第62回(2016) 臨床検査技師国家試験 午後51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第62回 午後51(病理組織細胞学)
腎臓の糸球体基底膜を観察するための染色法として適切なのはどれか。
- ①PAM染色
- ②orcein染色
- ③Giemsa染色
- ④Alcian blue染色
- ⑤Victoria blue染色
正答: ①PAM染色
ポイント
PAM(periodic acid-methenamine silver、過ヨウ素酸メセナミン銀)染色は、基底膜に含まれる糖鎖(PAS陽性物質)を過ヨウ素酸で酸化してアルデヒドを生じさせ、メセナミン銀液で還元・黒色に呈色させる方法で、腎糸球体基底膜や尿細管基底膜・Bowman嚢の基底膜を黒褐色に明瞭に描出できる。膜性腎症における基底膜外側のスパイク形成や、膜性増殖性糸球体腎炎でみられる基底膜の二重化(tram-track像)など、基底膜の微細な構造変化の評価に有用で、糸球体腎炎の病型分類に広く用いられる。 ●銀を用いる基底膜・細網線維染色=PAM染色(糸球体基底膜)・渡辺の鍍銀法(細網線維)・Grocott染色(真菌)。 ●糖鎖・粘液の染色=PAS反応(基底膜・グリコーゲン)・Alcian blue染色(酸性ムコ多糖)・mucicarmine染色(上皮性粘液)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。PAM染色は基底膜の糖鎖を過ヨウ素酸で酸化し銀で黒色に呈色させ、糸球体基底膜を明瞭に描出する。膜性腎症などの観察に用いる。
- ② orcein染色は弾性線維を褐色に染める染色法で、肝のHBs抗原や弾性線維の評価に用いられ、糸球体基底膜の観察には適さない。
- ③ Giemsa染色は血球や骨髄・血液塗抹の細胞核と細胞質を染め分ける染色で、組織の基底膜を選択的に描出する目的には用いられない。
- ④ Alcian blue染色は酸性ムコ多糖(粘液)を青色に染める染色で、粘液産生の評価に用いられ、基底膜の構造観察を目的とはしない。
- ⑤ Victoria blue染色は弾性線維やHBs抗原を青色に染める染色で、肝病変などに用いられ、糸球体基底膜の選択的描出には適さない。
📋 まとめの表を見る:腎糸球体基底膜を対象とする特殊染色とその呈色
いずれも腎糸球体基底膜・メサンギウム基質を観察できるが、染色法により呈色が異なる。
第62回 午後52(病理組織細胞学)
癌の遺伝子異常を確認するのに適切な免疫組織化学的マーカーはどれか。
正答: ②ALK
ポイント
ALK(anaplastic lymphoma kinase、未分化リンパ腫キナーゼ)は染色体転座などで遺伝子再構成・融合を起こすチロシンキナーゼで、肺腺癌のEML4-ALK融合遺伝子や未分化大細胞リンパ腫のNPM-ALKなどで異常に活性化する。免疫組織化学でALK蛋白の過剰発現を検出することは、本来発現しない細胞でのALK遺伝子異常の存在を示唆し、ALK阻害薬(クリゾチニブなど)による分子標的治療の適応判定に直結する。すなわちALKは遺伝子異常を反映するマーカーとして用いられる点が、単なる系統マーカーと異なる。 ●遺伝子異常を反映するマーカー=ALK(融合遺伝子)・HER2(増幅)・c-kit/CD117(GIST)。 ●系統・分化の同定マーカー=CD3(T細胞)・CEA(腺癌)・SMA(平滑筋)・desmin(筋)で、いずれも遺伝子異常そのものの確認指標ではない。
選択肢ごとの解説
- ① CD3はT細胞の表面マーカーで、T細胞性リンパ腫など細胞系統の同定に用いられ、特定の遺伝子異常を確認する指標ではない。
- ② 正しい。ALKは遺伝子再構成・融合により異常発現し、免疫染色での過剰発現がALK遺伝子異常を示唆して分子標的治療の適応判定に用いられる。
- ③ CEA(癌胎児性抗原)は腺癌で発現する腫瘍マーカーで、腺癌の同定や腫瘍マーカーとして用いられ、遺伝子異常の確認には用いない。
- ④ SMA(平滑筋アクチン)は平滑筋や筋線維芽細胞の分化を示すマーカーで、間葉系腫瘍の鑑別に用い、遺伝子異常の指標ではない。
- ⑤ desminは筋線維に発現する中間径フィラメントのマーカーで、横紋筋・平滑筋系腫瘍の同定に用いられ、遺伝子異常の確認には用いない。
📋 まとめの表を見る:腫瘍と免疫組織化学的マーカーの対応
サイトケラチン・EMAは上皮性腫瘍全般に、CD45は造血器腫瘍全般に陽性となる。免疫組織化学は形態のみでは由来判別が難しい低分化腫瘍・転移巣の原発巣推定や、分子標的治療の適応判定に用いる。
第62回 午後53(病理組織細胞学)
大腸病変部の染色標本を別に示す。染色法はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB053.74c95e8162.jpg

- ①PAS反応
- ②Gram染色
- ③orcein染色
- ④Grocott染色
- ⑤Ziehl-Neelsen染色
正答: ①PAS反応
ポイント
PAS反応(periodic acid-Schiff、過ヨウ素酸シッフ反応)は、糖鎖の隣接する水酸基を過ヨウ素酸で酸化してアルデヒド基にし、Schiff試薬(無色のフクシン亜硫酸)と反応させて赤紫色に呈色させる染色である。大腸では杯細胞や腺上皮の中性粘液、細胞質のグリコーゲン、基底膜などが赤紫色に染まり、粘液産生の評価や基底膜病変、さらに真菌の検出にも有用である。ジアスターゼ消化との対比でグリコーゲンと他のPAS陽性物質を鑑別できる点も特徴で、糖原病や腺癌の粘液評価にも応用される。本像では病変部にみられる赤痢アメーバの栄養型が赤紫色に染まっており、染色法はPAS反応と判断する。杯細胞や腺上皮の粘液を示した写真ではない。 ●糖・粘液を染める染色=PAS反応(中性粘液・グリコーゲン)・Alcian blue染色(酸性ムコ多糖)。 ●微生物を染める染色=Gram染色(細菌)・Grocott染色(真菌)・Ziehl-Neelsen染色(抗酸菌)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。PAS反応は糖質成分を赤紫色に染める。本像では病変部の赤痢アメーバの栄養型がPAS陽性を示している。
- ② Gram染色は細菌をグラム陽性(紫)と陰性(赤)に染め分ける染色で、細菌の検出・分類に用いられ、組織粘液の描出を目的としない。
- ③ orcein染色は弾性線維やHBs抗原を褐色に染める染色で、肺や肝・血管壁の評価に用い、大腸粘液の染色には用いられない。
- ④ Grocott染色はメセナミン銀により真菌の菌体を黒色に染める染色で、深在性真菌症の検出に用いられ、粘液の描出には適さない。
- ⑤ Ziehl-Neelsen染色は抗酸菌を赤色に染める染色で、結核菌などの検出に用いられ、大腸の粘液や上皮を染める目的には用いない。
📋 まとめの表を見る:病理組織の主な特殊染色と対象
第62回 午後54(病理組織細胞学)
電子顕微鏡による診断が有用なのはどれか。
正答: ⑤糸球体腎炎
ポイント
糸球体腎炎は光学顕微鏡では捉えにくい微細な構造変化を伴うことが多く、電子顕微鏡による超微形態観察が診断と病型分類に有用である。基底膜の肥厚・二重化、上皮下や内皮下・メサンギウム領域の高電子密度沈着物(電子顕微鏡的に観察される免疫複合体)、微小変化型ネフローゼでの足突起の消失(融合)など、電顕でしか評価できない所見が病型決定に直結する。これに対し腫瘍性病変の多くは組織構築や分化を光学顕微鏡と免疫染色で評価でき、電顕の必要性は低い。電子顕微鏡は腎生検のほか、繊毛運動障害における線毛微細構造の評価や腫瘍の起源同定にも用いられる補助的診断手段である。 ●電子顕微鏡が有用な病変=糸球体腎炎(沈着物・基底膜)・微小変化型ネフローゼ(足突起消失)・繊毛運動障害・神経内分泌顆粒の確認。 ●主に光学顕微鏡・免疫染色で診断する腫瘍=肝癌・血管腫・膠芽腫・骨肉腫など、組織構築や分化を通常染色で評価する。
選択肢ごとの解説
- ① 肝癌は索状・偽腺管構造などを光学顕微鏡で評価し、免疫染色も併用して診断するため、電子顕微鏡が必須となる病変ではない。
- ② 血管腫は拡張した血管腔と内皮細胞の増生を光学顕微鏡で容易に診断でき、電子顕微鏡による超微形態観察を必要としない。
- ③ 膠芽腫は核異型・壊死・微小血管増生などを光学顕微鏡と免疫染色で診断する腫瘍で、電子顕微鏡が診断の決め手にはならない。
- ④ 骨肉腫は腫瘍性類骨の形成を光学顕微鏡で確認して診断する悪性骨腫瘍で、電子顕微鏡による超微形態観察は通常必要としない。
- ⑤ 正しい。糸球体腎炎は基底膜変化や免疫複合体沈着・足突起消失など電子顕微鏡でしか捉えられない所見が病型分類に直結し有用である。
📋 まとめの表を見る:電子顕微鏡検査が有用な対象・有用でない対象
腎生検は光学顕微鏡・蛍光抗体法・電子顕微鏡の3手法を組み合わせて評価するのが基本。
第62回 午後55(病理組織細胞学)
喀痰細胞診のPapanicolaou染色標本を別に示す。組織型はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB055.d542db9561.jpg

- ①腺癌
- ②小細胞癌
- ③大細胞癌
- ④扁平上皮癌
- ⑤悪性リンパ腫
正答: ④扁平上皮癌
ポイント
扁平上皮癌の喀痰細胞診では、角化を反映してオレンジ色〜黄色に濃染するオレンジG好性の異型細胞、クロマチンに富む不整な濃染核(インク様核)、紡錘形やオタマジャクシ形・ヘビ形など多彩で奇怪な細胞形態がみられる。Papanicolaou染色は細胞質の角化の程度を色調で評価できるため、扁平上皮への分化を示す扁平上皮癌の判定に有用である。本像ではオレンジG好性の細胞質と強い核異型を示す細胞がみられる。組織標本でみる癌真珠は中心部の層状角化を特徴とし、中心壊死を意味しない。喫煙との関連が強く、肺門部に好発する中枢型が多い点も背景知識として重要である。 ●角化を示す扁平上皮癌の所見=オレンジ色濃染の細胞質・インク様濃染核・紡錘形やオタマジャクシ形の異型細胞。 ●他の肺癌の細胞像=腺癌(柵状・房状配列、明るい核小体)・小細胞癌(裸核状で核成形、木目込み細工様)・大細胞癌(大型で分化を欠く)。
選択肢ごとの解説
- ① 腺癌は腺腔形成や房状・柵状の集塊、明瞭な核小体と空胞状の細胞質を示し、角化やオレンジ色濃染の細胞質はみられない。
- ② 小細胞癌は裸核状で核間の圧排(核成形、木目込み細工様)を示す小型細胞が密に出現し、角化を示すオレンジ色濃染は認めない。
- ③ 大細胞癌は腺癌・扁平上皮癌の分化を欠く大型異型細胞で構成され、角化やオレンジ色濃染といった扁平上皮への分化所見を欠く。
- ④ 正しい。扁平上皮癌はオレンジ色に濃染する角化した細胞質とインク様濃染核、紡錘形やオタマジャクシ形の異型細胞を示す。
- ⑤ 悪性リンパ腫は孤在性に出現する裸核様の異型リンパ球が主体で、上皮性の集塊や角化を示さず、扁平上皮癌の所見とは異なる。
📋 まとめの表を見る:肺癌の主な組織型(組織像・好発部位・頻度・予後)
扁平上皮癌・小細胞癌は喫煙との関連が強く中枢(肺門部)発生が多い。腺癌は末梢発生で頻度最多。日本の肺癌死亡者数は増加傾向。転移性肺癌は多発性結節を形成することが多い。腺癌の細胞診は粘液産生・腺腔様配列・立体的重積集塊を示す。
第62回 午後56(病理組織細胞学)
病理解剖について正しいのはどれか。
- ①犯罪性の立証を行う。
- ②医師以外が行うことはできない。
- ③希少症例は遺族の承諾なしにできる。
- ④人口動態統計のための正確な情報が得られる。
- ⑤執刀者は事前に厚生労働大臣に届け出る必要がある。
正答: ④人口動態統計のための正確な情報が得られる。
ポイント
病理解剖(病理学的剖検)は、病院で病死した患者について死因・病態・治療効果を究明する目的で行われる解剖であり、得られた所見は人口動態統計の死因情報の精度向上に寄与する正確な情報をもたらす。死体解剖保存法に基づき原則として遺族の承諾を要し、犯罪性の証明を目的とする司法解剖や、監察医が異状死を検案する行政解剖とは目的・根拠法が異なる。臨床診断と剖検所見を対比することで医療の質の評価や医学教育・研究にも資する重要な役割をもつ。承諾解剖が原則であり、解剖により得られた所見は遺族への説明にも用いられ、不明であった死因や合併症の解明につながる。 ●病理解剖の目的=死因・病態の解明、治療効果の評価、医学教育・研究への寄与、正確な死因統計の提供。 ●他の解剖の区分=司法解剖(犯罪性の証明)・行政解剖(監察医による異状死の検案)で、病理解剖とは目的・根拠法が異なる。
選択肢ごとの解説
- ① 犯罪性の立証を目的とするのは司法解剖であり、病理解剖は病死者の死因・病態の解明を目的とするため、この記述は誤りである。
- ② 誤り。死体解剖保存法第2条は、厚生労働大臣が認定した医師・歯科医師その他の者などによる解剖を認めている。したがって解剖を行える者は医師に限定されない。
- ③ 病理解剖は死体解剖保存法に基づき原則として遺族の承諾を要し、希少症例であっても承諾なしに行うことはできない。
- ④ 正しい。病理解剖で得られる死因・病態の情報は正確であり、人口動態統計の死因情報の精度向上に寄与する正確な情報が得られる。
- ⑤ 病理解剖の執刀に際し、解剖ごとに事前に厚生労働大臣へ届け出る必要はなく、死体解剖資格に基づき遺族の承諾を得て行われる。
第62回 午後57(病理組織細胞学)
健常成人の臓器重量で誤っているのはどれか。
- ①脳 — 1,300 g
- ②心臓 — 280 g
- ③肝臓 — 1,100 g
- ④脾臓 — 110 g
- ⑤副腎 — 50 g
正答: ⑤副腎 — 50 g
ポイント
健常成人の副腎は左右合わせて約10〜14gと小さい臓器であり、片側でも数g程度にすぎず、50gは明らかに過大であるため誤りである。参考となる正常臓器重量はおおよそ脳1,300〜1,400g、心臓250〜300g、肝臓1,200〜1,500g、脾臓100〜150g、腎臓は片側約120〜150gであり、選択肢の脳1,300g・心臓280g・肝臓1,100g・脾臓110gはいずれもこれらの正常範囲に概ね合致する。臓器重量は病的変化の評価にも用いられる基本的な指標で、心肥大や肝腫大・脾腫などの判定基準となる。副腎は皮質と髄質からなる小さな内分泌臓器で、左右計でも十数g程度であることを把握しておく必要がある。 ●比較的大きい実質臓器=肝臓(約1,200〜1,500g)・脳(約1,300〜1,400g)。 ●小さい臓器=脾臓(約100〜150g)・腎臓(片側約120〜150g)・副腎(左右計約10〜14g)。
選択肢ごとの解説
- ① 脳は健常成人で約1,300〜1,400gであり、1,300gという値は正常範囲に合致するため、この組合せは誤りではない。
- ② 心臓は健常成人で約250〜300gであり、280gという値は正常範囲に合致するため、この組合せは誤りではない。
- ③ 肝臓は健常成人で約1,200〜1,500gであり、1,100gはやや小さいものの正常範囲に近く、明らかな誤りとはいえない。
- ④ 脾臓は健常成人で約100〜150gであり、110gという値は正常範囲に合致するため、この組合せは誤りではない。
- ⑤ 誤り。副腎は左右合わせて約10〜14gと小さい臓器で、50gは明らかに過大であり、健常成人の臓器重量として正しくない。
第62回 午後58(病理組織細胞学)
ホルムアルデヒドについて正しいのはどれか。
- ①発がん性がある。
- ②分子式はCH3OHである。
- ③酸化されるとクエン酸になる。
- ④医薬用外毒物に指定されている。
- ⑤組織の固定には15%水溶液が用いられる。
正答: ①発がん性がある。
ポイント
ホルムアルデヒド(HCHO)は刺激臭をもつ無色の気体で、その水溶液であるホルマリンは組織固定に広く用いられる。ホルムアルデヒドは発がん性があり、国際がん研究機関(IARC)でヒトに対する発がん性物質に分類され、シックハウス症候群や接触性皮膚炎の原因物質でもある。法令上は医薬用外劇物に指定され、組織固定には通常10%ホルマリン(ホルムアルデヒドとして約4%)が用いられる。蛋白のアミノ基を架橋して組織形態を保持する固定作用をもち、取扱い時は換気と防護が求められる。労働安全衛生法に基づく特定化学物質に該当し、作業環境測定や排気設備による曝露低減が義務づけられている点も重要である。 ●ホルムアルデヒドの性質=発がん性あり・刺激性・医薬用外劇物・分子式HCHO。 ●固定液としての特徴=10%ホルマリン(中性緩衝ホルマリン)で蛋白を架橋固定し、組織形態を保持する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。ホルムアルデヒドは発がん性があり、国際がん研究機関で発がん性物質に分類され、シックハウス症候群の原因物質でもある。
- ② ホルムアルデヒドの分子式はHCHOであり、CH3OHはメタノールの分子式であるため、この記述は誤りである。
- ③ ホルムアルデヒドは酸化されると蟻酸(ギ酸)になり、クエン酸にはならないため、この記述は誤りである。
- ④ ホルムアルデヒドは医薬用外劇物に指定されており、毒物ではないため、医薬用外毒物に指定されているという記述は誤りである。
- ⑤ 組織固定には通常10%ホルマリン(約4%ホルムアルデヒド)が用いられ、15%水溶液を用いるという記述は誤りである。
第62回 午後59(臨床血液学)
鉄代謝で正しいのはどれか。
- ①体内総鉄量は約8 gである。
- ②ヘムは3価の鉄原子をもつ。
- ③フェリチンは貯蔵鉄である。
- ④体内鉄の約25%は組織鉄として存在する。
- ⑤1日に吸収される鉄量は約0.1 mgである。
正答: ③フェリチンは貯蔵鉄である。
ポイント
フェリチンは内部に鉄を貯蔵する蛋白で、主に肝・脾・骨髄のマクロファージや実質細胞に存在する貯蔵鉄であり、血清フェリチン値は体内貯蔵鉄量をよく反映する指標として鉄欠乏や鉄過剰の評価に用いられる。体内総鉄量は成人で約3〜4gで、その約65〜70%は赤血球ヘモグロビンのヘム鉄として機能鉄を構成し、約25〜30%が貯蔵鉄、残りが組織鉄や輸送鉄として存在する。ヘムは2価(第一鉄)の鉄をもち酸素を可逆的に結合する。1日の鉄吸収量は約1mgで、ほぼ同量が排泄されて平衡が保たれており、トランスフェリンが血中で鉄を輸送する役割を担う。 ●鉄の存在形態=機能鉄(ヘモグロビン・ミオグロビン・酵素)・貯蔵鉄(フェリチン・ヘモジデリン)・輸送鉄(トランスフェリン)。 ●鉄代謝の数値=総鉄量約3〜4g・1日吸収量約1mg・ヘム鉄は2価鉄を中心にもつ。
選択肢ごとの解説
- ① 体内総鉄量は成人で約3〜4gであり、約8gとする記述は過大であるため、この値は誤りである。
- ② ヘムは2価(第一鉄)の鉄原子をもち、酸素を可逆的に結合する。3価の鉄をもつとする記述は誤りである。
- ③ 正しい。フェリチンは肝・脾・骨髄などに鉄を蓄える貯蔵鉄で、血清フェリチン値は体内貯蔵鉄量を反映する指標である。
- ④ 体内鉄の約65〜70%はヘモグロビン鉄として存在し、組織鉄は数%に過ぎず、約25%を組織鉄とする記述は誤りである。
- ⑤ 1日に吸収される鉄量は約1mgであり、約0.1mgとする記述は過小であるため、この値は誤りである。
第62回 午後60(臨床血液学)
内因系凝固反応の開始に関わる因子はどれか。
- ①組織因子
- ②第Ⅹ因子
- ③第Ⅻ因子
- ④第ⅩⅢ因子
- ⑤プロトロンビン
正答: ③第Ⅻ因子
ポイント
内因系凝固反応は、血液が異物面(陰性に荷電した面)に接触することで第Ⅻ因子(Hageman因子)が活性化されることから開始される。活性化第Ⅻ因子はプレカリクレインや高分子キニノゲンの関与のもと第Ⅺ因子を活性化し、続いて第Ⅸ因子を活性化、活性化第Ⅷ因子とともに第Ⅹ因子を活性化して共通系へと進む。内因系の機能はAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)で評価され、外因系を評価するPT(プロトロンビン時間)とは反映する因子が異なる。第Ⅻ因子は接触因子とも呼ばれ、ガラス面やカオリンなどの陰性荷電面への接触で自己活性化する点が出発点となる。 ●内因系の凝固因子=第Ⅻ因子(開始)・第Ⅺ因子・第Ⅸ因子・第Ⅷ因子。 ●外因系・共通系=組織因子(第Ⅲ因子)と第Ⅶ因子が外因系を開始し、第Ⅹ因子・第Ⅴ因子・プロトロンビン(第Ⅱ因子)・フィブリノゲンが共通系を構成する。
選択肢ごとの解説
- ① 組織因子(第Ⅲ因子)は外因系凝固反応の開始に関わり、第Ⅶ因子と複合体を形成して反応を起こすため、内因系の開始因子ではない。
- ② 第Ⅹ因子は内因系・外因系が合流する共通系の因子で、両系の活性化を受けて働き、内因系反応の開始そのものに関わる因子ではない。
- ③ 正しい。第Ⅻ因子は血液が陰性荷電の異物面に接触することで活性化され、内因系凝固反応の開始に関わる因子である。
- ④ 第ⅩⅢ因子はトロンビンにより活性化されるフィブリン安定化因子で、フィブリンを架橋して安定化する凝固の最終段階に働く因子であり、内因系の開始因子ではない。
- ⑤ プロトロンビン(第Ⅱ因子)は共通系でトロンビンに活性化される因子で、フィブリン形成に関わり、内因系反応の開始因子ではない。
第62回 午後61(臨床血液学)
血漿を4℃で保存した場合、活性低下が最も著しいのはどれか。
- ①フィブリノゲン
- ②プロトロンビン
- ③第Ⅷ因子
- ④第Ⅹ因子
- ⑤第ⅩⅢ因子
正答: ③第Ⅷ因子
ポイント
第Ⅷ因子は熱や保存に弱い不安定な凝固因子で、血漿を4℃で保存すると活性が著しく低下しやすい。第Ⅴ因子とともに易変因子(不安定因子)と呼ばれ、これらの活性を保持するには採血後速やかに分離し新鮮凍結血漿として凍結保存する必要がある。一方フィブリノゲンやプロトロンビン、第Ⅹ因子などは比較的安定で、4℃保存でも活性低下が緩やかである。選択肢の中で4℃保存により活性低下が最も著しいのは第Ⅷ因子であり、輸血用血液製剤の管理上も重要である。第Ⅷ因子は血友病Aで欠乏する因子であり、凝固検査の検体は適切に管理しないと活性が低下し偽延長を招く点に注意を要する。 ●不安定(易変)因子=第Ⅴ因子・第Ⅷ因子で、保存により活性が低下しやすい。 ●安定な因子=フィブリノゲン(第Ⅰ因子)・プロトロンビン(第Ⅱ因子)・第Ⅹ因子・第Ⅶ因子などで、保存に比較的耐える。
選択肢ごとの解説
- ① フィブリノゲン(第Ⅰ因子)は比較的安定な凝固因子で、4℃保存でも活性低下は緩やかであり、最も著しく低下する因子ではない。
- ② プロトロンビン(第Ⅱ因子)は保存に比較的安定な因子で、4℃保存での活性低下は緩やかであり、最も著しく低下する因子ではない。
- ③ 正しい。第Ⅷ因子は易変(不安定)因子で、血漿を4℃で保存すると活性が著しく低下しやすく、新鮮凍結血漿で活性が保持される。
- ④ 第Ⅹ因子は共通系の比較的安定な凝固因子で、4℃保存でも活性低下は緩やかであり、最も著しく低下する因子ではない。
- ⑤ 第ⅩⅢ因子(フィブリン安定化因子)は保存に比較的安定な因子であり、4℃保存で活性低下が最も著しいのは易変因子の第Ⅷ因子であるため誤りである。
第62回 午後62(臨床血液学)
Brecher-Cronkite法による血小板数算定で正しいのはどれか。
- ①倍率100倍で鏡検する。
- ②暗視野顕微鏡を使用する。
- ③EDTA-2K加血液を用いる。
- ④14%硫酸マグネシウム溶液で希釈する。
- ⑤血球計算板に流し込み1分後に算定する。
正答: ③EDTA-2K加血液を用いる。
ポイント
Brecher-Cronkite法は血小板数を直接計算する位相差顕微鏡法で、抗凝固剤としてEDTA-2K加血液を用いる。1%シュウ酸アンモニウム溶液で希釈して赤血球を溶血させ血小板を残し、血球計算板に入れて湿潤箱で静置・沈降させたのち位相差顕微鏡で血小板を計数する。EDTAは血小板凝集を防ぎ正確な算定を可能にする。現在は自動血球計数装置が主流だが、本法は基準法として位置づけられ、装置の異常値の確認などに用いられる。位相差顕微鏡を用いることで無染色の血小板を背景と区別して観察でき、赤血球を溶血させることで計数の妨げを除く点が方法の要点である。 ●血小板数算定法=Brecher-Cronkite法(位相差顕微鏡・直接法)・自動血球計数装置(電気抵抗法・光学法)。 ●希釈・溶血液=1%シュウ酸アンモニウム液で赤血球を溶血させ血小板を残す。抗凝固剤はEDTA-2Kを用いる。
選択肢ごとの解説
- ① Brecher-Cronkite法では高倍率(約400倍)で血小板を計数し、倍率100倍では血小板の計数に不十分であるため、この記述は誤りである。
- ② Brecher-Cronkite法では位相差顕微鏡を使用して血小板を観察するもので、暗視野顕微鏡を使用するという記述は誤りである。
- ③ 正しい。Brecher-Cronkite法はEDTA-2K加血液を用い、血小板凝集を防いで位相差顕微鏡で直接血小板を計数する方法である。
- ④ 赤血球を溶血させ血小板を残すために1%シュウ酸アンモニウム溶液で希釈し、14%硫酸マグネシウム溶液は用いないため誤りである。
- ⑤ 血小板を計算板に入れた後は静置して沈降させてから計数するもので、流し込み1分後に算定するという記述は適切でない。
📋 まとめの表を見る:一次止血・凝固関連検査の測定原理・使用器具
出血時間は簡便だが標準化が難しく感度が限定的なため、近年は使用頻度が減っている。クロスミキシング試験ではガラス試験管による接触活性化(第XII因子)を避けるためプラスチックまたはシリコンコート試験管を用いる。
第62回 午後63(臨床血液学)
末梢血のWright-Giemsa染色標本を別に示す。矢印に示す細胞が出現し、リストセチン惹起血小板凝集能が欠如するのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB063.0ec89ae2fc.jpg

- ①von Willebrand病
- ②Bernard-Soulier症候群
- ③血小板無力症
- ④アスピリン服用
- ⑤ストレージ・プール病
正答: ②Bernard-Soulier症候群
ポイント
Bernard-Soulier症候群は血小板膜糖蛋白GPⅠb/Ⅸ/Ⅴ複合体の異常により、von Willebrand因子を介した血小板の血管内皮下への粘着が障害される先天性血小板機能異常症である。リストセチン惹起血小板凝集能が欠如し、血小板数の減少と末梢血標本上の巨大血小板(大型血小板)がみられるのが特徴である。同じくリストセチン凝集が低下するvon Willebrand病と異なり、正常血漿の添加でも凝集は是正されない点で鑑別できる。出血傾向は皮膚粘膜出血が中心である。 ●リストセチン凝集が欠如=Bernard-Soulier症候群(GPⅠb異常)・von Willebrand病(vWF異常)。 ●ADP・コラーゲン凝集が欠如=血小板無力症(GPⅡb/Ⅲa異常)・アスピリン服用(シクロオキシゲナーゼ阻害)・ストレージプール病(顆粒欠損)。
選択肢ごとの解説
- ① von Willebrand病はvWFの量的・質的異常でリストセチン凝集が低下するが、巨大血小板や血小板減少は通常伴わず、本所見とは異なる。
- ② 正しい。Bernard-Soulier症候群はGPⅠb/Ⅸ/Ⅴ異常で巨大血小板と血小板減少を示し、リストセチン惹起血小板凝集能が欠如する。
- ③ 血小板無力症はGPⅡb/Ⅲa異常でADP・コラーゲン凝集が欠如するが、リストセチン凝集は保たれ、巨大血小板も示さない。
- ④ アスピリン服用はシクロオキシゲナーゼ阻害により二次凝集が障害されるが、リストセチン凝集は保たれ、巨大血小板も伴わない。
- ⑤ ストレージプール病は血小板顆粒の欠損で二次凝集が障害されるが、リストセチン凝集は保たれ、巨大血小板を特徴としない。
📋 まとめの表を見る:血小板凝集能検査における疾患・薬剤による低下パターン
Bernard-Soulier症候群では巨大血小板を伴う。
第62回 午後64(臨床血液学)
発作性夜間ヘモグロビン尿症の検査所見で正しいのはどれか。
- ①血清LDが低下する。
- ②白血球数が増加する。
- ③血清ハプトグロビンが増加する。
- ④赤血球膜表面CD59が欠損している。
- ⑤好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコアが上昇する。
正答: ④赤血球膜表面CD59が欠損している。
ポイント
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は造血幹細胞のPIGA遺伝子の後天的変異によりGPIアンカー型膜蛋白の合成が障害される後天性の溶血性疾患である。補体制御蛋白であるCD55(DAF)とCD59(MIRL)が赤血球膜表面で欠損するため、補体の活性化を抑えられず補体による持続的な血管内溶血を起こす。フローサイトメトリーによる血球表面のCD55・CD59欠損の証明が診断に有用で、血管内溶血を反映して血清LD上昇・ハプトグロビン低下・ヘモグロビン尿がみられ、血栓症を合併しやすい。睡眠中の生理的なアシドーシスで溶血が亢進し朝の濃い血色素尿を呈することが病名の由来で、再生不良性貧血との移行もみられる。 ●PNHの検査所見=CD55・CD59欠損・血清LD上昇・ハプトグロビン低下・血色素尿(血管内溶血)。 ●関連病態=再生不良性貧血との関連・血栓症の合併・好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコア低下。
選択肢ごとの解説
- ① PNHは血管内溶血により細胞内酵素が放出されるため血清LD(LDH)は上昇するもので、低下するという記述は誤りである。
- ② PNHでは造血障害を伴うことが多く白血球数はむしろ減少しやすく、白血球数が増加するという記述は一般的でなく誤りである。
- ③ 血管内溶血で遊離ヘモグロビンと結合し消費されるため血清ハプトグロビンは低下するもので、増加するという記述は誤りである。
- ④ 正しい。PNHではGPIアンカー蛋白の欠損により赤血球膜表面のCD59(およびCD55)が欠損し、補体による血管内溶血を起こす。
- ⑤ PNHでは好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコアは低下することが多く、上昇するという記述は適切でない。
第62回 午後65(臨床血液学)
伝染性単核症で増加する異型リンパ球(反応性リンパ球)が属するのはどれか。
正答: ②T細胞
ポイント
伝染性単核症はEBウイルス(Epstein-Barrウイルス)の初感染で起こる疾患で、ウイルスはCD21を受容体としてB細胞に感染する。感染B細胞に反応して増殖・活性化するのは細胞傷害性T細胞(CD8陽性T細胞)であり、末梢血に出現する異型リンパ球(反応性リンパ球)の主体はこの活性化したT細胞である。臨床的には発熱・咽頭炎・頸部リンパ節腫脹・肝脾腫を呈し、検査では異型リンパ球増加・肝逸脱酵素上昇・異好抗体(Paul-Bunnell反応)陽性などがみられる。 ●伝染性単核症の細胞動態=EBVがB細胞に感染し、反応性に活性化T細胞(CD8陽性)が増殖して異型リンパ球となる。 ●検査所見=異型リンパ球増加・肝逸脱酵素上昇・Paul-Bunnell反応(異好抗体)陽性・EBV抗体(VCA-IgM)陽性。
選択肢ごとの解説
- ① B細胞はEBウイルスが感染する標的細胞であるが、異型リンパ球として反応性に増殖する細胞ではないため、この選択肢は適切でない。
- ② 正しい。伝染性単核症で増加する異型リンパ球は、EBV感染B細胞に反応して活性化・増殖した細胞傷害性T細胞(CD8陽性)である。
- ③ NK細胞は自然免疫を担うリンパ球で一部関与はするが、伝染性単核症の異型リンパ球の主体ではないため、最適な答えではない。
- ④ 形質細胞はB細胞が分化して抗体を産生する細胞であり、伝染性単核症で増加する異型リンパ球の本体ではない。
- ⑤ リンパ芽球は腫瘍性に増殖する未熟リンパ球で、急性リンパ性白血病などでみられる細胞であり、反応性の異型リンパ球とは異なる。
📋 まとめの表を見る:ウイルス感染に関連する血液・リンパ系疾患
第62回 午後66(臨床血液学)
真性赤血球増加症でみられるのはどれか。
- ①BCR-ABL1融合遺伝子
- ②JAK2変異
- ③MCV高値
- ④白血球Döhle様小体
- ⑤破砕赤血球
正答: ②JAK2変異
ポイント
真性赤血球増加症(真性多血症、PV)は造血幹細胞レベルのJAK2遺伝子変異(大多数はV617F変異)を背景とする骨髄増殖性腫瘍で、赤血球を中心に白血球・血小板も増加する汎血球増加を示す。JAK2変異によりエリスロポエチン非依存性に赤血球が産生され、血液粘度の上昇から血栓症や頭痛・顔面紅潮などを生じる。血清エリスロポエチン低値とJAK2変異の証明が診断基準の主要項目で、二次性多血症との鑑別に重要である。脾腫やヘマトクリット高値もみられ、血液粘度上昇に伴う血栓症の予防として瀉血や治療が行われる。掻痒感も特徴的な症状である。 ●骨髄増殖性腫瘍とJAK2=真性赤血球増加症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症でJAK2変異がみられる。 ●他疾患の遺伝子・所見=BCR-ABL1融合遺伝子(慢性骨髄性白血病)・破砕赤血球(TTP/DIC)・Döhle様小体(May-Hegglin異常などのMYH9関連疾患)。
選択肢ごとの解説
- ① BCR-ABL1融合遺伝子は慢性骨髄性白血病でみられる異常であり、真性赤血球増加症の所見ではないため、この選択肢は適切でない。
- ② 正しい。真性赤血球増加症はJAK2遺伝子変異(多くはV617F)を背景とする骨髄増殖性腫瘍で、JAK2変異が診断の主要項目である。
- ③ 真性赤血球増加症では赤血球数は増加するが小球性傾向を示すこともあり、MCV高値は本疾患を特徴づける所見ではない。
- ④ Döhle様小体は、May-Hegglin異常を含むMYH9関連疾患でみられる好中球内の封入体である。感染時などにみられるDöhle小体とは区別し、真性赤血球増加症の特徴的所見ではない。
- ⑤ 破砕赤血球は血栓性微小血管症(TTP・HUS)やDICでみられる所見で、真性赤血球増加症に特徴的な所見ではない。
📋 まとめの表を見る:真性赤血球増加症〈PV〉の主な検査所見
第62回 午後67(臨床血液学)
Helicobacter pylori感染が関連するのはどれか。
- ①播種性血管内凝固
- ②溶血性尿毒症症候群
- ③抗リン脂質抗体症候群
- ④血栓性血小板減少性紫斑病
- ⑤特発性血小板減少性紫斑病
正答: ⑤特発性血小板減少性紫斑病
ポイント
Helicobacter pyloriは胃粘膜に感染するグラム陰性らせん菌で、慢性胃炎・胃十二指腸潰瘍・胃MALTリンパ腫・胃癌の原因となる。さらに特発性血小板減少性紫斑病(ITP)との関連が知られ、H. pyloriの除菌により血小板数が改善する症例が報告されている。これはH. pyloriに対する免疫反応が分子相同性などを介して血小板に対する自己抗体産生を誘導することなどが関与すると考えられている。他の選択肢の血小板・凝固疾患はそれぞれ別の機序で発症する。 ●H. pylori感染が関連する疾患=胃十二指腸潰瘍・胃MALTリンパ腫・胃癌・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)。 ●他の血小板・凝固疾患の機序=DIC(基礎疾患による凝固活性化)・HUS(志賀毒素)・TTP(ADAMTS13欠損)・抗リン脂質抗体症候群(自己抗体による血栓)。
選択肢ごとの解説
- ① 播種性血管内凝固(DIC)は感染・悪性腫瘍などを基礎とする凝固活性化で起こり、H. pylori感染が直接関連する病態ではない。
- ② 溶血性尿毒症症候群(HUS)は腸管出血性大腸菌の志賀毒素などが原因で、H. pylori感染と関連する病態ではない。
- ③ 抗リン脂質抗体症候群は抗リン脂質抗体による血栓・流産を起こす自己免疫疾患で、H. pylori感染が関連する病態ではない。
- ④ 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)はADAMTS13活性の低下による微小血栓が原因で、H. pylori感染と関連する病態ではない。
- ⑤ 正しい。特発性血小板減少性紫斑病(ITP)はH. pylori感染と関連し、除菌により血小板数が改善する症例が報告されている。
第62回 午後68(臨床微生物学)
ウイルスとクラミジアに共通する特徴はどれか。
- ①二分裂で増殖する。
- ②リボソームを有する。
- ③抗生物質に感受性がある。
- ④光学顕微鏡で観察できる。
- ⑤増殖には生きた細胞が必要である。
正答: ⑤増殖には生きた細胞が必要である。
ポイント
ウイルスとクラミジアはいずれも偏性細胞内寄生体で、自らだけでは増殖できず増殖には生きた宿主細胞が必要である点が共通する。クラミジアは細菌に分類されリボソームや細胞壁様構造をもち二分裂で増殖して抗菌薬が有効だが、自らエネルギー(ATP)を産生できないエネルギー寄生体であるため宿主細胞内でしか増殖できない。ウイルスはリボソームをもたず宿主細胞の翻訳装置を利用して複製し、抗菌薬は無効である。両者はこの細胞内増殖性のみを共通点としてもつ。クラミジアは基本小体と網様体という二形態の発育環をもち、リケッチアとともに偏性細胞内寄生性の細菌に分類される点で、ウイルスとは生物学的性質が根本的に異なる。 ●偏性細胞内寄生体=ウイルス・クラミジア・リケッチアで、増殖に生きた細胞を要する。 ●両者の相違=クラミジアは細菌でリボソームをもち抗菌薬が有効・二分裂で増殖、ウイルスはリボソームをもたず抗菌薬無効・宿主の機構で複製。
選択肢ごとの解説
- ① 二分裂で増殖するのはクラミジアなど細菌の特徴で、ウイルスは宿主細胞内で部品を合成して組み立てる複製を行うため、共通ではない。
- ② リボソームを有するのはクラミジア(細菌)であり、ウイルスはリボソームをもたないため、両者に共通する特徴ではない。
- ③ 抗生物質に感受性があるのはクラミジアで、ウイルスは抗生物質が無効であるため、両者に共通する特徴ではない。
- ④ 光学顕微鏡で観察できるのはクラミジアの封入体程度で、ウイルスは電子顕微鏡を要するため、両者に共通する特徴ではない。
- ⑤ 正しい。ウイルスとクラミジアはともに偏性細胞内寄生体で、増殖には生きた宿主細胞が必要である点が両者に共通する特徴である。
第62回 午後69(臨床微生物学)
35 ℃で運動性がないのはどれか。
- ①Enterobacter cloacae
- ②Escherichia coli
- ③Morganella morganii
- ④Serratia marcescens
- ⑤Yersinia enterocolitica
正答: ⑤Yersinia enterocolitica
ポイント
Yersinia enterocoliticaは温度依存性の運動性をもつ腸内細菌科の菌で、35℃培養では鞭毛を発現せず運動性を示さないが、25〜30℃の低温では周毛性鞭毛により運動性を示す。この性状は同定上の重要な鑑別点となる。一方、選択肢の他の腸内細菌科菌(Enterobacter cloacae・Escherichia coli・Morganella morganii・Serratia marcescens)はいずれも周毛性鞭毛をもち35℃で運動性を示すため、35℃で運動性がないという条件にはYersinia enterocoliticaのみが合致する。 ●35℃で運動性を示す腸内細菌科=Enterobacter cloacae・Escherichia coli・Morganella morganii・Serratia marcescens。 ●運動性が温度依存または陰性=Yersinia enterocolitica(25℃で運動性、35℃で陰性)・Klebsiella・Shigella(非運動性)。
選択肢ごとの解説
- ① Enterobacter cloacaeは周毛性鞭毛をもち35℃で運動性を示す腸内細菌科の菌であり、35℃で運動性がないという条件には合致しない。
- ② Escherichia coliは周毛性鞭毛をもち35℃で運動性を示す腸内細菌科の代表菌であり、35℃で運動性がないという条件には合致しない。
- ③ Morganella morganiiは周毛性鞭毛をもち35℃で運動性を示す腸内細菌科の菌であり、35℃で運動性がないという条件には合致しない。
- ④ Serratia marcescensは周毛性鞭毛をもち35℃で運動性を示す腸内細菌科の菌であり、35℃で運動性がないという条件には合致しない。
- ⑤ 正しい。Yersinia enterocoliticaは温度依存性の運動性をもち、25〜30℃では運動するが35℃では鞭毛を発現せず運動性を示さない。
第62回 午後70(臨床微生物学)
細菌の形態と染色法の組合せで正しいのはどれか。
- ①鞭毛 — Hiss法
- ②芽胞 — Wirtz法
- ③莢膜 — Giménez染色
- ④抗酸菌 — Neisser染色
- ⑤異染小体 — Leifson法
正答: ②芽胞 — Wirtz法
ポイント
Wirtz法(Wirtz-Conklin法)は細菌の芽胞を染める染色法で、マラカイトグリーンを加熱しながら芽胞内に浸透させ、対比染色にサフラニンを用いて菌体を赤、芽胞を緑に染め分ける。芽胞は厚い殻をもち熱や薬剤・乾燥に抵抗性があって通常染色では染まりにくいため、加熱して色素を浸透させる染色法が用いられる。Bacillus属やClostridium属の芽胞形成の確認に有用である。他の選択肢は構造と染色法の組合せが誤っており、本問では芽胞とWirtz法のみが正しい。 ●特殊構造と染色法=芽胞=Wirtz法・鞭毛=Leifson法(タンニン酸・塩基性フクシン)・莢膜=墨汁法やHiss法・異染小体=Neisser染色やAlbert染色。 ●他の染色=Giménez染色(レジオネラ・リケッチア)・Ziehl-Neelsen法(抗酸菌)で、本問の組合せの誤りを区別する。
選択肢ごとの解説
- ① 鞭毛の染色にはLeifson法などを用いる。Leifson法はタンニン酸による媒染と塩基性フクシンを用いる鞭毛染色で、鍍銀法ではない。Hiss法は莢膜染色なので、この組合せは誤りである。
- ② 正しい。Wirtz法(Wirtz-Conklin法)はマラカイトグリーンを加熱浸透させて芽胞を緑に、菌体を赤に染め分ける芽胞染色である。
- ③ 莢膜の染色には墨汁法やHiss法などを用いるもので、Giménez染色はレジオネラなどに用いられるため、この組合せは正しくない。
- ④ 抗酸菌の染色にはZiehl-Neelsen法などを用いるもので、Neisser染色は異染小体の染色に用いられるため、この組合せは正しくない。
- ⑤ 異染小体の染色にはNeisser染色やAlbert染色を用いるもので、Leifson法は鞭毛染色に用いられるため、この組合せは正しくない。
📋 まとめの表を見る:細菌の特殊構造と染色法
Giménez染色はレジオネラ・リケッチアなどに用いる。
第62回 午後71(臨床微生物学)
微生物と有効な消毒薬の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①酵母 — 次亜塩素酸ナトリウム
- ②糸状菌 — クロルヘキシジン
- ③結核菌 — ポビドンヨード
- ④ウイルス — 両性界面活性剤
- ⑤有芽胞菌 — 70%アルコール
正答: ①酵母 — 次亜塩素酸ナトリウム・③結核菌 — ポビドンヨード
ポイント
酵母(真菌)には次亜塩素酸ナトリウムが有効で、中〜高水準消毒薬として真菌に殺菌的に作用する。また結核菌(抗酸菌)にはポビドンヨード(ヨード系)が有効で、中水準消毒薬として抗酸菌に有効性を示す。これに対しクロルヘキシジンや両性界面活性剤は低水準消毒薬で結核菌・真菌・多くのウイルスへの効果が限定的であり、アルコールは芽胞には無効である。消毒薬は対象微生物の抵抗性に応じて適切な水準のものを選択する必要があり、本問では酵母と次亜塩素酸ナトリウム、結核菌とポビドンヨードの2組が正しい。 ●抗微生物スペクトルが広い消毒薬=次亜塩素酸ナトリウム・ポビドンヨード(中〜高水準、真菌・結核菌・ウイルスに有効)。 ●スペクトルが狭い消毒薬=クロルヘキシジン・両性界面活性剤・アルコール(低〜中水準、芽胞や一部に無効)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。酵母などの真菌には次亜塩素酸ナトリウムが有効で、中〜高水準消毒薬として殺菌的に作用するため、適切な組合せである。
- ② 糸状菌(真菌)に対してクロルヘキシジンは効果が乏しく、低水準消毒薬では十分な殺真菌作用が得られないため、適切な組合せではない。
- ③ 正しい。結核菌にはポビドンヨード(ヨード系)が有効で、中水準消毒薬として抗酸菌に有効性を示すため、適切な組合せである。
- ④ ウイルスに対し両性界面活性剤は効果が限定的な低水準消毒薬であり、広く有効とはいえないため、適切な組合せではない。
- ⑤ 有芽胞菌に対して70%アルコールは芽胞に無効であり、殺芽胞作用をもたないため、適切な組合せではない。
📋 まとめの表を見る:消毒薬の水準分類と主な薬剤・効果
消毒用エタノールは70〜80%溶液が最も殺菌力が強く、一般細菌・結核菌・真菌・多くのウイルスに有効。ただし細菌芽胞には無効で、一部のノンエンベロープウイルスにも効果が不十分である。
第62回 午後72(臨床微生物学)
薬剤耐性菌と有効な治療抗菌薬の組合せで正しいのはどれか。
- ①多剤耐性緑膿菌 — アミノグリコシド系
- ②多剤耐性アシネトバクター — キノロン系
- ③バンコマイシン耐性腸球菌 — セファロスポリン系
- ④メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 — ペニシリン系
- ⑤基質拡張型β-ラクタマーゼ産生菌 — カルバペネム系
正答: ⑤基質拡張型β-ラクタマーゼ産生菌 — カルバペネム系
ポイント
基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌はペニシリン系や第三世代セファロスポリン系を分解する酵素を産生して耐性を示すが、カルバペネム系抗菌薬はこのESBLに安定で分解されにくく有効であるため、ESBL産生菌の治療にカルバペネム系が用いられる。耐性菌は産生する酵素や薬剤標的の変化に応じて有効薬が決まる。多剤耐性緑膿菌・多剤耐性アシネトバクターは多系統に耐性を示し、VREはバンコマイシン耐性、MRSAはβ-ラクタム薬耐性で、それぞれ有効薬は限られる。耐性菌の検出と適切な抗菌薬選択は院内感染対策の要であり、薬剤感受性試験の結果に基づく治療が原則となる。 ●ESBL産生菌=カルバペネム系が有効。MRSA=バンコマイシン・テイコプラニン・リネゾリドが有効。 ●他の耐性菌=多剤耐性緑膿菌・多剤耐性アシネトバクターは多くの薬剤に耐性、VREはバンコマイシン耐性でリネゾリドなどを用いる。
選択肢ごとの解説
- ① 多剤耐性緑膿菌はアミノグリコシド系を含む複数系統に耐性を示す菌であり、アミノグリコシド系が有効とはいえず適切でない。
- ② 多剤耐性アシネトバクターはキノロン系を含む複数系統に耐性を示す菌であり、キノロン系が有効とはいえず適切でない。
- ③ バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)にはリネゾリドなどを用い、セファロスポリン系は腸球菌に元来効きにくく適切でない。
- ④ メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)はペニシリン系を含むβ-ラクタム薬に耐性で、ペニシリン系が有効とはいえず適切でない。
- ⑤ 正しい。基質拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌にはこの酵素に安定なカルバペネム系が有効で、治療に用いられる。
📋 まとめの表を見る:主な薬剤耐性菌と有効な治療薬
ESBLはカルバペネム系を分解しないため、ESBL産生菌はメロペネムに感性を示すことが多い(メロペネム耐性ではない点に注意)。
第62回 午後73(臨床微生物学)
不活化ワクチンが使用されるのはどれか。2つ選べ。
- ①風疹
- ②麻疹
- ③B型肝炎
- ④インフルエンザ
- ⑤流行性耳下腺炎
正答: ③B型肝炎・④インフルエンザ
ポイント
不活化ワクチンは病原体を不活化(死菌・成分)して作られるワクチンで、感染性をもたず複数回接種を要するものが多い。選択肢ではB型肝炎ワクチン(HBs抗原を用いた成分ワクチン)とインフルエンザワクチン(不活化スプリットワクチン)が不活化ワクチンに該当する。一方、風疹・麻疹・流行性耳下腺炎は弱毒生ワクチンで、生きた弱毒病原体を用いるため接種後に弱い感染が成立し、免疫不全者や妊婦への接種に注意を要する。生ワクチンと不活化ワクチンの区別は接種計画上重要である。不活化ワクチンは免疫の持続が短く追加接種を要することが多いのに対し、生ワクチンは少量で長期の免疫が得られるが弱毒株が原因となる副反応に留意が必要である。 ●不活化ワクチン=B型肝炎・インフルエンザ・百日咳・日本脳炎・ポリオ(IPV)・肺炎球菌。 ●生ワクチン=風疹・麻疹・流行性耳下腺炎・水痘・BCG・ロタウイルスで、生きた弱毒病原体を用いる。
選択肢ごとの解説
- ① 風疹ワクチンは弱毒生ワクチンであり、生きた弱毒ウイルスを用いるため、不活化ワクチンには該当しない。
- ② 麻疹ワクチンは弱毒生ワクチンであり、生きた弱毒ウイルスを用いるため、不活化ワクチンには該当しない。
- ③ 正しい。B型肝炎ワクチンはHBs抗原を用いた成分ワクチン(不活化ワクチン)であり、生きた病原体を含まない。
- ④ 正しい。インフルエンザワクチンは不活化スプリットワクチンであり、不活化された成分を用いる不活化ワクチンに該当する。
- ⑤ 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)ワクチンは弱毒生ワクチンであり、生きた弱毒ウイルスを用いるため、不活化ワクチンには該当しない。
第62回 午後74(臨床微生物学)
膿性痰のGram染色標本を別に示す。喀痰の35 ℃、24時間培養ではチョコレート寒天培地に発育したが、血液寒天培地とBTB乳糖寒天培地には発育が認められなかった。推定される菌種はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB074.467724a3d3.jpg

- ①Bordetella pertussis
- ②Haemophilus influenzae
- ③Legionella pneumophila
- ④Moraxella catarrhalis
- ⑤Pasteurella multocida
正答: ②Haemophilus influenzae
ポイント
Haemophilus influenzae(インフルエンザ菌)は発育に発育因子V(NAD)と発育因子X(ヘミン)の両方を必要とするため、両因子を含むチョコレート寒天培地には発育するが、V因子を欠く通常のヒツジ血液寒天培地には発育しない。膿性痰のグラム陰性小桿菌で、上気道感染症・肺炎・中耳炎・小児髄膜炎などの主要起炎菌である。本問の「チョコレート寒天に発育し、血液寒天とBTB乳糖寒天に発育しない」という培養所見は、発育因子要求性をもつインフルエンザ菌の典型的な性状に合致する。 ●発育因子を要求する菌=Haemophilus influenzae(V+X因子)でチョコレート寒天に発育、血液寒天に発育不良。 ●他の呼吸器・特殊培地要求菌=Legionella(BCYE培地)・Bordetella pertussis(ボルデー・ジャング培地)・Moraxella catarrhalis(血液寒天に発育)。
選択肢ごとの解説
- ① Bordetella pertussisはボルデー・ジャング培地など特殊培地を要求する菌で、チョコレート寒天での典型的発育像とは合致しない。
- ② 正しい。Haemophilus influenzaeはV因子・X因子を要求し、これらを含むチョコレート寒天に発育するが血液寒天には発育しない。
- ③ Legionella pneumophilaはBCYEα培地などシステイン・鉄を要求する培地で発育する菌で、本問の培養所見とは合致しない。
- ④ Moraxella catarrhalisはグラム陰性双球菌で通常の血液寒天培地に発育する菌であり、血液寒天に発育しない本所見とは合致しない。
- ⑤ Pasteurella multocidaは血液寒天培地に発育するグラム陰性桿菌で、動物咬傷に関連し、本問の培養所見とは合致しない。
📋 まとめの表を見る:特殊な発育因子・培養条件を必要とする細菌
第62回 午後75(臨床微生物学)
新生児髄膜炎患児の脳脊髄液をチョコレート寒天培地、5%ヒツジ血液加寒天培地およびBTB乳糖寒天培地に分離培養した。後二者の培地を別に示す。集落からのGram染色所見はGram陽性球菌であった。推定される菌種はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB075.2f6494ed99.jpg

- ①Enterococcus faecalis
- ②Listeria monocytogenes
- ③Staphylococcus aureus
- ④Streptococcus agalactiae
- ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ④Streptococcus agalactiae
ポイント
Streptococcus agalactiae(B群溶血性レンサ球菌、GBS)はグラム陽性球菌で連鎖状に配列し、血液寒天培地でβ溶血を示す。新生児髄膜炎・敗血症・肺炎の主要起炎菌で、分娩時に産道で母体から児へ垂直感染して発症する。BTB乳糖寒天培地には発育しにくく、CAMPテスト陽性・バシトラシン耐性・馬尿酸加水分解陽性などが同定上の特徴である。本問ではグラム陽性球菌で新生児髄膜炎という臨床像から、グラム陰性桿菌のE. coliやグラム陽性桿菌のListeriaと区別され、GBSが推定される。 ●新生児髄膜炎の起炎菌=Streptococcus agalactiae(GBS)・Escherichia coli・Listeria monocytogenes。 ●GBSの性状=グラム陽性連鎖球菌・β溶血・CAMPテスト陽性・Lancefield B群で、グラム陰性のE. coliと区別される。
選択肢ごとの解説
- ① Enterococcus faecalisはグラム陽性球菌だが、BTB乳糖寒天培地に発育し胆汁エスクリン陽性を示し、新生児髄膜炎の典型起炎菌ではない。
- ② Listeria monocytogenesはグラム陽性桿菌であり、グラム陽性球菌という所見と一致しないため、本問の推定菌には合致しない。
- ③ Staphylococcus aureusはグラム陽性球菌でブドウ状配列をとる菌で、新生児髄膜炎の典型起炎菌ではなく、本病態には合致しにくい。
- ④ 正しい。Streptococcus agalactiae(B群溶血性レンサ球菌)はグラム陽性球菌で、新生児髄膜炎の主要起炎菌でありβ溶血を示す。
- ⑤ Streptococcus pneumoniaeはグラム陽性双球菌だが、新生児期より乳幼児以降の髄膜炎・肺炎の起炎菌であり、本病態の典型ではない。
📋 まとめの表を見る:年齢群別 細菌性髄膜炎の主な起因菌
Streptococcus agalactiaeとListeria monocytogenesはともにCAMPテスト・馬尿酸塩加水分解試験が陽性を示すが、前者はグラム陽性球菌、後者はグラム陽性桿菌である点で鑑別する。
第62回 午後76(臨床微生物学)
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)について正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①逆転写酵素をもつ。
- ②RNAウイルスである。
- ③ワクチンが有効である。
- ④エンベロープを保有しない。
- ⑤CD8陽性T細胞に感染する。
正答: ①逆転写酵素をもつ。・②RNAウイルスである。
ポイント
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)はレトロウイルス科レンチウイルス属の一本鎖RNAウイルスで、ウイルス粒子内に逆転写酵素(reverse transcriptase)をもち、感染後に自身のRNAをDNAに逆転写してインテグラーゼで宿主ゲノムへ組み込んで増殖する。脂質二重膜由来のエンベロープを保有し、その表面糖蛋白gp120がCD4分子およびケモカイン受容体に結合するため、主にCD4陽性ヘルパーT細胞・マクロファージに感染してこれを破壊し、CD4陽性T細胞の減少から後天性免疫不全症候群(AIDS)と日和見感染を引き起こす。抗原変異が激しく有効な予防ワクチンは実用化されていない。 ●HIVの構造=一本鎖RNA2本・逆転写酵素・インテグラーゼ・プロテアーゼ・エンベロープ(gp120/gp41)。 ●標的細胞=CD4陽性T細胞・単球マクロファージ・樹状細胞(CD8陽性T細胞ではない)。 ●ほかのRNAウイルス=インフルエンザ・麻疹・風疹・コロナ・C型肝炎・ノロウイルスなど。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。HIVはレトロウイルスで逆転写酵素をもち、RNAをDNAへ逆転写して宿主染色体に組み込む。これが抗HIV薬の標的となる。
- ② 正しい。HIVは一本鎖RNAを2本もつRNAウイルスであり、逆転写酵素により遺伝情報をDNA化して増殖する点が特徴である。
- ③ 誤り。HIVは変異が激しく抗原性が安定しないため、実用化された有効な予防ワクチンは存在せず、抗レトロウイルス薬で治療する。
- ④ 誤り。HIVは宿主細胞膜由来の脂質エンベロープを保有し、その表面のgp120がCD4分子と結合して感染を成立させる。
- ⑤ 誤り。HIVが感染する主な標的はCD4陽性ヘルパーT細胞やマクロファージであり、CD8陽性T細胞には感染しない。
第62回 午後77(臨床微生物学)
プリオンの構成要素はどれか。
- ①RNA
- ②蛋白質
- ③リポ多糖体
- ④プラスミド
- ⑤バクテリオファージ
正答: ②蛋白質
ポイント
プリオンは核酸(DNA・RNA)を含まず蛋白質のみから構成される感染性病原体で、proteinaceous infectious particleに由来して命名された。正常型プリオン蛋白(PrPc)が異常型(PrPSc)へ立体構造変化を起こし、これが鋳型となって正常型を次々と異常型へ変換させながら脳に蓄積し、海綿状変性を生じる。クロイツフェルト・ヤコブ病やウシ海綿状脳症(BSE)の原因であり、核酸をもたないため通常の加熱・消毒・紫外線・核酸分解酵素では失活しにくいのが特徴である。 ●プリオン病=クロイツフェルト・ヤコブ病・ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群・致死性家族性不眠症・BSE。 ●他の病原体の核酸=細菌・真菌はDNAとRNA、ウイルスはDNAまたはRNAをもつが、プリオンは核酸をもたない。 ●不活化=高圧蒸気滅菌や水酸化ナトリウム・次亜塩素酸ナトリウム処理が用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。RNAは多くのウイルスや細胞がもつ核酸だが、プリオンは核酸を一切含まず蛋白質のみで構成される点が特異である。
- ② 正しい。プリオンは核酸をもたず異常型プリオン蛋白のみから成り、構造変化の連鎖で増殖して脳に蓄積する病原体である。
- ③ 誤り。リポ多糖体(LPS)はグラム陰性菌外膜の内毒素成分であり、蛋白質のみのプリオンの構成要素ではない。
- ④ 誤り。プラスミドは細菌などがもつ環状DNAであり、核酸をもたないプリオンの構成要素には該当しない。
- ⑤ 誤り。バクテリオファージは細菌に感染するウイルスで核酸をもち、蛋白質のみで構成されるプリオンとは別物である。
第62回 午後78(臨床微生物学)
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における三類感染症の原因菌はどれか。2つ選べ。
- ①Corynebacterium diphtheriae
- ②Mycobacterium tuberculosis
- ③Salmonella Typhi
- ④Vibrio cholerae
- ⑤Yersinia pestis
正答: ③Salmonella Typhi・④Vibrio cholerae
ポイント
感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の三類感染症は、飲食物を介して集団発生を起こしうる消化器系感染症で、特定の職業(飲食物取扱業など)への就業制限が課される。コレラ・細菌性赤痢・腸チフス・パラチフス・腸管出血性大腸菌感染症の5疾患が該当し、原因菌はそれぞれVibrio cholerae、Shigella属、Salmonella Typhi、Salmonella Paratyphi A、腸管出血性大腸菌である。一類は最も危険度が高く、二類は結核・ジフテリアなどが含まれる。 ●三類感染症=コレラ・細菌性赤痢・腸チフス・パラチフス・腸管出血性大腸菌感染症。 ●他の選択肢の分類=ジフテリア(C. diphtheriae)は二類、結核(M. tuberculosis)は二類、ペスト(Y. pestis)は一類。 ●一類感染症=エボラ出血熱・ペスト・痘そう・ラッサ熱・南米出血熱など。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。Corynebacterium diphtheriaeはジフテリアの原因菌で、感染症法では二類感染症に分類される細菌である。
- ② 誤り。Mycobacterium tuberculosisは結核の原因菌で、感染症法では二類感染症に分類される抗酸菌である。
- ③ 正しい。Salmonella Typhiは腸チフスの原因菌で、飲食物を介する消化器系感染症である三類感染症に該当する。
- ④ 正しい。Vibrio choleraeはコレラの原因菌で、飲食物を介して伝播する消化器系の三類感染症に該当する。
- ⑤ 誤り。Yersinia pestisはペストの原因菌で、最も危険度の高い一類感染症に分類される細菌である。
第62回 午後79(臨床免疫学)
免疫担当細胞について正しいのはどれか。
- ①NK細胞はCD8陽性である。
- ②Th1細胞は抗体産生を促進する。
- ③Treg細胞は免疫応答を促進する。
- ④Th2細胞は細胞性免疫を促進する。
- ⑤キラーT細胞はMHCクラスⅠ発現細胞を殺傷する。
正答: ⑤キラーT細胞はMHCクラスⅠ発現細胞を殺傷する。
ポイント
キラーT細胞(細胞傷害性T細胞、CD8陽性)はMHCクラスⅠ分子に提示された抗原ペプチドを認識し、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞などMHCクラスⅠを発現する標的細胞を傷害する。MHCクラスⅠはほぼ全ての有核細胞に発現している。NK細胞は通常CD8を発現せずCD16・CD56を指標とし、MHC非依存性に標的を殺傷する。ヘルパーT細胞のうちTh1は細胞性免疫、Th2は液性免疫(抗体産生)を促進し、Treg(制御性T細胞)は過剰な免疫応答を抑制する。 ●ヘルパーT細胞(CD4陽性)=Th1は細胞性免疫・マクロファージ活性化、Th2は液性免疫・B細胞の抗体産生を促進する。 ●制御性T細胞(Treg)=過剰な免疫応答や自己免疫を抑制し、免疫の恒常性を維持する。 ●NK細胞=CD16・CD56陽性で、抗原非特異的に感染細胞や腫瘍細胞を傷害する自然免疫の細胞。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。NK細胞は通常CD8を発現せず、CD16・CD56を表面マーカーとし、MHC非依存性に標的細胞を傷害する自然免疫の細胞である。
- ② 誤り。Th1細胞は細胞性免疫やマクロファージ活性化を促進する。抗体産生(液性免疫)を促進するのはTh2細胞である。
- ③ 誤り。Treg(制御性T細胞)は過剰な免疫応答や自己免疫を抑制する細胞であり、免疫応答を促進するわけではない。
- ④ 誤り。Th2細胞はB細胞の抗体産生を介した液性免疫を促進する。細胞性免疫を促進するのはTh1細胞である。
- ⑤ 正しい。キラーT細胞はCD8陽性で、MHCクラスⅠに抗原を提示した感染細胞や腫瘍細胞を認識し傷害する。
第62回 午後80(臨床免疫学)
次の模式図においてIgG濃度の変化を示すのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB080.ede350ff24.jpg

正答: ①
ポイント
IgGは胎盤を能動的に通過できる唯一の免疫グロブリンで、胎生後期に母体から移行するため出生時の血中濃度は成人とほぼ同等まで高い。出生後は移行したIgGが代謝で減少する一方、児自身のIgG産生が未熟なため生後3〜6か月頃に最低値(生理的低γ-グロブリン血症)となり、その後自己産生の増加に伴い再上昇して成人値へ近づく。この高値→いったん低下→再上昇というU字型を示す①の曲線がIgGに相当する。 ●胎盤通過=IgGのみが胎盤を通過し、新生児を受動免疫で防御する。 ●新生児期の免疫グロブリン=IgMは胎児自身が産生して出生後に上昇し、IgAは母乳から供給される。 ●免疫グロブリンのクラス=IgG・IgM・IgA・IgD・IgEの5種類があり、血中ではIgGが最も多く存在する。 ●受動免疫=母体由来のIgGが生後しばらく乳児を感染から守る役割を果たす。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。IgGは胎盤通過で出生時に高値、生後3〜6か月で最低、その後自己産生で再上昇するU字型の動態を示す。
- ② 母体由来でなく胎児・新生児が自ら産生し、出生後に徐々に上昇していく曲線はIgMの動態に相当する。
- ③ 出生後に緩やかに増加して成人値へ向かう曲線は、児自身が産生するIgAなど他のクラスの動態に相当する。
- ④ ④は出生後から徐々に増加して成人値へ近づく曲線であり、IgGに特徴的な出生時高値と生後数か月の一過性低下を示さない。
- ⑤ 成長とともに単調に変化する曲線で、IgGに特徴的な出生時高値からの一過性の低下を示しておらず一致しない。
📋 まとめの表を見る:5種類の免疫グロブリンの主な性状
単クローン性増加=1クローン由来で単一Igが増加(原発性マクログロブリン血症=IgM)。多クローン性増加=感染症・自己免疫疾患など。
第62回 午後81(臨床免疫学)
散乱光を測定するのはどれか。
- ①免疫比濁法
- ②免疫比ろう法
- ③蛍光免疫測定法
- ④酵素免疫測定法
- ⑤化学発光免疫測定法
正答: ②免疫比ろう法
ポイント
抗原抗体反応で生じた免疫複合体に光を当てると、光の一部が散乱・吸収される。免疫比ろう法(ネフェロメトリー、免疫比朗法)は入射光に対して側方に散乱した散乱光の強度を測定する方法で、微量の抗原を高感度に定量できる。これに対し免疫比濁法(タービジメトリー)は免疫複合体による濁りで減弱した透過光(吸光度の増加)を測定する。両者は散乱光を測るか透過光を測るかという原理の違いで区別される。 ●散乱光を測定=免疫比ろう法(ネフェロメトリー)。 ●透過光(濁度)を測定=免疫比濁法(タービジメトリー)。 ●標識を用いる測定=蛍光免疫測定法・酵素免疫測定法・化学発光免疫測定法は、標識物質が発するシグナルを測定する。 ●ネフェロメトリーの利点=散乱光を測るため低濃度域の感度が高く、微量蛋白の定量に適している。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。免疫比濁法(タービジメトリー)は免疫複合体による濁りで減弱した透過光(吸光度)を測定する方法である。
- ② 正しい。免疫比ろう法(ネフェロメトリー)は免疫複合体により側方へ生じた散乱光の強度を測定する方法である。
- ③ 誤り。蛍光免疫測定法は蛍光標識物質が発する蛍光を測定する方法であり、散乱光を測る方法ではない。
- ④ 誤り。酵素免疫測定法(EIA)は酵素標識による発色や発光などのシグナルを測定し、散乱光は測定しない。
- ⑤ 誤り。化学発光免疫測定法は標識物質の化学発光を測定する方法であり、散乱光を測定するものではない。
第62回 午後82(臨床免疫学)
梅毒血清反応がSTS陽性かつTPPA陰性の場合に考えられるのはどれか。2つ選べ。
- ①梅毒感染初期
- ②梅毒感染後期
- ③梅毒治療後
- ④非常に古い梅毒
- ⑤生物学的偽陽性
正答: ①梅毒感染初期・⑤生物学的偽陽性
ポイント
梅毒血清反応にはカルジオリピンを抗原とする非特異的反応(STS:RPR・ガラス板法など)と、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)の菌体成分を抗原とする特異的反応(TPPA・FTA-ABS)がある。STS陽性かつTPPA陰性となるのは、特異抗体がまだ産生されていない感染ごく初期と、梅毒ではないのにSTSのみ反応する生物学的偽陽性(BFP)の2つが考えられる。生物学的偽陽性は妊娠・自己免疫疾患・急性ウイルス感染などで生じる。 ●STS陽性・TPPA陽性=梅毒の活動期・治療後(既往)。 ●STS陽性・TPPA陰性=感染ごく初期・生物学的偽陽性。 ●STS陰性・TPPA陽性=治療後の治癒例・古い陳旧性梅毒。 ●STS=カルジオリピンを抗原とする非特異反応で治療効果の判定に有用、TPPAは特異反応で確認検査に用いる。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。感染ごく初期は特異抗体(TPPA)がまだ陰性で、非特異反応のSTSのみが先行して陽性となりうる。
- ② 誤り。梅毒感染後期では特異抗体が産生されているためTPPAは陽性となり、TPPA陰性という条件とは合致しない。
- ③ 誤り。治療後はTPPAが長く陽性に残ることが多く、TPPA陰性かつSTS陽性というパターンとは一致しない。
- ④ 誤り。非常に古い陳旧性梅毒ではSTSが陰性化しTPPAが陽性のまま残るパターンが典型で、本条件と異なる。
- ⑤ 正しい。生物学的偽陽性ではカルジオリピンに反応してSTSのみ陽性となり、特異反応のTPPAは陰性となる。
第62回 午後83(臨床免疫学)
X連鎖無γ-グロブリン血症患者の末梢血で数が極めて少ないのはどれか。
正答: ④B細胞
ポイント
X連鎖無γ-グロブリン血症(Bruton病)はBruton型チロシンキナーゼ(BTK)遺伝子の変異により、B細胞前駆細胞から成熟B細胞への分化が障害される原発性免疫不全症である。その結果、末梢血の成熟B細胞(CD19・CD20陽性)が著しく減少または欠如し、各クラスの免疫グロブリン(抗体)が産生されず低γ-グロブリン血症を呈する。莢膜をもつ細菌による反復性の化膿性感染を生後数か月以降に起こす。T細胞・NK細胞・単球・好中球は正常に存在する。 ●液性免疫(B細胞・抗体)の障害=X連鎖無γ-グロブリン血症・分類不能型免疫不全症・選択的IgA欠損症。 ●B細胞は正常だがT細胞が障害=DiGeorge症候群・重症複合免疫不全症などの細胞性免疫不全。 ●発症時期=母体由来IgGが消失する生後数か月以降に反復感染が顕在化する。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。単球は骨髄系細胞であり、B細胞の分化を障害する本症では数は減少せず正常に保たれる点で該当しない。
- ② 誤り。好中球は骨髄系の食細胞であり、B細胞系の分化障害である本症では数は正常に保たれ該当しない。
- ③ 誤り。T細胞はBTK変異の影響を受けず正常に分化・存在し、本症で数が極めて少なくなる細胞ではない。
- ④ 正しい。BTK変異でB細胞への分化が障害され、末梢血の成熟B細胞が著減し抗体産生が欠落する点が特徴である。
- ⑤ 誤り。NK細胞はリンパ球の一種だが本症では障害されず、末梢血での数は正常に保たれ該当しない。
📋 まとめの表を見る:原発性免疫不全症の分類(障害される免疫系統別)
Wiskott-Aldrich症候群(XR、T細胞機能低下+血小板減少)や毛細血管拡張性失調症(AR、進行性小脳失調)もT細胞系機能不全に分類される。
第62回 午後84(臨床免疫学)
間接蛍光抗体法による抗核抗体検査の核材として主に用いられるのはどれか。
- ①Hela細胞
- ②A549細胞
- ③HEp-2細胞
- ④ラット肝細胞
- ⑤ウサギ胸腺細胞
正答: ③HEp-2細胞
ポイント
間接蛍光抗体法による抗核抗体(ANA)検査では、ヒト喉頭癌由来として樹立された培養細胞であるHEp-2細胞(後の解析でHeLa細胞の混入により樹立された株と判明しているが、抗核抗体検査用の基質としてはHEp-2の名称で標準化されている)を核材(基質)として主に用いる。HEp-2細胞は核が大きく分裂像が豊富で、各種核内・細胞質内抗原を十分に発現するため、均質型・斑紋型・核小体型・散在斑紋型(セントロメア型)など染色パターンの判別に適している。スライドガラスに固定した細胞に患者血清と蛍光標識抗ヒトIgG抗体を反応させ、蛍光顕微鏡で核の染色像を観察する。 ●抗核抗体検査の核材=HEp-2細胞(分裂像が多く各種核抗原を発現)。 ●染色パターン=均質型・辺縁型は抗DNA抗体、斑紋型は抗ENA抗体、核小体型・セントロメア型などが疾患特異性をもつ。 ●関連疾患=全身性エリテマトーデス・強皮症・シェーグレン症候群など膠原病で陽性となる。 ●検出原理=患者血清の自己抗体を細胞核の抗原に反応させ、蛍光標識二次抗体で可視化する。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。Hela細胞は子宮頸癌由来の培養細胞で研究に広く用いられるが、抗核抗体検査の標準核材ではない。
- ② 誤り。A549細胞は肺癌由来の培養細胞であり、抗核抗体の蛍光抗体法における標準基質としては用いられない。
- ③ 正しい。HEp-2細胞は核が大きく分裂像が多く各種核抗原を発現するため、抗核抗体検査の核材として用いられる。
- ④ 誤り。ラット肝細胞(組織)はミトコンドリア抗体や平滑筋抗体などの検出に用いられ、抗核抗体の主核材ではない。
- ⑤ 誤り。ウサギ胸腺は抗ENA抗体の抗原源として用いられることがあるが、蛍光抗体法の核材としては用いられない。
第62回 午後85(臨床免疫学)
検査材料の取扱いで正しいのはどれか。
- ①血清補体価(CH50)測定用の血清は4℃で保存する。
- ②寒冷凝集反応用の血液は血清分離まで37 ℃に保つ。
- ③免疫電気泳動用の血清は56 ℃、30分処理して使用する。
- ④直接クームス試験用の血液は検査直前まで4℃で保存する。
- ⑤ウイルス中和試験用の血清はアジ化ナトリウムを加えて保存する。
正答: ②寒冷凝集反応用の血液は血清分離まで37 ℃に保つ。
ポイント
寒冷凝集素は低温で赤血球に結合する自己抗体であり、寒冷凝集反応用の血液は採血後に血清を分離するまで37℃に保温して、抗体が赤血球へ吸着するのを防ぐ必要がある。補体は不安定で4℃保存でも失活するため、補体価(CH50)測定用血清は速やかに測定するか凍結保存する。免疫電気泳動では非働化(56℃処理)は不要で、直接クームス試験用血液はEDTA加で37℃近くに保ち、ウイルス中和試験用血清にはアジ化ナトリウムを加えてはならない。 ●保温を要する検体=寒冷凝集反応では血清分離まで37℃保温が必要。 ●補体(CH50)=失活しやすく、測定まで凍結保存するか速やかに測定する。 ●非働化(56℃30分)=補体を失活させる処理で、補体を除く必要のある血清反応に用いる。 ●検体の取扱い=目的とする成分の安定性に応じて温度・保存条件・添加物を適切に選択する。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。補体は不安定で4℃でも失活するため、CH50測定用血清は速やかに測定するか凍結保存する必要がある。
- ② 正しい。寒冷凝集素が低温で赤血球へ吸着するのを防ぐため、血清分離まで血液を37℃に保つ必要がある。
- ③ 誤り。56℃30分処理(非働化)は補体を失活させる操作であり、免疫電気泳動用血清に必須の処理ではない。
- ④ 誤り。直接クームス試験用血液は寒冷凝集による偽陽性を避けるため37℃付近に保つ必要があり、4℃保存は不適である。
- ⑤ 誤り。アジ化ナトリウムは補体や細胞活性を阻害するため、ウイルス中和試験用血清に加えてはならない。
第62回 午後86(臨床免疫学)
免疫電気泳動像を別に示す。矢印が示す沈降線に相当するのはどれか。ただし、泳動像上部は写真、下部は沈降線の模式図を示している。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB086.8ae50d79c7.jpg

- ①IgA
- ②IgM
- ③トランスフェリン
- ④トランスサイレチン
- ⑤α₁-アンチトリプシン
正答: ③トランスフェリン
ポイント
免疫電気泳動は血清蛋白を電気泳動で分離した後、抗血清を反応させて生じる弧状の沈降線の位置・形・濃さから各蛋白成分を同定する方法である。トランスフェリンはβ分画に位置する鉄輸送蛋白で、陽極側からβ領域に特徴的な弧を描く。設問の図では矢印の沈降線がその泳動位置・形状からトランスフェリンに相当する。IgGやIgMはγ〜β領域に幅広い弧を示し、トランスサイレチンはプレアルブミン位、α₁-アンチトリプシンはα₁分画に位置する。 ●β分画の主な蛋白=トランスフェリン・補体C3・β-リポ蛋白。 ●各分画の代表蛋白=アルブミン、α1(α₁-アンチトリプシン)、α2(ハプトグロビン・α₂-マクログロブリン)、γ(免疫グロブリン)。 ●免疫電気泳動の用途=M蛋白の同定など、免疫グロブリンの異常の解析に用いられる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。IgAはγ〜β領域に幅広い沈降弧を示し、β分画に明瞭な位置を占めるトランスフェリンの沈降線とは形・位置が異なる。
- ② 誤り。IgMは分子量が大きくγ領域寄りに幅広い弧を示し、矢印が指すβ分画の沈降線とは一致しない。
- ③ 正しい。矢印の沈降線はβ分画に位置し、その泳動位置と弧の形状から鉄輸送蛋白トランスフェリンに相当する。
- ④ 誤り。トランスサイレチン(プレアルブミン)はアルブミンより陽極側に位置し、β分画の沈降線とは一致しない。
- ⑤ 誤り。α₁-アンチトリプシンはα₁分画に位置する蛋白であり、β分画にあるトランスフェリンの沈降線とは異なる。
📋 まとめの表を見る:免疫電気泳動法〈IEP〉の原理と特徴
免疫固定法は蛋白質分画後に抗血清を直接反応させる方法でIEPより簡便かつ高感度。
第62回 午後87(臨床免疫学)
試験管法によるABO血液型検査の判定の遠心条件で正しいのはどれか。
- ①1,400 rpm、15秒
- ②2,400 rpm、30秒
- ③2,400 rpm、60秒
- ④3,400 rpm、15秒
- ⑤3,400 rpm、30秒
正答: ④3,400 rpm、15秒
ポイント
試験管法によるABO血液型検査(おもて試験・うら試験)では、抗原抗体反応による凝集を判定するために強い遠心を短時間行う。一般に3,400 rpm(約900〜1,000×g相当)で15秒の遠心条件が標準とされ、これにより赤血球を集めて凝集塊を形成させ、軽く振って凝集の有無を肉眼で判定する。遠心が弱すぎると弱い凝集を見逃し、強すぎたり長すぎたりすると赤血球が固く凝集して偽陽性を招くため、規定の回転数と時間を守る必要がある。 ●試験管法ABO判定の遠心=約3,400 rpm・15秒。 ●判定の原理=おもて試験は赤血球のA・B抗原、うら試験は血清中の抗A・抗B抗体を凝集で確認する。 ●おもて・うら不一致=亜型・抗体減弱・連銭形成などを考慮し原因を精査する。 ●遠心条件の意義=赤血球を集めて凝集塊を形成させ、肉眼判定を可能にするための重要な操作である。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。1,400 rpm15秒は遠心力が不足し、弱い凝集を見逃すおそれがあるため判定条件としては不適切である。
- ② 誤り。2,400 rpm30秒は標準より回転数が低く、規定のABO血液型判定の遠心条件とは一致しない。
- ③ 誤り。2,400 rpm60秒は回転数が不足する一方で時間が長すぎ、適切なABO判定の遠心条件ではない。
- ④ 正しい。試験管法のABO判定では約3,400 rpm15秒の遠心で赤血球を集め、凝集の有無を判定する。
- ⑤ 誤り。3,400 rpm30秒は回転数は適切だが時間が長すぎ、赤血球が固く凝集して偽陽性を招くおそれがある。
第62回 午後88(臨床免疫学)
間接抗グロブリン試験のIgG感作血球による確認試験で凝集を認めなかった。解釈として正しいのはどれか。
- ①正しい反応
- ②加温操作が不十分
- ③洗浄操作が不十分
- ④被検血清の入れ忘れ
- ⑤IgG型不規則抗体の存在
正答: ③洗浄操作が不十分
ポイント
間接抗グロブリン試験(間接クームス試験)で陰性となった検体に、抗ヒトグロブリン試薬の有効性を確認するためIgG感作血球(あらかじめIgGで感作した赤血球)を添加すると、本来は凝集が生じるはずである。ここで凝集を認めなかった場合、加えた抗グロブリン試薬が中和・失活したことを意味し、最も多い原因は洗浄操作が不十分で未結合の血清グロブリンが残り、抗グロブリン試薬を中和してしまったことである。これは元の陰性結果が偽陰性である可能性を示す。 ●確認試験(コントロール)=IgG感作血球で凝集すれば抗グロブリン試薬は有効、凝集しなければ不適と判定する。 ●偽陰性の主因=洗浄不足による血清グロブリン残存で抗グロブリン試薬が中和される。 ●対策=十分な洗浄を行ったうえで検査を再実施し、抗グロブリン試薬の有効性を確認する。 ●間接抗グロブリン試験=不規則抗体スクリーニングや交差適合試験に用いられる重要な検査である。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。確認試験では本来凝集が起こるべきであり、凝集しなかった以上「正しい反応」とは判定できない。
- ② 誤り。加温操作の不足は反応自体に影響しうるが、感作血球を用いた確認試験で凝集しない直接の原因ではない。
- ③ 正しい。洗浄不足で未結合の血清グロブリンが残り抗グロブリン試薬を中和したため、感作血球が凝集しなかった。
- ④ 誤り。被検血清の入れ忘れは本検査の反応に関わるが、確認試験の感作血球が凝集しない理由にはならない。
- ⑤ 誤り。IgG型不規則抗体の存在はむしろ陽性反応をもたらす要因であり、確認試験で凝集しないことの説明にはならない。
第62回 午後89(臨床免疫学)
自己血輸血で誤っているのはどれか。
- ①同種血の節約ができる。
- ②同種免疫の防止ができる。
- ③輸血後感染症の防止ができる。
- ④輸血後GVHDの防止ができる。
- ⑤血液バッグの取り違えを防止できる。
正答: ⑤血液バッグの取り違えを防止できる。
ポイント
自己血輸血は患者自身の血液をあらかじめ採血・保存して手術時に戻す方法で、同種血(他人の血液)に伴う問題を回避できる。具体的には同種血の節約、同種免疫(不規則抗体産生)の防止、輸血後感染症の防止、輸血後GVHD(移植片対宿主病)の防止などの利点がある。一方、採血した自己血バッグを患者本人に正しく戻す管理が必要で、取り違えのリスクはむしろ存在するため、誤照合を防ぐ確認はかえって重要であり、取り違えを防止できるとはいえない。 ●自己血輸血の利点=同種免疫・輸血後感染症・輸血後GVHDの防止、同種血の節約。 ●自己血輸血の注意点=細菌汚染・保存管理・本人への確実な照合(取り違え防止のための確認が必要)。 ●採血法=貯血式・希釈式・回収式があり、手術内容や予測出血量に応じて選択する。 ●適応=待機手術で十分な貯血が可能な症例などに用いられ、緊急時には適さない。
選択肢ごとの解説
- ① 自己血輸血では患者自身の血液を用いるため同種血を使わずに済み、同種血の節約という利点が得られる。
- ② 自己血は患者自身の血液であるため新たな同種免疫(不規則抗体産生)を起こさず、同種免疫を防止できる。
- ③ 自己血では他人由来のウイルスなどが混入しないため、輸血後感染症の防止という利点が得られる。
- ④ 自己血はリンパ球も自己由来であり輸血後GVHDを起こさないため、その防止という利点が得られる。
- ⑤ 誤り。自己血でも採血バッグを本人へ戻す照合は必要であり、取り違えのリスクは残るため防止できるとはいえない。
第62回 午後90(公衆衛生学)
インフォームド・コンセントについて誤っているのはどれか。
- ①同意は無条件で撤回できる。
- ②患者の自己決定権の尊重が重要である。
- ③臨床試験ではヘルシンキ宣言を遵守する。
- ④判断能力が低い患者では家族等に説明し代諾を得る。
- ⑤可能性の低い有害事象についての説明は省略できる。
正答: ⑤可能性の低い有害事象についての説明は省略できる。
ポイント
インフォームド・コンセントは、患者が病状・検査・治療の内容や危険性・代替手段について十分な説明を受け、理解したうえで自己決定権に基づき自由意思で同意することをいう。同意は患者がいつでも無条件に撤回でき、人を対象とする臨床試験ではヘルシンキ宣言を遵守する。判断能力が不十分な患者では家族等から代諾を得る。説明にあたっては起こりうる有害事象を、可能性が低いものも含めて適切に伝える必要があり、可能性が低いという理由で説明を省略してよいとはいえない。 ●インフォームド・コンセントの要件=十分な説明・患者の理解・自由意思による同意・撤回の自由。 ●関連する倫理規範=ヘルシンキ宣言(人を対象とする医学研究の倫理原則)。 ●代諾=判断能力が不十分な場合に家族等が本人に代わって同意することをいう。 ●説明内容=病状・検査や治療の目的と方法・危険性・代替手段・予後などを含めて説明する。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい記述。同意は患者の自由意思に基づくため、いつでも無条件に撤回できることが原則であり、本肢は誤りではない。
- ② 正しい記述。インフォームド・コンセントでは患者の自己決定権の尊重が中核的に重要であり、本肢は誤りではない。
- ③ 正しい記述。人を対象とする臨床試験ではヘルシンキ宣言の倫理原則を遵守する必要があり、本肢は誤りではない。
- ④ 正しい記述。判断能力が低い患者では家族等に説明し代諾を得るのが適切な対応であり、本肢は誤りではない。
- ⑤ 誤り。可能性が低い有害事象も適切に説明すべきであり、可能性が低いことを理由に説明を省略してよいとはいえない。
第62回 午後91(公衆衛生学)
近年の我が国の人口動態統計で、母の年齢階級別出生率が最も高い年齢階級はどれか。
- ①20〜24歳
- ②25〜29歳
- ③30〜34歳
- ④35〜39歳
- ⑤40〜44歳
正答: ③30〜34歳
ポイント
我が国の人口動態統計における母の年齢階級別出生率(女性人口千人当たりの出生数)は、晩婚化・晩産化を反映して近年では30〜34歳の階級が最も高くなっている。かつては20歳代後半(25〜29歳)が最も高かったが、女性の社会進出や結婚年齢の上昇に伴い出産年齢の中心が後ろにずれ、30〜34歳が最多となった。これに伴い第1子出産時の母の平均年齢も30歳を超えるようになっている。 ●母の年齢階級別出生率=近年は30〜34歳が最も高く、次いで25〜29歳が高い。 ●少子化の指標=合計特殊出生率は近年1.3前後で推移し、晩産化と出生数の減少が続いている。 ●人口動態統計=出生・死亡・婚姻・離婚・死産を扱う基幹統計である。 ●晩産化の背景=女性の高学歴化・社会進出・結婚年齢の上昇などが複合的に影響している。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。20〜24歳の出生率は晩産化により低下傾向にあり、現在最も高い年齢階級ではない点で該当しない。
- ② 誤り。25〜29歳はかつて最も高かったが、近年は30〜34歳に次ぐ水準にとどまっており最高ではない。
- ③ 正しい。晩婚化・晩産化を反映して、近年は30〜34歳の階級が母の年齢階級別出生率で最も高くなっている。
- ④ 誤り。35〜39歳の出生率は上昇傾向にあるものの、30〜34歳より低く最も高い階級ではない点で該当しない。
- ⑤ 誤り。40〜44歳の出生率はごく低い水準であり、母の年齢階級別出生率で最も高い階級ではない。
第62回 午後92(公衆衛生学)
症例対照研究と比較したコホート研究の特徴はどれか。
- ①費用や労力が小さい。
- ②疾病発生の有無を追跡する。
- ③寄与危険度は計算できない。
- ④まれな疾患の研究に有効である。
- ⑤相対危険度はオッズ比で近似できる。
正答: ②疾病発生の有無を追跡する。
ポイント
コホート研究は曝露の有無で分けた集団を将来に向かって追跡し、疾病発生の有無を観察する前向き研究である。発生率を直接求められるため相対危険度と寄与危険度をともに算出でき、因果関係の証明力が高い。一方で多数を長期に追跡するため費用と労力が大きく、まれな疾患には不向きである。これに対し症例対照研究は既に発症した症例と対照で過去の曝露をさかのぼって比較し、まれな疾患に有効でオッズ比から相対危険度を近似する。 ●コホート研究=前向きに疾病発生を追跡、相対危険度・寄与危険度を直接算出、費用労力が大きい。 ●症例対照研究=後ろ向き、まれな疾患に有効、オッズ比で相対危険度を近似、寄与危険度は直接算出不可。 ●エビデンスの強さ=介入研究(無作為化比較試験)が最も高く、観察研究より証明力が強い。 ●相対危険度=曝露群と非曝露群の発生率の比で、寄与危険度は両群の発生率の差で表す。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。コホート研究は多数を長期間追跡するため費用や労力が大きく、症例対照研究より小さいとはいえない。
- ② 正しい。コホート研究は曝露集団を将来に向かって前向きに追跡し、疾病発生の有無を観察する点が特徴である。
- ③ 誤り。コホート研究は発生率を直接求められるため、寄与危険度を計算できる点が利点であり該当しない。
- ④ 誤り。まれな疾患の研究に有効なのは症例対照研究であり、コホート研究はまれな疾患の研究には不向きである。
- ⑤ 誤り。オッズ比で相対危険度を近似するのは症例対照研究の特徴で、コホート研究では相対危険度を直接算出する。
📋 まとめの表を見る:コホート研究と症例対照研究の比較
研究デザインの証拠の強さは一般に、メタアナリシス・系統的レビュー>介入研究(ランダム化比較対照試験)>コホート研究>症例対照研究>横断研究>生態学的研究の順とされる。観察研究は疾病の頻度や分布を調べる記述疫学(横断研究・生態学的研究等)と、因果関係を検証する分析疫学(コホート研究・症例対照研究)に大別される。
第62回 午後93(公衆衛生学)
精神保健について正しいのはどれか。
- ①措置入院は医療法で規定されている。
- ②措置入院は1名の精神保健指定医の診察により判定する。
- ③薬物依存相談は保健所が行う精神保健活動には含まれない。
- ④医療保護入院では保護者または扶養義務者の同意を必要とする。
- ⑤精神保健福祉センターではアルコール中毒予防事業を行っていない。
正答: ④医療保護入院では保護者または扶養義務者の同意を必要とする。
ポイント
精神保健福祉法における医療保護入院は、精神保健指定医の診察により入院が必要と判断されたが本人の同意が得られない場合に、家族等(保護者または扶養義務者)の同意に基づいて行う入院形態である。措置入院は精神保健福祉法に基づき、自傷他害のおそれがある場合に2名以上の精神保健指定医の診察結果が一致したとき都道府県知事の権限で行う。保健所・精神保健福祉センターは薬物・アルコール依存の相談や予防事業を担っている。 ●精神科入院形態=任意入院(本人同意)・医療保護入院(家族等同意)・措置入院(知事権限・指定医2名)・応急入院。 ●地域の精神保健活動=保健所・精神保健福祉センターが相談・アルコールや薬物依存対策・社会復帰支援を行う。 ●精神保健指定医=厚生労働大臣が指定し、入院要否の判定など強制入院の判断を担う。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。措置入院は医療法ではなく、精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)で規定されている。
- ② 誤り。措置入院は2名以上の精神保健指定医の診察結果が一致して初めて成立し、1名のみでは判定できない。
- ③ 誤り。薬物依存相談は保健所が行う精神保健活動に含まれており、地域における相談・支援の対象である。
- ④ 正しい。医療保護入院は本人の同意が得られない場合に、家族等(保護者・扶養義務者)の同意により行う入院である。
- ⑤ 誤り。精神保健福祉センターはアルコール関連問題を含む依存症の予防事業や相談事業を行っている。
第62回 午後94(公衆衛生学)
医療計画における5疾病で平成24年の見直しの際に追加となったのはどれか。
正答: ④精神疾患
ポイント
医療計画では地域で重点的に対策すべき疾病・事業が定められている。従来はがん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病の4疾病であったが、平成24年(2012年)の見直しで精神疾患が追加され5疾病となった。これは精神疾患の患者数が著しく増加し、医療連携体制の整備が地域医療の重要課題となったためである。あわせて5事業(救急医療・災害医療・へき地医療・周産期医療・小児医療)と在宅医療が位置づけられている。 ●5疾病=がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病・精神疾患(平成24年に精神疾患を追加)。 ●5事業=救急医療・災害医療・へき地医療・周産期医療・小児医療。 ●医療計画=都道府県が医療法に基づき策定し、地域の医療提供体制を整備するための計画である。 ●追加の背景=精神疾患の患者数増加により医療連携体制の整備が重要課題となったため。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。がんは従来からの4疾病に含まれており、平成24年の見直しで新たに追加された疾病ではない点で該当しない。
- ② 誤り。糖尿病は以前から4疾病の一つであり、平成24年の見直しで追加された疾病ではない点で該当しない。
- ③ 誤り。脳卒中は従来からの4疾病に含まれており、平成24年の見直しで追加された疾病ではない点で該当しない。
- ④ 正しい。平成24年の見直しで精神疾患が追加され、従来の4疾病とあわせて5疾病となった点で該当する。
- ⑤ 誤り。急性心筋梗塞は従来からの4疾病に含まれており、平成24年に追加された疾病ではない点で該当しない。
第62回 午後95(医用工学概論)
図の回路の増幅率(eo/ei)はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB095.f0a2fa246f.jpg

正答: ④
ポイント
図は演算増幅器(オペアンプ)に負帰還をかけた回路で、開ループ利得をA、帰還率をβとすると、負帰還増幅回路の閉ループ増幅率(eo/ei)はA/(1+Aβ)で表される。負帰還により利得は単独のAより低下するが、利得の安定化・周波数帯域の拡大・ひずみや雑音の低減といった利点が得られる。Aが十分大きくAβがきわめて大きいときは増幅率がほぼ1/βに収束し、外部素子の比だけで決まる安定した利得が得られる。 ●負帰還増幅率=eo/ei=A/(1+Aβ)。 ●負帰還の利点=利得の安定化・周波数帯域の拡大・ひずみ低減・入出力インピーダンスの改善。 ●Aβ≫1のとき=増幅率は約1/βとなり、帰還回路の素子の比だけで決まり安定する。 ●負帰還=出力の一部を逆位相で入力へ戻すことで、利得を犠牲に安定性と特性を改善する手法である。
選択肢ごとの解説
- ① ①は1/(A−β)であり、負帰還回路の増幅率A/(1+Aβ)とは異なる。
- ② ②は1/(A+β)であり、負帰還回路の増幅率A/(1+Aβ)とは異なる。
- ③ ③はA/(A−β)であり、負帰還回路の増幅率A/(1+Aβ)とは異なる。
- ④ 正しい。加算点から増幅器への入力はei−βeoなので、eo=A(ei−βeo)。整理するとeo/ei=A/(1+Aβ)となる。
- ⑤ ⑤はA/(1−Aβ)で、正帰還の場合の形である。図は出力を入力から差し引く負帰還なので、分母は1+Aβとなる。
第62回 午後96(医用工学概論)
臨床検査としてデジタル記録する場合、必要なサンプリング周波数が最も高いのはどれか。
正答: ④筋電図
ポイント
デジタル記録では、信号に含まれる最高周波数成分の2倍以上のサンプリング周波数が必要である(標本化定理)。生体信号のうち筋電図は数Hzから1〜2kHz程度まで広い周波数成分を含み、最も高い周波数帯域をもつため、必要なサンプリング周波数が最も高い。心電図や脈波、心音図は数十〜数百Hz程度、脳波は概ね0.5〜数十Hz程度であり、いずれも筋電図に比べて高周波成分は少ない。 ●標本化定理=サンプリング周波数は信号の最高周波数の2倍以上が必要である。 ●生体信号の周波数帯域=筋電図が最も広く(〜約1〜2kHz)、脳波・心電図・脈波は比較的低い帯域である。 ●エイリアシング=サンプリング不足により本来と異なる周波数として記録される現象である。 ●AD変換=アナログ信号を標本化・量子化・符号化してデジタル信号に変換する処理である。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。心電図の周波数成分は概ね数十〜100Hz程度で、筋電図ほど高くなく必要なサンプリング周波数は最高ではない。
- ② 誤り。心音図は数百Hz程度の成分を含むが、kHzに及ぶ筋電図より低く、最も高いサンプリング周波数を要さない。
- ③ 誤り。脈波は緩やかな波形で周波数成分が低く、必要なサンプリング周波数は低い部類に入り最高ではない。
- ④ 正しい。筋電図は約1〜2kHzに及ぶ高周波成分を含むため、必要なサンプリング周波数が最も高い生体信号である。
- ⑤ 誤り。脳波は概ね0.5〜数十Hzと低い帯域であり、必要なサンプリング周波数が最も高い信号ではない。
第62回 午後97(医用工学概論)
停電時にコンピュータを継続運用するために有用なのはどれか。
- ①UPS
- ②OCR
- ③RAID
- ④RS-232C
- ⑤MODEM
正答: ①UPS
ポイント
UPS(無停電電源装置、uninterruptible power supply)は内蔵バッテリにより、停電時にも一定時間コンピュータへ電力を供給し続ける装置である。停電が発生してもシステムを安全に継続運用または正常に終了させ、突然の電源断によるデータ破損や機器故障を防ぐ。瞬時電圧低下に対する補償や、自動シャットダウン処理と連携した運用も可能であり、医療情報システムの安定運用に有用である。 ●UPS=停電時にバッテリで給電し、継続運用や安全なシャットダウンを可能にする装置。 ●他の用語=OCRは光学文字認識、RAIDは複数ディスクによる冗長化、RS-232Cは通信規格、MODEMは変復調装置。 ●停電対策=UPSと自家発電装置を組み合わせて長時間の電力供給を確保する。 ●UPSの役割=瞬時電圧低下の補償と、安全なシャットダウンまでの時間確保にある。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。UPSは無停電電源装置であり、停電時にバッテリから給電してコンピュータの継続運用を可能にする。
- ② 誤り。OCRは印字や手書き文字を読み取る光学文字認識技術であり、停電時の電源供給とは関係しない。
- ③ 誤り。RAIDは複数ディスクを組み合わせてデータの冗長化や高速化を図る技術であり、停電対策ではない。
- ④ 誤り。RS-232Cはシリアル通信の規格であり、停電時の電源供給に有用な装置ではない点で該当しない。
- ⑤ 誤り。MODEMは信号を変復調して通信を行う装置であり、停電時の電力供給には関与しない点で該当しない。
第62回 午後98(医用工学概論)
次のフローチャートを開始から終了まで実行したとき、bの値はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k62pB098.6f4f4ce417.jpg

正答: ④6
ポイント
このフローチャートは変数bに繰り返し乗算を行う処理で、典型的には初期値から数値を順に掛け合わせて階乗を求める構造になっている。設問の処理を開始から終了まで順に実行すると、ループのたびにbへ次の整数が掛けられ、最終的にbの値は6となる。これは3の階乗(3!=1×2×3=6)に相当し、ループ回数と乗算の積み重ねを正確にたどることで値が確定する。 ●フローチャートの基本要素=開始・終了(端子)・処理(長方形)・判断(ひし形)・流れ(矢印)。 ●繰り返し処理=ループごとに変数を更新し、条件を満たすまで処理を反復して最終結果を求める。 ●トレース=変数の値を1ステップずつ追って実行結果を確認する手法である。 ●階乗=1からその整数までの連続する整数をすべて掛け合わせた値で、3の階乗は1×2×3=6となる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。1は乗算が一度も積み重ならない場合の値であり、ループを最後まで実行した結果とは一致しない。
- ② 誤り。2は乗算の途中段階の積に相当する値で、開始から終了まで実行した最終的なbの値ではない。
- ③ 3は最終段階の変数aの値であり、変数bの値ではない。bは1×1=1、2×1=2、3×2=6と更新され、終了時は6となる。
- ④ 正しい。ループで順に整数を乗算して積み重ねた結果、最終的なbの値は6(すなわち3の階乗)となる。
- ⑤ 誤り。24は4の階乗に相当する値であり、本フローチャートのループ回数では到達せず最終値ではない。
第62回 午後99(医用工学概論)
容量10 mLの計量器具を検定公差が小さい順に並べたのはどれか。
- ①ホールピペット<メスシリンダー<メスピペット
- ②ホールピペット<メスピペット<メスシリンダー
- ③メスシリンダー<メスピペット<ホールピペット
- ④メスピペット<ホールピペット<メスシリンダー
- ⑤メスピペット<メスシリンダー<ホールピペット
正答: ②ホールピペット<メスピペット<メスシリンダー
ポイント
計量器具の検定公差(許容される誤差)は、計量の正確さに対する要求度を反映する。一定容量を正確に量り取るホールピペット(全量ピペット)は最も公差が小さく精密であり、目盛りで任意の量を量るメスピペットがこれに次ぐ。メスシリンダーはおおよその体積を量る器具で公差が最も大きい。したがって公差が小さい順に並べると、ホールピペット<メスピペット<メスシリンダーとなる。 ●検定公差が小さい(精密)順=ホールピペット<メスピペット<メスシリンダー。 ●用途=ホールピペットは定量分析での正確な分取に、メスシリンダーは概量の計量に用いる。 ●正確な計量=ホールピペットやメスフラスコなど全量を量る器具が適している。 ●検定公差=計量法に基づき器具ごとに定められた許容誤差であり、精密な器具ほど公差が小さくなる。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。ホールピペットが最も精密な点は正しいが、メスシリンダーよりメスピペットの方が公差は小さく順序が誤っている。
- ② 正しい。検定公差が小さい順はホールピペット<メスピペット<メスシリンダーであり、精密さの序列と一致する。
- ③ 誤り。メスシリンダーを最も公差が小さいとする並びだが、実際はメスシリンダーの公差が最も大きく逆である。
- ④ 誤り。メスピペットを最小とする並びだが、最も公差が小さい(精密な)器具はホールピペットであり誤りである。
- ⑤ 誤り。メスピペットを最小とする並びだが、最も精密なホールピペットが最小である事実に反しており誤りである。
第62回 午後100(医用工学概論)
光学顕微鏡について正しいのはどれか。
- ①焦点深度には個人差がない。
- ②視野数は対物レンズの特性を表す。
- ③開口数が小さいほど分解能がよい。
- ④油浸レンズは青色のリングで識別する。
- ⑤コンデンサの位置は検査目的により調節する。
正答: ⑤コンデンサの位置は検査目的により調節する。
ポイント
光学顕微鏡のコンデンサ(集光器)は標本に光を集める装置で、その位置(高さ)や開口絞りは観察目的・対物レンズの倍率に応じて調節し、最適なコントラストと分解能を得る。分解能は開口数(NA)が大きいほど高く、油浸レンズは開口数を高めるために用いる。焦点深度は観察者により見え方が異なり個人差があり、視野数は接眼レンズの特性を表す。油浸レンズは識別リングの色で区別されるが青色とは限らない。 ●分解能=開口数(NA)が大きいほど良く、用いる光の波長が短いほど良い。 ●コンデンサ=光を集光し、絞りや高さの調節でコントラストと分解能を最適化する。 ●倍率=対物レンズと接眼レンズの倍率の積で総合倍率が決まる。 ●油浸法=対物レンズと標本の間に油を満たして開口数を高め、高倍率での分解能を向上させる方法である。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。焦点深度は観察者によって見え方が異なり個人差があるため、個人差がないという記述は適切ではない。
- ② 誤り。視野数は接眼レンズの特性を表す指標であり、対物レンズの特性を表すものではない点で誤りである。
- ③ 誤り。分解能は開口数が大きいほど良くなるため、開口数が小さいほど良いという記述は逆であり誤りである。
- ④ 誤り。油浸を示す識別色は黒色であり、青色ではない。対物レンズには倍率を示す色帯もあるため、浸液の種類を示す色帯と区別する。
- ⑤ 正しい。コンデンサの位置や絞りは観察目的・倍率に応じて調節し、最適なコントラストと分解能を得る。
📋 まとめの表を見る:光学顕微鏡の基本公式と用語
視野数は対物レンズではなく接眼レンズの特性を表す値である点に注意。