誌データベース、UMINは大学病院医療情報ネットワークであり、いずれも画像の標準規格ではない。
選択肢ごとの解説
① 正しい。DICOMはデジタル医用画像とその付帯情報の保存と通信に関する国際的な標準規格である。 ② HL7は医療情報システム間で患者情報や検査結果を交換するメッセージ規格であり、画像処理の標準規格ではない。 ③ ICD-10は疾病および関連保健問題の国際統計分類コードであり、医用画像処理の標準規格ではないため該当しない。 ④ MEDLINEは医学文献の書誌データベースの名称であり、医用画像処理の標準規格ではないため該当しない選択肢である。 ⑤ UMINは大学病院医療情報ネットワークの名称であり、医用画像処理の標準規格ではないため該当しない選択肢である。
第60回 午前100(医用工学概論)
滅菌について正しいのはどれか。
①濾過滅菌は80 ℃以上で行う。 ②高圧蒸気滅菌は芽胞菌には無効である。 ③エチレンオキサイドガスは生体に無害である。 ④プラズマ滅菌はエアレーションが必要である。 ⑤乾熱滅菌(250 ℃、60分)はエンドトキシンを不活化できる。
正答: ⑤乾熱滅菌(250 ℃、60分)はエンドトキシンを不活化できる。
ポイント 乾熱処理のうち250℃で30分以上といった検証された高温条件(本問の250℃・60分はこれを満たす)は、熱に強く通常の高圧蒸気滅菌では分解されないエンドトキシン(細菌由来の発熱性物質)を破壊・不活化できる数少ない方法で、ガラス器具などの脱パイロジェン処理に用いられる。180℃・60分のような通常の乾熱滅菌条件は微生物の殺滅には有効だが、エンドトキシンの不活化には不十分である。●主な滅菌法と特徴=高圧蒸気滅菌(飽和水蒸気121℃前後で芽胞も殺滅し広く用いられる)・乾熱滅菌(高温乾燥空気で芽胞の殺滅とエンドトキシンの不活化が可能)・エチレンオキサイドガス滅菌(低温で熱に弱い器材に使うが残留毒性がありエアレーションが必要)・濾過滅菌(熱に弱い液体を孔径の小さい膜で除菌する)・過酸化水素低温プラズマ滅菌(低温で残留が少ない)。●注意点=EOGは生体毒性があるためエアレーション必須、プラズマ滅菌は残留物が少なく原則エアレーション不要である。
選択肢ごとの解説
① 濾過滅菌は熱に弱い液体や気体を孔径の小さいフィルタで除菌する方法であり、80℃以上の加熱で行うものではないため誤りである。 ② 高圧蒸気滅菌は飽和水蒸気で芽胞菌も殺滅できる滅菌法であるため、芽胞に無効であるという記述は誤りである。 ③ エチレンオキサイドガスは生体に有毒で残留毒性があるため、生体に無害であるという記述は誤りである。 ④ エアレーションが必要なのはエチレンオキサイドガス滅菌であり、プラズマ滅菌は残留が少なく原則不要であるため誤りである。 ⑤ 正しい。乾熱滅菌(250℃、60分など)は熱に強いエンドトキシンを破壊・不活化できる滅菌法である。
📋 まとめの表を見る:滅菌法の種類・条件・対象
高圧蒸気滅菌は芽胞形成菌を含め有効だが、プリオンは通常の方法では不活化できない。
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