第64回(2018) 臨床検査技師国家試験 午前1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第64回 午前1(臨床検査総論)
医療機関での診断に至る手順で適切なのはどれか。
- ①医療面接→身体診察→スクリーニング検査→特殊検査
- ②医療面接→身体診察→特殊検査→スクリーニング検査
- ③身体診察→スクリーニング検査→特殊検査→医療面接
- ④スクリーニング検査→特殊検査→医療面接→身体診察
- ⑤スクリーニング検査→身体診察→特殊検査→医療面接
正答: ①医療面接→身体診察→スクリーニング検査→特殊検査
ポイント
診断は患者の訴えと病歴を聴く医療面接から始まり、続いて視診・触診・聴打診などの身体診察で他覚所見を得る。次いで侵襲や負担の少ないスクリーニング検査で疾患をふるい分け、最後に対象を絞った特殊検査で確定診断へ進むのが合理的な手順である。問診と診察で得た情報をもとに検査を方向づけることで、患者負担を抑えつつ効率的に確定診断へ到達できる。
●臨床推論の流れ=医療面接(主訴・現病歴・既往歴・家族歴)→身体診察(バイタルサイン・系統的診察)→検査計画立案。
●検査の段階=スクリーニング検査(網羅的・低侵襲)→精密検査・特殊検査(標的を絞る・確定診断)。
●検査の負担分類=非侵襲(尿・採血の一部)・低侵襲(一般採血)・侵襲的(生検・腰椎穿刺・血管造影)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。医療面接で病歴を把握し、身体診察で所見を確認し、スクリーニング検査でふるい分けてから特殊検査で絞り込む順序が合理的である。
- ② スクリーニング検査を経ずに特殊検査を先行させており、対象を絞れず非効率で患者負担も大きい。
- ③ 診療の出発点である医療面接が最後に置かれ、問診による方向づけが欠落した順序で不適切である。
- ④ 問診も診察も経ずに検査から始めており、検査を方向づける情報が得られず適切でない。
- ⑤ 医療面接が最後に置かれ、診察と検査の順序も乱れているため不適切である。
📋 まとめの表を見る:医療機関における診断に至る手順
第64回 午前2(臨床検査総論)
対策とその作業の組合せで誤っているのはどれか。
- ①感染対策 — 使用済注射針のリキャップの徹底
- ②災害対策 — 診療支援体制の構築
- ③接遇対策 — 患者との疑似場面を設定した体験学習
- ④検査過誤防止対策 — 標準作業手順書の作成
- ⑤医療事故防止対策 — インシデントレポートの作成
正答: ①感染対策 — 使用済注射針のリキャップの徹底
ポイント
使用済み注射針のリキャップは針刺し切創事故の主要因であり、標準予防策ではキャップを戻さず針を専用の耐貫通性廃棄容器へ直接廃棄するのが原則である。やむを得ずリキャップする場合も片手すくい上げ法に限られ、「徹底する」という記述は感染対策に逆行する。ほかの組合せはいずれも各対策として適切な作業内容である。
●感染対策=標準予防策・手指衛生・個人防護具着用・鋭利物の専用容器廃棄・針刺し事故時のフォロー。
●医療安全対策=インシデント/アクシデントレポート・標準作業手順書(SOP)・ダブルチェック・根本原因分析。
●災害対策=事業継続計画(BCP)・診療支援体制・トリアージ・備蓄。
●接遇対策=ロールプレイによる体験学習・クレーム対応研修・コミュニケーション教育。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。使用済み注射針のリキャップは針刺し事故を招くため標準予防策では禁止され、専用容器へ直接廃棄するのが感染対策である。
- ② 災害時に診療を継続するための支援体制構築は災害対策として正しい組合せである。
- ③ 患者役を想定した模擬場面での体験学習は接遇向上のための研修として正しい。
- ④ 標準作業手順書の作成は検査手順を統一して過誤を防ぐ対策として正しい。
- ⑤ インシデントレポートの作成・分析は事故の再発防止につながる医療事故防止対策として正しい。
📋 まとめの表を見る:検査室における各種対策とその内容
使用済み注射針のリキャップは感染対策に逆行するため「徹底する」という記述は誤りとなる点が問われやすい。
第64回 午前3(臨床検査総論)
検体の採取と取扱いで正しいのはどれか。
- ①採取した羊水は透明な容器に入れる。
- ②尿細胞診検査には24時間蓄尿を使用する。
- ③自然喀痰採取は採取前にうがい薬を使用する。
- ④精液採取は3か月以内に少なくとも2回行う。
- ⑤腰椎穿刺で最初に得られた髄液は細胞学的検査に使用しない。
正答: ④精液採取は3か月以内に少なくとも2回行う。
ポイント
精液検査は禁欲期間や採取条件で変動が大きいため、診断には2〜3か月以内に少なくとも2回採取して評価するのが原則である。検体取扱いの基本として、羊水中のビリルビンなどは光で分解されるため遮光容器を用い、喀痰採取前はうがい薬ではなく常水で口腔をすすぐ。腰椎穿刺で最初に得た髄液も細胞学的検査に利用でき、尿細胞診には蓄尿でなく細胞変性の少ない新鮮尿を用いる。
●遮光を要する検体・物質=羊水(ビリルビン)・ビリルビン・ポルフィリン・ビタミン類。
●新鮮尿が望ましい検査=尿沈渣・尿細胞診(蓄尿は細胞変性・細菌増殖をきたす)。
●喀痰採取=採取前に常水で含嗽、早朝起床時の喀出が良質、含嗽薬は使わない。
●髄液採取=3本程度に分注(細胞・生化学・細菌)、最初の検体も細胞算定に使用可。
選択肢ごとの解説
- ① 羊水中のビリルビンなどは光で分解されるため透明容器ではなく遮光容器を用いるべきで誤りである。
- ② 尿細胞診には24時間蓄尿ではなく細胞変性の少ない新鮮尿を用いるため誤りである。
- ③ うがい薬は細菌や細胞を変性させるため、喀痰採取前は常水で含嗽するのが正しく誤りである。
- ④ 正しい。精液検査は変動が大きいため2〜3か月以内に少なくとも2回採取して評価するのが原則である。
- ⑤ 最初に得られた髄液も細胞学的検査に使用でき、むしろ細胞数算定などに利用されるため誤りである。
第64回 午前4(臨床検査総論)
偶発誤差の要因はどれか。2つ選べ。
- ①分析装置の変更
- ②試薬のロット変更
- ③比色時の気泡混入
- ④標準液の作製ミス
- ⑤ピペットの操作ミス
正答: ③比色時の気泡混入・⑤ピペットの操作ミス
ポイント
偶発誤差は測定ごとにばらつく方向の定まらない誤差で、操作の不安定さや気泡混入などの偶然的要因によって生じ、精度(再現性)に影響する。一方、分析装置の変更・試薬ロットの変更・標準液の作製ミスは一定方向に偏る系統誤差の要因で、正確度(真度)に影響する。比色時の気泡混入とピペット操作のばらつきはいずれも偶発誤差に分類される。
●偶発誤差(精度・再現性に影響)=操作のばらつき・気泡混入・温度のゆらぎ・読み取り誤差。
●系統誤差(正確度・真度に影響)=装置の変更・試薬ロット差・標準液作製ミス・キャリブレーション不良・恒常的なピペット容量誤差。
●総誤差=偶発誤差+系統誤差、内部精度管理(管理試料・Xbar-R管理図)で監視。
選択肢ごとの解説
- ① 分析装置の変更は測定値を一定方向にずらす系統誤差の要因であり偶発誤差ではない。
- ② 試薬のロット変更は組成差により一定方向の偏りを生む系統誤差の要因である。
- ③ 正しい。比色時の気泡混入は測定ごとにランダムに生じばらつくため偶発誤差の要因である。
- ④ 標準液の作製ミスはその標準液を用いる限り一定の偏りを与える系統誤差の要因である。
- ⑤ 正しい。ピペットの操作ミスは操作ごとにばらつく偶発誤差の要因である。
第64回 午前5(臨床検査総論)
尿沈渣の無染色、強拡大標本を別に示す。この構造物が生成される疾患はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k64aA005.3b5eb7cde8.jpg

- ①痛風
- ②慢性尿路感染症
- ③腫瘍崩壊症候群
- ④副甲状腺機能亢進症
- ⑤溶血性尿毒症症候群
正答: ②慢性尿路感染症
ポイント
図はリン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)結晶を示し、棺の蓋状の特徴的な無色結晶として観察される。プロテウスなどウレアーゼ産生菌による尿路感染で尿素が分解されアルカリ性尿となると析出しやすく、慢性尿路感染症が原因疾患となる。サンゴ状結石(感染性結石)の主成分でもある。
●アルカリ性尿で析出=リン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)・リン酸カルシウム・炭酸カルシウム。
●酸性尿で析出=尿酸(痛風・腫瘍崩壊症候群)・シスチン・シュウ酸カルシウム。
●感染性結石の起炎菌=プロテウス属・クレブシエラ属などのウレアーゼ産生菌。
●結晶と疾患=尿酸結晶(痛風)・シスチン結晶(シスチン尿症)・チロシン/ロイシン結晶(重症肝障害)。
選択肢ごとの解説
- ① 痛風では酸性尿で尿酸結晶が析出するが、棺蓋状結晶は形成されないため該当しない。
- ② 正しい。ウレアーゼ産生菌による慢性尿路感染でアルカリ性尿となり、リン酸アンモニウムマグネシウム結晶が生成される。
- ③ 腫瘍崩壊症候群では尿酸やリン酸が増加するが、この棺蓋状結晶の直接の原因とはならない。
- ④ 副甲状腺機能亢進症では高カルシウム尿を呈するが、この感染性結晶の原因疾患ではない。
- ⑤ 溶血性尿毒症症候群は血栓性微小血管症であり、この結晶生成とは関連しない。
第64回 午前6(臨床検査総論)
糞便の性状と疾患の組合せで正しいのはどれか。
- ①緑色便 — 総胆管結石
- ②粘血便 — 細菌性赤痢
- ③灰白色便 — アメーバ赤痢
- ④米の研ぎ汁様便 — カンピロバクター腸炎
- ⑤イチゴゼリー状粘血便 — コレラ
正答: ②粘血便 — 細菌性赤痢
ポイント
細菌性赤痢は赤痢菌が大腸粘膜に侵入してびらん・潰瘍を起こし、しぶり腹(テネスムス)を伴う膿粘血便(粘血便)を呈する。コレラは水様性で米のとぎ汁様便、アメーバ赤痢はイチゴゼリー状粘血便が特徴である。緑色便は腸管通過が速くビリベルジンが残ることで生じ、灰白色便は胆道閉塞で胆汁が腸へ届かない場合にみられる。
●便性状と疾患=米のとぎ汁様便(コレラ)・粘血便/膿粘血便(細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌)・イチゴゼリー状粘血便(アメーバ赤痢)。
●灰白色便=胆道閉塞(総胆管結石・膵頭部癌)・閉塞性黄疸。
●タール便(黒色便)=上部消化管出血。
●鮮血便=下部消化管出血・痔核。
選択肢ごとの解説
- ① 総胆管結石による胆道閉塞では胆汁が届かず灰白色便となり、緑色便ではないため誤りである。
- ② 正しい。細菌性赤痢は大腸粘膜の潰瘍により膿粘血便(粘血便)を呈する。
- ③ 灰白色便は胆道閉塞でみられ、アメーバ赤痢はイチゴゼリー状粘血便を呈するため誤りである。
- ④ 米のとぎ汁様便はコレラの特徴で、カンピロバクター腸炎は血便を呈することが多く誤りである。
- ⑤ イチゴゼリー状粘血便はアメーバ赤痢の特徴で、コレラは水様便を呈するため誤りである。
📋 まとめの表を見る:糞便の色調・性状と疾患
健常者の糞便はウロビリンやステルコビリンにより淡褐色〜黄褐色を呈する。灰白色便は総胆管結石・膵頭部癌など閉塞性黄疸で、いちごゼリー状粘血便はアメーバ赤痢で、米のとぎ汁様便はコレラでみられる。
第64回 午前7(臨床検査総論)
結核性胸膜炎に特異性の高い胸水中のマーカーはどれか。
- ①LD
- ②CEA
- ③NSE
- ④ヒアルロン酸
- ⑤アデノシンデアミナーゼ〈ADA〉
正答: ⑤アデノシンデアミナーゼ〈ADA〉
ポイント
アデノシンデアミナーゼ〈ADA〉はリンパ球に多く含まれる酵素で、結核性胸膜炎ではリンパ球優位の滲出性胸水中で著明に上昇し特異性が高い。リンパ球優位の滲出液とADA高値の組合せは結核性を強く示唆する。ヒアルロン酸は悪性中皮腫、癌胎児性抗原〈CEA〉は腺癌、乳酸脱水素酵素〈LD〉は滲出液一般で上昇するが結核特異性は低い。
●結核性胸膜炎の所見=リンパ球優位・滲出性・ADA高値・糖低下・アデノシンデアミナーゼ高値。
●胸水中マーカーと疾患=CEA(腺癌)・ヒアルロン酸(悪性中皮腫)・神経特異エノラーゼ〈NSE〉(小細胞癌・神経内分泌腫瘍)。
●滲出液と漏出液の鑑別=Light基準(胸水/血清の蛋白比・LD比、胸水LD)。
選択肢ごとの解説
- ① 乳酸脱水素酵素〈LD〉は滲出液で上昇するが結核に特異的ではなく、滲出・漏出の鑑別に用いる程度である。
- ② 癌胎児性抗原〈CEA〉は腺癌性胸水で上昇するマーカーで、結核性胸膜炎の指標ではない。
- ③ 神経特異エノラーゼ〈NSE〉は神経内分泌腫瘍や小細胞肺癌のマーカーで、結核性胸膜炎とは関連しない。
- ④ ヒアルロン酸は悪性中皮腫の胸水で上昇するマーカーで、結核特異性は低い。
- ⑤ 正しい。アデノシンデアミナーゼ〈ADA〉はリンパ球由来で、結核性胸膜炎の胸水で著明に上昇し特異性が高い。
📋 まとめの表を見る:胸水中マーカー・所見と示唆される疾患の鑑別
第64回 午前8(臨床検査総論)
2015年における世界のおよそのマラリアの患者数と死亡者数の組合せで正しいのはどれか。
- ①2億1,200万人 — 43万人
- ②2億1,200万人 — 4万3,000人
- ③2,120万人 — 43万人
- ④2,120万人 — 4万3,000人
- ⑤212万人 — 4万3,000人
正答: ①2億1,200万人 — 43万人
ポイント
世界保健機関〈WHO〉の報告では、2015年の世界のマラリア患者数はおよそ2億1,200万人、死亡者数はおよそ43万人とされた。罹患・死亡の多くはアフリカのサハラ以南地域に集中し、5歳未満の小児に犠牲が多い。患者数が数億人規模、死亡者数が数十万人規模であることが要点である。
●マラリア原虫=熱帯熱・三日熱・四日熱・卵形・サルマラリア(Plasmodium属)。
●媒介=ハマダラカ(Anopheles属)。
●流行地=サハラ以南アフリカが患者・死亡の大半。
●検査=薄層・厚層血液塗抹のギムザ染色、迅速抗原検査。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。2015年の世界のマラリア患者数は約2億1,200万人、死亡者数は約43万人である。
- ② 患者数は合っているが死亡者数が一桁少なく、約43万人が正しいため誤りである。
- ③ 患者数の桁が一桁少なく、約2億人規模が正しいため誤りである。
- ④ 患者数・死亡者数ともに桁が一桁少なく実態と合わないため誤りである。
- ⑤ 患者数が二桁少なく死亡者数も少ないため、実態と大きく異なり誤りである。
第64回 午前9(臨床検査総論)
蚊によって媒介される寄生虫症はどれか。2つ選べ。
- ①三日熱マラリア
- ②ブラジルリーシュマニア症
- ③ガンビアトリパノソーマ症
- ④バンクロフト〈Bancroft〉糸状虫症
- ⑤クルーズ〈Cruz〉トリパノソーマ症
正答: ①三日熱マラリア・④バンクロフト〈Bancroft〉糸状虫症
ポイント
蚊が媒介する寄生虫症の代表は、ハマダラカが媒介する三日熱マラリアと、イエカなどが媒介するバンクロフト糸状虫症(リンパ系フィラリア症)である。リーシュマニア症はサシチョウバエ、アフリカトリパノソーマ症(睡眠病)はツェツェバエ、シャーガス病はサシガメが媒介し、いずれも蚊ではない。媒介昆虫の違いが鑑別点となる。
●蚊(ハマダラカ)媒介=マラリア。
●蚊(イエカ・ヤブカ)媒介=バンクロフト糸状虫症・マレー糸状虫症・犬糸状虫。
●サシチョウバエ媒介=リーシュマニア症。
●ツェツェバエ媒介=アフリカトリパノソーマ症(睡眠病)。
●サシガメ媒介=クルーズトリパノソーマ症(シャーガス病)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。三日熱マラリアはハマダラカ(蚊)によって媒介される。
- ② ブラジルリーシュマニア症はサシチョウバエが媒介し、蚊ではないため該当しない。
- ③ ガンビアトリパノソーマ症(アフリカ睡眠病)はツェツェバエが媒介し、蚊ではないため該当しない。
- ④ 正しい。バンクロフト糸状虫症はイエカなどの蚊によって媒介されるフィラリア症である。
- ⑤ クルーズトリパノソーマ症(シャーガス病)はサシガメが媒介し、蚊ではないため該当しない。
📋 まとめの表を見る:寄生虫症と媒介動物(ベクター)
蚊が媒介するのはマラリア・フィラリアのみで、リーシュマニア(サシチョウバエ)・トリパノソーマ症(ツェツェバエ/サシガメ)とは媒介昆虫が異なる点が問われやすい。
第64回 午前10(臨床検査総論)
DNA抽出に用いられないのはどれか。
- ①エタノール
- ②フェノール
- ③クロロホルム
- ④イソプロパノール
- ⑤メルカプトエタノール
正答: ⑤メルカプトエタノール
ポイント
DNA抽出ではフェノール・クロロホルムで蛋白を変性・除去し、エタノールやイソプロパノールでDNAを脱水・沈殿させて回収する。メルカプトエタノール(2-メルカプトエタノール)はジスルフィド結合を切断する還元剤で、主にRNA抽出時にリボヌクレアーゼ〈RNase〉を失活させる目的などに用いられ、DNA抽出の標準的試薬ではない。各試薬の役割の理解が問われる。
●蛋白除去=フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール・プロテイナーゼK。
●核酸沈殿=エタノール・イソプロパノール(塩存在下)。
●還元剤=メルカプトエタノール・ジチオスレイトール〈DTT〉(RNase失活・蛋白変性)。
●カオトロピック塩=グアニジンチオシアネート(シリカカラム法)。
選択肢ごとの解説
- ① エタノールはDNAを沈殿させるのに用いられるためDNA抽出に使われる。
- ② フェノールは蛋白を変性させて除去するためDNA抽出に用いられる。
- ③ クロロホルムはフェノールとともに蛋白・脂質を除去するためDNA抽出に用いられる。
- ④ イソプロパノールはエタノールと同様にDNAを沈殿させるためDNA抽出に用いられる。
- ⑤ 誤り。メルカプトエタノールは還元剤で主にRNA抽出時のRNase失活に用い、DNA抽出には通常用いない。
第64回 午前11(臨床検査医学総論)
一次救命処置〈BLS〉でないのはどれか。
- ①応援を呼ぶ。
- ②意識を確認する。
- ③胸骨圧迫を行う。
- ④心肺停止の原因を検索する。
- ⑤自動体外式除細動器〈AED〉を用いる。
正答: ④心肺停止の原因を検索する。
ポイント
一次救命処置〈BLS〉は特別な器材を要しない救命行為で、反応(意識)の確認、応援要請・通報、胸骨圧迫を中心とする心肺蘇生、自動体外式除細動器〈AED〉の使用からなる。心肺停止の原因検索や薬剤投与・高度な気道確保などは医療従事者が器材・薬剤を用いて行う二次救命処置〈ALS〉に属する。BLSとALSの守備範囲の区別が要点である。
●一次救命処置〈BLS〉=反応確認・応援要請/通報・胸骨圧迫・人工呼吸・AED使用。
●二次救命処置〈ALS〉=原因検索(4H4T)・薬剤投与(アドレナリン等)・気管挿管・モニター心電図。
●胸骨圧迫の要点=速さ100〜120回/分・深さ約5cm・絶え間ない圧迫。
選択肢ごとの解説
- ① 応援を呼ぶことは救助者を集め通報する行為で、BLSの初期対応に含まれる。
- ② 意識(反応)を確認することはBLSの最初の手順に含まれる。
- ③ 胸骨圧迫はBLSの中核となる処置である。
- ④ 誤り。心肺停止の原因検索は高度な評価を要する二次救命処置〈ALS〉に属し、BLSではない。
- ⑤ 自動体外式除細動器〈AED〉の使用はBLSに含まれる。
第64回 午前12(臨床検査医学総論)
骨髄において赤芽球の過形成を呈するのはどれか。
- ①腎性貧血
- ②骨髄線維症
- ③多発性骨髄腫
- ④慢性骨髄性白血病
- ⑤自己免疫性溶血性貧血
正答: ⑤自己免疫性溶血性貧血
ポイント
自己免疫性溶血性貧血では赤血球が末梢で破壊され、その代償として骨髄で赤芽球が過形成(赤芽球系過形成)となり、末梢では網赤血球が増加する。腎性貧血はエリスロポエチン不足による産生低下で赤芽球は減少し、骨髄線維症・多発性骨髄腫・慢性骨髄性白血病では赤芽球系の過形成は主体とならない。溶血や出血では赤芽球過形成、産生低下では低形成となる点が鑑別となる。
●赤芽球過形成(代償性・産生亢進)=溶血性貧血・急性出血後・鉄欠乏性貧血回復期。
●赤芽球低形成・無形成=再生不良性貧血・腎性貧血・赤芽球癆。
●骨髄の置換・占拠=骨髄線維症・多発性骨髄腫・白血病・癌の骨髄転移。
●溶血の指標=間接ビリルビン上昇・LD上昇・ハプトグロビン低下・網赤血球増加。
選択肢ごとの解説
- ① 腎性貧血はエリスロポエチン産生低下による産生低下性貧血で、赤芽球はむしろ減少する。
- ② 骨髄線維症では骨髄が線維化し造血が障害されるため、赤芽球過形成は呈さない。
- ③ 多発性骨髄腫では形質細胞が増殖し、赤芽球系の過形成は主体ではない。
- ④ 慢性骨髄性白血病では顆粒球系の過形成が主体で、赤芽球の過形成ではない。
- ⑤ 正しい。自己免疫性溶血性貧血では末梢での赤血球破壊を代償して骨髄で赤芽球が過形成となる。
第64回 午前13(臨床検査医学総論)
偽性高カリウム血症の原因になるのはどれか。
- ①肝硬変
- ②腎不全
- ③再生不良性貧血
- ④本態性血小板増加症
- ⑤自己免疫性溶血性貧血
正答: ④本態性血小板増加症
ポイント
偽性高カリウム血症は採血後に血球からカリウムが漏出して見かけ上高値となる現象で、血小板や白血球が著しく増加する病態で起こりやすい。本態性血小板増加症では試験管内で凝固する際に増多した血小板からカリウムが放出され、血清カリウムが偽性に上昇する。血漿(抗凝固剤添加・非凝固)で測定すれば本来の値が得られる点が鑑別となる。
●偽性高カリウム血症=血小板増多症・著明な白血球増加・溶血検体・採血手技(強い駆血・溶血)。
●真の高カリウム血症=腎不全・アジソン病・代謝性アシドーシス・組織崩壊(横紋筋融解・腫瘍崩壊)。
●確認法=血漿カリウムと血清カリウムの乖離をみる、溶血の有無を確認。
選択肢ごとの解説
- ① 肝硬変はカリウムの偽性上昇とは直接関連しない。
- ② 腎不全は真の高カリウム血症の原因であり、偽性高カリウム血症とは機序が異なる。
- ③ 再生不良性貧血では血球が減少するため、血球からのカリウム漏出による偽性上昇は起こりにくい。
- ④ 正しい。本態性血小板増加症では凝固時に増加した血小板からカリウムが放出され、血清カリウムが偽性に上昇する。
- ⑤ 自己免疫性溶血性貧血は溶血が主体で、血小板増加による偽性高カリウム血症の典型ではない。
第64回 午前14(臨床検査医学総論)
動脈血ガス分析の所見を示す。pH 7.32 Na⁺ 142 mEq/L Cl⁻ 106 mEq/L HCO₃⁻ 24 mEq/L考えられる病態はどれか。
- ①尿毒症
- ②乳酸アシドーシス
- ③尿細管性アシドーシス
- ④原発性アルドステロン症
- ⑤糖尿病性ケトアシドーシス
正答: ③尿細管性アシドーシス
ポイント
公式正答は3(尿細管性アシドーシス)である。pH 7.32はアシデミアを示し、アニオンギャップは142−(106+24)=12 mEq/Lで正常範囲となる。しかしHCO₃⁻ 24 mEq/Lは低下しておらず、この値だけで代謝性アシドーシスとは判定できない。PaCO₂も提示されていないため、呼吸性・代謝性の判定には限界がある。学習上は、尿細管性アシドーシスが通常「HCO₃⁻低下を伴う正常アニオンギャップ性代謝性アシドーシス」を呈する点を押さえる。
●アニオンギャップ増加性代謝性アシドーシス=乳酸アシドーシス・ケトアシドーシス・尿毒症・中毒(メタノール・エチレングリコール)。
●正常アニオンギャップ性代謝性アシドーシス=尿細管性アシドーシス・下痢・尿管腸吻合。
●代謝性アルカローシス=嘔吐・原発性アルドステロン症・利尿薬。
●アニオンギャップ=Na−(Cl+HCO₃)、基準値約12±2 mEq/L。
選択肢ごとの解説
- ① 尿毒症ではリン酸や硫酸の蓄積でアニオンギャップが増大するため、正常ギャップのこの所見と合わない。
- ② 乳酸アシドーシスは乳酸の蓄積でアニオンギャップが増大するため、この所見と合わない。
- ③ 公式正答は3(尿細管性アシドーシス)である。尿細管性アシドーシスは一般に正常アニオンギャップ性の代謝性アシドーシスを呈する。ただし、本問のHCO₃⁻ 24 mEq/Lは低下しておらず、提示値だけから高クロール性代謝性アシドーシスと断定することはできない。
- ④ 原発性アルドステロン症は代謝性アルカローシスを呈することが多く、アシドーシスのこの所見と合わない。
- ⑤ 糖尿病性ケトアシドーシスはケトン体蓄積でアニオンギャップが増大するため、この所見と合わない。
📋 まとめの表を見る:アニオンギャップ〈AG〉による代謝性アシドーシスの鑑別
AG=Na⁺-(Cl⁻+HCO₃-)、基準範囲は12±2 mmol/L。
第64回 午前15(臨床検査医学総論)
肺癌の腫瘍マーカーとして使用されないのはどれか。
- ①CA15-3
- ②CEA
- ③CYFRA21-1
- ④NSE
- ⑤ProGRP
正答: ①CA15-3
ポイント
CA15-3は乳癌の腫瘍マーカーであり、肺癌の診断・経過観察には用いられない。肺癌では組織型に応じて、腺癌で癌胎児性抗原〈CEA〉、扁平上皮癌でサイトケラチン19フラグメント〈CYFRA21-1〉、小細胞癌で神経特異エノラーゼ〈NSE〉とガストリン放出ペプチド前駆体〈ProGRP〉が用いられる。マーカーと組織型の対応関係の理解が問われる。
●肺腺癌=CEA・CA125・SLX。
●肺扁平上皮癌=CYFRA21-1・扁平上皮癌関連抗原〈SCC〉。
●小細胞肺癌=NSE・ProGRP。
●乳癌=CA15-3・CEA。
●卵巣癌=CA125、膵・胆道癌=CA19-9、前立腺癌=前立腺特異抗原〈PSA〉。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。CA15-3は乳癌のマーカーであり、肺癌の腫瘍マーカーとしては使用されない。
- ② 癌胎児性抗原〈CEA〉は腺癌を中心に肺癌でも上昇し、肺癌のマーカーとして使用される。
- ③ サイトケラチン19フラグメント〈CYFRA21-1〉は扁平上皮癌で上昇し、肺癌のマーカーとして使用される。
- ④ 神経特異エノラーゼ〈NSE〉は小細胞肺癌で上昇し、肺癌のマーカーとして使用される。
- ⑤ ガストリン放出ペプチド前駆体〈ProGRP〉は小細胞肺癌に特異性が高く、肺癌のマーカーとして使用される。
📋 まとめの表を見る:主な腫瘍マーカーと高値を示す代表疾患
第64回 午前16(臨床生理学)
心周期における左室圧-容積曲線の模式図を別に示す。Aが示す時相はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k64aA016.b6fd218cec.jpg

- ①駆出期
- ②急速充満期
- ③緩速充満期
- ④心房収縮期
- ⑤変容期
正答: ①駆出期
ポイント
左室圧-容積曲線は反時計回りに描かれ、等容性収縮期・駆出期・等容性弛緩期・充満期の4相からなる。駆出期は大動脈弁が開放して左室から血液が拍出される相で、左室容積が減少しながら圧が変化し、容積軸上を左方へ移動する。設問図のAは大動脈弁開放後に容積が減少する駆出期に相当する。
●心周期4相(左室)=等容性収縮期→駆出期→等容性弛緩期→充満期。
●充満期の内訳=急速充満期・緩速充満期・心房収縮期。
●弁の開閉=大動脈弁(駆出期に開)・僧帽弁(充満期に開)。
●圧容積曲線の指標=1回拍出量(横幅)・収縮末期エラスタンス・拡張末期圧容積関係。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。Aは大動脈弁が開放し左室容積が減少していく駆出期に相当する。
- ② 急速充満期は僧帽弁開放直後に容積が急速に増える相で、駆出期とは別である。
- ③ 緩速充満期は充満が緩やかに進む相で、駆出期とは異なる。
- ④ 心房収縮期は心房収縮により左室容積がわずかに増える相で、駆出期ではない。
- ⑤ 変容期は標準的な左室圧容積曲線の相区分に含まれず、駆出期に相当しない。
第64回 午前17(臨床生理学)
頻回の動悸を主訴に来院した患者の心電図を別に示す。動悸の原因で最も考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k64aA017.f8aa905f21.jpg

- ①心室細動
- ②洞性不整脈
- ③洞不全症候群
- ④洞房ブロック
- ⑤発作性上室頻拍
正答: ⑤発作性上室頻拍
ポイント
本図は頻拍発作中の記録ではなく、PQ時間の短縮とQRS波初期のデルタ波を認めるWPW型の心電図である。房室副伝導路の存在が示唆され、房室結節と副伝導路を回る房室回帰性頻拍が動悸発作の原因として考えられる。したがって選択肢では発作性上室頻拍を選ぶ。
●WPW型心電図=PQ短縮・デルタ波・QRS幅の延長。
●頻拍発作の機序=副伝導路を含むリエントリー(房室回帰性頻拍)。発作間欠期の心電図から発作の原因を推定する問題である。
選択肢ごとの解説
- ① 心室細動は心停止に至る致死的不整脈で、動悸を訴えて来院する病態ではない。
- ② 洞性不整脈は呼吸性の心拍数変動が主で、発作性の動悸の原因とはなりにくい。
- ③ 洞不全症候群は徐脈が主体で、頻回の動悸という主訴には合いにくい。
- ④ 洞房ブロックは洞結節からの興奮伝導が途絶える徐脈性の異常で、頻拍ではない。
- ⑤ 正しい。本図のPQ短縮とデルタ波は房室副伝導路の存在を示す。副伝導路が関与する房室回帰性頻拍は発作性上室頻拍の一つで、反復する動悸の原因として最も考えられる。
第64回 午前18(臨床生理学)
運動負荷試験が実施可能なのはどれか。
- ①急性肺塞栓症
- ②不安定狭心症
- ③急性大動脈解離
- ④持続性心室頻拍
- ⑤第1度房室ブロック
正答: ⑤第1度房室ブロック
ポイント
運動負荷試験は虚血性心疾患の評価や運動耐容能の判定に用いるが、急性肺塞栓症・不安定狭心症・急性大動脈解離・コントロール不良の持続性心室頻拍などは運動により病態が急速に悪化し危険なため禁忌である。第1度房室ブロックはPQ時間延長のみで無症状・予後良好なことが多く、運動負荷の絶対禁忌ではないため実施可能である。負荷試験の禁忌の理解が問われる。
●運動負荷試験の絶対禁忌=急性心筋梗塞早期・不安定狭心症・コントロール不良の重症不整脈・症候性重症大動脈弁狭窄・急性大動脈解離・急性肺塞栓症・急性心筋炎。
●比較的安全に実施可=第1度房室ブロック・安定狭心症(評価目的)・コントロール良好の不整脈。
●負荷法=トレッドミル・自転車エルゴメータ・マスター二段階。
選択肢ごとの解説
- ① 急性肺塞栓症は急性期に運動で循環動態が破綻する危険があり、運動負荷の禁忌である。
- ② 不安定狭心症は運動で心筋虚血が増悪し心筋梗塞を招く危険があり禁忌である。
- ③ 急性大動脈解離は運動による血圧上昇で解離が進展する危険があり禁忌である。
- ④ 持続性心室頻拍はコントロールされていなければ運動で致死的不整脈を誘発する危険があり禁忌である。
- ⑤ 正しい。第1度房室ブロックは無症状で予後良好なことが多く、運動負荷試験は実施可能である。
📋 まとめの表を見る:運動負荷試験(トレッドミル)の禁忌
第1度房室ブロックは禁忌に該当せず実施可能。目標心拍数は予測最大心拍数〔(220-年齢)/分〕の85〜90%。誘導法はMason-Likar法。Bruce法は3分ごとに負荷を増大。
第64回 午前19(臨床生理学)
フローボリューム曲線から得られる指標はどれか。2つ選べ。
- ①1秒率
- ②残気量
- ③全肺気量
- ④努力肺活量
- ⑤ピークフロー
正答: ④努力肺活量・⑤ピークフロー
ポイント
フローボリューム曲線は努力呼出時の気流(フロー)と肺気量(ボリューム)の関係を描く曲線で、努力肺活量・ピークフロー(最大呼気流量)・最大呼気中間流量・V50やV25などが直接得られる。一方、残気量・全肺気量・機能的残気量はスパイロメトリでは測定できず、ガス希釈法や体プレチスモグラフを要する。曲線から直接得られる指標と得られない指標の区別が問われる。
●フローボリューム曲線から得られる=努力肺活量・ピークフロー・V50・V25・1秒量(時間情報併用で算出)。
●スパイロメトリで測れない(別法が必要)=残気量・全肺気量・機能的残気量。
●測定法=ガス希釈法(窒素洗い出し・ヘリウム閉鎖回路)・体プレチスモグラフ。
●曲線形=閉塞性(下に凸の呼出曲線)・拘束性(縦に縮小)。
選択肢ごとの解説
- ① 1秒率は1秒量を努力肺活量で割った比であり、フローボリューム曲線単独からは直接読み取れず別途算出が必要である。
- ② 残気量は最大呼気後も肺に残る量で、フローボリューム曲線では測定できない。
- ③ 全肺気量は最大吸気時の総量で、残気量を含むためフローボリューム曲線では測定できない。
- ④ 正しい。努力肺活量はフローボリューム曲線の容積軸から直接得られる指標である。
- ⑤ 正しい。ピークフローは曲線上の最大呼気流量として直接得られる指標である。
第64回 午前20(臨床生理学)
肺胞気-動脈血酸素分圧較差〈A-aDO₂〉が増加しない低酸素血症を呈する病態はどれか。2つ選べ。
- ①拡散障害
- ②シャント
- ③肺胞低換気
- ④大気圧の低下
- ⑤換気血流不均等分布の増悪
正答: ③肺胞低換気・④大気圧の低下
ポイント
肺胞気-動脈血酸素分圧較差〈A-aDO₂〉は肺でのガス交換障害を反映する指標である。肺胞低換気と大気圧(吸入酸素分圧)の低下では肺自体のガス交換能は正常で、肺胞気と動脈血の酸素分圧がともに低下するためA-aDO₂は開大しない。一方、拡散障害・シャント・換気血流不均等分布ではガス交換が障害されA-aDO₂が増加する点が鑑別となる。
●A-aDO₂が開大する低酸素血症=拡散障害・シャント・換気血流不均等分布。
●A-aDO₂が開大しない低酸素血症=肺胞低換気・吸入酸素分圧低下(高地・低気圧)。
●酸素投与で改善しにくい=シャント(純粋シャントは反応乏しい)。
●肺胞気式=PAO₂=PIO2−PaCO₂/R。
選択肢ごとの解説
- ① 拡散障害は肺胞毛細血管での酸素移行が障害されA-aDO₂が増加するため該当しない。
- ② シャントは静脈血が酸素化されずに動脈血へ混入しA-aDO₂が増加するため該当しない。
- ③ 正しい。肺胞低換気はガス交換能自体は正常で肺胞気・動脈血酸素分圧がともに低下し、A-aDO₂は増加しない。
- ④ 正しい。大気圧の低下は吸入酸素分圧の低下によるもので、肺は正常でありA-aDO₂は増加しない。
- ⑤ 換気血流不均等分布の増悪はガス交換効率が低下しA-aDO₂が増加するため該当しない。
第64回 午前21(臨床生理学)
簡易型終夜睡眠ポリグラフィで測定できないのはどれか。
- ①脈拍
- ②気道音
- ③胸郭運動
- ④睡眠段階
- ⑤経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉
正答: ④睡眠段階
ポイント
簡易型終夜睡眠ポリグラフィ(携帯型)は気流・いびき音・呼吸努力(胸郭運動)・経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉・脈拍などを測定し、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングに用いる。脳波・眼球運動・筋電図(オトガイ筋)を記録しないため、睡眠段階(睡眠深度)の判定はできない。睡眠段階の評価には標準型ポリソムノグラフィが必要である点が要点である。
●簡易型で測定可=気流・いびき音・胸郭/腹部運動・SpO₂・脈拍・体位。
●簡易型で測定不可=睡眠段階(脳波・眼電図・筋電図を要する)。
●標準型ポリソムノグラフィ=脳波・眼球運動・筋電図を含む睡眠段階判定が可能。
●睡眠時無呼吸の指標=無呼吸低呼吸指数〈AHI〉。
選択肢ごとの解説
- ① 脈拍は簡易型でも測定でき、無呼吸に伴う変動の評価に用いられる。
- ② 気道音(いびき音)は簡易型で測定でき、無呼吸の評価に利用される。
- ③ 胸郭運動は呼吸努力の指標として簡易型で測定できる。
- ④ 正しい。睡眠段階の判定には脳波などが必要で、それらを記録しない簡易型では測定できない。
- ⑤ 経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO₂〉は簡易型でも測定でき、無呼吸時の低下評価に重要である。
📋 まとめの表を見る:簡易型終夜睡眠ポリグラフィと標準(終夜睡眠ポリグラフィ〈PSG〉)の違い
簡易型は在宅での睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングに用いる。
第64回 午前22(臨床生理学)
気管支喘息発作時の肺機能検査結果で増加するのはどれか。
- ①V̇25
- ②1秒量
- ③残気量
- ④努力肺活量
- ⑤ピークフロー
正答: ③残気量
ポイント
気管支喘息発作では気道平滑筋の収縮や粘膜浮腫により気道が狭窄し、閉塞性換気障害をきたす。呼出が妨げられて空気が肺内にとどまるエアトラッピングを生じるため、残気量や機能的残気量が増加する。一方、V25・1秒量・努力肺活量・ピークフローは気流制限により低下する。閉塞性障害で増える指標と減る指標の区別が問われる。
●閉塞性換気障害で増加=残気量・機能的残気量・全肺気量(過膨張)・残気率。
●閉塞性換気障害で低下=1秒量・1秒率・ピークフロー・V50・V25・努力肺活量。
●閉塞性疾患=気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉・びまん性汎細気管支炎。
●拘束性疾患=間質性肺炎・肺線維症(肺活量低下・1秒率は保たれる)。
選択肢ごとの解説
- ① V25は末梢気道の気流を反映し、発作時の気道狭窄で低下するため増加しない。
- ② 1秒量は気流制限により低下するため、発作時には増加しない。
- ③ 正しい。発作時は呼出障害でエアトラッピングが生じ残気量が増加する。
- ④ 努力肺活量も気道狭窄により低下するため、発作時には増加しない。
- ⑤ ピークフローは気流制限により低下するため、発作時には増加しない。
第64回 午前23(臨床生理学)
健常成人の脳波でみられるα波について正しいのはどれか。
- ①振幅は一定である。
- ②閉眼で抑制される。
- ③後頭部に優位である。
- ④精神的負荷で増強する。
- ⑤加齢で周波数が高くなる。
正答: ③後頭部に優位である。
ポイント
健常成人の脳波のα波は8〜13Hzで後頭部に優位に出現し、安静・閉眼・覚醒時に増強する。開眼や精神活動(暗算など)ではα波が抑制される現象をα抑制(α-blocking)という。振幅は一定でなく漸増漸減を示し、加齢ではむしろ周波数がやや低下する傾向がある。α波の出現条件と分布の理解が問われる。
●脳波の周波数帯=δ波(4Hz未満・深睡眠)・θ波(4〜8Hz)・α波(8〜13Hz・後頭部優位)・β波(13Hz超・前頭部優位・覚醒緊張)。
●α抑制=開眼・精神活動でα波が抑制される。
●賦活法=開閉眼・過呼吸・光刺激・睡眠賦活。
●異常波=棘波・鋭波・棘徐波複合(てんかん)。
選択肢ごとの解説
- ① α波の振幅は一定ではなく漸増漸減する波形を示すため誤りである。
- ② α波は閉眼・安静で増強し開眼で抑制されるため、閉眼で抑制されるは誤りである。
- ③ 正しい。α波は後頭部に優位に出現する。
- ④ 精神的負荷ではα波は抑制されるため、増強するは誤りである。
- ⑤ 加齢では周波数はむしろ低下傾向であり、高くなるは誤りである。
第64回 午前24(臨床生理学)
光トポグラフィ検査と関係があるのはどれか。
- ①遠赤外線
- ②近赤外線
- ③可視光線
- ④紫外線
- ⑤エックス線
正答: ②近赤外線
ポイント
光トポグラフィ(近赤外線分光法)は近赤外線を頭皮上から照射し、大脳皮質における酸化ヘモグロビンと脱酸化ヘモグロビンの量的変化から脳活動(局所血流変化)を捉える検査である。近赤外線は生体組織をある程度透過し、ヘモグロビンの吸収特性を利用できるため計測に適する。うつ病など気分障害の鑑別診断補助にも応用される。
●光と検査の対応=近赤外線(光トポグラフィ・パルスオキシメータ)・遠赤外線(サーモグラフィ)・エックス線(単純撮影・CT)。
●脳機能計測法=近赤外線分光法・機能的MRI〈fMRI〉・脳磁図〈MEG〉・脳波。
●近赤外線分光の原理=酸化/脱酸化ヘモグロビンの吸光度差を利用。
選択肢ごとの解説
- ① 遠赤外線は体表からの熱放射の検出(サーモグラフィ)に関係し、光トポグラフィには用いない。
- ② 正しい。光トポグラフィは近赤外線を用いて脳のヘモグロビン変化を計測する検査である。
- ③ 可視光線は生体深部への透過性が低く、光トポグラフィの計測光ではない。
- ④ 紫外線は生体透過性がほとんどなく、光トポグラフィには用いない。
- ⑤ エックス線は放射線画像に用いるもので、光トポグラフィとは原理が異なる。
第64回 午前25(臨床生理学)
超音波検査に用いる超音波の性質について正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①周波数が高いほど減衰しやすい。
- ②周波数が高いほど透過性が良い。
- ③周波数が高いほど分解能が低い。
- ④音速は臓器・組織によらず一定である。
- ⑤媒質間の音響インピーダンスの差が大きいほど反射が強い。
正答: ①周波数が高いほど減衰しやすい。・⑤媒質間の音響インピーダンスの差が大きいほど反射が強い。
ポイント
超音波は周波数が高いほど波長が短く空間分解能は向上するが、組織での減衰が大きく深部到達性(透過性)は低下するというトレードオフがある。音速は臓器・組織によって異なり、隣接する媒質間の音響インピーダンス(密度×音速)の差が大きいほど境界面での反射が強くなる。これらの基本的性質の理解が問われる。
●周波数と特性=高周波(分解能高・減衰大・浅部用)・低周波(分解能低・減衰小・深部用)。
●反射=音響インピーダンス差が大きい境界面ほど強い(骨・空気で全反射に近い)。
●音速の例=軟部組織約1,540 m/s・骨は速く・空気は遅い。
●ドプラ法=血流速度の計測(連続波・パルス・カラー)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。周波数が高いほど組織での減衰が大きく、深部到達性が下がる。
- ② 周波数が高いほど減衰が大きく透過性は悪くなるため、良いとするのは誤りである。
- ③ 周波数が高いほど分解能は高くなるため、低くなるとするのは誤りである。
- ④ 音速は臓器・組織によって異なるため、一定とするのは誤りである。
- ⑤ 正しい。媒質間の音響インピーダンスの差が大きいほど境界面での反射が強くなる。
第64回 午前26(臨床生理学)
心房中隔欠損症の超音波検査においてみられやすいのはどれか。
- ①非対称性中隔肥厚
- ②拡張期の右室扁平化
- ③左室前壁の逆方向運動
- ④心室中隔の奇異性運動
- ⑤僧帽弁の収縮期前方運動
正答: ④心室中隔の奇異性運動
ポイント
心房中隔欠損症では欠損孔を通じて左房から右房へ短絡(左右シャント)が生じ、右房・右室に容量負荷がかかって両者が拡大する。右室の拡張期容量負荷により心室中隔は左室側へ偏位し、本来の動きと逆向きに動く奇異性運動(パラドキシカルムーブメント)を示す。非対称性中隔肥厚や僧帽弁収縮期前方運動(SAM)は肥大型心筋症に特徴的な所見で鑑別となる。●短絡性心疾患=心房中隔欠損症(右心系容量負荷・中隔奇異性運動)・心室中隔欠損症(左心系容量負荷)・動脈管開存症(左心系容量負荷)。●肥大型心筋症の所見=非対称性中隔肥厚(ASH)・僧帽弁収縮期前方運動(SAM)・左室流出路狭窄。●右室圧負荷を生じる疾患=肺高血圧症・肺動脈狭窄(収縮期の中隔平坦化)。
選択肢ごとの解説
- ① 非対称性中隔肥厚は肥大型心筋症の所見で、心房中隔欠損症の特徴ではない。
- ② 右室の平坦化(Dシェイプ)は主に圧負荷でみられ、容量負荷主体の心房中隔欠損症の典型像とは言いにくい。
- ③ 左室前壁の逆方向運動は心房中隔欠損症に特徴的な所見ではない。
- ④ 正しい。右室容量負荷により心室中隔が左室側へ偏位し奇異性運動を示すのが心房中隔欠損症の特徴である。
- ⑤ 僧帽弁の収縮期前方運動(SAM)は肥大型心筋症の所見で、心房中隔欠損症の特徴ではない。
📋 まとめの表を見る:先天性心疾患の心エコーにおける短絡(シャント)血流の向き
心室中隔の奇異性運動は心房中隔欠損症を代表とする右室容量負荷疾患でみられる。
第64回 午前27(臨床生理学)
健常者の腎臓の超音波Bモード像において、中心部エコーに含まれるのはどれか。
正答: ①腎盂
ポイント
腎臓のBモード像では、外側の皮質と内側の髄質(腎錐体)からなる腎実質が低〜中エコーに、中心部の腎洞(腎盂・腎杯、腎動静脈、脂肪組織)が高エコーの集合体として描出され、これを中心部エコー(central echo complex)と呼ぶ。腎盂は腎洞内に位置するため中心部エコーに含まれる。皮質・髄質は実質、被膜は腎表面、後腹膜は腎周囲組織であり中心部エコーには含まれない。●腎洞(中心部エコー)の構成=腎盂・腎杯・腎血管・腎洞脂肪。●腎実質=皮質(やや高エコー)・髄質(腎錐体、皮質より低エコー)。●実質外の構造=被膜(腎表面)・脂肪被膜・後腹膜(腎周囲)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。腎盂は腎洞内に位置し、中心部エコーに含まれる構造である。
- ② 髄質(腎錐体)は腎実質の一部で中心部エコーではなく、皮質より低エコーに描出される。
- ③ 皮質は腎実質の外層で、中心部エコーには含まれない。
- ④ 被膜は腎の表面を覆う構造で、中心部エコーには含まれない。
- ⑤ 後腹膜は腎の周囲に位置する領域で、腎内部の中心部エコーには含まれない。
第64回 午前28(臨床生理学)
熱画像検査〈サーモグラフィ〉で低温相を示すことが多い病態はどれか。
正答: ⑤レイノー病
ポイント
熱画像検査〈サーモグラフィ〉は体表面から放射される赤外線を検出し体表温度を画像化する検査で、血流増加や炎症のある部位は高温相、血流低下のある部位は低温相を示す。レイノー病は寒冷や精神的緊張を契機に四肢末梢の細動脈が攣縮し指趾の血流が低下するため、低温相を呈する。乳癌・静脈炎・動脈瘤・静脈うっ滞はいずれも局所の血流増加や炎症により高温相を示すことが多く鑑別となる。●低温相を示す病態=レイノー病(末梢血管攣縮)・閉塞性動脈硬化症など動脈血流低下。●高温相を示す病態=炎症(静脈炎・蜂窩織炎)・腫瘍(乳癌など)・血流増加(動脈瘤・静脈うっ滞)。●サーモグラフィの応用=末梢循環障害・乳腺疾患・自律神経機能の評価。
選択肢ごとの解説
- ① 乳癌は腫瘍周囲の血流増加により高温相を示すことが多く、低温相ではない。
- ② 静脈炎は炎症による血流増加で高温相を示すことが多い。
- ③ 動脈瘤は局所に血流が保たれ高温相を示すことが多く、低温相ではない。
- ④ 静脈うっ滞は血液貯留により高温相を示すことが多い。
- ⑤ 正しい。レイノー病は末梢血管の攣縮で血流が低下し、低温相を示すことが多い。
第64回 午前29(臨床化学)
膜構造でないのはどれか。
- ①小胞体
- ②リボソーム
- ③エンドソーム
- ④ミトコンドリア
- ⑤ゴルジ〈Golgi〉装置
正答: ②リボソーム
ポイント
リボソームは大小2つのサブユニットからなるリボ核蛋白(rRNAと蛋白)の粒子で、脂質二重膜を持たずmRNAの遺伝情報をもとに蛋白を合成する。小胞体・ゴルジ装置・エンドソーム・リソソームは一重膜、ミトコンドリアと核は二重膜で囲まれた膜構造の細胞小器官である。膜の有無による細胞小器官の分類が問われる。●膜をもたない構造=リボソーム・中心小体・細胞骨格(微小管など)。●一重膜の小器官=小胞体・ゴルジ装置・リソソーム・エンドソーム・ペルオキシソーム。●二重膜の小器官=ミトコンドリア・核(核膜)・葉緑体(植物)。
選択肢ごとの解説
- ① 小胞体は膜で囲まれた管状・嚢状の構造で、膜構造に含まれる。
- ② 誤り。リボソームは脂質二重膜を持たないリボ核蛋白粒子であり、膜構造ではない。
- ③ エンドソームは膜で囲まれた小胞で、膜構造に含まれる。
- ④ ミトコンドリアは外膜と内膜の二重膜を持つ膜構造の細胞小器官である。
- ⑤ ゴルジ装置は膜性の扁平嚢が重なった一重膜の膜構造である。
第64回 午前30(臨床化学)
電気泳動法を用いる検査と健常成人の血清中に最も多く含まれる分画の組合せで正しいのはどれか。
- ①蛋白分画 — γ-グロブリン
- ②リポ蛋白分画 — VLDL
- ③LDアイソザイム — LD₃
- ④CKアイソザイム — CK-MM
- ⑤ALPアイソザイム — ALP₅
正答: ④CKアイソザイム — CK-MM
ポイント
クレアチンキナーゼ〈CK〉はM型(筋型)とB型(脳型)のサブユニット2個からなる二量体で、骨格筋に多いCK-MMが血清中で最も多い分画である。血清蛋白分画ではアルブミンが最多、リポ蛋白分画ではLDLが主体、乳酸デヒドロゲナーゼ〈LD〉アイソザイムでは健常成人でLD₂が最も多く、アルカリホスファターゼ〈ALP〉アイソザイムでは肝由来のALP₂が主体である。各電気泳動分画の正常パターンの理解が問われる。●蛋白分画(多い順)=アルブミン>γ>α1・α2・β。●CKアイソザイム=CK-MM(骨格筋)>CK-MB(心筋)>CK-BB(脳)。●LDアイソザイム=健常ではLD₂>LD₁(溶血・心筋でLD₁上昇)。●ALPアイソザイム=ALP₂(肝)が主、ALP₃(骨)・ALP₅(小腸)など。
選択肢ごとの解説
- ① 血清蛋白分画で最も多いのはアルブミンであり、γ-グロブリンではないため誤りである。
- ② リポ蛋白分画でVLDLは主体ではなく、LDLが主であるため誤りである。
- ③ LDアイソザイムで健常成人に最も多いのはLD₂であり、LD₃ではないため誤りである。
- ④ 正しい。CKアイソザイムでは骨格筋由来のCK-MMが血清中で最も多い分画である。
- ⑤ ALPアイソザイムで主体は肝由来のALP₂であり、小腸型などのALP₅ではないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:電気泳動法・アイソザイムで健常者に最も多い分画
CK-MB(心筋由来)は4%以下、CK-BB(脳・神経由来)は1%未満と少ない。
第64回 午前31(臨床化学)
2ポイントエンド法の反応タイムコースを別に示す。患者血清のタイムコースから考えられるのはどれか。ただし、測光ポイントは5分と10分の2ポイントとする。
図: https://medwide.jp/drill/img/k64aA031.6633596103.jpg

- ①測定値はマイナス値になる。
- ②攪拌機構の不具合が疑われる。
- ③光源ランプの劣化が疑われる。
- ④第2試薬の分注量が少なかった。
- ⑤第1試薬と内因性物質との反応が生じた。
正答: ⑤第1試薬と内因性物質との反応が生じた。
ポイント
この2ポイントエンド法では、第2試薬を加える直前の5分値と、反応後の10分値の吸光度差を用いて目的成分を求める。2点とも反応終了後に測るという意味ではない。図では患者血清だけが第1試薬添加後から5分までに吸光度上昇を示すため、第1試薬と内因性物質との前反応が考えられる。前反応が最初の測光点までに終了していれば、その影響はブランクとして差し引ける。反応が測光点以降も続く場合などには誤差の原因となる。
選択肢ごとの解説
- ① 患者血清の吸光度は5分で約0.10、10分で約0.40なので、2点の差は正である。したがって、測定値がマイナスになるという記述は誤りである。
- ② 攪拌不良では反応が不均一になりうるが、設問のタイムコースの特徴を最もよく説明する所見ではない。
- ③ 光源ランプの劣化は全体の吸光度レベルや安定性に影響するが、この所見の主因とは考えにくい。
- ④ 第2試薬の分注量不足では本反応の進行が不足するが、設問の特徴に最も合致するわけではない。
- ⑤ 正しい。第2試薬を加える前から患者血清の吸光度が上昇しており、第1試薬と検体中の内因性物質との反応が考えられる。
第64回 午前32(臨床化学)
血中イオン化カルシウムが低下するのはどれか。
- ①クレンチング
- ②全血室温放置
- ③長時間の駆血
- ④立位での採血
- ⑤ヘパリンの混入
正答: ②全血室温放置
ポイント
イオン化(遊離)カルシウムは血液のpHや採血手技、検体保存の影響を受けやすい。全血を室温で放置すると赤血球などの解糖により乳酸が産生されるが、嫌気的に保たず放置するとガス交換や経時変化が生じて正しい値が得られず、本設問では低下する病態として扱われる。クレンチング(手の握り運動)や長時間の駆血、立位採血は血液濃縮やpH変動を介して測定値に影響し、低下の典型要因とはされない。●イオン化Caに影響する因子=pH(アルカローシスで蛋白結合が増え低下、アシドーシスで上昇)・蛋白濃度(アルブミン)。●採血・保存の注意=嫌気的採取・速やかな測定・室温放置を避ける。●検体取り違えの誤差要因=駆血時間・体位(立位で濃縮)・抗凝固剤の種類。
選択肢ごとの解説
- ① クレンチング(手の握り運動)はpH変動を介して測定値に影響しうるが、イオン化カルシウム低下の典型要因ではない。
- ② 正しい。全血を室温で放置すると経時的変化により正しい値が得られず、イオン化カルシウムは低下方向に変化する。
- ③ 長時間の駆血は血液濃縮によりカルシウムを上昇方向に働かせ、低下の要因ではない。
- ④ 立位での採血は血液濃縮で蛋白やカルシウムが上昇方向に働き、低下の要因ではない。
- ⑤ ヘパリンの混入はカルシウムと結合して低下させうるが、室温放置と比べ本設問の正答ではない。
📋 まとめの表を見る:血中カルシウム・マグネシウムの存在様式と測定への影響
検体が空気に触れてCO₂が失われるとpHが上昇し、蛋白結合が増えてイオン化Caは低下する。一方、密閉した全血を放置すると解糖による乳酸産生でpHが低下し、イオン化Caが上昇しうる。保存による変化は空気との接触などの条件に左右される。細胞外液中のマグネシウムは体内総量の約1%のみで、大部分は細胞内に存在する。
第64回 午前33(臨床化学)
血糖測定用採血管に入っているNaFが阻害する酵素はどれか。
- ①エノラーゼ
- ②ヘキソキナーゼ
- ③ピルビン酸キナーゼ
- ④乳酸デヒドロゲナーゼ
- ⑤グルコース-6-ホスファターゼ
正答: ①エノラーゼ
ポイント
血糖測定用採血管に含まれるフッ化ナトリウム(NaF)は解糖系の酵素エノラーゼを阻害し、採血後に赤血球などが行う解糖(グルコース消費)を抑えて血糖値の偽低下を防ぐ。エノラーゼは2-ホスホグリセリン酸からホスホエノルピルビン酸への脱水反応を触媒する解糖系酵素である。NaFの作用発現には時間を要し抗凝固作用はないため、通常はEDTA等の抗凝固剤と併用される。●解糖系の主な酵素=ヘキソキナーゼ・ホスホフルクトキナーゼ・エノラーゼ・ピルビン酸キナーゼ。●血糖検体の安定化=NaF(解糖阻害)・速やかな血漿分離・低温保存。●採血管添加物=EDTA(凝固阻止・血球算定)・ヘパリン・クエン酸ナトリウム(凝固検査)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。NaFは解糖系酵素のエノラーゼを阻害し、採血後の解糖による血糖低下を防ぐ。
- ② ヘキソキナーゼは解糖の初発酵素だが、NaFが直接阻害する主標的ではない。
- ③ ピルビン酸キナーゼは解糖系酵素だが、NaFの阻害標的ではない。
- ④ 乳酸デヒドロゲナーゼはNaFの阻害対象ではない。
- ⑤ グルコース-6-ホスファターゼは糖新生に関わる酵素で、NaFの阻害標的ではない。
第64回 午前34(臨床化学)
血糖コントロールの指標で正しいのはどれか。
- ①HbA1cは貧血の影響を受けない。
- ②HbA1cは2週間の平均血糖値を反映する。
- ③グリコアルブミンは肝硬変の影響を受けない。
- ④アルブミンはヘモグロビンより糖化速度が速い。
- ⑤1, 5-アンヒドログルシトールは高血糖で高値になる。
正答: ④アルブミンはヘモグロビンより糖化速度が速い。
ポイント
血糖コントロール指標は反映する期間と影響因子が異なる。アルブミンはヘモグロビンより糖化速度が速く、グリコアルブミンは約2週間、HbA1cは約1〜2か月の平均血糖を反映する。HbA1cは溶血・出血など赤血球寿命の短縮で低値となり貧血の影響を受け、グリコアルブミンは肝硬変やネフローゼなどアルブミン代謝の変化で影響を受ける。1,5-アンヒドログルシトールは高血糖で尿中排泄が増えて血中濃度が低下する。●短期指標=グリコアルブミン(約2週間)・1,5-アンヒドログルシトール(高血糖で低値)。●長期指標=HbA1c(約1〜2か月)。●偽値を生じる病態=HbA1c(溶血・異常ヘモグロビン)・グリコアルブミン(甲状腺機能・ネフローゼ)。
選択肢ごとの解説
- ① HbA1cは溶血や出血など赤血球寿命の変化で値が変動し、貧血の影響を受けるため誤りである。
- ② HbA1cは約1〜2か月の平均血糖を反映し、2週間ではないため誤りである。
- ③ グリコアルブミンは肝硬変などでアルブミン代謝が変化すると影響を受けるため、影響を受けないは誤りである。
- ④ 正しい。アルブミンはヘモグロビンより糖化速度が速い。
- ⑤ 1,5-アンヒドログルシトールは高血糖で尿中排泄が増え血中濃度が低下するため、高値になるは誤りである。
第64回 午前35(臨床化学)
遊離グリセロール濃度が5mg/dLの血清を試料として、グリセロール非消去法でトリグリセライドを測定したところ200 mg/dLであった。この血清をグリセロール消去法で測定した場合のトリグリセライド値〈mg/dL〉に最も近いのはどれか。ただし、オレイン酸とグリセロールの分子量をそれぞれ282、92とする。
正答: ①149
ポイント
グリセロール非消去法では試料中の遊離グリセロールも測定値に含まれるため、トリグリセライド由来分はこの遊離グリセロール分を差し引いて求める。遊離グリセロール5mg/dLは、トリグリセライド1分子がグリセロール1個と脂肪酸(オレイン酸換算)3個のエステルで、エステル結合の形成により水3分子が外れるため、分子量比(グリセロール92に対しトリオレイン=92+282×3−18×3=884)から約48mg/dL分のトリグリセライドに換算され、200から差し引くと約152mg/dLとなり、選択肢では149が最も近い。消去法はあらかじめ遊離グリセロールを消去して真のトリグリセライド値を得る。●トリグリセライド測定=グリセロール非消去法(遊離分を含む)・消去法(遊離分を除く)。●測定に影響する内因性物質=遊離グリセロール(運動・グリセロール投与・採血手技で上昇)。●脂質関連の計算=Friedewaldの式(LDL=総コレステロール−HDL−TG/5)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。遊離グリセロール分をトリグリセライド換算(約48mg/dL)で差し引くと約152mg/dLとなり、選択肢の中では149が最も近い。
- ② 182は遊離グリセロールの補正が不足しており、計算上適切ではない。
- ③ 185は補正量が不足しており、計算結果と合わない。
- ④ 195は遊離グリセロールの寄与をほとんど差し引いておらず適切でない。
- ⑤ 198はほぼ非消去法の値に近く、補正がなされていないため適切でない。
第64回 午前36(臨床化学)
脂質異常症のWHO分類と増加するリポ蛋白の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①Ⅰ — カイロミクロン
- ②Ⅱa — VLDL
- ③Ⅲ — IDL
- ④Ⅳ — LDL
- ⑤Ⅴ — HDL
正答: ①Ⅰ — カイロミクロン・③Ⅲ — IDL
ポイント
脂質異常症のWHO(フレドリクソン)分類は増加するリポ蛋白により病型を分ける。Ⅰ型はカイロミクロン増加、Ⅱa型はLDL増加、Ⅱb型はLDLとVLDL増加、Ⅲ型はIDL(レムナント)増加、Ⅳ型はVLDL増加、Ⅴ型はカイロミクロンとVLDL増加を呈する。各型と増加するリポ蛋白の対応が問われる。●外因性(食事由来)優位=Ⅰ型(カイロミクロン)・Ⅴ型(カイロミクロン+VLDL)。●コレステロール優位=Ⅱa型(LDL)・Ⅱb型(LDL+VLDL)。●レムナント蓄積=Ⅲ型(IDL、broad-β)。●内因性トリグリセライド優位=Ⅳ型(VLDL)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。Ⅰ型はカイロミクロンが増加する病型である。
- ② Ⅱa型はLDLが増加する病型で、VLDLではないため誤りである。
- ③ 正しい。Ⅲ型はIDL(レムナント)が増加する病型である。
- ④ Ⅳ型はVLDLが増加する病型で、LDLではないため誤りである。
- ⑤ Ⅴ型はカイロミクロンとVLDLが増加する病型で、HDLではないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:脂質異常症のWHO(Fredrickson)分類
第64回 午前37(臨床化学)
A/G比が増加するのはどれか。
- ①肝硬変
- ②慢性感染症
- ③多発性骨髄腫
- ④原発性免疫不全症候群
- ⑤全身性エリテマトーデス〈SLE〉
正答: ④原発性免疫不全症候群
ポイント
A/G比はアルブミンとグロブリンの比で、グロブリンが減少するか相対的にアルブミンが保たれると増加する。原発性免疫不全症候群では免疫グロブリン(γ-グロブリン)の産生が低下しグロブリンが減るため、A/G比は増加する。肝硬変ではアルブミン合成低下、多発性骨髄腫・慢性感染症・全身性エリテマトーデス〈SLE〉ではグロブリン(M蛋白やγ-グロブリン)増加によりA/G比は低下する。●A/G比が低下する病態=肝硬変(アルブミン低下)・ネフローゼ(アルブミン喪失)・骨髄腫(M蛋白増加)・慢性炎症(γ増加)。●A/G比が増加する病態=無γ-グロブリン血症など免疫グロブリン産生低下。●γ-グロブリン増加のパターン=多クローン性(炎症・肝疾患)・単クローン性(骨髄腫のM蛋白)。
選択肢ごとの解説
- ① 肝硬変ではアルブミン合成が低下しA/G比は低下するため誤りである。
- ② 慢性感染症ではγ-グロブリンが増加しA/G比は低下するため誤りである。
- ③ 多発性骨髄腫ではM蛋白(グロブリン)が増加しA/G比は低下するため誤りである。
- ④ 正しい。原発性免疫不全症候群では免疫グロブリンが低下しグロブリンが減るためA/G比が増加する。
- ⑤ 全身性エリテマトーデス〈SLE〉ではγ-グロブリンが増加しA/G比は低下するため誤りである。
第64回 午前38(臨床化学)
推算糸球体濾過量〈eGFR〉算出式で用いるのはどれか。2つ選べ。
- ①BMI
- ②尿量
- ③年齢
- ④血中クレアチニン濃度
- ⑤尿中クレアチニン濃度
正答: ③年齢・④血中クレアチニン濃度
ポイント
日本人向けの推算糸球体濾過量〈eGFR〉算出式は、血清クレアチニン濃度・年齢・性別の3因子を用いる。蓄尿を要するクレアチニンクリアランスと異なり、尿量や尿中クレアチニン濃度、BMIは式に含まれず、1回の採血で簡便に腎機能を推算できる。eGFRはクレアチニンが筋肉量の影響を受けるため、低筋肉量例ではシスタチンC基準のeGFRが補完的に用いられる。●eGFR(クレアチニン)の構成因子=血清クレアチニン・年齢・性別。●腎機能評価の方法=eGFR(推算)・クレアチニンクリアランス(蓄尿)・イヌリンクリアランス(基準法)。●代替マーカー=シスタチンC(筋肉量の影響を受けにくい)。
選択肢ごとの解説
- ① BMIはeGFR算出式には用いられない。
- ② 尿量はeGFR算出式には用いられず、蓄尿を要しないのが特徴である。
- ③ 正しい。年齢はeGFR算出式に用いられる因子である。
- ④ 正しい。血中クレアチニン濃度はeGFR算出式の中心的な因子である。
- ⑤ 尿中クレアチニン濃度はクレアチニンクリアランスで用いるが、eGFR推算式には用いられない。
第64回 午前39(臨床化学)
LDアイソザイムについて正しいのはどれか。
- ①2量体である。
- ②LD₄は0℃で安定である。
- ③LD₅は溶血によって上昇する。
- ④LD₁の半減期は約8時間である。
- ⑤2種類のサブユニットからなる。
正答: ⑤2種類のサブユニットからなる。
ポイント
乳酸デヒドロゲナーゼ〈LD〉はH(心型)とM(筋型)の2種類のサブユニット4個からなる四量体で、その組合せによりLD₁(H4)〜LD₅(M4)の5つのアイソザイムを生じる。LD₁・LD₂は心筋・赤血球・腎に多く溶血で上昇し、LD₅は肝・骨格筋に多い。低温(凍結)ではLD₅が不安定で失活しやすい。四量体で2種類のサブユニットからなる構造の理解が問われる。●LDアイソザイムの分布=LD₁・LD₂(心筋・赤血球・腎)・LD₃(肺・脾)・LD₄・LD₅(肝・骨格筋)。●溶血で上昇=LD₁・LD₂(赤血球由来)。●安定性=LD₅は凍結・低温で失活しやすい。
選択肢ごとの解説
- ① LDは四量体であり、2量体ではないため誤りである。
- ② LD₄が特に低温で安定とはいえず、むしろLD₅が低温で失活しやすいため誤りである。
- ③ 溶血で上昇するのは赤血球に多いLD₁・LD₂であり、LD₅ではないため誤りである。
- ④ LD₁の半減期は約8時間ではなく、それより長いため誤りである。
- ⑤ 正しい。LDはH型とM型の2種類のサブユニットからなる四量体である。
📋 まとめの表を見る:LDアイソザイムの構造・組織分布・安定性
LDはH型・M型の2種類のサブユニットからなる四量体(分子量約134kDa)。健常人血清ではLD2の割合が最も高い。溶血で上昇するのはLD1・LD2。
第64回 午前40(臨床化学)
日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法の試薬中にN-アセチルシステインを含むのはどれか。
正答: ①CK
ポイント
日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法のクレアチンキナーゼ〈CK〉測定では、酵素の活性中心にあるスルフヒドリル基(SH基)を保護・賦活する目的でN-アセチルシステインが試薬に添加される。これにより酸化で失活したCKの活性を回復させ、正確な活性測定を可能にする。CK測定に特有の試薬組成の理解が問われる。●CK勧告法の特徴的試薬=N-アセチルシステイン(SH基賦活)・グルコース-6-リン酸脱水素酵素等の共役酵素。●酵素活性測定の共役系=ヘキソキナーゼ/G6PDH系(CK・グルコース)。●アイソザイム阻害=CK-MのM抗体阻害(CK-MB測定)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。CKのJSCC勧告法ではSH基を賦活するN-アセチルシステインが試薬に含まれる。
- ② LDの勧告法にN-アセチルシステインは用いられない。
- ③ ALPの勧告法にN-アセチルシステインは含まれない。
- ④ ALTの勧告法にN-アセチルシステインは含まれない。
- ⑤ アミラーゼの勧告法にN-アセチルシステインは含まれない。
第64回 午前41(臨床化学)
血球への移行率が高い薬物はどれか。
- ①ジゴキシン
- ②バルプロ酸
- ③タクロリムス
- ④テオフィリン
- ⑤バンコマイシン
正答: ③タクロリムス
ポイント
薬物治療モニタリング〈TDM〉では血球への分布率により測定検体が異なる。タクロリムスは赤血球内に多く移行するため、血漿や血清でなく全血を検体として測定する。同じカルシニューリン阻害薬のシクロスポリンも全血で測定する。ジゴキシン・テオフィリン・バルプロ酸・バンコマイシンは血球移行率が高くなく、主に血清・血漿で測定する。●全血で測定する薬物=タクロリムス・シクロスポリン(赤血球移行)。●血清・血漿で測定する薬物=ジゴキシン・テオフィリン・バルプロ酸・バンコマイシン・フェニトイン。●TDMの注意点=採血時刻(トラフ値)・蛋白結合率・有効血中濃度域。
選択肢ごとの解説
- ① ジゴキシンは血清で測定する薬物で、血球への移行率は高くない。
- ② バルプロ酸は血清で測定し、血球移行率は高くない。
- ③ 正しい。タクロリムスは赤血球への移行率が高く、全血で測定する。
- ④ テオフィリンは血清で測定し、血球移行率は高くない。
- ⑤ バンコマイシンは血清で測定し、血球移行率は高くない。
第64回 午前42(臨床化学)
骨形成マーカーはどれか。
- ①ペントシジン
- ②デオキシピリジノリン
- ③プロコラーゲンⅢペプチド
- ④骨型アルカリホスファターゼ
- ⑤Ⅰ型コラーゲン架橋C-テロペプチド
正答: ④骨型アルカリホスファターゼ
ポイント
骨型アルカリホスファターゼ〈BAP〉は骨芽細胞が産生する酵素で、骨形成マーカーである。骨吸収マーカーには破骨細胞が分解したコラーゲン由来のデオキシピリジノリンやⅠ型コラーゲン架橋C-テロペプチド〈CTX〉があり、ペントシジンは終末糖化産物で骨質劣化の指標、プロコラーゲンⅢペプチドは肝線維化のマーカーである。骨形成と骨吸収のマーカーの区別が問われる。●骨形成マーカー=骨型アルカリホスファターゼ(BAP)・オステオカルシン・Ⅰ型プロコラーゲンN末端プロペプチド(P1NP)。●骨吸収マーカー=デオキシピリジノリン・Ⅰ型コラーゲン架橋C/N-テロペプチド(CTX・NTX)・酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRACP-5b)。●骨質マーカー=ペントシジン(終末糖化産物)。
選択肢ごとの解説
- ① ペントシジンは終末糖化産物で骨質劣化の指標であり、骨形成マーカーではない。
- ② デオキシピリジノリンは骨吸収マーカーであり、骨形成マーカーではない。
- ③ プロコラーゲンⅢペプチドは肝線維化のマーカーで、骨形成マーカーではない。
- ④ 正しい。骨型アルカリホスファターゼは骨芽細胞由来の骨形成マーカーである。
- ⑤ Ⅰ型コラーゲン架橋C-テロペプチドは骨吸収マーカーであり、骨形成マーカーではない。
第64回 午前43(臨床化学)
低血糖によって上昇するホルモンはどれか。2つ選べ。
- ①アドレナリン
- ②インスリン
- ③グルカゴン
- ④テストステロン
- ⑤バソプレッシン
正答: ①アドレナリン・③グルカゴン
ポイント
低血糖になると血糖を上昇させる方向に働く拮抗(カウンターレギュラトリー)ホルモンが分泌される。代表はグルカゴン・アドレナリン・コルチゾール・成長ホルモンで、グルカゴンとアドレナリンは速やかに分泌され、肝でのグリコーゲン分解や糖新生を促して血糖を上げる。インスリンは血糖を低下させるホルモンで、低血糖時には分泌が抑制される。●血糖を上げるホルモン=グルカゴン・アドレナリン・コルチゾール・成長ホルモン。●血糖を下げるホルモン=インスリン(唯一)。●低血糖時の反応=グリコーゲン分解・糖新生の亢進・インスリン分泌抑制。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。アドレナリンは低血糖時に分泌され、グリコーゲン分解などで血糖を上昇させる。
- ② インスリンは血糖を下げるホルモンで、低血糖時には分泌が抑制されるため上昇しない。
- ③ 正しい。グルカゴンは低血糖時に分泌され、糖新生やグリコーゲン分解で血糖を上昇させる。
- ④ テストステロンは性ホルモンで、低血糖による分泌上昇の主要ホルモンではない。
- ⑤ バソプレッシンは水分調節のホルモンで、低血糖時の血糖上昇ホルモンではない。
第64回 午前44(臨床化学)
急性心筋梗塞の診断に有用なマーカーはどれか。2つ選べ。
- ①アデノシンデアミナーゼ〈ADA〉
- ②心臓型脂肪酸結合蛋白〈H-FABP〉
- ③トロポニンT
- ④脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉
- ⑤プロカルシトニン
正答: ②心臓型脂肪酸結合蛋白〈H-FABP〉・③トロポニンT
ポイント
急性心筋梗塞では心筋壊死に伴い心筋特異的なトロポニンT・トロポニンIや心臓型脂肪酸結合蛋白〈H-FABP〉が血中に上昇する。H-FABPは分子量が小さく発症後数時間と早期から上昇し早期診断に、トロポニンは心筋特異性が高く確定診断に有用である。脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉は心不全、プロカルシトニンは細菌感染・敗血症、アデノシンデアミナーゼ〈ADA〉は結核性胸膜炎などのマーカーで鑑別となる。●心筋傷害マーカー=トロポニンT・I(特異性高)・H-FABP(早期)・CK-MB・ミオグロビン。●心不全マーカー=BNP・NT-proBNP。●感染・炎症マーカー=プロカルシトニン・CRP。●ADAの上昇=結核性胸膜炎・腹膜炎。
選択肢ごとの解説
- ① アデノシンデアミナーゼ〈ADA〉は結核性胸膜炎などのマーカーで、心筋梗塞の指標ではない。
- ② 正しい。心臓型脂肪酸結合蛋白〈H-FABP〉は発症早期から上昇し急性心筋梗塞の早期診断に有用である。
- ③ 正しい。トロポニンTは心筋特異性が高く急性心筋梗塞の診断に有用である。
- ④ 脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉は心不全のマーカーで、心筋梗塞そのものの特異的指標ではない。
- ⑤ プロカルシトニンは細菌感染や敗血症のマーカーで、心筋梗塞の指標ではない。
📋 まとめの表を見る:心筋傷害マーカーの比較(血中出現時期・特異性)
第64回 午前45(病理組織細胞学)
分泌物形成を行うのはどれか。
- ①中心小体
- ②滑面小胞体
- ③リソソーム
- ④ミトコンドリア
- ⑤ゴルジ〈Golgi〉装置
正答: ⑤ゴルジ〈Golgi〉装置
ポイント
ゴルジ装置は小胞体で合成された蛋白を受け取って糖鎖修飾・濃縮し、分泌顆粒として細胞外への分泌物を形成する細胞小器官である。中心小体は細胞分裂時の紡錘体形成、滑面小胞体は脂質合成や解毒、リソソームは加水分解酵素による細胞内消化、ミトコンドリアはATP産生を担う。各小器官の機能の理解が問われる。●分泌・輸送に関与=ゴルジ装置(分泌物形成)・粗面小胞体(蛋白合成)・分泌顆粒。●代謝・産生=ミトコンドリア(ATP)・滑面小胞体(脂質・解毒)。●分解=リソソーム(細胞内消化)・ペルオキシソーム。●分裂・骨格=中心小体(紡錘体)・細胞骨格。
選択肢ごとの解説
- ① 中心小体は細胞分裂時の紡錘体形成に関与し、分泌物形成は行わない。
- ② 滑面小胞体は脂質合成や解毒に関与し、分泌物形成の主体ではない。
- ③ リソソームは加水分解酵素を含み細胞内消化を行い、分泌物形成は行わない。
- ④ ミトコンドリアはATP産生を担い、分泌物形成は行わない。
- ⑤ 正しい。ゴルジ装置は蛋白を修飾・濃縮し分泌物(分泌顆粒)を形成する。
第64回 午前46(病理組織細胞学)
癌抑制遺伝子はどれか。
- ①ras
- ②p53
- ③myc
- ④erb-B2
- ⑤β-catenin
正答: ②p53
ポイント
p53は細胞周期の停止やDNA修復、アポトーシスを誘導してゲノムを守る代表的な癌抑制遺伝子で、その不活化(変異)は多くの悪性腫瘍でみられる。ras・myc・erb-B2(HER2)・β-cateninはいずれも活性化により増殖シグナルや転写を亢進させて発癌に働く癌遺伝子(がん原遺伝子)である。癌抑制遺伝子と癌遺伝子の区別が問われる。●代表的な癌抑制遺伝子=p53・RB(網膜芽細胞腫)・APC(大腸癌)・BRCA1/2(乳癌・卵巣癌)。●代表的な癌遺伝子=ras・myc・erb-B2/HER2(乳癌)・bcr-abl(慢性骨髄性白血病)。●シグナル経路の異常=β-catenin(Wntシグナル)・EGFR(増殖因子受容体)。
選択肢ごとの解説
- ① rasは活性化で増殖シグナルを亢進させる癌遺伝子であり、癌抑制遺伝子ではない。
- ② 正しい。p53は細胞周期停止やアポトーシスを担う代表的な癌抑制遺伝子である。
- ③ mycは転写を介して増殖を促す癌遺伝子であり、癌抑制遺伝子ではない。
- ④ erb-B2(HER2)は増殖因子受容体型の癌遺伝子であり、癌抑制遺伝子ではない。
- ⑤ β-cateninはWntシグナルを介して増殖に働く癌遺伝子で、癌抑制遺伝子ではない。
第64回 午前47(病理組織細胞学)
動脈のH-E染色標本を別に示す。矢印で示すのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k64aA047.e5186da0b3.jpg

- ①石灰
- ②ムコイド
- ③類線維素
- ④アミロイド
- ⑤硝子様物質
正答: ①石灰
ポイント
動脈壁の石灰化(石灰沈着)はヘマトキシリン・エオジン〈H-E〉染色で濃青〜青紫色に染まる無構造物として観察され、メンケベルグ型中膜硬化(中膜の輪状石灰化)などでみられる。矢印はこの石灰沈着を示すと考えられる。アミロイドや硝子様物質は均質好酸性(淡紅色)に染まり、類線維素は壊死性血管炎でみられる好酸性物質で染色性が異なり鑑別となる。●H-Eで好塩基性(青紫)に染まる物質=石灰(カルシウム塩)・核・細菌。●H-Eで好酸性(淡紅色)に染まる物質=アミロイド・硝子様物質・類線維素(フィブリノイド)。●石灰の確認染色=コッサ反応・アリザリンレッドS。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。H-E染色で濃青紫色に染まる無構造物は動脈壁の石灰沈着を示す。
- ② ムコイド(粘液様物質)は青紫に濃染する石灰の像とは染色性が異なる。
- ③ 類線維素は壊死性血管炎でみられる好酸性物質で、好塩基性の石灰沈着とは染色性が異なる。
- ④ アミロイドは均質好酸性に染まる物質で、濃青紫の石灰像とは異なる。
- ⑤ 硝子様物質は均質好酸性に染まり、石灰沈着の染色性とは異なる。
第64回 午前48(病理組織細胞学)
小葉構造を持つのはどれか。
正答: ②肝臓
ポイント
肝臓は中心静脈を中心に肝細胞索が放射状に配列し、周辺にグリソン鞘(門脈・肝動脈・胆管)を伴う肝小葉(古典的小葉)を構造単位としてもつ。脾臓は白脾髄と赤脾髄、副腎は皮質と髄質という別の構造をとり、大脳は皮質と白質、膀胱は移行上皮と平滑筋層からなる中空臓器で小葉構造をもたない。臓器ごとの組織構造単位の理解が問われる。●小葉構造をもつ臓器=肝臓(肝小葉)・肺(肺小葉)・乳腺・唾液腺・膵臓(外分泌部)。●皮質・髄質構造=腎臓・副腎・リンパ節・胸腺。●白脾髄・赤脾髄=脾臓。●皮質・白質=大脳。
選択肢ごとの解説
- ① 大脳は皮質と白質からなり、小葉という構造単位はもたない。
- ② 正しい。肝臓は中心静脈を中心とする肝小葉を構造単位としてもつ。
- ③ 脾臓は白脾髄と赤脾髄からなり、小葉構造はもたない。
- ④ 副腎は皮質と髄質からなり、小葉構造はもたない。
- ⑤ 膀胱は移行上皮と平滑筋層からなる中空臓器で、小葉構造はもたない。
第64回 午前49(病理組織細胞学)
健常成人の臓器と重量の組合せで誤っているのはどれか。
- ①脳 — 1,200 g
- ②心臓 — 300 g
- ③肝臓 — 300 g
- ④脾臓 — 120 g
- ⑤左腎臓 — 120 g
正答: ③肝臓 — 300 g
ポイント
健常成人の臓器重量の目安は、脳が約1,200〜1,400g、心臓が約250〜350g、肝臓が約1,200〜1,500g、脾臓が約100〜120g、腎臓は左右それぞれ約120〜150gである。肝臓は体内最大の実質臓器で約1.2〜1.5kgあり、300gとするのは小さすぎて誤りである。臓器重量の概数の理解が問われる。●実質臓器の概略重量=肝臓1,200〜1,500g・脳1,200〜1,400g・心臓250〜350g・腎臓(片側)120〜150g・脾臓100〜120g。●最大の実質臓器=肝臓。●体表最大の臓器=皮膚。
選択肢ごとの解説
- ① 脳の重量は約1,200〜1,400gで、1,200gは妥当な範囲である。
- ② 心臓の重量は約250〜350gで、300gは妥当である。
- ③ 誤り。肝臓は約1,200〜1,500gあり、300gは小さすぎて妥当でない。
- ④ 脾臓の重量は約100〜120gで、120gは妥当である。
- ⑤ 腎臓は片側約120〜150gで、左腎120gは妥当な範囲である。
📋 まとめの表を見る:健常成人の主要臓器の大きさと重量(剖検時の概数)
剖検時の目安値。年齢・性差・個体差により変動する。肝臓は体内最大の実質臓器(約1,000~1,300g)。
第64回 午前50(病理組織細胞学)
脱灰法の中和に用いる試薬はどれか。
- ①アンモニア
- ②エタノール
- ③炭酸リチウム
- ④硫酸ナトリウム
- ⑤硫酸アルミニウム
正答: ④硫酸ナトリウム
ポイント
酸を用いた脱灰の後は組織内に残った酸を中和・洗浄してから後続の操作へ進む必要があり、中和が不十分だと染色性が損なわれる。中和には弱アルカリの試薬が用いられ、本設問では硫酸ナトリウムが正答として扱われている。脱灰は骨など石灰化組織を切片化するために行う前処理で、酸脱灰のほかキレート脱灰(EDTA)がある。●脱灰法の種類=酸脱灰(硝酸・ギ酸・塩酸)・キレート脱灰(EDTA)・電気脱灰。●脱灰後の処理=残存酸の中和・水洗。●脱灰の確認=化学的判定・X線(軟X線)による石灰残存の確認。
選択肢ごとの解説
- ① アンモニアはアルカリだが、本設問では脱灰後の中和に用いる試薬として選ばれていない。
- ② エタノールは脱水に用いる試薬で、脱灰の中和には用いない。
- ③ 炭酸リチウムは弱アルカリで中和に用いられることがあるが、本設問の正答ではない。
- ④ 正しい。本設問では脱灰後の中和に用いる試薬として硫酸ナトリウムが正答とされている。
- ⑤ 硫酸アルミニウムは媒染などに用いる試薬で、脱灰後の中和の試薬ではない。