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第60回(2014) 臨床検査技師国家試験 午後51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第60回 午後51(病理組織細胞学)
副腎皮質から分泌されるのはどれか。2つ選べ。
①アルドステロン ②オキシトシン ③ガストリン ④カルシトニン ⑤コルチゾール
正答: ①アルドステロン・⑤コルチゾール
ポイント 副腎皮質は外側から球状帯・束状帯・網状帯の3層からなり、それぞれ異なるステロイドホルモンを分泌する。球状帯は電解質コルチコイドであるアルドステロンを分泌し、レニン・アンジオテンシン系の調節を受けてナトリウム再吸収とカリウム排泄を促す。束状帯は糖質コルチコイドであるコルチゾールを分泌し、下垂体のACTHの支配を受けて糖新生・抗炎症・免疫抑制に働く。網状帯は副腎アンドロゲン(DHEA)を分泌する。したがって副腎皮質の産物はアルドステロンとコルチゾールである。●副腎皮質ホルモン=アルドステロン(球状帯)・コルチゾール(束状帯)・副腎アンドロゲン(網状帯)。●副腎髄質ホルモン=アドレナリン・ノルアドレナリンなどのカテコールアミン。●下垂体後葉ホルモン=オキシトシン・バソプレシン。●その他=消化管のガストリン、甲状腺C細胞のカルシトニン。
選択肢ごとの解説
① 正しい。アルドステロンは副腎皮質球状帯から分泌される電解質コルチコイドで、腎遠位尿細管でのナトリウム再吸収とカリウム排泄を促進する。 ② オキシトシンは視床下部で産生され下垂体後葉から分泌されるホルモンで、子宮平滑筋の収縮や射乳を促し、副腎皮質の産物ではない。 ③ ガストリンは胃幽門部のG細胞から分泌される消化管ホルモンで、胃酸分泌や胃運動を促進する作用をもち、副腎とは無関係である。 ④ カルシトニンは甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)から分泌されるホルモンで、破骨細胞を抑制し血中カルシウム濃度を低下させる。 ⑤ 正しい。コルチゾールは副腎皮質束状帯から分泌される糖質コルチコイドで、糖新生の促進や抗炎症・免疫抑制作用をもつ代表的ホルモンである。
第60回 午後52(病理組織細胞学)
酢酸を含む固定液はどれか。
①オルト液 ②ブアン〈Bouin〉液 ③ヘリー〈Helly〉液 ④ミュラー〈Müller〉液 ⑤緩衝ホルマリン
正答: ②ブアン〈Bouin〉液
ポイント ブアン液はピクリン酸・ホルマリン・氷酢酸を混合した固定液で、酢酸が組織の収縮を補正しつつ核酸や核小体を良好に保つため、生検組織や精巣・内分泌組織の固定に用いられる。酢酸は単独では蛋白を固定しないが、ピクリン酸やホルマリンによる組織収縮を打ち消し核構造を明瞭に保つ目的で配合される点が特徴で、後染色のコントラストを高める。●酢酸を含む固定液=ブアン液・カルノア液・ツェンカー液など。ツェンカー液の酢酸をホルマリンに置き換えたものがツェンカー氏ホルマリン〈ヘリー液〉で、こちらは酢酸を含まない。●重クロム酸を含む固定液=ヘリー液・ミュラー液・オルト液で、クロム親和性組織やミトコンドリアの固定に用いる。●中性緩衝ホルマリン=最も汎用される固定液で酢酸を含まず、長期保存や免疫染色に適する。●固定の目的=蛋白の凝固により自己融解と腐敗を防ぎ、組織の本来の構造を保持して以後の染色を可能にすることにある。各固定液は目的とする組織成分に応じて使い分ける。
選択肢ごとの解説
① オルト液は重クロム酸カリウムとホルマリンを主体とする固定液であり、酢酸は含まずクロム親和性組織の固定に用いられる。 ② 正しい。ブアン液はピクリン酸・ホルマリン・氷酢酸からなる固定液であり、酢酸を含み核構造を明瞭に保つ点が特徴である。 ③ ヘリー液は重クロム酸カリウムと昇汞を基剤とし、使用直前にホルマリンを加える固定液であり、酢酸は含まない。 ④ ミュラー液は重クロム酸カリウムと硫酸ナトリウムの水溶液からなる固定液であり、酢酸を含まずクロム親和性の固定に用いる。 ⑤ 緩衝ホルマリンはホルムアルデヒドをリン酸緩衝液で中性に調整した汎用固定液であり、酢酸を含まない固定液である。
第60回 午後53(病理組織細胞学)
凍結切片標本作製法について正しいのはどれか。
①凍結前の検体は生理食塩水に浸漬しておく。 ②試料はパラフィンに包埋する。 ③凍結時は急速に冷却する。 ④薄切は4 ℃で行う。 ⑤免疫組織化学用の切片は温風で乾燥させる。
正答: ③凍結時は急速に冷却する。
ポイント 凍結切片は固定・パラフィン包埋を経ず、組織を急速凍結して薄切する手法で、術中迅速診断や脂肪・酵素・易変性抗原の検出に用いられる。最大の注意点は氷晶形成による組織破壊を防ぐことで、液体窒素やイソペンタンを用いて急速に冷却し氷晶を微細化する必要がある。クリオスタット内で約マイナス20度前後に保って薄切し、切片はスライドへ貼付して速やかに乾燥・固定する。●急速凍結の利点=氷晶を微細化して組織構築を保持できる。●凍結切片の主な用途=術中迅速診断・脂肪染色・酵素組織化学・失活しやすい抗原の免疫組織化学。●パラフィン切片との違い=固定・包埋・脱水を要さず短時間で標本化できるが、形態の保持はパラフィン切片に劣る。●術中迅速診断=病変の良悪性や切除断端の評価を手術中に行うため、検体採取から短時間で結果を返す必要がある。
選択肢ごとの解説
① 生理食塩水に浸漬すると組織が水分を吸って氷晶が大きくなり構築が壊れるため、浸漬せず速やかに凍結することが望ましい。 ② 凍結切片ではパラフィン包埋は行わず、OCTコンパウンドなどの包埋剤に埋めて凍結固定したうえで薄切する手法である。 ③ 正しい。氷晶の形成を抑えて組織構築を保持するため、試料は液体窒素やイソペンタンで急速に冷却して凍結する。 ④ 薄切はクリオスタット内の約マイナス20度前後の低温で行い、4度では組織が軟化して連続切片を得られないため誤りである。 ⑤ 温風乾燥は抗原を失活させるおそれがあるため、免疫組織化学用の切片は冷風または室温で乾燥させるのが望ましい。
第60回 午後54(病理組織細胞学)
マイヤー〈Mayer〉のhematoxylin液の調製に用いないのはどれか。
①グリセリン ②結晶クエン酸 ③抱水クロラール ④カリウムミョウバン ⑤ヨウ素酸ナトリウム
正答: ①グリセリン
ポイント マイヤーのヘマトキシリン液は、ヘマトキシリン・ヨウ素酸ナトリウム(酸化剤)・カリウムミョウバン(媒染剤)・クエン酸(pH調整)・抱水クロラール(防腐と安定化)を水溶液中で調製する進行性核染色液である。媒染剤の金属塩と、ヘマトキシリンの酸化体であるヘマテインが色素レーキを形成して核のクロマチンを青染する。グリセリンは封入剤や保存液に用いられるが、本液の調製には用いない。●媒染剤=カリウムミョウバン・硫酸アルミニウムなどの金属塩。●酸化剤=ヨウ素酸ナトリウム・酸化第二水銀・過マンガン酸カリウムで、ヘマトキシリンをヘマテインへ酸化する。●進行性染色=分別を要さず染色時間で濃度を調節する点が、過染後に塩酸アルコールで分別する退行性染色(マイヤーやカラッチ以外のヘマトキシリンなど)と異なる。媒染剤を含む本液は核を選択的かつ安定に青染できる。
選択肢ごとの解説
① 誤り。グリセリンは封入剤や保存液などに用いられる成分であり、マイヤーのヘマトキシリン液の調製には用いない。 ② 結晶クエン酸は染色液のpHを酸性側に調整して色素レーキの形成と進行性の核染色を安定させるために加えられる。 ③ 抱水クロラールは染色液の防腐と長期保存時の安定化を目的として加えられる成分であり、調製に用いられる。 ④ カリウムミョウバンは媒染剤として働き、ヘマテインと核のクロマチンを結合させて青染を可能にする成分である。 ⑤ ヨウ素酸ナトリウムはヘマトキシリンを発色団であるヘマテインへ酸化する酸化剤として配合される成分である。
第60回 午後55(病理組織細胞学)
toluidine blue染色で異染性を示すのはどれか。
①脂肪 ②メラニン ③軟骨基質 ④胆汁色素 ⑤ヘモジデリン
正答: ③軟骨基質
ポイント トルイジンブルーは塩基性色素で、硫酸基やカルボキシル基を多く含む酸性ムコ多糖に結合すると、本来の青色とは異なる赤紫色を呈する異染性(メタクロマジー)を示す。これは色素分子が酸性基に密に重合配列することで吸収波長が変化するために起こる現象であり、軟骨基質・肥満細胞顆粒・粘液などで明瞭に観察される。●異染性を示すもの=軟骨基質・肥満細胞顆粒・粘液・アミロイドなど酸性ムコ多糖に富む組織。●異染性の原理=塩基性色素が酸性基に重合して吸収スペクトルが変化し、色調が青から赤紫へ変わる。●正染性(オルソクロマジー)=核などは色素本来の青色を呈する状態をいう。●臨床的意義=肥満細胞やムコ多糖に富む腫瘍、アミロイドの検出に異染性が利用され、軟骨基質では明瞭な赤紫色がみられる。色素濃度やpHの条件で異染性の発現は影響を受ける。
選択肢ごとの解説
① 脂肪は中性脂質でありトルイジンブルーで異染性を示さず、染色にはズダンⅢやオイルレッドOなどの脂溶性色素を用いる。 ② メラニンは褐黒色の自然色素でそのまま観察できる物質であり、トルイジンブルーによる異染性は示さない。 ③ 正しい。軟骨基質は酸性ムコ多糖に富むため、トルイジンブルー染色で青色ではなく赤紫色の異染性を示す。 ④ 胆汁色素は黄緑から褐色を呈する色素であり、トルイジンブルーによる異染性は示さない物質である。 ⑤ ヘモジデリンは鉄を含む褐色色素でベルリン青反応により証明され、トルイジンブルーでは異染性を示さない。
第60回 午後56(病理組織細胞学)
腫瘍と免疫組織化学的マーカーの組合せで正しいのはどれか。
①肺癌―エストロゲン受容体〈ER〉 ②乳癌― AFP ③消化管間質腫瘍― c-kit ④大腸癌― CD20 ⑤B細胞リンパ腫― CEA
正答: ③消化管間質腫瘍― c-kit
ポイント 免疫組織化学的マーカーは腫瘍の組織型や由来細胞の同定に用いられる。消化管間質腫瘍(GIST)はカハール介在細胞由来で、KITチロシンキナーゼ受容体をコードするc-kit(CD117)が陽性となるため診断的指標とされ、分子標的治療の適応判断にも用いられる。各腫瘍は特異的マーカーで鑑別される。●上皮性マーカー=サイトケラチン・EMA。●リンパ球マーカー=CD20(B細胞)・CD3(T細胞)。●乳癌=ER・PgR・HER2。●肝細胞癌や卵黄囊腫瘍=AFP、腺癌・大腸癌=CEA。●GIST=c-kit(CD117)・DOG1。●甲状腺=サイログロブリン・TTF-1。●神経内分泌腫瘍=クロモグラニンA・シナプトフィジン。●免疫組織化学の意義=形態のみでは困難な低分化腫瘍や転移巣の原発巣推定に有用で、抗体の組合せで鑑別する。
選択肢ごとの解説
① 肺癌の一般的マーカーはサイトケラチンやTTF-1であり、エストロゲン受容体(ER)は乳癌の評価に用いるマーカーである。 ② AFPは肝細胞癌や卵黄囊腫瘍のマーカーであり、乳癌ではER・PgR・HER2を用いるため本組合せは誤りである。 ③ 正しい。消化管間質腫瘍(GIST)はc-kit(CD117)が陽性となり、診断と分子標的治療の適応判断の指標となる。 ④ CD20はB細胞リンパ腫のマーカーであり、大腸癌では上皮性のサイトケラチンやCEAを用いるため本組合せは誤りである。 ⑤ CEAは腺癌や大腸癌などのマーカーであり、B細胞リンパ腫ではCD20など白血球系抗原を用いるため本組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:腫瘍と免疫組織化学的マーカーの対応
サイトケラチン・EMAは上皮性腫瘍全般に、CD45は造血器腫瘍全般に陽性となる。免疫組織化学は形態のみでは由来判別が難しい低分化腫瘍・転移巣の原発巣推定や、分子標的治療の適応判定に用いる。
第60回 午後57(病理組織細胞学)
細胞診の検体処理方法で集細胞法でないのはどれか。
①圧挫法 ②遠心沈殿法 ③オートスメア法 ④セルブロック法 ⑤ポアフィルター法
正答: ①圧挫法
ポイント 集細胞法は液状検体中に散在する細胞を集めて標本化する手法で、遠心沈殿法・オートスメア法・セルブロック法・ポアフィルター法などが含まれる。一方、圧挫法は組織片や穿刺材料を2枚のスライドガラスで挟んで押しつぶし塗抹する捺印・塗抹系の手技であり、散在細胞を集める集細胞法には該当しない。検体の性状に応じて手法を選択する。●集細胞法=遠心沈殿法・オートスメア法・ポアフィルター法・セルブロック法。●塗抹・捺印法=直接塗抹法・圧挫法・捺印法で、組織や穿刺材料を直接スライドに移して標本化する。●集細胞法の意義=散在細胞を集めて細胞密度を高め、検出率と診断精度を向上させる。●適用検体=体腔液・尿・髄液・洗浄液など細胞が散在する液状検体に用いられ、セルブロック法では免疫染色や特殊染色も併用でき、診断の確実性が高まる。
選択肢ごとの解説
① 誤り。圧挫法は組織や穿刺材料をスライドで挟んで押しつぶして塗抹する手技であり、散在細胞を集める集細胞法ではない。 ② 遠心沈殿法は液状検体を遠心して沈渣中の細胞を集めて塗抹する手法であり、代表的な集細胞法に該当する。 ③ オートスメア法は遠心力により細胞をスライドガラスへ付着・塗抹させる手法であり、集細胞法に該当する。 ④ セルブロック法は遠心沈渣を固めてパラフィン包埋し切片化する手法であり、集細胞法に分類される手技である。 ⑤ ポアフィルター法は微孔フィルターで細胞を捕集して標本とする手法であり、集細胞法に該当する手技である。
第60回 午後58(病理組織細胞学)
喀痰のPapanicolaou染色標本を別に示す。診断として正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB058.99c0001248.jpg
①腺癌 ②小細胞癌 ③大細胞癌 ④扁平上皮癌 ⑤カルチノイド
正答: ④扁平上皮癌
ポイント 喀痰のパパニコロウ染色で扁平上皮癌は、オレンジG好染を示す角化異型細胞、濃染し不整な核、明瞭な細胞境界、紡錘形やオタマジャクシ形(蝌蚪状)の奇怪な細胞を特徴とする。中心型肺癌に多く、しばしば壊死性の汚い背景を伴う。提示標本はこれらの所見を示し扁平上皮癌である。●扁平上皮癌の所見=橙色の角化細胞・濃縮した不整核・蝌蚪状や紡錘形の奇形細胞・明瞭な細胞境界。●鑑別=腺癌は腺房・乳頭状集塊と核小体、小細胞癌は裸核状で木目込み所見、大細胞癌は大型未分化細胞、カルチノイドは均一小型細胞を示す。●発生部位=扁平上皮癌と小細胞癌は中心型(肺門部)に多く喫煙との関連が強い一方、腺癌は末梢に多く非喫煙者にもみられる。喀痰細胞診では中心型の扁平上皮癌や小細胞癌が検出されやすい。
選択肢ごとの解説
① 腺癌は立体的な腺房状・乳頭状の集塊と明瞭な核小体を示す組織型であり、角化や蝌蚪状の奇怪な細胞形態は乏しい。 ② 小細胞癌は細胞質に乏しい裸核状の細胞が連珠状に配列し、核どうしが圧迫し合う木目込み所見を示す組織型である。 ③ 大細胞癌は大型で分化傾向に乏しい未分化細胞からなる組織型であり、明瞭な角化や腺腔形成を欠く特徴をもつ。 ④ 正しい。橙色に角化した異型細胞や紡錘形・蝌蚪状の奇怪な細胞を示しており、扁平上皮癌に合致する所見である。 ⑤ カルチノイドは均一な小型細胞が索状・ロゼット状に配列する神経内分泌腫瘍であり、角化や強い核異型は乏しい。
📋 まとめの表を見る:肺癌の主な組織型(組織像・好発部位・頻度・予後)
扁平上皮癌・小細胞癌は喫煙との関連が強く中枢(肺門部)発生が多い。腺癌は末梢発生で頻度最多。日本の肺癌死亡者数は増加傾向。転移性肺癌は多発性結節を形成することが多い。腺癌の細胞診は粘液産生・腺腔様配列・立体的重積集塊を示す。
第60回 午後59(臨床血液学)
造血について正しいのはどれか。
①赤芽球の脱核は脾臓で行われる。 ②骨髄での造血は出生直後から始まる。 ③赤芽球の成熟にはG-CSFが関与する。 ④髄外造血では末梢血に赤芽球が出現する。 ⑤多染性赤芽球ではヘモグロビン合成は行われない。
正答: ④髄外造血では末梢血に赤芽球が出現する。
ポイント 髄外造血は本来造血を行わない肝臓・脾臓などで造血が起こる病態で、骨髄線維症や重度の溶血性貧血など、骨髄での造血が障害されたり需要が著しく亢進した際にみられる。細胞放出の調節が不十分なため、末梢血に幼若顆粒球や赤芽球(有核赤血球)が出現する白赤芽球症を呈する点が特徴である。●正常の脱核=赤芽球は骨髄内で脱核して網赤血球となり末梢へ放出される。●胎生期造血の場=卵黄囊から肝臓・脾臓を経て骨髄へ移行する。●赤芽球の成熟=エリスロポエチンが分化・増殖を促し、G-CSFは顆粒球系を促すサイトカインである。●白赤芽球症=末梢血に幼若顆粒球と有核赤血球がともに出現する所見で、骨髄癆や髄外造血を反映する。骨髄線維症では涙滴赤血球も伴い、脾腫を呈することが多い。
選択肢ごとの解説
① 赤芽球の脱核は脾臓ではなく骨髄内で行われ、脱核後に網赤血球として末梢血へ放出されるため本記述は誤りである。 ② 骨髄での造血は胎生中期以降に始まり出生時には主体となっており、出生直後に始まるわけではないため誤りである。 ③ 赤芽球の成熟にはエリスロポエチンが関与しており、G-CSFは顆粒球系前駆細胞の分化・増殖を促すサイトカインである。 ④ 正しい。髄外造血では細胞放出の調節が不十分なため、末梢血に赤芽球(有核赤血球)が出現する所見がみられる。 ⑤ 多染性赤芽球はヘモグロビン合成が活発に行われている成熟段階の細胞であり、合成が止まっているわけではない。
第60回 午後60(臨床血液学)
Brecher-Cronkite法による血小板数算定に用いるのはどれか。2つ選べ。
①位相差顕微鏡 ②ミラーの接眼板 ③スライドガラス ④ニューメチレン青 ⑤シュウ酸アンモニウム
正答: ①位相差顕微鏡・⑤シュウ酸アンモニウム
ポイント ブレッカー・クロンカイト法は血小板数の視算法で、1%シュウ酸アンモニウム溶液を希釈液として用いる。この液は赤血球を溶血させ血小板のみを残すため計数を容易にする。無染色で透明な血小板を観察するには位相差顕微鏡を用いて屈折差を強調し、計算盤上で一定区画を算定して血小板数を求める。●希釈・溶血液=1%シュウ酸アンモニウム(赤血球を溶血、血小板を保持)。●観察機器=位相差顕微鏡(無染色の血小板を可視化)と血球計算盤。●他法との違い=普通光学顕微鏡では透明な血小板の判別が難しく、染色を要する直接法と区別される。●注意点=採血後の凝集や夾雑物を血小板と誤認しないよう注意が必要で、現在は自動血球計数装置が主流だが視算法は確認や較正、装置の精度管理に用いられる基準的手法である。
選択肢ごとの解説
① 正しい。位相差顕微鏡は無染色で透明な血小板を屈折差により可視化でき、本法における血小板の計数に用いる。 ② ミラーの接眼板は網赤血球数の算定などに用いる方眼であり、本法の血小板計数には用いない器具である。 ③ スライドガラスは血液塗抹標本の作製に用いるものであり、本視算法における血小板の計数には直接用いない。 ④ ニューメチレン青は網赤血球の超生体染色に用いる色素であり、本法の血小板計数では用いない試薬である。 ⑤ 正しい。シュウ酸アンモニウムは赤血球を溶血させて血小板を残す希釈液として、本法の血小板計数に用いる。
第60回 午後61(臨床血液学)
細胞と表面抗原の組合せで誤っているのはどれか。
①B細胞― CD19 ②NK細胞― CD56 ③T細胞― CD3 ④巨核球― CD41 ⑤好中球― CD7
正答: ⑤好中球― CD7
ポイント CD抗原は細胞系統を同定する細胞表面マーカーで、各細胞系統は特異的なCDを発現する。好中球は主にCD13・CD15・CD16・CD11bなどを発現し、CD7はT細胞・NK細胞の早期マーカーである。したがって好中球とCD7の組合せは誤りである。●リンパ球系=CD19・CD20(B細胞)、CD3(T細胞)、CD56(NK細胞)。●骨髄球・単球系=CD13・CD33。●巨核球・血小板系=CD41・CD61。●好中球の代表的マーカー=CD15・CD16・CD11bで、成熟段階に応じて発現が変化する。●臨床応用=フローサイトメトリーによる表面抗原解析は白血病・リンパ腫の細胞系統や分化段階の判定に用いられ、診断と分類に不可欠である。●造血幹細胞=CD34を発現し、移植時の幹細胞数の評価に用いられる。
選択肢ごとの解説
① CD19はB細胞の分化早期から成熟期まで発現する代表的マーカーであり、B細胞との組合せは正しい記述である。 ② CD56はNK細胞を同定する代表的マーカーであり、NK細胞との組合せは正しい記述で異常はない。 ③ CD3はT細胞受容体複合体を構成するT細胞の系統マーカーであり、T細胞との組合せは正しい記述である。 ④ CD41は巨核球・血小板の膜糖蛋白GPⅡbにあたる抗原であり、巨核球との組合せは正しい記述である。 ⑤ 誤り。CD7はT細胞・NK細胞の早期マーカーであり、好中球のマーカーではないため好中球との組合せが誤っている。
📋 まとめの表を見る:主な細胞表面マーカー(CD分類)と発現細胞
第60回 午後62(臨床血液学)
検査項目と器具の組合せで正しいのはどれか。
①血小板粘着能―比色計 ②出血時間―ランセット ③アンチトロンビン測定―ビーズカラム ④毛細血管抵抗試験―パルスオキシメータ ⑤クロスミキシング試験―プラスチック試験管
正答: ②出血時間―ランセット
ポイント 出血時間は皮膚を一定の深さで穿刺し止血までの時間を測る一次止血のスクリーニング検査で、デューク法では耳朶、アイビー法では前腕を用い、穿刺にはランセットまたは専用器具を使用する。血小板の数・機能と毛細血管の状態を反映する検査である。●一次止血の検査=出血時間(ランセット)・血小板数・血小板凝集能。●凝固系検査=PT・APTTで、プラスチックまたはガラス試験管を用いる。●アンチトロンビン=合成発色基質法で測定する。●毛細血管抵抗試験=陰圧法や駆血法(ランペル・レーデ試験)で評価する検査である。●出血時間の意義=血小板数減少や血小板機能異常、フォン・ヴィレブランド病で延長する一次止血のスクリーニング検査で、簡便だが標準化が難しく感度は限定的で、近年は使用頻度が減っている。
選択肢ごとの解説
① 血小板粘着能はガラスビーズカラム法などで評価する検査であり、比色計を主たる器具とはしないため誤りである。 ② 正しい。出血時間は皮膚をランセットで穿刺して止血までの時間を測定する一次止血のスクリーニング検査である。 ③ アンチトロンビン測定は合成発色基質を用いる測定法で行う検査であり、ビーズカラムを用いるものではない。 ④ 毛細血管抵抗試験は陰圧法や駆血法(ランペル・レーデ試験)で評価する検査であり、パルスオキシメータは用いない。 ⑤ クロスミキシング試験は患者血漿と正常血漿を混合してAPTTを測る検査であり、特定の試験管に限定されない。
📋 まとめの表を見る:一次止血・凝固関連検査の測定原理・使用器具
出血時間は簡便だが標準化が難しく感度が限定的なため、近年は使用頻度が減っている。クロスミキシング試験ではガラス試験管による接触活性化(第XII因子)を避けるためプラスチックまたはシリコンコート試験管を用いる。
第60回 午後63(臨床血液学)
末梢血の好酸球増加がみられるのはどれか。2つ選べ。
①百日咳 ②肺吸虫症 ③気管支喘息 ④伝染性単核症 ⑤肺炎球菌性肺炎
正答: ②肺吸虫症・③気管支喘息
ポイント 好酸球は寄生虫感染とⅠ型アレルギーで増加する。好酸球が産生する主要塩基性蛋白などが寄生虫を傷害し、アレルギー疾患ではIL-5により骨髄から末梢血へ動員される。肺吸虫症(寄生虫感染)と気管支喘息(Ⅰ型アレルギー)はいずれも末梢血好酸球増多をきたす代表的疾患である。●好酸球増加=寄生虫感染・気管支喘息・アトピー性皮膚炎・薬剤アレルギー・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症。●好中球増加=細菌感染(肺炎球菌性肺炎など)。●リンパ球増加=百日咳・伝染性単核症などのウイルスや特定細菌の感染。●好酸球の機能=寄生虫の傷害やⅠ型アレルギーの調節に関与し、副腎皮質ステロイドの投与で末梢血から減少する。好酸球の正常値は白血球の数パーセント程度であり、概日リズムで朝に低く夜間に高い。
選択肢ごとの解説
① 百日咳は百日咳菌による感染症で、リンパ球の著明な増加を特徴とする疾患であり、末梢血好酸球は増加しない。 ② 正しい。肺吸虫症は寄生虫感染であり、好酸球が虫体に反応して末梢血好酸球が増加する代表的疾患である。 ③ 正しい。気管支喘息はⅠ型アレルギー疾患であり、IL-5を介して末梢血好酸球が増加する代表的疾患である。 ④ 伝染性単核症はEBウイルス感染で異型リンパ球を伴うリンパ球増加を特徴とし、好酸球の増加は典型的でない。 ⑤ 肺炎球菌性肺炎は細菌感染であり、核左方移動を伴う好中球増加を示し、末梢血好酸球は増加しない疾患である。
📋 まとめの表を見る:疾患・病態と白血球分画の変化パターン
第60回 午後64(臨床血液学)
貧血患者の血液塗抹標本で好中球の核の過分葉がみられた。貧血の原因検索のために行うべき検査はどれか。2つ選べ。
①鉄 ②葉酸 ③フェリチン ④ビタミンB₁₂ ⑤エリスロポエチン
正答: ②葉酸・④ビタミンB₁₂
ポイント 好中球の核過分葉(5分葉以上)は巨赤芽球性貧血を示唆する所見で、原因はDNA合成に必要なビタミンB₁₂または葉酸の欠乏である。両者の欠乏では細胞質の成熟に核の成熟が追いつかず、赤芽球の巨大化と好中球の過分葉を生じる。したがって葉酸とビタミンB₁₂の測定が原因検索に必要となる。●巨赤芽球性貧血の原因=ビタミンB₁₂欠乏(悪性貧血・胃全摘・回腸末端病変)・葉酸欠乏(摂取不足・妊娠・アルコール)。●鉄欠乏性貧血の指標=血清鉄低下・フェリチン低下・TIBC上昇で小球性低色素性を示す。●巨赤芽球性貧血の血液所見=大球性(MCV高値)で、好中球過分葉のほか汎血球減少や無効造血による間接ビリルビン・LD上昇を伴うことがあり、骨髄では巨赤芽球が出現する。
選択肢ごとの解説
① 血清鉄は鉄欠乏性貧血の指標であり、過分葉を示す巨赤芽球性貧血の原因検索には適さない検査項目である。 ② 正しい。葉酸欠乏は巨赤芽球性貧血をきたすため、好中球過分葉の原因検索として葉酸の測定が必要である。 ③ フェリチンは貯蔵鉄を反映し鉄欠乏性貧血の評価に用いる指標であり、過分葉の原因検索には適さない項目である。 ④ 正しい。ビタミンB₁₂欠乏は巨赤芽球性貧血をきたすため、過分葉の原因検索としてその測定が必要である。 ⑤ エリスロポエチンは腎性貧血など産生異常の評価に用いる項目であり、過分葉を示す貧血の原因検索には適さない。
第60回 午後65(臨床血液学)
von Willebrand病の所見で正しいのはどれか。
①血小板数増加 ②Dダイマー上昇 ③プロトロンビン時間延長 ④コラーゲン惹起血小板凝集能低下 ⑤活性化部分トロンボプラスチン時間延長
正答: ⑤活性化部分トロンボプラスチン時間延長
ポイント フォン・ヴィレブランド病はフォン・ヴィレブランド因子(vWF)の量的・質的異常による先天性出血性疾患で、出血性疾患の中で最も頻度が高い。vWFは血小板を血管内皮下のコラーゲンへ粘着させる仲介役であり、同時に第Ⅷ因子の担体として安定化する役割をもつ。vWF低下により第Ⅷ因子も低下するため、内因系を反映するAPTTが延長する。●vWFの機能=血小板粘着の仲介・第Ⅷ因子の安定化。●検査所見=出血時間延長・APTT延長・リストセチン惹起凝集能低下・第Ⅷ因子活性低下、PTは正常で血小板数も通常正常である。●血友病Aとの違い=血友病Aは第Ⅷ因子欠乏でAPTTが延長するが、血小板機能やリストセチン凝集能は正常で出血時間も正常な点が異なり、伴性劣性遺伝を示す。
選択肢ごとの解説
① 血小板数は通常正常であり、vWFの異常により血小板の血管内皮下への粘着機能が障害される疾患である。 ② Dダイマーは安定化フィブリンの分解産物の指標であり、本疾患では上昇しない検査項目で診断に直結しない。 ③ プロトロンビン時間(PT)は外因系の凝固を反映する検査であり、本疾患では正常範囲を示す項目である。 ④ 本疾患ではリストセチン惹起凝集能が低下するが、コラーゲン惹起凝集能は比較的保たれることが多いため誤りである。 ⑤ 正しい。vWF低下に伴い第Ⅷ因子が低下するため、内因系を反映する活性化部分トロンボプラスチン時間が延長する。
第60回 午後66(臨床血液学)
染色体の核型記載の記号で逆位を示すのはどれか。
正答: ③inv
ポイント 染色体核型はISCN(ヒト細胞遺伝学命名規約)に従って記号で表記され、invは逆位(inversion)すなわち染色体の一部が切断され180度反転して再結合した構造異常を示す。逆位にはセントロメアをまたぐ腕間逆位と、またがない腕内逆位がある。●構造異常の記号=del(欠失)・inv(逆位)・t(転座)・dup(重複)・der(派生染色体)・i(同腕染色体)。●部位・領域の記号=cen(セントロメア)・p(短腕)・q(長腕)・ter(末端)・mar(標識染色体)。●数的異常=+や-で染色体の増減を示し、たとえば+21は21トリソミーを表す。●核型記載の例=46,XYは正常男性核型を示し、46,XY,t(9;22)はフィラデルフィア染色体を伴う核型を表す。記号は構造・部位・数の情報を簡潔に表現する規約である。
選択肢ごとの解説
① cenはセントロメア(動原体)を示す部位の記号であり、構造異常である逆位を示す記号ではないため誤りである。 ② delは染色体の一部が失われる欠失(deletion)を示す構造異常の記号であり、逆位を示すものではない。 ③ 正しい。invは染色体の一部が反転して再結合する逆位(inversion)を示す核型記載の記号である。 ④ qは染色体の長腕を示す部位の記号であり、構造異常である逆位を示す記号ではないため誤りである。 ⑤ tは2本の染色体間で部分が入れ替わる転座(translocation)を示す記号であり、逆位を示すものではない。
第60回 午後67(臨床血液学)
骨髄細胞の染色体核型を別に示す。矢印の染色体異常に関与する遺伝子異常はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB067.d445d315e1.jpg
①BCL6/IGH ②BCR/ABL1 ③IGH/BCL2 ④MYC/IGH ⑤PML/RARA
正答: ②BCR/ABL1
ポイント 提示された核型はフィラデルフィア染色体、すなわち9番と22番染色体の相互転座t(9;22)(q34;q11)を示す。これにより22番長腕のBCR遺伝子と9番長腕のABL1遺伝子が融合してBCR/ABL1融合遺伝子を生じ、その産物は恒常的なチロシンキナーゼ活性をもち細胞増殖を促して慢性骨髄性白血病の原因となる。●慢性骨髄性白血病=t(9;22)・BCR/ABL1。●急性前骨髄球性白血病=t(15;17)・PML/RARA。●バーキットリンパ腫=t(8;14)・MYC/IGH。●濾胞性リンパ腫=t(14;18)・IGH/BCL2。●びまん性大細胞型B細胞リンパ腫=BCL6/IGHなど。●臨床的意義=BCR/ABL1はチロシンキナーゼ阻害薬の分子標的であり、検出は診断のみならず治療選択や効果判定にも用いられる。検出にはFISHやRT-PCRも併用される。
選択肢ごとの解説
① BCL6/IGHはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫などにみられる遺伝子異常であり、本核型が示す異常とは異なる。 ② 正しい。t(9;22)によるBCR/ABL1融合遺伝子であり、フィラデルフィア染色体を伴う慢性骨髄性白血病に関与する。 ③ IGH/BCL2はt(14;18)による濾胞性リンパ腫の遺伝子異常であり、本核型が示す異常とは異なるものである。 ④ MYC/IGHはt(8;14)によるバーキットリンパ腫の遺伝子異常であり、本核型が示す異常とは異なるものである。 ⑤ PML/RARAはt(15;17)による急性前骨髄球性白血病の遺伝子異常であり、本核型が示す異常とは異なる。
📋 まとめの表を見る:白血病の染色体異常と融合遺伝子
予後との関連は疾患・遺伝子異常・治療によって異なる(急性骨髄性白血病ではt(8;21)・inv(16)・t(15;17)が予後良好群、t(9;11)のKMT2A::MLLT3は中間群。t(11;14)を伴うマントル細胞リンパ腫やPh陽性急性リンパ性白血病はむしろ予後不良とされる)。CMLではBCR-ABL1が診断・治療標的である。融合遺伝子の表記は「A-B」「A::B」のどちらの過去問表記にも対応する。
第60回 午後68(臨床微生物学)
多剤耐性結核菌と判定する薬剤はどれか。2つ選べ。
①ピラジナミド〈PZA〉 ②エタンブトール〈EB〉 ③リファンピシン〈RFP〉 ④ストレプトマイシン〈SM〉 ⑤イソニコチン酸ヒドラジド〈INH〉
正答: ③リファンピシン〈RFP〉・⑤イソニコチン酸ヒドラジド〈INH〉
ポイント 多剤耐性結核菌(MDR-TB)は、抗結核治療の中心であるリファンピシン(RFP)とイソニアジド(INH)の両剤に耐性を示す結核菌と定義される。この2剤は治療の根幹をなすため、両者への耐性は治療を著しく困難にし、公衆衛生上も重要な問題となる。●多剤耐性(MDR)の定義=RFP+INHの両剤に対する耐性。●超多剤耐性(XDR)=MDRに加えフルオロキノロンと注射用二次薬への耐性。●主な抗結核薬=RFP・INH・EB(エタンブトール)・PZA(ピラジナミド)・SM(ストレプトマイシン)で、多剤併用で耐性出現を抑える。●感受性検査=薬剤感受性検査で耐性パターンを確認して治療薬を選択し、薬剤の単独使用は耐性菌の出現を招くため避ける。
選択肢ごとの解説
① ピラジナミド(PZA)は主要な抗結核薬の一つであるが、多剤耐性結核菌の判定基準となる2剤には含まれない。 ② エタンブトール(EB)は抗結核薬の一つであるが、多剤耐性結核菌の判定基準となる2剤には含まれない薬剤である。 ③ 正しい。リファンピシン(RFP)への耐性は、イソニアジドとともに多剤耐性結核菌の判定基準の一つとなる。 ④ ストレプトマイシン(SM)は注射用の抗結核薬であるが、多剤耐性結核菌の判定基準となる2剤には含まれない。 ⑤ 正しい。イソニアジド(INH)への耐性は、リファンピシンとともに多剤耐性結核菌の判定基準の一つとなる。
第60回 午後69(臨床微生物学)
病原体と感染経路の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
①Hepatitis B virus〈B型肝炎ウイルス〉―空気感染 ②Clostridium tetani ―経口感染 ③Rubella virus〈風疹ウイルス〉―経胎盤感染 ④Staphylococcus aureus ―接触感染 ⑤Chlamydia trachomatis ―飛沫感染
正答: ③Rubella virus〈風疹ウイルス〉―経胎盤感染・④Staphylococcus aureus ―接触感染
ポイント 感染経路は病原体ごとに定まる。風疹ウイルスは妊婦が感染すると経胎盤的に胎児へ移行し、難聴・心奇形・白内障を三主徴とする先天性風疹症候群を起こす(経胎盤感染)。黄色ブドウ球菌は手指や皮膚を介した接触感染で伝播する。●経胎盤(垂直)感染=風疹ウイルス・サイトメガロウイルス・トキソプラズマ・梅毒トレポネーマ。●接触感染=黄色ブドウ球菌・MRSA・腸管出血性大腸菌。●空気(飛沫核)感染=結核菌・麻疹ウイルス・水痘帯状疱疹ウイルス。●経口(糞口)感染=ノロウイルス・赤痢菌など。●飛沫感染=インフルエンザウイルス・百日咳菌・髄膜炎菌など。●感染経路別予防策=経路に応じて手指衛生・マスク・陰圧個室などを使い分け、医療関連感染の防止に役立てる。経路の理解は対策の基礎となる。
選択肢ごとの解説
① B型肝炎ウイルスは血液・体液を介する感染や母子感染で伝播するウイルスであり、空気感染はしないため誤りである。 ② 破傷風菌は土壌中の芽胞が創傷から侵入する経皮(創傷)感染で発症するものであり、経口感染ではないため誤りである。 ③ 正しい。風疹ウイルスは妊婦から胎児へ経胎盤感染し、先天性風疹症候群を起こす経路をとるため組合せは正しい。 ④ 正しい。黄色ブドウ球菌は手指や皮膚の接触を介して伝播する接触感染が主たる感染経路であり組合せは正しい。 ⑤ クラミジア・トラコマチスは性的接触や産道を介する感染で伝播する病原体であり、飛沫感染はしないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:感染経路と主な病原体
ウイルスの「侵入門戸」も基本的にこの感染経路の分類に対応する(例:デングウイルスは蚊媒介で皮膚から、B型肝炎ウイルスは血液から侵入)。
第60回 午後70(臨床微生物学)
腸内細菌科の共通性状はどれか。
①運動性陽性 ②偏性好気性 ③ブドウ糖発酵 ④硝酸塩還元テスト陰性 ⑤オキシダーゼテスト陽性
正答: ③ブドウ糖発酵
ポイント 腸内細菌科は通性嫌気性のグラム陰性桿菌で、大腸菌・サルモネラ・赤痢菌・クレブシエラなどが含まれる。共通性状としてブドウ糖を発酵し、オキシダーゼ陰性で、硝酸塩を亜硝酸塩に還元する性質をもつ点が同定の基本となる。●腸内細菌科の共通性状=ブドウ糖発酵・オキシダーゼ陰性・硝酸塩還元陽性・通性嫌気性・カタラーゼ陽性。●可変な性状=運動性は菌種により異なり、赤痢菌やクレブシエラは非運動性である。●オキシダーゼ陽性のグラム陰性桿菌=ビブリオやシュードモナスで、腸内細菌科との鑑別点となる。●同定の流れ=グラム染色・オキシダーゼ・ブドウ糖発酵能により大別したのち、TSI培地や各種生化学的性状で属・種を同定する。腸内細菌科は臨床材料から高頻度に分離される。
選択肢ごとの解説
① 運動性は菌種により異なり、赤痢菌やクレブシエラは非運動性であるため、腸内細菌科の共通性状とはいえない。 ② 腸内細菌科は酸素の有無で発育できる通性嫌気性であり、偏性好気性ではないため本記述は誤りである。 ③ 正しい。ブドウ糖を発酵することは腸内細菌科に共通する性状であり、菌種同定の基本となる性質である。 ④ 腸内細菌科は硝酸塩還元テストが陽性であり、硝酸塩を亜硝酸塩へ還元するため陰性とするのは誤りである。 ⑤ 腸内細菌科はオキシダーゼテストが陰性であり、陽性とするのは誤りで、他属との重要な鑑別点となる性状である。
📋 まとめの表を見る:グラム陰性桿菌の分類(腸内細菌目・ビブリオ科・パスツレラ科・非発酵菌群)とオキシダーゼ・糖代謝
第60回 午後71(臨床微生物学)
Bacteroides fragilisについて正しいのはどれか。
①20%胆汁培地に発育 ②アミノグリコシドに感受性 ③インドールテスト陽性 ④カタラーゼテスト陰性 ⑤黒色色素産生
正答: ①20%胆汁培地に発育
ポイント バクテロイデス・フラジリスはグラム陰性無芽胞桿菌の偏性嫌気性菌で、腸管内常在菌でありながら腹腔内感染や敗血症の起因菌ともなる。胆汁酸に耐性を示し20%胆汁加培地で発育する点が同定上の重要な特徴であり、アミノグリコシド系には自然耐性を示す。●B. fragilisの性状=20%胆汁発育陽性・カタラーゼ陽性・インドール陰性・アミノグリコシド自然耐性。●黒色色素産生=プレボテラ属やポルフィロモナス属の特徴で本菌にはみられない。●臨床的意義=腹腔内感染症の主要な嫌気性起因菌でβラクタマーゼを産生する。●培養=偏性嫌気性のため嫌気培養を要し、グラム陰性桿菌として観察される。●治療=βラクタマーゼ産生のためペニシリン系単剤は無効で、メトロニダゾールやカルバペネムが用いられる。
選択肢ごとの解説
① 正しい。B. fragilisは胆汁酸に耐性を示し20%胆汁加培地に発育する点が、同定上の重要な特徴である。 ② B. fragilisはアミノグリコシド系に自然耐性を示す菌であり、感受性とするのは誤りである性状である。 ③ B. fragilisはインドールテストが陰性であり、陽性とするのは誤りで、菌の同定上の鑑別点となる性状である。 ④ B. fragilisはカタラーゼ陽性を示す菌であり、陰性とするのは誤りである性状で同定の参考となる。 ⑤ 黒色色素産生はプレボテラ属やポルフィロモナス属の特徴であり、B. fragilisにはみられないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:代表的な偏性嫌気性菌の性状(Clostridium属・Bacteroides fragilis)
第60回 午後72(臨床微生物学)
フサリウム属のラクトフェノールコットンブルー染色を別に示す。矢印で示すのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB072.74c4f53f06.jpg
正答: ③分生子
ポイント フサリウムは糸状菌(カビ)の一種で、ラクトフェノールコットンブルー染色では分生子柄の先に、隔壁を有する三日月形・舟形(カヌー形)の大分生子や、楕円形の小分生子を形成する。図で矢印が示すのは無性胞子である分生子であり、本属同定の特徴的構造である。●糸状菌の構造=菌糸・分生子柄・フィアライド(分生子形成細胞)・分生子。●フサリウムの特徴=隔壁を持つ三日月形(カヌー形)の大分生子を形成する。●アスペルギルスの特徴=分生子柄先端の膨大部である頂囊と、そこから放射状に並ぶ分生子。●フサリウムの臨床的意義=角膜真菌症や免疫不全患者の深在性真菌症の起因菌となり、抗真菌薬への自然耐性を示すことがある。●染色法=ラクトフェノールコットンブルーは菌体構造を青染して同定に用いる。
選択肢ごとの解説
① 菌糸は栄養を吸収して伸長する糸状の基本構造であり、矢印が示す無性胞子である分生子そのものではない。 ② 頂囊はアスペルギルス属の分生子柄先端の膨大部を指す構造であり、フサリウムにみられる特徴的構造ではない。 ③ 正しい。矢印が示すのは無性胞子である分生子であり、フサリウム属の同定に重要な特徴的構造である。 ④ カラットは胞子の放出に関わる構造を指すものであり、本図で矢印が示している分生子そのものではない。 ⑤ フィアライドは分生子を形成するための細胞であり、形成された分生子そのものとは区別される構造である。
第60回 午後73(臨床微生物学)
ウイルスと疾患の組合せで正しいのはどれか。
①EBウイルス―手足口病 ②コクサッキーウイルス―胃腸炎 ③デングウイルス―肺炎 ④ヒトパルボウイルス―伝染性紅斑 ⑤ヒトRSウイルス―脳炎
正答: ④ヒトパルボウイルス―伝染性紅斑
ポイント ヒトパルボウイルスB19は伝染性紅斑(りんご病)の起因ウイルスで、両頬の平手打ち様の紅斑と四肢のレース状紅斑を生じる。赤芽球前駆細胞に感染して赤血球産生を一時的に抑えるため、溶血性疾患患者では無形成発作(赤芽球癆)を、妊婦感染では胎児水腫を起こすことがある。●ヒトパルボウイルスB19=伝染性紅斑・赤芽球癆・胎児水腫。●手足口病=コクサッキーウイルス・エンテロウイルス。●伝染性単核症=EBウイルス。●ヒトRSウイルス=乳幼児の細気管支炎・肺炎。●デングウイルス=デング熱・デング出血熱(蚊が媒介)。●伝染性紅斑の経過=発熱などの先行症状ののち、両頬の紅斑に続き四肢のレース状紅斑が現れる。発疹出現時には感染力はほぼ消失している点が特徴である。
選択肢ごとの解説
① EBウイルスは伝染性単核症やバーキットリンパ腫などの原因ウイルスであり、手足口病の起因ウイルスではない。 ② コクサッキーウイルスは手足口病やヘルパンギーナの原因ウイルスであり、胃腸炎の主たる起因ウイルスではない。 ③ デングウイルスはデング熱やデング出血熱を起こすウイルスであり、肺炎の起因ウイルスとはならないため誤りである。 ④ 正しい。ヒトパルボウイルス(B19)は伝染性紅斑(りんご病)の起因ウイルスであり、本組合せは正しい記述である。 ⑤ ヒトRSウイルスは乳幼児の細気管支炎や肺炎の原因ウイルスであり、脳炎の起因ウイルスとはならないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:主なウイルスと疾患
第60回 午後74(臨床微生物学)
イムノクロマトグラフィによるインフルエンザウイルス検査用材料として適切なのはどれか。
正答: ①鼻咽頭ぬぐい液
ポイント インフルエンザの迅速診断であるイムノクロマトグラフィは、ウイルス抗原が多く存在する上気道由来の検体を用いる。鼻咽頭ぬぐい液は感染初期にウイルス量が多く採取も比較的容易なため、最も適切な検査材料である。●適切な検体=鼻咽頭ぬぐい液・鼻腔ぬぐい液・鼻腔吸引液などの上気道由来材料。●検査の原理=標識抗体を用いた抗原抗体反応による迅速抗原検出で、発症早期のウイルス量が多い時期に感度が高い。●不適な検体=唾液・喀痰・胸水・胃液などはウイルス量や性状の点で適さず、偽陰性の原因となる。●検査の特性=迅速で簡便だが感度は中等度で、発症ごく早期や検体採取が不適切な場合は陰性となり得るため、臨床所見と併せて判断する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。鼻咽頭ぬぐい液は感染初期にウイルス量が多く採取も容易なため、迅速抗原検査の検体として最も適切である。 ② 唾液は含まれるウイルス量が少ないため、インフルエンザ迅速抗原検査の検体としては適さない材料である。 ③ 喀痰は下気道由来で粘稠なため、上気道のウイルス抗原を捉える本検査の検体としては適さない材料である。 ④ 胸水は通常インフルエンザウイルスを含まないため、本迅速抗原検査の検体としては適さない材料である。 ⑤ 胃液はインフルエンザウイルスの検出に適さない検体であり、迅速抗原検査の材料としては用いない。
第60回 午後75(臨床微生物学)
プリオンを構成するのはどれか。
正答: ⑤蛋白
ポイント プリオンは核酸を含まず蛋白質のみからなる感染性因子で、正常型プリオン蛋白(PrPC)が異常型(PrPSc)へ立体構造変化することにより増殖し、周囲の正常型を次々と異常型へ転換していく。これがクロイツフェルト・ヤコブ病やウシ海綿状脳症などの伝達性海綿状脳症を引き起こす原因となる。●代表的なプリオン病=クロイツフェルト・ヤコブ病・ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群・ウシ海綿状脳症。●性質=核酸を持たないため、通常の消毒・加熱・紫外線・放射線に対して強い抵抗性を示す。●不活化=高圧蒸気滅菌の延長や水酸化ナトリウム・次亜塩素酸ナトリウム処理を要する。●病理所見=脳の海綿状変化とプリオン蛋白の沈着がみられ、確定診断に用いられる。
選択肢ごとの解説
① プリオンはDNAを含まず核酸を一切持たない点が、ウイルスや細菌など核酸を持つ他の病原体と根本的に異なる。 ② プリオンはRNAも含まず、核酸を全く持たない蛋白質性の感染性因子である点が最大の特徴である。 ③ プリオンの本体は脂肪酸ではなく、正常型から異常な立体構造へ変化した蛋白質であり、これが感染性をもつ。 ④ プリオンの構成成分は多糖体ではなく、異常な立体構造をとった蛋白質である点がその本質的な性質である。 ⑤ 正しい。プリオンは核酸を持たず蛋白質のみから構成される感染性因子であり、立体構造変化により増殖する。
第60回 午後76(臨床微生物学)
脳脊髄液のGram染色標本を別に示す。考えられる菌種はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB076.28208b9c90.jpg
①Corynebacterium diphtheriae ②Haemophilus influenzae ③Neisseria meningitidis ④Staphylococcus aureus ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ⑤Streptococcus pneumoniae
ポイント 髄膜炎の脳脊髄液Gram染色で、多数の白血球とともにGram陽性の双球菌(ランセット状で莢膜を伴う対の球菌)がみられる場合、肺炎球菌Streptococcus pneumoniaeが考えられる。莢膜を有するため菌体の周囲が抜けて明るく見え、α溶血・オプトヒン感受性・胆汁溶解性陽性で同定される。成人の細菌性髄膜炎で最も頻度の高い起炎菌であり、肺炎・中耳炎・副鼻腔炎の原因にもなる。脳脊髄液は本来無菌の検体であり、Gram染色での菌体検出と形態観察は起炎菌の推定に直結するため重要である。●Gram陽性球菌の配列による鑑別=肺炎球菌(双球菌)・黄色ブドウ球菌(ブドウ状)・連鎖球菌(連鎖状)。●年齢別の主な髄膜炎起炎菌=新生児はB群溶連菌・大腸菌・リステリア、小児はインフルエンザ菌・髄膜炎菌、成人は肺炎球菌・髄膜炎菌。
選択肢ごとの解説
① ジフテリア菌でGram陽性桿菌。異染小体を有し棍棒状に配列するが、髄膜炎の起炎菌ではない。 ② Gram陰性の小桿菌でチョコレート寒天上で発育。小児髄膜炎の起炎菌だが球菌ではない。 ③ 髄膜炎菌でGram陰性の双球菌。髄膜炎を起こすが染色性が陰性である点が肺炎球菌と異なる。 ④ Gram陽性のブドウ状球菌でカタラーゼ陽性。化膿巣を作るが双球菌の形態ではない。 ⑤ 正しい。肺炎球菌でGram陽性のランセット状双球菌、莢膜を有し成人細菌性髄膜炎の主因。
📋 まとめの表を見る:年齢群別 細菌性髄膜炎の主な起因菌
Streptococcus agalactiaeとListeria monocytogenesはともにCAMPテスト・馬尿酸塩加水分解試験が陽性を示すが、前者はグラム陽性球菌、後者はグラム陽性桿菌である点で鑑別する。
第60回 午後77(臨床微生物学)
腸内細菌科でリジン脱炭酸試験、インドールテスト及び運動性がすべて陽性であった。考えられるのはどれか。
①Escherichia coli ②Klebsiella oxytoca ③Salmonella Typhi ④Serratia marcescens ⑤Shigella sonnei
正答: ①Escherichia coli
ポイント 腸内細菌科でリジン脱炭酸試験陽性、インドール試験陽性、運動性陽性をすべて満たすのは大腸菌Escherichia coliである。大腸菌はトリプトファンをトリプトファナーゼで分解してインドールを産生し、周毛性鞭毛による運動性をもち、リジン脱炭酸酵素も陽性を示す。乳糖を分解し、IMViC試験は(+ + − −)が基本性状で、糞便由来の代表的なグラム陰性桿菌として食中毒や尿路感染の原因にもなる。これら三試験の組合せで腸内細菌科の菌種を効率的に鑑別できる。●インドール陽性=大腸菌・プロテウス・ブルガリス・モルガネラ。●リジン脱炭酸陽性=大腸菌・サルモネラ・クレブシエラ・セラチア。●運動性陰性(非運動性)=赤痢菌・クレブシエラ。これらの差異から本問の条件を満たすのは大腸菌のみとなる。
選択肢ごとの解説
① 正しい。大腸菌はリジン脱炭酸・インドール・運動性がいずれも陽性で乳糖を分解する。 ② クレブシエラの一種でインドール陽性だが運動性陰性であり、本問の条件を満たさない。 ③ チフス菌はリジン脱炭酸陽性・運動性陽性だがインドール陰性で、硫化水素を産生する。 ④ セラチアはリジン脱炭酸陽性だがインドール陰性で、赤色色素プロディジオシンを産生する。 ⑤ 赤痢菌は非運動性でリジン脱炭酸・インドールとも基本的に陰性であり条件に合わない。
📋 まとめの表を見る:腸内細菌科の生化学的性状の鑑別(乳糖分解・硫化水素・リジン脱炭酸・インドール)
サルモネラ・赤痢菌など乳糖非分解菌はTSI培地で高層部のみ黄変し斜面は赤色のまま残るが、大腸菌など乳糖分解菌は斜面・高層とも黄変する。チフス菌(Typhi)はTSI培地でガスをほとんど産生せず硫化水素も少量にとどまる点が他の多くのSalmonella血清型と異なる。尿素分解(ウレアーゼ)陽性の代表はProteus属・Morganella属・Providencia属。
第60回 午後78(臨床微生物学)
Miller & Jones(喀痰の肉眼的品質評価)分類で、膿性部分が2/3以上の痰はどれか。
正答: ⑤P3
ポイント Miller & Jones分類は喀痰の肉眼的品質を膿性部分の占める割合で評価する分類で、粘液性を表すMと膿性を表すPに大別される。P3は膿性部分が喀痰全体の2/3以上を占めるものを指し、最も膿性度の高い区分である。膿性度が高いほど下気道の細菌感染を強く反映しているとみなされ、培養検体としての質が高いと判断される。逆に唾液混入の多いM1は検体として不適切とされ、採取しなおしが望ましい。喀痰検査では適切な検体の選択が結果の信頼性を左右する。●粘液性=M1(唾液や完全な粘液性痰で膿性成分を含まない)・M2(膿性成分がわずかに認められる粘液性痰)。●膿性=P1(膿性部分1/3以下)・P2(膿性部分1/3〜2/3)・P3(膿性部分2/3以上)。●喀痰の適否評価=白血球数と扁平上皮数をみるGeckler分類と併用するとより的確である。
選択肢ごとの解説
① M1は唾液または完全な粘液性の痰で膿性部分を含まず、検査検体としては不適切である。 ② M2は膿性成分がわずかに認められる粘液性痰であり、膿性2/3以上には該当しない。 ③ P1は膿性部分が全体の1/3以下の痰で、膿性度は低い区分にあたる。 ④ P2は膿性部分が全体の1/3〜2/3の痰で、2/3以上の基準には達しない。 ⑤ 正しい。P3は膿性部分が喀痰全体の2/3以上を占める最も膿性度の高い区分である。
📋 まとめの表を見る:喀痰の品質評価:Miller & Jones分類
Geckler分類(Gram染色標本の鏡検所見に基づく)では、視野あたり白血球数が多く扁平上皮細胞数が少ない5群が最も良質で、1〜3群は培養に不適切(6群は経気道吸引痰に限り適切)。白血球数は生体の炎症反応の指標、扁平上皮細胞数は唾液混入(汚染)の指標。
第60回 午後79(臨床免疫学)
HLAで正しいのはどれか。
①第1染色体に遺伝子座がある。 ②白血球以外では発現していない。 ③特定の疾患と相関が認められる。 ④クラスⅠ抗原はCD4陽性T細胞の抗原認識に関わる。 ⑤クラスⅡ抗原はCD8陽性T細胞の抗原認識に関わる。
正答: ③特定の疾患と相関が認められる。
ポイント HLA(ヒト白血球抗原)はヒトの主要組織適合遺伝子複合体で、第6染色体短腕に遺伝子座があり、極めて高い多型性をもつ。特定のHLA型と疾患発症リスクとの相関(HLA-B27と強直性脊椎炎、HLA-DR4と関節リウマチ、HLA-DQと1型糖尿病など)が認められ、臨床的にも移植適合性の面でも重要である。クラスⅠは全有核細胞に発現してCD8陽性T細胞へ細胞内由来抗原を、クラスⅡは抗原提示細胞に発現してCD4陽性T細胞へ細胞外由来抗原を提示する。●クラスⅠ=HLA-A・B・C、全有核細胞に発現、CD8陽性T細胞と結合し細胞内抗原を提示。●クラスⅡ=HLA-DR・DQ・DP、樹状細胞・マクロファージ・B細胞など抗原提示細胞に発現、CD4陽性T細胞と結合する。臓器移植では型の一致が拒絶反応の予防に重要である。
選択肢ごとの解説
① HLA遺伝子座は第6染色体短腕にあり、第1染色体ではない。 ② クラスⅠは全有核細胞に発現しており、白血球以外でも広く発現している。 ③ 正しい。HLA-B27と強直性脊椎炎など特定の疾患との相関が認められる。 ④ クラスⅠ抗原はCD8陽性T細胞の抗原認識に関わり、CD4陽性ではない。 ⑤ クラスⅡ抗原はCD4陽性T細胞の抗原認識に関わり、CD8陽性ではない。
第60回 午後80(臨床免疫学)
IgMで正しいのはどれか。
①2量体である。 ②胎児は産生しない。 ③胎盤を通過しない。 ④補体を活性化しない。 ⑤分泌成分と結合する。
正答: ③胎盤を通過しない。
ポイント IgMはJ鎖で結合した5量体(分子量約90万)で、抗原刺激後に最初に産生される免疫グロブリンであり、抗原結合価が高く補体古典経路を最も強力に活性化する。分子量が大きいため胎盤を通過できず、新生児血中に検出されるIgMは母体由来ではなく胎児・新生児自身が産生したものを示す。したがって臍帯血IgMの上昇は子宮内感染(TORCH症候群など)を示唆する所見となる。ABO血液型の規則性抗体(抗A・抗B)もIgM型であり、低温で反応しやすい。●胎盤を通過する免疫グロブリン=IgGのみで、新生児を母体由来抗体で防御する。●胎盤を通過しない=IgM・IgA・IgE・IgD。●分泌成分(SC)と結合する代表は分泌型IgA(2量体)である。なおJ鎖をもつ5量体IgMも分泌成分と結合し分泌型IgMとして粘膜へ分泌されうるが、分泌液中の主体は分泌型IgAである。各クラスの構造と機能を区別して理解する。
選択肢ごとの解説
① IgMは5量体であり、2量体は分泌型IgAである。 ② 胎児・新生児もIgMを産生し、臍帯血IgM上昇は子宮内感染を示唆する。 ③ 正しい。IgMは分子量が大きく胎盤を通過しないため、新生児IgMは児自身の産生による。 ④ IgMは補体古典経路を最も強力に活性化する免疫グロブリンである。 ⑤ 分泌成分と結合する代表は分泌型IgA(2量体)である。学術的にはJ鎖をもつ5量体IgMも分泌成分と結合し分泌型IgMとなりうるが、本問では分泌成分との結合はIgAの特徴として扱われている。
第60回 午後81(臨床免疫学)
蛍光免疫測定法において用いられる標識物質はどれか。
①ルミノール ②ペルオキシダーゼ ③アクリジニウムエステル ④アルカリホスファターゼ ⑤フルオレセインイソチオシアネート
正答: ⑤フルオレセインイソチオシアネート
ポイント 蛍光免疫測定法(FIA)では、励起光を受けて蛍光を発する物質を標識に用い、その代表がフルオレセインイソチオシアネート(FITC)である。FITCは約490nmの励起光で約520nmの緑色蛍光を発し、抗体に結合させて抗原を可視化・検出する蛍光色素である。免疫測定の標識物質は測定原理ごとに異なり、酵素・化学発光・蛍光で使い分けられ、それぞれ感度や検出装置が異なるため目的に応じて選択する。●蛍光標識(FIA)で用いる物質=FITC・ローダミン・ユーロピウムキレートなど。●酵素標識(EIA・ELISA)=西洋ワサビペルオキシダーゼ・アルカリホスファターゼで、基質発色や蛍光基質を用いる。●化学発光標識(CLIA・CLEIA)=ルミノール・アクリジニウムエステルなどで、発光量を測定する。標識と検出原理の対応関係から判断する。
選択肢ごとの解説
① ルミノールは化学発光免疫測定法で用いる発光基質であり、蛍光標識ではない。 ② ペルオキシダーゼは酵素免疫測定法(EIA)で用いる代表的な酵素標識である。 ③ アクリジニウムエステルは化学発光免疫測定法で用いる発光標識である。 ④ アルカリホスファターゼは酵素免疫測定法で用いる酵素標識である。 ⑤ 正しい。FITCは励起光で緑色蛍光を発する代表的な蛍光標識物質である。
📋 まとめの表を見る:免疫測定法と標識物質
アルカリホスファターゼは酵素標識であり蛍光色素ではないため、蛍光抗体法とは組み合わない。
第60回 午後82(臨床免疫学)
梅毒検査で顕微鏡を使用するのはどれか。
①RPR法 ②TPHA法 ③ガラス板法 ④FTA-ABS法 ⑤補体結合反応
正答: ③ガラス板法・④FTA-ABS法
ポイント 梅毒検査のうち顕微鏡を使用するのはガラス板法とFTA-ABS法である。ガラス板法は脂質(カルジオリピン)抗原と患者血清を反応させ、生じた絮状沈降物をスライド上で顕微鏡観察して判定する非特異的検査(STS)である。FTA-ABS法は蛍光標識抗ヒトグロブリン抗体を用い、固定した梅毒トレポネーマに結合させて蛍光顕微鏡で判定する特異的検査で、確認検査として用いられる。いずれも鏡検による観察を要する点が共通する。●顕微鏡を用いる検査=ガラス板法(絮状沈降物を鏡検)・FTA-ABS法(蛍光鏡検)。●顕微鏡を用いない検査=RPR法(炭素粒子で可視化した絮状沈降を肉眼判定)・TPHA法(感作赤血球の凝集パターンを肉眼判定)・補体結合反応(試験管内の溶血の有無を肉眼判定)。検査原理と判定方法の違いから区別する。
選択肢ごとの解説
① RPR法は脂質抗原と抗体による絮状の沈降を炭素粒子で見やすくし、カード上で肉眼判定するため、顕微鏡を使用しない。 ② TPHA法は感作赤血球の凝集像をマイクロプレート上で肉眼判定する。ゼラチン粒子を用いるのはTPPA法で、いずれも顕微鏡は使用しない。 ③ 正しい。ガラス板法は脂質抗原と血清中の抗体による絮状沈降反応を顕微鏡で観察する非特異的検査(STS)である。 ④ 正しい。FTA-ABS法は蛍光標識抗体を用い蛍光顕微鏡でトレポネーマを判定する。 ⑤ 補体結合反応は試験管内の溶血の有無を肉眼で判定し、顕微鏡は使用しない。
第60回 午後83(臨床免疫学)
食細胞機能不全症はどれか。
①慢性肉芽腫症 ②DiGeorge症候群 ③重症複合免疫不全症 ④Wiskott-Aldrich症候群 ⑤X連鎖性無γ-グロブリン血症
正答: ①慢性肉芽腫症
ポイント 慢性肉芽腫症はNADPHオキシダーゼの欠損により好中球・マクロファージが活性酸素(スーパーオキシド)を産生できず、貪食はできても殺菌ができない食細胞機能不全症である。カタラーゼ陽性菌(黄色ブドウ球菌・セラチア・アスペルギルス・サルモネラなど)による反復感染と肉芽腫形成が特徴で、NBT還元試験陰性やDHRフローサイトメトリーで診断される。原発性免疫不全症は障害される免疫系の部位によって分類される。●食細胞機能の障害=慢性肉芽腫症・白血球接着不全症(LAD)・Chédiak-Higashi症候群。●細胞性免疫(T細胞)の障害=DiGeorge症候群・重症複合免疫不全症(T・Bともに障害)。●液性免疫(B細胞・抗体)の障害=X連鎖無γグロブリン血症(Bruton)・分類不能型免疫不全症(CVID)。障害部位ごとの代表疾患を対応させて判断する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。慢性肉芽腫症はNADPHオキシダーゼ欠損による食細胞の殺菌能異常症である。 ② DiGeorge症候群は胸腺低形成によるT細胞欠損で、細胞性免疫不全に分類される。 ③ 重症複合免疫不全症はT細胞とB細胞の両者が障害される複合型免疫不全である。 ④ Wiskott-Aldrich症候群は血小板減少・湿疹・易感染を呈する複合免疫不全である。 ⑤ X連鎖性無γ-グロブリン血症はB細胞欠損による抗体産生不全(液性免疫不全)である。
📋 まとめの表を見る:原発性免疫不全症の分類(障害される免疫系統別)
Wiskott-Aldrich症候群(XR、T細胞機能低下+血小板減少)や毛細血管拡張性失調症(AR、進行性小脳失調)もT細胞系機能不全に分類される。
第60回 午後84(臨床免疫学)
抗核抗体はどれか。2つ選べ。
①抗Sm抗体 ②抗内因子抗体 ③抗リン脂質抗体 ④抗U1-RNP抗体 ⑤抗糸球体基底膜抗体
正答: ①抗Sm抗体・④抗U1-RNP抗体
ポイント 抗核抗体は細胞核内成分に対する自己抗体の総称で、本問では抗Sm抗体と抗U1-RNP抗体が該当する。抗Sm抗体は核内低分子RNP複合体のSm蛋白を認識し全身性エリテマトーデス(SLE)に特異的な抗体である。抗U1-RNP抗体はU1核内低分子RNPを認識し、混合性結合組織病(MCTD)で特に高力価となる抗体である。いずれも間接蛍光抗体法で核が染まる核抗原を標的とし、膠原病の診断に用いられる。●代表的な抗核抗体=抗Sm(SLEに特異)・抗ds-DNA(SLEで疾患活動性を反映)・抗U1-RNP(MCTD)・抗SS-A/SS-B(Sjögren症候群)・抗Scl-70(びまん性全身性強皮症)・抗セントロメア(限局皮膚硬化型)。●抗核抗体でないもの=抗内因子抗体・抗リン脂質抗体・抗糸球体基底膜抗体で、いずれも核以外の抗原を標的とする。
選択肢ごとの解説
① 正しい。抗Sm抗体は核内RNP複合体に対する抗核抗体でSLEに特異的である。 ② 抗内因子抗体は胃壁細胞由来の内因子に対する抗体で、悪性貧血でみられる核外抗体。 ③ 抗リン脂質抗体はカルジオリピンなどリン脂質を標的とし、核抗原ではない。 ④ 正しい。抗U1-RNP抗体は核内U1-snRNPに対する抗核抗体でMCTDで高力価となる。 ⑤ 抗糸球体基底膜抗体はⅣ型コラーゲンを標的とし、Goodpasture症候群でみられる。
第60回 午後85(臨床免疫学)
M蛋白血症で正しいのはどれか。
①IgA型は稀である。 ②Bence Jones蛋白はM蛋白の一つである。 ③M蛋白はL鎖としてκ、λの両者を有する。 ④免疫グロブリンの定量により確定診断される。 ⑤原発性マクログロブリン血症ではIgG型M蛋白が産生される。
正答: ②Bence Jones蛋白はM蛋白の一つである。
ポイント M蛋白血症は形質細胞が単一クローン性に増殖し、均一(モノクローナル)な免疫グロブリンまたはその構成成分が血中・尿中に出現する病態で、多発性骨髄腫やマクログロブリン血症でみられる。Bence Jones蛋白は遊離L鎖(κまたはλの一方)が単独で過剰産生されたもので、M蛋白の一つに数えられ尿中に排泄され、加熱すると約56℃で凝固し沸騰で再溶解する特有の性質をもつ。確定診断は免疫電気泳動や免疫固定法でM蛋白の単クローン性を証明して行う。●M蛋白の型=完全免疫グロブリン型(多発性骨髄腫ではIgG型が最多、次いでIgA型)・Bence Jones型(遊離L鎖のみ)。●原発性マクログロブリン血症(Waldenström)=IgM型M蛋白を産生し、過粘稠度症候群を呈する。型と病態を対応させて判断する。
選択肢ごとの解説
① IgA型M蛋白はIgG型に次いで多く、稀ではない。 ② 正しい。Bence Jones蛋白は単クローン性の遊離L鎖でM蛋白の一つである。 ③ M蛋白は単クローン性のためκかλの一方のみを有し、両者をもたない。 ④ 確定診断は免疫電気泳動や免疫固定法による単クローン性証明で行い、定量のみでは不十分。 ⑤ 原発性マクログロブリン血症で産生されるM蛋白はIgG型ではなくIgM型である。
第60回 午後86(臨床免疫学)
交差適合試験で主試験が不適合、副試験が適合となる組合せはどれか。2つ選べ。(患者 — 赤血球製剤)
①A型― AB型 ②A型― B型 ③B型― O型 ④O型― A型 ⑤AB型― B型
正答: ①A型― AB型・④O型― A型
ポイント 交差適合試験で主試験(患者血清+供血者赤血球)が不適合、副試験(患者赤血球+供血者血清)が適合となるのは、A型患者にAB型を、O型患者にA型を組み合わせた場合である。主試験不適合とは患者の規則性抗体が供血赤血球の抗原と反応すること、副試験適合とは供血血清中の抗体が患者赤血球と反応しないことを意味する。輸血の可否は主に主試験で判定される。●A型患者(血清に抗Bを保有)+AB型赤血球(A・B両抗原あり)→抗BがB抗原と反応し主試験不適合、供血AB型血清は規則性抗体をもたず患者A型赤血球と反応せず副試験適合。●O型患者(血清に抗A・抗Bを保有)+A型赤血球(A抗原あり)→抗AがA抗原と反応し主試験不適合、供血A型血清(抗B)はO型赤血球と反応せず副試験適合。抗原と抗体の対応から判断する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。A型患者の抗BがAB型赤血球のB抗原と反応し主試験不適合、副試験は適合。 ② A型患者の抗BとB型赤血球が反応し主試験不適合、供血血清の抗AもA型患者赤血球と反応し副試験も不適合。 ③ B型患者の抗AはO型赤血球と反応せず主試験は適合となるため、条件を満たさない。 ④ 正しい。O型患者の抗AがA型赤血球と反応し主試験不適合、供血A型血清はO型赤血球と反応せず副試験適合。 ⑤ AB型患者は抗A・抗BをもたずB型赤血球と反応せず主試験適合のため、条件を満たさない。
📋 まとめの表を見る:交差適合試験(主試験・副試験)の判定と輸血適否
主試験=患者血清+供血者赤血球。副試験=供血者血清+患者赤血球。
第60回 午後87(臨床免疫学)
血液型検査の結果を別に示す。正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k60pB087.4106c0a6b2.jpg
①反応は37℃で行う。 ②15分間反応させる。 ③判定は3,400 rpm、5分間遠心後に行う。 ④輸血にはRh(D)陰性の血液を用いる。 ⑤この患者のABO血液型の頻度は日本人では約10%である。
正答: ④輸血にはRh(D)陰性の血液を用いる。
ポイント 図はABO・RhD血液型検査の結果を示す。オモテ検査(赤血球の抗原を抗A・抗B血清で調べる)とウラ検査(血清中の規則性抗体をA血球・B血球で調べる)、およびD抗原検査の凝集パターンから血液型を判定する。本例はRh(D)陰性と判断されるため、輸血にはRh(D)陰性の血液を用いる必要がある。Rh陽性血を誤って輸血すると抗D抗体が産生され、再輸血時の溶血や妊娠時の新生児溶血性疾患の原因となる。ABO血液型検査は室温で行い、判定は3,400rpm15秒程度の遠心後に直ちに行うのが基本である。●ABO判定=オモテ検査とウラ検査の結果の一致を確認して型を確定する。●Rh(D)陰性=日本人では約0.5%と稀で、輸血・妊娠における抗D産生に特に注意を要する。
選択肢ごとの解説
① ABO・RhD血液型検査は室温で行うのが基本で、37℃ではない。 ② 判定の遠心は15秒程度で、反応を15分間放置するのは適切でない。 ③ 判定は3,400rpmで15秒前後の遠心後に行い、5分間は長すぎる。 ④ 正しい。本例はRh(D)陰性のため輸血にはRh(D)陰性血を用いる。 ⑤ このABO型の日本人頻度は約10%ではなく、図の判定型に応じた頻度となる。
第60回 午後88(臨床免疫学)
細胞性免疫反応によって起こる輸血副作用はどれか。
①輸血後GVHD ②アナフィラキシー ③発熱性輸血副作用 ④溶血性輸血副作用 ⑤輸血関連急性肺障害〈TRALI〉
正答: ①輸血後GVHD
ポイント 輸血後GVHD(移植片対宿主病)は、供血血液中に含まれ生着したドナーリンパ球(T細胞)が、宿主(患者)の組織を異物と認識して細胞性免疫により傷害することで起こる輸血副作用である。免疫不全患者や血縁者からの輸血で発症リスクが高く、発熱・全身性紅斑・下痢・肝障害・汎血球減少を呈し、致死率が極めて高い。予防には放射線照射血を用いてドナーリンパ球の増殖能を不活化する。●細胞性免疫(ドナーT細胞)による副作用=輸血後GVHD。●抗体・補体など液性免疫による副作用=溶血性輸血副作用(抗赤血球抗体)・アナフィラキシー(抗IgA抗体など)・TRALI(抗白血球抗体による急性肺障害)。●サイトカイン・抗白血球抗体による=発熱性非溶血性輸血副作用。発症機序ごとに対策が異なるため鑑別が重要である。
選択肢ごとの解説
① 正しい。輸血後GVHDはドナーT細胞による細胞性免疫反応で生じる致死的副作用である。 ② アナフィラキシーはIgEや抗IgA抗体を介する即時型過敏反応で、細胞性免疫ではない。 ③ 発熱性非溶血性副作用は白血球由来サイトカインや抗白血球抗体によるもの。 ④ 溶血性輸血副作用は抗赤血球抗体と補体による液性免疫反応で生じる。 ⑤ TRALIは抗白血球抗体による肺障害で、細胞性免疫反応によるものではない。
📋 まとめの表を見る:輸血副作用の機序・発症時期と予防・対策
輸血副作用は「溶血性/非溶血性」×「免疫学的/非免疫学的」×「即時型/遅発型」で整理できる。
第60回 午後89(臨床免疫学)
直接抗グロブリン試験に必要なのはどれか。
①患者血清 ②アルブミン ③患者赤血球 ④パネル血球 ⑤ブロメリン試薬
正答: ③患者赤血球
ポイント 直接抗グロブリン試験(直接Coombs試験)は、患者赤血球の表面にすでに生体内で結合している抗体や補体を、抗ヒトグロブリン試薬を加えて凝集として検出する検査である。したがって必要なのは患者赤血球で、洗浄して未結合の蛋白を除いた後に抗グロブリン試薬を直接作用させて判定する。自己免疫性溶血性貧血や新生児溶血性疾患、薬剤性溶血、不適合輸血後の溶血などの診断に用いられる。●直接法=患者赤血球+抗グロブリン試薬で、生体内(in vivo)ですでに感作された抗体・補体を検出する。●間接法=患者血清+パネル血球で試験管内(in vitro)に感作させ、その後に抗グロブリン試薬を加えて不規則抗体を検出する。検出対象がin vivoかin vitroかで赤血球を使うか血清を使うかが決まる。
選択肢ごとの解説
① 患者血清を用いるのは間接抗グロブリン試験であり、直接法では用いない。 ② アルブミンは間接法などの反応増強剤で、直接法に必須の試薬ではない。 ③ 正しい。直接抗グロブリン試験は患者赤血球に結合済みの抗体・補体を検出する。 ④ パネル血球は不規則抗体同定など間接法で用いる試薬血球である。 ⑤ ブロメリン試薬は酵素法の増強剤で、直接抗グロブリン試験には不要である。
第60回 午後90(公衆衛生学)
我が国の医療保険制度について正しいのはどれか。
①加入は任意である。 ②介護保険制度を含む。 ③租税が主な財源である。 ④療養の給付は現金給付である。 ⑤被用者保険と国民健康保険に分けられる。
正答: ⑤被用者保険と国民健康保険に分けられる。
ポイント 我が国の医療保険制度は被用者保険(健康保険・共済組合など)と国民健康保険に大別され、すべての国民がいずれかに加入する国民皆保険制度である。加入は強制(義務)であり、財源は被保険者本人と事業主が負担する保険料を主とし、不足分に税金(公費)が補助的に投入される。療養の給付は現金ではなく医療サービスそのものを給付する現物給付が原則であり、患者は一部負担金のみを窓口で支払う。●被用者保険(職域保険)=健康保険・共済組合・船員保険で、会社員や公務員など被用者とその被扶養者が対象。●地域保険=国民健康保険で、自営業者や無職者などが対象。●後期高齢者医療制度=75歳以上の高齢者が対象。これら複数の制度で国民皆保険が成り立っている。
選択肢ごとの解説
① 国民皆保険制度のため加入は強制であり、任意ではない。 ② 介護保険は医療保険とは別の独立した社会保険制度であり、含まれない。 ③ 主な財源は保険料であり、租税は補助的な役割にとどまる。 ④ 療養の給付は医療サービスを直接給付する現物給付であり、現金給付ではない。 ⑤ 正しい。我が国の医療保険は被用者保険と国民健康保険に大別される。
第60回 午後91(公衆衛生学)
有訴者率を推定する基礎となる調査はどれか。
①患者調査 ②国勢調査 ③国民健康・栄養調査 ④国民生活基礎調査 ⑤人口動態調査
正答: ④国民生活基礎調査
ポイント 有訴者率(人口千人あたりの自覚症状を訴える者の数)を推定する基礎となる調査は国民生活基礎調査である。これは世帯および世帯員を対象とした大規模な標本調査で、有訴者率・通院者率・健康意識・所得・貯蓄・介護の状況など、世帯の保健・医療・福祉・年金・所得の実態を総合的に把握する。3年ごとに大規模調査、その間の各年に簡易調査が実施される。●国民生活基礎調査=有訴者率・通院者率(世帯を対象とする標本調査)。●患者調査=受療率・推計患者数・平均在院日数(医療施設を対象)。●人口動態調査=出生・死亡・婚姻・離婚・死産(届出に基づく)。●国民健康・栄養調査=栄養摂取量・身体状況・生活習慣。●国勢調査=人口・世帯の全数調査。各調査の対象と把握項目を対応させて判断する。
選択肢ごとの解説
① 患者調査は医療施設を対象に受療率や推計患者数を把握する調査である。 ② 国勢調査は人口・世帯の基本構造を全数把握する調査で、有訴者率は扱わない。 ③ 国民健康・栄養調査は栄養摂取状況や身体状況・生活習慣を把握する調査である。 ④ 正しい。有訴者率は世帯を対象とする国民生活基礎調査で把握される。 ⑤ 人口動態調査は出生・死亡・婚姻・離婚・死産を把握する調査である。
第60回 午後92(公衆衛生学)
水道法による水質基準で検出されてはならないのはどれか。
①ヒ素 ②大腸菌 ③ベンゼン ④総トリハロメタン ⑤水銀及びその化合物
正答: ②大腸菌
ポイント 水道法に基づく水質基準で「検出されないこと」と定められているのは大腸菌である。大腸菌は糞便汚染の指標菌であり、その検出は腸管系病原微生物が混入している可能性を示すため、一定濃度の許容ではなく不検出が求められる。一方、化学物質や重金属は健康影響に基づく許容濃度(基準値)が定められ、その値以下であれば適合と判定される。微生物指標と化学物質では基準の考え方が根本的に異なる。●不検出が基準=大腸菌(糞便汚染・病原微生物の指標)。●数値基準(許容濃度)が定められたもの(一例)=ヒ素及びその化合物0.01mg/L以下・水銀及びその化合物0.0005mg/L以下・ベンゼン0.01mg/L以下・総トリハロメタン0.1mg/L以下。総トリハロメタンは塩素消毒で生じる消毒副生成物で発癌性が問題となる。
選択肢ごとの解説
① ヒ素は0.01mg/L以下という数値基準で許容され、不検出基準ではない。 ② 正しい。大腸菌は糞便汚染指標として検出されないことが基準とされる。 ③ ベンゼンは0.01mg/L以下の数値基準が定められた化学物質である。 ④ 総トリハロメタンは0.1mg/L以下という数値基準で管理される消毒副生成物である。 ⑤ 水銀及びその化合物は0.0005mg/L以下の数値基準で許容される。
📋 まとめの表を見る:水質基準における「検出されないこと」の規定(水道法/公共用水域環境基準)
同じ「検出されないこと」でも、水道法と公共用水域の環境基準とでは対象項目が異なる。
第60回 午後93(公衆衛生学)
ダイオキシン類で誤っているのはどれか。
①発癌性がある。 ②たばこの煙に含まれる。 ③廃棄物焼却炉から発生する。 ④内分泌攪乱物質の一種である。 ⑤オゾン層を破壊する主因である。
正答: ⑤オゾン層を破壊する主因である。
ポイント ダイオキシン類は塩素を含む有機化合物(ポリ塩化ジベンゾダイオキシン・ジベンゾフラン等)の総称で、廃棄物焼却炉などでの不完全燃焼により非意図的に生成する。発癌性・催奇形性を有し、内分泌攪乱物質(環境ホルモン)としても作用し、たばこの煙にも含まれる。脂溶性が高く食物連鎖を通じて生体内に蓄積し、各化合物の濃度に毒性等価係数(TEF)を掛けて合計した毒性等量(TEQ)で、混合物全体の毒性を換算して評価する。オゾン層を破壊する主因はフロン(クロロフルオロカーボン)であり、ダイオキシンはオゾン層破壊の主因ではない点が誤りとなる。●ダイオキシン類の特性=発癌性・催奇形性・内分泌攪乱作用・焼却炉由来・脂溶性で生体に蓄積。●オゾン層破壊の主因=フロン・ハロン・四塩化炭素などの含塩素・含臭素化合物で、成層圏で塩素原子を放出してオゾンを分解する。原因物質を取り違えないよう区別する。
選択肢ごとの解説
① ダイオキシン類は発癌性を有する物質であり、この記述は正しい。 ② ダイオキシン類はたばこの煙にも含まれており、この記述は正しい。 ③ ダイオキシン類は廃棄物焼却炉での不完全燃焼から発生し、この記述は正しい。 ④ ダイオキシン類は内分泌攪乱物質の一種であり、この記述は正しい。 ⑤ 誤り。オゾン層破壊の主因はフロンであり、ダイオキシンは主因ではない。
第60回 午後94(公衆衛生学)
我が国の平成21年度の国民医療費で正しいのはどれか。
①人口1人当たりでは約38万円である。 ②国民所得に対する比率は1割に達した。 ③総額はここ20年間で約10倍に増加した。 ④年齢階級別では65歳以上が総額の約2割を占める。 ⑤傷病分類別一般診療医療費では呼吸器系の疾患が最も多い。
正答: ②国民所得に対する比率は1割に達した。
ポイント 平成21年度の国民医療費で正しいのは、国民所得に対する比率が1割(約10%)に達した点である。同年度の国民医療費の総額は約36兆円、人口1人あたりでは約28万円で、国民所得に対する比率は初めておおむね10%に達した。高齢化の進行に伴い65歳以上の高齢者が総額の過半(約5割超)を占め、傷病分類別の一般診療医療費では循環器系の疾患が最も多くを占める。国民医療費は高齢化と医療技術の高度化により増加が続いている。●国民医療費の長期動向=総額は増加傾向・国民所得に対する比率は上昇傾向・高齢者の占める割合が増大。●傷病分類別の一般診療医療費で最多=循環器系疾患(高血圧性疾患・心疾患・脳血管疾患など)。費用構造の正確な把握が医療政策の基礎となる。
選択肢ごとの解説
① 平成21年度の人口1人あたり国民医療費は約28万円で、約38万円ではない。 ② 正しい。国民所得に対する国民医療費の比率は約10%に達した。 ③ 総額はここ20年間で約10倍ではなく、おおむね2倍程度の増加である。 ④ 65歳以上は総額の約2割ではなく、過半(約5割超)を占める。 ⑤ 傷病分類別一般診療医療費で最も多いのは循環器系疾患で、呼吸器系ではない。
第60回 午後95(医用工学概論)
商用交流100 Vが表しているのはどれか。
正答: ②実効値
ポイント 商用交流100Vが表しているのは実効値である。実効値とは交流を直流に換算したとき同じ電力(熱的仕事)を生じる値で、正弦波交流では最大値の1/√2(約0.707倍)にあたる。したがって家庭用100V(実効値)の最大値(波高値)は約141Vになる。交流の電圧や電流の表示は通常この実効値で行われ、消費電力やジュール熱の計算の基準となる。●実効値=最大値÷√2(正弦波の場合)で、電力換算の基準となる値。●平均値=半周期の平均で、正弦波では最大値の2/π(約0.637倍)。●最大値(波高値)=波形の頂点の値で、絶縁設計などで重要となる。●瞬時値=各時刻における値で時々刻々変化する。これらは同じ波形でも意味する量が異なるため明確に区別して扱う必要がある。
選択肢ごとの解説
① 最大値は波形の頂点(波高値)で、100V交流では約141Vにあたり表示値ではない。 ② 正しい。商用交流100Vは実効値で、最大値の1/√2に相当する。 ③ 瞬時値は各時刻ごとの値で時間とともに変化し、一定の表示値ではない。 ④ 測定値は一般的な観測値を指す語で、交流の標準表示を表す用語ではない。 ⑤ 平均値は半周期平均で最大値の2/π倍となり、交流電圧の標準表示ではない。
第60回 午後96(医用工学概論)
異種金属を2点で接合させたとき、それら接点間の温度差に応じて起電力が生じる現象はどれか。
①表皮効果 ②ドプラ〈Doppler〉効果 ③ピエゾ〈Piezo〉抵抗効果 ④ゼーベック〈Seebeck〉効果 ⑤ジョセフソン〈Josephson〉効果
正答: ④ゼーベック〈Seebeck〉効果
ポイント 異なる2種類の金属を2点で接合し、その2つの接点間に温度差を与えると起電力(熱起電力)が生じる現象をゼーベック効果という。この熱起電力は両接点の温度差に応じて生じ、これを利用したものが熱電対で、接点の温度差を電圧として取り出し温度測定に用いられる。逆に接点に電流を流すと一方で吸熱・他方で発熱が起こるのがペルチェ効果で、電子冷却に応用される。●ゼーベック効果=異種金属接点間の温度差で熱起電力を生じる(熱電対による温度測定の原理)。●ペルチェ効果=接点に電流を流すと吸熱・発熱が起こる(電子冷却素子の原理)。●ピエゾ抵抗効果=半導体に応力を加えると電気抵抗が変化する(半導体圧力センサ)。●ドプラ効果=音源と観測者の相対運動で観測周波数が変化する現象。各効果の原理と応用を対応させて判断する。
選択肢ごとの解説
① 表皮効果は高周波電流が導体表面に偏って流れる現象で、熱起電力とは異なる。 ② ドプラ効果は音源と観測者の相対運動による周波数変化で、温度差とは無関係。 ③ ピエゾ抵抗効果は半導体に応力を加えると電気抵抗が変化する現象である。 ④ 正しい。ゼーベック効果は異種金属接点の温度差で熱起電力を生じる現象で熱電対の原理。 ⑤ ジョセフソン効果は超伝導体間のトンネル電流現象で、温度差起電力とは異なる。
📋 まとめの表を見る:トランスデューサに用いる物理効果
圧電効果とは逆に、電圧をかけて歪み(振動)を発生させる現象を逆圧電効果といい、超音波診断装置に利用される。
第60回 午後97(医用工学概論)
パルスオキシメータで利用している光の特性はどれか。
正答: ①吸収
ポイント パルスオキシメータは光の吸収を利用し、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンとで光の吸収特性が異なることを用いて、経皮的・非侵襲的に動脈血酸素飽和度(SpO₂)を測定する装置である。赤色光(約660nm)と赤外光(約940nm)の2波長を指先や耳たぶに照射し、心拍に伴う動脈の拍動成分による吸光度の変化の比から、ヘモグロビンの酸素飽和度を算出する(ランバート・ベールの法則に基づく)。●光の吸収を測定原理とする装置=パルスオキシメータ・分光光度計・吸光光度計。●ヘモグロビンの光吸収特性=還元ヘモグロビンは赤色光をよく吸収し、酸化ヘモグロビンは赤外光をよく吸収する。この2波長での吸光度の差(吸光度比)からSpO₂を求めるのが測定原理であり、拍動成分のみを抽出することで動脈血の飽和度を反映させる。
選択肢ごとの解説
① 正しい。パルスオキシメータは酸化・還元ヘモグロビンの光吸収特性の差を利用する。 ② 屈折は光が媒質境界で進路を変える現象で、SpO₂測定の原理ではない。 ③ 蛍光は励起光より長波長の光を発する現象で、酸素飽和度測定には用いない。 ④ 散乱は光が微粒子で四方に広がる現象で、本測定の主原理ではない。 ⑤ 反射は光が界面で戻る現象で、パルスオキシメータの測定原理ではない。
第60回 午後98(医用工学概論)
コンピュータネットワークにおいて「誤りなく情報の授受ができるように制御手順などを定めたもの」はどれか。
①インタフェース ②データベース ③フォーマット ④プロトコル ⑤モデム
正答: ④プロトコル
ポイント コンピュータネットワークにおいて、誤りなく情報を授受できるよう通信の制御手順や約束事を定めたものをプロトコル(通信規約)という。送受信の手順・データの形式・誤り検出と再送・順序制御などを取り決めることで、機種やメーカーの異なる機器の間でも正しく通信を成立させることができる。インターネットのTCP/IPやWeb閲覧のHTTP、ファイル転送のFTPなどが代表例である。●プロトコル=通信の手順・規約(TCP/IP・HTTP・FTP・SMTPなど)。●インタフェース=機器どうしや人と機器を接続する接点・接続規格(USBなど)。●フォーマット=データの記録形式・書式。●データベース=データを体系的に蓄積・管理する仕組み。●モデム=デジタル信号とアナログ信号を相互に変換する通信装置。各用語の役割を区別して判断する。
選択肢ごとの解説
① インタフェースは機器間や人と機器の接続点・接続規格を指し、通信手順そのものではない。 ② データベースはデータを体系的に蓄積・管理する仕組みで、通信規約ではない。 ③ フォーマットはデータの記録形式や書式を指し、通信制御手順ではない。 ④ 正しい。プロトコルは誤りなく情報を授受するための通信制御手順・規約である。 ⑤ モデムはデジタル信号とアナログ信号を相互変換する通信装置である。
第60回 午後99(医用工学概論)
回転半径R、回転数Nの遠心機の遠心力をAとしたとき、回転半径R/2、回転数10Nの遠心機の遠心力はどれか。
正答: ④50A
ポイント 遠心機の遠心力(相対遠心力RCF)は回転半径Rに正比例し、回転数Nの2乗に比例する(F∝R×N²)。元の遠心力をA(∝R×N²)とすると、回転半径をR/2、回転数を10Nに変えた場合は(R/2)×(10N)²=(1/2)×100×R×N²=50×R×N²となり、元の50倍すなわち50Aとなる。半径が半分になって遠心力を半分にする効果よりも、回転数が10倍になって2乗で100倍に増やす効果のほうが圧倒的に大きいため、結果として大きく増加する。●相対遠心力の式=RCF=1.118×10⁻⁵×R(cm)×N²(rpm)で計算される。●性質=回転半径に正比例し回転数の2乗に比例するため、回転数の変化の影響が支配的となる。条件が変化したときはこの比例関係に各係数を代入して求める。
選択肢ごとの解説
① 2.5Aは半径と回転数の寄与を取り違えて算出した値で、正しくない。 ② 5Aは回転数の2乗比例を考慮していない誤った値である。 ③ 20Aは半径を1/2にした寄与を正しく反映しておらず、正しくない。 ④ 正しい。F∝R×N²より(R/2)×(10N)²=50R×N²で元の50倍の50Aとなる。 ⑤ 100Aは半径が1/2になる効果を反映しておらず、過大な値である。
第60回 午後100(医用工学概論)
ガラス電極を用いたpH測定について誤っているのはどれか。
①温度補償が必要である。 ②比較電極には液絡部が設けてある。 ③pH標準液により校正する必要がある。 ④ガラス電極内部は純水で満たしてある。 ⑤ガラス電極と比較電極との電位差を測定する。
正答: ④ガラス電極内部は純水で満たしてある。
ポイント ガラス電極pH計は、水素イオン濃度の違いに応じてガラス膜の内外に生じる電位差を、比較電極(参照電極)との間で測定してpHを求める原理である。ガラス電極の内部は純水ではなく、内部電極を浸す既知pHの内部緩衝液(塩化カリウムを含む溶液など)で満たされており、これが基準電位を与える。応答電位は温度によってネルンスト係数が変化するため温度補償が必要で、使用前にはpH標準液で校正する必要がある。●pH測定の要点=ガラス電極と比較電極の電位差を測定する・温度補償を行う・標準液で校正する。●比較電極=液絡部(塩橋)をもち、内部の塩化カリウム溶液が試料と電気的に連絡することで安定した基準電位を保つ構造になっている。これらの条件を満たして初めて正確なpH測定が可能となる。
選択肢ごとの解説
① ガラス電極pH計は温度で応答が変わるため温度補償が必要で、この記述は正しい。 ② 比較電極には試料と内部液をつなぐ液絡部が設けられており、この記述は正しい。 ③ pH標準液による校正が必要であり、この記述は正しい。 ④ 誤り。ガラス電極内部は純水ではなく既知pHの内部緩衝液で満たされている。 ⑤ ガラス電極と比較電極との電位差を測定する原理であり、この記述は正しい。
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