第60回(2014) 臨床検査技師国家試験 午前51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版

第60回 午前51(病理組織細胞学)

死後、自家融解を起こしやすい臓器はどれか。

正答: ⑤膵臓

ポイント
膵臓はトリプシン、キモトリプシン、リパーゼ、アミラーゼなどの強力な消化酵素を腺房細胞内に豊富に含むため、死後に酵素が組織自身を分解する自家融解(自己消化)を最も起こしやすい臓器である。胃や腸管も消化酵素と腸内細菌の作用により急速に変化する。自家融解は死後の無酸素状態のもとでリソソーム酵素などの内因性酵素が細胞構成成分を分解していく無菌的な現象であり、組織の構築が早期に崩れて剖検所見の解釈に大きく影響するため、死後はできるだけ速やかな固定が必要となる点が臨床上きわめて重要である。●自家融解が速い臓器=膵臓・胃腸粘膜・副腎髄質。●自家融解が比較的遅い組織=心筋・骨格筋・線維性結合組織。●腐敗との区別=自家融解は内因性酵素による無菌的な自己消化であり、腐敗は外来の細菌の増殖と作用による分解である。

選択肢ごとの解説

第60回 午前52(病理組織細胞学)

成人男性の臓器重量で正常範囲内のものはどれか。

正答: ①脳 1,200 g

ポイント
成人男性の臓器重量の正常値は、脳が約1,200〜1,400g、心臓が約250〜350g、肝臓が約1,200〜1,500g、脾臓が約100〜150g、腎臓が片側で約120〜150g(両側合わせて約250〜300g)である。これらの基準値は剖検や画像診断において臓器の腫大や萎縮を客観的に判断するための重要な指標となる。設問の各数値をこの基準と照合すると、脳1,200gのみが正常範囲に含まれ、その他はいずれも著しく過大に設定された明らかな異常値であり、重量から病態を読み取ることが求められる。●過大に設定された選択肢=心臓1,000g・肝臓2,500g・脾臓300g・腎臓500g。●臓器重量の増加をきたす病態=うっ血・心肥大・脂肪沈着・腫瘍浸潤・アミロイドーシス。●臓器重量の減少をきたす病態=萎縮・線維化・低形成。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:健常成人の主要臓器の大きさと重量(剖検時の概数)

臓器重量[g]
脳1,200~1,300
肝臓1,000~1,300
肺(男性)約1,000(右500~600、左450~500)
肺(女性)約900(右400~500、左400~450)
心臓250~300
脾臓90~150
腎臓(片側)100~130
膵臓70~100
膀胱30~38
子宮30~40
甲状腺15~20
前立腺11~18
卵巣5~15
副腎7~8
下垂体0.5~0.7
松果体0.2~0.3
剖検時の目安値。年齢・性差・個体差により変動する。肝臓は体内最大の実質臓器(約1,000~1,300g)。

第60回 午前53(病理組織細胞学)

中和が必要な脱灰法はどれか。2つ選べ。

正答: ②硝酸法・⑤プランク・リクロ〈Plank-Rychlo〉法

ポイント
脱灰後に中和が必要なのは酸を用いる脱灰法であり、組織内に残存した酸が後続の染色性を著しく損なうため、流水水洗やアルカリ処理による中和を要する。硝酸法は強酸を用いて脱灰力が強い反面、組織損傷も大きく、染色性を保つために中和が必須となる。プランク・リクロ〈Plank-Rychlo〉法も塩酸・ギ酸・塩化アルミニウムを含む強酸性の脱灰液であり、残存酸を除く中和を要する代表的な脱灰法である。なお中和が不十分だと核がヘマトキシリンで染まらず、組織が褪色して鏡検に支障をきたすため、脱灰後の処理は標本の質を左右する重要な工程である。●酸脱灰法で中和が必要=硝酸法・塩酸法・プランク・リクロ法。●キレート脱灰で中和が不要かつ緩徐=EDTA法。●その他=トリクロロ酢酸法は緩徐な脱灰であり、抗原性や核染色性の保持に優れ、強い中和操作を要さない方法である。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:脱灰法の種類と特徴(分類・適温・中和操作)

脱灰法分類適温中和操作
塩酸法無機酸室温必要
硝酸法無機酸室温必要
Plank-Rychlo法(迅速脱灰)無機酸(塩化アルミニウム・ギ酸・濃塩酸)室温(硬組織では4℃で緩徐脱灰も可)必要
電気脱灰法酸性脱灰液+通電室温必要
ギ酸法有機酸室温不要
トリクロロ酢酸法有機酸15〜20℃不要
EDTA法中性(キレート)30℃前後(酸脱灰より高い)不要
無機酸(塩酸・硝酸)・Plank-Rychlo液・電気脱灰法は中和操作が必要。有機酸(ギ酸・トリクロロ酢酸)とEDTA法は中和不要で、有機酸は水洗せず直接70%アルコールに浸漬する。EDTA法は唯一の中性脱灰液で、他の酸脱灰法より高い温度(約30℃)で行える。

第60回 午前54(病理組織細胞学)

ホルマリン色素の除去に用いる溶液はどれか。

正答: ④アンモニアアルコール

ポイント
ホルマリン色素(酸性ホルマリン色素、ヘマチン色素)は、血液を豊富に含む組織を酸性化したホルマリンで固定した際に、ヘモグロビンに由来して生じる褐色〜黒褐色の沈着である。この色素はアンモニアアルコール(アルコール性アンモニア水)で除去でき、固定液に中性緩衝ホルマリンを用いれば発生そのものを防止することができる。鏡検時に偽の陰影となって診断の妨げになるため、適切な除去処理と発生予防の両面が重要となる。とくにメラニン色素や血鉄素などとの鑑別が必要であり、偏光顕微鏡で複屈折を示す点も特徴である。●ホルマリン色素の除去=アンモニアアルコール・飽和アルコール性ピクリン酸。●メラニンなど他の色素の漂白=過マンガン酸カリウムによる酸化とシュウ酸による還元の組合せ。●発生の予防=緩衝(中性)ホルマリンの使用と過度な固定の回避。

選択肢ごとの解説

第60回 午前55(病理組織細胞学)

腎組織の特殊染色標本を別に示す。使用する染色液はどれか。2つ選べ。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA055.5b64d37b36.jpg
第60回 午前55 の図

正答: ③アゾカルミンG液・⑤アニリン青オレンジG液

ポイント
腎組織の特殊染色で糸球体基底膜やメサンギウム基質、膠原線維を青色(アニリン青)に明瞭に描出する代表的な染色がアザン染色である。アザン染色はまずアゾカルミンG液で核・細胞質・フィブリンを赤に染め、続いてアニリン青オレンジG液で膠原線維や基底膜を青に染め分ける二段階の染色法であり、腎生検における基底膜の肥厚やメサンギウム病変の評価に有用である。腎の結合組織や基底膜の異常を赤と青の明瞭なコントラストで観察できる点が大きな特徴であり、膜性腎症や糸球体硬化の評価に役立つ。●膠原線維・基底膜の染め出し=アザン染色(アゾカルミンG+アニリン青オレンジG)・マッソントリクローム・PAM。●弾性線維の染色=EVG染色・ワイゲルト染色。●フィブリンの染色=アザン染色では赤色(アゾカルミンG)、PTAH染色では青〜青紫色に染まる(PTAH染色では膠原線維は赤褐色を呈する)。●糖原や基底膜のPAS陽性物質の描出=PAS反応・PAM染色。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:腎糸球体基底膜を対象とする特殊染色とその呈色

染色法呈色
PAM染色黒褐色〜黒色(メセナミン銀)
PAS反応赤紫色(Schiff試薬)
Masson trichrome染色基底膜・メサンギウム基質は青色(アニリン青)。免疫複合体沈着物は赤色
azan-Mallory染色基底膜・メサンギウム基質は青色(アニリン青)。免疫複合体沈着物は赤色(アゾカルミンG)
いずれも腎糸球体基底膜・メサンギウム基質を観察できるが、染色法により呈色が異なる。

第60回 午前56(病理組織細胞学)

病原微生物と特殊染色との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ②Helicobacter pylori ― Giemsa染色・④Pneumocystis jirovecii ― Grocott染色

ポイント
病原微生物と特殊染色の正しい組合せは、Helicobacter pyloriに対するGiemsa染色(胃粘液中の螺旋菌を簡便に検出する)と、Pneumocystis jiroveciiに対するGrocott染色(嚢子壁を銀染色によって褐黒色に描出する)である。各染色は標的微生物の細胞壁や形態を選択的に染め出す点に特徴がある。組合せを誤ると検出感度が大きく低下する。●真菌や嚢子の銀染色=Grocott染色(Pneumocystis・Aspergillus・Candida)。●螺旋菌の検出=Giemsa染色やWarthin-Starry染色(H.pylori)、Warthin-Starry染色(梅毒トレポネーマ)。●抗酸菌の検出=Ziehl-Neelsen染色(結核菌・らい菌)。●酸性粘液多糖の染色=Alcian blue染色。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:病原微生物と特殊染色(病理・微生物標本)

染色法主な検出対象
Ziehl-Neelsen染色抗酸菌(Mycobacterium属:結核菌など)
Giemsa染色Helicobacter pylori(胃粘膜のらせん菌)
Warthin-Starry染色(鍍銀法)らせん菌(H. pylori・梅毒トレポネーマ等)
Grocott染色(鍍銀法)真菌・Pneumocystis jiroveciiのシスト
Alcian blue染色酸性ムコ物質(病原体特異的ではない一般染色)
Grocott染色は病理標本で真菌検出に主に用いられ、黒褐色に染色される。Alcian blueは特定の病原体ではなく酸性粘液物質の観察に用いる特殊染色である。

第60回 午前57(病理組織細胞学)

細胞診で正しいのはどれか。

正答: ⑤剝離細胞診は癌のスクリーニングに用いられる。

ポイント
細胞診で正しいのは、剝離細胞診が癌のスクリーニングに広く用いられるという点である。剝離細胞診は自然剝離した細胞や擦過によって得られた細胞を採取する低侵襲な方法であり、子宮頸部や喀痰・尿などを対象とする集団検診に適している。細胞診の染色はパパニコロウ染色が汎用され、組織の構築は評価できないため腫瘍の深達度を判定することはできない点が組織診との大きな違いである。細胞診は迅速で繰り返し採取しやすく、広い対象に適用できる利点をもつ一方、確定診断には組織診による裏づけが必要となる。●細胞診の採取法=剝離細胞診(擦過・自然剝離)・穿刺吸引細胞診。●細胞診の主な染色=パパニコロウ染色・ギムザ染色。●細胞診の限界=組織構築や深達度・浸潤の評価には組織診が必要であり、細胞診では補うことができない点に留意する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:細胞診と組織診の比較

項目細胞診組織診
侵襲少ない大きい(生検・切除を要する)
検体剝離・擦過・穿刺吸引で採取した細胞組織片
液状検体(尿・喀痰・体腔液等)可不可
腫瘍の組織型推定可能確定可能
病期(深達度・浸潤の評価)判定不可判定可能
反復採取容易容易ではない
細胞診は組織構築を評価できないため、悪性の有無や組織型の推定はできても病期(ステージ)の確定はできない。

第60回 午前58(病理組織細胞学)

病理解剖において臨床検査技師が行える業務はどれか。

正答: ③遺体の縫合

ポイント
病理解剖において臨床検査技師が医師の指示のもとで行える業務は、遺体の縫合(解剖後の体腔の閉鎖・整復)である。解剖の承諾取得、執刀、遺族への説明、病理解剖報告書の作成はいずれも解剖を担当する医師が担う行為であり、技師は臓器の計測や切り出しの補助、標本作製、記録、縫合などの補助業務を担当する。臨床検査技師免許だけで単独の執刀が認められるわけではない。なお、死体解剖保存法は保健所長の許可や死体解剖資格など解剖を行うための要件を定めた法律であり、医師と技師の業務分担を一つひとつ明文化したものではない。●医師が担う行為=執刀・解剖の承諾取得・遺族への説明・病理解剖報告書の作成。●技師が担う補助業務=臓器の計測・切り出しの補助・標本作製・遺体の縫合。●死体解剖保存法=解剖に必要な許可・資格等を定めた法律であり、職種間の業務分担を列挙した規定ではない。

選択肢ごとの解説

第60回 午前59(臨床血液学)

健常人の末梢血のWright-Giemsa染色標本を別に示す。矢印で示す細胞の作用で正しいのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA059.35caf2a335.jpg
第60回 午前59 の図

正答: ④ヒスタミン放出

ポイント
末梢血で粗大な好塩基性(暗青紫色)の顆粒を細胞質に密に有する細胞は好塩基球であり、その顆粒の中にはヒスタミンが含まれている。好塩基球はIgEを介した刺激を受けてヒスタミンなどの化学伝達物質を放出し、即時型(Ⅰ型)アレルギー反応に関与する。白血球分画の中で最も比率が低い細胞であり、組織に存在する肥満細胞と類似した機能をもつ点が特徴である。気管支喘息や蕁麻疹などのアレルギー疾患や寄生虫感染で増加することがあり、その動態は病態を反映する指標となる。●ヒスタミンの放出=好塩基球・肥満細胞。●抗原提示=樹状細胞・マクロファージ・B細胞。●抗体産生=形質細胞(B細胞由来)。●プロスタサイクリンの産生=血管内皮細胞。●G-CSFの産生=マクロファージ・線維芽細胞・血管内皮細胞など。●貪食殺菌=好中球・マクロファージ。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:白血球・単球系細胞の主な機能

細胞主な機能
好中球貪食・殺菌(化膿性炎症の主体)
好酸球寄生虫の傷害、アレルギー反応の調節
好塩基球ヒスタミンなどの放出(即時型アレルギーに関与)
単球・マクロファージ貪食、抗原提示、サイトカイン産生
リンパ球(B細胞→形質細胞)免疫グロブリン(抗体)産生

第60回 午前60(臨床血液学)

止血機構について誤っているのはどれか。

正答: ⑤トロンボモジュリンは血小板凝集能を増強する。

ポイント
止血機構について誤っているのは、トロンボモジュリンが血小板凝集能を増強するという記述である。トロンボモジュリンは血管内皮細胞上でトロンビンと結合してプロテインCを活性化し、活性化第Ⅴ因子・第Ⅷ因子を分解する抗凝固系を作動させる因子であり、血小板凝集を増強する作用はもたない。むしろ内皮由来の抗血栓性物質として血栓形成を抑制する側に働く点が要点である。健常な血管内皮は凝固と線溶のバランスを保ち、血流を維持する役割を担っている。●内皮由来の抗血栓性物質=トロンボモジュリン・プロスタサイクリン・一酸化窒素〈NO〉・ヘパラン硫酸。●一次止血=血小板の粘着と凝集。●線溶系=プラスミンによるフィブリンの分解。●凝固因子の産生=肝臓(プロトロンビン・第Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子などのビタミンK依存性因子)。●フィブリンの分解=プラスミンによる線溶反応。

選択肢ごとの解説

第60回 午前61(臨床血液学)

赤血球形態と疾患の組合せで正しいのはどれか。

正答: ⑤破砕赤血球―血栓性血小板減少性紫斑病

ポイント
赤血球形態と疾患の正しい組合せは、破砕赤血球(断片化赤血球、シストサイト)と血栓性血小板減少性紫斑病〈TTP〉である。TTPではADAMTS13活性の低下により微小血管に血小板血栓が形成され、そこを通過する赤血球が機械的に破砕されることで破砕赤血球が出現する。微小血管症性溶血性貧血を反映する形態異常であり、末梢血塗抹標本での観察が診断の手がかりとなる。赤血球の形態と疾患の対応を把握することは貧血の鑑別に直結する。●破砕赤血球=TTP・溶血性尿毒症症候群〈HUS〉・DIC(微小血管症性溶血性貧血)。●鎌状赤血球=鎌状赤血球症。●標的赤血球=サラセミア・肝疾患・閉塞性黄疸。●涙滴赤血球=骨髄線維症。●球状赤血球=遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血。●連銭形成=多発性骨髄腫・高γグロブリン血症。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:赤血球の形態異常と関連疾患

異常赤血球形態の特徴代表的な原因・疾患
球状赤血球中央の淡明部が消失し均一に濃染遺伝性球状赤血球症、自己免疫性溶血性貧血
涙滴赤血球しずく状髄外造血(骨髄線維症、癌の骨転移など)、サラセミア
標的赤血球中心部が濃染し的(まと)状サラセミア、摘脾後、慢性肝疾患、閉塞性黄疸
有棘赤血球不規則なとげ状突起アルコール性肝硬変、無β-リポ蛋白血症
破砕赤血球(helmet cell)断片化・兜形DIC、血栓性血小板減少性紫斑病〈TTP〉、溶血性尿毒症症候群〈HUS〉、行軍ヘモグロビン尿症
鎌状赤血球三日月状鎌状赤血球症
有口赤血球中央が裂け目(口)状遺伝性有口赤血球症、アルコール性肝障害
環状鉄芽球核周囲を鉄顆粒が環状に取り囲む(赤芽球)鉄芽球性貧血、骨髄異形成症候群
好塩基性斑点リボソームRNA残存による青色顆粒が点在鉛中毒、サラセミア、骨髄異形成症候群
破砕赤血球はTTP・HUS・DICなど微小血管症性溶血性貧血でみられる。

第60回 午前62(臨床血液学)

血小板リストセチン凝集が欠如し、末梢血に巨大血小板が出現するのはどれか。

正答: ⑤Bernard-Soulier症候群

ポイント
血小板リストセチン凝集が欠如し、末梢血に巨大血小板が出現するのはBernard-Soulier症候群である。本症は血小板膜糖蛋白GPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体の異常によってvon Willebrand因子と結合できず、リストセチンによる凝集が起こらない一方、ADPやコラーゲンによる凝集は保たれる点が特徴である。常染色体潜性遺伝の先天性血小板機能異常症であり、血小板数の軽度減少を伴うこともある。凝集惹起物質ごとの反応パターンから血小板機能異常症を鑑別できる。●巨大血小板とリストセチン凝集欠如=Bernard-Soulier症候群。●ADP・コラーゲン凝集の欠如かつリストセチン凝集正常=血小板無力症(GPⅡb/Ⅲa異常)。●リストセチン凝集低下とvWF異常=von Willebrand病(後天性・先天性)。

選択肢ごとの解説

第60回 午前63(臨床血液学)

第Ⅶ因子欠乏症で延長するのはどれか。

正答: ③プロトロンビン時間

ポイント
第Ⅶ因子は外因系凝固に関与する因子であり、その欠乏では外因系を反映するプロトロンビン時間〈PT〉が延長する。第Ⅶ因子は外因系のみに関与して共通系や内因系には関わらないため、内因系を反映する活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉は正常に保たれ、PTの単独延長が特徴的な所見となる。PTとAPTTの組合せからどの系統の因子が障害されているかを推定でき、欠乏因子の絞り込みに有用である点が臨床的に重要である。●PTで反映(外因系)=第Ⅶ因子・組織因子経路。●APTTで反映(内因系)=第Ⅷ・Ⅸ・Ⅺ・Ⅻ因子。●PT・APTTがともに延長(共通系)=第Ⅹ・Ⅴ・Ⅱ・Ⅰ因子。●出血時間=血小板数・血小板機能・血管壁による一次止血の評価。●フィブリノゲンの量的・質的評価=トロンビン時間・フィブリノゲン定量。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:PT・APTTの延長パターンと欠乏(異常)凝固因子

PTAPTT欠乏(異常)凝固因子
延長正常第Ⅶ因子
正常延長第Ⅷ・Ⅸ・Ⅺ・Ⅻ因子
延長延長第Ⅰ・Ⅱ・Ⅴ・Ⅹ因子
正常正常第ⅩⅢ因子
PTは外因系・共通系、APTTは内因系・共通系の凝固活性を反映する。

第60回 午前64(臨床血液学)

末梢血のWright-Giemsa染色標本を別に示す。最も考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA064.3e94aa247d.jpg
第60回 午前64 の図

正答: ③急性単球性白血病

ポイント
末梢血像で大型の単球様芽球が増加し、核に切れ込みやレース状の繊細なクロマチンを示す像から、急性単球性白血病(FAB分類M5)が最も考えられる。本型はエステラーゼ二重染色で非特異的エステラーゼ陽性(フッ化ナトリウムで阻害される)を示し、歯肉腫脹や髄外浸潤、血清・尿リゾチームの高値を伴いやすい点が特徴である。形態に加えて細胞化学染色や表面マーカーの所見を組み合わせることで病型を確定する。●急性単球性白血病(M5)=非特異的エステラーゼ陽性・歯肉腫脹。●急性前骨髄球性白血病(M3)=粗大アズール顆粒・Auer小体束(faggot細胞)・DIC合併。●急性赤白血病(M6)=異形赤芽球の増生・PAS陽性。●成人T細胞白血病=花弁状核のflower cell・HTLV-1関連・高Ca血症。●急性骨髄性白血病=ミエロペルオキシダーゼ陽性。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:急性骨髄性白血病〈AML〉のFAB分類と特徴

病型(FAB)別名MPO(ペルオキシダーゼ)特徴
M0最未分化型骨髄芽球性白血病陰性免疫学的マーカーは骨髄系のみ陽性
M1急性未分化型骨髄芽球性白血病3%以上陽性骨髄中の芽球が90%以上
M2急性分化型骨髄芽球性白血病3%以上陽性芽球90%未満、一部にt(8;21)
M3急性前骨髄球性白血病(APL)高率陽性t(15;17)、Auer小体束(faggot細胞)、DIC合併
M4急性骨髄単球性白血病3%以上陽性顆粒球系・単球系がともに増加、非特異的エステラーゼ陽性(M4Eoは好酸球増加・inv(16))
M5急性単球性白血病陰性非特異的エステラーゼ陽性
M6急性赤白血病3%以上陽性赤芽球50%以上
M7急性巨核芽球性白血病陰性巨核球系マーカー(CD41・CD42・CD61)陽性
急性リンパ性白血病(ALL)はMPO陰性(3%未満)で鑑別する。染色体異常・融合遺伝子は既存の『白血病の染色体異常と融合遺伝子』表を参照。

第60回 午前65(臨床血液学)

50歳の男性。リンパ節腫脹を指摘されて受診した。血清免疫電気泳動の所見を別に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA065.7b6942943d.jpg
第60回 午前65 の図

正答: ⑤原発性マクログロブリン血症

ポイント
リンパ節腫脹を伴い、血清免疫電気泳動でIgMの単クローン性M蛋白を示す像から、原発性マクログロブリン血症〈Waldenströmマクログロブリン血症〉が考えられる。本症はリンパ形質細胞様細胞の増殖によって単クローン性IgMが過剰に産生され、過粘稠度症候群やリンパ節腫脹、肝脾腫などを呈する疾患である。M蛋白の免疫グロブリンのクラスを同定することが鑑別の決め手となる。●IgMの単クローン性増加=原発性マクログロブリン血症。●IgG・IgAのM蛋白またはBence Jones蛋白と骨破壊病変=多発性骨髄腫。●多クローン性高γグロブリン血症=Sjögren症候群・慢性炎症。●明瞭な単クローン性M蛋白を示さない=Hodgkinリンパ腫・大顆粒リンパ球性白血病・反応性リンパ節腫脹。

選択肢ごとの解説

第60回 午前66(臨床血液学)

播種性血管内凝固〈DIC〉の所見で正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ①FDP上昇・⑤プロトロンビン時間延長

ポイント
播種性血管内凝固〈DIC〉では全身の微小血管で凝固が亢進し、凝固因子と血小板が消費されるとともに、二次的に線溶系も活性化される。その結果、線溶亢進を反映してフィブリン分解産物〈FDP〉が上昇し、凝固因子の消費によりプロトロンビン時間〈PT〉が延長する。基礎疾患の存在を背景に発症する後天性の重篤な凝固異常であり、出血傾向と臓器障害をきたしうる病態である。複数の検査項目を組み合わせて総合的に診断する必要がある。●DICで上昇・延長する項目=FDP・Dダイマー・PT・APTT。●DICで低下する項目=血小板数・フィブリノゲン・アンチトロンビン。●代表的な基礎疾患=敗血症・産科合併症(常位胎盤早期剝離・羊水塞栓など)・悪性腫瘍・急性前骨髄球性白血病(M3)。

選択肢ごとの解説

第60回 午前67(臨床血液学)

Down症候群でみられる染色体異常はどれか。

正答: ⑤21番染色体トリソミー

ポイント
Down症候群でみられる染色体異常は21番染色体トリソミー(21トリソミー)である。21番染色体が3本となることで、特徴的な顔貌、筋緊張低下、知的障害、先天性心疾患などを呈する。多くは標準型トリソミーであるが、ロバートソン転座による転座型や、細胞分裂後の不分離によって生じるモザイク型も存在する点を理解しておく必要がある。母体の高年齢が発症のリスク因子として知られ、染色体検査(核型分析)で確定診断される疾患である。●常染色体トリソミー=21(Down症候群)・18(Edwards症候群)・13(Patau症候群)。●性染色体の数的異常=Turner症候群(45,X)・Klinefelter症候群(47,XXY)。●欠失症候群=5p欠失(猫鳴き症候群)・22q11.2欠失(DiGeorge症候群)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:先天性染色体異常症候群と核型

分類疾患名核型・異常
常染色体トリソミー21トリソミー症候群(Down症候群)47,XX/47,XY,+21
常染色体トリソミー18トリソミー症候群(Edwards症候群)47,XX/47,XY,+18
常染色体トリソミー13トリソミー症候群(Patau症候群)47,XX/47,XY,+13
常染色体の部分欠失5pモノソミー症候群(猫鳴き症候群)5番染色体短腕の欠失
常染色体の微細欠失DiGeorge症候群22番染色体長腕11.2領域の微細欠失
常染色体の微細欠失Angelman症候群15番染色体長腕11.2-13領域の欠失など
性染色体異常Turner症候群45,X(Xモノソミー)
性染色体異常Klinefelter症候群47,XXY
性染色体異常XYY症候群47,XYY(表現型には異常がない)
性染色体異常トリプルX症候群47,XXX
Down症候群など常染色体トリソミーと、Turner・Klinefelterなど性染色体異常は「どちらの分類に属するか」が問われやすい。DiGeorge症候群・Angelman症候群は常染色体の微細欠失症であり性染色体異常ではない点に注意。

第60回 午前68(臨床微生物学)

真核細胞はどれか。

正答: ②Candida albicans

ポイント
真核細胞は核膜に包まれた明瞭な核と膜で囲まれた細胞小器官をもつ細胞であり、選択肢の中ではCandida albicans(真菌・酵母)が該当する。真菌は真核生物に分類され、細胞膜にコレステロールの代わりにエルゴステロールを含む。他の選択肢はいずれも核膜をもたない原核生物(細菌およびリケッチア類)であり、染色体は細胞質中に裸の状態で存在する。真核生物と原核生物の細胞構造の違いを把握することが分類の基本となる。●真核生物=真菌(Candida・Aspergillus)・原虫・寄生虫。●原核生物(細菌)=Bacillus・Treponema・Chlamydia・Orientia(リケッチア類)。●細胞構造をもたず核酸と蛋白からなり偏性細胞内寄生する=ウイルス。●細胞壁にペプチドグリカンをもつ=細菌。

選択肢ごとの解説

第60回 午前69(臨床微生物学)

糸状菌はどれか。2つ選べ。

正答: ①Aspergillus fumigatus・④Trichophyton rubrum

ポイント
糸状菌(カビ)は菌糸を形成して発育する真菌であり、選択肢の中ではAspergillus fumigatusとTrichophyton rubrumが該当する。Aspergillusは分生子頭をつくる環境真菌で日和見感染の原因となり、Trichophytonは皮膚糸状菌で白癬の原因となる。これに対し酵母様真菌は単細胞で主に出芽により増殖する点で区別される。発育形態の違いを把握することが真菌の分類と同定の基本となる。●糸状菌(菌糸を形成)=Aspergillus・Trichophyton・接合菌(Mucor)。●酵母様真菌(単細胞・出芽)=Candida・Cryptococcus・Trichosporon。●二形性真菌=環境では菌糸、組織内や体温では酵母となる(Histoplasma・Sporothrixなど)。

選択肢ごとの解説

第60回 午前70(臨床微生物学)

Gimenez染色標本(別冊No.10)を別に示す。赤色の桿菌はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA070.db861c1c4d.jpg
第60回 午前70 の図

正答: ③Legionella pneumophila

ポイント
Gimenez染色は青緑色の背景に菌体を赤色に染め出す染色法であり、通常のグラム染色で染まりにくいLegionellaやリケッチア、クラミジアの検出に用いられる。赤色の桿菌として描出されるのはLegionella pneumophilaで、本菌は喀痰中で染色されにくいためGimenez染色が有用となる。レジオネラ肺炎の起因菌として重要な菌であり、温水や空調設備が感染源となることが知られている。●Gimenez染色で赤染する微生物=Legionella・リケッチア・Chlamydia。●特殊培地を要する菌=Legionella(B-CYE)・百日咳菌(Bordet-Gengou)。●通常のグラム染色では染まりにくい菌=Legionella・抗酸菌・スピロヘータ・マイコプラズマ・リケッチア。

選択肢ごとの解説

第60回 午前71(臨床微生物学)

Gimenez染色標本(別冊No.10)を別に示す。分離培養に用いるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA071.db861c1c4d.jpg
第60回 午前71 の図

正答: ①B-CYE寒天培地

ポイント
Gimenez染色で赤染する桿菌Legionella pneumophilaの分離培養には、L-システインと鉄を添加したB-CYE寒天培地(buffered charcoal yeast extract寒天培地)を用いる。Legionellaはシステイン要求性が強く、通常の血液寒天培地などでは発育しないため、専用の特殊培地が分離に必須となる。レジオネラ症の検査においては培養に加えて尿中抗原検査や遺伝子検査も用いられる。●Legionellaの分離=B-CYE寒天培地。●百日咳菌の分離=Bordet-Gengou培地。●真菌の分離=Sabouraud寒天培地。●サルモネラ・赤痢菌の選択分離=SS寒天培地。●腸炎ビブリオやコレラ菌の選択分離=TCBS寒天培地。●一般的な細菌の発育=普通寒天培地・血液寒天培地。

選択肢ごとの解説

第60回 午前72(臨床微生物学)

細菌の細胞膜の内側にあるのはどれか。2つ選べ。

正答: ④プラスミド・⑤リボソーム

ポイント
細菌の細胞膜の内側(細胞質側)に存在するのはプラスミドとリボソームである。プラスミドは染色体とは独立した環状DNAで細胞質内に存在し、薬剤耐性遺伝子などを担う遺伝因子である。リボソームは蛋白合成を行う細胞質内の小器官である。一方、莢膜・外膜・ポーリンはいずれも細胞膜よりも外側に位置する構造物である点を区別する必要がある。細胞膜を境とした内外の構造の配置を理解することが、細菌の構造に関する設問を解く基礎となる。●細胞膜の内側(細胞質)にある構造=核様体・プラスミド・リボソーム。●細胞膜の外側にある構造=細胞壁(ペプチドグリカン)・莢膜・線毛・鞭毛。●グラム陰性菌に特有で細胞壁の外側に位置する=外膜・リポ多糖〈LPS〉・ポーリン蛋白。●運動器官=鞭毛。●付着器官=線毛(性線毛・定着線毛)。

選択肢ごとの解説

第60回 午前73(臨床微生物学)

抗酸性を示すのはどれか。

正答: ①Genus Nocardia

ポイント
抗酸性は、抗酸菌染色(Ziehl-Neelsen染色など)で酸アルコールによる脱色に抵抗して赤く染まり続ける性質であり、細胞壁に含まれるミコール酸(長鎖脂肪酸)に由来する。選択肢の中ではGenus Nocardia(ノカルジア属)が部分的な抗酸性を示す。ノカルジアは好気性放線菌であり、分枝した菌糸状のグラム陽性桿菌として観察される点が特徴であり、免疫不全者で日和見感染を起こすことがある。●抗酸性を示す菌(部分的を含む)=Mycobacterium・Nocardia。●非抗酸性のグラム陽性桿菌=Actinomyces・Corynebacterium・Propionibacterium・Erysipelothrix・Listeria。●抗酸性の基盤=細胞壁に含まれるミコール酸と高い脂質含量による疎水性の構造。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:抗酸菌(Mycobacterium属)の分類(Runyon分類・発育速度・結核菌の特徴)

分類特徴代表菌
結核菌群小川培地でR型(粗造)コロニー形成、ニコチン酸(ナイアシン)試験陽性、Gram染色に染まりにくい(抗酸性)Mycobacterium tuberculosis
Runyon I群(光発色菌群)暗所培養では無色、光曝露後に黄色色素産生M. kansasii、M. marinum
Runyon III群(非光発色菌群)光曝露の有無に関わらず非色素産生、発育は比較的遅いM. avium complex
Runyon IV群(迅速発育菌群)7日以内に発育M. fortuitum
培養不能菌人工培地では培養できないM. leprae(らい菌)
抗酸菌は世代時間が長く発育が遅い(培養に数週間を要する)。BCGワクチンには結核菌ではなくMycobacterium bovisの弱毒株が用いられる。Nocardia属は抗酸菌ではないが部分的な抗酸性を示す点で紛らわしい。

第60回 午前74(臨床微生物学)

DHL寒天培地で下痢便を培養したコロニーを別に示す。矢印のコロニー性状から考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA074.4297f75106.jpg
第60回 午前74 の図

正答: ③Salmonella enterica

ポイント
DHL寒天培地(デオキシコール酸塩・硫化水素・乳糖寒天培地)は腸内細菌の選択分離培地であり、乳糖非分解菌は無色透明、硫化水素〈H₂S〉産生菌は中心が黒色のコロニーを形成する。中心が黒く乳糖を分解しないコロニーからSalmonella entericaが考えられる。下痢便からの腸内細菌の分離同定に広く用いられる選択分離培地である。コロニーの色調と硫化水素産生の有無から起因菌を推定できる点が有用である。●DHLで黒色中心(H₂S産生)=Salmonella・Proteus。●無色(乳糖非分解・H₂S陰性)=Shigella。●赤色(乳糖分解)=Escherichia coli・Klebsiella。●主な下痢起因菌=サルモネラ・赤痢菌・腸炎ビブリオ・病原性大腸菌・カンピロバクター・エルシニア。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:腸内細菌科の生化学的性状の鑑別(乳糖分解・硫化水素・リジン脱炭酸・インドール)

菌乳糖分解硫化水素(H₂S)リジン脱炭酸インドール
Escherichia coli分解陰性陽性陽性
Salmonella Typhi非分解陽性(弱)陽性陰性
Salmonella Paratyphi A非分解陰性陰性陰性
Salmonella(その他大部分の血清型)非分解陽性陽性陰性
Shigella属非分解陰性陰性菌種により異なる
Proteus mirabilis非分解陽性陰性陰性
Proteus vulgaris非分解陽性陰性陽性
Citrobacter属分解(菌株により遅分解)陽性陰性陰性
Serratia marcescens非分解陰性陽性陰性
サルモネラ・赤痢菌など乳糖非分解菌はTSI培地で高層部のみ黄変し斜面は赤色のまま残るが、大腸菌など乳糖分解菌は斜面・高層とも黄変する。チフス菌(Typhi)はTSI培地でガスをほとんど産生せず硫化水素も少量にとどまる点が他の多くのSalmonella血清型と異なる。尿素分解(ウレアーゼ)陽性の代表はProteus属・Morganella属・Providencia属。

第60回 午前75(臨床微生物学)

人工培地に発育しないのはどれか。

正答: ④Mycobacterium leprae

ポイント
人工培地に発育しないのはMycobacterium leprae(らい菌)である。らい菌は偏性細胞内寄生性が非常に強く、現在に至るまで人工培地での培養に成功していないため、アルマジロやマウスの足蹠など動物体内でのみ増殖させて維持される。培養できないことが診断や研究上の大きな制約となっている菌であり、診断は皮膚スメアの抗酸菌染色や病理組織で行う。●人工培地で培養不能=Mycobacterium leprae・梅毒トレポネーマ・偏性細胞内寄生体(リケッチア・クラミジア)。●特殊培地で培養可能=Helicobacter pylori(微好気)・Legionella(B-CYE)・Mycoplasma(無細胞壁・特殊培地)。●嫌気培養で発育=Clostridium difficileなどの偏性嫌気性菌。

選択肢ごとの解説

第60回 午前76(臨床微生物学)

ファージを介して遺伝子が受け渡される現象はどれか。

正答: ②形質導入

ポイント
形質導入はバクテリオファージを媒介として細菌から細菌へ遺伝子が運ばれる現象である。ファージが宿主細菌に感染して増殖し新しい粒子を組み立てる際、誤って宿主の染色体DNAやプラスミドの一部を粒子内に取り込み、次に別の細菌へ感染したときその遺伝子を持ち込むことで形質が伝達される。薬剤耐性遺伝子や毒素遺伝子(志賀毒素・ジフテリア毒素など)の細菌間拡散の経路として重要であり、溶原化したプロファージが関与することも多い。●細菌の遺伝子水平伝達の三様式=接合(性線毛を介した直接接触によるプラスミド移行)・形質転換(環境中の裸のDNA断片の取り込み)・形質導入(ファージ媒介の伝達)。●ファージの感染様式=溶菌サイクル(増殖して宿主を破壊する)と溶原サイクル(宿主染色体に組み込まれて潜伏する)があり、後者の解離時に宿主遺伝子を運ぶことがある。

選択肢ごとの解説

第60回 午前77(臨床微生物学)

B型肝炎ウイルスの消毒薬として効果があるのはどれか。2つ選べ。

正答: ③ホルムアルデヒド・④次亜塩素酸ナトリウム

ポイント
B型肝炎ウイルス〈HBV〉はエンベロープを持つDNAウイルスだが消毒薬に対する抵抗性が比較的強く、有効なのは酸化作用や蛋白変性・アルキル化作用の強い薬剤に限られる。次亜塩素酸ナトリウムは強い酸化作用でウイルスの核酸・蛋白を破壊し、ホルムアルデヒドは蛋白・核酸をアルキル化して不活化するため、いずれもHBVに有効な高〜中水準消毒薬である。低水準消毒薬では確実な失活が得られない。●消毒薬の水準分類=高水準(グルタラール・フタラール・過酢酸。芽胞を含む広範な微生物に作用する)、中水準(次亜塩素酸ナトリウム・消毒用アルコール・ヨード系・フェノール系。結核菌にも有効)、低水準(クロルヘキシジン・第四級アンモニウム塩・両性界面活性剤など)。●HBVへの効果=次亜塩素酸ナトリウム・グルタラール・ホルムアルデヒドなどは有効だが、同じ中水準でもフェノールには確実な効果が期待できず、クロルヘキシジンなど低水準消毒薬も無効である。水準の区分だけでなく濃度・接触時間・対象微生物に応じて薬剤を選択する必要がある。

選択肢ごとの解説

第60回 午前78(臨床微生物学)

β-ラクタマーゼを産生しないのはどれか。

正答: ⑤Streptococcus pneumoniae

ポイント
β-ラクタマーゼはβ-ラクタム環を加水分解してペニシリン系・セフェム系を不活化する酵素で、多くのグラム陰性桿菌や一部の球菌が産生する。Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)はβ-ラクタマーゼを産生せず、ペニシリン耐性が生じる場合はペニシリン結合蛋白〈PBP〉の変化(PRSP)によるものであり、酵素分解とは機序が異なる点が特徴である。●β-ラクタマーゼを産生する菌=Klebsiella pneumoniae(ESBL産生株を含む)・Moraxella catarrhalis・淋菌の一部(PPNG)・大腸菌・インフルエンザ菌の一部など。●β-ラクタマーゼ非産生で耐性化する菌=肺炎球菌(PBPの変異)・MRSA(PBP2'の獲得)。Stenotrophomonas maltophiliaは金属β-ラクタマーゼを産生し、カルバペネムも分解する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前79(臨床免疫学)

自己免疫疾患の発症に最も関連の深い免疫系の特徴はどれか。

正答: ①寛容

ポイント
自己免疫疾患は、本来自己成分には反応しないよう保たれている免疫寛容〈自己トレランス〉が破綻し、自己抗原に対して免疫応答が起こることで発症する。胸腺での自己反応性T細胞の除去(中枢性寛容)や、末梢での制御性T細胞による抑制・アナジー(末梢性寛容)が破綻すると、自己反応性リンパ球が活性化して自己組織を攻撃し、炎症や組織傷害を引き起こす。したがって発症に最も深く関わる免疫系の特徴は寛容である。●免疫系の基本的特徴=特異性(抗原を区別する)・多様性(膨大な抗原に対応する受容体レパートリーをもつ)・記憶(二次応答が増強される)・自己寛容(自己と非自己を識別する)。●寛容の機構=中枢性寛容(胸腺・骨髄での自己反応性細胞の負の選択による除去)と末梢性寛容(アナジー・制御性T細胞による抑制)に大別され、これらの破綻が自己免疫の基盤となる。

選択肢ごとの解説

第60回 午前80(臨床免疫学)

単独で免疫した場合に抗体が産生され難いのはどれか。

正答: ④サイロキシン

ポイント
サイロキシンは分子量約780の甲状腺ホルモンで、それ自体では分子量が小さくB細胞・T細胞を十分に刺激できないハプテン的な低分子物質であり、単独で免疫しても抗体が産生されにくい。抗体産生を誘導するには、アルブミンなどの担体蛋白に結合させて分子量を大きくする必要がある。一方アルブミン・インスリン・コラーゲン・ヘモグロビンはいずれも分子量が大きく、十分な免疫原性をもつ蛋白である。●免疫原性を左右する条件=分子量が大きいこと・異物性(自己と化学的に異なること)・構造の化学的複雑性・体内で適度に分解され抗原提示を受けること。●ハプテン=それ自体では抗体産生を誘導できないが、担体蛋白と結合すると免疫原となる低分子物質(薬剤・ホルモン・各種化学物質など)を指し、低分子のサイロキシンもこれに近い性質をもつ。

選択肢ごとの解説

第60回 午前81(臨床免疫学)

Ouchterlony法〈二重免疫拡散法〉の原理はどれか。

正答: ③沈降反応

ポイント
Ouchterlony法〈二重免疫拡散法〉は、寒天ゲル中で抗原と抗体をそれぞれ別の穴に入れて互いに拡散させ、両者が適切な濃度比で出会った位置に抗原抗体結合による白い沈降線を形成させて観察する沈降反応を原理とする方法である。沈降線の形(融合・交差・スパー形成)から、複数抗原の同一性・部分同一性・非同一性を判定できる。可溶性抗原と抗体の反応を可視化する基本手技である。●沈降反応を用いる手技=Ouchterlony法(二重免疫拡散)・一元/二元免疫拡散・免疫電気泳動・免疫比濁法・免疫比朧法など。●抗原抗体反応の分類=沈降反応(可溶性抗原)・凝集反応(粒子状抗原)・補体結合反応・中和反応・溶解反応などがあり、抗原の性状と検出系の違いによって区別され、目的に応じて使い分けられる。

選択肢ごとの解説

第60回 午前82(臨床免疫学)

感染の治癒を示す指標はどれか。

正答: ①HBs抗体

ポイント
HBs抗体はB型肝炎ウイルス〈HBV〉の表面抗原〈HBs抗原〉に対する中和抗体で、感染の治癒や免疫の獲得(ワクチン接種後を含む)を示す指標である。HBs抗原が消失してHBs抗体が出現するセロコンバージョンは、ウイルスが排除され感染が治癒に向かったことを意味する。他のウイルス抗体は感染の存在や既往を示すだけで治癒の証明にはならない。●HBVマーカーの意味=HBs抗原(現在の感染)・HBs抗体(治癒や免疫の獲得)・HBc抗体(既往または持続感染)・HBe抗原(ウイルス増殖が活発)・HBe抗体(増殖が低下)。●抗体陽性が治癒を意味しない例=HCV抗体・HIV抗体・HTLV-1抗体は感染の既往や持続キャリア状態を示すにとどまり、IgM型HAV抗体はA型肝炎の急性期感染を示す指標である。

選択肢ごとの解説

第60回 午前83(臨床免疫学)

臓器特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。

正答: ⑤PIVKA-Ⅱ

ポイント
PIVKA-ⅡはビタミンK欠乏状態や肝細胞癌で産生される異常プロトロンビン(凝固活性を欠くプロトロンビン前駆体)で、肝細胞癌に対する臓器特異性の高い腫瘍マーカーである。AFPと組み合わせることで肝細胞癌の診断・治療効果判定・経過観察に用いられる。一方で多臓器の癌で上昇するマーカーは臓器特異性が低い。●臓器特異性の高いマーカー=PIVKA-Ⅱ/AFP(肝)・PSA(前立腺)・CA15-3(乳腺)・CA125(卵巣)・サイログロブリン(甲状腺)。●臓器特異性の低い(広範な癌で上昇する)マーカー=CEA(大腸など消化器を含む多臓器の腺癌)・CA19-9(膵・胆道を中心に消化器癌)・SCC(子宮頸部・肺・食道など扁平上皮癌全般)。これらは複数臓器で上昇するため臓器特異性は低く、補助的な指標として用いられる。

選択肢ごとの解説

第60回 午前84(臨床免疫学)

Ⅲ型アレルギー性疾患はどれか。

正答: ⑤全身性エリテマトーデス

ポイント
Ⅲ型アレルギーは、可溶性抗原と抗体が結合した抗原抗体複合体(免疫複合体)が組織や血管壁・腎糸球体などに沈着し、補体活性化を介して好中球が集積・脱顆粒して炎症と組織傷害を起こす機序である。全身性エリテマトーデス〈SLE〉は抗DNA抗体などによる免疫複合体が腎糸球体や血管・関節に沈着して傷害を起こす代表的なⅢ型アレルギー疾患であり、ループス腎炎などを生じる。●アレルギーの分類=Ⅰ型(IgE・即時型。気管支喘息やアナフィラキシー)・Ⅱ型(細胞傷害型。自己免疫性溶血性貧血や重症筋無力症)・Ⅲ型(免疫複合体型。SLEや糸球体腎炎・血清病)・Ⅳ型(遅延型・T細胞性。接触皮膚炎やツベルクリン反応)。●Ⅱ型の刺激型=Basedow病(TSH受容体を刺激する抗体によって甲状腺が過剰に活性化される)。

選択肢ごとの解説

第60回 午前85(臨床免疫学)

リウマトイド因子の対応抗原はどれか。

正答: ④変性IgG

ポイント
リウマトイド因子〈RF〉は、変性または凝集したIgGのFc部分を抗原として認識する自己抗体で、測定対象となるのは主にIgMクラスのRFである。関節リウマチで高頻度に陽性となるが、他の膠原病(Sjögren症候群など)や慢性感染症、健常高齢者でも陽性となることがあり、疾患特異性は高くない点に注意を要する。●関節リウマチ関連の自己抗体=リウマトイド因子(変性IgGのFcに対する自己抗体)・抗CCP抗体(シトルリン化ペプチドに対する。特異性が高く早期診断に有用)。●代表的な自己抗体とその対応抗原=抗二本鎖DNA抗体(DNA。SLE)・抗ミトコンドリア抗体(原発性胆汁性胆管炎)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(橋本病)・抗アセチルコリン受容体抗体(重症筋無力症)などがある。

選択肢ごとの解説

第60回 午前86(臨床免疫学)

ABO血液型検査法で正しいのはどれか。

正答: ④試験管法では抗A、抗B試薬を各1~2滴ずつ滴下する。

ポイント
ABO血液型検査の試験管法では、抗A・抗B試薬を試験管に各1〜2滴ずつ滴下し、患者赤血球浮遊液を加えて混和・遠心したのちに凝集の有無を判定するのが正しい手技である。検査では赤血球上の抗原を調べるオモテ検査と、血清中の抗A・抗B抗体を調べるウラ検査の両者を行い、結果が一致することを確認する。●ABO検査法の種類=試験管法(遠心して凝集を判定し感度が高い)・ガラス板法(スライド上で混和して肉眼で判定する)・カラム凝集法(ゲルやガラスビーズの層で凝集を捕捉して判定する)。●判定の原則=オモテ検査とウラ検査の結果の一致を確認し、不一致のときは亜型・寒冷凝集素・連銭形成・後天的変化などを考慮して原因を精査する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前87(臨床免疫学)

間接抗グロブリン試験による不規則抗体スクリーニング検査について正しいのはどれか。

正答: ④抗グロブリン抗体を加えて直ちに反応させる。

ポイント
間接抗グロブリン試験〈IAT〉は、患者血清(血漿)とスクリーニング赤血球を37℃で反応させてIgG抗体を感作させ、未結合の血漿蛋白を生理食塩液で十分に洗浄したのちに抗グロブリン抗体(クームス血清)を加えて凝集を判定する検査で、不規則抗体スクリーニングや交差適合試験に用いられる。手順としては感作・洗浄ののちに抗グロブリン抗体を加えて反応させ、遠心して判定する。●不規則抗体スクリーニングの実際=通常2〜3種類のO型既知抗原赤血球を用い、PEGやLISSなどの反応増強剤を併用して臨床的に意義のあるIgG抗体を検出する。陽性のときは10種類前後のパネル血球で抗体同定を行う。●抗グロブリン試験の区別=直接法(in vivoで感作した赤血球の検出)と間接法(in vitroで感作させて検出する。抗体スクリーニングや交差適合試験)。

選択肢ごとの解説

第60回 午前88(臨床免疫学)

献血血液で核酸増幅検査が行われるのはどれか。2つ選べ。

正答: ②ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉・④C型肝炎ウイルス〈HCV〉

ポイント
輸血用の献血血液では、抗体産生前のウインドウ期に感染を見逃すことを防ぐ目的で核酸増幅検査〈NAT〉が行われており、対象はヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉・C型肝炎ウイルス〈HCV〉・B型肝炎ウイルス〈HBV〉の3項目である。NATはウイルス遺伝子そのものを増幅して直接検出するため、抗体・抗原検査より早期に感染を捉えられ、輸血感染のリスクを大幅に低減する。●献血スクリーニングの方法=NAT(HIV・HCV・HBV)・血清学的検査(HBs抗原、HTLV-1抗体、梅毒、HBc抗体など)・肝機能検査(ALT)。●NATの利点と限界=ウインドウ期を大きく短縮できる利点があるが、検出限界以下のごく初期の感染では陰性となることがあり、輸血感染を完全には排除できない。

選択肢ごとの解説

第60回 午前89(臨床免疫学)

母児間血液型不適合による新生児溶血性疾患について正しいのはどれか。

正答: ⑤Rh(D)不適合はABO不適合より重症である。

ポイント
Rh(D)不適合による新生児溶血性疾患はABO不適合より重症化しやすい。Rh(D)陰性の母が前回妊娠の分娩時や流産・輸血でD抗原に感作されると抗D抗体(IgG)を産生し、次回以降の妊娠でこのIgGが胎盤を通過して胎児赤血球を破壊し、強い溶血・貧血・胎児水腫・出生後の高ビリルビン血症と核黄疸を起こすためである。●新生児溶血性疾患の機序=母児間の血液型不適合で母が産生した胎盤通過性のIgG抗体が、胎児赤血球の抗原に結合して溶血を起こす。診断は児の直接抗グロブリン試験が陽性となる。●ABO不適合との比較=ABO不適合は自然抗体(IgG)により初回妊娠でも起こり得るが一般に軽症で、Rh(D)不適合は感作後の妊娠で重症化しやすい。予防として分娩後などに抗D免疫グロブリンを投与し、母体の感作を防ぐ。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:新生児溶血性疾患〈HDN〉:ABO不適合とRh不適合の比較

項目ABO不適合Rh不適合
胎児の直接Coombs試験陰性もしくは弱陽性強陽性がほとんど
胎児のビリルビン値低値高値
胎児の貧血軽度高度
新生児溶血疾患の予測不可能可能
発症時期第1子から起こりうる(母がO型で児がA型・B型の場合に多い)第1子ではまれ、第2子以降で起こりやすい(母体の感作が必要)
予防確立した予防法はない分娩後72時間以内の抗D免疫グロブリン投与
Rh不適合はRh陰性の母がRh陽性の胎児に感作されて産生したIgG型抗D抗体が胎盤を通過して起こる。ABO不適合は自然抗体(IgG)によることが多く、Rh不適合より一般に軽症。

第60回 午前90(公衆衛生学)

日本国憲法第25条に記述されているのはどれか。

正答: ④公衆衛生

ポイント
日本国憲法第25条は『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する』と生存権を定め、第2項で『国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない』と国の責務を規定している。公衆衛生は条文中に明記されており、保健衛生施策の憲法上の根拠となる。●憲法第25条の内容=生存権の保障と、社会福祉・社会保障・公衆衛生の向上増進という国の責務を定めている。●第25条の理念を具体化する個別法=健康増進法(国民の健康づくり)・地域保健法(保健所や市町村保健センター)・感染症法・食品衛生法などが、公衆衛生の向上を図るための具体的な制度を定めている。

選択肢ごとの解説

第60回 午前91(公衆衛生学)

三次予防はどれか。

正答: ④リハビリテーション

ポイント
三次予防は、すでに発症した疾患について悪化や合併症・再発を防ぎ、機能回復と社会復帰を図る段階で、リハビリテーションが代表例である。後遺症の軽減、残存機能の活用、QOLの維持・向上、職場復帰の支援などを含む。●予防の三段階=一次予防(健康増進・予防接種・健康教育・生活習慣改善などで発症そのものを防ぐ)・二次予防(がん検診・新生児マススクリーニングなどによる早期発見と早期治療)・三次予防(リハビリテーション・機能回復・再発予防・社会復帰)。●各段階の具体例=一次予防は禁煙指導や栄養指導、二次予防は各種の検診やスクリーニング、三次予防は理学療法・作業療法や職場への復職支援などが該当する。

選択肢ごとの解説

第60回 午前92(公衆衛生学)

ある疾患の地域比較研究において、A地区では生理機能検査で有病率が判定され、B地区では問診により有病率が判定された。この疫学研究における最も大きな問題点はどれか。

正答: ④情報収集の偏り

ポイント
A地区では生理機能検査で、B地区では問診で有病率を判定すると、有病率を測定する手段そのものが群間で異なるため、その方法の差が見かけの地域差を生み、地域比較を正しく行えない。これは情報を得る手段や測定・分類の違いに起因する情報バイアス(情報収集の偏り)であり、本研究の最大の問題点である。●バイアス(系統誤差)の分類=選択バイアス(標本選択の偏り。対象の選び方による系統的なずれ)・情報バイアス(情報収集の偏り。測定や分類・情報収集法の違いによる系統的誤差)・交絡(第三因子による見かけの関連)。●誤差の種類=系統誤差(バイアス。一定方向のずれで標本数を増やしても消えない)と偶然誤差(ランダムなばらつきで標本サイズを大きくすれば縮小する)とに分けられる。

選択肢ごとの解説

第60回 午前93(公衆衛生学)

感染源対策はどれか。

正答: ②出席停止・⑤媒介動物の駆除

ポイント
感染症対策は、病原体を出す源を断つ感染源対策、伝播を断つ感染経路対策、宿主の抵抗力を高める感受性者対策の三つに大別される。感染源対策に該当するのは、感染源となる患者を集団から遠ざける出席停止(隔離)と、病原体を保有・運搬する媒介動物の駆除であり、いずれも病原体の供給源を直接断つ対策である。●感染源対策=患者の隔離・出席停止・早期治療、感染動物やリザーバ(保有動物)の駆除や処分。●感染経路対策=手洗い・手指消毒・マスク着用・環境消毒・上下水道の衛生管理など伝播の遮断。●感受性者(宿主)対策=予防接種による免疫の付与・健康増進による抵抗力の向上などがあり、宿主側の防御力を高めることを目的とする。

選択肢ごとの解説

第60回 午前94(公衆衛生学)

医療計画について定めているのはどれか。

正答: ①医療法

ポイント
医療計画は医療法に基づいて都道府県が策定する計画で、地域における医療提供体制の体系的な確保を目的とし、基準病床数、二次・三次医療圏の設定、5疾病5事業(がん・脳卒中・心筋梗塞等の心血管疾患・糖尿病・精神疾患と、救急・災害・へき地・周産期・小児の各医療)および在宅医療に関する事項などを定める。●医療法の規定内容=医療提供体制の基本法として、医療計画・病院や診療所の開設や管理・医療安全の確保・広告規制などを定める。●他の保健衛生法規=健康増進法(国民の健康づくり)・地域保健法(保健所や市町村保健センター)・食品衛生法(飲食に起因する衛生危害の防止)・医薬品医療機器等法(医薬品や医療機器の品質と安全の確保)などがある。

選択肢ごとの解説

第60回 午前95(医用工学概論)

10¹²に相当する接頭語はどれか。

正答: ②テラ

ポイント
10の12乗を表すSI接頭語はテラ〈記号T〉である。SI接頭語は量の大きさを10の整数乗で簡潔に示すための記号で、テラは10¹²を意味し、コンピュータの記憶容量や周波数の表記などに広く用いられる。●大きい側の主なSI接頭語=デカ(da、10¹)・ヘクト(h、10²)・キロ(k、10³)・メガ(M、10⁶)・ギガ(G、10⁹)・テラ(T、10¹²)・ペタ(P、10¹⁵)・エクサ(E、10¹⁸)。●小さい側の主なSI接頭語=デシ(d、10⁻¹)・センチ(c、10⁻²)・ミリ(m、10⁻³)・マイクロ(μ、10⁻⁶)・ナノ(n、10⁻⁹)・ピコ(p、10⁻¹²)・フェムト(f、10⁻¹⁵)であり、これらはいずれも量の大きさを10の整数乗で表すための記号である。

選択肢ごとの解説

第60回 午前96(医用工学概論)

抵抗4個を接続した直流回路を図に示す。回路のa-b間の電位差が0Vであるとき、抵抗Rの両端電圧〔V〕はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60aA096.3734647f88.jpg
第60回 午前96 の図

正答: ⑤3.0

ポイント
a-b間の電位差が0Vであるホイートストンブリッジは平衡状態にあり、各枝の分圧比が等しくなっている。電源8Vを、100Ωと60Ωの枝、250ΩとRの枝がそれぞれ分圧しており、平衡条件では100/(100+60)=250/(250+R)が成り立つ。これを解くと(250+R)×100=160×250となりR=150Ωが得られる。Rの両端電圧は分圧の関係から8×R/(250+R)=8×150/400=3.0Vと求められる。●ブリッジの平衡条件=向かい合う抵抗の積が等しいこと(R1×R4=R2×R3)、あるいは各枝の分圧比が等しいこと。平衡時には検流計に電流が流れない。●分圧の法則=直列に接続された複数の抵抗にかかる電圧は、それぞれの抵抗値の大きさに比例して配分される。

選択肢ごとの解説

第60回 午前97(医用工学概論)

生体電気現象計測において不分極電極で軽減できるのはどれか。

正答: ①基線の動揺

ポイント
不分極電極(銀-塩化銀電極が代表)は、電極と電解液(ペースト)の界面で電荷の受け渡しが可逆的かつ円滑に行われ、界面での分極(電流に伴う電位のずれ)がほとんど生じない。このため体動や圧迫による界面電位の変動が小さく、心電図や脳波などの生体電気現象計測で問題となる基線の動揺(ドリフト)を軽減できる。●不分極電極の特徴=Ag/AgCl電極が代表で、分極電圧が小さく直流的な基線変動に強い。表面電極として広く用いられる。●計測上の主な雑音と対策=基線動揺(電極の分極や体動による)、商用交流雑音(シールド・差動増幅・ハムフィルタ)、高周波雑音(低域通過フィルタ)、筋電図の混入などがあり、それぞれ原因に応じた対策が必要である。

選択肢ごとの解説

第60回 午前98(医用工学概論)

EPRシステム(等電位接地)で規定されている機器間の電位差はどれか。

正答: ④10 mV以下

ポイント
EPRシステム〈等電位接地〉は、心臓カテーテル室や集中治療室など患者周囲の露出導電部や医用機器の接地を一点に集めて等電位に保ち、機器間のわずかな電位差による微小漏れ電流が患者を介して流れ心室細動(ミクロショック)を起こすことを防ぐ仕組みである。規定では患者環境内の各導電部・機器間の電位差を10mV以下に保つことが求められる。●ミクロショック対策=等電位接地(EPR)・絶縁・心臓直結時の漏れ電流の制限(マクロショックに比べはるかに微小な電流で細動が起こり得る)。●電気安全管理の基準=接地漏れ電流・患者漏れ電流・患者測定電流の許容値、保護接地線の抵抗値、絶縁の確保などが各機器の種別ごとに規定されている。

選択肢ごとの解説

第60回 午前99(医用工学概論)

デジタル医用画像処理の標準規格はどれか。

正答: ①DICOM

ポイント
DICOM〈Digital Imaging and Communications in Medicine〉は、CTやMRI、超音波などの医用画像とその付帯情報(患者情報・撮影条件など)の保存形式と通信手順を定めた国際標準規格である。これにより異なるメーカーの撮影装置・サーバ・ビューアの間で画像を相互運用でき、PACS(医用画像保存通信システム)の基盤となっている。●医療情報の主な標準規格=DICOM(医用画像の保存・通信)・HL7(医療情報システム間で患者情報や検査結果を交換するためのメッセージ規格)・ICD-10(疾病および関連保健問題の国際統計分類コード)。●標準規格でない関連用語=MEDLINEは医学文献の書誌データベース、UMINは大学病院医療情報ネットワークであり、いずれも画像の標準規格ではない。

選択肢ごとの解説

第60回 午前100(医用工学概論)

滅菌について正しいのはどれか。

正答: ⑤乾熱滅菌(250 ℃、60分)はエンドトキシンを不活化できる。

ポイント
乾熱処理のうち250℃で30分以上といった検証された高温条件(本問の250℃・60分はこれを満たす)は、熱に強く通常の高圧蒸気滅菌では分解されないエンドトキシン(細菌由来の発熱性物質)を破壊・不活化できる数少ない方法で、ガラス器具などの脱パイロジェン処理に用いられる。180℃・60分のような通常の乾熱滅菌条件は微生物の殺滅には有効だが、エンドトキシンの不活化には不十分である。●主な滅菌法と特徴=高圧蒸気滅菌(飽和水蒸気121℃前後で芽胞も殺滅し広く用いられる)・乾熱滅菌(高温乾燥空気で芽胞の殺滅とエンドトキシンの不活化が可能)・エチレンオキサイドガス滅菌(低温で熱に弱い器材に使うが残留毒性がありエアレーションが必要)・濾過滅菌(熱に弱い液体を孔径の小さい膜で除菌する)・過酸化水素低温プラズマ滅菌(低温で残留が少ない)。●注意点=EOGは生体毒性があるためエアレーション必須、プラズマ滅菌は残留物が少なく原則エアレーション不要である。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:滅菌法の種類・条件・対象

滅菌法条件主な対象・特徴
高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)121℃、15〜20分(湿熱)耐熱・耐湿の器具、水、培地。芽胞にも有効
乾熱滅菌160〜170℃で120分、170〜180℃で60分、180〜190℃で30分など温度と時間を組で設定(250℃・60分でエンドトキシン不活化)ガラス器具・耐熱性器具。培地は不可
酸化エチレンガス(EOG)滅菌50〜60℃、湿度40%(低温)熱に弱いプラスチック・カテーテル。要エアレーション(残留毒性)
過酸化水素低温プラズマ滅菌低温カテーテル・ゴム製品・電子機器。芽胞にも有効
濾過滅菌加熱しない血清・培地など熱に弱い液体。ウイルス等は孔径により除去できない場合がある
放射線(γ線)滅菌常温包装後の製品にも滅菌可能
高圧蒸気滅菌は芽胞形成菌を含め有効だが、プリオンは通常の方法では不活化できない。