第60回(2014) 臨床検査技師国家試験 午後1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版

第60回 午後1(臨床検査総論)

迅速性が求められる検査はどれか。

正答: ④トロポニンT

ポイント
トロポニンTは心筋細胞の収縮蛋白を構成する成分で、心筋が傷害を受けると細胞外へ逸脱するため心筋特異性が高い。急性冠症候群(急性心筋梗塞)では発症後数時間で上昇し始め、心筋壊死の有無の判定と再灌流療法など治療方針の決定に直結するため、その測定にはきわめて強い迅速性が求められる。検査全般のなかでも、生命予後に関わる急性病態の判定に用いる項目ほど緊急報告の対象となり、結果の遅延が患者の転帰を左右する。●迅速性を要する項目=心筋トロポニン、ミオグロビン、CK-MB、Dダイマー、動脈血ガス分析、血糖、血中アンモニア。●迅速性が相対的に低い項目=総コレステロール、尿酸、アルブミン、ALPなど、慢性病態の評価に用い経時変化が緩徐な項目。●病態と緊急度=急性虚血や出血凝固系は即時、栄養や脂質代謝は定常測定。トロポニンTは正しい。

選択肢ごとの解説

第60回 午後2(臨床検査総論)

仰臥位に比べて座位で上昇する血清成分はどれか。

正答: ④カルシウム

ポイント
座位や立位では重力により血管内の水分が間質へ移動し、循環血漿量が減少して血液が相対的に濃縮される。このため、蛋白そのものや蛋白に結合して存在する高分子成分(アルブミン、脂質、カルシウム、各種酵素など)は見かけ上の濃度が上昇する。カルシウムは血中の約半分がアルブミンと結合して存在するため、体位変換による血漿濃縮の影響を受けて座位で上昇する代表的な成分である。●座位(体位)で上昇する成分=総蛋白、アルブミン、カルシウム、脂質、各種酵素、蛋白結合性の薬物。●体位の影響を受けにくい成分=尿素、クレアチニン、グルコース、尿酸、Na・Kなど低分子で血管壁を自由に通過し拡散する成分。●採血時の注意=体位や駆血時間で値が変動するため条件を統一する。カルシウムは正しい。なお、検査値の基準範囲は通常、安静座位での採血を前提に設定されているため、測定条件をそろえることが重要である。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:体位(臥位→座位・立位)で変化する主な血液検査項目

分類臥位より座位・立位で高値になる項目
ホルモン血漿レニン活性・アルドステロン・バソプレシン・アドレナリン・ノルアドレナリン
高分子化合物総蛋白〈TP〉・アルブミン〈Alb〉
蛋白結合性物質ビリルビン・カルシウム
その他赤血球数・ヘモグロビン(立位>臥位)
立位により血漿中の水分が組織間液へ移行(血液濃縮)するため、これらの項目は相対的に高値となる。

第60回 午後3(臨床検査総論)

x-R管理図法で管理するのはどれか。2つ選べ。

正答: ①標準液の劣化・⑤試薬のロット間差

ポイント
x-R管理図は、同一の管理試料を反復測定して平均値xと範囲Rの変動を時系列で監視する精度管理法で、系統誤差(正確さの偏り)と偶然誤差(再現性のばらつき)の双方を検出する。標準液の劣化は測定値の系統的な偏りとしてxの変動に現れ、試薬のロット間差はロット切替時のレベル変化として管理図上に現れるため、いずれも検出の対象となる。●管理図で検出できる要因=標準液の劣化、試薬ロット間差、機器の経時的変動、測定系の偏りやばらつき。●管理図で検出できない要因=検体採血過誤や検体取り違えなど個々の検体に固有の過誤、パニック値の検出。●管理図の種類=xは平均(正確さ)、Rは範囲(精密さ)を監視する。標準液の劣化と試薬のロット間差は正しい。日常の内部精度管理ではこの管理図に管理限界線を設けて逸脱を監視し、異常があれば原因を追究して是正する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:内部精度管理法の分類(管理試料を用いる方法・用いない方法)

分類代表的な方法
管理試料を用いる方法x̄-R管理図法(x̄-Rs法・x̄-Rs-R法)・累積和法(CUSUM法)・双値法(ツインプロット法・Youden plot法)・マルチルール管理図法・臼井法
管理試料を用いない方法(患者データを利用)二重測定法・Hoffmann法(ナンバープラス法・正常者平均値法)・個別検体の管理法(高値低値チェック法・項目間チェック法・デルタチェック法)・|R/x̄|管理法(新谷法)
累積和法は微小で持続的な偏りの検出に優れる。x̄-R管理図法は標準液の劣化・機器異常等の系統誤差/偶然誤差を検出するが、正確度(真度)そのものの評価には別途標準物質・標準法との比較が必要。

第60回 午後4(臨床検査総論)

糖尿病性腎症の早期発見に有用な尿検査項目はどれか。

正答: ⑤微量アルブミン

ポイント
糖尿病性腎症の最初期には、糸球体基底膜の透過性が亢進し、通常の試験紙法では検出できないごく微量のアルブミンが尿中へ漏出する。この微量アルブミン尿(早期腎症期)を検出することは、不可逆的な顕性蛋白尿へ進行する前に治療介入できる点で、早期発見にきわめて有用である。●糖尿病性腎症の進行と尿所見=正常→微量アルブミン尿(早期腎症期)→持続性蛋白尿(顕性腎症期)→腎機能低下(腎不全期)。●他の尿項目の臨床的意義=ヘモグロビン・ミオグロビンは血尿や横紋筋融解、ケトン体は糖尿病ケトアシドーシスや飢餓、ウロビリノゲンは肝・胆道疾患や溶血の指標。●測定法=免疫学的に微量域を定量する。微量アルブミンは正しい。なお、微量アルブミン尿は運動や発熱でも一過性に増加しうるため、複数回の測定で持続性を確認して判定する。早期からの血糖・血圧管理が腎症の進行抑制につながる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後5(臨床検査総論)

尿沈渣にみられる結晶のうち病的成分はどれか。

正答: ②シスチン

ポイント
尿沈渣中にみられる結晶は、生理的(無病的)に出現するものと病的意義をもつものに大別される。シスチン結晶は六角形板状を呈し、先天性のアミノ酸代謝異常であるシスチン尿症に特異的に出現するため、認められること自体が病的所見となる。一方、尿酸・シュウ酸カルシウム・リン酸カルシウム・炭酸カルシウムは健常者の尿でも食事内容や尿pHにより出現しうる。●病的とされる結晶=シスチン(シスチン尿症)、チロシン・ロイシン(重症肝障害)、ビリルビン、コレステロール、各種薬剤結晶。●生理的に出現しうる結晶=尿酸・シュウ酸カルシウム(酸性尿)、リン酸カルシウム・炭酸カルシウム(アルカリ性尿)。●鑑別=形態と尿pHを併せて判定する。シスチンは正しい。尿沈渣では結晶のほか、赤血球・白血球・各種円柱・上皮細胞なども観察し、病態の手がかりとして総合的に判定する。

選択肢ごとの解説

第60回 午後6(臨床検査総論)

白色下痢便を呈する疾患はどれか。

正答: ④ロタウイルス腸炎

ポイント
ロタウイルス腸炎は乳幼児の急性胃腸炎の代表的な原因で、白色〜淡黄白色の水様性下痢便(白色便)を呈するのが特徴である。大量の水様便により便中への胆汁色素の移行が相対的に乏しくなることなどから便が白色調を呈し、冬季に流行して脱水に注意を要する。●白色〜灰白色便を呈する病態=ロタウイルス腸炎、胆道閉鎖症や胆汁うっ滞などの胆汁排泄障害、バリウム造影検査後。●血便・粘血便を呈する病態=細菌性赤痢、潰瘍性大腸炎、サルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎、腸管出血性大腸菌感染症。これらは腸管粘膜の炎症や出血により血液・粘液が便に混じる。●脱水対策=経口・経静脈補液を行う。ロタウイルス腸炎は正しい。なお、便の性状(水様・粘血・白色・タール状)は原因病原体や病態を推定する重要な手がかりとなる。乳幼児では脱水が急速に進むため、補液と全身状態の観察が重要となる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後7(臨床検査総論)

自家感染するのはどれか。2つ選べ。

正答: ①糞線虫・③有鉤条虫

ポイント
自家感染とは、宿主内で生じた虫卵や幼虫が同じ宿主への感染を成立させる現象である。体内で完結する場合と、排出された虫卵等が手指などを介して再び同じ宿主に入る場合がある。糞線虫はラブジチス型幼虫が腸管内で感染性のフィラリア型幼虫へ発育し、腸壁や肛門周囲皮膚から再侵入するため自家感染を起こし、免疫不全者では重篤な過剰感染症を生じる。有鉤条虫はヒトが排出した虫卵を経口摂取すると有鉤嚢虫症を起こすため自家感染が成立する。●自家感染を起こす寄生虫=糞線虫、有鉤条虫、小形条虫、蟯虫。なお小形条虫(Hymenolepis nana)と縮小条虫(Hymenolepis diminuta)は別種で、縮小条虫は昆虫を中間宿主とするため自家感染しない。●自家感染を起こさない=無鉤条虫(中間宿主の牛が必要)、日本住血吸虫・バンクロフト糸状虫(巻貝や蚊の媒介が必要)。●臨床的意義=免疫不全で重症化する。糞線虫と有鉤条虫は正しい。なお、糞線虫は免疫抑制状態で播種性の重症感染(過剰感染症候群)を起こすため、移植やステロイド使用前の確認が重要である。

選択肢ごとの解説

第60回 午後8(臨床検査総論)

成虫が門脈に寄生するのはどれか。

正答: ④日本住血吸虫

ポイント
日本住血吸虫は、成虫が雌雄合体した状態で門脈〜腸間膜静脈系に寄生し、産卵された虫卵が腸壁や肝臓に沈着して肉芽腫の形成や肝線維化(住血吸虫症)を引き起こす。中間宿主はミヤイリガイで、水中のセルカリアが経皮感染する。寄生虫は寄生部位によって生じる症状が異なる。●門脈・腸間膜静脈に寄生=日本住血吸虫、マンソン住血吸虫。●膀胱・骨盤静脈叢に寄生=ビルハルツ住血吸虫(血尿・膀胱癌)。●胆管に寄生=肝吸虫、肝蛭。●肺動脈や中枢神経に寄生=広東住血線虫(好酸球性髄膜炎)。●小腸に寄生=回虫、鉤虫など。日本住血吸虫は正しい。住血吸虫類はいずれも巻貝を中間宿主とし、水中のセルカリアが経皮的にヒトへ侵入して感染が成立する点が共通する。寄生部位の違いが症状の差を生む。診断は糞便や尿からの虫卵検出により行い、流行地での感染歴も参考とする。

選択肢ごとの解説

第60回 午後9(臨床検査総論)

体毛に付着していた虫体(体長1.2 mm)の写真を別に示す。正しいのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB009.66a62cc037.jpg
第60回 午後9 の図

正答: ①ケジラミ

ポイント
体長約1.2mmで体毛(特に陰毛)に付着していた虫体はケジラミである。ケジラミは扁平で幅広い体に強大な鉤爪状の脚をもち、カニのような外観で陰毛・腋毛などにしがみついて吸血する。主に性的接触により感染し、強い瘙痒を生じる。形態・寄生部位・媒介疾患により鑑別する。●ヒトに寄生するシラミ=ケジラミ(陰毛など、体長約1〜2mmで幅広い)、アタマジラミ(頭髪、細長い)、コロモジラミ(衣服に潜み発疹チフスや回帰熱を媒介)。●ダニ・その他の節足動物=ヒゼンダニ(疥癬、皮内に疥癬トンネルを作る)、ツツガムシ(恙虫病リケッチアを媒介)。●鑑別点=体型・寄生部位・媒介病原体。ケジラミは正しい。なお、シラミ症は接触により家族内などで広がるため、寝具や衣類の処理を含めた対応が必要となる。検出には虫体や虫卵(毛じらみ卵)を毛幹に確認することが診断の根拠となる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後10(臨床検査総論)

寄生虫疾患と検査法の組合せで正しいのはどれか。

正答: ④アニサキス症―内視鏡検査

ポイント
アニサキス症は、サバ・アジ・イカなど海産魚介類の生食でアニサキス幼虫を摂取し、虫体が胃壁や腸壁に穿入して激しい腹痛など急性腹症を起こす。胃アニサキス症では内視鏡検査により虫体を直接確認して摘出できるため、診断と治療を兼ねて有用である。寄生虫は寄生部位と排出経路に応じた検査法を選ぶ。●寄生虫と適切な検査法=アニサキス症―内視鏡検査、回虫・鉤虫―糞便集卵法(飽和食塩水浮遊法)、蟯虫―セロテープ肛囲検査、マラリア―末梢血塗抹(ギムザ染色)。●その他=糞線虫症―普通寒天平板培養法による幼虫検出、日本住血吸虫症―糞便からの虫卵検出。●原則=虫体や虫卵の存在部位に検査を合わせる。アニサキス症は正しい。なお、糞便検査では集卵法のほか、虫卵の形態や大きさを顕微鏡で観察して虫種を同定することも重要である。虫体や虫卵が確認できない場合は問診や血清抗体検査を補助的に用いる。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:寄生虫の糞便検査法と検出対象

検査法検出対象
直接塗抹法回虫卵
飽和食塩水浮遊法鉤虫卵、東洋毛様線虫卵
ホルマリン・エーテル法〈MGL法〉各種虫卵、原虫シスト(嚢子)
AMSIII法日本住血吸虫卵など吸虫卵
セロファンテープ肛囲検査蟯虫卵
ろ紙培養法(Harada-Mori法)鉤虫・東洋毛様線虫・糞線虫の幼虫を培養し鑑別
ショ糖遠心沈殿浮遊法クリプトスポリジウムのオーシスト
アニサキス症は虫卵・虫体が糞便に出ないため、糞便検査ではなく内視鏡検査で虫体を直接確認・摘出する。

第60回 午後11(臨床検査医学総論)

虚血性心疾患のリスクファクターはどれか。2つ選べ。

正答: ①高LDLコレステロール血症・④2型糖尿病

ポイント
虚血性心疾患(冠動脈疾患)の主要な危険因子は、動脈硬化を促進する脂質・代謝異常である。高LDLコレステロール血症はコレステロールの血管壁への沈着とアテローム性プラークの形成を促進し、2型糖尿病は持続する高血糖による血管内皮の障害を介して動脈硬化を進展させ、いずれも発症リスクを著明に高める。●虚血性心疾患の危険因子=高LDLコレステロール血症、糖尿病、高血圧、喫煙、加齢、男性、肥満、低HDLコレステロール血症。●危険因子とならない/関連の薄い病態=甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、肝硬変(むしろ脂質低下を伴うことがある)。●予防=脂質・血糖・血圧の管理と禁煙。高LDLコレステロール血症と2型糖尿病は正しい。なお、危険因子は重複するほどリスクが相乗的に高まるため、複数の因子を総合的に評価して管理することが重要である。

選択肢ごとの解説

第60回 午後12(臨床検査医学総論)

採血に伴う血管迷走神経反射で正しいのはどれか。

正答: ④脈拍減少

ポイント
血管迷走神経反射は、採血時の疼痛や不安などが引き金となって迷走神経(副交感神経)が過剰に興奮する反応である。副交感神経の優位により心拍数が低下(徐脈)し、同時に末梢血管が拡張して血圧が低下するため、顔面蒼白・冷汗・悪心・あくび・失神などを生じる。脈拍減少はこの反射に典型的な所見である。●血管迷走神経反射の所見=徐脈、血圧低下、顔面蒼白、冷汗、悪心・嘔吐、失神。●交感神経興奮による一般的反応との対比=頻脈、血圧上昇、顔面紅潮や発汗。●対処=直ちに仰臥位とし下肢を挙上、症状が回復するまで観察する。脈拍減少は正しい。本反射は副交感神経優位による徐脈・血圧低下が本態である。なお、採血後の症状であっても患者の安全が最優先であり、転倒による外傷を防ぐ体位管理が求められる。症状が遷延する場合や繰り返す場合は、横になって採血する体位採血を考慮する。

選択肢ごとの解説

第60回 午後13(臨床検査医学総論)

自己抗体と疾患の組合せで正しいのはどれか。

正答: ⑤抗アセチルコリン受容体抗体―重症筋無力症

ポイント
抗アセチルコリン受容体抗体は、神経筋接合部の終板にあるアセチルコリン受容体に結合してその働きを障害し、神経筋伝達を妨げて重症筋無力症を引き起こす自己抗体である。眼瞼下垂・複視・易疲労性・症状の日内変動を特徴とし、胸腺腫を合併することがある。自己抗体は疾患特異性に基づき診断に用いる。●自己抗体と疾患の正しい対応=抗アセチルコリン受容体抗体―重症筋無力症、抗CCP抗体・リウマトイド因子―関節リウマチ、抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体―全身性エリテマトーデス、抗セントロメア抗体―CREST症候群(限局型強皮症)、抗ミトコンドリア抗体―原発性胆汁性胆管炎。●意義=疾患特異性の高い抗体は診断の決め手となる。抗アセチルコリン受容体抗体―重症筋無力症は正しい。自己抗体検査は臨床症状と組み合わせて総合的に診断へ用いることが重要である。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:臓器特異的自己抗体と自己免疫疾患

自己抗体対応する疾患
抗内因子抗体・抗胃壁細胞抗体悪性貧血
抗TSH受容体抗体Basedow病
抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ(抗マイクロソーム)抗体橋本病(慢性甲状腺炎)
抗アセチルコリン受容体抗体重症筋無力症
抗ミトコンドリア抗体原発性胆汁性胆管炎〈PBC〉
抗赤血球抗体自己免疫性溶血性貧血
抗血小板抗体特発性血小板減少性紫斑病〈ITP〉
抗糸球体基底膜抗体Goodpasture症候群
抗平滑筋抗体・抗核抗体自己免疫性肝炎
抗副腎皮質抗体特発性Addison病
リウマトイド因子・抗CCP抗体関節リウマチ〈RA〉
抗GAD抗体1型糖尿病
抗dsDNA抗体・抗Sm抗体全身性エリテマトーデス〈SLE〉
抗Scl-70抗体・抗セントロメア抗体全身性強皮症(全身性硬化症)
抗Jo-1抗体多発性筋炎・皮膚筋炎
抗SS-A抗体・抗SS-B抗体Sjögren症候群
抗ENA抗体・抗U1-RNP抗体混合性結合組織病〈MCTD〉
サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉は甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己抗体の標的とはならない。

第60回 午後14(臨床検査医学総論)

迅速検査キットで診断できるのはどれか。

正答: ②RSウイルス

ポイント
RSウイルスは乳幼児の細気管支炎や肺炎の主要な原因ウイルスで、鼻咽頭ぬぐい液を検体としたイムノクロマト法による迅速抗原検出キットが普及しており、外来で短時間に診断できる。迅速キットは抗原量が多く検体の採取が容易な感染症で有用性が高い。●迅速抗原検査キットで診断可能なウイルス=RSウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロ・ロタウイルス、新型コロナウイルス。●迅速抗原キットが一般的でなく血清抗体価や核酸検査で診断するもの=EBウイルス(抗体)、風疹・麻疹ウイルス(抗体価)、サイトメガロウイルス(抗原血症・核酸検査)。●原理=抗原抗体反応の発色を判定する。RSウイルスは正しい。なお、迅速検査は簡便で即時性に優れる一方、感度・特異度には限界があるため、臨床所見と併せて結果を解釈する。検体の採取部位やタイミングが結果に影響するため、適切な採取手技が求められる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後15(臨床検査医学総論)

推算糸球体濾過量〈eGFR〉の計算に用いられるのはどれか。

正答: ④年齢

ポイント
推算糸球体濾過量(eGFR)は、血清クレアチニン値に年齢と性別を組み合わせた推算式によって算出する腎機能の指標である。年齢は筋肉量の加齢による変化を補正する変数として式に組み込まれており、計算に必須である。日本人ではeGFR=194×血清クレアチニン⁻¹·⁰⁹⁴×年齢⁻⁰·²⁸⁷(女性は×0.739)の推算式が用いられる。●eGFR推算式に用いる項目=血清クレアチニン(またはシスタチンC)、年齢、性別。●用いない項目=身長、体重、尿量、腹囲。●補足=クレアチニンクリアランスの実測値を体表面積で補正する際には身長・体重を用いるが、eGFRの推算式自体には不要である。年齢は正しい。なお、eGFRは血清クレアチニンの推算式であり、筋肉量が極端に多い・少ない症例ではシスタチンC基準の式も併用される。

選択肢ごとの解説

第60回 午後16(臨床生理学)

房室副伝導路が原因となるのはどれか。

正答: ④WPW症候群

ポイント
WPW症候群は、心房と心室を直接つなぐ房室副伝導路(Kent束)が先天的に存在し、正常の房室結節を介さずに心室の一部を早期に興奮させる病態である。心電図ではPQ短縮・デルタ波・QRS幅の延長を示し、副伝導路を介する回帰性頻拍(発作性上室頻拍)や心房細動を合併する。●房室副伝導路が関与する病態=WPW症候群(Kent束)、LGL症候群(房室結節を迂回する副伝導路)。●その他の選択肢の機序=心室細動・心室期外収縮は心室筋の異常興奮、洞不整脈は洞結節の自律神経性変動、異型狭心症は冠動脈攣縮による虚血で、いずれも副伝導路は関与しない。●治療=カテーテルアブレーションが有効。WPW症候群は正しい。なお、副伝導路を介する頻拍では薬剤選択に注意を要し、心房細動合併時は房室結節抑制薬で増悪することがある。診断には心電図でのデルタ波・PQ短縮・QRS延長の確認が基本となる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後17(臨床生理学)

心電図を別に示す。最も注意すべき合併症はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB017.6f1095c386.jpg
第60回 午後17 の図

正答: ①脳塞栓

ポイント
本図は心房細動の心電図と考えられ、最も注意すべき合併症は脳塞栓(心原性脳塞栓症)である。心房細動では心房が無秩序に細動して有効な収縮を失うため、左心房(特に左心耳)内に血流のうっ滞による血栓が形成されやすく、これが遊離して脳動脈を塞栓すると重篤な脳梗塞を起こす。●心房細動の心電図所見=P波の消失、基線の細動波(f波)、絶対性に不規則なRR間隔。●心房細動の合併症と対策=心原性脳塞栓(抗凝固療法で予防)、心不全、頻脈の持続による心機能の低下。●予防=CHADS2スコア等で塞栓リスクを評価する。最も注意すべきは脳塞栓で正しい。f波と絶対性不整脈が特徴的所見である。なお、心房細動は加齢・高血圧・心不全などで頻度が増し、塞栓予防のための抗凝固管理が治療の要点となる。心電図での絶対性不整脈とf波の確認が診断の基本となり、リスク評価につなげる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後18(臨床生理学)

トレッドミル負荷試験について正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ①不安定狭心症は禁忌である。・④心筋梗塞のリハビリテーションの目安になる。

ポイント
トレッドミル負荷試験は、運動負荷をかけながら心電図変化や症状を評価する検査である。不安定狭心症は安静時や軽労作でも心筋虚血が進行する病態で、運動負荷により心筋梗塞や致死的不整脈を誘発する危険があるため絶対禁忌である。また本試験は心筋梗塞後の運動耐容能を評価でき、心臓リハビリテーションの目安としても用いられる。●運動負荷試験の禁忌=不安定狭心症、急性心筋梗塞の急性期、重症大動脈弁狭窄、コントロール不良の不整脈や心不全。●Bruce法=3分ごとに速度と傾斜を増す多段階法で、目標心拍数は年齢から推定する。●中止基準=胸痛やST変化、血圧低下など。不安定狭心症が禁忌で、リハビリの目安になるのは正しい。なお、運動負荷中はST変化・不整脈・血圧反応・自覚症状を連続して監視し、危険徴候が出現すれば直ちに中止する。

選択肢ごとの解説

第60回 午後19(臨床生理学)

換気機能検査の指標の異常とその解釈の組合せで正しいのはどれか。

正答: ③機能的残気量〈FRC〉の上昇―肺の過膨張

ポイント
機能的残気量(FRC)は安静呼気位で肺内に残る空気量で、肺の弾性収縮力と胸郭の外向きの拡張力が釣り合う位置を反映する。肺気腫など閉塞性肺疾患では肺の弾性収縮力が低下して空気が肺内に溜まる過膨張(air trapping)を生じ、FRCが上昇する。FRCの上昇=肺の過膨張は正しい組合せである。●閉塞性換気障害(過膨張・残気量増加)=肺気腫、慢性閉塞性肺疾患。●拘束性換気障害(肺容量の低下)=間質性肺炎・肺線維化(VC・TLCが低下)。●気道閉塞の指標=V25など末梢気道の指標の低下、PEFは気道抵抗や努力依存性を反映する。●判定=病型により容量・流量指標の異常を組み合わせて評価する。FRC上昇=肺の過膨張が正しい。したがって、機能的残気量の上昇が肺の過膨張を反映するというこの組合せが正しい。なお、肺気量分画は安静時の呼吸位を基準として理解する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:換気機能障害の分類(%肺活量〈%VC〉・1秒率〈FEV1%〉による判定)

分類判定基準主な疾患・病態
正常%VC≧80% かつ FEV1%≧70%―
拘束性換気障害%VC<80% かつ FEV1%≧70%間質性肺炎・肺線維症・胸郭/胸膜病変・呼吸筋力低下など
閉塞性換気障害%VC≧80% かつ FEV1%<70%COPD(肺気腫・慢性気管支炎)・気管支喘息など
混合性換気障害%VC<80% かつ FEV1%<70%拘束性と閉塞性の合併
閉塞性換気障害ではフローボリューム曲線が下に凸の形となる。機能的残気量〈FRC〉は肺の過膨張により上昇する(肺気腫・COPDなど)。

第60回 午後20(臨床生理学)

静肺コンプライアンスについて正しいのはどれか。

正答: ⑤慢性閉塞性肺疾患(肺気腫型)で上昇する。

ポイント
静肺コンプライアンスは単位圧変化あたりの肺容量変化(肺の膨らみやすさ)を表す指標で、肺の弾性に反比例する。慢性閉塞性肺疾患(肺気腫型)では肺胞壁が破壊されて弾性線維が失われるため肺が膨らみやすくなり、コンプライアンスが上昇する。●コンプライアンスが上昇する(膨らみやすい)病態=肺気腫、加齢による肺弾性の低下。●コンプライアンスが低下する(硬く膨らみにくい)病態=間質性肺炎・肺線維症、心不全による肺うっ血、肺水腫、無気肺、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)。●概念=コンプライアンスは肺の弾性と相反する関係にある。肺気腫型COPDで上昇は正しい。なお、コンプライアンスは肺の膨らみやすさを反映するため、線維化で硬くなる病態では低下し、弾性が失われる病態では上昇する。診断や評価では、画像所見や換気機能検査の結果と併せて病態を総合的に判断する。

選択肢ごとの解説

第60回 午後21(臨床生理学)

酸塩基平衡の異常と動脈血ガス分析の所見の組合せで正しいのはどれか。ただし、↑は上昇、↓は低下、〜は正常を示す。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB021.e3302b9af0.jpg
第60回 午後21 の図

正答: ①急性代謝性アシドーシス

ポイント
急性代謝性アシドーシスでは、酸の蓄積または重炭酸イオン(HCO₃⁻)の喪失により一次性にHCO₃⁻が低下する。これに対し肺による呼吸性代償が働いて換気が亢進し、PaCO₂は正常〜低下する。本病態の一次変化はHCO₃⁻低下、代償はPaCO₂低下であり、一次変化と代償は同じ方向に動く。●代謝性アシドーシス=HCO₃⁻↓、代償でPaCO₂↓。●代謝性アルカローシス=HCO₃⁻↑、代償でPaCO₂↑。●呼吸性アシドーシス=PaCO₂↑、慢性代償でHCO₃⁻↑。●呼吸性アルカローシス=PaCO₂↓、慢性代償でHCO₃⁻↓。急性代謝性アシドーシス(PaCO₂〜または↓/HCO₃⁻↓)は正しい。なお、実際の症例では一次性変化と代償の程度を予測式と照合し、代償の範囲を超える場合は混合性障害を疑う。診断ではpH・PaCO₂・HCO₃⁻の三者を併せて読み、原疾患の検索につなげる。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:酸塩基平衡異常の4パターン(pH・一次性変化・代償性変化)

病態pH一次性変化代償性変化主な原因
呼吸性アシドーシス↓PaCO₂↑HCO₃-↑(腎性代償)肺胞低換気(COPD・呼吸中枢抑制・神経筋疾患など)
呼吸性アルカローシス↑PaCO₂↓HCO₃-↓(腎性代償)過換気(過換気症候群・発熱・肺塞栓など)
代謝性アシドーシス↓HCO₃-↓PaCO₂↓(呼吸性代償)糖尿病性ケトアシドーシス・腎不全・下痢など
代謝性アルカローシス↑HCO₃-↑PaCO₂↑(呼吸性代償)嘔吐・利尿薬・原発性アルドステロン症など
代償は血液pHを基準範囲(7.35〜7.45)へ戻そうとする働き。呼吸性代償は換気量の増減により数時間単位、代謝性(腎性)代償はHCO₃-の排泄調節により数日単位で生じる。代償が予測範囲を超える場合は混合性障害を疑う。

第60回 午後22(臨床生理学)

72歳の男性。40本/日の喫煙を50年近く続けている。4~5年前から咳、痰および階段を昇るときの息切れがあり、最近悪化したため受診した。呼吸機能検査の結果を以下に示す。-動脈血ガス分析(室内気):pH 7.37、PaO₂ 58 Torr、PaCO₂ 56 Torr、HCO₃ 38 mEq/l〈mmol/l〉強制努力呼出でのフローボリューム曲線を別に示す。考えられる疾患はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB022.cdb9587cc8.jpg
第60回 午後22 の図

正答: ⑤慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉

ポイント
長期の多量喫煙歴、慢性の咳・痰・労作時の息切れ、動脈血ガス分析でのII型呼吸不全(PaO₂の低下とPaCO₂の上昇)と代償性のHCO₃⁻上昇、フローボリューム曲線の下に凸の閉塞性パターンは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に合致する。喫煙による末梢気道病変と肺気腫が呼気流速の低下と慢性の高炭酸ガス血症をもたらす。●COPDの所見=閉塞性換気障害(1秒率の低下)、フローボリュームの下に凸、肺の過膨張、II型呼吸不全。●鑑別=間質性肺炎は拘束性、気管支喘息(非発作時)は所見が乏しい、中枢気道の器質狭窄は流量制限の形が異なる。●背景=喫煙が最大の要因。COPDは正しい。なお、本例は慢性のII型呼吸不全に代謝性代償が加わった状態で、pHがほぼ正常に保たれている点も矛盾しない。確定診断にはスパイロメトリーで気管支拡張薬後も1秒率の低下が残ることを確認する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:酸塩基平衡異常の4パターン(pH・一次性変化・代償性変化)

病態pH一次性変化代償性変化主な原因
呼吸性アシドーシス↓PaCO₂↑HCO₃-↑(腎性代償)肺胞低換気(COPD・呼吸中枢抑制・神経筋疾患など)
呼吸性アルカローシス↑PaCO₂↓HCO₃-↓(腎性代償)過換気(過換気症候群・発熱・肺塞栓など)
代謝性アシドーシス↓HCO₃-↓PaCO₂↓(呼吸性代償)糖尿病性ケトアシドーシス・腎不全・下痢など
代謝性アルカローシス↑HCO₃-↑PaCO₂↑(呼吸性代償)嘔吐・利尿薬・原発性アルドステロン症など
代償は血液pHを基準範囲(7.35〜7.45)へ戻そうとする働き。呼吸性代償は換気量の増減により数時間単位、代謝性(腎性)代償はHCO₃-の排泄調節により数日単位で生じる。代償が予測範囲を超える場合は混合性障害を疑う。

📋 まとめの表を見る:換気機能障害の分類(%肺活量〈%VC〉・1秒率〈FEV1%〉による判定)

分類判定基準主な疾患・病態
正常%VC≧80% かつ FEV1%≧70%―
拘束性換気障害%VC<80% かつ FEV1%≧70%間質性肺炎・肺線維症・胸郭/胸膜病変・呼吸筋力低下など
閉塞性換気障害%VC≧80% かつ FEV1%<70%COPD(肺気腫・慢性気管支炎)・気管支喘息など
混合性換気障害%VC<80% かつ FEV1%<70%拘束性と閉塞性の合併
閉塞性換気障害ではフローボリューム曲線が下に凸の形となる。機能的残気量〈FRC〉は肺の過膨張により上昇する(肺気腫・COPDなど)。

第60回 午後23(臨床生理学)

機能と部位の組合せで正しいのはどれか。

正答: ②運動制御―小脳

ポイント
小脳は運動の協調・平衡・筋緊張の調節を担い、随意運動を滑らかにする運動制御の中枢である。障害されると運動失調、企図振戦、測定障害(dysmetria)などを生じる。各機能はそれぞれ対応する部位に局在している。●中枢神経の機能局在=言語中枢は大脳皮質(前頭葉のブローカ野・側頭葉のウェルニッケ野)、運動の協調・制御は小脳、自律神経や体温・摂食・飲水の上位中枢は視床下部、感覚情報の中継核は視床、ホルモン分泌の調節は視床下部—下垂体系、呼吸・循環など生命維持の中枢は脳幹(延髄)。●原則=部位ごとに役割が分かれる。運動制御―小脳は正しい。なお、機能局在を理解すると、障害部位と症状の対応から病巣の局在診断につなげることができる。したがって、運動制御を担うのは小脳であり、この組合せが正しいと判断できる。なお、局在診断では症状から責任病巣を推定する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:中枢神経系の部位と機能

部位機能
一次運動野(前頭葉・中心前回)随意運動の中枢
一次体性感覚野(頭頂葉・中心後回)体性感覚(触覚・痛覚など)の中枢
視覚野(後頭葉・鳥距溝)視覚
聴覚野(側頭葉・上側頭回後部〜横側頭回)聴覚
味覚野(側頭葉内側の島)味覚
嗅覚野(前頭葉下部の嗅脳)嗅覚
運動性言語中枢〈Broca野〉(前頭葉下前頭回)発語(言語の表出)
感覚性言語中枢〈Wernicke野〉(側頭葉上側頭回)言語理解
海馬(側頭葉内側・大脳辺縁系)記憶(特に短期記憶の固定)
視床(間脳)嗅覚以外の感覚神経路の中継核
視床下部(間脳)自律神経・内分泌の総合中枢(体温・摂食・飲水調節など)
小脳運動の調整・平衡保持
脳幹(中脳・橋・延髄)意識の保持、呼吸・循環など生命維持、睡眠覚醒の調節
脊髄運動系・知覚系・自律神経系の伝導路
言語中枢はほとんどの場合、左半球(優位半球)にある。運動は中心前回、体性感覚は中心後回であり取り違えやすい。

第60回 午後24(臨床生理学)

脳波を別に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB024.15028f0d03.jpg
第60回 午後24 の図

正答: ⑤睡眠ステージ2

ポイント
本脳波は睡眠ステージ2(軽睡眠)と考えられ、紡錘波(睡眠紡錘波、12〜14Hz前後の群発)とK複合波の出現が特徴である。覚醒時のα波が消失し、低振幅の脳波を背景にこれらの相動性の要素が出現する。●睡眠段階と脳波所見=覚醒(α波)、ステージ1(低振幅でθ波や瘤波)、ステージ2(紡錘波・K複合)、ステージ3・4(高振幅δ波の徐波睡眠)、レム睡眠(覚醒に似た低振幅速波と急速眼球運動)。●異常波形との区別=意識障害ではびまん性徐波、てんかん発作では棘波や棘徐波複合を示す。●指標=紡錘波とK複合が本段階の目印となる。睡眠ステージ2は正しい。なお、睡眠段階の判定では脳波に加え眼球運動(眼電図)と頤筋筋電図を併せて総合的に評価する。したがって、紡錘波とK複合波を認める本図は睡眠ステージ2に相当する。なお、睡眠ポリグラフ検査で各段階を判定する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:睡眠段階(AASM分類)と脳波所見

睡眠段階脳波の主な所見区分
Stage W(覚醒)後頭部優位のα波。閉眼安静時に出現覚醒
Stage N1α波が減少し振幅低下、低振幅4〜7Hzのθ波混在。後半に瘤波〈頭頂鋭波〉が出現Non-REM睡眠
Stage N2紡錘波(12〜14Hz)が出現。明瞭な陰性鋭波に続いて陽性成分が現れるK複合(持続0.5秒以上)も出現Non-REM睡眠
Stage N3高振幅δ波(2Hz以下・75μV以上)が1エポックの20%以上を占めるNon-REM睡眠(徐波睡眠)
Stage R(REM)N1に似た低振幅波形だが瘤波は出現しない。急速眼球運動を伴うREM睡眠
睡眠ステージ1(N1)からステージ2(N2)への移行は、紡錘波の出現で判断する。旧Rechtschaffen & Kales分類のStage3・4はAASM分類でStage N3に統一された。

第60回 午後25(臨床生理学)

脳波所見と症状または疾患の組合せで正しいのはどれか。

正答: ①re-build up ―もやもや病

ポイント
re-build up(再増高現象)は、もやもや病で過呼吸負荷を終了してからしばらくして再び高振幅の徐波が出現する特徴的な脳波所見で、脳血管の脆弱性と過呼吸後の脳血流低下を反映する。特徴的な突発波や賦活所見は疾患診断の手がかりとなる。●脳波所見と疾患の正しい対応=re-build up―もやもや病、ヒプスアリスミア―ウェスト症候群(点頭てんかん)、3Hz棘徐波複合―欠神発作(小発作)、多棘徐波複合―ミオクロニーてんかん、6&14Hz陽性棘波―健常者にもみられる非特異的所見。●賦活法=過呼吸・光刺激・睡眠などで異常波を誘発する。re-build up―もやもや病は正しい。なお、過呼吸賦活は小児で徐波が出現しやすく、年齢を考慮して所見を判定する必要がある。したがって、過呼吸後の再増高現象はもやもや病に特徴的であり、この組合せが正しい。なお、各突発波の出現する疾患を対応づけて判定する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:脳波所見と対応疾患

脳波所見対応する疾患・病態
3Hz棘徐波複合欠神発作(欠神発作型/小発作型てんかん)
多棘波・多棘徐波複合ミオクロニー発作(若年ミオクロニーてんかん)
ヒプスアリスミアWest症候群(点頭てんかん)
1.5〜2.5Hz鋭徐波複合(遅棘徐波複合)Lennox-Gastaut症候群
三相波肝性脳症・腎性脳症などの代謝性脳症
周期性同期性放電〈PSD〉孤発性(古典型)Creutzfeldt-Jakob病、亜急性硬化性全脳炎〈SSPE〉
周期性一側性てんかん型放電〈PLEDs〉単純ヘルペス脳炎、脳血管障害急性期
広汎性α波脳動脈硬化症(慢性脳循環不全)
re-build up(過呼吸後の再増高現象)もやもや病
6&14Hz陽性棘波自律神経発作(健常者にもみられる非特異的所見)
変異型Creutzfeldt-Jakob病(牛海綿状脳症〈BSE〉関連)ではPSDはみられない点に注意。

第60回 午後26(臨床生理学)

心臓の超音波断面像を別に示す。この断面が得られる探触子の位置は下図のどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB026.fd291f0e3a.jpg
第60回 午後26 の図

正答: ④

ポイント
本図は心尖部から両心室・両心房を描出する心尖部四腔像である。探触子に近い側に心尖部、遠い側に心房があり、中央に心室中隔と房室弁を認める。体表図では心尖部に相当する④からこの断面を得る。
●①胸骨上窩:大動脈弓など。
●②胸骨右縁:右側からの走査窓。
●③胸骨左縁:傍胸骨長軸像・短軸像など。
●④心尖部:心尖部四腔像・二腔像・長軸像など。
●⑤心窩部:心窩部四腔像・下大静脈など。

選択肢ごとの解説

第60回 午後27(臨床生理学)

心臓超音波検査において流速の評価が肺動脈圧の推定に用いられるのはどれか。

正答: ①三尖弁逆流・⑤肺動脈弁逆流

ポイント
肺動脈圧の推定には三尖弁逆流(TR)と肺動脈弁逆流(PR)のドプラ計測が用いられる。三尖弁逆流の最高流速から簡易ベルヌーイ式で右室-右房間の圧較差を求め、これに推定右房圧を加えて収縮期肺動脈圧を推定する。肺動脈弁逆流の拡張早期・拡張末期流速からは平均および拡張期の肺動脈圧が推定できる。いずれも右心系の逆流血流速度を簡易ベルヌーイ式によって圧較差に変換する原理に基づくため、連続波ドプラで最高流速を正確に捉えることが推定の前提となる。●肺動脈圧推定に用いる逆流=三尖弁逆流(収縮期圧)・肺動脈弁逆流(平均圧・拡張期圧)●左心系の評価に用いる血流=僧帽弁流入波形(左室拡張機能)・大動脈弁狭窄の最高流速(圧較差・弁口面積)●簡易ベルヌーイ式=圧較差=4×(最高流速)^2で表され、右房圧を加えて肺動脈圧を推定する。

選択肢ごとの解説

第60回 午後28(臨床生理学)

肋間走査による右上腹部の超音波像を別に示す。この患者において血中で増加している可能性が高いのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB028.09b76afe05.jpg
第60回 午後28 の図

正答: ③γ-グロブリン

ポイント
右上腹部の肋間走査で、肝辺縁の鈍化・表面の凹凸・内部エコーの粗雑化や輝度上昇など慢性肝障害(肝硬変)を示す所見がある場合、血中ではγ-グロブリンが増加している可能性が高い。肝硬変では門脈圧亢進に伴う門脈-体循環シャントの形成により、腸管由来抗原が肝のKupffer細胞による処理を経ずに全身循環へ流入し、B細胞が多クローン性に刺激されて免疫グロブリンが産生され、γ-グロブリンが上昇する。●肝硬変で増加するもの=γ-グロブリン(多クローン性)・間接および直接ビリルビン・アンモニア●肝硬変で低下するもの=アルブミン・コリンエステラーゼ・総コレステロール・血小板数(脾機能亢進)・凝固因子●判定の目安=アルブミン低下とγ-グロブリン増加が同時に起こることでA/G比が低下し、蛋白分画ではβ-γブリッジがみられる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後29(臨床化学)

SI単位でないのはどれか。

正答: ③パーセント[%]

ポイント
国際単位系(SI)は7つの基本単位、すなわちメートル(m)・キログラム(kg)・秒(s)・アンペア(A)・ケルビン(K)・モル(mol)・カンデラ(cd)と、それらから導かれる組立単位から構成される。これらの基本単位を組み合わせて力や圧力などの組立単位が定義される。パーセント(%)は100分の1を表す無次元の割合にすぎず、物理量の大きさの基準となる単位ではないため、SI単位には含まれない。●SI基本単位=長さ(m)・質量(kg)・時間(s)・電流(A)・温度(K)・物質量(mol)・光度(cd)●SI組立単位=力(N)・圧力(Pa)・エネルギー(J)・周波数(Hz)などの導出単位●SIでない表現=%・ppm・pH・吸光度・比重など、比や無次元量を示す慣用的な表現が含まれ、これらは大きさの基準となる単位をもたない点で基本単位と区別される。

選択肢ごとの解説

第60回 午後30(臨床化学)

NADH溶液の光路長1 cm、測定波長340 nmにおける吸光度は0.158であった。このNADH溶液の濃度に最も近いのはどれか。ただし、340 nmにおけるNADHのモル吸光係数は6.3×10³ l・mol⁻¹・cm⁻¹とする。

正答: ②25μmol/l

ポイント
Lambert-Beerの法則より吸光度A=ε×c×l(ε:モル吸光係数、c:濃度、l:光路長)で表され、これを濃度について解くとc=A/(ε×l)となる。本問ではA=0.158、ε=6.3×10³ l・mol⁻¹・cm⁻¹、l=1 cmなので、c=0.158/(6.3×10³×1)=2.5×10⁻⁵ mol/l=25μmol/lとなり、最も近いのは25μmol/lである。●Lambert-Beerの法則=A=εcl(吸光度は濃度と光路長に比例する)●NAD(P)Hの340 nm測定=補酵素の酸化還元に伴う吸光度変化を追う多くの酵素活性測定の基礎となる●単位換算=1 mol/l=10³ mmol/l=10⁶μmol/lの関係を用い、計算結果2.5×10⁻⁵ mol/lは25μmol/lに相当する。

選択肢ごとの解説

第60回 午後31(臨床化学)

免疫学的分析法で正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ③蛍光免疫測定法には蛍光偏光を原理とするものを含む。・④競合法を原理とする酵素免疫測定法では検量線がシグモイド曲線となる。

ポイント
免疫学的分析法は抗原抗体反応を利用して微量物質を測定する。蛍光免疫測定法には蛍光標識の強度を測るものに加え、抗原と結合した蛍光物質の分子回転運動の差を利用する蛍光偏光免疫測定法(FPIA)が含まれる。競合法を原理とする酵素免疫測定法では標識抗原と非標識抗原が限られた抗体を奪い合うため、検量線は濃度上昇とともにシグナルが低下するシグモイド曲線となる。●免疫測定の標識=酵素(EIA)・蛍光(FIA・FPIA)・化学発光(CLIA)・放射性同位元素(RIA)●反応様式=非競合(サンドイッチ)法は検量線が右上がり、競合法は右下がりのシグモイドとなる●測定原理=比濁法(タービジメトリー)は免疫複合体による透過光の減衰(濁度)を、比ろう法(ネフェロメトリー)は免疫複合体による散乱光そのものを測定する点で異なる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後32(臨床化学)

K⁺濃度がNa⁺濃度より高いのはどれか。

正答: ③細胞内液

ポイント
体液は分布する区画によりイオン組成が大きく異なる。細胞外液(血漿・間質液・脳脊髄液・リンパ液)では陽イオンの主体がNa⁺であり、K⁺は低濃度である。これに対し細胞内液ではK⁺が主要陽イオンであり、Na⁺よりK⁺濃度が高い。この細胞内外のイオンの濃度勾配はNa⁺-K⁺ATPアーゼ(ナトリウムポンプ)がATPを消費して能動的に維持しており、神経や筋の静止膜電位および興奮性の基盤となっている。●細胞外液で多い陽イオン=Na⁺(主要)、陰イオンはCl⁻・HCO₃⁻●細胞内液で多い陽イオン=K⁺・Mg²⁺、陰イオンは蛋白・リン酸●勾配の維持=Na⁺-K⁺ATPアーゼがATPを消費してNa⁺を細胞外へ3個、K⁺を細胞内へ2個能動輸送し、内外の濃度差を保っている。

選択肢ごとの解説

第60回 午後33(臨床化学)

血中カルシウムで正しいのはどれか。

正答: ①約50%はイオン型で存在する。

ポイント
血中カルシウムは約50%が生理活性をもつイオン型(遊離型)で存在し、残りは約40%がアルブミンなどとの蛋白結合型、約10%がリン酸・クエン酸との複合体として存在する。総カルシウムの基準範囲は8.5~10.5 mg/dl程度である。イオン型は血液pHの影響を受け、アシドーシスでは蛋白結合が減ってイオン型が増加し、アルカローシスでは蛋白結合が増えてイオン型が減少する。●血中カルシウムの存在形態=イオン型約50%・蛋白結合型約40%・複合体型約10%●カルシウム上昇の機序=副甲状腺ホルモン(PTH)・活性型ビタミンDによる骨吸収・腸管吸収・腎再吸収の促進●補正の必要=低アルブミン血症では蛋白結合分が減って総カルシウムが偽低値となるため、補正カルシウム=実測値+0.8×(4−アルブミン値)などの補正式で評価する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:血中カルシウム・マグネシウムの存在様式と測定への影響

項目血中の存在様式基準範囲pHの影響抗凝固剤(EDTA)の影響
カルシウムイオン型 約50%・蛋白結合型(主にアルブミン)約40%・複合体型約10%約8.5〜10.2mg/dLアシドーシスでイオン型増加、アルカローシス(アルカレミア)でイオン型低下EDTAがキレートし低値となる
マグネシウムイオン型 約55%・蛋白結合型(主にアルブミン)約30%・複合体型約15%-アルカローシスでイオン型低下EDTAがキレートし低値となる
検体が空気に触れてCO₂が失われるとpHが上昇し、蛋白結合が増えてイオン化Caは低下する。一方、密閉した全血を放置すると解糖による乳酸産生でpHが低下し、イオン化Caが上昇しうる。保存による変化は空気との接触などの条件に左右される。細胞外液中のマグネシウムは体内総量の約1%のみで、大部分は細胞内に存在する。

第60回 午後34(臨床化学)

HDLの主要アポ蛋白はどれか。

正答: ①アポA1

ポイント
アポリポ蛋白はリポ蛋白の構造維持・酵素活性化・受容体認識を担う蛋白である。HDLの主要アポ蛋白はアポA1で、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)を活性化してコレステロールのエステル化を促進し、末梢からの逆転送に関与する。各リポ蛋白には特徴的なアポ蛋白が存在し、その種類によって酵素活性化や受容体認識などの機能と代謝経路が決まる。●HDLの主要アポ蛋白=アポA1(LCAT活性化)・アポA2●LDL/VLDLの主要アポ蛋白=アポB100(LDL受容体に認識される)●カイロミクロンの主要アポ蛋白=アポB48●補助的アポ蛋白=アポC2(リポ蛋白リパーゼを活性化)・アポC3(リポ蛋白リパーゼを阻害)・アポE(レムナント受容体やLDL受容体に認識され、レムナントの取り込みに関与する)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主なリポ蛋白の分類(比重・脂質構成・アポ蛋白・蛋白含有量)

リポ蛋白比重の順序主なコア脂質主なアポ蛋白蛋白含有量(重量%)
カイロミクロン最小(最も軽い)外因性トリグリセライドB48・A1約2%(最小)
VLDLカイロミクロンの次に小さい内因性トリグリセライドB100・C・E約8%
IDLVLDLとLDLの中間トリグリセライド+コレステロールB100・C・E約12%
LDLIDLより大きい(比重1.019〜1.063)エステル型コレステロールB100約32%
HDL最大(最も重い)コレステロール・リン脂質A1・A2・C・E約50%(最大)
電気泳動での移動度は陽極側からHDL(α)>VLDL(preβ)>LDL(β)>原点(カイロミクロン)の順。アポA1はLCATを活性化、アポC2はLPLを活性化、アポC3はLPLを抑制、アポEはLDL受容体・レムナント受容体に認識される。LDL-コレステロールは日内変動が少なく、血清混濁はLDL自体ではなくトリグリセライド(カイロミクロン・VLDL)による。

第60回 午後35(臨床化学)

高コレステロール血症をきたす疾患はどれか。2つ選べ。

正答: ②Cushing症候群・⑤ネフローゼ症候群

ポイント
高コレステロール血症はコレステロールの合成・吸収の増加や、異化・排泄の低下によって生じる。Cushing症候群では糖質コルチコイド過剰により脂質代謝が乱れ、コレステロールや中性脂肪が上昇する。ネフローゼ症候群では尿中への蛋白喪失に伴う低アルブミン血症を代償しようとする肝の蛋白・脂質合成の亢進とLDL異化の低下により、血中コレステロールが著明に上昇する。●高コレステロール血症をきたす疾患=Cushing症候群・ネフローゼ症候群・甲状腺機能低下症・閉塞性黄疸・糖尿病●低コレステロールをきたす病態=肝硬変・甲状腺機能亢進症・低栄養・LCAT欠損症●LCAT欠損症=コレステロールのエステル化障害により遊離コレステロールは増えるが、HDLの成熟が障害され血漿総コレステロールはむしろ低下傾向となるため高コレステロール血症はきたさない。

選択肢ごとの解説

第60回 午後36(臨床化学)

短期の栄養指標として用いられる血漿蛋白はどれか。

正答: ④トランスサイレチン

ポイント
栄養状態を反映する血漿蛋白は半減期の長短により短期・長期の指標に分けられる。トランスサイレチン(プレアルブミン)は半減期が約2日と短く、短期の栄養状態を鋭敏に反映するrapid turnover protein(RTP)である。アルブミンは半減期が約20日と長いため変動が緩やかで、長期の栄養状態を反映する指標として用いられる。●短期栄養指標(RTP)=トランスサイレチン(半減期約2日)・レチノール結合蛋白(約半日)・トランスフェリン(約7~10日)●長期栄養指標=アルブミン(半減期約20日)●急性相反応蛋白=ハプトグロビン・セルロプラスミン・α₁-アンチトリプシン・CRP(炎症で上昇するため栄養指標には不向きであり、栄養評価とは区別して解釈する必要がある)。

選択肢ごとの解説

第60回 午後37(臨床化学)

直接ビリルビンが上昇するのはどれか。

正答: ②閉塞性黄疸

ポイント
ビリルビンは脾でヘモグロビン由来に生じた間接(非抱合)ビリルビンが肝でグルクロン酸抱合を受けて直接(抱合)ビリルビンとなり、胆汁中へ排泄される。直接ビリルビンが上昇するのは胆道の閉塞や肝内胆汁うっ滞などによる胆汁排泄の障害であり、胆石や腫瘍による閉塞性黄疸が代表的である。●直接ビリルビン優位=閉塞性黄疸(胆石・腫瘍)・体質性のDubin-Johnson症候群やRotor症候群・肝細胞性黄疸の一部●間接ビリルビン優位=溶血性貧血(産生過剰)・新生児黄疸・Gilbert症候群・Crigler-Najjar症候群(抱合障害)●判定=総ビリルビンに占める直接型の割合から黄疸の病態(溶血性・肝細胞性・閉塞性)を推定し、尿中ビリルビンやウロビリノゲンの所見も併せて鑑別する。

選択肢ごとの解説

第60回 午後38(臨床化学)

LDについて正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ②心筋にはLD₁が最も多く含まれる。・⑤2種類のサブユニットからなる4量体である。

ポイント
乳酸脱水素酵素(LD/LDH)はH型とM型の2種類のサブユニットが4個集まった4量体で、LD₁(H4)からLD₅(M4)まで5種類のアイソザイムが存在する。組織分布が異なり、心筋・赤血球・腎にはLD₁が多く、肝・骨格筋にはLD₅が多く含まれるため、アイソザイム分画から臓器障害を推定できる。●LDアイソザイム=LD₁(H4)からLD₅(M4)までの5種類、H・Mの2種サブユニットからなる4量体●臓器分布=LD₁優位(心筋・赤血球・腎)とLD₅優位(肝・骨格筋)に分かれる●半減期=LD₁が最も長くLD₅が最も短いため、急性心筋梗塞後にはLD₁がLD₂を上回るflipped patternが発症後やや遅れて出現し、診断の補助となる。●測定=LDは総活性とともにアイソザイム分画を電気泳動で評価する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:LDアイソザイムの構造・組織分布・安定性

アイソザイムサブユニット構成主な分布臓器半減期の傾向4℃保存での安定性
LD1 (H4)H型4個心筋・赤血球・腎最も長い(約79時間)安定
LD2 (H3M1)H型3・M型1心筋・赤血球・腎長い安定
LD3H型2・M型2肺・脾・リンパ系中間比較的安定
LD4 (H1M3)H型1・M型3肝・骨格筋短い不安定
LD5 (M4)M型4個肝・骨格筋最も短い不安定(失活しやすい)
LDはH型・M型の2種類のサブユニットからなる四量体(分子量約134kDa)。健常人血清ではLD2の割合が最も高い。溶血で上昇するのはLD1・LD2。

第60回 午後39(臨床化学)

日本臨床化学会〈JSCC〉の勧告法による酵素活性測定において可視部測定項目はどれか。2つ選べ。

正答: ①ALP・④γ-GT

ポイント
日本臨床化学会(JSCC)勧告法による酵素活性測定では、多くがNADHやNADPHの340 nmにおける吸光度変化を紫外部で測定する。これに対しALPとγ-GTは、合成基質から酵素反応により遊離する発色物質(ALPではp-ニトロフェノール、γ-GTでは5-アミノ-2-ニトロ安息香酸)の吸光を405 nm付近の可視部で測定する点が異なる。●可視部測定(発色基質)=ALP(p-ニトロフェノールの遊離)・γ-GT(5-アミノ-2-ニトロ安息香酸の遊離)・アミラーゼ(標準化対応法はp-ニトロフェノールなど発色物質の遊離を405 nm付近で測定)●紫外部340 nm測定(NAD(P)H共役)=AST・ALT・CK・LD●測定原理=可視部測定は基質から遊離する生成色素の吸光を、紫外部測定はNAD(P)HとNAD(P)⁺の間の補酵素の酸化還元に伴う340 nmの吸光度変化を追跡する点が本質的に異なる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後40(臨床化学)

イタイイタイ病の原因となる金属はどれか。

正答: ⑤カドミウム

ポイント
イタイイタイ病はカドミウムによる慢性中毒で、富山県神通川流域の鉱山排水によって発生した公害病である。体内に蓄積したカドミウムが腎近位尿細管を障害してカルシウム・リンの再吸収が低下し、ビタミンD代謝障害も加わって骨軟化症や骨粗鬆症を生じ、多発骨折と激しい疼痛をきたす。●四大公害病と原因物質=イタイイタイ病(カドミウム)・水俣病および新潟水俣病(有機水銀)・四日市ぜんそく(亜硫酸ガスなど大気汚染)●カドミウム中毒の標的=腎近位尿細管(尿細管性アシドーシス・低分子蛋白尿)と骨(骨軟化症)●検査所見=近位尿細管障害により尿中β₂-ミクログロブリンなど低分子蛋白の増加や尿糖・アミノ酸尿(Fanconi症候群様)がみられるのが特徴である。●発症背景=長期にわたる経口摂取による慢性蓄積が原因となる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後41(臨床化学)

血漿レニン活性が低値を示すのはどれか。

正答: ②原発性アルドステロン症

ポイント
レニンは腎の傍糸球体装置から分泌され、循環血漿量の低下・腎血流の低下・低Na・交感神経刺激によって分泌が増加する。原発性アルドステロン症では副腎腺腫などによるアルドステロンの自律的過剰分泌によりNa貯留と循環血漿量の増加が起こり、ネガティブフィードバックによって傍糸球体装置からのレニン分泌が抑制され、血漿レニン活性は低値となる。●レニン低値=原発性アルドステロン症(アルドステロン高値・低レニン)・Liddle症候群・甘草摂取●レニン高値=腎血管性高血圧・Addison病・脱水・利尿薬・心不全・Bartter症候群●鑑別=血漿アルドステロン濃度をレニン活性で割ったアルドステロン/レニン比(ARR)が高値であれば原発性アルドステロン症を疑い、スクリーニングに用いる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後42(臨床化学)

Basedow病による甲状腺機能亢進症で上昇するのはどれか。

正答: ②ALP

ポイント
Basedow病は甲状腺刺激ホルモン受容体抗体(TRAb)による甲状腺機能亢進症で、甲状腺ホルモンが過剰となり全身の代謝が亢進する。骨代謝回転(骨吸収と骨形成)も亢進するため骨型ALPが増加し、血清ALPが上昇する。甲状腺ホルモンが高値のため、下垂体からのTSH分泌はネガティブフィードバックにより抑制されて低下する。●甲状腺機能亢進症で上昇=ALP(骨代謝亢進)・遊離T4および遊離T3・基礎代謝・血糖●甲状腺機能亢進症で低下=TSH・総コレステロールおよびLDLコレステロール・血清クレアチニン(筋量低下・代謝亢進による)●原因=Basedow病はTRAbがTSH受容体を持続的に刺激することで甲状腺ホルモンが過剰に産生される自己免疫性の機能亢進症であり、びまん性甲状腺腫や眼球突出を伴う。

選択肢ごとの解説

第60回 午後43(臨床化学)

ビタミンについて正しいのはどれか。

正答: ③ニコチン酸はNADの構成成分である。

ポイント
ニコチン酸(ナイアシン)はニコチンアミドとともに補酵素NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)およびNADPの構成成分であり、生体内の酸化還元反応に広く関与する。欠乏するとペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症)を生じる。●脂溶性ビタミン=A・D・E・K(過剰で蓄積に注意)、ビタミンDは腸管Ca吸収を高め骨形成を促す●水溶性ビタミン=B群・C●補酵素となるビタミン=ニコチン酸(NAD/NADP)・リボフラビン(FAD/FMN)・チアミン(TPP)●ビタミンB₁₂=分子中にコバルト(Co)を含むコバラミンであり、Mnを含むものではなく、欠乏すると巨赤芽球性貧血をきたす●β-カロチン=小腸でビタミンA(レチノール)に変換される前駆物質である。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:ビタミンの分類・化学名・主な働き

分類ビタミン化学名主な働き
脂溶性ビタミンAレチノール視覚(ロドプシン)・上皮の維持。RBP〈レチノール結合蛋白〉で運搬
脂溶性ビタミンDカルシフェロール腸管Ca・P吸収、骨形成。肝で25位、腎で1α位が水酸化され活性化
脂溶性ビタミンEトコフェロール抗酸化作用(生体膜の脂質を保護)
脂溶性ビタミンKフィロキノン/メナキノン血液凝固因子(第II・VII・IX・X因子)の生成
水溶性ビタミンB1チアミン糖代謝の補酵素(TPP)
水溶性ビタミンB2リボフラビン酸化還元の補酵素(FAD・FMN)
水溶性ナイアシンニコチン酸酸化還元の補酵素(NAD・NADP)
水溶性ビタミンB6ピリドキシンアミノ基転移酵素の補酵素(PLP)
水溶性ビタミンB12コバラミンDNA合成・造血(胃壁細胞の内因子と結合し回腸で吸収)
水溶性葉酸(フォラシン)DNA合成・造血
水溶性ビタミンCアスコルビン酸コラーゲン合成・抗酸化
脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は肝・脂肪組織に蓄積しやすく過剰症を起こしうる(例:ビタミンA過剰で脳圧亢進・催奇形性、ビタミンD過剰で高カルシウム血症)。水溶性ビタミン(B群・C)は尿中に排泄されやすく過剰症は起こしにくい。β-カロチンはビタミンA(レチノール)の前駆体〈プロビタミンA〉であり、ビタミンEの前駆体ではない。

📋 まとめの表を見る:水溶性ビタミンの補酵素型と関連酵素

ビタミン主な補酵素関連する酵素の例
ビタミンB1(チアミン)TPP(チアミンピロリン酸)ピルビン酸脱炭酸酵素
ビタミンB2(リボフラビン)FAD・FMNコハク酸脱水素酵素、NADHデヒドロゲナーゼ
ナイアシン(ニコチン酸)NAD・NADP乳酸脱水素酵素〈LD〉、リンゴ酸脱水素酵素
パントテン酸CoAアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ
ビタミンB6(ピリドキシン)PLP(ピリドキサールリン酸)AST・ALTなどアミノトランスフェラーゼ
葉酸テトラヒドロ葉酸C1単位(メチル基等)の転移酵素
ビタミンB12(コバラミン)メチルコバラミン/アデノシルコバラミンメチル基転移酵素、メチルマロニルCoAムターゼ
ビオチンビオチンアセチルCoAカルボキシラーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ
ALP・アミラーゼ・γ-GTはビタミン由来の補酵素を必要としない(ALP・アミラーゼは金属イオンが補助因子)。

第60回 午後44(臨床化学)

放射性同位元素でないのはどれか。

正答: ①¹³C

ポイント
放射性同位元素は不安定な原子核をもち、放射線を放出して崩壊する核種である。¹³Cは炭素の安定同位体であり放射線を出さない非放射性核種で、尿素呼気試験などの検査に用いられる。●安定同位体(非放射性)=¹³C(炭素)・²H(重水素)・¹⁵N(放射線を出さない)●放射性同位元素=³H(トリチウム、β線)・¹²⁵I(γ線、RIA等)・³²P(β線、核酸標識)・²⁰¹Tl(γ線、心筋シンチ)●利用の違い=放射性核種は放出する放射線を利用して標識やシンチグラフィなどの画像診断に、安定同位体は放射線を出さないため尿素呼気試験などのトレーサーや質量分析の対象として用いられる●判定=核種が放射線を放出するか否かが区別の本質である。

選択肢ごとの解説

第60回 午後45(病理組織細胞学)

腺房細胞を有するのはどれか。2つ選べ。

正答: ④膵臓・⑤唾液腺

ポイント
腺房(腺胞)は分泌細胞が球状に集まって中心に小管腔をもつ外分泌腺の構造単位であり、消化酵素や唾液などの分泌物を産生する。膵臓の外分泌部は消化酵素を分泌する腺房細胞からなり、唾液腺も漿液性・粘液性の腺房細胞をもつ。●腺房細胞を有する外分泌腺=膵臓(膵液)・唾液腺(唾液)・涙腺・乳腺●腺房をもたない臓器=肝臓(肝細胞索と類洞構造)・甲状腺(濾胞構造)・胸腺(リンパ上皮性器官)●外分泌の経路=腺房で産生された分泌物が介在部や導管を経て管腔へ排出されるという構造をとる●内分泌腺との違い=甲状腺の濾胞や膵Langerhans島は導管をもたず血中へ分泌する点が腺房をもつ外分泌腺と異なる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後46(病理組織細胞学)

細胞の電子顕微鏡写真を別に示す。矢印で示すのはどれか。ただし、枠内は矢印の構造物を拡大している。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB046.80e8a7d0b9.jpg
第60回 午後46 の図

正答: ⑤ミトコンドリア

ポイント
電子顕微鏡写真で枠内に拡大される構造が二重膜と内部のクリステ(内膜のひだ)を示す場合、それはミトコンドリアである。ミトコンドリアは外膜・内膜の二重膜構造をもち、内膜が陥入してクリステを形成し、そこで電子伝達系によるATP産生(酸化的リン酸化)を行う。●ミトコンドリアの特徴=二重膜・クリステ・独自のDNA・ATP産生の場●他の細胞小器官=粗面小胞体(リボソーム付着の膜系で蛋白合成)・ゴルジ装置(扁平嚢の積層で糖鎖修飾と選別)・ライソゾーム(加水分解酵素を含む単膜小胞)●非膜性構造=グリコーゲンは膜をもたず電子密度の高い顆粒(βグリコーゲン粒子)として観察される●判定の要点=二重膜と内部のクリステの存在がミトコンドリアを他の小器官から見分ける決め手となる。

選択肢ごとの解説

第60回 午後47(病理組織細胞学)

胃組織のH-E染色標本を別に示す。矢印で示す部分にみられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB047.4ead9d8932.jpg
第60回 午後47 の図

正答: ③化生

ポイント
胃のH-E染色で、本来の胃固有上皮(胃底腺・幽門腺)が杯細胞や吸収上皮を伴う腸型上皮に置き換わっている所見は腸上皮化生である。化生とは分化した細胞が別系統の分化した細胞へ可逆的に置換される適応反応であり、慢性炎症(慢性胃炎・Helicobacter pylori感染)が背景となる。●化生の例=胃の腸上皮化生・気道の扁平上皮化生(喫煙)・食道のBarrett化生(円柱上皮化)●区別すべき病変=過形成(細胞数の増加)・肥大(細胞容積の増加)・変性(細胞内物質の異常蓄積)・アポトーシス(プログラムされた細胞死)●臨床的意義=腸上皮化生は慢性萎縮性胃炎に伴って生じ、胃癌発生のリスクとなる前癌状態を背景とすることがあるため、組織学的な評価が重要である。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:化生の分類と好発部位

化生の種類変化の内容好発部位
扁平上皮化生立方上皮・円柱上皮・尿路上皮が重層扁平上皮に変化気管支・子宮頸部・尿路上皮
腸上皮化生食道・胃の被覆上皮が小腸型上皮(杯細胞・Paneth細胞等)に変化食道・胃
アポクリン化生乳腺細胞がアポクリン腺細胞様に変化乳腺症

第60回 午後48(病理組織細胞学)

自己免疫疾患でないのはどれか。

正答: ①糖原病

ポイント
自己免疫疾患は自己抗原に対する免疫応答(自己抗体や自己反応性T細胞)によって自己の組織が傷害される疾患群である。糖原病は酵素欠損によりグリコーゲンの代謝が障害される先天性代謝異常症であり、免疫機序によらないため自己免疫疾患ではない。●臓器特異的自己免疫疾患=橋本病・Basedow病・重症筋無力症・1型糖尿病・悪性貧血●全身性自己免疫疾患=関節リウマチ・皮膚筋炎・全身性エリテマトーデス・強皮症・Sjögren症候群●糖原病=グルコース-6-ホスファターゼなど糖代謝酵素の欠損による先天代謝異常(von Gierke病など)であり、肝や筋にグリコーゲンが蓄積するもので免疫機序によらない疾患である。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:臓器特異的自己抗体と自己免疫疾患

自己抗体対応する疾患
抗内因子抗体・抗胃壁細胞抗体悪性貧血
抗TSH受容体抗体Basedow病
抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ(抗マイクロソーム)抗体橋本病(慢性甲状腺炎)
抗アセチルコリン受容体抗体重症筋無力症
抗ミトコンドリア抗体原発性胆汁性胆管炎〈PBC〉
抗赤血球抗体自己免疫性溶血性貧血
抗血小板抗体特発性血小板減少性紫斑病〈ITP〉
抗糸球体基底膜抗体Goodpasture症候群
抗平滑筋抗体・抗核抗体自己免疫性肝炎
抗副腎皮質抗体特発性Addison病
リウマトイド因子・抗CCP抗体関節リウマチ〈RA〉
抗GAD抗体1型糖尿病
抗dsDNA抗体・抗Sm抗体全身性エリテマトーデス〈SLE〉
抗Scl-70抗体・抗セントロメア抗体全身性強皮症(全身性硬化症)
抗Jo-1抗体多発性筋炎・皮膚筋炎
抗SS-A抗体・抗SS-B抗体Sjögren症候群
抗ENA抗体・抗U1-RNP抗体混合性結合組織病〈MCTD〉
サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉は甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己抗体の標的とはならない。

第60回 午後49(病理組織細胞学)

悪性腫瘍はどれか。

正答: ②膠芽腫

ポイント
悪性腫瘍は浸潤・転移を示して増殖が制御されない腫瘍であり、上皮性は癌腫、非上皮性は肉腫、神経系では膠芽腫のように悪性のものがある。膠芽腫(膠芽細胞腫)は神経膠細胞由来の最も悪性度の高い脳腫瘍(WHOグレード4)であり、予後不良である。●良性腫瘍(語尾が-腫で限局・非浸潤)=血管腫・線維腫・神経鞘腫・平滑筋腫●悪性腫瘍=癌腫(上皮性)・肉腫(非上皮性)・膠芽腫(神経膠系)・白血病●命名の原則=由来組織に良性は『腫』、悪性の非上皮性は『肉腫』を付すのが基本だが、膠芽腫・黒色腫・白血病など慣用名で悪性を示すものもあるため名称だけで良悪を判断しない●悪性の特徴=浸潤・転移・異型・無秩序な増殖を示す。

選択肢ごとの解説

第60回 午後50(病理組織細胞学)

H-E染色標本を別に示す。診断として正しいのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB050.321642aac4.jpg
第60回 午後50 の図

正答: ④肺結核

ポイント
H-E染色標本で乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫とLanghans型巨細胞が観察される場合、診断は肺結核である。結核は抗酸菌(Mycobacterium tuberculosis)感染による慢性肉芽腫性炎であり、中心の乾酪壊死を取り囲む類上皮細胞と多核巨細胞からなる結節を形成する。●結核の組織像=乾酪壊死・類上皮細胞肉芽腫・Langhans型巨細胞であり、Ziehl-Neelsen染色で抗酸菌が陽性となる●区別すべき肺病変=肺炎(肺胞腔内の滲出性炎)・肺癌(異型上皮の浸潤性増殖)・肺気腫(肺胞壁破壊と含気増加)・肺うっ血(肺胞毛細血管の血液貯留と心不全細胞)●確認=抗酸菌染色や培養で診断する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:肉芽腫性疾患(特異性炎)のまとめ

疾患原因肉芽腫の特徴
結核症結核菌乾酪壊死を伴う類上皮肉芽腫(結核結節)
梅毒Treponema pallidum第3期に壊死性肉芽腫(ゴム腫)
Hansen病(らい病)らい菌らい腫(肉芽腫、乾酪壊死は伴わない)
サルコイドーシス原因不明全身性(多臓器性)の類上皮肉芽腫
Crohn病原因不明(炎症性腸疾患)消化管に非乾酪性肉芽腫、縦走潰瘍・敷石像を伴う
肉芽腫を形成しない炎症の例=慢性膵炎・化膿性虫垂炎・ウイルス性肝炎・線維素性胸膜炎・潰瘍性大腸炎・偽膜性腸炎・アメーバ大腸炎。放線菌症では菌塊(硫黄顆粒)を伴う化膿性肉芽腫性炎を生じる。類上皮細胞は病原体等を消化できない活性化マクロファージが紡錘形に変化したもの。