第65回(2019) 臨床検査技師国家試験 午後1〜50|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第65回 午後1(臨床検査総論)
全血を室温で放置した場合、時間とともに低下するのはどれか。
正答: ⑤グルコース
ポイント
全血を分離せず室温で放置すると、赤血球・白血球の解糖系がグルコースを消費し続けるため、グルコース濃度は時間とともに低下する(目安として1時間あたり数%程度)。一方、カリウム・LD(乳酸脱水素酵素)・ASTは赤血球内に高濃度で含まれるため、放置中の漏出や溶血で逆に上昇しやすく、血清鉄も室温放置で大きく低下する成分ではない。正確な値を得るには速やかに血清・血漿を分離するか、フッ化ナトリウムなどの解糖阻止剤入り採血管を用いる。●採血後に上昇しやすい項目=カリウム・無機リン・LD・AST・乳酸(血球からの逸脱・溶血)。●採血後に低下しやすい項目=グルコース(解糖)・血中ガスのpH・酸素分圧。●解糖阻止=フッ化ナトリウム+EDTAなどの専用採血管。
選択肢ごとの解説
- ① LD(乳酸脱水素酵素)は赤血球内に高濃度で含まれ、放置中の漏出・溶血でむしろ上昇する。
- ② AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)も赤血球内に存在し、溶血により上昇する側で低下はしない。
- ③ 血清鉄は室温放置で明らかに低下する成分ではない。
- ④ カリウムは赤血球内に高濃度で存在し、放置・溶血で血清側へ漏出し上昇する。
- ⑤ 正しい。血球の解糖系がグルコースを消費し続けるため、時間とともに低下する。
第65回 午後2(臨床検査総論)
試験紙法で尿蛋白が陽性のとき原因として誤っているのはどれか。
- ①妊娠
- ②発熱
- ③強酸性尿
- ④激しい運動後
- ⑤起立性腎うっ血
正答: ③強酸性尿
ポイント
試験紙法の尿蛋白はpH指示薬の蛋白誤差(蛋白存在下で指示薬の変色域がずれる現象)を利用するため、アルカリ性尿で偽陽性、強酸性尿では試験紙の緩衝能を超えて偽陰性に傾く。したがって強酸性尿は陽性化の原因にはならない。妊娠・発熱・激しい運動後・起立性(体位性)のうっ血では生理的・機能的に蛋白が出現しうる。試験紙は主にアルブミンを検出し、Bence Jones蛋白などの低分子蛋白は検出しにくい点にも注意する。●生理的(良性)蛋白尿=起立性(体位性)・運動性・発熱性・寒冷時。●偽陽性の要因=アルカリ性尿・第四級アンモニウム(消毒薬)混入・血尿。●偽陰性の要因=強酸性尿・希釈尿・アルブミン以外の蛋白(Bence Jones蛋白)。
選択肢ごとの解説
- ① 妊娠では腎血流増加などで生理的に蛋白が陽性化しうる。
- ② 発熱時には機能的(良性)蛋白尿として陽性となることがある。
- ③ 誤り。強酸性尿は試験紙の緩衝能を超えて偽陰性に傾く要因であり、陽性の原因にはならない。
- ④ 激しい運動後には一過性の運動性蛋白尿が出現しうる。
- ⑤ 起立性(体位性)のうっ血では立位で蛋白が陽性化しうる。
第65回 午後3(臨床検査総論)
昆虫で媒介されないのはどれか。
- ①マラリア
- ②フィラリア症
- ③トリコモナス症
- ④トリパノソーマ症
- ⑤リーシュマニア症
正答: ③トリコモナス症
ポイント
マラリア(ハマダラカ)、フィラリア症(蚊)、トリパノソーマ症(ツェツェバエ・サシガメ)、リーシュマニア症(サシチョウバエ)は、いずれも吸血性の節足動物が媒介する原虫・線虫感染症である。これに対しトリコモナス症は腟トリコモナスによる性感染症で、ヒトからヒトへ直接伝播し、昆虫(節足動物)媒介ではない。媒介動物の有無は原虫疾患の鑑別の手がかりとなる。●蚊媒介=マラリア・フィラリア症・日本脳炎・デング熱。●ハエ・ブユ類媒介=アフリカトリパノソーマ症(ツェツェバエ)・リーシュマニア症(サシチョウバエ)・オンコセルカ症(ブユ)。●サシガメ媒介=シャーガス病(アメリカトリパノソーマ症)。●直接伝播(非昆虫)=トリコモナス症・赤痢アメーバ症・ジアルジア症。
選択肢ごとの解説
- ① マラリアはハマダラカによって媒介される。
- ② フィラリア症は蚊によって媒介される。
- ③ 正しい。トリコモナス症は性感染症で直接伝播し、昆虫媒介ではない。
- ④ トリパノソーマ症はツェツェバエ(アフリカ型)やサシガメ(アメリカ型)が媒介する。
- ⑤ リーシュマニア症はサシチョウバエが媒介する。
第65回 午後4(臨床検査総論)
真核生物のrRNAでないのはどれか。
- ①5S rRNA
- ②5.8S rRNA
- ③16S rRNA
- ④18S rRNA
- ⑤28S rRNA
正答: ③16S rRNA
ポイント
真核生物の細胞質リボソームは、60S大サブユニットに28S・5.8S・5S rRNA、40S小サブユニットに18S rRNAを含む。16S rRNAは原核生物の30S小サブユニットの構成成分であり、真核細胞質には存在しない(ただし真核生物のミトコンドリア・葉緑体には原核型のrRNAが存在する)。16S rRNAは塩基配列が保存的で、細菌の系統解析・同定に広く用いられる。●真核生物の細胞質rRNA=28S・5.8S・5S(60S)、18S(40S)。●原核生物のrRNA=23S・5S(50S)、16S(30S)。●臨床応用=16S rRNA遺伝子解析による細菌同定、18S/ITS領域による真菌同定。
選択肢ごとの解説
- ① 5S rRNAは真核生物の60S大サブユニットに含まれる。
- ② 5.8S rRNAは真核生物の60S大サブユニットに含まれる。
- ③ 誤り。16S rRNAは原核生物の30S小サブユニットの構成成分で、真核細胞質には存在しない。
- ④ 18S rRNAは真核生物の40S小サブユニットに含まれる。
- ⑤ 28S rRNAは真核生物の60S大サブユニットに含まれる。
第65回 午後5(臨床検査総論)
ベッドのシーツに付着していた虫体(体長0.4 mm)の写真を別に示す。この虫が引き起こすのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB005.dac5177495.jpg

- ①疥癬
- ②ペスト
- ③発疹チフス
- ④ツツガムシ病
- ⑤重症熱性血小板減少症候群
正答: ①疥癬
ポイント
体長0.4mm程度の微小なダニであるヒゼンダニ(疥癬虫)は皮膚角質層にトンネル(疥癬トンネル)を掘って寄生し、疥癬を引き起こす。指間・手関節屈側・陰部などの激しいかゆみと、線状の疥癬トンネルが特徴で、寝具や皮膚の直接接触で伝播する。写真の微小なダニ像から疥癬と判断する。●ダニ媒介・寄生=疥癬(ヒゼンダニ・寄生)、ツツガムシ病(ツツガムシ幼虫・媒介)、日本紅斑熱(マダニ・媒介)、重症熱性血小板減少症候群(マダニ・媒介)。●ノミ媒介=ペスト・発疹熱。●シラミ媒介=発疹チフス・回帰熱。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。微小なヒゼンダニ(疥癬虫)が角質層に寄生し疥癬を起こす。
- ② ペストはノミが媒介し、起炎菌はペスト菌である。
- ③ 発疹チフスはシラミが媒介するリケッチア感染症である。
- ④ ツツガムシ病はツツガムシ(ダニ幼虫)が媒介するリケッチア感染症で、体長0.4mmの寄生ダニ像ではない。
- ⑤ 重症熱性血小板減少症候群はマダニが媒介するウイルス感染症である。
第65回 午後6(臨床検査総論)
健常者の脳脊髄液中の値が新生児で成人より高いのはどれか。
正答: ③蛋白・④細胞数
ポイント
新生児の脳脊髄液は血液脳関門が未熟なことを反映し、成人に比べて蛋白濃度が高く(新生児では数十〜100mg/dL前後と高め)、細胞数(主に単核球)もやや多い傾向がある。糖は血糖値に依存して変動し、新生児で成人より特に高いわけではなく、クロールやIgGが新生児で特に高値を示すこともない。発育とともに蛋白・細胞数は成人値に近づく。●新生児で高い髄液所見=蛋白・細胞数(血液脳関門の未熟性)。●髄液糖=血糖の約2/3が正常、細菌性髄膜炎で低下。●髄液蛋白増加=髄膜炎・Guillain-Barré症候群(蛋白細胞解離)・腫瘍。
選択肢ごとの解説
- ① 糖は血糖値を反映し、新生児で成人より特に高いわけではない。
- ② IgG(免疫グロブリンG)は新生児で成人より高値を示すものではない。
- ③ 正しい。新生児では血液脳関門が未熟で髄液蛋白が高値となる。
- ④ 正しい。新生児では髄液細胞数が成人より多い傾向がある。
- ⑤ クロールは新生児で特に高値を示す項目ではない。
第65回 午後7(臨床検査総論)
腹水検査で滲出液を示唆する所見はどれか。
- ①LD 140 U/L
- ②比重1.014
- ③細胞数 15個/μL
- ④蛋白濃度 4.5 g/dL
- ⑤細胞成分中皮細胞主体
正答: ④蛋白濃度 4.5 g/dL
ポイント
滲出液は炎症や悪性腫瘍による血管透過性亢進で生じ、蛋白濃度が高く(目安3g/dL以上または血清蛋白比0.5超)、比重が高く(1.018超)、LD(乳酸脱水素酵素)も高値で細胞数が多い。提示の蛋白濃度4.5g/dLは高値で滲出液を示唆する。漏出液は門脈圧亢進(肝硬変)や低アルブミン血症(ネフローゼ)で生じ、蛋白が低く比重・LDが低く中皮細胞主体となる。LightやRivaltaの基準で鑑別する。●滲出液=蛋白高値・比重高値・LD高値・細胞数多い(癌・炎症・結核)。●漏出液=蛋白低値・比重低値・中皮細胞主体(肝硬変・心不全・ネフローゼ)。●Lightの基準=胸水/血清の蛋白比・LD比、LD絶対値で滲出液を判定。
選択肢ごとの解説
- ① LD 140U/Lは低めで、滲出液というより漏出液寄りの所見である。
- ② 比重1.014は低く、漏出液を示唆する所見である。
- ③ 細胞数15個/μLは少なく、滲出液を強く示唆しない。
- ④ 正しい。蛋白濃度4.5g/dLと高値で、滲出液を示唆する所見である。
- ⑤ 中皮細胞主体の細胞所見は漏出液で多くみられる。
第65回 午後8(臨床検査総論)
蛋白漏出性胃腸症の診断に有用な糞便検査はどれか。
- ①pH
- ②ヘモグロビン
- ③カルプロテクチン
- ④トランスフェリン
- ⑤α₁-アンチトリプシン
正答: ⑤α₁-アンチトリプシン
ポイント
蛋白漏出性胃腸症では血漿蛋白が消化管粘膜から管腔内へ漏出し、低蛋白血症・浮腫を来す。α₁-アンチトリプシンは血中濃度が高く分子量がアルブミンに近いうえ消化管内で分解されにくいため、糞便中濃度やα₁-アンチトリプシンクリアランスが蛋白漏出の指標として有用である。ヘモグロビン・トランスフェリンは消化管出血、カルプロテクチンは腸管の好中球性炎症の指標である。●蛋白漏出の指標=糞便α₁-アンチトリプシン・クリアランス、⁹⁹ᵐTc標識アルブミンシンチ。●消化管出血の指標=便潜血(ヘモグロビン)、便中トランスフェリン。●腸管炎症の指標=便中カルプロテクチン・ラクトフェリン。
選択肢ごとの解説
- ① 糞便pHは蛋白漏出の評価には用いられない。
- ② ヘモグロビンは消化管出血の検出に用いる便潜血の指標である。
- ③ カルプロテクチンは好中球由来で腸管炎症の指標である。
- ④ トランスフェリンは消化管出血(主に上部)の指標として用いられる。
- ⑤ 正しい。α₁-アンチトリプシンは消化管内で分解されにくく蛋白漏出の指標となる。
第65回 午後9(臨床検査総論)
PCR産物のアガロースゲル電気泳動で非特異的なバンドが見られた場合、対応法として試みるべきなのはどれか。
- ①サイクル数を増やす。
- ②Mg²⁺の濃度を上げる。
- ③サンプルの量を増やす。
- ④プライマーの量を増やす。
- ⑤アニーリング温度を上げる。
正答: ⑤アニーリング温度を上げる。
ポイント
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)で非特異的バンドが出る主因はプライマーのミスアニーリング(目的外配列への結合)である。アニーリング温度を上げるとプライマーの結合特異性が増し、非特異的増幅を抑制できる。逆にサイクル数・鋳型量・プライマー量・Mg²⁺(マグネシウムイオン)濃度を上げると、いずれも非特異反応やプライマーダイマーを助長しやすい。●非特異増幅の対策=アニーリング温度を上げる・プライマー設計の見直し・タッチダウンPCR・ホットスタート酵素。●増幅が不足するときの対策=アニーリング温度を下げる・Mg²⁺やサイクル数を増やす。●プライマーダイマー対策=プライマー濃度低減・3'末端の相補性回避。
選択肢ごとの解説
- ① サイクル数を増やすと非特異産物がさらに蓄積しやすい。
- ② Mg²⁺(マグネシウムイオン)濃度を上げるとポリメラーゼ活性が増し非特異増幅が助長される。
- ③ サンプル(鋳型)量を増やすと非特異反応が増えやすい。
- ④ プライマー量を増やすとプライマーダイマーや非特異増幅が増えやすい。
- ⑤ 正しい。アニーリング温度を上げると結合特異性が高まり非特異バンドを抑制できる。
第65回 午後10(臨床検査総論)
ヒトの減数分裂の接合期に生じる染色体の変化で正しいのはどれか。
- ①染色体数が半減する。
- ②相同染色体が対合する。
- ③凝縮し長い糸状に変化する。
- ④相同染色体間の交差が生じる。
- ⑤キアズマが明瞭に観察される。
正答: ②相同染色体が対合する。
ポイント
減数第一分裂前期は細糸期・接合期(合糸期)・太糸期・複糸期・移動期に分けられる。このうち接合期は相同染色体が対合(シナプシス)してシナプトネマ複合体を形成する時期である。相同染色体間の交差(乗換え)は次の太糸期に生じ、その結果生じるキアズマは複糸期に明瞭に観察される。染色体数の半減は第一分裂の終了時に完了する。●減数第一分裂前期の順序=細糸期(凝縮開始)→接合期(対合)→太糸期(交差)→複糸期(キアズマ)→移動期。●減数分裂全体=第一分裂で相同染色体が分離し半数化、第二分裂で姉妹染色分体が分離。●意義=遺伝的多様性の創出(交差・独立組換え)。
選択肢ごとの解説
- ① 染色体数の半減は接合期ではなく第一分裂の終了時に生じる。
- ② 正しい。接合期は相同染色体が対合(シナプシス)する時期である。
- ③ 染色体は前期を通じて凝縮していく時期であり、長い糸状になるのは細糸期より前である。
- ④ 相同染色体間の交差は接合後の太糸期に生じる。
- ⑤ キアズマが明瞭に観察されるのは複糸期である。
第65回 午後11(臨床検査医学総論)
高尿酸血症について正しいのはどれか。
- ①偽痛風と関連する。
- ②尿管結石の原因となる。
- ③男性に比べて女性に多い。
- ④診断基準は9 mg/dL以上である。
- ⑤尿酸排泄低下型に比べて尿酸産生過剰型が多い。
正答: ②尿管結石の原因となる。
ポイント
高尿酸血症は血清尿酸値7.0mg/dLを超える状態と定義され、尿酸の溶解度を反映する。尿中で尿酸が過飽和となると尿酸結石(尿管結石)の原因となり、女性より男性に多い。痛風と関連するが、偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶沈着による別の病態である。病型は尿酸産生過剰型より尿酸排泄低下型が多い。●高尿酸血症の病型=尿酸排泄低下型(最多)・尿酸産生過剰型・混合型。●合併症=痛風関節炎・尿酸結石・痛風腎。●結晶性関節症の鑑別=痛風(尿酸ナトリウム結晶・負の複屈折)、偽痛風(ピロリン酸カルシウム結晶・正の複屈折)。
選択肢ごとの解説
- ① 偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶沈着症で、高尿酸血症とは別の病態である。
- ② 正しい。尿中尿酸の過飽和により尿酸結石(尿管結石)の原因となる。
- ③ 高尿酸血症は女性より男性に多い。
- ④ 診断基準は7.0mg/dLを超える値であり、単に「mg/dL以上」とする記述は不正確である。
- ⑤ 病型は尿酸産生過剰型より尿酸排泄低下型が多い。
第65回 午後12(臨床検査医学総論)
急性心筋梗塞の診断に用いられないのはどれか。
- ①CK-MB
- ②ミオグロビン
- ③心筋トロポニンT〈cTnT〉
- ④心臓型脂肪酸結合蛋白〈H-FABP〉
- ⑤脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉
正答: ⑤脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉
ポイント
急性心筋梗塞の診断には心筋傷害を反映するマーカーを用いる。心筋トロポニンT(cTnT)は心筋特異性が最も高く中心的指標であり、CK-MB(クレアチンキナーゼMB分画)・ミオグロビン・心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)は早期上昇する補助指標である。BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心室への容量・圧負荷で分泌され心不全の指標であって、心筋梗塞そのものの診断マーカーではない。●心筋傷害マーカー=心筋トロポニンT/I(高特異・高感度)、CK-MB、ミオグロビン、H-FABP(早期上昇)。●心不全マーカー=BNP・NT-proBNP。●上昇の時間経過=ミオグロビン/H-FABPが最早、トロポニンは数時間〜長期間持続。
選択肢ごとの解説
- ① CK-MB(クレアチンキナーゼMB分画)は心筋由来で心筋梗塞の診断に用いられる。
- ② ミオグロビンは早期に上昇し心筋梗塞の補助指標となる。
- ③ 心筋トロポニンT(cTnT)は心筋特異性が高く梗塞診断の中心的指標である。
- ④ H-FABP(心臓型脂肪酸結合蛋白)は早期上昇する心筋梗塞の補助マーカーである。
- ⑤ 誤り。BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心不全(心室負荷)の指標であり、心筋梗塞そのものの診断には用いない。
📋 まとめの表を見る:急性心筋梗塞の心筋バイオマーカーの経時変化
ALP(アルカリホスファターゼ)は心筋梗塞では上昇しない。BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)は心不全のマーカーであり、心筋梗塞診断には用いない。
第65回 午後13(臨床検査医学総論)
疾患と検査所見の組合せで正しいのはどれか。
- ①腎性貧血 — 赤血球浸透圧抵抗性減弱
- ②サラセミア — 直接Coombs試験陽性
- ③遺伝性球状赤血球症 — HbF高値
- ④自己免疫性溶血性貧血 — 血清エリスロポエチン低下
- ⑤発作性夜間ヘモグロビン尿症 — 末梢血球細胞表面CD55欠損
正答: ⑤発作性夜間ヘモグロビン尿症 — 末梢血球細胞表面CD55欠損
ポイント
発作性夜間ヘモグロビン尿症はPIGA遺伝子の後天的変異により、GPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)アンカー型膜蛋白であるCD55・CD59が血球膜表面から欠損し、補体制御が失われて血管内溶血を来す。腎性貧血はエリスロポエチン産生低下、遺伝性球状赤血球症は赤血球浸透圧抵抗の減弱、自己免疫性溶血性貧血は直接Coombs(クームス)試験陽性が正しい対応である。サラセミアは直接Coombs陰性でグロビン合成異常による貧血である。●溶血性貧血のマーカー=間接ビリルビン上昇・LD上昇・ハプトグロビン低下・網状赤血球増加。●発作性夜間ヘモグロビン尿症=CD55/CD59欠損(フローサイトメトリで証明)。●遺伝性球状赤血球症=浸透圧抵抗減弱・EMA結合試験低下。●自己免疫性溶血性貧血=直接Coombs陽性。
選択肢ごとの解説
- ① 腎性貧血は浸透圧抵抗とは無関係で、エリスロポエチン産生低下が本態である。
- ② サラセミアは直接Coombs(クームス)試験陰性で、グロビン合成異常による貧血である。
- ③ 遺伝性球状赤血球症は浸透圧抵抗減弱が特徴で、HbF(胎児ヘモグロビン)高値とは結びつかない。
- ④ 自己免疫性溶血性貧血では貧血に反応してエリスロポエチンはむしろ上昇する。
- ⑤ 正しい。発作性夜間ヘモグロビン尿症ではCD55(およびCD59)が血球膜表面から欠損する。
📋 まとめの表を見る:溶血性貧血の鑑別所見
PNHはPIGA遺伝子の後天的変異によりGPIアンカー型膜蛋白(CD55・CD59)が欠損し、補体制御を失って血管内溶血を来す。
第65回 午後14(臨床検査医学総論)
性染色体異常を伴うのはどれか。2つ選べ。
- ①Angelman症候群
- ②DiGeorge症候群
- ③Down症候群
- ④Klinefelter症候群
- ⑤Turner症候群
正答: ④Klinefelter症候群・⑤Turner症候群
ポイント
Klinefelter(クラインフェルター)症候群は47,XXYで男性に過剰なX染色体を持つ性染色体異常、Turner(ターナー)症候群は45,Xで女性のX染色体が1本欠失する性染色体異常である。Down(ダウン)症候群は21トリソミー、Angelman(アンジェルマン)症候群は15番染色体(15q11-13)、DiGeorge(ディジョージ)症候群は22q11.2欠失で、いずれも常染色体の異常である。●性染色体異常=Klinefelter症候群(47,XXY)・Turner症候群(45,X)・トリプルX症候群(47,XXX)。●常染色体数的異常=Down症候群(21トリソミー)・Edwards症候群(18トリソミー)・Patau症候群(13トリソミー)。●微細欠失症候群=Angelman/Prader-Willi(15q)・DiGeorge(22q11.2)。
選択肢ごとの解説
- ① Angelman(アンジェルマン)症候群は15番染色体(15q11-13)の異常で常染色体異常である。
- ② DiGeorge(ディジョージ)症候群は22q11.2欠失による常染色体異常である。
- ③ Down(ダウン)症候群は21トリソミーで常染色体異常である。
- ④ 正しい。Klinefelter(クラインフェルター)症候群は47,XXYで性染色体異常を伴う。
- ⑤ 正しい。Turner(ターナー)症候群は45,Xで性染色体異常を伴う。
📋 まとめの表を見る:常染色体トリソミーと性染色体異常症の核型・発生頻度
Turner症候群・Klinefelter症候群は性染色体(X染色体)の数的異常。一方、Angelman症候群(15番染色体長腕の欠失など)やDiGeorge症候群(22番染色体長腕11.2の微細欠失)は常染色体の構造異常(微細欠失症候群)であり、トリソミーや性染色体異常とは異なる分類である。
第65回 午後15(臨床検査医学総論)
自己免疫疾患でないのはどれか。
- ①悪性貧血
- ②皮膚筋炎
- ③重症筋無力症
- ④慢性肉芽腫症
- ⑤慢性甲状腺炎〈橋本病〉
正答: ④慢性肉芽腫症
ポイント
悪性貧血(抗内因子抗体・抗胃壁細胞抗体)、皮膚筋炎(自己免疫性炎症性筋疾患)、重症筋無力症(抗アセチルコリン受容体抗体)、慢性甲状腺炎(橋本病、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体など)は、いずれも自己抗体や自己反応性免疫が関与する自己免疫疾患である。慢性肉芽腫症は好中球・マクロファージのNADPHオキシダーゼ欠損による先天性の食細胞機能異常症で、自己免疫疾患ではない。●自己抗体による疾患=悪性貧血・重症筋無力症・橋本病・Basedow病・全身性エリテマトーデス。●先天性食細胞機能異常=慢性肉芽腫症(NADPHオキシダーゼ欠損)・白血球接着不全症・Chédiak-Higashi症候群。●自己抗体の対応=重症筋無力症(抗AChR抗体)・橋本病(抗TPO/抗Tg抗体)・悪性貧血(抗内因子抗体)。
選択肢ごとの解説
- ① 悪性貧血は抗内因子抗体などによる自己免疫性胃炎を背景とする。
- ② 皮膚筋炎は自己免疫機序による炎症性筋疾患である。
- ③ 重症筋無力症は抗アセチルコリン受容体抗体による自己免疫疾患である。
- ④ 誤り。慢性肉芽腫症は好中球の殺菌能(NADPHオキシダーゼ)欠損による先天性疾患で、自己免疫疾患ではない。
- ⑤ 橋本病は抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体などによる自己免疫性甲状腺炎である。
📋 まとめの表を見る:自己免疫疾患と紛らわしい非自己免疫疾患の鑑別
自己免疫疾患は自己の正常な細胞・組織に対する免疫反応で障害が生じる疾患群。慢性肉芽腫症やDuchenne型筋ジストロフィーのように『免疫が関与するようにみえて実は遺伝子異常・酵素欠損が原因』の疾患や、Alzheimer病・Creutzfeldt-Jakob病・進行性多巣性白質脳症・ALSのように『別の神経疾患』が、自己免疫疾患を選ばせる設問の紛らわしい選択肢として繰り返し出題されている。
第65回 午後16(臨床生理学)
心電図の波形とその成り立ちの組合せで正しいのはどれか。
- ①P波 — 心房の再分極
- ②QRS波 — 心房の脱分極
- ③T波 — 心室の再分極
- ④PR時間 — 洞房伝導時間
- ⑤QT時間 — 電気的拡張時間
正答: ③T波 — 心室の再分極
ポイント
心電図のP波は心房の脱分極、QRS波は心室の脱分極、T波は心室の再分極に対応する。心房の再分極はQRS波に埋もれて通常は記録されない。PR時間は房室伝導時間(P波の開始からQRS波の開始まで、すなわち心房の興奮開始から心室の興奮開始まで)、QT時間は心室の電気的収縮(脱分極開始から再分極終了まで)を表す。●波形と電気現象=P波(心房脱分極)・QRS波(心室脱分極)・T波(心室再分極)。●時間間隔=PR時間(房室伝導)・QRS幅(心室内伝導)・QT時間(心室の電気的収縮)。●異常QT=QT延長(薬剤・電解質異常で致死性不整脈)・QT短縮。
選択肢ごとの解説
- ① P波は心房の脱分極を表し、再分極ではない。
- ② QRS波は心室の脱分極を表し、心房ではない。
- ③ 正しい。T波は心室の再分極を表す。
- ④ PR時間は房室伝導時間を表し、洞房伝導時間ではない。
- ⑤ QT時間は心室の電気的収縮時間を表し、拡張時間ではない。
📋 まとめの表を見る:心電図の各波形・時間と成因
心房の再分極(Ta波)は振幅が小さくQRS波に重なるため、通常の心電図には明瞭に現れない。
第65回 午後17(臨床生理学)
心電図を別に示す。梗塞部位はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB017.b1233d0dec.jpg

正答: ③側壁
ポイント
心電図の梗塞部位は異常Q波やST上昇を示す誘導から推定する。側壁梗塞ではI・aVL・V5・V6に変化が現れる。本図ではとくにI・aVLのST上昇が目立ち、下壁誘導のST低下はその鏡像変化と考えられるため、側壁梗塞を選ぶ。前壁中隔はV1〜V4、下壁はII・III・aVF、後壁はV7〜V9や前胸部誘導(V1〜V3)の鏡像変化に対応する。●心電図誘導と梗塞部位=前壁中隔(V1-V4)・側壁(I・aVL・V5・V6)・下壁(II・III・aVF)・後壁(V7-V9、前胸部の鏡像)。●責任冠動脈の目安=前壁中隔(左前下行枝)・側壁(左回旋枝)・下壁(右冠動脈または左回旋枝)。●急性期所見=ST上昇・異常Q波・冠性T波。
選択肢ごとの解説
- ① 前壁梗塞はV3〜V4を中心とする変化で本図とは異なる。
- ② 前壁中隔梗塞はV1〜V4の変化で本図とは異なる。
- ③ 正しい。本図ではI・aVLの側壁誘導のST上昇が目立つ。下壁誘導のST低下は鏡像変化として読み、側壁梗塞と判断する。
- ④ 下壁梗塞はII・III・aVFの変化で本図とは異なる。
- ⑤ 後壁梗塞はV7〜V9や前胸部誘導の鏡像変化で本図とは異なる。
第65回 午後18(臨床生理学)
Holter心電図検査で正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①胸骨上への電極装着は避ける。
- ②単極誘導が用いられる。
- ③NASA誘導ではCM5誘導よりP波がみやすい。
- ④記録中のSTは体位により変化しない。
- ⑤狭心症の診断に有用である。
正答: ③NASA誘導ではCM5誘導よりP波がみやすい。・⑤狭心症の診断に有用である。
ポイント
Holter(ホルター)心電図は携帯型記録器で双極誘導(NASA・CM5など)を用いて長時間記録する検査である。NASA誘導は胸骨上部に電極を置きP波が見やすく不整脈解析に適し、CM5誘導はST変化(虚血)の検出に優れる。記録中のST変化や不整脈の捕捉により狭心症の診断に有用である。●Holter心電図の主な誘導=NASA誘導(P波・不整脈)・CM5誘導(ST・虚血)。●適応=発作性不整脈・狭心症(ST変化)・失神精査・ペースメーカ評価。●関連検査=携帯型心電計・イベントレコーダ・植込み型ループレコーダ。
選択肢ごとの解説
- ① Holter心電図ではNASA誘導など胸骨上への電極装着を用いることがあり、避ける必要はない。
- ② Holter心電図は双極誘導が用いられ、単極誘導ではない。
- ③ 正しい。NASA誘導はCM5誘導よりP波が見やすい。
- ④ ST(STセグメント)は体位や虚血により変化するため、変化しないという記述は誤りである。
- ⑤ 正しい。ST変化や発作の捕捉により狭心症の診断に有用である。
📋 まとめの表を見る:ホルター心電図の代表的誘導法
双極誘導・2チャンネル収録が一般的で、NASA誘導とCM5(またはCC5)誘導を組み合わせて記録することが多い。行動記録(症状・行動の記録)は解析に必要。
第65回 午後19(臨床生理学)
脈波伝播速度〈PWV〉で正しいのはどれか。
- ①加齢により減少する。
- ②血圧の影響は受けない。
- ③男性と比べ女性が高値を示す。
- ④上下肢にカフを巻いて行う検査法がある。
- ⑤低値のとき心血管疾患発症リスクが高まる。
正答: ④上下肢にカフを巻いて行う検査法がある。
ポイント
脈波伝播速度(PWV)は動脈の硬さ(スティフネス)を反映する指標で、動脈壁が硬いほど脈波が速く伝わり高値となる。加齢や血圧上昇で増加し、高値は心血管疾患の発症リスク上昇を示す。上下肢にカフを巻いて測定する上腕足首間脈波伝播速度(baPWV)が広く用いられる。血圧の影響を受ける点に注意が必要である。●動脈硬化指標=脈波伝播速度(PWV/baPWV)・心臓足首血管指数(CAVI、血圧の影響を受けにくい)・足関節上腕血圧比(ABI、閉塞性動脈疾患)。●PWVを上げる因子=加齢・高血圧・動脈硬化。●臨床的意義=高値で心血管イベントリスク上昇。
選択肢ごとの解説
- ① PWVは加齢により動脈硬化が進み増加する。
- ② PWVは血圧の影響を受け、血圧上昇で高値となる。
- ③ PWVは一般に女性より男性で高値を示す傾向がある。
- ④ 正しい。上下肢にカフを巻いて測定する上腕足首間脈波伝播速度(baPWV)法がある。
- ⑤ PWVは高値のとき心血管疾患リスクが高まり、低値ではない。
第65回 午後20(臨床生理学)
検査項目と測定方法の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①残気量 — スパイロメトリ
- ②機能的残気量 — 1回呼吸法
- ③ピークフロー — フローボリューム曲線
- ④肺拡散能〈DLCO〉 — ガス希釈法
- ⑤クロージングボリューム — 単一窒素呼出曲線
正答: ③ピークフロー — フローボリューム曲線・⑤クロージングボリューム — 単一窒素呼出曲線
ポイント
残気量・機能的残気量はスパイロメトリでは直接測定できず、ガス希釈法(ヘリウム閉鎖回路法・窒素洗い出し法)や体プレチスモグラフで求める。ピークフロー(最大呼気流量)はフローボリューム曲線の頂点として求められ、クロージングボリュームは単一窒素呼出曲線(第IV相の立ち上がり)から求める。肺拡散能(DLCO)は一酸化炭素を用いた測定法であって、単なるガス希釈法ではない。●スパイロメトリで測れない量=残気量・機能的残気量・全肺気量(ガス希釈法・体プレチスモグラフを要する)。●フローボリューム曲線で評価=ピークフロー・努力性肺活量・1秒量。●特殊検査=クロージングボリューム(単一窒素呼出曲線)・肺拡散能DLCO(一酸化炭素)。
選択肢ごとの解説
- ① 残気量はスパイロメトリでは測定できず、ガス希釈法などを要する。
- ② 機能的残気量はガス希釈法や体プレチスモグラフで測定し、1回呼吸法とは限らない。
- ③ 正しい。ピークフローはフローボリューム曲線の最大呼気流量として求められる。
- ④ 肺拡散能(DLCO)は一酸化炭素を用いる測定法で、単なるガス希釈法ではない。
- ⑤ 正しい。クロージングボリュームは単一窒素呼出曲線から求める。
📋 まとめの表を見る:呼吸機能検査:測定項目と測定方法
第65回 午後21(臨床生理学)
フローボリューム曲線を別に示す。肺線維症はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB021.1ec4708d04.jpg

正答: ③C
ポイント
Cは呼出量の幅が約2 Lと小さい一方、ピークフローは比較的保たれ、横幅の狭い曲線を示す。肺線維症による肺活量低下を反映する拘束性換気障害のパターンである。
●A=正常に近い曲線。
●B=吸気側の流量制限が目立つ。
●C=容量が小さい拘束性パターン。
●D=呼気下降脚の強い陥凹がある閉塞性パターン。
●E=呼気側・吸気側ともに平坦化し、固定性の上気道狭窄を考える。
拘束性障害の特徴は容量の減少であり、流量軸方向に一律に小さくなると覚えない。
選択肢ごとの解説
- ① Aは肺活量が比較的保たれ、呼気下降脚も大きな陥凹のない正常に近いパターンである。
- ② Bは吸気側の流量低下・平坦化が目立ち、可変性の胸郭外上気道狭窄などを考える。肺活量低下が主体のCとは異なる。
- ③ 正しい。Cは容量軸方向の幅が狭く、ピークフローは比較的保たれた拘束性パターンで、肺線維症に合う。
- ④ Dはピーク後の呼気流量が急に低下し、下降脚が強く陥凹する閉塞性パターンである。
- ⑤ Eは呼気側と吸気側の流量がともに平坦化しており、固定性の上気道狭窄を考える。
第65回 午後22(臨床生理学)
生体内の平均的な音速[m/s]に最も近いのはどれか。
- ①500
- ②1,500
- ③2,500
- ④3,500
- ⑤4,500
正答: ②1,500
ポイント
超音波検査では生体内(軟部組織)の平均音速を約1,530m/s(おおむね1,500m/s)と仮定し、送信パルスの往復時間からエコー源までの距離(深さ)を計算する。空気では約340m/s、骨では約4,000m/s前後と大きく異なるため、これらが存在すると測定誤差やアーチファクトの原因となる。●生体組織の音速=軟部組織約1,500m/s・脂肪やや低い・骨や腱は高い・空気は著しく低い。●音速差に起因するアーチファクト=音響陰影(骨・結石)・多重反射・屈折。●距離計算=距離=音速×往復時間÷2。
選択肢ごとの解説
- ① 500m/sは生体内の音速より著しく低い。
- ② 正しい。生体軟部組織の平均音速は約1,500m/sである。
- ③ 2,500m/sは生体軟部組織の音速より高い。
- ④ 3,500m/sは骨などに近く、平均的な値ではない。
- ⑤ 4,500m/sは生体軟部組織の音速より著しく高い。
第65回 午後23(臨床生理学)
健常成人の超音波検査で得られた腹部のBモード像を別に示す。矢印で示すのは何か。
図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB023.e7f6be3666.jpg

正答: ①腎臓
ポイント
腹部Bモード像で腎臓は、中央に高エコーの腎洞(腎盂・腎杯と脂肪組織)、その周囲に低エコーの腎実質を持つ特徴的なソラマメ型(空豆型)構造を示す。膵臓は後腹膜に横走する実質臓器、脾臓は左上腹部の均一な実質臓器、胆嚢は無エコーの嚢状構造、副腎は小さく描出しにくい。図の矢印部は、中央に高エコーの腎洞と周囲に低エコーの腎実質を持つため、腎臓と判断する。●腹部超音波の正常所見=腎臓(中央高エコーの腎洞+低エコー実質)、肝臓(均一実質+脈管)、胆嚢(無エコー嚢状)、膵臓(横走する実質)、脾臓(均一実質)。●腎エコーの異常=水腎症(腎盂拡張)・結石(高エコー+音響陰影)・嚢胞(無エコー)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。中央の高エコー腎洞と低エコー実質を示す特徴的な腎臓像である。
- ② 膵臓は後腹膜に横走する臓器で腎洞構造を示さない。
- ③ 胆嚢は無エコーの嚢状構造で本像とは異なる。
- ④ 脾臓は左上腹部の均一実質臓器で腎洞構造を示さない。
- ⑤ 副腎は小さく、本像の構造とは異なる。
📋 まとめの表を見る:腹部超音波検査:疾患と特徴的なエコー所見
肝血管腫のカメレオンサイン(体位変換による内部エコー変化)とコメット様エコー(胆嚢腺筋症などでみられる多重反射)は別の所見であり混同しない。
第65回 午後24(臨床生理学)
健常女性の骨盤腔超音波検査で最も背側に観察されるのはどれか。
正答: ③直腸
ポイント
女性骨盤腔の臓器は腹側(前方)から背側(後方)へ、膀胱・腟・子宮・直腸の順に位置し、最も背側(後方)にあるのは直腸である。子宮と直腸の間にはダグラス窩(直腸子宮窩)が存在し、腹腔内で最も低い位置にあるため腹水や出血が貯留しやすい。経腹・経腟超音波での位置関係の把握に役立つ。●女性骨盤腔の前後関係=膀胱(最腹側)→腟・子宮→直腸(最背側)。●ダグラス窩=直腸子宮窩、腹水・出血・膿の貯留部位。●卵巣=子宮の側方に位置する。
選択肢ごとの解説
- ① 腟は子宮の腹側寄りに位置し最背側ではない。
- ② 子宮は膀胱の背側だが直腸より腹側に位置する。
- ③ 正しい。直腸が最も背側(後方)に位置する。
- ④ 膀胱は最も腹側に位置する。
- ⑤ 卵巣は子宮の側方に位置し最背側ではない。
第65回 午後25(臨床生理学)
超音波検査で体表からの観察に用いる周波数が最も低い探触子を使用する臓器はどれか。
正答: ②心臓
ポイント
超音波は周波数が高いほど分解能が向上するが減衰が大きく深部に届かず、周波数が低いほど減衰が少なく深部まで到達する。深部にある心臓は最も低い周波数(おおむね2〜3MHz)の探触子(セクタ型)を用いる。乳腺など浅在臓器は高周波(7〜15MHz程度)プローブを使い高分解能を得る。観察深度と周波数のトレードオフを理解する。●深部・低周波=心臓(2〜3MHz、セクタ型)。●腹部・中間=肝臓・膵臓・腎臓(3〜5MHz、コンベックス型)。●浅在・高周波=乳腺・甲状腺・体表血管(7〜15MHz、リニア型)。
選択肢ごとの解説
- ① 乳腺は浅在で高周波プローブを用いる。
- ② 正しい。心臓は深部にあり最も低い周波数の探触子を用いる。
- ③ 肝臓は心臓より浅く、より高い周波数を使える。
- ④ 膵臓は腹部臓器だが心臓ほど低い周波数を要しない。
- ⑤ 膀胱は腹部臓器だが心臓ほど低い周波数を要しない。
第65回 午後26(臨床生理学)
甲状腺右葉の超音波Bモード像〈a〉及びパワードプラ像〈b〉を別に示す。最も考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB026.16b03dc248.jpg

- ①Basedow病
- ②副甲状腺腫大
- ③亜急性甲状腺炎
- ④腺腫様甲状腺腫
- ⑤慢性甲状腺炎〈橋本病〉
正答: ①Basedow病
ポイント
Basedow病はびまん性甲状腺腫大を呈し、パワードプラで実質全体に著明な血流増加(thyroid infernoと呼ばれる燃え盛るような血流像)を示す甲状腺機能亢進症である。本像のびまん性腫大かつ著明な血流亢進という所見が合致する。亜急性甲状腺炎は有痛性の限局性低エコー域、慢性甲状腺炎〈橋本病〉はびまん性の低エコーと粗造な内部エコーが特徴で、いずれも著明な血流増加は典型ではない。●びまん性甲状腺腫=Basedow病(血流増加)・橋本病(低エコー粗造)・単純性びまん性甲状腺腫。●限局性病変=腺腫様甲状腺腫(多発結節)・濾胞腺腫・乳頭癌(微細石灰化・境界不明瞭)。●有痛性=亜急性甲状腺炎(低エコー域)・急性化膿性甲状腺炎。●甲状腺背側=副甲状腺腺腫・副甲状腺過形成。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。びまん性腫大とパワードプラでの著明な血流増加(thyroid inferno)はBasedow病に合致する。
- ② 副甲状腺腫大は甲状腺背側の小腫瘤として描出され、甲状腺実質のびまん性腫大とは異なる。
- ③ 亜急性甲状腺炎は有痛性で限局性の低エコー域を示し、著明なびまん性血流増加とは異なる。
- ④ 腺腫様甲状腺腫は多発結節を呈し、びまん性腫大像とは異なる。
- ⑤ 慢性甲状腺炎〈橋本病〉はびまん性の低エコー・粗造な実質を示し、著明な血流増加は典型的でない。
📋 まとめの表を見る:甲状腺疾患と超音波所見
腫瘤の悪性所見は形状不整・境界不明瞭・内部エコー不均質・微細高エコー(石灰化)の有無などで総合評価する(教科書の甲状腺結節の良悪性評価表に基づく)。乳頭癌・悪性リンパ腫の所見は一般的な超音波診断知見。
第65回 午後27(臨床生理学)
単純糖尿病網膜症にみられない眼底所見はどれか。
- ①白斑
- ②血管新生
- ③点状出血
- ④限局性浮腫
- ⑤網膜血管瘤
正答: ②血管新生
ポイント
単純(非増殖)糖尿病網膜症は毛細血管の透過性亢進と閉塞による所見が中心で、毛細血管瘤(網膜血管瘤)・点状/斑状出血・硬性白斑・限局性網膜浮腫がみられる。血管新生(新生血管)は網膜虚血が進行した増殖糖尿病網膜症で出現する所見であり、単純網膜症ではみられない。新生血管は破綻しやすく硝子体出血や牽引性網膜剥離の原因となる。●単純(非増殖)網膜症=毛細血管瘤・点状斑状出血・硬性白斑・網膜浮腫。●前増殖網膜症=軟性白斑(綿花様白斑)・静脈数珠状拡張・網膜内細小血管異常(IRMA)。●増殖網膜症=新生血管・硝子体出血・牽引性網膜剥離・血管新生緑内障。●黄斑症=糖尿病黄斑浮腫(視力低下の主因)。
選択肢ごとの解説
- ① 白斑(硬性白斑)は単純糖尿病網膜症でみられる。
- ② 誤り。血管新生は網膜虚血の進行した増殖網膜症の所見で、単純網膜症ではみられない。
- ③ 点状出血は単純糖尿病網膜症でみられる。
- ④ 限局性浮腫(網膜浮腫)は単純糖尿病網膜症でみられる。
- ⑤ 網膜血管瘤(毛細血管瘤)は単純糖尿病網膜症の初期所見としてみられる。
第65回 午後28(臨床生理学)
針筋電図検査の対象とならない病態はどれか。
- ①筋萎縮
- ②筋力低下
- ③過剰筋収縮
- ④高CK血症
- ⑤ミオクローヌス
正答: ⑤ミオクローヌス
ポイント
針筋電図は筋に針電極を刺入し、安静時の異常放電や随意収縮時の運動単位電位から神経原性変化と筋原性変化を鑑別する検査である。筋萎縮の原因鑑別、筋力低下の原因評価、高クレアチンキナーゼ(CK)血症をきたす筋疾患の評価、線維束性収縮など過剰筋収縮(異常放電)の確認に用いる。ミオクローヌスは中枢由来の不随意運動であり、その評価はジャークの分布・潜時をみる表面筋電図やポリグラフ記録が主体で、針筋電図の主たる対象ではない。●針筋電図の対象=神経原性筋萎縮(線維束性収縮・高振幅長持続電位)・筋原性変化(低振幅短持続電位)・脱神経(線維自発電位・陽性鋭波)。●不随意運動の評価=表面筋電図・ポリグラフ(ミオクローヌス・振戦・ジストニア)。●神経伝導検査=末梢神経障害・絞扼性神経障害の局在診断。
選択肢ごとの解説
- ① 筋萎縮の原因(神経原性か筋原性か)の鑑別に針筋電図が用いられる。
- ② 筋力低下の原因評価に針筋電図が用いられる。
- ③ 過剰筋収縮(線維束性収縮などの異常放電)の評価に針筋電図が用いられる。
- ④ 高CK血症をきたす筋疾患の評価に針筋電図が用いられる。
- ⑤ 誤り。ミオクローヌスは表面筋電図やポリグラフで評価する不随意運動で、針筋電図の主対象ではない。
📋 まとめの表を見る:針筋電図検査の対象となる病態・ならない病態
ミオクローヌスは発生機序により皮質性・皮質下性・脳幹性・脊髄性・末梢性に分類される。
第65回 午後29(臨床化学)
血清遊離脂肪酸が低下するのはどれか。
- ①夜間
- ②空腹時
- ③ヘパリン静注
- ④インスリン投与
- ⑤ステロイド療法
正答: ④インスリン投与
ポイント
血清遊離脂肪酸は脂肪組織のホルモン感受性リパーゼによる中性脂肪分解で上昇し、絶食・空腹・夜間など脂肪動員が亢進する状況で増加する。ヘパリン静注は血管内皮からリポ蛋白リパーゼを遊離させ、トリグリセリド分解により遊離脂肪酸を増加させる。インスリンはホルモン感受性リパーゼを抑制して脂肪分解を抑え、同時に脂肪合成を促すため、遊離脂肪酸は低下する。●遊離脂肪酸が上昇=空腹・絶食・夜間・運動・寒冷・カテコールアミン・成長ホルモン・グルカゴン・ステロイド・ヘパリン静注。●遊離脂肪酸が低下=インスリン投与・摂食後(食後早期)。●関連酵素=ホルモン感受性リパーゼ(脂肪分解)・リポ蛋白リパーゼ(血中TG分解)。
選択肢ごとの解説
- ① 夜間は脂肪分解が進み遊離脂肪酸は上昇する。
- ② 空腹時は脂肪動員が亢進し遊離脂肪酸は上昇する。
- ③ ヘパリン静注はリポ蛋白リパーゼを遊離させ遊離脂肪酸を上昇させる。
- ④ 正しい。インスリンはホルモン感受性リパーゼを抑制し脂肪分解を抑え、遊離脂肪酸を低下させる。
- ⑤ ステロイド療法は脂肪分解を促進し遊離脂肪酸をむしろ上昇させうる。
第65回 午後30(臨床化学)
グリセロリン脂質でないのはどれか。
- ①レシチン
- ②セファリン
- ③リゾレシチン
- ④スフィンゴミエリン
- ⑤ホスファチジルセリン
正答: ④スフィンゴミエリン
ポイント
グリセロリン脂質はグリセロールを骨格とし、リン酸とアルコール部分の違いで分類される一群で、レシチン(ホスファチジルコリン)・セファリン(ホスファチジルエタノールアミン)・ホスファチジルセリン・ホスファチジルイノシトール・リゾレシチンが含まれる。スフィンゴミエリンはグリセロールではなくスフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質であり、グリセロリン脂質ではない。骨格となるアルコールがグリセロールかスフィンゴシンかで両者を区別する。●グリセロリン脂質=ホスファチジルコリン(レシチン)・ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)・ホスファチジルセリン・ホスファチジルイノシトール・リゾレシチン。●スフィンゴ脂質=スフィンゴミエリン(リン脂質)・セレブロシド・ガングリオシド(糖脂質)。●中性脂肪=トリアシルグリセロール。●ステロイド=コレステロール。
選択肢ごとの解説
- ① レシチン(ホスファチジルコリン)はグリセロールを骨格とするグリセロリン脂質である。
- ② セファリン(ホスファチジルエタノールアミン)はグリセロリン脂質である。
- ③ リゾレシチンはレシチンから脂肪酸1分子が外れたグリセロリン脂質である。
- ④ 誤り。スフィンゴミエリンはスフィンゴシンを骨格とするスフィンゴリン脂質である。
- ⑤ ホスファチジルセリンはグリセロールを骨格とするグリセロリン脂質である。
第65回 午後31(臨床化学)
脂質異常症のWHO分類とその原因の組合せで正しいのはどれか。
- ①Ⅰ — レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ〈LCAT〉
- ②Ⅱ — リポ蛋白リパーゼ〈LPL〉
- ③Ⅲ — アポリポ蛋白E
- ④Ⅳ — LDL受容体
- ⑤Ⅴ — コレステロールエステル転送蛋白〈CETP〉
正答: ③Ⅲ — アポリポ蛋白E
ポイント
脂質異常症のWHO(Fredrickson)分類は増加するリポ蛋白の種類で分け、各型の原因となる代謝異常がある。Ⅲ型(家族性Ⅲ型高脂血症)はアポリポ蛋白Eの異常(E2/E2など)によりレムナント(中間比重リポ蛋白・カイロミクロンレムナント)の肝取り込みが障害され、レムナントが蓄積する。Ⅰ型はリポ蛋白リパーゼ(LPL)またはアポC-Ⅱの欠損、Ⅱ型はLDL受容体異常(家族性高コレステロール血症)、ⅣはVLDL過剰、ⅤはⅠとⅣの混合に対応する。●Ⅰ型=LPL欠損・アポC-Ⅱ欠損(カイロミクロン増加)。●Ⅱ型=LDL受容体異常(LDL増加)。●Ⅲ型=アポリポ蛋白E異常(レムナント増加)。●Ⅳ型=VLDL過剰産生(VLDL増加)。●Ⅴ型=カイロミクロン+VLDL増加。
選択肢ごとの解説
- ① Ⅰ型はリポ蛋白リパーゼ(LPL)欠損やアポC-Ⅱ欠損が原因で、LCATではない。
- ② Ⅱ型はLDL受容体異常が原因で、リポ蛋白リパーゼ(LPL)ではない。
- ③ 正しい。Ⅲ型はアポリポ蛋白Eの異常によるレムナント蓄積が原因である。
- ④ Ⅳ型はVLDLの過剰産生によるもので、LDL受容体異常ではない。
- ⑤ Ⅴ型はカイロミクロンとVLDLがともに増加する混合型で、CETPが直接の原因ではない。
📋 まとめの表を見る:脂質異常症のWHO(Fredrickson)分類
第65回 午後32(臨床化学)
日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法による血清CK活性測定において、反応液中のD-グルコースが1分間あたり0.9 mg反応した。この血清のCK活性[U/L]はどれか。ただし、D-グルコースの分子量180、血清量10 μL、試薬量290 μLとする。
正答: なし(厚生労働省が採点除外とした不適切問題)
ポイント
日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法によるクレアチンキナーゼ(CK)活性測定は、CKがクレアチンリン酸からATPを生成し、ヘキソキナーゼとグルコース-6-リン酸脱水素酵素の共役系を経て還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)の増加を吸光度で測る方法である。活性値は1分間に変換された基質量を血清量・最終液量(希釈倍率)から国際単位(U/L)へ換算して求める。本問は与えられた条件から導かれる値が選択肢と整合せず、採点上除外された(正答なし)。●CK測定の共役系=CK→ヘキソキナーゼ→グルコース-6-リン酸脱水素酵素→NADPH生成。●酵素活性の単位=1 U=1分間に1 μmolの基質を変換する酵素量、U/L=血清1L当たりに換算。●計算因子=吸光度変化・モル吸光係数・最終液量・血清量・光路長。
解説
採点除外問題(正答なし)。
選択肢ごとの解説
- ① 選択肢の値は出題条件から一意に導けず、本問は採点除外となった。
- ② 選択肢の値は出題条件から一意に導けず、本問は採点除外となった。
- ③ 選択肢の値は出題条件から一意に導けず、本問は採点除外となった。
- ④ 選択肢の値は出題条件から一意に導けず、本問は採点除外となった。
- ⑤ 選択肢の値は出題条件から一意に導けず、本問は採点除外となった。
第65回 午後33(臨床化学)
血清総蛋白5.0 g/dL、血清アルブミン2.5 g/dL、尿蛋白500 mg/dLであった。考えられるのはどれか。
- ①肝硬変
- ②慢性炎症
- ③多発性骨髄腫
- ④ネフローゼ症候群
- ⑤無γ-グロブリン血症
正答: ④ネフローゼ症候群
ポイント
総蛋白5.0 g/dL・アルブミン2.5 g/dLと低蛋白・低アルブミン血症を示し、加えて尿蛋白500 mg/dLという高度蛋白尿を伴う点が、ネフローゼ症候群を強く示唆する。ネフローゼ症候群は糸球体基底膜の透過性亢進による高度蛋白尿(尿蛋白3.5 g/日以上)・低アルブミン血症・浮腫・脂質異常症を特徴とする。多発性骨髄腫はM蛋白により総蛋白が上昇傾向、肝硬変はアルブミン合成低下を来すが高度蛋白尿は伴わず、無γ-グロブリン血症はγ分画低下が主体で蛋白尿を伴わない。●ネフローゼ症候群=高度蛋白尿・低アルブミン血症・浮腫・脂質異常症。●総蛋白上昇=多発性骨髄腫・慢性炎症(γグロブリン増加)・脱水。●アルブミン低下=肝硬変・低栄養・ネフローゼ・蛋白漏出性胃腸症。●γグロブリン低下=無γ-グロブリン血症・分類不能型免疫不全症。
選択肢ごとの解説
- ① 肝硬変はアルブミン低下を来すが、高度蛋白尿は特徴的でない。
- ② 慢性炎症はγグロブリン増加で総蛋白が保たれることが多く、高度蛋白尿を伴わない。
- ③ 多発性骨髄腫はM蛋白により総蛋白が上昇傾向となる。
- ④ 正しい。低アルブミン血症と高度蛋白尿の組合せはネフローゼ症候群に合致する。
- ⑤ 無γ-グロブリン血症はγ分画低下が主で、高度蛋白尿は伴わない。
📋 まとめの表を見る:血清総蛋白・アルブミン異常のパターンと考えられる疾患
第65回 午後34(臨床化学)
酵素の国際単位の算出に必要ないのはどれか。
- ①血清量
- ②最終液量
- ③測定波長
- ④モル吸光係数
- ⑤1分間の吸光度変化量
正答: ③測定波長
ポイント
酵素活性を国際単位(U/L)で算出するには、1分間あたりの吸光度変化量・モル吸光係数・血清量・最終(反応)液量を用い、Lambert-Beerの式から1分間に変換された基質量を求めて換算する。測定波長そのものは計算式の数値項には現れず、その波長における吸収の強さはモル吸光係数として組み込まれているため、波長の数値は不要である。光路長(セル長)も計算に必要となる。●酵素活性算出に必要=吸光度変化量(ΔA/分)・モル吸光係数(ε)・最終液量・血清量・光路長。●不要=測定波長そのもの(εに反映済み)。●関連単位=1 U=1 μmol/分、katal(SI単位)=1 mol/秒。
選択肢ごとの解説
- ① 血清量は希釈倍率(最終液量/血清量)の計算に必要である。
- ② 最終液量(反応液量)は希釈倍率の計算に必要である。
- ③ 誤り。測定波長そのものは計算式の数値には不要で、波長における吸収はモル吸光係数に含まれる。
- ④ モル吸光係数はLambert-Beerの式による基質量算出に必要である。
- ⑤ 1分間の吸光度変化量は反応速度の算出に必要である。
第65回 午後35(臨床化学)
分光光度法において共存物質の影響試験の対象となるのはどれか。2つ選べ。
- ①過酸化水素
- ②ヘモグロビン
- ③アスコルビン酸
- ④アスパラギン酸
- ⑤ペルオキシダーゼ
正答: ②ヘモグロビン・③アスコルビン酸
ポイント
分光光度法では、試料に由来し測定波長で吸収を持つ物質や反応系を妨げる物質が共存すると測定値に干渉を生じるため、共存物質影響試験の対象となる。溶血で混入するヘモグロビンは可視域に強い吸収帯を持ち光学的に干渉する。アスコルビン酸(ビタミンC)は強い還元性を持ち、過酸化水素を介する発色系などを妨げて測定値を低下させる。両者は代表的な内因性干渉物質である。●光学的干渉(吸収)=ヘモグロビン(溶血)・ビリルビン(黄疸)・乳び(脂質)。●化学的干渉(還元・消去)=アスコルビン酸(過酸化水素系を妨害)。●試薬側成分(干渉物質ではない)=ペルオキシダーゼ・各種酵素。
選択肢ごとの解説
- ① 過酸化水素は発色反応系の中間体であり、影響試験の対象となる代表的な共存(内因性)物質ではない。
- ② 正しい。ヘモグロビンは溶血により混入し、可視域での光学的干渉を起こすため対象となる。
- ③ 正しい。アスコルビン酸は還元性により発色系を妨げるため対象となる。
- ④ アスパラギン酸は分光光度法の代表的な干渉物質ではない。
- ⑤ ペルオキシダーゼは試薬側に添加する酵素であり、共存物質影響試験の対象ではない。
📋 まとめの表を見る:生化学的呈色反応系の比較(Trinder反応とNAD(P)H系)
Trinder反応は色原体の組合せで分析感度を調整できるが、還元性物質による妨害を受けやすい。分光光度法における共存物質影響試験の代表的対象はヘモグロビン(溶血)とアスコルビン酸である。
第65回 午後36(臨床化学)
尿酸の酵素法試薬に含まれているのはどれか。2つ選べ。
- ①ウリカーゼ
- ②ウレアーゼ
- ③キサンチン
- ④アラントイン
- ⑤ペルオキシダーゼ
正答: ①ウリカーゼ・⑤ペルオキシダーゼ
ポイント
尿酸の酵素法ではウリカーゼ(尿酸オキシダーゼ)が尿酸を分解してアラントインと過酸化水素を生じ、生成した過酸化水素をペルオキシダーゼと色原体(4-アミノアンチピリン+フェノール系など)で発色させて比色定量する。したがって試薬にはウリカーゼとペルオキシダーゼが含まれる。キサンチンは尿酸の前駆体、アラントインは尿酸分解の生成物であり試薬成分ではなく、ウレアーゼは尿素測定に用いる酵素である。●尿酸酵素法の試薬=ウリカーゼ・ペルオキシダーゼ・色原体。●ウレアーゼ=尿素窒素(BUN)測定。●過酸化水素生成系を利用する項目=尿酸・グルコース(グルコースオキシダーゼ)・コレステロール(コレステロールオキシダーゼ)・中性脂肪。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。ウリカーゼは尿酸を分解してアラントインと過酸化水素を生じさせる主酵素である。
- ② ウレアーゼは尿素の測定に用いる酵素で、尿酸法には含まれない。
- ③ キサンチンは尿酸の前駆体であり、試薬成分ではない。
- ④ アラントインは尿酸分解の生成物であり、試薬成分ではない。
- ⑤ 正しい。ペルオキシダーゼは生じた過酸化水素を用いて色原体を発色させるため含まれる。
第65回 午後37(臨床化学)
日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法で吸光度の減少から活性値を求めるのはどれか。2つ選べ。
- ①CK
- ②LD
- ③AST
- ④アミラーゼ
- ⑤コリンエステラーゼ
正答: ③AST・⑤コリンエステラーゼ
ポイント
日本臨床化学会〈JSCC〉勧告法では、反応系で還元型補酵素が消費される項目は吸光度の減少から活性を算出する。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)はリンゴ酸脱水素酵素共役系で還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が消費され、吸光度減少で測定する。コリンエステラーゼのJSCC勧告法はp-ヒドロキシベンゾイルコリンを基質とし、共役反応でNADPHが消費されるため、その吸光度減少から活性を求める。クレアチンキナーゼ(CK)・乳酸脱水素酵素(LD)・アミラーゼは生成物増加に伴う吸光度上昇で測定する。●吸光度減少で測定=AST(MDH共役でNADH消費)・ALT(LD共役でNADH消費)・コリンエステラーゼ。●吸光度上昇で測定=CK(NADPH生成)・LD(L→P系でNADH生成)・アミラーゼ(発色基質)。●補酵素=NADH/NADPHは340 nmに吸収。
選択肢ごとの解説
- ① CKは共役系でNADPHが生成し、吸光度の増加で測定する。
- ② LDはL-乳酸→ピルビン酸方向でNADHが生成し、吸光度上昇で測定する。
- ③ 正しい。ASTはリンゴ酸脱水素酵素共役系でNADHが消費され、吸光度減少で測定する。
- ④ アミラーゼは発色基質の分解など吸光度増加で測定する。
- ⑤ 正しい。JSCC勧告法では、p-ヒドロキシベンゾイルコリンの加水分解に続く共役反応でNADPHが消費され、その吸光度減少から活性を求める。
第65回 午後38(臨床化学)
水溶性ビタミンはどれか。
- ①カルシフェロール
- ②トコフェロール
- ③メナキノン
- ④リボフラビン
- ⑤レチノール
正答: ④リボフラビン
ポイント
水溶性ビタミンはビタミンB群とビタミンCで、リボフラビンはビタミンB₂であり水溶性ビタミンに分類される。カルシフェロール(ビタミンD)・トコフェロール(ビタミンE)・メナキノン(ビタミンK)・レチノール(ビタミンA)はいずれも脂溶性ビタミンである。脂溶性ビタミンは過剰摂取で蓄積・過剰症を生じやすく、水溶性ビタミンは尿中に排泄されやすい点で対照的である。●水溶性ビタミン=B1(チアミン)・B2(リボフラビン)・B6・B12・ナイアシン・葉酸・パントテン酸・ビオチン・C(アスコルビン酸)。●脂溶性ビタミン=A(レチノール)・D(カルシフェロール)・E(トコフェロール)・K(メナキノン/フィロキノン)。
選択肢ごとの解説
- ① カルシフェロールはビタミンDで脂溶性ビタミンである。
- ② トコフェロールはビタミンEで脂溶性ビタミンである。
- ③ メナキノンはビタミンKで脂溶性ビタミンである。
- ④ 正しい。リボフラビンはビタミンB₂で水溶性ビタミンである。
- ⑤ レチノールはビタミンAで脂溶性ビタミンである。
📋 まとめの表を見る:ビタミンの分類・化学名・主な働き
脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は肝・脂肪組織に蓄積しやすく過剰症を起こしうる(例:ビタミンA過剰で脳圧亢進・催奇形性、ビタミンD過剰で高カルシウム血症)。水溶性ビタミン(B群・C)は尿中に排泄されやすく過剰症は起こしにくい。β-カロチンはビタミンA(レチノール)の前駆体〈プロビタミンA〉であり、ビタミンEの前駆体ではない。
第65回 午後39(臨床化学)
骨格筋でアンモニアが結合して生成するのはどれか。
- ①アルギニン
- ②オルニチン
- ③グルタミン
- ④シトルリン
- ⑤カルバモイルリン酸
正答: ③グルタミン
ポイント
骨格筋ではグルタミン合成酵素により、グルタミン酸にアンモニアが結合してグルタミンが生成し、毒性のあるアンモニアを無毒な形で血中へ運搬する。グルタミンは肝臓や腎臓へ運ばれてアンモニアを遊離し、肝臓では尿素回路、腎臓では尿中への排泄に利用される。アルギニン・オルニチン・シトルリン・カルバモイルリン酸はいずれも肝臓の尿素回路の中間体であり、骨格筋でのアンモニア固定産物ではない。●アンモニアの運搬=グルタミン(グルタミン合成酵素)・アラニン(グルコース-アラニン回路)。●尿素回路の中間体=カルバモイルリン酸・シトルリン・アルギニノコハク酸・アルギニン・オルニチン。●尿素回路の最終産物=尿素。
選択肢ごとの解説
- ① アルギニンは尿素回路の中間体で、骨格筋でのアンモニア固定産物ではない。
- ② オルニチンは尿素回路の中間体である。
- ③ 正しい。骨格筋ではグルタミン合成酵素によりグルタミンとしてアンモニアを取り込む。
- ④ シトルリンは尿素回路の中間体である。
- ⑤ カルバモイルリン酸は尿素回路の最初の中間体である。
第65回 午後40(臨床化学)
骨形成マーカーはどれか。2つ選べ。
- ①オステオカルシン〈OC〉
- ②デオキシピリジノリン〈DPD〉
- ③骨型アルカリホスファターゼ〈BAP〉
- ④I型コラーゲン架橋N-テロペプチド〈NTX〉
- ⑤酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ活性〈TRAcP-5b〉
正答: ①オステオカルシン〈OC〉・③骨型アルカリホスファターゼ〈BAP〉
ポイント
骨形成マーカーは骨芽細胞の活動を反映するもので、オステオカルシン〈OC〉と骨型アルカリホスファターゼ〈BAP〉が代表である。一方、デオキシピリジノリン〈DPD〉・I型コラーゲン架橋N-テロペプチド〈NTX〉・酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ〈TRAcP-5b〉は破骨細胞による骨吸収(コラーゲン分解)を反映する骨吸収マーカーである。骨代謝の方向(形成か吸収か)で両者を区別する。●骨形成マーカー=オステオカルシン・骨型アルカリホスファターゼ(BAP)・I型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)。●骨吸収マーカー=デオキシピリジノリン(DPD)・ピリジノリン・NTX・CTX・酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAcP-5b)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。オステオカルシンは骨芽細胞由来の骨形成マーカーである。
- ② デオキシピリジノリンはコラーゲン架橋由来の骨吸収マーカーである。
- ③ 正しい。骨型アルカリホスファターゼは骨芽細胞由来の骨形成マーカーである。
- ④ I型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTX)はコラーゲン分解産物で骨吸収マーカーである。
- ⑤ 酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAcP-5b)は破骨細胞由来の骨吸収マーカーである。
第65回 午後41(臨床化学)
バゾプレシンが低下するのはどれか。
- ①脱水症
- ②肝硬変症
- ③腎性尿崩症
- ④中枢性尿崩症
- ⑤ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉
正答: ④中枢性尿崩症
ポイント
バゾプレシン(抗利尿ホルモン、ADH)は視床下部で産生され下垂体後葉から分泌され、腎集合管での水再吸収を促す。中枢性尿崩症では視床下部・下垂体後葉の障害によりバゾプレシンの分泌そのものが低下し、多尿・低張尿をきたす。脱水では血漿浸透圧上昇により分泌が増加し、SIADH(ADH不適合分泌症候群)では過剰分泌、腎性尿崩症では分泌は保たれるが腎の反応性が低下し、肝硬変では有効循環血漿量低下により相対的に上昇傾向となる。●バゾプレシン低下=中枢性尿崩症。●バゾプレシン上昇=脱水・SIADH・肝硬変・心不全・嘔気・疼痛。●腎での反応性低下(分泌正常)=腎性尿崩症。●尿崩症の鑑別=水制限試験・デスモプレシン負荷試験。
選択肢ごとの解説
- ① 脱水では血漿浸透圧上昇によりバゾプレシン分泌は増加する。
- ② 肝硬変では有効循環血漿量低下によりバゾプレシンはむしろ上昇傾向となる。
- ③ 腎性尿崩症では分泌は保たれ、腎の反応性低下が本態である。
- ④ 正しい。中枢性尿崩症では下垂体後葉からのバゾプレシン分泌そのものが低下する。
- ⑤ ADH不適合分泌症候群〈SIADH〉はバゾプレシンの過剰分泌が本態で、低下しない。
第65回 午後42(臨床化学)
低栄養状態で高値を示すのはどれか。
- ①レプチン
- ②アルブミン
- ③成長ホルモン
- ④コリンエステラーゼ
- ⑤遊離トリヨードサイロニン〈FT3〉
正答: ③成長ホルモン
ポイント
低栄養・飢餓状態では脂肪と蛋白の異化が亢進し、エネルギー動員に働く成長ホルモンが上昇する(成長ホルモン抵抗性によりインスリン様成長因子-1〈IGF-1〉はむしろ低下する)。一方、脂肪量を反映するレプチン、肝合成蛋白であるアルブミンとコリンエステラーゼ、甲状腺ホルモンの遊離トリヨードサイロニン〈FT3〉(低T3症候群)は低栄養で低下する。●低栄養で上昇=成長ホルモン・遊離脂肪酸・ケトン体・グルカゴン・コルチゾール。●低栄養で低下=アルブミン・トランスサイレチン(プレアルブミン)・トランスフェリン・レチノール結合蛋白(RBP)・コリンエステラーゼ・レプチン・IGF-1・FT3。●栄養評価=RTP(rapid turnover protein)が鋭敏。
選択肢ごとの解説
- ① レプチンは脂肪量を反映し、低栄養で低下する。
- ② アルブミンは栄養状態を反映し、低栄養で低下する。
- ③ 正しい。低栄養では成長ホルモンが上昇する。
- ④ コリンエステラーゼは肝合成能・栄養状態を反映し、低栄養で低下する。
- ⑤ 遊離トリヨードサイロニン〈FT3〉は低栄養(低T3症候群)で低下する。
第65回 午後43(臨床化学)
糖タンパク質ホルモンはどれか。2つ選べ。
- ①サイロキシン
- ②成長ホルモン
- ③プロラクチン
- ④黄体形成ホルモン
- ⑤甲状腺刺激ホルモン
正答: ④黄体形成ホルモン・⑤甲状腺刺激ホルモン
ポイント
糖タンパク質ホルモンはα・βの2つのサブユニットからなり糖鎖を持つホルモンで、黄体形成ホルモン〈LH〉・甲状腺刺激ホルモン〈TSH〉・卵胞刺激ホルモン〈FSH〉・ヒト絨毛性ゴナドトロピン〈hCG〉が該当する(αサブユニットは共通でβサブユニットが各ホルモン特異性を担う)。サイロキシンはチロシン由来のアミノ酸誘導体ホルモン、成長ホルモンとプロラクチンは糖鎖を持たない単純ペプチドホルモンである。●糖タンパク質ホルモン=LH・FSH・TSH・hCG。●ペプチド/蛋白ホルモン=成長ホルモン・プロラクチン・インスリン・ACTH。●アミノ酸誘導体ホルモン=サイロキシン・カテコールアミン。●ステロイドホルモン=コルチゾール・アルドステロン・性ステロイド。
選択肢ごとの解説
- ① サイロキシンはチロシン由来のアミノ酸誘導体ホルモンである。
- ② 成長ホルモンは糖鎖を持たない単純ペプチド(蛋白)ホルモンである。
- ③ プロラクチンはペプチド(蛋白)ホルモンである。
- ④ 正しい。黄体形成ホルモンはα・βサブユニットを持つ糖タンパク質ホルモンである。
- ⑤ 正しい。甲状腺刺激ホルモンはα・βサブユニットを持つ糖タンパク質ホルモンである。
第65回 午後44(臨床化学)
血漿レニン活性が低値を示すのはどれか。
- ①脱水
- ②Addison病
- ③利尿薬服用
- ④腎血管性高血圧症
- ⑤原発性アルドステロン症
正答: ⑤原発性アルドステロン症
ポイント
原発性アルドステロン症では副腎(腺腫または過形成)からのアルドステロン自律分泌によりナトリウム貯留・体液量増加・血圧上昇が起こり、ネガティブフィードバックで腎傍糸球体装置からのレニン分泌が抑制され、血漿レニン活性が低値となる。アルドステロン高値かつレニン低値(アルドステロン/レニン比の上昇)が診断の指標となる。脱水・利尿薬服用・Addison病・腎血管性高血圧症ではいずれもレニンが高値となる。●レニン低値=原発性アルドステロン症・偽性アルドステロン症(甘草など)・Liddle症候群。●レニン高値=腎血管性高血圧・脱水・利尿薬・Addison病・Bartter症候群・出血。●鑑別=アルドステロン/レニン比(ARR)。
選択肢ごとの解説
- ① 脱水では循環血漿量低下により腎傍糸球体装置からのレニン分泌が上昇する。
- ② Addison病は副腎不全でアルドステロン低下に対し、フィードバックでレニンが上昇する。
- ③ 利尿薬服用は循環血漿量低下によりレニンを上昇させる。
- ④ 腎血管性高血圧症は腎血流低下によりレニンが上昇する。
- ⑤ 正しい。原発性アルドステロン症ではネガティブフィードバックで血漿レニン活性が低値となる。
第65回 午後45(病理組織細胞学)
分子標的薬投与の決定にHER2を用いるのはどれか。
- ①乳癌
- ②大腸癌
- ③悪性黒色腫
- ④非小細胞肺癌
- ⑤消化管間質腫瘍〈GIST〉
正答: ①乳癌
ポイント
HER2(ERBB2)は上皮成長因子受容体ファミリーのチロシンキナーゼ型受容体で、乳癌や胃癌で過剰発現・遺伝子増幅を示し、抗HER2抗体薬(トラスツズマブなど)の適応決定に用いる。評価は免疫組織化学染色によるスコアリングと、判定保留例でのFISHによる遺伝子増幅確認で行う。設問では乳癌が該当する。大腸癌はRAS/BRAF、悪性黒色腫はBRAF、非小細胞肺癌はEGFR/ALK、消化管間質腫瘍〈GIST〉はKIT(c-kit)が標的・指標に関連する。●HER2=乳癌・胃癌(抗HER2薬)。●EGFR/ALK/ROS1=非小細胞肺癌。●RAS/BRAF=大腸癌(抗EGFR抗体薬の適応判定)。●BRAF=悪性黒色腫。●KIT(c-kit)/PDGFRA=GIST(イマチニブ)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。乳癌はHER2過剰発現・遺伝子増幅が抗HER2薬の適応決定に用いられる。
- ② 大腸癌はRAS/BRAF変異が分子標的治療の指標となり、HER2が主指標ではない。
- ③ 悪性黒色腫はBRAF変異が分子標的治療の指標となる。
- ④ 非小細胞肺癌はEGFR変異やALK融合が指標となる。
- ⑤ 消化管間質腫瘍〈GIST〉はKIT(c-kit)が分子標的治療の指標となる。
第65回 午後46(病理組織細胞学)
透過型電子顕微鏡標本作製法と試薬の組合せで正しいのはどれか。
- ①固定 — ホルマリン
- ②脱水 — エタノール
- ③置換 — キシレン
- ④包埋 — パラフィン
- ⑤電子染色 — タンニン酸
正答: ②脱水 — エタノール
ポイント
透過型電子顕微鏡標本では、グルタールアルデヒドで前固定し、オスミウム酸で後固定したのち、エタノール(またはアセトン)で脱水し、プロピレンオキサイドで置換、エポキシ樹脂で包埋して超薄切し、酢酸ウラニルとクエン酸鉛で電子染色する。設問の組合せで正しいのは脱水のエタノールである。固定のホルマリン、置換のキシレン、包埋のパラフィンはいずれも光学顕微鏡標本の試薬であり電顕では用いず、電子染色はタンニン酸が主ではない。●電顕の固定=グルタールアルデヒド・オスミウム酸(四酸化オスミウム)。●脱水=エタノール/アセトン。●置換=プロピレンオキサイド。●包埋=エポキシ樹脂(エポン等)。●電子染色=酢酸ウラニル・クエン酸鉛。
選択肢ごとの解説
- ① 電顕の固定はグルタールアルデヒドとオスミウム酸で行い、ホルマリンではない。
- ② 正しい。脱水にはエタノール(またはアセトン)を用いる。
- ③ 置換にはプロピレンオキサイドを用い、キシレンではない。
- ④ 包埋にはエポキシ樹脂を用い、パラフィンではない。
- ⑤ 電子染色は酢酸ウラニルとクエン酸鉛で行い、タンニン酸が主ではない。
📋 まとめの表を見る:透過型電子顕微鏡標本作製の工程と試薬・器具
光学顕微鏡標本(パラフィン法)は固定=ホルマリン、脱水=エタノール、置換=キシレン、包埋=パラフィンであり、電顕標本の試薬とは異なる。
第65回 午後47(病理組織細胞学)
細胞学的検査法で乾燥固定を行うのはどれか。2つ選べ。
- ①PAS反応
- ②Giemsa染色
- ③Alcian blue染色
- ④Papanicolaou染色
- ⑤ペルオキシダーゼ染色
正答: ②Giemsa染色・⑤ペルオキシダーゼ染色
ポイント
細胞診の固定法は染色法に応じて使い分ける。Papanicolaou染色では、核所見と細胞質を保つため塗抹後ただちに95%エタノールなどで湿固定する。細胞診標本のPAS反応にも湿固定標本を用いるが、PASの主な対象は粘液やグリコーゲンなどの糖質成分である。一方、Giemsa(May-Grünwald-Giemsa)染色やペルオキシダーゼ染色など血液学的染色には乾燥固定(風乾後に固定液で固定)を用い、細胞質の所見を観察しやすくする。設問で乾燥固定を行うのはGiemsa染色とペルオキシダーゼ染色である。●湿固定(95%エタノール)=Papanicolaou染色・PAS反応・HE染色。●乾燥固定(風乾)=Giemsa(MGG)染色・ペルオキシダーゼ染色など血液学的染色。●固定の意義=湿固定は核所見保持、乾燥固定は細胞質伸展・血液系染色に適する。
選択肢ごとの解説
- ① PAS反応は湿固定(エタノール固定)の標本に用いる。
- ② 正しい。Giemsa染色は乾燥固定(風乾)標本に行う。
- ③ Alcian blue染色は湿固定の標本に用いる。
- ④ Papanicolaou染色は湿固定(95%エタノール固定)で行う。
- ⑤ 正しい。ペルオキシダーゼ染色は乾燥固定標本に行う。
📋 まとめの表を見る:パパニコロウ染色とギムザ染色の比較
乾燥固定を要する染色にはギムザ染色のほかペルオキシダーゼ染色などの血液学的染色がある。
第65回 午後48(病理組織細胞学)
ホルマリンについて誤っているのはどれか。
- ①発がん性がある。
- ②遮光して保存する。
- ③医薬用外劇物である。
- ④酸化によりクエン酸を生じる。
- ⑤ホルマリン原液は酸性である。
正答: ④酸化によりクエン酸を生じる。
ポイント
ホルマリンはホルムアルデヒドの水溶液で、発がん性があり医薬用外劇物に指定され、揮発・酸化を防ぐため遮光・密栓して保存する。原液は弱酸性で、空気中で酸化されるとギ酸(蟻酸)を生じて酸性化が進む(緩衝化ホルマリンで防ぐ)。したがって「酸化によりクエン酸を生じる」という記述は誤りで、生じるのはギ酸である。●ホルマリンの性質=発がん性・医薬用外劇物・刺激性(粘膜障害)・遮光保存・弱酸性。●酸化生成物=ギ酸(蟻酸)。●固定の留意点=中性緩衝ホルマリンで酸性化と固定むらを防ぐ・パラホルムアルデヒド析出に注意。
選択肢ごとの解説
- ① ホルマリンには発がん性があり、正しい記述である。
- ② ホルマリンは揮発・酸化防止のため遮光保存し、正しい記述である。
- ③ ホルマリンは医薬用外劇物に指定されており、正しい記述である。
- ④ 誤り。ホルマリンの酸化で生じるのはギ酸(蟻酸)であり、クエン酸ではない。
- ⑤ ホルマリン原液は弱酸性であり、正しい記述である。
第65回 午後49(病理組織細胞学)
間質性肺炎の原因として誤っているのはどれか。
- ①薬剤
- ②膠原病
- ③放射線照射
- ④ウイルス感染
- ⑤肺動脈血栓塞栓症
正答: ⑤肺動脈血栓塞栓症
ポイント
間質性肺炎は肺胞壁(間質)を主座とする炎症・線維化で、薬剤・膠原病(関節リウマチ・強皮症など)・放射線照射・ウイルス感染・粉塵吸入・過敏性肺炎などが原因となる。肺動脈血栓塞栓症は肺動脈が血栓で閉塞して血流が遮断される病態であり、間質の炎症を本態とする間質性肺炎の原因ではない。病変の局在(間質か血管か)が異なる。●間質性肺炎の原因=薬剤・膠原病・放射線照射・ウイルス感染・粉塵(じん肺)・過敏性肺炎・特発性(IPF)。●肺血管性病変=肺動脈血栓塞栓症・肺高血圧症。●肺胞性病変=細菌性肺炎・肺胞蛋白症。
選択肢ごとの解説
- ① 薬剤(薬剤性肺障害)は間質性肺炎の代表的原因である。
- ② 膠原病は間質性肺炎の原因となる。
- ③ 放射線照射は放射線肺臓炎として間質性肺炎を起こす。
- ④ ウイルス感染は間質性肺炎の原因となる。
- ⑤ 誤り。肺動脈血栓塞栓症は肺動脈の血流障害であり、間質性肺炎の原因ではない。
第65回 午後50(病理組織細胞学)
左心不全症例の肺の特殊染色標本を別に示す。染色法はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB050.3ab8f8ec82.jpg

- ①Alcian blue染色
- ②Berlin blue染色
- ③methylene blue染色
- ④Nile blue染色
- ⑤toluidine blue染色
正答: ②Berlin blue染色
ポイント
左心不全では肺うっ血により肺胞内へ漏出した赤血球をマクロファージが貪食し、ヘモジデリン(鉄を含む色素)を細胞内に蓄積する。このヘモジデリンを貪食したマクロファージは心不全細胞(心臓病細胞)と呼ばれる。Berlin blue(ベルリン青、Prussian blue)染色は三価鉄をフェロシアン化物と反応させ青く染める鉄染色で、ヘモジデリン沈着を証明できるため本標本の染色法に該当する。●鉄(ヘモジデリン)=Berlin blue染色(青)。●酸性粘液多糖類=Alcian blue染色。●異染性(肥満細胞・軟骨基質)=toluidine blue染色。●脂質=Nile blue染色・Sudan系。●心不全細胞=肺うっ血(左心不全)でみられるヘモジデリン貪食マクロファージ。
選択肢ごとの解説
- ① Alcian blue染色は酸性粘液多糖類を染めるもので、鉄染色ではない。
- ② 正しい。Berlin blue染色は鉄(ヘモジデリン)を青く染め、心不全細胞を証明する。
- ③ methylene blue染色は鉄を特異的に染めない。
- ④ Nile blue染色は脂質を染めるもので、鉄染色ではない。
- ⑤ toluidine blue染色は異染性物質を染めるもので、鉄染色ではない。