第61回(2015) 臨床検査技師国家試験 午後1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第61回 午後1(臨床検査総論)
EDTA加血漿で検査できる項目はどれか。2つ選べ。
正答: ④尿酸・⑤アルブミン
ポイント
EDTAはカルシウム・マグネシウム・亜鉛・鉄・銅などの金属イオンを強力にキレートする抗凝固剤であり、これらの金属に依存する酵素活性や金属そのものの測定には適さない。アルブミンや尿酸は金属キレートの影響を受けず、EDTA加血漿でも安定して測定できるため、本問の正答となる。一方、鉄・銅はEDTAがキレートして遊離濃度を変化させ正確な定量を妨げ、ALPは反応に必須のマグネシウム・亜鉛をEDTAが奪うため活性が著しく低下する。採血管の選択は測定原理と抗凝固剤の干渉を踏まえて行う必要がある。●EDTA加血漿に不適=鉄・銅・亜鉛・カルシウムなどの金属測定、ALP・CKなど金属要求性酵素活性●EDTAが適する代表=血算(全血球計算CBC)、HbA1c、フローサイトメトリー。抗凝固剤ごとの妨害特性を理解して使い分ける。
選択肢ごとの解説
- ① 鉄。EDTAが鉄をキレートして遊離鉄濃度を変化させ測定を妨げるため、血清または専用採血管を用いる。
- ② 銅。鉄と同様にEDTAがキレートして遊離濃度が変化し正確な定量ができず、EDTA加血漿は適さない。
- ③ ALP。反応に必要な金属(マグネシウム・亜鉛)をEDTAが奪い酵素活性が低下するため、測定に不適である。
- ④ 正しい。尿酸は金属キレートの影響を受けないため、EDTA加血漿でも安定して測定できる。
- ⑤ 正しい。アルブミンは金属依存性がなく、EDTA加血漿でも問題なく測定可能な項目である。
第61回 午後2(臨床検査総論)
生化学検査データの偶発誤差を検出する項目間比として使用するのはどれか。
- ①Na/K
- ②Na/Cl
- ③LD/ALP
- ④AST/CK
- ⑤アルブミン/クレアチニン
正答: ②Na/Cl
ポイント
偶発誤差(ランダム誤差)は測定のたびに正負へ不規則に変動する誤差であり、生体内で生理的に一定の比を保つ項目どうしの比のばらつきから検出できる。NaとClはいずれも細胞外液の主要な陽イオン・陰イオンとして密接に連動し、恒常性により安定した一定比を保つため、Na/Cl比に生じる不規則な乱れは、方向性のないばらつき=偶発誤差の検出指標として有用である。比が本来一定であるほど、測定上のばらつきを鋭敏に反映できる。●偶発誤差(再現性に影響)の検出=同一検体の反復測定による標準偏差・変動係数の評価、生理的相関の強い項目間比(Na/Cl)の監視●系統誤差(偏り・真度に影響)の検出=管理試料による真度評価、デルタチェックや患者データの恒常性監視(移動平均法・正常者平均法)。誤差の種類に応じて監視手法を使い分けることが精度管理の基本となる。
選択肢ごとの解説
- ① Na/K。Kは細胞内外の移動で変動が大きくNaに比べ安定せず、一定比を示さないため誤差検出には適さない。
- ② 正しい。NaとClは細胞外液で密接に連動し一定比を保つため、比の乱れで偶発誤差を検出できる。
- ③ LD/ALP。両酵素は由来する臓器が異なり生理的に一定比をとらないため、偶発誤差の指標にはならない。
- ④ AST/CK。心筋・骨格筋障害の評価には有用だが、生理的に一定比を保たないため誤差検出には不向きである。
- ⑤ アルブミン/クレアチニン。尿中のこの比は腎機能(蛋白尿)評価の指標であり、偶発誤差検出には用いない。
第61回 午後3(臨床検査総論)
試験紙法による尿検査で尿路細菌感染症において陽性を示すのはどれか。
- ①蛋白
- ②ブドウ糖
- ③亜硝酸塩
- ④ビリルビン
- ⑤ウロビリノゲン
正答: ③亜硝酸塩
ポイント
尿試験紙の亜硝酸塩反応は、大腸菌をはじめとする硝酸還元能をもつグラム陰性桿菌が、尿中の食事由来の硝酸塩を亜硝酸塩へ還元することを利用し、生じた亜硝酸塩をGriess反応で発色させて検出する方法である。陽性は尿路細菌感染症の存在を示唆する間接的な指標となる。細菌が硝酸塩を還元するには一定時間以上膀胱に尿が貯留することが必要であり、早朝第一尿の採取が望ましい。●尿路感染を示唆する試験紙項目=亜硝酸塩(細菌の硝酸還元を反映)、白血球エステラーゼ(膿尿・白血球反応を反映)●そのほかの試験紙項目と意義=蛋白(腎・尿路障害)、ブドウ糖(糖尿病)、ビリルビン・ウロビリノゲン(肝胆道系疾患)、潜血(血尿・ヘモグロビン尿)。亜硝酸塩陰性でも、硝酸還元能をもたない腸球菌などの菌種では感染を否定できない点に注意する。
選択肢ごとの解説
- ① 蛋白。糸球体障害や尿細管障害で陽性となる腎・尿路障害の指標で、細菌感染を直接示すものではない。
- ② ブドウ糖。血糖が腎の排泄閾値を超えると尿中に出て陽性となる糖尿病の指標で、細菌感染とは無関係である。
- ③ 正しい。硝酸還元能をもつ細菌が尿中の硝酸塩を亜硝酸塩に変えるため、尿路細菌感染で陽性を示す。
- ④ ビリルビン。直接ビリルビンの尿中排泄を示す肝胆道疾患の指標であり、尿路細菌感染とは関係しない。
- ⑤ ウロビリノゲン。溶血や肝障害で尿中に増加する指標であり、細菌感染の検出には用いられない。
📋 まとめの表を見る:尿試験紙法の偽陽性・偽陰性反応
第61回 午後4(臨床検査総論)
脳脊髄液検査で細菌性髄膜炎において低下するのはどれか。
正答: ①糖
ポイント
細菌性(化膿性)髄膜炎では、増殖した起炎菌と髄液中に動員された多数の好中球がブドウ糖を盛んに消費するため、髄液糖が著明に低下し、同時に測定した血糖との比(髄液糖/血糖比、正常は約0.6以上)も低下する。これに対し細胞数(好中球優位)と蛋白は炎症と血液脳関門の破綻により上昇し、髄液圧も上昇し外観は混濁する点と対照的である。糖低下は化膿性髄膜炎を強く示唆する重要な所見であり、緊急の診断・治療を要する。●細菌性髄膜炎=糖低下・蛋白増加・好中球増多・髄液圧上昇・外観混濁●ウイルス性髄膜炎=糖正常・蛋白軽度増加・リンパ球増多・外観水様透明●結核性・真菌性髄膜炎=糖低下・蛋白著明増加・リンパ球増多。糖の低下は細菌・結核・真菌性の鑑別に重要で、ウイルス性では糖が保たれる点が特徴であり、髄液所見の組合せから起炎病原体を推定する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。増殖した細菌と動員された好中球がブドウ糖を消費するため、髄液糖は低下し髄液糖/血糖比も下がる。
- ② 蛋白。炎症による血液脳関門の破綻と滲出のため増加するので、細菌性髄膜炎では低下ではなく上昇する。
- ③ 細胞数。好中球を主体に著明に増加して外観は混濁し、化膿性髄膜炎を示す特徴的所見である。
- ④ 髄液圧。炎症と滲出液の貯留により頭蓋内圧が上昇するため、細菌性髄膜炎では低下しない。
- ⑤ トリプトファン。結核性髄膜炎での陽性反応が知られるが、細菌性髄膜炎で低下する指標ではない。
第61回 午後5(臨床検査総論)
免疫学的便潜血検査で正しいのはどれか。
- ①痔の出血は検出できない。
- ②化学的方法より検出感度は低い。
- ③上部消化管出血を高感度に検出できる。
- ④検査前に肉食の摂取制限が不要である。
- ⑤便の長期保存で検出感度が低下しない。
正答: ④検査前に肉食の摂取制限が不要である。
ポイント
免疫学的便潜血検査は、ヒトヘモグロビンに対する抗体を用いて便中のヒトHbを抗原抗体反応で特異的に検出する方法である。このため食事中の動物性ヘモグロビンや植物に含まれるペルオキシダーゼの影響を受けず、検査前の肉食制限などの食事制限が不要であることが大きな利点である。化学的方法(グアヤック法)に比べ特異度・感度ともに優れ、大腸癌のスクリーニング(がん検診)など下部消化管出血の検出に広く用いられる。●免疫法の特徴=ヒトHbに特異的・食事制限不要・下部消化管出血に高感度・大腸癌検診に使用●化学法(グアヤック法)の特徴=ヘムのペルオキシダーゼ様活性を検出・肉食や鉄剤・ビタミンCで偽陽性や偽陰性・食事制限が必要。上部消化管出血ではHbが胃酸や消化酵素で分解されるため、免疫法では検出されにくい点に留意する。
選択肢ごとの解説
- ① 痔の出血も肛門・直腸からの下部消化管出血でありヒトHbを含むため、免疫法では陽性となり得る。
- ② 化学的方法(グアヤック法)より検出感度はむしろ高く、ヒトHbに特異的で精度に優れている。
- ③ 上部消化管出血ではHbが胃酸や消化酵素で分解されるため、免疫法では高感度には検出できない。
- ④ 正しい。ヒトHbに特異的な抗体を用いるため、肉食など検査前の食事制限が不要という利点がある。
- ⑤ 便を長期保存するとHbが変性・分解し、検出感度はむしろ低下するため、検体は速やかに提出する。
📋 まとめの表を見る:便潜血検査:化学的検査法と免疫学的検査法の比較
第61回 午後6(臨床検査総論)
土壌中の感染幼虫がヒトに経皮感染するのはどれか。
- ①肝蛭
- ②糞線虫
- ③旋毛虫
- ④日本住血吸虫
- ⑤バンクロフト〈Bancroft〉糸状虫
正答: ②糞線虫
ポイント
糞線虫は、土壌中で発育した感染型(フィラリア型)幼虫がヒトの皮膚から経皮的に侵入し、血流に乗って肺を経由したのち気道から喉頭・食道を経て消化管へ移動し、小腸に寄生する線虫である。腸管内で虫卵から幼虫が孵化し再び体内へ侵入する自家感染(autoinfection)を繰り返すため、ステロイド使用者やHTLV-1感染者など細胞性免疫が低下した状態では過剰感染症候群をきたし重篤化する点が大きな特徴である。●経皮感染する寄生虫=糞線虫・鉤虫(いずれも土壌中の幼虫)、日本住血吸虫(水中のセルカリア)●経口感染する寄生虫=旋毛虫(獣肉中の幼虫)、肝蛭(水生植物のメタセルカリア)、回虫・鞭虫(虫卵)●節足動物が媒介=バンクロフト糸状虫(蚊)。感染経路の理解は、予防対策の立案と適切な検査材料の選択に直結する重要な知識である。
選択肢ごとの解説
- ① 肝蛭。水生植物に付着したメタセルカリアを経口摂取して感染する吸虫で、土壌からの経皮感染ではない。
- ② 正しい。土壌中で発育した感染型幼虫が皮膚から侵入し、肺を経て小腸に寄生する経皮感染をとる。
- ③ 旋毛虫。幼虫を含む豚肉や野生動物の肉などの生食により経口感染する線虫で、経皮感染はしない。
- ④ 日本住血吸虫。セルカリアが経皮侵入するが水中での感染であり、土壌中の幼虫による経皮感染とは異なる。
- ⑤ バンクロフト糸状虫。蚊が媒介して感染する糸状虫であり、土壌からの経皮感染はしない。
📋 まとめの表を見る:寄生虫・原虫の感染経路の分類
第61回 午後7(臨床検査総論)
検便で検出された虫卵(30×40 μm)の写真を別に示す。正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61pB007.38c59e5bea.jpg

- ①肝蛭
- ②鞭虫
- ③無鉤条虫
- ④日本住血吸虫
- ⑤日本海裂頭条虫
正答: ③無鉤条虫
ポイント
図は検便で検出された、球形で厚い殻に放射状の条線をもち内部に六鉤幼虫を備えた虫卵で、無鉤条虫(テニア属)の虫卵に一致する所見である。テニア属の虫卵は無鉤条虫と有鉤条虫で形態がほぼ同一であり、虫卵だけでは両者を鑑別できず、頭節の形態(無鉤条虫には小鉤がない)や片節の子宮分枝数などで区別する。無鉤条虫は牛肉中の嚢虫(cysticercus)の生食により感染し、ヒトの小腸に寄生する。●条虫類虫卵の特徴=テニア属(球形・放射状の厚い殻・六鉤幼虫を内蔵)、日本海裂頭条虫(楕円形・一端に小蓋をもつ)●吸虫卵の特徴=肝蛭(大型・明瞭な卵蓋あり)、日本住血吸虫(卵蓋なし・側方に小棘)●線虫卵の特徴=鞭虫(レモン形で両端に無色の栓)、鉤虫(薄い殻の卵円形)。虫卵の形・大きさ・殻の厚さ・卵蓋の有無で虫種を鑑別する。
選択肢ごとの解説
- ① 肝蛭。虫卵は大型で一端に明瞭な卵蓋をもつ吸虫卵であり、放射状殻をもつ球形の虫卵とは異なる。
- ② 鞭虫。虫卵はレモン形(樽形)で両端に無色の栓をもつ線虫卵で、本問の球形虫卵とは一致しない。
- ③ 正しい。球形で放射状の厚い殻に六鉤幼虫をもつテニア属の虫卵であり、無鉤条虫に相当する。
- ④ 日本住血吸虫。虫卵は卵蓋がなく側方に小棘をもつのが特徴で、放射状殻をもつ球形卵ではない。
- ⑤ 日本海裂頭条虫。虫卵は楕円形で一端に小蓋をもつ条虫卵であり、本問の球形の形態とは異なる。
第61回 午後8(臨床検査総論)
22歳の男性。発熱と意識障害とを主訴に救急外来を受診した。5日前から頭痛、発熱および全身倦怠感があった。1週前まで約3か月のアフリカへの渡航歴がある。末梢血のGiemsa染色薄層塗抹標本を別に示す。この患者の血液検査所見で考えられるのはどれか。2つ選べ。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61pB008.a82bd39e58.jpg

- ①血小板数増加
- ②ヘモグロビン低下
- ③クレアチニン上昇
- ④ハプトグロビン上昇
- ⑤コリンエステラーゼ上昇
正答: ②ヘモグロビン低下・③クレアチニン上昇
ポイント
約3か月のアフリカ渡航歴があり、発熱・頭痛・全身倦怠感に続いて意識障害をきたし、末梢血Giemsa染色薄層塗抹で赤血球内に輪状体などの原虫を認める像から、熱帯熱マラリアが強く考えられる。マラリアでは原虫感染赤血球の破壊により血管内溶血が進行し、ヘモグロビンが低下するとともに、遊離ヘモグロビンと結合して消費されるハプトグロビンが低下する。さらに重症例では急性腎障害(黒水熱)を合併しクレアチニンが上昇する。●マラリアの血液所見=溶血性貧血(Hb低下・ハプトグロビン低下・LD上昇・間接ビリルビン上昇)、血小板減少、急性腎障害(クレアチニン上昇)●重症化を示す指標=意識障害(脳マラリア)・低血糖・代謝性アシドーシス・高乳酸血症・腎不全。熱帯熱マラリアは脳症や多臓器障害をきたす緊急疾患であり、渡航歴と血液塗抹標本の確認による迅速な診断と治療を要する。
選択肢ごとの解説
- ① 血小板数増加。マラリアでは血小板はむしろ減少することが多く、血小板数の増加は考えにくい。
- ② 正しい。原虫が感染した赤血球の破壊による溶血性貧血を生じ、ヘモグロビンが低下する。
- ③ 正しい。重症の熱帯熱マラリアでは急性腎障害(黒水熱)を伴い、クレアチニンが上昇する。
- ④ ハプトグロビン上昇。溶血で生じた遊離ヘモグロビンと結合して消費されるため、低下するのが正しい。
- ⑤ コリンエステラーゼ上昇。マラリアの典型的所見ではなく、本症で上昇するという根拠に乏しい。
第61回 午後9(臨床検査総論)
原虫と検査材料の組合せで正しいのはどれか。
- ①トキソプラズマ — 糞便
- ②リーシュマニア — 糞便
- ③赤痢アメーバ嚢子型 — 糞便
- ④Lambl鞭毛虫栄養型 — 肝膿瘍穿刺液
- ⑤クリプトスポリジウム — 血液
正答: ③赤痢アメーバ嚢子型 — 糞便
ポイント
赤痢アメーバは大腸に寄生する原虫で、糞便中に感染源となる嚢子型(シスト)や栄養型(トロフォゾイト)を排出するため、糞便が検査材料として正しい。嚢子型は外界に対する耐久型で経口感染源となり、栄養型は急性期の血性・粘血便にみられ赤血球を貪食する像が特徴である。原虫検査では原虫が寄生・排出される部位に対応した材料を選ぶことが診断の前提となる。●糞便で検出する原虫=赤痢アメーバ(嚢子型・栄養型)、ランブル鞭毛虫(ジアルジア)、クリプトスポリジウム(オーシスト)●血液で検出する原虫=マラリア(赤血球内)、アフリカトリパノソーマ●骨髄・脾・皮膚病変で検出=リーシュマニア(無鞭毛型)●血清抗体・組織で検出=トキソプラズマ。原虫と検査材料の組合せの誤りは検査材料の取り違えにつながるため、寄生部位と排出経路の理解が必要である。
選択肢ごとの解説
- ① トキソプラズマは血清抗体やリンパ節・組織で検出するもので、ヒト糞便は検査材料として適さない。
- ② リーシュマニアは骨髄・脾・皮膚病変などで無鞭毛型を検出する原虫で、糞便からは検出しない。
- ③ 正しい。赤痢アメーバは大腸に寄生し、糞便中に感染源となる嚢子型や栄養型を排出する。
- ④ ランブル鞭毛虫の栄養型は十二指腸液や糞便で検出され、肝膿瘍穿刺液は検査材料に適さない。
- ⑤ クリプトスポリジウムはオーシストを糞便中に排出する原虫で、血液は検査材料ではない。
📋 まとめの表を見る:検査材料・染色法別 主な原虫の検出
墨汁染色は病原体特異的な染色ではなく、髄液中のCryptococcus莢膜観察に用いる陰性染色である。赤痢アメーバの虫体はKohn染色やhematoxylin染色で観察する。
第61回 午後10(臨床検査総論)
PCR法の反応過程に含まれるのはどれか。2つ選べ。
- ①アルキル化
- ②アニーリング
- ③トランスダクション
- ④ハイブリダイゼーション
- ⑤DNAポリメラーゼ伸長反応
正答: ②アニーリング・⑤DNAポリメラーゼ伸長反応
ポイント
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法はDNAを試験管内で指数関数的に増幅する技術で、二本鎖DNAを高温で一本鎖に解離させる熱変性、プライマーを一本鎖鋳型に結合させるアニーリング、DNAポリメラーゼが相補鎖を合成する伸長反応という3段階を反復する。本問ではアニーリングとDNAポリメラーゼ伸長反応がこの反応過程に含まれる。耐熱性のTaqポリメラーゼの利用により反復加熱が可能となった。●PCRの3ステップ=変性(94〜95℃)・アニーリング(50〜65℃)・伸長(72℃)●関連する核酸技術=ハイブリダイゼーション(相補的なプローブと標的核酸の結合反応、サザンブロット・ノーザンブロットで利用)、トランスダクション(ファージを介した細菌間の遺伝子伝達)、アルキル化(核酸への化学修飾)。各操作の意味と役割を区別して理解することが重要であり、PCRに本質的に含まれるのは変性・アニーリング・伸長の3反応である。
選択肢ごとの解説
- ① アルキル化は核酸へアルキル基を付加する化学修飾であり、PCRの増幅反応の過程ではない。
- ② 正しい。プライマーが一本鎖の鋳型DNAに相補的に結合するアニーリングは、PCRの一段階である。
- ③ トランスダクションはファージを介した細菌間の遺伝子伝達であり、PCRの反応過程ではない。
- ④ ハイブリダイゼーションはプローブと標的核酸の結合反応で、PCR増幅そのものの過程には含まれない。
- ⑤ 正しい。耐熱性DNAポリメラーゼによる相補鎖の合成(伸長反応)は、PCRの一段階である。
第61回 午後11(臨床検査医学総論)
自己抗体と疾患の組合せで正しいのはどれか。
- ①抗Sm抗体 — 皮膚筋炎
- ②抗CCP抗体 — 自己免疫性溶血性貧血
- ③抗RNP抗体 — 関節リウマチ
- ④抗ミトコンドリア抗体 — 原発性胆汁性肝硬変
- ⑤抗アセチルコリン受容体抗体 — 特発性間質性肺炎
正答: ④抗ミトコンドリア抗体 — 原発性胆汁性肝硬変
ポイント
抗ミトコンドリア抗体(AMA)は原発性胆汁性胆管炎(旧称・原発性胆汁性肝硬変、PBC)で高頻度に陽性となる疾患特異性の高い自己抗体で、ミトコンドリア内膜のピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC-E2)を標的とする。中年女性に多く、慢性的な胆汁うっ滞とALP・γ-GT上昇を伴う本症の診断に重要な役割を果たす。●代表的な自己抗体と疾患の対応=抗ミトコンドリア抗体(原発性胆汁性胆管炎)、抗CCP抗体・リウマトイド因子(関節リウマチ)、抗Sm抗体・抗ds-DNA抗体(全身性エリテマトーデス)、抗RNP抗体(混合性結合組織病)、抗Jo-1抗体(多発性筋炎・皮膚筋炎)、抗Scl-70抗体・抗セントロメア抗体(全身性強皮症)、抗アセチルコリン受容体抗体(重症筋無力症)。標的とする抗原と疾患の対応関係を把握することが自己免疫疾患診断の基礎となる。
選択肢ごとの解説
- ① 抗Sm抗体は全身性エリテマトーデスに特異的な自己抗体であり、皮膚筋炎との組合せは誤りである。
- ② 抗CCP抗体は関節リウマチに特異的な自己抗体で、自己免疫性溶血性貧血とは関係しない。
- ③ 抗RNP抗体は混合性結合組織病で高値となる抗体で、関節リウマチとの組合せは正しくない。
- ④ 正しい。抗ミトコンドリア抗体は原発性胆汁性胆管炎に特異的で、本症で高頻度に陽性となる。
- ⑤ 抗アセチルコリン受容体抗体は重症筋無力症で陽性となる抗体で、間質性肺炎とは無関係である。
📋 まとめの表を見る:臓器特異的自己抗体と自己免疫疾患
サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉は甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己抗体の標的とはならない。
第61回 午後12(臨床検査医学総論)
肺水腫でみられる喀痰の性状で正しいのはどれか。
正答: ③漿液性・⑤泡沫性
ポイント
肺水腫では、左心不全による肺うっ血で肺毛細血管圧(肺静脈圧)が上昇し、血漿成分が血管内から肺胞内へと漏出する。この漏出した漿液成分が呼吸に伴う空気と激しく混じり合うことで、漿液性かつ泡沫状(しばしばピンク色を帯びる)の喀痰がみられる。したがって本問では漿液性と泡沫性が正答となる。喀痰の性状は気道・肺胞の病態を反映するため、原因疾患の推定に重要な手がかりとなる。●喀痰の性状と代表的病態=漿液性・泡沫性(肺水腫)、膿性(細菌性肺炎・気管支拡張症・肺膿瘍)、粘液性(慢性気管支炎・気管支喘息)、血性(肺癌・肺結核・肺梗塞)、鉄錆色(肺炎球菌性肺炎)●採取・観察上の注意=早朝の喀出痰が望ましく、色調・粘稠度・量・においも併せて評価する。喀痰検査は喀痰の性状観察に加え、感染症の起炎菌検索や肺癌の細胞診にも用いられる重要な検体である。
選択肢ごとの解説
- ① 血性は肺癌・肺結核・肺梗塞などで血液が混じる喀痰でみられる性状で、肺水腫の典型的な性状ではない。
- ② 膿性は細菌感染で好中球を多く含む黄緑色の喀痰で、肺炎や気管支拡張症でみられ肺水腫の性状ではない。
- ③ 正しい。肺胞内へ漏出した血漿成分を反映して、肺水腫では漿液性の喀痰がみられる。
- ④ 粘液性は慢性気管支炎や気管支喘息でみられる無色透明で粘稠な喀痰の性状で、肺水腫の所見ではない。
- ⑤ 正しい。漏出した漿液が空気と混じってピンク色で泡沫状となるのが、肺水腫の喀痰の特徴である。
第61回 午後13(臨床検査医学総論)
(1→3)-β-D-グルカンが上昇する感染症の原因微生物はどれか。
- ①大腸菌
- ②緑膿菌
- ③カンジダ
- ④マイコプラズマ
- ⑤インフルエンザ菌
正答: ③カンジダ
ポイント
(1→3)-β-D-グルカンは多くの真菌の細胞壁を構成する多糖成分であり、血中濃度の上昇は深在性(侵襲性)真菌症の補助診断マーカーとして広く用いられる。カンジダは真菌であり、この成分を細胞壁に豊富にもつため、カンジダ血症や深在性カンジダ症の感染で血中β-D-グルカンが上昇する。早期診断と治療効果判定に役立つ非培養系の検査である。●β-D-グルカンが上昇する真菌=カンジダ、アスペルギルス、ニューモシスチス・イロベチイなど多くの真菌(ただしクリプトコッカスや接合菌類〈ムーコルなど〉では細胞壁成分が異なり低値となる)●上昇しない微生物=細菌(大腸菌・緑膿菌・インフルエンザ菌)、細胞壁を欠くマイコプラズマ。本マーカーは真菌感染のスクリーニングに有用だが菌種の同定はできず、ガーゼ・血液製剤・透析膜などによる偽陽性にも注意する。
選択肢ごとの解説
- ① 大腸菌はグラム陰性桿菌で真菌の細胞壁成分であるβ-D-グルカンをもたないため、本マーカーは上昇しない。
- ② 緑膿菌は細菌であり真菌成分であるβ-D-グルカンを産生しないため、感染しても血中値は上昇しない。
- ③ 正しい。カンジダは真菌で細胞壁にβ-D-グルカンをもち、深在性カンジダ症などの感染で血中値が上昇する。
- ④ マイコプラズマは細胞壁を欠く特殊な細菌であり、細胞壁成分のβ-D-グルカンは上昇しない。
- ⑤ インフルエンザ菌はグラム陰性桿菌で真菌成分のβ-D-グルカンを産生せず、本マーカーは上昇しない。
第61回 午後14(臨床検査医学総論)
甲状腺機能低下症で高値になるのはどれか。2つ選べ。
- ①CK
- ②ALP
- ③ヘモグロビン
- ④総コレステロール
- ⑤遊離サイロキシン
正答: ①CK・④総コレステロール
ポイント
甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの低下により全身の基礎代謝が低下する。脂質代謝ではLDL受容体の発現低下などからコレステロールの異化(取り込み・分解)が遅延し、総コレステロール・LDLコレステロールが上昇する。また骨格筋では筋障害(甲状腺機能低下性ミオパチー)と酵素のクリアランス低下によりCK(クレアチンキナーゼ)が上昇する。よって本問ではCKと総コレステロールが高値となる。●甲状腺機能低下症で高値となる項目=TSH(原発性の場合)、総コレステロール・LDL、CK、ときにLD・AST、プロラクチン●低値となる項目=遊離サイロキシン(FT4)・遊離トリヨードサイロニン(FT3)、代謝低下に伴う徐脈・低体温●関連所見=粘液水腫、貧血傾向、便秘。ホルモン低下に伴う代謝の全般的な遅滞が各検査値に反映される。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。骨格筋からの酵素クリアランス低下や甲状腺機能低下性ミオパチーにより、クレアチンキナーゼが上昇する。
- ② ALP。骨・肝由来のアルカリホスファターゼで、甲状腺機能低下症で特異的に高値となる指標ではない。
- ③ ヘモグロビン。基礎代謝や造血の低下に伴い貧血傾向となることが多く、機能低下症で高値にはならない。
- ④ 正しい。LDL受容体の発現低下などでコレステロールの異化が遅延し、総コレステロールが上昇する。
- ⑤ 遊離サイロキシン。甲状腺ホルモンそのものであり、甲状腺機能低下症ではむしろ低下する。
第61回 午後15(臨床検査医学総論)
低カリウム血症の原因となるのはどれか。
- ①溶血
- ②腎不全
- ③真性赤血球増加症
- ④本態性血小板血症
- ⑤原発性アルドステロン症
正答: ⑤原発性アルドステロン症
ポイント
原発性アルドステロン症では、副腎皮質球状帯の腺腫や過形成からアルドステロンが自律的に過剰分泌される。アルドステロンは腎遠位尿細管・集合管でナトリウムの再吸収とカリウム・水素イオンの排泄を促進するため、低カリウム血症と代謝性アルカローシス、体液量増加による高血圧をきたす。負のフィードバックによりレニンは低値、アルドステロンは高値となるのが特徴で、治療可能な二次性高血圧の代表である。●低カリウム血症の原因=原発性アルドステロン症、Cushing症候群、利尿薬(ループ・サイアザイド)、嘔吐・下痢、周期性四肢麻痺●高カリウム血症の原因=腎不全、溶血(採血手技による試験管内の偽性高Kを含む)、Addison病、アシドーシス、組織崩壊・横紋筋融解。アルドステロン/レニン比の評価が二次性高血圧の鑑別に重要である。
選択肢ごとの解説
- ① 溶血では赤血球内の高濃度カリウムが血漿中へ漏出し、むしろ高カリウム血症(偽性を含む)となる。
- ② 腎不全ではカリウムの尿中排泄が低下し、高カリウム血症をきたすため低カリウムの原因としては誤りである。
- ③ 真性赤血球増加症は造血幹細胞の異常による血球産生の亢進が主体で、低カリウム血症の原因ではない。
- ④ 本態性血小板血症は血小板が著明に増加する骨髄増殖性疾患で、血清カリウムの低下とは関係しない。
- ⑤ 正しい。アルドステロンの過剰分泌により腎遠位尿細管でのカリウム排泄が亢進し、低カリウム血症となる。
第61回 午後16(臨床生理学)
運動負荷心電図検査の実施を見合わせるべき状態はどれか。
- ①心拍数50/分
- ②血圧140/80 mmHg
- ③3時間前の食事摂取
- ④30分以上前からの胸痛の持続
- ⑤経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉97%
正答: ④30分以上前からの胸痛の持続
ポイント
運動負荷心電図検査は冠動脈疾患の診断や重症度評価に用いられるが、不安定狭心症や急性心筋虚血が疑われる状態では、負荷により心筋虚血・心筋梗塞や致死的不整脈を誘発する危険があるため禁忌・中止の対象となる。30分以上持続する胸痛は急性冠症候群(不安定狭心症・急性心筋梗塞)を強く疑わせるため、検査を見合わせるべきである。●運動負荷の禁忌・見合わせ基準=持続する胸痛(不安定狭心症・急性心筋梗塞などの急性冠症候群疑い)、コントロール不良の重症不整脈・高血圧、急性大動脈解離、症候性の重症大動脈弁狭窄、急性心不全、急性心筋炎・心膜炎●実施可能な状態=循環動態が安定、軽度の血圧上昇、無症状の安静時徐脈、検査数時間前の通常の食事。患者の安全確保のため、事前の状態評価と救急薬品・除細動器など緊急対応の準備が不可欠である。
選択肢ごとの解説
- ① 心拍数50/分。無症状の安静時徐脈は直ちに禁忌とはならず、運動負荷により心拍数は上昇する。
- ② 血圧140/80 mmHg。軽度の血圧高値であり、運動負荷を直ちに見合わせる基準には該当しない。
- ③ 3時間前の食事摂取。検査直前の過食は避けるべきだが、3時間前の食事であれば実施を妨げない。
- ④ 正しい。30分以上持続する胸痛は急性冠症候群を疑う所見であり、運動負荷検査を見合わせるべきである。
- ⑤ SpO₂ 97%。経皮的動脈血酸素飽和度は正常範囲であり、検査を見合わせる理由にはならない。
第61回 午後17(臨床生理学)
心電図を別に示す。所見で正しいのはどれか。2つ選べ。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61pB017.f9783c00db.jpg

- ①左室肥大
- ②洞不全症候群
- ③急性心筋梗塞
- ④完全右脚ブロック
- ⑤Ⅰ度房室ブロック
正答: ④完全右脚ブロック・⑤Ⅰ度房室ブロック
ポイント
図の心電図は、QRS幅の延長と右側胸部誘導V1におけるrSR'型の波形を示す完全右脚ブロックと、PR間隔の延長を示すⅠ度房室ブロックの所見と考えられる。完全右脚ブロックは右脚の伝導途絶により右室の興奮が遅れるもの、Ⅰ度房室ブロックは房室結節での伝導時間延長によるもので、いずれも刺激伝導系の障害である。●心電図でみる伝導障害=完全右脚ブロック(QRS≧0.12秒・V1でrSR'・V5,6で幅広いS波)、完全左脚ブロック(QRS幅広・V1でQS型)、Ⅰ度房室ブロック(PR>0.20秒)、Ⅱ度・Ⅲ度房室ブロック●虚血・梗塞所見=ST上昇(急性心筋梗塞)・異常Q波(陳旧性梗塞)・ST低下や陰性T波(心筋虚血)。完全右脚ブロックは健常者にもみられることがあるが、Ⅰ度房室ブロックと合併する所見であれば伝導系全体の遅延を示す。波形の特徴から障害される伝導路の部位と病態を推定することが心電図判読の要点である。
選択肢ごとの解説
- ① 左室肥大。胸部誘導の高電位差や左軸偏位、ストレインパターンを要するが、本図の主たる所見ではない。
- ② 洞不全症候群。著明な洞性徐脈や洞停止・洞房ブロックを特徴とするが、本図の所見とは一致しない。
- ③ 急性心筋梗塞。ST上昇や異常Q波、対側誘導のST低下を要するが、本図ではこれらは認められない。
- ④ 正しい。QRS幅の延長と右側胸部誘導V1のrSR'型から、完全右脚ブロックと判断できる。
- ⑤ 正しい。PR間隔が0.20秒を超えて延長していることから、Ⅰ度房室ブロックと判断できる。
📋 まとめの表を見る:不整脈・心筋梗塞の心電図所見
第61回 午後18(臨床生理学)
Holter心電図が診断に有用でないのはどれか。
- ①異型狭心症
- ②胸部大動脈瘤
- ③発作性心房細動
- ④発作性上室頻拍
- ⑤Ⅲ度房室ブロック
正答: ②胸部大動脈瘤
ポイント
Holter心電図は24時間以上にわたり心電図を連続記録する検査で、日常生活中に発作性・間欠的に出現する不整脈や虚血性変化を捉えることを目的とする。したがって心電図に反映される事象の診断に有用である。胸部大動脈瘤は大動脈壁の形態的な拡張病変であり心電図には反映されないため、Holter心電図では診断できず本問の正答となる。●Holter心電図が有用=発作性心房細動・発作性上室頻拍などの発作性不整脈、異型狭心症(一過性ST上昇)、Ⅲ度房室ブロックや洞停止、失神・動悸の原因検索●Holter心電図が不適=大動脈瘤・弁膜症・心臓の形態異常の評価(これらは心臓超音波・CT・MRIで評価する)。間欠的・発作的に出現して通常の安静時心電図では捉えにくい不整脈や虚血の検出が本検査の主眼であり、症状と心電図変化の時間的関連の確認にも有用である。
選択肢ごとの解説
- ① 異型狭心症。冠攣縮による発作時の一過性ST上昇を捉えられるため、Holter心電図が診断に有用である。
- ② 正しい。胸部大動脈瘤は形態的な血管病変で心電図には現れないため、Holter心電図では診断できない。
- ③ 発作性心房細動。間欠的に出現して安静時心電図では捉えにくい不整脈を長時間記録で検出でき有用である。
- ④ 発作性上室頻拍。突発する頻拍発作を24時間記録で捉えられるため、Holter心電図が診断に有用である。
- ⑤ Ⅲ度房室ブロック。間欠的に生じる完全房室ブロックや失神の原因検索に、Holter心電図が有用である。
第61回 午後19(臨床生理学)
新生児聴覚スクリーニング検査で用いられるのはどれか。
- ①語音聴力検査
- ②純音聴力検査
- ③ティンパノグラム
- ④自動聴性脳幹反応
- ⑤音響性耳小骨筋反射
正答: ④自動聴性脳幹反応
ポイント
自動聴性脳幹反応(自動ABR)は、音刺激に対する聴神経から脳幹に至る誘発電位を記録し装置が自動的に正常/要再検を判定する検査で、被検者の自覚的応答を必要とせず、新生児が眠っている間に他覚的・非侵襲的に聴覚を評価できる。このため耳音響放射(OAE)とともに新生児聴覚スクリーニングに広く用いられる。●新生児聴覚スクリーニング=自動聴性脳幹反応(自動ABR)・耳音響放射(OAE)。いずれも自覚的応答が不要な他覚的検査●自覚的聴力検査=純音聴力検査・語音聴力検査。被検者の応答が必要で新生児には実施できない●中耳機能検査=ティンパノメトリー(鼓膜の可動性評価)・音響性耳小骨筋反射。これらは聴覚スクリーニングの主体ではない。自覚的応答が得られない新生児には他覚的検査が必須であるため、自動聴性脳幹反応や耳音響放射が選択され、要再検例は精密聴力検査へつなげる。早期発見・早期療育が言語発達に重要である。
選択肢ごとの解説
- ① 語音聴力検査。言葉の聞き取りを被検者が答える自覚的検査であり、応答できない新生児には実施できない。
- ② 純音聴力検査。提示音への被検者の応答が必要な自覚的検査であり、新生児の聴覚評価には適さない。
- ③ ティンパノグラム。鼓膜の可動性など中耳の状態を評価する検査で、聴覚スクリーニングの主体ではない。
- ④ 正しい。自動聴性脳幹反応は自覚的応答が不要な他覚的・非侵襲的検査で、新生児聴覚スクリーニングに用いる。
- ⑤ 音響性耳小骨筋反射。中耳の反射を調べる検査であり、新生児の聴覚スクリーニングには用いられない。
第61回 午後20(臨床生理学)
肺胞換気量の低下による呼吸性アシドーシスで認められる値として適切なのはどれか。
- ①pH 7.56
- ②PaO₂ 100 Torr
- ③PaCO₂ 75 Torr
- ④HCO₃ 18.5 mEq/L
- ⑤肺拡散能〈DLco〉80%
正答: ③PaCO₂ 75 Torr
ポイント
肺胞換気量の低下による呼吸性アシドーシスでは、二酸化炭素の排出が障害されて体内にCO₂が貯留するため、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO₂)が上昇する。基準値35〜45 Torrを大きく上回る75 Torrはこの病態に合致する。CO₂貯留により血液は酸性に傾き、pHは低下する。●呼吸性アシドーシス=PaCO₂上昇・pH低下、慢性では腎による代償でHCO₃上昇(COPD・神経筋疾患・呼吸中枢抑制が原因)●呼吸性アルカローシス=過換気でPaCO₂低下・pH上昇●代謝性アシドーシス=HCO₃低下・pH低下、呼吸性代償でPaCO₂低下●代謝性アルカローシス=HCO₃上昇・pH上昇。肺胞低換気では二酸化炭素の貯留に加えて酸素の取り込みも低下するため、低酸素血症(PaO₂低下)を併発しうる点に留意する。血液ガス分析ではpH・PaCO₂・HCO₃を総合して酸塩基平衡の病態を判定する。
選択肢ごとの解説
- ① pH 7.56。基準を上回りアルカローシスを示す高値であり、アシドーシスとは逆方向の所見である。
- ② PaO₂ 100 Torr。正常範囲の酸素分圧であり、肺胞低換気によるCO₂貯留を反映する値ではない。
- ③ 正しい。PaCO₂ 75 Torrは二酸化炭素の貯留を示す高値で、呼吸性アシドーシスの病態に合致する。
- ④ HCO₃ 18.5 mEq/L。基準より低値で代謝性アシドーシスを示唆する所見であり、本病態とは異なる。
- ⑤ DLco 80%。肺拡散能を示す指標であり、肺胞低換気による酸塩基平衡の変化とは直接関係しない。
📋 まとめの表を見る:酸塩基平衡異常の4パターン(pH・一次性変化・代償性変化)
代償は血液pHを基準範囲(7.35〜7.45)へ戻そうとする働き。呼吸性代償は換気量の増減により数時間単位、代謝性(腎性)代償はHCO₃-の排泄調節により数日単位で生じる。代償が予測範囲を超える場合は混合性障害を疑う。
第61回 午後21(臨床生理学)
肺拡散能〈DLco〉が低下しないのはどれか。
- ①肺気腫
- ②肺水腫
- ③間質性肺炎
- ④睡眠時無呼吸症候群
- ⑤肺動脈性肺高血圧症
正答: ④睡眠時無呼吸症候群
ポイント
肺拡散能(DLco)は肺胞気から肺毛細血管血への一酸化炭素の取り込み能力を示す指標で、ガス交換にあずかる肺胞壁・間質・毛細血管床の障害や有効ガス交換面積の減少により低下する。睡眠時無呼吸症候群は睡眠中の上気道閉塞による換気の障害が本態であり、肺胞膜やガス交換面の構造自体は保たれるため、DLcoは低下しないのが原則である。●DLcoが低下する病態=肺気腫(肺胞壁の破壊)、間質性肺炎・肺線維症(間質の肥厚)、肺水腫、肺血管床の減少(肺動脈性肺高血圧・肺塞栓)、貧血●DLcoが低下しない・上昇する病態=睡眠時無呼吸症候群(上気道閉塞が主体で肺実質は正常)、肺胞出血(肺胞内のヘモグロビンがCOを取り込む)、多血症、左右短絡。ガス交換にあずかる有効面積と肺胞-毛細血管膜の厚さ・血液量が拡散能を規定するため、これらが保たれる病態ではDLcoは低下しない。
選択肢ごとの解説
- ① 肺気腫。肺胞壁の破壊によりガス交換にあずかる有効面積が減少するため、DLcoは低下する。
- ② 肺水腫。肺胞・間質への液体貯留で肺胞-毛細血管膜の拡散障害をきたし、DLcoは低下する。
- ③ 間質性肺炎。間質の肥厚・線維化により拡散距離が増大し拡散が妨げられ、DLcoは低下する。
- ④ 正しい。睡眠時無呼吸症候群は上気道閉塞が主体で肺胞膜は保たれるため、DLcoは低下しない。
- ⑤ 肺動脈性肺高血圧症。肺血管床(毛細血管床)の減少により拡散が障害され、DLcoは低下する。
第61回 午後22(臨床生理学)
70歳の男性。約1年前から続く労作時息切れのため来院した。胸部エックス線写真で両肺野の網状陰影と肺の容量減少を認めた。呼吸機能検査で1秒率〈FEV1%〉82%、%肺活量〈%VC〉62%であった。別に示すフローボリューム曲線のうち、この患者に予想されるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61pB022.3b010c5243.jpg

正答: ③
ポイント
1秒率82%は保たれ、%肺活量62%は低下しているため、拘束性換気障害を考える。両肺の網状陰影と肺容量減少も間質性肺炎・肺線維症に合う。図では③が、正常曲線*に比べて肺気量軸上の幅が狭く、肺活量の減少を表している。流量の高さが一律に相似縮小することが拘束性の定義ではない。
●①は呼気流量が低下した閉塞性パターン。
●②は呼気流量の平坦化が目立つ。
●③は肺活量低下を示す拘束性パターン。
●④は大きい肺気量側に偏り、残気量増加と呼気流量低下を示す。
●⑤は低肺気量域の流量が低下している。
選択肢ごとの解説
- ① ①は正常曲線*に比べて呼気流量が低く、下降脚の陥凹を認める。肺活量低下が主体の③とは異なる。
- ② ②。ピークの後に呼気流量がほぼ一定となる平坦なパターンを示す曲線で、気管などの中枢気道の狭窄でみられる形である。本症で予想される拘束性のパターンとは合致しない。
- ③ 正しい。③は正常曲線*より肺気量軸上の幅が狭く、肺活量の減少を示している。%肺活量62%・1秒率82%という拘束性所見に合う。
- ④ ④は大きい肺気量側に偏り、呼出終末でも多くの気量が残る。残気量の増加と呼気流量の低下を示し、本例の肺容量減少とは異なる。
- ⑤ ⑤は正常曲線*と比べ、呼出後半の低肺気量域で流量が低下している。肺活量が小さい③とは異なる。
📋 まとめの表を見る:換気機能障害の分類(%肺活量〈%VC〉・1秒率〈FEV1%〉による判定)
閉塞性換気障害ではフローボリューム曲線が下に凸の形となる。機能的残気量〈FRC〉は肺の過膨張により上昇する(肺気腫・COPDなど)。
第61回 午後23(臨床生理学)
心臓超音波の連続波ドプラ法にて測定された三尖弁逆流の最大速度が2.5 m/sの場合、右室-右房間収縮期圧較差[mmHg]はどれか。
正答: ⑤25
ポイント
連続波ドプラ法で得た弁逆流の最大速度から、簡易ベルヌーイ式により圧較差を算出できる。式は圧較差ΔP[mmHg]=4×(最大速度V)²で表される。三尖弁逆流の最大速度2.5 m/sを代入すると、4×2.5²=4×6.25=25 mmHgとなり、右室-右房間の収縮期圧較差は25 mmHgである。これに推定右房圧を加えると右室収縮期圧(≒肺動脈収縮期圧)が求められ、肺高血圧の評価に用いられる。●ドプラ法による圧較差評価=簡易ベルヌーイ式(ΔP=4V²)、三尖弁逆流速度から肺動脈圧を推定●連続波ドプラ=高流速の最大速度測定に適する(折り返しなし)●パルスドプラ=部位特定に適するが高流速で折り返し(エイリアシング)を生じる。心臓カテーテルを用いずに非侵襲的に弁前後の圧較差を推定できる利点があり、肺高血圧や弁狭窄の評価に広く用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 5。簡易ベルヌーイ式ΔP=4V²に2.5 m/sを代入した値と一致せず、圧較差として誤りである。
- ② 10。4×2.5²の計算結果である25 mmHgとは異なり、本問の圧較差には当てはまらない。
- ③ 15。最大速度2.5 m/sからΔP=4V²で求めた値とは異なり、正しい圧較差ではない。
- ④ 20。4×2.5²=4×6.25=25であり、20 mmHgは計算結果と一致しないため誤りである。
- ⑤ 正しい。簡易ベルヌーイ式4×2.5²=25 mmHgで、右室-右房間の収縮期圧較差に一致する。
第61回 午後24(臨床生理学)
正常妊娠期間中、最も早い時期に出現する超音波検査の所見はどれか。
正答: ②胎嚢
ポイント
正常妊娠の経腟超音波検査では、妊娠4〜5週頃に子宮内に胎嚢(GS、gestational sac)が最初に確認される。続いて胎嚢内に卵黄嚢、ついで胎芽および胎児心拍が6週前後に描出され、その後に胎盤の形成や羊水量の評価が可能となる。出現時期に明確な順序があるため、最も早い所見は胎嚢である。●超音波所見の出現順序=胎嚢(4〜5週)→卵黄嚢→胎芽・胎児心拍(6週前後)→胎盤の形成→羊水量の評価●妊娠週数の評価=胎嚢径(GS径)は妊娠初期、頭殿長(CRL)はその後の週数推定に、児頭大横径(BPD)は妊娠中期以降の評価に用いる●確認時期の目安=経腟法では胎嚢が4〜5週、胎児心拍が6週前後に描出される。最初に子宮内に確認できる構造物が胎嚢であり、子宮内に胎嚢を確認できることは子宮外妊娠との鑑別にも重要な所見となる。
選択肢ごとの解説
- ① 胎芽。胎嚢が確認された後にその胎嚢内に描出される構造であり、最も早く出現する超音波所見ではない。
- ② 正しい。胎嚢は妊娠4〜5週頃に子宮内で最初に確認される、妊娠初期で最も早期の超音波所見である。
- ③ 羊水。胎嚢や胎芽の確認より後に評価が可能となる所見であり、最も早く出現するものではない。
- ④ 胎盤。妊娠中期にかけて形成され評価される構造であり、出現・確認の時期は他の所見より遅い。
- ⑤ 胎児心拍。胎芽が確認された後の妊娠6週前後に描出されるため、胎嚢よりも出現が遅い所見である。
第61回 午後25(臨床生理学)
医療用MRIにおいて画像化される磁気共鳴信号を発する元素はどれか。
正答: ②水素
ポイント
医療用MRIは、生体内に最も豊富に存在する水素原子核(プロトン、¹H)の核磁気共鳴現象を信号源として画像化する。水素原子核は核スピン(磁気モーメント)をもち、強い静磁場中で歳差運動を行い、共鳴周波数の高周波(RF)パルスを与えると共鳴して信号を発する。生体は水と脂肪に多量の水素を含むため、高い信号強度が得られ画像化に適する。●MRIの基礎=水素原子核(プロトン)の核磁気共鳴を利用、T1・T2緩和時間の差で組織コントラストを得る●画像化の要素=静磁場・傾斜磁場(位置情報)・RFパルス●他の核種の利用=リン(³¹P)はMRスペクトロスコピー(MRS)で組織の代謝評価に応用され、ナトリウム(²³Na)も研究的に用いられる●関連現象=水素のT1強調・T2強調画像で組織を描き分け、造影剤(ガドリニウム)で緩和時間を変化させる。生体に豊富で磁気共鳴感度の高い水素が、標準的なMRIの画像化に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 酸素。生体に多く存在するが核磁気共鳴の感度が低く、通常のMRIで画像化する信号源ではない。
- ② 正しい。生体に最も豊富な水素原子核(プロトン)の核磁気共鳴を信号源として画像化する。
- ③ 炭素。¹³Cはごく微量で感度も低く、MRIの標準的な信号源ではなく特殊な計測に限られる。
- ④ 窒素。核磁気共鳴の感度が低く、通常の医療用MRIで画像化される元素ではない。
- ⑤ ナトリウム。²³Naは研究的に用いられることはあるが、標準的なMRIの信号源ではない。
第61回 午後26(臨床生理学)
健常成人の脳波のα波で正しいのはどれか。
- ①側頭葉優位に出現する。
- ②開眼によって出現する。
- ③左右非対称性に出現する。
- ④周波数は8〜13 Hzである。
- ⑤振幅は30〜50 mVである。
正答: ④周波数は8〜13 Hzである。
ポイント
健常成人で安静覚醒・閉眼時に後頭部優位に出現する基礎律動がα波で、周波数は8〜13Hz、振幅は概ね20〜50μVである。開眼や精神活動でα波が減衰・消失する反応をα-blocking(α抑制)といい、賦活で容易に抑制されるのが正常な反応性である。左右はほぼ対称で後頭部に最大電位をもち、前頭へ向かうほど振幅が低下する電位勾配を示すのが基本所見である。●正常脳波の周波数帯による分類=δ波(4Hz未満)・θ波(4〜8Hz未満)・α波(8〜13Hz)・β波(13Hz超)。●出現条件による分類=α波は閉眼・安静覚醒で後頭優位、β波は覚醒・緊張時に前頭優位、θ・δ波は睡眠の深化や小児・脳機能低下など病的状態で増加する。●賦活法=開閉眼・過呼吸・光刺激・睡眠などで脳波の異常を誘発し、てんかん性放電などの評価に用いる。
選択肢ごとの解説
- ① α波は側頭葉ではなく後頭部優位に出現するため誤り。後頭部に最大振幅をもつ基礎律動であり、側頭葉優位ではない。
- ② 開眼ではα波は抑制・消失する(α-blocking)反応を示すため誤り。α波が出現するのは閉眼・安静覚醒時である。
- ③ 健常成人のα波は左右ほぼ対称に出現するため誤り。明瞭な左右差を認めるときは病的所見を疑う必要がある。
- ④ 正しい。α波の周波数は8〜13Hzであり、健常成人の後頭部に出現する基礎律動の定義に合致する記述である。
- ⑤ α波の振幅は概ね20〜50μV程度であり、単位もmVではなくμVが正しいため、数値・単位ともに誤りである。
第61回 午後27(臨床生理学)
聴覚誘発脳波記録時にインパルスが通過しないのはどれか。
- ①側頭葉
- ②前庭神経
- ③外側毛帯
- ④蝸牛神経
- ⑤内側膝状体
正答: ②前庭神経
ポイント
聴性脳幹反応(ABR)など聴覚誘発電位は、音刺激が蝸牛で電気信号に変換され、蝸牛神経→蝸牛神経核→上オリーブ核→外側毛帯→下丘→内側膝状体→聴放線→側頭葉聴覚野へと上行する聴覚伝導路を反映する。これらの中継核・線維束を経て信号が伝わるため、各部位にインパルスが通過する。これに対し前庭神経は半規管・耳石器からの平衡覚情報を伝える経路であり、聴覚情報の伝導には関与しないため、聴覚誘発脳波記録時にインパルスは通過しない。●聴覚伝導路の主な中継核・線維=蝸牛神経核・上オリーブ核・外側毛帯・下丘・内側膝状体。●ABRの主要波と推定部位=I波が蝸牛神経、III波が上オリーブ核付近、V波が下丘付近を反映し、神経学的な障害部位の推定に用いられる。●ABRの臨床応用=難聴の他覚的評価・脳幹機能評価・脳死判定の補助検査として活用される。
選択肢ごとの解説
- ① 側頭葉には聴覚野があり聴覚伝導路の最終的な皮質投射先であるため、聴覚情報のインパルスが通過する部位である。
- ② 誤り。前庭神経は半規管・耳石器からの平衡覚を伝える経路で聴覚伝導路には含まれず、聴覚刺激のインパルスは通過しない。
- ③ 外側毛帯は上オリーブ核から下丘へ向かう聴覚伝導路の主要な上行性線維束であり、聴覚情報のインパルスが通過する。
- ④ 蝸牛神経は蝸牛で生じた聴覚信号を脳幹へ伝える一次ニューロンであり、聴覚伝導路の起始部としてインパルスが通過する。
- ⑤ 内側膝状体は視床にある聴覚の中継核で、聴放線を介して側頭葉聴覚野へ投射する聴覚伝導路上の核として通過する。
📋 まとめの表を見る:聴性脳幹反応〈ABR〉の各波の起源
I〜V波間潜時は聴神経〜脳幹の伝導時間を反映し、聴神経腫瘍などで延長する。前庭神経は聴覚伝導路に含まれずインパルスは通過しない。
第61回 午後28(臨床生理学)
56歳の男性。右正中神経を手掌、手首、肘の各部位で電気刺激した際の短母指外転筋における運動神経伝導検査所見を別に示す。病変部位として正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61pB028.7469c93fa8.jpg

- ①脊髄
- ②肘から手首
- ③手首から手掌
- ④手掌より末梢
- ⑤正中神経全体
正答: ③手首から手掌
ポイント
正中神経の運動神経伝導検査では、手掌・手首・肘の各刺激部位で短母指外転筋から複合筋活動電位(CMAP)を記録し、潜時・振幅を区間ごとに比較して、潜時延長・振幅低下・伝導ブロックが生じる区間から病変部位を推定する。手掌刺激で正常、手首刺激で潜時延長や振幅低下を認める所見は、手首から手掌の間(手根管内)での圧迫・脱髄を示し、手根管症候群に典型的である。●正中神経の主な絞扼部位=手根管(手根管症候群)・前腕の回内筋部(回内筋症候群)。●運動神経伝導検査の指標の意味=遠位潜時延長は遠位部脱髄、振幅低下は軸索障害、特定区間での伝導ブロックは局所の脱髄を示す。●手根管症候群の所見=正中神経領域のしびれ、短母指外転筋の萎縮、遠位潜時延長を特徴とし、Tinel徴候やPhalenテストが補助となる。●他の絞扼性神経障害=肘部管症候群(尺骨神経)・足根管症候群(脛骨神経)なども伝導検査で評価する。
選択肢ごとの解説
- ① 脊髄レベルの病変では遠位の特定区間に限局した伝導異常を説明できず、本所見の局在と一致しないため誤りである。
- ② 肘から手首の区間が原因なら手首刺激より近位での異常となり、手首〜手掌に局在する本所見と合わないため誤りである。
- ③ 正しい。手首から手掌の区間(手根管内)に伝導異常が局在しており、手根管症候群を示唆する病変部位である。
- ④ 手掌より末梢が病変なら最遠位の手掌刺激でも異常が出るはずであり、本所見の局在と矛盾するため誤りである。
- ⑤ 正中神経全体の障害では各刺激部位で広範な異常を示すはずで、特定区間に限局する本所見と一致しないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:絞扼性神経障害の好発部位と障害神経
運動神経伝導検査では手掌・手首・肘など複数部位で刺激し、潜時延長・振幅低下・伝導ブロックが生じる区間から病変部位を推定する。
第61回 午後29(臨床化学)
ポイント・オブ・ケア・テスティング〈POCT〉の対象とならないのはどれか。
- ①血糖
- ②尿中hCG
- ③トロポニン
- ④血清カリウム
- ⑤プロラクチン
正答: ⑤プロラクチン
ポイント
ポイント・オブ・ケア・テスティング(POCT)は患者の近く(ベッドサイドや外来・救急の現場)で迅速に行う簡易検査で、その場で即時の診断・治療判断に直結する項目が対象となる。血糖・尿中hCG(妊娠判定)・トロポニン(心筋梗塞)・血清カリウム(電解質の緊急評価)などは緊急性や即時性が高くPOCTに適する。一方プロラクチンは下垂体前葉ホルモンで緊急の即時判断を要さず、専用測定機器による中央検査室での測定が一般的であり、POCTの対象とならない。●POCTに適する代表項目=血糖・血液ガス・電解質・心筋マーカー・凝固(PT-INR)・尿定性・感染症迅速抗原。●POCTの利点=検体搬送が不要で結果が速く、その場で迅速な治療開始に結びつき患者の利便性も高い。●POCTの留意点=精度管理や測定者教育が課題となり、中央検査室による精度保証との連携が求められる。
選択肢ごとの解説
- ① 血糖は簡易血糖測定器による代表的なPOCT項目であり、ベッドサイドや在宅での即時測定が広く行われるため対象となる。
- ② 尿中hCGは妊娠判定の迅速検査としてPOCTで用いられ、簡便なイムノクロマト法で短時間に判定できるため対象となる。
- ③ トロポニンは心筋梗塞の診断マーカーで、緊急性が高く救急現場でPOCT用の迅速測定キットが用いられるため対象となる。
- ④ 血清カリウムは電解質異常の緊急評価に必要で、血液ガス分析装置などによりPOCTで迅速測定が可能であるため対象となる。
- ⑤ 誤り。プロラクチンは下垂体前葉ホルモンで即時判断を要さず、中央検査室での測定が一般的でありPOCTの対象とならない。
第61回 午後30(臨床化学)
Michaelis-Mentenの式に従う酵素反応において、基質濃度をK m値の3倍とした。反応速度を最大反応速度に対する百分率で表したとき正しいのはどれか。
正答: ④75%
ポイント
Michaelis-Mentenの式 v=Vmax×[S]/(Km+[S]) に基質濃度[S]=3Kmを代入すると、v=Vmax×3Km/(Km+3Km)=Vmax×3Km/4Km=3/4×Vmax となる。したがって反応速度は最大反応速度の75%となる。KmはVmaxの半分(50%)の速度を与える基質濃度であり、基質濃度がKmより高くなるほど酵素は飽和に近づき、反応速度はVmaxに漸近する。●Michaelis-Menten式における関係=[S]=KmでVmaxの50%、[S]=2Kmで約67%、[S]=3Kmで75%、[S]≫KmでVmaxに近づく。●Km・Vmaxの求め方=Lineweaver-Burkプロット(二重逆数法)で1/vを1/[S]に対し直線回帰して切片から算出する。●Kmの意味=Kmが小さいほど酵素と基質の親和性が高いことを示す指標である。
選択肢ごとの解説
- ① 15%は[S]がKmより十分小さい低基質濃度域に相当する値であり、[S]=3Kmを代入した計算値と一致しないため誤りである。
- ② 25%も基質濃度がKmより低い領域に対応する値であり、[S]=3Km代入時の3/4Vmaxと一致しないため誤りである。
- ③ 50%は[S]=Km、すなわちKm値そのものでの反応速度に相当する値であり、[S]=3Kmの条件とは一致しないため誤りである。
- ④ 正しい。v=Vmax×3Km/(Km+3Km)=3/4×Vmax となり、反応速度は最大反応速度の75%となる。
- ⑤ 90%は[S]がKmの約9倍程度のときに近い値であり、[S]=3Kmを代入した計算値75%とは一致しないため誤りである。
第61回 午後31(臨床化学)
血清無機リンが上昇する病態はどれか。
- ①ビタミンD欠乏
- ②甲状腺機能低下症
- ③副甲状腺機能低下症
- ④呼吸性アルカローシス
- ⑤尿細管性アシドーシス
正答: ③副甲状腺機能低下症
ポイント
血清無機リンは腎での再吸収と、副甲状腺ホルモン(PTH)・活性型ビタミンDによる調節を受ける。PTHは腎尿細管でのリン再吸収を抑制して血清リンを低下させる作用をもつため、副甲状腺機能低下症ではPTH作用の低下により尿中リン排泄が減少し、血清無機リンが上昇する(同時に腸管・骨からのカルシウム動員も低下し低カルシウム血症を伴う)。●血清リンが上昇する病態=副甲状腺機能低下症・腎不全(排泄低下)・ビタミンD過剰・偽性副甲状腺機能低下症。●血清リンが低下する病態=原発性副甲状腺機能亢進症・ビタミンD欠乏(くる病・骨軟化症)・尿細管性アシドーシスやFanconi症候群・呼吸性アルカローシス。●リン代謝の調節因子=PTH(リン低下)・活性型ビタミンD(リン上昇)・FGF23(リン低下)が相互に作用する。
選択肢ごとの解説
- ① ビタミンD欠乏では腸管からのリン・カルシウム吸収が低下するため血清無機リンはむしろ低下し、上昇する病態ではない。
- ② 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの低下が本態でリン代謝への直接的な上昇作用はなく、血清リン上昇の原因とはならない。
- ③ 正しい。副甲状腺機能低下症ではPTH低下により腎でのリン排泄が減少し、血清無機リンが上昇する病態である。
- ④ 呼吸性アルカローシスでは解糖の亢進などで細胞内へのリン移行が進み、血清無機リンは低下するため上昇する病態ではない。
- ⑤ 尿細管性アシドーシスでは近位尿細管のリン再吸収障害でリン尿となり、血清リンは低下するため上昇する病態ではない。
第61回 午後32(臨床化学)
採血前1〜2週の血糖コントロールを反映するのはどれか。
- ①HbA1c
- ②Cペプチド
- ③空腹時血糖
- ④グリコアルブミン
- ⑤1,5-アンヒドログルシトール〈1,5-AG〉
正答: ④グリコアルブミン
ポイント
グリコアルブミンは血清アルブミンが非酵素的に糖化されたもので、アルブミンの半減期(約17〜20日)を反映し、採血前のおよそ1〜2週間という比較的短期間の血糖コントロール状態を示す指標である。HbA1cが過去1〜2か月の平均血糖を反映するのに対し、グリコアルブミンはより直近の血糖変動をとらえられる点が異なる。●血糖コントロール指標と反映期間=HbA1c(過去1〜2か月)・グリコアルブミン(約2週間)・1,5-AG(数日程度の高血糖)・空腹時血糖や随時血糖(採血時点)。●グリコアルブミンの特徴=赤血球寿命の影響を受けないため、溶血性貧血や妊娠などHbA1cが実態とずれる病態でも血糖評価に有用である。●注意点=低アルブミン血症やネフローゼ症候群、甲状腺機能異常では値が変動するため解釈に注意を要する。
選択肢ごとの解説
- ① HbA1cはヘモグロビンの糖化を反映し過去1〜2か月の平均血糖を示す指標であり、1〜2週間という反映期間とは合致しない。
- ② Cペプチドはインスリンと等モルで分泌されインスリン分泌能を示す指標であり、血糖コントロール期間を反映する指標ではない。
- ③ 空腹時血糖は採血したその時点での血糖値を示すものであり、過去1〜2週間の平均的な血糖を反映する指標ではない。
- ④ 正しい。グリコアルブミンはアルブミンの半減期を反映し、採血前およそ1〜2週間の血糖コントロールを示す指標である。
- ⑤ 1,5-AGは数日程度の直近の高血糖(尿糖排泄)を鋭敏に反映する指標であり、1〜2週間を反映する指標とは異なる。
📋 まとめの表を見る:血糖コントロール指標の比較(HbA1c・グリコアルブミン・1,5-AG)
糖尿病型の判定に用いられるのは血糖値とHbA1c(6.5%以上)で、グリコアルブミンと1,5-AGは判定基準に含まれない血糖コントロールの補助的指標である。
第61回 午後33(臨床化学)
肝臓のβ酸化が亢進すると血中で増加するのはどれか。
- ①脂肪酸
- ②ケトン体
- ③グリセロール
- ④コレステロール
- ⑤トリグリセライド
正答: ②ケトン体
ポイント
飢餓や糖質不足、コントロール不良の糖尿病などでインスリン作用が低下すると、脂肪組織からの脂肪酸動員が亢進し、肝臓で脂肪酸のβ酸化が進む。生じたアセチルCoAがTCA回路で処理しきれなくなると、肝でアセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトンといったケトン体に変換され、血中に増加してケトーシスやケトアシドーシスを生じる。ケトン体は肝で産生され、心筋や脳など肝外組織でエネルギー源として利用される。●ケトン体の3種類=アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトン。●ケトン体が増加する病態=飢餓・糖尿病性ケトアシドーシス・激しい運動・アルコール性ケトアシドーシス・極端な低糖質食。●ケトン体の検出=尿中ではニトロプルシド反応(試験紙法)で主にアセト酢酸を検出し、ケトーシスの評価に用いる。●糖新生との関係=糖質不足時はケトン体産生と糖新生がともに亢進し、エネルギー供給を補う。
選択肢ごとの解説
- ① 脂肪酸はβ酸化の基質であり消費される側であるため、β酸化亢進の結果として血中で増加するものではなく該当しない。
- ② 正しい。肝でのβ酸化亢進により生じたアセチルCoAからケトン体が産生され、血中で増加する物質である。
- ③ グリセロールは中性脂肪の分解で遊離するが、β酸化の亢進そのものによって特徴的に血中増加する物質ではない。
- ④ コレステロールはアセチルCoAから合成されるが、β酸化の亢進によって直接的に血中で増加する代表的な物質ではない。
- ⑤ トリグリセライドは脂肪の貯蔵型であり、β酸化亢進時にはむしろ分解されて脂肪酸を供給する側で増加するものではない。
第61回 午後34(臨床化学)
肝硬変で増加する血清蛋白分画はどれか。
- ①アルブミン分画
- ②α₁分画
- ③α₂分画
- ④β分画
- ⑤γ分画
正答: ⑤γ分画
ポイント
肝硬変では肝細胞の蛋白合成能の低下によりアルブミンが減少する一方、慢性的な炎症や腸管由来抗原への持続的免疫刺激によりγ-グロブリン(免疫グロブリン)が増加する。血清蛋白電気泳動ではアルブミンの減少とともにγ分画が増加し、β分画とγ分画の谷が埋まって連なるβ-γブリッジング(β-γ架橋)を呈するのが特徴で、肝硬変に比較的特異的な所見である。●血清蛋白の5分画=アルブミン・α1・α2・β・γ。●各分画の変動例=ネフローゼ症候群ではα2上昇とアルブミン低下、急性炎症ではα1・α2上昇、多発性骨髄腫ではγ分画に鋭いM蛋白ピーク(M-bow)が出現する。●無γグロブリン血症=先天性のBruton病などではγ分画がほとんど消失するのが特徴的である。●β-γブリッジングの意義=肝硬変の進行を示唆する所見として電気泳動像の評価に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① アルブミン分画は肝の蛋白合成能低下により肝硬変では減少するため、肝硬変で増加する血清蛋白分画ではない。
- ② α₁分画はα₁-アンチトリプシンなどの急性相反応物質を含むが、肝硬変で特徴的に増加する分画ではないため該当しない。
- ③ α₂分画はハプトグロビンやセルロプラスミンなどを含むが、肝硬変で特徴的に増加する分画ではないため該当しない。
- ④ β分画はトランスフェリンなどを含むが、肝硬変では単独で著明に増加するのではなくγとの架橋として連続してみえる。
- ⑤ 正しい。肝硬変では免疫グロブリンを含むγ分画が増加し、β分画と連なるβ-γブリッジングを呈する分画である。
📋 まとめの表を見る:血清蛋白電気泳動の分画と主な構成蛋白
肝硬変ではアルブミン低下とともにγ分画が増加し、β-γ bridging(β分画とγ分画の谷が埋まる所見)を呈する。ネフローゼ症候群ではアルブミン・免疫グロブリンが低下し、α2・β・プレβ分画が増加する。多発性骨髄腫などのM蛋白血症ではγ分画に鋭いピーク(M蛋白)が出現する。
第61回 午後35(臨床化学)
短期間の栄養状態の指標として用いるのはどれか。2つ選べ。
- ①アルブミン
- ②セルロプラスミン
- ③トランスサイレチン
- ④レチノール結合蛋白
- ⑤α₁-アンチトリプシン
正答: ③トランスサイレチン・④レチノール結合蛋白
ポイント
栄養状態の指標となる血清蛋白のうち、半減期の短いものほど短期間の栄養・蛋白合成状態の変動を鋭敏に反映する(rapid turnover protein, RTP)。トランスサイレチン(プレアルブミン、半減期約2日)とレチノール結合蛋白(半減期約半日)はいずれも半減期が短く、短期間の栄養状態の指標として用いられる。これに対しアルブミンは半減期が約20日と長く、長期の栄養指標となる。●rapid turnover protein(RTP)=トランスサイレチン(プレアルブミン)・レチノール結合蛋白・トランスフェリン。●栄養指標の使い分け=長期評価にはアルブミン、短期評価にはRTPを用い、半減期が短いほど直近の栄養状態をよく反映する。●RTPの注意点=急性炎症や肝障害の影響を受けるため、CRPなどと併せて栄養状態を総合的に判断する。
選択肢ごとの解説
- ① アルブミンは半減期が約20日と長く、長期の栄養状態を反映する指標であるため、短期間の栄養状態の指標には適さない。
- ② セルロプラスミンは銅を運ぶ蛋白で急性相反応物質でもあり、炎症で変動するため短期の栄養評価の標準指標とはならない。
- ③ 正しい。トランスサイレチン(プレアルブミン)は半減期が約2日と短く、短期間の栄養状態を反映する指標である。
- ④ 正しい。レチノール結合蛋白は半減期が最も短い部類であり、短期間の栄養状態を鋭敏に反映する指標として用いられる。
- ⑤ α₁-アンチトリプシンはプロテアーゼ阻害物質であり急性相反応物質でもあるため、短期の栄養状態の指標とはならない。
第61回 午後36(臨床化学)
血清クレアチニンが低下するのはどれか。
正答: ④尿崩症
ポイント
血清クレアチニンは筋肉量と腎の排泄機能に依存し、糸球体濾過量(GFR)の指標として用いられる。尿崩症は抗利尿ホルモン(ADH)の作用不全による多尿が本態で、糸球体濾過機能そのものは保たれている。多量の尿が排泄されても腎機能低下によるクレアチニンの貯留は起こらず、むしろ水分喪失への補正や尿の希釈の影響などで血清クレアチニンは低下傾向を示す。●血清クレアチニンが上昇する病態=腎不全(濾過低下)・脱水症(腎前性の濾過低下)・心不全(腎血流低下)・先端巨大症(筋肉量増加によるクレアチニン産生増加)。●血清クレアチニンが低下する要因=筋肉量減少・長期臥床・尿崩症などの多尿・妊娠(GFR増加)。●血清クレアチニンの特徴=食事や尿量の影響を受けにくく、筋肉量を反映するため腎機能評価の基本指標となる。●測定法=Jaffé法と酵素法があり、酵素法は非特異反応が少なく標準的に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 心不全では心拍出量低下により腎血流と糸球体濾過が減少し、血清クレアチニンはむしろ上昇するため該当しない。
- ② 腎不全では糸球体濾過量の低下によりクレアチニンの排泄が減少するため、血清クレアチニンは上昇し低下はしない。
- ③ 脱水症では循環血液量の減少により腎前性に糸球体濾過が低下するため、血清クレアチニンは上昇し低下はしない。
- ④ 正しい。尿崩症は糸球体濾過が保たれた多尿が本態であり、血清クレアチニンはむしろ低下傾向を示す病態である。
- ⑤ 先端巨大症では成長ホルモン過剰により筋肉量が増加し、クレアチニン産生が増えて血清クレアチニンは上昇しうる。
第61回 午後37(臨床化学)
ABO血液型の影響を受けるのはどれか。
正答: ③ALP
ポイント
ALP(アルカリホスファターゼ)には肝型・骨型・小腸型・胎盤型などのアイソザイムがあり、このうち小腸型ALPの血中量は分泌型(Se式)やABO血液型と関連する。B型・O型でかつ分泌型の人では、脂肪食後に小腸型ALPが血中に増加しやすく、その結果ALP総活性がABO血液型の影響を受ける。●ALPのアイソザイム=肝型・骨型・小腸型・胎盤型。電気泳動や熱・阻害剤に対する感受性の差で鑑別される。●ALPが高値となる病態=閉塞性黄疸(肝・胆道)・骨形成が亢進する骨疾患(骨型)・妊娠後期(胎盤型)・成長期の小児(骨型の生理的高値)。●ALP低値=低ホスファターゼ症や亜鉛欠乏、悪性貧血などで認められることがある。●小腸型ALPの特徴=食後に増加しやすく、L-フェニルアラニンで阻害される性質をもつ。アイソザイム分析は黄疸や骨疾患の鑑別に有用である。
選択肢ごとの解説
- ① CK(クレアチンキナーゼ)は骨格筋や心筋に由来する酵素でABO血液型による血中量の変動はなく、該当しない。
- ② LD(乳酸脱水素酵素)は多くの臓器に広く分布する酵素であり、ABO血液型の影響を受ける酵素ではないため該当しない。
- ③ 正しい。ALPは小腸型アイソザイムが分泌型やABO血液型と関連するため、血液型の影響を受ける酵素である。
- ④ ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は主に肝に由来する酵素であり、ABO血液型による変動を受けないため該当しない。
- ⑤ AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)は肝・心筋・筋に由来する酵素で、血液型の影響を受ける酵素ではない。
第61回 午後38(臨床化学)
日本臨床化学会〈JSCC〉の勧告法によるCK活性測定試薬に含まれないのはどれか。
- ①ADP
- ②NADP
- ③グルコース
- ④クレアチン
- ⑤N-アセチルシステイン
正答: ④クレアチン
ポイント
JSCC勧告法によるCK活性測定は、クレアチンリン酸とADPからCKがATPを生成し、生じたATPでヘキソキナーゼがグルコースをグルコース-6-リン酸に変換、これをG6PD(グルコース-6-リン酸脱水素酵素)がNADPをNADPHに還元する過程の吸光度変化を測定する共役反応系である。試薬にはADP・NADP・グルコース・N-アセチルシステイン(賦活剤)・クレアチンリン酸などが含まれる。クレアチンそのものは逆反応の基質であり、生体内方向の正反応を測るJSCC勧告法の試薬には含まれない。●CK測定の共役系に用いる酵素=ヘキソキナーゼ・G6PD。●CKのアイソザイム=CK-MM(骨格筋)・CK-MB(心筋)・CK-BB(脳)。CK-MBの上昇は急性心筋梗塞の診断指標となる。●CK高値の病態=心筋梗塞・骨格筋疾患(筋ジストロフィー・多発性筋炎)・激しい運動・甲状腺機能低下症。
選択肢ごとの解説
- ① ADPはCKがクレアチンリン酸からリン酸を受け取りATPを生成する正反応の基質であり、勧告法の試薬に含まれる。
- ② NADPは共役系のG6PD反応でNADPHに還元され、その吸光度変化が測定の指示反応となるため勧告法の試薬に含まれる。
- ③ グルコースはヘキソキナーゼの基質としてグルコース-6-リン酸の生成に用いられ、共役反応に必要で試薬に含まれる。
- ④ 誤り。クレアチンは逆反応の基質であり、生体内方向の正反応を測るJSCC勧告法のCK測定試薬には含まれない。
- ⑤ N-アセチルシステインはCKのSH基を保護する賦活剤として勧告法の試薬に添加され、活性測定に必要な成分である。
第61回 午後39(臨床化学)
全血を測定試料とするのはどれか。
- ①ジゴキシン
- ②タクロリムス
- ③テオフィリン
- ④ゲンタマイシン
- ⑤フェノバルビタール
正答: ②タクロリムス
ポイント
治療薬物モニタリング(TDM)では多くの薬物を血清や血漿で測定するが、タクロリムスやシクロスポリンなどの免疫抑制薬は赤血球内への分布が大きいため、血球を含む全血を測定試料とする。血漿分離では赤血球内に取り込まれた薬物が反映されず正しい濃度が得られないため、EDTA加全血で採取して測定する。●全血を測定試料とする薬物=タクロリムス・シクロスポリン(いずれも赤血球移行性が高い免疫抑制薬)。●血清・血漿で測定する代表的なTDM対象薬=ジゴキシン・テオフィリン・ゲンタマイシン・フェノバルビタール・バルプロ酸などで、これらは全血を必須としない。●TDMの意義=治療域が狭く個人差の大きい薬物で血中濃度を測定し、有効性確保と副作用回避に役立てる。●採血容器=免疫抑制薬はEDTA加全血、一般のTDMは血清分離が基本となる点に注意する。
選択肢ごとの解説
- ① ジゴキシンは血清を試料として測定する強心配糖体であり、赤血球内分布を考慮した全血測定を必須とする薬物ではない。
- ② 正しい。タクロリムスは赤血球内への分布が大きく正確な濃度評価に全血を要するため、全血を測定試料とする薬物である。
- ③ テオフィリンは気管支拡張薬であり血清・血漿で測定するため、全血を測定試料とする必要のある薬物ではない。
- ④ ゲンタマイシンはアミノグリコシド系抗菌薬であり血清で測定するため、全血を測定試料とする必要のある薬物ではない。
- ⑤ フェノバルビタールは抗てんかん薬であり血清・血漿で測定するため、全血を測定試料とする必要のある薬物ではない。
第61回 午後40(臨床化学)
カルシトニンが高値を示すのはどれか。
- ①乳癌
- ②肝細胞癌
- ③前立腺癌
- ④肺小細胞癌
- ⑤甲状腺髄様癌
正答: ⑤甲状腺髄様癌
ポイント
カルシトニンは甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)から分泌され、破骨細胞を抑制して血中カルシウムを低下させるホルモンである。甲状腺髄様癌はこのC細胞由来の悪性腫瘍で、カルシトニンを過剰産生するため血中カルシトニンが高値を示し、診断や術後経過観察の腫瘍マーカーとなる(CEAも併せて上昇する)。多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)に合併することもある。●腫瘍マーカーと対応腫瘍=甲状腺髄様癌=カルシトニン・CEA、肝細胞癌=AFP・PIVKA-II、前立腺癌=PSA。●他の対応=肺小細胞癌=ProGRP・NSE、卵巣癌=CA125、膵癌=CA19-9、大腸癌=CEA。●カルシトニンの生理作用=破骨細胞による骨吸収を抑制し、血中カルシウムを低下させる方向に働く。●MEN2との関連=甲状腺髄様癌は褐色細胞腫や副甲状腺機能亢進症を合併することがある。
選択肢ごとの解説
- ① 乳癌の腫瘍マーカーはCA15-3やCEAであり、カルシトニンが特徴的に高値を示す代表的な腫瘍ではないため該当しない。
- ② 肝細胞癌の腫瘍マーカーはAFPやPIVKA-IIであり、カルシトニンが特徴的に高値を示す腫瘍ではないため該当しない。
- ③ 前立腺癌の腫瘍マーカーはPSAであり、カルシトニンが特徴的に高値を示す代表的な腫瘍ではないため該当しない。
- ④ 肺小細胞癌の腫瘍マーカーはProGRPやNSEであり、カルシトニンが特徴的に高値を示す腫瘍ではないため該当しない。
- ⑤ 正しい。甲状腺髄様癌はC細胞由来でカルシトニンを過剰産生するため、血中カルシトニンが高値を示す腫瘍である。
第61回 午後41(臨床化学)
ホルモンと産生部位の組合せで誤っているのはどれか。
- ①ガストリン — 胃
- ②グルカゴン — 膵臓
- ③エストロゲン — 卵巣
- ④成長ホルモン — 下垂体前葉
- ⑤アルドステロン — 副腎髄質
正答: ⑤アルドステロン — 副腎髄質
ポイント
アルドステロンは副腎皮質の球状帯から分泌される鉱質コルチコイドで、腎遠位尿細管・集合管でのナトリウム再吸収とカリウム排泄を促進し、血圧と電解質バランスを調節する。設問では『副腎髄質』とされているが、副腎髄質はアドレナリン・ノルアドレナリンを分泌する部位であり、アルドステロンの産生部位ではないため、この組合せが誤りである。●副腎皮質のホルモン=球状帯=アルドステロン(鉱質コルチコイド)、束状帯=コルチゾール(糖質コルチコイド)、網状帯=アンドロゲン。●副腎髄質のホルモン=アドレナリン・ノルアドレナリン(カテコールアミン)。●アルドステロンの調節=レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)と血中カリウム濃度により分泌が調節される。●ホルモンの分類=ペプチド・ステロイド・アミンに大別され、産生部位と作用が対応する。
選択肢ごとの解説
- ① ガストリンは胃幽門前庭部のG細胞から分泌され胃酸分泌を促進する消化管ホルモンであり、産生部位の組合せは正しい。
- ② グルカゴンは膵ランゲルハンス島のA(α)細胞から分泌され血糖を上昇させるホルモンであり、産生部位の組合せは正しい。
- ③ エストロゲンは卵巣の顆粒膜細胞などから分泌される女性ホルモンであり、卵巣との産生部位の組合せは正しい記述である。
- ④ 成長ホルモンは下垂体前葉から分泌され成長や代謝を促すホルモンであり、下垂体前葉との産生部位の組合せは正しい。
- ⑤ 誤り。アルドステロンは副腎髄質ではなく副腎皮質の球状帯から分泌される鉱質コルチコイドであり、組合せが誤っている。
📋 まとめの表を見る:主なホルモンの産生部位と主な作用
アンジオテンシンⅡ(レニンで生じたアンジオテンシンⅠから、主にACEの作用で生成)は末梢血管平滑筋を収縮させ血圧を上昇させるとともに、副腎皮質からのアルドステロン分泌を促進する。インクレチンは小腸から分泌される消化管ホルモンの総称でインスリン分泌を促進し、抗利尿作用はもたない(バソプレシンと混同しない)。
第61回 午後42(臨床化学)
ビタミンとその化学名の組合せで誤っているのはどれか。
- ①ビタミンA — レチノール
- ②ビタミンB₂ — リボフラビン
- ③ビタミンB₁₂ — コバラミン
- ④ビタミンC — アスコルビン酸
- ⑤ビタミンE — ニコチン酸
正答: ⑤ビタミンE — ニコチン酸
ポイント
ビタミンEの化学名はトコフェロール(α-トコフェロールなど)であり、脂溶性の抗酸化ビタミンとして生体膜の脂質過酸化を防ぐ働きをもつ。設問の『ビタミンE—ニコチン酸』は誤りで、ニコチン酸(ナイアシン)はビタミンB₃の化学名にあたる。●脂溶性ビタミンの化学名=A=レチノール、D=カルシフェロール、E=トコフェロール、K=フィロキノン/メナキノン。●水溶性ビタミンの化学名=B1=チアミン、B2=リボフラビン、B6=ピリドキシン、B12=コバラミン、C=アスコルビン酸、ナイアシン=ニコチン酸/ニコチンアミド。●欠乏症の例=B1=脚気・Wernicke脳症、C=壊血病、D=くる病・骨軟化症、ナイアシン=ペラグラ。●脂溶性と水溶性=A・D・E・Kは脂溶性で過剰症をきたしうる点が水溶性ビタミンと異なる。欠乏症の把握は栄養評価に役立つ。
選択肢ごとの解説
- ① ビタミンAの化学名はレチノールであり、視覚や上皮の維持に関与する脂溶性ビタミンであるため、組合せは正しい。
- ② ビタミンB₂の化学名はリボフラビンで、FADやFMNとして酸化還元反応の補酵素になるため、組合せは正しい記述である。
- ③ ビタミンB₁₂の化学名はコバラミンで、コバルトを含み造血や神経機能に関与するため、組合せは正しい記述である。
- ④ ビタミンCの化学名はアスコルビン酸で、コラーゲン合成や抗酸化作用に関与するため、組合せは正しい記述である。
- ⑤ 誤り。ビタミンEの化学名はトコフェロールであり、ニコチン酸はナイアシン(ビタミンB₃)の化学名であるため誤っている。
📋 まとめの表を見る:ビタミンと主な欠乏症
巨赤芽球性貧血の原因はビタミンB12・葉酸のいずれの欠乏でも生じる。脚気(ビタミンB1欠乏)とペラグラ(ナイアシン欠乏)、悪性貧血(ビタミンB12欠乏)を取り違えないよう注意する。
第61回 午後43(臨床化学)
間質性肺炎の疾患マーカーはどれか。
- ①KL-6
- ②トロポニン
- ③シスタチンC
- ④エンドトキシン
- ⑤プロカルシトニン
正答: ①KL-6
ポイント
KL-6はII型肺胞上皮細胞や呼吸細気管支上皮で産生されるシアル化糖鎖抗原(糖蛋白)で、間質性肺炎で増殖・傷害された肺胞上皮から血中へ逸脱して上昇する。間質性肺炎や肺線維症の活動性評価・治療効果判定に用いられる血清マーカーである。●間質性肺炎の血清マーカー=KL-6・SP-A・SP-D(肺サーファクタント関連蛋白)。●他疾患のマーカー=トロポニン=心筋梗塞、シスタチンC=腎機能(糸球体濾過量)、プロカルシトニン=細菌感染・敗血症、エンドトキシン=グラム陰性菌感染。これらは間質性肺炎の特異的指標ではない。●間質性肺炎の評価=血清マーカーに加え、胸部CTの網状影・蜂巣肺所見や肺機能検査での拘束性換気障害を併せて判断する。●KL-6の由来=MUC1由来の糖鎖抗原で、肺胞上皮の傷害程度をよく反映する指標である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。KL-6は傷害されたII型肺胞上皮から血中へ逸脱するため、間質性肺炎の活動性を反映する疾患マーカーである。
- ② トロポニンは心筋の傷害で上昇する心筋梗塞のマーカーであり、間質性肺炎の疾患マーカーではないため該当しない。
- ③ シスタチンCは腎の糸球体濾過量を反映する腎機能マーカーであり、間質性肺炎の疾患マーカーではないため該当しない。
- ④ エンドトキシンはグラム陰性菌感染や敗血症を反映する指標であり、間質性肺炎の疾患マーカーではないため該当しない。
- ⑤ プロカルシトニンは細菌感染や敗血症で上昇するマーカーであり、間質性肺炎の疾患マーカーではないため該当しない。
第61回 午後44(臨床化学)
1分間尿量8.0 mL、尿クレアチニン濃度5.0 mg/dL、血清クレアチニン濃度0.8 mg/dLのとき、クレアチニンクリアランス〈CCr〉はどれか。ただし、体表面積補正はしないものとする。
- ①25 mL/分
- ②50 mL/分
- ③75 mL/分
- ④100 mL/分
- ⑤125 mL/分
正答: ②50 mL/分
ポイント
クレアチニンクリアランス(CCr)は、CCr=(尿中クレアチニン濃度Uc×1分間尿量V)÷血清クレアチニン濃度Pc で求められる。本問では Uc=5.0mg/dL、V=8.0mL/分、Pc=0.8mg/dL を代入すると、CCr=(5.0×8.0)÷0.8=40÷0.8=50mL/分 となる。CCrは糸球体濾過量(GFR)の近似値として腎機能評価に用いられる。●CCrの計算式=(Uc×V)÷Pc(体表面積補正を行う場合は×1.73÷体表面積を乗じる)。●腎機能の指標=CCr・eGFR(血清クレアチニンと年齢・性別から推算)・イヌリンクリアランス(GFRの基準法)。●単位の換算=1分間尿量(mL/分)は1日尿量(mL)を1440分で割って求められる点に注意する。●臨床的意義=CCrの低下は糸球体濾過量の低下を示し、腎機能障害の評価に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 25mL/分は(5.0×8.0)÷0.8の計算結果である50mL/分と一致せず、本問の数値からの計算値とは異なるため誤りである。
- ② 正しい。CCr=(5.0mg/dL×8.0mL/分)÷0.8mg/dL=50mL/分となり、本問の条件から算出される値である。
- ③ 75mL/分は本問の数値をCCrの計算式に代入して得られる結果である50mL/分と一致しないため誤りである。
- ④ 100mL/分はCCrの計算式に本問の数値を代入して得られる結果である50mL/分と一致しないため誤りである。
- ⑤ 125mL/分は健常者の標準的なCCrに近い値ではあるが、本問の数値から計算される結果ではないため誤りである。
第61回 午後45(病理組織細胞学)
脂質の生合成に関与するのはどれか。
- ①中心小体
- ②Golgi装置
- ③滑面小胞体
- ④ライソゾーム
- ⑤ミトコンドリア
正答: ③滑面小胞体
ポイント
滑面小胞体(滑面内質網)はリボソームを付着していない膜系の細胞内小器官で、脂質・ステロイド・リン脂質の生合成、肝細胞での薬物代謝、筋細胞におけるカルシウムの貯蔵(筋小胞体)などを担う。膜上に脂質合成酵素群を備え、コレステロールやステロイドホルモンの合成の場となる。●細胞内小器官の主な機能=粗面小胞体=分泌蛋白の合成、Golgi装置=糖鎖修飾と選別・分泌、ライソゾーム=加水分解酵素による細胞内消化、ミトコンドリア=酸化的リン酸化によるATP産生。●滑面小胞体が発達する細胞=肝細胞(薬物代謝)・副腎皮質や性腺のステロイド産生細胞・筋細胞。●粗面小胞体との違い=粗面小胞体はリボソームを付着し分泌・膜蛋白を合成する点で滑面小胞体と区別される。●脂質の合成部位=コレステロールやステロイドホルモンの合成は滑面小胞体で進行する。
選択肢ごとの解説
- ① 中心小体は細胞分裂時に紡錘体を形成する微小管由来の構造であり、脂質の生合成には関与しないため該当しない。
- ② Golgi装置は蛋白質の糖鎖修飾や選別・分泌に関与する小器官であり、脂質生合成を主とする場ではないため該当しない。
- ③ 正しい。滑面小胞体は脂質やステロイドの生合成、薬物代謝、カルシウム貯蔵を担う小器官であり、脂質の生合成に関与する。
- ④ ライソゾームは加水分解酵素を含み細胞内の消化を行う小器官であり、脂質の生合成には関与しないため該当しない。
- ⑤ ミトコンドリアは酸化的リン酸化によるATP産生を主たる機能とする小器官であり、脂質生合成を主とする場ではない。
第61回 午後46(病理組織細胞学)
上皮組織を有していないのはどれか。
正答: ①骨髄
ポイント
骨髄は造血を担う組織で、造血幹細胞に由来する各系統の血球・脂肪細胞・骨梁・血管洞などからなる間葉系(結合組織性)の組織であり、内表面を覆う上皮組織を持たない。一方、前立腺・鼻腔・膀胱・卵管はいずれも内腔や表面を上皮細胞で覆われている。●上皮で覆われる器官の被覆=膀胱・尿管=尿路上皮(移行上皮)、鼻腔=多列線毛上皮、卵管=単層円柱上皮(線毛細胞を含む)、前立腺=腺上皮。●上皮組織の機能=被覆・保護・分泌・吸収など。上皮は体表・管腔・腺を覆い、基底膜の上に細胞が密に配列するのが特徴である。●上皮の分類=層構造で単層・重層・多列に、細胞形態で扁平・立方・円柱に分けられ、部位により使い分けられる。●骨髄の構成=赤色骨髄は造血を行い、黄色骨髄は脂肪に置換された造血の乏しい部分である。上皮の有無は組織の由来を考えるうえで重要である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。骨髄は造血を担う間葉系の組織であり、内表面を覆う上皮組織を有していないため、上皮組織のない組織である。
- ② 前立腺は腺上皮(分泌上皮)からなる腺組織であり上皮組織を有するため、上皮組織を有していない器官には該当しない。
- ③ 鼻腔は多列線毛上皮などの上皮で内腔を覆われており上皮組織を有するため、上皮組織を有していない器官には該当しない。
- ④ 膀胱は内腔を尿路上皮(移行上皮)で覆われており上皮組織を有するため、上皮組織を有していない器官には該当しない。
- ⑤ 卵管は単層円柱上皮(線毛細胞を含む)で内腔を覆われ上皮組織を有するため、上皮組織を有していない器官には該当しない。
📋 まとめの表を見る:臓器・部位と被覆上皮の対応
内皮は血管・リンパ管、中皮は体腔(漿膜)の表面を被覆する単層扁平上皮で、局在により呼び分ける。肺胞の内面は中皮ではなく肺胞上皮(Ⅰ型・Ⅱ型肺胞上皮細胞)が覆う。
第61回 午後47(病理組織細胞学)
小児より成人に発生頻度が高い腫瘍はどれか。
正答: ②膠芽腫
ポイント
膠芽腫(glioblastoma)は神経膠細胞(グリア)由来の悪性脳腫瘍で、成人とくに中高年に好発する。一方、肝芽腫・腎芽腫(Wilms腫瘍)・髄芽腫・神経芽腫はいずれも『芽腫』と呼ばれる胎児性・未熟細胞由来の腫瘍で小児に多い。したがって小児より成人に発生頻度が高い腫瘍は膠芽腫である。●小児に好発する芽腫=神経芽腫(副腎・交感神経節)・腎芽腫(Wilms腫瘍)・肝芽腫・髄芽腫(小脳)・網膜芽細胞腫。●成人に好発する腫瘍=膠芽腫・髄膜腫・各種の癌腫(胃・肺・大腸など上皮性の悪性腫瘍)。発生年齢の分布は鑑別の手がかりとなる。●膠芽腫の特徴=脳腫瘍のなかでも悪性度が高く(WHOグレード4)、壊死や微小血管増殖を組織学的に示す。●小児腫瘍の特徴=芽腫は未分化な胎児性細胞からなり、急速に増殖するものが多い。
選択肢ごとの解説
- ① 肝芽腫は乳幼児に好発する肝の胎児性腫瘍であり、成人より小児に発生頻度が高いため、成人に多い腫瘍には該当しない。
- ② 正しい。膠芽腫はグリア由来の悪性脳腫瘍で中高年の成人に好発するため、小児より成人に発生頻度が高い腫瘍である。
- ③ 腎芽腫(Wilms腫瘍)は小児の腎に好発する胎児性腫瘍であり、成人より小児に多いため、成人に多い腫瘍には該当しない。
- ④ 髄芽腫は小児の小脳に好発する胎児性腫瘍であり、成人より小児に発生頻度が高いため、成人に多い腫瘍には該当しない。
- ⑤ 神経芽腫は乳幼児の副腎や交感神経節に好発する腫瘍であり、成人より小児に多いため、成人に多い腫瘍には該当しない。
第61回 午後48(病理組織細胞学)
大動脈弓から直接分岐する血管はどれか。2つ選べ。
- ①腕頭動脈
- ②左総頸動脈
- ③左椎骨動脈
- ④右内頸動脈
- ⑤右鎖骨下動脈
正答: ①腕頭動脈・②左総頸動脈
ポイント
大動脈弓からは通常、近位から順に①腕頭動脈②左総頸動脈③左鎖骨下動脈の3本が直接分岐する。腕頭動脈はさらに右総頸動脈と右鎖骨下動脈に分岐する。したがって大動脈弓から直接分岐するのは腕頭動脈と左総頸動脈であり、右内頸動脈・右鎖骨下動脈は腕頭動脈を介する分枝、左椎骨動脈は左鎖骨下動脈の枝である。●大動脈弓の3分枝=腕頭動脈・左総頸動脈・左鎖骨下動脈。●派生する血管の関係=右総頸動脈と右鎖骨下動脈は腕頭動脈から、椎骨動脈は左右とも鎖骨下動脈から、内頸動脈は総頸動脈から分岐する。●変異=右鎖骨下動脈が大動脈弓から直接分岐する起始異常(鎖骨下動脈起始異常)などの破格がみられることもある。●臨床的意義=大動脈弓の分枝は頭頸部・上肢への血流路であり破格の把握が重要となる。血管造影や手術の際に解剖の理解が求められる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。腕頭動脈は大動脈弓から最初に直接分岐する血管であり、その後に右総頸動脈と右鎖骨下動脈へと分かれていく。
- ② 正しい。左総頸動脈は大動脈弓から直接分岐する2本目の血管であり、頭頸部へ血液を送る重要な動脈である。
- ③ 左椎骨動脈は左鎖骨下動脈から分岐する血管であり、大動脈弓から直接分岐するものではないため該当しない。
- ④ 右内頸動脈は腕頭動脈から右総頸動脈を経て分岐する血管であり、大動脈弓から直接分岐するものではないため該当しない。
- ⑤ 右鎖骨下動脈は腕頭動脈から分岐する血管であり、大動脈弓から直接分岐するものではないため該当しないものである。
第61回 午後49(病理組織細胞学)
H-E染色標本を別に示す。組織型はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61pB049.f8b299cf80.jpg

- ①腺癌
- ②小細胞癌
- ③軟骨肉腫
- ④尿路上皮癌
- ⑤扁平上皮癌
正答: ⑤扁平上皮癌
ポイント
扁平上皮癌はH-E染色で多角形の腫瘍細胞が胞巣状に増殖し、細胞間橋(デスモソームによる結合)や角化(角化真珠、ケラチン化)を示すのが特徴である。提示標本にこれらの所見がみられることから、組織型は扁平上皮癌と判断される。肺・食道・子宮頸部・皮膚・頭頸部などに発生する。●扁平上皮癌の組織所見=細胞間橋・角化真珠・好酸性で豊富な胞体。●他の組織型の特徴=腺癌=腺腔形成や粘液産生、小細胞癌=N/C比が高い小型細胞の密な増殖、尿路上皮癌=移行上皮様の重層、軟骨肉腫=軟骨基質中の異型軟骨細胞。●扁平上皮癌の好発=喫煙との関連が強く、肺門部や食道・喉頭などに多くみられる悪性腫瘍である。●扁平上皮癌の分化度=角化の程度で高分化・低分化に分けられ、低分化ほど角化が乏しい。組織所見の把握は癌の確定診断に不可欠である。
選択肢ごとの解説
- ① 腺癌は腺腔形成や粘液産生を特徴とする組織型であり、細胞間橋や角化真珠を示す本標本の所見とは異なるため該当しない。
- ② 小細胞癌はN/C比の高い小型異型細胞が密に増殖する組織型であり、角化を示す本標本の所見とは異なるため該当しない。
- ③ 軟骨肉腫は軟骨基質中に異型軟骨細胞を認める間葉系の悪性腫瘍であり、上皮性所見を示す本標本とは異なり該当しない。
- ④ 尿路上皮癌は移行上皮様の重層構造を示す尿路の癌であり、角化や細胞間橋を主とする本標本の所見とは異なり該当しない。
- ⑤ 正しい。細胞間橋や角化真珠などの所見がみられることから、本標本の組織型は扁平上皮癌であると判断される。
📋 まとめの表を見る:肺癌の主な組織型(組織像・好発部位・頻度・予後)
扁平上皮癌・小細胞癌は喫煙との関連が強く中枢(肺門部)発生が多い。腺癌は末梢発生で頻度最多。日本の肺癌死亡者数は増加傾向。転移性肺癌は多発性結節を形成することが多い。腺癌の細胞診は粘液産生・腺腔様配列・立体的重積集塊を示す。
第61回 午後50(病理組織細胞学)
H-E染色標本を別に示す。矢印で示す細胞群から分泌されるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k61pB050.f9b48b553e.jpg

- ①アンドロゲン
- ②インスリン
- ③カルシトニン
- ④糖質コルチコイド
- ⑤副腎皮質刺激ホルモン
正答: ②インスリン
ポイント
矢印は、外分泌腺房より淡明に染まる膵ランゲルハンス島(膵島)を示す。通常のH-E染色だけで矢印の細胞群のすべてをB(β)細胞と同定することはできないが、選択肢の中で膵島から分泌されるホルモンはインスリンである。膵島のβ細胞はインスリンを分泌し、細胞へのグルコース取り込みやグリコーゲン合成を促進して血糖を低下させる。膵島には複数の内分泌細胞が混在し、それぞれ異なるホルモンを分泌する。●膵ランゲルハンス島の細胞とホルモン=A(α)細胞=グルカゴン(血糖上昇)、B(β)細胞=インスリン(血糖低下)、D(δ)細胞=ソマトスタチン、PP細胞=膵ポリペプチド。●インスリンの作用=末梢組織でのグルコース取り込み促進とグリコーゲン合成促進による血糖低下作用。●β細胞の障害=自己免疫的破壊による1型糖尿病や、分泌不全・抵抗性による2型糖尿病で血糖調節が破綻する。●膵島の分布=膵尾部に多く、外分泌部の腺房組織のなかに島状に散在して存在する。
選択肢ごとの解説
- ① アンドロゲンは精巣のLeydig細胞や副腎皮質網状帯から分泌される性ホルモンであり、膵島β細胞の分泌物ではない。
- ② 正しい。膵ランゲルハンス島のB(β)細胞から分泌されるのはインスリンであり、血糖を低下させるホルモンである。
- ③ カルシトニンは甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)から分泌されるホルモンであり、膵島β細胞から分泌される物質ではない。
- ④ 糖質コルチコイドは副腎皮質束状帯から分泌されるコルチゾールなどのホルモンであり、膵島β細胞の分泌物ではない。
- ⑤ 副腎皮質刺激ホルモンは下垂体前葉から分泌されるホルモンであり、膵島のβ細胞から分泌される物質ではない。
📋 まとめの表を見る:内分泌臓器の組織構造と分泌ホルモン
副腎は外側の被膜、皮質(球状帯・束状帯・網状帯の3層)、内側の髄質からなる。