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第61回(2015) 臨床検査技師国家試験 午前51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第61回 午前51(病理組織細胞学)
小葉構造を持つのはどれか。2つ選べ。
正答: ②肝臓・③膵臓
ポイント 小葉構造とは、結合組織で区切られた機能単位(小葉)が反復して臓器を構成する構築様式で、腺組織に典型的にみられる。肝臓は中心静脈を中心に肝細胞索が放射状に並ぶ肝小葉(古典的小葉)が密に集合し、隣接する複数の門脈域(小葉間結合組織)によって境界づけられる。膵臓は外分泌腺の腺房が集まって膵小葉を形成し、小葉間結合組織に導管・血管・神経が走行する。いずれも外分泌・代謝を担う実質臓器で、明瞭な小葉単位の構築をとる点が共通し、小葉間結合組織を介した区分が組織標本上でも識別できる。脳・脾臓・膀胱はそれぞれ固有の構築をもち、結合組織で区切られた反復的な小葉構造はとらない。●明瞭な小葉構造をもつ=肝臓・膵臓・唾液腺(耳下腺・顎下腺)・乳腺・腎(葉・錐体)など腺組織や分泌器官。●小葉構造をとらない=脳(灰白質・白質の区分と神経核)・脾臓(白脾髄・赤脾髄からなるリンパ組織)・膀胱(粘膜・固有層・筋層の層構造をもつ中空臓器)。
選択肢ごとの解説
① 脳は灰白質と白質に分かれ神経核・神経路で構成され、小葉構造はとらない。 ② 正しい。肝臓は中心静脈を中心とする肝小葉が反復配列し、門脈域で区切られる。 ③ 正しい。膵臓は腺房が集まった膵小葉からなり、小葉間結合組織に導管が走る。 ④ 脾臓は白脾髄と赤脾髄からなるリンパ組織で、小葉構造はとらない。 ⑤ 膀胱は移行上皮・固有層・筋層の層構造をもつ中空臓器で、小葉構造はとらない。
第61回 午前52(病理組織細胞学)
凍結標本作製法で誤っているのはどれか。
①水溶性包埋剤を用いる。 ②骨組織の標本作製に適している。 ③薄切に適した温度は-20 ℃である。 ④ホルマリン固定した組織は剥がれやすい。 ⑤凍結速度が遅いと組織の損傷は大きくなる。
正答: ②骨組織の標本作製に適している。
ポイント 凍結標本作製法は、未固定または軽度固定の組織を急速凍結しクリオスタット(凍結ミクロトーム)で薄切する方法で、術中迅速診断や脂肪・酵素活性・一部の抗原を保つ免疫組織化学の証明に用いる。水溶性包埋剤(OCTコンパウンド等)で包埋し、おおむね-20℃前後で薄切する。急速に凍結するほど生じる氷晶が小さくなり組織損傷が少ない。骨組織は石灰化部が硬く凍結薄切に適さず、脱灰処理を行ったうえでパラフィン切片を作製するのが適切で、凍結法には不向きである。パラフィン包埋では加熱や有機溶媒による脱水・透徹を要するのに対し、凍結法はこれらを経ないため脂質や酵素・抗原を保ちやすい。●凍結法の利点=迅速性(術中迅速診断に対応)・脂質や酵素活性の保持・熱や有機溶媒を避けるため抗原性の保存に優れる。●凍結法の欠点=氷晶によるアーチファクト・薄切や形態保持がパラフィン切片に劣る・骨など硬組織や石灰化組織には適さない。
選択肢ごとの解説
① 正しい。水溶性包埋剤(OCTコンパウンドなど)を用いて凍結・薄切する。 ② 誤り。骨は硬く石灰化しており凍結薄切に適さず、脱灰後パラフィン切片を用いる。 ③ 正しい。薄切に適した温度はおおむね-20℃前後である。 ④ 正しい。ホルマリン固定済み組織は凍結薄切で剥がれやすくなる。 ⑤ 正しい。凍結速度が遅いと氷晶が大きくなり組織の損傷が大きくなる。
第61回 午前53(病理組織細胞学)
腎臓の染色標本を別に示す。染色法はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA053.676487e537.jpg
①azan染色 ②Bodian染色 ③Congo red染色 ④elastica van Gieson染色 ⑤PAM染色
正答: ⑤PAM染色
ポイント PAM染色(periodic acid methenamine silver、過ヨウ素酸メセナミン銀染色)は、過ヨウ素酸で糖を酸化しアルデヒド基を生じさせ、このアルデヒド基の還元性を利用してメセナミン銀液の銀を黒色に析出させることで、糖を多く含む基底膜や細網線維を黒色に染め出す鍍銀法である。腎糸球体では基底膜が黒く明瞭に描出され、膜性腎症の上皮下スパイク形成、膜性増殖性腎炎での基底膜二重化、糸球体硬化やメサンギウム基質の増生などの評価に用いられる。腎生検病理で基底膜やメサンギウム基質の構築を観察する基本染色であり、糸球体の微細構造評価に不可欠である。●基底膜・細網線維を黒色に染める鍍銀法=PAM染色・渡辺鍍銀法(同じく糖を染めるPASは赤紫に染める)。●腎生検の基本染色セット=HE(概観)・PAS(基底膜・基質)・PAM(基底膜の構築)・Masson trichrome(線維化・沈着物の評価)。
選択肢ごとの解説
① azan染色は膠原線維を青、細胞質・筋を赤に染め分ける線維染色で、本標本の所見と異なる。 ② Bodian染色は神経線維・軸索を黒く染める鍍銀法で、腎基底膜の描出には用いない。 ③ Congo red染色はアミロイドを橙赤色に染め偏光で緑色複屈折を示す染色である。 ④ elastica van Gieson染色は弾性線維を黒紫、膠原線維を赤に染める染色である。 ⑤ 正しい。PAM染色で腎糸球体基底膜が黒色に明瞭に描出されている。
第61回 午前54(病理組織細胞学)
肺に沈着したアスベスト小体の染色標本を別に示す。染色法はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA054.31312d695e.jpg
①Alcian blue染色 ②Berlin blue染色 ③methylene blue染色 ④Nile blue染色 ⑤Victoria blue染色
正答: ②Berlin blue染色
ポイント アスベスト小体(石綿小体)は、肺に吸入された石綿線維を芯として、鉄を含むヘモジデリン様の蛋白が沈着して形成されるダンベル状・有節状(数珠状)の黄褐色構造物で、鉄を含むため鉄染色で青色に染まる。Berlin blue染色(ベルリン青染色、Prussian blue反応)は、組織中の三価鉄(ヘモジデリン等)をフェロシアン化カリウムおよび塩酸と反応させ、不溶性の青色(紺青)沈着として証明する鉄染色で、アスベスト小体やヘモジデリンの検出に用いる。●鉄(三価鉄)を青色に証明する染色=Berlin blue染色(ヘモジデリン沈着・アスベスト小体・ヘモクロマトーシス)。●その他の代表的特殊染色=Alcian blue(酸性粘液多糖を青)・Victoria blue(弾性線維・HBs抗原)・PAS(中性粘液・糖を赤紫)など。
選択肢ごとの解説
① Alcian blue染色は酸性粘液多糖類を青く染める染色で、鉄を含むアスベスト小体は染めない。 ② 正しい。Berlin blue染色で鉄を含むアスベスト小体が青色に染まっている。 ③ methylene blue染色は核などを青染する単染色で、鉄の特異的証明には用いない。 ④ Nile blue染色は中性脂肪・脂肪酸を染める脂質染色で、鉄の証明には用いない。 ⑤ Victoria blue染色は弾性線維やHBs抗原を染める染色で、鉄の証明には用いない。
第61回 午前55(病理組織細胞学)
電子顕微鏡標本作製で固定に用いる試薬はどれか。2つ選べ。
①ピクリン酸 ②オスミウム酸 ③トリクロロ酢酸 ④ブアン〈Bouin〉液 ⑤グルタールアルデヒド
正答: ②オスミウム酸・⑤グルタールアルデヒド
ポイント 電子顕微鏡標本では細胞小器官などの微細構造を高度に保持する必要があるため、二重固定を行うのが基本である。一次固定にグルタールアルデヒド(グルタルアルデヒド)を用いて蛋白質を強く架橋し微細構造を保持し、続いて二次固定にオスミウム酸(四酸化オスミウム)を用いて脂質(特に膜系)を固定すると同時に重金属であるオスミウムが結合して電子密度を高め、像のコントラストを付与する。通常は冷緩衝液中で小片を迅速に固定し、その後脱水・樹脂(エポキシ等)包埋・超薄切・電子染色と進む。固定の遅れや組織片が大きいと微細構造が保たれない。●電顕の固定=グルタールアルデヒド(一次・蛋白を架橋)+オスミウム酸(二次・脂質固定とコントラスト付与)の二重固定。●光顕で用いる主な固定液=中性緩衝ホルマリン・Bouin液(ピクリン酸含有)・Carnoy液(核酸用)・アルコールなど。
選択肢ごとの解説
① ピクリン酸はBouin液の成分で光顕用固定に用いられ、電顕固定の主試薬ではない。 ② 正しい。オスミウム酸は二次固定として脂質を固定しコントラストを付与する。 ③ トリクロロ酢酸は蛋白沈殿・脱灰などに用いられ、電顕固定には用いない。 ④ ブアン〈Bouin〉液はピクリン酸を含む光顕用固定液で、電顕固定には用いない。 ⑤ 正しい。グルタールアルデヒドは一次固定として蛋白質を架橋し微細構造を保持する。
第61回 午前56(病理組織細胞学)
喀痰細胞診のPapanicolaou染色標本を別に示す。A、Bは同一標本中の異なる視野である。組織型はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA056.153f432002.jpg
①カルチノイド ②小細胞癌 ③腺癌 ④大細胞癌 ⑤扁平上皮癌
正答: ⑤扁平上皮癌
ポイント 喀痰のPapanicolaou染色で扁平上皮癌では、重層扁平上皮への分化を反映する所見がみられる。角化を示す細胞質はオレンジG好性に橙色〜濃赤に染まり、ヘビ状・オタマジャクシ状・紡錘形といった奇怪で多彩な細胞形態、不整に肥厚した濃染核(インクの染み様)と粗大不整なクロマチン、同心円状に角化が重なる真珠様構造(癌真珠)が観察される。これらの角化・奇怪な形態を示す異型細胞の存在が、重層扁平上皮への分化すなわち扁平上皮癌という組織型推定の根拠となる。背景に壊死物や炎症細胞を伴うこともあり、角化型では細胞像が明瞭である。●扁平上皮癌の細胞像=オレンジG好染(角化)・ヘビ状/オタマジャクシ状の奇怪な細胞形・インクの染み様の濃染核・癌真珠。●腺癌の細胞像=細胞質内の粘液空胞・核の偏在・腺腔様/乳頭状の細胞集塊・明瞭で大型の核小体。
選択肢ごとの解説
① カルチノイドは小型で均一なロゼット様配列を示す神経内分泌腫瘍で、角化は伴わない。 ② 小細胞癌は裸核状で木目込み細工様に重なる小型細胞からなり、角化を示さない。 ③ 腺癌は細胞質に粘液空胞をもち核が偏在する集塊を示し、角化所見はみられない。 ④ 大細胞癌は分化傾向に乏しい大型細胞からなり、明らかな角化や腺腔形成を欠く。 ⑤ 正しい。オレンジG好性の角化や奇怪な細胞形・癌真珠を示し扁平上皮癌である。
第61回 午前57(病理組織細胞学)
子宮頸部細胞診のPapanicolaou染色標本を別に示す。関係の深い微生物はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA057.f22cfac2be.jpg
①カンジダ ②クラミジア ③トリコモナス ④ヘルペスウイルス ⑤ヒトパピローマウイルス
正答: ⑤ヒトパピローマウイルス
ポイント 子宮頸部のPapanicolaou染色でヒトパピローマウイルス(HPV)感染を示す指標細胞がコイロサイトーシス(コイロサイト)である。表層〜中層の扁平上皮細胞の核周囲に境界明瞭で広い空洞(核周明庭・ハロー)をもち、核は腫大・濃染し輪郭が不整で、しばしば二核・多核を示す。HPVは低悪性度扁平上皮内病変(LSIL)など扁平上皮内病変や子宮頸癌の主要原因ウイルスであり、これらの細胞所見が感染と前癌病変の根拠となる。良性反応性の核周空胞(偽コイロサイト)との鑑別には、核異型(腫大・濃染・不整)を伴う点が重要である。●HPV感染の細胞像=コイロサイト(境界明瞭な核周明庭)・核腫大濃染・核の不整・二核化。●他の頸部感染症の細胞像=トリコモナス(洋梨状の原虫)・カンジダ(仮性菌糸と扁平上皮の串刺し配列)・ヘルペスウイルス(多核化・すりガラス様核・好酸性核内封入体)。
選択肢ごとの解説
① カンジダは仮性菌糸と分芽胞子を伴い扁平上皮細胞を串刺し状に配列させる像を示す。 ② クラミジアは細胞質内の空胞や封入体を示すが、コイロサイトの主因ではない。 ③ トリコモナスは洋梨状の原虫として観察され、コイロサイトの原因ではない。 ④ ヘルペスウイルスは多核化・核のすりガラス様変化・核内封入体を示す。 ⑤ 正しい。核周明庭をもつコイロサイトはHPV感染を示す指標細胞である。
第61回 午前58(病理組織細胞学)
ホルマリンについて正しいのはどれか。
①pHは中性である。 ②酸化によりギ酸を生じる。 ③組織固定には原液を使用する。 ④長期固定で蛋白質が溶出する。 ⑤ホルマリン色素除去はメタノールに浸漬する。
正答: ②酸化によりギ酸を生じる。
ポイント ホルマリンはホルムアルデヒドの約35〜37%水溶液で、蛋白質を架橋(メチレン架橋)して固定する組織固定の標準試薬である。市販原液は保存中に空気酸化を受けてギ酸(蟻酸)を生じ、これにより液が酸性に傾くため、組織固定にはリン酸緩衝して中性に保った中性緩衝ホルマリンを用いる。組織固定には原液を希釈し通常10〜20%で使用する(ホルムアルデヒド濃度は10%ホルマリンで約4%、20%ホルマリンで約7%)。酸性条件下ではヘモグロビン由来の褐色のホルマリン色素(酸性ホルマリンヘマチン)が析出し、これはアルカリアルコールで除去する。浸透が比較的速く安価で汎用性が高い一方、長期固定や酸性条件は核酸・抗原の保存に不利となる。●ホルマリンの性質=酸化でギ酸を生じ酸性化する・蛋白をメチレン架橋して固定する・浸透性が良い。●実務上の注意=リン酸緩衝による中性化が必要・原液を希釈して用いる・析出したホルマリン色素はアルカリアルコールで除去する。
選択肢ごとの解説
① 原液は酸化により酸性に傾くため、固定にはリン酸緩衝した中性緩衝ホルマリンを用いる。 ② 正しい。ホルムアルデヒドは空気酸化を受けてギ酸を生じ液が酸性化する。 ③ 原液をそのまま使うのではなく、通常10〜20%程度に希釈して固定に用いる。 ④ 蛋白質を架橋して固定するため、長期固定でも蛋白が溶出するわけではない。 ⑤ ホルマリン色素の除去はメタノールではなくアルカリアルコール等を用いる。
第61回 午前59(臨床血液学)
脾臓の機能として誤っているのはどれか。
①髄外造血 ②血球の貯留 ③細菌の処理 ④老化血球の処理 ⑤T細胞の分化誘導
正答: ⑤T細胞の分化誘導
ポイント 脾臓は赤脾髄と白脾髄からなる体内最大のリンパ性臓器で、赤脾髄では老化・変形した赤血球の捕捉と破壊処理、血球の貯留(血液の貯蔵)、白脾髄(リンパ濾胞・動脈周囲リンパ鞘)では抗原に対する免疫応答を担う。赤脾髄の脾洞や脾索に存在するマクロファージが、老化血球・血小板や血流中の細菌・異物を貪食処理する。さらに胎生期や、骨髄機能が障害された病的状態では髄外造血の場ともなる。一方、未熟なT細胞(前駆細胞)が成熟T細胞へと分化・選択を受けるのは胸腺であり、脾臓の機能ではない。●脾臓の主な機能=老化・変形赤血球の処理・血球や血小板の貯留・細菌や異物の貪食処理・免疫応答(抗体産生の場)・胎生期や病的時の髄外造血。●T細胞の分化・成熟=一次リンパ器官である胸腺で行われ、脾臓は分化を終えたリンパ球が抗原に応答する二次リンパ器官である。
選択肢ごとの解説
① 脾臓は胎生期や病的状態で髄外造血の場となるため正しい記述である。 ② 脾臓は赤脾髄で血液を貯留し血球の貯蔵を行うため正しい記述である。 ③ 脾臓のマクロファージが細菌や異物を貪食処理するため正しい記述である。 ④ 脾臓は老化・変形した赤血球を破壊処理するため正しい記述である。 ⑤ 誤り。T細胞の分化・成熟は胸腺で行われ、脾臓の機能ではない。
第61回 午前60(臨床血液学)
凝固を抑制するのはどれか。
①プロテインC ②プロトロンビン ③プラスミノゲン ④α₁-アンチトリプシン ⑤プラスミノゲンアクチベータインヒビター
正答: ①プロテインC
ポイント プロテインCは肝で産生されるビタミンK依存性の抗凝固因子である。血管内皮上でトロンビンがトロンボモジュリンと結合して生じた複合体によって活性化プロテインC(APC)となり、補酵素であるプロテインSとともに活性化第Ⅴ因子(Va)・活性化第Ⅷ因子(VIIIa)を分解して凝固反応を負に制御する。先天性のプロテインC欠損症やプロテインS欠損症は、若年発症の静脈血栓症など血栓傾向(血栓性素因)の原因となる。●凝固を抑制する(抗凝固)因子=プロテインC・プロテインS・アンチトロンビン・トロンボモジュリン・組織因子経路インヒビター(TFPI)。●凝固を促進する因子=プロトロンビン(第Ⅱ因子)をはじめとする各凝固因子。●線溶系・線溶を抑制する因子=プラスミノゲン(線溶系前駆体)・PAI-1・α2-プラスミンインヒビターなど。
選択肢ごとの解説
① 正しい。プロテインCは活性化第Ⅴ・第Ⅷ因子を分解し凝固を抑制する。 ② プロトロンビンはトロンビンの前駆体で、凝固を促進する側の因子である。 ③ プラスミノゲンはプラスミンの前駆体で、線溶系に属し凝固抑制因子ではない。 ④ α₁-アンチトリプシンはエラスターゼ等を阻害するプロテアーゼ阻害因子で凝固抑制が主作用ではない。 ⑤ プラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI)は線溶を抑制する因子で、凝固抑制ではない。
第61回 午前61(臨床血液学)
疾患と診断に用いる細胞表面マーカーの組合せで正しいのはどれか。
①Hodgkinリンパ腫 — CD4 ②後天性免疫不全症候群 — CD25 ③成人T細胞白血病 — CD34 ④急性前骨髄球性白血病 — CD41 ⑤発作性夜間ヘモグロビン尿症 — CD55
正答: ⑤発作性夜間ヘモグロビン尿症 — CD55
ポイント 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、造血幹細胞のPIG-A遺伝子の後天的変異によりGPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)アンカーの合成が障害され、これに繋留される補体制御蛋白CD55(DAF)・CD59が血球膜上から失われる後天性の溶血性疾患である。補体の活性化に対する防御を失った赤血球が補体により破壊され、血管内溶血・ヘモグロビン尿・血栓症をきたす。フローサイトメトリーによるCD55・CD59陰性血球の検出やFLAER法が診断に用いられる。●疾患と細胞表面マーカーの対応=PNH=CD55/CD59欠損、成人T細胞白血病=CD4/CD25陽性、急性前骨髄球性白血病=CD13/CD33陽性かつHLA-DR陰性、Hodgkinリンパ腫=CD15/CD30陽性。●系統を示すマーカー=造血幹細胞=CD34、巨核球・血小板系=CD41。
選択肢ごとの解説
① Hodgkinリンパ腫のReed-Sternberg細胞はCD15・CD30陽性で、CD4が診断マーカーではない。 ② 後天性免疫不全症候群ではCD4陽性T細胞の減少が指標で、CD25が診断マーカーではない。 ③ 成人T細胞白血病はCD4・CD25陽性が特徴で、CD34は造血幹細胞のマーカーである。 ④ 急性前骨髄球性白血病はCD13・CD33陽性でHLA-DR陰性が特徴で、CD41は巨核球系マーカーである。 ⑤ 正しい。PNHではGPIアンカー欠損によりCD55・CD59が欠失する。
📋 まとめの表を見る:発作性夜間ヘモグロビン尿症〈PNH〉の病態と検査所見
📋 まとめの表を見る:主な白血病・骨髄腫の細胞表面マーカー(CD抗原)パターン
CD5は本来T細胞抗原だが、CLLでは腫瘍性B細胞に共発現する。軽鎖(κ/λ)の偏り(軽鎖制限)もB細胞腫瘍性増殖の指標となる。
第61回 午前62(臨床血液学)
ビタミンB₁₂欠乏性貧血の骨髄塗抹標本で特徴的な所見はどれか。
①裸核像の増加 ②細胞質の空胞形成 ③環状鉄芽球の出現 ④核と細胞質の成熟乖離 ⑤核と細胞質の面積比〈N/C比〉上昇
正答: ④核と細胞質の成熟乖離
ポイント ビタミンB₁₂欠乏性貧血(巨赤芽球性貧血)では、ビタミンB₁₂が核酸(DNA)合成に必要なため、その欠乏でDNA合成と核の成熟が遅延する。一方で細胞質側のヘモグロビン合成(RNA・蛋白合成)は比較的保たれて進行するため、核(幼若なまま)と細胞質(成熟)の成熟段階が一致しない核・細胞質の成熟乖離を生じる。骨髄では大型で核クロマチンが繊細な(核網が粗大化しない)巨赤芽球が出現し、末梢血では大球性正色素性貧血や好中球の過分葉、無効造血による間接ビリルビン・LD上昇がみられる。●巨赤芽球性貧血の骨髄・末梢所見=巨赤芽球の出現・核と細胞質の成熟乖離・好中球の過分葉・大球性貧血・無効造血・汎血球減少傾向。●主な原因=ビタミンB₁₂欠乏(悪性貧血・胃全摘・回腸末端の病変)・葉酸欠乏によるDNA合成障害で、いずれもDNA合成の障害が共通する。
選択肢ごとの解説
① 裸核像の増加は本症に特徴的な所見ではない。 ② 細胞質の空胞形成はアルコール性や薬剤性で目立つが、本症の特徴的所見ではない。 ③ 環状鉄芽球は鉄芽球性貧血やMDSでみられ、本症の特徴ではない。 ④ 正しい。DNA合成障害で核の成熟が遅れ、核と細胞質の成熟乖離を生じる。 ⑤ 巨赤芽球では細胞質が豊富で、N/C比は上昇せずむしろ核成熟が遅延する。
📋 まとめの表を見る:赤芽球(赤血球系)の分化・成熟段階
成熟につれ細胞・核とも小型化する。巨赤芽球性貧血ではDNA合成障害により核の成熟が遅れ、細胞質(ヘモグロビン合成)との間に成熟解離(不均衡)を生じる。
第61回 午前63(臨床血液学)
線溶亢進で上昇するのはどれか。2つ選べ。
①FDP ②プロテインS ③凝固第XIII因子 ④トロンビン-アンチトロンビン複合体〈TAT〉 ⑤プラスミン-プラスミンインヒビター複合体〈PIC〉
正答: ①FDP・⑤プラスミン-プラスミンインヒビター複合体〈PIC〉
ポイント 線溶亢進では、産生されたプラスミンがフィブリン・フィブリノゲンを分解し、その分解産物であるFDP(フィブリン・フィブリノゲン分解産物)や架橋フィブリン由来のDダイマーが上昇する。また活性化されたプラスミンは血中で速やかに阻害因子のα2-プラスミンインヒビターと1対1で結合し、プラスミン-プラスミンインヒビター複合体(PIC)を形成するため、PICも線溶系の活性化(プラスミン生成)を反映する指標として上昇する。DダイマーはとくにDICや深部静脈血栓症・肺塞栓症で上昇し、線溶を伴う血栓性病態の指標となる。●線溶亢進で上昇する指標=FDP・Dダイマー・PIC(プラスミン生成を反映)。●凝固亢進(トロンビン生成)で上昇する指標=トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)・プロトロンビンフラグメント1+2。●抗凝固系で線溶亢進の指標とならないもの=プロテインS・プロテインC・アンチトロンビンなど。
選択肢ごとの解説
① 正しい。FDPはプラスミンによるフィブリン分解で生じ線溶亢進で上昇する。 ② プロテインSは抗凝固因子で、線溶亢進の指標として上昇するものではない。 ③ 凝固第XIII因子は線溶亢進では消費されることはあっても指標として上昇しない。 ④ TATは凝固亢進(トロンビン生成)の指標であり、線溶亢進の直接指標ではない。 ⑤ 正しい。PICはプラスミン生成を反映し線溶亢進で上昇する。
第61回 午前64(臨床血液学)
溶血性貧血で低下するのはどれか。
①LD ②間接ビリルビン ③ハプトグロビン ④フェリチン ⑤網赤血球数
正答: ③ハプトグロビン
ポイント 溶血性貧血では赤血球破壊が亢進する。赤血球内に多く含まれるLD(乳酸脱水素酵素)が血中に逸脱してLDが上昇し、ヘモグロビンの分解により間接(非抱合型)ビリルビンが上昇する。また貧血に対する骨髄の代償性産生亢進を反映して網赤血球が増加する。一方、血漿中に遊離したヘモグロビンと結合して運搬する蛋白であるハプトグロビンは、複合体形成により急速に消費・除去されるため低下し、溶血の鋭敏な指標となる。血管内溶血が強いと血漿遊離ヘモグロビンの増加やヘモグロビン尿・ヘモジデリン尿もみられる。●溶血で上昇する所見=LD・間接(非抱合型)ビリルビン・網赤血球数・血漿遊離ヘモグロビン・尿中ウロビリノゲン。●溶血で低下する所見=ハプトグロビン(遊離Hbと結合して消費され急速に減少する)。●注意点=フェリチンは鉄貯蔵を反映し、溶血では必ずしも低下せずむしろ上昇しうる。
選択肢ごとの解説
① LDは赤血球破壊で逸脱して上昇するため低下しない。 ② 間接ビリルビンはヘモグロビン分解の亢進で上昇するため低下しない。 ③ 正しい。ハプトグロビンは遊離ヘモグロビンと結合し消費されて低下する。 ④ フェリチンは鉄貯蔵を反映し、溶血ではむしろ上昇傾向を示すことが多い。 ⑤ 網赤血球は骨髄の代償性産生亢進で増加するため低下しない。
第61回 午前65(臨床血液学)
好中球に中毒性顆粒がみられるのはどれか。
①アルコール性肝硬変 ②関節リウマチ ③前立腺癌 ④敗血症 ⑤慢性骨髄性白血病
正答: ④敗血症
ポイント 中毒性顆粒は好中球の細胞質にみられる粗大で暗紫色(青紫)のアズール顆粒で、敗血症などの重症細菌感染症や強い炎症の際に出現する。これは骨髄での好中球産生が急速に亢進・促進された結果、本来微細な一次顆粒(アズロフィル顆粒・ミエロペルオキシダーゼを含む)が成熟過程で残存し濃染して観察されるものである。中毒性顆粒は、好中球の青色封入体であるDöhle小体や細胞質の空胞形成、桿状核・幼若球を伴う核の左方移動とともに、重症感染を示す中毒性変化として現れる。慢性炎症の関節リウマチや前立腺癌そのもの、慢性骨髄性白血病では中毒性顆粒は特徴的所見ではない。●好中球の中毒性変化=中毒性顆粒・Döhle小体・空胞形成(重症細菌感染・敗血症で出現する)。●好中球増加(核左方移動)を伴う病態=細菌感染症・敗血症・広範な組織壊死・急性炎症・急性出血。
選択肢ごとの解説
① アルコール性肝硬変では好中球の中毒性顆粒は特徴的所見ではない。 ② 関節リウマチは慢性炎症だが、中毒性顆粒が特徴的にみられるわけではない。 ③ 前立腺癌そのものは好中球の中毒性顆粒を特徴的に生じる病態ではない。 ④ 正しい。敗血症など重症細菌感染で好中球に中毒性顆粒が出現する。 ⑤ 慢性骨髄性白血病では好塩基球増加など別の所見が主で、中毒性顆粒は特徴ではない。
第61回 午前66(臨床血液学)
骨髄塗抹Wright-Giemsa染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA066.99202a0a77.jpg
①赤白血病 ②多発性骨髄腫 ③Hodgkinリンパ腫 ④骨髄異形成症候群 ⑤急性巨核芽球性白血病
正答: ②多発性骨髄腫
ポイント 多発性骨髄腫は、単クローン性の形質細胞が骨髄で腫瘍性に増殖する疾患である。骨髄塗抹では、偏在した核に車軸状(時計の文字盤様)クロマチンをもち、核近傍に明るい核周明庭(ゴルジ野)が認められ、好塩基性で豊富な細胞質をもつ異型形質細胞(骨髄腫細胞)が増加する。単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)の産生による血清・尿中Mピーク、破骨細胞活性化による溶骨性病変(打ち抜き像)・高カルシウム血症、軽鎖(Bence Jones蛋白)による腎障害(骨髄腫腎)、正常免疫グロブリン低下による易感染性、貧血を伴う。●多発性骨髄腫の特徴=骨髄腫細胞の増加・M蛋白・溶骨性病変・高Ca血症・腎障害・貧血・易感染性。●形質細胞の細胞所見=核の偏在・車軸状(時計の文字盤様)クロマチン・核周明庭(ゴルジ野)・好塩基性で豊富な細胞質。
選択肢ごとの解説
① 赤白血病は赤芽球系と骨髄芽球の増加を示す疾患で、形質細胞増加の像とは異なる。 ② 正しい。偏在核・核周明庭をもつ異型形質細胞の増加で多発性骨髄腫である。 ③ Hodgkinリンパ腫はReed-Sternberg細胞が特徴で、骨髄塗抹の形質細胞増加とは異なる。 ④ 骨髄異形成症候群は各血球系の異形成が主体で、形質細胞増加が主所見ではない。 ⑤ 急性巨核芽球性白血病は巨核芽球の増加が特徴で、形質細胞の増加とは異なる。
📋 まとめの表を見る:多発性骨髄腫の特徴的所見
第61回 午前67(臨床血液学)
von Willebrand病と血友病Aの鑑別に有用なのはどれか。2つ選べ。
①活性化部分トロンボプラスチン時間 ②リストセチンコファクター活性 ③プロトロンビン時間 ④第Ⅷ因子活性 ⑤出血時間
正答: ②リストセチンコファクター活性・⑤出血時間
ポイント von Willebrand病はvon Willebrand因子(VWF)の量的・質的異常による出血性疾患である。VWFは血小板の血管壁への粘着を仲介するため、その低下によりリストセチンコファクター活性が低下し、一次止血の障害として出血時間が延長する。さらにVWFは第Ⅷ因子(VIII)の血中安定化を担うため第Ⅷ因子活性も低下しAPTTも延長しうる。一方、血友病Aは第Ⅷ因子の単独欠乏で、APTTは延長するが血小板機能・VWFは正常のため出血時間は正常である。したがってリストセチンコファクター活性と出血時間が両者の鑑別に有用である。●von Willebrand病=VWF低下・リストセチンコファクター活性低下・出血時間延長(第Ⅷ因子も低下しうる)。●血友病A=第Ⅷ因子低下・APTT延長・出血時間正常・VWF正常。
選択肢ごとの解説
① APTTは両疾患とも延長しうるため、鑑別には有用でない。 ② 正しい。リストセチンコファクター活性はvon Willebrand病で低下し血友病Aでは正常で鑑別に有用である。 ③ プロトロンビン時間は両疾患とも正常であり、鑑別には用いられない。 ④ 第Ⅷ因子活性は両疾患とも低下しうるため、単独では鑑別が難しい。 ⑤ 正しい。出血時間はvon Willebrand病で延長し血友病Aでは正常で鑑別に有用である。
第61回 午前68(臨床微生物学)
インフルエンザウイルスに認められるのはどれか。2つ選べ。
①RNA ②カプシド ③リボソーム ④ミトコンドリア ⑤ペプチドグリカン層
正答: ①RNA・②カプシド
ポイント インフルエンザウイルスは、分節した一本鎖(マイナス鎖)RNAを遺伝子としてもつエンベロープ型RNAウイルスである。ウイルス粒子は遺伝子である核酸(RNA)と、それを取り囲む蛋白の殻であるカプシド(核蛋白とともにヌクレオカプシドを構成)を基本構造とし、最外層に宿主由来の脂質エンベロープとスパイク(ヘマグルチニン・ノイラミニダーゼ)をもつ。ウイルスは自前の代謝・蛋白合成装置をもたず増殖は宿主細胞に依存する偏性細胞内寄生体であるため、リボソームやミトコンドリアなどの細胞小器官や、細菌に特有のペプチドグリカン層(細胞壁)は存在しない。●ウイルスの基本構成=核酸(DNAまたはRNAのいずれか一方)+カプシド(蛋白の殻)±エンベロープ。●ウイルスがもたないもの=リボソーム・ミトコンドリアなどの細胞小器官・細胞壁(ペプチドグリカン)など自己の代謝や蛋白合成の装置。
選択肢ごとの解説
① 正しい。インフルエンザウイルスは遺伝子として一本鎖RNAをもつ。 ② 正しい。核酸を包む蛋白の殻であるカプシドをもつ。 ③ リボソームは宿主細胞の構造でウイルス自体はもたない。 ④ ミトコンドリアは真核細胞の細胞小器官でウイルスはもたない。 ⑤ ペプチドグリカン層は細菌の細胞壁成分でウイルスには存在しない。
第61回 午前69(臨床微生物学)
菌種と検査法の組合せで正しいのはどれか。
①Aspergillus fumigatus — 墨汁法 ②Clostridium tetani — Hiss法 ③Corynebacterium diphtheriae — Leifson法 ④Mycobacterium kansasii — オーラミン法 ⑤Nocardia asteroides — Wirtz法
正答: ④Mycobacterium kansasii — オーラミン法
ポイント Mycobacterium kansasiiは非結核性抗酸菌の一種で、細胞壁にミコール酸などの脂質を多くもつため通常の染色では染まりにくく、いったん染まると酸・アルコールで脱色されない抗酸性を示す。抗酸菌のスクリーニング検査には蛍光法であるオーラミン(オーラミン・ローダミン)染色が有用で、蛍光顕微鏡下で黄〜橙色の蛍光を発する菌として効率よく検出できる。蛍光法は弱拡大で広い視野を観察でき、塗抹検査のスクリーニングに適し、陽性例の確認にはZiehl-Neelsen染色を併用する。●抗酸菌を染める方法=Ziehl-Neelsen染色(赤)・Kinyoun染色・蛍光オーラミン(オーラミン・ローダミン)法。●菌の構造に応じた染色法=莢膜染色=Hiss法、芽胞染色=Wirtz法(Schaeffer-Fulton法)、鞭毛染色=Leifson法、Cryptococcusの莢膜証明=墨汁法。
選択肢ごとの解説
① Aspergillus fumigatusは糸状真菌で、墨汁法はCryptococcusの莢膜証明に用いる方法である。 ② Clostridium tetaniは芽胞をWirtz法等で証明し、Hiss法は莢膜染色法である。 ③ Corynebacterium diphtheriaeは異染小体をNeisser法等で証明し、Leifson法は鞭毛染色である。 ④ 正しい。抗酸菌Mycobacterium kansasiiの検出に蛍光オーラミン法が有用である。 ⑤ Nocardia asteroidesは抗酸性を示し抗酸染色等を用い、Wirtz法は芽胞染色である。
📋 まとめの表を見る:微生物の染色法と検出対象(構造・真菌・特殊病原体)
第61回 午前70(臨床微生物学)
分離培地の成分を表に示す。この培地を用いるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA070.7f7ae6720b.jpg
①Candida albicans ②Legionella pneumophila ③Mycobacterium tuberculosis ④Streptococcus pyogenes ⑤Vibrio parahaemolyticus
正答: ①Candida albicans
ポイント 示された培地はペプトンに高濃度のブドウ糖(40g)を加え、抗菌薬クロラムフェニコールを含み寒天で固めたもので、これはSabouraud(サブロー)ブドウ糖寒天培地に細菌の発育を抑えるクロラムフェニコールを添加した真菌分離培地である。高い糖濃度と低めのpH(約5.6)で真菌の発育に適した環境とし、添加した抗菌薬(クロラムフェニコール)で雑菌である細菌を抑制することにより、Candidaをはじめとする真菌を選択的に分離・培養できる。記載のレジオネラ・結核菌・化膿レンサ球菌・腸炎ビブリオはいずれも別の専用培地を要する。●真菌の分離培地=Sabouraudブドウ糖寒天(クロラムフェニコール添加で細菌を抑制)・ポテトデキストロース寒天。●Candidaの培養・鑑別=Sabouraud培地・クロモアガーCandida(集落の発色による菌種推定)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。高糖・低pH・クロラムフェニコール添加のSabouraud系培地で真菌Candidaを分離する。 ② Legionella pneumophilaはBCYEα培地など特殊な栄養要求性培地を必要とする。 ③ Mycobacterium tuberculosisは小川培地など抗酸菌専用培地で培養する。 ④ Streptococcus pyogenesは血液寒天培地で培養し、本培地は適さない。 ⑤ Vibrio parahaemolyticusはTCBS培地など好塩性に対応した培地で分離する。
第61回 午前71(臨床微生物学)
β-ラクタム系抗菌薬に対する細菌の耐性機序として正しいのはどれか。2つ選べ。
①リボソームの変化 ②核酸合成酵素の変化 ③リン酸化による不活化 ④加水分解酵素による不活化 ⑤ペニシリン結合蛋白〈PBP〉の変化
正答: ④加水分解酵素による不活化・⑤ペニシリン結合蛋白〈PBP〉の変化
ポイント β-ラクタム系抗菌薬(ペニシリン・セフェム・カルバペネム等)は、細胞壁合成を担うペニシリン結合蛋白(PBP)に結合してその働きを阻害する。これに対する細菌の主な耐性機序は2つで、第一にβ-ラクタマーゼ(加水分解酵素)を産生してβ-ラクタム環を加水分解し薬剤を不活化する機序、第二に標的であるPBP自体が変化して薬剤との親和性(結合)が低下する機序である。後者はMRSAの変異型PBP2′(PBP2a)が代表で、これによりほぼ全てのβ-ラクタムに耐性となる。●β-ラクタム耐性の機序=β-ラクタマーゼ産生・PBPの変化(加えて外膜透過性の低下・薬剤排出ポンプの関与)。●他系統薬の耐性機序=リボソームの変化(マクロライド等)・DNAジャイレース等核酸合成酵素の変化(キノロン)・リン酸化等による不活化(アミノグリコシド)。
選択肢ごとの解説
① リボソームの変化はマクロライドやアミノグリコシド耐性の機序で、β-ラクタムには当てはまらない。 ② 核酸合成酵素(DNAジャイレース等)の変化はキノロン耐性の機序である。 ③ リン酸化による不活化はアミノグリコシド系の耐性機序である。 ④ 正しい。β-ラクタマーゼによる加水分解でβ-ラクタム環が不活化される。 ⑤ 正しい。ペニシリン結合蛋白(PBP)の変化により薬剤の結合が低下し耐性となる。
📋 まとめの表を見る:主な抗菌薬クラスと薬剤耐性の機序
細菌の薬剤耐性機序にはこのほか、薬剤排出ポンプ(Efflux機構)による排出や細胞膜透過性の低下も関与する。β-ラクタム系の耐性機序(β-ラクタマーゼ産生・PBP変異・Efflux排出)はComplete+ MT Vol.6 p.73で確認済み。マクロライド・キノロン・アミノグリコシドの機序は臨床微生物学における確立した一般知識。
第61回 午前72(臨床微生物学)
結核菌について正しいのはどれか。
①芽胞を形成する。 ②人工培地に発育しない。 ③塩酸アルコールで脱色されない。 ④土壌や環境水に広く分布している。 ⑤ワクチン株としてMycobacterium tuberculosisを用いる。
正答: ③塩酸アルコールで脱色されない。
ポイント 結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は細胞壁にミコール酸などの脂質を多く含む好気性のグラム陽性桿菌(抗酸菌)で、いったん石炭酸フクシン等で染まると塩酸アルコールで脱色されない抗酸性を示す。芽胞や鞭毛・莢膜はもたず、ヒトを主な宿主とする。小川培地などの人工培地に発育するが、分裂が遅いため培養には数週間を要する。予防のBCGワクチンは結核菌そのものではなくMycobacterium bovisの弱毒株を用いる。診断には抗酸染色・培養に加え核酸増幅検査やインターフェロンγ遊離試験が併用される。●結核菌の性質=抗酸性(塩酸アルコールで脱色されない)・偏性好気性・発育が遅い・芽胞や鞭毛をもたない・ヒトが主宿主。●混同しやすい点=BCGワクチンはM. bovis弱毒株であること、土壌や環境水に広く分布するのは結核菌ではなく非結核性抗酸菌であること。
選択肢ごとの解説
① 結核菌は芽胞も鞭毛ももたず、芽胞形成菌ではない。 ② 結核菌は小川培地など人工培地に(遅いが)発育する。 ③ 正しい。抗酸性を示し塩酸アルコールで脱色されない。 ④ 結核菌はヒトを主な宿主とし、土壌や環境水に広く分布するのは非結核性抗酸菌である。 ⑤ BCGワクチンはMycobacterium bovis弱毒株であり、M. tuberculosisは用いない。
📋 まとめの表を見る:抗酸菌(Mycobacterium属)の分類(Runyon分類・発育速度・結核菌の特徴)
抗酸菌は世代時間が長く発育が遅い(培養に数週間を要する)。BCGワクチンには結核菌ではなくMycobacterium bovisの弱毒株が用いられる。Nocardia属は抗酸菌ではないが部分的な抗酸性を示す点で紛らわしい。
第61回 午前73(臨床微生物学)
膿のGram染色標本(別冊No.12)を別に示す。起因菌と考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA073.05eda31e85.jpg
①Bacillus cereus ②Candida parapsilosis ③Corynebacterium diphtheriae ④Nocardia asteroides ⑤Staphylococcus aureus
正答: ⑤Staphylococcus aureus
ポイント 膿のGram染色標本で、ブドウの房状(不規則な集塊)に集まったグラム陽性球菌が観察される場合、起因菌としてStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)がまず考えられる。本菌はヒトの皮膚や鼻前庭に常在し、膿瘍・蜂窩織炎・創部感染・骨髄炎・食中毒など化膿性炎の代表的な起因菌で、カタラーゼ陽性、コアグラーゼ陽性、マンニット分解能をもち、血液寒天では黄色〜白色のβ溶血集落をつくり、メチシリン耐性株(MRSA)は院内感染上も重要である。●グラム陽性球菌の配列による起因菌の推定=ブドウ状の集塊=ブドウ球菌、連鎖状=連鎖球菌、双球=肺炎球菌・腸球菌など。●黄色ブドウ球菌の性状=カタラーゼ陽性・コアグラーゼ陽性・マンニット分解(培地を黄変させる)・耐塩性・黄色色素産生・化膿巣や食中毒の主要起因菌。
選択肢ごとの解説
① Bacillus cereusはグラム陽性の大型桿菌で芽胞を形成し、ブドウ状球菌の像とは異なる。 ② Candida parapsilosisは真菌で、Gram染色では仮性菌糸や酵母様細胞として観察される。 ③ Corynebacterium diphtheriaeはグラム陽性桿菌で柵状配列を示し、球菌ではない。 ④ Nocardia asteroidesは菌糸状に分枝するグラム陽性桿菌(好気性放線菌)であり、真菌ではない。提示されたブドウ状球菌とは異なる。 ⑤ 正しい。ブドウ状のグラム陽性球菌で化膿巣の起因菌である黄色ブドウ球菌が考えられる。
📋 まとめの表を見る:ブドウ球菌属の鑑別(カタラーゼ・コアグラーゼ・マンニット分解・耐塩性)
レンサ球菌属・腸球菌属はカタラーゼ陰性であり、この点がブドウ球菌属との一次鑑別点となる。S. aureusの選択分離にはマンニット食塩培地(卵黄加マンニット食塩寒天)を用いる。
第61回 午前74(臨床微生物学)
膿のGram染色標本(別冊No.12)を別に示す。この起因菌の分離培地はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61aA074.5609bf668c.jpg
①小川培地 ②荒川培地 ③CCFA培地 ④Sabouraud培地 ⑤マンニット食塩培地
正答: ⑤マンニット食塩培地
ポイント 前問の所見からブドウ状のグラム陽性球菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が起因菌と考えられ、その選択分離にはマンニット食塩培地(卵黄加マンニット食塩寒天)を用いる。本培地は高濃度(約7.5%)の食塩を含み、耐塩性に乏しい他の細菌の発育を抑制する選択性をもつ。黄色ブドウ球菌は耐塩性をもちマンニットを分解して酸を産生するため、pH指示薬により集落周囲が黄変し、表皮ブドウ球菌などと鑑別できる(卵黄加培地では卵黄反応も観察できる)。●黄色ブドウ球菌の選択分離培地=マンニット食塩培地(高塩で選択・マンニット分解で黄変)。●他菌の選択培地=小川培地(抗酸菌)・荒川培地(ジフテリア菌)・CCFA培地(Clostridioides difficile)・Sabouraud培地(真菌)。
選択肢ごとの解説
① 小川培地は結核菌など抗酸菌の分離培地で、黄色ブドウ球菌には用いない。 ② 荒川培地はジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)の分離培地であり、百日咳菌の分離にはBordet-Gengou培地を用いる。 ③ CCFA培地はClostridioides difficileの選択分離培地である。 ④ Sabouraud培地は真菌の分離培地で、黄色ブドウ球菌には用いない。 ⑤ 正しい。高塩とマンニット分解による黄変で黄色ブドウ球菌を選択分離する。
📋 まとめの表を見る:ブドウ球菌属の鑑別(カタラーゼ・コアグラーゼ・マンニット分解・耐塩性)
レンサ球菌属・腸球菌属はカタラーゼ陰性であり、この点がブドウ球菌属との一次鑑別点となる。S. aureusの選択分離にはマンニット食塩培地(卵黄加マンニット食塩寒天)を用いる。
第61回 午前75(臨床微生物学)
Salmonella entericaとCitrobacter freundiiを鑑別する性状はどれか。
①VP反応 ②硫化水素産生 ③インドール産生 ④乳糖・白糖分解能 ⑤リジン脱炭酸反応
正答: ⑤リジン脱炭酸反応
ポイント Salmonella entericaとCitrobacter freundiiは、いずれも腸内細菌科のグラム陰性桿菌で、硫化水素(H₂S)産生・乳糖非分解(または遅分解)など共通する生化学的性状が多く、培地上で類似するため鑑別が問題となる。両者を分ける鍵となる性状がリジン脱炭酸(LDC)反応で、Salmonellaの多くがリジン脱炭酸陽性であるのに対し、Citrobacter freundiiはリジン脱炭酸陰性であり、この差が両菌の鑑別に有用である。●Salmonella entericaの主な性状=H₂S産生・リジン脱炭酸陽性・乳糖非分解・運動性あり・インドール陰性。●Citrobacter freundiiの主な性状=H₂S産生・リジン脱炭酸陰性であり、この点でSalmonellaと区別される。
選択肢ごとの解説
① VP反応はいずれも陰性で、両者の鑑別には有用でない。 ② 硫化水素産生は両者とも陽性となりうるため、鑑別性状として不適である。 ③ インドール産生は両者の鑑別に決め手とならない。 ④ 乳糖・白糖分解能は両者とも非分解傾向で、鑑別には適さない。 ⑤ 正しい。Salmonellaはリジン脱炭酸陽性、Citrobacter freundiiは陰性で鑑別できる。
📋 まとめの表を見る:腸内細菌科の生化学的性状の鑑別(乳糖分解・硫化水素・リジン脱炭酸・インドール)
サルモネラ・赤痢菌など乳糖非分解菌はTSI培地で高層部のみ黄変し斜面は赤色のまま残るが、大腸菌など乳糖分解菌は斜面・高層とも黄変する。チフス菌(Typhi)はTSI培地でガスをほとんど産生せず硫化水素も少量にとどまる点が他の多くのSalmonella血清型と異なる。尿素分解(ウレアーゼ)陽性の代表はProteus属・Morganella属・Providencia属。
第61回 午前76(臨床微生物学)
真菌とその性質の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
①Aspergillus fumigatus — 大分生子 ②Candida albicans — 厚膜胞子 ③Candida glabrata — 仮性菌糸 ④Sporothrix schenckii — 二形性真菌 ⑤Trichophyton rubrum — 莢膜
正答: ②Candida albicans — 厚膜胞子・④Sporothrix schenckii — 二形性真菌
ポイント 真菌の同定では分生子・胞子・菌糸形態が鑑別の根拠となる。Candida albicansは血清中で発芽管を形成し、コーンミール寒天では特徴的な厚膜胞子(厚壁胞子)を産生する点で他のCandidaと区別される。Sporothrix schenckiiは25℃で菌糸形、37℃で酵母形をとる二形性真菌で、スポロトリコーシスの原因となる。Aspergillus fumigatusは分生子頭(conidial head)上に小型の分生子を連鎖状に形成し、大分生子は産生しない。 ●二形性真菌=Sporothrix schenckii・Histoplasma capsulatum・Blastomyces dermatitidis・Coccidioides immitis・Penicillium marneffei。 ●Candida属の鑑別所見=C. albicansは発芽管陽性・厚膜胞子陽性、C. glabrataは仮性菌糸を形成しにくい、C. tropicalisは仮性菌糸を多数形成する。
選択肢ごとの解説
① Aspergillus fumigatusは分生子頭の上に小型の分生子を放射状・連鎖状に形成する糸状菌で、大分生子という記載は適切でない。 ② 正しい。Candida albicansはコーンミール寒天上で厚膜胞子(厚壁胞子)を形成し、血清中で発芽管を生じる点が他のCandidaとの鑑別になる。 ③ Candida glabrataは仮性菌糸をほとんど形成しない小型の酵母で、仮性菌糸という組合せは適切でない。 ④ 正しい。Sporothrix schenckiiは25℃で菌糸形・37℃で酵母形をとる二形性真菌で、スポロトリコーシスの原因菌である。 ⑤ Trichophyton rubrumは皮膚糸状菌で莢膜は形成しない。莢膜を有するのはCryptococcus neoformansである。
📋 まとめの表を見る:真菌の分類(酵母・糸状菌・二形性真菌・黒色真菌)
Candida属の仮性菌糸・厚膜胞子・発芽管の有無は種によって異なり、C. glabrataはこれらをいずれも形成しない点で他のCandida属(C. tropicalis・C. krusei・C. parapsilosis等は仮性菌糸を形成)と異なる。
第61回 午前77(臨床微生物学)
HIVとその感染症について正しいのはどれか。
①DNAウイルスである。 ②CD4陽性T細胞に感染する。 ③HIV1からHIV6に分類される。 ④感染後無症候期が続きウインドウ期に移行する。 ⑤後天性免疫不全症候群〈AIDS〉を発症すると血中ウイルス量は減少する。
正答: ②CD4陽性T細胞に感染する。
ポイント HIV(ヒト免疫不全ウイルス)はレトロウイルス科のRNAウイルスで、逆転写酵素によりRNAをDNAに変換し宿主ゲノムへ組み込んで持続感染する。表面のエンベロープ蛋白gp120がCD4分子と補助受容体(CCR5/CXCR4)に結合し、CD4陽性Tリンパ球やマクロファージに感染してこれを徐々に破壊するため、進行すると細胞性免疫が著しく低下し、日和見感染症や悪性腫瘍を合併する。感染初期はウインドウ期を経て長い無症候期へ移行し、AIDS発症期には免疫破綻に伴い血中ウイルス量が再上昇する。 ●HIVの分類=HIV-1とHIV-2の2型に大別され、HIV-1が世界的に流行の主体で病原性が高い。 ●感染経過の用語=ウインドウ期(感染初期で抗体が検出されない時期)→無症候期(数年)→AIDS発症期。ウインドウ期は無症候期より前であり、この間も他者への感染性をもつ。
選択肢ごとの解説
① HIVは逆転写酵素をもつRNAウイルス(レトロウイルス)であり、DNAウイルスという記載は誤りである。 ② 正しい。HIVは表面のgp120がCD4分子に結合してCD4陽性Tリンパ球やマクロファージに感染し、これらを破壊して免疫不全を引き起こす。 ③ HIVはHIV-1とHIV-2の2型に分類され、HIV1からHIV6という分類は存在しない。 ④ 感染後はまずウインドウ期(抗体陰性期)があり、その後に無症候期へ移行する。順序が逆で誤りである。 ⑤ AIDSを発症すると免疫破綻によりウイルスの増殖が抑えられず、血中ウイルス量はむしろ増加するため誤りである。
📋 まとめの表を見る:HIV感染の病期分類とウイルス学的特徴
HIVはレトロウイルス科のRNAウイルスで、逆転写酵素によりRNAをDNAに逆転写して宿主ゲノムに組み込む。主な標的はCD4陽性Tリンパ球であり、CD8陽性リンパ球ではない。HIV-1とHIV-2の2型があり、HIV-1が世界的流行の主体。
第61回 午前78(臨床微生物学)
尿中抗原検査が行われているのはどれか。
①Clostridium difficile ②Legionella pneumophila ③Mycobacterium tuberculosis ④Mycoplasma pneumoniae ⑤Neisseria meningitidis
正答: ②Legionella pneumophila
ポイント 尿中抗原検査は迅速で患者負担が少なく、菌体由来の可溶性抗原を尿中に検出する。代表はLegionella pneumophila(主に血清型1の抗原)とStreptococcus pneumoniae(C多糖体抗原)であり、いずれも肺炎の迅速診断に用いられる。Legionella尿中抗原は喀痰採取が困難な重症肺炎でも早期診断が可能だが、血清型1に限られる点に留意する。 ●尿中抗原検査が行われる病原体=Legionella pneumophila・Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)。 ●その他の迅速診断法=Clostridioides difficileは便中トキシン/GDH抗原、結核菌は喀痰塗抹・培養・核酸増幅、Mycoplasma pneumoniaeは咽頭ぬぐい液の抗原や血清抗体・核酸検査で診断する。
選択肢ごとの解説
① Clostridioides difficileは便中のトキシンA/BやGDH抗原を検出するもので、尿中抗原検査は行われない。 ② 正しい。Legionella pneumophilaは尿中抗原検査(主に血清型1)が確立しており、レジオネラ肺炎の迅速診断に用いられる。 ③ Mycobacterium tuberculosisは喀痰の塗抹・培養や核酸増幅検査で診断し、尿中抗原検査は一般に行われない。 ④ Mycoplasma pneumoniaeは咽頭ぬぐい液の抗原検査や血清抗体価・核酸検査で診断し、尿中抗原検査は行われない。 ⑤ Neisseria meningitidisは髄液・血液の培養やグラム染色で診断し、尿中抗原検査は標準的でない。
第61回 午前79(臨床免疫学)
抗ウイルス作用を有するサイトカインはどれか。
①インターフェロンα〈IFN-α〉 ②インターロイキン1〈IL-1〉 ③インターロイキン4〈IL-4〉 ④インターロイキン6〈IL-6〉 ⑤腫瘍壊死因子α〈TNF-α〉
正答: ①インターフェロンα〈IFN-α〉
ポイント サイトカインは免疫細胞間の情報伝達を担う蛋白で、機能ごとに分類される。インターフェロン(IFN)はウイルス感染細胞などから産生され、周囲の細胞に抗ウイルス蛋白(2′-5′オリゴアデニル酸合成酵素やプロテインキナーゼなど)の合成を誘導してウイルスの複製を抑制する代表的な抗ウイルス因子である。IFN-α/βはⅠ型インターフェロンで主にウイルス防御に働き、IFN-γはⅡ型でマクロファージ活性化など細胞性免疫を担う。 ●抗ウイルス作用をもつサイトカイン=Ⅰ型インターフェロン(IFN-α・IFN-β)、Ⅱ型(IFN-γ)。Ⅰ型はウイルス感染で誘導される。 ●炎症性サイトカイン=IL-1・IL-6・TNF-αは発熱・急性期蛋白誘導など炎症反応を担い、抗ウイルス作用が主機能ではない。IL-4はTh2分化やB細胞のIgE産生を促すサイトカインである。
選択肢ごとの解説
① 正しい。インターフェロンα(IFN-α)はⅠ型インターフェロンで、感染細胞に抗ウイルス蛋白を誘導しウイルス複製を抑制する代表的な抗ウイルス作用をもつ。 ② インターロイキン1(IL-1)は発熱や急性期反応を誘導する炎症性サイトカインで、抗ウイルス作用が主機能ではない。 ③ インターロイキン4(IL-4)はTh2細胞の分化やB細胞のIgE産生を促すサイトカインで、抗ウイルス作用はもたない。 ④ インターロイキン6(IL-6)は急性期蛋白産生やB細胞分化を促す炎症性サイトカインで、抗ウイルス作用が主ではない。 ⑤ 腫瘍壊死因子α(TNF-α)は炎症・発熱・腫瘍細胞傷害に関与する炎症性サイトカインで、抗ウイルス作用が主機能ではない。
第61回 午前80(臨床免疫学)
膜傷害複合体を構成する補体成分はどれか。
正答: ⑤C5
ポイント 補体活性化の最終段階(終末経路)では、C5b・C6・C7・C8・C9が順次会合して膜傷害複合体(膜侵襲複合体、MAC)を形成し、標的細胞膜に円筒状の孔をあけて溶菌・溶血を起こす。C5はC5転換酵素によりC5aとC5bに分解され、このC5bがMAC形成の起点となるため、選択肢の補体成分の中ではC5が膜傷害複合体を構成する成分に該当する。C5aは強力なアナフィラトキシン・好中球走化性因子として炎症を惹起する。 ●膜傷害複合体(MAC)の構成成分=C5b・C6・C7・C8・C9(最終的にC9が重合して孔を形成する)。 ●補体活性化経路=古典経路(C1q→C4→C2)・第二経路(B因子・D因子・プロパージン)・レクチン経路(MBL)。いずれもC3転換酵素・C5転換酵素を経て共通の終末経路(MAC)へ収束する。
選択肢ごとの解説
① C1は古典経路の開始に働く補体成分(C1q・C1r・C1s)で、抗原抗体複合体を認識する。膜傷害複合体の構成成分ではない。 ② C2は古典経路でC4とともにC3転換酵素を形成する成分で、膜傷害複合体の構成成分ではない。 ③ C3は補体活性化の中心となる成分でオプソニン化に働くが、膜傷害複合体そのものの構成成分ではない。 ④ C4は古典経路・レクチン経路でC3転換酵素形成に関与する成分で、膜傷害複合体の構成成分ではない。 ⑤ 正しい。C5はC5転換酵素によりC5bを生じ、これがC6〜C9と会合して膜傷害複合体(MAC)を形成する起点となる。
第61回 午前81(臨床免疫学)
HIV感染のスクリーニング法はどれか。2つ選べ。
①受身凝集法 ②間接蛍光抗体法 ③酵素免疫測定法 ④Ouchterlony法〈二重免疫拡散法〉 ⑤イムノブロット法〈ウエスタンブロット法〉
正答: ①受身凝集法・③酵素免疫測定法
ポイント HIV検査は、感度を重視して見逃しを防ぐスクリーニング法と、特異性を重視して偽陽性を除外する確認法に分かれる二段階方式をとる。スクリーニングには受身凝集法(粒子凝集法、PA)や酵素免疫測定法(EIA/ELISA)、近年は抗原と抗体を同時に検出する第4世代法が用いられ、多検体を簡便に処理でき偽陰性を避けるよう高感度に設計されている。スクリーニング陽性例はイムノブロット法(ウエスタンブロット)や核酸増幅検査などの確認検査で偽陽性を除外する。 ●HIVスクリーニング法=受身凝集法(PA)・酵素免疫測定法(EIA)・抗原抗体同時測定法(第4世代)。 ●HIV確認検査=イムノブロット法(ウエスタンブロット)・核酸増幅検査(NAT)。間接蛍光抗体法やOuchterlony法はHIVの一般的なスクリーニングには用いられない。
選択肢ごとの解説
① 正しい。受身凝集法(PA)は抗原を感作した粒子の凝集で抗体を検出する簡便な方法で、HIVのスクリーニング検査に用いられる。 ② 間接蛍光抗体法は自己抗体検出などに用いられる手技で、HIVの一般的なスクリーニング法ではない。 ③ 正しい。酵素免疫測定法(EIA/ELISA)は高感度に多検体を処理でき、HIV抗体・抗原のスクリーニングに広く用いられる。 ④ Ouchterlony法(二重免疫拡散法)は沈降反応による定性法で感度が低く、HIVスクリーニングには用いられない。 ⑤ イムノブロット法(ウエスタンブロット)はスクリーニング陽性例の確認検査に用いられる方法で、スクリーニング法ではない。
📋 まとめの表を見る:HIV・HTLV-1感染症の検査:スクリーニング法と確認検査法
抗HTLV抗体には中和活性がなく、ウイルス抗原と共存しうる。HTLV-1は母乳を介した母子感染(垂直感染)と輸血・性交による水平感染がある。
第61回 午前82(臨床免疫学)
肺小細胞癌に特異性の高い腫瘍マーカーはどれか。
①CA15-3 ②CEA ③CYFRA21-1 ④ProGRP ⑤SCC
正答: ④ProGRP
ポイント 腫瘍マーカーは原発巣や組織型に応じて特異性が異なり、補助診断や治療効果・再発の判定に用いられる。ProGRP(ガストリン放出ペプチド前駆体)とNSE(神経特異エノラーゼ)は神経内分泌系の性格をもつ肺小細胞癌で特異的に高値を示し、診断・経過観察に有用である。一方、肺の扁平上皮癌ではSCC・CYFRA21-1、腺癌ではCEAが上昇しやすく、これらの組合せが組織型推定の手がかりとなる。 ●肺小細胞癌のマーカー=ProGRP・NSE(いずれも神経内分泌系を反映する)。 ●肺非小細胞癌のマーカー=SCC・CYFRA21-1(扁平上皮癌)、CEA(腺癌)。CA15-3は乳癌で上昇する代表的マーカーで、肺小細胞癌の指標ではない。 ●補足=腫瘍マーカーは単独では確定診断とならず、画像・病理所見と併せて判断し、治療効果や再発の早期発見に用いるのが原則である。
選択肢ごとの解説
① CA15-3は乳癌で上昇する代表的な腫瘍マーカーで、肺小細胞癌に対する特異性が高いとはいえず適切でない。 ② CEA(癌胎児性抗原)は腺癌や消化器癌で上昇する非特異的マーカーで、肺小細胞癌に特異的ではない。 ③ CYFRA21-1は肺扁平上皮癌で上昇するサイトケラチン断片のマーカーで、小細胞癌の特異マーカーではない。 ④ 正しい。ProGRP(ガストリン放出ペプチド前駆体)は神経内分泌性格をもつ肺小細胞癌で特異的に高値となるマーカーである。 ⑤ SCC(扁平上皮癌関連抗原)は肺・子宮頸部などの扁平上皮癌で上昇するマーカーで、小細胞癌に特異的ではない。
📋 まとめの表を見る:主な腫瘍マーカーと高値を示す代表疾患
第61回 午前83(臨床免疫学)
Ⅰ型アレルギーはどれか。2つ選べ。
①アナフィラキシーショック ②全身性エリテマトーデス ③自己免疫性溶血性貧血 ④接触性皮膚炎 ⑤蕁麻疹
正答: ①アナフィラキシーショック・⑤蕁麻疹
ポイント アレルギーはCoombs-Gellの分類でⅠ〜Ⅳ型に分けられ、関与する抗体や細胞によって機序が異なる。Ⅰ型(即時型)はIgE抗体が肥満細胞・好塩基球の表面に結合した状態で抗原に再曝露されると、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、数分以内に症状を生じる。アナフィラキシーショック・蕁麻疹・気管支喘息・アレルギー性鼻炎(花粉症)が代表的な疾患である。 ●Ⅰ型(IgE・即時型)=アナフィラキシー・蕁麻疹・気管支喘息・花粉症。肥満細胞の脱顆粒が中心となる。 ●Ⅱ型(細胞傷害型)=自己免疫性溶血性貧血・不適合輸血・特発性血小板減少性紫斑病。Ⅲ型(免疫複合体型)=全身性エリテマトーデス・血清病・糸球体腎炎。Ⅳ型(遅延型/細胞性)=接触性皮膚炎・ツベルクリン反応・移植拒絶。Ⅰ〜Ⅲ型は抗体が、Ⅳ型は感作T細胞が反応の主役となる。
選択肢ごとの解説
① 正しい。アナフィラキシーショックはIgEを介して肥満細胞から化学伝達物質が放出される即時型Ⅰ型アレルギーである。 ② 全身性エリテマトーデスは免疫複合体が組織に沈着して傷害を起こすⅢ型アレルギーであり、Ⅰ型ではない。 ③ 自己免疫性溶血性貧血は赤血球に対する自己抗体が補体や貪食を介して傷害するⅡ型(細胞傷害型)アレルギーである。 ④ 接触性皮膚炎は感作T細胞による遅延型反応で、Ⅳ型(細胞性)アレルギーであり、Ⅰ型ではない。 ⑤ 正しい。蕁麻疹はIgEを介した肥満細胞の脱顆粒によるヒスタミン放出で生じる即時型Ⅰ型アレルギーである。
第61回 午前84(臨床免疫学)
関節リウマチの診断に用いられるのはどれか。
①抗CCP抗体 ②抗DNA抗体 ③抗SS-A抗体 ④抗好中球細胞質抗体 ⑤抗カルジオリピン抗体
正答: ①抗CCP抗体
ポイント 関節リウマチ(RA)は滑膜の慢性炎症により関節の腫脹・疼痛と進行性の関節破壊をきたす自己免疫疾患である。抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)はシトルリン化された蛋白に対する自己抗体で、RAに対する特異度が高く早期診断や予後(関節破壊の進行)予測に有用であり、2010年のACR/EULAR分類基準にも組み込まれている。リウマトイド因子(RF)と併用すると診断精度がさらに高まる。 ●関節リウマチで陽性となる検査=抗CCP抗体・リウマトイド因子(RF)・CRP上昇・赤血球沈降速度亢進。 ●他疾患の自己抗体=抗DNA抗体・抗Sm抗体は全身性エリテマトーデス、抗SS-A/SS-B抗体はSjögren症候群、抗好中球細胞質抗体(ANCA)はANCA関連血管炎、抗カルジオリピン抗体は抗リン脂質抗体症候群で陽性となる。
選択肢ごとの解説
① 正しい。抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)は関節リウマチに対する特異度が高く、早期診断や予後評価に用いられる。 ② 抗DNA抗体(特に抗二本鎖DNA抗体)は全身性エリテマトーデスで陽性となる自己抗体で、関節リウマチの診断には用いられない。 ③ 抗SS-A抗体はSjögren症候群や全身性エリテマトーデスで陽性となる自己抗体で、関節リウマチの診断指標ではない。 ④ 抗好中球細胞質抗体(ANCA)は顕微鏡的多発血管炎や多発血管炎性肉芽腫症などANCA関連血管炎で陽性となる。 ⑤ 抗カルジオリピン抗体は抗リン脂質抗体症候群で陽性となり血栓症や習慣流産に関連する。関節リウマチの診断指標ではない。
第61回 午前85(臨床免疫学)
インターフェロンγ遊離試験が用いられるのはどれか。
①結核菌感染症 ②溶血性連鎖球菌感染症 ③マイコプラズマ感染症 ④B型肝炎ウイルス感染症 ⑤C型肝炎ウイルス感染症
正答: ①結核菌感染症
ポイント インターフェロンγ遊離試験(IGRA)は、結核菌に特異的な抗原(ESAT-6・CFP-10)で末梢血のリンパ球を刺激し、産生されるインターフェロンγの量を測定して結核菌感染の有無を判定する検査である。これらの抗原はBCG株や多くの非結核性抗酸菌に存在しないため、BCG接種の影響を受けにくくツベルクリン反応より特異度が高い。QuantiFERONやT-SPOTが代表で、活動性結核や潜在性結核感染症の診断補助に用いられる。 ●IGRAの対象=結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染症・潜在性結核感染症の診断補助。 ●結核の他の検査=喀痰の塗抹(抗酸菌染色)・培養・核酸増幅検査(PCR)。ツベルクリン反応はBCG接種で陽性化するためIGRAより特異度が低い。 ●補足=IGRAは過去の感染と現在の感染の区別や、治療効果の判定には用いられない点に留意する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。インターフェロンγ遊離試験(IGRA)は結核菌特異抗原で刺激しIFN-γを測定する検査で、結核菌感染症や潜在性結核の診断に用いられる。 ② 溶血性連鎖球菌感染症はASO・ASKなどの抗体価測定や培養で診断し、インターフェロンγ遊離試験は用いられない。 ③ マイコプラズマ感染症は血清抗体価や核酸検査・抗原検査で診断し、インターフェロンγ遊離試験は用いられない。 ④ B型肝炎ウイルス感染症はHBs抗原・HBs抗体・HBV-DNAなどのウイルスマーカーで診断する。 ⑤ C型肝炎ウイルス感染症はHCV抗体・HCV-RNAなどで診断し、インターフェロンγ遊離試験は用いられない。
第61回 午前86(臨床免疫学)
ABO血液型について正しいのはどれか。
①抗原は蛋白である。 ②抗体は主にIgMである。 ③遺伝子は第6染色体にある。 ④抗原は血小板には発現しない。 ⑤オモテ検査は血清側の検査である。
正答: ②抗体は主にIgMである。
ポイント ABO血液型は赤血球膜上の糖鎖抗原(A抗原・B抗原)の有無で決まる。これらの抗原はH抗原を基に糖転移酵素が糖を付加してつくられる糖鎖であり、蛋白そのものではない。血漿中には自分のもたない抗原に対する規則抗体(抗A・抗B)が存在し、その大部分はIgMで、室温で赤血球を凝集させ補体を活性化して血管内溶血を起こす。ABO遺伝子は第9染色体上に存在し、不適合輸血は重篤な溶血反応の原因となる。 ●ABO抗体の性状=主にIgM(規則抗体)で、室温反応性・補体結合性をもつ。免疫により産生されるIgG型も一部存在する。 ●検査の種類=オモテ検査は赤血球側(抗A・抗B試薬で抗原を調べる)、ウラ検査は血清側(既知赤血球で抗体を調べる)であり、両者の一致で判定する。亜型や新生児ではウラ検査の抗体が不十分なことがある。
選択肢ごとの解説
① ABO抗原はH抗原を基にした糖鎖(糖脂質・糖蛋白の糖鎖部分)であり、蛋白そのものではないため誤りである。 ② 正しい。ABO血液型の規則抗体(抗A・抗B)は主にIgM型で、室温で凝集し補体を活性化して血管内溶血を起こす。 ③ ABO遺伝子は第9染色体上に存在し、第6染色体という記載は誤りである(第6染色体にはHLA遺伝子がある)。 ④ A・B抗原は赤血球以外に血小板や各種組織・体液にも発現しており、血小板に発現しないという記載は誤りである。 ⑤ オモテ検査は赤血球(抗原)側を抗A・抗B試薬で調べる検査であり、血清側を調べるのはウラ検査である。
第61回 午前87(臨床免疫学)
A型Rh(D)陰性患者と交差適合試験を行った場合、主試験も副試験も不適合となる赤血球製剤はどれか。
①A型Rh(D)陽性 ②A型Rh(D)陰性 ③B型Rh(D)陰性 ④O型Rh(D)陰性 ⑤AB型Rh(D)陰性
正答: ③B型Rh(D)陰性
ポイント 交差適合試験(クロスマッチ)では、主試験(患者血清+供血者赤血球)と副試験(患者赤血球+供血者血清)の両方で凝集の有無をみて輸血の適合性を確認する。A型Rh(D)陰性患者は血清中に抗Bをもち、赤血球はA抗原をもつ。B型Rh(D)陰性赤血球を用いると、主試験では患者の抗Bが供血者のB抗原と反応し、副試験では供血者血清の抗Aが患者のA抗原と反応するため、主試験・副試験ともに不適合(陽性)となる。 ●主試験=患者血清と供血者赤血球の組合せ。輸血の可否を直接左右する最も重要な試験である。 ●副試験=患者赤血球と供血者血清の組合せ。B型Rh(D)陰性は患者にとって抗原(B)も抗体(抗A)も不一致となるため両試験がともに陽性になる。 ●補足=O型赤血球はABO抗原をもたないため主試験は適合となるが、O型血清の抗A・抗Bにより副試験は陽性となり得る。
選択肢ごとの解説
① A型Rh(D)陽性赤血球は主試験でA抗原は一致するが、副試験は供血者の抗Bが患者A型赤血球と反応せず、主試験・副試験がともに不適合とはならない。 ② A型Rh(D)陰性赤血球は患者と同型で、主試験・副試験ともに凝集せず適合となるため該当しない。 ③ 正しい。B型Rh(D)陰性赤血球は主試験で患者の抗Bが反応し、副試験で供血者の抗Aが患者A抗原と反応するため、主試験・副試験ともに不適合となる。 ④ O型Rh(D)陰性赤血球はA・B抗原をもたず主試験は適合だが、副試験は供血者血清の抗A・抗Bが患者A抗原と反応し得る。両不適合の典型ではない。 ⑤ AB型Rh(D)陰性赤血球は主試験で患者の抗Bと反応するが、副試験は供血者血清に抗体がなく適合となるため、両不適合とはならない。
📋 まとめの表を見る:交差適合試験(主試験・副試験)の判定と輸血適否
主試験=患者血清+供血者赤血球。副試験=供血者血清+患者赤血球。
第61回 午前88(臨床免疫学)
Rh血液型について正しいのはどれか。
①検査(試験管法)は37 ℃で行う。 ②日本人のD陰性頻度は5%である。 ③D陰性の確認は間接抗グロブリン試験で行う。 ④D陽性患者にD陰性血液を輸血してはならない。 ⑤日本人で検出される抗体で頻度が最も高いのは抗Dである。
正答: ③D陰性の確認は間接抗グロブリン試験で行う。
ポイント Rh血液型はD抗原の有無でD陽性・D陰性に分類される。免疫により産生される抗D抗体は主にIgGで37℃で反応するため、その検出には間接抗グロブリン試験(間接Coombs試験)を併用する。D抗原は免疫原性が強く、D陰性者にD陽性血を輸血したりD陽性児を妊娠したりすると抗Dが産生される。日本人のD陰性頻度は約0.5%と低く、欧米(約15%)より少ない。D陰性の確定にはweak Dや部分Dを見逃さないため間接抗グロブリン試験による確認が必要である。 ●Rh検査の原則=抗D抗体はIgG性で37℃反応、D陰性の確認は間接抗グロブリン試験で行う。 ●臨床的留意点=D陰性患者にはD陰性血を輸血する(D陽性血を避ける)。D陽性患者にD陰性血を輸血することは可能である。日本人のD陰性頻度は約0.5%と低い。 ●補足=D陰性女性ではD陽性児妊娠による感作・新生児溶血性疾患を防ぐため、抗D免疫グロブリンの投与が行われる。
選択肢ごとの解説
① 試験管法によるRh(D)の判定は室温でも可能であり、weak D確認のための間接抗グロブリン試験は37℃で行う。一律に37℃で行うとの記載は適切でない。 ② 日本人のD陰性頻度は約0.5%であり、5%という記載は誤りである(欧米白人では約15%と高い)。 ③ 正しい。D陰性の確認は、weak Dや部分Dを見逃さないために間接抗グロブリン試験(間接Coombs試験)を用いて行う。 ④ 避けるべきはD陰性患者へのD陽性血輸血であり、D陽性患者にD陰性血を輸血することは可能であるため記載は誤りである。 ⑤ 日本人で最も検出頻度が高い不規則抗体は抗E・抗Le^aなどで、抗Dが最多という記載は誤りである。
📋 まとめの表を見る:Rh血液型(D抗原)のポイント
第61回 午前89(臨床免疫学)
輸血後GVHDの予防策として適切なのはどれか。2つ選べ。
①血液製剤の放射線照射 ②近親者からの輸血 ③自己血輸血 ④新鮮血輸血 ⑤免疫抑制薬
正答: ①血液製剤の放射線照射・③自己血輸血
ポイント 輸血後移植片対宿主病(輸血後GVHD)は、輸血製剤中に含まれる供血者のリンパ球が免疫の弱った患者の体内で生着・増殖し、患者の組織を異物とみなして攻撃する致死率の高い合併症である。予防の基本は供血者リンパ球を不活化することで、血液製剤への放射線照射(おおむね15〜50Gy)がリンパ球の増殖能を失わせる確実な予防策である。自己血輸血は患者自身のリンパ球であるためGVHDを起こさず予防策となる。 ●輸血後GVHDの予防=血液製剤の放射線照射(リンパ球の不活化)・自己血輸血(同一個体のため生着しない)。 ●リスクを高める要因=近親者(HLAが一方向に適合しやすい)からの輸血・新鮮血(生きたリンパ球が多い)は逆にGVHDの危険を高めるため予防策ではない。 ●補足=輸血後GVHDは輸血の1〜2週後に発熱・皮疹・肝障害・汎血球減少で発症し、有効な治療法に乏しく致死率が高い。
選択肢ごとの解説
① 正しい。血液製剤への放射線照射は供血者リンパ球を不活化し増殖を防ぐため、輸血後GVHDの確実な予防策である。 ② 近親者からの輸血はHLAが一方向性に適合しやすく、供血者リンパ球が生着しやすいため、むしろGVHDの危険を高める。 ③ 正しい。自己血輸血は自分自身のリンパ球であり患者組織を攻撃しないため、輸血後GVHDを起こさず予防策となる。 ④ 新鮮血は生きたリンパ球を多く含み生着しやすいため、輸血後GVHDの危険を高め予防策にはならない。 ⑤ 免疫抑制薬はかえって患者の免疫を低下させ供血者リンパ球の生着を助長し得るため、GVHDの予防策としては適切でない。
第61回 午前90(公衆衛生学)
我が国の国民医療費の中で65歳以上の医療費が占める割合に最も近いのはどれか。
正答: ③55%
ポイント 国民医療費は国民が1年間に医療機関で傷病の治療に要した費用の推計で、高齢化と医療技術の高度化に伴い増加し続けている。年齢階級別にみると65歳以上の高齢者が占める割合はおおむね6割前後で、選択肢の中では55%が最も近い。高齢者は受療率が高く慢性疾患を複数抱えやすいため、人口に占める割合以上に医療費を多く消費する構造となっている。 ●国民医療費の特徴=高齢化と医療技術の高度化により年々増加し、対国内総生産(GDP)比も上昇傾向にある。 ●年齢構成の傾向=65歳以上が国民医療費の約6割を占め、特に後期高齢者(75歳以上)の割合が大きい。一人当たり医療費も高齢者ほど高い。 ●補足=国民医療費には保険診療の対象とならない予防接種・健康診断・正常分娩・差額ベッド代・市販薬の購入費などは含まれない点に留意する。
選択肢ごとの解説
① 15%は65歳以上が占める割合としては大幅に低すぎ、実際の約6割という数値と一致しないため最も近いとはいえない。 ② 35%も65歳以上が占める割合としてはなお低く、実際の約6割に最も近い数値とはいえないため適切でない。 ③ 正しい。65歳以上の医療費が国民医療費に占める割合は約6割で、選択肢の中では55%が最も近い数値である。 ④ 75%は65歳以上の占める割合としてはやや高すぎる値であり、約6割に最も近い数値とはいえないため適切でない。 ⑤ 95%は医療費の大半を高齢者が占めることになり、実際の約6割という実態と大きく異なるため適切でない。
第61回 午前91(公衆衛生学)
因果関係の判定において、「疫学研究で得られた事実が、他の領域の研究で得られた既知の知識や事実と矛盾なく説明できること」が該当するのはどれか。
正答: ④整合性
ポイント 因果関係の判定基準(Hillの基準)では、関連の一致性・強固性・特異性・時間性・整合性・量反応関係などを総合して因果の妥当性を判断する。このうち整合性(coherence)は、疫学研究で得られた知見が、生物学・病理学など他分野で得られた既知の知識や事実と矛盾なく説明できることを指す。設問の記述はこの整合性に該当し、関連の解釈が既存の科学的知見と調和することを示している。 ●因果判定の主な基準=時間性(原因が結果に先行)・強固性(関連の強さ)・一致性(複数の研究で再現)・量反応関係(曝露量と効果の相関)。 ●整合性・特異性=整合性は既存知識との矛盾のなさ、特異性は特定の曝露が特定の結果に対応すること。設問は前者(整合性)を述べている。 ●補足=Hillの基準はあくまで因果関係を支持する判断材料であり、いずれか一つを満たすだけで因果関係が確定するものではない。
選択肢ごとの解説
① 一致性は異なる対象や方法による複数の研究で同様の関連が再現されることを指す基準で、既知知識との矛盾のなさを述べた設問とは異なる。 ② 強固性は曝露と疾病の関連の強さ(相対危険度の大きさ)を指す基準で、既知知識との整合を述べた設問の記述とは異なる。 ③ 時間性は原因となる曝露が結果(疾病)の発生に時間的に先行することを指す基準で、設問の記述とは異なる。 ④ 正しい。整合性は疫学で得た事実が他領域の既知の知識や事実と矛盾なく説明できることを指し、設問の記述に該当する。 ⑤ 特異性は特定の曝露が特定の疾病に対応する関連を指す基準で、既知知識との整合を述べた設問とは異なる。
📋 まとめの表を見る:疫学的因果関係の判定基準(5項目)
5項目のうち時間性のみが因果関係判定の必須条件である。
第61回 午前92(公衆衛生学)
蚊が媒介動物である感染症はどれか。2つ選べ。
①ペスト ②手足口病 ③デング熱 ④日本脳炎 ⑤発疹チフス
正答: ③デング熱・④日本脳炎
ポイント ベクター(媒介動物)感染症は、病原体を運ぶ節足動物の種類によって分類される。蚊が媒介する代表的感染症にはデング熱(ネッタイシマカ・ヒトスジシマカ)、日本脳炎(コガタアカイエカ)、マラリア、ジカ熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱がある。これらはウイルスや原虫が蚊の吸血を介してヒトの体内に侵入することで感染が成立する。 ●蚊が媒介する感染症=デング熱・日本脳炎・マラリア・ジカ熱・チクングニア熱・ウエストナイル熱・黄熱。 ●その他のベクター=ペストはノミ(ネズミ)、発疹チフスはコロモジラミ、つつが虫病はダニ(ツツガムシ)が媒介する。手足口病はエンテロウイルスによる接触・飛沫感染で媒介動物はいない。 ●補足=媒介動物の生息域や活動時期を踏まえた防蚊・防虫対策が、これらベクター感染症の予防の基本となる。
選択肢ごとの解説
① ペストはペスト菌を保有するネズミに寄生したノミが媒介する感染症で、蚊が媒介するものではないため該当しない。 ② 手足口病はコクサッキーウイルスなどによる接触・飛沫感染で広がり、媒介動物を介さないため蚊媒介には該当しない。 ③ 正しい。デング熱はデングウイルスをネッタイシマカやヒトスジシマカ(蚊)が媒介して起こる感染症である。 ④ 正しい。日本脳炎は日本脳炎ウイルスを主にコガタアカイエカ(蚊)が媒介して起こる感染症である。 ⑤ 発疹チフスはリケッチアをコロモジラミが媒介する感染症で、蚊が媒介するものではないため該当しない。
第61回 午前93(公衆衛生学)
国民健康・栄養調査で正しいのはどれか。
①全数調査である。 ②文部科学省が実施する。 ③国勢調査員が調査を行う。 ④根拠となる法律は栄養士法である。 ⑤生活習慣の状況についての調査を含む。
正答: ⑤生活習慣の状況についての調査を含む。
ポイント 国民健康・栄養調査は健康増進法に基づき厚生労働省が毎年実施する調査で、国民の身体状況・栄養摂取量・生活習慣の状況を把握して健康増進施策の基礎資料とする。対象は無作為に抽出された世帯・地区による標本調査であり、全数調査ではない。調査は身体状況調査・栄養摂取状況調査・生活習慣調査の3部からなり、生活習慣調査では喫煙・飲酒・運動・睡眠などの状況を把握する。 ●国民健康・栄養調査=健康増進法に基づき厚生労働省が実施する標本調査。身体状況・栄養摂取・生活習慣の3調査を含む。 ●類似調査との区別=全数調査は国勢調査(総務省)など。栄養士法は栄養士・管理栄養士の資格を定める法律で本調査の根拠法ではない。 ●補足=本調査の結果は日本人の食事摂取基準の策定や健康日本21などの健康増進施策の立案・評価に幅広く活用される。
選択肢ごとの解説
① 国民健康・栄養調査は無作為抽出による標本調査として実施されるもので、全数調査ではないため記載は誤りである。 ② 本調査は厚生労働省が実施するものであり、文部科学省が実施するという記載は誤りである(所管が異なる)。 ③ 調査は保健所や調査員によって行われるものであり、国勢調査員が実施するという記載は誤りである。 ④ 根拠となる法律は健康増進法であり、栄養士・管理栄養士の資格を定める栄養士法という記載は誤りである。 ⑤ 正しい。国民健康・栄養調査は身体状況・栄養摂取に加え、喫煙・飲酒・運動などの生活習慣の状況についての調査を含む。
第61回 午前94(公衆衛生学)
保健所の設置について定めているのはどれか。
①医師法 ②医療法 ③健康増進法 ④地域保健法 ⑤高齢者の医療の確保に関する法律
正答: ④地域保健法
ポイント 保健所は地域における公衆衛生の中核を担う行政機関で、その設置については地域保健法に規定されている。地域保健法は都道府県・指定都市・中核市その他の政令で定める市・特別区が保健所を設置することを定め、保健所は感染症対策・食品衛生・環境衛生・難病対策など広域的かつ専門的な業務を担う。一方、市町村は同法に基づき市町村保健センターを設置し、住民に身近な保健サービスを提供する。 ●地域保健法の規定=保健所(都道府県等が設置)と市町村保健センター(市町村が設置)の設置主体・業務を定める。 ●関連法規の区別=医師法は医師の資格・業務、医療法は医療提供体制・病院の基準、健康増進法は健康増進施策、高齢者医療確保法は高齢者医療制度を定める。 ●補足=地域保健法は旧保健所法を改正して制定され、住民に身近なサービスは市町村が担う体制を明確化した。
選択肢ごとの解説
① 医師法は医師の資格・免許・業務などを定める法律であり、保健所の設置について規定するものではない。 ② 医療法は病院・診療所など医療提供体制や施設基準を定める法律で、保健所の設置を規定するものではない。 ③ 健康増進法は国民の健康増進や受動喫煙防止などを定める法律で、保健所の設置を規定するものではない。 ④ 正しい。保健所の設置は地域保健法に規定されており、都道府県・指定都市・中核市などが設置主体となる。 ⑤ 高齢者の医療の確保に関する法律は後期高齢者医療制度などを定める法律で、保健所の設置を規定するものではない。
第61回 午前95(医用工学概論)
マクロショックに関連する生体の特性はどれか。
①光学的特性 ②磁気的特性 ③電気的特性 ④熱的特性 ⑤力学的特性
正答: ③電気的特性
ポイント マクロショック(体表ショック)は、皮膚を通して人体に商用周波の電流が流れることで生じる電撃で、生体の電気的特性(体内を電流が流れ得ること)に関連する現象である。電流の大きさにより最小感知電流・離脱限界電流・心室細動電流などの閾値があり、体表からの通電ではおよそ100mA以上で心室細動を起こし得る。これに対し心臓に直接微小電流が流れるミクロショックとは、電流経路も発生閾値も大きく異なる。 ●マクロショック=体表から通電する電撃で、生体の電気的特性に基づく。心室細動閾値は約100mA。 ●ミクロショックとの違い=ミクロショックはカテーテル等で心臓に直接電流が流れる場合で、心室細動閾値は約0.1mAと著しく低く、医療機器の漏れ電流管理が重要となる。 ●補足=電撃の危険度は電流の大きさ・周波数・通電時間・経路に左右され、商用周波(50/60Hz)は危険性が高い。
選択肢ごとの解説
① 光学的特性は組織による光の吸収・散乱などの性質で、電撃であるマクロショックとは直接関係しない。 ② 磁気的特性は組織の磁性に関する性質で、電撃であるマクロショックの発生機序とは直接関係しない。 ③ 正しい。マクロショックは体表から人体に電流が流れることで生じる電撃で、生体の電気的特性に関連する現象である。 ④ 熱的特性は熱伝導・比熱などの性質で、電撃であるマクロショックの本質的な特性ではないため該当しない。 ⑤ 力学的特性は弾性・粘性などの機械的性質で、電撃であるマクロショックとは直接関係しないため該当しない。
📋 まとめの表を見る:感電(マクロショック・ミクロショック)の電流閾値
上記は成人男性の値であり、女性は男性の2/3、小児は1/2とされる。
第61回 午前96(医用工学概論)
RLC直列回路のインピーダンス[Ω]はどれか。ただし、抵抗器の抵抗値は4 Ω、誘導性リアクタンスは7 Ω、容量性リアクタンスは4 Ωとする。
正答: ②5
ポイント RLC直列回路のインピーダンスZは、抵抗Rと、誘導性リアクタンスX_Lから容量性リアクタンスX_Cを引いた差(合成リアクタンスX=X_L−X_C)を用いて、Z=√(R²+(X_L−X_C)²)で求められる。誘導性リアクタンスと容量性リアクタンスは位相が逆向きで互いに打ち消し合うため、差をとってから抵抗と三平方の定理で合成する。本問ではR=4Ω、X_L=7Ω、X_C=4Ωなので、X=7−4=3Ω、Z=√(4²+3²)=√(16+9)=√25=5Ωとなる。 ●直列共振=X_L=X_Cのときリアクタンス成分が打ち消し合い、インピーダンスは最小(=R)、電流が最大となる。 ●計算の要点=誘導性と容量性のリアクタンスは符号が逆で打ち消し合うため、差をとってから抵抗との合成(三平方の定理)を行う。 ●補足=X_L=2πfL、X_C=1/(2πfC)であり、いずれも周波数fによって変化するため、インピーダンスも周波数に依存する。
選択肢ごとの解説
① 2Ωはインピーダンスの計算値と一致しない。Z=√(R²+(X_L−X_C)²)で求める必要がある。 ② 正しい。X=X_L−X_C=7−4=3Ω、Z=√(4²+3²)=√25=5Ωとなり、インピーダンスは5Ωである。 ③ 7ΩはX_Lの値そのものであり、抵抗や容量性リアクタンスを含めた合成インピーダンスとは一致しない。 ④ 11ΩはR+X_L=4+7のような単純加算の値で、リアクタンスの差や三平方の合成を行っていないため誤りである。 ⑤ 15ΩはR+X_L+X_Cの単純和に近い値で、合成インピーダンスの正しい計算結果ではない。
第61回 午前97(医用工学概論)
電気抵抗の変化を利用する光電トランスデューサはどれか。
①光電管 ②太陽電池 ③CdSセル ④フォトダイオード ⑤フォトトランジスタ
正答: ③CdSセル
ポイント 光電トランスデューサは光を電気信号に変換する素子で、その変換原理により光導電効果・光起電力効果・外部光電効果などに分類される。CdS(硫化カドミウム)セルは光導電効果を利用し、光の強さに応じて素子の電気抵抗が変化する光導電素子である。受光面に当たる光量が増えると半導体内のキャリアが増えて抵抗が下がるため、照度計や明暗を検出するセンサに用いられる。 ●電気抵抗の変化を利用する素子=CdSセル(光導電効果による光導電素子)。 ●光起電力効果を利用する素子=太陽電池・フォトダイオードは光照射で起電力(電流)を生じる。光電管・光電子増倍管は外部光電効果(光電子放出)を利用し、フォトトランジスタは光電流を増幅する。 ●補足=CdSセルは応答が比較的遅く可視光域に感度をもつため、精密な高速計測よりも照度センサなどに適する。
選択肢ごとの解説
① 光電管は光電面からの光電子放出(外部光電効果)を利用する素子で、電気抵抗の変化を利用するものではない。 ② 太陽電池は光起電力効果により光エネルギーを電力に変換する素子で、抵抗変化を利用するものではない。 ③ 正しい。CdSセルは光導電効果により受光量に応じて電気抵抗が変化する光導電素子で、照度計などに用いられる。 ④ フォトダイオードは光起電力効果や光電流を利用する素子で、電気抵抗の変化を利用するものではない。 ⑤ フォトトランジスタは光照射で生じた光電流をトランジスタ作用で増幅する素子で、抵抗変化を利用するものではない。
📋 まとめの表を見る:トランスデューサ(センサ)の変換原理による分類
第61回 午前98(医用工学概論)
病院電気設備の安全基準(JIS T 1022)で定められている瞬時特別非常電源の立ち上がり時間はどれか。
①0.1秒以内 ②0.5秒以内 ③1秒以内 ④5秒以内 ⑤10秒以内
正答: ②0.5秒以内
ポイント 病院電気設備の安全基準(JIS T 1022)では、停電時にも医療を維持するため、非常電源が電源回復までの立ち上がり時間によって区分されている。瞬時特別非常電源は無停電電源や蓄電池などによりおおむね0.5秒以内に電力を供給するもので、生命維持管理装置や手術灯など瞬断も許されない機器に用いられる。これに対し特別非常電源は10秒以内、一般非常電源は40秒以内と定められている。 ●非常電源の区分(立ち上がり時間)=瞬時特別非常電源(0.5秒以内)・特別非常電源(10秒以内)・一般非常電源(40秒以内)。 ●適用機器の例=瞬時特別非常電源は手術灯・生命維持管理装置など瞬断を許さない機器、特別/一般非常電源は照明や一般医療機器に用いられる。 ●補足=非常電源用コンセントは外郭の色で区別され、瞬時特別非常電源は手術室など重要箇所への給電を担う。
選択肢ごとの解説
① 0.1秒以内という規定値はJIS T 1022の瞬時特別非常電源の立ち上がり時間(0.5秒以内)とは一致しないため誤りである。 ② 正しい。瞬時特別非常電源の立ち上がり時間はおおむね0.5秒以内と定められ、瞬断を許さない機器に用いられる。 ③ 1秒以内という値は瞬時特別非常電源の規定値(0.5秒以内)とは一致せず、定められた立ち上がり時間ではない。 ④ 5秒以内という値は瞬時特別非常電源の立ち上がり時間として定められた値ではないため適切でない。 ⑤ 10秒以内は特別非常電源の区分に相当する値であり、瞬時特別非常電源の立ち上がり時間ではないため適切でない。
📋 まとめの表を見る:病院電気設備(JIS T1022)の非常電源の区分
本表はJIS T1022:2007〜2018時点(第58回=2012年・第61回=2015年出題当時)の区分。2018年改正で「瞬時特別非常電源」は「無停電非常電源」に名称変更され、2023年改正では「特別非常電源」が「一般非常電源」に統合された。立ち上がり時間が短いほど瞬断が許されない生命維持管理装置・手術灯等(無停電)、脳波計・心電図等の重要機器(特別)、照明・非常用エレベーター等(一般)に対応する。
第61回 午前99(医用工学概論)
画像解像度を示すのはどれか。
正答: ③dpi
ポイント 画像解像度は単位長さあたりに表現できる画素・点の細かさ(密度)を示す指標で、dpi(dots per inch)で表される。dpiは1インチあたりのドット数を意味し、値が大きいほど高精細な画像となる。プリンタやスキャナ、ディスプレイの解像度表示に広く用いられる。pixelは画像を構成する画素そのもの、dotは点を指す語であり、それ自体は単位長さあたりの密度を表す解像度の単位ではない。 ●解像度の単位=dpi(dots per inch)・ppi(pixels per inch)。1インチあたりの点・画素数で密度を表す。 ●関連用語=pixelは画像の最小単位(画素)、dotは点、bitは情報量の最小単位、byteは8bit。これらは解像度(密度)そのものを表す単位ではない。 ●補足=同じ画素数でも表示・印刷サイズが小さいほどdpiは高くなり、解像度はサイズと画素数の関係で決まる。
選択肢ごとの解説
① bitは情報量の最小単位を表す語で、単位長さあたりの密度を示す画像解像度の単位ではないため適切でない。 ② dotは点を意味する語であり、それ単独では単位長さあたりの密度を示さず、解像度の単位とはいえない。 ③ 正しい。dpi(dots per inch)は1インチあたりのドット数を表す画像解像度の単位で、値が大きいほど高精細である。 ④ byteは8bitからなる情報量の単位を表す語で、画像解像度(密度)を示す単位ではないため適切でない。 ⑤ pixelは画像を構成する最小単位(画素)を指す語で、単位長さあたりの密度=解像度を示す単位ではない。
第61回 午前100(医用工学概論)
天秤の秤量はどれか。
①校正用分銅の誤差 ②応答できる最小質量 ③重力加速度の地域差 ④測定できる最大質量 ⑤測定質量と真の質量との差
正答: ④測定できる最大質量
ポイント 天秤の秤量(ひょうりょう)とは、その天秤で測定できる最大質量(最大ひょう量)を指す性能指標である。これは天秤の基本仕様の一つで、秤量を超える質量を載せると正確な測定ができないだけでなく機器を損傷する恐れもある。秤量とともに、応答できる最小質量や目盛りの最小単位を示す感量(感度)も天秤の性能を表す重要な指標である。 ●天秤の性能指標=秤量(測定できる最大質量)・感量(応答できる最小質量=分解能)。 ●関連用語=校正用分銅の誤差は校正精度、重力加速度の地域差は質量と重量の関係に影響する要因、測定質量と真の質量との差は測定誤差(正確さ)であり、いずれも秤量(最大質量)そのものではない。 ●補足=電子天秤は設置場所の重力加速度の違いを内蔵または外部分銅による校正(感度調整)で補正するため、使用前の校正が重要となる。
選択肢ごとの解説
① 校正用分銅の誤差は天秤の校正精度に関わる要素であり、測定できる最大質量を示す秤量とは異なる概念である。 ② 応答できる最小質量は感量(感度)を指す性能指標であり、測定できる最大質量を示す秤量とは異なる概念である。 ③ 重力加速度の地域差は質量から重量を求める際に影響する要因で、最大質量を示す秤量そのものではない。 ④ 正しい。天秤の秤量とは、その天秤で測定できる最大質量(最大ひょう量)を指す性能指標である。 ⑤ 測定質量と真の質量との差は測定誤差(正確さ)を表すものであり、最大質量を示す秤量とは異なる概念である。
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