第61回(2015) 臨床検査技師国家試験 午前1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第61回 午前1(臨床検査総論)
栄養サポートチームが栄養状態の評価に用いる検査項目はどれか。
- ①カリウム
- ②ナトリウム
- ③アルブミン
- ④クレアチニン
- ⑤免疫グロブリン
正答: ③アルブミン
ポイント
栄養サポートチーム〈NST〉は患者の栄養状態を多面的に評価して介入する多職種チームである。血清アルブミンは肝臓で合成される血漿蛋白の主成分で、膠質浸透圧の維持や各種物質の運搬を担い、半減期が約20日と長いため比較的長期にわたる蛋白栄養状態を反映する代表的な指標となる。その低下は栄養障害のほか、肝合成能の低下・炎症(急性相反応による産生低下)・体外への喪失(ネフローゼ症候群・熱傷)などでも生じるため、他の検査や臨床所見と併せて総合的に判断する。 ●栄養評価に用いる血清蛋白=アルブミン(長期)・トランスサイレチン(プレアルブミン)・トランスフェリン・レチノール結合蛋白(短期=rapid turnover protein)。 ●身体・臨床指標=体重変化率・BMI・上腕周囲長・上腕三頭筋皮下脂肪厚・総リンパ球数・窒素平衡。
選択肢ごとの解説
- ① カリウムは細胞内に多い主要陽イオンで、電解質異常・腎機能・酸塩基平衡や不整脈の評価に用いるが栄養状態の指標ではない。
- ② ナトリウムは細胞外液量や体液浸透圧・水分バランスを反映する電解質であり、栄養状態を直接示す検査項目ではない。
- ③ 正しい。アルブミンは肝合成の血漿蛋白主成分で半減期が長く、長期的な蛋白栄養状態を反映するNSTの代表的評価項目である。
- ④ クレアチニンは筋肉量や腎糸球体濾過能を反映する老廃物で、腎機能評価には有用だが栄養評価の主項目ではない。
- ⑤ 免疫グロブリンは液性免疫を担う抗体で、感染・炎症・形質細胞腫瘍の評価に用い、栄養状態の指標とはしない蛋白である。
第61回 午前2(臨床検査総論)
細菌培養の検体で4 ℃に保存するのが適切でないのはどれか。
正答: ②髄液
ポイント
細菌培養検体は原則として4℃で保存し、常在菌の増殖や目的菌の過剰増殖を抑えるが、髄液はその例外で室温(できれば35〜37℃)に保つ必要がある。これは髄膜炎の主要起炎菌である髄膜炎菌・肺炎球菌・インフルエンザ菌が低温や乾燥に弱く、4℃保存では死滅して培養陽性率が著しく低下するためである。髄液は採取後ただちに保温して検査室へ運び、速やかに塗抹標本作製と培養を行うことが検出率向上のうえで重要となる。同様に淋菌を疑う検体も低温に弱いため冷蔵を避け、保温して速やかに処理する。 ●低温に弱く室温・保温が必要=髄液(髄膜炎菌・肺炎球菌・インフルエンザ菌)・淋菌を疑う検体。 ●4℃冷蔵が適切=喀痰・尿・便・胆汁など常在菌や雑菌の増殖を抑えたい検体。 ●嫌気培養=偏性嫌気性菌の死滅を防ぐため採取後速やかに嫌気輸送容器で搬送する。
選択肢ごとの解説
- ① 喀痰は口腔内常在菌が多く混入するため、4℃保存で雑菌の過増殖を抑えて目的菌を検出するのが適切な検体である。
- ② 誤り。髄液は髄膜炎菌・肺炎球菌など低温に弱い菌が多く、4℃では死滅するため室温・保温で速やかに処理する。
- ③ 胆汁は4℃保存で雑菌の増殖を抑えつつ目的菌を保つのが適切であり、低温保存が不適切とされる検体ではない。
- ④ 中間尿は室温放置で細菌が増殖しやすく菌数が変動するため、4℃冷蔵保存が適切とされる検体である。
- ⑤ 関節液は4℃保存でよく、髄液のような菌の死滅は問題とならないため低温保存が不適切な検体ではない。
第61回 午前3(臨床検査総論)
血清成分で食後に変動する項目はどれか。
- ①AST
- ②アルブミン
- ③クレアチニン
- ④トリグリセライド
- ⑤総コレステロール
正答: ④トリグリセライド
ポイント
血清成分のうち食後に著明に変動する代表項目はトリグリセライド(中性脂肪)である。食事由来の脂質は小腸でカイロミクロンとして吸収されリンパ管を経て血中へ入るため、食後数時間で血中トリグリセライドが大きく上昇する。したがって脂質検査は原則として10〜12時間以上の絶食後、早朝空腹時に採血して測定するのが望ましい。血糖やインスリンも食事の影響を強く受ける項目だが、本問の選択肢の中で食後変動が問われているのは脂質項目のトリグリセライドであり、他の酵素・蛋白・腎機能指標は食事の影響を受けにくいため空腹時でなくても評価できる。 ●食事の影響を強く受ける項目=トリグリセライド・血糖・インスリン・遊離脂肪酸・無機リン・尿酸。 ●食事の影響を受けにくい項目=総コレステロール・アルブミン・クレアチニン・総蛋白・AST(原則として絶食不要)。
選択肢ごとの解説
- ① ASTは肝・心筋・骨格筋に多い逸脱酵素で、組織傷害で上昇するが食事による有意な変動は受けない酵素である。
- ② アルブミンは半減期が約20日と長く、食事による短時間の変動はほとんど受けない血漿蛋白であり食後に動かない。
- ③ クレアチニンは筋由来の老廃物で腎から排泄され、産生がほぼ一定のため食事による急性の変動はみられない。
- ④ 正しい。トリグリセライドは食事由来脂質のカイロミクロン吸収により食後に著明に上昇するため絶食後採血を要する。
- ⑤ 総コレステロールは食後の短時間変動が小さく、原則として食事の影響を受けにくい脂質項目である。
第61回 午前4(臨床検査総論)
尿色調の異常とその原因の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①橙色 — ヘモグロビン
- ②黄褐色 — ウロビリン体
- ③鮮紅色 — ビリルビン
- ④乳白色 — メラニン
- ⑤赤ブドウ酒色 — ヘマトポルフィリン
正答: ②黄褐色 — ウロビリン体・⑤赤ブドウ酒色 — ヘマトポルフィリン
ポイント
尿色調の異常は含まれる色素の種類によって分類して判断する。黄褐色〜濃褐色尿はウロビリン体(ウロビリノーゲンが酸化したウロビリン)の増加によるもので、溶血の亢進や肝胆道疾患などでみられる。赤ブドウ酒色(ポートワイン色)尿はポルフィリン症で、ヘマトポルフィリンなどのポルフィリン体が尿中へ排泄されることによる。したがって黄褐色とウロビリン体、赤ブドウ酒色とヘマトポルフィリンの2組が正しい組合せであり、他の3組は色調と原因の対応が誤っている。 ●赤色調尿=血尿(赤血球)・ヘモグロビン尿・ミオグロビン尿(いずれも赤〜赤褐色)。 ●褐色調尿=ウロビリン体増加・ビリルビン尿(黄褐色で振盪により黄色泡を生じる)。 ●特殊な色=ポルフィリン尿(赤ブドウ酒色)・メラニン尿(放置で黒色化)・乳び尿(乳白色)・緑膿菌尿(緑色)。
選択肢ごとの解説
- ① 橙色は濃縮尿やビリルビン・薬剤でみられ、ヘモグロビン尿は赤〜赤褐色を呈するため色調と原因の組合せが誤りである。
- ② 正しい。黄褐色尿はウロビリン体(ウロビリン)の増加によるもので、溶血の亢進や肝胆道疾患などでみられる。
- ③ 鮮紅色は新鮮な血尿(赤血球)によるもので、ビリルビンは黄褐色を呈するため色調と原因の組合せが誤りである。
- ④ 乳白色は乳び尿(リンパ液混入)や膿尿によるもので、メラニンは放置で黒色化するため色調と原因の組合せが誤りである。
- ⑤ 正しい。赤ブドウ酒色尿はポルフィリン症で、ヘマトポルフィリンなどのポルフィリン体が尿中へ排泄されて生じる。
📋 まとめの表を見る:尿色調異常とその原因
尿色調の異常は含まれる色素の種類によって分類して判断する。この表はComplete+ MTの索引・関連ページで該当箇所が確認できなかったため、確立された臨床検査学の一般知識に基づき作成(数値基準を含まないため確立知識の範囲内と判断)。
第61回 午前5(臨床検査総論)
尿沈渣の無染色標本を別に示す。認められるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA005.60971d7de8.jpg

- ①顆粒円柱
- ②脂肪円柱
- ③上皮円柱
- ④赤血球円柱
- ⑤白血球円柱
正答: ④赤血球円柱
ポイント
図の尿沈渣無染色標本では赤血球円柱が認められる。赤血球円柱は円柱基質である糖蛋白(Tamm-Horsfall蛋白)の中に赤血球が封入された構造で、尿細管腔内で形成されるため血尿の出血源が腎(糸球体)にあることを示す。急性糸球体腎炎やIgA腎症など糸球体性血尿を呈する腎実質性疾患で出現する重要な所見であり、膀胱や尿道など下部尿路からの出血では円柱を形成しないため、血尿の責任部位を推定する重要な鑑別の手がかりとなる。 ●糸球体病変を示す円柱=赤血球円柱(糸球体性血尿)・脂肪円柱(ネフローゼ症候群)。 ●尿細管・間質病変を示す円柱=上皮円柱(尿細管上皮の障害)・白血球円柱(腎盂腎炎・間質性腎炎)・ろう様円柱(高度腎不全・尿うっ滞)。 ●非特異的な円柱=硝子円柱(健常でも少数出現)・顆粒円柱(変性した細胞成分による)。
選択肢ごとの解説
- ① 顆粒円柱は変性した細胞成分が顆粒状に封入された円柱で、赤血球そのものの封入像はみられず本図の所見とは異なる。
- ② 脂肪円柱は脂肪滴(卵円形脂肪体)を含む円柱でネフローゼ症候群に出現し、赤血球を封入する本図の像とは異なる。
- ③ 上皮円柱は剥離した尿細管上皮細胞を封入した円柱で、急性尿細管壊死など尿細管の障害を示す所見である。
- ④ 正しい。赤血球を封入した赤血球円柱で、出血源が腎(糸球体)にある糸球体性血尿を示す重要な所見である。
- ⑤ 白血球円柱は白血球を封入した円柱で、腎盂腎炎や間質性腎炎など腎実質の炎症を示す所見である。
第61回 午前6(臨床検査総論)
イチゴゼリー状の下痢便を呈する疾患はどれか。
- ①コレラ
- ②細菌性赤痢
- ③アメーバ赤痢
- ④サルモネラ腸炎
- ⑤カンピロバクター腸炎
正答: ③アメーバ赤痢
ポイント
イチゴゼリー状(粘血便)の下痢便を呈する代表疾患はアメーバ赤痢である。赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の栄養型が大腸粘膜に侵入してフラスコ状潰瘍を形成し、血液と粘液が混じる特徴的な暗赤色の粘血便を生じる。診断は新鮮便を保温して赤血球を貪食した栄養型や嚢子を顕微鏡で検出することによる。経過中に血行性に肝へ波及してアメーバ性肝膿瘍を合併することもあり、治療には組織内型に有効なメトロニダゾールを用い、嚢子の駆除も行う。 ●粘血便・血性下痢を呈する腸管感染症=アメーバ赤痢・細菌性赤痢(志賀赤痢菌)・腸管出血性大腸菌〈O157〉・カンピロバクター腸炎。 ●水様性下痢が主体の腸管感染症=コレラ(米のとぎ汁様)・サルモネラ腸炎・ウイルス性胃腸炎(ノロ・ロタ)。 ●診断=新鮮便の保温輸送による栄養型・嚢子の検出、抗原検査や血清抗体検査を用いる。
選択肢ごとの解説
- ① コレラはコレラ菌の毒素による米のとぎ汁様の大量水様性下痢が特徴で、イチゴゼリー状の粘血便を呈する疾患ではない。
- ② 細菌性赤痢は志賀赤痢菌による膿粘血便を呈するが、典型的なイチゴゼリー状の粘血便はアメーバ赤痢に特徴的である。
- ③ 正しい。アメーバ赤痢は赤痢アメーバが大腸に潰瘍を形成し、イチゴゼリー状の暗赤色粘血便を呈する原虫性腸炎である。
- ④ サルモネラ腸炎は発熱と下痢を呈するが、便は水様〜粘液性が主体でイチゴゼリー状の粘血便は典型的ではない。
- ⑤ カンピロバクター腸炎は発熱・腹痛と時に血便を伴うが、イチゴゼリー状の粘血便はアメーバ赤痢に特徴的な所見である。
第61回 午前7(臨床検査総論)
淡水魚の生食によってヒトに感染するのはどれか。2つ選べ。
- ①肝蛭
- ②肝吸虫
- ③横川吸虫
- ④宮崎肺吸虫
- ⑤日本住血吸虫
正答: ②肝吸虫・③横川吸虫
ポイント
淡水魚の生食でヒトに感染する吸虫は肝吸虫と横川吸虫である。肝吸虫はコイ科の淡水魚(コイ・フナ)に被嚢したメタセルカリアを生食して感染し、肝内胆管に寄生して胆管炎・胆石・胆管癌の原因となる。横川吸虫はアユやシラウオの生食で感染して小腸に寄生し下痢などを起こす、わが国で最も普通にみられる吸虫である。いずれも第二中間宿主が淡水魚であり、被嚢したメタセルカリアの経口摂取で感染する点が共通し、生食を避け十分に加熱調理することで予防できる。 ●淡水魚の生食で感染=肝吸虫(コイ科の魚)・横川吸虫(アユ・シラウオ)。 ●淡水産カニ・サワガニの生食で感染=Westerman肺吸虫・宮崎肺吸虫。 ●水生植物(セリ・クレソン)で感染=肝蛭。 ●経皮感染(セルカリア)=日本住血吸虫(中間宿主ミヤイリガイ)。 ●診断=肝吸虫・横川吸虫はいずれも糞便中の虫卵検出により行い、虫卵の大きさや形態で鑑別する。
選択肢ごとの解説
- ① 肝蛭はセリやクレソンなどの水生植物に付着したメタセルカリアの経口摂取で感染する吸虫で、淡水魚の生食ではない。
- ② 正しい。肝吸虫はコイ科淡水魚の生食でメタセルカリアを摂取して感染し、肝内胆管に寄生して胆管病変を起こす吸虫である。
- ③ 正しい。横川吸虫はアユなどの淡水魚の生食で感染し、小腸に寄生するわが国で最も普通にみられる吸虫である。
- ④ 宮崎肺吸虫はサワガニなどの淡水産カニの生食で感染して肺に寄生する吸虫であり、淡水魚の生食では感染しない。
- ⑤ 日本住血吸虫は中間宿主ミヤイリガイから出たセルカリアの経皮感染で成立する吸虫で、魚の生食では感染しない。
第61回 午前8(臨床検査総論)
妊婦が感染すると子宮内の胎児に重篤な障害を与える寄生虫症はどれか。
- ①蟯虫症
- ②アニサキス症
- ③Lambl鞭毛虫症
- ④腟トリコモナス症
- ⑤トキソプラズマ症
正答: ⑤トキソプラズマ症
ポイント
妊婦が感染すると経胎盤的に胎児へ移行し重篤な障害を与える寄生虫症はトキソプラズマ症である。原虫トキソプラズマに妊娠中に初感染すると胎児に先天性トキソプラズマ症を起こし、水頭症・脈絡網膜炎・脳内石灰化・精神運動発達遅滞を生じる(先天性感染の四徴)。感染源は猫の糞便中に排出されるオーシストや、加熱不十分な食肉中のシストの経口摂取であり、妊婦は生肉や猫の糞便の取り扱いを避けることが予防につながり、妊娠初期の抗体検査で感受性を確認することが重要である。 ●母子(垂直)感染で胎児に障害を起こす病原体(TORCH)=トキソプラズマ・風疹ウイルス・サイトメガロウイルス・単純ヘルペスウイルス・梅毒トレポネーマ。 ●主に経口感染する原虫=トキソプラズマ・赤痢アメーバ・ランブル鞭毛虫(ジアルジア)・クリプトスポリジウム。
選択肢ごとの解説
- ① 蟯虫症は肛門周囲の瘙痒を主症状とする線虫症であり、経胎盤感染による胎児の重篤な障害は起こさない寄生虫症である。
- ② アニサキス症は海産魚介の生食による急性胃腸炎(急性腹症)が主体で、経胎盤感染で胎児を障害する寄生虫症ではない。
- ③ ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)は下痢・脂肪便・吸収不良を起こす原虫症で、胎児への重篤な障害は特徴ではない。
- ④ 腟トリコモナス症は性感染症で腟炎・帯下を起こすが、経胎盤的な胎児の重篤な障害を起こす寄生虫症ではない。
- ⑤ 正しい。トキソプラズマ症は妊娠中の初感染で経胎盤感染し、先天性トキソプラズマ症(水頭症・脈絡網膜炎等)を起こす。
📋 まとめの表を見る:寄生虫・原虫の感染経路の分類
第61回 午前9(臨床検査総論)
体毛に付着していた虫体(体長2.5 mm)の写真を別に示す。正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA009.9535eb774a.jpg

- ①ケジラミ
- ②ツツガムシ
- ③ヒゼンダニ
- ④アタマジラミ
- ⑤コロモジラミ
正答: ④アタマジラミ
ポイント
体長2.5mm程度で体毛(頭髪)に付着する虫体はアタマジラミである。アタマジラミは頭髪に寄生して吸血し、虫卵を毛幹に固着させて強い瘙痒を起こす。扁平な体と先端が鉤状の脚で毛にしがみつく形態をもち、学童で接触や寝具・帽子の共用により集団発生しやすい。治療にはフェノトリン製剤の外用や専用の梳き櫛による虫卵の除去などを用いる。シラミは脚6本の昆虫であり、脚8本のダニ類とは分類も形態も異なる点で鑑別する。 ●ヒトに寄生するシラミ=アタマジラミ(頭髪)・コロモジラミ(衣服に潜み発疹チフスを媒介)・ケジラミ(陰毛・性感染で体長約1mm)。 ●ヒトに関わるダニ類=ヒゼンダニ(疥癬・角層内にトンネル形成)・ツツガムシ(幼虫がツツガムシ病リケッチアを媒介)・マダニ(各種感染症を媒介)。 ●鑑別の要点=寄生部位(頭髪・陰毛・衣服)と脚の数(昆虫6本・ダニ8本)・体長で識別する。
選択肢ごとの解説
- ① ケジラミは主に陰毛に寄生する体長約1mmの小型シラミで、頭髪に付着する体長2.5mmの虫体としては典型的でない。
- ② ツツガムシはダニ類で、その幼虫がツツガムシ病(リケッチア)を媒介するもので、体毛に付着するシラミ様の虫体ではない。
- ③ ヒゼンダニは疥癬の原因ダニで皮膚角層内にトンネルを掘って寄生するもので、体毛に付着する虫体ではない。
- ④ 正しい。アタマジラミは頭髪に寄生する体長約2〜3mmのシラミで、瘙痒を起こし学童に接触で集団発生する寄生虫である。
- ⑤ コロモジラミは衣服の縫い目に潜んで発疹チフスを媒介するシラミで、頭髪ではなく衣類に寄生するため本例とは異なる。
第61回 午前10(臨床検査総論)
急性期の診断に末梢血塗抹標本のWright-Giemsa染色が有用なのはどれか。
- ①旋毛虫症
- ②広東住血線虫症
- ③Manson住血吸虫症
- ④Westerman肺吸虫症
- ⑤バンクロフト〈Bancroft〉糸状虫症
正答: ⑤バンクロフト〈Bancroft〉糸状虫症
ポイント
急性期の診断に末梢血塗抹標本のWright-Giemsa染色が有用なのはバンクロフト糸状虫症である。リンパ系フィラリアであるバンクロフト糸状虫は仔虫であるミクロフィラリアを夜間に末梢血中へ出現させる(夜間定期出現性)ため、夜間に採血した血液塗抹のGiemsa染色で鞘をもつ仔虫を検出して診断する。他の寄生虫は血液以外の検体や血清抗体検査が診断の中心となり、末梢血塗抹は有用でない点で区別され、採血の時間帯の選択が診断の成否を左右する。 ●血液中に寄生体が出現し血液塗抹(Giemsa)で診断=マラリア原虫・バンクロフト/マレー糸状虫などのフィラリア・トリパノソーマ・回帰熱ボレリア。 ●血液以外の検体で診断=旋毛虫(筋生検)・肺吸虫(喀痰の虫卵)・住血吸虫(糞便・尿の虫卵)・広東住血線虫(髄液所見)。
選択肢ごとの解説
- ① 旋毛虫症は筋肉内に被嚢する幼虫が病態の主体で、診断は筋生検や血清抗体検査により行い末梢血塗抹は有用でない。
- ② 広東住血線虫症は好酸球性髄膜炎を起こし、診断は髄液所見や血清抗体で行うもので末梢血塗抹は診断に用いない。
- ③ Manson住血吸虫症は糞便中の特徴的な側棘をもつ虫卵の検出で診断し、末梢血塗抹は診断には用いない吸虫症である。
- ④ Westerman肺吸虫症は喀痰や糞便中の虫卵検出・血清診断で行うもので、末梢血塗抹は診断に用いない吸虫症である。
- ⑤ 正しい。バンクロフト糸状虫症は夜間に採血した血液塗抹のGiemsa染色でミクロフィラリアを検出して診断する。
第61回 午前11(臨床検査医学総論)
異所性刺激による不整脈はどれか。
- ①左脚ブロック
- ②心房細動
- ③洞不整脈
- ④房室ブロック
- ⑤WPW症候群
正答: ②心房細動
ポイント
異所性刺激(洞結節以外の異常興奮源)による不整脈は心房細動である。心房細動は心房内に生じた無秩序な多数の異所性興奮とリエントリーにより心房が350回/分以上で細かく震える状態で、房室結節を介して不規則に心室へ伝わるため絶対性不整脈(不規則なRR間隔)を呈する。心房の有効な収縮が失われて左房内に血栓を形成し、これが遊離して脳塞栓の原因となるため抗凝固療法が重要である。不整脈は刺激の発生異常(異所性興奮)と伝導の異常に大別され、心房細動は前者の代表である。 ●異所性(洞結節外)興奮を成因とする不整脈=期外収縮・心房細動・心房粗動・発作性上室頻拍・心室頻拍・心室細動。 ●刺激伝導系の伝導障害による不整脈=房室ブロック・脚ブロック・WPW症候群(副伝導路)など。 ●洞不整脈は洞結節の興奮発生間隔の変動(呼吸性など)、洞機能不全症候群は洞結節の自動能低下や洞房伝導障害によるもので、いずれも異所性刺激による不整脈ではない。 ●心房細動の心電図=P波の消失・基線の細動波(f波)・RR間隔の絶対不整が特徴的所見である。
選択肢ごとの解説
- ① 左脚ブロックは刺激伝導系の左脚における伝導障害であり、異所性の異常興奮を成因とする不整脈ではない。
- ② 正しい。心房細動は心房内の異所性興奮とリエントリーによる不整脈で、不規則な心室応答(絶対性不整脈)を呈する。
- ③ 洞不整脈は呼吸性などによる洞結節の興奮間隔の生理的な変動であり、異所性刺激を成因とする不整脈ではない。
- ④ 房室ブロックは房室結節〜His束での伝導の遅延・途絶による不整脈で、異所性刺激を成因とするものではない。
- ⑤ WPW症候群はKent束という副伝導路を介した早期興奮で、異所性興奮そのものを成因とする不整脈ではない。
第61回 午前12(臨床検査医学総論)
炎症性腸疾患はどれか。
- ①Zollinger-Ellison症候群
- ②サルコイドーシス
- ③過敏性腸症候群
- ④吸収不良症候群
- ⑤Crohn病
正答: ⑤Crohn病
ポイント
炎症性腸疾患〈IBD〉に分類されるのはCrohn病である。Crohn病は口腔から肛門までの全消化管に非連続性(skip lesion)の全層性炎症を生じる原因不明の慢性炎症性腸疾患で、縦走潰瘍・敷石像・非乾酪性類上皮細胞肉芽腫・瘻孔形成を特徴とし若年者に好発する。潰瘍性大腸炎とともに炎症性腸疾患を構成し、いずれもわが国では難病に指定され、再燃と寛解を繰り返す慢性の経過をたどる。 ●炎症性腸疾患(IBD)=Crohn病(全消化管・非連続性・全層性)・潰瘍性大腸炎(大腸・連続性・粘膜中心)。 ●機能性・その他の腸疾患=過敏性腸症候群(器質的異常のない機能性)・吸収不良症候群(消化吸収障害の総称)。 ●類縁・鑑別疾患=サルコイドーシス(全身の非乾酪性肉芽腫)・Zollinger-Ellison症候群(ガストリン産生腫瘍)。
選択肢ごとの解説
- ① Zollinger-Ellison症候群はガストリン産生腫瘍による難治性の消化性潰瘍を起こす疾患で、炎症性腸疾患ではない。
- ② サルコイドーシスは全身の臓器に非乾酪性肉芽腫を生じる原因不明の疾患であり、炎症性腸疾患には分類されない。
- ③ 過敏性腸症候群は器質的異常を伴わずに腹痛・便通異常を呈する機能性腸疾患で、炎症性腸疾患には含まれない。
- ④ 吸収不良症候群は各種原因による栄養素の消化吸収障害の総称であり、炎症性腸疾患という疾患分類ではない。
- ⑤ 正しい。Crohn病は全消化管に非連続性の全層性炎症と肉芽腫を生じる、代表的な炎症性腸疾患(IBD)である。
第61回 午前13(臨床検査医学総論)
エンドトキシンショックを起こすのはどれか。
- ①緑膿菌
- ②カンジダ
- ③肺炎球菌
- ④黄色ブドウ球菌
- ⑤溶血性連鎖球菌
正答: ①緑膿菌
ポイント
エンドトキシンショックを起こすのはグラム陰性桿菌である緑膿菌である。エンドトキシン(内毒素)はグラム陰性菌の外膜を構成するリポ多糖〈LPS〉のリピドA部分が活性本体で、菌が崩壊する際に遊離してマクロファージからの炎症性サイトカイン産生を介し、発熱・血管拡張による血圧低下・播種性血管内凝固〈DIC〉を伴う敗血症性(エンドトキシン)ショックを引き起こす。一方グラム陽性菌は外膜をもたずLPSを欠くため、菌体外に分泌する外毒素による病態が中心となる。 ●エンドトキシン(LPS)をもつグラム陰性菌=緑膿菌・大腸菌・クレブシエラ・サルモネラ・髄膜炎菌。 ●外毒素(エキソトキシン)を産生する菌=黄色ブドウ球菌・破傷風菌・ボツリヌス菌・ジフテリア菌・溶血性連鎖球菌・ウェルシュ菌。 ●エンドトキシンの活性本体=外膜のリポ多糖のリピドA部分で、菌の崩壊時に遊離して炎症性サイトカイン産生を介しショックを起こす。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。緑膿菌はグラム陰性桿菌で、外膜のリポ多糖(エンドトキシン)によりエンドトキシンショックを起こす菌である。
- ② カンジダは真菌であり、グラム陰性菌のLPSを本体とするエンドトキシンショックを起こす病原体ではない。
- ③ 肺炎球菌はグラム陽性球菌でLPSをもたないため、エンドトキシンショックの原因菌とはならない細菌である。
- ④ 黄色ブドウ球菌はグラム陽性球菌で、外毒素(エキソトキシン)による病態が主体でエンドトキシンはもたない菌である。
- ⑤ 溶血性連鎖球菌はグラム陽性球菌で各種の外毒素を産生するが、LPS(エンドトキシン)はもたない細菌である。
第61回 午前14(臨床検査医学総論)
疾患と血中濃度が上昇するホルモンの組合せで正しいのはどれか。
- ①Addison病 — 副腎皮質刺激ホルモン
- ②Basedow病 — 甲状腺刺激ホルモン
- ③尿崩症 — バソプレッシン
- ④橋本病 — 副甲状腺ホルモン
- ⑤副腎性Cushing症候群 — アルドステロン
正答: ①Addison病 — 副腎皮質刺激ホルモン
ポイント
疾患と血中で上昇するホルモンの組合せで正しいのはAddison病と副腎皮質刺激ホルモン〈ACTH〉である。Addison病は副腎皮質の慢性破壊によりコルチゾールが低下する原発性副腎皮質機能低下症で、負のフィードバックが外れて下垂体からのACTH分泌が増加する。過剰なACTHのメラノサイト刺激作用により皮膚・粘膜の色素沈着を生じるのが特徴で、全身倦怠・低血圧・低血糖・低ナトリウム血症・高カリウム血症などを伴い、コルチゾール低値とACTH高値の所見が診断の手がかりとなる。 ●原発性の標的臓器障害でフィードバックにより上位ホルモンが上昇=Addison病(ACTH上昇)・原発性甲状腺機能低下症や橋本病(TSH上昇)。 ●逆に上位ホルモンが抑制される=副腎性Cushing症候群(副腎腫瘍でACTH低下)・Basedow病(甲状腺ホルモン過剰でTSH低下)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。Addison病は副腎皮質機能低下でコルチゾールが低下し、負のフィードバックでACTHが上昇する疾患である。
- ② Basedow病は甲状腺ホルモンの過剰により負のフィードバックでTSHが低下するため、この組合せは誤りである。
- ③ 中枢性尿崩症ではバソプレシン(ADH)の分泌が低下するため、本問では選ばない。腎性尿崩症は腎のADH反応性低下によるもので、ADH分泌の不足を原因とする中枢性とは区別する。
- ④ 橋本病は甲状腺機能低下を起こす疾患で上昇するのはTSHであり、副甲状腺ホルモンではないためこの組合せは誤りである。
- ⑤ 副腎性Cushing症候群は副腎腫瘍の自律的コルチゾール過剰でACTHは抑制され、アルドステロンが主体ではない。
📋 まとめの表を見る:疾患と血中ホルモン濃度の変化
橋本病でカルシトニンは特異的に変化しない。カルシトニン上昇は甲状腺髄様癌でみられる。
第61回 午前15(臨床検査医学総論)
腎糸球体障害の指標となる検査項目はどれか。2つ選べ。
- ①エリスロポエチン
- ②クレアチニンクリアランス〈CCr〉
- ③尿中微量アルブミン
- ④尿中N-アセチルグルコサミニダーゼ〈NAG〉
- ⑤尿中β₂-ミクログロブリン
正答: ②クレアチニンクリアランス〈CCr〉・③尿中微量アルブミン
ポイント
腎糸球体障害の指標となるのはクレアチニンクリアランス〈CCr〉と尿中微量アルブミンである。CCrは単位時間あたりに血漿からクレアチニンを除去できる血漿量で糸球体濾過量〈GFR〉を反映し、その低下は糸球体濾過能の障害を示す。尿中微量アルブミンは糸球体基底膜のバリア障害により血中アルブミンが漏出したもので、早期糖尿病性腎症をはじめとする糸球体障害の早期指標として用いられ、通常の尿蛋白定性検査では陰性となる段階でも異常を鋭敏に検出できる利点がある。 ●糸球体機能・障害の指標=GFR・クレアチニンクリアランス・尿中微量アルブミン・尿蛋白(アルブミン主体)。 ●尿細管機能・障害の指標=尿中NAG・尿中β2ミクログロブリン・尿中α1ミクログロブリン・尿糖(近位尿細管)。 ●糸球体と尿細管の障害を区別することで、腎障害の主座を推定し病態の評価に役立てることができる。
選択肢ごとの解説
- ① エリスロポエチンは腎の尿細管周囲間質細胞が産生する造血ホルモンで、糸球体障害そのものを示す指標ではない。
- ② 正しい。クレアチニンクリアランスは糸球体濾過量を反映し、その低下は糸球体濾過能の障害を示す指標である。
- ③ 正しい。尿中微量アルブミンは糸球体基底膜のバリア障害による漏出を示し、早期の糸球体障害の指標となる。
- ④ 尿中NAG(N-アセチルグルコサミニダーゼ)は尿細管上皮の逸脱酵素であり、尿細管障害を示す指標である。
- ⑤ 尿中β2ミクログロブリンは近位尿細管での再吸収障害を反映する低分子蛋白で、尿細管障害の指標である。
第61回 午前16(臨床生理学)
心電図波形とその成因の組合せで誤っているのはどれか。
- ①P波 — 心房の再分極
- ②QRS波 — 心室の脱分極
- ③T波 — 心室の再分極
- ④PQ間隔 — 房室伝導時間
- ⑤QT間隔 — 電気的収縮時間
正答: ①P波 — 心房の再分極
ポイント
心電図波形と成因の組合せで誤っているのはP波と心房の再分極である。P波は心房の脱分極(興奮)を表す波であり、心房の再分極(Ta波)は振幅が小さくQRS波に重なるため通常の心電図には明瞭に現れない。したがって「P波=心房の再分極」とする組合せが誤りで、正しくはP波は心房の脱分極を表す。他の波形・間隔と成因の組合せはいずれも正しく、心電図の各成分が心房・心室の脱分極と再分極のいずれを表すかを正確に対応づける必要がある。 ●各波の成因=P波(心房の脱分極)・QRS波(心室の脱分極)・T波(心室の再分極)・U波(成因に諸説)。 ●各間隔の意味=PQ間隔(房室伝導時間)・QT間隔(心室の電気的収縮時間=脱分極開始から再分極終了まで)・ST部分(心室の全興奮期)。 ●心房の再分極波(Ta波)=振幅が小さくPQ部分やQRS波に重なるため通常は心電図上に明瞭に現れない。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。P波は心房の脱分極(興奮)を表す波であり、心房の再分極ではないため成因との組合せが誤っている。
- ② QRS波は心室全体の脱分極(興奮)を表す波であり、成因との組合せは正しい記述である内容といえる。
- ③ T波は心室の再分極(興奮からの回復過程)を表す波であり、成因との組合せは正しい記述である。
- ④ PQ間隔は心房興奮の開始から心室興奮の開始までの房室伝導時間を表し、成因との組合せは正しい記述である。
- ⑤ QT間隔は心室の脱分極開始から再分極終了までの電気的収縮時間を表し、成因との組合せは正しい記述である。
📋 まとめの表を見る:心電図の各波形・時間と成因
心房の再分極(Ta波)は振幅が小さくQRS波に重なるため、通常の心電図には明瞭に現れない。
第61回 午前17(臨床生理学)
心電図を別に示す。所見で正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA017.e642cbd28b.jpg

- ①心房細動
- ②WPW症候群
- ③左脚ブロック
- ④Brugada症候群
- ⑤Ⅲ度房室ブロック
正答: ④Brugada症候群
ポイント
図の心電図はBrugada症候群の所見を示す。Brugada症候群は右側胸部誘導(V1〜V2)でcoved型(下行傾斜型)のST上昇を呈し、不完全右脚ブロック様の波形を伴うことが多い遺伝性のナトリウムチャネル異常症である。心室細動による失神や夜間突然死(いわゆるぽっくり病)の原因となり、器質的心疾患のない中年男性に好発する点が特徴で、失神や突然死の家族歴があり、心室細動の二次予防には植込み型除細動器〈ICD〉が用いられる。 ●ST上昇を呈する代表疾患=Brugada症候群(V1-2のcoved型)・急性心筋梗塞(対応誘導のST上昇)・急性心膜炎(広範な凹型ST上昇)・早期再分極。 ●致死的不整脈を起こす基礎疾患=Brugada症候群・QT延長症候群・肥大型心筋症・カテコラミン誘発性多形性心室頻拍。
選択肢ごとの解説
- ① 心房細動はP波の消失と基線の細動波・不規則なRR間隔が特徴で、右側胸部誘導のcoved型ST上昇は呈さない。
- ② WPW症候群はPQ短縮とデルタ波・QRS幅延長が特徴の早期興奮で、Brugada型のST上昇とは波形が異なる。
- ③ 左脚ブロックはV5-6で幅広いノッチ状R波とST-T変化を呈する所見であり、Brugada型のST上昇とは異なる。
- ④ 正しい。右側胸部誘導でcoved型ST上昇を呈し、心室細動・突然死の原因となるBrugada症候群の所見である。
- ⑤ Ⅲ度房室ブロックはP波とQRSが互いに無関係に出現する完全房室解離が特徴で、Brugada型のST上昇とは異なる。
📋 まとめの表を見る:不整脈・心筋梗塞の心電図所見
第61回 午前18(臨床生理学)
健常成人の足関節上腕血圧比〈ABI〉で正しいのはどれか。
- ①0.40
- ②0.60
- ③1.10
- ④1.60
- ⑤1.80
正答: ③1.10
ポイント
健常成人の足関節上腕血圧比〈ABI〉は約1.0〜1.4で、選択肢の中では1.10が正常範囲内の正しい値である。ABIは足関節の収縮期血圧を上腕の収縮期血圧で除した値で、健常では足関節血圧の方がやや高いため1.0以上となる。0.9以下は下肢動脈の狭窄・閉塞(末梢動脈疾患)を、1.4以上は動脈中膜の高度石灰化を示唆する所見でありいずれも異常値で、左右の上下肢の血圧を同時に測定することで下肢の動脈硬化や狭窄を簡便に評価できる検査である。 ●ABIの判定=0.9以下=末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)・0.9〜1.4=正常・1.4以上=石灰化(糖尿病や透析患者など)。 ●関連する血管機能検査=CAVI(動脈硬化度)・PWV(脈波伝播速度)・SPP(皮膚灌流圧)・TBI(足趾上腕血圧比)。 ●測定の留意点=石灰化の強い動脈では血管が圧迫されにくく偽性の高値となるため、ABI値だけでなく脈波形も併せて評価する。
選択肢ごとの解説
- ① 0.40は高度な下肢動脈閉塞(重症虚血)を示す異常低値であり、健常成人のABIの正常範囲の値ではない。
- ② 0.60は下肢動脈の狭窄・閉塞(末梢動脈疾患)を示す低値であり、健常成人のABIの正常範囲の値ではない。
- ③ 正しい。健常成人のABIは約1.0〜1.4で、1.10はその正常範囲内に収まる適切な値である。
- ④ 1.60は動脈中膜の高度な石灰化を示唆する異常高値であり、健常成人のABIの正常範囲の値ではない。
- ⑤ 1.80は動脈中膜の高度な石灰化を強く示唆する異常高値であり、健常成人のABIの正常範囲の値ではない。
📋 まとめの表を見る:足関節上腕血圧比〈ABI〉の基準値と判定
ABI=足関節収縮期血圧÷(左右の上腕収縮期血圧のうち高い方)。
第61回 午前19(臨床生理学)
肺気腫の患者で増加するのはどれか。
- ①1秒量〈FEV1.0〉
- ②1秒率〈FEV1%〉
- ③ピークフロー値〈PEF〉
- ④機能的残気量〈FRC〉
- ⑤肺拡散能〈DLco〉
正答: ④機能的残気量〈FRC〉
ポイント
肺気腫で増加するのは機能的残気量〈FRC〉である。肺気腫では肺胞壁の破壊と肺の弾性収縮力の低下により呼出が障害され、息を吐ききっても肺内に空気が残るエアトラッピングが生じる。このため残気量・機能的残気量・全肺気量が増加して肺は過膨張となり、樽状胸郭を呈する。一方、気道の閉塞性障害により1秒量・1秒率・ピークフローは低下し、肺胞壁の破壊によりガス交換面が減少して拡散能も低下する。機能的残気量は安静呼気位で肺内に残る空気量を指し、肺の過膨張を反映して肺気腫では増加する。 ●肺気腫(閉塞性換気障害)で増加する指標=残気量・機能的残気量・全肺気量・残気率。 ●肺気腫で低下する指標=1秒量・1秒率・ピークフロー値・肺拡散能(ガス交換面の減少による)。 ●閉塞性換気障害の判定=1秒率(FEV1%)70%未満を閉塞性障害とし、肺気腫はその代表的疾患である。
選択肢ごとの解説
- ① 1秒量〈FEV1.0〉は気道の閉塞性障害により呼出が制限されるため、肺気腫では低下する指標であり増加しない。
- ② 1秒率〈FEV1%〉は閉塞性換気障害を示す代表指標であり、肺気腫では70%未満に低下するため増加しない。
- ③ ピークフロー値〈PEF〉は努力呼出時の最大流速で、気道閉塞により肺気腫では低下するため増加しない。
- ④ 正しい。肺気腫では肺の弾性収縮力低下とエアトラッピングにより機能的残気量が増加し、肺は過膨張となる。
- ⑤ 肺拡散能〈DLco〉は肺胞壁(ガス交換面)の破壊により減少するため、肺気腫では低下する指標であり増加しない。
第61回 午前20(臨床生理学)
動脈血酸素解離曲線を右方移動(P₅₀を増加)させる因子はどれか。
- ①体温の上昇
- ②pHの上昇
- ③PaO₂の低下
- ④PaCO₂の低下
- ⑤2,3-DPG〈diphosphoglycerate〉の低下
正答: ①体温の上昇
ポイント
酸素解離曲線を右方移動させる(P50を増加させ、同じ酸素分圧での飽和度を下げてヘモグロビンが酸素を放しやすくする)因子は体温の上昇である。組織での代謝亢進に伴う体温上昇・pH低下(アシドーシス)・PaCO₂上昇・赤血球内2,3-DPGの増加はいずれもヘモグロビンの酸素親和性を低下させ、組織への酸素供給を促進する(Bohr効果)。逆の条件では曲線は左方移動して酸素を組織で放しにくくなり、肺での酸素の取り込みには有利に働く。 ●右方移動(酸素親和性低下・酸素を放しやすい)=体温上昇・pH低下・PaCO₂上昇・2,3-DPG増加。 ●左方移動(酸素親和性上昇・酸素を放しにくい)=体温低下・pH上昇・PaCO₂低下・2,3-DPG減少・一酸化炭素ヘモグロビン・胎児ヘモグロビン。 ●P50=酸素飽和度が50%となる酸素分圧で、増加は右方移動(親和性低下)、低下は左方移動(親和性上昇)を示す。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。体温の上昇はヘモグロビンの酸素親和性を低下させ、酸素解離曲線を右方移動(P50増加)させる因子である。
- ② pHの上昇(アルカローシス)はヘモグロビンの酸素親和性を高め、曲線を左方移動させるため右方移動の因子ではない。
- ③ PaO₂の低下は曲線上の動作点を低酸素側へ動かすが、曲線そのものを右方へ移動させる因子ではないため誤りである。
- ④ PaCO₂の低下はヘモグロビンの酸素親和性を高めて曲線を左方移動させるため、右方移動の因子ではない。
- ⑤ 2,3-DPGの低下はヘモグロビンの酸素親和性を高めて曲線を左方移動させるため、右方移動の因子ではない。
第61回 午前21(臨床生理学)
重症の睡眠時無呼吸症候群と考えられる終夜睡眠ポリグラフィの結果はどれか。
- ①オトガイ筋の活性が高い。
- ②無呼吸低呼吸指数4回/時間
- ③中途覚醒〈arousal〉35回/時間
- ④脳波でθ波を認める睡眠ステージが多い。
- ⑤無呼吸時の経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉の最低値95%
正答: ③中途覚醒〈arousal〉35回/時間
ポイント
重症の睡眠時無呼吸症候群を示す終夜睡眠ポリグラフィの結果は中途覚醒(arousal)35回/時間である。睡眠中の無呼吸・低呼吸により睡眠が頻回に分断されて覚醒反応が多発するため、覚醒指数の増加は重症度を反映する。重症の判定には無呼吸低呼吸指数〈AHI〉30回/時間以上、無呼吸時のSpO₂最低値の著明な低下などが指標として用いられ、これらが多いほど日中の強い眠気や高血圧・不整脈などの心血管合併症のリスクが高まり、治療介入の必要性が増す。 ●睡眠時無呼吸症候群の重症度指標=AHI(5以上で診断・15以上で中等症・30以上で重症)・最低SpO₂の低下・覚醒指数の増加。 ●終夜睡眠ポリグラフィの記録項目=脳波・眼球運動・オトガイ筋筋電図・鼻口気流・胸腹運動・SpO₂・心電図・いびき音。 ●無呼吸の分類=閉塞性(気道閉塞で呼吸努力あり)・中枢性(呼吸努力消失)・混合性に分けられる。
選択肢ごとの解説
- ① オトガイ筋の活性が高いことは筋緊張が保たれた状態を意味し、重症の睡眠時無呼吸を直接示す所見ではない。
- ② 無呼吸低呼吸指数4回/時間はAHI5未満で正常域に相当し、重症どころか診断基準すら満たさない数値である。
- ③ 正しい。中途覚醒35回/時間は無呼吸による睡眠の分断と覚醒反応の多発を示し、重症の睡眠時無呼吸を示唆する。
- ④ 睡眠ステージに関する記述で、脳波所見のみでは無呼吸の重症度を判定する直接的な指標とはならない。
- ⑤ 無呼吸時の最低SpO₂が95%は酸素飽和度の低下が軽度であり、重症では著明に低下するため重症の所見ではない。
📋 まとめの表を見る:無呼吸低呼吸指数〈AHI〉による睡眠時無呼吸症候群の重症度分類
AHI≧5かつ自覚症状ありでSASと診断、AHI≧15であれば症状の有無に関わらずSASと診断する。脳波上の覚醒反応(arousal)回数の増加も重症度の目安となる。
第61回 午前22(臨床生理学)
心臓超音波検査において左室長軸断層像で観察できない部位はどれか。
正答: ⑤肺動脈弁
ポイント
心臓超音波検査の左室長軸断層像(傍胸骨左縁長軸断面)で観察できないのは肺動脈弁である。この断面では右室流出路・左房・左室・心室中隔・大動脈弁・僧帽弁・上行大動脈基部・左室後壁が描出されるが、肺動脈弁は描出範囲の外にあり観察できない。肺動脈弁の評価には大動脈弁レベルの傍胸骨短軸像や右室流出路長軸像など、別の断面に切り替えて観察する必要がある点に注意する。左室長軸像は弁膜症や左室壁運動の評価に用いる基本断面である。 ●左室長軸像で観察できる構造=右室流出路・左房・左室・心室中隔・大動脈弁・僧帽弁・左室後壁・上行大動脈基部。 ●肺動脈弁を評価する断面=傍胸骨短軸像(大動脈弁レベル)・右室流出路長軸像・心窩部からの描出。 ●左室長軸像の臨床的意義=大動脈弁・僧帽弁の弁膜症評価や左室壁運動・左室径の計測に用いる基本断面である。
選択肢ごとの解説
- ① 右室は左室長軸像の前方に右室流出路として描出されるため、この断面で観察できる構造であり誤りである。
- ② 左房は左室長軸像で大動脈基部の後方(僧帽弁の奥)に描出されるため、この断面で観察できる構造である。
- ③ 心室中隔は左室長軸像で左室と右室の間の壁として描出されるため、この断面で観察できる構造である。
- ④ 大動脈弁は左室長軸像で大動脈基部に描出され開閉が観察できるため、この断面で観察できる構造である。
- ⑤ 正しい。肺動脈弁は左室長軸像の描出範囲外に位置するため、この断面では観察できない弁である。
第61回 午前23(臨床生理学)
上腹部正中横走査による膵臓の超音波像を別に示す。矢印で示すのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA023.fdcec8ffa7.jpg

- ①脾静脈
- ②下大静脈
- ③腹腔動脈
- ④腹部大動脈
- ⑤上腸間膜動脈
正答: ①脾静脈
ポイント
上腹部正中横走査による膵臓の超音波像で、膵体尾部の背側に沿って右方へ走行する管腔として描出される矢印部位は脾静脈である。脾静脈は膵臓の背側を水平に走行し、上腸間膜静脈と合流して門脈本幹となるため、膵臓を描出する際の重要なランドマークとなる。膵体部はこの脾静脈の前方に位置するため、検査では脾静脈を指標として膵実質を頭尾方向や左右方向に追って描出・観察していくと膵全体を効率よく評価できる。 ●膵周囲の血管(横走査でのランドマーク)=脾静脈(膵背側を水平に走行)・上腸間膜動脈(大動脈前面・周囲に高エコー)・腹部大動脈(背側左寄り・拍動性)・下大静脈(背側右寄り)・腹腔動脈(大動脈前面から分岐)。 ●門脈系の合流=脾静脈+上腸間膜静脈→門脈本幹。 ●膵臓の区分=膵頭部・膵体部・膵尾部に分けられ、脾静脈は膵体尾部の背側を走行するため部位同定の指標となる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。膵体尾部の背側に沿って走行する管腔は脾静脈であり、膵臓を描出する際のランドマークとなる血管である。
- ② 下大静脈は背側の右寄りを縦走する太い静脈であり、膵背側を水平に走る本例の管腔とは走行・位置が異なる。
- ③ 腹腔動脈は大動脈前面から分岐し総肝動脈・脾動脈・左胃動脈に分かれる短い動脈で、膵背側を長く走行しない。
- ④ 腹部大動脈は背側のやや左寄りを縦走する拍動性の太い動脈であり、膵背側を水平に走る脾静脈とは異なる血管である。
- ⑤ 上腸間膜動脈は大動脈前面を縦走し周囲に高エコーを伴う動脈であり、膵背側を横走する脾静脈とは別の血管である。
第61回 午前24(臨床生理学)
甲状腺疾患と超音波所見の組合せで正しいのはどれか。
- ①亜急性甲状腺炎 — 微細石灰化
- ②橋本病 — 嚢胞性病変
- ③乳頭癌 — 辺縁低エコー帯
- ④Basedow病 — 甲状腺びまん性腫大
- ⑤悪性リンパ腫 — 甲状腺びまん性萎縮
正答: ④Basedow病 — 甲状腺びまん性腫大
ポイント
甲状腺疾患と超音波所見の組合せで正しいのはBasedow病と甲状腺びまん性腫大である。Basedow病はTSH受容体抗体による甲状腺機能亢進症で、甲状腺は全体がびまん性に腫大し、内部は不均一な低エコーを呈し、カラードプラで血流の著明な増加(thyroid infernoと呼ばれる像)を示すのが特徴である。これにより内部不均一な低エコーを呈する橋本病や有痛性の低エコー域を呈する亜急性甲状腺炎などとの鑑別の一助となる。 ●甲状腺疾患の超音波所見=Basedow病(びまん性腫大・血流増加)・橋本病(びまん性腫大・内部不均一・低エコー)・乳頭癌(微細石灰化・境界不明瞭・縦横比大)。 ●その他=亜急性甲状腺炎(有痛部に一致した低エコー域)・悪性リンパ腫(著明な低エコー腫瘤)・腺腫様甲状腺腫(多発結節)。
選択肢ごとの解説
- ① 亜急性甲状腺炎は有痛部に一致した低エコー域が特徴で、微細石灰化は乳頭癌の所見であるため組合せが誤りである。
- ② 橋本病はびまん性腫大と内部エコーの不均一・低エコー化が特徴で、嚢胞性病変を主所見とはせず組合せが誤りである。
- ③ 乳頭癌は微細(砂粒状)石灰化や境界不明瞭が特徴で、辺縁低エコー帯(ハロー)は良性腫瘤に多く組合せが誤りである。
- ④ 正しい。Basedow病は甲状腺機能亢進症でびまん性腫大を呈し、血流の著明な増加を伴う超音波所見を示す疾患である。
- ⑤ 悪性リンパ腫は甲状腺の著明な低エコー腫瘤を呈する疾患であり、びまん性萎縮ではないため組合せが誤りである。
📋 まとめの表を見る:甲状腺疾患と超音波所見
腫瘤の悪性所見は形状不整・境界不明瞭・内部エコー不均質・微細高エコー(石灰化)の有無などで総合評価する(教科書の甲状腺結節の良悪性評価表に基づく)。乳頭癌・悪性リンパ腫の所見は一般的な超音波診断知見。
第61回 午前25(臨床生理学)
部位と機能の組合せで正しいのはどれか。
- ①側頭葉 — 体性感覚
- ②後頭葉 — 聴覚
- ③海馬 — 記憶
- ④脳幹 — 嗅覚
- ⑤小脳 — 意識
正答: ③海馬 — 記憶
ポイント
部位と機能の組合せで正しいのは海馬と記憶である。海馬は側頭葉内側の大脳辺縁系に属する構造で、新しい情報を短期記憶から長期記憶へ固定する過程に中心的役割を果たす。両側の海馬が障害されると新たな記憶を形成できない前向性健忘を生じる。他の選択肢はいずれも大脳の機能局在と機能の対応が誤っており、前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉の各葉が担う機能を正確に対応づける必要がある。 ●大脳の機能局在=前頭葉(一次運動野・運動性言語中枢〈Broca野〉・思考・人格)・頭頂葉(体性感覚野)・側頭葉(聴覚野・感覚性言語中枢〈Wernicke野〉)・後頭葉(視覚野)・海馬(記憶)。 ●その他の中枢=脳幹(呼吸・循環など生命維持中枢と覚醒)・小脳(平衡・運動の協調)・嗅覚(嗅球・側頭葉内側)。 ●大脳辺縁系=海馬(記憶)・扁桃体(情動)・帯状回などからなり、記憶や本能・情動に関与する。
選択肢ごとの解説
- ① 側頭葉は聴覚や感覚性言語(言葉の理解)を担う部位であり、体性感覚は頭頂葉が担うため組合せが誤りである。
- ② 後頭葉は視覚を担う部位であり、聴覚は側頭葉が担うため、後頭葉と聴覚という組合せは誤りである内容といえる。
- ③ 正しい。海馬は大脳辺縁系に属し、新しい記憶の形成・長期記憶への固定に中心的役割を果たす部位である。
- ④ 脳幹は呼吸・循環など生命維持の中枢であり、嗅覚を担う部位ではないためこの組合せは誤りである。
- ⑤ 小脳は平衡と運動の協調を担う部位であり、意識を担うものではないため小脳と意識の組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:中枢神経系の部位と機能
言語中枢はほとんどの場合、左半球(優位半球)にある。運動は中心前回、体性感覚は中心後回であり取り違えやすい。
第61回 午前26(臨床生理学)
疾患と脳波所見の組合せで誤っているのはどれか。
- ①肝性脳症 — 三相波
- ②欠神発作 — 2 Hz棘徐波複合
- ③West症候群 — ヒプスアリスミア
- ④単純ヘルペス脳炎 — 周期性一側性てんかん型放電
- ⑤古典型Creutzfeldt-Jakob病 — 周期性同期性放電
正答: ②欠神発作 — 2 Hz棘徐波複合
ポイント
脳波の特徴所見と疾患の組合せの正誤を問う設問である。欠神発作(小発作)に特徴的な脳波は左右対称同期性で全般性の3 Hz棘徐波複合であり、2 Hzではない。約2〜2.5 Hzの遅い(slow)棘徐波複合はLennox-Gastaut症候群でみられる所見であるため、欠神発作—2 Hz棘徐波複合の組合せが誤りである。定型欠神発作は過呼吸賦活で誘発されやすく、突然の意識消失と回復を示す。 ●発作性・てんかん性の所見=欠神発作の3 Hz棘徐波複合、West症候群(点頭てんかん)のヒプスアリスミア(高振幅徐波に多焦点性棘波が混在する無秩序波形)、Lennox-Gastaut症候群の遅棘徐波複合。 ●周期性の所見=肝性脳症の三相波、単純ヘルペス脳炎の周期性一側性てんかん型放電〈PLEDs〉、古典型Creutzfeldt-Jakob病の周期性同期性放電〈PSD〉。 ●賦活法との関係=欠神発作の3 Hz棘徐波複合は過呼吸で、光突発反応は閃光(光)刺激で誘発されやすく、賦活法は突発波の検出に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 肝性脳症ではアンモニアの上昇など代謝性脳症を反映して、両側同期性の三相波が出現する。組合せは正しい記述である。
- ② 誤り。欠神発作に特徴的なのは3 Hz棘徐波複合であり、2 Hz(遅い)棘徐波複合はLennox-Gastaut症候群でみられる所見である。
- ③ West症候群(点頭てんかん)ではヒプスアリスミア(高振幅徐波と多焦点性棘波が混在する無秩序な波形)がみられる。組合せは正しい。
- ④ 単純ヘルペス脳炎では側頭葉を中心に周期性一側性てんかん型放電〈PLEDs〉がみられる。組合せは正しい記述である。
- ⑤ 古典型Creutzfeldt-Jakob病では病勢の進行に伴い約1秒周期の周期性同期性放電〈PSD〉が出現する。組合せは正しい。
📋 まとめの表を見る:脳波所見と対応疾患
変異型Creutzfeldt-Jakob病(牛海綿状脳症〈BSE〉関連)ではPSDはみられない点に注意。
第61回 午前27(臨床生理学)
脳波を別に示す。焦点部位はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA027.70dc6ecc32.jpg

正答: ②左前頭部
ポイント
提示された脳波から突発波の焦点部位を判定する図問題である。脳波の焦点(突発波の起源)は、その電位が最も陰性で振幅が最大となる電極部位として同定され、隣接する2導出間で波形が反対向きになる位相逆転(フェーズリバーサル)の生じる電極が焦点に相当する。本図では左前頭部に最大振幅と位相逆転を伴う突発波が認められ、焦点は左前頭部と判定される。 ●焦点同定の指標=最大振幅・最大陰性電位・隣接導出間の位相逆転(フェーズリバーサル)。 ●電極配置(国際10-20法)=前頭極Fp・前頭部F、中心部C、頭頂部P、側頭部T、後頭部O。奇数が左、偶数が右、zが正中線上を表す。 ●臨床的意義=突発波の焦点同定はてんかん焦点の局在診断や、器質性病変の部位推定に用いられ、双極導出では位相逆転、単極導出では振幅最大で判定する。
選択肢ごとの解説
- ① 中心部はC3・C4・Czに相当する部位であるが、本図にみられる最大振幅・位相逆転の部位とは一致しないため誤り。
- ② 正しい。本図では左前頭部(Fp1・F3)に最大振幅と位相逆転を伴う突発波が認められ、焦点は左前頭部と判定される。
- ③ 右前頭部はFp2・F4に相当するが、本図では振幅最大と位相逆転がいずれも左側にみられ、右前頭部とは一致しないため誤り。
- ④ 左側頭部はT3(T7)などに相当する部位であるが、本図の最大振幅・位相逆転の焦点部位とは一致しないため誤り。
- ⑤ 右側頭部はT4(T8)などに相当する部位であるが、本図にみられる最大振幅・位相逆転の部位とは一致しないため誤り。
第61回 午前28(臨床生理学)
誘発脳波について誤っているのはどれか。
- ①加算平均を行う。
- ②立ち上がり潜時を測定する。
- ③聴覚刺激はクリック音で行う。
- ④体性感覚刺激は電気刺激で行う。
- ⑤視覚刺激は白黒格子パターンリバーサル画像で行う。
正答: ②立ち上がり潜時を測定する。
ポイント
誘発脳波(誘発電位)の手技に関する設問で、誤りを選ぶ。誘発電位は感覚刺激後に出現するきわめて微小な電位を、刺激に同期した加算平均により背景脳波から抽出して記録する。評価する指標は各成分(波)の頂点潜時(ピーク潜時)と振幅であり、立ち上がり潜時(オンセット潜時)を測定するわけではない。潜時は刺激から各成分の頂点までの時間として測定する。 ●代表的な誘発電位=聴性脳幹反応〈ABR〉(クリック音刺激)、体性感覚誘発電位〈SEP〉(末梢神経の電気刺激)、視覚誘発電位〈VEP〉(白黒格子のパターンリバーサル刺激)。 ●記録の要点=刺激に同期した加算平均でS/N比を高め、各成分の頂点潜時・振幅・左右差を評価し、神経伝導路の機能を判定する。 ●臨床的意義=ABRは聴力・脳幹機能や脳死判定の補助に、SEPは脊髄・末梢神経機能の評価に、VEPは視神経炎など視覚伝導路障害の評価に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 誘発電位は微小なため、刺激に同期した加算平均によって背景脳波から抽出する。正しい記述である。
- ② 誤り。誘発電位では各成分(波)の頂点潜時(ピーク潜時)を測定するのであり、立ち上がり潜時を測定するわけではない。
- ③ 聴性脳幹反応〈ABR〉などの聴覚刺激には、立ち上がりの速いクリック音を用いる。正しい記述である。
- ④ 体性感覚誘発電位〈SEP〉では正中神経など末梢神経への電気刺激を用いる。正しい記述である。
- ⑤ 視覚誘発電位〈VEP〉では白黒格子のパターンリバーサル刺激(市松模様の反転)を用いる。正しい記述である。
第61回 午前29(臨床化学)
ヒトの生体乾燥重量(%)で最も多く存在する元素はどれか。
正答: ②炭素
ポイント
ヒトの生体乾燥重量(水分を除いた重量)の%で最も多く存在する元素を問う設問である。乾燥重量では蛋白質・脂質・糖質などの有機物が主体となり、それらの骨格を構成する元素として炭素が最も多くを占める。これに対し生体の湿重量では水(H₂O)が約60〜70%を占めるため酸素・水素の割合が高いが、乾燥重量では水が除かれるため、有機物骨格の炭素が最大となる。 ●生体(湿重量)の元素=酸素>炭素>水素>窒素の順で多く、水が多くを占めるため酸素が最多となる。 ●生体(乾燥重量)の元素=炭素が最多。蛋白質・脂質・糖質など有機物の炭素骨格を構成するためであり、次いで酸素・窒素・水素が続く。 ●主要元素の役割=炭素・水素・酸素・窒素は蛋白質・脂質・糖質・核酸を構成し、これらは生体の有機物の大部分を占めるため乾燥重量に強く反映される。
選択肢ごとの解説
- ① 水素は有機物に多く含まれるが、乾燥重量では炭素より割合が少なく最多ではない。なお選択肢の「水」は「水素」が正しい名称である。
- ② 正しい。生体乾燥重量では蛋白質・脂質などの有機物が主体となり、その骨格を構成する炭素が最も多く存在する。
- ③ 窒素は蛋白質や核酸に含まれる元素であるが、乾燥重量全体に占める割合は炭素より小さく、最多ではない。
- ④ 酸素は生体の湿重量では水として最多だが、乾燥重量では水が除かれるため、炭素を上回る最多元素にはならない。
- ⑤ カルシウムは骨に多いミネラルだが、乾燥重量全体に占める割合は有機物を構成する炭素に比べてわずかである。
第61回 午前30(臨床化学)
280 nmにおける吸光度が2.0と0.5の2種類のアルブミン溶液を1:2の割合で混合した。この混合液の280 nmにおける吸光度として正しいのはどれか。
正答: ③1.0
ポイント
吸光度の異なる2種のアルブミン溶液を混合した際の混合液の吸光度を計算する設問である。吸光度はLambert-Beer(ランベルト・ベール)の法則により濃度に比例し、同一物質・同一光路長では加成性が成り立つため、混合液の吸光度は各液の吸光度を体積比で加重平均して求められる。吸光度2.0と0.5を体積比1:2で混合するので、(2.0×1+0.5×2)÷(1+2)=(2.0+1.0)÷3=1.0となる。 ●Lambert-Beerの法則=A=ε・c・l(A吸光度、εモル吸光係数、c濃度、l光路長)で、吸光度は濃度に比例する。 ●混合液の吸光度=同一物質・同一セルでは各液の吸光度を体積比で加重平均する。希釈すれば濃度に比例して吸光度も低下するという関係に基づく。 ●吸光度測定の注意=吸光度は通常0〜1付近で直線性が保たれ、高吸光度では検量線が直線から外れるため、適切な希釈により測定範囲内で測定する。
選択肢ごとの解説
- ① 0.1は加重平均値1.0と大きく異なり、体積比1:2で混合した場合の計算結果には合致しない誤った値である。
- ② 0.5は希薄側の液そのものの吸光度であり、2液を混合した後の加重平均による吸光度を示していないため誤り。
- ③ 正しい。(2.0×1+0.5×2)÷3=1.0となり、体積比1:2で混合した混合液の280 nmにおける吸光度は1.0である。
- ④ 1.2は体積比を考慮した加重平均の計算結果1.0と一致せず、混合液の吸光度として適切でない誤った値である。
- ⑤ 1.5は両液の単純平均(2.0と0.5の平均1.25)にも合わず、体積比1:2を反映した加重平均値でもないため誤り。
第61回 午前31(臨床化学)
抗原抗体反応で非特異反応の要因はどれか。2つ選べ。
- ①異好性抗体
- ②カイロミクロン
- ③リウマトイド因子
- ④高アルブミン血症
- ⑤高ビリルビン血症
正答: ①異好性抗体・③リウマトイド因子
ポイント
免疫学的測定における非特異反応(偽陽性・偽反応)の要因を問い、2つ選ぶ設問である。異好性抗体は動物の免疫グロブリンなどに交差反応する抗体で、サンドイッチ法などで測定系の捕捉抗体と検出抗体を架橋し非特異反応を起こす。リウマトイド因子はIgGのFc部分に対する自己抗体(主にIgM)で、測定系の抗体IgGに結合して偽反応を生じる。いずれも測定値の偽高値・偽低値の原因となる。 ●抗原抗体反応の非特異反応の要因=異好性抗体、リウマトイド因子〈RF〉、ヒト抗マウス抗体〈HAMA〉。これらは抗体同士の結合により偽反応を起こす。 ●分光学的に測定誤差を起こす血清成分=高ビリルビン・溶血(ヘモグロビン)・乳び(カイロミクロン)。これらは光学的干渉であり、抗原抗体反応そのものの非特異反応とは区別される。 ●非特異反応への対策=ブロッキング試薬の添加、希釈直線性の確認、別法(異なる測定原理)での再検により、偽反応の有無を評価して測定値を判定する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。異好性抗体は測定系の動物由来抗体に交差結合して捕捉・検出抗体を架橋し、抗原抗体反応で非特異反応を引き起こす。
- ② カイロミクロンは乳びとして光学的(分光学的)干渉を起こす成分であり、抗原抗体反応そのものの非特異反応の要因ではない。
- ③ 正しい。リウマトイド因子はIgGのFcに対する自己抗体で、測定系の抗体IgGに結合して非特異反応(偽反応)を生じる。
- ④ 高アルブミン血症は通常の免疫学的測定で抗原抗体反応の非特異反応の要因とはならず、要因として該当しない。
- ⑤ 高ビリルビン血症は分光学的に測定に干渉し得るが、抗原抗体反応そのものの非特異反応の要因ではないため該当しない。
第61回 午前32(臨床化学)
低ナトリウム血症をきたすのはどれか。
- ①下痢
- ②嘔吐
- ③尿崩症
- ④Cushing症候群
- ⑤ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉
正答: ⑤ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉
ポイント
低ナトリウム血症をきたす病態を問う設問である。抗利尿ホルモン不適合分泌症候群〈SIADH〉では、血漿浸透圧に見合わない過剰なADH(バソプレシン)分泌により腎集合管での水再吸収が亢進し、体内に水が貯留して希釈性の低ナトリウム血症を生じる。尿は濃縮され血清浸透圧は低下する。下痢・嘔吐でもナトリウムは喪失するが、主に循環血漿量の減少(脱水)が前面に出る。 ●低ナトリウム血症をきたす病態=SIADH、副腎皮質機能低下症(Addison病)、心不全・肝硬変・ネフローゼ症候群による希釈。 ●高ナトリウム血症をきたす病態=尿崩症(ADHの欠乏・作用不全により多量の希釈尿が出る)、Cushing症候群(コルチゾール過剰によるナトリウム貯留傾向)。 ●ナトリウム濃度の意義=血清ナトリウムは細胞外液量と浸透圧の主たる規定因子で、水とナトリウムの相対的なバランスにより高値・低値が決まる。
選択肢ごとの解説
- ① 下痢では水とナトリウムがともに喪失するが、主に脱水(循環血漿量減少)をきたす。なお選択肢の「下痢」が正しい名称である。
- ② 嘔吐では胃液喪失により脱水と代謝性アルカローシスをきたすが、典型的に低ナトリウム血症をきたす病態とはいえない。
- ③ 尿崩症ではADHの欠乏・作用不全のために多量の希釈尿が排泄され、低ナトリウム血症ではなくむしろ高ナトリウム血症をきたす。
- ④ Cushing症候群ではコルチゾール過剰によりナトリウム貯留傾向となるため、低ナトリウム血症はきたしにくい病態である。
- ⑤ 正しい。SIADHでは過剰なADHにより腎集合管で水が再吸収・貯留され、希釈性の低ナトリウム血症をきたす。
第61回 午前33(臨床化学)
糖尿病の診断基準で用いられるのはどれか。2つ選べ。
- ①血糖
- ②尿糖
- ③HbA1c
- ④グリコアルブミン
- ⑤1,5-アンヒドログルシトール〈1,5-AG〉
正答: ①血糖・③HbA1c
ポイント
糖尿病の診断基準で用いられる検査を問い、2つ選ぶ設問である。診断には血糖値(空腹時血糖・75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値・随時血糖)と、過去1〜2か月の平均血糖を反映するHbA1cが用いられる。血糖が糖尿病型でかつHbA1cが糖尿病型(6.5%以上)であれば、一度の検査で糖尿病と診断できる。尿糖は腎の排泄閾値に左右され感度が低く、診断基準には含まれない。 ●糖尿病の診断に用いる=空腹時血糖126 mg/dL以上、OGTT2時間値200 mg/dL以上、随時血糖200 mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上。 ●血糖コントロールの補助指標(診断基準ではない)=グリコアルブミン(過去約2週間の平均血糖を反映)、1,5-アンヒドログルシトール〈1,5-AG〉(短期の血糖変動・尿糖の影響を受ける)。 ●判定の流れ=血糖(糖尿病型)とHbA1c(糖尿病型)が同一採血で確認されれば一度で糖尿病と診断でき、いずれか一方のみの場合は再検で確認する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。血糖値(空腹時・OGTT2時間値・随時)は糖尿病の診断基準の中心的指標である。なお「血糖」が正しい名称である。
- ② 尿糖は腎の排泄閾値に左右され感度が低いため、糖尿病の診断基準には含まれない。なお選択肢の「尿糖」が正しい名称である。
- ③ 正しい。HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映し、6.5%以上が糖尿病型として診断基準に用いられる指標である。
- ④ グリコアルブミンは過去約2週間の平均血糖を反映する補助指標であるが、糖尿病の診断基準そのものには用いられない。
- ⑤ 1,5-アンヒドログルシトール〈1,5-AG〉は短期の血糖変動を反映する補助指標で、糖尿病の診断基準には用いられない。
第61回 午前34(臨床化学)
蛋白含有量(重量%)が最も多いリポ蛋白はどれか。
- ①HDL
- ②IDL
- ③LDL
- ④VLDL
- ⑤カイロミクロン
正答: ①HDL
ポイント
蛋白含有量(重量%)が最も多いリポ蛋白を問う設問である。リポ蛋白は密度が高い(小型)ものほど蛋白の割合が高く、脂質(特にトリグリセリド)の割合が低い。HDLは最も密度が高く小型のリポ蛋白で、蛋白含有量が約50%と最も多い。逆にカイロミクロンは脂質が大部分を占め、蛋白はわずか(約1〜2%)である。 ●密度・蛋白含有量の順(高い→低い)=HDL>LDL>IDL>VLDL>カイロミクロン。密度が高いほど蛋白に富み脂質に乏しい。 ●主な脂質と役割=カイロミクロンとVLDLはトリグリセリドの運搬を担い、LDLはコレステロールを末梢組織へ運び、HDLは末梢のコレステロールを肝へ逆転送する。 ●測定上の意義=リポ蛋白は超遠心法(密度)や電気泳動で分画され、密度の高いHDLは蛋白に富み小型で、低いカイロミクロンは脂質に富み大型である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。HDLは最も密度が高く小型のリポ蛋白で、蛋白含有量が約50%と5種のリポ蛋白の中で最も多い。
- ② IDLはVLDLとLDLの中間の密度・組成をもつリポ蛋白であり、蛋白含有量はHDLよりも少ないため最多ではない。
- ③ LDLはコレステロールに富むリポ蛋白で、蛋白含有量はHDLよりも少なく、最も多いとはいえないため誤り。
- ④ VLDLはトリグリセリドの運搬を担い脂質に富むリポ蛋白であるため、蛋白含有量は相対的に少なく最多ではない。
- ⑤ カイロミクロンは脂質が大部分を占め、蛋白含有量は約1〜2%と5種のリポ蛋白の中で最も少ないため誤り。
📋 まとめの表を見る:主なリポ蛋白の分類(比重・脂質構成・アポ蛋白・蛋白含有量)
電気泳動での移動度は陽極側からHDL(α)>VLDL(preβ)>LDL(β)>原点(カイロミクロン)の順。アポA1はLCATを活性化、アポC2はLPLを活性化、アポC3はLPLを抑制、アポEはLDL受容体・レムナント受容体に認識される。LDL-コレステロールは日内変動が少なく、血清混濁はLDL自体ではなくトリグリセライド(カイロミクロン・VLDL)による。
第61回 午前35(臨床化学)
レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ〈LCAT〉を活性化するアポリポ蛋白はどれか。
- ①アポA1
- ②アポA2
- ③アポB100
- ④アポC2
- ⑤アポE
正答: ①アポA1
ポイント
レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ〈LCAT〉を活性化するアポリポ蛋白を問う設問である。LCATはHDL上で遊離コレステロールをエステル化する酵素で、HDLの主要アポ蛋白であるアポA1(アポAⅠ)が補因子としてこれを活性化する。生成したコレステロールエステルはHDL内部に取り込まれ、末梢から肝へのコレステロール逆転送系が進行する。 ●アポ蛋白の酵素活性化=アポA1はLCATを活性化、アポC2(アポCⅡ)はリポ蛋白リパーゼ〈LPL〉を活性化する。 ●受容体・代謝への関与=アポB100はLDL受容体のリガンド、アポEはレムナント受容体・LDL受容体のリガンドである。アポC3(アポCⅢ)はLPLを阻害する。 ●コレステロール逆転送系=末梢のコレステロールはHDLに取り込まれ、アポA1が活性化するLCATによりエステル化されてHDL内部に蓄積し肝へ運ばれる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。アポA1はHDLの主要アポ蛋白で、LCATを活性化して遊離コレステロールのエステル化を促進する。
- ② アポA2(アポAⅡ)はHDLに含まれるアポ蛋白であるが、LCATを活性化する主たる補因子ではないため誤り。
- ③ アポB100はLDLの主要アポ蛋白でLDL受容体のリガンドであり、LCATの活性化には関与しないため誤り。
- ④ アポC2(アポCⅡ)はリポ蛋白リパーゼ〈LPL〉を活性化するアポ蛋白であり、LCATの活性化因子ではないため誤り。
- ⑤ アポEはレムナント受容体やLDL受容体のリガンドとなるアポ蛋白であり、LCATの活性化には関与しないため誤り。
第61回 午前36(臨床化学)
血清蛋白について誤っているのはどれか。
- ①アルブミンは遊離脂肪酸を運搬する。
- ②アルブミンはカルシウムと正の相関をする。
- ③免疫グロブリンは大部分がγ分画に含まれる。
- ④乳幼児期の免疫グロブリン濃度は成人より高い。
- ⑤トランスサイレチンの半減期はアルブミンより短い。
正答: ④乳幼児期の免疫グロブリン濃度は成人より高い。
ポイント
血清蛋白に関する設問で、誤りを選ぶ。免疫グロブリン(抗体)は母体由来IgGが胎盤を通過するため出生時には高値だが、生後に減衰し生後3〜6か月頃に最低となり、その後は乳児自身の産生により漸増する。したがって乳幼児期の免疫グロブリン濃度は成人より低く、「成人より高い」は誤りである。 ●アルブミンの機能=遊離脂肪酸・ビリルビン・薬物・カルシウムなどの運搬、膠質浸透圧の維持。血清カルシウムの約半分がアルブミンと結合するため両者は正の相関を示す(補正カルシウムの根拠)。 ●蛋白の分画と半減期=免疫グロブリンは電気泳動で主にγ分画に含まれる。トランスサイレチン(プレアルブミン)の半減期は約2日でアルブミン(約20日)より短く、栄養状態の鋭敏な指標となる。 ●臨床的意義=アルブミンは栄養・肝合成能の指標、トランスサイレチンは短期栄養指標、免疫グロブリンの年齢変化は感染防御能の評価に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① アルブミンは遊離脂肪酸やビリルビン、薬物などを結合して血中を運搬する蛋白である。正しい記述である。
- ② 血清カルシウムの約半分はアルブミンと結合するため、アルブミンとカルシウムは正の相関を示す。正しい記述である。
- ③ 免疫グロブリンは電気泳動において、その大部分がγ(ガンマ)分画に含まれる蛋白である。正しい記述である。
- ④ 誤り。出生時のIgGは母体由来で高いが生後に減衰するため、乳幼児期の免疫グロブリン濃度は成人より低い。
- ⑤ トランスサイレチンの半減期は約2日で、アルブミン(約20日)より短い栄養指標である。正しい記述である。
第61回 午前37(臨床化学)
尿素窒素濃度42 mg/dLの標準液の尿素濃度に最も近いのはどれか。ただし、尿素[(NH₂)₂CO]の分子量は60とする。
- ①0.7 mmol/L
- ②1.5 mmol/L
- ③7 mmol/L
- ④15 mmol/L
- ⑤70 mmol/L
正答: ④15 mmol/L
ポイント
尿素窒素濃度から尿素のモル濃度を換算する計算問題である。尿素分子(NH₂)₂COには窒素原子が2個含まれ、窒素の原子量は14なので、尿素1分子(1 mol)あたりに含まれる窒素量は28(g/mol相当)である。尿素窒素42 mg/dLは1 L換算で420 mg/Lとなる。これを窒素の量からモル数に直すと420÷28=15 mmol/Lである。尿素1分子に窒素2原子が対応するため、尿素のモル濃度も15 mmol/Lとなる。 ●換算の要点=尿素窒素〈BUN〉は尿素中に含まれる窒素量で表す。尿素1分子に窒素2原子、窒素の原子量は14である。 ●尿素とBUNの質量関係=尿素質量=BUN×(60/28)≒BUN×2.14。モル濃度では尿素のモル濃度=BUN窒素量÷28(mmol/L換算)となる。 ●尿素窒素〈BUN〉の意義=腎機能や蛋白異化・脱水の指標で、糸球体濾過量の低下や消化管出血・高蛋白食で上昇し、肝不全・低蛋白食で低下する。
選択肢ごとの解説
- ① 0.7 mmol/Lは桁が小さすぎ、420 mg/Lの窒素量を28で除して得られる計算値15 mmol/Lとは一致しない誤りである。
- ② 1.5 mmol/Lは正しい計算値15 mmol/Lの10分の1であり、単位(dLとL)の換算を誤った場合に生じる値である。
- ③ 7 mmol/Lは窒素の原子量や原子数を誤って用いた場合などに生じる値であり、正しい換算結果には合致しない。
- ④ 正しい。尿素窒素420 mg/Lを窒素2原子分の28で除すと15 mmol/Lとなり、尿素のモル濃度に最も近い値である。
- ⑤ 70 mmol/Lは正しい計算値15 mmol/Lの約4.7倍であり、単位換算や除数を誤った値で該当しない誤りである。
第61回 午前38(臨床化学)
ビリルビンについて正しいのはどれか。
- ①間接ビリルビンはジアゾ試薬に反応する。
- ②バナジン酸酸化法は吸光度の減少を測定する。
- ③ビリルビンの抱合体は主にタウリン抱合である。
- ④ビリルビンは紫外線により還元されてビリベルジンとなる。
- ⑤直接ビリルビンはアルブミンに結合したビリルビンである。
正答: ②バナジン酸酸化法は吸光度の減少を測定する。
ポイント
ビリルビンの性質と測定に関する設問である。バナジン酸酸化法はビリルビンが酸化されてビリベルジン(さらに無色物質)へ変化することにより生じる、ビリルビン由来の黄色(吸光度)の減少を測定する方法で、直接型・間接型の両方を酸化できる。直接ビリルビンは肝でグルクロン酸抱合を受けた水溶性の抱合型ビリルビンを指す。 ●直接(抱合型)ビリルビン=肝でグルクロン酸抱合を受けた水溶性ビリルビンで、ジアゾ試薬に直接反応する。 ●間接(非抱合型)ビリルビン=アルブミンに結合して血中を運ばれる脂溶性ビリルビンで、ジアゾ試薬とは促進剤の添加で反応する。新生児黄疸の光線療法では光により異性化し排泄されやすくなる。 ●ビリルビン分画の意義=間接型優位は溶血や体質性黄疸(Gilbert症候群など)、直接型優位は肝細胞性・閉塞性黄疸を示唆し、黄疸の鑑別に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① ジアゾ試薬に直接反応するのは直接ビリルビン(抱合型)であり、間接ビリルビンは促進剤を要するため誤りである。
- ② 正しい。バナジン酸酸化法はビリルビンがビリベルジンへ酸化される際の黄色(吸光度)の減少を測定する方法である。
- ③ ビリルビンの抱合体は主に肝でのグルクロン酸抱合であり、タウリン抱合(胆汁酸の抱合)ではないため誤りである。
- ④ ビリルビンは光線療法で光により異性化・酸化されるが、紫外線で還元されてビリベルジンになるわけではないため誤り。
- ⑤ アルブミンに結合して運ばれるのは間接(非抱合型)ビリルビンであり、直接ビリルビンの説明としては誤りである。
📋 まとめの表を見る:ビリルビン代謝の比較(非抱合型・抱合型・δビリルビン・シャントビリルビン)
ビリルビンは4つのピロール環が直鎖状に連なった構造で、酸化されると緑色のビリベルジンになる。極大吸収波長は約450nm。HPLC法での検出順序はα(非抱合型)→β・γ(直接型、モノ・ジグルクロニド)→δ(アルブミン共有結合型)。
第61回 午前39(臨床化学)
LDアイソザイムのうち急性心筋梗塞で最も上昇するアイソザイムについて正しいのはどれか。
- ①血中半減期が最も長い。
- ②急性肝炎でも最も上昇する。
- ③4 ℃保存で最も不安定である。
- ④Mサブユニットの4量体である。
- ⑤電気泳動で最も陰極側に泳動される。
正答: ①血中半減期が最も長い。
ポイント
急性心筋梗塞で最も上昇するLDアイソザイムの性質に関する設問である。心筋・赤血球・腎に多いのはLD₁(H₄、Hサブユニットの4量体)で、急性心筋梗塞ではLD₁がLD₂を上回る(LD₁>LD₂、いわゆるフリップ)。LD₁は電気泳動で最も陽極側に泳動され、5つのアイソザイムの中で血中半減期が最も長いため、逸脱した上昇が遷延する。 ●LDアイソザイムの分布=LD₁・LD₂は心筋・赤血球・腎、LD₃は肺・脾、LD₄・LD₅は肝・骨格筋に多く分布する。 ●急性心筋梗塞のLD₁=Hサブユニットの4量体(H₄)で、電気泳動で陽極側に泳動され、半減期が長く逸脱が持続する。急性肝炎で最も上昇するのはLD₅(M₄)である。 ●心筋マーカーの時間経過=急性心筋梗塞では発症早期にミオグロビン・CK-MB・トロポニンが上昇し、LD₁は遅れて上昇し長く持続するため後期診断に役立つ。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。心筋梗塞で最も上昇するLD₁はLDアイソザイムの中で血中半減期が最も長く、上昇が遷延する性質をもつ。
- ② 急性肝炎で最も上昇するのは肝に多いLD₅であり、心筋に多いLD₁ではないため、この記述は誤りである。
- ③ LD₁は比較的安定なアイソザイムであり、4 ℃保存で最も不安定なのはLD₅側の性質であるため、この記述は誤りである。
- ④ LD₁はHサブユニットの4量体(H₄)であり、Mサブユニットの4量体(M₄)はLD₅であるため、この記述は誤りである。
- ⑤ LD₁は電気泳動で最も陽極側に泳動されるアイソザイムであり、最も陰極側に泳動されるわけではないため誤りである。
第61回 午前40(臨床化学)
転移酵素はどれか。
- ①CK
- ②LD
- ③リパーゼ
- ④アミラーゼ
- ⑤コリンエステラーゼ
正答: ①CK
ポイント
酵素のEC番号による大分類のうち、転移酵素(トランスフェラーゼ)に該当するものを問う設問である。クレアチンキナーゼ〈CK〉はATPのリン酸基をクレアチンに転移してクレアチンリン酸を生成する反応を触媒する転移酵素である。リン酸基・アミノ基などの官能基をある分子から別の分子へ移す反応を触媒するのが転移酵素の特徴である。 ●転移酵素(トランスフェラーゼ)=CK(リン酸基転移)、AST・ALT(アミノ基転移)、γ-GT(γ-グルタミル基転移)。 ●他の大分類=LDは酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ)、リパーゼ・コリンエステラーゼ・アミラーゼは加水分解酵素(ヒドロラーゼ)に分類される。 ●酵素のEC分類=出題当時は6分類であった。現在は酸化還元酵素・転移酵素・加水分解酵素・脱離酵素(リアーゼ)・異性化酵素(イソメラーゼ)・合成酵素(リガーゼ)に、輸送酵素(トランスロカーゼ、EC 7)を加えた7分類である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。CK(クレアチンキナーゼ)はATPのリン酸基をクレアチンへ転移する反応を触媒する転移酵素である。
- ② LD(乳酸脱水素酵素)は乳酸とピルビン酸を相互変換する酸化還元酵素であり、転移酵素ではないため誤りである。
- ③ リパーゼは脂質(トリグリセリド)のエステル結合を加水分解する加水分解酵素であり、転移酵素ではないため誤り。
- ④ アミラーゼはデンプンのグリコシド結合を加水分解する加水分解酵素であり、転移酵素には分類されないため誤りである。
- ⑤ コリンエステラーゼはアセチルコリン等のエステル結合を加水分解する加水分解酵素であり、転移酵素ではないため誤り。
第61回 午前41(臨床化学)
骨形成マーカーはどれか。2つ選べ。
- ①オステオカルシン
- ②デオキシピリジノリン
- ③骨型アルカリホスファターゼ
- ④酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ
- ⑤Ⅰ型コラーゲン架橋N末端テロペプチド
正答: ①オステオカルシン・③骨型アルカリホスファターゼ
ポイント
骨形成マーカーを問い、2つ選ぶ設問である。骨芽細胞が産生・分泌する物質が骨形成マーカーであり、オステオカルシンは骨芽細胞が産生する非コラーゲン性蛋白、骨型アルカリホスファターゼ〈BAP〉は骨芽細胞膜上に存在する酵素で、いずれも骨形成(骨芽細胞の活性)を反映する。一方、骨吸収マーカーは破骨細胞によるⅠ型コラーゲンの分解産物などである。 ●骨形成マーカー(骨芽細胞由来)=オステオカルシン、骨型アルカリホスファターゼ〈BAP〉、Ⅰ型プロコラーゲンN末端プロペプチド〈P1NP〉。 ●骨吸収マーカー(破骨細胞・コラーゲン分解)=デオキシピリジノリン、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ〈TRACP-5b〉、Ⅰ型コラーゲン架橋N末端・C末端テロペプチド〈NTX・CTX〉。 ●骨マーカーの臨床的意義=骨形成マーカーは骨芽細胞活性、骨吸収マーカーは破骨細胞活性を反映し、骨粗鬆症の病態評価や治療効果の判定に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。オステオカルシンは骨芽細胞が産生する非コラーゲン性蛋白で、骨形成(骨芽細胞活性)を反映するマーカーである。
- ② デオキシピリジノリンはⅠ型コラーゲン架橋の分解産物であり、骨吸収マーカーであって骨形成マーカーではないため誤り。
- ③ 正しい。骨型アルカリホスファターゼ〈BAP〉は骨芽細胞膜上に存在する酵素で、骨形成を反映するマーカーである。
- ④ 酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ〈TRACP-5b〉は破骨細胞由来の骨吸収マーカーであり、骨形成マーカーではない。
- ⑤ Ⅰ型コラーゲン架橋N末端テロペプチド〈NTX〉はコラーゲンの分解産物で骨吸収マーカーであり、骨形成マーカーではない。
第61回 午前42(臨床化学)
甲状腺疾患患者において自己抗体が産生されないのはどれか。
- ①TSH受容体
- ②マイクロゾーム
- ③サイログロブリン
- ④甲状腺ペルオキシダーゼ
- ⑤サイロキシン結合グロブリン
正答: ⑤サイロキシン結合グロブリン
ポイント
甲状腺疾患患者において自己抗体が産生されない標的を問う設問である。サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉は甲状腺ホルモンを血中で運搬する輸送蛋白であり、自己免疫性甲状腺疾患における自己抗体の標的とはならない。一方、TSH受容体・サイログロブリン・甲状腺ペルオキシダーゼ(マイクロゾーム)はいずれも自己抗体の標的となる抗原である。 ●自己抗体の標的となる=TSH受容体抗体(Basedow病で陽性)、抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ(抗マイクロゾーム)抗体(橋本病などで陽性)。 ●自己抗体の標的とならない=サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉。これは甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己免疫反応の標的抗原ではない。 ●甲状腺自己抗体の意義=TSH受容体抗体はBasedow病、抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体は橋本病の診断・鑑別に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① TSH受容体に対する抗体(TSH受容体抗体)はBasedow病で産生される自己抗体であるため、該当しない。
- ② マイクロゾーム(甲状腺ペルオキシダーゼ)に対する抗体は橋本病などで産生される自己抗体であるため、該当しない。
- ③ サイログロブリンに対する抗体(抗サイログロブリン抗体)は橋本病などで産生される自己抗体であるため、該当しない。
- ④ 甲状腺ペルオキシダーゼに対する抗体は自己免疫性甲状腺疾患で産生される自己抗体であるため、該当しない。
- ⑤ 誤り。サイロキシン結合グロブリンは甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己抗体の標的とはならない蛋白である。
📋 まとめの表を見る:臓器特異的自己抗体と自己免疫疾患
サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉は甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己抗体の標的とはならない。
第61回 午前43(臨床化学)
脂肪細胞から分泌されるのはどれか。
- ①インスリン
- ②グルカゴン
- ③プロラクチン
- ④ソマトスタチン
- ⑤アディポネクチン
正答: ⑤アディポネクチン
ポイント
脂肪細胞から分泌される物質を問う設問である。アディポネクチンは脂肪細胞が分泌する生理活性物質(アディポカイン)の一つで、インスリン感受性を高め抗動脈硬化・抗炎症作用をもち、内臓脂肪が増えると逆に分泌が低下する。脂肪細胞はレプチンやTNF-αなども分泌しており、単なる貯蔵組織ではなく内分泌器官としての性質をもつ。 ●脂肪細胞が分泌するアディポカイン=アディポネクチン(インスリン感受性亢進・抗炎症)、レプチン(摂食抑制・エネルギー消費)、TNF-α・レジスチン(インスリン抵抗性)。 ●他の選択肢の分泌部位=インスリン・グルカゴン・ソマトスタチンは膵ランゲルハンス島、プロラクチンは下垂体前葉から分泌される。 ●脂肪組織の内分泌機能=脂肪細胞はアディポカインを分泌する内分泌器官で、肥満ではアディポネクチン低下・炎症性サイトカイン増加が動脈硬化に関与する。
選択肢ごとの解説
- ① インスリンは膵ランゲルハンス島のB(β)細胞から分泌されるホルモンであり、脂肪細胞から分泌されるものではない。
- ② グルカゴンは膵ランゲルハンス島のA(α)細胞から分泌されるホルモンであり、脂肪細胞から分泌されるものではない。
- ③ プロラクチンは下垂体前葉から分泌される乳汁分泌ホルモンであり、脂肪細胞から分泌されるものではないため誤りである。
- ④ ソマトスタチンは膵ランゲルハンス島のD(δ)細胞などから分泌されるホルモンであり、脂肪細胞からではないため誤り。
- ⑤ 正しい。アディポネクチンは脂肪細胞が分泌するアディポカインで、インスリン感受性を高める作用をもつ生理活性物質である。
第61回 午前44(臨床化学)
サルコイドーシスで高値を示すのはどれか。
- ①アルドラーゼ
- ②アデノシンデアミナーゼ〈ADA〉
- ③アンギオテンシン変換酵素〈ACE〉
- ④ロイシンアミノペプチダーゼ〈LAP〉
- ⑤レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ〈LCAT〉
正答: ③アンギオテンシン変換酵素〈ACE〉
ポイント
サルコイドーシスで高値を示す検査項目を問う設問である。サルコイドーシスは類上皮細胞肉芽腫を全身に形成する原因不明の疾患で、肉芽腫の類上皮細胞がアンギオテンシン変換酵素〈ACE〉を産生するため血清ACEが高値となり、疾患活動性の指標となる。血清カルシウムやリゾチームの上昇、両側肺門リンパ節腫脹(BHL)も特徴的である。 ●サルコイドーシスで高値=アンギオテンシン変換酵素〈ACE〉、血清カルシウム、リゾチーム、可溶性IL-2受容体。 ●ACEの基準=本来は肺血管内皮などに存在しアンギオテンシンⅠをⅡに変換する酵素である。サルコイドーシスでは肉芽腫を構成する類上皮細胞由来のACEが増加するため高値となる。 ●サルコイドーシスの所見=両側肺門リンパ節腫脹、ぶどう膜炎、皮膚病変、ツベルクリン反応陰性化などを呈し、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を組織学的に認める。
選択肢ごとの解説
- ① アルドラーゼは多発性筋炎などの筋疾患で上昇する酵素であり、サルコイドーシスで特徴的に高値を示す指標ではない。
- ② アデノシンデアミナーゼ〈ADA〉は結核性胸膜炎・腹膜炎などで上昇する指標であり、サルコイドーシスの特徴的指標ではない。
- ③ 正しい。サルコイドーシスでは肉芽腫を構成する類上皮細胞がACEを産生するため、血清ACE(アンギオテンシン変換酵素)が高値となる。
- ④ ロイシンアミノペプチダーゼ〈LAP〉は胆道系疾患などで上昇する酵素であり、サルコイドーシスの特徴的な高値指標ではない。
- ⑤ レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ〈LCAT〉は肝疾患で低下する酵素であり、サルコイドーシスの指標ではない。
📋 まとめの表を見る:サルコイドーシスの主な検査所見
第61回 午前45(病理組織細胞学)
外胚葉に由来するのはどれか。
正答: ⑤大脳
ポイント
三胚葉(外胚葉・中胚葉・内胚葉)のうち、外胚葉に由来する器官を問う設問である。大脳をはじめとする神経系(脳・脊髄・末梢神経)や表皮・感覚器は外胚葉に由来する。外胚葉は神経管と表皮外胚葉に分かれ、中枢神経・神経堤由来組織・皮膚の表皮などを形成する。これに対し骨・心臓・腎臓は中胚葉、膵臓は内胚葉に由来する。 ●外胚葉由来=表皮・毛・爪、神経系(脳・脊髄・末梢神経)、感覚器(網膜・内耳)、副腎髄質。 ●中胚葉由来=骨・筋・結合組織、心臓・血管、腎臓・生殖腺。内胚葉由来=消化管上皮・肝・膵・肺胞上皮・甲状腺などである。 ●三胚葉の形成=原腸陥入により外胚葉・中胚葉・内胚葉の三胚葉が形成され、各胚葉から特定の組織・器官が分化していく過程が発生の基本となる。神経堤細胞は外胚葉由来でありながら遊走し、末梢神経・副腎髄質・色素細胞など多様な組織を形成する点も特徴である。
選択肢ごとの解説
- ① 骨は中胚葉(沿軸中胚葉・側板中胚葉)に由来する組織であり、外胚葉由来ではないため、この選択肢は誤りである。
- ② 心臓は中胚葉(臓側中胚葉)に由来する器官であり、外胚葉由来ではない。なお選択肢の「心臓」が正しい名称である。
- ③ 腎臓は中胚葉(中間中胚葉)に由来する器官であり、外胚葉由来ではない。なお選択肢の「腎臓」が正しい名称である。
- ④ 膵臓は内胚葉に由来する器官であり、外胚葉由来ではない。なお選択肢の「膵臓」が正しい名称である。
- ⑤ 正しい。大脳をはじめとする神経系は外胚葉(神経管)に由来する。なお選択肢の「大脳」が正しい名称である。
第61回 午前46(病理組織細胞学)
皮膚と同様の上皮組織を有するのはどれか。
正答: ③食道
ポイント
皮膚と同様の上皮組織をもつ器官を問う設問である。皮膚の表皮は重層扁平上皮で、摩擦や物理的刺激から保護する役割をもつ。食道も内腔が重層扁平上皮で覆われており、嚥下する食物による機械的刺激に耐える構造となっている。胃・気管支・胆嚢・尿管はそれぞれ機能に応じた異なる上皮で覆われている。 ●重層扁平上皮(皮膚の表皮と同様)=表皮、口腔・咽頭・食道、肛門管、腟、角膜。摩擦・機械的刺激の多い部位を覆う。 ●他の器官の上皮=胃・胆嚢は単層円柱上皮、気管支は多列線毛上皮(一部円柱上皮)、尿管・膀胱は移行上皮(尿路上皮)で覆われる。 ●上皮の分類=層数と形状で単層扁平・単層立方・単層円柱・重層扁平・移行上皮などに分けられ、それぞれの部位の機能(保護・吸収・分泌)に適応している。重層扁平上皮は機械的刺激の多い部位を、単層円柱上皮は吸収・分泌を担う消化管などを覆う。
選択肢ごとの解説
- ① 胃の内面は単層円柱上皮で覆われており、皮膚の表皮(重層扁平上皮)とは異なる上皮であるため、この選択肢は誤りである。
- ② 気管支は多列線毛上皮(一部円柱上皮)で覆われており、皮膚の表皮と同様の上皮ではないため、この選択肢は誤りである。
- ③ 正しい。食道は重層扁平上皮で覆われており、皮膚の表皮(重層扁平上皮)と同様の上皮組織をもつ器官である。
- ④ 胆嚢の内面は単層円柱上皮で覆われており、皮膚と同様の上皮ではない。なお選択肢の「胆嚢」が正しい名称である。
- ⑤ 尿管は移行上皮(尿路上皮)で覆われており、皮膚と同様の上皮ではない。なお選択肢の「尿管」が正しい名称である。
第61回 午前47(病理組織細胞学)
癌抑制遺伝子はどれか。
- ①ras
- ②p53
- ③myc
- ④erb-B2
- ⑤cyclin D
正答: ②p53
ポイント
癌抑制遺伝子を問う設問である。p53はDNA損傷時に細胞周期を停止させて修復を促し、修復不能な場合には細胞死(アポトーシス)を誘導する代表的な癌抑制遺伝子で、「ゲノムの守護者」とよばれる。その機能喪失(変異)は多くのヒト悪性腫瘍で認められる。一方、ras・myc・erb-B2・cyclin Dは活性化により発癌に働く癌遺伝子である。 ●癌抑制遺伝子=p53、RB(網膜芽細胞腫)、APC(家族性大腸腺腫症)、BRCA1/2(乳・卵巣)、PTEN。両アレルの不活化で機能を失う。 ●癌遺伝子=ras、myc、erb-B2(HER2)、cyclin D、bcl-2。点変異・増幅・過剰発現などの活性化により発癌に働く。 ●発癌の多段階説=癌遺伝子の活性化と癌抑制遺伝子の不活化が複数蓄積して発癌に至るとされ、p53変異は多くの癌で共通してみられる重要な異常である。
選択肢ごとの解説
- ① rasは細胞増殖シグナルを伝達するGTP結合蛋白の遺伝子で、活性化型変異により発癌に働く癌遺伝子であるため誤りである。
- ② 正しい。p53は細胞周期の停止やアポトーシスを誘導し細胞の異常増殖を抑える、代表的な癌抑制遺伝子である。
- ③ mycは転写因子をコードする遺伝子で、過剰発現により細胞増殖を促す癌遺伝子であり、癌抑制遺伝子ではないため誤りである。
- ④ erb-B2(HER2)は増殖因子受容体をコードする遺伝子で、増幅・過剰発現により発癌に働く癌遺伝子であるため誤りである。
- ⑤ cyclin Dは細胞周期を進行させるサイクリンの遺伝子で、過剰発現により発癌に働く癌遺伝子であるため誤りである。
第61回 午前48(病理組織細胞学)
悪性腫瘍はどれか。
正答: ⑤中皮腫
ポイント
提示された病変のうち悪性腫瘍はどれかを問う設問である。中皮腫は胸膜・腹膜・心膜などの中皮(漿膜)から発生する腫瘍で、悪性中皮腫はアスベスト(石綿)曝露との関連が深い悪性腫瘍である。一方、血管腫・骨軟骨腫・脂肪腫・多形腺腫はいずれも良性腫瘍である。腫瘍の良性・悪性は浸潤・転移の有無や細胞異型の程度などで判断される。 ●良性腫瘍=血管腫、骨軟骨腫、脂肪腫、多形腺腫(唾液腺に好発)、平滑筋腫など。膨張性に発育し転移しない。 ●悪性腫瘍=中皮腫(悪性中皮腫・アスベスト関連)、癌腫(上皮性の悪性腫瘍)、肉腫(非上皮性の悪性腫瘍)。浸潤・転移を示す。 ●腫瘍の良悪の判定=悪性腫瘍は浸潤性発育・転移・細胞異型・核分裂像の増加・被膜形成の欠如を示し、良性腫瘍は膨張性発育で被膜を有し転移しない。中皮腫はアスベスト曝露後の潜伏期間が長いことが知られ、発生部位により胸膜中皮腫・腹膜中皮腫に分けられる。
選択肢ごとの解説
- ① 血管腫は血管内皮由来の良性腫瘍(または過誤腫的病変)であり、悪性腫瘍ではないため、この選択肢は誤りである。
- ② 骨軟骨腫は骨表面に発生する良性の骨腫瘍であり、悪性腫瘍ではないため、この選択肢は悪性腫瘍としては誤りである。
- ③ 脂肪腫は成熟した脂肪組織からなる良性腫瘍であり、悪性腫瘍ではないため、この選択肢は悪性腫瘍としては誤りである。
- ④ 多形腺腫は唾液腺(耳下腺など)に好発する良性腫瘍であり、悪性腫瘍ではないため、この選択肢は誤りである。
- ⑤ 正しい。中皮腫(悪性中皮腫)は中皮から発生する悪性腫瘍で、アスベスト(石綿)曝露との関連が深い腫瘍である。
第61回 午前49(病理組織細胞学)
動脈血が流れるのはどれか。2つ選べ。
正答: ②臍帯静脈・④肺静脈
ポイント
動脈血(酸素に富む血液)が流れる血管を問い、2つ選ぶ設問である。胎児循環では臍帯静脈(臍静脈)が胎盤で酸素化された動脈血を胎児へ運ぶ。また成人では肺静脈が肺でガス交換を受けた動脈血を左心房へ戻す。動脈血か静脈血かは血管の名称ではなく、その中を流れる血液の酸素含量によって決まる点が要点である。 ●動脈血(酸素に富む)が流れる静脈=肺静脈(肺→左心房)、臍帯静脈(胎盤→胎児)。名称は静脈だが動脈血が流れる。 ●静脈血(酸素に乏しい)が流れる動脈=肺動脈(右心室→肺)、臍帯動脈(胎児→胎盤)。肝静脈・食道静脈・脾静脈には通常の静脈血が流れる。 ●胎児循環の特徴=臍帯静脈の動脈血は静脈管・卵円孔・動脈管を介して効率よく全身へ送られ、出生後にこれらの短絡は閉鎖して成人型循環へ移行する。胎児では肺呼吸が行われないため肺循環を迂回する短絡が存在し、胎盤がガス交換の役割を担っている。
選択肢ごとの解説
- ① 肝静脈は肝臓から下大静脈へ静脈血を流す血管であり、酸素に富む動脈血は流れないため、この選択肢は誤りである。
- ② 正しい。臍帯静脈(臍静脈)は胎盤で酸素化された動脈血を胎児へ運ぶ血管であり、動脈血が流れる。
- ③ 食道静脈は食道から門脈系などへ静脈血を流す血管であり、酸素に富む動脈血は流れないため、この選択肢は誤りである。
- ④ 正しい。肺静脈は肺でガス交換を受け酸素化された動脈血を左心房へ戻す血管であり、動脈血が流れる。
- ⑤ 脾静脈は脾臓から門脈へ静脈血を流す血管であり、酸素に富む動脈血は流れないため、この選択肢は誤りである。
第61回 午前50(病理組織細胞学)
H-E染色標本を別に示す。臓器はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA050.bb5a51f9a5.jpg

正答: ⑤甲状腺
ポイント
H-E染色標本から臓器を判定する図問題である。本標本は甲状腺で、大小さまざまな大きさの濾胞が密に配列し、各濾胞は単層の濾胞上皮で囲まれ、内腔に好酸性(ピンク色)に染まる均質なコロイドが充満しているのが特徴である。コロイドはサイログロブリンを含み、甲状腺ホルモンの貯蔵形態にあたる。 ●甲状腺の組織像=大小の濾胞構造、単層の濾胞上皮、内腔の好酸性コロイドの貯留、濾胞間に散在する傍濾胞細胞(C細胞)。 ●鑑別=胃は腺窩上皮と胃腺の粘膜、肺は薄壁の肺胞構造、胆嚢は粘膜ひだと単層円柱上皮、副腎は皮質(球状・束状・網状帯)と髄質の層構造を示す。 ●甲状腺の機能=濾胞上皮がコロイド中のサイログロブリンからT3・T4を産生・分泌し、傍濾胞細胞(C細胞)はカルシトニンを分泌してカルシウム代謝を調節する。濾胞内のコロイドは甲状腺ホルモンの貯蔵庫であり、機能亢進時には濾胞上皮が円柱状となり吸収空胞が目立つ。
選択肢ごとの解説
- ① 胃は腺窩上皮と胃腺からなる粘膜構造を示す臓器であり、コロイドを満たす濾胞構造はみられないため誤りである。
- ② 肺は薄壁の肺胞が広がる含気構造を示す臓器であり、コロイドを満たす濾胞構造とは異なるため、この選択肢は誤りである。
- ③ 胆嚢は粘膜ひだと単層円柱上皮を示す臓器であり、濾胞構造はみられない。なお選択肢の「胆嚢」が正しい名称である。
- ④ 副腎は皮質(球状・束状・網状帯)と髄質の層構造を示す臓器であり、コロイドを満たす濾胞構造とは異なるため誤りである。
- ⑤ 正しい。甲状腺は単層の濾胞上皮に囲まれ好酸性コロイドを満たす濾胞構造を示し、本標本の所見に合致する臓器である。