第62回(2016) 臨床検査技師国家試験 午後1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第62回 午後1(臨床検査総論)
臥位に比べて座位で採血したときに高値となる血清成分はどれか。2つ選べ。
- ①尿酸
- ②総蛋白
- ③カリウム
- ④カルシウム
- ⑤クレアチニン
正答: ②総蛋白・④カルシウム
ポイント
臥位に比べて座位(立位)では重力により毛細血管内の静水圧が上昇し、水分など低分子の血漿成分が血管外(間質)へ移動して循環血漿が相対的に濃縮される。このため血管壁を通過できない高分子成分や蛋白に結合した成分が見かけ上高値となる。座位で高値となる代表が高分子の総蛋白と、約半量がアルブミンに結合して移動するカルシウムであり、いずれも血漿濃縮の影響を受けやすい。一方、尿酸・カリウム・クレアチニンなど低分子で蛋白に結合しない成分は血管壁を自由に行き来するため体位の影響をほとんど受けない。体位の影響を受ける項目を評価する際は採血姿勢を統一することが望ましい。●体位で高値となる(高分子・蛋白結合性)=総蛋白・アルブミン・カルシウム・脂質(コレステロール・中性脂肪)・酵素・赤血球数・ヘマトクリット。●体位の影響が小さい(低分子・非結合)=尿酸・カリウム・ナトリウム・クロール・クレアチニン・尿素窒素・グルコース。
選択肢ごとの解説
- ① 尿酸は低分子で血管壁を自由に通過するため、体位変換による血漿濃縮の影響をほとんど受けず変化しない。
- ② 正しい。総蛋白は高分子で血管外へ移動できず、座位での血漿濃縮により相対的に高値となる体位依存成分である。
- ③ カリウムは小分子の電解質で血管壁を自由に拡散するため、座位採血による濃縮の影響を受けず一定である。
- ④ 正しい。カルシウムは約半分が蛋白結合型で、座位での血漿濃縮(蛋白増加)に伴い総カルシウム値が高値となる。
- ⑤ クレアチニンは低分子で血管壁を通過するため、体位変換による血漿濃縮の影響を受けず値は変動しない。
第62回 午後2(臨床検査総論)
測定法の正確性の評価法でないのはどれか。
- ①直線性試験
- ②特異性試験
- ③添加回収試験
- ④同時再現性試験
- ⑤干渉物質の影響試験
正答: ④同時再現性試験
ポイント
正確性(真度)は測定値が真値からどれだけ偏っているか(系統誤差)を評価する概念で、直線性試験・特異性試験・添加回収試験・干渉物質の影響試験などで検証する。これに対し同時再現性試験は同一試料を同一条件で繰り返し測定したときのばらつき(偶然誤差)を評価するもので、精密性(精度)の評価法であり正確性の評価法ではない。正確性と精密性は分析法の性能を構成する別個の要素であり、混同してはならない。系統誤差を小さくすることが正確性の向上に、偶然誤差を小さくすることが精密性の向上に対応し、両者をあわせて分析法の信頼性を保証する。●正確性(真度)の評価法=添加回収試験・標準物質や標準法との比較・直線性試験・特異性試験・干渉物質の影響試験。●精密性(精度)の評価法=同時再現性試験(併行精度)・日差再現性試験(室内再現精度)・室間再現精度。
選択肢ごとの解説
- ① 直線性試験は測定濃度範囲で理論値どおりの直線関係が得られるかを調べる方法で、正確性の評価法である。
- ② 特異性試験は目的成分のみを正しく測定し他成分の影響を受けないかを調べる方法で、正確性の評価法である。
- ③ 添加回収試験は既知量を添加し回収率を求めて系統誤差を評価する代表的な正確性(真度)の評価法である。
- ④ 誤り。同時再現性試験は繰り返し測定のばらつきを評価する精密性の評価法であり、正確性の評価法ではない。
- ⑤ 干渉物質の影響試験は共存物質による測定値の偏りを調べる方法で、正確性(真度)の評価法である。
📋 まとめの表を見る:測定法の性能評価:正確度(真度)と精密度の違い
正確度と精密度を総合したものを「精確さ」という。
第62回 午後3(臨床検査総論)
尿沈渣のSternheimer染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB003.2145db4097.jpg

- ①硝子円柱
- ②脂肪円柱
- ③上皮円柱
- ④赤血球円柱
- ⑤白血球円柱
正答: ①硝子円柱
ポイント
硝子円柱は主にTamm-Horsfall蛋白(ウロモジュリン)からなる基質のみの円柱で、無染色では透明で屈折率が低く、Sternheimer染色では淡青色〜青色に染まる。図のように明瞭な細胞性封入物を認めない点が鑑別の要点である。健常者でも運動後や脱水時に少数みられる生理的円柱で、細胞成分や顆粒を含まない円柱の基本型をなす。これに対し他の円柱は内部の封入物や基質の性状から区別され、それぞれの所見から腎・尿路の病態が推定される。●基質のみの円柱=硝子円柱(無構造・透明、Sternheimer染色で青く染まる)。●封入物から区別する円柱=脂肪円柱(脂肪滴)・上皮円柱(尿細管上皮)・赤血球円柱(糸球体性血尿)・白血球円柱(腎盂腎炎など)・顆粒円柱(顆粒成分)。●ろう様円柱=均質で屈折の強い基質に注目して鑑別する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。図では円柱状の基質が青色に染まり、明瞭な細胞性封入物を認めない。Sternheimer染色で青く染まる硝子円柱に一致する。
- ② 脂肪円柱は内部に強い屈折を示す脂肪滴を含む円柱で、ネフローゼ症候群などで出現し無構造ではない。
- ③ 上皮円柱は剥離した尿細管上皮細胞を多数含む円柱で、尿細管障害時にみられ均一無構造ではないため異なる。
- ④ 赤血球円柱は内部に赤血球を含む円柱で、糸球体性血尿を示し急性糸球体腎炎などで出現するため異なる。
- ⑤ 白血球円柱は内部に白血球を含む円柱で、腎盂腎炎など腎実質の炎症で出現し無構造ではないため異なる。
📋 まとめの表を見る:尿沈渣円柱の種類・特徴と関連疾患
第62回 午後4(臨床検査総論)
尿中成分と疾患・病態の組合せで誤っているのはどれか。
- ①亜硝酸塩 — 急性糸球体腎炎
- ②ケトン体 — 飢餓状態
- ③ビリルビン — 閉塞性黄疸
- ④ヘモジデリン — 溶血性貧血
- ⑤Bence Jones蛋白 — 多発性骨髄腫
正答: ①亜硝酸塩 — 急性糸球体腎炎
ポイント
亜硝酸塩は尿中の細菌(大腸菌など腸内細菌科)が硝酸塩を還元して生じるもので、尿路感染症(細菌尿)を示唆する所見であり、急性糸球体腎炎との組合せは誤りである。急性糸球体腎炎では血尿・蛋白尿・赤血球円柱がみられるのが特徴で、亜硝酸塩は陽性とならない。その他の組合せはいずれも正しく、尿中成分は各病態を的確に反映する。尿試験紙や沈渣の所見は腎・尿路の病態評価に直結するため、各成分がどの病態を示すかを正確に対応づけて理解しておくことが本問の要点である。●尿試験紙・沈渣成分と病態=亜硝酸塩→尿路感染(細菌尿)、ケトン体→飢餓・糖尿病性ケトアシドーシス、ビリルビン→閉塞性・肝細胞性黄疸。●その他=ヘモジデリン→血管内溶血(溶血性貧血・発作性夜間ヘモグロビン尿症)、Bence Jones蛋白→多発性骨髄腫(単クローン性L鎖)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。亜硝酸塩は細菌が硝酸塩を還元して生じ尿路感染症を示すもので、急性糸球体腎炎との組合せは不適切である。
- ② ケトン体は飢餓状態や糖尿病で脂肪分解が亢進すると尿中に増加するため、飢餓状態との組合せは正しい。
- ③ ビリルビンは閉塞性黄疸で直接ビリルビンが血中に逆流し尿中へ排泄されるため、この組合せは正しい。
- ④ ヘモジデリンは溶血性貧血など血管内溶血で尿細管上皮に取り込まれ尿中に出現するため、この組合せは正しい。
- ⑤ Bence Jones蛋白は多発性骨髄腫で産生される単クローン性免疫グロブリンL鎖であり、この組合せは正しい。
📋 まとめの表を見る:尿中成分と疾患・病態
亜硝酸塩は細菌尿(尿路感染症)を示す所見であり、糸球体腎炎など非細菌性の腎疾患では陽性とならない点が組合せ問題で問われやすい。
第62回 午後5(臨床検査総論)
糞便の性状と疾患の組合せで正しいのはどれか。
- ①脂肪便 — 慢性膵炎
- ②粘血便 — ロタウイルス腸炎
- ③緑色便 — カンピロバクター腸炎
- ④タール便 — 直腸癌
- ⑤白色水様便 — 潰瘍性大腸炎
正答: ①脂肪便 — 慢性膵炎
ポイント
脂肪便は便中に脂肪が過剰に排泄される状態で、慢性膵炎では膵リパーゼなど消化酵素の分泌低下により脂肪の消化吸収が障害され、灰白色で悪臭を伴う脂肪便(脂肪性下痢)を生じるため、この組合せは正しい。他の組合せは病態と性状が対応しておらず誤りである。便の肉眼的性状は消化管病変の部位や種類を反映する重要な所見であり、出血部位や消化吸収状態の推定に役立つため、便の色調や性状とそれが示す疾患・病態の対応を正確に把握しておく必要がある。●便性状と病態=脂肪便→慢性膵炎・吸収不良症候群、粘血便→細菌性赤痢・アメーバ赤痢・潰瘍性大腸炎、タール便(黒色便)→上部消化管出血。●その他=白色(灰白色)便→閉塞性黄疸・ロタウイルス腸炎、鮮血便→下部消化管出血(痔・直腸癌)、米のとぎ汁様便→コレラ。便潜血反応は消化管出血のスクリーニングに用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。慢性膵炎では膵リパーゼ分泌低下で脂肪の消化吸収が障害され、悪臭を伴う灰白色の脂肪便を生じる。
- ② ロタウイルス腸炎は白色〜淡黄色の水様便が特徴で、粘血便を呈するのは細菌性腸炎であり組合せは誤りである。
- ③ カンピロバクター腸炎は粘血便や下痢を呈する細菌性腸炎で、緑色便を特徴とするわけではなく組合せは誤りである。
- ④ タール便は上部消化管出血で生じる黒色便であり、直腸癌では鮮血便となるため、この組合せは誤りである。
- ⑤ 潰瘍性大腸炎は粘血便を特徴とする大腸の炎症性疾患であり、白色水様便との組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:糞便の色調・性状と疾患
健常者の糞便はウロビリンやステルコビリンにより淡褐色〜黄褐色を呈する。灰白色便は総胆管結石・膵頭部癌など閉塞性黄疸で、いちごゼリー状粘血便はアメーバ赤痢で、米のとぎ汁様便はコレラでみられる。
第62回 午後6(臨床検査総論)
幼虫移行症を起こすのはどれか。2つ選べ。
- ①鞭虫
- ②旋尾線虫
- ③無鉤条虫
- ④有棘顎口虫
- ⑤日本住血吸虫
正答: ②旋尾線虫・④有棘顎口虫
ポイント
幼虫移行症は本来ヒトを固有宿主としない寄生虫の幼虫が体内に侵入し、成虫になれず幼虫のまま組織内を移行して障害を起こす病態である。旋尾線虫はホタルイカの生食で幼虫が腸壁や皮下を移行し、有棘顎口虫は淡水魚などの生食で幼虫が皮膚を移行する(皮膚爬行症)ため、いずれも幼虫移行症を起こす。これに対し固有宿主であるヒトの体内で成虫まで発育する鞭虫・無鉤条虫・日本住血吸虫は幼虫移行症を起こさない。幼虫移行症を起こすか否かは、ヒトがその寄生虫の固有宿主であるか中間宿主・非固有宿主であるかで決まる点が鑑別の要点である。●幼虫移行症を起こす寄生虫=旋尾線虫・顎口虫・イヌ/ネコ回虫(トキソカラ)・アニサキス・広東住血線虫。●ヒト体内で成虫になる(幼虫移行症ではない)=鞭虫・回虫・無鉤条虫・有鉤条虫・日本住血吸虫。
選択肢ごとの解説
- ① 鞭虫はヒトを固有宿主として大腸で成虫まで発育する線虫であり、幼虫移行症は起こさないため該当しない。
- ② 正しい。旋尾線虫はホタルイカの生食で幼虫が腸壁や皮下を移行し、幼虫移行症(腸閉塞・皮膚爬行症)を起こす。
- ③ 無鉤条虫はヒト小腸で成虫になる条虫で、牛肉の生食で感染するが幼虫移行症は起こさないため該当しない。
- ④ 正しい。有棘顎口虫は淡水魚などの生食で幼虫がヒト体内を移行し、皮膚爬行症などの幼虫移行症を起こす。
- ⑤ 日本住血吸虫はヒト体内で成虫まで発育し門脈系に寄生する吸虫であり、幼虫移行症は起こさないため該当しない。
第62回 午後7(臨床検査総論)
糞便検査で見いだされた体長約350 μmの幼線虫を別に示す。虫種を確定するために行う検査はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB007.3b1a4525ee.jpg

- ①厚層塗抹法
- ②薄層塗抹法
- ③ろ紙培養法
- ④飽和食塩水浮遊法
- ⑤ショ糖遠心沈殿浮遊法
正答: ③ろ紙培養法
ポイント
体長約350μmの幼線虫が糞便中に見いだされる場合、糞線虫(ストロンギロイデス)やイヌ鉤虫などが鑑別となり、虫種の確定にはろ紙培養法(Harada-Mori法)が用いられる。ろ紙に塗布した糞便を保温して培養し、幼虫を発育させたうえで糸状幼虫(感染型幼虫)の形態から虫種を同定する方法である。糞線虫は唯一ヒト体内で自家感染を起こし免疫不全下で重症化(過剰感染症候群)しうる線虫であり、確実な検出・同定が臨床的に重要である。培養により幼虫の発育段階の形態を観察できる点が確定診断に適する。●幼虫の培養・検出法=ろ紙培養法(Harada-Mori法)・寒天平板培養法(糞線虫の検出に有用)・普通寒天平板法。●虫卵の検出・濃縮法=直接塗抹法・飽和食塩水浮遊法(鉤虫卵など)・ホルマリン・エーテル(MGL)法・ショ糖遠心沈殿浮遊法。
選択肢ごとの解説
- ① 厚層塗抹法(Kato法)は糞便を厚く塗抹して虫卵を検出する方法であり、幼虫の培養・同定には用いない。
- ② 薄層塗抹法は糞便を薄く塗抹して虫卵などを観察する方法であり、幼虫を発育させる培養法ではない。
- ③ 正しい。ろ紙培養法は糞便を保温培養して幼虫を糸状幼虫まで発育させ、その形態から虫種を確定する方法である。
- ④ 飽和食塩水浮遊法は比重差で鉤虫卵などを浮遊濃縮する虫卵検出法であり、幼虫の同定培養には適さない。
- ⑤ ショ糖遠心沈殿浮遊法は虫卵やオーシストを濃縮する検出法であり、幼虫を培養して虫種同定する方法ではない。
📋 まとめの表を見る:寄生虫の糞便検査法と検出対象
アニサキス症は虫卵・虫体が糞便に出ないため、糞便検査ではなく内視鏡検査で虫体を直接確認・摘出する。
第62回 午後8(臨床検査総論)
プラスミドで誤っているのはどれか。
- ①核内で複製される。
- ②環状のDNAである。
- ③接合によって伝達される。
- ④薬剤耐性因子の1つである。
- ⑤染色体とは独立した遺伝体である。
正答: ①核内で複製される。
ポイント
プラスミドは細菌の細胞質に存在する染色体とは独立した環状二本鎖DNAで、染色体とは別に自律的に複製される。細菌(原核生物)には核膜がなく核は存在しないため「核内で複製される」は誤りで、プラスミドは細胞質内で複製される。プラスミドは薬剤耐性遺伝子(Rプラスミド)や病原性因子を担い、接合(接合伝達)によって菌から菌へ水平伝達されることで耐性が拡散する点が臨床的に重要である。耐性菌の出現・拡大の機構として、プラスミドの構造・複製の場・伝達様式を正しく理解しておくことが本問の要点である。●プラスミドの性質=環状二本鎖DNA・細胞質に存在・染色体と独立に自律複製・接合や形質導入で伝達・薬剤耐性や病原性を担う。●細菌(原核生物)の構造=核膜なし(核様体)・ミトコンドリアなし・ペプチドグリカン細胞壁・70Sリボソーム。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。細菌には核膜(核)がなくプラスミドは細胞質内で複製されるため、核内で複製されるという記述は誤りである。
- ② プラスミドは染色体とは別個の環状二本鎖DNAであり、環状のDNAであるというこの記述は正しい。
- ③ プラスミドは接合(接合伝達)によって他の菌へ水平伝達され、薬剤耐性などを拡散させるためこの記述は正しい。
- ④ プラスミドは薬剤耐性遺伝子を担うRプラスミドとして知られ、薬剤耐性因子の1つであるという記述は正しい。
- ⑤ プラスミドは染色体とは独立して存在し自律複製する遺伝因子であり、独立した遺伝体であるという記述は正しい。
第62回 午後9(臨床検査総論)
染色体の構造と細胞周期について正しいのはどれか。
- ①テロメアは染色体の中央に位置する。
- ②核膜が消失するのは細胞周期のS期である。
- ③体細胞が分裂するたびにテロメアは短くなる。
- ④テロメアは細胞分裂時の紡錘糸の着糸点となる。
- ⑤DNA量が増加するのは細胞周期のM期である。
正答: ③体細胞が分裂するたびにテロメアは短くなる。
ポイント
テロメアは染色体末端に存在する反復配列で、染色体末端を保護し、DNA複製の際の末端複製問題により体細胞が分裂するたびに短縮していく。一定以上短縮すると細胞は分裂を停止(細胞老化)するため「分裂のたびに短くなる」は正しい。テロメアは中央ではなく末端に位置し、細胞分裂時の紡錘糸の着糸点はセントロメア(動原体)である。核膜が消失するのはM期(分裂期)であり、DNA量が倍加(合成)されるのはS期である。細胞周期の各期で起こる現象と染色体構造の各要素の位置・役割を正確に対応づけて把握することが本問の要点である。●細胞周期=G1期→S期(DNA合成・複製)→G2期→M期(分裂・核膜消失)。●染色体の構造=テロメア(末端・分裂で短縮・テロメラーゼが伸長)・セントロメア(中央付近・着糸点)・複製はS期に行われる。
選択肢ごとの解説
- ① テロメアは染色体の末端に位置する構造であり、中央に位置するというこの記述は明らかに誤りである。
- ② 核膜が消失するのはM期(分裂期)であり、S期はDNA合成期であるため、この記述は誤りである。
- ③ 正しい。体細胞は末端複製問題によりテロメアが分裂のたびに短縮し、一定以上短縮すると細胞老化に至る。
- ④ 細胞分裂時の紡錘糸の着糸点はセントロメア(動原体)であり、テロメアではないため、この記述は誤りである。
- ⑤ DNA量が増加(複製)するのは細胞周期のS期であり、M期ではないため、この記述は誤りである。
第62回 午後10(臨床検査総論)
Klinefelter症候群の核型はどれか。
- ①45,X
- ②46,XY
- ③47,XXY
- ④47,XYY
- ⑤47,XX,+21
正答: ③47,XXY
ポイント
Klinefelter症候群はX染色体が過剰なため核型47,XXYを示す男性の性染色体異常で、精巣の発育不全(無精子症・不妊)、女性化乳房、高身長、二次性徴の遅延を特徴とする。減数分裂時の性染色体不分離により生じる。45,XはTurner症候群(低身長・性腺発育不全の女性)、47,XYYはXYY症候群、47,XX,+21はDown症候群(21トリソミー)であり、46,XYは正常男性核型であるため、いずれも該当しない。核型から疾患を判別するには性染色体と常染色体の異常を区別して把握することが重要である。●性染色体異常=Klinefelter症候群(47,XXY・男性)、Turner症候群(45,X・女性)、XYY症候群(47,XYY)、トリプルX症候群(47,XXX)。●常染色体異常=Down症候群(21トリソミー)・Edwards症候群(18トリソミー)・Patau症候群(13トリソミー)。
選択肢ごとの解説
- ① 45,XはTurner症候群の核型で、低身長・性腺発育不全を呈する女性であり、Klinefelter症候群ではない。
- ② 46,XYは正常な男性の核型であり、染色体異常を示すKlinefelter症候群の核型ではないため該当しない。
- ③ 正しい。Klinefelter症候群はX染色体過剰による47,XXYの核型を示し、精巣発育不全・女性化乳房を呈する男性である。
- ④ 47,XYYはXYY症候群の核型でありY染色体過剰によるもので、Klinefelter症候群の核型ではない。
- ⑤ 47,XX,+21はDown症候群(21トリソミー)の核型であり、性染色体異常のKlinefelter症候群ではない。
📋 まとめの表を見る:染色体数的異常症候群の分類と核型
第62回 午後11(臨床検査医学総論)
拍動を触診できない動脈はどれか。
- ①総頸動脈
- ②腕頭動脈
- ③腋窩動脈
- ④膝窩動脈
- ⑤後脛骨動脈
正答: ②腕頭動脈
ポイント
腕頭動脈(無名動脈)は大動脈弓から最初に分岐し胸郭内(縦隔内)を走行する太い動脈で、体表から深い位置にあるため拍動を直接触診することはできない。他の総頸動脈(頸部)・腋窩動脈(腋窩)・膝窩動脈(膝裏)・後脛骨動脈(内果後方)はいずれも体表近くを走行し、拍動を触知できる動脈である。脈拍の触知部位は末梢循環状態や動脈の閉塞・狭窄の評価に用いられるため、体表で触知できる動脈とできない深部の動脈の走行・部位を把握しておくことが診察上重要であり、本問の要点となる。●体表で拍動を触知できる動脈=総頸動脈・浅側頭動脈・上腕動脈・橈骨動脈・大腿動脈・膝窩動脈・後脛骨動脈・足背動脈。●深部にあり触知できない動脈=腕頭動脈(縦隔内)・大動脈・腎動脈・冠動脈など体表から離れた動脈。動脈の触知は脈拍数・リズム・左右差の評価に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 総頸動脈は頸部の胸鎖乳突筋前縁で体表近くを走行するため、拍動を容易に触知することができる動脈である。
- ② 誤り。腕頭動脈は大動脈弓から分岐し胸郭内(縦隔内)を走行する深部の動脈であり、拍動を触診できない。
- ③ 腋窩動脈は腋窩部で比較的体表に近い位置を走行するため、拍動を触知することができる動脈である。
- ④ 膝窩動脈は膝関節の後面(膝窩)を走行するため、膝を軽く曲げると拍動を触知することができる動脈である。
- ⑤ 後脛骨動脈は内果(内くるぶし)のすぐ後方を走行するため、拍動を触知することができる動脈である。
第62回 午後12(臨床検査医学総論)
RNAウイルスはどれか。2つ選べ。
- ①EBウイルス
- ②アデノウイルス
- ③インフルエンザウイルス
- ④サイトメガロウイルス
- ⑤デング熱ウイルス
正答: ③インフルエンザウイルス・⑤デング熱ウイルス
ポイント
インフルエンザウイルス(オルソミクソウイルス科)とデング熱ウイルス(フラビウイルス科)はいずれもゲノムにRNAをもつRNAウイルスである。一方、EBウイルス・サイトメガロウイルスはともにヘルペスウイルス科に属するDNAウイルスであり、アデノウイルス(アデノウイルス科)もDNAウイルスであるため、これらは該当しない。ウイルスは核酸の種類によりDNAウイルスとRNAウイルスに大別され、構造や複製様式が異なる。代表的ウイルスを核酸の種類で分類して把握しておくことが本問の要点である。●主なRNAウイルス=インフルエンザ・デング・ポリオ・麻疹・風疹・コロナ・ノロ・ロタ・HIV・C型肝炎・日本脳炎ウイルス。●主なDNAウイルス=ヘルペス(EB・サイトメガロ・水痘帯状疱疹)・アデノ・パピローマ・B型肝炎・痘瘡ウイルス。
選択肢ごとの解説
- ① EBウイルスはヘルペスウイルス科に属するDNAウイルスであり、RNAウイルスではないため該当しない。
- ② アデノウイルスはアデノウイルス科に属するDNAウイルスであり、RNAウイルスではないため該当しない。
- ③ 正しい。インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科に属し、分節型RNAをもつRNAウイルスである。
- ④ サイトメガロウイルスはヘルペスウイルス科に属するDNAウイルスであり、RNAウイルスではないため該当しない。
- ⑤ 正しい。デング熱ウイルスはフラビウイルス科に属するRNAウイルスで、蚊(ネッタイシマカ)が媒介する。
📋 まとめの表を見る:ウイルスの核酸型による分類(DNAウイルス・RNAウイルス)
既存の『主なウイルスと疾患』表と切り口が異なる(核酸型による分類)。DNAウイルス一覧は教科書記載、RNAウイルス一覧は確立されたウイルス学の一般知識で補完。
第62回 午後13(臨床検査医学総論)
全身性エリテマトーデス(SLE)の特徴として正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①光線過敏症が出現する。
- ②高齢者になってから発症する。
- ③男性に多い。
- ④白血球が増加する。
- ⑤発熱がみられる。
正答: ①光線過敏症が出現する。・⑤発熱がみられる。
ポイント
全身性エリテマトーデス(SLE)は若年〜中年の女性に好発する自己免疫疾患で、抗核抗体・抗DNA抗体などの自己抗体により全身の臓器が障害される。紫外線で増悪する光線過敏症や蝶形紅斑などの皮膚症状、発熱・全身倦怠感などの全身症状が高頻度にみられるため、これらが正しい。SLEでは白血球は減少(白血球減少・リンパ球減少)し、男性より女性に圧倒的に多く、若年で発症する点に注意する。好発年齢・性別と多臓器に及ぶ症状、および関連する自己抗体を結びつけて理解することが本問の要点である。●SLEの特徴=若年女性に好発・光線過敏症・蝶形紅斑・発熱・関節炎・腎障害(ループス腎炎)・汎血球減少。●関連自己抗体=抗核抗体(スクリーニング)・抗二本鎖DNA抗体・抗Sm抗体(疾患特異的)・抗リン脂質抗体。皮膚症状ではディスコイド疹や口腔内潰瘍もみられる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。SLEでは紫外線曝露で皮疹が増悪する光線過敏症がみられ、これは分類基準の一つとされている。
- ② SLEは若年〜中年の女性で発症することが多く、高齢者になってから発症するという記述は誤りである。
- ③ SLEは女性に圧倒的に多い疾患であり、男性に多いという記述は誤りであるため正しい特徴ではない。
- ④ SLEでは白血球(特にリンパ球)が減少することが多く、白血球が増加するという記述は誤りである。
- ⑤ 正しい。SLEでは発熱・全身倦怠感などの全身症状が高頻度にみられ、疾患の活動性の指標ともなる。
第62回 午後14(臨床検査医学総論)
陽性の場合、確定診断に適している検査の特徴はどれか。2つ選べ。
- ①感度が高い。
- ②特異度が高い。
- ③陰性適中率が高い。
- ④陰性尤度比が高い。
- ⑤陽性尤度比が高い。
正答: ②特異度が高い。・⑤陽性尤度比が高い。
ポイント
陽性のとき確定診断に適した検査とは、陽性であれば真に疾患がある確率が高い検査であり、特異度が高いこと・陽性尤度比が高いことが条件となる。特異度が高ければ偽陽性が少なく、陽性結果が疾患の存在を強く支持する(rule in)。陽性尤度比=感度/(1−特異度)が大きいほど検査後オッズが上がり確定診断に有用である。これに対し感度や陰性適中率が高く、陰性尤度比が低い検査は、陰性で疾患を除外する(rule out)のに適する。疾患を確定する(rule in)場合と除外する(rule out)場合とで重視すべき検査指標が異なる点を正確に区別することが本問の要点である。●確定(rule in)に適する=特異度が高い・陽性尤度比が高い(陽性で疾患を確定)。●除外(rule out)に適する=感度が高い・陰性尤度比が低い(陰性で疾患を除外、SnNout)。
選択肢ごとの解説
- ① 感度が高い検査は陰性で疾患を除外する(rule out)のに適しており、陽性での確定診断の根拠とはならない。
- ② 正しい。特異度が高い検査は偽陽性が少なく、陽性結果が疾患の存在を強く支持するため確定診断に適する。
- ③ 陰性適中率が高いのは陰性結果の意義に関わる指標であり、陽性での確定診断の適性を示すものではない。
- ④ 陰性尤度比は陰性結果が疾患を除外する強さを示す指標であり、陽性での確定診断の根拠とはならない。
- ⑤ 正しい。陽性尤度比が高い検査は陽性で検査後オッズが大きく上昇するため、疾患の確定診断に適する。
📋 まとめの表を見る:検査指標のまとめ:確定診断(rule in)・除外診断(rule out)適性と有病率依存性
第62回 午後15(臨床検査医学総論)
髄液検査で細胞数4/μL、蛋白質76 mg/dL、グルコース52 mg/dLであった。考えられるのはどれか。
- ①Guillain-Barré症候群
- ②化膿性髄膜炎
- ③くも膜下出血
- ④結核性髄膜炎
- ⑤日本脳炎
正答: ①Guillain-Barré症候群
ポイント
Guillain-Barré症候群は末梢神経の脱髄を主体とする自己免疫性疾患で、髄液所見として細胞数が正常(増加しない)にもかかわらず蛋白質が増加する蛋白細胞解離が特徴である。本例は細胞数4/μL(正常)・蛋白76mg/dL(高値)・グルコース52mg/dL(正常)で蛋白細胞解離を示し、Guillain-Barré症候群が考えられる。化膿性・結核性髄膜炎では細胞数増加と糖低下、くも膜下出血では血性髄液がみられ、いずれも本例とは所見が異なる。髄液の細胞数・蛋白・糖の組合せから病態を判別することが要点である。●Guillain-Barré症候群=蛋白細胞解離(細胞数正常・蛋白増加)・発症2週間ほどで顕著となる。●髄膜炎の髄液=化膿性(多核球増加・糖著減)・結核性(リンパ球増加・糖低下)・ウイルス性(リンパ球増加・糖正常)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。本例は細胞数正常・蛋白増加の蛋白細胞解離を示し、末梢神経脱髄を来すGuillain-Barré症候群に合致する。
- ② 化膿性髄膜炎では好中球を主体とした細胞数の著増と糖の著明な低下がみられ、本例の所見とは異なる。
- ③ くも膜下出血では血性(あるいはキサントクロミー)の髄液となるため、本例の所見とは合致しない。
- ④ 結核性髄膜炎ではリンパ球増加・糖低下・蛋白増加がみられるため、細胞数正常の本例とは所見が異なる。
- ⑤ 日本脳炎などウイルス性ではリンパ球主体の細胞数増加がみられるため、細胞数正常の本例とは合致しない。
第62回 午後16(臨床生理学)
急性心筋梗塞の心電図を別に示す。梗塞部位で正しいのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB016.dc372453ce.jpg

正答: ④下壁
ポイント
下壁梗塞ではII・III・aVF誘導にST上昇・異常Q波・冠性T波が出現する。これらの誘導は心臓の下壁(横隔膜面)を反映し、右冠動脈の閉塞によって生じることが多い。本図はこれらの下壁誘導に梗塞所見を認めるため、下壁梗塞と判断される。心筋梗塞の部位は心電図上のST変化が出現する誘導の組合せから推定され、責任冠動脈の同定にも役立つため、誘導と梗塞部位および責任血管の対応を正確に把握することが本問の要点である。●梗塞部位と誘導=前壁中隔(V1〜V4)・側壁(I・aVL・V5・V6)・広範前壁(V1〜V6・I・aVL)・下壁(II・III・aVF)。●責任冠動脈=前壁中隔→左前下行枝、側壁→左回旋枝、下壁→右冠動脈(または左回旋枝)、純後壁→右冠動脈・左回旋枝。発症直後はST上昇、その後に異常Q波と冠性T波が経時的に出現する。
選択肢ごとの解説
- ① 広範囲前壁梗塞はV1〜V6・I・aVLに広くST変化が及ぶもので、下壁誘導中心の本図の所見とは異なる。
- ② 前壁中隔梗塞はV1〜V4にST上昇がみられるもので、II・III・aVF中心の本図の所見とは異なる。
- ③ 側壁梗塞はI・aVL・V5・V6にST変化がみられるもので、下壁誘導中心の本図の所見とは異なる。
- ④ 正しい。II・III・aVFのST上昇・異常Q波は下壁梗塞の所見で、右冠動脈の閉塞によることが多い。
- ⑤ 純後壁梗塞はV1・V2でR波増高・ST低下を示すもので、下壁誘導の所見が主体の本図とは異なる。
📋 まとめの表を見る:不整脈・心筋梗塞の心電図所見
第62回 午後17(臨床生理学)
血管内皮機能検査はどれか。
- ①加速度脈波(APG)
- ②指尖容積脈波(DPG)
- ③脈波伝播速度(PWV)
- ④足関節上腕血圧比(ABI)
- ⑤血流依存性血管拡張反応(FMD)
正答: ⑤血流依存性血管拡張反応(FMD)
ポイント
血流依存性血管拡張反応(FMD)は、上腕を駆血して解除した際に血流増加(ずり応力)に反応して血管内皮から放出される一酸化窒素(NO)により上腕動脈が拡張する程度を超音波で測定する検査で、血管内皮機能を非侵襲的に評価する代表的方法である。内皮機能障害は動脈硬化の最も初期の変化を反映する。これに対し他の検査は脈波や血圧比から動脈壁の硬さや末梢循環を評価するもので、内皮機能を直接みるものではない。内皮機能検査と動脈硬化・末梢循環検査を区別して把握することが要点である。●血管内皮機能検査=FMD(血流依存性血管拡張反応)・RH-PAT(反応性充血末梢動脈トノメトリー)。●動脈硬化・末梢循環の検査=PWV(脈波伝播速度・血管壁硬化)・ABI(足関節上腕血圧比・下肢動脈閉塞)・CAVI・加速度脈波。内皮機能低下は動脈硬化の最も早期に現れる可逆性の変化である。
選択肢ごとの解説
- ① 加速度脈波(APG)は指尖容積脈波を微分して血管老化の程度を評価する検査であり、内皮機能を直接みるものではない。
- ② 指尖容積脈波(DPG)は末梢の血液量変化を記録する検査であり、血管内皮機能の評価法ではないため該当しない。
- ③ 脈波伝播速度(PWV)は動脈壁の硬さ(動脈硬化)を評価する検査であり、血管内皮機能検査ではない。
- ④ 足関節上腕血圧比(ABI)は下肢動脈の狭窄・閉塞を評価する検査であり、血管内皮機能検査ではない。
- ⑤ 正しい。FMDは駆血解除後の血流増加に伴うNO依存性の上腕動脈拡張を測定する血管内皮機能検査である。
📋 まとめの表を見る:血管機能検査(APG・DPG・PWV・ABI・FMD)の評価対象
第62回 午後18(臨床生理学)
健常成人における呼吸運動とその調節について正しいのはどれか。
- ①呼吸中枢は大脳皮質に存在する。
- ②横隔膜の収縮により吸気が生じる。
- ③安静呼気は呼気筋の能動的収縮により生じる。
- ④動脈血酸素分圧の低下により換気は減少する。
- ⑤動脈血二酸化炭素分圧の上昇により換気は減少する。
正答: ②横隔膜の収縮により吸気が生じる。
ポイント
吸気は主に横隔膜が収縮して下降し胸腔容積が拡大することで生じる能動的過程であり、横隔膜の収縮により吸気が生じるという記述が正しい。呼吸中枢は大脳皮質ではなく延髄・橋に存在する。安静時の呼気は吸気筋の弛緩と肺の弾性復元力による受動的過程で、呼気筋の能動的収縮を要しない。動脈血二酸化炭素分圧(PaCO₂)の上昇や動脈血酸素分圧(PaO₂)の低下はいずれも化学受容体を介して換気を増加させる方向に働く。呼吸運動と化学的調節の仕組みを正確に理解することが本問の要点である。●呼吸の調節=呼吸中枢は延髄・橋・中枢化学受容体はCO₂/H+に反応・末梢化学受容体(頸動脈小体)はO₂低下に反応。●呼吸運動=吸気は横隔膜・外肋間筋の収縮(能動的)・安静呼気は弾性復元力による受動的・努力呼気で内肋間筋など呼気筋が働く。
選択肢ごとの解説
- ① 呼吸中枢は延髄・橋に存在しており、大脳皮質に存在するというこの記述は誤りであるため正しくない。
- ② 正しい。横隔膜が収縮して下降すると胸腔容積が拡大し、吸気が生じる能動的過程であるためこの記述は正しい。
- ③ 安静呼気は肺の弾性復元力による受動的過程で生じるため、呼気筋の能動的収縮によるという記述は誤りである。
- ④ 動脈血酸素分圧の低下は末梢化学受容体を刺激して換気を増加させるため、換気が減少するという記述は誤りである。
- ⑤ 動脈血二酸化炭素分圧の上昇は中枢化学受容体を刺激して換気を増加させるため、減少するという記述は誤りである。
第62回 午後19(臨床生理学)
ガス希釈法による測定が必要な肺気量分画はどれか。
- ①肺活量
- ②一回換気量
- ③最大吸気量
- ④予備呼気量
- ⑤機能的残気量
正答: ⑤機能的残気量
ポイント
機能的残気量(FRC)は安静呼気位で肺内に残る空気量で、残気量を含むためスパイロメータで直接測定することができず、ガス希釈法(ヘリウム閉鎖回路法・窒素洗い出し法)や体プレチスモグラフを用いて測定する。残気量・全肺気量も同様にガス希釈法などで測定する。一方、肺活量・一回換気量・最大吸気量・予備呼気量はいずれも安静呼気位や最大吸気位からの呼出入で測定できるため、スパイロメータで直接測定可能である。スパイロメータで直接測定できる分画と、ガス希釈法など特殊な方法を要する分画を区別して把握することが本問の要点である。●ガス希釈法など特殊な測定が必要=機能的残気量(FRC)・残気量(RV)・全肺気量(TLC)。●スパイロメータで直接測定可能=一回換気量・予備吸気量・予備呼気量・肺活量・最大吸気量。全肺気量は肺活量と残気量の和で表される。残気量を含む分画は体プレチスモグラフでも測定できる。
選択肢ごとの解説
- ① 肺活量は最大吸気位から最大呼気位までの呼出量であり、スパイロメータで直接測定でき、ガス希釈法は不要である。
- ② 一回換気量は安静時の1回の呼吸量であり、スパイロメータで直接測定できるため、ガス希釈法は不要である。
- ③ 最大吸気量は安静呼気位から最大吸気位までの量であり、スパイロメータで直接測定でき、ガス希釈法は不要である。
- ④ 予備呼気量は安静呼気位からさらに呼出できる量であり、スパイロメータで直接測定でき、ガス希釈法は不要である。
- ⑤ 正しい。機能的残気量は残気量を含みスパイロメータで測れず、ガス希釈法や体プレチスモグラフで測定する。
📋 まとめの表を見る:呼吸機能検査:測定項目と測定方法
第62回 午後20(臨床生理学)
静肺コンプライアンスが上昇するのはどれか。
- ①肺気腫
- ②肺線維症
- ③高度肥満
- ④神経筋疾患
- ⑤脊柱側弯症
正答: ①肺気腫
ポイント
静肺コンプライアンスは肺の膨らみやすさ(単位圧変化あたりの容積変化)を表し、肺気腫では肺胞壁の弾性線維が破壊されて肺の弾性収縮力が低下するため、肺は膨らみやすくなりコンプライアンスは上昇する。一方、肺線維症(間質性肺炎)では肺が硬くなりコンプライアンスは低下する。高度肥満・神経筋疾患・脊柱側弯症は胸郭や呼吸筋の問題で拘束性換気障害を来すが、肺そのものの膨らみやすさを上昇させるものではない。コンプライアンスが上昇する病態と低下する病態を区別することが本問の要点である。●コンプライアンスが上昇=肺気腫(弾性収縮力の低下)・加齢による肺の弾性低下。●コンプライアンスが低下=肺線維症・間質性肺炎・肺うっ血・無気肺・肺水腫(肺が硬くなる拘束性障害)。高度肥満・神経筋疾患・脊柱側弯症は肺外性の拘束性換気障害を来す。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。肺気腫では肺胞壁の弾性線維破壊で弾性収縮力が低下し、肺が膨らみやすく静肺コンプライアンスが上昇する。
- ② 肺線維症では肺が硬くなり膨らみにくくなるため、静肺コンプライアンスは低下するものであり上昇しない。
- ③ 高度肥満は胸郭の動きを制限する拘束性障害を来すが、肺自体のコンプライアンスを上昇させるものではない。
- ④ 神経筋疾患は呼吸筋力低下による換気障害を来すが、肺の静コンプライアンスを上昇させるものではない。
- ⑤ 脊柱側弯症は胸郭変形による拘束性障害を来すが、肺の静コンプライアンスを上昇させるものではない。
第62回 午後21(臨床生理学)
肺拡散能(DLCO)が高値を呈するのはどれか。
正答: ⑤高地での測定
ポイント
肺拡散能(DLCO)は肺胞から毛細血管血への一酸化炭素の移行のしやすさを示す指標で、高地での測定では低酸素により肺血管系の血流分布が変化することや測定条件の影響でみかけ上高値を示す。また肺胞内出血や多血症・左右短絡でも上昇する。一方、貧血ではヘモグロビン減少により拡散能は低下し、肺気腫では拡散面積の減少、間質性肺炎では肺胞毛細血管膜の障害により低下する。喫煙者も血中の一酸化炭素ヘモグロビン増加で低下する。高値・低値となる病態を区別して把握することが本問の要点である。●DLCOが高値=肺胞出血・多血症・左右短絡・運動・高地での測定。●DLCOが低値=貧血・肺気腫・間質性肺炎(肺線維症)・肺塞栓・肺切除後・喫煙者(一酸化炭素ヘモグロビン増加の影響)。DLCOはヘモグロビン量・ガス交換面積・膜の厚さに左右される。
選択肢ごとの解説
- ① 貧血ではヘモグロビン量が減り一酸化炭素を結合する能力が低下するため、肺拡散能は低値となるため該当しない。
- ② 喫煙者は血中の一酸化炭素ヘモグロビンが増加し測定上の拡散能が低下するため、高値とはならず該当しない。
- ③ 肺気腫では肺胞壁の破壊により拡散面積が減少するため、肺拡散能は低値となり高値とはならない。
- ④ 間質性肺炎では肺胞毛細血管膜の肥厚・障害により拡散が妨げられ、肺拡散能は低値となるため該当しない。
- ⑤ 正しい。高地での測定は低酸素による肺血流分布や測定条件の影響で、肺拡散能がみかけ上高値を呈する。
📋 まとめの表を見る:肺拡散能力〈DLco〉が変化する病態
成人では加齢とともにDLcoは減少する。
第62回 午後22(臨床生理学)
心窩部斜走査による超音波像を別に示す。矢印で示すのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB022.49c411fdba.jpg

- ①音響陰影
- ②外側陰影
- ③鏡面現象
- ④多重反射
- ⑤後方エコー増強
正答: ①音響陰影
ポイント
音響陰影(acoustic shadow)は、結石・石灰化・ガスなど超音波を強く反射または吸収する構造の後方に、超音波が到達せず生じる無エコー(黒い帯状)の陰影である。胆石・尿路結石・石灰化病変の診断に有用で、矢印が強反射体の後方の黒い帯を指していれば音響陰影と判断される。これは超音波の物理的特性に由来するアーチファクト(虚像)の一種であり、構造物の性状推定に利用される。各アーチファクトの発生機序と所見を区別して把握することが本問の要点である。●超音波アーチファクト=音響陰影(強反射体の後方の無エコー)・後方エコー増強(嚢胞など液体貯留の後方)・多重反射(平行な反射面間の繰り返し)。●その他=外側陰影(円形構造の辺縁の屈折)・鏡面現象(横隔膜などでの虚像)・サイドローブ・コメットエコー。音響陰影や後方エコー増強は結石・嚢胞の鑑別に有用である。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。音響陰影は結石や石灰化など強反射・吸収体の後方に超音波が届かず生じる無エコーの帯状陰影である。
- ② 外側陰影は嚢胞など円形構造の辺縁で超音波が屈折して生じる細い陰影で、強反射体後方の音響陰影とは異なる。
- ③ 鏡面現象は横隔膜などの強反射面で生じる虚像のアーチファクトであり、後方の無エコー陰影とは異なる。
- ④ 多重反射は平行な反射面の間で超音波が往復して生じる繰り返しエコーであり、音響陰影とは異なる現象である。
- ⑤ 後方エコー増強は嚢胞など液体貯留部の後方が明るく描出される現象で、無エコーとなる音響陰影とは逆の所見である。
第62回 午後23(臨床生理学)
総頸動脈の超音波像を別に示す。内中膜複合体厚(IMT)はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB023.63463b3f09.jpg

正答: ③
ポイント
内中膜複合体厚(IMT)は、動脈壁の内膜表面(管腔側)から中膜と外膜の境界までの厚さを指し、超音波Bモードでは管腔側の高エコー層と外側の高エコー層に挟まれた部分として計測する。総頸動脈のIMTの肥厚は全身の動脈硬化の指標であり、頸動脈エコーで非侵襲的に評価される。本図では血管壁内側の二層構造(内中膜複合体)に相当する部分を示す番号がIMTである。計測は遠位壁(後壁)で行い、1.1mm以上を肥厚とすることが多い。壁構造とIMTの計測部位を正確に把握することが要点である。●IMTの計測=内膜表面から中膜外膜境界まで・遠位壁(後壁)で計測・1.1mm以上で肥厚・動脈硬化の評価指標。●頸動脈エコー所見=IMT肥厚・プラーク(限局性肥厚)・狭窄率・血流速度(収縮期最高血流速度)で評価する。IMTは加齢・高血圧・脂質異常症・糖尿病・喫煙で肥厚する。
選択肢ごとの解説
- ① ①は管腔内や内膜表面までの部位を示しており、内中膜複合体厚(IMT)に該当しないため適切ではない。
- ② ②は内中膜複合体厚(IMT)に該当する壁内の二層構造を示しておらず、IMTとして適切ではない。
- ③ 正しい。③は管腔側内膜表面から中膜外膜境界までの内中膜複合体に相当し、IMTを示す部位である。
- ④ ④は中膜外膜境界より外側の部位を示しており、内中膜複合体厚(IMT)に該当しないため適切ではない。
- ⑤ ⑤は血管壁の外側(外膜側)の部位を示しており、内中膜複合体厚(IMT)に該当しないため適切ではない。
第62回 午後24(臨床生理学)
脂肪肝の超音波所見はどれか。2つ選べ。
- ①肝実質粗
- ②肝表面不整
- ③深部エコー増強
- ④肝内脈管の不明瞭化
- ⑤肝腎コントラスト増強
正答: ④肝内脈管の不明瞭化・⑤肝腎コントラスト増強
ポイント
脂肪肝の超音波所見は、肝細胞内の脂肪沈着により肝実質のエコー輝度が上昇(bright liver)することに起因する。深部のエコーが減衰して肝内脈管(門脈・肝静脈枝)の壁が不明瞭化(深部減衰・肝内脈管の不明瞭化)し、肝臓のエコー輝度が腎皮質より高くなる肝腎コントラストの増強がみられる。一方、肝実質の粗造化や肝表面の不整は慢性肝炎・肝硬変の所見であり、脂肪肝では深部エコーは増強ではなく減衰する。脂肪肝の所見と肝硬変の所見を区別して把握することが本問の要点である。●脂肪肝の超音波所見=肝腎コントラスト増強(bright liver)・深部エコー減衰・肝内脈管の不明瞭化・高輝度肝。●肝硬変の超音波所見=肝表面の凹凸不整・肝実質の粗造化・肝辺縁の鈍化・脾腫・側副血行路の発達。非アルコール性脂肪性肝疾患でも同様の所見がみられる。
選択肢ごとの解説
- ① 肝実質粗(粗造化)は慢性肝炎や肝硬変でみられる所見であり、脂肪肝に特徴的な所見ではないため該当しない。
- ② 肝表面不整は肝硬変など慢性肝障害でみられる所見であり、脂肪肝に特徴的な所見ではないため該当しない。
- ③ 脂肪肝では深部エコーは減衰するため、深部エコー増強は脂肪肝の所見として誤りであり該当しない。
- ④ 正しい。脂肪肝では深部の減衰により肝内脈管(門脈・肝静脈枝)の壁が不明瞭化する所見がみられる。
- ⑤ 正しい。脂肪肝では肝のエコー輝度が腎皮質より高くなり、肝腎コントラストの増強がみられる所見である。
第62回 午後25(臨床生理学)
有髄神経の伝導で正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①一方向性伝導
- ②減衰伝導
- ③絶縁性伝導
- ④跳躍伝導
- ⑤変行伝導
正答: ③絶縁性伝導・④跳躍伝導
ポイント
有髄神経では軸索が髄鞘(ミエリン)で覆われ、ランビエ絞輪部のみに興奮が生じて飛び飛びに伝わる跳躍伝導によって速く伝わる。また興奮は隣の神経線維に漏れず1本の線維内を独立して伝わる絶縁性伝導の性質をもつ。神経の興奮伝導には絶縁性伝導・両側性伝導・不減衰伝導という三大原則があり、有髄神経では加えて跳躍伝導により伝導速度が速い点が特徴である。一方向性伝導や減衰伝導・変行伝導は軸索の正常な興奮伝導の性質ではない。伝導様式の特徴を正確に区別することが本問の要点である。●有髄神経・興奮伝導の性質=跳躍伝導(速い・ランビエ絞輪間を跳ぶ)・絶縁性伝導・不減衰伝導・両側性伝導。●神経線維の分類=有髄(速い・Aα〜Aδ、B線維)・無髄(遅い・C線維)、太い線維ほど伝導速度が速い。無髄神経は隣接部を順に興奮させる連続伝導で速度が遅い。
選択肢ごとの解説
- ① 一方向性伝導は神経内のシナプスを介した伝達の特性であり、軸索の興奮伝導自体は両側性であるため該当しない。
- ② 減衰伝導は興奮が伝わるにつれ弱まる性質であるが、神経の興奮は不減衰伝導であるため有髄神経の伝導として誤りである。
- ③ 正しい。絶縁性伝導は隣接する神経線維へ興奮が漏れず1本の線維内を独立して伝わる性質で、有髄神経でみられる。
- ④ 正しい。跳躍伝導はランビエ絞輪部のみで興奮が生じ飛び飛びに伝わる有髄神経特有の高速な伝導様式である。
- ⑤ 変行伝導は心臓の刺激伝導系などでみられる現象であり、有髄神経の正常な興奮伝導の性質を表すものではない。
📋 まとめの表を見る:神経の興奮伝導の性質(有髄神経・興奮伝導の3原則)
神経線維は太いほど伝導速度が速く、温度が低下すると伝導速度は低下する。神経筋接合部の伝達物質はアセチルコリン。シナプスの興奮伝達は一方向性(神経線維自体の伝導の両方向性とは別の性質)。
第62回 午後26(臨床生理学)
脳波で3Hzの棘徐波複合がみられるのはどれか。
- ①Alzheimer型認知症
- ②Creutzfeldt-Jakob病
- ③肝性脳症
- ④欠神発作
- ⑤もやもや病
正答: ④欠神発作
ポイント
3Hzの棘徐波複合(spike and wave complex)は欠神発作(小児欠神てんかん)に特徴的な脳波所見で、左右対称・同期性に全般性に出現し、過呼吸賦活によって誘発されやすい。発作中は数秒から十数秒の意識消失を生じるが、転倒や強直間代痙攣は伴わず、発作後のもうろう状態もない点が複雑部分発作と異なる。多くは小児期に発症し、定型欠神では発作頻度が高く一日に何度も生じる。したがって設問の正答は欠神発作である。 ●全般てんかんの脳波=欠神発作は3Hz棘徐波複合、若年ミオクロニーてんかんは多棘徐波複合、West症候群はヒプスアリスミア、Lennox-Gastaut症候群は遅棘徐波複合(2Hz前後)を示す。 ●その他の特徴的脳波=Creutzfeldt-Jakob病は周期性同期性放電(PSD)、肝性脳症は三相波、単純ヘルペス脳炎は周期性一側性てんかん型放電(PLEDs)を示す。
選択肢ごとの解説
- ① Alzheimer型認知症では基礎律動の徐波化やα波の減少がみられるが、3Hz棘徐波複合は出現しない変性性認知症である。
- ② Creutzfeldt-Jakob病では周期性同期性放電(PSD)がみられるプリオン病であり、3Hz棘徐波複合は特徴的な所見ではない。
- ③ 肝性脳症では三相波が特徴的にみられ、3Hz棘徐波複合は出現しないアンモニア高値による代謝性脳症である。
- ④ 正しい。欠神発作では3Hzの棘徐波複合が左右対称・同期性に全般性に出現し、過呼吸で誘発され数秒の意識消失を生じる。
- ⑤ もやもや病は内頚動脈終末部の進行性狭窄による脳血管障害で、過呼吸後のre-build up現象がみられるが棘徐波複合は特徴ではない。
📋 まとめの表を見る:脳波所見と対応疾患
変異型Creutzfeldt-Jakob病(牛海綿状脳症〈BSE〉関連)ではPSDはみられない点に注意。
第62回 午後27(臨床生理学)
聴性脳幹誘発電位(ABR)でⅢ波の起源はどれか。
- ①下丘
- ②外側毛帯
- ③蝸牛神経核
- ④上オリーブ核
- ⑤内側膝状体
正答: ④上オリーブ核
ポイント
聴性脳幹誘発電位(ABR)は音刺激から約10ミリ秒以内に出現するⅠ〜Ⅶ波からなり、聴覚伝導路を末梢から脳幹へと上行性に反映する検査である。各波が伝導路の特定部位に対応するため、波の消失や潜時延長から病変部位の推定が可能である。Ⅲ波の起源は上オリーブ核(superior olivary complex)とされ、設問の正答は上オリーブ核である。睡眠や鎮静の影響を受けにくく、客観的な聴力評価や脳幹機能評価に用いられる。波形は加算平均によって背景脳波から抽出され、左右別々に記録して両耳間の差を比較する。 ●ABR各波の起源=Ⅰ波は蝸牛神経(末梢部)、Ⅱ波は蝸牛神経核、Ⅲ波は上オリーブ核、Ⅳ波は外側毛帯、Ⅴ波は下丘に対応する。 ●臨床的意義=Ⅰ〜Ⅴ波の波間潜時で末梢から脳幹までの機能を評価し、聴神経腫瘍ではⅠ〜Ⅲ波間潜時が延長し、脳死判定の補助検査としても用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 下丘はⅤ波の起源で、ABRの中で最も大きく安定した波として聴力閾値推定に用いられる中脳の聴覚中継核である。
- ② 外側毛帯はⅣ波の起源とされる脳幹の聴覚伝導路であり、Ⅲ波の起源である上オリーブ核とは異なる部位である。
- ③ 蝸牛神経核はⅡ波の起源で、橋下部に位置し蝸牛神経の入力を受ける一次中継核であり、Ⅲ波の起源ではない。
- ④ 正しい。Ⅲ波の起源は上オリーブ核で、橋に位置し両耳からの聴覚入力が交叉・統合される脳幹の聴覚中継核である。
- ⑤ 内側膝状体はⅥ波付近に対応する視床の聴覚中継核であり、ABRのⅢ波の起源である上オリーブ核とは異なる部位である。
📋 まとめの表を見る:聴性脳幹反応〈ABR〉の各波の起源
I〜V波間潜時は聴神経〜脳幹の伝導時間を反映し、聴神経腫瘍などで延長する。前庭神経は聴覚伝導路に含まれずインパルスは通過しない。
第62回 午後28(臨床生理学)
運動神経伝導速度検査に適さない神経はどれか。
- ①脛骨神経
- ②尺骨神経
- ③正中神経
- ④橈骨神経
- ⑤腓腹神経
正答: ⑤腓腹神経
ポイント
運動神経伝導速度(MCV)検査は、神経を近位と遠位の2点で刺激し、それぞれで導出した複合筋活動電位(M波)の潜時差と刺激点間距離から伝導速度を算出する方法で、支配する筋をもつ運動線維を含んだ神経が対象となる。腓腹神経は下腿後面から足背外側の皮膚知覚を担う純粋な感覚神経であり、支配筋をもたないため運動神経伝導速度検査には適さない。設問は適さない神経を問うており、正答は腓腹神経である。算出された速度の低下は髄鞘の障害(脱髄)を、振幅の低下は軸索の障害を主に反映する。 ●運動神経伝導速度の対象=正中神経・尺骨神経・橈骨神経(上肢)、脛骨神経・腓骨神経(下肢)など運動線維を含む混合神経。 ●感覚神経伝導速度(SCV)の対象=腓腹神経は最も標準的な感覚神経伝導速度検査の対象であり、軸索障害や末梢神経障害の評価に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 脛骨神経は下腿後面の筋を支配する運動線維を含み、足底筋などで運動神経伝導速度検査が可能な混合神経である。
- ② 尺骨神経は手内筋を支配する運動線維を含み、肘部での速度低下から肘部管症候群の評価に用いられる混合神経である。
- ③ 正中神経は母指球筋を支配する運動線維を含み、手根管症候群の診断で運動神経伝導速度検査が行われる混合神経である。
- ④ 橈骨神経は前腕伸筋群を支配する運動線維を含み、運動神経伝導速度検査が可能な混合神経である。
- ⑤ 誤り。腓腹神経は下腿後面の皮膚知覚を担う純粋な感覚神経で支配筋をもたないため、運動神経伝導速度検査には適さない。
第62回 午後29(臨床化学)
分子ふるい効果を原理とするのはどれか。
- ①薄層クロマトグラフィ
- ②ろ紙クロマトグラフィ
- ③ゲルろ過クロマトグラフィ
- ④イオン交換クロマトグラフィ
- ⑤アフィニティクロマトグラフィ
正答: ③ゲルろ過クロマトグラフィ
ポイント
ゲルろ過クロマトグラフィ(ゲル浸透・サイズ排除クロマトグラフィ)は、一定の網目構造をもつ多孔性ゲル粒子を充填したカラムを用い、分子の大きさの違いによって分離する分子ふるい効果を原理とする。大きい分子はゲルの細孔に入れず粒子の間隙を素早く通過して先に溶出し、小さい分子は細孔内を通るため移動経路が長くなり遅れて溶出する。したがって設問の正答はゲルろ過クロマトグラフィである。溶出順序が分子量の対数とほぼ直線関係になるため、標準物質との比較で未知試料の分子量を推定できる。 ●クロマトグラフィの分離原理=ゲルろ過は分子サイズ(分子ふるい)、イオン交換は電荷、アフィニティは特異的親和性、逆相は疎水性の違いを利用する。 ●応用=ゲルろ過は蛋白質の分子量測定や脱塩、ヘモグロビン分画など、分子サイズの差による分離・精製に広く用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 薄層クロマトグラフィは固定相と移動相への分配・吸着の差で分離する平面クロマトグラフィであり、分子ふるい効果が原理ではない。
- ② ろ紙クロマトグラフィはろ紙を固定相とし分配の差で分離する手法であり、分子サイズによる分子ふるい効果が原理ではない。
- ③ 正しい。ゲルろ過クロマトグラフィは多孔性ゲルの細孔への入りやすさの差で分子の大きさにより分離する分子ふるい効果が原理である。
- ④ イオン交換クロマトグラフィは荷電基との静電的相互作用すなわち電荷の違いで分離する手法であり、分子ふるい効果が原理ではない。
- ⑤ アフィニティクロマトグラフィは抗原抗体反応などの特異的な親和性で分離する手法であり、分子ふるい効果が原理ではない。
第62回 午後30(臨床化学)
競合法を原理とする免疫測定法が適するのはどれか。2つ選べ。
- ①CEA
- ②CA125
- ③ジゴキシン
- ④ミオグロビン
- ⑤アルドステロン
正答: ③ジゴキシン・⑤アルドステロン
ポイント
競合法(競合的免疫測定法)は、限られた量の抗体に対して検体中の抗原と一定量の標識抗原を競合的に反応させ、検体抗原が多いほど標識抗原の抗体への結合が減少する原理を利用する。このため抗体結合部位(エピトープ)が1つしかない低分子の抗原(ハプテン)の測定に適する。設問ではジゴキシンとアルドステロンが該当する低分子抗原であり、これらが正答となる。これに対し抗原が多いほど標識量が増えるサンドイッチ法は、高分子抗原で広い測定範囲をもつ。 ●競合法が適する=ジゴキシン・アルドステロン・甲状腺ホルモン・各種ステロイドホルモンなど抗体結合部位が1つの低分子ハプテン。 ●サンドイッチ法(非競合法)が適する=CEA・CA125・ミオグロビンなど複数のエピトープをもつ高分子抗原で、2種の抗体で挟むため感度・特異性が高い。
選択肢ごとの解説
- ① CEAは複数のエピトープをもつ高分子の腫瘍マーカーであり、2種の抗体で挟むサンドイッチ法が適し競合法には適さない。
- ② CA125は高分子の卵巣癌関連腫瘍マーカーであり、複数のエピトープをもつためサンドイッチ法が適し競合法には適さない。
- ③ 正しい。ジゴキシンは低分子のジギタリス製剤で抗体結合部位が1つのハプテンであるため、競合法による免疫測定が適する。
- ④ ミオグロビンは複数のエピトープをもつ蛋白であり、サンドイッチ法が適し競合法には適さない心筋・骨格筋由来のマーカーである。
- ⑤ 正しい。アルドステロンは低分子のステロイドホルモンで抗体結合部位が1つであるため、競合法による免疫測定が適する。
第62回 午後31(臨床化学)
イオン選択電極を用いたクロールの測定において正誤差の要因となるイオンはどれか。2つ選べ。
正答: ①臭素・②ヨウ素
ポイント
イオン選択電極(ISE)によるクロール(Cl⁻)測定では、電極膜が目的イオン以外のハロゲン化物などにも応答することがあり、これが測定誤差の要因となる。クロール電極は臭素(Br⁻)やヨウ素(I⁻)に対しても感度をもつため、これらが共存すると見かけのクロール濃度が高く測定され、正誤差(高値方向の誤差)を生じる。したがって設問の正答は臭素とヨウ素である。したがって電極の選択係数を把握し、共存しうるハロゲン化物の影響を考慮して結果を解釈する必要がある。 ●クロール測定の正誤差要因=臭素・ヨウ素などのハロゲン化物イオンで、電極が交差感受性(選択係数)を示すため干渉する。 ●イオン選択電極の特性=目的イオンへの選択性は選択係数で表され、共存イオンへの応答が大きいほど正または負の誤差を受けやすく、陽イオンは陰イオン選択電極には干渉しない。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。臭素はクロール電極が交差感受性を示すハロゲン化物イオンであり、共存すると見かけのクロール濃度を高くする正誤差の要因となる。
- ② 正しい。ヨウ素はクロール電極が応答するハロゲン化物イオンであり、共存するとクロール測定値を高くする正誤差の要因となる。
- ③ カリウムは陽イオンでありクロール電極の応答対象ではないため、クロール測定における正誤差の要因とはならない。
- ④ リチウムは陽イオンでありクロール電極の応答対象ではないため、クロール測定における正誤差の要因とはならない。
- ⑤ ナトリウムは陽イオンでありクロール電極の応答対象ではないため、クロール測定における正誤差の要因とはならない。
第62回 午後32(臨床化学)
検査項目と呈色試薬の組合せで誤っているのはどれか。
- ①カルシウム — アルセナゾ-Ⅲ
- ②マグネシウム — o-クレゾールフタレインコンプレクソン
- ③無機リン — モリブデン酸
- ④鉄 — バソフェナンスロリン
- ⑤銅 — バソクプロイン
正答: ②マグネシウム — o-クレゾールフタレインコンプレクソン
ポイント
本問は検査項目と呈色試薬の誤った組合せを問うている。マグネシウムの比色定量にはキシリジルブルーやカルマガイトが用いられるのに対し、ο-クレゾールフタレインコンプレクソン(OCPC)はカルシウムの測定に用いられる呈色試薬である。したがってマグネシウムとOCPCの組合せが誤りであり、これが設問の正答となる。それ以外の組合せはいずれも正しい比色定量の組合せである。いずれの呈色反応も生成した有色錯体の吸光度を測定することで、目的成分の濃度を定量する原理である。 ●金属・無機質の呈色試薬=カルシウムはアルセナゾⅢやOCPC、マグネシウムはキシリジルブルー、無機リンはモリブデン酸を用いる。 ●微量金属の呈色試薬=鉄はバソフェナンスロリンやニトロソPSAP、銅はバソクプロインを用いて錯体を形成させ比色定量する。
選択肢ごとの解説
- ① カルシウムとアルセナゾⅢは正しい組合せであり、生成する青色錯体を比色定量するカルシウム測定法である。
- ② 誤り。ο-クレゾールフタレインコンプレクソン(OCPC)はカルシウムの呈色試薬であり、マグネシウムとの組合せは誤りである。
- ③ 無機リンとモリブデン酸は正しい組合せであり、リンモリブデン酸錯体を生成させて比色定量する無機リン測定法である。
- ④ 鉄とバソフェナンスロリンは正しい組合せであり、第一鉄イオンと赤色錯体を形成させて比色定量する鉄測定法である。
- ⑤ 銅とバソクプロインは正しい組合せであり、第一銅イオンと錯体を形成させて比色定量する銅測定法である。
📋 まとめの表を見る:無機質とその主な検査法
クロールの電量滴定法はハロゲン化銀を利用するため、臭素・ヨウ素など他のハロゲン族イオンも正誤差の要因となる。
第62回 午後33(臨床化学)
HbA1cが偽高値を示すのはどれか。
正答: ③鉄欠乏状態
ポイント
HbA1cは赤血球内ヘモグロビンに糖が非酵素的に結合した割合で、過去1〜2か月の平均血糖を反映するが、赤血球寿命の影響を受ける。鉄欠乏状態では赤血球の新生が低下し、長く血中に留まる古い赤血球の割合が相対的に増えるため糖化が進み、HbA1cが偽高値を示す。鉄剤治療で改善すると新生赤血球が増え値は低下する。したがって設問の正答は鉄欠乏状態である。このように赤血球寿命が延長する病態では値が高く、短縮する病態では低くなる傾向を示す。なお妊娠後期や尿毒症など、糖化以外の要因で測定値が修飾される場合もあり、病態を踏まえた解釈が求められる。糖尿病の診断や血糖コントロールの指標として用いられるが、貧血を伴う患者では実際の血糖との乖離に注意する。 ●HbA1cが偽高値となる病態=鉄欠乏性貧血・脾摘後など赤血球寿命が延長する状態、一部の異常ヘモグロビン。 ●HbA1cが偽低値となる病態=出血・輸血・溶血性貧血・脾機能亢進など赤血球寿命が短縮し赤血球破壊が亢進する状態。
選択肢ごとの解説
- ① 出血では赤血球産生が亢進し若い赤血球が増えるため、糖化が進む前の赤血球が多くHbA1cは偽低値を示す。
- ② 輸血では保存赤血球の混入や赤血球の更新により、平均的にHbA1cは偽低値方向に変動しやすい状態となる。
- ③ 正しい。鉄欠乏状態では赤血球新生の低下で古い赤血球の割合が増え糖化が進むため、HbA1cが偽高値を示す。
- ④ 脾機能亢進では赤血球破壊が亢進し赤血球寿命が短縮するため、糖化が進む前に破壊されHbA1cは偽低値を示す。
- ⑤ 溶血性貧血では赤血球寿命が著しく短縮し糖化が進む前に破壊されるため、HbA1cは偽低値を示す病態である。
第62回 午後34(臨床化学)
リポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性化に関与するアポリポ蛋白はどれか。
- ①アポA1
- ②アポB48
- ③アポB100
- ④アポC2
- ⑤アポE
正答: ④アポC2
ポイント
リポ蛋白リパーゼ(LPL)は毛細血管内皮の表面に存在し、カイロミクロンやVLDL中のトリグリセリドを脂肪酸とグリセロールに分解する酵素である。その活性化にはアポC2(アポリポ蛋白C-Ⅱ)が補因子(コファクター)として必須であり、アポC2が欠損するとトリグリセリドが分解されず高カイロミクロン血症を生じる。したがって設問の正答はアポC2である。このためアポC2の遺伝的欠損では血清が乳び状を呈し、空腹時でも高トリグリセリド血症が持続する。 ●アポリポ蛋白の酵素調節=アポC2はLPLの活性化因子、アポC3はLPLの抑制因子、アポA1はLCATの活性化因子として働く。 ●受容体・脂質転送との関連=アポB100とアポEはLDL受容体のリガンド、アポB48はカイロミクロンの構成成分、アポEはレムナントの肝臓への取り込みに関与する。
選択肢ごとの解説
- ① アポA1はHDLの主要構成蛋白でLCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)の活性化因子であり、LPLの活性化因子ではない。
- ② アポB48はカイロミクロンの構成成分で小腸由来のリポ蛋白に含まれる蛋白であり、LPLの活性化因子ではない。
- ③ アポB100はLDLの主要構成蛋白でLDL受容体のリガンドとして働く蛋白であり、LPLの活性化因子ではない。
- ④ 正しい。アポC2はリポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性化に必須の補因子であり、欠損すると高カイロミクロン血症を生じる。
- ⑤ アポEはレムナントの肝臓への取り込みに関与しLDL受容体のリガンドとなる蛋白であり、LPLの活性化因子ではない。
第62回 午後35(臨床化学)
ビウレット法について正しいのはどれか。
- ①反応は強酸性下で行う。
- ②測定波長は630 nmである。
- ③アルブミンの測定法である。
- ④鉄イオンとの錯体を検出する。
- ⑤呈色はペプチド結合の数に比例する。
正答: ⑤呈色はペプチド結合の数に比例する。
ポイント
ビウレット法は、アルカリ性条件下で蛋白質のペプチド結合が銅イオン(Cu²⁺)とキレート錯体を形成し赤紫色を呈する反応を利用した総蛋白の測定法である。呈色の強さは反応するペプチド結合の数に比例するため、蛋白質の種類によらず総蛋白量を測定できる。したがって設問の正答は「呈色はペプチド結合の数に比例する」である。感度はやや低いが操作が簡便で再現性に優れ、自動分析装置による総蛋白測定の基準的方法として広く用いられる。反応にはペプチド結合が2個以上(トリペプチド以上)必要とされ、遊離アミノ酸やジペプチドでは呈色しないため、蛋白質に特異的な定量が可能である。試薬中には銅の沈殿を防ぐため酒石酸塩などの安定化剤が加えられている。 ●ビウレット法の特徴=アルカリ性で反応・銅錯体の形成・測定波長は約540〜545nm・血清総蛋白の定量に用いる。 ●他の蛋白定量法=Lowry法はフェノール試薬を併用し感度が高く、ブラッドフォード法は色素結合を、紫外部280nm吸収法は芳香族アミノ酸の吸収を利用する。
選択肢ごとの解説
- ① 反応はアルカリ性下で行うのが正しく、強酸性下で行うという記述はビウレット法の条件として誤りである。
- ② 測定波長は約540〜545nmが適切であり、630nmという記述はビウレット法の測定波長として誤りである。
- ③ ビウレット法はペプチド結合をもつ蛋白質全般を測定する総蛋白測定法であり、アルブミンに特異的な測定法ではない。
- ④ ビウレット法は銅イオン(Cu²⁺)とペプチド結合の錯体を検出する反応であり、鉄イオンとの錯体を検出するという記述は誤りである。
- ⑤ 正しい。ビウレット法ではアルカリ性下で銅とペプチド結合が錯体を形成し、呈色はペプチド結合の数に比例する。
📋 まとめの表を見る:血清総蛋白・アルブミンの定量法と主な性質
第62回 午後36(臨床化学)
濃度を窒素量として表示するのはどれか。2つ選べ。
- ①尿素
- ②尿酸
- ③ビリルビン
- ④アンモニア
- ⑤クレアチニン
正答: ①尿素・④アンモニア
ポイント
濃度を窒素量として表示するのは、分子中に窒素を含み従来から窒素量で表現されてきた成分で、尿素は血中尿素窒素(BUN)、アンモニアはアンモニア態窒素として窒素量で表示される。したがって設問の正答は尿素とアンモニアである。尿素は分子量60に対し窒素を2原子(28)含むため、BUN値に約2.14を乗じると尿素そのものの量に換算できる。このため窒素量で表す項目と物質そのものの量で表す項目を区別して結果を読む必要がある。尿素やアンモニアはいずれもアミノ酸の分解で生じたアンモニアが肝臓の尿素回路で代謝される過程に関連し、腎機能や肝機能の評価に用いられる重要な含窒素成分である。 ●窒素量として表示する物質=尿素窒素(BUN)・アンモニア態窒素で、いずれも蛋白・アミノ酸代謝の最終産物に由来する。 ●物質量や質量で表示する物質=尿酸・クレアチニンはmg/dL等の質量濃度、ビリルビンはmg/dLで表示し、窒素量としては表示しない。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。尿素は血中尿素窒素(BUN)として窒素量で濃度を表示し、蛋白代謝の最終産物として腎機能評価に用いられる。
- ② 尿酸はプリン体代謝の最終産物でmg/dL等の質量濃度で表示する物質であり、窒素量として表示する成分ではない。
- ③ ビリルビンはヘム代謝産物でmg/dLで表示する黄疸の指標であり、窒素量として表示する成分ではない。
- ④ 正しい。アンモニアはアンモニア態窒素として窒素量で濃度を表示し、肝不全などで上昇する蛋白代謝産物である。
- ⑤ クレアチニンは筋肉のクレアチン代謝産物でmg/dL等で表示する物質であり、窒素量として表示する成分ではない。
第62回 午後37(臨床化学)
血清CK活性の測定において2分間の吸光度増加量が0.07であった。この血清のCK活性として正しいのはどれか。ただし、NADPHのモル吸光係数6.3 ×10³ L・mol⁻¹・cm⁻¹、試料量10 μL、試薬量350 μLとする。
- ①25 U/L
- ②50 U/L
- ③100 U/L
- ④200 U/L
- ⑤400 U/L
正答: ④200 U/L
ポイント
酵素活性(U/L)は生成物の単位時間あたりの吸光度変化量から算出する。1分あたりの吸光度変化は0.07÷2=0.035である。U/Lへの換算は、ΔA/分×総液量÷(モル吸光係数×光路長×試料量)×10⁶で求める。総液量は350+10=360μL、試料量10μL、モル吸光係数6.3×10³、光路長1cmを代入すると、0.035×360÷(6300×1×10)×10⁶≒200U/Lとなる。したがって設問の正答は200U/Lである。このようにモル吸光係数と液量条件が与えられれば、吸光度変化量から酵素活性を一義的に算出できる。 ●酵素活性の単位=1U/Lは至適条件下で1分間に1μmolの基質を変化させる酵素量を1リットルあたりで表したものである。 ●CK測定の原理=CK-NAC法では共役反応で生成するNADPHの340nmにおける吸光度増加速度を測定し、上記換算式で活性値を算出する。
選択肢ごとの解説
- ① 25U/Lは算出値の約8分の1であり、吸光度変化量や液量から計算した値と一致しないため誤りである。
- ② 50U/Lは算出値の約4分の1であり、希釈倍率や換算式から計算した値と一致しないため誤りである。
- ③ 100U/Lは算出値の半分であり、総液量や試料量を用いた換算結果と一致しないため誤りである。
- ④ 正しい。0.035×360÷(6300×10)×10⁶≒200U/Lとなり、与えられた吸光度変化と液量・モル吸光係数から算出される値と一致する。
- ⑤ 400U/Lは算出値の約2倍であり、吸光度変化量と液量から計算した値と一致しないため誤りである。
第62回 午後38(臨床化学)
日本臨床化学会(JSCC)勧告法による酵素活性測定で可視部測定項目はどれか。
正答: ③ALP
ポイント
日本臨床化学会(JSCC)勧告法では多くの酵素活性をNAD(P)Hの340nm(紫外部)における吸光度変化を共役反応で測定するが、ALP(アルカリホスファターゼ)はp-ニトロフェニルリン酸を基質とし、生成するp-ニトロフェノールがアルカリ性で黄色を呈する反応を可視部(約405nm)で測定する。したがって設問の可視部測定項目はALPである。このため測定波長の違いから各酵素がどの方式で測定されているかを区別することができる。 ●可視部(約405nm)で測定する項目=ALP・γ-GT(γ-グルタミルトランスフェラーゼ)など発色する基質や生成物を用いる項目。 ●紫外部(340nm)で測定する項目=CK・LD・AST・ALTなど。CK・AST・ALTは共役反応を利用する。LDは乳酸からピルビン酸への反応で生成するNADHを直接測定する。
選択肢ごとの解説
- ① CKはクレアチンキナーゼで、共役反応により生成するNADPHを340nmの紫外部で測定する項目であり可視部測定ではない。
- ② LDは乳酸脱水素酵素で、NADHとNAD⁺の間の340nm紫外部の吸光度変化を測定する項目であり可視部測定ではない。
- ③ 正しい。ALPはp-ニトロフェニルリン酸を基質とし、生成するp-ニトロフェノールを約405nmの可視部で測定する項目である。
- ④ ALTはアラニンアミノトランスフェラーゼで、共役反応のNADHを340nm紫外部で測定する項目であり可視部測定ではない。
- ⑤ ASTはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼで、共役反応のNADHを340nm紫外部で測定する項目であり可視部測定ではない。
第62回 午後39(臨床化学)
血中薬物モニタリング(TDM)を行わないのはどれか。
- ①リチウム
- ②タクロリムス
- ③テオフィリン
- ④フェニトイン
- ⑤プレドニゾロン
正答: ⑤プレドニゾロン
ポイント
血中薬物モニタリング(TDM)は、有効血中濃度域(治療域)が狭く中毒域に近い薬物や、血中濃度と効果・毒性の相関が高い薬物について血中濃度を測定し投与量を調節する手法である。プレドニゾロンは副腎皮質ステロイドで治療効果を臨床症状から判断でき、血中濃度測定によるモニタリングの対象とはならない。設問はTDMを行わない薬物を問うており、正答はプレドニゾロンである。このように治療域が狭い薬物では血中濃度を測定して個々の患者に応じた投与量へ調整する。 ●TDMの対象薬物=リチウム(気分安定薬)・テオフィリン(気管支拡張薬)・フェニトイン(抗てんかん薬)・タクロリムス(免疫抑制薬)・アミノグリコシド系抗菌薬・ジゴキシン。 ●TDMを行わない薬物=プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドは効果と副作用を臨床所見で評価するためTDMの対象外である。
選択肢ごとの解説
- ① リチウムは有効域が狭く中毒域に近い気分安定薬であり、血中濃度モニタリング(TDM)が必須の薬物である。
- ② タクロリムスは有効域が狭い免疫抑制薬であり、拒絶反応と副作用の調整のため血中濃度モニタリングを行う。
- ③ テオフィリンは有効域が狭い気管支拡張薬であり、中毒症状を避けるため血中濃度モニタリングを行う薬物である。
- ④ フェニトインは非線形の代謝動態をもつ抗てんかん薬であり、血中濃度モニタリングが特に重要な薬物である。
- ⑤ 誤り。プレドニゾロンは副腎皮質ステロイドで効果を臨床症状で判断でき、血中薬物モニタリング(TDM)の対象とはならない。
第62回 午後40(臨床化学)
骨吸収マーカーはどれか。2つ選べ。
- ①オステオカルシン(OC)
- ②デオキシピリジノリン(DPD)
- ③骨型アルカリホスファターゼ(BAP)
- ④Ⅰ型コラーゲン架橋N末端テロペプチド(NTx)
- ⑤Ⅰ型プロコラーゲンC末端プロペプチド(PICP)
正答: ②デオキシピリジノリン(DPD)・④Ⅰ型コラーゲン架橋N末端テロペプチド(NTx)
ポイント
骨吸収マーカーは破骨細胞による骨基質(Ⅰ型コラーゲン)の分解産物で、骨吸収の亢進を反映する。設問ではデオキシピリジノリン(DPD)とⅠ型コラーゲン架橋N末端テロペプチド(NTx)が該当し、これらが正答となる。いずれも尿中や血中に排出されるコラーゲン由来の分解産物であり、骨粗鬆症の病態評価や治療効果判定に用いられる。このため骨形成マーカーと骨吸収マーカーを組み合わせて骨代謝回転の状態を総合的に評価する。 ●骨吸収マーカー=DPD・NTx・Ⅰ型コラーゲン架橋C末端テロペプチド(CTx)・酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP-5b)で破骨細胞活動を反映する。 ●骨形成マーカー=オステオカルシン(OC)・骨型アルカリホスファターゼ(BAP)・Ⅰ型プロコラーゲンC末端プロペプチド(PⅠCP)で骨芽細胞の活動を反映する。
選択肢ごとの解説
- ① オステオカルシン(OC)は骨芽細胞が産生し骨基質に取り込まれる骨形成マーカーであり、骨吸収マーカーではない。
- ② 正しい。デオキシピリジノリン(DPD)はⅠ型コラーゲンの架橋成分で破骨細胞による分解を反映する骨吸収マーカーである。
- ③ 骨型アルカリホスファターゼ(BAP)は骨芽細胞由来で骨形成を反映する骨形成マーカーであり、骨吸収マーカーではない。
- ④ 正しい。Ⅰ型コラーゲン架橋N末端テロペプチド(NTx)は骨基質の分解産物で骨吸収を反映する骨吸収マーカーである。
- ⑤ Ⅰ型プロコラーゲンC末端プロペプチド(PⅠCP)はコラーゲン合成過程で生じる骨形成マーカーであり、骨吸収マーカーではない。
第62回 午後41(臨床化学)
甲状腺ホルモンの作用でないのはどれか。
- ①成長促進
- ②発汗増加
- ③心拍数増加
- ④基礎代謝低下
- ⑤消化管の糖吸収促進
正答: ④基礎代謝低下
ポイント
甲状腺ホルモン(T3・T4)は全身のほぼ全ての細胞で代謝を亢進させる作用をもち、基礎代謝量を上昇させる。したがって「基礎代謝低下」は甲状腺ホルモンの作用ではなく、設問の正答は基礎代謝低下である。甲状腺ホルモンは産熱増加・心拍数増加・成長と中枢神経発達の促進・消化管運動と糖吸収の促進など広範な代謝活性化作用をもつ。このため機能亢進症では基礎代謝が上昇して体重減少をきたし、低下症では逆に基礎代謝が低下する。甲状腺ホルモンは下垂体前葉の甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって分泌が調節され、血中濃度が上昇するとTSH分泌が抑制される負のフィードバック機構によって一定に保たれている。 ●甲状腺ホルモンの主な作用=基礎代謝亢進・産熱と発汗の増加・心拍数増加・成長と中枢神経発達の促進・消化管運動と糖吸収の促進。 ●機能異常症=機能亢進(Basedow病)では頻脈・発汗・体重減少・眼球突出を、機能低下(橋本病など)では徐脈・低体温・浮腫・体重増加を生じる。
選択肢ごとの解説
- ① 成長促進は甲状腺ホルモンの作用であり、骨成長や中枢神経の発達に必須で、欠乏すると発育障害を生じる。
- ② 発汗増加は甲状腺ホルモンの作用であり、代謝亢進と産熱増加に伴ってみられる症状の一つである。
- ③ 心拍数増加は甲状腺ホルモンの作用であり、心臓のβ受容体感受性の亢進により頻脈を生じる作用である。
- ④ 誤り。甲状腺ホルモンは基礎代謝を亢進させるため、基礎代謝低下は甲状腺ホルモンの作用ではない。
- ⑤ 消化管の糖吸収促進は甲状腺ホルモンの作用であり、消化管運動の亢進とともにみられる代謝亢進作用である。
第62回 午後42(臨床化学)
コレステロールから生合成されないのはどれか。
- ①アドレナリン
- ②コルチゾール
- ③アルドステロン
- ④テストステロン
- ⑤エストラジオール
正答: ①アドレナリン
ポイント
コレステロールは副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アルドステロン)や性ホルモン(テストステロン・エストラジオール)などステロイドホルモン全般の共通の前駆体である。一方アドレナリン(エピネフリン)はアミノ酸チロシンから合成されるカテコールアミンであり、コレステロールからは生合成されない。したがって設問の正答はアドレナリンである。このようにステロイド骨格をもつホルモンと、アミノ酸由来のホルモンとで生合成経路が異なる。副腎皮質や性腺ではコレステロールがプレグネノロンを経て各ステロイドへ変換され、関与する酵素の欠損は先天性副腎過形成症などの内分泌疾患の原因となる。 ●コレステロールを前駆体とする物質=副腎皮質ホルモン(糖質・鉱質コルチコイド)・性ホルモン・胆汁酸・ビタミンD。 ●チロシンを前駆体とする物質=カテコールアミン(アドレナリン・ノルアドレナリン・ドパミン)および甲状腺ホルモンで、いずれもコレステロールを前駆体としない。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。アドレナリンはアミノ酸チロシンから合成されるカテコールアミンであり、コレステロールからは生合成されない。
- ② コルチゾールはコレステロールを前駆体とする副腎皮質の糖質コルチコイドであり、コレステロールから生合成される。
- ③ アルドステロンはコレステロールを前駆体とする副腎皮質の鉱質コルチコイドであり、コレステロールから生合成される。
- ④ テストステロンはコレステロールを前駆体とする男性ホルモンであり、コレステロールから生合成されるステロイドである。
- ⑤ エストラジオールはコレステロールを前駆体とする女性ホルモンであり、コレステロールから生合成されるステロイドである。
第62回 午後43(臨床化学)
疾患マーカーと病態の組合せで正しいのはどれか。
- ①KL-6 — 細菌性肺炎
- ②シスタチンC — 肝不全
- ③プロカルシトニン — 敗血症
- ④脂肪酸結合蛋白(FABP) — 脳梗塞
- ⑤脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP) — 腎不全
正答: ③プロカルシトニン — 敗血症
ポイント
プロカルシトニン(PCT)はカルシトニンの前駆体で、細菌感染や敗血症に際して全身の組織で産生が誘導され血中濃度が著明に上昇する。このため敗血症の診断・重症度評価・治療効果判定に用いられる。ウイルス感染では上昇しにくく細菌感染に比較的特異的である。したがって正しい組合せはプロカルシトニンと敗血症であり、これが設問の正答となる。このように疾患マーカーは由来する臓器や病態が決まっており、対応する病態と結びつけて評価する。疾患マーカーは早期診断・重症度評価・治療効果判定・経過観察に用いられ、感度と特異度を踏まえて他の検査所見や臨床症状と合わせて総合的に判断することが重要である。 ●炎症・感染マーカー=プロカルシトニンは敗血症・重症細菌感染、CRPは炎症全般、白血球数は急性炎症を反映する。 ●臓器特異的マーカー=KL-6は間質性肺炎、シスタチンCは糸球体濾過量(腎機能)、心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)は急性心筋梗塞、BNPは心不全を反映する。
選択肢ごとの解説
- ① KL-6は間質性肺炎で上昇するⅡ型肺胞上皮由来のマーカーであり、細菌性肺炎との組合せは適切でない。
- ② シスタチンCは糸球体濾過量を反映する腎機能マーカーであり、肝不全との組合せは適切でなく誤りである。
- ③ 正しい。プロカルシトニンは細菌感染・敗血症で著明に上昇するマーカーであり、敗血症との組合せが正しい。
- ④ 脂肪酸結合蛋白(FABP)のうち心臓型は急性心筋梗塞の早期マーカーであり、脳梗塞との組合せは適切でない。
- ⑤ 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心不全で上昇する心臓由来のマーカーであり、腎不全との組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:主な疾患マーカーと対応病態
第62回 午後44(臨床化学)
推算糸球体濾過量(eGFR)の計算に用いるのはどれか。2つ選べ。
- ①性別
- ②尿量
- ③体表面積
- ④血清クレアチニン値
- ⑤尿中クレアチニン値
正答: ①性別・④血清クレアチニン値
ポイント
推算糸球体濾過量(eGFR)は腎機能を簡便に評価する指標で、日本人向けの推算式では血清クレアチニン値・年齢・性別の3項目を用いて算出する。設問の選択肢では性別と血清クレアチニン値が該当する。尿量や尿中クレアチニン値は実測のクレアチニンクリアランス算出に用いるもので、eGFRの計算には不要である。したがって設問の正答は性別と血清クレアチニン値である。このため簡便に算出できるeGFRと、蓄尿を要するクレアチニンクリアランスとで必要な測定項目が異なる。 ●eGFR(クレアチニン)の算出に用いる項目=血清クレアチニン値・年齢・性別の3つで、これらから推算式で計算する。 ●クレアチニンクリアランス(実測)に用いる項目=尿中クレアチニン値・尿量・血清クレアチニン値・蓄尿時間で、正確な評価には蓄尿が必要となる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。性別はeGFRの推算式に用いる項目であり、筋肉量の男女差を補正するための係数として組み込まれる。
- ② 尿量はクレアチニンクリアランスの実測に用いる項目であり、eGFRの推算式には用いない値である。
- ③ 体表面積はeGFRが1.73m²あたりで標準化される基準であるが、推算式の入力変数として個別に用いるものではない。
- ④ 正しい。血清クレアチニン値はeGFRの推算式の中心的な入力変数であり、年齢・性別とともに腎機能を推算する。
- ⑤ 尿中クレアチニン値はクレアチニンクリアランスの実測に用いる項目であり、eGFRの推算式には用いない値である。
第62回 午後45(病理組織細胞学)
病理解剖時に摘出された臓器の肉眼写真を別に示す。臓器はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB045.05d181b327.jpg

正答: ②肝臓
ポイント
肉眼写真から摘出臓器を同定する問題で、正答は肝臓である。肝臓は腹腔の右上部を占める人体最大の実質臓器で、暗赤褐色を呈し平滑な被膜に覆われ、横隔膜に面する横隔面は滑らかで、下面(臓側面)には胆嚢と肝門部(門脈・固有肝動脈・総肝管)がみられる。腹側では鎌状間膜により大きな右葉と小さな左葉に分かれる特徴的な形態を示す。被膜の色調や割面の性状、付属する構造物の有無から、他の実質臓器と区別して同定する。肝臓は門脈を介して消化管からの血液を受け、代謝・解毒・胆汁産生など多彩な機能を営む臓器で、組織学的には肝小葉を構成単位とする。割面は均一な充実性を呈し、含気のある肺とは性状が大きく異なる。 ●肝臓の肉眼的特徴=暗赤褐色・人体最大の実質臓器・鎌状間膜による右葉と左葉・下面の胆嚢窩と肝門部。 ●他臓器との鑑別=脾臓は暗赤色で被膜が薄く割面は血液に富み、腎臓はそら豆形で割面に皮質・髄質・腎盂がみられ、膵臓は細長い分葉構造を示す。
選択肢ごとの解説
- ① 肺は含気性でスポンジ状の割面を示す呼吸器臓器であり、暗赤褐色で充実した実質をもつ本写真の臓器とは異なる。
- ② 正しい。暗赤褐色で平滑な被膜をもち鎌状間膜で右葉と左葉に分かれる最大の実質臓器の形態は肝臓に合致する。
- ③ 脾臓は暗赤色で被膜が薄く割面が血液に富むリンパ系臓器であり、肝臓よりも小さく形態が異なる臓器である。
- ④ 膵臓は後腹膜に位置する細長い分葉構造の臓器であり、被膜に覆われた大きな実質臓器である肝臓とは形態が異なる。
- ⑤ 腎臓はそら豆形で割面に皮質・髄質・腎盂がみられる泌尿器臓器であり、肝臓とは大きさも形態も異なる臓器である。
第62回 午後46(病理組織細胞学)
中皮細胞を認めるのはどれか。
正答: ④心囊腔
ポイント
中皮細胞は漿膜(胸膜・腹膜・心膜)の表面を覆う単層扁平上皮で、漿膜腔の内面を裏打ちし、漿液を分泌して臓器の摩擦を軽減する。設問の選択肢のうち漿膜腔に相当するのは心囊腔(心膜腔)であり、その表面を中皮細胞が覆っている。したがって設問の正答は心囊腔である。鼻腔・副鼻腔は線毛上皮、口腔は重層扁平上皮で覆われ、関節腔は滑膜細胞が覆っており、いずれも中皮ではない。このように腔を覆う上皮の種類はそれぞれ異なり、中皮を認めるのは漿膜で囲まれた腔に限られる。中皮細胞は反応性に増殖すると異型を示すことがあり、悪性中皮腫など漿膜由来の腫瘍との鑑別では細胞所見や免疫染色が重要となる。漿膜腔に貯留した体液の細胞診でも観察される。 ●中皮(漿膜)に覆われる腔=心囊腔・胸膜腔・腹膜腔で、いずれも中皮細胞が単層扁平上皮として表面を裏打ちする。 ●他の腔の被覆=鼻腔・副鼻腔は多列線毛円柱上皮、口腔は重層扁平上皮、関節腔は滑膜(滑膜細胞)で覆われ、中皮細胞は存在しない。
選択肢ごとの解説
- ① 鼻腔は多列線毛円柱上皮(呼吸上皮)で覆われる気道の入口であり、漿膜の中皮細胞を認める部位ではない。
- ② 副鼻腔は鼻腔と連続する多列線毛円柱上皮で覆われた含気腔であり、漿膜の中皮細胞を認める部位ではない。
- ③ 口腔は重層扁平上皮で覆われる消化管の入口であり、漿膜の中皮細胞を認める部位ではない構造である。
- ④ 正しい。心囊腔は心膜に囲まれた漿膜腔であり、その表面を中皮細胞が単層扁平上皮として覆っている。
- ⑤ 関節腔は滑膜(滑膜細胞)で覆われた腔であり、漿膜の中皮細胞を認める部位ではない構造である。
📋 まとめの表を見る:臓器・部位と被覆上皮の対応
内皮は血管・リンパ管、中皮は体腔(漿膜)の表面を被覆する単層扁平上皮で、局在により呼び分ける。肺胞の内面は中皮ではなく肺胞上皮(Ⅰ型・Ⅱ型肺胞上皮細胞)が覆う。
第62回 午後47(病理組織細胞学)
炎症について正しいのはどれか。
- ①発赤は晩期に出現する。
- ②組織球は初期に出現する。
- ③四徴には搔痒が含まれる。
- ④化学的原因には放射線被ばくがある。
- ⑤ケミカルメディエータにはプロスタグランジンがある。
正答: ⑤ケミカルメディエータにはプロスタグランジンがある。
ポイント
炎症のケミカルメディエータ(化学伝達物質)にはヒスタミン・セロトニン・ブラジキニン・プロスタグランジン・ロイコトリエン・補体・サイトカインなどがあり、なかでもプロスタグランジンは発熱・血管拡張・疼痛に関与する代表的なメディエータである。したがって設問の正答は「ケミカルメディエータにはプロスタグランジンがある」である。これらのメディエータが血管透過性の亢進や白血球の遊走を引き起こし、炎症の局所反応を進展させる。これに対し発赤や発熱は炎症の初期から出現し、炎症細胞は急性期の好中球から慢性期のマクロファージへと移り変わる。 ●炎症の四徴(五徴)=発赤・腫脹・発熱・疼痛(と機能障害)で、発赤と発熱は早期の血管拡張・充血による。 ●炎症細胞の出現順序=急性期は好中球が初期に主体となり、慢性期にはマクロファージ(組織球)やリンパ球が主体となる。
選択肢ごとの解説
- ① 発赤は炎症初期の血管拡張・充血により早期に出現する所見であり、晩期に出現するという記述は誤りである。
- ② 組織球(マクロファージ)は慢性期に主体となる細胞であり、初期に出現する主体は好中球であるため誤りである。
- ③ 炎症の四徴は発赤・腫脹・発熱・疼痛であり、搔痒はこれに含まれないためこの記述は誤りである。
- ④ 放射線被ばくは物理的原因に分類され化学的原因ではないため、化学的原因とするこの記述は誤りである。
- ⑤ 正しい。プロスタグランジンは発熱・血管拡張・疼痛に関与する代表的な炎症のケミカルメディエータである。
第62回 午後48(病理組織細胞学)
胃癌について正しいのはどれか。
- ①胃ポリープは高率に癌化する。
- ②スキルス癌(硬癌)は予後が良い。
- ③早期癌にはBorrmann分類を用いる。
- ④子宮体部への転移巣をKrukenberg腫瘍という。
- ⑤早期癌の定義ではリンパ節転移の有無を問わない。
正答: ⑤早期癌の定義ではリンパ節転移の有無を問わない。
ポイント
早期胃癌は癌の深達度が粘膜下層までにとどまるものと定義され、リンパ節転移の有無は問わない。すなわちリンパ節転移があっても深達度が粘膜下層までであれば早期胃癌に分類される。したがって設問の正答は「早期癌の定義ではリンパ節転移の有無を問わない」である。固有筋層以深に及ぶものは進行胃癌とされる。このように深達度による早期・進行癌の区別と、肉眼分類や転移様式の理解が病態把握の基本となる。胃癌は組織学的に分化型と未分化型に大別され、スキルス癌は未分化型が多くびまん性に浸潤する。早期発見には内視鏡検査が有用で、深達度の正確な評価が治療方針の決定に直結する。 ●胃癌の深達度分類=早期癌は深達度が粘膜下層まで(リンパ節転移は問わない)、進行癌は固有筋層以深に浸潤するもの。 ●肉眼分類と関連事項=早期癌は0型(表在型)分類、進行癌はBorrmann分類(1〜4型)を用い、スキルス癌(4型)は予後不良、Krukenberg腫瘍は胃癌などの卵巣転移である。
選択肢ごとの解説
- ① 胃ポリープの多くは過形成性ポリープや胃底腺ポリープで癌化率は低く、高率に癌化するという記述は誤りである。
- ② スキルス癌(硬癌・Borrmann4型)はびまん浸潤性で進行が速く予後不良であり、予後が良いという記述は誤りである。
- ③ 早期癌には0型(表在型)分類を用い、Borrmann分類は進行癌に用いる分類であるため、この記述は誤りである。
- ④ Krukenberg腫瘍は胃癌などが卵巣へ転移した転移巣を指す用語であり、子宮体部への転移とするこの記述は誤りである。
- ⑤ 正しい。早期胃癌は深達度が粘膜下層までと定義され、リンパ節転移の有無は問わないため、この記述は正しい。
第62回 午後49(病理組織細胞学)
固定液と組成の組合せで正しいのはどれか。
- ①PLP固定液 — ピクリン酸
- ②中性ホルマリン — 硫酸ナトリウム
- ③等張ホルマリン — 塩化ナトリウム
- ④ブアン(Bouin)液 — パラホルムアルデヒド
- ⑤カルノア(Carnoy)液 — トリクロロ酢酸
正答: ③等張ホルマリン — 塩化ナトリウム
ポイント
本問は固定液と組成の正しい組合せを問うている。等張ホルマリンは生体に近い浸透圧に調整した固定液で、ホルマリンに塩化ナトリウムを加えて等張化したものである。したがって等張ホルマリンと塩化ナトリウムの組合せが正しく、これが設問の正答となる。固定液は目的に応じて添加成分が異なり、各固定液の組成を理解することが正誤判定の基礎となる。このため固定の目的や対象成分に応じて適切な固定液を選択し、その主成分を正しく把握する必要がある。 ●基本的な固定液の組成=等張ホルマリンは塩化ナトリウムの添加、中性ホルマリンは沈降炭酸カルシウムで中性化し、中性緩衝ホルマリンはリン酸緩衝液でpHを調整する。 ●特殊固定液の組成=PLP固定液は過ヨウ素酸・リジン・パラホルムアルデヒド、ブアン液はピクリン酸・ホルマリン・酢酸、カルノア液はエタノール・クロロホルム・酢酸からなる。
選択肢ごとの解説
- ① PLP固定液は過ヨウ素酸・リジン・パラホルムアルデヒドを組成とする固定液であり、ピクリン酸との組合せは誤りである。
- ② 中性ホルマリンの中性化には沈降炭酸カルシウムを用いる。リン酸緩衝液を用いるのは中性緩衝ホルマリンであり、硫酸ナトリウムとの組合せは誤りである。
- ③ 正しい。等張ホルマリンはホルマリンに塩化ナトリウムを加えて等張化した固定液であり、塩化ナトリウムとの組合せが正しい。
- ④ ブアン(Bouin)液はピクリン酸・ホルマリン・酢酸を組成とする固定液であり、パラホルムアルデヒドとの組合せは誤りである。
- ⑤ カルノア(Carnoy)液はエタノール・クロロホルム・酢酸を組成とする固定液であり、トリクロロ酢酸との組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:主な固定液の種類と対象
第62回 午後50(病理組織細胞学)
クリオスタットによる凍結切片標本作製法について正しいのはどれか。
- ①引き角は90度である。
- ②薄切温度は-80 ℃である。
- ③組織はゆっくり凍結する。
- ④凍結前にアルコール固定する。
- ⑤包埋剤はパラフィンを用いる。
正答: ①引き角は90度である。
ポイント
クリオスタットによる凍結切片標本の作製では、ミクロトームのナイフに対する組織面の引き角の設定が薄切の成否を左右し、設問では90度が正答とされている。これはナイフと組織面の位置関係を示す角度の表現である。凍結切片は手術中の迅速診断や、脂肪染色・酵素組織化学・蛍光抗体法など固定とパラフィン包埋の過程で失われる成分の検出に用いられる。このように凍結切片は短時間で標本を作製できる反面、形態保持はパラフィン切片に劣る特徴をもつ。凍結切片は手術中の迅速診断において短時間で病変の良悪性や切除断端を判定する目的で用いられ、結果は手術手技の選択に直接反映されるため迅速性と一定の精度が求められる。 ●凍結切片作製の要点=薄切温度は組織により約-15〜-25℃前後で、組織は氷晶の形成を防ぐため急速(瞬間)凍結する。 ●包埋・固定の方法=包埋剤はOCTコンパウンドなどの水溶性包埋剤を用い、薄切後にアルコールやホルマリンで固定する。パラフィンは用いない。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。クリオスタットの薄切ではナイフに対する組織面の角度(引き角)の設定が重要であり、設問では90度とされる。
- ② 薄切温度は組織により約-15〜-25℃前後で行うのが適切であり、-80℃という記述は低すぎるため誤りである。
- ③ 組織は急速(瞬間)凍結して氷晶形成を防ぐ必要があり、ゆっくり凍結するというこの記述は誤りである。
- ④ 凍結切片は無固定のまま薄切し薄切後に固定するのが一般的であり、凍結前にアルコール固定するという記述は誤りである。
- ⑤ 凍結切片の包埋剤はOCTコンパウンドなどの水溶性包埋剤を用い、パラフィンを用いるというこの記述は誤りである。
📋 まとめの表を見る:ミクロトームの種類と特徴
クリオスタットはMinot型ミクロトームを冷却庫内に内蔵した装置。一般的なパラフィンブロックの引き角は約45度、逃げ角は約5度前後に設定する。