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第62回(2016) 臨床検査技師国家試験 午前1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第62回 午前1(臨床検査総論)
特定の薬剤の効果や副作用を投与前に予測するための検査はどれか。
①緊急検査 ②負荷検査 ③診察前検査 ④コンパニオン検査 ⑤スクリーニング検査
正答: ④コンパニオン検査
ポイント コンパニオン検査(コンパニオン診断)は、特定の薬剤の効果や副作用を投与前に予測し、その薬剤が有効と見込まれる患者を選別するために行う検査である。多くは腫瘍組織の遺伝子変異や蛋白発現を調べ、分子標的薬の適応判定に用いられる。投与前にあらかじめ実施し、無効な治療や重篤な副作用を回避して個別化医療(プレシジョン・メディシン)を支える点が他の検査と区別される。代表例にHER2やEGFR遺伝子変異の検査がある。 ●実施目的による分類=コンパニオン検査(薬剤の適応・効果・副作用を予測)、スクリーニング検査(無症状集団から疾患の疑いを抽出)、診察前検査(診察前に結果を揃え当日の診療に役立てる)。 ●緊急性・負荷による分類=緊急検査(夜間休日に迅速報告し急性・重篤な病態に対応)、負荷検査(薬物や糖などを負荷し生体の反応性を評価する)。
選択肢ごとの解説
① 緊急検査は重篤・急性の病態に対応するため夜間休日でも迅速に結果を報告する検査で、薬剤効果の事前予測を目的とするものではない。 ② 負荷検査は糖やホルモンなどを負荷し生体の反応性を評価する検査で、投与前の薬剤効果予測を主目的とはしていない。 ③ 診察前検査は診察前に採血等を済ませ当日の診療に結果を活用する運用で、薬剤適応の予測を目的とする検査ではない。 ④ 正しい。コンパニオン検査は特定薬剤の効果や副作用を投与前に予測し、有効と見込まれる患者を選別するための検査で、分子標的薬の適応判定に用いられる。 ⑤ スクリーニング検査は無症状の集団から疾患の疑いがある人を抽出する検査で、個別の薬剤効果を予測するものではない。
第62回 午前2(臨床検査総論)
ISO 15189による臨床検査室の継続的な品質管理の4つのサイクルに含まれないのはどれか。
①計画(plan) ②分析・評価(check) ③対応策実施(action) ④検査実施・精度管理(do) ⑤施設間比較(comparison)
正答: ⑤施設間比較(comparison)
ポイント ISO 15189が求める継続的な品質改善は、PDCAサイクル、すなわちPlan(計画)・Do(実行=検査実施・精度管理)・Check(評価=分析と点検)・Action(改善=是正・対応策実施)の4段階を繰り返すことで達成される。各段階を循環させ検査の質を段階的に高めていく。施設間比較(外部精度評価)は測定値の妥当性を外部から確認する精度管理の一手段であり、この4サイクルそのものには含まれない。 ●PDCAの4段階=Plan(目標と手順の計画)、Do(計画に基づく検査・精度管理の実施)、Check(結果の分析・評価)、Action(問題への対応策実施と標準化)を循環させる。 ●外部精度評価=施設間比較・外部精度管理調査(サーベイ)は複数施設で同一試料を測定し測定値の妥当性を検証する手法で、PDCAのCheckを支える活動である。
選択肢ごとの解説
① 計画(plan)はPDCAサイクルの最初の段階で目標設定と手順策定を行う工程であり、4つのサイクルに含まれる。 ② 分析・評価(check)は実施した結果を点検し目標との差を評価する工程で、PDCAの4つのサイクルに含まれる。 ③ 対応策実施(action)は評価で見つかった問題に是正処置を行い改善する工程で、PDCAの4つのサイクルに含まれる。 ④ 検査実施・精度管理(do)は計画に基づき実際に検査と精度管理を行う工程で、PDCAの4つのサイクルに含まれる。 ⑤ 誤り。施設間比較(comparison)は外部精度評価の手法でありPDCAの4サイクルそのものには含まれず、Checkを支える活動に位置づけられる。
📋 まとめの表を見る:ISO 15189に基づく臨床検査室の品質管理サイクル(PDCA)
施設間比較(サーベイ)はこの4サイクルの構成要素ではなく、精度管理(Checkを支える活動)の一手段。
第62回 午前3(臨床検査総論)
検査部門の管理と運営において正しいのはどれか。
①最新機器はメンテナンスが不要である。 ②採血後の針はリキャップして廃棄するのが望ましい。 ③検査終了後の血液は感染性産業廃棄物として廃棄する。 ④外来採血時には患者名による呼び出しが義務化されている。 ⑤検査マニュアルは検査の臨床的意義についてまとめたものである。
正答: ③検査終了後の血液は感染性産業廃棄物として廃棄する。
ポイント 検査終了後の血液など患者由来の検体は感染性産業廃棄物として、バイオハザードマークの付いた専用容器で他の廃棄物と分別して廃棄する。これにより針刺し事故や病原体による感染拡大を防止する。針はリキャップ操作で誤刺を起こしやすいため、リキャップせず耐貫通性の専用容器へ直接廃棄するのが原則であり、測定精度の維持のため最新機器も定期的な保守点検と校正を要する。 ●感染性廃棄物の取扱い=血液・体液・組織や注射針などの鋭利物はバイオハザードマーク付き専用容器に分別廃棄し、針はリキャップせず廃棄する。 ●検査室運営の原則=機器は定期的なメンテナンスが必要、患者誤認防止のためフルネームと生年月日など複数項目で本人確認を行う、検査マニュアルは手技・手順や精度管理法を定めた文書である。 ●標準予防策(スタンダードプリコーション)=すべての血液・体液・分泌物を感染性とみなし、手指衛生・手袋やガウンなどの個人防護具・鋭利物の安全な廃棄を徹底して職業感染を防ぐ。
選択肢ごとの解説
① 最新機器でも測定精度維持のため定期的な保守点検と校正が必要であり、メンテナンスが不要であるとはいえない。 ② 採血後の針はリキャップ時に針刺し事故を起こしやすいため、リキャップせず専用容器へ直接廃棄するのが原則である。 ③ 正しい。検査終了後の血液は患者由来の感染性検体であり、感染性産業廃棄物として専用容器に分別して廃棄する。 ④ 外来採血時の本人確認はフルネームや生年月日など複数項目で行うのが望ましく、患者名による呼び出しが一律に義務化されているわけではない。 ⑤ 検査マニュアルは検査の手技や手順、精度管理法を定めた文書であり、臨床的意義のみをまとめたものではない。
第62回 午前4(臨床検査総論)
髄液採取時の出血で検体中に血液が混入した。赤血球補正による髄液細胞数算定の式として正しいのはどれか。ただし、1μL中の髄液実測細胞数をA、髄液赤血球数をB、末梢血赤血球数をC、末梢血白血球数をDとする。
①A−B × C/D ②A−B × D/C ③A−C × D/B ④A−C/(B × D) ⑤A−D/(B × C)
正答: ②A−B × D/C
ポイント 髄液採取時に血液が混入すると、混入血液中の白血球が髄液白血球数に上乗せされ、真の髄液細胞数より高値となる。補正では末梢血の白血球数と赤血球数の比(D/C)を求め、これに混入した髄液赤血球数Bを掛けて混入由来の白血球数を推定し、髄液の実測細胞数Aから差し引く。よって補正後の細胞数=A−B×D/Cとなり、この式が正しい。 ●補正の考え方=混入血液由来の白血球数=(髄液赤血球数B)×(末梢血白血球数D/末梢血赤血球数C)で推定し、これを実測Aから減じて真の髄液細胞数を求める。 ●脳脊髄液検査の基本=正常細胞数は5/μL以下、細胞数は変性を避けるため採取後速やかに算定する、血性髄液ではくも膜下出血と穿刺時出血(traumatic tap)の鑑別を要する。 ●細胞数算定の手技=Fuchs-Rosenthal計算盤などを用い、無色の髄液はそのまま、混濁・血性の検体は適切に希釈して算定し、混入血液があるときは本式で補正する。
選択肢ごとの解説
① A−B×C/Dは赤血球数Bに末梢血の赤血球/白血球の比を掛けており、混入白血球の推定として比が逆で誤りである。 ② 正しい。A−B×D/Cは混入した髄液赤血球数Bに末梢血の白血球/赤血球比(D/C)を掛けて混入白血球を推定し、実測Aから減じる正しい補正式である。 ③ A−C×D/Bは末梢血赤血球数Cを用いており、混入量を表す髄液赤血球数Bを使っておらず補正式として誤りである。 ④ A−C/(B×D)は単位の整合が取れず混入白血球数を表さないため、補正式として成立せず誤りである。 ⑤ A−D/(B×C)は末梢血白血球数Dを直接用いており、混入量に応じた推定になっておらず補正式として誤りである。
第62回 午前5(臨床検査総論)
尿検体を室温で6時間放置した場合の変化で誤っているのはどれか。
①pHは酸性化する。 ②比重は高値になる。 ③ブドウ糖は減少する。 ④ビリルビンは減少する。 ⑤尿沈渣中の赤血球は減少する。
正答: ①pHは酸性化する。
ポイント 尿を室温で数時間放置すると、尿素分解菌の増殖によりアンモニアが生じて尿のpHはアルカリ性に傾く。したがって酸性化するという記述は誤りである。さらに細菌増殖や水分蒸発で比重は見かけ上変化し、ブドウ糖は増殖した細菌に消費されて減少、ビリルビンは光照射と酸化で減少し、赤血球など細胞成分はアルカリ化と低浸透圧による変化で崩壊・減少する。 ●尿放置による変化=pHはアルカリ化、ブドウ糖・ケトン体・ビリルビン・ウロビリノゲンは分解・酸化で減少、細菌は増加して尿が混濁する。 ●沈渣成分の変化=赤血球・白血球・円柱はアルカリ尿や低浸透圧で崩壊し減少するため、正確な評価のため提出後はできるだけ速やかに検査する。 ●放置を避けられない場合の対応=冷蔵保存で細菌増殖と成分の変性を抑え、長時間の保存にはホルマリンなどの保存剤を加えて沈渣成分を保つ方法がある。 ●雑菌増殖の影響=亜硝酸塩が陽性化し、pH上昇とともに尿の混濁や悪臭を生じる。
選択肢ごとの解説
① 誤り。尿を放置すると尿素分解菌によりアンモニアが生じpHはアルカリ性に傾くため、酸性化するという記述は誤りである。 ② 比重は水分の蒸発や細菌の増殖の影響で見かけ上高値を示すことがあり、放置による変化として矛盾しない記述である。 ③ ブドウ糖は増殖した細菌に消費・分解されて減少するため、放置による変化として正しい記述といえる。 ④ ビリルビンは光照射と酸化によりビリベルジンへ変化し減少するため、放置による変化として正しい記述である。 ⑤ 尿沈渣中の赤血球はアルカリ尿や低浸透圧の環境で崩壊・溶血して減少するため、放置による変化として正しい。
📋 まとめの表を見る:尿検体を放置した場合の経時的変化とその理由
第62回 午前6(臨床検査総論)
輸血で感染しうるのはどれか。2つ選べ。
①Lambl鞭毛虫 ②赤痢アメーバ ③トキソプラズマ ④トリパノソーマ ⑤クリプトスポリジウム
正答: ③トキソプラズマ・④トリパノソーマ
ポイント 輸血で感染しうる原虫は、血液中(赤血球内や血漿中)に存在し保存血でも生存しうるものである。トキソプラズマとトリパノソーマ(シャーガス病・アフリカ睡眠病)はいずれも血流中に病原体が存在し、輸血による感染が報告されているため、この2つが該当する。一方、嚢子やオーシストを経口摂取して腸管に寄生する糞口感染の原虫は、血流を介さないため輸血では伝播しない。 ●輸血で感染しうる原虫=マラリア原虫・トキソプラズマ・トリパノソーマ・バベシアなど、血流中に病原体が存在し保存血でも生存しうるもの。 ●輸血で感染しない腸管寄生原虫=Lambl鞭毛虫(ランブル鞭毛虫=ジアルジア)・赤痢アメーバ・クリプトスポリジウムは経口(糞口)感染で腸管に寄生し血流を介さないため輸血では伝播しない。 ●輸血で伝播しうる他の病原体=B型・C型肝炎ウイルスやHIV、HTLV-1などのウイルス、梅毒トレポネーマ、細菌混入による敗血症があり、検査と保存管理で防止する。
選択肢ごとの解説
① Lambl鞭毛虫(ジアルジア)は嚢子の経口摂取で腸管に寄生する原虫で、糞口感染であり輸血では伝播しない。 ② 赤痢アメーバは嚢子の経口摂取で大腸に感染し赤痢やアメーバ性肝膿瘍を起こす原虫で、輸血による感染はしない。 ③ 正しい。トキソプラズマは血流中にも存在し経胎盤感染や輸血感染が起こりうる原虫で、免疫不全者で脳炎などを生じる。 ④ 正しい。トリパノソーマは血流中に存在しシャーガス病やアフリカ睡眠病を起こす原虫で、輸血による感染が報告されている。 ⑤ クリプトスポリジウムはオーシストの経口摂取で小腸に感染し水様下痢を起こす原虫で、糞口感染であり輸血では伝播しない。
第62回 午前7(臨床検査総論)
19歳の女性。5日前から1日おきの周期的な発熱を認め渡航者外来を受診した。末梢血のGiemsa染色薄層塗抹標本を別に示す。この患者が罹患した感染症はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA007.7135f54b00.jpg
①熱帯熱マラリア ②三日熱マラリア ③四日熱マラリア ④卵形マラリア ⑤サルマラリア
正答: ②三日熱マラリア
ポイント 5日前から1日おき(48時間周期)に発熱する三日熱型の経過と渡航歴から三日熱マラリアが考えられる。三日熱マラリアはPlasmodium vivaxによる感染症で、感染赤血球が腫大しSchüffner斑点(好酸性顆粒)を伴い、輪状体やアメーバ状の栄養体、肝内休眠体(hypnozoite)による再発が特徴である。Giemsa染色薄層塗抹で原虫の形態と感染赤血球の所見を確認して診断する。 ●マラリアの周期性=三日熱・卵形は48時間周期(三日熱型)、四日熱は72時間周期(四日熱型)、熱帯熱は不規則で重症化しやすく脳症などを起こす。 ●形態の特徴=三日熱・卵形は感染赤血球が腫大しSchüffner斑点を伴う、熱帯熱は輪状体が多数で複数感染やバナナ形の生殖母体を示し感染赤血球は腫大しない。 ●再発と治療の注意=三日熱・卵形マラリアは肝内休眠体(hypnozoite)を形成し治療後も再発しうるため、休眠体に作用する薬剤の併用を要する点が四日熱・熱帯熱と異なる。
選択肢ごとの解説
① 熱帯熱マラリアは発熱が不規則で重症化しやすく、感染赤血球は腫大せずバナナ形の生殖母体を示し、48時間周期の所見とは合わない。 ② 正しい。三日熱マラリアはP. vivaxにより48時間周期の発熱を呈し、感染赤血球の腫大とSchüffner斑点、肝内休眠体による再発を特徴とする。 ③ 四日熱マラリアはP. malariaeにより72時間周期の発熱を示し、帯状栄養体が特徴で、48時間周期の本症例とは合わない。 ④ 卵形マラリアも48時間周期で発熱し、感染赤血球の腫大やSchüffner斑点がみられる。図では腫大した赤血球内のアメーバ状栄養体が三日熱マラリアに合致する。頻度の低さだけで卵形を除外せず、赤血球の楕円化・辺縁の不整などの形態を比較する。 ⑤ サルマラリアはP. knowlesiによる人獣共通感染で約24時間周期と短く、本症例の1日おきの発熱とは合致しない。
📋 まとめの表を見る:マラリア原虫の種類別 形態・潜伏期・発熱間隔の比較
マラリア原虫はハマダラカに刺されてスポロゾイトが体内に侵入し、まず肝細胞内で増殖(赤外型)した後、赤血球内で輪状体→アメーバ体→分裂体と発育する(無性生殖)。
第62回 午前8(臨床検査総論)
皮膚に付着していた虫体(体長0.4 mm)の写真を別に示す。この虫が引き起こすのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA008.75dc28c58c.jpg
①疥癬 ②ライム病 ③発疹チフス ④ツツガムシ病 ⑤重症熱性血小板減少症候群
正答: ①疥癬
ポイント 体長0.4mmほどの皮膚に付着した虫体はヒゼンダニ(疥癬虫)であり、引き起こす疾患は疥癬である。ヒゼンダニの雌が角質層内に疥癬トンネルを掘って寄生・産卵し、虫体や排泄物へのアレルギー反応として夜間に増強する強い掻痒と丘疹・小水疱を生じる。皮膚の接触で人から人へ感染し、免疫低下者では多数の虫体が寄生する重症の角化型疥癬(ノルウェー疥癬)を呈する。 ●ダニ・節足動物媒介疾患=疥癬(ヒゼンダニが角質内に寄生)、ツツガムシ病(ツツガムシ=Orientia tsutsugamushi)、重症熱性血小板減少症候群(マダニ=SFTSウイルス)。 ●その他のベクター感染=ライム病(マダニが媒介するBorrelia)、発疹チフス(コロモジラミが媒介するRickettsia prowazekii)。 ●疥癬の診断と治療=皮膚の鱗屑や疥癬トンネルを採取して顕微鏡でヒゼンダニ虫体や虫卵を確認して診断し、イベルメクチンの内服やフェノトリン外用などで治療する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。体長0.4mm程度の虫体はヒゼンダニで、角質層に疥癬トンネルを掘って寄生し強い掻痒を伴う疥癬を引き起こす。 ② ライム病はマダニが媒介するBorreliaによる感染症で遊走性紅斑を呈し、原因はヒゼンダニではなくマダニである。 ③ 発疹チフスはコロモジラミが媒介するRickettsia prowazekiiによる感染症で、原因虫はヒゼンダニではない。 ④ ツツガムシ病はツツガムシ(幼虫)が媒介するOrientia tsutsugamushiによる感染症で、刺し口と発疹を呈し原因はヒゼンダニではない。 ⑤ 重症熱性血小板減少症候群はマダニが媒介するSFTSウイルスによる感染症で、原因はヒゼンダニではなくマダニである。
第62回 午前9(臨床検査総論)
DNAのシークエンス解析に用いないのはどれか。
①プライマー ②逆転写酵素 ③DNAポリメラーゼ ④デオキシヌクレオシド三リン酸 ⑤蛍光標識ジデオキシヌクレオシド三リン酸
正答: ②逆転写酵素
ポイント DNAのシークエンス解析(サンガー法)では、鋳型に結合するプライマー、伸長を行うDNAポリメラーゼ、基質となるデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、および伸長を停止させ塩基を標識する蛍光標識ジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)を用いる。逆転写酵素はRNAを鋳型にDNAを合成する酵素であり、DNAを直接読む本解析には用いない。 ●サンガー法の構成要素=プライマー・DNAポリメラーゼ・dNTP・蛍光標識ddNTP(連鎖停止反応と塩基の識別)で、生じた断片の長さの差をキャピラリー電気泳動で読む。 ●逆転写酵素の用途=RNAを鋳型にcDNAを合成する酵素で、RT-PCRやRNA発現解析の前段階に用いられ、DNAのシークエンスそのものには不要である。 ●シークエンス法の発展=サンガー法に対し次世代シークエンサー(NGS)は多数の断片を並列に解読し、ゲノム全体や多遺伝子を短時間で網羅的に解析できる。
選択肢ごとの解説
① プライマーは鋳型DNAに結合し合成の起点となるためシークエンス解析に必須で、用いないものではない。 ② 誤り。逆転写酵素はRNAを鋳型にDNAを合成する酵素であり、DNAを直接読むシークエンス解析には用いない。 ③ DNAポリメラーゼはプライマーから相補鎖を伸長する酵素でシークエンス反応に必須であり、用いないものではない。 ④ デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)は鎖伸長の基質となるためシークエンス解析に必要で、用いないものではない。 ⑤ 蛍光標識ジデオキシヌクレオシド三リン酸は鎖伸長を停止させ塩基を識別する標識を担うため必須で、用いないものではない。
第62回 午前10(臨床検査総論)
遺伝病と遺伝形式の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
①血友病 — 常染色体劣性遺伝 ②鎌状赤血球症 — 常染色体優性遺伝 ③尋常性魚鱗癬 — 伴性劣性遺伝 ④Huntington病 — 常染色体優性遺伝 ⑤フェニルケトン尿症 — 常染色体劣性遺伝
正答: ④Huntington病 — 常染色体優性遺伝・⑤フェニルケトン尿症 — 常染色体劣性遺伝
ポイント Huntington病はハンチンチン遺伝子のCAGリピート伸長による常染色体優性遺伝、フェニルケトン尿症はフェニルアラニン水酸化酵素欠損による常染色体劣性遺伝で、いずれの組合せも正しい。一方、血友病はX連鎖(伴性)劣性、尋常性魚鱗癬は常染色体優性、鎌状赤血球症は常染色体劣性であり、設問の組合せはいずれも遺伝形式が一致せず誤りである。 ●常染色体優性遺伝=Huntington病・Marfan症候群・家族性高コレステロール血症・神経線維腫症など、世代を連続して発症し男女差が少ない。 ●常染色体劣性・伴性劣性=フェニルケトン尿症や鎌状赤血球症は常染色体劣性、血友病(A・B)やX連鎖性魚鱗癬・赤緑色覚異常はX連鎖劣性で男性に多くみられる(尋常性魚鱗癬は常染色体優性で、X連鎖性魚鱗癬とは区別する)。 ●遺伝形式の特徴=常染色体優性は親から子へ約1/2で伝わり世代を連続して発症、常染色体劣性は両親が保因者で約1/4が発症、X連鎖劣性は母が保因者で男児に発症しやすい。
選択肢ごとの解説
① 血友病は第VIII・IX因子遺伝子の異常によるX連鎖(伴性)劣性遺伝で男性に多く、常染色体劣性遺伝という組合せは誤りである。 ② 鎌状赤血球症はβグロビン遺伝子の変異による常染色体劣性遺伝であり、常染色体優性遺伝という組合せは誤りである。 ③ 尋常性魚鱗癬はフィラグリン遺伝子の異常による常染色体優性遺伝であり、伴性劣性遺伝という組合せは誤りである。ステロイドスルファターゼ欠損によるX連鎖性魚鱗癬は別の疾患である。 ④ 正しい。Huntington病はハンチンチン遺伝子のCAGリピート伸長による常染色体優性遺伝で、中年以降に舞踏運動と認知障害を呈する。 ⑤ 正しい。フェニルケトン尿症はフェニルアラニン水酸化酵素欠損による常染色体劣性遺伝で、新生児マススクリーニングの対象である。
📋 まとめの表を見る:単一遺伝子病の遺伝形式による分類
常染色体顕性は一対の遺伝子の一方の変異で発症、常染色体潜性は両方の変異が必要、X連鎖潜性は疾病遺伝子をもつ男性に発症する。
第62回 午前11(臨床検査医学総論)
Fallot四徴症でみられるのはどれか。
①左室肥大 ②心房中隔欠損 ③僧帽弁狭窄 ④大動脈解離 ⑤肺動脈狭窄
正答: ⑤肺動脈狭窄
ポイント Fallot四徴症は、肺動脈狭窄(右室流出路狭窄)・心室中隔欠損・大動脈騎乗・右室肥大の4徴からなる先天性心疾患である。肺動脈狭窄により右室から肺への血流が妨げられ、心室中隔欠損を通る右左短絡が生じてチアノーゼをきたす。選択肢のうち四徴に該当するのは肺動脈狭窄である。左室肥大ではなく右室肥大が特徴で、心房中隔欠損や僧帽弁狭窄は含まれない。 ●Fallot四徴症の4徴=肺動脈狭窄・心室中隔欠損・大動脈騎乗・右室肥大で、右左短絡によるチアノーゼや蹲踞、無酸素発作を呈する。 ●鑑別すべき所見=左室肥大は大動脈弁狭窄や高血圧で生じ、心房中隔欠損や僧帽弁狭窄はそれぞれ別個の心疾患でありFallot四徴には含まれない。 ●主なチアノーゼ性先天性心疾患=Fallot四徴症・完全大血管転位・総肺静脈還流異常・三尖弁閉鎖など、右左短絡により動脈血酸素飽和度が低下するものをいう。
選択肢ごとの解説
① 左室肥大ではなく右室肥大がFallot四徴の特徴であり、左室肥大はFallot四徴症の構成要素には含まれない。 ② 心房中隔欠損は左右短絡をきたす別個の先天性心疾患であり、Fallot四徴症の4徴には含まれない。 ③ 僧帽弁狭窄はリウマチ性などで生じる弁膜症であり、Fallot四徴症の4徴の構成要素ではない。 ④ 大動脈解離は大動脈壁の中膜が裂ける急性疾患でFallot四徴症とは無関係であり、4徴には含まれない。 ⑤ 正しい。肺動脈狭窄(右室流出路狭窄)はFallot四徴症の4徴の一つで、右左短絡を生じチアノーゼの原因となる。
第62回 午前12(臨床検査医学総論)
高コレステロール血症を合併しやすい疾患はどれか。
①ACTH単独欠損症 ②亜急性甲状腺炎 ③甲状腺機能低下症 ④副甲状腺機能亢進症 ⑤Addison病
正答: ③甲状腺機能低下症
ポイント 甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンの低下により肝細胞のLDL受容体の発現が減り、血中コレステロールの異化(肝への取り込みと処理)が低下するため、高コレステロール血症(高LDL血症)を合併しやすい。あわせて粘液水腫・徐脈・寒がり・体重増加・易疲労感などの代謝低下症状を伴う。他の選択肢の疾患は通常、高コレステロール血症を特徴としない。 ●二次性脂質異常症をきたす疾患=甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群・閉塞性黄疸・Cushing症候群・糖尿病などで血中脂質が上昇する。 ●甲状腺機能低下症の検査所見=TSH高値・遊離T4低値、徐脈・体重増加・浮腫・コレステロール上昇・CK(クレアチンキナーゼ)上昇を呈する。 ●甲状腺機能亢進症との対比=Basedow病など機能亢進症では代謝亢進により頻脈・体重減少・発汗過多をきたし、コレステロールはむしろ低下する傾向を示す。
選択肢ごとの解説
① ACTH単独欠損症は副腎皮質機能の低下を主とし低血糖や低ナトリウム血症を呈するが、高コレステロール血症を特徴とはしない。 ② 亜急性甲状腺炎は一過性の甲状腺中毒症を呈する炎症性疾患で、むしろ代謝が亢進する側でありコレステロール上昇を特徴としない。 ③ 正しい。甲状腺機能低下症はLDL受容体発現の低下でコレステロール異化が減り高LDL血症を合併しやすく、徐脈や粘液水腫を伴う。 ④ 副甲状腺機能亢進症はPTH過剰による高カルシウム血症を主体とし、高コレステロール血症を特徴とはしていない。 ⑤ Addison病は原発性副腎皮質機能低下症で低血圧・色素沈着・低ナトリウム血症を呈し、高コレステロール血症を特徴としない。
第62回 午前13(臨床検査医学総論)
動脈硬化性疾患予防ガイドラインに基づく脂質異常症の診断として誤っているのはどれか。
①Friedewald式は食後のLDL-コレステロール評価に有用である。 ②HDL-コレステロール35 mg/dLは低HDL-コレステロール血症である。 ③LDL-コレステロール170 mg/dLは高LDL-コレステロール血症である。 ④食後の検体ではnon-HDL-コレステロールによる評価が有用である。 ⑤トリグリセライド180 mg/dLは高トリグリセライド血症である。
正答: ①Friedewald式は食後のLDL-コレステロール評価に有用である。
ポイント Friedewald式(LDL=総コレステロール−HDL−TG/5)は、トリグリセライド(TG)が高い食後の検体やTG400mg/dL以上では計算誤差が大きくなり適用できないため、食後のLDL評価に有用とはいえず、この記述が誤りである。食後検体では空腹時を要しないnon-HDLコレステロールによる評価が推奨される。各診断基準値の判定はいずれも正しい。 ●脂質異常症の診断基準=LDL140以上で高LDL血症、HDL40未満で低HDL血症、TG150以上(空腹時)で高TG血症、non-HDL170以上で高non-HDLコレステロール血症。 ●Friedewald式の限界=空腹時かつTG400mg/dL未満の検体で用い、食後や高TG例では適用せずnon-HDLコレステロールや直接法で評価する。 ●non-HDLコレステロール=総コレステロールからHDLを引いた値で、TGの影響を受けず食後でも算出でき、レムナントなど動脈硬化性のリポ蛋白を総合的に反映する指標である。
選択肢ごとの解説
① 誤り。Friedewald式はTGの影響で食後検体では誤差が大きく適用できないため、食後のLDL評価に有用とはいえない。 ② HDL40mg/dL未満が低HDL血症の基準であり、35mg/dLは低HDLコレステロール血症に該当するため正しい記述である。 ③ LDL140mg/dL以上が高LDL血症の基準であり、170mg/dLは高LDLコレステロール血症に該当するため正しい記述である。 ④ 食後の検体ではFriedewald式が使えないため、空腹時を要しないnon-HDLコレステロールによる評価が有用で正しい。 ⑤ TG150mg/dL以上(空腹時)が高TG血症の基準であり、180mg/dLは高トリグリセライド血症に該当するため正しい。
第62回 午前14(臨床検査医学総論)
痰の検体のGram染色所見で赤色の球菌がみられた。可能性のある細菌はどれか。
①Haemophilus influenzae ②Moraxella catarrhalis ③Pseudomonas aeruginosa ④Staphylococcus aureus ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ②Moraxella catarrhalis
ポイント Gram染色で赤色(陰性)に染まる球菌はGram陰性球菌である。選択肢のうちGram陰性球菌はMoraxella catarrhalisで、双球菌の形態をとり気道感染(肺炎・気管支炎・中耳炎)の原因となる。Streptococcus pneumoniaeやStaphylococcus aureusは紫色に染まるGram陽性球菌、Haemophilus influenzaeやPseudomonas aeruginosaは赤色に染まるが球菌ではなくGram陰性桿菌であり、いずれも該当しない。 ●Gram染色の色=陽性菌はクリスタル紫を保持して紫色、陰性菌は脱色後にサフラニンで対比染色され赤色に染まる。 ●呼吸器の主要菌の形態=Moraxella catarrhalis(陰性球菌)、肺炎球菌・黄色ブドウ球菌(陽性球菌)、インフルエンザ菌(陰性桿菌)、緑膿菌(陰性桿菌)。
選択肢ごとの解説
① Haemophilus influenzaeはGram陰性の小桿菌であり、赤色の球菌という所見とは形態が異なり該当しない。 ② 正しい。Moraxella catarrhalisはGram陰性球菌で赤色の双球菌として観察され、気道感染や中耳炎の原因となる。 ③ Pseudomonas aeruginosaはGram陰性桿菌(緑膿菌)であり、赤色の球菌という所見とは形態が合わず該当しない。 ④ Staphylococcus aureusはGram陽性球菌で紫色のブドウの房状に染まるため、赤色の球菌には該当しない。 ⑤ Streptococcus pneumoniaeはGram陽性の双球菌で紫色に染まるため、赤色の球菌という所見には該当しない。
第62回 午前15(臨床検査医学総論)
膠原病と自己抗体の組合せで正しいのはどれか。
①Sjögren症候群 — 抗Sm抗体 ②関節リウマチ(RA) — 抗DNA抗体 ③強皮症 — 抗Scl-70抗体 ④混合性結合組織病(MCTD) — 抗Jo-1抗体 ⑤全身性エリテマトーデス(SLE) — 抗RNP抗体
正答: ③強皮症 — 抗Scl-70抗体
ポイント 強皮症(全身性硬化症)では抗Scl-70抗体(抗トポイソメラーゼI抗体)が陽性となり、皮膚硬化が体幹に及ぶびまん型でみられ間質性肺疾患を合併しやすいため、この組合せは正しい。他の組合せはいずれも誤りで、抗Sm抗体と抗dsDNA抗体はSLE、抗Jo-1抗体は多発性筋炎、抗RNP抗体はMCTDに特徴的な自己抗体である。 ●疾患特異的自己抗体=SLE=抗dsDNA抗体・抗Sm抗体、強皮症=抗Scl-70抗体(びまん型)・抗セントロメア抗体(限局型)、MCTD=抗U1-RNP抗体。 ●その他の対応=Sjögren症候群=抗SS-A/SS-B抗体、多発性筋炎/皮膚筋炎=抗Jo-1抗体、関節リウマチ=リウマトイド因子・抗CCP抗体が特徴的である。 ●抗核抗体の染色型=抗dsDNA抗体は辺縁(peripheral)型、抗セントロメア抗体は散在斑紋型(discrete speckled)、抗Scl-70抗体や抗RNP抗体は斑紋型を示すなど、染色パターンが対応する抗体を示唆する。
選択肢ごとの解説
① Sjögren症候群に特徴的なのは抗SS-A/SS-B抗体であり、抗Sm抗体はSLEに特異的なため組合せは誤りである。 ② 関節リウマチに特徴的なのはリウマトイド因子や抗CCP抗体であり、抗DNA抗体はSLEに特異的なため組合せは誤りである。 ③ 正しい。強皮症では抗Scl-70抗体(抗トポイソメラーゼI抗体)が陽性となりびまん型や間質性肺疾患と関連するため、組合せは正しい。 ④ 混合性結合組織病に特徴的なのは抗U1-RNP抗体であり、抗Jo-1抗体は多発性筋炎に特異的なため組合せは誤りである。 ⑤ 全身性エリテマトーデスに特徴的なのは抗dsDNA抗体や抗Sm抗体であり、抗RNP抗体はMCTDに特徴的なため組合せは適切でない。
📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患
第62回 午前16(臨床生理学)
心周期で心室収縮期はどれか。2つ選べ。
①駆出期 ②緩速充満期 ③急速充満期 ④等容弛緩期 ⑤等容収縮期
正答: ①駆出期・⑤等容収縮期
ポイント 心室収縮期は等容収縮期と駆出期からなる。等容収縮期は房室弁・大動脈弁がともに閉じた状態で心室筋が収縮し心室内圧が急上昇する時相で、容積は変化しない。続く駆出期は心室内圧が大動脈圧を超えて大動脈弁が開き血液が拍出される時相で、いずれも心室が収縮している。一方、緩速充満期・急速充満期・等容弛緩期は心室が弛緩・充満する拡張期に属する。 ●心室収縮期=等容収縮期(全弁閉鎖のまま内圧が急上昇)と駆出期(大動脈弁が開放し血液を拍出)の2時相からなる。 ●心室拡張期=等容弛緩期(全弁閉鎖で内圧低下)・急速充満期(房室弁開放直後の急速流入)・緩速充満期(ゆるやかな流入)・心房収縮期(心房収縮による最終充満)からなる。 ●心音との対応=I音は房室弁の閉鎖(収縮期の始まり)に、II音は大動脈弁・肺動脈弁の閉鎖(収縮期の終わり)に一致し、心周期の各時相の区切りを反映する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。駆出期は大動脈弁が開放し心室から大動脈へ血液が拍出される時相であり、心室収縮期に属する。 ② 緩速充満期は房室弁開放後に心室へ血液がゆるやかに流入していく時相であり、心室収縮期ではなく拡張期に属する。 ③ 急速充満期は房室弁開放直後に血液が急速に心室へ流入する時相であり、心室収縮期ではなく拡張期に属する。 ④ 等容弛緩期は房室弁・大動脈弁が閉鎖したまま心室内圧が低下する時相であり、心室拡張期に属する。 ⑤ 正しい。等容収縮期は房室弁と大動脈弁がともに閉じたまま心室内圧が上昇する時相であり、心室収縮期に属する。
📋 まとめの表を見る:心周期の各時相(心室収縮期・拡張期)と心音の対応
収縮期はI音とII音の間、拡張期はII音と次のI音の間にあたる。心臓の歩調取りは洞房結節。分時拍出量=1回拍出量×心拍数。
第62回 午前17(臨床生理学)
心電図を別に示す。正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA017.b1d97ab391.jpg
①上室頻拍 ②心室細動 ③心房粗動 ④交流障害 ⑤呼吸による基線の動揺
正答: ③心房粗動
ポイント 心房粗動は心房内を旋回するリエントリーにより心房が規則的に約250〜350回/分で興奮する不整脈で、心電図では基線にのこぎり歯状(鋸歯状)のF波(粗動波)を連続して認め、房室伝導比(2:1や4:1など)に応じて規則的な心室応答を示す。この基線の規則的な鋸歯状波形が、他の不整脈や記録上のアーチファクトとの鑑別点となる。 ●上室性の規則的頻拍の鑑別=心房粗動(連続する鋸歯状F波)、上室頻拍(P波が不明瞭でQRS幅は狭く規則的)、心房細動(基線が不規則なf波でRR間隔も不整)。 ●心室細動・アーチファクトとの鑑別=心室細動(QRSが識別できない無秩序な波)、交流障害(50/60Hzの規則的な細かいノイズ)、呼吸性の基線動揺(ゆるやかな低周波のうねり)。 ●心房粗動の臨床=多くは規則的なRR間隔を示すが伝導比が変動すると不整となり、塞栓症予防の抗凝固やカテーテルアブレーションによる治療が行われる。
選択肢ごとの解説
① 上室頻拍はP波が不明瞭でQRS幅の狭い規則的頻拍だが、鋸歯状のF波は示さないため本所見とは合わない。 ② 心室細動はQRSが識別できない無秩序で不規則な波形を呈するため、規則的な鋸歯状波を示す本所見とは異なる。 ③ 正しい。心房粗動は心房のリエントリーにより鋸歯状のF波を認める規則的な不整脈で、房室伝導比に応じた心室応答を示す。 ④ 交流障害は電源由来の50/60Hzの規則的な細かいノイズであり、生理的な粗動波とは波形の性質が異なる。 ⑤ 呼吸による基線の動揺はゆるやかに上下する低周波のうねりであり、規則的な鋸歯状F波とは波形が異なる。
第62回 午前18(臨床生理学)
血圧測定結果を以下に示す。右側の足関節上腕血圧比(ABI)で正しいのはどれか。〔収縮期/拡張期 mmHg〕右上腕 125/80、右足関節 130/85、左上腕 130/90、左足関節 120/95
①0.92 ②0.96 ③1.00 ④1.04 ⑤1.08
正答: ③1.00
ポイント 足関節上腕血圧比(ABI)は、各側の足関節収縮期血圧を、左右のうち高い方の上腕収縮期血圧で割って求める指標である。本例では上腕の収縮期血圧は右125・左130で高い方は130mmHg、右足関節は130mmHgであるから、右側のABI=130÷130=1.00となる。ABIは下肢動脈の狭窄・閉塞を評価し末梢動脈疾患の診断に用いられる。 ●ABIの算出=足関節収縮期血圧÷(左右で高い方の上腕収縮期血圧)。基準は概ね1.00〜1.40が正常範囲とされる。 ●ABIの解釈=0.90以下は下肢閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)を疑い、1.40を超える高値は動脈の石灰化(中膜硬化)を示唆する。 ●関連指標=足趾上腕血圧比(TBI)は石灰化の影響を受けにくく、脈波伝播速度(baPWV)は動脈壁の硬さの評価に用いられ、ABIと併せて血管病変を評価する。
選択肢ごとの解説
① 0.92は左足関節120を高い方の上腕130で割った左側ABIに相当する値であり、右側ABIを問う本問の答えとしては正しくない。 ② 0.96は左足関節120を右上腕125で割るなど誤った組合せに相当する値で、右足関節130を高い方の上腕130で割る本例の計算結果とは一致しない。 ③ 正しい。右足関節130mmHgを左右で高い方の上腕130mmHgで割ると1.00となり、これが右側ABIの正しい値である。 ④ 1.04は右足関節130を低い方の右上腕125で割った値で、左右のうち高い方の上腕130を分母に用いる規則に合わない。 ⑤ 1.08は計算の分母を誤った場合の値で、左右で高い方の上腕130を用いる正しい算出の結果とは合わない。
📋 まとめの表を見る:足関節上腕血圧比〈ABI〉の基準値と判定
ABI=足関節収縮期血圧÷(左右の上腕収縮期血圧のうち高い方)。
第62回 午前19(臨床生理学)
各種ガスの体内における移動について正しいのはどれか。
①二酸化炭素の運搬に赤血球は関与しない。 ②一酸化炭素の肺拡散能は酸素と同等である。 ③酸素は主に血漿中の溶存酸素として運ばれる。 ④一酸化炭素のヘモグロビン親和性は酸素より低い。 ⑤酸素解離曲線の左方シフトは末梢組織における酸素解離を促進する。
正答: ②一酸化炭素の肺拡散能は酸素と同等である。
ポイント 一酸化炭素(CO)はガス拡散能(DLCO)の測定に用いられ、肺胞気から血液への移動がヘモグロビンとの結合によって律速される点で酸素と類似した拡散挙動を示すため、肺拡散能の指標として酸素と同等に扱える。よってこの記述が正しい。COのヘモグロビン親和性は酸素の約200倍と高く、他の選択肢はいずれも事実と異なり誤りである。 ●ガス運搬の基本=酸素の大半はヘモグロビンと結合して運ばれ溶存酸素はわずか、二酸化炭素は重炭酸イオン・カルバミノ化合物・溶存の形で運ばれ赤血球内の炭酸脱水酵素が関与する。 ●酸素解離曲線=右方シフト(pH低下・CO₂や温度や2,3-DPGの上昇)で末梢での酸素解離が促進され、左方シフトはむしろ組織への酸素放出を妨げる。 ●一酸化炭素中毒=COはヘモグロビンに強固に結合してCO-Hbを形成し酸素運搬能を奪うとともに解離曲線を左方へ移動させ、組織への酸素供給を二重に障害する。
選択肢ごとの解説
① 二酸化炭素の運搬では赤血球内の炭酸脱水酵素が重炭酸イオン生成に関与するため、赤血球が関与しないという記述は誤りである。 ② 正しい。一酸化炭素の肺拡散はヘモグロビン結合で律速され酸素と類似するため、肺拡散能(DLCO)の指標として酸素と同等に扱える。 ③ 酸素の大半はヘモグロビンと結合して運ばれ、血漿中の溶存酸素はごくわずかであるため、この記述は誤りである。 ④ 一酸化炭素のヘモグロビン親和性は酸素の約200倍と高いため、親和性が酸素より低いという記述は誤りである。 ⑤ 酸素解離曲線の左方シフトはヘモグロビンの酸素親和性を高め末梢での酸素解離を妨げるため、解離を促進するという記述は誤りである。
第62回 午前20(臨床生理学)
Gaenslerの一秒率の算出に用いるのはどれか。
①肺活量 ②努力肺活量 ③予測一秒量 ④予測肺活量 ⑤予測努力肺活量
正答: ②努力肺活量
ポイント Gaensler(ゲンスラー)の一秒率は、努力呼出によって得た一秒量(FEV1)を、同じ努力呼出で得た努力肺活量(FVC)で割って求める(FEV1/FVC)。これに対しTiffeneau(ティフノー)の一秒率はFEV1をゆっくり呼出した肺活量(VC)で割って求める。本問のGaensler法では分母に努力肺活量(FVC)を用いる。 ●一秒率の定義の違い=Gaensler=FEV1/努力肺活量(FVC)、Tiffeneau=FEV1/肺活量(VC)で、分母が異なる。 ●閉塞性換気障害の判定=一秒率70%未満が閉塞性換気障害(COPD・気管支喘息など)、%肺活量80%未満が拘束性換気障害の指標である。 ●混合性換気障害=一秒率70%未満かつ%肺活量80%未満を呈する病態で、閉塞性と拘束性の要素を併せもち、フローボリューム曲線の形状とあわせて評価する。
選択肢ごとの解説
① 肺活量(VC)はTiffeneauの一秒率の分母に用いるものであり、Gaenslerの一秒率の算出には用いない。 ② 正しい。努力肺活量(FVC)はGaenslerの一秒率の分母であり、一秒量(FEV1)を努力肺活量で割って算出する。 ③ 予測一秒量は予測値であり実測の一秒率算出には用いないため、Gaensler法の計算には使わない。 ④ 予測肺活量は%肺活量(対標準肺活量比)の算出に用いるもので、Gaenslerの一秒率の計算には用いない。 ⑤ 予測努力肺活量は予測値であるため、実測値で求めるGaenslerの一秒率の算出には用いない。
第62回 午前21(臨床生理学)
肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO₂)が正常で低酸素血症を呈するのはどれか。2つ選べ。
①シャント ②拡散障害 ③肺胞低換気 ④高地での測定 ⑤換気血流不均等分布
正答: ③肺胞低換気・④高地での測定
ポイント 肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO₂)が正常のまま低酸素血症を呈するのは、肺胞低換気と吸入気酸素分圧の低下(高地での測定)である。これらは肺胞気の酸素分圧自体が低下する病態であり、肺胞から血液へのガス交換能は保たれるためA-aDO₂は開大しない。一方、シャント・拡散障害・換気血流不均等分布ではガス交換が障害されA-aDO₂が開大する。 ●A-aDO₂が正常の低酸素血症=肺胞低換気(PaCO₂上昇を伴う)・高地など低い吸入気酸素分圧で、肺自体のガス交換障害がない。 ●A-aDO₂が開大する低酸素血症=右左シャント・拡散障害・換気血流不均等分布で、酸素投与への反応性は特にシャントで乏しい。 ●低酸素血症の機序の鑑別=肺胞低換気はPaCO₂上昇を伴い酸素投与で改善、拡散障害や換気血流不均等は酸素投与で改善するが、シャントは高濃度酸素でも改善しにくい。
選択肢ごとの解説
① シャントでは静脈血が酸素化されずに動脈側へ流れるためA-aDO₂が開大し、A-aDO₂が正常という条件には合わない。 ② 拡散障害では肺胞から血液への酸素移動が妨げられるためA-aDO₂が開大し、A-aDO₂が正常という条件には合わない。 ③ 正しい。肺胞低換気は肺胞気酸素分圧の低下で低酸素血症を生じるがガス交換能は保たれA-aDO₂は正常で、PaCO₂上昇を伴う。 ④ 正しい。高地での測定では吸入気酸素分圧が低く肺胞気酸素分圧が下がり低酸素血症となるが、ガス交換障害がなくA-aDO₂は正常である。 ⑤ 換気血流不均等分布はガス交換効率の低下によりA-aDO₂が開大するため、A-aDO₂が正常という条件には該当しない。
第62回 午前22(臨床生理学)
超音波検査において体表からの観察に用いる周波数が最も低い臓器はどれか。
正答: ②心臓
ポイント 超音波は周波数が高いほど分解能は上がるが減衰が大きく深部には届かず、低いほど分解能は劣るが深部に到達しやすい。心臓は胸壁下の深い位置にあり肋骨間の狭い窓から広い範囲を観察する必要があるため、体表アプローチでは最も低い周波数(おおむね2〜4MHz)のプローブを用いる。乳腺・前立腺・膵臓など比較的浅い臓器はより高い周波数を用いる。 ●周波数と特性=高周波数は高分解能だが浅部向き、低周波数は分解能は劣るが減衰が少なく深部到達性に優れる。 ●臓器と周波数の目安=心臓は深部で低周波(2〜4MHz)、腹部実質臓器は中間(3〜5MHz)、乳腺・甲状腺・体表血管など浅在臓器は高周波(7〜12MHz)を用いる。 ●プローブの種類=心臓には肋間からの観察に適したセクタ型、腹部にはコンベックス型、体表の浅在臓器にはリニア型を選択し、対象の深さに応じて周波数とともに使い分ける。
選択肢ごとの解説
① 乳腺は体表に近い浅在臓器であり高周波プローブを用いるため、最も低い周波数を用いる臓器ではない。 ② 正しい。心臓は胸壁下の深い位置にあり肋間から観察するため、体表からは最も低い周波数のプローブを用いる臓器である。 ③ 脾臓は腹部の中間的な深さにあり中程度の周波数を用いるため、心臓ほど低い周波数を要する臓器ではない。 ④ 膵臓は腹部の中等度の深さにあり中程度の周波数を用いるため、最も低い周波数を用いる臓器ではない。 ⑤ 前立腺は経直腸では高周波、体表からでも中等度の周波数を用いるため、心臓ほど低い周波数は要しない。
📋 まとめの表を見る:超音波検査における周波数と分解能・深達度の関係
方位分解能(横方向分解能)は電子フォーカスによるビーム集束で向上し、周波数のみでは決まらない。
第62回 午前23(臨床生理学)
病態と心臓超音波検査所見の組合せで誤っているのはどれか。
①心囊液貯留 — 心周囲の無エコー ②僧帽弁逸脱 — 僧帽弁の収縮期前方運動 ③拡張型心筋症 — 左室駆出率の低下 ④大動脈弁狭窄 — 左室流出路の流速増加 ⑤非閉塞性肥大型心筋症 — 左室の非対称性肥大
正答: ②僧帽弁逸脱 — 僧帽弁の収縮期前方運動
ポイント 僧帽弁逸脱は収縮期に僧帽弁尖が左房側へ突出する病態で、超音波では収縮期の弁尖の左房側への偏位(逸脱)としてみられ、しばしば僧帽弁閉鎖不全(逆流)を伴う。これに対し僧帽弁の収縮期前方運動(SAM)は閉塞性肥大型心筋症に特徴的な所見であり、僧帽弁逸脱の所見ではないため、この組合せは誤りである。他の組合せはいずれも正しい記述である。 ●僧帽弁逸脱の所見=収縮期に弁尖が左房側へ突出し、聴診で収縮中期クリックや収縮後期雑音、ドプラで僧帽弁逆流を認める。 ●SAM(収縮期前方運動)=閉塞性肥大型心筋症で左室流出路狭窄に伴い僧帽弁前尖が収縮期に前方へ動く所見で、僧帽弁逸脱とは別の病態である。 ●他の組合せの所見=心囊液貯留は心周囲の無エコー域、拡張型心筋症は左室拡大と駆出率低下、大動脈弁狭窄は流出路の流速増加、非閉塞性肥大型心筋症は非対称性肥大を示し、いずれも正しい。
選択肢ごとの解説
① 心囊液貯留では心臓の周囲に無エコー域(液体)が描出されるため、この所見の組合せは正しい記述である。 ② 誤り。僧帽弁の収縮期前方運動(SAM)は閉塞性肥大型心筋症の所見であり、僧帽弁逸脱の所見ではないため組合せは誤りである。 ③ 拡張型心筋症では左室がびまん性に拡大・菲薄化し左室駆出率が低下するため、この所見の組合せは正しい。 ④ 大動脈弁狭窄では狭い弁口を通る血流が加速し左室流出路の流速が増加するため、この所見の組合せは正しい。 ⑤ 非閉塞性肥大型心筋症では心室中隔優位の非対称性肥大を呈するため、この所見の組合せは正しい記述である。
📋 まとめの表を見る:心臓超音波検査:所見と病態
SAM(収縮期前方運動)は閉塞性肥大型心筋症に特徴的な所見であり、僧帽弁逸脱の所見ではない点に注意。
第62回 午前24(臨床生理学)
心窩部斜走査による上腹部の超音波像を別に示す。矢印で示すのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA024.850023686b.jpg
①左肝静脈 ②中肝静脈 ③右肝静脈 ④門脈左枝 ⑤門脈右枝
正答: ④門脈左枝
ポイント 心窩部斜走査による上腹部超音波像で、肝門部から肝内へ分岐し管壁が高エコーに描出される脈管は門脈である。問題の矢印が示すのは門脈左枝であり、門脈本幹から左方へ向かい横行部から上行枝・臍部(矢状部)を形成する。肝静脈は管壁の高エコーを伴わず、頭側で下大静脈へ流入する走行をとる点で門脈と鑑別される。 ●門脈と肝静脈の鑑別=門脈は管壁がGlisson鞘(結合組織)により高エコーに縁取られる、肝静脈は管壁が描出されにくく走行は頭側の下大静脈へ集まる。 ●門脈・肝静脈の区分=門脈は本幹から左枝・右枝に分かれ肝門から末梢へ広がり、肝静脈は右・中・左肝静脈が頭側で下大静脈へ流入する。 ●肝区域との関係=肝静脈は区域の境界を走り(Couinaud分類の区域分け)、門脈枝は各区域の中心を走るため、門脈枝と肝静脈の走行から肝区域を同定できる。
選択肢ごとの解説
① 左肝静脈は管壁の高エコーを伴わず頭側で下大静脈へ流入する脈管であり、矢印が示す門脈枝とは描出が異なる。 ② 中肝静脈は左葉と右葉前区域の境界を走り下大静脈へ流入する肝静脈であり、矢印が示す門脈枝とは異なる。 ③ 右肝静脈は右葉内を走行し頭側で下大静脈へ流入する肝静脈であり、本所見の門脈左枝とは異なる脈管である。 ④ 正しい。矢印は門脈左枝を示し、門脈本幹から左方へ分岐し管壁が高エコーに描出される脈管である。 ⑤ 門脈右枝は門脈本幹から右葉へ向かう枝であり、左方へ向かう本所見の門脈左枝とは走行が異なる。
第62回 午前25(臨床生理学)
腎囊胞の超音波所見はどれか。
①不整形 ②表面不整 ③境界不明瞭 ④内部無エコー ⑤後方エコー減弱
正答: ④内部無エコー
ポイント 腎囊胞は液体で満たされた良性の貯留性病変で、超音波では内部が均一な無エコー、辺縁が平滑で境界明瞭、後壁が明瞭で後方エコーの増強を伴い、両側に側方陰影を生じるのが典型である。よって内部無エコーが囊胞の所見として正しい。不整形・表面不整・境界不明瞭・後方エコー減弱はいずれも内部に固形成分をもつ充実性腫瘍を疑う所見であり、囊胞の所見ではない。 ●単純性嚢胞の典型像=内部無エコー・境界明瞭で平滑・後壁明瞭・後方エコー増強・側方陰影を呈し、内部に隔壁や充実部を認めない。 ●充実性病変を示唆する所見=内部エコーの存在・形状不整・表面や境界の不明瞭・後方エコー減弱(減衰)で、悪性を含む腫瘍性病変を疑い精査を要する。 ●注意を要する嚢胞性病変=隔壁の肥厚・壁の不整・内部エコーや充実部を伴う複雑性嚢胞は囊胞性腎細胞癌などの可能性があり、造影検査などで精査する。
選択肢ごとの解説
① 不整形は充実性腫瘍など腫瘍性病変を疑う所見であり、辺縁が平滑な腎囊胞の典型像とは合わない。 ② 表面不整は内部に固形成分をもつ充実性病変を示唆する所見であり、境界が平滑な腎囊胞の典型的な所見とは異なる。 ③ 境界不明瞭は浸潤性の充実性病変を疑う所見であり、境界明瞭な腎囊胞の典型的な所見とは異なる。 ④ 正しい。腎囊胞は液体で満たされた病変で内部は均一な無エコーを呈し、後方エコーの増強を伴うのが典型である。 ⑤ 後方エコー減弱は内部に固形成分をもつ充実性病変を示唆する所見で、後方エコーが増強する腎囊胞とは異なる。
第62回 午前26(臨床生理学)
頭部MRI検査による脳梗塞の診断で誤っているのはどれか。
①T1強調像で低信号を示す。 ②T2強調像で低信号を示す。 ③CTに比べ脳幹部梗塞の描出が容易である。 ④5mm程度の大きさの梗塞巣も明瞭に描出される。 ⑤拡散強調像によって急性期脳梗塞の早期診断ができる。
正答: ②T2強調像で低信号を示す。
ポイント 脳梗塞のMRI診断では、梗塞巣は組織の浮腫・水分増加を反映してT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示す。したがってT2強調像で低信号という記述は誤りである。MRIは水分子の状態を画像化するため、虚血による細胞性浮腫や血管原性浮腫で組織水分が増えるとT2強調像で高信号、T1強調像で低信号となる。MRIはCTより軟部組織コントラストに優れ、後頭蓋窩の骨アーチファクトを受けにくいため脳幹・小脳梗塞の描出に優れ、数mmの小梗塞も検出できる。とくに拡散強調像(DWI)は細胞性浮腫を発症数十分〜数時間の超急性期から高信号として捉え、CTやT2強調像より早期に病変を検出でき早期診断に最も鋭敏である。 ●脳梗塞の信号変化=T1低信号・T2高信号・FLAIR高信号・DWI高信号(急性期)・ADC低下。 ●MRIの利点=後頭蓋窩や脳幹の描出に優れ、骨アーチファクトが少なく、造影剤なしでも微小梗塞を検出でき、CTより脳梗塞の検出能が高い。
選択肢ごとの解説
① 梗塞巣は組織の水分増加・浮腫を反映し、T1強調像では周囲脳実質より低信号を示すため、この記述は正しい。 ② 誤り。梗塞巣は水分増加を反映してT2強調像では高信号を示す。低信号を示すという記述は逆であり誤っている。 ③ MRIは後頭蓋窩の骨アーチファクトを受けにくく、CTより脳幹部梗塞の描出が容易であり、この記述は正しい。 ④ MRIは空間分解能と軟部コントラストに優れ、5mm程度の小梗塞巣も明瞭に描出できるため、この記述は正しい。 ⑤ 拡散強調像は細胞性浮腫を発症早期から高信号として捉え、急性期脳梗塞の早期診断ができるため、この記述は正しい。
第62回 午前27(臨床生理学)
覚醒・睡眠脳波で瘤波がみられる時期はどれか。
正答: ②入眠期・③軽眠期
ポイント 瘤波(hump、頭蓋頂鋭波)は睡眠脳波で入眠期から軽眠期(睡眠段階1〜2)にみられる頭頂部優位の鋭い陰性電位である。入眠直後の浅い睡眠で出現し、軽眠期では睡眠紡錘波やK複合とともに観察される睡眠の指標となる。覚醒時はα波・β波が主体で瘤波は出ず、深睡眠期(段階3〜4)は高振幅徐波(δ波)が主体、レム睡眠期は低振幅・速波と急速眼球運動が特徴で瘤波はみられない。瘤波は睡眠段階を判定する際の重要な目印となる波形で、入眠期から軽眠期にかけての浅い睡眠の存在を示す所見である。 ●睡眠段階の脳波=段階1(入眠期)瘤波・低振幅化、段階2(軽眠期)睡眠紡錘波・K複合、段階3〜4(深睡眠期)高振幅δ波。 ●レム睡眠=低振幅速波・鋸歯状波・急速眼球運動・骨格筋緊張低下を伴い、覚醒時に近い脳波を示すのが特徴である。
選択肢ごとの解説
① 覚醒時はα波やβ波が主体であり、瘤波は出現しないため、瘤波がみられる時期としては該当しないものである。 ② 正しい。入眠期(睡眠段階1)には頭頂部優位の鋭い陰性電位である瘤波(hump)が出現するため該当する。 ③ 正しい。軽眠期(睡眠段階2)でも睡眠紡錘波・K複合とともに瘤波がみられる時期に含まれるため該当する。 ④ 深睡眠期は高振幅のδ波(徐波)が主体であり、瘤波はみられないため、瘤波の出現時期には該当しないものである。 ⑤ レム睡眠期は低振幅速波と急速眼球運動が特徴で瘤波は出現せず、瘤波の出現時期には該当しないものである。
📋 まとめの表を見る:睡眠段階(AASM分類)と脳波所見
睡眠ステージ1(N1)からステージ2(N2)への移行は、紡錘波の出現で判断する。旧Rechtschaffen & Kales分類のStage3・4はAASM分類でStage N3に統一された。
第62回 午前28(臨床生理学)
末梢神経の誘発筋電図で正しいのはどれか。2つ選べ。
①重症筋無力症では運動神経の伝導ブロックを呈する。 ②Guillain-Barré症候群では運動神経伝導速度が低下する。 ③反復刺激検査は筋萎縮性側索硬化症の確定診断に用いる。 ④Lambert-Eaton症候群では反復刺激で漸増現象がみられる。 ⑤感覚神経伝導検査の測定には複合筋活動電位(CMAP)を用いる。
正答: ②Guillain-Barré症候群では運動神経伝導速度が低下する。・④Lambert-Eaton症候群では反復刺激で漸増現象がみられる。
ポイント 誘発筋電図のうち末梢神経伝導検査・反復刺激検査の評価点を問う。Guillain-Barré症候群は脱髄性の末梢神経障害であり、髄鞘が障害されるため運動神経伝導速度が低下する。Lambert-Eaton症候群はシナプス前性の神経筋接合部障害で、高頻度反復刺激により活動電位の振幅が増大する漸増(waxing)現象を示す。これに対し重症筋無力症はシナプス後性の障害で、低頻度反復刺激(2〜3Hz)により漸減(waning)を示すもので伝導ブロックではない。感覚神経伝導検査では感覚神経活動電位(SNAP)を用い、複合筋活動電位(CMAP)は運動神経の評価に用いる。 ●神経筋接合部障害=重症筋無力症(後シナプス・漸減)、Lambert-Eaton症候群(前シナプス・漸増)。 ●伝導検査の指標=運動神経は複合筋活動電位(CMAP)、感覚神経は感覚神経活動電位(SNAP)を測定して評価する。
選択肢ごとの解説
① 重症筋無力症は神経筋接合部の後シナプス障害で反復刺激により漸減を示し、運動神経の伝導ブロックは呈さないため誤り。 ② 正しい。Guillain-Barré症候群は脱髄性末梢神経障害であり、運動神経伝導速度が低下する。 ③ 反復刺激検査は神経筋接合部障害の評価に用いるもので、筋萎縮性側索硬化症の確定診断には用いないため誤り。 ④ 正しい。Lambert-Eaton症候群は前シナプス障害で、高頻度反復刺激により振幅が増大する漸増現象がみられる。 ⑤ 感覚神経伝導検査では感覚神経活動電位(SNAP)を測定し、CMAPは運動神経の評価に用いるため誤り。
第62回 午前29(臨床化学)
核に含まれる酵素はどれか。
①乳酸脱水素酵素 ②DNAポリメラーゼ ③Na⁺・K⁺-ATPアーゼ ④シトクロムオキシダーゼ ⑤グルコース-6-ホスファターゼ
正答: ②DNAポリメラーゼ
ポイント DNAポリメラーゼは核内でDNA複製を担う酵素であり、核に含まれる代表的な酵素である。細胞内では細胞小器官ごとに固有の酵素が局在しており、その局在を理解することが重要である。乳酸脱水素酵素は細胞質(解糖系)に存在し、Na⁺・K⁺-ATPアーゼは細胞膜に局在して能動輸送を担うイオンポンプである。シトクロムオキシダーゼはミトコンドリア内膜の電子伝達系に存在し、グルコース-6-ホスファターゼは小胞体(とくに肝・腎)に局在して糖新生・グリコーゲン分解の最終段階を担う酵素である。 ●核内の酵素=DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼなど核酸の合成・複製に関与する酵素。 ●局在の例=細胞質(LD・解糖系酵素)、細胞膜(Na⁺・K⁺-ATPアーゼ)、ミトコンドリア(シトクロムオキシダーゼ)、小胞体(グルコース-6-ホスファターゼ)。
選択肢ごとの解説
① 乳酸脱水素酵素は細胞質に存在する解糖系の酵素であり、核に含まれる酵素ではないため該当しない。 ② 正しい。DNAポリメラーゼは核内でDNA複製を担う酵素であり、核に含まれる代表的な酵素である。 ③ Na⁺・K⁺-ATPアーゼは細胞膜に局在するイオンポンプであり、核に含まれる酵素ではないため該当しない。 ④ シトクロムオキシダーゼはミトコンドリア内膜の電子伝達系に存在する酵素であり、核には含まれないため該当しない。 ⑤ グルコース-6-ホスファターゼは小胞体に局在する酵素であり、核に含まれる酵素ではないため該当しない。
第62回 午前30(臨床化学)
測定波長が340 nmでないのはどれか。
①ウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法による尿酸の測定 ②日本臨床化学会(JSCC)勧告法によるLD活性の測定 ③ウレアーゼ・グルタミン酸脱水素酵素法による尿素窒素の測定 ④ヘキソキナーゼ・グルコース-6-リン酸脱水素酵素法によるグルコースの測定 ⑤グルコキナーゼ・グルコース-6-リン酸脱水素酵素法によるマグネシウムの測定
正答: ①ウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法による尿酸の測定
ポイント NAD(P)Hは340nm付近に特有の吸収をもつため、この波長の吸光度変化を利用する反応では測定波長に340nmを用いる。尿素窒素(GLDH法)、グルコース(HK・G6PD法)、マグネシウム(GK・G6PD法)、JSCC勧告法によるLD活性測定はいずれもNAD(P)Hの生成・消費を340nmで追跡する反応である。一方、尿酸のウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法は生成した過酸化水素を色原体で発色させ、可視部(約550nm付近)の吸光度で測定するため、340nmは用いない。 ●340nm測定=NAD(P)Hの吸収を利用する反応(脱水素酵素を共役させる尿素窒素・グルコース・マグネシウム・LDなど)。 ●可視部測定=ペルオキシダーゼによる色原体の発色を利用する反応(尿酸・中性脂肪・コレステロールなど)で500〜600nm付近を用いる。
選択肢ごとの解説
① 誤り。尿酸のウリカーゼ・ペルオキシダーゼ法は過酸化水素を色原体で発色させ可視部で測定するため、340nmは用いない。 ② JSCC勧告法のLD活性測定はNADHの吸光度変化を340nmで追跡するため、340nmを用いる測定であり該当する。 ③ ウレアーゼ・グルタミン酸脱水素酵素法はNADHの消費を340nmで測定するため、340nmを用いる測定であり該当する。 ④ ヘキソキナーゼ・G6PD法ではNADPHの生成を340nmで測定するため、340nmを用いる測定であり該当する。 ⑤ グルコキナーゼ・G6PD法によるマグネシウム測定もNADPHの生成を340nmで測定するため、340nmを用いる測定であり該当する。
第62回 午前31(臨床化学)
ポイント・オブ・ケア・テスティング(POCT)の対象とならないのはどれか。
①血糖 ②インスリン ③プロカルシトニン ④ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG) ⑤脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
正答: ②インスリン
ポイント POCT(ポイント・オブ・ケア・テスティング)は患者の近く(ベッドサイドや外来など)で迅速に結果を得て、即座に診療判断に用いる検査である。血糖・血液ガス・CRP・心筋マーカー・BNP・hCG・プロカルシトニンなど、緊急性や即時性が求められる項目が対象となり、小型の機器や試験紙を用いて簡便に測定できる。インスリンは緊急の現場判断に直結せず、専用の精密な免疫測定を要するためPOCTの対象とはならない項目で、通常は検査室の自動分析装置で測定される。 ●POCTの対象例=血糖、血液ガス・電解質、心筋トロポニン、BNP、CRP、プロカルシトニン、尿中hCG、インフルエンザ抗原など。 ●POCTの特徴=小型機器や試験紙で迅速・簡便に測定し、検体搬送を要さず治療方針の即時決定に役立て、検査の利便性を高める。
選択肢ごとの解説
① 血糖は簡易血糖測定器でベッドサイドで迅速測定でき、POCTの代表的な対象項目であるため該当しない。 ② 誤り。インスリンは緊急の現場判断に直結せず精密な免疫測定を要するため、POCTの対象とはならない項目である。 ③ プロカルシトニンは敗血症の指標として迅速測定の需要があり、POCT機器で測定可能なため対象となる項目である。 ④ hCGは妊娠判定として尿で迅速に測定でき、POCTの対象となる項目であるため対象とならないものには該当しない。 ⑤ BNPは心不全の評価で迅速測定の需要があり、POCT機器で測定可能なため対象となる項目であり該当しない。
📋 まとめの表を見る:POCT(ポイント・オブ・ケア検査)の対象項目
POCTは患者の近くで迅速に結果を得て、即座に診療判断に用いる検査である。
第62回 午前32(臨床化学)
2価鉄(Fe2⁺)を含有するのはどれか。
①ヘム ②フェリチン ③ヘモジデリン ④トランスフェリン ⑤プロトポルフィリンⅨ
正答: ①ヘム
ポイント ヘムはプロトポルフィリンⅨの中心に2価鉄(Fe2⁺)が配位した錯体で、ヘモグロビンやミオグロビン、シトクロムの構成成分として酸素結合や電子伝達を担う重要な分子である。酸素を可逆的に結合できるのは鉄が2価の状態にあるためで、酸化されて3価になると酸素運搬能を失う。フェリチンとヘモジデリンは3価鉄(Fe3⁺)を含む貯蔵鉄の形態であり、トランスフェリンも3価鉄を結合して血中を運搬する。プロトポルフィリンⅨは鉄をまだ取り込んでいないポルフィリン環で、ここにFe2⁺が挿入されてヘムが完成する。 ●2価鉄(Fe2⁺)=ヘム(酸素結合に必要)で、フェロケラターゼによりプロトポルフィリンⅨへ鉄が挿入される。 ●3価鉄(Fe3⁺)=トランスフェリン(運搬)、フェリチン・ヘモジデリン(貯蔵)。鉄は酸化状態によって機能が大きく異なる。
選択肢ごとの解説
① 正しい。ヘムはプロトポルフィリンⅨに2価鉄(Fe2⁺)が配位した錯体で、酸素結合や電子伝達を担う。 ② フェリチンは3価鉄(Fe3⁺)を内部に貯蔵する蛋白であり、2価鉄を含有するわけではないため該当しない。 ③ ヘモジデリンはフェリチン由来の不溶性の貯蔵鉄で3価鉄を含むため、2価鉄を含有するものには該当しない。 ④ トランスフェリンは3価鉄(Fe3⁺)を結合して血中を運搬する蛋白であり、2価鉄を含有しないため該当しない。 ⑤ プロトポルフィリンⅨは鉄を取り込む前のポルフィリン環で、Fe2⁺が挿入されてヘムとなるため、それ自体は鉄を含まない。
第62回 午前33(臨床化学)
単糖類はどれか。
①スクロース ②マルトース ③ラクトース ④アカルボース ⑤フルクトース
正答: ⑤フルクトース
ポイント フルクトース(果糖)はそれ以上加水分解されない単糖類で、グルコース・ガラクトースと同じ六炭糖である。糖は加水分解によって生じる単糖の数で分類され、単糖類はそれ以上分解できない最小単位の糖を指す。スクロース(ショ糖)はグルコースとフルクトース、マルトース(麦芽糖)はグルコース2分子、ラクトース(乳糖)はグルコースとガラクトースが結合した二糖類である。アカルボースはα-グルコシダーゼ阻害薬として用いられる擬似オリゴ糖であり、複数の糖が結合した構造をもつため単糖類には分類されない。 ●単糖類=グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、デオキシリボースなど加水分解できない最小単位の糖。 ●二糖類=スクロース(グルコース+フルクトース)、マルトース(グルコース+グルコース)、ラクトース(グルコース+ガラクトース)など。
選択肢ごとの解説
① スクロース(ショ糖)はグルコースとフルクトースが結合した二糖類であり、単糖類ではないため該当しない。 ② マルトース(麦芽糖)はグルコース2分子が結合した二糖類であり、単糖類ではないため該当しないものである。 ③ ラクトース(乳糖)はグルコースとガラクトースが結合した二糖類であり、単糖類ではないため該当しない。 ④ アカルボースはα-グルコシダーゼ阻害薬として用いられる擬似オリゴ糖であり、単糖類ではないため該当しない。 ⑤ 正しい。フルクトース(果糖)はそれ以上加水分解されない六炭糖の単糖類であり、単糖類に該当する。
第62回 午前34(臨床化学)
糖代謝において糖新生のみに関与するのはどれか。
①ピルビン酸 ②オキサロ酢酸 ③3-ホスホグリセリン酸 ④フルクトース-6-リン酸 ⑤グリセルアルデヒド-3-リン酸
正答: ②オキサロ酢酸
ポイント オキサロ酢酸は糖新生に特異的に関与する中間体である。糖新生では解糖系の不可逆段階を迂回する必要があり、ピルビン酸がミトコンドリア内でピルビン酸カルボキシラーゼによりオキサロ酢酸へ変換され、続いてPEPカルボキシキナーゼによりホスホエノールピルビン酸へ進む経路をとる。これに対しピルビン酸・3-ホスホグリセリン酸・フルクトース-6-リン酸・グリセルアルデヒド-3-リン酸は、解糖系と糖新生の両方に共通して現れる中間体であり、糖新生のみに関与するわけではない。 ●糖新生の迂回反応=ピルビン酸→オキサロ酢酸(ピルビン酸カルボキシラーゼ)→ホスホエノールピルビン酸(PEPカルボキシキナーゼ)。 ●解糖・糖新生に共通する中間体=グルコース-6-リン酸、フルクトース-6-リン酸、3-ホスホグリセリン酸、ピルビン酸など。
選択肢ごとの解説
① ピルビン酸は解糖系の最終産物であり糖新生の出発物質でもある共通の中間体で、糖新生のみに関与するわけではない。 ② 正しい。オキサロ酢酸はピルビン酸からホスホエノールピルビン酸への迂回反応に現れ、糖新生に特異的に関与する。 ③ 3-ホスホグリセリン酸は解糖系と糖新生の両方に共通する中間体であり、糖新生のみに関与するわけではない。 ④ フルクトース-6-リン酸は解糖系と糖新生に共通する中間体であり、糖新生のみに関与するわけではない。 ⑤ グリセルアルデヒド-3-リン酸は解糖系と糖新生に共通する三炭糖の中間体であり、糖新生のみではないため該当しない。
第62回 午前35(臨床化学)
リン脂質の含有比が最も高い血清リポ蛋白はどれか。
①カイロミクロン ②VLDL ③IDL ④LDL ⑤HDL
正答: ⑤HDL
ポイント HDL(高比重リポ蛋白)は血清リポ蛋白の中で粒子が最も小さく、表面を覆う両親媒性のリン脂質とアポ蛋白の割合が高いため、リン脂質含有比が最も高い。リポ蛋白は内部の疎水性脂質(トリグリセリド・コレステロールエステル)を表面のリン脂質・遊離コレステロール・アポ蛋白が包む構造をとる。カイロミクロンとVLDLはトリグリセリド(中性脂肪)に富み、LDLはコレステロールに富む。粒子が小さく比重が大きいほど表面積の割合が増え、表面成分であるリン脂質・蛋白の比率が高くなる。 ●リポ蛋白の主成分=カイロミクロン・VLDLはトリグリセリド、LDLはコレステロール、HDLはリン脂質・蛋白に富む。 ●比重と組成=粒子が大きいほど(カイロミクロン)脂質に富み比重が小さく、小さいほど(HDL)蛋白・リン脂質の割合が高く比重が大きい。
選択肢ごとの解説
① カイロミクロンはトリグリセリド(中性脂肪)に最も富む最大のリポ蛋白で、リン脂質含有比が最も高いわけではない。 ② VLDLは肝で合成されトリグリセリドに富むリポ蛋白で、リン脂質含有比が最も高いわけではないため該当しない。 ③ IDLはVLDLとLDLの中間の比重をもつリポ蛋白で、リン脂質含有比が最も高いわけではないため該当しない。 ④ LDLはコレステロールに最も富むリポ蛋白で、リン脂質含有比が最も高いわけではないため該当しない。 ⑤ 正しい。HDLは粒子が最も小さく表面成分の割合が高いため、リン脂質含有比が最も高い血清リポ蛋白である。
第62回 午前36(臨床化学)
血中半減期が最も短いのはどれか。
①CRP ②アルブミン ③ハプトグロビン ④セルロプラスミン ⑤トランスフェリン
正答: ①CRP
ポイント CRP(C反応性蛋白)は代表的な急性相反応物質で、炎症や組織傷害の刺激後数時間で増加し、血中半減期が約19時間と本問の選択肢の中で最も短いため、炎症の動態をよく反映する。半減期が短い蛋白ほど血中濃度が病態の変化を鋭敏に反映するため、CRPは炎症のモニタリングに有用である。アルブミンの半減期は約17〜20日、ハプトグロビン・セルロプラスミン・トランスフェリンはいずれも数日〜10日程度で、CRPに比べてはるかに長く、急性の病態変化を鋭敏には反映しない。このため炎症の経過観察では半減期の短いCRPが指標として有用である。 ●急性相反応物質=CRP・血清アミロイドA・ハプトグロビン・フィブリノゲン・補体などが炎症時に増加する。 ●血漿蛋白の半減期=CRPは約19時間と最短、トランスフェリンは約7〜10日、アルブミンは約17〜20日と長い。
選択肢ごとの解説
① 正しい。CRPは急性相反応物質で血中半減期が約19時間と選択肢の中で最も短く、炎症の動態を鋭敏に反映する。 ② アルブミンの血中半減期は約17〜20日と長く、半減期が最も短いものには該当しないため誤りである。 ③ ハプトグロビンは急性相反応物質だが半減期は数日程度であり、CRPより長いため最も短いものには該当しない。 ④ セルロプラスミンの半減期は数日程度であり、CRPより長いため最も短いものには該当しないものである。 ⑤ トランスフェリンの半減期は約7〜10日であり、CRPより長いため最も短いものには該当しない。
第62回 午前37(臨床化学)
クレアチン・クレアチニンについて正しいのはどれか。
①クレアチンは環状化合物である。 ②クレアチンは活性メチレン基をもつ。 ③クレアチンが脱水してクレアチニンとなる。 ④クレアチニナーゼはクレアチンを加水分解する。 ⑤クレアチニンの酵素的測定法ではアスコルビン酸の共存で正誤差となる。
正答: ③クレアチンが脱水してクレアチニンとなる。
ポイント クレアチンは筋肉のエネルギー貯蔵に関わる物質で、リン酸化されたクレアチンリン酸が非酵素的に脱水・環化してクレアチニンとなり、尿中に排泄される。したがって「クレアチンが脱水してクレアチニンとなる」が正しい記述である。クレアチニンが環状(内部アミド環)構造をもつのに対しクレアチンは非環状であり、クレアチニナーゼ(クレアチニンアミドヒドロラーゼ)はクレアチニンを加水分解してクレアチンを生成する酵素であり、クレアチンを加水分解してザルコシンと尿素を生じるのはクレアチナーゼ(クレアチンアミジノヒドロラーゼ)である。クレアチニンの酵素的測定法ではアスコルビン酸の共存により負誤差をきたす。 ●クレアチン代謝=クレアチン→クレアチンリン酸(筋エネルギー)→脱水・環化してクレアチニン→尿中へ排泄される。 ●クレアチニン測定=Jaffé法はアルカリ性ピクリン酸で発色、酵素法ではアスコルビン酸・ビリルビンが負誤差要因となる。
選択肢ごとの解説
① クレアチンは非環状の構造をもち、環状構造をとるのはクレアチニンであるため、この記述は誤りである。 ② 活性メチレン基をもつのはクレアチニンであり、クレアチンの構造の説明としては正しくないため誤り。 ③ 正しい。クレアチン(クレアチンリン酸)が脱水・環化してクレアチニンとなり尿中に排泄される。 ④ クレアチニナーゼはクレアチニンを加水分解してクレアチンを生成する酵素であり、クレアチンを加水分解するのはクレアチナーゼであるため誤り。 ⑤ クレアチニンの酵素的測定法ではアスコルビン酸の共存で負誤差となるため、正誤差とする記述は誤り。
第62回 午前38(臨床化学)
日本臨床化学会(JSCC)勧告法による酵素活性測定で吸光度の減少を測定するのはどれか。2つ選べ。
正答: ④ALT・⑤AST
ポイント JSCC勧告法ではNAD(P)Hの340nm吸光度変化を利用して酵素活性を測定する。ALT・ASTはアミノ基転移により生じた産物を脱水素酵素と共役させる反応系をとり、その過程でNADHが酸化されて減少するため、吸光度の減少を測定する。一方CKの勧告法は共役反応でNADPHを生成し、LDの勧告法は乳酸からピルビン酸への反応で直接NADHを生成するため、いずれも吸光度は増加する。ALPはp-ニトロフェニルリン酸の加水分解で生じるp-ニトロフェノールの可視部吸光度の増加を測定する。指示反応の方向によって吸光度の増減が決まる。 ●吸光度減少(NADH消費)=AST・ALT(リンゴ酸脱水素酵素・乳酸脱水素酵素を共役指示酵素に用いる)。 ●吸光度増加=CK(NADPH生成)、LD(NADH生成)、ALP(p-ニトロフェノールの発色)。指示反応の方向で増減が決まる。
選択肢ごとの解説
① CKの勧告法では共役反応でNADPHが生成し吸光度は増加するため、吸光度の減少を測定するものには該当しない。 ② LDの勧告法(L→P)ではNADHが生成し吸光度は増加するため、吸光度の減少を測定するものには該当しない。 ③ ALPはp-ニトロフェノールの生成による可視部吸光度の増加を測定するため、吸光度の減少を測定するものには該当しない。 ④ 正しい。ALTは共役反応でNADHが酸化・消費されるため、340nmの吸光度の減少を測定する酵素である。 ⑤ 正しい。ASTは共役反応でNADHが酸化・消費されるため、340nmの吸光度の減少を測定する酵素である。
第62回 午前39(臨床化学)
EDTA加血漿で測定すると、血清に比べて活性が大きく低下するのはどれか。
正答: ③ALP
ポイント ALP(アルカリホスファターゼ)は活性の発現にマグネシウムや亜鉛などの金属イオンを必要とする金属酵素である。EDTAはこれらの金属イオンをキレートして除去する作用をもつため、EDTA加血漿で測定するとALP活性が著しく低下する。これに対しLD・AST・ALT・γ-GTは金属イオンを補因子として必須とはしないため、EDTAによる活性低下は大きくない。このように抗凝固剤が酵素活性に影響するため、酵素活性測定には一般に抗凝固剤を含まない血清の使用が推奨され、ALPでは検体の種類が測定値に大きく影響する。 ●金属を要する酵素=ALP(Mg・Zn)はEDTA・クエン酸・シュウ酸などのキレート剤で活性が低下する。 ●抗凝固剤の影響=EDTA・クエン酸はカルシウム・金属をキレートし、ALPやアミラーゼなど金属依存酵素の測定に影響する。
選択肢ごとの解説
① LDはマグネシウムなどの金属イオンを必須としないため、EDTA加血漿でも活性が大きく低下することはなく該当しない。 ② ASTは金属イオンを補因子として必須とせず、EDTA加血漿で活性が大きく低下することはないため該当しない。 ③ 正しい。ALPは活性にマグネシウム・亜鉛を要し、EDTAがこれらをキレートするため活性が大きく低下する。 ④ ALTは金属イオンを必須としないため、EDTA加血漿でも活性が大きく低下することはなく該当しない。 ⑤ γ-GTは金属イオンを補因子として必須とせず、EDTA加血漿で活性が大きく低下することはないため該当しない。
第62回 午前40(臨床化学)
血中薬物モニタリング(TDM)の対象となる条件として正しいのはどれか。
①有効血中濃度域が広い。 ②体内動態に個人差が大きい。 ③投与量と血中濃度が比例する。 ④血中濃度と薬効の発現に相関がない。 ⑤血中濃度に依存せず重篤な副作用が出現する。
正答: ②体内動態に個人差が大きい。
ポイント TDM(血中薬物モニタリング)は、有効血中濃度域(治療域)が狭く、わずかな濃度差で効果不足や中毒を生じる薬物、体内動態に個人差が大きく適正濃度の予測が難しい薬物、血中濃度と薬効・毒性がよく相関する薬物を対象として行う。したがって「体内動態に個人差が大きい」が正しい条件である。有効域が広く濃度管理の必要性が低い薬物や、血中濃度と薬効に相関のない薬物、投与量と血中濃度が比例して予測しやすい薬物はTDMの対象とならない。これらの条件を満たす薬物について血中濃度を測定し、投与量を適正化する。 ●TDM対象薬の条件=治療域が狭い、個人差が大きい、血中濃度と効果・毒性が相関する、有効性・安全性の指標が乏しい。 ●代表的TDM薬=ジゴキシン、テオフィリン、アミノグリコシド系・バンコマイシン、抗てんかん薬、免疫抑制薬など。
選択肢ごとの解説
① 有効血中濃度域が広い薬物は濃度管理の必要性が低くTDMの対象になりにくいため、この記述は正しくない。 ② 正しい。体内動態に個人差が大きい薬物は適正濃度の予測が難しいため、TDMの対象となる条件である。 ③ 投与量と血中濃度が比例し予測しやすい薬物はTDMの必要性が低いため、TDMの条件としては正しくない。 ④ 血中濃度と薬効に相関がない薬物は血中濃度を測っても治療調整に役立たず、TDMの対象とならないため誤り。 ⑤ 血中濃度に依存せず副作用が出る薬物は濃度管理で回避できず、TDMの条件としては正しくないため誤り。
第62回 午前41(臨床化学)
心臓から分泌されるホルモンはどれか。
①グレリン ②レプチン ③ガストリン ④バソプレッシン ⑤脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
正答: ⑤脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
ポイント 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は主に心室の心筋細胞から、容量負荷や心室壁の伸展に応じて分泌されるホルモンで、利尿・血管拡張・ナトリウム排泄促進などの作用により心臓への負荷を軽減する。血中濃度が心負荷を反映するため、心不全の診断・重症度評価の指標として臨床で広く用いられる。グレリンは胃、レプチンは脂肪組織、ガストリンは胃幽門部、バソプレッシンは視床下部(下垂体後葉から分泌)に由来するホルモンであり、いずれも産生部位が心臓ではないため該当しない。心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)とBNPがともに心臓由来である点を区別することが重要である。 ●心臓由来のホルモン=心房から心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、心室からBNPが分泌される。 ●ナトリウム利尿ペプチドの作用=利尿・血管拡張・ナトリウム排泄促進・レニン-アンジオテンシン系抑制により循環血液量と血圧を調節する。
選択肢ごとの解説
① グレリンは主に胃から分泌され食欲を亢進させるホルモンであり、心臓から分泌されるものではないため該当しない。 ② レプチンは脂肪組織から分泌され食欲を抑制するホルモンであり、心臓から分泌されるものではないため該当しない。 ③ ガストリンは胃幽門部から分泌され胃酸分泌を促すホルモンであり、心臓から分泌されるものではないため該当しない。 ④ バソプレッシンは視床下部で産生され下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンで、心臓由来ではないため該当しない。 ⑤ 正しい。BNPは主に心室の心筋細胞から壁の伸展に応じて分泌されるホルモンで、心負荷を反映する。
第62回 午前42(臨床化学)
病態と血中濃度が低下するホルモンの組合せで正しいのはどれか。
①尿崩症 — レニン ②橋本病 — カルシトニン ③Addison病 — ACTH ④Basedow病 — TSH ⑤Cushing症候群 — コルチゾール
正答: ④Basedow病 — TSH
ポイント Basedow病(バセドウ病)は甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体(TRAb)が甲状腺を持続的に刺激し、甲状腺ホルモンが過剰となる原発性甲状腺機能亢進症である。末梢の甲状腺ホルモンが過剰になるとネガティブフィードバックが働き、上位のTSH(甲状腺刺激ホルモン)が低下する。よって「Basedow病—TSH低下」が正しい組合せである。尿崩症ではレニンは特異的に低下せず、橋本病でカルシトニンは特異的に低下せず、Addison病ではACTHは上昇、Cushing症候群ではコルチゾールは上昇する。 ●ネガティブフィードバック=末梢ホルモン過剰時は上位の刺激ホルモンが低下(甲状腺ホルモン過剰でTSH低下)。 ●代表的内分泌疾患=Basedow病(甲状腺ホルモン高値・TSH低値)、Addison病(コルチゾール低値・ACTH高値)、Cushing症候群(コルチゾール高値)。
選択肢ごとの解説
① 尿崩症は抗利尿ホルモンの作用不足による多尿で、レニンが特異的に低下する病態ではないため組合せは正しくない。 ② 橋本病は慢性甲状腺炎による甲状腺機能低下症で、カルシトニンが特異的に低下するわけではないため正しくない。 ③ Addison病は原発性副腎皮質機能低下症でコルチゾールが低下しACTHは上昇するため、低下の組合せとして正しくない。 ④ 正しい。Basedow病は甲状腺ホルモン過剰によりネガティブフィードバックでTSHが低下する。 ⑤ Cushing症候群はコルチゾールが過剰となる病態であり、コルチゾールが低下するという組合せは正しくない。
📋 まとめの表を見る:疾患と血中ホルモン濃度の変化
橋本病でカルシトニンは特異的に変化しない。カルシトニン上昇は甲状腺髄様癌でみられる。
第62回 午前43(臨床化学)
ビタミンと欠乏により生じる病態の組合せで正しいのはどれか。
①ビタミンA — 結膜乾燥症 ②ビタミンB₁ — 悪性貧血 ③ビタミンC — 血液凝固障害 ④ビタミンD — 脚気 ⑤ビタミンK — 骨軟化症
正答: ①ビタミンA — 結膜乾燥症
ポイント ビタミンAは視覚色素ロドプシンの構成成分であり上皮の維持にも関わるため、欠乏すると夜盲症や眼球結膜・角膜の乾燥(結膜乾燥症、ビトー斑、角膜軟化症)を生じる。よって「ビタミンA—結膜乾燥症」が正しい組合せである。悪性貧血は内因子欠乏によるビタミンB₁₂の吸収障害で起こり、血液凝固障害はビタミンKの欠乏、脚気はビタミンB₁の欠乏、骨軟化症はビタミンDの欠乏で生じる。ビタミンCの欠乏ではコラーゲン合成障害により壊血病が起こる。各ビタミンと欠乏症の対応を正しく把握することが重要である。 ●脂溶性ビタミン欠乏=A(夜盲症・結膜乾燥症)、D(くる病・骨軟化症)、E(溶血・神経障害)、K(出血傾向)。 ●水溶性ビタミン欠乏=B1(脚気・Wernicke脳症)、B12・葉酸(巨赤芽球性貧血)、C(壊血病)、ナイアシン(ペラグラ)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。ビタミンAの欠乏では夜盲症や結膜乾燥症・角膜軟化症などの眼症状を生じるため正しい組合せである。 ② 悪性貧血は内因子欠乏によるビタミンB₁₂の吸収障害で起こる。ビタミンB₁欠乏で生じるのは脚気やWernicke脳症であり、この組合せは誤りである。 ③ 血液凝固障害はビタミンKの欠乏で生じるもので、ビタミンC欠乏は壊血病を起こすため組合せは正しくない。 ④ 脚気はビタミンB₁の欠乏で生じるもので、ビタミンD欠乏はくる病・骨軟化症を起こすため組合せは正しくない。 ⑤ 骨軟化症はビタミンDの欠乏で生じるもので、ビタミンK欠乏は出血傾向を起こすため組合せは正しくない。
📋 まとめの表を見る:ビタミンと主な欠乏症
巨赤芽球性貧血の原因はビタミンB12・葉酸のいずれの欠乏でも生じる。脚気(ビタミンB1欠乏)とペラグラ(ナイアシン欠乏)、悪性貧血(ビタミンB12欠乏)を取り違えないよう注意する。
第62回 午前44(臨床化学)
インスリン負荷試験で増加するのはどれか。
正答: ②GH
ポイント インスリン負荷試験ではインスリンを投与して低血糖を誘発し、これに対する下垂体・副腎系のホルモン反応を評価する。低血糖は強いストレス刺激となり、血糖を上昇させる方向に働く成長ホルモン(GH)とACTH(およびコルチゾール)の分泌を促すため、GHが増加する。一方、LH・FSH・TSH・プロラクチンは低血糖に対して特異的に増加する反応を示さないため、増加するものには該当しない。本試験は下垂体前葉のGH分泌予備能やACTH-副腎系の機能評価に用いられる。 ●低血糖で増加するホルモン=成長ホルモン(GH)、ACTH・コルチゾール、グルカゴン、アドレナリンなど血糖を上げる方向のホルモン。 ●インスリン負荷試験の用途=下垂体前葉のGH分泌予備能・ACTH-副腎系の評価(重症低血糖のリスクに注意して実施する)。
選択肢ごとの解説
① LH(黄体形成ホルモン)は性腺系のホルモンで、インスリン負荷による低血糖で特異的に増加する反応は示さない。 ② 正しい。インスリン負荷による低血糖はストレス刺激となり、成長ホルモン(GH)の分泌を強く促し増加する。 ③ FSH(卵胞刺激ホルモン)は性腺系のホルモンで、インスリン負荷による低血糖で特異的に増加する反応は示さない。 ④ TSH(甲状腺刺激ホルモン)はインスリン負荷による低血糖で特異的に増加する反応を示さないため該当しない。 ⑤ プロラクチンはインスリン負荷による低血糖で特異的に増加する反応を示さないため、増加するものには該当しない。
第62回 午前45(病理組織細胞学)
蛋白合成に関与するのはどれか。
①中心小体 ②ゴルジ装置 ③リソソーム ④リボソーム ⑤ミトコンドリア
正答: ④リボソーム
ポイント リボソームは蛋白合成(翻訳)を担う細胞小器官で、mRNAの遺伝情報に従ってアミノ酸をペプチド結合で連結し、ポリペプチドを合成する場である。細胞質に存在する遊離リボソームと、粗面小胞体の膜に結合したリボソームがあり、後者は主に分泌蛋白や膜蛋白を合成する。これに対し中心小体は細胞分裂時の紡錘体形成や繊毛・鞭毛の基部に関与し、ゴルジ装置は蛋白の修飾・選別・分泌、リソソームは加水分解酵素による分解、ミトコンドリアはATP産生(酸化的リン酸化)を担うというように、細胞小器官はそれぞれ固有の役割をもつ。 ●蛋白合成に関わる構造=リボソーム(翻訳)、粗面小胞体(分泌蛋白の合成・修飾)、ゴルジ装置(修飾・選別)。 ●その他の小器官=ミトコンドリア(ATP産生)、リソソーム(分解)、中心小体(細胞分裂・繊毛形成)と機能が分かれる。
選択肢ごとの解説
① 中心小体は細胞分裂時の紡錘体形成や繊毛・鞭毛の基部に関与する構造で、蛋白合成を担うものではないため該当しない。 ② ゴルジ装置は合成された蛋白の修飾・選別・分泌に関与するが、蛋白合成そのものを担うわけではないため該当しない。 ③ リソソームは加水分解酵素により不要物を分解する細胞小器官で、蛋白合成を担うものではないため該当しない。 ④ 正しい。リボソームはmRNAの情報に従ってアミノ酸を連結し蛋白を合成する翻訳の場であるため該当する。 ⑤ ミトコンドリアは酸化的リン酸化によりATPを産生する細胞小器官で、蛋白合成を担うものではないため該当しない。
第62回 午前46(病理組織細胞学)
胃組織のH-E染色標本を別に示す。みられる変化はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA046.248a8c02cf.jpg
正答: ③化生
ポイント 胃のH-E染色標本で示される変化は化生(metaplasia)と判断される。化生とは、いったん分化した組織が形態的・機能的に異なる別の分化した組織へ可逆的に置き換わる現象である。胃では慢性炎症(萎縮性胃炎・ヘリコバクター感染)を背景に、胃粘膜上皮が杯細胞や吸収上皮を伴う腸型の上皮へ置換される腸上皮化生がみられ、これは胃癌発生の背景としても重要視される変化である。これに対し萎縮は実質の縮小、壊死は細胞死、変性は細胞内の代謝障害による物質の蓄積、過形成は細胞数の増加であり、いずれも化生とは別の概念である。 ●化生の例=胃の腸上皮化生、気管支扁平上皮化生(喫煙)、Barrett食道(円柱上皮化生)など。 ●関連する組織反応=萎縮(実質縮小)、過形成(細胞数増加)、変性・壊死(細胞傷害)と区別される。
選択肢ごとの解説
① 萎縮は細胞・組織の容積や数が減少して実質が縮小する変化であり、化生とは異なる概念のため該当しない。 ② 壊死は血流障害や傷害により細胞が死に至る変化であり、組織型の置換である化生とは異なるため該当しない。 ③ 正しい。化生は分化した組織が別の分化した組織へ置き換わる変化で、胃では腸上皮化生としてみられる。 ④ 変性は細胞内に異常物質が蓄積するなどの代謝障害による可逆的変化であり、化生とは異なるため該当しない。 ⑤ 過形成は細胞数の増加により組織が増大する変化であり、組織型の置換である化生とは異なるため該当しない。
第62回 午前47(病理組織細胞学)
循環障害と原因の組合せで正しいのはどれか。
①脾梗塞 — 脾静脈血栓 ②脾うっ血 — 肝硬変 ③肺うっ血 — 右心不全 ④肺脂肪塞栓 — 潜函病 ⑤肺動脈塞栓 — 下肢動脈血栓
正答: ②脾うっ血 — 肝硬変
ポイント 脾うっ血は肝硬変による門脈圧亢進が原因となる。肝硬変では肝内の血流抵抗が増して門脈血流がうっ滞し、門脈系に連なる脾静脈の圧が上昇するため、うっ血性脾腫を生じる(門脈圧亢進症)。これに対し脾梗塞は脾動脈の塞栓・血栓による動脈の閉塞で起こり、肺うっ血は左心不全による肺静脈圧上昇、肺脂肪塞栓は骨折などで脂肪滴が肺へ流入して生じ、肺動脈塞栓は下肢などの深部静脈血栓が遊離して肺動脈を閉塞することで起こるものである。うっ血は静脈系の血液のうっ滞、塞栓は血管を閉塞する物質による現象であり、両者は成因が異なる。 ●うっ血の原因=左心不全(肺うっ血)、右心不全(肝うっ血・全身うっ血)、門脈圧亢進(脾うっ血・うっ血性脾腫)。 ●塞栓の原因=肺動脈塞栓は下肢深部静脈血栓、脂肪塞栓は骨折、空気塞栓・潜函病は減圧によるガス気泡が原因となる。
選択肢ごとの解説
① 脾梗塞は脾動脈の塞栓・血栓による動脈閉塞で生じるもので、脾静脈血栓が原因という組合せは正しくない。 ② 正しい。脾うっ血は肝硬変による門脈圧亢進で脾静脈圧が上昇して生じる、うっ血性脾腫の原因である。 ③ 肺うっ血は左心不全による肺静脈圧上昇で生じるもので、右心不全が原因という組合せは正しくない。 ④ 肺脂肪塞栓は骨折などで脂肪滴が肺へ流入して生じるもので、潜函病が原因という組合せは正しくない。 ⑤ 肺動脈塞栓は下肢などの深部静脈血栓が遊離して生じるもので、下肢動脈血栓が原因という組合せは正しくない。
📋 まとめの表を見る:循環障害(うっ血・塞栓・梗塞)の分類と原因
脾うっ血は門脈圧亢進(肝硬変)、肺うっ血は左心不全、全身性うっ血(肝うっ血含む)は右心不全が原因となる点を混同しない。肺動脈塞栓の原因は下肢の深部"静脈"血栓であり、下肢"動脈"血栓ではない。
第62回 午前48(病理組織細胞学)
肉芽腫性疾患はどれか。
①慢性膵炎 ②クローン病 ③化膿性虫垂炎 ④ウイルス性肝炎 ⑤線維素性胸膜炎
正答: ②クローン病
ポイント クローン病は消化管に非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫を形成する代表的な肉芽腫性疾患である。口腔から肛門までの全消化管に非連続性(skip lesion)に病変が生じ、縦走潰瘍や敷石像をきたし、組織学的に肉芽腫を認めるのが特徴である。これに対し慢性膵炎は線維化、化膿性虫垂炎は好中球浸潤による化膿性炎、ウイルス性肝炎はリンパ球浸潤と肝細胞傷害、線維素性胸膜炎はフィブリンの析出を主体とする炎症であり、いずれも肉芽腫形成を特徴としない病変である。肉芽腫は類上皮細胞や多核巨細胞の集簇からなり、特定の慢性炎症で形成される。 ●肉芽腫性疾患=結核(乾酪性肉芽腫)、サルコイドーシス、クローン病、ハンセン病、異物肉芽腫など類上皮細胞肉芽腫を形成する。 ●炎症の型=化膿性炎(好中球)、漿液性炎、線維素性炎(フィブリン)、肉芽腫性炎(類上皮細胞・多核巨細胞)に分けられる。
選択肢ごとの解説
① 慢性膵炎は膵実質の線維化と腺房萎縮を主体とする病変で、肉芽腫形成を特徴とする疾患ではないため該当しない。 ② 正しい。クローン病は消化管に非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫を形成する代表的な肉芽腫性疾患である。 ③ 化膿性虫垂炎は好中球浸潤による化膿性炎を主体とする病変で、肉芽腫性疾患ではないため該当しないものである。 ④ ウイルス性肝炎はリンパ球浸潤と肝細胞傷害を主体とする病変で、肉芽腫形成を特徴としないため該当しない。 ⑤ 線維素性胸膜炎はフィブリンの析出を特徴とする炎症で、肉芽腫性疾患ではないため該当しないものである。
📋 まとめの表を見る:肉芽腫性疾患(特異性炎)のまとめ
肉芽腫を形成しない炎症の例=慢性膵炎・化膿性虫垂炎・ウイルス性肝炎・線維素性胸膜炎・潰瘍性大腸炎・偽膜性腸炎・アメーバ大腸炎。放線菌症では菌塊(硫黄顆粒)を伴う化膿性肉芽腫性炎を生じる。類上皮細胞は病原体等を消化できない活性化マクロファージが紡錘形に変化したもの。
第62回 午前49(病理組織細胞学)
小児に多くみられる悪性腫瘍はどれか。
①膠芽腫 ②大腸癌 ③神経芽腫 ④腎細胞癌 ⑤多発性骨髄腫
正答: ③神経芽腫
ポイント 神経芽腫(神経芽細胞腫)は副腎髄質や交感神経節など神経堤由来の細胞から発生する悪性腫瘍で、多くが5歳未満の乳幼児に発症する小児固形腫瘍の代表である。腹部腫瘤として発見されることが多く、カテコールアミンを産生して尿中の代謝産物が増加することがある。これに対し膠芽腫・腎細胞癌・多発性骨髄腫は成人に多く、大腸癌も中高年に好発する。小児の悪性腫瘍は白血病が最も多く、次いで脳腫瘍や神経芽腫などの胎児性腫瘍・芽腫が多いという特徴があり、成人に多い癌腫とは好発する腫瘍が大きく異なる点を理解しておく必要がある。 ●小児に多い悪性腫瘍=白血病、脳腫瘍、神経芽腫、腎芽腫(Wilms腫瘍)、網膜芽腫、肝芽腫、横紋筋肉腫など。 ●成人に多い悪性腫瘍=胃癌・大腸癌・肺癌などの癌腫、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膠芽腫などが挙げられる。
選択肢ごとの解説
① 膠芽腫は中枢神経の悪性神経膠腫で主に成人に好発する腫瘍であり、小児に多くみられるものには該当しない。 ② 大腸癌は中高年以降に好発する癌腫であり、小児に多くみられる悪性腫瘍には該当しないものである。 ③ 正しい。神経芽腫は副腎髄質や交感神経節由来の悪性腫瘍で、乳幼児に多くみられる小児固形腫瘍である。 ④ 腎細胞癌は成人に好発する腎の悪性腫瘍であり、小児に多くみられるものには該当しない(小児では腎芽腫が多い)。 ⑤ 多発性骨髄腫は形質細胞由来の悪性腫瘍で高齢者に好発し、小児に多くみられるものには該当しない。
第62回 午前50(病理組織細胞学)
脱灰で正しいのはどれか。
①試料を容器の底に沈める。 ②低温では脱灰時間が短い。 ③ヘマトキシリンが染まりやすくなる。 ④酸性脱灰液では容器の蓋を開けておく。 ⑤脱灰液は交換のたびに濃度を高くする。
正答: ④酸性脱灰液では容器の蓋を開けておく。
ポイント 脱灰は骨や石灰化組織から無機塩(カルシウム)を除去し、薄切を可能にするための処理である。酸性脱灰液では脱灰の過程で炭酸ガスが発生するため、これを逃がす目的で容器の蓋を開けておくのが正しい。試料は脱灰液中に浮遊させて全面を液に接触させるべきで(底に沈めない)、低温では反応が遅くなり脱灰時間はむしろ長くなる。過度の脱灰や強い酸はヘマトキシリンの染色性を低下させるため注意を要し、脱灰液は反応により消耗するため濃度を高めるのではなく新鮮なものへ交換する必要がある。脱灰が不十分だと薄切が困難となり、過度に行うと染色性が損なわれるため適切な管理が求められる。 ●脱灰の原則=十分量の脱灰液に試料を浮遊させ、酸性脱灰液はガス発生のため密閉せず、適宜新鮮液へ交換する。 ●脱灰の影響=過度の酸処理は核染色性(ヘマトキシリン)を低下させ、温度上昇で速まるが組織傷害のリスクがある。
選択肢ごとの解説
① 試料は脱灰液中に浮遊させて全面を液に接触させるべきで、容器の底に沈めると脱灰が不均一になるため正しくない。 ② 低温では脱灰反応が遅くなり脱灰時間はむしろ長くなるため、短くなるという記述は正しくないものである。 ③ 過度の酸処理を伴う脱灰ではヘマトキシリンの染色性はむしろ低下するため、染まりやすくなるという記述は正しくない。 ④ 正しい。酸性脱灰液では脱灰中に炭酸ガスが発生するため、容器の蓋を開けておくのが適切である。 ⑤ 脱灰液は反応で消耗するため新鮮なものへ交換するのが適切で、交換のたびに濃度を高くする必要はないため正しくない。
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