第62回(2016) 臨床検査技師国家試験 午前51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第62回 午前51(病理組織細胞学)
疾患と染色法の組合せで誤っているのはどれか。
- ①梅毒 — Warthin-Starry染色
- ②カルチノイド — Grimelius染色
- ③アスペルギルス症 — mucicarmine染色
- ④アミロイドーシス — Congo red染色
- ⑤ヘモジデローシス — Berlin blue染色
正答: ③アスペルギルス症 — mucicarmine染色
ポイント
mucicarmine染色は上皮性酸性粘液(ムチン)を赤色に染める粘液染色で、Cryptococcus neoformansの厚い莢膜多糖を鮮やかな赤色に染め出す目的に用いられる。アスペルギルスは隔壁をもち鋭角に分岐する菌糸を形成する糸状真菌で、莢膜や粘液成分に乏しいためmucicarmineでは証明できず、検出にはGrocott(GMS)染色やPAS反応を用いる。したがってアスペルギルス症—mucicarmine染色の組合せが誤りである。 ●真菌の証明=Grocott染色(菌体壁を黒色)・PAS反応(赤紫色)。クリプトコッカス莢膜はmucicarmineやAlcian blueで陽性となる。 ●その他の組合せ=梅毒トレポネーマはWarthin-Starry鍍銀、カルチノイドなど神経内分泌細胞はGrimelius鍍銀、アミロイドはCongo red(偏光下で緑色複屈折)、ヘモジデリン(三価鉄)はBerlin blue(Prussian blue)反応で青色に証明する。
選択肢ごとの解説
- ① 梅毒トレポネーマはWarthin-Starry鍍銀染色で黒色に証明されるため組合せは正しい。微細ならせん状のスピロヘータの描出に用いられる。
- ② カルチノイドなどの神経内分泌細胞はGrimelius鍍銀染色で細胞質の好銀性顆粒が黒色に染まるため、組合せは正しい。
- ③ 誤り。mucicarmine染色は酸性ムチンやクリプトコッカス莢膜を染める粘液染色で、莢膜のない菌糸性のアスペルギルス症証明には適さず、Grocott染色やPAS反応を用いる。
- ④ アミロイドーシスはCongo red染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下で緑色の複屈折を示すため、組合せは正しい。
- ⑤ ヘモジデローシスで沈着する三価鉄はBerlin blue(Prussian blue)反応で青色に染まるため、組合せは正しい。
📋 まとめの表を見る:組織内構造物・疾患・病原体と特殊染色の対応
第62回 午前52(病理組織細胞学)
胃組織のH-E染色標本を別に示す。診断に有用な染色法はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA052.81282dceb5.jpg

- ①PAS反応
- ②azan染色
- ③Grocott染色
- ④SudanⅢ染色
- ⑤Klüver-Barrera染色
正答: ①PAS反応
ポイント
胃のH-E標本で診断に有用とされ正答とされるPAS反応は、糖原・中性粘液・基底膜・真菌壁などの1,2-グリコール基を過ヨウ素酸で酸化し、生じたアルデヒドをシッフ試薬で赤紫色に染める反応である。胃では粘液産生細胞や印環細胞癌内の中性粘液、組織構築や基底膜の評価に有用で、Helicobacter pyloriの証明補助にも用いられ、消化管病変の診断に広く役立つ。 ●PAS反応陽性=グリコーゲン(ジアスターゼ消化で消失)・中性粘液・基底膜・真菌壁・糖タンパク。 ●粘液染色の使い分け=中性粘液はPAS、酸性粘液はAlcian blue、両者の鑑別にはAlcian blue-PAS重染色を用いる。Grocottは真菌、azanやMasson trichromeは膠原線維の染色、Sudanは脂肪の染色で、いずれも目的が異なる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。PAS反応は中性粘液・糖原・基底膜・真菌などを赤紫色に染め、胃の粘液産生細胞や印環細胞癌内の中性粘液証明に有用である。
- ② azan染色は膠原線維を青色に、核や細胞質を赤色に染める結合組織染色で、胃粘液の診断的証明を主目的とはしない。
- ③ Grocott染色は真菌や一部の細菌を黒色に染める鍍銀染色で、胃の粘液そのものの評価には用いない染色である。
- ④ SudanⅢ染色は中性脂肪を橙赤色に染める脂肪染色で凍結切片を用い、胃の粘液の証明には適さない。
- ⑤ Klüver-Barrera染色は髄鞘を青色・神経細胞を染める神経組織用染色で、胃粘液の評価には用いない。
第62回 午前53(病理組織細胞学)
toluidine blue染色で異染性を示すのはどれか。
正答: ⑤肥満細胞
ポイント
toluidine blue染色で異染性(メタクロマジー)を示すのは肥満細胞である。肥満細胞や好塩基球の顆粒に含まれる、硫酸基をもつヘパリンなどの強酸性ムコ多糖が、本来青色である色素を結合により赤紫色へ変色させる現象が異染性であり、この性質が肥満細胞の同定に利用される。組織中での肥満細胞の分布評価などに有用である。 ●異染性を示す物質=肥満細胞・好塩基球顆粒のヘパリン、軟骨基質、アミロイド、粘液などの強酸性の硫酸化ムコ多糖。 ●他の細胞の性質=好中球は多分葉核と中性顆粒をもつ食細胞、赤血球は無核の酸素運搬細胞、組織球(マクロファージ)は貪食能をもつ単球由来細胞、形質細胞は車軸状核をもつ抗体産生細胞で、いずれもtoluidine blueで顕著な異染性は示さず、本染色での同定の対象とはならない細胞である。
選択肢ごとの解説
- ① 好中球は分葉した核と中性顆粒をもつ食細胞で、toluidine blueによる顕著な異染性は示さない細胞である。
- ② 赤血球は無核でヘモグロビンを含む酸素運搬細胞であり、異染性を示すような強酸性ムコ多糖をもたない。
- ③ 組織球(マクロファージ)は貪食能をもつ単球由来細胞で、特徴的な異染性を示す顆粒をもたない細胞である。
- ④ 形質細胞はB細胞由来の抗体産生細胞で車軸状核が特徴だが、toluidine blueによる異染性は示さない。
- ⑤ 正しい。肥満細胞は顆粒に強酸性のヘパリンを含み、toluidine blueで青色色素が赤紫色へ変わる異染性を示す。
第62回 午前54(病理組織細胞学)
舌組織の染色標本を別に示す。染色法はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA054.d03a0f2bb4.jpg

- ①azan染色
- ②PTAH染色
- ③Giemsa染色
- ④Masson trichrome染色
- ⑤elastica van Gieson染色
正答: ②PTAH染色
ポイント
舌組織の染色標本で正答とされるPTAH(リンタングステン酸ヘマトキシリン)染色は、横紋筋の横紋・フィブリン・グリア線維・核などを青色に、膠原線維を赤褐色に染め分ける染色である。舌は横紋筋に富む器官であるため、筋線維の横紋構造を青色に明瞭に描出でき、筋組織の評価に有用である。脳のグリア線維やフィブリンの証明にも用いられる。 ●PTAH陽性(青色)=横紋筋の横紋・フィブリン・神経膠線維(グリア)・ミトコンドリア・核。膠原線維は赤褐色となる。 ●類似染色との違い=azanとMasson trichromeは膠原線維を青〜緑に染める結合組織染色、elastica van Giesonは弾性線維を黒・膠原線維を赤に染め、Giemsaは血液・造血細胞や微生物の染色で、横紋の選択的描出にはPTAHが適する。
選択肢ごとの解説
- ① azan染色は膠原線維を青色に染める結合組織染色で、横紋筋の横紋を主目的に描出する染色ではない。
- ② 正しい。PTAH染色は横紋筋の横紋やフィブリン・グリア線維を青色に染め、横紋筋に富む舌組織の筋構造の描出に適する。
- ③ Giemsa染色は血液・骨髄細胞や微生物を染める染色で、横紋筋の横紋の描出を主目的とはしない染色である。
- ④ Masson trichrome染色は膠原線維を青または緑に染める結合組織染色で、横紋筋の横紋の選択的描出には用いない。
- ⑤ elastica van Gieson染色は弾性線維を黒・膠原線維を赤に染める染色で、横紋筋の横紋の描出には適さない。
第62回 午前55(病理組織細胞学)
透過型電子顕微鏡標本の作製工程に含まれないのはどれか。
正答: ⑤臨界点乾燥
ポイント
透過型電子顕微鏡(TEM)標本の作製工程は、細切→固定(グルタルアルデヒドによる前固定と四酸化オスミウムによる後固定)→脱水→樹脂(エポキシ)包埋→超薄切(ウルトラミクロトーム)→電子染色の順で進む。臨界点乾燥は試料を変形させずに乾燥させる操作で、立体的な表面を観察する走査型電子顕微鏡(SEM)の工程であり、内部の微細構造を透過観察するTEMの工程には含まれない。 ●TEMの工程=細切・前固定・後固定・脱水・樹脂包埋・超薄切(約70nm)・酢酸ウランや鉛による電子染色。 ●SEM特有の工程=臨界点乾燥・金属(金など)の蒸着(イオンスパッタ)で、表面観察のために試料を乾燥させ表面を導電化する点がTEMと異なる。両者は観察対象と前処理が大きく異なり、臨界点乾燥はTEMの工程に含まれない。
選択肢ごとの解説
- ① 細切は試料を小片にして固定液の浸透を促す工程で、TEM標本作製の最初の段階として含まれる。
- ② 固定はグルタルアルデヒドや四酸化オスミウムにより細胞の微細構造を保持する工程で、TEMに含まれる。
- ③ 樹脂包埋はエポキシ樹脂などで試料を硬化させ超薄切を可能にする工程で、TEM標本作製に含まれる。
- ④ 超薄切はウルトラミクロトームで約70nm厚の切片を作製する工程で、TEMによる観察に不可欠である。
- ⑤ 誤り。臨界点乾燥は試料表面を変形させず乾燥させる走査型電子顕微鏡(SEM)の工程で、TEM標本作製には含まれない。
第62回 午前56(病理組織細胞学)
腺癌の細胞学的特徴はどれか。
- ①核中心性
- ②核小体明瞭
- ③癌真珠形成
- ④シート状集塊
- ⑤ライト緑濃染の細胞質
正答: ②核小体明瞭
ポイント
腺癌の細胞学的特徴は核小体が明瞭(大型・複数)であることである。腺癌は腺腔を形成しながら増殖する性質をもち、細胞質は分泌性で空胞状・淡明となり、核は辺縁に偏在して核小体が大型化・複数化する。出現する集塊は腺腔状・乳頭状・球状など立体的になる傾向を示すのが特徴である。 ●腺癌の特徴=核小体明瞭・核偏在・分泌空胞をもつ淡明な細胞質・立体的(腺腔状/乳頭状)集塊。 ●扁平上皮癌の特徴=癌真珠(同心円状の角化)形成・オレンジG好性の厚い角化した細胞質・敷石状(シート状)集塊・核中心性で、設問の核中心性・癌真珠・シート状集塊・ライト緑濃染はいずれも扁平上皮癌に傾く所見であり、腺癌に特異的な細胞学的特徴とはいえないものである。核小体の明瞭化が腺癌の特徴である。
選択肢ごとの解説
- ① 核中心性は核が細胞のほぼ中央に位置する所見で、腺癌では核が偏在しやすく特徴的とはいえない所見である。
- ② 正しい。腺癌では核小体が大型化・複数化して明瞭となり、核の偏在や分泌性の淡明な細胞質を伴うのが特徴である。
- ③ 癌真珠形成は同心円状の角化を示す扁平上皮癌に特徴的な所見であり、腺癌の細胞学的特徴ではない。
- ④ シート状(敷石状)集塊は扁平上皮系にみられる平面的な配列で、腺癌は立体的な集塊を作りやすい点で異なる。
- ⑤ ライト緑濃染の細胞質は角化傾向の乏しい扁平上皮系の所見に傾き、腺癌に特異的な特徴とはいえない。
第62回 午前57(病理組織細胞学)
子宮頸部細胞診のPapanicolaou染色標本を別に示す。関係の深い病原体はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA057.e87f63859a.jpg

- ①カンジダ
- ②クラミジア
- ③トリコモナス
- ④ヘルペスウイルス
- ⑤ヒトパピローマウイルス
正答: ④ヘルペスウイルス
ポイント
子宮頸部細胞診のPapanicolaou標本で関係が深いとされるヘルペスウイルス感染では、多核化・核内のすりガラス状(均質化)変化・核辺縁へのクロマチン圧排・好酸性の核内封入体といった特徴的な細胞変化がみられる。これらはヘルペスウイルス感染を受けた上皮細胞の典型像で、隣接する核同士が互いに圧排し合うmolding(鋳型状)を伴う点も特徴的である。 ●ヘルペスウイルス感染の細胞像=多核巨細胞・すりガラス状核・核のmolding(鋳型状圧排)・好酸性核内封入体。 ●他の病原体の細胞像=カンジダは仮性菌糸と串団子状配列、トリコモナスは洋梨形原虫とcannon ball状の好中球、クラミジアは細胞質内封入体、ヒトパピローマウイルスはコイロサイト(核周明庭・核異型)を示し、いずれも多核すりガラス状核を呈するヘルペスとは細胞像が異なる。
選択肢ごとの解説
- ① カンジダは仮性菌糸と分芽胞子を形成し、扁平上皮を串刺しにする串団子状配列を示し細胞像が異なる。
- ② クラミジアは細胞質内に封入体を示す偏性細胞内寄生体で、多核すりガラス状核を示すヘルペスとは所見が異なる。
- ③ トリコモナスは洋梨形の原虫で周囲に好中球の集簇を伴い、ヘルペスウイルス感染の細胞像とは異なる所見を示す。
- ④ 正しい。ヘルペスウイルス感染では多核化・すりガラス状核・核のmolding・好酸性核内封入体がみられる。
- ⑤ ヒトパピローマウイルスは核周明庭をもつコイロサイトを生じ、すりガラス状の多核細胞とは細胞像が異なる。
📋 まとめの表を見る:細胞診における病原体感染の細胞像(子宮頸部等)
第62回 午前58(病理組織細胞学)
病理解剖の感染対策で誤っているのはどれか。
- ①陽圧式空調
- ②使用器具の滅菌
- ③エプロンの着用
- ④入室前の手袋着用
- ⑤肺のホルマリン注入固定
正答: ①陽圧式空調
ポイント
病理解剖の感染対策では、結核菌などの空気感染性病原体の室外への拡散を防ぐため、解剖室は内部の気圧を周囲より低く保つ陰圧式空調とする必要がある。陽圧式空調は室内の空気を外へ押し出して病原体を含む汚染空気を周囲へ拡散させてしまうため、感染対策としては誤りである。 ●解剖時の感染対策の基本=室内を陰圧に保つ・使用器具の滅菌(オートクレーブ等)・防護具(手袋・エプロン・マスク・ゴーグル)の着用・入室前の手袋装着。 ●検体の取扱い=結核などが疑われる肺はホルマリンを注入して固定し、感染性を十分に低下させてから取り扱う。これらの対策に対して陽圧式空調のみが室外への汚染の拡散を招くため不適切であり、これが誤っている組合せ(正答)となる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。陽圧式空調は室内の空気を外へ押し出して汚染を拡散させるため、解剖室は陰圧式空調とするのが正しい。
- ② 使用器具の滅菌は付着した感染性病原体を確実に不活化する基本対策で、感染対策として正しい措置である。
- ③ エプロンの着用は血液・体液による衣服や身体の汚染を防ぐ防護具の使用で、感染対策として正しい措置である。
- ④ 入室前の手袋着用は手指の汚染と接触感染を防ぐ標準予防策で、感染対策として正しい措置である。
- ⑤ 肺のホルマリン注入固定は結核菌などの病原体を不活化し感染性を低下させる処置で、適切な措置である。
第62回 午前59(臨床血液学)
胸腺で行われるのはどれか。
- ①単球の分化
- ②好中球の産生
- ③Tリンパ球の成熟
- ④Bリンパ球の成熟
- ⑤老化赤血球の処理
正答: ③Tリンパ球の成熟
ポイント
胸腺で行われるのはTリンパ球(T細胞)の成熟である。骨髄由来の前駆細胞が胸腺へ移動し、自己MHCを認識できる細胞を残す正の選択と、自己抗原に強く反応する細胞を除く負の選択を受けて、自己を攻撃しない機能的なT細胞へと分化・成熟する。胸腺は細胞性免疫の中心を担う一次(中枢)リンパ器官である。 ●一次(中枢)リンパ器官=骨髄(B細胞の成熟・全血球の産生)と胸腺(T細胞の成熟)。 ●その他の現象の場=単球は骨髄で分化し、好中球も骨髄の顆粒球系造血で産生され、Bリンパ球は骨髄で成熟し、老化赤血球は主に脾臓のマクロファージで処理される。これらはいずれも胸腺の機能ではなく、胸腺はT細胞の成熟に特化している点が要点である。
選択肢ごとの解説
- ① 単球の分化は骨髄で行われる造血の過程であり、胸腺の機能ではない。胸腺はT細胞が成熟する場である。
- ② 好中球の産生は骨髄の顆粒球系造血で行われる過程であり、胸腺では行われない造血反応である。
- ③ 正しい。胸腺では骨髄由来の前駆細胞が正の選択・負の選択を受けて機能的なTリンパ球へと成熟する。
- ④ Bリンパ球の成熟は骨髄で行われる過程であり、胸腺はT細胞の成熟を担う点で異なる器官である。
- ⑤ 老化赤血球の処理は主に脾臓のマクロファージが担う反応であり、胸腺の機能ではない過程である。
第62回 午前60(臨床血液学)
骨髄穿刺液のWright-Giemsa染色標本を別に示す。矢印で示す細胞に働く造血因子はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA060.ca284e7308.jpg

- ①エリスロポエチン(EPO)
- ②トロンボポエチン(TPO)
- ③インターロイキン-2(IL-2)
- ④顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)
- ⑤マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)
正答: ②トロンボポエチン(TPO)
ポイント
矢印の細胞は大型で多核の巨核球と考えられ、これに働く造血因子はトロンボポエチン(TPO)である。TPOは主に肝臓で産生され、巨核球の増殖・分化・成熟を促し、最終的に細胞質が分離して血小板が産生される過程を促進する造血因子で、巨核球系の最も主要な調節因子である。 ●系統別の主要造血因子=赤芽球系はエリスロポエチン(EPO)、巨核球系はトロンボポエチン(TPO)、好中球系は顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)。 ●その他の因子=マクロファージ系はM-CSF、IL-2はT細胞の増殖を促すサイトカインで、いずれも巨核球の主要な刺激因子ではない。矢印が示す大型で多核の巨核球に対応する主要な造血因子がトロンボポエチン(TPO)である点が要点である。
選択肢ごとの解説
- ① エリスロポエチン(EPO)は腎で産生され赤芽球系の増殖・分化を促す因子で、巨核球の主要因子ではない。
- ② 正しい。トロンボポエチン(TPO)は巨核球の増殖・成熟を促して血小板産生を増加させる主要な造血因子である。
- ③ インターロイキン-2(IL-2)はT細胞の増殖を促すサイトカインで、巨核球に働く主要な造血因子ではない。
- ④ 顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は好中球系の産生を促す因子で、巨核球に働く主要因子ではない。
- ⑤ マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)は単球・マクロファージ系に働く因子で、巨核球には主に作用しない。
📋 まとめの表を見る:血球分化を誘導する主な造血因子・サイトカイン
好中球はG-CSFのほかIL-3・GM-CSFでも産生促進され、好酸球はIL-5のほかIL-3・GM-CSFでも促進される(1因子1系統の単純対応ではない)。好塩基球の分化誘導因子はIL-3・IL-4とされるが不明な点が多い。
第62回 午前61(臨床血液学)
抗血栓性に作用するのはどれか。
- ①トロンビン
- ②トロンボモジュリン
- ③von Willebrand因子
- ④β-トロンボグロブリン
- ⑤プラスミノゲンアクチベーター
正答: ②トロンボモジュリン
ポイント
抗血栓性に作用するのはトロンボモジュリンである。血管内皮細胞の表面にあるトロンボモジュリンはトロンビンと結合してその凝固活性を抑え、形成された複合体がプロテインCを活性化し、活性化したプロテインCが活性化第Ⅴ・Ⅷ因子を分解することで凝固を抑制する、抗凝固系の中心となる因子である。 ●抗血栓(抗凝固・線溶)系=トロンボモジュリン・プロテインC/S・アンチトロンビン・組織因子経路インヒビター・プラスミン。 ●血栓形成(凝固促進)側=トロンビンはフィブリノゲンをフィブリンへ変換し、von Willebrand因子は血小板の粘着を担い、β-トロンボグロブリンは血小板活性化の指標である。 ●プラスミノゲンアクチベーター=プラスミノゲンをプラスミンへ活性化して線溶を促進する因子であり、凝固を直接抑制する抗凝固因子ではない。設問の抗血栓性の中心となる因子はトロンボモジュリンである。
選択肢ごとの解説
- ① トロンビンはフィブリノゲンをフィブリンへ変換し血小板を活性化する凝固促進因子で、抗血栓性に作用しない。
- ② 正しい。トロンボモジュリンはトロンビンと結合しプロテインCを活性化して凝固を抑制する抗血栓性の因子である。
- ③ von Willebrand因子は血小板の血管内皮への粘着を仲介する止血促進因子で、抗血栓性には作用しない。
- ④ β-トロンボグロブリンは血小板α顆粒由来で血小板活性化の指標となるが、抗血栓作用そのものはもたない。
- ⑤ プラスミノゲンアクチベーターは線溶を起こす因子で、凝固を直接抑制する抗血栓性因子とは性質が異なる。
第62回 午前62(臨床血液学)
ビタミンK依存性に産生されるのはどれか。
- ①第Ⅷ因子
- ②第Ⅺ因子
- ③プロテインC
- ④フィブリノゲン
- ⑤アンチトロンビン
正答: ③プロテインC
ポイント
ビタミンK依存性に産生されるのはプロテインCである。ビタミンKは第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子およびプロテインC・プロテインSのグルタミン酸残基をγ-カルボキシル化(Gla化)する反応の補酵素として働き、これらの因子が機能するために必須である。プロテインCは活性化された後に活性化第Ⅴ・Ⅷ因子を分解する抗凝固因子である。 ●ビタミンK依存性因子=第Ⅱ(プロトロンビン)・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子とプロテインC・プロテインS。 ●非依存性の因子=第Ⅷ因子・第Ⅺ因子・フィブリノゲン(第Ⅰ因子)・アンチトロンビンはいずれもビタミンK非依存性で、ワルファリン投与でも直接は低下しない因子である。選択肢の中ではプロテインCのみがビタミンK依存性に産生される因子である点が要点である。
選択肢ごとの解説
- ① 第Ⅷ因子はビタミンK非依存性の凝固因子で、von Willebrand因子と結合して血中で安定化される因子である。
- ② 第Ⅺ因子は内因系の接触相に属する凝固因子でビタミンK非依存性であり、ビタミンK依存性の産生ではない。
- ③ 正しい。プロテインCはビタミンK依存性に産生される抗凝固因子で、活性化後に第Ⅴ・Ⅷ因子を分解する。
- ④ フィブリノゲン(第Ⅰ因子)はビタミンK非依存性で、トロンビンの作用でフィブリンへ変換される凝固因子である。
- ⑤ アンチトロンビンはビタミンK非依存性の生理的抗凝固因子で、トロンビンや第Ⅹa因子などを阻害する。
📋 まとめの表を見る:ビタミンK依存性の凝固因子と欠乏時の検査所見
ビタミンKは肝臓での凝固因子・抗凝固因子の産生時に、グルタミン酸残基をγ-カルボキシル化する反応の補酵素として働く。
第62回 午前63(臨床血液学)
特殊染色と試薬の組合せで正しいのはどれか。
- ①鉄染色 — 1%過ヨウ素酸溶液
- ②PAS染色 — 2%塩酸溶液
- ③ペルオキシダーゼ染色 — 3%過酸化水素水
- ④特異的エステラーゼ染色 — ナフトールAS-MXホスフェート
- ⑤アルカリホスファターゼ染色 — ナフトールAS-Dクロロアセテート
正答: ③ペルオキシダーゼ染色 — 3%過酸化水素水
ポイント
正しい組合せはペルオキシダーゼ染色—3%過酸化水素水である。ミエロペルオキシダーゼ染色では基質として過酸化水素を加え、細胞内の酵素が発色基質(水素供与体)を酸化して呈色させることで顆粒球系細胞の顆粒を染め出し、骨髄系の芽球とリンパ系の芽球など他系統との鑑別に用いる血液細胞化学染色である。 ●血液細胞化学染色の基質・試薬=ペルオキシダーゼは過酸化水素、エステラーゼはナフトールAS系基質、PASは過ヨウ素酸とシッフ試薬を用いる。 ●他の組合せの誤り=鉄染色(Berlin blue)はフェロシアン化カリと塩酸、PAS染色は過ヨウ素酸(2%塩酸ではない)、特異的エステラーゼはナフトールAS-Dクロロアセテートを基質とし、設問では基質が入れ替わっており、正しいのはペルオキシダーゼと過酸化水素水の組合せである。
選択肢ごとの解説
- ① 鉄染色はフェロシアン化カリウムと塩酸を用いるBerlin blue反応で、1%過ヨウ素酸溶液との組合せは誤りである。
- ② PAS染色は過ヨウ素酸でグリコールを酸化しシッフ試薬で呈色する反応で、2%塩酸溶液との組合せは誤りである。
- ③ 正しい。ペルオキシダーゼ染色は3%過酸化水素水を基質として酵素活性を呈色させ、骨髄系細胞の同定に用いる。
- ④ ナフトールAS-MXホスフェートはアルカリホスファターゼ染色の基質である。特異的エステラーゼ染色ではナフトールAS-Dクロロアセテートを用いるため、この組合せは誤り。
- ⑤ ナフトールAS-Dクロロアセテートは特異的(クロロアセテート)エステラーゼの基質で、アルカリホスファターゼ染色とは結びつかない。
📋 まとめの表を見る:血液細胞化学染色(特殊染色)と試薬・陽性細胞
特異的エステラーゼ染色はナフトールAS-Dクロロアセテート、非特異的エステラーゼ染色はα-ナフチルブチレートを基質とする点、ペルオキシダーゼ染色に過酸化水素水を用いる点が誤答パターンとして頻出。
第62回 午前64(臨床血液学)
20歳の男性。息切れを主訴に来院した。ヘモグロビン濃度6.0 g/dL、白血球数1,100/μL、血小板数1.0万/μLであった。骨髄穿刺液のWright-Giemsa染色標本の弱拡大像を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA064.a5d2b266cd.jpg

- ①悪性貧血
- ②骨髄異形成症候群
- ③再生不良性貧血
- ④赤芽球癆
- ⑤溶血性貧血
正答: ③再生不良性貧血
ポイント
ヘモグロビン低下・白血球減少・血小板減少という汎血球減少を呈し、骨髄が低形成で脂肪髄化している弱拡大像から再生不良性貧血が考えられる。造血幹細胞そのものの障害により赤血球・白血球・血小板の全系統が減少し、骨髄では造血細胞が著しく乏しくなって脂肪細胞に置き換わるのが特徴である。 ●再生不良性貧血の特徴=汎血球減少・網赤血球減少・骨髄低形成(脂肪髄)・異形成や芽球増加を欠く。 ●鑑別=骨髄異形成症候群は過形成髄と異形成・芽球増加、悪性貧血はビタミンB₁₂欠乏による巨赤芽球と過分葉好中球、赤芽球癆は赤芽球のみ選択的に減少、溶血性貧血は網赤血球の増加を示し、これらに対し汎血球減少と骨髄低形成(脂肪髄)を呈するのは再生不良性貧血である。
選択肢ごとの解説
- ① 悪性貧血はビタミンB₁₂欠乏による巨赤芽球性貧血で、骨髄は過形成となり、脂肪髄化した低形成の像とは異なる。
- ② 骨髄異形成症候群は通常は過形成髄で異形成や芽球増加を伴い、脂肪髄化した低形成の像とは異なる病態である。
- ③ 正しい。汎血球減少と骨髄低形成(脂肪髄)を呈する像から、造血幹細胞の障害による再生不良性貧血が考えられる。
- ④ 赤芽球癆は赤芽球系のみが選択的に減少する病態で、白血球・血小板も減る汎血球減少の像とは異なる。
- ⑤ 溶血性貧血は赤血球破壊の亢進で網赤血球が増加し骨髄は過形成となり、汎血球減少・低形成の像とは異なる。
📋 まとめの表を見る:貧血・血球減少症の主な原因(病因)
第62回 午前65(臨床血液学)
末梢血のWright-Giemsa染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA065.69a25fc83c.jpg

- ①敗血症
- ②Gaucher病
- ③骨髄線維症
- ④本態性血小板血症
- ⑤急性前骨髄球性白血病
正答: ①敗血症
ポイント
末梢血の好中球に中毒性顆粒・Döhle小体・空胞などの変化や核の左方移動がみられる像から、重症感染症である敗血症が考えられる。重症の細菌感染では骨髄からの動員が亢進して好中球が増多し、幼若な好中球の出現(核左方移動)や中毒性顆粒・空胞形成といった反応性の変化を伴うのが特徴である。 ●敗血症の血液像=好中球増多・核の左方移動・中毒性顆粒・Döhle小体・空胞形成などの反応性変化。 ●鑑別=Gaucher病はGaucher細胞、骨髄線維症は涙滴赤血球と幼若血球の出現(白赤芽球症)、本態性血小板血症は血小板の著明な増加、急性前骨髄球性白血病はAuer小体束をもつfaggot細胞を示し、これらに対し反応性の好中球変化を主体とするのは重症感染症である敗血症である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。重症感染である敗血症では好中球の増多・核左方移動・中毒性顆粒・空胞などの反応性変化がみられる。
- ② Gaucher病は脂質を貪食したGaucher細胞が出現する蓄積症で、好中球の中毒性変化を主体とはしない病態である。
- ③ 骨髄線維症は涙滴赤血球や幼若血球が末梢血に出現する白赤芽球症を示し、敗血症の血液像とは異なる病態である。
- ④ 本態性血小板血症は血小板の著明な増加が特徴で、好中球の反応性変化を主体とする敗血症の像とは異なる。
- ⑤ 急性前骨髄球性白血病はAuer小体を束状にもつfaggot細胞が特徴で、反応性の好中球変化とは像が異なる。
第62回 午前66(臨床血液学)
骨髄穿刺液のWright-Giemsa染色標本とペルオキシダーゼ染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA066.7045cdff0f.jpg

- ①急性骨髄性白血病
- ②急性リンパ性白血病
- ③成人T細胞白血病
- ④慢性骨髄性白血病
- ⑤慢性リンパ性白血病
正答: ①急性骨髄性白血病
ポイント
Wright-Giemsa染色で芽球が増加し、ペルオキシダーゼ染色で芽球が陽性となる像から急性骨髄性白血病(AML)が考えられる。骨髄系の芽球はミエロペルオキシダーゼを含むためペルオキシダーゼ染色が陽性となり、細胞質に棒状のAuer小体を認めることもある。リンパ系の芽球は同染色が陰性となる点で鑑別される。 ●急性骨髄性白血病の特徴=ペルオキシダーゼ陽性芽球・Auer小体・骨髄系抗原(CD13/CD33)陽性。 ●鑑別=急性リンパ性白血病はペルオキシダーゼ陰性、成人T細胞白血病は花弁状核のflower cell、慢性骨髄性白血病は全成熟段階の顆粒球増加とBCR-ABL1、慢性リンパ性白血病は成熟小型リンパ球の増加を示し、これらに対しペルオキシダーゼ陽性の芽球を呈するのは急性骨髄性白血病(AML)である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。ペルオキシダーゼ陽性の芽球が増加する像は骨髄系の芽球を示し、急性骨髄性白血病が考えられる。
- ② 急性リンパ性白血病の芽球はペルオキシダーゼ陰性であり、陽性の芽球が増加する像とは異なる病態である。
- ③ 成人T細胞白血病は分葉した花弁状核のflower cellが特徴で、ペルオキシダーゼ陽性芽球を示す像とは異なる。
- ④ 慢性骨髄性白血病は各成熟段階の顆粒球が増加する慢性経過の疾患で、芽球が主体の急性像とは異なる病態である。
- ⑤ 慢性リンパ性白血病は成熟した小型リンパ球の増加が特徴で、ペルオキシダーゼ陽性芽球の像とは異なる病態である。
📋 まとめの表を見る:急性骨髄性白血病〈AML〉のFAB分類と特徴
急性リンパ性白血病(ALL)はMPO陰性(3%未満)で鑑別する。染色体異常・融合遺伝子は既存の『白血病の染色体異常と融合遺伝子』表を参照。
第62回 午前67(臨床血液学)
骨髄異形成症候群でみられるのはどれか。2つ選べ。
- ①Russell小体
- ②Niemann-Pick細胞
- ③Chédiak-Higashi異常
- ④偽Pelger異常
- ⑤低顆粒性好中球
正答: ④偽Pelger異常・⑤低顆粒性好中球
ポイント
骨髄異形成症候群(MDS)でみられるのは偽Pelger異常と低顆粒性好中球である。MDSは造血幹細胞のクローン性の異常により無効造血を来す疾患で、好中球系では核の低分葉化(偽Pelger-Huët核異常)や細胞質顆粒の減少(低顆粒・無顆粒)といった異形成所見が出現するのが特徴である。 ●MDSの異形成所見=偽Pelger核異常・低顆粒/無顆粒好中球・環状鉄芽球・微小巨核球・赤芽球の核異常。 ●他の選択肢=Russell小体は形質細胞内に貯留した免疫グロブリンの塊、Niemann-Pick細胞はスフィンゴミエリンを蓄積した泡沫細胞、Chédiak-Higashi異常は巨大顆粒を示す先天異常で、いずれも蓄積症や先天異常などの所見であってMDSに特異的な好中球の異形成所見ではない。
選択肢ごとの解説
- ① Russell小体は形質細胞内に貯留した免疫グロブリンの好酸性塊で、MDSの好中球の異形成所見ではない。
- ② Niemann-Pick細胞はスフィンゴミエリンを蓄積した泡沫細胞で、先天性脂質蓄積症にみられMDSの所見ではない。
- ③ Chédiak-Higashi異常は細胞内に巨大顆粒を生じる先天性疾患の所見で、MDSの好中球異形成とは異なる所見である。
- ④ 正しい。偽Pelger異常は核が低分葉化する好中球の核異常で、MDSにみられる代表的な異形成所見である。
- ⑤ 正しい。低顆粒性好中球は細胞質の顆粒が減少した異形成の好中球で、MDSにみられる所見である。
第62回 午前68(臨床微生物学)
真菌に分類されているのはどれか。
- ①Actinomyces israelii
- ②Bifidobacterium dentium
- ③Mycobacterium avium
- ④Nocardia asteroides
- ⑤Pneumocystis jirovecii
正答: ⑤Pneumocystis jirovecii
ポイント
選択肢のうち真菌に分類されるのはPneumocystis jiroveciiである。かつては形態から原虫とされていたが、リボソームRNAの遺伝子解析により真菌(子嚢菌類)に再分類された日和見病原体で、細胞壁にβ-D-グルカンをもち、免疫不全者に重篤なニューモシスチス肺炎を起こす点で臨床的に重要である。 ●真菌の特徴=真核生物・キチンやβ-グルカンを含む細胞壁・エルゴステロール膜。Grocott染色やβ-D-グルカン測定で評価する。 ●他の選択肢=ActinomycesとNocardiaは放線菌(グラム陽性桿菌)、Bifidobacteriumは嫌気性グラム陽性桿菌、Mycobacterium aviumは抗酸菌で、いずれも細菌(原核生物)である。真菌に分類されるのはPneumocystis jiroveciiのみである。
選択肢ごとの解説
- ① Actinomyces israeliiは嫌気性のグラム陽性放線菌(細菌)で、真菌ではなく放線菌症の原因となる病原体である。
- ② Bifidobacterium dentiumは嫌気性のグラム陽性桿菌(細菌)で、真菌には分類されない腸内常在菌の一種である。
- ③ Mycobacterium aviumは抗酸菌(細菌)で、真菌ではなく非結核性抗酸菌症の原因となる病原体である。
- ④ Nocardia asteroidesは好気性のグラム陽性放線菌(細菌)で、真菌ではなくノカルジア症の原因となる。
- ⑤ 正しい。Pneumocystis jiroveciiはrRNA解析で真菌に再分類された日和見病原体で、ニューモシスチス肺炎を起こす。
📋 まとめの表を見る:紛らわしい微生物の分類(真核生物か原核生物か)
原虫・真菌は核膜をもつ核を有する真核生物、細菌・リケッチア・クラミジア・マイコプラズマは核膜のない核様体をもつ原核生物である。ウイルスは細胞構造をもたないため、いずれにも分類されない。Pneumocystis jiroveciiとCryptococcus neoformansは名称や性状から誤認しやすいが真菌に分類される。逆にActinomyces・Nocardiaは放線菌、Treponemaはスピロヘータで、いずれも細菌(原核生物)である。
第62回 午前69(臨床微生物学)
喀痰のGram染色標本を別に示す。矢印で示す部分で推定される菌種はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA069.32e2d47f40.jpg

- ①Fusobacterium nucleatum
- ②Klebsiella pneumoniae
- ③Legionella pneumophila
- ④Mycobacterium tuberculosis
- ⑤Pseudomonas aeruginosa
正答: ④Mycobacterium tuberculosis
ポイント
喀痰のGram染色で染色されにくい(抗酸性のため通常のGram染色では淡くしか写らない)細長い桿菌が矢印で示される像から、Mycobacterium tuberculosis(結核菌)が推定される。抗酸菌は脂質(ミコール酸)に富む細胞壁をもつためGram染色では染まりにくく、加温や石炭酸を用いるZiehl-Neelsen等の抗酸菌染色で赤色に証明する。 ●抗酸菌の特徴=ミコール酸に富む細胞壁・抗酸性(赤色)・Gram染色では淡染/陰性様・発育が遅い。 ●他の選択肢=Klebsiellaは莢膜をもつグラム陰性桿菌、Pseudomonasはグラム陰性桿菌、Legionellaは染色困難なグラム陰性桿菌、Fusobacteriumは紡錘形の嫌気性菌で、抗酸性で染まりにくい桿菌として推定されるのは結核菌である。
選択肢ごとの解説
- ① Fusobacterium nucleatumは両端の尖った紡錘形の嫌気性グラム陰性桿菌で、抗酸性を示す像とは異なる。
- ② Klebsiella pneumoniaeは莢膜をもつグラム陰性桿菌で、Gram染色で明瞭に赤く染まり抗酸菌の像とは異なる。
- ③ Legionella pneumophilaは染色しにくいグラム陰性桿菌だが、喀痰塗抹での同定は難しく専用培地や抗原検査を要する。
- ④ 正しい。脂質に富む細胞壁のためGram染色で染まりにくい桿菌として、抗酸菌である結核菌が推定される。
- ⑤ Pseudomonas aeruginosaはグラム陰性桿菌で、Gram染色で赤色に明瞭に染まり抗酸性の桿菌の像とは異なる。
📋 まとめの表を見る:抗酸菌(Mycobacterium属)の分類(Runyon分類・発育速度・結核菌の特徴)
抗酸菌は世代時間が長く発育が遅い(培養に数週間を要する)。BCGワクチンには結核菌ではなくMycobacterium bovisの弱毒株が用いられる。Nocardia属は抗酸菌ではないが部分的な抗酸性を示す点で紛らわしい。
第62回 午前70(臨床微生物学)
嫌気性菌用分離培地として用いられるのはどれか。
- ①GC寒天培地
- ②B-CYE寒天培地
- ③Löffler(レフレル)培地
- ④血液加ブルセラ寒天培地
- ⑤Sabouraud(サブロー)寒天培地
正答: ④血液加ブルセラ寒天培地
ポイント
嫌気性菌用の分離培地として用いられるのは血液加ブルセラ寒天培地である。ブルセラ寒天を基礎培地として、これにヘミン・ビタミンKと血液を加えた培地は栄養要求の高い偏性嫌気性菌の発育を支えることができ、嫌気ジャーや嫌気チャンバーなどの嫌気環境下での分離培養に広く用いられる培地である。 ●嫌気培養の培地=血液加ブルセラ寒天・GAM培地・変法FM培地など。ヘミンとビタミンKを添加し嫌気条件で培養する。 ●他の選択肢=GC寒天は淋菌などNeisseria、B-CYE寒天はレジオネラ、Löffler培地はジフテリア菌、Sabouraud寒天は真菌の培地で、いずれも嫌気性菌の分離を主目的とはしない。嫌気用に用いるのは血液加ブルセラ寒天培地である。
選択肢ごとの解説
- ① GC寒天培地は淋菌などNeisseriaの分離に用いる培地で、嫌気性菌の分離を目的とした培地ではない。
- ② B-CYE寒天培地はLegionellaの分離に用いる選択培地で、嫌気性菌用の分離培地ではない。
- ③ Löffler(レフレル)培地はジフテリア菌の培養に用いる培地で、嫌気性菌の分離には用いない培地である。
- ④ 正しい。血液加ブルセラ寒天培地はヘミン・ビタミンKと血液を加え、偏性嫌気性菌の分離培養に用いる培地である。
- ⑤ Sabouraud(サブロー)寒天培地は真菌の分離培養に用いる培地で、嫌気性菌の分離用ではない。
第62回 午前71(臨床微生物学)
細菌の遺伝物質について正しいのはどれか。
- ①染色体は核膜内にある。
- ②プラスミドは一本鎖RNAである。
- ③Fプラスミドは薬剤耐性遺伝子である。
- ④Rプラスミドは接合によって伝達される。
- ⑤形質導入とはミトコンドリアDNAを介した現象である。
正答: ④Rプラスミドは接合によって伝達される。
ポイント
細菌の遺伝物質について正しいのは、Rプラスミドが接合によって伝達される、である。Rプラスミドは薬剤耐性遺伝子を担う染色体外の環状二本鎖DNAで、性線毛(pilus)を介した細胞どうしの接合により他の菌へ水平に伝播し、菌種を越えて薬剤耐性を拡散させるため臨床上問題となる。 ●プラスミドの基本=染色体外で自己複製する環状二本鎖DNA。Rプラスミドは薬剤耐性、Fプラスミドは接合(稔性)を司る。 ●遺伝子伝達の様式=接合(細胞間接触・線毛)・形質転換(裸のDNAの取り込み)・形質導入(ファージを介した伝達)。細菌は核膜をもたず染色体は細胞質内にあり、形質導入はファージ介在でミトコンドリアDNAとは無関係である点が誤りを分ける。
選択肢ごとの解説
- ① 細菌は核膜をもたない原核生物で、染色体は核膜内ではなく細胞質内に存在するため、この記述は誤りである。
- ② プラスミドは一本鎖RNAではなく染色体外で自己複製する環状二本鎖DNAであり、この記述は誤りである。
- ③ Fプラスミドは接合(稔性)に関与する因子で、薬剤耐性遺伝子はRプラスミドが担うため、この記述は誤りである。
- ④ 正しい。Rプラスミドは薬剤耐性遺伝子をもつ環状二本鎖DNAで、性線毛を介した接合によって他菌へ伝達される。
- ⑤ 形質導入はバクテリオファージを介した遺伝子の伝達であり、ミトコンドリアDNAを介する現象ではないため誤りである。
第62回 午前72(臨床微生物学)
血中薬物モニタリング(TDM)が必要な抗菌薬はどれか。
- ①セファゾリン
- ②ミノサイクリン
- ③エリスロマイシン
- ④バンコマイシン
- ⑤リネゾリド
正答: ④バンコマイシン
ポイント
血中薬物モニタリング(TDM)が必要な抗菌薬はバンコマイシンである。バンコマイシンは有効血中濃度域と腎毒性が発現する濃度域が近く、治療域が狭い薬剤であるため、投与中はトラフ値などの血中濃度を測定して投与量を個別に調整し、十分な効果の確保と腎障害・聴器毒性の回避の両立を図る必要がある。 ●TDM対象の抗菌薬=バンコマイシン・テイコプラニン・アミノグリコシド(ゲンタマイシン等)・ボリコナゾールなど治療域が狭い薬剤。 ●非対象=セファゾリン・ミノサイクリン・エリスロマイシン・リネゾリドは一般に治療域が広く定型的なTDMの対象ではない。選択肢の中で治療域が狭くTDMを要するのはバンコマイシンである点が要点である。
選択肢ごとの解説
- ① セファゾリンは治療域が比較的広いセフェム系抗菌薬で、定型的なTDMの対象とはされない薬剤である。
- ② ミノサイクリンはテトラサイクリン系の抗菌薬で、一般にルーチンのTDMを必要としない薬剤である。
- ③ エリスロマイシンはマクロライド系の抗菌薬で、通常は定型的なTDMの対象とはされない薬剤である。
- ④ 正しい。バンコマイシンは治療域が狭く腎毒性域に近いため、血中濃度を測定して投与量を調整するTDMが必要である。
- ⑤ リネゾリドはオキサゾリジノン系の抗菌薬で、通常は定型的なTDMの対象とはされない薬剤である。
第62回 午前73(臨床微生物学)
結核と同じ感染経路別予防策が必要な疾患はどれか。
正答: ①水痘
ポイント
結核と同じ空気(飛沫核)感染に対する感染経路別予防策が必要なのは水痘である。結核・水痘・麻疹は、病原体を含む直径5μm未満の飛沫核が乾燥した後も長時間空気中に浮遊して広範囲に感染を広げるため、空気感染予防策が必要であり、陰圧の個室への隔離や医療者のN95マスクの着用を要する。 ●空気感染対策が必要=結核・麻疹・水痘(播種性帯状疱疹を含む)。陰圧室での隔離とN95マスクを用いる。 ●他の選択肢の感染経路=梅毒は性(血液・接触)感染、風疹は飛沫感染、コレラは経口(糞口)感染、デング熱は蚊による媒介(ベクター)感染で、空気感染予防策を要するのは水痘である点が結核と共通する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。水痘は飛沫核による空気感染を起こすため、結核と同様に陰圧隔離やN95マスクなどの空気感染予防策を要する。
- ② 梅毒はトレポネーマによる性感染(血液・接触感染)で、空気感染予防策を必要とする疾患ではない。
- ③ 風疹は飛沫感染で伝播する疾患で、飛沫核による空気感染予防策とは異なる感染経路別予防策を要する。
- ④ コレラは汚染された水や食物による経口(糞口)感染で、空気感染予防策を必要とする疾患ではない。
- ⑤ デング熱は蚊が媒介するベクター感染で、ヒトからヒトへの空気感染予防策は必要としない疾患である。
第62回 午前74(臨床微生物学)
長期入院患者が抗菌薬投与中に下痢を発症した。考えられる原因菌はどれか。
- ①Bacillus cereus
- ②Clostridium difficile
- ③Clostridium perfringens
- ④Salmonella Typhimurium
- ⑤Shigella sonnei
正答: ②Clostridium difficile
ポイント
長期入院中で抗菌薬投与中に発症した下痢の原因菌として考えられるのはClostridium difficileである。抗菌薬により腸内細菌叢が乱れると本菌が増殖し、トキシンA・Bを産生して偽膜性大腸炎を含む抗菌薬関連下痢症を起こす。 ●Clostridium difficile感染=抗菌薬使用後の菌交代現象・トキシン産生・偽膜性大腸炎。トキシン検査やGDH抗原で診断する。 ●他の選択肢=Bacillus cereusとClostridium perfringensは食中毒型の下痢、Salmonella Typhimuriumは感染型腸炎、Shigella sonneiは細菌性赤痢を起こすが、抗菌薬投与に関連した院内発症の下痢の典型はC. difficileである点が要点である。
選択肢ごとの解説
- ① Bacillus cereusは毒素による食中毒(嘔吐型・下痢型)を起こす菌で、抗菌薬関連下痢の典型的な原因菌ではない。
- ② 正しい。Clostridium difficileは抗菌薬で菌交代を起こし、トキシン産生により偽膜性大腸炎など抗菌薬関連下痢を生じる。
- ③ Clostridium perfringensは加熱調理食品による食中毒性の下痢を起こす菌で、抗菌薬関連下痢の主因ではない。
- ④ Salmonella Typhimuriumは食品由来の感染型腸炎を起こす菌で、抗菌薬投与に関連した下痢の典型ではない。
- ⑤ Shigella sonneiは細菌性赤痢の原因菌で経口感染による下痢を起こすが、抗菌薬関連下痢の主因ではない。
第62回 午前75(臨床微生物学)
Salmonella enterica subsp. entericaのserovar Typhiとserovar Paratyphi Aの鑑別に有用な検査はどれか。
- ①運動性テスト
- ②ONPGテスト
- ③インドールテスト
- ④クエン酸塩利用能
- ⑤リジン脱炭酸テスト
正答: ⑤リジン脱炭酸テスト
ポイント
Salmonella Typhi(チフス菌)とParatyphi A(パラチフスA菌)の鑑別に有用なのはリジン脱炭酸テストである。チフス菌はリジン脱炭酸が陽性となるのに対し、パラチフスA菌は陰性となり、この生化学的性状の差によって両者を鑑別できる。さらにチフス菌は硫化水素を産生するのに対しパラチフスA菌は産生しない点も鑑別に役立つ特徴である。 ●チフス菌(Typhi)=リジン脱炭酸陽性・硫化水素陽性(弱)・クエン酸塩陰性。 ●パラチフスA菌(Paratyphi A)=リジン脱炭酸陰性・硫化水素陰性。両者は運動性・ONPG・インドール・クエン酸塩利用能では明瞭に分かれにくく、鑑別に有用なのはリジン脱炭酸テストである点が要点である。
選択肢ごとの解説
- ① 運動性テストはSalmonellaの多くが陽性となるため、TyphiとParatyphi Aの鑑別には有用ではない。
- ② ONPGテストはβ-ガラクトシダーゼを検出する試験で、TyphiとParatyphi Aの鑑別には有用ではない。
- ③ インドールテストはトリプトファンの分解能をみる試験で、両者とも陰性であり鑑別には役立たない。
- ④ クエン酸塩利用能は炭素源としての利用をみる試験だが、両者の鑑別には決め手とならない試験である。
- ⑤ 正しい。リジン脱炭酸テストはTyphiが陽性、Paratyphi Aが陰性となり、両者の鑑別に有用な試験である。
📋 まとめの表を見る:腸内細菌科の生化学的性状の鑑別(乳糖分解・硫化水素・リジン脱炭酸・インドール)
サルモネラ・赤痢菌など乳糖非分解菌はTSI培地で高層部のみ黄変し斜面は赤色のまま残るが、大腸菌など乳糖分解菌は斜面・高層とも黄変する。チフス菌(Typhi)はTSI培地でガスをほとんど産生せず硫化水素も少量にとどまる点が他の多くのSalmonella血清型と異なる。尿素分解(ウレアーゼ)陽性の代表はProteus属・Morganella属・Providencia属。
第62回 午前76(臨床微生物学)
皮膚糸状菌はどれか。
- ①Aspergillus fumigatus
- ②Histoplasma capsulatum
- ③Mucor ramosissimus
- ④Sporothrix schenckii
- ⑤Trichophyton rubrum
正答: ⑤Trichophyton rubrum
ポイント
皮膚糸状菌(白癬菌)は角質・毛・爪のケラチンを栄養源とする好ケラチン性糸状菌で、Trichophyton(白癬菌)・Microsporum(小胞子菌)・Epidermophyton(表皮菌)の3属からなる。Trichophyton rubrumは足白癬・爪白癬の最多原因菌である。スライド培養で大分生子・小分生子の形態を観察して属を鑑別する。 ●皮膚糸状菌(表在性真菌症)=Trichophyton(白癬)・Microsporum・Epidermophyton。角質・毛・爪に寄生。 ●深在性・全身性真菌症=Aspergillus(肺アスペルギルス症)・Histoplasma(ヒストプラズマ症)・Mucor(ムーコル症)・Sporothrix(スポロトリコーシス)。 ●二形性真菌=Histoplasma・Sporothrix・Blastomyces・Coccidioides。
選択肢ごとの解説
- ① Aspergillus fumigatusは菌糸を形成する糸状菌だが、肺アスペルギルス症など深在性真菌症の原因菌で、皮膚糸状菌ではない。
- ② Histoplasma capsulatumはヒストプラズマ症を起こす二形性真菌で、細胞内寄生し全身に播種するが、皮膚糸状菌ではない。
- ③ Mucor ramosissimusは隔壁のない幅広菌糸を持つ接合菌でムーコル症の原因となるが、ケラチン親和性はなく皮膚糸状菌ではない。
- ④ Sporothrix schenckiiはスポロトリコーシスを起こす二形性真菌で、皮下組織に病巣を作るが角質寄生性の皮膚糸状菌ではない。
- ⑤ 正しい。Trichophyton rubrumは白癬菌属の皮膚糸状菌で、角質・爪のケラチンを分解し足白癬・爪白癬の最多原因菌となる。
第62回 午前77(臨床微生物学)
分離培養にチョコレート寒天培地の使用が必要な検体はどれか。2つ選べ。
正答: ①髄液・②喀痰
ポイント
チョコレート寒天培地は血液寒天培地を加熱し赤血球を溶血させてヘミン(X因子)とNAD(V因子)を遊離させた培地で、これらの発育因子を要求するインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)や髄膜炎菌・淋菌(Neisseria属)の分離に用いる。これらが原因となる無菌部位検体である髄液、および気道検体の喀痰に必要となる。 ●チョコレート寒天が必要な菌=Haemophilus influenzae・Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)・Neisseria gonorrhoeae(淋菌)。 ●関連検体=髄液(髄膜炎菌・インフルエンザ菌)・喀痰(インフルエンザ菌)・性器分泌物(淋菌)。 ●糞便・尿・胆汁は腸内細菌などが対象で選択分離培地(DHL・SS・マッコンキーなど)を用いる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。髄液は髄膜炎菌やインフルエンザ菌による細菌性髄膜炎が疑われ、これらの発育にチョコレート寒天培地が必要となる。
- ② 正しい。喀痰は発育因子を要求するインフルエンザ菌の検出が重要で、その分離にチョコレート寒天培地が用いられる。
- ③ 胆汁はサルモネラなど腸内細菌の検出が主目的で、選択分離培地を用い、チョコレート寒天培地は通常必要としない。
- ④ 糞便は腸内細菌科や腸炎ビブリオが対象で、DHLやSS寒天などの選択培地を用い、チョコレート寒天培地は使わない。
- ⑤ 中間尿は大腸菌など尿路病原菌の定量培養が目的で、血液寒天やCLED培地を用い、チョコレート寒天培地は必要ない。
第62回 午前78(臨床微生物学)
尿中抗原検査が行われているのはどれか。2つ選べ。
- ①Legionella pneumophila
- ②Mycobacterium tuberculosis
- ③Mycoplasma pneumoniae
- ④Neisseria meningitidis
- ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ①Legionella pneumophila・⑤Streptococcus pneumoniae
ポイント
尿中抗原検査は尿に排泄される菌体成分(莢膜多糖や可溶性抗原)を免疫クロマト法で迅速検出する方法で、レジオネラ(Legionella pneumophila血清群1)と肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)が代表である。重症肺炎の起炎菌迅速診断に有用で、抗菌薬投与後でも検出できる利点がある。 ●尿中抗原検査が実用化されている菌=Legionella pneumophila(血清群1のLPS抗原)・Streptococcus pneumoniae(C多糖体抗原)。 ●その他の迅速抗原検査=インフルエンザウイルス・RSウイルス・ロタウイルス・アデノウイルス(鼻咽頭・便検体)。 ●結核菌・マイコプラズマ・髄膜炎菌は尿中抗原検査ではなく培養・核酸増幅・血清診断などで検出する。 ●尿中抗原検査の利点=迅速・簡便で抗菌薬投与後も検出可能。欠点=レジオネラは血清群1のみ検出可、肺炎球菌は保菌でも陽性となり得る。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。Legionella pneumophila血清群1は尿中にLPS抗原を排泄し、免疫クロマト法による尿中抗原検査が広く用いられている。
- ② Mycobacterium tuberculosis(結核菌)は喀痰の塗抹・培養や核酸増幅法(PCR)で検出し、尿中抗原検査は行われていない。
- ③ Mycoplasma pneumoniaeは咽頭ぬぐい液の核酸検出や血清抗体価で診断し、尿中抗原検査は実用化されていない。
- ④ Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)は髄液・血液の培養やグラム染色で診断し、尿中抗原検査は一般に行われていない。
- ⑤ 正しい。Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌)はC多糖体抗原が尿中に排泄され、肺炎の迅速診断に尿中抗原検査が用いられる。
第62回 午前79(臨床免疫学)
細菌に対する自然免疫で誤っているのはどれか。
- ①Toll様受容体が細菌を認識する。
- ②好中球は血中から炎症箇所に移動する。
- ③リゾチームは鼻の粘膜でのバリアーとなる。
- ④補体活性化経路のうち古典経路が主として働く。
- ⑤樹状細胞は抗原提示により獲得免疫への橋渡しを行う。
正答: ④補体活性化経路のうち古典経路が主として働く。
ポイント
自然免疫は抗原特異性を持たず、感染初期に病原体を非特異的に排除する生体防御系である。補体活性化経路のうち、病原体表面の糖鎖や自然発生的なC3分解で開始される第二経路(副経路)とレクチン経路が自然免疫として働き、抗原抗体複合体を必要とする古典経路は獲得免疫に属する。したがって「古典経路が主として働く」は誤り。 ●自然免疫の構成=物理的バリア(皮膚・粘膜・リゾチーム)・好中球やマクロファージの貪食・NK細胞・補体(第二経路・レクチン経路)・パターン認識受容体(Toll様受容体)。 ●獲得免疫=T細胞・B細胞による抗原特異的応答、抗体(古典経路の活性化)、免疫記憶。 ●樹状細胞は抗原提示により自然免疫と獲得免疫を橋渡しする。 ●補体活性化の三経路=古典経路(抗原抗体複合体・C1qで開始)・第二経路(病原体表面で自然発生的に開始)・レクチン経路(マンノース結合レクチンが糖鎖を認識)。いずれもC3を活性化し最終的に膜侵襲複合体を形成する。
選択肢ごとの解説
- ① Toll様受容体は病原体共通の分子パターン(PAMPs)を認識する自然免疫の受容体で、正しい記述である。
- ② 好中球は走化性因子に従い血管内から炎症部位へ遊走し貪食を行う自然免疫の主役で、正しい記述である。
- ③ リゾチームは涙・唾液・鼻粘膜の分泌液に含まれ細菌の細胞壁を分解する自然免疫のバリアで、正しい記述である。
- ④ 誤り。古典経路は抗原抗体複合体で活性化される獲得免疫の経路で、自然免疫で主に働くのは第二経路とレクチン経路である。
- ⑤ 樹状細胞は抗原を取り込み提示してT細胞を活性化し獲得免疫へ橋渡しする細胞で、正しい記述である。
第62回 午前80(臨床免疫学)
抗原について正しいのはどれか。
- ①異好抗原は不完全抗原の一種である。
- ②不完全抗原はアジュバントとも呼ばれる。
- ③IgG抗体を産生させる抗原を不完全抗原という。
- ④BSA(ウシ血清アルブミン)は不完全抗原である。
- ⑤不完全抗原に対する抗体作製にキャリアが利用される。
正答: ⑤不完全抗原に対する抗体作製にキャリアが利用される。
ポイント
抗原はそれ自体で抗体産生を誘導できる完全抗原と、単独では免疫原性を持たないが特異的に抗体と結合する不完全抗原(ハプテン)に分けられる。ハプテンを担体(キャリア)タンパクに結合させると免疫原性を獲得し抗体を産生させられるため、抗体作製にはキャリアが利用される。よって「不完全抗原に対する抗体作製にキャリアが利用される」が正しい。 ●完全抗原=免疫原性と反応原性を併せ持つ。タンパク質(BSA・卵白アルブミンなど)が典型で分子量が大きい。 ●不完全抗原(ハプテン)=反応原性のみで免疫原性がない低分子。キャリアと結合させて免疫する。 ●異好抗原=種を越えて共通する抗原(例:Forssman抗原・Paul-Bunnell抗原)で、不完全抗原ではない。 ●アジュバント=抗原と併用して免疫応答を増強する物質(フロイント完全アジュバントなど)で、ハプテンとは別概念。 ●抗原決定基(エピトープ)=抗体が認識する抗原上の部位で、抗原の特異性を決める。
選択肢ごとの解説
- ① 異好抗原は異なる生物種に共通して存在する抗原であり、低分子のハプテンである不完全抗原とは別概念で、誤りである。
- ② 不完全抗原(ハプテン)は低分子の抗原で、免疫応答を増強する物質であるアジュバントとは全く異なるため、誤りである。
- ③ IgG抗体を産生させられるのは免疫原性を持つ完全抗原であり、単独では抗体を誘導できない不完全抗原ではなく、誤りである。
- ④ BSA(ウシ血清アルブミン)は分子量の大きいタンパク質で免疫原性を持つ完全抗原であり、不完全抗原ではないため誤りである。
- ⑤ 正しい。不完全抗原(ハプテン)は単独で抗体を誘導できないため、担体(キャリア)に結合させて免疫し抗体を作製する。
第62回 午前81(臨床免疫学)
補体C1インヒビター欠損により血清補体価(CH50)が低下するのはどれか。
- ①肝硬変
- ②悪性リンパ腫
- ③遺伝性血管神経性浮腫
- ④自己免疫性溶血性貧血
- ⑤全身性エリテマトーデス(SLE)
正答: ③遺伝性血管神経性浮腫
ポイント
遺伝性血管神経性浮腫(遺伝性血管性浮腫、HAE)はC1インヒビター(C1-INH)の量的または機能的欠損による常染色体顕性遺伝疾患で、補体古典経路と接触系(カリクレイン・キニン系)の制御不全からブラジキニンが過剰産生され、反復性の非掻痒性浮腫を生じる。C1-INH欠損で古典経路が持続的に活性化されC4・C2が消費され、CH50も低下する。 ●HAEの検査所見=C1-INH活性低下・C4低下(発作時著明)・CH50低下、C1qは正常(後天性では低下)。 ●補体価(CH50)が低下する病態=活性化による消費(SLE・急性糸球体腎炎・HAE)、産生低下(肝硬変)。 ●HAEの治療=C1-INH製剤・ブラジキニン受容体拮抗薬、急性発作にアドレナリンや抗ヒスタミン薬・ステロイドは無効。 ●HAEの病型=Ⅰ型(C1-INH量的欠損)・Ⅱ型(機能異常で量は正常)・後天性(リンパ増殖性疾患などに伴う)。
選択肢ごとの解説
- ① 肝硬変では補体の産生低下によりCH50が低下し得るが、C1インヒビター欠損が原因ではないため、本問の答えではない。
- ② 悪性リンパ腫は後天性C1-INH欠損を伴うことがあるが、遺伝性C1-INH欠損の疾患ではなく、本問の答えではない。
- ③ 正しい。遺伝性血管神経性浮腫はC1インヒビター欠損で古典経路が活性化されC4が消費されCH50が低下する疾患である。
- ④ 自己免疫性溶血性貧血は赤血球膜上での補体活性化が主体で、C1インヒビター欠損によるCH50低下とは機序が異なる。
- ⑤ SLEは免疫複合体による補体消費でCH50が低下するが、C1インヒビター欠損が原因ではなく、本問の答えではない。
📋 まとめの表を見る:補体価〈CH50〉異常パターンと考えられる病態
コールドアクチベーションは生体内の病態ではなく採血後の試験管内で生じる現象である点に注意。血清と血漿でCH50に乖離を認める場合はこの現象を疑う。
第62回 午前82(臨床免疫学)
能動免疫はどれか。2つ選べ。
- ①感染による抗体獲得
- ②ワクチン接種による抗体獲得
- ③免疫グロブリン製剤による抗体獲得
- ④母乳を介した母親から児への抗体の移行
- ⑤胎盤を介した母親から胎児への抗体の移行
正答: ①感染による抗体獲得・②ワクチン接種による抗体獲得
ポイント
免疫は獲得様式により能動免疫と受動免疫に分けられる。能動免疫は宿主自身が抗原に反応して抗体や感作リンパ球を産生する免疫で、効果発現は遅いが免疫記憶が成立し持続する。感染やワクチン接種がこれにあたる。受動免疫は他者が作った抗体(免疫グロブリンや移行抗体)を受け取る免疫で、即効性はあるが一時的である。 ●能動免疫=感染(自然能動免疫)・ワクチン接種(人工能動免疫)。記憶が成立し持続的。 ●受動免疫=胎盤経由のIgG移行・母乳(初乳)中のIgA(自然受動免疫)、免疫グロブリン製剤や抗血清の投与(人工受動免疫)。即効性だが一時的。 ●ワクチンの種類=生ワクチン(弱毒化、麻疹・風疹・BCG)・不活化ワクチン(インフルエンザ・日本脳炎)・トキソイド(ジフテリア・破傷風)。 ●受動免疫の応用=破傷風・狂犬病・B型肝炎などの曝露後予防にγ-グロブリンや抗血清を投与する。即効性があるが効果は一時的である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。感染による抗体獲得は宿主自身が病原体に反応して抗体を産生する自然能動免疫で、免疫記憶が成立する。
- ② 正しい。ワクチン接種による抗体獲得は人為的に抗原を与えて宿主自身に抗体を産生させる人工能動免疫である。
- ③ 免疫グロブリン製剤による抗体獲得は他者が作った抗体を投与される人工受動免疫であり、能動免疫ではない。
- ④ 母乳を介した母親から児への抗体(IgA)の移行は既成抗体を受け取る自然受動免疫であり、能動免疫ではない。
- ⑤ 胎盤を介した母親から胎児へのIgG移行は既成抗体を受け取る自然受動免疫であり、能動免疫ではない。
第62回 午前83(臨床免疫学)
Lewis血液型の影響を受けるのはどれか。
- ①PSA
- ②AFP
- ③CEA
- ④CA19-9
- ⑤PIVKA-Ⅱ
正答: ④CA19-9
ポイント
CA19-9はシアリルLewis a(sialyl Lewis a)抗原を認識する糖鎖抗原で、膵癌・胆道癌・消化器癌の腫瘍マーカーである。その合成にはLewis式血液型のもとになるフコース転移酵素(Le遺伝子)が必須であるため、Lewis陰性(Le(a-b-))の人はCA19-9を産生できず、進行癌でも血中CA19-9が上昇しない。よってCA19-9はLewis血液型の影響を受ける。 ●CA19-9=シアリルLewis a糖鎖抗原。膵癌・胆道癌で上昇。Lewis陰性者(約5〜10%)では偽陰性。 ●糖鎖系腫瘍マーカー=CA19-9・CA125・CA15-3など。 ●タンパク系腫瘍マーカー=PSA(前立腺癌)・AFP(肝細胞癌)・CEA(消化器癌)・PIVKA-Ⅱ(肝細胞癌)。これらはLewis血液型の影響を受けない。
選択肢ごとの解説
- ① PSAは前立腺特異抗原というタンパク質で前立腺癌のマーカーであり、糖鎖でないためLewis血液型の影響を受けない。
- ② AFP(α-フェトプロテイン)は肝細胞癌・卵黄嚢腫瘍のマーカーとなるタンパク質で、Lewis血液型の影響を受けない。
- ③ CEA(癌胎児性抗原)は消化器癌などで上昇するタンパク性マーカーで、Lewis血液型の影響は受けない。
- ④ 正しい。CA19-9はシアリルLewis a糖鎖抗原であり、Lewis陰性者では合成できず上昇しないためLewis血液型の影響を受ける。
- ⑤ PIVKA-ⅡはビタミンK欠乏で生じる異常プロトロンビンで肝細胞癌のマーカーであり、Lewis血液型の影響を受けない。
📋 まとめの表を見る:主な腫瘍マーカーと高値を示す代表疾患
第62回 午前84(臨床免疫学)
Ⅱ型アレルギーはどれか。2つ選べ。
- ①気管支喘息
- ②重症筋無力症
- ③急性糸球体腎炎
- ④自己免疫性溶血性貧血
- ⑤全身性エリテマトーデス(SLE)
正答: ②重症筋無力症・④自己免疫性溶血性貧血
ポイント
アレルギーはCoombsとGellの分類で4型に分けられる。Ⅱ型(細胞傷害型)は細胞や組織表面の抗原にIgGまたはIgM抗体が結合し、補体活性化やマクロファージの貪食、抗体依存性細胞傷害により標的細胞を破壊する反応である。自己免疫性溶血性貧血と重症筋無力症はⅡ型に分類される。 ●Ⅰ型(即時型)=IgEとマスト細胞。気管支喘息・花粉症・アナフィラキシー。 ●Ⅱ型(細胞傷害型)=IgG・IgMと細胞表面抗原。自己免疫性溶血性貧血・重症筋無力症・特発性血小板減少性紫斑病・Goodpasture症候群。 ●Ⅲ型(免疫複合体型)=抗原抗体複合体の組織沈着。急性糸球体腎炎・SLE・血清病。 ●Ⅳ型(遅延型)=感作T細胞とサイトカイン。ツベルクリン反応・接触皮膚炎・移植拒絶反応。抗体や補体は関与しない。 ●Ⅰ〜Ⅲ型は抗体(液性免疫)が関与する即時型・体液型、Ⅳ型のみT細胞(細胞性免疫)が関与する遅延型である。
選択肢ごとの解説
- ① 気管支喘息はIgEとマスト細胞が関与するⅠ型(即時型)アレルギーであり、細胞傷害型のⅡ型ではない。
- ② 正しい。重症筋無力症は神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する自己抗体による細胞傷害型のⅡ型アレルギーである。
- ③ 急性糸球体腎炎は抗原抗体複合体が糸球体に沈着して起こるⅢ型(免疫複合体型)アレルギーであり、Ⅱ型ではない。
- ④ 正しい。自己免疫性溶血性貧血は赤血球膜抗原に対する自己抗体が補体や貪食で赤血球を破壊するⅡ型アレルギーである。
- ⑤ 全身性エリテマトーデス(SLE)は免疫複合体が全身に沈着するⅢ型アレルギーが主体であり、Ⅱ型ではない。
第62回 午前85(臨床免疫学)
炎症で血清中濃度が低下するのはどれか。2つ選べ。
- ①CRP
- ②補体C3
- ③トランスフェリン
- ④セルロプラスミン
- ⑤トランスサイレチン
正答: ③トランスフェリン・⑤トランスサイレチン
ポイント
急性炎症時には肝臓でのタンパク合成パターンが変化し、CRPや補体C3、セルロプラスミンなどの陽性急性相反応物質は増加する一方、トランスフェリンとトランスサイレチン(プレアルブミン)などの陰性急性相反応物質は血清中濃度が低下する。アルブミンも陰性急性相反応物質である。 ●陽性急性相反応物質(炎症で増加)=CRP・血清アミロイドA・補体C3/C4・ハプトグロビン・フィブリノゲン・セルロプラスミン・α₁-アンチトリプシン・フェリチン。 ●陰性急性相反応物質(炎症で低下)=アルブミン・トランスフェリン・トランスサイレチン(プレアルブミン)・レチノール結合タンパク。 ●トランスサイレチンは半減期が約2日と短く、レチノール結合タンパクとともに栄養状態(rapid turnover protein)の鋭敏な指標になる。 ●急性相反応はインターロイキン6などのサイトカインが肝臓に作用して起こり、炎症の経過観察にCRPなどが用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① CRPは代表的な陽性急性相反応物質で、炎症で速やかに著明に増加するため、血清濃度が低下する本問の答えではない。
- ② 補体C3は炎症で増加する陽性急性相反応物質であり、血清濃度が低下するものではないため、本問の答えではない。
- ③ 正しい。トランスフェリンは陰性急性相反応物質で、炎症時に肝合成が抑制され血清中濃度が低下する。
- ④ セルロプラスミンは銅を含む陽性急性相反応物質で、炎症時に増加するため、血清濃度が低下する本問の答えではない。
- ⑤ 正しい。トランスサイレチン(プレアルブミン)は陰性急性相反応物質で、炎症時に血清中濃度が低下する。
第62回 午前86(臨床免疫学)
交差適合試験で不適合となる原因について誤っているのはどれか。
- ①連銭形成
- ②HBs抗体
- ③不規則抗体
- ④寒冷凝集素
- ⑤血液型メジャーミスマッチ
正答: ②HBs抗体
ポイント
交差適合試験(クロスマッチ)は輸血前に患者血清と供血者赤血球(主試験)、患者赤血球と供血者血清(副試験)を反応させ凝集・溶血の有無を確認する検査で、ABO血液型不適合や不規則抗体を検出する。不適合(陽性)の原因には連銭形成、不規則抗体、寒冷凝集素、血液型のメジャーミスマッチがある。HBs抗体は感染症マーカーであり凝集反応の原因とならないため誤り。 ●交差適合試験陽性の原因=ABO不適合(メジャーミスマッチ)・不規則抗体(同種抗体)・自己抗体(寒冷凝集素・温式自己抗体)・連銭形成(高グロブリン血症)。 ●主試験=患者血清+供血者赤血球(最重要、溶血副作用に直結)。 ●副試験=患者赤血球+供血者血清(供血者血漿中の抗体を検出)。 ●検査法=生理食塩液法(IgMによる直接凝集)・酵素法・間接抗グロブリン試験(IgG性不規則抗体の検出)。 ●HBs抗体・HCV抗体などは輸血用血液のスクリーニング検査の項目であり、交差適合試験とは別の検査である。
選択肢ごとの解説
- ① 連銭形成は高グロブリン血症などで赤血球が連なり偽凝集を起こし交差適合試験陽性の原因となるため、正しい記述である。
- ② 誤り。HBs抗体はB型肝炎ウイルスに対する感染症マーカーであり、赤血球凝集を起こさず交差適合試験不適合の原因とならない。
- ③ 不規則抗体(同種抗体)は供血者赤血球抗原と反応して凝集を起こし交差適合試験不適合の原因となるため、正しい記述である。
- ④ 寒冷凝集素は低温で赤血球を凝集させる自己抗体で交差適合試験陽性の原因となり得るため、正しい記述である。
- ⑤ 血液型メジャーミスマッチ(ABO不適合)は主試験で凝集・溶血を起こす重大な不適合原因であり、正しい記述である。
📋 まとめの表を見る:交差適合試験が陽性(不適合)になる原因
HBs抗体など感染症スクリーニング項目は赤血球と反応する抗体ではないため、交差適合試験の不適合原因にはならない。
第62回 午前87(臨床免疫学)
病的意義のある不規則抗体の特徴として正しいのはどれか。
- ①37 ℃で反応する。
- ②IgMクラスである。
- ③感染症を契機に産生される。
- ④生理食塩液法で陽性となる。
- ⑤血小板不応状態の原因となる。
正答: ①37 ℃で反応する。
ポイント
病的意義のある不規則抗体は溶血性輸血副作用や新生児溶血性疾患の原因となる抗体で、その多くはIgGクラスであり37℃で反応する。検出には間接抗グロブリン試験(間接Coombs試験)が必要で、生理食塩液法では検出されにくい。一方、室温以下でのみ反応するIgM性の寒冷抗体は臨床的意義が乏しいことが多い。 ●臨床的意義のある不規則抗体=IgG性・37℃反応性・間接抗グロブリン試験で検出。Rh系(抗D・抗E・抗c)、Kidd系(抗Jka)、Duffy系(抗Fya)など。 ●臨床的意義の乏しい抗体=室温以下でのみ反応するIgM性の寒冷抗体(抗Lea・抗Pなど)。 ●新生児溶血性疾患=IgGが胎盤を通過して胎児赤血球を破壊。抗D・抗c・抗Kなど。母児間血液型不適合で生じる。 ●不規則抗体の同定=パネル赤血球(同定用赤血球)との反応パターンから抗体特異性を判定する。輸血前にスクリーニングを行う。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。病的意義のある不規則抗体はIgG性で37℃の体温域で反応し、溶血性輸血副作用を起こすため臨床的に重要である。
- ② 病的意義のある不規則抗体の多くはIgGクラスであり、室温以下で反応するIgMクラスの抗体は臨床的意義が乏しいことが多い。
- ③ 病的意義のある不規則抗体は妊娠や輸血による感作で産生されるのが主で、感染症を契機に産生されるものではない。
- ④ 病的意義のある不規則抗体はIgG性で生理食塩液法では陽性になりにくく、間接抗グロブリン試験で検出される。
- ⑤ 血小板不応状態の原因は抗HLA抗体や抗血小板抗体であり、赤血球に対する不規則抗体は血小板不応の原因とはならない。
第62回 午前88(臨床免疫学)
ABO血液型検査の反応を別に示す。所見として正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA088.d58816154f.jpg

- ①オモテ検査A型、ウラ検査A型でオモテ・ウラ一致
- ②オモテ検査A型、ウラ検査O型でオモテ・ウラ不一致
- ③オモテ検査A型、ウラ検査AB型でオモテ・ウラ不一致
- ④オモテ検査B型、ウラ検査O型でオモテ・ウラ不一致
- ⑤オモテ検査B型、ウラ検査AB型でオモテ・ウラ不一致
正答: ③オモテ検査A型、ウラ検査AB型でオモテ・ウラ不一致
ポイント
ABO血液型検査はオモテ検査(赤血球の抗原を抗A・抗B血清で調べる)とウラ検査(血清中の抗A・抗B抗体を既知A・B赤血球で調べる)を行い、両者が一致することで型を確定する。本症例はオモテ検査A型、ウラ検査AB型でオモテ・ウラが不一致を示す。ウラ検査でA・B両赤血球に凝集がない場合は規則抗体の欠如や予期せぬ反応を疑う。 ●オモテ検査=被検赤血球+抗A血清・抗B血清。抗原を判定。 ●ウラ検査=被検血清+A1赤血球・B赤血球。規則抗体(抗A・抗B)を判定。 ●オモテ・ウラ不一致の原因=抗原減弱(亜型・白血病)・規則抗体の低下(新生児・高齢者・免疫不全)・不規則抗体や寒冷凝集素・連銭形成。 ●対応=再検査と追加試験(吸着解離・温度変化・血清希釈など)で原因を究明し、確定するまで安易に型を判定しない。新生児は規則抗体が未産生のためウラ検査は判定保留とする。
選択肢ごとの解説
- ① オモテ・ウラが一致するA型なら確定診断となるが、本症例はウラ検査がAB型を示し不一致のため、この所見ではない。
- ② オモテ検査A型でウラ検査O型(抗A・抗B両方あり)の不一致を示すが、本症例のウラ検査所見とは異なるため誤りである。
- ③ 正しい。オモテ検査A型・ウラ検査AB型(抗A・抗B両方なし)でオモテ・ウラ不一致を示す所見である。
- ④ オモテ検査B型でウラ検査O型の不一致を示すパターンだが、本症例のオモテ検査所見とは異なるため誤りである。
- ⑤ オモテ検査B型でウラ検査AB型の不一致を示すパターンだが、本症例のオモテ検査所見とは異なるため誤りである。
第62回 午前89(臨床免疫学)
輸血副作用のうち、抗HLA抗体が原因となるのはどれか。
- ①輸血後紫斑病
- ②輸血後GVHD
- ③遅発型溶血反応
- ④輸血関連急性肺障害
- ⑤アナフィラキシー反応
正答: ④輸血関連急性肺障害
ポイント
輸血関連急性肺障害(TRALI)は輸血後6時間以内に発症する非心原性肺水腫で、供血者血漿中の抗HLA抗体や抗顆粒球抗体が受血者の白血球と反応して肺毛細血管で好中球を活性化し、肺血管透過性が亢進して起こる重篤な副作用である。多量妊娠歴のある女性供血者の血漿に抗HLA抗体が含まれやすい。 ●抗HLA抗体が関与=輸血関連急性肺障害(TRALI)・血小板輸血不応状態・発熱性非溶血性輸血副作用。 ●輸血後GVHD=供血者リンパ球が受血者組織を攻撃。放射線照射で予防。 ●輸血後紫斑病=抗血小板抗体(抗HPA-1a)による血小板減少。 ●遅発型溶血反応=既往感作による不規則抗体が輸血後数日で溶血を起こす。アナフィラキシー=IgA欠損者の抗IgA抗体など。 ●TRALIの予防=妊娠歴のある女性由来の血漿成分を避ける、男性供血者血漿の優先使用などが行われる。発症時は呼吸管理を要する。
選択肢ごとの解説
- ① 輸血後紫斑病は抗血小板抗体(抗HPA-1aなど)による血小板減少が原因で、抗HLA抗体が主因ではないため誤りである。
- ② 輸血後GVHDは供血者由来リンパ球が受血者組織を攻撃する反応で、抗HLA抗体が原因ではなく、本問の答えではない。
- ③ 遅発型溶血反応は既往感作で産生された赤血球同種抗体による溶血で、抗HLA抗体が原因ではないため本問の答えではない。
- ④ 正しい。輸血関連急性肺障害(TRALI)は供血者血漿中の抗HLA抗体や抗顆粒球抗体が受血者白血球と反応して起こる。
- ⑤ アナフィラキシー反応はIgA欠損者の抗IgA抗体などが関与する反応で、抗HLA抗体が主因ではないため本問の答えではない。
📋 まとめの表を見る:輸血副作用の機序・発症時期と予防・対策
輸血副作用は「溶血性/非溶血性」×「免疫学的/非免疫学的」×「即時型/遅発型」で整理できる。
第62回 午前90(公衆衛生学)
根拠に基づく医療(EBM)を実践する手順を示す。患者の問題の定式化→文献情報の収集→(A)→患者への適用→事後評価。(A)のステップにおいて行われるのはどれか。2つ選べ。
- ①研究成果の発表
- ②動物実験の実施
- ③アウトカムの設定
- ④研究デザインの確認
- ⑤バイアスの有無のチェック
正答: ④研究デザインの確認・⑤バイアスの有無のチェック
ポイント
根拠に基づく医療(EBM)は、患者の問題の定式化(PICO/PECO)→文献情報の収集→収集した文献の批判的吟味→患者への適用→事後評価(自己評価)という5ステップで実践される。空欄(A)は文献の批判的吟味のステップであり、研究デザインの確認とバイアスの有無のチェックがここで行われる。 ●EBMの5ステップ=①問題の定式化(PICO)②情報収集③批判的吟味(妥当性・結果の大きさ・適用可能性)④適用⑤評価。 ●批判的吟味で確認する点=研究デザイン(ランダム化比較試験>コホート>症例対照)・バイアス(選択・情報・交絡)・統計学的検討・結果の臨床的意義。 ●エビデンスレベル=メタアナリシス/RCT>コホート>症例対照>症例集積>専門家意見の順に高い。 ●PICO=Patient(患者)・Intervention(介入)・Comparison(比較対照)・Outcome(結果)の頭文字で、臨床疑問を構造化する枠組みである。
選択肢ごとの解説
- ① 研究成果の発表はEBM実践の手順には含まれず、文献の批判的吟味のステップで行われる作業ではないため誤りである。
- ② 動物実験の実施はEBMの臨床判断プロセスとは無関係で、文献の批判的吟味のステップで行うことではないため誤りである。
- ③ アウトカムの設定は最初の問題の定式化(PICO)の段階で行うことで、文献の批判的吟味のステップではないため誤りである。
- ④ 正しい。研究デザインの確認は収集した文献の批判的吟味のステップで行い、エビデンスの質を評価するために必要である。
- ⑤ 正しい。バイアスの有無のチェックは文献の批判的吟味のステップで行い、研究結果の妥当性を判断するために重要である。
第62回 午前91(公衆衛生学)
我が国のある年の人口ピラミッドを別に示す。該当する年はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62aA091.a252e62bf9.jpg

- ①1920年
- ②1940年
- ③1960年
- ④1980年
- ⑤2000年
正答: ③1960年
ポイント
人口ピラミッドは年齢階級別の人口構成を示す図で、形は時代の出生・死亡状況を反映する。1960年(昭和35年)はベビーブーム後で、若年層がやや多く高齢者が少ない「つりがね型」から「つぼ型」への移行期にあたり、まだ年少人口の割合が比較的高い。経済成長期前で多産少死へ向かう過渡的な構成を示す。 ●人口ピラミッドの型=富士山型(ピラミッド型、多産多死)・つりがね型(少産少死)・つぼ型(少産少死で年少人口減少、現在の日本)。 ●日本の人口推移=戦後の第1次ベビーブーム(1947〜49年)・第2次ベビーブーム(1971〜74年)の膨らみが特徴。 ●近年は少子高齢化が進行し、年少人口割合の低下と老年人口割合の上昇で「つぼ型」が顕著になっている。 ●年齢区分=年少人口(0〜14歳)・生産年齢人口(15〜64歳)・老年人口(65歳以上)。各区分の割合の推移が人口ピラミッドの形に反映される。
選択肢ごとの解説
- ① 1920年は多産多死の富士山型(ピラミッド型)で年少人口が極めて多い構成であり、本図の年代とは異なるため誤りである。
- ② 1940年も戦前の多産多死型に近く年少人口が多い構成で、本図が示す年代とは合致しないため誤りである。
- ③ 正しい。1960年は戦後の人口構成を反映し、年少人口がやや多く高齢者が少ない過渡的な型で本図に該当する。
- ④ 1980年は少子化が進み始め年少人口が減少した構成で、本図が示す年代とは異なるため誤りである。
- ⑤ 2000年はつぼ型に近く高齢人口割合が高い構成で、本図が示す年代とは合致しないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:人口ピラミッドの類型
人口ピラミッドは少子化や寿命の延伸により、ピラミッド型→釣り鐘型→つぼ型へと推移する。日本は第1次・第2次ベビーブームの膨らみをもつ「つぼ型」。1960年頃は当時10歳前後だった第1次ベビーブーム世代の膨らみが目立つ形となる。
第62回 午前92(公衆衛生学)
我が国の死因別死亡数(平成24年)で10位以内でないのはどれか。
正答: ③糖尿病
ポイント
我が国の主要死因は悪性新生物(がん)・心疾患・脳血管疾患・肺炎が長く上位を占め、これに老衰・不慮の事故・腎不全・自殺などが続く。糖尿病は重要な生活習慣病だが、死亡数では合併症が他の死因として計上されることもあり、死因順位の10位以内には入らない。よって「糖尿病」が10位以内でない。 ●我が国の主要死因(上位)=悪性新生物・心疾患・脳血管疾患・肺炎・老衰。 ●これに続く死因=不慮の事故・腎不全・自殺・大動脈瘤など。 ●糖尿病は罹患者は多いが直接死因としての死亡数は相対的に少なく、死因順位上位には入らない。死因統計は死亡診断書の原死因に基づき集計される。 ●糖尿病の合併症=糖尿病性腎症(人工透析の原因第1位)・網膜症・神経障害・大血管障害。これらが進行すると別の死因として計上されることがある点に注意する。
選択肢ごとの解説
- ① 自殺は我が国で死亡数が多く、死因別死亡数の10位以内に入る死因であるため、本問の答えではない。
- ② 肺炎は高齢者を中心に死亡数が多く、死因別死亡数の上位を占める死因であるため、本問の答えではない。
- ③ 誤り。糖尿病は罹患者は多いが直接死因としての死亡数は相対的に少なく、死因別死亡数の10位以内には入らない。
- ④ 腎不全は死亡数が比較的多く、死因別死亡数の10位以内に含まれる死因であるため、本問の答えではない。
- ⑤ 不慮の事故は死亡数が多く、死因別死亡数の上位(10位以内)に入る死因であるため、本問の答えではない。
第62回 午前93(公衆衛生学)
介護保険について正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①予防給付がある。
- ②加入は任意である。
- ③介護老人保健施設への入所に適用する。
- ④第1号被保険者は40歳以上65歳未満である。
- ⑤要介護の認定は介護支援専門員(ケアマネージャー)が行う。
正答: ①予防給付がある。・③介護老人保健施設への入所に適用する。
ポイント
介護保険は40歳以上の国民が被保険者となる強制加入の社会保険で、市町村が保険者となる。要介護・要支援認定を受けた者にサービスを給付し、要支援者向けの予防給付がある。介護老人保健施設などの施設サービスにも適用される。したがって「予防給付がある」「介護老人保健施設への入所に適用する」が正しい。 ●被保険者=第1号被保険者(65歳以上)・第2号被保険者(40〜64歳の医療保険加入者、特定疾病で認定)。加入は強制(任意ではない)。 ●給付=介護給付(要介護者)・予防給付(要支援者)。 ●要介護認定=市町村に設置された介護認定審査会が審査・判定し、市町村が認定する(ケアマネージャーが行うのではない)。区分=要支援1・2、要介護1〜5。 ●施設サービス=介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設・介護医療院。保険者は市町村・特別区である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。介護保険には要支援者を対象とした予防給付があり、状態の悪化防止を目的としたサービスが提供される。
- ② 介護保険は40歳以上の国民が強制的に加入する社会保険であり、加入は任意ではないため誤りである。
- ③ 正しい。介護保険は介護老人保健施設などの施設サービスにも適用され、入所による介護給付が受けられる。
- ④ 第1号被保険者は65歳以上であり、40歳以上65歳未満は第2号被保険者であるため、本記述は誤りである。
- ⑤ 要介護認定は介護認定審査会の審査・判定に基づき市町村が行うものであり、ケアマネージャーが認定を行うのではないため誤りである。
第62回 午前94(公衆衛生学)
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における二類感染症はどれか。
- ①結核
- ②コレラ
- ③ラッサ熱
- ④細菌性赤痢
- ⑤エボラ出血熱
正答: ①結核
ポイント
感染症法では感染力や重篤性に応じて感染症を一〜五類などに分類する。二類感染症は感染力や罹患時の重篤性が高い感染症で、結核・ジフテリア・重症急性呼吸器症候群(SARS)・中東呼吸器症候群(MERS)・鳥インフルエンザ(H5N1・H7N9)・急性灰白髄炎(ポリオ)が含まれる。よって結核が二類感染症である。 ●一類感染症=エボラ出血熱・ラッサ熱・ペスト・痘そう・南米出血熱・マールブルグ病・クリミア・コンゴ出血熱。最も危険。 ●二類感染症=結核・ジフテリア・SARS・MERS・ポリオ・鳥インフルエンザ(H5N1・H7N9)。 ●三類感染症=コレラ・細菌性赤痢・腸チフス・パラチフス・腸管出血性大腸菌感染症。飲食物取扱業務などの就業制限の対象。 ●四類感染症=動物・媒介物を介する感染症(狂犬病・マラリア・デング熱など)。五類=後から発生動向を把握する感染症(インフルエンザ・梅毒・麻疹など)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。結核は感染力・重篤性が高い二類感染症に分類され、入院勧告や就業制限などの措置の対象となる。
- ② コレラは飲食物を介して集団発生する三類感染症に分類され、二類感染症ではないため誤りである。
- ③ ラッサ熱は致死率が高く危険性が極めて高い一類感染症に分類され、二類感染症ではないため誤りである。
- ④ 細菌性赤痢は経口感染する三類感染症に分類され、就業制限の対象だが二類感染症ではないため誤りである。
- ⑤ エボラ出血熱は致死率が高く最も危険な一類感染症に分類され、二類感染症ではないため誤りである。
第62回 午前95(医用工学概論)
細胞膜の電気的物性を近似した回路はどれか。
- ①キャパシタとインダクタの並列接続
- ②抵抗とインダクタの直列接続
- ③抵抗とインダクタの並列接続
- ④抵抗とキャパシタの直列接続
- ⑤抵抗とキャパシタの並列接続
正答: ⑤抵抗とキャパシタの並列接続
ポイント
細胞膜は脂質二重層が電気を蓄える絶縁体(キャパシタ=膜容量)として働き、イオンチャネルがイオンを通す電気抵抗(膜抵抗)として働く。両者は膜を挟んで並列に存在するため、細胞膜の電気的物性は抵抗とキャパシタ(コンデンサ)の並列接続で近似される。これにより膜は低周波を通しにくく高周波を通しやすい性質を示す。 ●細胞膜の等価回路=膜抵抗(イオンチャネル)と膜容量(脂質二重層)の並列接続。 ●膜容量=約1μF/cm²。膜の充放電が活動電位の立ち上がり・伝導速度に影響する。 ●インダクタ(コイル)は生体組織の電気的等価回路には通常含まれない。生体のインピーダンスは抵抗と容量成分で表され、周波数依存性を示す。 ●生体組織は周波数が高いほどインピーダンスが低下する。この性質を利用して体組成(体脂肪率)測定などが行われる。
選択肢ごとの解説
- ① キャパシタとインダクタの並列接続は共振回路であり、抵抗と容量で近似される細胞膜の電気的物性とは合致しないため誤りである。
- ② 抵抗とインダクタの直列接続は細胞膜の等価回路ではなく、膜には容量成分が含まれるため誤りである。
- ③ 抵抗とインダクタの並列接続も細胞膜の等価回路ではなく、コイル成分は生体膜の物性に含まれないため誤りである。
- ④ 抵抗とキャパシタの直列接続ではなく、細胞膜では膜抵抗と膜容量が並列に存在するため、この記述は誤りである。
- ⑤ 正しい。細胞膜は膜抵抗(イオンチャネル)と膜容量(脂質二重層)が並列に存在し、抵抗とキャパシタの並列接続で近似される。
第62回 午前96(医用工学概論)
変位を電気抵抗に変換するトランスデューサはどれか。
- ①CdS
- ②SQUID
- ③圧電素子
- ④サーミスタ
- ⑤ポテンショメータ
正答: ⑤ポテンショメータ
ポイント
ポテンショメータ(可変抵抗器)は摺動子の位置(変位)に応じて抵抗値が変化する素子で、変位を電気抵抗(電圧)に変換するトランスデューサである。直線変位や回転角の計測に用いられる。よってポテンショメータが正しい。トランスデューサは物理量を電気信号へ変換する素子で、変換する物理量により分類される。 ●変位→電気抵抗=ポテンショメータ・ひずみゲージ(抵抗線ひずみ計)。 ●光→電気=CdS(光導電セル、光で抵抗変化)・フォトダイオード。 ●温度→電気=サーミスタ(温度で抵抗変化)・熱電対。 ●圧力・力→電気=圧電素子(力で電圧発生)・ひずみゲージ式圧力センサ。磁場→電気=SQUID(超伝導量子干渉計、微小磁場検出)・ホール素子。 ●トランスデューサ(変換器)は計測対象の物理量を扱いやすい電気信号へ変換する素子で、生体計測機器の入力部で重要な役割を果たす。
選択肢ごとの解説
- ① CdS(硫化カドミウム)は光の強さで抵抗が変化する光導電素子であり、変位ではなく光を抵抗に変換するため誤りである。
- ② SQUIDは超伝導量子干渉を利用して微小な磁場を検出する素子であり、変位を電気抵抗に変換するものではないため誤りである。
- ③ 圧電素子は加えた力(圧力)に応じて電圧を発生する素子であり、変位を電気抵抗に変換するものではないため誤りである。
- ④ サーミスタは温度変化に応じて抵抗が変化する素子であり、変位ではなく温度を抵抗に変換するため誤りである。
- ⑤ 正しい。ポテンショメータは摺動子の位置(変位)に応じて抵抗値が変化する素子で、変位を電気抵抗に変換する。
📋 まとめの表を見る:トランスデューサ(センサ)の変換原理による分類
第62回 午前97(医用工学概論)
商用交流によるマクロショックで最小感知電流(mA)はどれか。
正答: ③1
ポイント
マクロショックは皮膚を介して体表から流れる電流による電撃で、商用交流(50/60Hz)における人体への影響は電流値で区分される。最小感知電流(人がぴりぴりと感じ始める電流)は約1mAである。これより大きくなると不随意運動を起こす離脱限界電流(約10mA)、さらに心室細動を起こす電流へと危険度が増す。 ●商用交流マクロショックの電流影響=最小感知電流 約1mA・離脱限界(手を離せなくなる)電流 約10mA・心室細動誘発電流 約100mA。 ●ミクロショック=心臓に直接電流が流れる場合で、心室細動誘発電流は約0.1mA(100μA)と極めて低い。 ●電撃の危険因子=電流値・通電時間・通電経路・周波数。商用周波数(50/60Hz)は心室細動を起こしやすい。 ●安全対策=医用接地・等電位化・絶縁・漏れ電流の管理。ミクロショック対策として心臓に近い導線の取扱いに注意する。
選択肢ごとの解説
- ① 0.01mAは商用交流のマクロショックでは感知されない微小電流であり、最小感知電流の値ではないため誤りである。
- ② 0.1mAはミクロショックでの心室細動誘発電流に近い値であり、マクロショックの最小感知電流ではないため誤りである。
- ③ 正しい。商用交流によるマクロショックの最小感知電流は約1mAで、これが人がぴりぴりと感じ始める電流値である。
- ④ 10mAはマクロショックで手を離せなくなる離脱限界電流に相当する値であり、最小感知電流ではないため誤りである。
- ⑤ 100mAはマクロショックで心室細動を誘発する危険な電流値であり、最小感知電流ではないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:感電(マクロショック・ミクロショック)の電流閾値
上記は成人男性の値であり、女性は男性の2/3、小児は1/2とされる。
第62回 午前98(医用工学概論)
ネットワーク情報システムの脆弱性の原因となるのはどれか。
- ①MACアドレスによる機器認証
- ②プロキシサーバの設置
- ③ファイアウォールの設置
- ④ファイル共有ソフトの導入
- ⑤パスワードの定期的な変更
正答: ④ファイル共有ソフトの導入
ポイント
ネットワーク情報システムの脆弱性とは、不正アクセスや情報漏洩を招く弱点のことである。ファイル共有ソフト(P2Pソフトなど)の導入は、ウイルス感染や意図しない情報流出の経路となり脆弱性の原因となる。他の選択肢(機器認証・プロキシ・ファイアウォール・パスワード定期変更)はいずれもセキュリティを高める対策である。 ●脆弱性を生む要因=ファイル共有ソフトの導入・脆弱なパスワード・未更新のソフトウェア(パッチ未適用)・不要なサービスの稼働。 ●セキュリティ対策=ファイアウォール・プロキシサーバ・MACアドレス等による機器認証・パスワード管理・暗号化・アクセス制御・ウイルス対策ソフト。 ●情報セキュリティの三要素=機密性(許可された者のみアクセス)・完全性(改ざん防止)・可用性(必要時に利用可能)。 ●医療情報システムでは患者情報の漏洩・改ざん防止が特に重要で、アクセスログの記録やバックアップも対策に含まれる。
選択肢ごとの解説
- ① MACアドレスによる機器認証は接続機器を制限するセキュリティ対策であり、脆弱性の原因ではないため誤りである。
- ② プロキシサーバの設置は通信を中継・制御してセキュリティを高める対策であり、脆弱性の原因ではないため誤りである。
- ③ ファイアウォールの設置は不正な通信を遮断するセキュリティ対策であり、脆弱性の原因ではないため誤りである。
- ④ 正しい。ファイル共有ソフトの導入はウイルス感染や情報流出の経路となり、ネットワークシステムの脆弱性の原因となる。
- ⑤ パスワードの定期的な変更は不正アクセスを防ぐセキュリティ対策であり、脆弱性の原因ではないため誤りである。
第62回 午前99(医用工学概論)
個人情報保護について誤っているのはどれか。
- ①個人情報には患者氏名が含まれる。
- ②臨床検査技師は法による守秘義務が課されている。
- ③患者から採取した検体は個人情報として取り扱う。
- ④患者は診療録開示請求により本人の診療録を閲覧できる。
- ⑤臨床検査終了後の残余検体は研究目的ならば自由に利用できる。
正答: ⑤臨床検査終了後の残余検体は研究目的ならば自由に利用できる。
ポイント
個人情報には患者氏名や検体など個人を識別できる情報が含まれ、臨床検査技師は臨床検査技師等に関する法律により守秘義務が課される。患者は診療録の開示請求により本人の記録を閲覧できる。一方、臨床検査終了後の残余検体であっても、研究目的での利用には倫理審査や本人の同意(インフォームド・コンセント)が必要であり、自由に利用してはならない。 ●個人情報=氏名・生年月日・住所など個人を識別できる情報。検体や検査データも該当。 ●守秘義務=臨床検査技師等に関する法律で規定。違反は罰則対象。 ●残余検体の研究利用=倫理指針に基づき倫理審査委員会の承認とインフォームド・コンセント(または適切な手続き)が必要で、自由には利用できない。 ●患者の権利=診療録開示請求権・自己決定権・プライバシー権。個人情報保護法は本人同意のない目的外利用や第三者提供を原則禁じている。
選択肢ごとの解説
- ① 個人情報には患者氏名が含まれ、個人を識別できる情報として保護対象であるため、正しい記述である。
- ② 臨床検査技師は臨床検査技師等に関する法律により業務上知り得た秘密の守秘義務が課されており、正しい記述である。
- ③ 患者から採取した検体は個人を識別し得る個人情報として取り扱う必要があり、正しい記述である。
- ④ 患者は診療録の開示請求を行うことにより本人の診療録を閲覧できる権利を有しており、正しい記述である。
- ⑤ 誤り。臨床検査終了後の残余検体でも、研究目的の利用には倫理審査や本人の同意が必要で、自由に利用することはできない。
第62回 午前100(医用工学概論)
分光光度計によって測定する吸光度で正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①0から1の値をとる。
- ②透過率の逆数で表す。
- ③混濁によって減少する。
- ④溶液の濃度に比例する。
- ⑤溶液の光路長に比例する。
正答: ④溶液の濃度に比例する。・⑤溶液の光路長に比例する。
ポイント
吸光度は溶液が光を吸収する程度を示す量で、入射光強度I0と透過光強度Iの比から A=log10(I0/I)=-log10(透過率) と定義される。Lambert-Beerの法則により、吸光度は溶液の濃度と光路長(セルの厚さ)にそれぞれ比例する。したがって「溶液の濃度に比例する」「溶液の光路長に比例する」が正しい。 ●Lambert-Beerの法則=A=ε×c×l(ε:モル吸光係数、c:濃度、l:光路長)。 ●吸光度=-log10(透過率)。透過率は0〜1(0〜100%)、吸光度は0以上の正の値をとる(負にはならない)。 ●混濁(濁り)は光を散乱させ見かけの吸光度を増加させるため、定量の誤差要因となる。比色分析では適切な波長と検量線を用いる。 ●分光光度計の構成=光源・分光器(モノクロメータ)・試料セル・検出器(光電子増倍管・フォトダイオード)。測定波長は最大吸収波長を選ぶ。
選択肢ごとの解説
- ① 吸光度は-log10(透過率)で定義され0以上の値をとり、1を超えることもある。0から1の値をとるのは透過率であり、吸光度は0から1の範囲に限られないため誤りである。
- ② 吸光度は透過率の逆数の対数(-log10 透過率)であり、透過率の逆数そのもので表すのではないため誤りである。
- ③ 混濁は光を散乱させ見かけの吸光度を増加させるため、混濁によって吸光度は減少するのではなく増加し、誤りである。
- ④ 正しい。Lambert-Beerの法則により吸光度は溶液の濃度に比例し、濃度測定の原理として用いられる。
- ⑤ 正しい。Lambert-Beerの法則により吸光度は溶液の光路長(セルの厚さ)に比例して大きくなる。
📋 まとめの表を見る:分光光度計の吸光度に影響する要因
吸光度はLambert-Beerの法則により、溶液の濃度と光路長の積に比例する(実測ではおよそ0〜2の範囲で測定する)。