第65回(2019) 臨床検査技師国家試験 午後51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版

第65回 午後51(病理組織細胞学)

喀痰細胞診のPapanicolaou染色標本を別に示す。出現している細胞はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB051.77af0f62f9.jpg
第65回 午後51 の図

正答: ②肺胞組織球

ポイント
肺胞組織球(肺胞マクロファージ)は喀痰中に最も普通にみられる細胞で、豊富で泡沫状の細胞質をもち、しばしば炭粉などの異物を貪食する。核は円形〜腎形で偏在し、クロマチンは繊細で核小体は目立たず異型に乏しい。多数出現する場合は検体が下気道(肺胞領域)に到達した良好な喀痰であることの目安となる指標細胞でもある。●喀痰中の良性細胞=肺胞組織球・気管支線毛上皮細胞・杯細胞・扁平上皮細胞(口腔由来の汚染)。●喀痰中の悪性細胞=扁平上皮癌・腺癌・小細胞癌。●貪食を示す細胞=肺胞組織球(炭粉・ヘモジデリン貪食でheart failure cell)・異物巨細胞。

選択肢ごとの解説

第65回 午後52(病理組織細胞学)

病理解剖において臨床検査技師が実施できないのはどれか。

正答: ⑤遺族への剖検所見の説明

ポイント
病理解剖(剖検)では、臨床検査技師は医師の指示・監督のもとで開頭・開胸開腹、臓器摘出、臓器重量測定、検体採取、皮膚縫合などの手技を補助・実施できる。一方、剖検所見の医学的判断や遺族への結果説明は診断・説明という医行為であり、医師が行うべき業務で技師の業務範囲には含まれない。死体解剖保存法および臨床検査技師等に関する法律が業務の範囲を定めている。●技師が実施できる剖検手技=開頭・開胸開腹・臓器摘出と計測・検体採取・縫合。●医師が行う行為=剖検所見の判断・診断・遺族への説明・死亡診断。●関連法規=死体解剖保存法・臨床検査技師等に関する法律。

選択肢ごとの解説

第65回 午後53(病理組織細胞学)

ホルムアルデヒドを含む固定液はどれか。

正答: ②ブアン〈Bouin〉液

ポイント
ホルムアルデヒド(ホルマリン)はアルデヒドによる蛋白の架橋固定を行う代表的固定剤である。ブアン液はピクリン酸・ホルマリン・氷酢酸の混合液であり、ホルムアルデヒドを含む。一方、カルノアやツェンカーはアルコール系・昇汞系でホルムアルデヒドを含まない。●アルデヒド系固定液=ホルマリン・ブアン液・PLP液・ザンボーニ液(パラホルムアルデヒドを含む)。●アルコール系固定液=カルノア液・メタノール・エタノール。●昇汞(水銀)系固定液=ツェンカー液・B-5固定液。●ピクリン酸を含む固定液=ブアン液・ザンボーニ液。

選択肢ごとの解説

第65回 午後54(病理組織細胞学)

がん遺伝子はどれか。

正答: ③RAS

ポイント
がん遺伝子(オンコジーン)は活性化により細胞増殖を促進する遺伝子で、正常型(原がん遺伝子)の点突然変異・増幅・転座などで恒常的に活性化して発がんに働く。RASは増殖シグナルを伝えるGTP結合蛋白をコードする代表的ながん遺伝子で、点突然変異により恒常的活性化を起こす。これに対しがん抑制遺伝子は不活化(両アレル欠失)により発がんに働く。●がん遺伝子=RAS・MYC・HER2(ERBB2)・ABL・MYB。●がん抑制遺伝子=APC・RB・TP53(p53)・BRCA1/2・PTEN・VHL。●DNA修復関連=BRCA1/2・MLH1・MSH2(ミスマッチ修復)。

選択肢ごとの解説

第65回 午後55(病理組織細胞学)

脂質の染色法でないのはどれか。

正答: ①Congo red染色

ポイント
脂質染色は脂溶性色素(ズダン色素など)が組織内の脂肪に溶け込む性質を利用して中性脂肪などを染める方法で、凍結切片を用いる。oil red O・Sudan Ⅲ・Sudan black B・Nile blueなどが該当する。一方、Congo red染色はアミロイドを橙赤色に染め偏光下で黄緑色の複屈折を示すアミロイド染色であり、脂質染色ではない。●脂質(脂肪)染色=oil red O・Sudan Ⅲ・Sudan IV・Sudan black B・Nile blue(中性脂肪と酸性脂質の染め分け)・オスミウム酸。●アミロイド染色=Congo red・ダイロン・チオフラビンT(蛍光)。●糖質染色=PAS・アルシアン青。

選択肢ごとの解説

第65回 午後56(病理組織細胞学)

肉芽腫性炎はどれか。

正答: ④サルコイドーシス

ポイント
肉芽腫性炎は類上皮細胞・多核巨細胞・リンパ球からなる肉芽腫(限局性の慢性炎症巣)を形成する特殊型の慢性炎症である。サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を全身に形成する原因不明の疾患で、両側肺門リンパ節腫脹や肺・眼・皮膚病変を呈する。これに対し急性膵炎・腎盂腎炎・気管支肺炎は好中球を主体とする急性・化膿性炎症である。●感染性肉芽腫=結核(乾酪壊死を伴う)・らい・梅毒(ゴム腫)・真菌症・猫ひっかき病。●非感染性肉芽腫=サルコイドーシス(非乾酪性)・クローン病・異物肉芽腫・ウェゲナー肉芽腫症(多発血管炎性肉芽腫症)。●化膿性炎=腎盂腎炎・気管支肺炎・膿瘍。

選択肢ごとの解説

第65回 午後57(病理組織細胞学)

病理組織標本の偏光顕微鏡観察が有用なのはどれか。2つ選べ。

正答: ②アミロイド・③ケイ酸結晶

ポイント
偏光顕微鏡は複屈折性(異方性)をもつ物質を暗視野中に明るく観察できる。アミロイドはCongo red染色後に黄緑色の複屈折を示し、ケイ酸(シリカ)などの無機結晶も複屈折性を呈する。色素であるメラニン・ビリルビン・ヘモジデリンは複屈折性をもたず偏光観察の対象とならない。●偏光で複屈折を示すもの=アミロイド(Congo red後)・尿酸結晶(痛風)・ピロリン酸カルシウム結晶(偽痛風)・ケイ酸結晶・コレステロール結晶・異物(縫合糸・タルク)。●色素(複屈折なし)=メラニン・ヘモジデリン(鉄、ベルリン青で同定)・ビリルビン・リポフスチン。

選択肢ごとの解説

第65回 午後58(病理組織細胞学)

細胞診検体処理法のうち集細胞法でないのはどれか。

正答: ①圧挫法

ポイント
集細胞法は体腔液・尿・洗浄液などの液状検体中に散在する細胞を集めて標本化する処理法で、遠心沈殿法・フィルター法・自動細胞収集法(オートスメア/サイトスピン)・セルブロック法などがある。圧挫法は組織片やリンパ節を2枚のスライドガラスで挟んで押しつぶし塗抹する捺印・塗抹系の方法であり、液状検体から細胞を集める集細胞操作ではない。●集細胞法=遠心沈殿法・フィルター法・自動細胞収集法(サイトスピン)・セルブロック法・液状化検体細胞診(LBC)。●塗抹(標本作製)法=直接塗抹・すり合わせ法・圧挫法・捺印法。

選択肢ごとの解説

第65回 午後59(臨床血液学)

伝染性単核球症でみられる異型リンパ球の説明として正しいのはどれか。

正答: ③活性化したT細胞である。

ポイント
伝染性単核球症はEBウイルス(Epstein-Barrウイルス)がB細胞に感染して起こり、末梢血に増加する異型リンパ球は感染B細胞を排除しようと反応して活性化した細胞傷害性T細胞である。豊富で好塩基性の細胞質と周囲赤血球への辺縁の張り出し(ダウニー細胞)を特徴とする。Paul-Bunnell反応(異好抗体)が陽性となる。●異型リンパ球を生じる疾患=伝染性単核球症(EBウイルス)・サイトメガロウイルス感染・風疹・ウイルス性肝炎・薬剤アレルギー。●EBウイルス関連疾患=伝染性単核球症・Burkittリンパ腫・上咽頭癌・ホジキンリンパ腫の一部。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:ウイルス感染に関連する血液・リンパ系疾患

疾患原因ウイルス特徴的所見
成人T細胞白血病リンパ腫〈ATL/L〉HTLV-1flower細胞(CD3・CD4・CD25陽性)、高カルシウム血症、九州・沖縄地区に多い
Burkittリンパ腫EBウイルス高悪性度のB細胞性リンパ腫
伝染性単核症EBウイルス異型リンパ球(活性化した細胞傷害性CD8陽性T細胞)、Paul-Bunnell反応陽性

第65回 午後60(臨床血液学)

血小板無力症で異常となるのはどれか。

正答: ④ADP血小板凝集能

ポイント
血小板無力症(Glanzmann病)は血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIa(フィブリノゲン受容体)の異常で、フィブリノゲンを介した血小板どうしの凝集が障害される常染色体潜性遺伝の血小板機能異常症である。ADP・コラーゲン・エピネフリンなど各種惹起物質による凝集が低下する一方、GPIb依存性のリストセチン凝集は正常で、これがvon Willebrand病やBernard-Soulier症候群との鑑別点となる。血小板数は正常である。●血小板凝集能の異常=血小板無力症(GPIIb/IIIa異常、リストセチン以外低下)・Bernard-Soulier症候群(GPIb異常、リストセチン凝集低下)・von Willebrand病(vWF低下、リストセチン凝集低下)。●血小板数の異常=特発性血小板減少性紫斑病・血栓性血小板減少性紫斑病。

選択肢ごとの解説

第65回 午後61(臨床血液学)

赤血球の異常所見はどれか。2つ選べ。

正答: ①Cabot環・⑤Schüffner斑点

ポイント
Cabot環は赤血球内に出現する青紫色の環状・8の字状の構造物で、紡錘体(有糸分裂装置)の遺残物とされ、巨赤芽球性貧血や重症貧血でみられる。Schüffner斑点はマラリア(三日熱・卵形)原虫感染赤血球にみられる微細顆粒で、いずれも赤血球の異常所見である。一方、Auer小体・Döhle小体は白血球、Russell小体は形質細胞の所見である。●赤血球内封入体=Cabot環・Howell-Jolly小体(核遺残)・好塩基性斑点(鉛中毒・サラセミア)・パッペンハイマー小体(鉄)・Schüffner斑点(マラリア)。●白血球の封入体=Auer小体(骨髄性白血病芽球)・Döhle小体(感染症の好中球)・中毒性顆粒。●形質細胞=Russell小体(細胞質)・Dutcher小体(核内)。

選択肢ごとの解説

第65回 午後62(臨床血液学)

細胞と表面抗原の組合せで誤っているのはどれか。

正答: ①幹細胞 — CD33

ポイント
CD33は骨髄系細胞のマーカーで、骨髄芽球以降の顆粒球系・単球系細胞に発現するが、最も未分化な造血幹細胞ではCD34が陽性でありCD33は陰性であるため、幹細胞との組合せは誤りである。各表面抗原(CD分類)は血球の系統や分化段階の判定に用いられる。●造血幹細胞・前駆細胞=CD34・CD117。●骨髄系=CD13・CD33(顆粒球・単球系)。●単球=CD14。●巨核球・血小板=CD41・CD42・CD61。●Tリンパ球=CD2・CD3・CD4・CD8。●Bリンパ球=CD19・CD20・CD79a。●NK細胞=CD16・CD56。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な細胞表面マーカー(CD分類)と発現細胞

CD発現細胞・特徴
CD3汎T細胞、T細胞受容体
CD4ヘルパーT細胞(単球でも弱陽性)
CD10幼若B細胞(CALLA)
CD13顆粒球系細胞(CD33とともにFAB分類M0の診断に有用)
CD14成熟単球
CD19B細胞
CD20B細胞
CD25活性化T細胞(IL-2受容体α鎖、成人T細胞白血病でも陽性)
CD33顆粒球系細胞(CD13とともにFAB分類M0の診断に有用)
CD34造血幹細胞
CD38多発性骨髄腫細胞・形質細胞で強陽性(形質細胞に特異的ではない)
CD41巨核球(FAB分類M7の診断に有用)
CD45白血球全般(共通白血球抗原)
CD56NK細胞
CD61血小板(FAB分類M7の診断に有用)
CD138形質細胞に特異的

第65回 午後63(臨床血液学)

骨髄穿刺液のMay-Giemsa染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB063.674229ef8e.jpg
第65回 午後63 の図

正答: ④急性前骨髄球性白血病〈APL〉

ポイント
急性前骨髄球性白血病(APL、FAB分類M3)は異常前骨髄球の増殖を特徴とし、アズール顆粒に富み、束状に重なったAuer小体(faggot細胞)を認める。t(15;17)転座によるPML-RARA融合遺伝子を有し、播種性血管内凝固(DIC)を合併しやすい。全トランス型レチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法が著効する。●FAB分類(急性骨髄性白血病)=M0〜M3(顆粒球系)・M4(骨髄単球性)・M5(単球性)・M6(赤白血病)・M7(巨核芽球性)。●Auer小体=骨髄性白血病で陽性、APLでは束状(faggot)。●白血病とDIC=APL(M3)で高頻度。●ペルオキシダーゼ=骨髄系陽性・リンパ系陰性。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:急性骨髄性白血病〈AML〉のFAB分類と特徴

病型(FAB)別名MPO(ペルオキシダーゼ)特徴
M0最未分化型骨髄芽球性白血病陰性免疫学的マーカーは骨髄系のみ陽性
M1急性未分化型骨髄芽球性白血病3%以上陽性骨髄中の芽球が90%以上
M2急性分化型骨髄芽球性白血病3%以上陽性芽球90%未満、一部にt(8;21)
M3急性前骨髄球性白血病(APL)高率陽性t(15;17)、Auer小体束(faggot細胞)、DIC合併
M4急性骨髄単球性白血病3%以上陽性顆粒球系・単球系がともに増加、非特異的エステラーゼ陽性(M4Eoは好酸球増加・inv(16))
M5急性単球性白血病陰性非特異的エステラーゼ陽性
M6急性赤白血病3%以上陽性赤芽球50%以上
M7急性巨核芽球性白血病陰性巨核球系マーカー(CD41・CD42・CD61)陽性
急性リンパ性白血病(ALL)はMPO陰性(3%未満)で鑑別する。染色体異常・融合遺伝子は既存の『白血病の染色体異常と融合遺伝子』表を参照。

第65回 午後64(臨床血液学)

末梢血のMay-Giemsa染色標本を別に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB064.1e4013c737.jpg
第65回 午後64 の図

正答: ⑤巨赤芽球性貧血

ポイント
巨赤芽球性貧血はビタミンB₁₂または葉酸欠乏によるDNA合成障害で核成熟が遅れる貧血で、末梢血では大型の卵円形赤血球(大球性・MCV高値)や好中球の過分葉が特徴である。骨髄では核と細胞質の成熟解離を示す巨赤芽球がみられる。ビタミンB₁₂欠乏では内因子欠乏(悪性貧血)や胃切除が原因となる。●大球性貧血=巨赤芽球性貧血(ビタミンB₁₂・葉酸欠乏)。●小球性低色素性貧血=鉄欠乏性貧血・サラセミア・鉄芽球性貧血・慢性疾患に伴う貧血。●正球性貧血=再生不良性貧血・溶血性貧血・腎性貧血・急性出血。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:赤血球指数〈MCV〉による貧血の分類と主な疾患

補足事項内容
遺伝性球状赤血球症MCVが正常範囲でも赤血球サイズの分布は小型側に偏ることがある(球状赤血球)
巨赤芽球性貧血大球性(MCV高値)

第65回 午後65(臨床血液学)

骨髄穿刺液のMay-Giemsa染色標本を別に示す。診断にあたり、ペルオキシダーゼ染色と合わせて必要となるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB065.cf6def86b2.jpg
第65回 午後65 の図

正答: ③エステラーゼ染色

ポイント
急性白血病の系統鑑別では、ミエロペルオキシダーゼ染色(骨髄系で陽性)に加えてエステラーゼ染色を併用する。特異的エステラーゼ(ナフトールAS-Dクロロアセテートエステラーゼ)は顆粒球系で陽性、非特異的エステラーゼ(α-ナフチルブチレートなど)は単球系で陽性となり、後者はフッ化ナトリウムで阻害される点が鑑別に用いられる。●急性白血病の特殊染色=ペルオキシダーゼ(骨髄系)・特異的エステラーゼ(顆粒球系)・非特異的エステラーゼ(単球系、NaFで阻害)・PAS(リンパ性・赤白血病)。●鉄染色=環状鉄芽球(鉄芽球性貧血・MDS)。●好中球アルカリホスファターゼ(NAP)=慢性骨髄性白血病で低下、類白血病反応で上昇。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:血液細胞化学染色(特殊染色)の目的・判定・臨床意義

染色目的・陽性の対象臨床意義
鉄染色3価の非ヘモグロビン鉄(環状鉄芽球など)の証明骨髄異形成症候群〈MDS〉・鉄芽球性貧血の環状鉄芽球の鑑別
ペルオキシダーゼ染色顆粒球系細胞で陽性、リンパ系は陰性AML(3%以上陽性)とALLの鑑別
特異的エステラーゼ染色顆粒球系細胞で陽性非特異的エステラーゼとの二重染色でM4の鑑別
非特異的エステラーゼ染色単球系細胞で陽性、フッ化ナトリウムで阻害される単球性白血病(M4・M5)の鑑別
PAS染色正常赤芽球は陰性、異常な赤芽球やリンパ芽球で陽性赤白血病(M6)・ALL・MDSの異常赤芽球の検出
好中球アルカリホスファターゼ〈NAP〉染色好中球の成熟度を反映CML・PNHで低値、真性多血症・重症感染症で高値

第65回 午後66(臨床血液学)

血算で赤血球250万/μL、Hb 5.0 g/dL、Ht 18%、白血球3,500/μL、血小板40万/μLであった。考えられるのはどれか。

正答: ②鉄欠乏性貧血

ポイント
赤血球250万/μL、Hb 5.0g/dL、Ht 18%から、平均赤血球容積(MCV)は約72fL、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)は約28%となり、小球性低色素性貧血である。小球性低色素性貧血の代表は鉄欠乏性貧血で、慢性出血や鉄摂取不足により生じ、血清鉄低下・総鉄結合能上昇・フェリチン低下を示す。●小球性低色素性貧血(MCV低下)=鉄欠乏性貧血・サラセミア・鉄芽球性貧血・慢性疾患に伴う貧血。●正球性正色素性貧血=再生不良性貧血・溶血性貧血・腎性貧血・急性出血。●大球性貧血=巨赤芽球性貧血(ビタミンB₁₂・葉酸欠乏)。

選択肢ごとの解説

第65回 午後67(臨床血液学)

ビタミンK欠乏で異常を示すのはどれか。2つ選べ。

正答: ④プロテインC活性・⑤プロトロンビン時間〈PT〉

ポイント
ビタミンKは凝固因子II・VII・IX・X、および抗凝固因子であるプロテインC・プロテインSのγ-カルボキシル化に必要である。ビタミンK欠乏ではこれらが減少し、外因系を反映するプロトロンビン時間(PT)が延長する。抗凝固因子のプロテインC活性も低下し、ワルファリン(ビタミンK拮抗薬)投与でも同様の変化を示す。●ビタミンK依存性因子=II・VII・IX・X・プロテインC・プロテインS。●ビタミンK非依存性=I(フィブリノゲン)・V・VIII・XI・XII・XIII。●PT延長=外因系(VII)・共通系(II・V・X・I)の異常、ビタミンK欠乏・肝障害・ワルファリン。●APTT延長=内因系(VIII・IX・XI・XII)の異常。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:ビタミンK依存性の凝固因子と欠乏時の検査所見

区分該当する因子・検査備考
ビタミンK依存性(凝固因子)第II〈プロトロンビン〉・VII・IX・X因子肝でγ-カルボキシル化を受けて活性化
ビタミンK依存性(抗凝固因子)プロテインC・プロテインS抗凝固因子として働く
ビタミンK非依存性第V・VIII・XI・XII因子、フィブリノゲン〈第I因子〉、アンチトロンビンワルファリンでも直接は低下しない
欠乏時に延長する検査プロトロンビン時間〈PT〉(先行)、進行するとAPTTも延長第VII因子は半減期が短く鋭敏
欠乏時に変化しない項目血小板数、出血時間、フィブリノゲン量血小板・血管系はビタミンK非依存
ビタミンKは肝臓での凝固因子・抗凝固因子の産生時に、グルタミン酸残基をγ-カルボキシル化する反応の補酵素として働く。

第65回 午後68(臨床微生物学)

作用機序が細胞壁合成阻害によるのはどれか。2つ選べ。

正答: ①アンピシリン・⑤バンコマイシン

ポイント
細胞壁合成阻害薬にはβ-ラクタム系(ペニシリン・セフェム・カルバペネム系)とグリコペプチド系(バンコマイシン)がある。アンピシリンはペニシリン系でペプチドグリカン架橋酵素(ペニシリン結合蛋白)を阻害し、バンコマイシンはペプチドグリカン前駆体のD-Ala-D-Alaに結合して合成を阻害する。●細胞壁合成阻害=β-ラクタム系(ペニシリン・セフェム・カルバペネム)・グリコペプチド系(バンコマイシン)・ホスホマイシン。●蛋白合成阻害=アミノグリコシド系(30S)・テトラサイクリン系(30S)・マクロライド系(50S)・クロラムフェニコール(50S)。●核酸合成阻害=キノロン系(DNAジャイレース)・リファンピシン(RNAポリメラーゼ)。●葉酸合成阻害=ST合剤。

選択肢ごとの解説

第65回 午後69(臨床微生物学)

蚊が媒介するのはどれか。

正答: ②黄熱

ポイント
黄熱は黄熱ウイルスによる蚊媒介性のウイルス感染症で、ネッタイシマカなどが媒介する。回帰熱はダニまたはシラミ、ライム病と日本紅斑熱はマダニが媒介する。Q熱のヒトへの主な感染経路は、感染動物に由来する汚染粉じん・エアロゾルの吸入である。媒介する節足動物(ベクター)ごとに疾患を区別する。●蚊媒介=黄熱・デング熱・ジカ熱・日本脳炎・マラリア・ウエストナイル熱・フィラリア症。●マダニ媒介=日本紅斑熱・ライム病・回帰熱(ダニ媒介)・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)。●ツツガムシ(幼虫)媒介=ツツガムシ病(ツツガムシはケダニ亜目でマダニとは別のダニ)。●シラミ媒介=発疹チフス・回帰熱(シラミ媒介)。●Q熱=ヒトでは感染動物の出産物・排泄物などに由来する汚染粉じん・エアロゾルの吸入が主。

選択肢ごとの解説

第65回 午後70(臨床微生物学)

経口感染する肝炎ウイルスはどれか。2つ選べ。

正答: ①A型・⑤E型

ポイント
肝炎ウイルスのうちA型とE型は経口(糞口)感染し、流行性肝炎を起こすが通常は慢性化しない(E型は臓器移植後など免疫抑制下で慢性化する例が報告されている)。B型・C型・D型は血液・体液を介して感染し、慢性化や肝硬変・肝細胞癌のリスクとなる。E型はブタ・シカ・イノシシの加熱不十分な肉摂取による人獣共通感染としても重要である。●経口(糞口)感染=A型・E型(通常は慢性化しない。E型は免疫抑制下で慢性化しうる)。●血液・体液感染=B型・C型・D型(慢性化あり)。●D型=B型と共感染・重感染して初めて成立(不完全ウイルス)。●慢性化・発癌リスク=B型・C型。

選択肢ごとの解説

第65回 午後71(臨床微生物学)

染色法と目的菌の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ②Giménez〈ヒメネス〉染色 — Legionella pneumophila・④オーラミン・ローダミン染色 — Mycobacterium tuberculosis

ポイント
Giménez染色はLegionellaやRickettsiaの染色に用いられ菌体を赤色に染める。オーラミン・ローダミン染色は蛍光色素を用いた抗酸菌(結核菌)染色である。各染色は目的菌の細胞壁・構造的特徴に応じて選択される。●抗酸菌染色=Ziehl-Neelsen染色・Kinyoun染色・オーラミン(蛍光)。●莢膜の観察=墨汁法(Cryptococcus)・莢膜染色。●芽胞染色=Wirtz-Conklin法(Bacillus・Clostridium)。●異染小体(メタクロマジー)染色=Neisser法・Albert法(Corynebacterium diphtheriae)。●Legionella・Rickettsia=Giménez染色。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:微生物の染色法と検出対象(構造・真菌・特殊病原体)

染色法検出対象備考
Wirtz法〈Wirtz-Conklin法〉芽胞(Bacillus属・Clostridium属)マラカイトグリーンで加温染色、対比染色はサフラニン
Hiss法莢膜フクシン液またはゲンチアナ紫液、加温染色
Leifson法鞭毛ホルマリン固定後に色素で塗抹染色
Neisser法・Albert法異染小体(Corynebacterium diphtheriae)異染小体は黒褐色、菌体は黄色に染まる
Ziehl-Neelsen法抗酸菌(結核菌等)石炭酸フクシンで加温染色、赤色に呈色
Kinyoun法(冷染色)抗酸菌・Nocardia属(弱抗酸性)加温せずに抗酸性を証明できる
オーラミン・ローダミン法(蛍光法)抗酸菌(結核菌等)蛍光顕微鏡でのスクリーニングに用いる
Giménez〈ヒメネス〉染色Legionella属・リケッチア属菌体は赤色、背景はマラカイト緑により緑〜青緑色に染まる
墨汁法(陰性染色)Cryptococcus属の莢膜髄液中のクリプトコックスの莢膜観察に用いる
KOH法(水酸化カリウム法)皮膚糸状菌(Trichophyton属等)角質を溶解し直接鏡検する
Grocott〈メセナミン銀〉染色真菌全般・Pneumocystis jirovecii黒褐色に染色、主に病理標本で用いる
Gram染色(パイフェル液使用)グラム陽性菌・陰性菌の鑑別クリスタル紫→ヨウ素液〈ルゴール液〉(媒染)→アルコール脱色→パイフェル液〈希釈石炭酸フクシン〉またはサフラニン(後染色)

第65回 午後72(臨床微生物学)

下気道感染症患者の喀痰のGram染色標本を別に示す。分離菌は5%ヒツジ血液寒天培地およびチョコレート寒天培地に発育した。推定されるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB072.b73600cf07.jpg
第65回 午後72 の図

正答: ④Moraxella catarrhalis

ポイント
Moraxella catarrhalisはGram陰性双球菌で、下気道感染症(特に慢性気道感染症や高齢者・慢性閉塞性肺疾患患者)や中耳炎・副鼻腔炎の起因菌となる。ヒツジ血液寒天培地・チョコレート寒天培地に発育し、オキシダーゼ陽性・DNase陽性で、多くがβ-ラクタマーゼを産生する。●Gram陰性球菌=Moraxella catarrhalis(双球菌)・Neisseria(淋菌・髄膜炎菌)。●Gram陰性桿菌(呼吸器)=Haemophilus influenzae(X・V因子要求)・Klebsiella pneumoniae・Pseudomonas aeruginosa。●嫌気性Gram陰性桿菌=Fusobacterium・Bacteroides。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:Neisseria属・Moraxella属の糖分解パターンによる鑑別

菌グラム染色形態グルコース分解マルトース分解備考
Neisseria meningitidis陰性双球菌分解分解髄膜炎菌、CO₂要求性、飛沫感染、五類感染症(全数把握)
Neisseria gonorrhoeae陰性双球菌分解非分解淋菌、CO₂要求性、初尿での核酸増幅検査
Moraxella catarrhalis陰性双球菌非分解非分解下気道感染症・中耳炎、ヒツジ血液寒天にも発育
Haemophilus influenzaeもグルコース・マルトースをともに分解するが、双球菌ではなく多形性の球桿菌である点で鑑別する。

第65回 午後73(臨床微生物学)

血液培養陽性のボトル内容液から分離培養したコロニーのGram染色像を別に示す。Gram染色では矢印で示す形態を示し、好気培養で発育せず、カタラーゼテスト陰性であった。推定されるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB073.c22bf5e512.jpg
第65回 午後73 の図

正答: ③Clostridium spp.

ポイント
Clostridium属はGram陽性の芽胞形成桿菌で、偏性嫌気性のため好気培養では発育せず、カタラーゼ陰性である。血液培養から検出され、好気発育せずカタラーゼ陰性のGram陽性桿菌はClostridium属が推定される。●偏性嫌気性Gram陽性桿菌(芽胞形成)=Clostridium(破傷風・ガス壊疽・ボツリヌス・ディフィシル)。●好気性・通性Gram陽性桿菌(芽胞形成)=Bacillus(カタラーゼ陽性)。●Gram陽性分枝桿菌(芽胞なし)=Actinomyces(嫌気性)・Nocardia(好気性・部分抗酸性)。●Gram陽性桿菌(芽胞なし・好気)=Corynebacterium・Listeria。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:代表的な偏性嫌気性菌の性状(Clostridium属・Bacteroides fragilis)

菌グラム染色性・形態主な性状
Clostridium属(Clostridioides difficileを含む)陽性桿菌、芽胞を形成好気培養では発育しない、カタラーゼ陰性、芽胞は消毒薬に抵抗性を示す
Bacteroides fragilis陰性桿菌、芽胞は形成しない20%胆汁培地に発育(胆汁耐性)、カタラーゼ陽性、エスクリン加水分解陽性、インドール陰性

第65回 午後74(臨床微生物学)

ウイルスと疾患の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ①EBウイルス — 伝染性単核球症・②ロタウイルス — 乳児嘔吐下痢症

ポイント
EBウイルス(Epstein-Barrウイルス)はヘルペスウイルス科で伝染性単核球症やBurkittリンパ腫・上咽頭癌に関与する。ロタウイルスは乳幼児の嘔吐下痢症(冬季下痢症)の主要原因である。●下痢症のウイルス=ロタウイルス(乳幼児)・ノロウイルス・アデノウイルス(腸管型)・サポウイルス。●発疹・小児疾患=ヒトパルボウイルスB19(伝染性紅斑/リンゴ病)・コクサッキー・エンテロウイルス71(手足口病)・麻疹・風疹。●結膜炎=アデノウイルス(流行性角結膜炎・咽頭結膜熱)。●ポリオウイルス=急性灰白髄炎(ポリオ)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主なウイルスと疾患

ウイルス核酸エンベロープ疾患
ヒトパルボウイルスB19DNA−伝染性紅斑(リンゴ病)
単純ヘルペスウイルスDNA+1型:口唇/角膜ヘルペス、2型:性器ヘルペス
水痘・帯状疱疹ウイルスDNA+水痘、帯状疱疹、脳炎
EBウイルスDNA+伝染性単核球症、Burkittリンパ腫
サイトメガロウイルスDNA+巨細胞封入体症、間質性肺炎
ヒトヘルペスウイルス6、7DNA+突発性発疹
B型肝炎ウイルスDNA+B型肝炎
アデノウイルスDNA−咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎
アデノウイルス40、41DNA−乳児の急性胃腸炎
パピローマウイルスDNA−疣贅(いぼ)、子宮頸癌
エンテロウイルス71RNA−手足口病
ロタウイルスRNA−乳児嘔吐下痢症
ノロウイルスRNA−ウイルス性食中毒・胃腸炎
日本脳炎ウイルスRNA+日本脳炎
エコーウイルスRNA−夏風邪、無菌性髄膜炎
コクサッキーウイルスRNA−A群:ヘルパンギーナ・手足口病、B群:流行性筋痛症・心筋炎
ライノウイルスRNA−風邪症候群(成人の普通感冒)
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉RNA+AIDS
風疹ウイルスRNA+風疹、先天性風疹症候群
ムンプスウイルスRNA+流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
インフルエンザウイルスRNA+流行性感冒
デングウイルスRNA+デング熱、デング出血熱
C型肝炎ウイルスRNA+C型肝炎、肝硬変、肝癌
RSウイルスRNA+乳児の冬季肺炎(細気管支炎)
コロナウイルスRNA+普通感冒など

第65回 午後75(臨床微生物学)

プラスミドによる耐性遺伝子の伝播に該当するのはどれか。

正答: ④接合伝達

ポイント
細菌間の遺伝子伝播には、形質転換(裸のDNA取り込み)、形質導入(バクテリオファージ介在)、接合伝達(性線毛を介した直接接触)がある。プラスミドに乗った薬剤耐性遺伝子の伝播は、供与菌の性線毛を介して受容菌へプラスミドを移す接合伝達による。●形質転換=環境中の裸のDNAを取り込む(肺炎球菌・Haemophilus)。●形質導入=バクテリオファージが宿主DNAを運搬。●接合伝達=Fプラスミド・Rプラスミドが性線毛を介して伝播(薬剤耐性の主経路)。●トランスポゾン・インテグロン=可動性遺伝因子による耐性遺伝子の移動。

選択肢ごとの解説

第65回 午後76(臨床微生物学)

Mycobacterium属でⅠ群〈光発色菌群〉はどれか。

正答: ④M. kansasii

ポイント
非結核性抗酸菌はコロニーの色素産生と発育速度によりRunyon(ラニヨン)分類でⅠ〜Ⅳ群に分けられる。Ⅰ群(光発色菌群、photochromogen)は遅発育菌のうち暗所では無色だが光照射により黄〜橙色の色素を産生する群で、Mycobacterium kansasiiとM. marinumが代表である。Ⅱ群(暗発色菌群、scotochromogen)は光の有無にかかわらず色素を産生し、Ⅲ群(非発色菌群、nonchromogen)は色素を産生せず、Ⅳ群(迅速発育菌)は1週間以内に発育する。
●遅発育菌Ⅰ群(光発色)=M. kansasii・M. marinum。
●遅発育菌Ⅱ群(暗発色)=M. scrofulaceum・M. gordonae。
●遅発育菌Ⅲ群(非発色)=M. avium・M. intracellulare(MAC)。
●迅速発育菌Ⅳ群=M. fortuitum・M. chelonae・M. abscessus。

選択肢ごとの解説

第65回 午後77(臨床微生物学)

インフルエンザウイルスの主な感染経路はどれか。2つ選べ。

正答: ①接触感染・②飛沫感染

ポイント
インフルエンザウイルスは咳・くしゃみ・会話で放出される飛沫(直径5マイクロメートル以上)を近距離で吸入する飛沫感染と、ウイルスの付着した手指やドアノブなどを介して粘膜へ運ばれる接触感染を主な経路とする。飛沫は短距離で落下するため通常の飛沫予防策(マスク・手指衛生)で対応できる点が、長距離を漂う飛沫核による空気感染と異なる。空気(飛沫核)感染を主経路とするのは結核・麻疹・水痘の3疾患である。
●飛沫感染=インフルエンザ・風疹・流行性耳下腺炎・百日咳・髄膜炎菌。
●空気(飛沫核)感染=結核・麻疹・水痘。
●接触感染=インフルエンザ・ノロウイルス・MRSA・疥癬。
●経口(糞口)感染=ノロウイルス・ロタウイルス・腸管出血性大腸菌・A型肝炎。

選択肢ごとの解説

第65回 午後78(臨床微生物学)

Pseudomonas aeruginosaで正しいのはどれか。

正答: ⑤ピオシアニンを産生する。

ポイント
Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)はブドウ糖非発酵のGram陰性桿菌で、極単毛(単毛性)鞭毛による運動性をもち、オキシダーゼ陽性を示す。青緑色の色素ピオシアニンと黄緑色の蛍光色素ピオベルジン(フルオレセイン)を産生し、培地が緑色を呈して独特の芳香を放つのが特徴である。42℃でも発育し、消毒薬や多くの抗菌薬に抵抗性を示すため、易感染患者の日和見感染や院内感染の重要起因菌となる。
●ブドウ糖非発酵Gram陰性桿菌=Pseudomonas・Acinetobacter・Stenotrophomonas・Burkholderia。
●オキシダーゼ陽性=Pseudomonas・Vibrio・Neisseria・Campylobacter(腸内細菌科は陰性)。
●緑膿菌の色素=ピオシアニン(青緑)・ピオベルジン(蛍光)・ピオルビン(赤)・ピオメラニン(褐)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:細菌が産生する色素と代表菌

色素産生菌色調
ピオシアニンPseudomonas aeruginosa青緑色
ピオベルジン(フルオレセイン)Pseudomonas aeruginosa黄緑色(蛍光性)
プロジギオシンSerratia marcescens赤色
Pseudomonas aeruginosaはアシルアミダーゼ試験も陽性を示す。

第65回 午後79(臨床免疫学)

結核菌特異的全血インターフェロンγ遊離測定法〈IGRA〉でサイトカインを産生する細胞はどれか。

正答: ④ヘルパーT細胞

ポイント
結核菌特異的インターフェロンγ遊離測定法(IGRA、interferon-gamma release assay。QuantiFERONやT-SPOT)は、結核菌に特異的なESAT-6やCFP-10などの抗原で全血またはリンパ球を刺激し、放出されるインターフェロンγを測定する検査である。インターフェロンγを産生するのは結核菌抗原に感作された記憶ヘルパーT細胞(Th1細胞)であり、BCG接種や大半の非結核性抗酸菌の影響を受けないため、ツベルクリン反応より特異度が高い。
●Th1サイトカイン=インターフェロンγ・インターロイキン2・腫瘍壊死因子(細胞性免疫・マクロファージ活性化)。
●Th2サイトカイン=インターロイキン4・5・13(B細胞活性化・IgE産生・好酸球)。
●抗体産生細胞=形質細胞(B細胞由来)。
●結核の補助診断=IGRA・ツベルクリン反応・喀痰塗抹/培養・核酸増幅検査。

選択肢ごとの解説

第65回 午後80(臨床免疫学)

腫瘍マーカーと対象となる腫瘍との組合せで誤っているのはどれか。

正答: ②SCC — 大腸癌

ポイント
SCC(squamous cell carcinoma related antigen、扁平上皮癌関連抗原)は子宮頸癌・肺扁平上皮癌・食道癌・頭頸部癌など扁平上皮癌のマーカーで、腺癌が主体の大腸癌のマーカーではない。大腸癌・胃癌など消化器の腺癌ではCEA(carcinoembryonic antigen、癌胎児性抗原)が用いられる。腫瘍マーカーは臓器特異性が完全ではなく、組織型と対応づけて理解する必要がある。
●扁平上皮癌=SCC・CYFRA(サイトケラチン19フラグメント)。
●消化器腺癌(胃・大腸)=CEA・CA19-9。
●膵・胆道癌=CA19-9・DUPAN-2・SPan-1。
●卵巣癌=CA125・CA72-4。
●肝細胞癌=AFP(αフェトプロテイン)・PIVKA-Ⅱ。
●前立腺癌=PSA。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な腫瘍マーカーと高値を示す代表疾患

腫瘍マーカー高値を示す代表疾患
AFP原発性肝細胞癌
PIVKA-Ⅱ原発性肝細胞癌
CEA消化器系癌(胃・大腸・転移性肝)
CA125卵巣癌
CA19-9膵臓癌・胆道系癌
CA15-3転移性乳癌
CYFRA21-1肺癌(扁平上皮)
ProGRP肺小細胞癌
NSE肺小細胞癌・神経芽腫
hCG絨毛癌
SCC扁平上皮癌
PSA・PAP前立腺癌

第65回 午後81(臨床免疫学)

新生児の梅毒血清反応において先天梅毒を示唆する所見はどれか。

正答: ④FTA-ABS法でIgM抗体が陽性である。

ポイント
新生児ではIgG型抗体が母体から経胎盤的に移行するため、母体由来の梅毒抗体が陽性でも児自身の感染(先天梅毒)とは限らない。一方IgMは分子量が大きく胎盤を通過しないため、新生児自身が産生したFTA-ABS-IgM抗体(蛍光トレポネーマ抗体吸収試験のIgM抗体)の陽性は、児自身がTreponema pallidumに感染していること、すなわち先天梅毒を示唆する所見となる。母体由来のIgG抗体価は治療がなくても時間とともに低下していく。
●梅毒の脂質(非トレポネーマ)抗原検査=RPR・VDRL(カルジオリピンに対する抗体、生物学的偽陽性あり、治療効果判定に有用)。
●梅毒のトレポネーマ抗原検査=TPPA・TPHA・FTA-ABS(特異度が高い)。
●胎盤を通過する抗体=IgG(受動免疫)/通過しない=IgM(児の感染指標)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:梅毒血清学的検査の特徴

検査分類代表的検査法特徴
非トレポネーマ抗原法(STS法・リン脂質抗原を用いる)ガラス板法、RPRカードテスト、緒方法(Wassermann反応)疾患特異性が低く、SLEや妊娠などで生物学的偽陽性〈BFP〉を生じうる
トレポネーマ抗原法(TP抗原を用いる)TPHA法、TPPA法、FTA-ABS法特異性が高く、FTA-ABS法は確定診断に用いられる。治癒後も長期間陽性が持続する
感染初期はSTS法のみ陽性でTPPA法は陰性のことがある(STS陽性・TPPA陰性は感染初期または生物学的偽陽性を示唆)。先天梅毒の診断にはFTA-ABS法によるIgM型抗体の検出(児自身の産生を反映)が有用。

第65回 午後82(臨床免疫学)

間接蛍光抗体法による抗核抗体検査所見(別冊No.13)を別に示す。この所見の染色パターンはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB082.00253634e4.jpg
第65回 午後82 の図

正答: ②斑紋型

ポイント
間接蛍光抗体法による抗核抗体検査では、HEp-2細胞などを基質とし核内の蛍光分布パターンを観察する。斑紋型(speckled、斑紋状)は核内に微細〜粗大な顆粒状(斑点状)の蛍光が散在するパターンで、核小体は染まらない。このパターンは抗ENA抗体(抗U1-RNP・抗Sm・抗SS-A/SS-B・抗Scl-70抗体など)でみられ、混合性結合組織病やSLE、シェーグレン症候群などで検出される。
●均質型(homogeneous)=抗二本鎖DNA抗体・抗ヒストン抗体(SLE・薬剤誘発性ループス)。
●斑紋型(speckled)=抗ENA抗体(抗U1-RNP・抗Sm・抗SS-A/SS-B)。
●辺縁型(peripheral/rim)=抗二本鎖DNA抗体(SLE、活動性と相関)。
●核小体型(nucleolar)=抗核小体抗体(全身性強皮症)。
●細胞質型=抗ミトコンドリア抗体・抗Jo-1抗体。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患

染色パターン推定される抗体代表的な疾患
辺縁(peripheral)型抗DNA抗体全身性エリテマトーデス〈SLE〉
均質(homogeneous)型抗ヒストン抗体/抗DNP抗体SLE・薬剤誘発性ループス/SLE・RA・全身性強皮症
斑紋(speckled)型 — 抗U1-RNP抗体抗ENA抗体混合性結合組織病〈MCTD〉
斑紋(speckled)型 — 抗Sm抗体抗ENA抗体SLE
斑紋(speckled)型 — 抗SS-B抗体抗ENA抗体Sjögren症候群
斑紋(speckled)型 — 抗Scl-70抗体抗ENA抗体全身性強皮症
核小体(nucleolar)型抗核小体抗体・抗PM-Scl抗体全身性強皮症
散在斑紋(discrete speckled)型抗セントロメア抗体CREST症候群
細胞質(cytoplasmic)型抗ミトコンドリア抗体/抗Jo-1抗体/抗SS-A抗体原発性胆汁性胆管炎/多発性筋炎・皮膚筋炎/Sjögren症候群

第65回 午後83(臨床免疫学)

間接蛍光抗体法による抗核抗体検査所見(別冊No.13)を別に示す。この所見を示す自己抗体はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB083.00253634e4.jpg
第65回 午後83 の図

正答: ⑤抗ENA〈可溶性核抗原〉抗体

ポイント
前問の斑紋型染色パターンを呈する自己抗体は抗ENA(extractable nuclear antigen、可溶性核抗原)抗体であり、抗U1-RNP・抗Sm・抗SS-A・抗SS-B抗体などが含まれる。これらは核内の蛋白・核酸複合体に対する抗体で、混合性結合組織病(抗U1-RNP)、SLE(抗Sm・抗SS-A)、シェーグレン症候群(抗SS-A/SS-B)など特定の膠原病と関連する。
●斑紋型を示す抗ENA抗体=抗U1-RNP(混合性結合組織病)・抗Sm(SLE特異)・抗SS-A/SS-B(シェーグレン症候群)・抗Scl-70(全身性強皮症)。
●均質・辺縁型=抗二本鎖DNA抗体(SLE)・抗ヒストン抗体(薬剤誘発性ループス)。
●核小体型=抗核小体抗体(強皮症)。
●細胞質型=抗ミトコンドリア抗体(原発性胆汁性胆管炎)・抗Jo-1抗体(多発筋炎)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患

染色パターン推定される抗体代表的な疾患
辺縁(peripheral)型抗DNA抗体全身性エリテマトーデス〈SLE〉
均質(homogeneous)型抗ヒストン抗体/抗DNP抗体SLE・薬剤誘発性ループス/SLE・RA・全身性強皮症
斑紋(speckled)型 — 抗U1-RNP抗体抗ENA抗体混合性結合組織病〈MCTD〉
斑紋(speckled)型 — 抗Sm抗体抗ENA抗体SLE
斑紋(speckled)型 — 抗SS-B抗体抗ENA抗体Sjögren症候群
斑紋(speckled)型 — 抗Scl-70抗体抗ENA抗体全身性強皮症
核小体(nucleolar)型抗核小体抗体・抗PM-Scl抗体全身性強皮症
散在斑紋(discrete speckled)型抗セントロメア抗体CREST症候群
細胞質(cytoplasmic)型抗ミトコンドリア抗体/抗Jo-1抗体/抗SS-A抗体原発性胆汁性胆管炎/多発性筋炎・皮膚筋炎/Sjögren症候群

第65回 午後84(臨床免疫学)

モノクローナル抗体作製法について正しいのはどれか。

正答: ④骨髄腫細胞とB細胞が融合したものはハイブリドーマと呼ばれる。

ポイント
モノクローナル抗体は、抗原で免疫した動物の脾臓B細胞(抗体産生能をもつが寿命が短い)と、無限増殖能をもつ骨髄腫細胞(ミエローマ)を融合させたハイブリドーマから得る。細胞融合にはポリエチレングリコール(PEG)を用いる。選択にはHAT培地(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン)を用い、アミノプテリンが核酸のde novo(新規)合成を阻害するため、HGPRT(ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)を欠損させた骨髄腫はサルベージ経路も使えず死滅する。B細胞由来のHGPRTをもつハイブリドーマのみがヒポキサンチンを利用して生存する。
●ハイブリドーマ作製の要素=B細胞(特異性)+骨髄腫細胞(不死性)+PEG(融合)+HAT培地(選択)。
●HAT培地の各成分=ヒポキサンチン/チミジン(サルベージ経路の基質)・アミノプテリン(de novo合成阻害)。
●抗体の種類=モノクローナル抗体(単一エピトープ)・ポリクローナル抗体(複数エピトープ)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:モノクローナル抗体作製(ハイブリドーマ法)の要素

構成要素役割
脾臓B細胞(免疫した動物由来)目的抗原に対する特異抗体を産生するが、単独では増殖寿命が短い
骨髄腫細胞(ミエローマ)無限増殖能をもつが、抗体は産生しない
細胞融合剤:ポリエチレングリコール〈PEG〉B細胞と骨髄腫細胞を融合させる
HAT培地(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン)アミノプテリンが核酸のde novo合成を阻害し、骨髄腫同士の融合細胞を排除。骨髄腫とB細胞が融合したハイブリドーマのみが生存・増殖する
骨髄腫細胞とB細胞が融合した細胞をハイブリドーマと呼ぶ。細胞融合剤にエタノールは用いない。

第65回 午後85(臨床免疫学)

細菌に対する自然免疫の機能で誤っているのはどれか。

正答: ②補体系では主として古典経路が働く。

ポイント
自然免疫は病原体を非特異的・即時的に排除する防御で、Toll様受容体による病原体関連分子パターン(PAMPs)の認識、好中球・マクロファージによる貪食、補体の活性化、粘膜の粘液・リゾチームなどの抗菌作用からなる。自然免疫で主に働く補体経路は抗体を必要としない第二経路(副経路、alternative pathway)とレクチン経路であり、抗体(免疫複合体)を起点とする古典経路は獲得免疫と連動して働く。
●補体活性化経路=古典経路(抗体依存・獲得免疫)/第二経路(菌体表面で直接・自然免疫)/レクチン経路(マンノース結合レクチン・自然免疫)。
●自然免疫の構成=物理化学的バリア(皮膚・粘液・リゾチーム)・食細胞(好中球・マクロファージ)・NK細胞・補体・パターン認識受容体(Toll様受容体)。
●獲得免疫=T細胞(細胞性)・B細胞/抗体(液性)・抗原特異性と記憶。

選択肢ごとの解説

第65回 午後86(臨床免疫学)

健常成人の血清免疫電気泳動像を別に示す。矢印が示す沈降線に相当するのはどれか。ただし、泳動像上部は写真、下部はその一部の模式図を示す。

図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB086.2410788363.jpg
第65回 午後86 の図

正答: ②IgA

ポイント
血清免疫電気泳動では、血清成分を寒天上で電気泳動した後に抗ヒト血清を反応させ、各蛋白が抗原抗体反応で形成する沈降線(弧)の位置・長さ・形で異常蛋白を評価する。IgGは血清中で最も濃度が高く、長く濃い沈降線を形成する。IgAは血清中で2番目に多い免疫グロブリンで、IgGの陽極側寄りに特徴的な沈降線を示し、矢印はこのIgAに相当する。
●免疫グロブリンの血清濃度(多い順)=IgG>IgA>IgM>IgD>IgE。
●IgG=最多・胎盤通過・二次応答の主体。
●IgA=分泌液中の局所免疫(分泌型IgA)。
●IgM=五量体・一次応答で最初に産生・分子量最大。
●IgE=Ⅰ型アレルギー・寄生虫感染。
●M蛋白(単クローン性)=多発性骨髄腫でM-bow(鋭い沈降線の膨隆)を呈する。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:5種類の免疫グロブリンの主な性状

種類構造血中量特徴
IgG単量体最多(800〜1,600)胎盤通過・4サブクラス・感染防御
IgM5量体―初期抗体・補体活性化能が最高・最古
IgA分泌型は2量体唾液・涙・初乳など蛋白分解酵素に抵抗・粘膜免疫
IgD単量体微量B細胞表面・分化に関与・代謝速い
IgE単量体最少肥満細胞Fc受容体・Ⅰ型アレルギー
単クローン性増加=1クローン由来で単一Igが増加(原発性マクログロブリン血症=IgM)。多クローン性増加=感染症・自己免疫疾患など。

第65回 午後87(臨床免疫学)

血液製剤の細菌汚染対策のために重要なのはどれか。

正答: ①外観の検査

ポイント
血液製剤の細菌汚染は輸血による敗血症など重篤な副作用を起こすため、輸血直前に製剤の外観(色調の変化・凝集・溶血・混濁・気泡・バッグの破損など)を目視で確認することが重要である。異常を認めた製剤は使用を中止する。なお核酸増幅検査(NAT)はウイルス感染対策、放射線照射は輸血後移植片対宿主病(GVHD)予防のための対策であり、いずれも細菌汚染対策ではない。
●細菌汚染対策=外観の目視確認・採血時の皮膚消毒・初流血除去・保存温度管理。
●ウイルス感染対策=核酸増幅検査(NAT)・問診・抗体スクリーニング。
●輸血後GVHD対策=放射線照射。
●TRALI(輸血関連急性肺障害)対策=抗HLA/抗顆粒球抗体陽性ドナーの管理。

選択肢ごとの解説

第65回 午後88(臨床免疫学)

血液製剤のラベルの色と血液型の組合せで正しいのはどれか。

正答: ②B型 — 白色

ポイント
輸血用血液製剤のラベルはABO血液型ごとに色分けされており、A型は黄色、B型は白色、O型は青色、AB型は桃色(ピンク)と規定されている。この色分けは血液型の取り違えという重大な医療事故を視覚的に防止するための仕組みであり、製剤の払い出しや照合の際の補助となる。
●ABO血液型とラベル色=A型(黄)・B型(白)・O型(青)・AB型(桃)。
●ABO血液型と抗原/抗体=A型(A抗原・抗B)・B型(B抗原・抗A)・O型(抗A抗B)・AB型(A/B抗原・抗体なし)。
●輸血時の安全確認=交差適合試験・患者と製剤の照合・ベッドサイド最終確認。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:ABO血液型の抗原・抗体と輸血用血液製剤の適合

血液型赤血球の抗原血清中の抗体適合する赤血球製剤(供血者型)適合する血漿・血小板製剤(供血者型)血液製剤ラベル色
A型A抗原抗B抗体A型・O型A型・AB型黄色
B型B抗原抗A抗体B型・O型B型・AB型白色
O型抗原なし抗A抗体・抗B抗体O型のみO型・A型・B型・AB型青色
AB型A抗原・B抗原抗体なしA型・B型・O型・AB型AB型のみ桃色
赤血球製剤は、供血者赤血球の抗原が患者血清中の抗体と反応しない型を選ぶため「抗原の少ない型」ほど適合範囲が広い(O型が万能供血者、AB型が万能受血者)。血漿・血小板製剤は逆に、供血者血漿中の抗体が患者赤血球の抗原と反応しない型を選ぶため、赤血球とは適合関係が左右反対になる(AB型血漿が万能供血)。血液型が確定できない緊急輸血では、赤血球製剤はO型、血漿・血小板製剤はAB型を用いる(RhD陰性製剤は病院在庫が乏しく供給に時間を要するため、救命優先でRhD陽性製剤を応急的に使用することがある)。ラベル色は日本赤十字社の規定で取り違い防止のために用いられる。

第65回 午後89(臨床免疫学)

不規則抗体同定検査の間接抗グロブリン試験〈試験管法〉と直接抗グロブリン試験〈試験管法〉の両方に使用されるのはどれか。2つ選べ。

正答: ④IgG感作赤血球・⑤被検者の赤血球

ポイント
間接抗グロブリン試験は被検血清中の不完全抗体が試験管内で赤血球に感作するかを抗グロブリン試薬で検出する方法で、直接抗グロブリン試験は生体内ですでに赤血球に結合している抗体や補体を検出する方法である。両試験に共通して用いられるのは、抗グロブリン試薬の反応性が正しく機能していることを確認するコントロール用のIgG感作赤血球(陰性反応のとき試薬の失活でないことを保証する)と、被検者本人の赤血球である(直接法では被検対象、間接法でも自己対照などとして用いる)。
●間接抗グロブリン試験に固有=被検者血清・パネル/スクリーニング赤血球(抗体同定)。
●直接抗グロブリン試験=被検者赤血球そのものを抗グロブリン試薬と反応(自己免疫性溶血性貧血・新生児溶血性疾患・薬剤性溶血の診断)。
●両法共通=IgG感作赤血球(コントロール)・被検者赤血球。
●酵素(ブロメリン・フィシン・パパイン)=抗体の検出感度を高める前処理(間接法)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:直接抗グロブリン試験と間接抗グロブリン試験の比較

項目直接抗グロブリン試験〈DAT〉間接抗グロブリン試験〈IAT〉
検出対象患者赤血球にすでに結合している抗体・補体(生体内で感作された不規則抗体)患者血清中の遊離した不規則抗体(試験管内でパネル赤血球に反応させて検出)
使用する検体患者赤血球患者血清+パネル(スクリーニング)赤血球
主な用途自己免疫性溶血性貧血、溶血性輸血副反応、新生児溶血性疾患の診断不規則抗体スクリーニング・同定、交差適合試験の主試験
反応増強剤通常は用いない低イオン強度溶液〈LISS〉、ポリエチレングリコール〈PEG〉など
両試験とも抗グロブリン試薬(Coombs試薬)を使用し、非凝集時にはIgG感作赤血球を加えて試薬の有効性を確認する点は共通。

第65回 午後90(公衆衛生学)

平成29年〈2017年〉の日本の人口について正しいのはどれか。

正答: ⑤年齢調整死亡率は男性より女性の方が低い。

ポイント
年齢調整死亡率は基準人口を用いて年齢構成の影響を取り除いた死亡率で、平成29年(2017年)の日本では男性より女性の方が低い。同年の出生数は約94万人で100万人を下回り、合計特殊出生率は1.43で1.3を上回っていた。総再生産率(女児の出生のみで計算し死亡を考慮しない)は、その女児がさらに母になるまでの死亡を差し引いた純再生産率より大きい。近年の粗死亡率は高齢化により上昇傾向にある。
●出生関連指標=合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子の数)・総再生産率(女児のみ)・純再生産率(女児+死亡考慮)。
●死亡関連指標=粗死亡率・年齢調整死亡率・乳児死亡率・標準化死亡比(SMR)。
●人口統計の出典=出生/死亡は人口動態統計、年齢構成は国勢調査。

選択肢ごとの解説

第65回 午後91(公衆衛生学)

国民生活基礎調査で報告されているのはどれか。2つ選べ。

正答: ③通院者率・⑤有訴者率

ポイント
国民生活基礎調査は世帯・健康・介護・所得などを世帯への聞き取りで調べる大規模統計で、健康票では自覚症状のある者の割合である有訴者率と、通院している者の割合である通院者率が報告される。これらは住民の主観的な健康状態を反映する指標である。一方、医療機関側からみた受療率は患者調査で、健康診断で異常を認めた割合である有所見率は別の調査で扱われる。
●国民生活基礎調査の指標=有訴者率・通院者率・要介護度・所得・貧困率。
●患者調査の指標=受療率・推計患者数・平均在院日数・総患者数。
●健康診断関連=有所見率・特定健診の保健指導該当者率。

選択肢ごとの解説

第65回 午後92(公衆衛生学)

職場の有害因子と生物学的モニタリングの尿中測定項目の組合せで誤っているのはどれか。

正答: ④マンガン — フェノール

ポイント
生物学的モニタリングは有害物質の体内曝露量を尿中・血中の本体や代謝物で評価する手法である。マンガン曝露では尿中フェノールは指標とならず、フェノールはベンゼン曝露の尿中代謝物指標である。鉛では尿中δ-アミノレブリン酸(ヘム合成阻害により増加)、トルエンでは尿中馬尿酸、キシレンでは尿中メチル馬尿酸が指標となる。
●鉛=尿中δ-アミノレブリン酸・血中鉛・赤血球プロトポルフィリン。
●トルエン=尿中馬尿酸/キシレン=尿中メチル馬尿酸。
●ベンゼン=尿中フェノール・尿中t,t-ムコン酸。
●スチレン=尿中マンデル酸/トリクロロエチレン=尿中トリクロロ酢酸。
●カドミウム=尿中β₂-ミクログロブリン(尿細管障害指標)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:化学物質・有機溶剤と生体曝露指標(生物学的モニタリング)

物質主な検査項目(生体指標)
カドミウム尿中β2-ミクログロブリン(尿中低分子蛋白)・尿中カドミウム
鉛尿中δ-アミノレブリン酸
ベンゼン尿中フェノール
ニトロベンゼン血中メトヘモグロビン
トルエン尿中馬尿酸
キシレン尿中メチル馬尿酸
マンガン血中マンガン
スチレン尿中マンデル酸
ノルマルヘキサン尿中2,5-ヘキサンジオン
有機リン系農薬は血清コリンエステラーゼ活性の低下、メチル水銀の曝露評価では毛髪中・血中水銀が用いられる。尿中水銀は主として金属水銀・無機水銀の曝露評価に用い、メチル水銀と区別する。生物学的モニタリングは血液・尿・毛髪など生体試料から作業者の化学物質曝露量を評価する手法である。

第65回 午後93(公衆衛生学)

特定健康診査の必須項目はどれか。2つ選べ。

正答: ①γ-GT・④空腹時血糖

ポイント
特定健康診査はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した40〜74歳対象の健診で、基本(必須)項目には身体計測(腹囲・BMI)、血圧、血中脂質(中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール)、肝機能(AST・ALT・γ-GT)、血糖(空腹時血糖またはHbA1c)、尿検査(尿糖・尿蛋白)などが含まれる。心電図・眼底検査・貧血検査は詳細な健診(追加項目)であり、一定の条件下に医師の判断で実施される。
●特定健診の必須項目=身体計測・血圧・脂質(TG/HDL/LDL)・肝機能(AST/ALT/γ-GT)・血糖(空腹時血糖/HbA1c)・尿検査。
●詳細な健診(追加項目)=心電図・眼底検査・貧血検査・血清クレアチニン。
●特定保健指導=動機付け支援・積極的支援。

選択肢ごとの解説

第65回 午後94(公衆衛生学)

我が国の医療保険制度について正しいのはどれか。

正答: ⑤被用者保険と国民健康保険に分けられる。

ポイント
日本の医療保険は国民皆保険を原則とし、職域を基盤とする被用者保険(健康保険・共済組合・船員保険など)と、それ以外の地域住民を対象とする国民健康保険に大別される。加入は法律で義務づけられ任意ではなく、主な財源は保険料(一部公費補助あり)である。療養の給付は原則として現物給付(医療サービスそのものの提供)であり、介護保険は医療保険とは別個の社会保険制度である。
●社会保険の5分野=医療保険・年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険。
●医療保険の種類=被用者保険(健康保険・共済組合・船員保険)・国民健康保険・後期高齢者医療制度。
●給付の形態=現物給付(療養の給付)・現金給付(傷病手当金・出産育児一時金)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:社会保険制度の比較(医療保険・介護保険・労災保険等)

制度保険者/被保険者保険料負担特記事項
医療保険74歳までの国民(被用者保険/国民健康保険)、75歳以上等は後期高齢者医療制度被保険者(社会保険方式)給付は原則現物給付(自己負担は原則3割)
介護保険保険者は市区町村・特別区。被保険者は40歳以上(第1号:65歳以上/第2号:40〜64歳)被保険者(市町村ごとに額は異なり全国一律ではない)住宅改修や認知機能障害も給付対象。近年、要支援・軽度要介護者の割合が増加
労災保険原則すべての労働者(公務員を除く)が被保険者事業主が全額負担(被保険者の負担なし)通勤災害も対象。療養に自己負担なし
雇用保険労働者が被保険者被保険者と事業主が負担-
年金保険20歳以上60歳未満の全国民が国民年金に加入。会社員等は厚生年金に加入国民年金は被保険者、厚生年金は被保険者と雇用者が負担-

第65回 午後95(医用工学概論)

アナログ信号のデジタル信号への変換において信号を一定の時間間隔で読み取ることを示すのはどれか。

正答: ③標本化

ポイント
アナログ信号をデジタル信号へ変換する過程は、標本化(サンプリング)→量子化→符号化(コード化)の順で進む。標本化は連続的なアナログ信号を一定の時間間隔で読み取って離散的な時系列にする操作であり、その間隔の逆数が標本化周波数である。量子化は読み取った各値を有限段階のレベルに振り分け、符号化はそのレベルを2進数などのコードで表現する。
●A/D変換の3段階=標本化(時間軸の離散化)・量子化(振幅の離散化)・符号化(2進数表現)。
●標本化定理(ナイキスト)=信号の最高周波数の2倍以上で標本化すれば波形を復元できる。
●関連量=標本化周波数・量子化ビット数・分解能・折り返し雑音(エイリアシング)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:A/D変換の3段階(標本化・量子化・符号化)

段階内容
標本化(サンプリング)入力信号を一定の時間間隔で取り込む
量子化標本化した信号値を有限段階の離散値で近似する
符号化(コード化)量子化した離散値を2進数などの符号に変換する
標本化定理により、標本化周波数は信号の最高周波数の2倍以上必要である。

第65回 午後96(医用工学概論)

磁場を検出できるのはどれか。2つ選べ。

正答: ③ホール素子・④SQUID

ポイント
磁場を検出できる素子には、半導体に電流を流し磁場により生じる起電力(ホール電圧)を利用するホール素子と、超伝導リングのジョセフソン接合を用いる超伝導量子干渉素子であるSQUID(superconducting quantum interference device)がある。SQUIDは極めて微弱な磁場を検出でき、脳磁図(MEG)や心磁図の計測に用いられる。一方、ひずみ・温度・光を検出する素子は磁場検出には用いない。
●磁場検出=ホール素子・SQUID・磁気抵抗素子(MR素子)。
●ひずみ(変形)=ストレンゲージ。
●温度=サーミスタ・熱電対・測温抵抗体。
●光(照度)=CdS(硫化カドミウム)・フォトダイオード・フォトトランジスタ。

選択肢ごとの解説

第65回 午後97(医用工学概論)

DNAの塩基をA、C、G、Tの4種類で表すとき、連続した塩基3個の配列で表現できる最大の情報量はどれか。

正答: ④64

ポイント
塩基はA・C・G・Tの4種類であり、連続した3個の配列(トリプレット、コドン)で表現できる組合せ数は、各位置が4通りで3個分なので4の3乗=64通りである。実際の遺伝暗号でも、3塩基1組のコドンが64通りあり、20種類のアミノ酸と終止コドンを過不足なく指定できることに対応する。
●順列の考え方=n種類をr桁並べる場合の数はnのr乗(4の3乗=64)。
●情報量の単位=1塩基は4通り=2ビット、3塩基で6ビット(2の6乗=64)。
●遺伝暗号の特徴=64コドン・20アミノ酸・縮重(同一アミノ酸を複数コドンが指定)・終止コドン(UAA/UAG/UGA)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:べき乗による情報量・組合せ数の計算

例計算結果
6ビット(2進数6桁)2の6乗64通り
9ビット(2進数9桁)2の9乗512通り(300種類の区別に必要な最小ビット数)
10ビット(2進数10桁)2の10乗1,024通り(1キロバイト=1,024バイト)
16ビット(2バイト)2の16乗65,536通り
8bit AD変換器(0〜2.5V)の分解能2.5V ÷ 2の8乗(256)約9.8mV(≒10mV)
DNA塩基3個の配列(A・C・G・Tの4種類)4の3乗64通り(コドン、情報量はlog2 64=6bit)
nビットの2進数では2のn乗通り、n種類の記号をr桁並べる場合はnのr乗通りの組合せを表現できる。

第65回 午後98(医用工学概論)

定義済み処理を表すフローチャート記号はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k65pB098.1b517c2493.jpg
第65回 午後98 の図

正答: ②長方形の左右に縦線

ポイント
フローチャート(流れ図)では処理の種類ごとに記号が規定されている。定義済み処理(サブルーチンなどあらかじめ別に定義された一連の処理を呼び出すもの)は、長方形の左右に縦線を加えた記号で表す。通常の処理(演算・代入)は長方形、判断(分岐)はひし形、データの入出力は平行四辺形、開始・終了の端子は角丸長方形(だ円)で表す。
●処理=長方形/定義済み処理(サブルーチン)=両側に縦線を加えた長方形。
●判断(分岐)=ひし形/端子(開始・終了)=角丸長方形。
●入出力=平行四辺形/表示=下辺が波形/ループ=六角形。
●流れの方向=矢印(線)。

選択肢ごとの解説

第65回 午後99(医用工学概論)

臨床検査情報の一次利用はどれか。

正答: ⑤患者治療法選択への利用

ポイント
臨床検査情報の一次利用とは、検査本来の目的である患者個人の診療、すなわち診断・治療法の選択・治療効果の判定・経過観察に検査結果を直接用いることを指す。これに対し、二次利用は得られた検査情報を本来の診療目的以外に活用するもので、医学研究・教育・病院経営管理・公衆衛生統計・感染症報告などが該当し、個人情報保護や匿名化への配慮が必要となる。
●一次利用=当該患者の診断・治療方針決定・経過観察・予後判定。
●二次利用=医学研究・教育用資料・経営管理・公衆衛生統計・行政報告(保健所への感染症届出など)。
●二次利用の留意点=匿名化・個人情報保護・倫理審査。

選択肢ごとの解説

第65回 午後100(医用工学概論)

純水製造法で、イオン交換法が逆浸透法より効率的に除去できる物質はどれか。

正答: ①塩素

ポイント
純水製造ではイオン交換法と逆浸透法を組み合わせる。イオン交換法は陽イオン交換樹脂・陰イオン交換樹脂により溶存イオン(電解質)を効率的に除去でき、塩素イオン(塩化物イオン)などのイオンの除去に優れる。一方、逆浸透法は半透膜を用いてイオン以外の比較的大きな不純物、すなわち細菌・エンドトキシン・微粒子・有機物などの除去に優れるため、塩素のようなイオンはイオン交換法の方が効率的に除去できる。
●イオン交換法が得意=溶存イオン(塩化物・カルシウム・ナトリウムなどの電解質)。
●逆浸透法が得意=細菌・エンドトキシン・微粒子・高分子有機物(イオン以外)。
●その他の精製=活性炭(残留塩素・有機物)・限外ろ過(微粒子・パイロジェン)・蒸留(多くの不純物)・紫外線(殺菌)。

選択肢ごとの解説