第60回(2014) 臨床検査技師国家試験 午後1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第60回 午後1(臨床検査総論)
迅速性が求められる検査はどれか。
- ①ALP
- ②尿酸
- ③アルブミン
- ④トロポニンT
- ⑤総コレステロール
正答: ④トロポニンT
ポイント
トロポニンTは心筋細胞の収縮蛋白を構成する成分で、心筋が傷害を受けると細胞外へ逸脱するため心筋特異性が高い。急性冠症候群(急性心筋梗塞)では発症後数時間で上昇し始め、心筋壊死の有無の判定と再灌流療法など治療方針の決定に直結するため、その測定にはきわめて強い迅速性が求められる。検査全般のなかでも、生命予後に関わる急性病態の判定に用いる項目ほど緊急報告の対象となり、結果の遅延が患者の転帰を左右する。●迅速性を要する項目=心筋トロポニン、ミオグロビン、CK-MB、Dダイマー、動脈血ガス分析、血糖、血中アンモニア。●迅速性が相対的に低い項目=総コレステロール、尿酸、アルブミン、ALPなど、慢性病態の評価に用い経時変化が緩徐な項目。●病態と緊急度=急性虚血や出血凝固系は即時、栄養や脂質代謝は定常測定。トロポニンTは正しい。
選択肢ごとの解説
- ① ALPは胆道系や骨に由来する酵素で、胆汁うっ滞や骨代謝の評価に用いる慢性的な指標であり、即時に報告すべき迅速検査の項目ではない。
- ② 尿酸は痛風や腎機能の評価に用いる項目であるが、血中濃度の変動が緩徐であり、緊急に結果を報告する必要のある検査ではない。
- ③ アルブミンは栄養状態や肝臓の合成能を反映する指標で、半減期が約3週間と長いため、結果に迅速性は要求されない項目である。
- ④ 正しい。トロポニンTは心筋特異性が高く、急性心筋梗塞の早期診断と治療方針の決定に直結するため、迅速な測定と報告が強く求められる。
- ⑤ 総コレステロールは脂質代謝や動脈硬化リスクを評価する慢性的な指標であり、経時変化が緩やかで緊急に報告する必要のない項目である。
第60回 午後2(臨床検査総論)
仰臥位に比べて座位で上昇する血清成分はどれか。
- ①尿酸
- ②尿素
- ③グルコース
- ④カルシウム
- ⑤クレアチニン
正答: ④カルシウム
ポイント
座位や立位では重力により血管内の水分が間質へ移動し、循環血漿量が減少して血液が相対的に濃縮される。このため、蛋白そのものや蛋白に結合して存在する高分子成分(アルブミン、脂質、カルシウム、各種酵素など)は見かけ上の濃度が上昇する。カルシウムは血中の約半分がアルブミンと結合して存在するため、体位変換による血漿濃縮の影響を受けて座位で上昇する代表的な成分である。●座位(体位)で上昇する成分=総蛋白、アルブミン、カルシウム、脂質、各種酵素、蛋白結合性の薬物。●体位の影響を受けにくい成分=尿素、クレアチニン、グルコース、尿酸、Na・Kなど低分子で血管壁を自由に通過し拡散する成分。●採血時の注意=体位や駆血時間で値が変動するため条件を統一する。カルシウムは正しい。なお、検査値の基準範囲は通常、安静座位での採血を前提に設定されているため、測定条件をそろえることが重要である。
選択肢ごとの解説
- ① 尿酸は低分子で血管壁を自由に通過して拡散するため、体位変換による血漿の濃縮が起こっても見かけの濃度はほとんど変化しない成分である。
- ② 尿素も低分子で拡散性が高く、座位による血漿濃縮の影響を受けにくいため、体位を変えても血清濃度は有意には上昇しない成分である。
- ③ グルコースは低分子で血管壁を自由に通過して拡散するため、体位を座位に変えても見かけの血清濃度は有意には変動しない成分である。
- ④ 正しい。カルシウムは血中の約半分がアルブミンと結合して存在するため、座位での血漿濃縮の影響を受けて見かけ上の濃度が上昇する。
- ⑤ クレアチニンは低分子で血管外へ拡散しやすく、体位による血漿濃縮の影響を受けにくいため、座位で見かけの濃度は上昇しない成分である。
📋 まとめの表を見る:体位(臥位→座位・立位)で変化する主な血液検査項目
立位により血漿中の水分が組織間液へ移行(血液濃縮)するため、これらの項目は相対的に高値となる。
第60回 午後3(臨床検査総論)
x-R管理図法で管理するのはどれか。2つ選べ。
- ①標準液の劣化
- ②検体採血過誤
- ③測定値の正確さ
- ④パニック値の検出
- ⑤試薬のロット間差
正答: ①標準液の劣化・⑤試薬のロット間差
ポイント
x-R管理図は、同一の管理試料を反復測定して平均値xと範囲Rの変動を時系列で監視する精度管理法で、系統誤差(正確さの偏り)と偶然誤差(再現性のばらつき)の双方を検出する。標準液の劣化は測定値の系統的な偏りとしてxの変動に現れ、試薬のロット間差はロット切替時のレベル変化として管理図上に現れるため、いずれも検出の対象となる。●管理図で検出できる要因=標準液の劣化、試薬ロット間差、機器の経時的変動、測定系の偏りやばらつき。●管理図で検出できない要因=検体採血過誤や検体取り違えなど個々の検体に固有の過誤、パニック値の検出。●管理図の種類=xは平均(正確さ)、Rは範囲(精密さ)を監視する。標準液の劣化と試薬のロット間差は正しい。日常の内部精度管理ではこの管理図に管理限界線を設けて逸脱を監視し、異常があれば原因を追究して是正する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。標準液の劣化は測定値の系統的な偏りとして管理図のx(平均値)の変動に反映されるため、x-R管理図によって検出することができる。
- ② 検体採血過誤は個々の患者検体に固有の問題であり、共通の管理試料を反復測定するx-R管理図では検出することができない要因である。
- ③ 測定値の正確さそのものは標準物質や外部精度管理調査によって評価する概念であり、管理対象として列挙する選択肢としては不適切なものである。
- ④ パニック値の検出は患者検体の臨床的な緊急報告に関わる事項であって、管理試料の変動を監視するx-R管理図の目的とは異なるため誤りである。
- ⑤ 正しい。試薬のロット間差はロットを切り替えた際のレベル変化として管理図上に現れるため、x-R管理図によって検出することができる。
📋 まとめの表を見る:内部精度管理法の分類(管理試料を用いる方法・用いない方法)
累積和法は微小で持続的な偏りの検出に優れる。x̄-R管理図法は標準液の劣化・機器異常等の系統誤差/偶然誤差を検出するが、正確度(真度)そのものの評価には別途標準物質・標準法との比較が必要。
第60回 午後4(臨床検査総論)
糖尿病性腎症の早期発見に有用な尿検査項目はどれか。
- ①ケトン体
- ②ヘモグロビン
- ③ミオグロビン
- ④ウロビリノゲン
- ⑤微量アルブミン
正答: ⑤微量アルブミン
ポイント
糖尿病性腎症の最初期には、糸球体基底膜の透過性が亢進し、通常の試験紙法では検出できないごく微量のアルブミンが尿中へ漏出する。この微量アルブミン尿(早期腎症期)を検出することは、不可逆的な顕性蛋白尿へ進行する前に治療介入できる点で、早期発見にきわめて有用である。●糖尿病性腎症の進行と尿所見=正常→微量アルブミン尿(早期腎症期)→持続性蛋白尿(顕性腎症期)→腎機能低下(腎不全期)。●他の尿項目の臨床的意義=ヘモグロビン・ミオグロビンは血尿や横紋筋融解、ケトン体は糖尿病ケトアシドーシスや飢餓、ウロビリノゲンは肝・胆道疾患や溶血の指標。●測定法=免疫学的に微量域を定量する。微量アルブミンは正しい。なお、微量アルブミン尿は運動や発熱でも一過性に増加しうるため、複数回の測定で持続性を確認して判定する。早期からの血糖・血圧管理が腎症の進行抑制につながる。
選択肢ごとの解説
- ① ケトン体は糖尿病ケトアシドーシスや飢餓状態のときに尿中に増加する項目であるが、糖尿病性腎症の早期病変を捉える指標ではない。
- ② ヘモグロビンは尿路出血や血管内溶血による血尿を示す指標であり、糖尿病性腎症の早期発見を目的として用いる項目ではない。
- ③ ミオグロビンは横紋筋融解症のときに尿中へ出現する筋由来の色素であり、糖尿病性腎症の早期発見とは関係しない項目である。
- ④ ウロビリノゲンは肝機能障害や溶血のときに尿中で増加する指標であり、糖尿病性腎症の病態評価に用いる項目ではないため誤りである。
- ⑤ 正しい。微量アルブミン尿は糖尿病性腎症の早期腎症期を反映する所見であり、病変が不可逆化する前の早期発見と治療介入に有用である。
第60回 午後5(臨床検査総論)
尿沈渣にみられる結晶のうち病的成分はどれか。
- ①尿酸
- ②シスチン
- ③炭酸カルシウム
- ④リン酸カルシウム
- ⑤シュウ酸カルシウム
正答: ②シスチン
ポイント
尿沈渣中にみられる結晶は、生理的(無病的)に出現するものと病的意義をもつものに大別される。シスチン結晶は六角形板状を呈し、先天性のアミノ酸代謝異常であるシスチン尿症に特異的に出現するため、認められること自体が病的所見となる。一方、尿酸・シュウ酸カルシウム・リン酸カルシウム・炭酸カルシウムは健常者の尿でも食事内容や尿pHにより出現しうる。●病的とされる結晶=シスチン(シスチン尿症)、チロシン・ロイシン(重症肝障害)、ビリルビン、コレステロール、各種薬剤結晶。●生理的に出現しうる結晶=尿酸・シュウ酸カルシウム(酸性尿)、リン酸カルシウム・炭酸カルシウム(アルカリ性尿)。●鑑別=形態と尿pHを併せて判定する。シスチンは正しい。尿沈渣では結晶のほか、赤血球・白血球・各種円柱・上皮細胞なども観察し、病態の手がかりとして総合的に判定する。
選択肢ごとの解説
- ① 尿酸結晶は酸性尿のときに健常者にも出現する生理的な結晶であり、それ自体が病的成分であることを示すものではないため誤りである。
- ② 正しい。シスチン結晶は六角形板状を呈し、先天性アミノ酸代謝異常であるシスチン尿症に特異的に出現するため、病的意義をもつ成分である。
- ③ 炭酸カルシウムはアルカリ性尿のときに生理的に出現しうる結晶であり、健常者にもみられるため病的成分とはいえず誤りである。
- ④ リン酸カルシウムはアルカリ性尿のときに健常者にもみられる結晶であり、それ自体に病的意義は乏しいため病的成分とはいえず誤りである。
- ⑤ シュウ酸カルシウムは酸性尿のときに生理的に出現しうる結晶であり、健常者にもみられるため病的成分を示すものではなく誤りである。
第60回 午後6(臨床検査総論)
白色下痢便を呈する疾患はどれか。
- ①赤痢
- ②潰瘍性大腸炎
- ③サルモネラ腸炎
- ④ロタウイルス腸炎
- ⑤カンピロバクター腸炎
正答: ④ロタウイルス腸炎
ポイント
ロタウイルス腸炎は乳幼児の急性胃腸炎の代表的な原因で、白色〜淡黄白色の水様性下痢便(白色便)を呈するのが特徴である。大量の水様便により便中への胆汁色素の移行が相対的に乏しくなることなどから便が白色調を呈し、冬季に流行して脱水に注意を要する。●白色〜灰白色便を呈する病態=ロタウイルス腸炎、胆道閉鎖症や胆汁うっ滞などの胆汁排泄障害、バリウム造影検査後。●血便・粘血便を呈する病態=細菌性赤痢、潰瘍性大腸炎、サルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎、腸管出血性大腸菌感染症。これらは腸管粘膜の炎症や出血により血液・粘液が便に混じる。●脱水対策=経口・経静脈補液を行う。ロタウイルス腸炎は正しい。なお、便の性状(水様・粘血・白色・タール状)は原因病原体や病態を推定する重要な手がかりとなる。乳幼児では脱水が急速に進むため、補液と全身状態の観察が重要となる。
選択肢ごとの解説
- ① 赤痢は膿粘血便(粘血便)を呈する細菌性腸炎であり、便に血液や膿が混じるのが特徴で、白色下痢便を呈する疾患ではないため誤りである。
- ② 潰瘍性大腸炎は粘血便や血便を特徴とする炎症性腸疾患であり、腸粘膜の炎症と出血を伴うため、白色下痢便を呈するものではなく誤りである。
- ③ サルモネラ腸炎は発熱とともに水様〜粘血便を呈する細菌性腸炎であり、便に血液が混じることが多く、白色下痢便は呈さないため誤りである。
- ④ 正しい。ロタウイルス腸炎は乳幼児に白色〜淡黄白色の水様性下痢便を呈し、冬季に流行して脱水に注意を要する代表的な疾患である。
- ⑤ カンピロバクター腸炎は発熱・腹痛とともに血便を呈することが多い細菌性腸炎であり、便が白色を呈する疾患ではないため誤りである。
第60回 午後7(臨床検査総論)
自家感染するのはどれか。2つ選べ。
- ①糞線虫
- ②無鉤条虫
- ③有鉤条虫
- ④日本住血吸虫
- ⑤バンクロフト〈Bancroft〉糸状虫
正答: ①糞線虫・③有鉤条虫
ポイント
自家感染とは、宿主内で生じた虫卵や幼虫が同じ宿主への感染を成立させる現象である。体内で完結する場合と、排出された虫卵等が手指などを介して再び同じ宿主に入る場合がある。糞線虫はラブジチス型幼虫が腸管内で感染性のフィラリア型幼虫へ発育し、腸壁や肛門周囲皮膚から再侵入するため自家感染を起こし、免疫不全者では重篤な過剰感染症を生じる。有鉤条虫はヒトが排出した虫卵を経口摂取すると有鉤嚢虫症を起こすため自家感染が成立する。●自家感染を起こす寄生虫=糞線虫、有鉤条虫、小形条虫、蟯虫。なお小形条虫(Hymenolepis nana)と縮小条虫(Hymenolepis diminuta)は別種で、縮小条虫は昆虫を中間宿主とするため自家感染しない。●自家感染を起こさない=無鉤条虫(中間宿主の牛が必要)、日本住血吸虫・バンクロフト糸状虫(巻貝や蚊の媒介が必要)。●臨床的意義=免疫不全で重症化する。糞線虫と有鉤条虫は正しい。なお、糞線虫は免疫抑制状態で播種性の重症感染(過剰感染症候群)を起こすため、移植やステロイド使用前の確認が重要である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。糞線虫は腸管内でフィラリア型幼虫が腸壁や肛門周囲皮膚から再侵入して自家感染を起こし、免疫不全者では過剰感染症の原因となる。
- ② 無鉤条虫は中間宿主である牛の生肉を摂取することで感染するため、ヒトの体内で完結する自家感染は成立しないため誤りである。
- ③ 正しい。有鉤条虫は宿主が排出した虫卵を経口摂取することで有鉤嚢虫症を起こすため、ヒトにおける自家感染が成立する寄生虫である。
- ④ 日本住血吸虫はミヤイリガイを中間宿主とし、水中のセルカリアが経皮感染するため、宿主の体内で完結する自家感染はしないため誤りである。
- ⑤ バンクロフト糸状虫は蚊が媒介して感染する寄生虫であり、宿主の体内で完結する自家感染は成立しないため、この選択肢は誤りである。
第60回 午後8(臨床検査総論)
成虫が門脈に寄生するのはどれか。
- ①肝蛭
- ②肝吸虫
- ③広東住血線虫
- ④日本住血吸虫
- ⑤ビルハルツ〈Bilharz〉住血吸虫
正答: ④日本住血吸虫
ポイント
日本住血吸虫は、成虫が雌雄合体した状態で門脈〜腸間膜静脈系に寄生し、産卵された虫卵が腸壁や肝臓に沈着して肉芽腫の形成や肝線維化(住血吸虫症)を引き起こす。中間宿主はミヤイリガイで、水中のセルカリアが経皮感染する。寄生虫は寄生部位によって生じる症状が異なる。●門脈・腸間膜静脈に寄生=日本住血吸虫、マンソン住血吸虫。●膀胱・骨盤静脈叢に寄生=ビルハルツ住血吸虫(血尿・膀胱癌)。●胆管に寄生=肝吸虫、肝蛭。●肺動脈や中枢神経に寄生=広東住血線虫(好酸球性髄膜炎)。●小腸に寄生=回虫、鉤虫など。日本住血吸虫は正しい。住血吸虫類はいずれも巻貝を中間宿主とし、水中のセルカリアが経皮的にヒトへ侵入して感染が成立する点が共通する。寄生部位の違いが症状の差を生む。診断は糞便や尿からの虫卵検出により行い、流行地での感染歴も参考とする。
選択肢ごとの解説
- ① 肝蛭は牛や羊などの胆管に寄生し、ヒトでも肝・胆管病変を起こすことがあるが、門脈に寄生する寄生虫ではないため誤りである。
- ② 肝吸虫は胆管に寄生して胆管炎や胆管癌の原因となる寄生虫であり、門脈に成虫が寄生するものではないため、この選択肢は誤りである。
- ③ 広東住血線虫は終宿主のネズミの肺動脈に寄生し、ヒトでは好酸球性髄膜炎を起こすが、門脈に寄生する寄生虫ではないため誤りである。
- ④ 正しい。日本住血吸虫の成虫は門脈〜腸間膜静脈系に寄生し、産卵された虫卵が肝臓や腸管に沈着して病変を引き起こす寄生虫である。
- ⑤ ビルハルツ住血吸虫は膀胱・骨盤静脈叢に寄生して血尿や膀胱癌の原因となる寄生虫であり、門脈に寄生するものではないため誤りである。
第60回 午後9(臨床検査総論)
体毛に付着していた虫体(体長1.2 mm)の写真を別に示す。正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB009.66a62cc037.jpg

- ①ケジラミ
- ②ツツガムシ
- ③ヒゼンダニ
- ④アタマジラミ
- ⑤コロモジラミ
正答: ①ケジラミ
ポイント
体長約1.2mmで体毛(特に陰毛)に付着していた虫体はケジラミである。ケジラミは扁平で幅広い体に強大な鉤爪状の脚をもち、カニのような外観で陰毛・腋毛などにしがみついて吸血する。主に性的接触により感染し、強い瘙痒を生じる。形態・寄生部位・媒介疾患により鑑別する。●ヒトに寄生するシラミ=ケジラミ(陰毛など、体長約1〜2mmで幅広い)、アタマジラミ(頭髪、細長い)、コロモジラミ(衣服に潜み発疹チフスや回帰熱を媒介)。●ダニ・その他の節足動物=ヒゼンダニ(疥癬、皮内に疥癬トンネルを作る)、ツツガムシ(恙虫病リケッチアを媒介)。●鑑別点=体型・寄生部位・媒介病原体。ケジラミは正しい。なお、シラミ症は接触により家族内などで広がるため、寝具や衣類の処理を含めた対応が必要となる。検出には虫体や虫卵(毛じらみ卵)を毛幹に確認することが診断の根拠となる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。体長約1.2mmで体が幅広く強大な鉤爪状の脚をもち体毛に付着していたのはケジラミであり、陰毛や腋毛などに寄生して吸血する。
- ② ツツガムシは恙虫病リケッチアを媒介するダニであり、体毛に固着して吸血する虫体ではないため、この写真の所見には合致せず誤りである。
- ③ ヒゼンダニは疥癬の原因となり皮膚角層内に疥癬トンネルを作る寄生虫であり、体毛に付着して吸血する虫体ではないため誤りである。
- ④ アタマジラミは頭髪に寄生する細長い体型のシラミであり、陰毛に付着していた幅広い虫体とは寄生部位も形態も異なるため誤りである。
- ⑤ コロモジラミは衣服に潜んで発疹チフスなどを媒介するシラミであり、体毛に固着して吸血するタイプではないため、この所見には合致しない。
第60回 午後10(臨床検査総論)
寄生虫疾患と検査法の組合せで正しいのはどれか。
- ①回虫症―セロテープ肛囲検査
- ②マラリア―骨髄生検
- ③糞線虫症―飽和食塩水浮遊法
- ④アニサキス症―内視鏡検査
- ⑤日本住血吸虫症―末梢血塗抹検査
正答: ④アニサキス症―内視鏡検査
ポイント
アニサキス症は、サバ・アジ・イカなど海産魚介類の生食でアニサキス幼虫を摂取し、虫体が胃壁や腸壁に穿入して激しい腹痛など急性腹症を起こす。胃アニサキス症では内視鏡検査により虫体を直接確認して摘出できるため、診断と治療を兼ねて有用である。寄生虫は寄生部位と排出経路に応じた検査法を選ぶ。●寄生虫と適切な検査法=アニサキス症―内視鏡検査、回虫・鉤虫―糞便集卵法(飽和食塩水浮遊法)、蟯虫―セロテープ肛囲検査、マラリア―末梢血塗抹(ギムザ染色)。●その他=糞線虫症―普通寒天平板培養法による幼虫検出、日本住血吸虫症―糞便からの虫卵検出。●原則=虫体や虫卵の存在部位に検査を合わせる。アニサキス症は正しい。なお、糞便検査では集卵法のほか、虫卵の形態や大きさを顕微鏡で観察して虫種を同定することも重要である。虫体や虫卵が確認できない場合は問診や血清抗体検査を補助的に用いる。
選択肢ごとの解説
- ① 回虫症の検査は糞便集卵法で虫卵を確認するものであり、セロテープ肛囲検査は蟯虫に用いる手技であるため、この組合せは誤りである。
- ② マラリアの診断は末梢血塗抹標本のギムザ染色で赤血球内の原虫を確認するものであり、骨髄生検は用いないため、この組合せは誤りである。
- ③ 糞線虫症は普通寒天平板培養法などで幼虫を検出するものであり、飽和食塩水浮遊法は鉤虫などの集卵法であるため、この組合せは誤りである。
- ④ 正しい。アニサキス症では胃壁に穿入した虫体を内視鏡で直接確認して摘出できるため、診断と治療を兼ねて内視鏡検査が有用である。
- ⑤ 日本住血吸虫症は糞便からの虫卵検出により診断するものであり、末梢血塗抹検査では虫卵を検出できないため、この組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:寄生虫の糞便検査法と検出対象
アニサキス症は虫卵・虫体が糞便に出ないため、糞便検査ではなく内視鏡検査で虫体を直接確認・摘出する。
第60回 午後11(臨床検査医学総論)
虚血性心疾患のリスクファクターはどれか。2つ選べ。
- ①高LDLコレステロール血症
- ②副甲状腺機能亢進症
- ③甲状腺機能亢進症
- ④2型糖尿病
- ⑤肝硬変
正答: ①高LDLコレステロール血症・④2型糖尿病
ポイント
虚血性心疾患(冠動脈疾患)の主要な危険因子は、動脈硬化を促進する脂質・代謝異常である。高LDLコレステロール血症はコレステロールの血管壁への沈着とアテローム性プラークの形成を促進し、2型糖尿病は持続する高血糖による血管内皮の障害を介して動脈硬化を進展させ、いずれも発症リスクを著明に高める。●虚血性心疾患の危険因子=高LDLコレステロール血症、糖尿病、高血圧、喫煙、加齢、男性、肥満、低HDLコレステロール血症。●危険因子とならない/関連の薄い病態=甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、肝硬変(むしろ脂質低下を伴うことがある)。●予防=脂質・血糖・血圧の管理と禁煙。高LDLコレステロール血症と2型糖尿病は正しい。なお、危険因子は重複するほどリスクが相乗的に高まるため、複数の因子を総合的に評価して管理することが重要である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。高LDLコレステロール血症はコレステロールの血管壁への沈着とプラーク形成を促進するため、虚血性心疾患の主要な危険因子である。
- ② 副甲状腺機能亢進症はカルシウムや骨の代謝異常を主体とする疾患であり、虚血性心疾患の主要な危険因子とはされないため誤りである。
- ③ 甲状腺機能亢進症は頻脈や心房細動を起こしうるが、動脈硬化性の虚血性心疾患の危険因子とはされないため、この選択肢は誤りである。
- ④ 正しい。2型糖尿病は持続する高血糖による血管内皮障害を介して動脈硬化を進展させるため、虚血性心疾患の重大な危険因子である。
- ⑤ 肝硬変はコレステロールの合成能の低下を伴うことがあり脂質はむしろ低下しうるため、虚血性心疾患の危険因子とはならず誤りである。
第60回 午後12(臨床検査医学総論)
採血に伴う血管迷走神経反射で正しいのはどれか。
- ①顔面紅潮
- ②血圧上昇
- ③体温低下
- ④脈拍減少
- ⑤呼吸数増加
正答: ④脈拍減少
ポイント
血管迷走神経反射は、採血時の疼痛や不安などが引き金となって迷走神経(副交感神経)が過剰に興奮する反応である。副交感神経の優位により心拍数が低下(徐脈)し、同時に末梢血管が拡張して血圧が低下するため、顔面蒼白・冷汗・悪心・あくび・失神などを生じる。脈拍減少はこの反射に典型的な所見である。●血管迷走神経反射の所見=徐脈、血圧低下、顔面蒼白、冷汗、悪心・嘔吐、失神。●交感神経興奮による一般的反応との対比=頻脈、血圧上昇、顔面紅潮や発汗。●対処=直ちに仰臥位とし下肢を挙上、症状が回復するまで観察する。脈拍減少は正しい。本反射は副交感神経優位による徐脈・血圧低下が本態である。なお、採血後の症状であっても患者の安全が最優先であり、転倒による外傷を防ぐ体位管理が求められる。症状が遷延する場合や繰り返す場合は、横になって採血する体位採血を考慮する。
選択肢ごとの解説
- ① 顔面紅潮ではなく、血管迷走神経反射では末梢血管の拡張と血圧低下により顔面蒼白を呈するため、この選択肢は誤りである。
- ② 血圧は上昇ではなく、副交感神経の優位による末梢血管の拡張によって低下するため、血圧上昇とするこの選択肢は誤りである。
- ③ 体温低下は本反射の主要な所見ではなく、中心となるのは徐脈・血圧低下・顔面蒼白・冷汗などであるため、この選択肢は誤りである。
- ④ 正しい。血管迷走神経反射では副交感神経の優位により心拍数が低下し、脈拍減少(徐脈)を呈するのが典型的な所見である。
- ⑤ 呼吸数増加は本反射の特徴的な所見ではなく、徐脈と低血圧から失神に至るのが本態であるため、この選択肢は誤りである。
第60回 午後13(臨床検査医学総論)
自己抗体と疾患の組合せで正しいのはどれか。
- ①抗CCP抗体―全身性エリテマトーデス
- ②抗DNA抗体―潰瘍性大腸炎
- ③抗セントロメア抗体―関節リウマチ
- ④抗ミトコンドリア抗体―混合性結合組織病
- ⑤抗アセチルコリン受容体抗体―重症筋無力症
正答: ⑤抗アセチルコリン受容体抗体―重症筋無力症
ポイント
抗アセチルコリン受容体抗体は、神経筋接合部の終板にあるアセチルコリン受容体に結合してその働きを障害し、神経筋伝達を妨げて重症筋無力症を引き起こす自己抗体である。眼瞼下垂・複視・易疲労性・症状の日内変動を特徴とし、胸腺腫を合併することがある。自己抗体は疾患特異性に基づき診断に用いる。●自己抗体と疾患の正しい対応=抗アセチルコリン受容体抗体―重症筋無力症、抗CCP抗体・リウマトイド因子―関節リウマチ、抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体―全身性エリテマトーデス、抗セントロメア抗体―CREST症候群(限局型強皮症)、抗ミトコンドリア抗体―原発性胆汁性胆管炎。●意義=疾患特異性の高い抗体は診断の決め手となる。抗アセチルコリン受容体抗体―重症筋無力症は正しい。自己抗体検査は臨床症状と組み合わせて総合的に診断へ用いることが重要である。
選択肢ごとの解説
- ① 抗CCP抗体は関節リウマチに特異性の高い自己抗体であり、全身性エリテマトーデスと組み合わせるこの選択肢は誤りである。
- ② 抗DNA抗体は全身性エリテマトーデスに関連する自己抗体であり、潰瘍性大腸炎と組み合わせるこの選択肢は誤りである。
- ③ 抗セントロメア抗体はCREST症候群(限局型強皮症)に関連する自己抗体であり、関節リウマチと組み合わせるこの選択肢は誤りである。
- ④ 抗ミトコンドリア抗体は原発性胆汁性胆管炎に関連する自己抗体であり、混合性結合組織病と組み合わせるこの選択肢は誤りである。
- ⑤ 正しい。抗アセチルコリン受容体抗体は神経筋伝達を障害して重症筋無力症を引き起こす、診断に用いられる特異的な自己抗体である。
📋 まとめの表を見る:臓器特異的自己抗体と自己免疫疾患
サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉は甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己抗体の標的とはならない。
第60回 午後14(臨床検査医学総論)
迅速検査キットで診断できるのはどれか。
- ①EBウイルス
- ②RSウイルス
- ③風疹ウイルス
- ④麻疹ウイルス
- ⑤サイトメガロウイルス
正答: ②RSウイルス
ポイント
RSウイルスは乳幼児の細気管支炎や肺炎の主要な原因ウイルスで、鼻咽頭ぬぐい液を検体としたイムノクロマト法による迅速抗原検出キットが普及しており、外来で短時間に診断できる。迅速キットは抗原量が多く検体の採取が容易な感染症で有用性が高い。●迅速抗原検査キットで診断可能なウイルス=RSウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロ・ロタウイルス、新型コロナウイルス。●迅速抗原キットが一般的でなく血清抗体価や核酸検査で診断するもの=EBウイルス(抗体)、風疹・麻疹ウイルス(抗体価)、サイトメガロウイルス(抗原血症・核酸検査)。●原理=抗原抗体反応の発色を判定する。RSウイルスは正しい。なお、迅速検査は簡便で即時性に優れる一方、感度・特異度には限界があるため、臨床所見と併せて結果を解釈する。検体の採取部位やタイミングが結果に影響するため、適切な採取手技が求められる。
選択肢ごとの解説
- ① EBウイルスは血清抗体(VCAやEBNAなど)の検出によって診断するものであり、一般的な迅速抗原検出キットは用いないため誤りである。
- ② 正しい。RSウイルスは鼻咽頭ぬぐい液を検体とした迅速抗原検出キットにより、外来で短時間に診断することができるウイルスである。
- ③ 風疹ウイルスは血清抗体価(HI法やIgM抗体)によって診断するものであり、迅速抗原検出キットは一般的でないため、この選択肢は誤りである。
- ④ 麻疹ウイルスは抗体価の測定やPCRによって診断するものであり、迅速抗原検出キットによる診断は一般的でないため、この選択肢は誤りである。
- ⑤ サイトメガロウイルスは抗原血症検査や核酸検査によって診断するものであり、迅速抗原検出キットは用いないため、この選択肢は誤りである。
第60回 午後15(臨床検査医学総論)
推算糸球体濾過量〈eGFR〉の計算に用いられるのはどれか。
正答: ④年齢
ポイント
推算糸球体濾過量(eGFR)は、血清クレアチニン値に年齢と性別を組み合わせた推算式によって算出する腎機能の指標である。年齢は筋肉量の加齢による変化を補正する変数として式に組み込まれており、計算に必須である。日本人ではeGFR=194×血清クレアチニン⁻¹·⁰⁹⁴×年齢⁻⁰·²⁸⁷(女性は×0.739)の推算式が用いられる。●eGFR推算式に用いる項目=血清クレアチニン(またはシスタチンC)、年齢、性別。●用いない項目=身長、体重、尿量、腹囲。●補足=クレアチニンクリアランスの実測値を体表面積で補正する際には身長・体重を用いるが、eGFRの推算式自体には不要である。年齢は正しい。なお、eGFRは血清クレアチニンの推算式であり、筋肉量が極端に多い・少ない症例ではシスタチンC基準の式も併用される。
選択肢ごとの解説
- ① 身長はeGFRの推算式には用いない項目であり、クレアチニンクリアランス実測値の体表面積補正で使う項目であるため、この選択肢は誤りである。
- ② 体重はeGFRの推算式には含まれない項目であり、推算式の計算に用いる変数ではないため、この選択肢は誤りである。
- ③ 尿量はeGFRの推算式には用いない項目であり、血清クレアチニンと年齢・性別から推算するため、この選択肢は誤りである。
- ④ 正しい。年齢は筋肉量の加齢による変化を補正するためにeGFRの推算式へ組み込まれている、計算に必須の項目である。
- ⑤ 腹囲はeGFRの計算には全く用いない項目であり、推算式に含まれる変数ではないため、この選択肢は誤りである。
第60回 午後16(臨床生理学)
房室副伝導路が原因となるのはどれか。
- ①心室細動
- ②洞不整脈
- ③異型狭心症
- ④WPW症候群
- ⑤心室期外収縮
正答: ④WPW症候群
ポイント
WPW症候群は、心房と心室を直接つなぐ房室副伝導路(Kent束)が先天的に存在し、正常の房室結節を介さずに心室の一部を早期に興奮させる病態である。心電図ではPQ短縮・デルタ波・QRS幅の延長を示し、副伝導路を介する回帰性頻拍(発作性上室頻拍)や心房細動を合併する。●房室副伝導路が関与する病態=WPW症候群(Kent束)、LGL症候群(房室結節を迂回する副伝導路)。●その他の選択肢の機序=心室細動・心室期外収縮は心室筋の異常興奮、洞不整脈は洞結節の自律神経性変動、異型狭心症は冠動脈攣縮による虚血で、いずれも副伝導路は関与しない。●治療=カテーテルアブレーションが有効。WPW症候群は正しい。なお、副伝導路を介する頻拍では薬剤選択に注意を要し、心房細動合併時は房室結節抑制薬で増悪することがある。診断には心電図でのデルタ波・PQ短縮・QRS延長の確認が基本となる。
選択肢ごとの解説
- ① 心室細動は心室筋の無秩序な興奮によって生じる致死的不整脈であり、房室副伝導路が原因となる病態ではないため、この選択肢は誤りである。
- ② 洞不整脈は呼吸性などの自律神経による洞結節の興奮の変動によって生じるものであり、房室副伝導路とは無関係であるため誤りである。
- ③ 異型狭心症は冠動脈の攣縮による心筋虚血が原因で生じる狭心症であり、房室副伝導路は関与しないため、この選択肢は誤りである。
- ④ 正しい。WPW症候群は房室副伝導路(Kent束)が存在することによりデルタ波や頻拍発作を生じる、副伝導路が原因となる代表的疾患である。
- ⑤ 心室期外収縮は心室の異所性の興奮によって生じる不整脈であり、房室副伝導路が原因となる病態ではないため、この選択肢は誤りである。
第60回 午後17(臨床生理学)
心電図を別に示す。最も注意すべき合併症はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB017.6f1095c386.jpg

- ①脳塞栓
- ②狭心症
- ③急性心膜炎
- ④心タンポナーデ
- ⑤閉塞性動脈硬化症
正答: ①脳塞栓
ポイント
本図は心房細動の心電図と考えられ、最も注意すべき合併症は脳塞栓(心原性脳塞栓症)である。心房細動では心房が無秩序に細動して有効な収縮を失うため、左心房(特に左心耳)内に血流のうっ滞による血栓が形成されやすく、これが遊離して脳動脈を塞栓すると重篤な脳梗塞を起こす。●心房細動の心電図所見=P波の消失、基線の細動波(f波)、絶対性に不規則なRR間隔。●心房細動の合併症と対策=心原性脳塞栓(抗凝固療法で予防)、心不全、頻脈の持続による心機能の低下。●予防=CHADS2スコア等で塞栓リスクを評価する。最も注意すべきは脳塞栓で正しい。f波と絶対性不整脈が特徴的所見である。なお、心房細動は加齢・高血圧・心不全などで頻度が増し、塞栓予防のための抗凝固管理が治療の要点となる。心電図での絶対性不整脈とf波の確認が診断の基本となり、リスク評価につなげる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。心房細動では左心耳内に血栓が形成されやすく、これが遊離して脳動脈を塞栓し脳塞栓(心原性脳塞栓症)を起こす危険が高い。
- ② 狭心症は冠動脈の虚血によって生じる胸痛発作であり、心房細動から最も注意すべき合併症として挙げるものではないため誤りである。
- ③ 急性心膜炎は心膜の炎症によって生じる疾患であり、心房細動の合併症として最も警戒すべきものではないため、この選択肢は誤りである。
- ④ 心タンポナーデは心嚢液の貯留による心拡張障害であり、心房細動の典型的な合併症ではないため、この選択肢は誤りである。
- ⑤ 閉塞性動脈硬化症は下肢動脈の慢性的な虚血であり、心房細動から最も注意すべき合併症ではないため、この選択肢は誤りである。
第60回 午後18(臨床生理学)
トレッドミル負荷試験について正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①不安定狭心症は禁忌である。
- ②目標心拍数は体重で決める。
- ③誘導方法はNASA誘導を用いる。
- ④心筋梗塞のリハビリテーションの目安になる。
- ⑤Bruce法では1分ごとに負荷量を増大させる。
正答: ①不安定狭心症は禁忌である。・④心筋梗塞のリハビリテーションの目安になる。
ポイント
トレッドミル負荷試験は、運動負荷をかけながら心電図変化や症状を評価する検査である。不安定狭心症は安静時や軽労作でも心筋虚血が進行する病態で、運動負荷により心筋梗塞や致死的不整脈を誘発する危険があるため絶対禁忌である。また本試験は心筋梗塞後の運動耐容能を評価でき、心臓リハビリテーションの目安としても用いられる。●運動負荷試験の禁忌=不安定狭心症、急性心筋梗塞の急性期、重症大動脈弁狭窄、コントロール不良の不整脈や心不全。●Bruce法=3分ごとに速度と傾斜を増す多段階法で、目標心拍数は年齢から推定する。●中止基準=胸痛やST変化、血圧低下など。不安定狭心症が禁忌で、リハビリの目安になるのは正しい。なお、運動負荷中はST変化・不整脈・血圧反応・自覚症状を連続して監視し、危険徴候が出現すれば直ちに中止する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。不安定狭心症は運動負荷により心筋梗塞や致死的不整脈を誘発する危険があるため、トレッドミル負荷試験の絶対禁忌である。
- ② 目標心拍数は体重ではなく年齢(220−年齢など)から推定するものであるため、体重で決めるとするこの選択肢は誤りである。
- ③ 運動負荷心電図の誘導はマスター二段階試験などに準じるものであり、NASA誘導を用いると断定するこの選択肢は誤りである。
- ④ 正しい。トレッドミル負荷試験は心筋梗塞後の運動耐容能を評価でき、心臓リハビリテーションを進める際の目安となる検査である。
- ⑤ Bruce法は1分ごとではなく3分ごとに速度と傾斜を増していく多段階負荷法であるため、1分ごととするこの選択肢は誤りである。
第60回 午後19(臨床生理学)
換気機能検査の指標の異常とその解釈の組合せで正しいのはどれか。
- ①肺活量〈VC〉の低下―肺胞低換気
- ②全肺気量〈TLC〉の上昇―肺の線維化
- ③機能的残気量〈FRC〉の上昇―肺の過膨張
- ④V25の低下―中枢気道閉塞
- ⑤ピークフロー〈PEF〉の低下―肺拡散能力の低下
正答: ③機能的残気量〈FRC〉の上昇―肺の過膨張
ポイント
機能的残気量(FRC)は安静呼気位で肺内に残る空気量で、肺の弾性収縮力と胸郭の外向きの拡張力が釣り合う位置を反映する。肺気腫など閉塞性肺疾患では肺の弾性収縮力が低下して空気が肺内に溜まる過膨張(air trapping)を生じ、FRCが上昇する。FRCの上昇=肺の過膨張は正しい組合せである。●閉塞性換気障害(過膨張・残気量増加)=肺気腫、慢性閉塞性肺疾患。●拘束性換気障害(肺容量の低下)=間質性肺炎・肺線維化(VC・TLCが低下)。●気道閉塞の指標=V25など末梢気道の指標の低下、PEFは気道抵抗や努力依存性を反映する。●判定=病型により容量・流量指標の異常を組み合わせて評価する。FRC上昇=肺の過膨張が正しい。したがって、機能的残気量の上昇が肺の過膨張を反映するというこの組合せが正しい。なお、肺気量分画は安静時の呼吸位を基準として理解する。
選択肢ごとの解説
- ① 肺活量の低下は拘束性換気障害(肺の線維化など)を示すものであり、肺胞低換気と直結する解釈とはいえないため、この組合せは誤りである。
- ② 全肺気量の上昇は肺気腫などの過膨張を示すものであり、肺の線維化では全肺気量はむしろ低下するため、この組合せは誤りである。
- ③ 正しい。機能的残気量の上昇は肺気腫など閉塞性肺疾患による肺の過膨張(air trapping)を反映する所見であり、この組合せは正しい。
- ④ V25の低下は末梢(小)気道の閉塞を示す指標であり、中枢気道の閉塞を示す指標ではないため、この組合せは誤りである。
- ⑤ ピークフローの低下は気道抵抗の増大や努力不足を反映するものであり、肺拡散能力の低下とは結びつかないため、この組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:換気機能障害の分類(%肺活量〈%VC〉・1秒率〈FEV1%〉による判定)
閉塞性換気障害ではフローボリューム曲線が下に凸の形となる。機能的残気量〈FRC〉は肺の過膨張により上昇する(肺気腫・COPDなど)。
第60回 午後20(臨床生理学)
静肺コンプライアンスについて正しいのはどれか。
- ①加齢とともに低下する。
- ②間質性肺炎で上昇する。
- ③気管支喘息で低下する。
- ④心不全による肺うっ血で上昇する。
- ⑤慢性閉塞性肺疾患(肺気腫型)で上昇する。
正答: ⑤慢性閉塞性肺疾患(肺気腫型)で上昇する。
ポイント
静肺コンプライアンスは単位圧変化あたりの肺容量変化(肺の膨らみやすさ)を表す指標で、肺の弾性に反比例する。慢性閉塞性肺疾患(肺気腫型)では肺胞壁が破壊されて弾性線維が失われるため肺が膨らみやすくなり、コンプライアンスが上昇する。●コンプライアンスが上昇する(膨らみやすい)病態=肺気腫、加齢による肺弾性の低下。●コンプライアンスが低下する(硬く膨らみにくい)病態=間質性肺炎・肺線維症、心不全による肺うっ血、肺水腫、無気肺、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)。●概念=コンプライアンスは肺の弾性と相反する関係にある。肺気腫型COPDで上昇は正しい。なお、コンプライアンスは肺の膨らみやすさを反映するため、線維化で硬くなる病態では低下し、弾性が失われる病態では上昇する。診断や評価では、画像所見や換気機能検査の結果と併せて病態を総合的に判断する。
選択肢ごとの解説
- ① 加齢では肺の弾性が低下するためコンプライアンスはむしろ上昇するのであり、加齢とともに低下するとするこの選択肢は誤りである。
- ② 間質性肺炎では肺が硬くなりコンプライアンスは低下するのであり、間質性肺炎で上昇するとするこの選択肢は誤りである。
- ③ 気管支喘息は主に気道の狭窄が問題となる疾患であり、肺胞の弾性を反映する静肺コンプライアンスは典型的には低下しないため誤りである。
- ④ 心不全による肺うっ血では肺が硬くなりコンプライアンスは低下するのであり、肺うっ血で上昇するとするこの選択肢は誤りである。
- ⑤ 正しい。肺気腫型COPDでは肺胞壁の破壊で弾性線維が失われて肺が膨らみやすくなるため、静肺コンプライアンスが上昇する。
第60回 午後21(臨床生理学)
酸塩基平衡の異常と動脈血ガス分析の所見の組合せで正しいのはどれか。ただし、↑は上昇、↓は低下、〜は正常を示す。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB021.e3302b9af0.jpg

- ①急性代謝性アシドーシス
- ②急性呼吸性アシドーシス
- ③急性呼吸性アルカローシス
- ④慢性代謝性アシドーシス
- ⑤慢性呼吸性アシドーシス
正答: ①急性代謝性アシドーシス
ポイント
急性代謝性アシドーシスでは、酸の蓄積または重炭酸イオン(HCO₃⁻)の喪失により一次性にHCO₃⁻が低下する。これに対し肺による呼吸性代償が働いて換気が亢進し、PaCO₂は正常〜低下する。本病態の一次変化はHCO₃⁻低下、代償はPaCO₂低下であり、一次変化と代償は同じ方向に動く。●代謝性アシドーシス=HCO₃⁻↓、代償でPaCO₂↓。●代謝性アルカローシス=HCO₃⁻↑、代償でPaCO₂↑。●呼吸性アシドーシス=PaCO₂↑、慢性代償でHCO₃⁻↑。●呼吸性アルカローシス=PaCO₂↓、慢性代償でHCO₃⁻↓。急性代謝性アシドーシス(PaCO₂〜または↓/HCO₃⁻↓)は正しい。なお、実際の症例では一次性変化と代償の程度を予測式と照合し、代償の範囲を超える場合は混合性障害を疑う。診断ではpH・PaCO₂・HCO₃⁻の三者を併せて読み、原疾患の検索につなげる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。急性代謝性アシドーシスは一次性にHCO₃⁻が低下する病態であり、呼吸性代償によってPaCO₂が正常〜低下するため正しい組合せである。
- ② 急性呼吸性アシドーシスはPaCO₂の上昇が一次変化であり、PaCO₂が〜または↓とするこの選択肢は方向が逆で誤りである。
- ③ 急性呼吸性アルカローシスはPaCO₂の低下が一次変化であり、PaCO₂が↑とするこの選択肢は方向が逆で誤りである。
- ④ 慢性代謝性アシドーシスはHCO₃⁻の低下に対しPaCO₂も低下するのであり、PaCO₂が↑とするこの選択肢は方向が逆で誤りである。
- ⑤ 慢性呼吸性アシドーシスはPaCO₂の上昇に代償してHCO₃⁻が上昇するのであり、両者がともに↓とするこの選択肢は誤りである。
📋 まとめの表を見る:酸塩基平衡異常の4パターン(pH・一次性変化・代償性変化)
代償は血液pHを基準範囲(7.35〜7.45)へ戻そうとする働き。呼吸性代償は換気量の増減により数時間単位、代謝性(腎性)代償はHCO₃-の排泄調節により数日単位で生じる。代償が予測範囲を超える場合は混合性障害を疑う。
第60回 午後22(臨床生理学)
72歳の男性。40本/日の喫煙を50年近く続けている。4~5年前から咳、痰および階段を昇るときの息切れがあり、最近悪化したため受診した。呼吸機能検査の結果を以下に示す。-動脈血ガス分析(室内気):pH 7.37、PaO₂ 58 Torr、PaCO₂ 56 Torr、HCO₃ 38 mEq/l〈mmol/l〉強制努力呼出でのフローボリューム曲線を別に示す。考えられる疾患はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB022.cdb9587cc8.jpg

- ①間質性肺炎
- ②気管支喘息(非発作時)
- ③睡眠時無呼吸症候群
- ④甲状腺癌による気管狭窄
- ⑤慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉
正答: ⑤慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉
ポイント
長期の多量喫煙歴、慢性の咳・痰・労作時の息切れ、動脈血ガス分析でのII型呼吸不全(PaO₂の低下とPaCO₂の上昇)と代償性のHCO₃⁻上昇、フローボリューム曲線の下に凸の閉塞性パターンは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に合致する。喫煙による末梢気道病変と肺気腫が呼気流速の低下と慢性の高炭酸ガス血症をもたらす。●COPDの所見=閉塞性換気障害(1秒率の低下)、フローボリュームの下に凸、肺の過膨張、II型呼吸不全。●鑑別=間質性肺炎は拘束性、気管支喘息(非発作時)は所見が乏しい、中枢気道の器質狭窄は流量制限の形が異なる。●背景=喫煙が最大の要因。COPDは正しい。なお、本例は慢性のII型呼吸不全に代謝性代償が加わった状態で、pHがほぼ正常に保たれている点も矛盾しない。確定診断にはスパイロメトリーで気管支拡張薬後も1秒率の低下が残ることを確認する。
選択肢ごとの解説
- ① 間質性肺炎は拘束性換気障害でVC・TLCが低下する疾患であり、本例の閉塞性パターンや高炭酸ガス血症とは合致しないため誤りである。
- ② 気管支喘息(非発作時)は検査所見が乏しいことが多く、本例の慢性的な高炭酸ガス血症や持続性の閉塞性障害は説明しにくいため誤りである。
- ③ 睡眠時無呼吸症候群は睡眠時の上気道閉塞が主体の病態であり、本例の覚醒時の閉塞性換気障害とは病態が異なるため、この選択肢は誤りである。
- ④ 甲状腺癌による気管狭窄は中枢気道の器質的狭窄でフローボリュームの形が異なり、長い喫煙歴を伴う本例には合致しないため誤りである。
- ⑤ 正しい。長期の喫煙歴・慢性の症状・閉塞性パターン・II型呼吸不全という所見から、本例は慢性閉塞性肺疾患(COPD)と考えられる。
📋 まとめの表を見る:酸塩基平衡異常の4パターン(pH・一次性変化・代償性変化)
代償は血液pHを基準範囲(7.35〜7.45)へ戻そうとする働き。呼吸性代償は換気量の増減により数時間単位、代謝性(腎性)代償はHCO₃-の排泄調節により数日単位で生じる。代償が予測範囲を超える場合は混合性障害を疑う。
📋 まとめの表を見る:換気機能障害の分類(%肺活量〈%VC〉・1秒率〈FEV1%〉による判定)
閉塞性換気障害ではフローボリューム曲線が下に凸の形となる。機能的残気量〈FRC〉は肺の過膨張により上昇する(肺気腫・COPDなど)。
第60回 午後23(臨床生理学)
機能と部位の組合せで正しいのはどれか。
- ①言語中枢―脊髄
- ②運動制御―小脳
- ③交感神経中枢―大脳
- ④表在感覚中枢―脳幹
- ⑤ホルモン分泌―視床
正答: ②運動制御―小脳
ポイント
小脳は運動の協調・平衡・筋緊張の調節を担い、随意運動を滑らかにする運動制御の中枢である。障害されると運動失調、企図振戦、測定障害(dysmetria)などを生じる。各機能はそれぞれ対応する部位に局在している。●中枢神経の機能局在=言語中枢は大脳皮質(前頭葉のブローカ野・側頭葉のウェルニッケ野)、運動の協調・制御は小脳、自律神経や体温・摂食・飲水の上位中枢は視床下部、感覚情報の中継核は視床、ホルモン分泌の調節は視床下部—下垂体系、呼吸・循環など生命維持の中枢は脳幹(延髄)。●原則=部位ごとに役割が分かれる。運動制御―小脳は正しい。なお、機能局在を理解すると、障害部位と症状の対応から病巣の局在診断につなげることができる。したがって、運動制御を担うのは小脳であり、この組合せが正しいと判断できる。なお、局在診断では症状から責任病巣を推定する。
選択肢ごとの解説
- ① 言語中枢は脊髄ではなく大脳皮質(前頭葉のブローカ野や側頭葉のウェルニッケ野)に存在するため、この組合せは誤りである。
- ② 正しい。小脳は運動の協調・平衡・筋緊張を調節して随意運動を滑らかにする運動制御の中枢であり、この組合せは正しい。
- ③ 交感神経の上位中枢は大脳ではなく視床下部に存在するため、交感神経中枢を大脳とするこの組合せは誤りである。
- ④ 表在感覚の中継核は脳幹ではなく視床であり、そこから大脳皮質の感覚野へ伝わるため、表在感覚中枢を脳幹とするこの組合せは誤りである。
- ⑤ ホルモン分泌の調節中枢は視床ではなく視床下部であり、視床下部—下垂体系が分泌を調節するため、この組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:中枢神経系の部位と機能
言語中枢はほとんどの場合、左半球(優位半球)にある。運動は中心前回、体性感覚は中心後回であり取り違えやすい。
第60回 午後24(臨床生理学)
脳波を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB024.15028f0d03.jpg

- ①意識障害
- ②レム睡眠期
- ③てんかん発作
- ④睡眠ステージ1
- ⑤睡眠ステージ2
正答: ⑤睡眠ステージ2
ポイント
本脳波は睡眠ステージ2(軽睡眠)と考えられ、紡錘波(睡眠紡錘波、12〜14Hz前後の群発)とK複合波の出現が特徴である。覚醒時のα波が消失し、低振幅の脳波を背景にこれらの相動性の要素が出現する。●睡眠段階と脳波所見=覚醒(α波)、ステージ1(低振幅でθ波や瘤波)、ステージ2(紡錘波・K複合)、ステージ3・4(高振幅δ波の徐波睡眠)、レム睡眠(覚醒に似た低振幅速波と急速眼球運動)。●異常波形との区別=意識障害ではびまん性徐波、てんかん発作では棘波や棘徐波複合を示す。●指標=紡錘波とK複合が本段階の目印となる。睡眠ステージ2は正しい。なお、睡眠段階の判定では脳波に加え眼球運動(眼電図)と頤筋筋電図を併せて総合的に評価する。したがって、紡錘波とK複合波を認める本図は睡眠ステージ2に相当する。なお、睡眠ポリグラフ検査で各段階を判定する。
選択肢ごとの解説
- ① 意識障害ではびまん性の徐波などを示すものであり、紡錘波やK複合波を特徴とする本図とは異なるため、この選択肢は誤りである。
- ② レム睡眠期は覚醒に似た低振幅の速波と急速眼球運動が特徴であり、紡錘波が出現する本図とは異なるため、この選択肢は誤りである。
- ③ てんかん発作は棘波や棘徐波複合などの突発波を示すものであり、睡眠紡錘波が出現する本図とは異なるため、この選択肢は誤りである。
- ④ 睡眠ステージ1は瘤波やθ波が主体の段階であり、紡錘波とK複合波が明瞭な本図はステージ2に相当するため、この選択肢は誤りである。
- ⑤ 正しい。睡眠ステージ2は紡錘波(睡眠紡錘波)とK複合波の出現を特徴とする軽睡眠の段階であり、本図の所見に合致する。
📋 まとめの表を見る:睡眠段階(AASM分類)と脳波所見
睡眠ステージ1(N1)からステージ2(N2)への移行は、紡錘波の出現で判断する。旧Rechtschaffen & Kales分類のStage3・4はAASM分類でStage N3に統一された。
第60回 午後25(臨床生理学)
脳波所見と症状または疾患の組合せで正しいのはどれか。
- ①re-build up ―もやもや病
- ②多棘徐波複合―側頭葉てんかん
- ③3 Hz棘徐波複合―ウェスト〈West〉症候群
- ④ヒプスアリスミア―欠神発作
- ⑤6 & 14 Hz陽性棘波―大発作てんかん
正答: ①re-build up ―もやもや病
ポイント
re-build up(再増高現象)は、もやもや病で過呼吸負荷を終了してからしばらくして再び高振幅の徐波が出現する特徴的な脳波所見で、脳血管の脆弱性と過呼吸後の脳血流低下を反映する。特徴的な突発波や賦活所見は疾患診断の手がかりとなる。●脳波所見と疾患の正しい対応=re-build up―もやもや病、ヒプスアリスミア―ウェスト症候群(点頭てんかん)、3Hz棘徐波複合―欠神発作(小発作)、多棘徐波複合―ミオクロニーてんかん、6&14Hz陽性棘波―健常者にもみられる非特異的所見。●賦活法=過呼吸・光刺激・睡眠などで異常波を誘発する。re-build up―もやもや病は正しい。なお、過呼吸賦活は小児で徐波が出現しやすく、年齢を考慮して所見を判定する必要がある。したがって、過呼吸後の再増高現象はもやもや病に特徴的であり、この組合せが正しい。なお、各突発波の出現する疾患を対応づけて判定する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。re-build up(再増高現象)は過呼吸の終了後に高振幅徐波が再び出現する所見であり、もやもや病に特徴的な脳波所見である。
- ② 多棘徐波複合はミオクロニーてんかんなどに関連する所見であり、側頭葉てんかんと組み合わせるこの選択肢は典型的でないため誤りである。
- ③ 3Hz棘徐波複合は欠神発作(小発作)に特徴的な所見であり、ウェスト症候群と組み合わせるこの選択肢は誤りである。
- ④ ヒプスアリスミアはウェスト症候群(点頭てんかん)に特徴的な所見であり、欠神発作と組み合わせるこの選択肢は誤りである。
- ⑤ 6&14Hz陽性棘波は健常者にもみられる非特異的な所見であり、大発作てんかんと組み合わせるこの選択肢は誤りである。
📋 まとめの表を見る:脳波所見と対応疾患
変異型Creutzfeldt-Jakob病(牛海綿状脳症〈BSE〉関連)ではPSDはみられない点に注意。
第60回 午後26(臨床生理学)
心臓の超音波断面像を別に示す。この断面が得られる探触子の位置は下図のどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB026.fd291f0e3a.jpg

正答: ④
ポイント
本図は心尖部から両心室・両心房を描出する心尖部四腔像である。探触子に近い側に心尖部、遠い側に心房があり、中央に心室中隔と房室弁を認める。体表図では心尖部に相当する④からこの断面を得る。
●①胸骨上窩:大動脈弓など。
●②胸骨右縁:右側からの走査窓。
●③胸骨左縁:傍胸骨長軸像・短軸像など。
●④心尖部:心尖部四腔像・二腔像・長軸像など。
●⑤心窩部:心窩部四腔像・下大静脈など。
選択肢ごとの解説
- ① ①は胸骨上窩の走査窓で、大動脈弓などの観察に用いる。本図の心尖部四腔像の走査位置ではない。
- ② ②は胸骨右縁の走査位置であり、本図のように心尖部側から四腔を見上げる位置ではない。
- ③ ③は胸骨左縁の傍胸骨走査位置で、長軸像や短軸像などを得る。本図の心尖部四腔像とは走査方向が異なる。
- ④ 正しい。④は心尖部の走査位置。本図は心尖部を手前にして左右の心室・心房を描出する心尖部四腔像である。
- ⑤ ⑤は心窩部の走査位置。ここからも四腔を描出できるが、本図の心尖部を手前にした四腔像とは走査窓と向きが異なる。
第60回 午後27(臨床生理学)
心臓超音波検査において流速の評価が肺動脈圧の推定に用いられるのはどれか。
- ①三尖弁逆流
- ②僧帽弁逆流
- ③僧帽弁狭窄
- ④大動脈弁狭窄
- ⑤肺動脈弁逆流
正答: ①三尖弁逆流・⑤肺動脈弁逆流
ポイント
肺動脈圧の推定には三尖弁逆流(TR)と肺動脈弁逆流(PR)のドプラ計測が用いられる。三尖弁逆流の最高流速から簡易ベルヌーイ式で右室-右房間の圧較差を求め、これに推定右房圧を加えて収縮期肺動脈圧を推定する。肺動脈弁逆流の拡張早期・拡張末期流速からは平均および拡張期の肺動脈圧が推定できる。いずれも右心系の逆流血流速度を簡易ベルヌーイ式によって圧較差に変換する原理に基づくため、連続波ドプラで最高流速を正確に捉えることが推定の前提となる。●肺動脈圧推定に用いる逆流=三尖弁逆流(収縮期圧)・肺動脈弁逆流(平均圧・拡張期圧)●左心系の評価に用いる血流=僧帽弁流入波形(左室拡張機能)・大動脈弁狭窄の最高流速(圧較差・弁口面積)●簡易ベルヌーイ式=圧較差=4×(最高流速)^2で表され、右房圧を加えて肺動脈圧を推定する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。三尖弁逆流の最高流速から右室-右房間の圧較差を求め、推定右房圧を加えて収縮期肺動脈圧の推定に用いる。
- ② 僧帽弁逆流は左房・左室間の血流で、左室の収縮機能評価には有用だが、肺動脈圧の推定には直接用いないため該当しない。
- ③ 僧帽弁狭窄は左房から左室への流入血流であり、弁口面積の評価には用いるが肺動脈圧の推定には用いず該当しない。
- ④ 大動脈弁狭窄の最高流速は左室-大動脈間の圧較差や弁口面積の評価に用い、肺動脈圧の推定には用いず該当しない。
- ⑤ 正しい。肺動脈弁逆流の拡張期流速から平均および拡張期の肺動脈圧を推定でき、肺動脈圧の評価に用いられる。
第60回 午後28(臨床生理学)
肋間走査による右上腹部の超音波像を別に示す。この患者において血中で増加している可能性が高いのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB028.09b76afe05.jpg

- ①血小板数
- ②アルブミン
- ③γ-グロブリン
- ④総コレステロール
- ⑤コリンエステラーゼ
正答: ③γ-グロブリン
ポイント
右上腹部の肋間走査で、肝辺縁の鈍化・表面の凹凸・内部エコーの粗雑化や輝度上昇など慢性肝障害(肝硬変)を示す所見がある場合、血中ではγ-グロブリンが増加している可能性が高い。肝硬変では門脈圧亢進に伴う門脈-体循環シャントの形成により、腸管由来抗原が肝のKupffer細胞による処理を経ずに全身循環へ流入し、B細胞が多クローン性に刺激されて免疫グロブリンが産生され、γ-グロブリンが上昇する。●肝硬変で増加するもの=γ-グロブリン(多クローン性)・間接および直接ビリルビン・アンモニア●肝硬変で低下するもの=アルブミン・コリンエステラーゼ・総コレステロール・血小板数(脾機能亢進)・凝固因子●判定の目安=アルブミン低下とγ-グロブリン増加が同時に起こることでA/G比が低下し、蛋白分画ではβ-γブリッジがみられる。
選択肢ごとの解説
- ① 血小板数は脾機能亢進(脾腫)により破壊が進んで肝硬変では低下するため、血中で増加するとはいえず該当しない。
- ② アルブミンは肝での合成能低下により減少し、肝硬変では低下するため、血中で増加するとはいえず該当しない。
- ③ 正しい。肝硬変では門脈-体循環シャントにより多クローン性にγ-グロブリンが産生され、血中で増加している。
- ④ 総コレステロールは肝での合成低下により減少し、肝硬変では低下するため、血中で増加するとはいえず該当しない。
- ⑤ コリンエステラーゼは肝で合成される蛋白で肝障害により低下するため、肝硬変では血中で増加せず該当しない。
第60回 午後29(臨床化学)
SI単位でないのはどれか。
- ①メートル[m]
- ②アンペア[A]
- ③パーセント[%]
- ④モル[mol]
- ⑤秒[s]
正答: ③パーセント[%]
ポイント
国際単位系(SI)は7つの基本単位、すなわちメートル(m)・キログラム(kg)・秒(s)・アンペア(A)・ケルビン(K)・モル(mol)・カンデラ(cd)と、それらから導かれる組立単位から構成される。これらの基本単位を組み合わせて力や圧力などの組立単位が定義される。パーセント(%)は100分の1を表す無次元の割合にすぎず、物理量の大きさの基準となる単位ではないため、SI単位には含まれない。●SI基本単位=長さ(m)・質量(kg)・時間(s)・電流(A)・温度(K)・物質量(mol)・光度(cd)●SI組立単位=力(N)・圧力(Pa)・エネルギー(J)・周波数(Hz)などの導出単位●SIでない表現=%・ppm・pH・吸光度・比重など、比や無次元量を示す慣用的な表現が含まれ、これらは大きさの基準となる単位をもたない点で基本単位と区別される。
選択肢ごとの解説
- ① メートル[m]は長さを表すSI基本単位であり、SI単位に含まれるため、SI単位でないものを問う本問には該当しない。
- ② アンペア[A]は電流を表すSI基本単位であり、SI単位に含まれるため、SI単位でないものを問う本問には該当しない。
- ③ 誤り。パーセント[%]は100分の1を表す無次元の割合にすぎず、大きさの基準となる単位ではないためSI単位ではない。
- ④ モル[mol]は物質量を表すSI基本単位であり、SI単位に含まれるため、SI単位でないものを問う本問には該当しない。
- ⑤ 秒[s]は時間を表すSI基本単位であり、SI単位に含まれるため、SI単位でないものを問う本問には該当しない。
第60回 午後30(臨床化学)
NADH溶液の光路長1 cm、測定波長340 nmにおける吸光度は0.158であった。このNADH溶液の濃度に最も近いのはどれか。ただし、340 nmにおけるNADHのモル吸光係数は6.3×10³ l・mol⁻¹・cm⁻¹とする。
- ①5μmol/l
- ②25μmol/l
- ③5 mmol/l
- ④25 mmol/l
- ⑤5 mol/l
正答: ②25μmol/l
ポイント
Lambert-Beerの法則より吸光度A=ε×c×l(ε:モル吸光係数、c:濃度、l:光路長)で表され、これを濃度について解くとc=A/(ε×l)となる。本問ではA=0.158、ε=6.3×10³ l・mol⁻¹・cm⁻¹、l=1 cmなので、c=0.158/(6.3×10³×1)=2.5×10⁻⁵ mol/l=25μmol/lとなり、最も近いのは25μmol/lである。●Lambert-Beerの法則=A=εcl(吸光度は濃度と光路長に比例する)●NAD(P)Hの340 nm測定=補酵素の酸化還元に伴う吸光度変化を追う多くの酵素活性測定の基礎となる●単位換算=1 mol/l=10³ mmol/l=10⁶μmol/lの関係を用い、計算結果2.5×10⁻⁵ mol/lは25μmol/lに相当する。
選択肢ごとの解説
- ① 5μmol/lでは吸光度がA=6.3×10³×5×10⁻⁶=0.0315となり、測定値0.158とは一致しないため該当しない。
- ② 正しい。c=0.158/(6.3×10³×1)=2.5×10⁻⁵ mol/l=25μmol/lとなり、測定値の吸光度と一致する。
- ③ 5 mmol/lでは吸光度が約32と著しく高い値になり、測定値0.158とは大きく異なるため該当しない。
- ④ 25 mmol/lでは吸光度が桁違いに大きい値になり、測定値0.158とはまったく一致しないため該当しない。
- ⑤ 5 mol/lは生体試料の濃度として現実的でなく、吸光度の計算値とも一致しないため該当しない。
第60回 午後31(臨床化学)
免疫学的分析法で正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①免疫比濁法では検量線が直線となる。
- ②免疫比ろう法では透過光の強度を測定する。
- ③蛍光免疫測定法には蛍光偏光を原理とするものを含む。
- ④競合法を原理とする酵素免疫測定法では検量線がシグモイド曲線となる。
- ⑤化学発光免疫測定法では4-メチルウンベリフェリルリン酸が利用される。
正答: ③蛍光免疫測定法には蛍光偏光を原理とするものを含む。・④競合法を原理とする酵素免疫測定法では検量線がシグモイド曲線となる。
ポイント
免疫学的分析法は抗原抗体反応を利用して微量物質を測定する。蛍光免疫測定法には蛍光標識の強度を測るものに加え、抗原と結合した蛍光物質の分子回転運動の差を利用する蛍光偏光免疫測定法(FPIA)が含まれる。競合法を原理とする酵素免疫測定法では標識抗原と非標識抗原が限られた抗体を奪い合うため、検量線は濃度上昇とともにシグナルが低下するシグモイド曲線となる。●免疫測定の標識=酵素(EIA)・蛍光(FIA・FPIA)・化学発光(CLIA)・放射性同位元素(RIA)●反応様式=非競合(サンドイッチ)法は検量線が右上がり、競合法は右下がりのシグモイドとなる●測定原理=比濁法(タービジメトリー)は免疫複合体による透過光の減衰(濁度)を、比ろう法(ネフェロメトリー)は免疫複合体による散乱光そのものを測定する点で異なる。
選択肢ごとの解説
- ① 免疫比濁法では抗原量と濁度がプロゾーンを含む曲線関係となり直線とはならないため、検量線が直線とする記述は誤り。
- ② 免疫比ろう法(ネフェロメトリー)は散乱光の強度を測定する方法であり、透過光の強度を測定するとする記述は誤りである。
- ③ 正しい。蛍光免疫測定法には蛍光偏光(FPIA)を原理とするものが含まれ、分子回転運動の差を利用して測定する。
- ④ 正しい。競合法を原理とする酵素免疫測定法では、検量線が右下がりのシグモイド曲線となる。
- ⑤ 4-メチルウンベリフェリルリン酸は蛍光基質であり、化学発光免疫測定法で利用される試薬ではないため記述は誤り。
第60回 午後32(臨床化学)
K⁺濃度がNa⁺濃度より高いのはどれか。
正答: ③細胞内液
ポイント
体液は分布する区画によりイオン組成が大きく異なる。細胞外液(血漿・間質液・脳脊髄液・リンパ液)では陽イオンの主体がNa⁺であり、K⁺は低濃度である。これに対し細胞内液ではK⁺が主要陽イオンであり、Na⁺よりK⁺濃度が高い。この細胞内外のイオンの濃度勾配はNa⁺-K⁺ATPアーゼ(ナトリウムポンプ)がATPを消費して能動的に維持しており、神経や筋の静止膜電位および興奮性の基盤となっている。●細胞外液で多い陽イオン=Na⁺(主要)、陰イオンはCl⁻・HCO₃⁻●細胞内液で多い陽イオン=K⁺・Mg²⁺、陰イオンは蛋白・リン酸●勾配の維持=Na⁺-K⁺ATPアーゼがATPを消費してNa⁺を細胞外へ3個、K⁺を細胞内へ2個能動輸送し、内外の濃度差を保っている。
選択肢ごとの解説
- ① 血漿は細胞外液でありNa⁺が主要陽イオン、K⁺は低濃度であるため、K⁺がNa⁺より高いとはいえず該当しない。
- ② 間質液は細胞外液でありNa⁺が主体、K⁺は低濃度であるため、K⁺がNa⁺より高いとはいえず該当しない。
- ③ 正しい。細胞内液ではK⁺が主要陽イオンであり、Na⁺よりK⁺濃度が高くなっている区画である。
- ④ 脳脊髄液は細胞外液に属しNa⁺が主体、K⁺は低濃度であるため、K⁺がNa⁺より高いとはいえず該当しない。
- ⑤ リンパ液は細胞外液に近い組成でNa⁺が主体、K⁺は低濃度であるため、K⁺がNa⁺より高いとはいえず該当しない。
第60回 午後33(臨床化学)
血中カルシウムで正しいのはどれか。
- ①約50%はイオン型で存在する。
- ②基準範囲は3.6~4.4 mg/dlである。
- ③低アルブミン血症では偽高値を示す。
- ④アルカローシスではイオン型が増加する。
- ⑤副甲状腺ホルモン〈PTH〉の作用で低下する。
正答: ①約50%はイオン型で存在する。
ポイント
血中カルシウムは約50%が生理活性をもつイオン型(遊離型)で存在し、残りは約40%がアルブミンなどとの蛋白結合型、約10%がリン酸・クエン酸との複合体として存在する。総カルシウムの基準範囲は8.5~10.5 mg/dl程度である。イオン型は血液pHの影響を受け、アシドーシスでは蛋白結合が減ってイオン型が増加し、アルカローシスでは蛋白結合が増えてイオン型が減少する。●血中カルシウムの存在形態=イオン型約50%・蛋白結合型約40%・複合体型約10%●カルシウム上昇の機序=副甲状腺ホルモン(PTH)・活性型ビタミンDによる骨吸収・腸管吸収・腎再吸収の促進●補正の必要=低アルブミン血症では蛋白結合分が減って総カルシウムが偽低値となるため、補正カルシウム=実測値+0.8×(4−アルブミン値)などの補正式で評価する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。血中カルシウムは約50%が生理活性をもつイオン型(遊離型)として存在し、残りは結合型や複合体型である。
- ② 基準範囲は総カルシウムで8.5~10.5 mg/dl程度であり、3.6~4.4 mg/dlは無機リンに近い値であるため誤りである。
- ③ 低アルブミン血症では蛋白結合分が減って総カルシウムは偽低値を示すため、偽高値を示すとする記述は誤りである。
- ④ アルカローシスでは蛋白へのカルシウム結合が増えてイオン型は減少するため、イオン型が増加するとする記述は誤り。
- ⑤ PTHは骨吸収・腎再吸収・活性型ビタミンD産生を促し血中カルシウムを上昇させるため、低下させるとする記述は誤り。
📋 まとめの表を見る:血中カルシウム・マグネシウムの存在様式と測定への影響
検体が空気に触れてCO₂が失われるとpHが上昇し、蛋白結合が増えてイオン化Caは低下する。一方、密閉した全血を放置すると解糖による乳酸産生でpHが低下し、イオン化Caが上昇しうる。保存による変化は空気との接触などの条件に左右される。細胞外液中のマグネシウムは体内総量の約1%のみで、大部分は細胞内に存在する。
第60回 午後34(臨床化学)
HDLの主要アポ蛋白はどれか。
- ①アポA1
- ②アポB100
- ③アポC2
- ④アポC3
- ⑤アポE
正答: ①アポA1
ポイント
アポリポ蛋白はリポ蛋白の構造維持・酵素活性化・受容体認識を担う蛋白である。HDLの主要アポ蛋白はアポA1で、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)を活性化してコレステロールのエステル化を促進し、末梢からの逆転送に関与する。各リポ蛋白には特徴的なアポ蛋白が存在し、その種類によって酵素活性化や受容体認識などの機能と代謝経路が決まる。●HDLの主要アポ蛋白=アポA1(LCAT活性化)・アポA2●LDL/VLDLの主要アポ蛋白=アポB100(LDL受容体に認識される)●カイロミクロンの主要アポ蛋白=アポB48●補助的アポ蛋白=アポC2(リポ蛋白リパーゼを活性化)・アポC3(リポ蛋白リパーゼを阻害)・アポE(レムナント受容体やLDL受容体に認識され、レムナントの取り込みに関与する)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。アポA1はHDLの主要アポ蛋白であり、LCATを活性化してコレステロールのエステル化を促進する。
- ② アポB100はLDLおよびVLDLの主要アポ蛋白でLDL受容体に認識されるが、HDLの主要アポ蛋白ではないため該当しない。
- ③ アポC2はリポ蛋白リパーゼを活性化する補助的アポ蛋白であり、HDLの主要アポ蛋白ではないため該当しない。
- ④ アポC3はリポ蛋白リパーゼを阻害する補助的アポ蛋白であり、HDLの主要アポ蛋白ではないため該当しない。
- ⑤ アポEはレムナント受容体に認識される補助的アポ蛋白であり、HDLの主要アポ蛋白ではないため該当しない。
📋 まとめの表を見る:主なリポ蛋白の分類(比重・脂質構成・アポ蛋白・蛋白含有量)
電気泳動での移動度は陽極側からHDL(α)>VLDL(preβ)>LDL(β)>原点(カイロミクロン)の順。アポA1はLCATを活性化、アポC2はLPLを活性化、アポC3はLPLを抑制、アポEはLDL受容体・レムナント受容体に認識される。LDL-コレステロールは日内変動が少なく、血清混濁はLDL自体ではなくトリグリセライド(カイロミクロン・VLDL)による。
第60回 午後35(臨床化学)
高コレステロール血症をきたす疾患はどれか。2つ選べ。
- ①Addison病
- ②Cushing症候群
- ③LCAT欠損症
- ④肝硬変
- ⑤ネフローゼ症候群
正答: ②Cushing症候群・⑤ネフローゼ症候群
ポイント
高コレステロール血症はコレステロールの合成・吸収の増加や、異化・排泄の低下によって生じる。Cushing症候群では糖質コルチコイド過剰により脂質代謝が乱れ、コレステロールや中性脂肪が上昇する。ネフローゼ症候群では尿中への蛋白喪失に伴う低アルブミン血症を代償しようとする肝の蛋白・脂質合成の亢進とLDL異化の低下により、血中コレステロールが著明に上昇する。●高コレステロール血症をきたす疾患=Cushing症候群・ネフローゼ症候群・甲状腺機能低下症・閉塞性黄疸・糖尿病●低コレステロールをきたす病態=肝硬変・甲状腺機能亢進症・低栄養・LCAT欠損症●LCAT欠損症=コレステロールのエステル化障害により遊離コレステロールは増えるが、HDLの成熟が障害され血漿総コレステロールはむしろ低下傾向となるため高コレステロール血症はきたさない。
選択肢ごとの解説
- ① Addison病は副腎皮質機能低下症でコレステロールはむしろ低下傾向となり、高コレステロール血症はきたさず該当しない。
- ② 正しい。Cushing症候群は糖質コルチコイド過剰による脂質代謝異常で高コレステロール血症をきたす疾患である。
- ③ LCAT欠損症はコレステロールのエステル化障害で血漿総コレステロールはむしろ低下傾向となるため該当しない。
- ④ 肝硬変は肝のコレステロール合成能低下により低コレステロールをきたし、高コレステロール血症は典型的でないため該当しない。
- ⑤ 正しい。ネフローゼ症候群は肝の脂質合成亢進とLDL異化低下により高コレステロール血症をきたす疾患である。
第60回 午後36(臨床化学)
短期の栄養指標として用いられる血漿蛋白はどれか。
- ①アルブミン
- ②ハプトグロビン
- ③セルロプラスミン
- ④トランスサイレチン
- ⑤α₁-アンチトリプシン
正答: ④トランスサイレチン
ポイント
栄養状態を反映する血漿蛋白は半減期の長短により短期・長期の指標に分けられる。トランスサイレチン(プレアルブミン)は半減期が約2日と短く、短期の栄養状態を鋭敏に反映するrapid turnover protein(RTP)である。アルブミンは半減期が約20日と長いため変動が緩やかで、長期の栄養状態を反映する指標として用いられる。●短期栄養指標(RTP)=トランスサイレチン(半減期約2日)・レチノール結合蛋白(約半日)・トランスフェリン(約7~10日)●長期栄養指標=アルブミン(半減期約20日)●急性相反応蛋白=ハプトグロビン・セルロプラスミン・α₁-アンチトリプシン・CRP(炎症で上昇するため栄養指標には不向きであり、栄養評価とは区別して解釈する必要がある)。
選択肢ごとの解説
- ① アルブミンは半減期が約20日と長く長期の栄養指標として用いられるため、短期の栄養指標としては不向きで該当しない。
- ② ハプトグロビンは急性相反応蛋白で炎症時に上昇するため、短期の栄養指標としては用いられず該当しない。
- ③ セルロプラスミンは急性相反応蛋白で炎症の影響を受けるため、短期の栄養指標としては用いられず該当しない。
- ④ 正しい。トランスサイレチンは半減期約2日のRTPであり、短期の栄養指標として鋭敏に用いられる。
- ⑤ α₁-アンチトリプシンは急性相反応蛋白で炎症時に上昇するため、短期の栄養指標としては用いられず該当しない。
第60回 午後37(臨床化学)
直接ビリルビンが上昇するのはどれか。
- ①新生児黄疸
- ②閉塞性黄疸
- ③溶血性貧血
- ④Gilbert症候群
- ⑤Crigler-Najjar症候群
正答: ②閉塞性黄疸
ポイント
ビリルビンは脾でヘモグロビン由来に生じた間接(非抱合)ビリルビンが肝でグルクロン酸抱合を受けて直接(抱合)ビリルビンとなり、胆汁中へ排泄される。直接ビリルビンが上昇するのは胆道の閉塞や肝内胆汁うっ滞などによる胆汁排泄の障害であり、胆石や腫瘍による閉塞性黄疸が代表的である。●直接ビリルビン優位=閉塞性黄疸(胆石・腫瘍)・体質性のDubin-Johnson症候群やRotor症候群・肝細胞性黄疸の一部●間接ビリルビン優位=溶血性貧血(産生過剰)・新生児黄疸・Gilbert症候群・Crigler-Najjar症候群(抱合障害)●判定=総ビリルビンに占める直接型の割合から黄疸の病態(溶血性・肝細胞性・閉塞性)を推定し、尿中ビリルビンやウロビリノゲンの所見も併せて鑑別する。
選択肢ごとの解説
- ① 新生児黄疸は肝の抱合能未熟による間接ビリルビン優位の黄疸であり、直接ビリルビンは上昇しないため該当しない。
- ② 正しい。閉塞性黄疸では胆汁の排泄障害により、抱合された直接ビリルビンが血中に上昇する。
- ③ 溶血性貧血はビリルビン産生過剰による間接ビリルビン優位の黄疸であり、直接ビリルビンは上昇せず該当しない。
- ④ Gilbert症候群は軽度の抱合障害による間接ビリルビン優位であり、直接ビリルビンは上昇しないため該当しない。
- ⑤ Crigler-Najjar症候群は抱合酵素の障害による間接ビリルビン優位であり、直接ビリルビンは上昇せず該当しない。
第60回 午後38(臨床化学)
LDについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①半減期はLD₁が最も短い。
- ②心筋にはLD₁が最も多く含まれる。
- ③肝細胞にはLD₂が最も多く含まれる。
- ④4つのアイソザイムが知られている。
- ⑤2種類のサブユニットからなる4量体である。
正答: ②心筋にはLD₁が最も多く含まれる。・⑤2種類のサブユニットからなる4量体である。
ポイント
乳酸脱水素酵素(LD/LDH)はH型とM型の2種類のサブユニットが4個集まった4量体で、LD₁(H4)からLD₅(M4)まで5種類のアイソザイムが存在する。組織分布が異なり、心筋・赤血球・腎にはLD₁が多く、肝・骨格筋にはLD₅が多く含まれるため、アイソザイム分画から臓器障害を推定できる。●LDアイソザイム=LD₁(H4)からLD₅(M4)までの5種類、H・Mの2種サブユニットからなる4量体●臓器分布=LD₁優位(心筋・赤血球・腎)とLD₅優位(肝・骨格筋)に分かれる●半減期=LD₁が最も長くLD₅が最も短いため、急性心筋梗塞後にはLD₁がLD₂を上回るflipped patternが発症後やや遅れて出現し、診断の補助となる。●測定=LDは総活性とともにアイソザイム分画を電気泳動で評価する。
選択肢ごとの解説
- ① LDアイソザイムのうち半減期が最も短いのはLD₅であり、LD₁は最も長いため、LD₁が最も短いとする記述は誤りである。
- ② 正しい。心筋にはLD₁が最も多く含まれており、心筋障害ではLD₁の上昇がみられる。
- ③ 肝細胞にはLD₅が最も多く含まれるため、LD₂が最も多いとする記述は誤りであり該当しない。
- ④ LDのアイソザイムはLD₁からLD₅までの5種類が知られているため、4つとする記述は誤りであり該当しない。
- ⑤ 正しい。LDはH型とM型の2種類のサブユニットからなる4量体であり、組み合わせで5種が生じる。
📋 まとめの表を見る:LDアイソザイムの構造・組織分布・安定性
LDはH型・M型の2種類のサブユニットからなる四量体(分子量約134kDa)。健常人血清ではLD2の割合が最も高い。溶血で上昇するのはLD1・LD2。
第60回 午後39(臨床化学)
日本臨床化学会〈JSCC〉の勧告法による酵素活性測定において可視部測定項目はどれか。2つ選べ。
正答: ①ALP・④γ-GT
ポイント
日本臨床化学会(JSCC)勧告法による酵素活性測定では、多くがNADHやNADPHの340 nmにおける吸光度変化を紫外部で測定する。これに対しALPとγ-GTは、合成基質から酵素反応により遊離する発色物質(ALPではp-ニトロフェノール、γ-GTでは5-アミノ-2-ニトロ安息香酸)の吸光を405 nm付近の可視部で測定する点が異なる。●可視部測定(発色基質)=ALP(p-ニトロフェノールの遊離)・γ-GT(5-アミノ-2-ニトロ安息香酸の遊離)・アミラーゼ(標準化対応法はp-ニトロフェノールなど発色物質の遊離を405 nm付近で測定)●紫外部340 nm測定(NAD(P)H共役)=AST・ALT・CK・LD●測定原理=可視部測定は基質から遊離する生成色素の吸光を、紫外部測定はNAD(P)HとNAD(P)⁺の間の補酵素の酸化還元に伴う340 nmの吸光度変化を追跡する点が本質的に異なる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。ALPはp-ニトロフェノールの遊離を可視部で測定する勧告法の項目であり、可視部測定項目に該当する。
- ② ASTはNADHの340 nm吸光度変化を利用する紫外部測定項目であり、可視部測定項目ではないため該当しない。
- ③ CKはNADPHの340 nm吸光度変化を利用する紫外部測定項目であり、可視部測定項目ではないため該当しない。
- ④ 正しい。JSCC勧告法のγ-GTは、基質L-γ-グルタミル-3-カルボキシ-4-ニトロアニリドから遊離する5-アミノ-2-ニトロ安息香酸を可視部で測定する項目であり、可視部測定項目に該当する。
- ⑤ LDはNADHの340 nm吸光度変化を利用する紫外部測定項目であり、可視部測定項目ではないため該当しない。
第60回 午後40(臨床化学)
イタイイタイ病の原因となる金属はどれか。
正答: ⑤カドミウム
ポイント
イタイイタイ病はカドミウムによる慢性中毒で、富山県神通川流域の鉱山排水によって発生した公害病である。体内に蓄積したカドミウムが腎近位尿細管を障害してカルシウム・リンの再吸収が低下し、ビタミンD代謝障害も加わって骨軟化症や骨粗鬆症を生じ、多発骨折と激しい疼痛をきたす。●四大公害病と原因物質=イタイイタイ病(カドミウム)・水俣病および新潟水俣病(有機水銀)・四日市ぜんそく(亜硫酸ガスなど大気汚染)●カドミウム中毒の標的=腎近位尿細管(尿細管性アシドーシス・低分子蛋白尿)と骨(骨軟化症)●検査所見=近位尿細管障害により尿中β₂-ミクログロブリンなど低分子蛋白の増加や尿糖・アミノ酸尿(Fanconi症候群様)がみられるのが特徴である。●発症背景=長期にわたる経口摂取による慢性蓄積が原因となる。
選択肢ごとの解説
- ① 銅は過剰でWilson病様の肝・神経障害をきたすが、イタイイタイ病の原因金属ではないため該当しない。
- ② 亜鉛は欠乏で味覚障害や皮膚炎をきたすが、イタイイタイ病の原因金属ではないため該当しない。
- ③ 水銀(有機水銀)は水俣病の原因で中枢神経障害をきたすが、イタイイタイ病の原因金属ではないため該当しない。
- ④ クロムは六価で発癌性や皮膚・気道障害をきたすが、イタイイタイ病の原因金属ではないため該当しない。
- ⑤ 正しい。イタイイタイ病はカドミウムの慢性中毒による腎障害と骨軟化症を本態とする公害病である。
第60回 午後41(臨床化学)
血漿レニン活性が低値を示すのはどれか。
- ①Addison病
- ②原発性アルドステロン症
- ③腎血管性高血圧症
- ④脱水
- ⑤利尿薬服用
正答: ②原発性アルドステロン症
ポイント
レニンは腎の傍糸球体装置から分泌され、循環血漿量の低下・腎血流の低下・低Na・交感神経刺激によって分泌が増加する。原発性アルドステロン症では副腎腺腫などによるアルドステロンの自律的過剰分泌によりNa貯留と循環血漿量の増加が起こり、ネガティブフィードバックによって傍糸球体装置からのレニン分泌が抑制され、血漿レニン活性は低値となる。●レニン低値=原発性アルドステロン症(アルドステロン高値・低レニン)・Liddle症候群・甘草摂取●レニン高値=腎血管性高血圧・Addison病・脱水・利尿薬・心不全・Bartter症候群●鑑別=血漿アルドステロン濃度をレニン活性で割ったアルドステロン/レニン比(ARR)が高値であれば原発性アルドステロン症を疑い、スクリーニングに用いる。
選択肢ごとの解説
- ① Addison病は副腎皮質機能低下でアルドステロンが低下し、代償的にレニンは高値となるため、低値を示すとはいえず該当しない。
- ② 正しい。原発性アルドステロン症ではアルドステロンの過剰によりレニン分泌が抑制され、血漿レニン活性は低値となる。
- ③ 腎血管性高血圧症は腎血流低下によりレニン分泌が亢進して高値となるため、低値を示すとはいえず該当しない。
- ④ 脱水は循環血漿量の低下によりレニン分泌が亢進して高値となるため、低値を示すとはいえず該当しない。
- ⑤ 利尿薬服用は循環血漿量の低下を介してレニン分泌を亢進させ高値となるため、低値を示すとはいえず該当しない。
第60回 午後42(臨床化学)
Basedow病による甲状腺機能亢進症で上昇するのはどれか。
- ①CK
- ②ALP
- ③TSH
- ④血清クレアチニン
- ⑤LDL-コレステロール
正答: ②ALP
ポイント
Basedow病は甲状腺刺激ホルモン受容体抗体(TRAb)による甲状腺機能亢進症で、甲状腺ホルモンが過剰となり全身の代謝が亢進する。骨代謝回転(骨吸収と骨形成)も亢進するため骨型ALPが増加し、血清ALPが上昇する。甲状腺ホルモンが高値のため、下垂体からのTSH分泌はネガティブフィードバックにより抑制されて低下する。●甲状腺機能亢進症で上昇=ALP(骨代謝亢進)・遊離T4および遊離T3・基礎代謝・血糖●甲状腺機能亢進症で低下=TSH・総コレステロールおよびLDLコレステロール・血清クレアチニン(筋量低下・代謝亢進による)●原因=Basedow病はTRAbがTSH受容体を持続的に刺激することで甲状腺ホルモンが過剰に産生される自己免疫性の機能亢進症であり、びまん性甲状腺腫や眼球突出を伴う。
選択肢ごとの解説
- ① CKは甲状腺機能低下症で上昇しやすく、亢進症ではむしろ低下傾向となるため、上昇するとはいえず該当しない。
- ② 正しい。Basedow病では骨代謝回転の亢進により骨型ALPが上昇するため、血清ALPが上昇する。
- ③ TSHは甲状腺ホルモン高値のネガティブフィードバックにより低下するため、上昇するとする記述は誤りで該当しない。
- ④ 血清クレアチニンは代謝亢進や筋量低下により低下傾向となるため、上昇するとはいえず該当しない。
- ⑤ LDLコレステロールは甲状腺ホルモンによる異化亢進で低下するため、上昇するとはいえず該当しない。
第60回 午後43(臨床化学)
ビタミンについて正しいのはどれか。
- ①ビタミンD3は破骨作用を有する。
- ②ビタミンB₁₂は分子中にMnを含む。
- ③ニコチン酸はNADの構成成分である。
- ④トコフェロールは水溶性ビタミンである。
- ⑤β-カロチンはビタミンEの前駆物質である。
正答: ③ニコチン酸はNADの構成成分である。
ポイント
ニコチン酸(ナイアシン)はニコチンアミドとともに補酵素NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)およびNADPの構成成分であり、生体内の酸化還元反応に広く関与する。欠乏するとペラグラ(皮膚炎・下痢・認知症)を生じる。●脂溶性ビタミン=A・D・E・K(過剰で蓄積に注意)、ビタミンDは腸管Ca吸収を高め骨形成を促す●水溶性ビタミン=B群・C●補酵素となるビタミン=ニコチン酸(NAD/NADP)・リボフラビン(FAD/FMN)・チアミン(TPP)●ビタミンB₁₂=分子中にコバルト(Co)を含むコバラミンであり、Mnを含むものではなく、欠乏すると巨赤芽球性貧血をきたす●β-カロチン=小腸でビタミンA(レチノール)に変換される前駆物質である。
選択肢ごとの解説
- ① ビタミンD3は腸管でのカルシウム吸収を促し骨形成に働くため、破骨作用を主とするとする記述は誤りである。
- ② ビタミンB₁₂は分子中にコバルト(Co)を含む化合物であり、Mn(マンガン)を含むとする記述は誤りである。
- ③ 正しい。ニコチン酸は補酵素NADおよびNADPの構成成分であり、生体内の酸化還元反応に関与する。
- ④ トコフェロール(ビタミンE)は脂溶性ビタミンであり、水溶性ビタミンであるとする記述は誤りである。
- ⑤ β-カロチンはビタミンA(レチノール)の前駆物質であり、ビタミンEの前駆物質であるとする記述は誤りである。
📋 まとめの表を見る:ビタミンの分類・化学名・主な働き
脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は肝・脂肪組織に蓄積しやすく過剰症を起こしうる(例:ビタミンA過剰で脳圧亢進・催奇形性、ビタミンD過剰で高カルシウム血症)。水溶性ビタミン(B群・C)は尿中に排泄されやすく過剰症は起こしにくい。β-カロチンはビタミンA(レチノール)の前駆体〈プロビタミンA〉であり、ビタミンEの前駆体ではない。
📋 まとめの表を見る:水溶性ビタミンの補酵素型と関連酵素
ALP・アミラーゼ・γ-GTはビタミン由来の補酵素を必要としない(ALP・アミラーゼは金属イオンが補助因子)。
第60回 午後44(臨床化学)
放射性同位元素でないのはどれか。
正答: ①¹³C
ポイント
放射性同位元素は不安定な原子核をもち、放射線を放出して崩壊する核種である。¹³Cは炭素の安定同位体であり放射線を出さない非放射性核種で、尿素呼気試験などの検査に用いられる。●安定同位体(非放射性)=¹³C(炭素)・²H(重水素)・¹⁵N(放射線を出さない)●放射性同位元素=³H(トリチウム、β線)・¹²⁵I(γ線、RIA等)・³²P(β線、核酸標識)・²⁰¹Tl(γ線、心筋シンチ)●利用の違い=放射性核種は放出する放射線を利用して標識やシンチグラフィなどの画像診断に、安定同位体は放射線を出さないため尿素呼気試験などのトレーサーや質量分析の対象として用いられる●判定=核種が放射線を放出するか否かが区別の本質である。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。¹³Cは炭素の安定同位体であり放射線を出さない非放射性核種であるため、放射性同位元素には該当しない。
- ② ³H(トリチウム)はβ線を放出する放射性同位元素であり、安定同位体ではないため放射性核種に該当する。
- ③ ¹²⁵Iはγ線を放出する放射性同位元素でRIAなどに用いられるため、放射性核種に該当し本問の答えではない。
- ④ ³²Pはβ線を放出する放射性同位元素で核酸標識などに用いられるため、放射性核種に該当し本問の答えではない。
- ⑤ ²⁰¹Tlはγ線を放出する放射性同位元素で心筋シンチに用いられるため、放射性核種に該当し本問の答えではない。
第60回 午後45(病理組織細胞学)
腺房細胞を有するのはどれか。2つ選べ。
正答: ④膵臓・⑤唾液腺
ポイント
腺房(腺胞)は分泌細胞が球状に集まって中心に小管腔をもつ外分泌腺の構造単位であり、消化酵素や唾液などの分泌物を産生する。膵臓の外分泌部は消化酵素を分泌する腺房細胞からなり、唾液腺も漿液性・粘液性の腺房細胞をもつ。●腺房細胞を有する外分泌腺=膵臓(膵液)・唾液腺(唾液)・涙腺・乳腺●腺房をもたない臓器=肝臓(肝細胞索と類洞構造)・甲状腺(濾胞構造)・胸腺(リンパ上皮性器官)●外分泌の経路=腺房で産生された分泌物が介在部や導管を経て管腔へ排出されるという構造をとる●内分泌腺との違い=甲状腺の濾胞や膵Langerhans島は導管をもたず血中へ分泌する点が腺房をもつ外分泌腺と異なる。
選択肢ごとの解説
- ① 肝臓は肝細胞索と類洞からなる構造で腺房細胞をもたず、典型的な外分泌腺房構造を欠くため該当しない。
- ② 胸腺はリンパ球の成熟を担うリンパ上皮性器官であり、腺房細胞をもたないため該当しない。
- ③ 甲状腺はコロイドを蓄える濾胞からなる内分泌腺であり、外分泌の腺房細胞をもたないため該当しない。
- ④ 正しい。膵臓の外分泌部は消化酵素を分泌する腺房細胞をもち、腺房構造を有する臓器である。
- ⑤ 正しい。唾液腺は漿液性・粘液性の腺房細胞をもち、唾液を分泌する腺房構造を有する臓器である。
第60回 午後46(病理組織細胞学)
細胞の電子顕微鏡写真を別に示す。矢印で示すのはどれか。ただし、枠内は矢印の構造物を拡大している。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB046.80e8a7d0b9.jpg

- ①粗面小胞体
- ②グリコーゲン
- ③ゴルジ〈Golgi〉装置
- ④ライソゾーム
- ⑤ミトコンドリア
正答: ⑤ミトコンドリア
ポイント
電子顕微鏡写真で枠内に拡大される構造が二重膜と内部のクリステ(内膜のひだ)を示す場合、それはミトコンドリアである。ミトコンドリアは外膜・内膜の二重膜構造をもち、内膜が陥入してクリステを形成し、そこで電子伝達系によるATP産生(酸化的リン酸化)を行う。●ミトコンドリアの特徴=二重膜・クリステ・独自のDNA・ATP産生の場●他の細胞小器官=粗面小胞体(リボソーム付着の膜系で蛋白合成)・ゴルジ装置(扁平嚢の積層で糖鎖修飾と選別)・ライソゾーム(加水分解酵素を含む単膜小胞)●非膜性構造=グリコーゲンは膜をもたず電子密度の高い顆粒(βグリコーゲン粒子)として観察される●判定の要点=二重膜と内部のクリステの存在がミトコンドリアを他の小器官から見分ける決め手となる。
選択肢ごとの解説
- ① 粗面小胞体はリボソームが付着した膜系で蛋白合成を行う構造であり、二重膜とクリステを示す本所見とは異なる。
- ② グリコーゲンは電子密度の高い顆粒として観察される貯蔵多糖であり、二重膜とクリステを示す本所見とは異なる。
- ③ ゴルジ装置は扁平な膜嚢が積層した構造で糖鎖修飾や選別を行い、二重膜とクリステを示す本所見とは異なる。
- ④ ライソゾームは加水分解酵素を含む単膜の小胞であり、二重膜とクリステをもつ本所見とは構造が異なるため該当しない。
- ⑤ 正しい。二重膜と内部のクリステを示す本構造はミトコンドリアであり、酸化的リン酸化によるATP産生の場である。
第60回 午後47(病理組織細胞学)
胃組織のH-E染色標本を別に示す。矢印で示す部分にみられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB047.4ead9d8932.jpg

正答: ③化生
ポイント
胃のH-E染色で、本来の胃固有上皮(胃底腺・幽門腺)が杯細胞や吸収上皮を伴う腸型上皮に置き換わっている所見は腸上皮化生である。化生とは分化した細胞が別系統の分化した細胞へ可逆的に置換される適応反応であり、慢性炎症(慢性胃炎・Helicobacter pylori感染)が背景となる。●化生の例=胃の腸上皮化生・気道の扁平上皮化生(喫煙)・食道のBarrett化生(円柱上皮化)●区別すべき病変=過形成(細胞数の増加)・肥大(細胞容積の増加)・変性(細胞内物質の異常蓄積)・アポトーシス(プログラムされた細胞死)●臨床的意義=腸上皮化生は慢性萎縮性胃炎に伴って生じ、胃癌発生のリスクとなる前癌状態を背景とすることがあるため、組織学的な評価が重要である。
選択肢ごとの解説
- ① アポトーシスはプログラムされた個々の細胞死であり、上皮が腸型へ置換される本所見とは性質が異なるため該当しない。
- ② 過形成は細胞数の増加による組織量の増大であり、上皮の系統が置換される本所見とは性質が異なるため該当しない。
- ③ 正しい。胃固有上皮が杯細胞を伴う腸型上皮に置換される本所見は腸上皮化生である。
- ④ 変性は細胞内への異常物質の蓄積や機能低下を指し、上皮の系統が置換される本所見とは性質が異なるため該当しない。
- ⑤ 肥大は個々の細胞容積の増大による組織の増大であり、上皮の系統が置換される本所見とは性質が異なるため該当しない。
📋 まとめの表を見る:化生の分類と好発部位
第60回 午後48(病理組織細胞学)
自己免疫疾患でないのはどれか。
- ①糖原病
- ②橋本病
- ③皮膚筋炎
- ④関節リウマチ
- ⑤重症筋無力症
正答: ①糖原病
ポイント
自己免疫疾患は自己抗原に対する免疫応答(自己抗体や自己反応性T細胞)によって自己の組織が傷害される疾患群である。糖原病は酵素欠損によりグリコーゲンの代謝が障害される先天性代謝異常症であり、免疫機序によらないため自己免疫疾患ではない。●臓器特異的自己免疫疾患=橋本病・Basedow病・重症筋無力症・1型糖尿病・悪性貧血●全身性自己免疫疾患=関節リウマチ・皮膚筋炎・全身性エリテマトーデス・強皮症・Sjögren症候群●糖原病=グルコース-6-ホスファターゼなど糖代謝酵素の欠損による先天代謝異常(von Gierke病など)であり、肝や筋にグリコーゲンが蓄積するもので免疫機序によらない疾患である。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。糖原病は酵素欠損による先天性代謝異常症であり、免疫機序によらないため自己免疫疾患ではない。
- ② 橋本病は甲状腺に対する自己抗体による臓器特異的自己免疫疾患であり、自己免疫疾患に含まれるため該当しない。
- ③ 皮膚筋炎は筋や皮膚を傷害する全身性の自己免疫疾患(膠原病)であり、自己免疫疾患に含まれるため該当しない。
- ④ 関節リウマチは関節滑膜を傷害する全身性の自己免疫疾患であり、自己免疫疾患に含まれるため該当しない。
- ⑤ 重症筋無力症はアセチルコリン受容体抗体による自己免疫疾患であり、自己免疫疾患に含まれるため該当しない。
📋 まとめの表を見る:臓器特異的自己抗体と自己免疫疾患
サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉は甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己抗体の標的とはならない。
第60回 午後49(病理組織細胞学)
悪性腫瘍はどれか。
正答: ②膠芽腫
ポイント
悪性腫瘍は浸潤・転移を示して増殖が制御されない腫瘍であり、上皮性は癌腫、非上皮性は肉腫、神経系では膠芽腫のように悪性のものがある。膠芽腫(膠芽細胞腫)は神経膠細胞由来の最も悪性度の高い脳腫瘍(WHOグレード4)であり、予後不良である。●良性腫瘍(語尾が-腫で限局・非浸潤)=血管腫・線維腫・神経鞘腫・平滑筋腫●悪性腫瘍=癌腫(上皮性)・肉腫(非上皮性)・膠芽腫(神経膠系)・白血病●命名の原則=由来組織に良性は『腫』、悪性の非上皮性は『肉腫』を付すのが基本だが、膠芽腫・黒色腫・白血病など慣用名で悪性を示すものもあるため名称だけで良悪を判断しない●悪性の特徴=浸潤・転移・異型・無秩序な増殖を示す。
選択肢ごとの解説
- ① 血管腫は血管内皮由来の良性腫瘍であり、浸潤・転移を示さないため悪性腫瘍には該当しない。
- ② 正しい。膠芽腫は神経膠細胞由来の悪性度の高い脳腫瘍であり、浸潤性増殖を示す悪性腫瘍に該当する。
- ③ 線維腫は線維芽細胞由来の良性腫瘍であり、浸潤・転移を示さないため悪性腫瘍には該当しない。
- ④ 神経鞘腫はSchwann細胞由来の良性腫瘍であり、被膜を有し浸潤を示さないため悪性腫瘍には該当しない。
- ⑤ 平滑筋腫は平滑筋由来の良性腫瘍であり、浸潤・転移を示さないため悪性腫瘍には該当しない。
第60回 午後50(病理組織細胞学)
H-E染色標本を別に示す。診断として正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB050.321642aac4.jpg

正答: ④肺結核
ポイント
H-E染色標本で乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫とLanghans型巨細胞が観察される場合、診断は肺結核である。結核は抗酸菌(Mycobacterium tuberculosis)感染による慢性肉芽腫性炎であり、中心の乾酪壊死を取り囲む類上皮細胞と多核巨細胞からなる結節を形成する。●結核の組織像=乾酪壊死・類上皮細胞肉芽腫・Langhans型巨細胞であり、Ziehl-Neelsen染色で抗酸菌が陽性となる●区別すべき肺病変=肺炎(肺胞腔内の滲出性炎)・肺癌(異型上皮の浸潤性増殖)・肺気腫(肺胞壁破壊と含気増加)・肺うっ血(肺胞毛細血管の血液貯留と心不全細胞)●確認=抗酸菌染色や培養で診断する。
選択肢ごとの解説
- ① 肺炎は肺胞腔内への好中球や滲出液による滲出性炎が主体であり、乾酪壊死を伴う肉芽腫を示す本所見とは異なる。
- ② 肺癌は異型上皮細胞の浸潤性増殖を示す像であり、乾酪壊死と類上皮細胞肉芽腫を示す本所見とは異なるため該当しない。
- ③ 肺気腫は肺胞壁の破壊と含気腔の拡大を示す像であり、肉芽腫性炎を示す本所見とは異なるため該当しない。
- ④ 正しい。乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫とLanghans型巨細胞を示す本所見は肺結核である。
- ⑤ 肺うっ血は肺胞毛細血管の拡張と心不全細胞の出現を示す像であり、肉芽腫性炎を示す本所見とは異なるため該当しない。
📋 まとめの表を見る:肉芽腫性疾患(特異性炎)のまとめ
肉芽腫を形成しない炎症の例=慢性膵炎・化膿性虫垂炎・ウイルス性肝炎・線維素性胸膜炎・潰瘍性大腸炎・偽膜性腸炎・アメーバ大腸炎。放線菌症では菌塊(硫黄顆粒)を伴う化膿性肉芽腫性炎を生じる。類上皮細胞は病原体等を消化できない活性化マクロファージが紡錘形に変化したもの。