第66回(2020) 臨床検査技師国家試験 午前51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第66回 午前51(病理組織細胞学)
陳旧性心筋梗塞のH-E染色標本を別に示す。病変の広がりを確認するために最も適している染色法はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66aA051.de93c8b051.jpg

- ①Alcian blue染色
- ②azan染色
- ③Masson-Fontana染色
- ④mucicarmine染色
- ⑤Sudan Ⅲ染色
正答: ②azan染色
ポイント
陳旧性心筋梗塞では壊死した心筋が器質化を経て瘢痕(線維化)に置換され、膠原線維が増生する。病変の広がりを把握するには膠原線維を選択的に染め分ける結合組織染色が適し、azan染色はアニリン青で膠原線維を青く、心筋など実質を赤橙に染め分けるため線維化巣の輪郭が明瞭になる。Mallory-azan法はアゾカルミンとアニリン青-オレンジGの2液で染め、再生・陳旧化した梗塞巣の範囲を可視化できる。
●結合組織(膠原線維)染色=azan(Mallory)・Masson trichrome・elastica van Gieson(EVG)・鍍銀(細網線維)。
●弾性線維=Weigert・elastica van Gieson・Victoria blue。
●脂肪=Sudan Ⅲ・oil red O・ナイル青。
●粘液=Alcian blue・mucicarmine・PAS。
●メラニン・好銀=Masson-Fontana・Grimelius。
選択肢ごとの解説
- ① Alcian blue染色は酸性ムコ多糖(粘液)を青染する粘液染色で、膠原線維による線維化巣の範囲評価には適さない。
- ② 正しい。azan染色は膠原線維を青、心筋を赤橙に染め分け、瘢痕化(線維化)した梗塞巣の広がりを明瞭に示す。
- ③ Masson-Fontana染色はメラニンや銀親和性物質の証明に用い、線維化の評価には適さない。
- ④ mucicarmine染色は上皮性粘液やクリプトコッカスの莢膜を赤染する粘液染色で、線維化評価には向かない。
- ⑤ Sudan Ⅲ染色は中性脂肪などの脂肪滴を橙赤に染める脂肪染色で、線維化の確認には適さない。
第66回 午前52(病理組織細胞学)
ATPを産生するのはどれか。
- ①Golgi装置
- ②滑面小胞体
- ③粗面小胞体
- ④リボソーム
- ⑤ミトコンドリア
正答: ⑤ミトコンドリア
ポイント
細胞内小器官は機能が分化しており、好気的にATPを大量産生するのはミトコンドリアである。ミトコンドリア内膜の電子伝達系がプロトン濃度勾配を形成し、ATP合成酵素による酸化的リン酸化でATPが生成される。小胞体・Golgi装置・リボソームはタンパク質や脂質の合成・修飾・選別・輸送を担い、ATP産生は行わない。
●エネルギー産生=ミトコンドリア(電子伝達系・酸化的リン酸化・クエン酸回路)。
●タンパク質合成=リボソーム・粗面小胞体。
●脂質合成・解毒・Ca貯蔵=滑面小胞体。
●修飾・選別・分泌=Golgi装置。
●分解=リソソーム・ペルオキシソーム。
選択肢ごとの解説
- ① Golgi装置はタンパク質の糖鎖修飾・選別・分泌を担い、ATP産生は行わない。
- ② 滑面小胞体は脂質合成や解毒、Ca貯蔵を担い、ATP産生は行わない。
- ③ 粗面小胞体はリボソームが付着し分泌・膜タンパク質を合成する場で、ATP産生は行わない。
- ④ リボソームはmRNAを翻訳してタンパク質を合成する場で、ATP産生は行わない。
- ⑤ 正しい。ミトコンドリアは電子伝達系と酸化的リン酸化により好気的にATPを産生する。
第66回 午前53(病理組織細胞学)
器官または組織と胚葉との組合せで正しいのはどれか。
- ①心臓 — 内胚葉
- ②皮膚 — 中胚葉
- ③膵臓 — 中胚葉
- ④腸管 — 外胚葉
- ⑤中枢神経 — 外胚葉
正答: ⑤中枢神経 — 外胚葉
ポイント
三胚葉からそれぞれ特定の器官が発生する。外胚葉からは表皮と神経系、中胚葉からは筋・骨・心臓・血管・腎・生殖器、内胚葉からは消化管上皮・肝・膵・呼吸器上皮が分化する。中枢神経は外胚葉から陥入した神経管に由来するため外胚葉性である。
●外胚葉=表皮・毛髪・神経系(脳・脊髄)・神経堤(メラノサイト・末梢神経・副腎髄質)。
●中胚葉=心臓・血管・血球・骨格筋・骨・軟骨・腎・生殖腺・真皮・漿膜。
●内胚葉=消化管上皮・肝・胆・膵・呼吸器上皮・甲状腺・膀胱上皮。
選択肢ごとの解説
- ① 心臓は中胚葉由来であり、内胚葉ではない。
- ② 皮膚の表皮は外胚葉由来であり、中胚葉ではない(真皮は中胚葉性)。
- ③ 膵臓は前腸由来の内胚葉性器官であり、中胚葉ではない。
- ④ 腸管(消化管上皮)は内胚葉由来であり、外胚葉ではない。
- ⑤ 正しい。中枢神経は神経管から発生する外胚葉由来の組織である。
📋 まとめの表を見る:三胚葉(外胚葉・中胚葉・内胚葉)由来の組織・器官
厳密には外胚葉は分化過程で表皮外胚葉・神経管・神経堤(外胚葉性間葉)に分かれ、頭部の骨格系は神経堤に由来する例外がある。
第66回 午前54(病理組織細胞学)
病理組織標本で粘液の染色法はどれか。
- ①Alcian blue染色
- ②elastica van Gieson染色
- ③Giemsa染色
- ④Masson trichrome染色
- ⑤PAM染色
正答: ①Alcian blue染色
ポイント
粘液は酸性ムコ多糖と中性ムコ多糖を含み、染色性で性状を鑑別する。酸性ムコ多糖はAlcian blueでpH依存的に青染され、中性粘液はPAS染色で赤紫に染まるため、両者を併用して粘液の種類を判定できる。Alcian blueは代表的な粘液(酸性ムコ多糖)染色である。
●粘液(酸性ムコ多糖)=Alcian blue・コロイド鉄・トルイジン青(異染性)。
●中性粘液=PAS。●上皮性酸性粘液=mucicarmine。
●膠原線維=Masson trichrome・azan・EVG。
●弾性線維=EVG・Weigert。
●基底膜・細網線維=PAM・鍍銀。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。Alcian blue染色は酸性ムコ多糖(粘液)を青染する代表的な粘液染色である。
- ② elastica van Gieson染色は弾性線維を黒、膠原線維を赤に染め分ける方法で、粘液染色ではない。
- ③ Giemsa染色は血球や微生物の観察に用いる方法で、粘液染色ではない。
- ④ Masson trichrome染色は膠原線維と細胞質・筋を染め分ける結合組織染色で、粘液染色ではない。
- ⑤ PAM(過ヨウ素酸メセナミン銀)染色は基底膜や細網線維を黒染する方法で、粘液染色ではない。
📋 まとめの表を見る:病理組織の主な特殊染色と対象
第66回 午前55(病理組織細胞学)
固定について正しいのはどれか。
- ①アルコール系固定液は組織収縮率が低い。
- ②アルデヒド系固定液は凝固型固定剤である。
- ③オスミウム酸固定液は金属容器に保管する。
- ④ブアン〈Bouin〉固定液は内分泌細胞の染色に有用である。
- ⑤グルタールアルデヒド固定では組織片を10 mm角に分割する。
正答: ④ブアン〈Bouin〉固定液は内分泌細胞の染色に有用である。
ポイント
固定液はタンパクを架橋する非凝固型(アルデヒド系)と、タンパクを凝固させる凝固型(アルコール・ピクリン酸系)に大別される。ブアン〈Bouin〉固定液はピクリン酸・ホルマリン・酢酸の混合液で、内分泌細胞や精巣・結合組織の固定と続く染色性に優れる。固定は組織の中心まで浸透させる必要があり、特に浸透の遅いグルタールアルデヒドでは小さく切り出す。
●架橋型(非凝固型)=ホルマリン・グルタールアルデヒド(電顕用)。
●凝固型=エタノール・メタノール・酢酸・ピクリン酸。
●混合固定液=ブアン(ピクリン酸系)・Zenker・Carnoy。
●特殊用途=オスミウム酸(脂質・電顕)。
選択肢ごとの解説
- ① アルコール系固定液はタンパクを凝固させ組織収縮率が高く、低いとはいえない。
- ② アルデヒド系固定液(ホルマリン等)はタンパクを架橋する非凝固型固定剤で、凝固型ではない。
- ③ オスミウム酸は還元されて金属を腐食・黒変させるため、金属容器での保管は不適である。
- ④ 正しい。ブアン固定液はピクリン酸を含み、内分泌細胞などの固定・染色性に優れる。
- ⑤ グルタールアルデヒドは浸透性が低く、1〜2mm角以下に小さく切る必要があり、10mm角では大きすぎる。
第66回 午前56(病理組織細胞学)
薄切について正しいのはどれか。
- ①ミクロトームは回転式と滑走式に大別される。
- ②ミクロトーム刃の先端の角度を逃げ角という。
- ③引き角が大きいほど薄切切片のゆがみが強くなる。
- ④滑走速度が遅いと薄切切片にチャターが生じる。
- ⑤薄切切片の乾燥は20 ℃前後で行う。
正答: ①ミクロトームは回転式と滑走式に大別される。
ポイント
ミクロトームはパラフィン包埋ブロックの薄切に用い、構造上回転式(ロータリー)と滑走式(スライディング)に大別される。刃の先端のなす角を刃角といい、刃の下面と切片面とがなす逃げ角を適切に保つことで圧縮や厚薄を防ぐ。薄切後の切片は伸展板上でパラフィン融点近くの温度で伸展・乾燥させる。
●ミクロトーム種類=回転式・滑走式・凍結(クリオスタット)・ビブラトーム。
●薄切トラブル=チャター(縞状の厚薄)・圧縮・しわ・縦縞(刃のキズ)。
●関連角度=刃角・逃げ角・引き角。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。ミクロトームは回転式と滑走式に大別される。
- ② 刃先端のなす角は刃角であり、逃げ角は刃の下面と切片面とのなす角を指す。
- ③ 引き角(傾斜角)は薄切性に影響するが、大きいほどゆがみが強くなるという本記述の関係は適切でない。
- ④ チャターは滑走速度が速すぎたり刃の固定が不十分なときに生じやすく、遅いことが直接原因とはいえない。
- ⑤ 薄切切片の伸展・乾燥はパラフィン融点近くの45〜50℃前後で行い、20℃前後では不適である。
第66回 午前57(病理組織細胞学)
H-E染色標本とPAS染色標本を別に示す。病原微生物はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66aA057.21b5539342.jpg

- ①赤痢アメーバ
- ②トリコモナス
- ③アスペルギルス
- ④クリプトコッカス
- ⑤ヘリコバクター・ピロリ
正答: ①赤痢アメーバ
ポイント
大腸の潰瘍部などに病変を作るアメーバ赤痢の病原体は赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)で、組織内では栄養型がみられる。H-E染色で泡沫状の細胞質をもち赤血球を貪食した像を示し、PAS染色で陽性に染まることが診断上の手がかりとなる。組織内に栄養型が存在し赤血球貪食像を伴う点が他の病原体との鑑別点である。
●原虫=赤痢アメーバ(赤血球貪食・PAS陽性)・トリコモナス(鞭毛虫)・トキソプラズマ。
●真菌=アスペルギルス(鋭角分岐・隔壁あり)・クリプトコッカス(厚い莢膜)・カンジダ(仮性菌糸)・ムーコル(広い無隔壁菌糸)。
●細菌=ヘリコバクター・ピロリ(らせん状桿菌)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。赤痢アメーバはH-E・PASで染まる栄養型を組織内に示し、赤血球の貪食像が特徴である。
- ② トリコモナスは主に腟・尿路に寄生する鞭毛虫で、組織内で赤血球貪食像を示す本症とは異なる。
- ③ アスペルギルスは鋭角に分岐する隔壁のある菌糸を示す真菌で、本所見とは異なる。
- ④ クリプトコッカスは厚い莢膜をもつ酵母様真菌で、mucicarmineやAlcian blueで莢膜が染まり所見が異なる。
- ⑤ ヘリコバクター・ピロリは胃粘液層に存在するらせん状桿菌で、本所見とは異なる。
📋 まとめの表を見る:病原微生物と特殊染色(病理・微生物標本)
Grocott染色は病理標本で真菌検出に主に用いられ、黒褐色に染色される。Alcian blueは特定の病原体ではなく酸性粘液物質の観察に用いる特殊染色である。
第66回 午前58(病理組織細胞学)
病理解剖において臨床検査技師が行える業務はどれか。
- ①承諾取得
- ②遺体の縫合
- ③遺族への説明
- ④単独での執刀
- ⑤病理解剖報告書の作成
正答: ②遺体の縫合
ポイント
通常の病理解剖では、医師が執刀し、承諾取得に必要な説明・診断・病理解剖報告書の作成も医師が担い、臨床検査技師は指示・監督のもとで標本作製や記録、解剖終了後の遺体の縫合などを補助する。臨床検査技師免許だけで単独執刀できるわけではないが、死体解剖保存法上の解剖資格者は医師に限定されない。解剖を行う者の許可・資格等の要件と、通常の技師の補助業務を区別する。
●通常は医師が行う業務=執刀・承諾取得・遺族への説明・報告書作成・診断。
●臨床検査技師が行える補助=臓器摘出の介助・記録・標本作製・遺体の縫合。
●関連法規=死体解剖保存法・臨床検査技師等に関する法律。
選択肢ごとの解説
- ① 承諾取得は遺族への説明を伴う医師の業務であり、技師の業務ではない。
- ② 正しい。解剖終了後の遺体の縫合は臨床検査技師が行える補助的業務である。
- ③ 遺族への説明は医師が行う業務であり、技師の業務ではない。
- ④ 臨床検査技師免許だけで単独の執刀が認められるわけではない。解剖を行うには死体解剖保存法上の許可または資格等の要件を満たす必要があり、本問の通常の技師業務には含まれない。
- ⑤ 病理解剖報告書の作成は医師の業務であり、技師の業務ではない。
第66回 午前59(臨床血液学)
末梢血のMay-Giemsa染色標本を別に示す。この疾患で認められる検査所見はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66aA059.9b0f8786d8.jpg

- ①赤血球CD59欠損
- ②ADAMTS13活性著減
- ③赤血球浸透圧抵抗減弱
- ④血清βリポタンパク低値
- ⑤ヘモグロビンS〈HbS〉陽性
正答: ③赤血球浸透圧抵抗減弱
ポイント
末梢血のMay-Giemsa染色で中心淡明部を欠く小型・濃染の球状赤血球(球状赤血球)が多数みられる場合、遺伝性球状赤血球症が考えられる。赤血球膜骨格タンパク(スペクトリン・アンキリン・バンド3等)の異常で膜が部分的に失われ、赤血球が球状化して表面積が減少する。その結果、低張食塩水での膨化に弱く赤血球浸透圧抵抗が減弱(脆弱化)し、浸透圧抵抗試験で溶血が亢進する。
●膜異常=遺伝性球状赤血球症(浸透圧抵抗減弱)・楕円赤血球症。
●補体感受性=発作性夜間ヘモグロビン尿症(CD55/CD59欠損)。
●酵素異常=G6PD欠損・ピルビン酸キナーゼ欠損。
●ヘモグロビン異常=鎌状赤血球症(HbS)・サラセミア。
●微小血管障害=TTP(ADAMTS13著減)・HUS(破砕赤血球)。
選択肢ごとの解説
- ① 赤血球CD59欠損は発作性夜間ヘモグロビン尿症の所見で、本症の所見ではない。
- ② ADAMTS13活性著減は血栓性血小板減少性紫斑病の所見で、本症の所見ではない。
- ③ 正しい。遺伝性球状赤血球症では膜面積減少により浸透圧抵抗が減弱(脆弱)し溶血が亢進する。
- ④ 血清βリポタンパク低値は無βリポタンパク血症(有棘赤血球)の所見で、本症とは異なる。
- ⑤ ヘモグロビンS陽性は鎌状赤血球症の所見で、本症とは異なる。
📋 まとめの表を見る:赤血球の形態異常と関連疾患
破砕赤血球はTTP・HUS・DICなど微小血管症性溶血性貧血でみられる。
第66回 午前60(臨床血液学)
トロンボモジュリンに結合したトロンビンの作用はどれか。
- ①血小板活性化
- ②フィブリン形成
- ③第Ⅴ因子活性化
- ④第Ⅷ因子活性化
- ⑤プロテインC活性化
正答: ⑤プロテインC活性化
ポイント
トロンボモジュリンは血管内皮細胞表面に存在する膜タンパクで、トロンビンと結合するとトロンビンの基質特異性が変化する。トロンビン-トロンボモジュリン複合体はフィブリノゲンを切断する凝固活性を失い、代わりにプロテインCを活性化する。活性化プロテインCはプロテインSを補因子として第Ⅴa・Ⅷa因子を不活化し、抗凝固に働く。
●抗凝固系=アンチトロンビン・トロンボモジュリン-プロテインC-プロテインS系・TFPI。
●トロンビンの凝固作用(遊離型)=フィブリン形成・血小板活性化・第Ⅴ/Ⅷ/ⅩⅢ因子活性化。
●活性化プロテインCの作用=第Ⅴa・Ⅷa因子不活化。
選択肢ごとの解説
- ① トロンボモジュリンに結合したトロンビンは凝固促進作用を失うため、血小板活性化は行わない。
- ② トロンボモジュリンと結合したトロンビンはフィブリノゲンを切断する作用を失い、フィブリン形成を行わない。
- ③ 第Ⅴ因子活性化は遊離トロンビンの凝固促進作用であり、複合体化したトロンビンの作用ではない。
- ④ 第Ⅷ因子活性化も遊離トロンビンの作用であり、複合体化したトロンビンの作用ではない。
- ⑤ 正しい。トロンビン-トロンボモジュリン複合体はプロテインCを活性化し抗凝固に働く。
第66回 午前61(臨床血液学)
白血病細胞の細胞表面マーカーでCD5、CD20及びCD23が陽性であった。考えられるのはどれか。
- ①成人T細胞白血病
- ②ヘアリー細胞白血病
- ③慢性リンパ性白血病
- ④急性巨核芽球性白血病
- ⑤Bリンパ芽球性白血病
正答: ③慢性リンパ性白血病
ポイント
CD5・CD20・CD23がいずれも陽性のB細胞性腫瘍は慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫に特徴的である。CD20はB細胞マーカー、CD5は本来T細胞抗原だが本症のB細胞に異常発現し、CD23陽性が同じくCD5陽性のマントル細胞リンパ腫(CD23陰性・cyclin D1陽性)との鑑別点となる。末梢血では成熟小型リンパ球の増加とスマッジ細胞がみられる。
●CD5陽性B細胞腫瘍=慢性リンパ性白血病(CD23陽性)・マントル細胞リンパ腫(CD23陰性・cyclin D1陽性)。
●T細胞腫瘍=成人T細胞白血病(CD4・CD25陽性)。
●毛様細胞=ヘアリー細胞白血病(CD11c・CD25・CD103陽性)。
●未熟B=Bリンパ芽球性白血病(TdT・CD10・CD19陽性)。
選択肢ごとの解説
- ① 成人T細胞白血病はT細胞性(CD4陽性)腫瘍で、B細胞マーカーCD20陽性とは合致しない。
- ② ヘアリー細胞白血病はCD11c・CD25・CD103陽性などが特徴で、CD5陽性とは合致しない。
- ③ 正しい。CD5・CD20・CD23陽性のB細胞腫瘍は慢性リンパ性白血病に特徴的である。
- ④ 急性巨核芽球性白血病はCD41・CD61陽性の骨髄系腫瘍で、B細胞マーカーとは合致しない。
- ⑤ Bリンパ芽球性白血病はTdT・CD10・CD19陽性の未熟B前駆細胞腫瘍で、CD5・CD23陽性の像とは異なる。
📋 まとめの表を見る:主な白血病・骨髄腫の細胞表面マーカー(CD抗原)パターン
CD5は本来T細胞抗原だが、CLLでは腫瘍性B細胞に共発現する。軽鎖(κ/λ)の偏り(軽鎖制限)もB細胞腫瘍性増殖の指標となる。
第66回 午前62(臨床血液学)
プロトロンビン時間〈PT〉及び活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉に異常を示さない血液凝固因子欠乏症はどれか。
- ①第Ⅶ因子
- ②第Ⅷ因子
- ③第Ⅹ因子
- ④第Ⅻ因子
- ⑤第ⅩⅢ因子
正答: ⑤第ⅩⅢ因子
ポイント
プロトロンビン時間〈PT〉は外因系と共通系、活性化部分トロンボプラスチン時間〈APTT〉は内因系と共通系を反映し、いずれもフィブリン析出までの時間を測る。第ⅩⅢ因子はフィブリン形成後に働いてフィブリンを架橋・安定化させる因子であり、フィブリン析出時間そのものには影響しないため、欠乏してもPT・APTTはともに正常となる。第ⅩⅢ因子欠乏症は創傷治癒遅延や出血傾向を示し、診断には可溶性試験などを用いる。
●外因系(PT延長)=第Ⅶ因子。
●内因系(APTT延長)=第Ⅷ・Ⅸ・Ⅺ・Ⅻ因子。
●共通系(PT・APTT延長)=第Ⅹ・Ⅴ・Ⅱ因子・フィブリノゲン。
●PT・APTT正常=第ⅩⅢ因子・血小板異常・血管異常。
選択肢ごとの解説
- ① 第Ⅶ因子欠乏は外因系のためPTが延長し、設問に合致しない。
- ② 第Ⅷ因子欠乏(血友病A)は内因系のためAPTTが延長し、設問に合致しない。
- ③ 第Ⅹ因子欠乏は共通系のためPT・APTTがともに延長し、設問に合致しない。
- ④ 第Ⅻ因子欠乏は内因系のためAPTTが延長し、設問に合致しない。
- ⑤ 正しい。第ⅩⅢ因子欠乏はフィブリン架橋の異常でありPT・APTTには反映されず両検査が正常となる。
第66回 午前63(臨床血液学)
二次線溶を反映する検査はどれか。
- ①Dダイマー
- ②フィブリノゲン
- ③プラスミノゲン
- ④アンチトロンビン
- ⑤プラスミンインヒビター
正答: ①Dダイマー
ポイント
一次線溶は遊離プラスミンによるフィブリノゲンの分解、二次線溶は凝固で生じた安定化フィブリン(第ⅩⅢ因子で架橋されたフィブリン)の分解を指す。Dダイマーは架橋フィブリンが分解されたときに特異的に生じる分解産物であり、二次線溶(=凝固が先行したことを示す)を反映する。FDPは一次・二次線溶の両方を反映する点で異なる。
●二次線溶の指標=Dダイマー。
●一次・二次線溶両方=FDP(フィブリン・フィブリノゲン分解産物)。
●線溶能(前駆体)=プラスミノゲン。
●線溶制御=α2-プラスミンインヒビター・PAI-1。
●凝固制御=アンチトロンビン・プロテインC・プロテインS。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。Dダイマーは架橋された安定化フィブリンの分解産物であり、二次線溶を特異的に反映する。
- ② フィブリノゲンは凝固基質であり、線溶系の進行を直接反映する検査ではない。
- ③ プラスミノゲンはプラスミンの前駆体(線溶能の指標)で、二次線溶の進行そのものを反映する検査ではない。
- ④ アンチトロンビンは凝固制御因子であり、線溶を反映する検査ではない。
- ⑤ プラスミンインヒビター(α2-プラスミンインヒビター)はプラスミンの阻害因子で、二次線溶を直接反映する検査ではない。
第66回 午前64(臨床血液学)
セリンプロテアーゼインヒビターはどれか。
- ①ヘパリン
- ②プロテインC
- ③プロテインS
- ④アンチトロンビン
- ⑤トロンボモジュリン
正答: ④アンチトロンビン
ポイント
アンチトロンビンはセルピン(serpin:serine protease inhibitor)に属する血漿タンパクで、トロンビンや第Ⅹa因子などのセリンプロテアーゼと結合して不可逆的に阻害する。ヘパリンはアンチトロンビンに結合してその構造変化を促し、阻害作用を著しく増強する補助因子として働く。アンチトロンビン欠乏は血栓傾向(血栓性素因)の原因となる。
●セルピン(阻害因子)=アンチトロンビン・α2-プラスミンインヒビター・α₁-アンチトリプシン・C1インヒビター。
●セリンプロテアーゼ(酵素側)=トロンビン・第Ⅹa/Ⅸa/Ⅺa因子・プラスミン・活性化プロテインC。
●補因子=ヘパリン・トロンボモジュリン・プロテインS。
選択肢ごとの解説
- ① ヘパリンはアンチトロンビンの作用を増強する補助因子で、それ自体はセルピンではない。
- ② プロテインCは活性化されてセリンプロテアーゼとして働く酵素であり、阻害因子(セルピン)ではない。
- ③ プロテインSは活性化プロテインCの補因子であり、酵素阻害因子(セルピン)ではない。
- ④ 正しい。アンチトロンビンはセルピンに属するセリンプロテアーゼインヒビターである。
- ⑤ トロンボモジュリンは内皮細胞表面の補因子であり、セリンプロテアーゼインヒビターではない。
第66回 午前65(臨床血液学)
血漿鉄消失時間が延長するのはどれか。
- ①溶血性貧血
- ②鉄欠乏性貧血
- ③巨赤芽球性貧血
- ④再生不良性貧血
- ⑤真性赤血球増加症
正答: ④再生不良性貧血
ポイント
血漿鉄消失時間は放射性鉄を静注した後、鉄が血漿から造血組織へ取り込まれて消失する速度を示す指標で、赤血球造血が盛んなほど短縮する。再生不良性貧血では骨髄の赤芽球系が低形成となり鉄の利用が低下するため、血漿鉄消失時間が延長する。一方、溶血性・鉄欠乏性・巨赤芽球性貧血など造血が亢進する病態では短縮する。
●消失時間延長(造血低下)=再生不良性貧血・赤芽球癆。
●消失時間短縮(造血亢進)=溶血性貧血・鉄欠乏性貧血・巨赤芽球性貧血(無効造血)・真性赤血球増加症。
●関連検査=赤血球鉄交代率・血清鉄・フェリチン・網赤血球。
選択肢ごとの解説
- ① 溶血性貧血では代償性に造血が亢進し鉄利用が増えるため、消失時間はむしろ短縮する。
- ② 鉄欠乏性貧血では鉄要求が高く造血が亢進し、消失時間は短縮する。
- ③ 巨赤芽球性貧血では無効造血で鉄需要があり、消失時間は短縮傾向となる。
- ④ 正しい。再生不良性貧血は造血低下により鉄の利用が減るため血漿鉄消失時間が延長する。
- ⑤ 真性赤血球増加症では造血亢進により鉄利用が増え、消失時間は短縮する。
第66回 午前66(臨床血液学)
骨髄穿刺液のMay-Giemsa染色標本を別に示す。矢印の封入体のもととなる細胞内成分はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66aA066.7d9e34eeba.jpg

正答: ⑤アズール顆粒
ポイント
May-Giemsa染色で芽球の細胞質にみられる赤紫色の棒状封入体はアウエル小体で、アズール顆粒(一次顆粒)が融合・凝集して生じる。アズール顆粒はミエロペルオキシダーゼなどを含み、アウエル小体もペルオキシダーゼ陽性を示すため骨髄系芽球の指標となる。アウエル小体は急性骨髄性白血病でみられ、束状に多数集簇したものはfaggot細胞として急性前骨髄球性白血病で認められる。
●アウエル小体(アズール顆粒由来)=急性骨髄性白血病・faggot細胞(急性前骨髄球性白血病)。
●核由来封入体=Howell-Jolly小体(DNA・核残遺物)。
●鉄関連=鉄顆粒・環状鉄芽球(鉄染色陽性)。
●変性ヘモグロビン=Heinz小体。
●RNA関連=好塩基性斑点・好塩基性(多染性)。
選択肢ごとの解説
- ① DNAは核の構成成分で、細胞質封入体であるアウエル小体のもととはならない。
- ② RNAは好塩基性の細胞質に分布するが、棒状封入体(アウエル小体)のもとではない。
- ③ 鉄顆粒は鉄染色で証明される環状鉄芽球などの所見で、本封入体のもとではない。
- ④ 紡錘体は細胞分裂に関わる微小管構造で、封入体のもとではない。
- ⑤ 正しい。アウエル小体はアズール顆粒が融合してできた封入体である。
📋 まとめの表を見る:血球の核・細胞質にみられる特徴的所見
第66回 午前67(臨床血液学)
真性赤血球増加症でみられるのはどれか。
- ①JAK2変異
- ②破砕赤血球出現
- ③ハプトグロビン低値
- ④エリスロポエチン高値
- ⑤平均赤血球容積〈MCV〉高値
正答: ①JAK2変異
ポイント
真性赤血球増加症は造血幹細胞のクローン性増殖による骨髄増殖性腫瘍で、ほぼ全例にJAK2 V617F遺伝子変異を認める。JAK2の恒常的活性化によりエリスロポエチン非依存性に赤血球が増殖するため、血清エリスロポエチンはむしろ低値を示す。汎血球増加(赤血球・白血球・血小板増加)や脾腫を伴い、瀉血で鉄欠乏を生じると小球性となることがある。
●骨髄増殖性腫瘍=真性赤血球増加症(JAK2変異)・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症・慢性骨髄性白血病(BCR-ABL1)。
●二次性赤血球増加=エリスロポエチン高値(低酸素・腎腫瘍など)。
●溶血の所見=ハプトグロビン低値・破砕赤血球・LDH上昇。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。真性赤血球増加症ではほぼ全例にJAK2変異を認める。
- ② 破砕赤血球は微小血管障害性溶血の所見で、本症の特徴ではない。
- ③ ハプトグロビン低値は溶血の所見で、本症の特徴ではない。
- ④ 本症はエリスロポエチン非依存性に赤血球が増えるため、エリスロポエチンは高値ではなく低値となる。
- ⑤ 本症の赤血球はMCV高値を特徴とせず、瀉血による鉄欠乏でむしろ小球性となることがある。
第66回 午前68(臨床微生物学)
Mycobacterium属で低温(30 ℃)での培養が必要なのはどれか。
- ①M. avium
- ②M. intracellulare
- ③M. kansasii
- ④M. marinum
- ⑤M. tuberculosis complex
正答: ④M. marinum
ポイント
非結核性抗酸菌のうちMycobacterium marinumは水・魚類に分布し、ヒトでは手指などの体表に肉芽腫性病変(プール肉芽腫・養魚家結節)を作る。体表に感染するため至適発育温度が30℃前後と低く、多くの抗酸菌が37℃で発育するのに対して低温培養を要する。Runyon分類では光発色性のⅠ群に分類される。
●低温(30℃前後)発育=M. marinum・M. ulcerans・M. haemophilum。
●遅発育・37℃=M. tuberculosis complex・M. avium complex・M. kansasii。
●迅速発育菌=M. fortuitum・M. abscessus・M. chelonae。
選択肢ごとの解説
- ① M. aviumは37℃で発育するM. avium complexの一菌種で、低温培養は要さない。
- ② M. intracellulareもM. avium complexの一菌種で、37℃で発育し低温培養は要さない。
- ③ M. kansasiiは37℃で発育する光発色菌で、低温培養は要さない。
- ④ 正しい。M. marinumは皮膚病変を作り至適発育温度が30℃前後と低く、低温培養が必要である。
- ⑤ M. tuberculosis complexは37℃で発育し、低温培養は要さない。
第66回 午前69(臨床微生物学)
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉について正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①逆転写酵素をもつ。
- ②主な標的細胞はCD8陽性リンパ球である。
- ③イムノクロマト法が確認検査として用いられる。
- ④医療従事者における感染経路には針刺しがある。
- ⑤治療にはノイラミニダーゼ阻害薬が有効である。
正答: ①逆転写酵素をもつ。・④医療従事者における感染経路には針刺しがある。
ポイント
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉はレトロウイルスに属し、逆転写酵素をもってRNAゲノムをDNAに逆転写し、インテグラーゼで宿主ゲノムに組み込む。主な標的はCD4陽性Tリンパ球で、感染が進むと細胞性免疫が低下する。感染経路は性的接触・血液(医療従事者の針刺しを含む)・母子感染で、確認検査にはウェスタンブロットや核酸増幅検査が用いられる。
●レトロウイルス=HIV・HTLV-1(成人T細胞白血病)。
●HIVの酵素=逆転写酵素・インテグラーゼ・プロテアーゼ(治療標的)。
●HIVスクリーニング=抗原抗体同時測定・イムノクロマト法、確認=ウェスタンブロット・核酸増幅。
●ノイラミニダーゼ阻害薬=インフルエンザ治療薬。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。HIVはレトロウイルスであり逆転写酵素をもつ。
- ② HIVの主な標的細胞はCD4陽性リンパ球であり、CD8陽性リンパ球ではない。
- ③ イムノクロマト法はスクリーニング検査であり、確認検査にはウェスタンブロットや核酸増幅が用いられる。
- ④ 正しい。医療従事者では針刺しが感染経路の一つとなる。
- ⑤ ノイラミニダーゼ阻害薬はインフルエンザの治療薬であり、HIVには無効である。
📋 まとめの表を見る:HIV感染の病期分類とウイルス学的特徴
HIVはレトロウイルス科のRNAウイルスで、逆転写酵素によりRNAをDNAに逆転写して宿主ゲノムに組み込む。主な標的はCD4陽性Tリンパ球であり、CD8陽性リンパ球ではない。HIV-1とHIV-2の2型があり、HIV-1が世界的流行の主体。
第66回 午前70(臨床微生物学)
膿のGram染色標本を別に示す。分離菌はヒツジ血液寒天培地およびBTB乳糖寒天培地に発育し、カタラーゼ試験は陽性でマンニトールを分解した。推定される菌種はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66aA070.4ae5c19913.jpg

- ①Enterococcus faecalis
- ②Staphylococcus aureus
- ③Staphylococcus epidermidis
- ④Streptococcus agalactiae
- ⑤Streptococcus pyogenes
正答: ②Staphylococcus aureus
ポイント
Gram陽性球菌のうちカタラーゼ陽性はブドウ球菌属、陰性はレンサ球菌・腸球菌と一次鑑別される。本菌はカタラーゼ陽性のブドウ球菌でマンニトールを分解するため、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)が推定される。S. aureusはコアグラーゼ陽性で、卵黄反応・DNase陽性も示し、BTB乳糖寒天培地で発育する点も整合する。
●ブドウ球菌(カタラーゼ陽性)=S. aureus(コアグラーゼ・マンニトール陽性)・S. epidermidis(陰性)・S. saprophyticus。
●レンサ球菌・腸球菌(カタラーゼ陰性)=S. pyogenes(A群・β溶血)・S. agalactiae(B群)・Enterococcus faecalis。
●ブドウ球菌の鑑別=コアグラーゼ・マンニトール分解・DNase・卵黄反応(選択分離にはマンニット食塩培地を用いる)。
選択肢ごとの解説
- ① Enterococcus faecalisはカタラーゼ陰性の腸球菌で、カタラーゼ陽性の所見に合致しない。
- ② 正しい。カタラーゼ陽性でマンニトールを分解するブドウ球菌はStaphylococcus aureusである。
- ③ Staphylococcus epidermidisはカタラーゼ陽性だがマンニトール非分解・コアグラーゼ陰性で合致しない。
- ④ Streptococcus agalactiaeはカタラーゼ陰性のレンサ球菌で、カタラーゼ陽性に合致しない。
- ⑤ Streptococcus pyogenesはカタラーゼ陰性のレンサ球菌で、カタラーゼ陽性に合致しない。
📋 まとめの表を見る:ブドウ球菌属の鑑別(カタラーゼ・コアグラーゼ・マンニット分解・耐塩性)
レンサ球菌属・腸球菌属はカタラーゼ陰性であり、この点がブドウ球菌属との一次鑑別点となる。S. aureusの選択分離にはマンニット食塩培地(卵黄加マンニット食塩寒天)を用いる。
第66回 午前71(臨床微生物学)
血液培養から分離された場合、汚染菌の可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
- ①Bacillus subtilis
- ②Escherichia coli
- ③Staphylococcus aureus
- ④Propionibacterium acnes
- ⑤Pseudomonas aeruginosa
正答: ①Bacillus subtilis・④Propionibacterium acnes
ポイント
血液培養が陽性となったとき、皮膚常在菌が複数セット中の1セットのみから検出された場合は採血時の汚染(コンタミネーション)が疑われる。Bacillus属やPropionibacterium acnes(現Cutibacterium acnes)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌などの皮膚常在菌は汚染菌であることが多い。一方、腸内細菌科菌や緑膿菌、黄色ブドウ球菌は病原性が高く真の菌血症の起因菌として重視される。
●汚染菌(皮膚常在菌)になりやすい=Bacillus属・Cutibacterium(Propionibacterium) acnes・コアグラーゼ陰性ブドウ球菌・Corynebacterium。
●臨床的意義が高い(真の起因菌)=S. aureus・大腸菌などの腸内細菌科・緑膿菌・カンジダ。
●判定の助け=複数セット陽性・陽性化時間・臨床経過。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。Bacillus subtilisは環境・皮膚に存在する芽胞形成菌で、血液培養では汚染菌の可能性が高い。
- ② Escherichia coliは腸内細菌で、血液培養から検出されれば菌血症の起因菌として臨床的意義が高い。
- ③ Staphylococcus aureusは病原性が高く、血液培養陽性は真の菌血症として重視される。
- ④ 正しい。Propionibacterium acnes(Cutibacterium acnes)は皮膚常在菌で、血液培養では汚染菌の可能性が高い。
- ⑤ Pseudomonas aeruginosaは日和見感染の起因菌として重要で、汚染菌より真の起因菌を考える。
第66回 午前72(臨床微生物学)
Helicobacter pyloriについて誤っているのはどれか。
- ①大腸癌と関連がある。
- ②らせん状の形態を示す。
- ③微好気培養が必要である。
- ④強いウレアーゼ活性を有する。
- ⑤糞便中抗原検査が診断に有用である。
正答: ①大腸癌と関連がある。
ポイント
Helicobacter pyloriはらせん状の微好気性Gram陰性桿菌で、強いウレアーゼ活性により胃内の尿素を分解してアンモニアを生じ、酸を中和して胃粘膜に定着する。胃炎・胃十二指腸潰瘍・胃癌・MALTリンパ腫の発症と関連するが、大腸癌との因果関係は確立していない。診断には尿素呼気試験・糞便中抗原検査・迅速ウレアーゼ試験・血清抗体などが用いられる。
●H. pylori関連疾患=慢性胃炎・胃十二指腸潰瘍・胃癌・MALTリンパ腫。
●ウレアーゼ利用検査=尿素呼気試験・迅速ウレアーゼ試験。
●その他の検査=糞便中抗原・血清抗体・鏡検(培養は微好気)。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。H. pyloriは胃癌やMALTリンパ腫と関連するが、大腸癌との関連は確立しておらず本記述は誤りである。
- ② らせん状の形態を示すのは正しい記述である。
- ③ 微好気培養が必要なのは正しい記述である。
- ④ 強いウレアーゼ活性をもつのは正しい記述である。
- ⑤ 糞便中抗原検査が診断に有用なのは正しい記述である。
第66回 午前73(臨床微生物学)
手足口病の原因となるのはどれか。
- ①RSウイルス
- ②アデノウイルス
- ③コクサッキーウイルス
- ④コロナウイルス
- ⑤パルボウイルス
正答: ③コクサッキーウイルス
ポイント
手足口病は手掌・足底・口腔内に水疱性発疹を呈する乳幼児に多い夏季の感染症で、主にコクサッキーウイルスA群やエンテロウイルス71が原因となる。これらはエンテロウイルス属の小型RNAウイルス(ピコルナウイルス科)で、糞口感染や飛沫で伝播する。エンテロウイルス71では髄膜炎・脳炎などの中枢神経合併症に注意を要する。
●エンテロウイルス感染症=手足口病(コクサッキーA・エンテロウイルス71)・ヘルパンギーナ(コクサッキーA)・無菌性髄膜炎。
●RSウイルス=細気管支炎・肺炎。
●アデノウイルス=咽頭結膜熱・流行性角結膜炎。
●パルボウイルスB19=伝染性紅斑(りんご病)。
選択肢ごとの解説
- ① RSウイルスは細気管支炎・肺炎を起こすが、手足口病の原因ではない。
- ② アデノウイルスは咽頭結膜熱や流行性角結膜炎の原因で、手足口病の原因ではない。
- ③ 正しい。コクサッキーウイルス(A群)は手足口病の主要な原因ウイルスである。
- ④ コロナウイルスは上気道感染などの原因で、手足口病の原因ではない。
- ⑤ パルボウイルス(B19)は伝染性紅斑(りんご病)の原因で、手足口病の原因ではない。
第66回 午前74(臨床微生物学)
オキシダーゼテスト陽性でグルコースを発酵的に分解するのはどれか。2つ選べ。
- ①Acinetobacter baumannii
- ②Aeromonas hydrophila
- ③Klebsiella pneumoniae
- ④Plesiomonas shigelloides
- ⑤Pseudomonas aeruginosa
正答: ②Aeromonas hydrophila・④Plesiomonas shigelloides
ポイント
オキシダーゼ陽性かつグルコースを発酵的に分解するGram陰性桿菌には、Aeromonas、Plesiomonas、Vibrioなどがある。Aeromonasはエロモナス科に、Plesiomonasは腸内細菌科(科内では例外的にオキシダーゼ陽性)に分類され、これらを一括してビブリオ科とは呼ばない。腸内細菌科はグルコースを発酵するがオキシダーゼ陰性であり、ブドウ糖非発酵菌(緑膿菌・アシネトバクター)はオキシダーゼの有無にかかわらずグルコースを発酵的に分解しない点で鑑別される。Aeromonas hydrophilaとPlesiomonas shigelloidesは下痢症の起因菌となる。
●オキシダーゼ陽性・発酵性=Aeromonas・Plesiomonas・Vibrio。
●オキシダーゼ陰性・発酵性=腸内細菌科(大腸菌・Klebsiella等)。
●オキシダーゼ陽性・非発酵=Pseudomonas aeruginosa。
●オキシダーゼ陰性・非発酵=Acinetobacter baumannii。
選択肢ごとの解説
- ① Acinetobacter baumanniiはオキシダーゼ陰性のブドウ糖非発酵菌で、両条件に合致しない。
- ② 正しい。Aeromonas hydrophilaはオキシダーゼ陽性でグルコースを発酵的に分解する。
- ③ Klebsiella pneumoniaeは腸内細菌科でオキシダーゼ陰性のため合致しない。
- ④ 正しい。Plesiomonas shigelloidesはオキシダーゼ陽性でグルコースを発酵的に分解する。
- ⑤ Pseudomonas aeruginosaはオキシダーゼ陽性だがブドウ糖非発酵菌で、発酵的に分解しないため合致しない。
第66回 午前75(臨床微生物学)
Shigella sonneiが陽性を示すのはどれか。
- ①IPAテスト
- ②ONPGテスト
- ③インドールテスト
- ④オキシダーゼテスト
- ⑤リジン脱炭酸テスト
正答: ②ONPGテスト
ポイント
Shigella sonnei(D群赤痢菌)は他の赤痢菌と異なりβ-ガラクトシダーゼをもつため、遅れてラクトースを分解しONPG(o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド)テストが陽性となる。赤痢菌は腸内細菌科に属し、非運動性・オキシダーゼ陰性・リジン脱炭酸陰性・インドール(S. sonneiは)陰性が一般的な性状である。ONPGテストは遅分解性のラクトース分解能を検出する点でラクトース発酵試験を補う。
●Shigella sonneiの性状=ONPG陽性・非運動性・リジン脱炭酸陰性・オキシダーゼ陰性・インドール陰性。
●IPAテスト陽性=Proteus・Morganella・Providencia。
●オキシダーゼ陽性=Aeromonas・Vibrio・Pseudomonas(赤痢菌は陰性)。
●リジン脱炭酸陽性=Salmonella・Klebsiella(赤痢菌は陰性)。
選択肢ごとの解説
- ① IPA(インドールピルビン酸)テストはProteusなどで陽性となり、Shigellaは陰性である。
- ② 正しい。Shigella sonneiはβ-ガラクトシダーゼをもちONPGテストが陽性となる。
- ③ S. sonneiはインドール陰性で、本テストは陽性を示さない。
- ④ Shigellaはオキシダーゼ陰性であり、本テストは陽性を示さない。
- ⑤ Shigellaはリジン脱炭酸陰性であり、本テストは陽性を示さない。
第66回 午前76(臨床微生物学)
GAM半流動培地での菌の発育を別に示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66aA076.0e59243b16.jpg

- ①Bacteroides fragilis
- ②Candida albicans
- ③Pasteurella multocida
- ④Proteus mirabilis
- ⑤Pseudomonas aeruginosa
正答: ①Bacteroides fragilis
ポイント
GAM半流動培地は嫌気性菌の発育と運動性を観察する高層培地で、酸素感受性の偏性嫌気性菌は酸素の少ない培地深部に発育帯をつくる。Bacteroides fragilisは偏性嫌気性のGram陰性無芽胞桿菌で胆汁耐性を示し、半流動培地では深部に集中した発育像を呈する。腸管内の代表的常在菌であり、腹腔内膿瘍や敗血症など内因性感染の起因菌となる。●偏性嫌気性Gram陰性桿菌=Bacteroides fragilis群・Prevotella・Fusobacterium。●偏性嫌気性Gram陽性桿菌=Clostridium(芽胞形成)・Actinomyces・Propionibacterium。●偏性嫌気性球菌=Peptostreptococcus(陽性)・Veillonella(陰性)。●嫌気培地・同定=GAM培地・BBE(Bacteroides胆汁エスクリン)寒天・嫌気ジャー/グローブボックス。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。Bacteroides fragilisは偏性嫌気性のGram陰性桿菌で、GAM半流動培地の深部に発育帯を示す。
- ② Candida albicansは好気性の真菌(酵母)で、嫌気培地深部に限局した発育像とは異なる。
- ③ Pasteurella multocidaは通性嫌気性のGram陰性桿菌で、半流動培地深部の嫌気発育像を主目的とした菌ではない。
- ④ Proteus mirabilisは通性嫌気性の腸内細菌で寒天平板で遊走(スウォーミング)を示し、本所見とは異なる。
- ⑤ Pseudomonas aeruginosaは偏性好気性のブドウ糖非発酵Gram陰性桿菌で、培地表層付近に発育し深部発育像とは異なる。
📋 まとめの表を見る:代表的な偏性嫌気性菌の性状(Clostridium属・Bacteroides fragilis)
第66回 午前77(臨床微生物学)
直ちに医師への連絡が必要なのはどれか。2つ選べ。
- ①尿からEscherichia coliを検出
- ②糞便からKlebsiella pneumoniaeを検出
- ③髄液からCryptococcus neoformansを検出
- ④皮膚からStaphylococcus epidermidisを検出
- ⑤喀痰からMycobacterium tuberculosisを検出
正答: ③髄液からCryptococcus neoformansを検出・⑤喀痰からMycobacterium tuberculosisを検出
ポイント
検査室から医師へ直ちに連絡すべき所見(パニック値・重大検出)は、髄膜炎など緊急治療を要する病態や、結核のように感染対策上の即応が必要な病原体の検出時である。本来無菌的な髄液からCryptococcus neoformansを検出すれば真菌性(クリプトコッカス)髄膜炎を示し、喀痰からMycobacterium tuberculosisを検出すれば肺結核を示すため、いずれも速やかな報告と対応が求められる。一方、尿のEscherichia coliや糞便のKlebsiella pneumoniae、皮膚のStaphylococcus epidermidisは常在・典型的検出であり緊急連絡には当たらない。●無菌材料からの検出で緊急=髄液(細菌・真菌)・血液培養陽性・関節液/胸腹水。●感染対策上の即応=結核菌・多剤耐性菌(CRE・MRSA・VRE)・髄膜炎菌。●常在・汚染を考慮=皮膚の表皮ブドウ球菌・糞便の腸内細菌科・尿の少量大腸菌。
選択肢ごとの解説
- ① 尿からのEscherichia coli検出は尿路感染として日常的にみられ、直ちの連絡を要する緊急性は高くない。
- ② 糞便からのKlebsiella pneumoniae検出は腸内常在菌の可能性があり、緊急連絡の対象とはならない。
- ③ 正しい。本来無菌の髄液からCryptococcus neoformansを検出すれば真菌性髄膜炎を示し、直ちに医師への連絡が必要である。
- ④ 皮膚からのStaphylococcus epidermidis検出は常在・汚染菌の可能性が高く、緊急連絡の対象ではない。
- ⑤ 正しい。喀痰からMycobacterium tuberculosisを検出すれば結核を示し、治療と感染対策の両面から直ちに医師への連絡が必要である。
📋 まとめの表を見る:微生物検査で担当医師への緊急連絡を要する代表的な検出所見
第66回 午前78(臨床微生物学)
リジン脱炭酸試験および硫化水素産生が陽性を示すのはどれか。
- ①Citrobacter freundii
- ②Escherichia coli
- ③Proteus mirabilis
- ④Salmonella Typhi
- ⑤Serratia marcescens
正答: ④Salmonella Typhi
ポイント
リジン脱炭酸試験(LDC)陽性かつ硫化水素(H₂S)産生陽性を示す腸内細菌科の代表はSalmonellaである。Salmonella TyphiはTSI/LIA培地でリジン脱炭酸陽性を示し、H₂S産生は弱いながらも陽性となる。Proteus mirabilisはH₂S陽性だがリジン脱炭酸陰性、Citrobacter freundiiもH₂S陽性だがリジン脱炭酸陰性であり、両陽性のSalmonellaと鑑別される。●リジン脱炭酸陽性=Salmonella・Klebsiella・Serratia・Enterobacter(一部)。●硫化水素産生陽性=Salmonella・Proteus・Citrobacter freundii・Edwardsiella。●両者陽性=Salmonella(LIA培地で判別)・Edwardsiella tarda。●鑑別培地=TSI寒天・LIA(リジン鉄寒天)・SS寒天/DHL寒天。
選択肢ごとの解説
- ① Citrobacter freundiiは硫化水素陽性だがリジン脱炭酸陰性で、両陽性の条件に合致しない。
- ② Escherichia coliは硫化水素陰性で、本条件に合致しない(リジン脱炭酸は株により異なる)。
- ③ Proteus mirabilisは硫化水素陽性だがリジン脱炭酸陰性で、両陽性に合致しない。
- ④ 正しい。Salmonella Typhiはリジン脱炭酸陽性で、硫化水素も(弱いが)産生し陽性となる。
- ⑤ Serratia marcescensはリジン脱炭酸陽性だが硫化水素陰性で、本条件に合致しない。
📋 まとめの表を見る:腸内細菌科の生化学的性状の鑑別(乳糖分解・硫化水素・リジン脱炭酸・インドール)
サルモネラ・赤痢菌など乳糖非分解菌はTSI培地で高層部のみ黄変し斜面は赤色のまま残るが、大腸菌など乳糖分解菌は斜面・高層とも黄変する。チフス菌(Typhi)はTSI培地でガスをほとんど産生せず硫化水素も少量にとどまる点が他の多くのSalmonella血清型と異なる。尿素分解(ウレアーゼ)陽性の代表はProteus属・Morganella属・Providencia属。
第66回 午前79(臨床免疫学)
血液型について正しいのはどれか。
- ①ABO血液型は1950年に発見された。
- ②ABO血液型抗原は蛋白抗原系である。
- ③RhD陰性の頻度は日本人では約0.5%である。
- ④Rh血液型ではLandsteinerの法則が成り立つ。
- ⑤Rh系抗原の中でE抗原が最も強い免疫原性をもつ。
正答: ③RhD陰性の頻度は日本人では約0.5%である。
ポイント
ABO血液型は1900年頃にLandsteinerが発見した糖鎖(糖質)抗原系で、自己にない抗原に対する規則抗体を血清中にもつLandsteinerの法則が成り立つ。Rh血液型はタンパク(赤血球膜タンパク)抗原系で規則抗体をもたず、抗原のうちD抗原が最も免疫原性が強い。日本人のRhD陰性頻度は約0.5%で、欧米(約15%)より著しく低い。●ABO血液型=糖鎖抗原・規則抗体(Landsteinerの法則)・1900年Landsteiner。●Rh血液型=タンパク抗原・不規則(免疫)抗体・免疫原性はD>E>c>C>e。●その他の主な血液型=P・Lewisは糖鎖抗原、MNSはグリコフォリンA・Bなどの糖蛋白上の抗原、Kell・Duffy・Kiddは膜蛋白上の抗原。●臨床的意義=D抗原は不適合輸血・新生児溶血性疾患の主因。
選択肢ごとの解説
- ① ABO血液型はLandsteinerが1900年頃に発見したもので、1950年ではない。
- ② ABO血液型抗原は赤血球膜上の糖鎖(糖質)抗原であり、蛋白抗原ではない。
- ③ 正しい。日本人のRhD陰性頻度は約0.5%である。
- ④ Landsteinerの法則は規則抗体をもつABO血液型で成り立ち、規則抗体をもたないRh血液型では成り立たない。
- ⑤ Rh系抗原で最も免疫原性が強いのはE抗原ではなくD抗原である。
📋 まとめの表を見る:Rh血液型(D抗原)のポイント
第66回 午前80(臨床免疫学)
RhD陰性の妊産婦への抗D免疫グロブリンの投与時期として正しいのはどれか。
- ①妊娠8週
- ②妊娠16週
- ③妊娠24週
- ④妊娠32週
- ⑤分娩後72時間以内
正答: ⑤分娩後72時間以内
ポイント
RhD陰性妊婦への抗D免疫グロブリン投与は、RhD陽性胎児赤血球の母体への移行による感作(抗D抗体産生)を防ぎ、次回以降の妊娠での胎児・新生児溶血性疾患を予防する目的で行う。標準的には妊娠28週前後と、RhD陽性児の分娩後72時間以内に投与する。とくに分娩時は胎児赤血球の母体流入が最も起こりやすく、分娩後72時間以内の投与が感作予防の要となる。●感作予防の投与時機=妊娠28週前後・分娩後72時間以内・流産/人工妊娠中絶後・羊水穿刺など侵襲手技後。●新生児溶血性疾患(HDFN)の主因抗原=抗D・抗E・抗c・抗K。●関連検査=間接抗グロブリン試験(不規則抗体スクリーニング)・Kleihauer試験(胎児母体間輸血量)。
選択肢ごとの解説
- ① 妊娠初期(数週)は抗D免疫グロブリンの定期投与時期として一般的でない。
- ② 妊娠16週は標準的な投与時期ではない。
- ③ 妊娠24週は標準的な投与時期ではなく、定期投与は妊娠28週前後が一般的である。
- ④ 妊娠32週は標準的な投与時期ではない。
- ⑤ 正しい。RhD陽性児分娩後72時間以内の投与が感作予防のために必要である。
第66回 午前81(臨床免疫学)
血液型検査の結果を以下に示す。最も考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66aA081.78642e8f55.jpg

- ①A亜型
- ②キメラ
- ③後天性B
- ④A型新生児
- ⑤汎血球凝集反応
正答: ④A型新生児
ポイント
オモテ試験で抗A血清に4+・抗B血清に陰性とA型を示す一方、ウラ試験でA1血球・B血球がいずれも凝集せず規則抗体(抗A・抗B)が検出されない。新生児は出生時に自己の規則抗体をほとんど産生しておらず(母由来IgGは存在しうるが量が少ない)、ウラ試験の凝集が欠如する。オモテA型かつウラ無反応というこのパターンはA型新生児に矛盾しない。●ウラ試験が弱い/欠如=新生児・高齢者・無/低γグロブリン血症。●オモテ・ウラ不一致の原因=亜型(オモテ弱)・後天性B・連銭形成/汎血球凝集(ウラ偽陽性)・寒冷抗体。●亜型=A2など(抗A1レクチンで判別)。●mixed-field凝集=キメラ・輸血後・造血幹細胞移植後。
選択肢ごとの解説
- ① A亜型ではオモテ試験で抗Aの反応が弱まることが多く、抗A4+の強陽性とは合致しにくい。
- ② キメラはオモテ試験で部分凝集(mixed-field)を示し、本所見とは異なる。
- ③ 後天性BはA型患者のオモテ試験で抗Bが弱陽性化する現象で、ウラ無反応の本所見とは異なる。
- ④ 正しい。新生児は規則抗体を産生しないためウラ試験が無反応となり、オモテA型と合わせA型新生児が最も考えられる。
- ⑤ 汎血球凝集反応は赤血球が多くの正常血清と反応する現象で、ウラ無反応の本パターンの主因とはいえない。
📋 まとめの表を見る:ABO血液型判定オモテ・ウラ検査不一致の主な原因
新生児は自己の規則抗体(抗A・抗B)をまだ十分に産生していないためウラ検査が陰性化しやすい。混合視野凝集(mixed field)はキメラ・異型輸血後・骨髄移植後などでみられ、通常の不一致とは区別して考える。
第66回 午前82(臨床免疫学)
HLAクラスⅡ抗原をもつ細胞はどれか。
- ①血小板
- ②好中球
- ③赤血球
- ④NK細胞
- ⑤マクロファージ
正答: ⑤マクロファージ
ポイント
HLAクラスⅡ抗原(HLA-DR・DQ・DP)は抗原提示細胞に限局して発現し、樹状細胞・マクロファージ・B細胞・活性化T細胞・血管内皮細胞などがもつ。マクロファージは代表的な抗原提示細胞でクラスⅡを発現する。クラスⅠ(HLA-A・B・C)はほぼすべての有核細胞に発現するが、無核の成熟赤血球や血小板はクラスⅡを発現しない。●HLAクラスⅠ=有核細胞全般・血小板も発現(赤血球は無し)・CD8陽性T細胞へ提示。●HLAクラスⅡ=抗原提示細胞(樹状細胞・マクロファージ・B細胞)・CD4陽性T細胞へ提示。●臨床的意義=移植適合性・血小板輸血不応(HLA抗体)・自己免疫疾患との関連(HLA-B27など)。
選択肢ごとの解説
- ① 血小板はHLAクラスⅠを発現するが、クラスⅡ抗原はもたない。
- ② 好中球はHLAクラスⅡ抗原を恒常的には発現しない。
- ③ 成熟赤血球は無核でHLAをほとんど発現せず、クラスⅡ抗原をもたない。
- ④ NK細胞はHLAクラスⅡ抗原を恒常的には発現しない。
- ⑤ 正しい。マクロファージは抗原提示細胞でありHLAクラスⅡ抗原を発現する。
第66回 午前83(臨床免疫学)
Th1細胞が産生するサイトカインはどれか。2つ選べ。
- ①インターフェロンγ〈IFN-γ〉
- ②インターロイキン2〈IL-2〉
- ③インターロイキン4〈IL-4〉
- ④インターロイキン5〈IL-5〉
- ⑤インターロイキン10〈IL-10〉
正答: ①インターフェロンγ〈IFN-γ〉・②インターロイキン2〈IL-2〉
ポイント
ヘルパーT細胞(CD4陽性)は産生するサイトカインのパターンでTh1とTh2などに分類される。Th1はインターフェロンγ(IFN-γ)とインターロイキン2(IL-2)を産生し、マクロファージ活性化や細胞傷害性T細胞の誘導を介して細胞性免疫を担う。Th2はIL-4・IL-5・IL-13を産生してB細胞による抗体産生(液性免疫)やアレルギー・好酸球性炎症に関与する。●Th1サイトカイン=IFN-γ・IL-2(細胞性免疫・マクロファージ活性化)。●Th2サイトカイン=IL-4・IL-5・IL-13(液性免疫・IgE・好酸球)。●Th17=IL-17(好中球動員・自己免疫)。●制御性T細胞(Treg)=IL-10・TGF-β(免疫抑制)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。インターフェロンγはTh1細胞が産生し、細胞性免疫を担う代表的サイトカインである。
- ② 正しい。インターロイキン2はTh1細胞が産生し、T細胞の増殖を促す。
- ③ インターロイキン4はTh2細胞が産生するサイトカインで、Th1の産物ではない。
- ④ インターロイキン5はTh2細胞が産生し好酸球を活性化するサイトカインで、Th1の産物ではない。
- ⑤ インターロイキン10は制御性T細胞・Th2系の抑制性サイトカインで、Th1の主要産物ではない。
第66回 午前84(臨床免疫学)
交差適合試験において間接抗グロブリン試験の主試験が陽性になる原因はどれか。2つ選べ。
- ①連銭形成
- ②洗浄回数の不足
- ③低頻度抗原に対する抗体
- ④患者の直接抗グロブリン試験陽性
- ⑤提供者の直接抗グロブリン試験陽性
正答: ③低頻度抗原に対する抗体・⑤提供者の直接抗グロブリン試験陽性
ポイント
間接抗グロブリン試験による交差適合試験の主試験は、患者血清と供血者赤血球を反応させて適合性をみる。主試験が陽性となるのは、患者血清中に供血者赤血球と反応する不規則抗体(低頻度抗原に対する抗体を含む)が存在する場合や、供血者赤血球がすでに抗体で感作されている(供血者の直接抗グロブリン試験が陽性)場合である。連銭形成は洗浄を伴う本法では問題になりにくく、洗浄不足はむしろ抗ヒトグロブリン試薬が中和され偽陰性の原因となる。●主試験陽性の原因=患者の不規則抗体・低頻度抗原への抗体・供血者赤血球の感作(供血者DAT陽性)。●副試験=供血者血清と患者赤血球(患者DAT陽性で陽性化)。●偽陰性の原因=洗浄不足・抗ヒトグロブリン試薬の失活。●偽陽性の原因=連銭形成(生食法)・自己抗体・寒冷抗体。
選択肢ごとの解説
- ① 連銭形成は生理食塩液法で偽凝集を起こすが、洗浄を伴う間接抗グロブリン試験では問題となりにくい。
- ② 洗浄回数の不足は抗ヒトグロブリン試薬が遊離抗体で中和され偽陰性の原因となり、陽性化の原因ではない。
- ③ 正しい。患者血清が供血者赤血球の低頻度抗原に対する抗体をもつと、主試験が陽性となる。
- ④ 患者の直接抗グロブリン試験陽性は患者自己赤血球の感作を意味し、供血者赤血球を用いる主試験の陽性原因とはならない。
- ⑤ 正しい。供血者赤血球がすでに感作されている(供血者の直接抗グロブリン試験陽性)と、主試験で陽性となる。
📋 まとめの表を見る:交差適合試験が陽性(不適合)になる原因
HBs抗体など感染症スクリーニング項目は赤血球と反応する抗体ではないため、交差適合試験の不適合原因にはならない。
第66回 午前85(臨床免疫学)
蛍光顕微鏡の観察に適しているのはどれか。
- ①金コロイド
- ②ルミノール
- ③ローダミン
- ④ルシフェリン
- ⑤ルテニウム錯体
正答: ③ローダミン
ポイント
蛍光顕微鏡は特定波長の励起光で蛍光物質を励起し、放出される長波長の蛍光を観察する。ローダミン(赤色蛍光)やFITC(緑色蛍光)は蛍光抗体法で用いられる代表的な蛍光色素である。金コロイドは電子顕微鏡・免疫組織化学の標識、ルミノール・ルシフェリン・ルテニウム錯体はそれぞれ化学発光・生物発光・電気化学発光の標識であり、いずれも蛍光顕微鏡観察には用いない。●蛍光色素=ローダミン・FITC(フルオレセイン)・テキサスレッド・量子ドット。●化学発光=ルミノール・アクリジニウムエステル。●生物発光=ルシフェリン-ルシフェラーゼ。●電気化学発光=ルテニウム錯体(ECLIA)。●電顕/光顕標識=金コロイド・ペルオキシダーゼ(DAB発色)。
選択肢ごとの解説
- ① 金コロイドは電子顕微鏡や免疫組織化学の標識で、蛍光観察には用いない。
- ② ルミノールは化学発光(ケミルミネッセンス)の基質で、蛍光顕微鏡観察には用いない。
- ③ 正しい。ローダミンは蛍光色素であり、蛍光顕微鏡の観察に適する。
- ④ ルシフェリンは生物発光の基質で、蛍光顕微鏡観察には用いない。
- ⑤ ルテニウム錯体は電気化学発光(ECLIA)の標識で、蛍光顕微鏡観察には用いない。
第66回 午前86(臨床免疫学)
検査材料の取扱いで正しいのはどれか。
- ①寒冷凝集反応用の血液を4℃で血清分離した。
- ②免疫電気泳動用の血清を56 ℃で30分処理した。
- ③クリオグロブリン検査用の血液を4℃で血清分離した。
- ④直接Coombs試験用の血液を検査直前まで4℃で保存した。
- ⑤寒冷活性化のある検体の補体価〈CH50〉測定にEDTA加血漿を用いた。
正答: ⑤寒冷活性化のある検体の補体価〈CH50〉測定にEDTA加血漿を用いた。
ポイント
通常のCH50測定には血清を用い、分離・保存条件は測定法の指定に従う。寒冷活性化(低温で補体が活性化・消費される現象)のある検体では、対応する測定法でEDTA加血漿を用いると補体の活性化が抑えられ、測定値が安定する。寒冷凝集素やクリオグロブリンは低温で析出・吸着するため、これらの検査では37℃に保温して血清分離する必要がある。●37℃保温で分離すべき検体=寒冷凝集素・クリオグロブリン・寒冷活性化のある補体検体。●補体検査の保存=通常は血清を速やかに分離し、測定法で指定された条件で凍結保存する。寒冷活性化例のEDTA加血漿使用は、その検体に対応した測定法で行う。●非働化(56℃30分)=補体除去が目的で、免疫電気泳動の沈降反応には行わない。●直接Coombs試験=室温で扱い、低温で寒冷抗体による偽陽性を避ける。
選択肢ごとの解説
- ① 寒冷凝集反応用血液は寒冷凝集素が赤血球に吸着しないよう37℃で血清分離すべきで、4℃は不適である。
- ② 免疫電気泳動用血清を56℃30分(非働化)すると沈降反応に影響しうるため、通常は行わない。
- ③ クリオグロブリン検査用血液はクリオグロブリンが析出しないよう37℃で血清分離すべきで、4℃は不適である。
- ④ 直接Coombs試験用血液を4℃で保存すると寒冷抗体の影響で偽陽性を生じうるため不適である。
- ⑤ 正しい。寒冷活性化のある検体のCH50測定にはEDTA加血漿を用いて補体活性化を抑えるのが適切である。
第66回 午前87(臨床免疫学)
健常成人の血清免疫電気泳動像を別に示す。矢印が示す沈降線に相当するのはどれか。ただし、泳動像上部は写真、下部はその一部の模式図を示す。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66aA087.8f7520f578.jpg

- ①IgA
- ②IgG
- ③IgM
- ④補体C3
- ⑤トランスフェリン
正答: ③IgM
ポイント
免疫電気泳動では、まず血清を電気泳動で分離し、次に抗血清を加えて拡散させ、各タンパクが固有の位置と形状の沈降線(沈降弧)を描く。IgMは五量体で分子量が大きく拡散が遅いため、ガンマ〜ベータ領域寄りに太く短い特徴的な沈降弧を示す。健常成人像で矢印が指すこの沈降線はIgMに相当する。●免疫グロブリンの沈降線=IgG(γ領域に幅広)・IgA(β〜γ)・IgM(β寄りで太く短い)。●移動度の目安(陽極から)=アルブミン>α>トランスフェリン/C3(β)>γグロブリン。●M蛋白の検出=特定領域に異常に濃く突出した沈降弧(多発性骨髄腫・原発性マクログロブリン血症)。
選択肢ごとの解説
- ① IgAはβ〜γ領域に沈降線を示すが、本矢印が指すのはIgMに相当する沈降線である。
- ② IgGは血清中で最も多くγ領域に幅広い沈降線を描き、本矢印の像とは異なる。
- ③ 正しい。矢印が示す太く短い沈降線はIgMに相当する。
- ④ 補体C3はβ領域に沈降線を示し、免疫グロブリンの沈降線とは別である。
- ⑤ トランスフェリンはβ領域のタンパクで、免疫グロブリンの沈降線とは異なる。
第66回 午前88(臨床免疫学)
抗核抗体の染色パターンと疾患の組合せで誤っているのはどれか。
- ①セントロメア型 — CREST症候群
- ②核小体型 — Sjögren症候群
- ③均質型 — 薬剤誘発性ループス
- ④斑紋型 — 混合性結合組織病〈MCTD〉
- ⑤辺縁型 — 全身性エリテマトーデス〈SLE〉
正答: ②核小体型 — Sjögren症候群
ポイント
抗核抗体の間接蛍光抗体法による染色パターンは対応抗原・疾患と関連する。核小体型は強皮症(全身性硬化症)でみられ、抗RNAポリメラーゼ抗体などと関連する。Sjögren症候群では抗SS-A/SS-B抗体に対応した斑紋(speckled)型が典型で、核小体型との組合せは誤りである。セントロメア型はCREST症候群、均質(homogeneous)型は薬剤誘発性ループスや抗DNA/抗ヒストン抗体、辺縁(周辺/rim)型は抗二本鎖DNA抗体を介してSLEと関連する。●均質型=抗DNA・抗ヒストン(SLE・薬剤誘発性ループス)。●斑紋型=抗Sm・抗RNP(MCTD)・抗SS-A/SS-B(Sjögren)。●核小体型=抗RNAポリメラーゼ(強皮症)。●セントロメア型=抗セントロメア抗体(CREST症候群)。●辺縁型=抗二本鎖DNA(SLE)。
選択肢ごとの解説
- ① セントロメア型とCREST症候群の組合せは正しい。
- ② 誤り。核小体型は強皮症(全身性硬化症)と関連し、Sjögren症候群は斑紋型が典型であるため、この組合せは誤りである。
- ③ 均質型と薬剤誘発性ループスの組合せは正しい。
- ④ 斑紋型と混合性結合組織病(MCTD)の組合せは正しい。
- ⑤ 辺縁型と全身性エリテマトーデス(SLE)の組合せは正しい。
📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患
第66回 午前89(臨床免疫学)
肝炎ウイルスについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①A型肝炎ウイルスはDNAウイルスである。
- ②B型肝炎ウイルスはRNAウイルスである。
- ③C型肝炎ウイルス抗体は中和抗体である。
- ④D型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスと重複感染する。
- ⑤E型肝炎ウイルスは経口感染が主体である。
正答: ④D型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスと重複感染する。・⑤E型肝炎ウイルスは経口感染が主体である。
ポイント
肝炎ウイルスは型ごとに核酸の種類と感染経路が異なる。A型・E型はRNAウイルスで経口(糞口)感染し、急性肝炎を起こすが慢性化しにくい。B型はDNAウイルス、C型・D型はRNAウイルスで主に血液・体液を介して感染し慢性化しうる。D型はB型のHBs抗原を外被として利用するため、B型肝炎ウイルスが存在する条件で増殖する。HBVとの同時感染のほか、HBV持続感染者へのHDV重感染もある。C型肝炎ウイルス抗体は中和抗体ではなく、感染既往または現感染の指標である。●RNAウイルス=A・C・D・E型(B型のみDNA)。●経口(糞口)感染=A型・E型。●血液/体液感染=B型・C型・D型。●慢性化しやすい=B型(とくに乳幼児期)・C型。●D型=B型存在下でのみ増殖(重複・同時感染)。
選択肢ごとの解説
- ① A型肝炎ウイルスはRNAウイルスであり、DNAウイルスではない。
- ② B型肝炎ウイルスはDNAウイルスであり、RNAウイルスではない。
- ③ C型肝炎ウイルス抗体は中和抗体ではなく、感染の指標として用いられる。
- ④ 正しい。D型肝炎ウイルスはHBs抗原を必要とし、B型肝炎ウイルスと重複(同時・重感染)して感染する。
- ⑤ 正しい。E型肝炎ウイルスは経口(糞口)感染が主体である。
📋 まとめの表を見る:肝炎ウイルスとその特徴
DNAウイルスはB型(HBV)のみ。A型急性期はIgM型HA抗体が有効(IgG型は既感染・予防接種後)。
第66回 午前90(公衆衛生学)
公共用水域の水質汚濁に係る環境基準において、人の健康の保護のため「検出されないこと」と規定されているのはどれか。
正答: ⑤アルキル水銀
ポイント
公共用水域の水質汚濁に係る環境基準では、人の健康の保護に関する項目のうち、毒性が強く本来環境中に存在すべきでない物質は「検出されないこと」と規定される。これに該当するのはアルキル水銀・全シアン・PCB(ポリ塩化ビフェニル)である。鉛・ヒ素・フッ素などは許容上限となる基準値(濃度)が定められている。●「検出されないこと」=アルキル水銀・全シアン・PCB。●基準値が定められた健康項目=鉛・ヒ素・カドミウム・総水銀・六価クロム・フッ素・硝酸/亜硝酸性窒素。●生活環境項目=pH・BOD/COD・SS・DO・大腸菌群数。●水俣病の原因=メチル水銀(アルキル水銀)。
選択肢ごとの解説
- ① 鉛は基準値(0.01mg/L以下)が定められており、「検出されないこと」ではない。
- ② ヒ素は基準値(0.01mg/L以下)が定められており、「検出されないこと」ではない。
- ③ フッ素は基準値(0.8mg/L以下)が定められており、「検出されないこと」ではない。
- ④ 大腸菌(大腸菌群数)は生活環境の保全に関する項目で評価され、健康保護項目の「検出されないこと」とは別である。
- ⑤ 正しい。アルキル水銀は毒性が強く「検出されないこと」と規定されている。
📋 まとめの表を見る:水質基準における「検出されないこと」の規定(水道法/公共用水域環境基準)
同じ「検出されないこと」でも、水道法と公共用水域の環境基準とでは対象項目が異なる。
第66回 午前91(公衆衛生学)
我が国の平成30年〈2018年〉の食中毒統計で患者数が最も多いのはどれか。
- ①病原大腸菌
- ②ウェルシュ菌
- ③ノロウイルス
- ④サルモネラ属菌
- ⑤カンピロバクター
正答: ③ノロウイルス
ポイント
我が国の食中毒統計では、患者数(発生規模)が最も多いのはノロウイルスで、冬季に飲食店や施設で集団発生しやすく一事件あたりの患者数が多い。事件数(発生件数)ではカンピロバクターやアニサキスが上位を占める年が多いが、患者数ではノロウイルスが上位となる。平成30年(2018年)も患者数最多はノロウイルスであった。●ウイルス性食中毒=ノロウイルス(冬季・患者数最多)・A型/E型肝炎ウイルス。●細菌性(感染型)=カンピロバクター(事件数多)・サルモネラ・腸炎ビブリオ・腸管出血性大腸菌。●細菌性(毒素型)=黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌・セレウス菌(嘔吐型)。●寄生虫=アニサキス(事件数多)・クドア。
選択肢ごとの解説
- ① 病原大腸菌による食中毒は発生するが、平成30年の患者数最多ではない。
- ② ウェルシュ菌は大量調理での集団発生があるが、当該年の患者数最多ではない。
- ③ 正しい。平成30年(2018年)の食中毒統計で患者数が最も多いのはノロウイルスである。
- ④ サルモネラ属菌は食中毒の主要原因だが、当該年の患者数最多ではない。
- ⑤ カンピロバクターは事件数が多い起因菌だが、患者数最多はノロウイルスである。
第66回 午前92(公衆衛生学)
新生児マス・スクリーニングの対象疾患のうち、タンデムマス法が導入されて追加されたのはどれか。2つ選べ。
- ①クレチン症
- ②ガラクトース血症
- ③プロピオン酸血症
- ④ホモシスチン尿症
- ⑤メチルマロン酸血症
正答: ③プロピオン酸血症・⑤メチルマロン酸血症
ポイント
新生児マス・スクリーニングは従来、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)・先天性副腎過形成症・フェニルケトン尿症・メープルシロップ尿症・ホモシスチン尿症・ガラクトース血症を対象としてきた。タンデムマス(タンデム質量分析)法の導入により、アミノ酸代謝異常・有機酸代謝異常・脂肪酸代謝異常が多数追加され、プロピオン酸血症やメチルマロン酸血症などの有機酸代謝異常症が新たに対象となった。●従来法の対象=クレチン症・先天性副腎過形成・フェニルケトン尿症・ホモシスチン尿症・メープルシロップ尿症・ガラクトース血症。●タンデムマスで追加(アミノ酸代謝異常)=シトルリン血症・アルギニノコハク酸尿症。●追加(有機酸代謝異常)=プロピオン酸血症・メチルマロン酸血症・イソ吉草酸血症。●追加(脂肪酸代謝異常)=MCAD欠損症・VLCAD欠損症。
選択肢ごとの解説
- ① クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)はタンデムマス導入以前からの対象疾患である。
- ② ガラクトース血症もタンデムマス導入以前からの対象疾患である。
- ③ 正しい。プロピオン酸血症はタンデムマス法導入により追加された有機酸代謝異常症である。
- ④ ホモシスチン尿症はアミノ酸代謝異常で、タンデムマス導入以前から対象とされてきた。
- ⑤ 正しい。メチルマロン酸血症はタンデムマス法導入により追加された有機酸代謝異常症である。
第66回 午前93(公衆衛生学)
世界保健機関〈WHO〉が行っているのはどれか。
- ①環境の保全
- ②識字率の向上
- ③食糧の安定供給
- ④医薬品の安全性管理
- ⑤労働者の作業環境改善
正答: ④医薬品の安全性管理
ポイント
世界保健機関(WHO)は国際連合の専門機関で、感染症対策・健康水準や国際基準の策定・医薬品の品質と安全性管理・国際保健規則(IHR)の運用などを担い、「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的とする。環境保全は国連環境計画(UNEP)、食糧供給は国連食糧農業機関(FAO)、識字率向上は国連教育科学文化機関(UNESCO)、労働環境は国際労働機関(ILO)が担当する。●WHO=健康・感染症対策・医薬品安全性・国際保健規則。●FAO=食糧・農業。●UNESCO=教育・科学・文化(識字率)。●ILO=労働者の権利・作業環境。●UNEP=環境保全。●UNICEF=児童の保健・福祉。
選択肢ごとの解説
- ① 環境の保全は国連環境計画(UNEP)の役割で、WHOの主たる業務ではない。
- ② 識字率の向上は国連教育科学文化機関(UNESCO)の役割である。
- ③ 食糧の安定供給は国連食糧農業機関(FAO)の役割である。
- ④ 正しい。医薬品の品質・安全性管理はWHOが行う業務である。
- ⑤ 労働者の作業環境改善は国際労働機関(ILO)の役割である。
第66回 午前94(公衆衛生学)
患者調査について正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①受療率が分かる。
- ②5年ごとに実施される。
- ③平均在院日数が分かる。
- ④世帯を対象として調査する。
- ⑤医療費に関する調査項目が含まれる。
正答: ①受療率が分かる。・③平均在院日数が分かる。
ポイント
患者調査は医療施設(病院・診療所)を利用する患者を対象として3年ごとに実施され、推計患者数・受療率・退院患者の平均在院日数・傷病分類別の状況などを把握する統計調査である。世帯を抽出して世帯員の健康状態などを調べるのは国民生活基礎調査であり、医療費に関する調査は患者調査の項目ではない。●患者調査(3年ごと・施設の患者対象)=受療率・推計患者数・平均在院日数・傷病分類。●国民生活基礎調査(世帯対象)=有訴者率・通院者率・所得・要介護状況。●人口動態統計=出生・死亡・婚姻・死産。●国民健康・栄養調査=身体状況・栄養摂取・生活習慣。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。患者調査では受療率が把握できる。
- ② 患者調査は5年ごとではなく3年ごとに実施される。
- ③ 正しい。患者調査では退院患者の平均在院日数が把握できる。
- ④ 世帯を対象に調査するのは国民生活基礎調査で、患者調査は医療施設の患者が対象である。
- ⑤ 医療費に関する調査は患者調査の項目ではない。
第66回 午前95(医用工学概論)
超音波〈1MHz〉の吸収係数が最も小さいのはどれか。
正答: ⑤水
ポイント
超音波は媒質中を伝播する際に減衰し、その吸収係数は組織により異なる。水の吸収係数はきわめて小さく、脂肪・血液・筋肉などの軟部組織よりも小さい。空気は生体組織と音響インピーダンスが大きく異なるため界面でほとんど反射・減衰し、超音波が伝わりにくい。このため超音波検査では空気を排除する目的でゼリー(水を主体とする媒質)を介在させる。●吸収・減衰が小さい=水(最小)。●軟部組織=血液・脂肪・筋肉(水より大)。●減衰が著しい=空気(高反射)・骨(高吸収・高反射)。●音響インピーダンス=媒質の密度×音速、差が大きい界面ほど反射が強い。
選択肢ごとの解説
- ① 筋肉は水より吸収係数が大きく、最小ではない。
- ② 空気は超音波の減衰・反射が著しく、吸収係数(実効的減衰)は最小ではない。
- ③ 血液は水よりやや吸収係数が大きく、最小ではない。
- ④ 脂肪は水より吸収係数が大きく、最小ではない。
- ⑤ 正しい。水の超音波吸収係数は軟部組織より小さく、最も小さい。
第66回 午前96(医用工学概論)
図の回路でA-B間の合成抵抗[kΩ]はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66aA096.080651f332.jpg

正答: ②20
ポイント
図はA-B間に上の経路(10kΩ+30kΩ)と下の経路(10kΩ+30kΩ)が並び、その中点どうしを20kΩが橋渡しするブリッジ回路である。対辺の積が10×30=10×30で等しく平衡条件を満たすため、中央の20kΩには電流が流れず無視できる。したがってA-B間は上下2本の40kΩの並列合成となり、40×40/(40+40)=20kΩとなる。●直列合成=R=R1+R2+…。●並列合成=1/R=1/R1+1/R2+…(2本ならR=R1R2/(R1+R2))。●ブリッジ回路=平衡条件(対辺の積が等しい)で中央枝に電流が流れない。●関連法則=オームの法則・キルヒホッフの法則・分圧/分流の法則。
選択肢ごとの解説
- ① 15kΩは図の直列・並列合成の結果と一致しない。
- ② 正しい。ブリッジの平衡(10×30=10×30)により中央の20kΩには電流が流れず、上下とも10+30=40kΩの2経路の並列合成で40×40/(40+40)=20kΩとなる。
- ③ 30kΩは合成計算の結果と一致しない。
- ④ 40kΩは合成計算の結果と一致しない。
- ⑤ 60kΩは合成計算の結果と一致しない。
第66回 午前97(医用工学概論)
理想的な演算増幅器の特徴として誤っているのはどれか。
- ①電圧増幅度が大きい。
- ②差動増幅器として働く。
- ③出力インピーダンスが大きい。
- ④入力インピーダンスが大きい。
- ⑤供給電源電圧の範囲内で動作する。
正答: ③出力インピーダンスが大きい。
ポイント
理想的な演算増幅器(オペアンプ)は、電圧増幅度(開ループ利得)が無限大、入力インピーダンスが無限大、出力インピーダンスがゼロ、入力バイアス電流がゼロ、周波数帯域が無限大で、2入力の差を増幅する差動増幅器として動作する。したがって出力インピーダンスは小さい(ゼロ)のが理想であり、「大きい」とする記述は誤りである。●理想オペアンプ=開ループ利得∞・入力インピーダンス∞・出力インピーダンス0・入力電流0・帯域∞。●仮想短絡(イマジナリショート)=負帰還時に両入力端子が同電位。●基本回路=反転/非反転増幅・ボルテージフォロワ・加算/差動増幅・積分/微分回路。
選択肢ごとの解説
- ① 理想オペアンプは電圧増幅度(開ループ利得)が無限大に大きく、この記述は正しい。
- ② 差動増幅器として2入力の差を増幅するのは理想オペアンプの特徴で、正しい。
- ③ 誤り。理想的な演算増幅器の出力インピーダンスはゼロ(小さい)であり、「大きい」とする本記述は誤りである。
- ④ 入力インピーダンスが無限大に大きいのは理想オペアンプの特徴で、正しい。
- ⑤ 供給電源電圧の範囲内で動作するのは実際の動作として正しい記述である。
第66回 午前98(医用工学概論)
カプノメータに用いられるのはどれか。
正答: ①赤外線
ポイント
カプノメータは呼気中の二酸化炭素濃度(呼気終末二酸化炭素分圧、EtCO₂)を測定する機器で、二酸化炭素が特定波長の赤外線を吸収する性質を利用した赤外線吸収法を用いる。これにより気管挿管の確認や換気状態の監視に役立つ。赤色光・赤外光を用いて酸素飽和度を測るパルスオキシメータとは測定原理・対象が異なる。●赤外線吸収法=カプノメータ(CO₂)・赤外線ガス分析計。●吸光度法(可視/赤外2波長)=パルスオキシメータ(酸素飽和度)。●電気化学(電極)法=血液ガス分析のpO2/pCO2(Clark電極・Severinghaus電極)。●紫外/可視吸光=分光光度計(生化学一般)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。カプノメータは二酸化炭素の赤外線吸収を利用するため赤外線を用いる。
- ② 赤色光はパルスオキシメータなどで用いられ、カプノメータの主原理ではない。
- ③ 青色光はカプノメータには用いられない。
- ④ 紫外線はカプノメータには用いられない。
- ⑤ エックス線はカプノメータには用いられない。
第66回 午前99(医用工学概論)
AとBの論理演算を模式化した図を示す。網掛け部分を示すのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66aA099.8671f3a234.jpg

正答: ③NOR
ポイント
ベン図で2つの集合AとBのいずれにも含まれない外側の領域は、論理和OR(少なくとも一方が真)の否定、すなわちNOR演算に相当する。網掛けが両円の外側であればNOR、重なり部分のみならAND、いずれかに属する部分全体ならORと対応する。●OR(論理和)=A∪B(少なくとも一方)。●AND(論理積)=A∩B(重なり)。●NOR=ORの否定(両方の外側)。●NAND=ANDの否定(重なり以外)。●XOR(排他的論理和)=どちらか一方のみ。●NOT=単一入力の否定(補集合)。
選択肢ごとの解説
- ① ORは少なくとも一方に含まれる領域を示し、両円の外側ではない。
- ② ANDは両円の重なり部分を示し、外側領域ではない。
- ③ 正しい。両円のいずれにも含まれない外側領域はNOR(ORの否定)に相当する。
- ④ NOTは単一入力の否定(補集合)で、2入力のこのベン図領域とは対応しない。
- ⑤ NANDはANDの否定(重なり以外の全体)で、両円の外側のみとは異なる。
第66回 午前100(医用工学概論)
分子の大きさを分離分画の原理とするのはどれか。2つ選べ。
- ①逆相クロマトグラフィ
- ②ゲル濾過クロマトグラフィ
- ③アフィニティクロマトグラフィ
- ④SDS-ポリアクリルアミド電気泳動
- ⑤セルロース・アセテート膜電気泳動
正答: ②ゲル濾過クロマトグラフィ・④SDS-ポリアクリルアミド電気泳動
ポイント
分子の大きさ(分子量・分子径)の違いを原理として分離する手法には、ゲル濾過クロマトグラフィ(サイズ排除クロマトグラフィ)とSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)がある。ゲル濾過では大きい分子ほどゲル粒子の細孔に入れず早く溶出し、SDS-PAGEではSDSで荷電を均一化したうえでゲルの分子ふるい効果により分子量に応じて移動度が決まる。●大きさで分離=ゲル濾過(サイズ排除)・SDS-PAGE。●電荷で分離=イオン交換クロマトグラフィ・セルロースアセテート膜電気泳動・等電点電気泳動(pI)。●疎水性で分離=逆相・疎水性相互作用クロマトグラフィ。●特異的親和性で分離=アフィニティクロマトグラフィ。
選択肢ごとの解説
- ① 逆相クロマトグラフィは疎水性相互作用で分離し、分子の大きさを原理としない。
- ② 正しい。ゲル濾過クロマトグラフィは分子の大きさ(サイズ排除)を原理として分離する。
- ③ アフィニティクロマトグラフィは特異的結合(親和性)で分離し、大きさを原理としない。
- ④ 正しい。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動はSDSで荷電を均一化し、分子量(大きさ)に応じて分離する。
- ⑤ セルロース・アセテート膜電気泳動は電荷に基づく分離が主で、分子の大きさを主原理としない。
📋 まとめの表を見る:分離分画の原理によるクロマトグラフィ・電気泳動法の分類
ゲル濾過クロマトグラフィは固定相に三次元網目構造のゲルを使い、分子量の大きいものほど早く溶出する。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動はSDSにより蛋白質を負に荷電させたうえで、ゲルの分子ふるい効果により分子量の小さい順に陽極側へ移動・分離する。