第66回(2020) 臨床検査技師国家試験 午後51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第66回 午後51(病理組織細胞学)
悪性腫瘍はどれか。
正答: ③精上皮腫
ポイント
悪性腫瘍は浸潤性発育と遠隔転移を示し、細胞異型・構造異型が強く増殖が速い。発生母組織で命名され、上皮性の悪性は癌(癌腫)、非上皮性(間葉系)の悪性は肉腫、胚細胞性は精上皮腫(セミノーマ)などと呼ぶ。精上皮腫は精巣の胚細胞由来の悪性腫瘍で放射線・化学療法への感受性が高い。●良性間葉系腫瘍=血管腫・線維腫・脂肪腫・平滑筋腫・骨腫。●悪性間葉系腫瘍(肉腫)=線維肉腫・脂肪肉腫・骨肉腫・横紋筋肉腫。●胚細胞腫瘍=精上皮腫(セミノーマ)・胎児性癌・卵黄嚢腫瘍・絨毛癌・奇形腫。●唾液腺腫瘍=多形腺腫・Warthin腫瘍(良性)/粘表皮癌・腺様嚢胞癌(悪性)。
選択肢ごとの解説
- ① 血管腫は血管内皮由来の良性腫瘍で、浸潤・転移を示さない。
- ② 線維腫は線維芽細胞由来の良性間葉系腫瘍である。
- ③ 正しい。精上皮腫(セミノーマ)は精巣の胚細胞由来の悪性腫瘍で、浸潤・転移を示す。
- ④ 多形腺腫は唾液腺に好発する良性腫瘍で、上皮成分と間葉様成分が混在する。
- ⑤ 成熟奇形腫は三胚葉成分からなるが分化が成熟しており、通常は良性である。
第66回 午後52(病理組織細胞学)
脂質の染色に適するのはどれか。
- ①Alcian blue染色
- ②Berlin blue染色
- ③Kossa反応
- ④PAS反応
- ⑤Sudan Ⅲ染色
正答: ⑤Sudan Ⅲ染色
ポイント
脂質(中性脂肪)は通常のパラフィン包埋過程でアルコール脱水・透徹により溶出するため、未固定の凍結切片を用いて脂溶性色素で染色する。Sudan Ⅲ・Sudan Ⅳ・Oil red O・ズダンブラックBなどが用いられ、脂肪が橙赤色〜黒色に染まる。各組織化学染色は対象成分が異なるため目的に応じて使い分ける。●脂質=Sudan Ⅲ・Sudan Ⅳ・Oil red O・ズダンブラックB。●多糖・糖蛋白=PAS反応・アルシアン青(酸性ムコ多糖)。●鉄=ベルリン青反応(三価鉄)。●カルシウム=コッサ反応(黒色)・アリザリン赤S。●アミロイド=Congo red(コンゴーレッド)。
選択肢ごとの解説
- ① Alcian blue染色は酸性ムコ多糖(粘液多糖類)を青色に染める。
- ② Berlin blue染色(ベルリン青反応)は三価鉄を青色に染め、ヘモジデリンなどの検出に用いる。
- ③ Kossa反応(コッサ反応)はカルシウム塩(リン酸・炭酸カルシウム)を黒色に染める。
- ④ PAS反応は多糖類・糖蛋白・グリコーゲンなどを赤紫色に染める。
- ⑤ 正しい。Sudan Ⅲ染色は脂溶性色素で中性脂肪を橙赤色に染め、脂質の証明に適する。
第66回 午後53(病理組織細胞学)
包埋過程について正しいのはどれか。
- ①パラフィンは親水性である。
- ②包埋には軟パラフィンを用いる。
- ③組織収縮率は脱水時が最も大きい。
- ④硬パラフィンの融点は50 ℃以下である。
- ⑤脱脂効果はメタノールよりエタノールの方が高い。
正答: ⑤脱脂効果はメタノールよりエタノールの方が高い。
ポイント
パラフィン包埋は固定後、脱水・透徹(脱アルコール)を経てパラフィンに置換する一連の操作である。パラフィンは疎水性(親油性)のため、組織から水分を十分に除いてから浸透させる。包埋には融点の高い硬パラフィン(約56〜58 ℃)を用い、薄切に適した硬さを得る。●固定=架橋・凝固で形態保持(ホルマリン等)。●脱水=低濃度から高濃度のエタノールで段階的に水分除去。●透徹=キシレン等でアルコールを置換しパラフィンと親和。●包埋=硬パラフィン浸透・ブロック作製。●薄切=ミクロトームで数μm切片化。
選択肢ごとの解説
- ① パラフィンは疎水性(親油性)であり、親水性ではない。
- ② 包埋には融点の高い硬パラフィンを用いる。軟パラフィンは硬さが不足する。
- ③ 組織収縮は固定・脱水・透徹・パラフィン浸透の各段階で生じ、脱水時が最大とは限らない。
- ④ 硬パラフィンの融点は約56〜58 ℃であり、50 ℃以下ではない。
- ⑤ 正しい。脱脂効果はメタノールよりエタノールの方が高く、脱水とともに脱脂作用をもつ。
第66回 午後54(病理組織細胞学)
組織の固定について正しいのはどれか。
- ①ホルマリンは特定第3類物質である。
- ②固定する組織体積の10倍以上の固定液が必要である。
- ③遺伝子検査目的の検体の固定時間は72時間以上が望ましい。
- ④ホルマリンの浸透速度は室温で1時間に5〜10 cm程度である。
- ⑤グルタールアルデヒドの浸透速度は1時間に1〜5cm程度である。
正答: ②固定する組織体積の10倍以上の固定液が必要である。
ポイント
組織固定は蛋白の架橋・凝固により自己融解と腐敗を防ぎ、形態と抗原性を保持する操作である。十分な固定には検体体積の10倍以上の固定液量が目安とされる。ホルマリンの浸透は緩徐で、過固定や固定不良を避けるため適切な液量・時間管理が重要である。●固定の目的=自己融解防止・腐敗防止・形態保持・硬化。●架橋固定=ホルマリン・グルタルアルデヒド(緩徐に浸透)。●凝固固定=エタノール・アセトン(脱水的)。●固定不良の影響=核酸断片化・染色性低下・収縮。●ホルマリンの管理=特定化学物質(特化則)として取り扱う。
選択肢ごとの解説
- ① ホルマリン(ホルムアルデヒド)は労働安全衛生法上の特定化学物質であり、特定第3類物質ではない。
- ② 正しい。固定する組織体積の10倍以上の固定液量が必要とされる。
- ③ 遺伝子検査用検体では過固定による核酸断片化を避けるため、長時間固定はむしろ望ましくない。
- ④ ホルマリンの浸透速度は室温で1時間に数mm程度であり、5〜10 cmは過大である。
- ⑤ グルタルアルデヒドの浸透は緩徐で、1時間に1〜5 cmという速度ではない。
第66回 午後55(病理組織細胞学)
脱灰について正しいのはどれか。
- ①過脱灰は抗原性を増強させる。
- ②酸性脱灰法では容器を密閉する。
- ③脱灰液は1日に1〜数回交換する。
- ④脱灰液は交換のたびに濃度を高くする。
- ⑤組織体積の5〜10倍量の脱灰液が必要である。
正答: ③脱灰液は1日に1〜数回交換する。
ポイント
脱灰は骨や石灰化組織のカルシウム塩を除去し薄切を可能にする操作で、酸脱灰法(塩酸・硝酸・ギ酸)とキレート法(EDTA)がある。酸脱灰は速いが過脱灰により核染色性低下や抗原性の喪失を招く。脱灰効率を保つため脱灰液は飽和を避けて定期的に交換する。●酸脱灰法=塩酸・硝酸・ギ酸(速いが組織傷害が強い)。●キレート脱灰法=EDTA(緩徐だが抗原・核酸保持に優れる)。●脱灰の確認=物理的(針刺し)・化学的(シュウ酸アンモニウム)・X線法。●過脱灰の弊害=核染色性低下・抗原性喪失・組織膨化。
選択肢ごとの解説
- ① 過脱灰は組織を傷害し、抗原性を増強するのではなく低下・喪失させる。
- ② 酸性脱灰では発生するガスを逃がす必要があり、容器を密閉してはならない。
- ③ 正しい。脱灰液は脱灰効率を保つため1日に1〜数回交換する。
- ④ 脱灰液は交換時に新鮮な同濃度の液に替えるもので、濃度を高くするわけではない。
- ⑤ 脱灰液は組織体積の数十倍量を要し、5〜10倍では不足する。
第66回 午後56(病理組織細胞学)
類上皮肉芽腫の形成を特徴としない病態はどれか。
- ①梅毒
- ②結核症
- ③慢性膵炎
- ④Hansen病
- ⑤サルコイドーシス
正答: ③慢性膵炎
ポイント
類上皮細胞肉芽腫はマクロファージ由来の類上皮細胞が集簇し、ラングハンス巨細胞やリンパ球を伴う特異的肉芽腫である。結核・サルコイドーシス・ハンセン病・梅毒(第3期)・真菌症などで形成される。慢性膵炎は腺房破壊と線維化を主体とし、この型の肉芽腫を特徴としない。●乾酪性類上皮細胞肉芽腫=結核・第3期梅毒(ゴム腫)・一部の真菌症。●非乾酪性類上皮細胞肉芽腫=サルコイドーシス・Crohn病・原発性胆汁性胆管炎。●抗酸菌性肉芽腫=結核・ハンセン病・非結核性抗酸菌症。●異物肉芽腫=縫合糸・痛風結節など。
選択肢ごとの解説
- ① 梅毒(第3期のゴム腫)では類上皮細胞肉芽腫を形成する。
- ② 結核症はラングハンス巨細胞を伴う乾酪壊死性類上皮細胞肉芽腫の代表である。
- ③ 誤り。慢性膵炎は腺房破壊と線維化が主体で、類上皮細胞肉芽腫を特徴としない。
- ④ Hansen病(らい)は抗酸菌感染で類上皮細胞肉芽腫を形成する。
- ⑤ サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を多臓器に形成する。
第66回 午後57(病理組織細胞学)
病理解剖中の術者の結核感染防止に有効なのはどれか。
- ①手指消毒
- ②陽圧式空調
- ③空気清浄機の使用
- ④微粒子用マスクの着用
- ⑤肺のホルマリン注入固定
正答: ④微粒子用マスクの着用
ポイント
結核菌は5 μm未満の飛沫核による空気感染で伝播するため、解剖時には飛沫核の吸入を防ぐ微粒子用マスク(N95など)の着用が有効である。空調は陰圧管理として汚染空気を室外へ拡散させないことが必要で、陽圧は不適である。手指消毒は接触感染対策であり空気感染防止には不十分である。●空気感染(飛沫核)=結核・麻疹・水痘→N95マスク・陰圧室。●飛沫感染=インフルエンザ・百日咳→サージカルマスク。●接触感染=MRSA・ノロウイルス→手指衛生・手袋。●標準予防策=全患者に血液・体液を感染源として扱う。
選択肢ごとの解説
- ① 手指消毒は接触感染対策であり、空気感染する結核には不十分である。
- ② 陽圧式空調は汚染空気を室外へ押し出すため不適で、陰圧管理が必要である。
- ③ 空気清浄機のみでは飛沫核を確実に除去できず、術者の吸入防止には不十分である。
- ④ 正しい。微粒子用マスク(N95等)の着用は飛沫核の吸入を防ぎ、空気感染防止に有効である。
- ⑤ 肺のホルマリン注入固定は標本処理時の対策であり、解剖中の術者感染防止にはならない。
第66回 午後58(病理組織細胞学)
腫瘍と免疫組織化学的マーカーの組合せで正しいのはどれか。
- ①肺癌 — エストロゲン受容体〈ER〉
- ②乳癌 — AFP
- ③消化管間質腫瘍 — c-kit
- ④大腸癌 — PSA
- ⑤B細胞リンパ腫 — CEA
正答: ③消化管間質腫瘍 — c-kit
ポイント
免疫組織化学による腫瘍マーカーは細胞の由来や分化の同定に用いる。消化管間質腫瘍(GIST)はカハール介在細胞由来でc-kit(CD117)陽性が診断的である。エストロゲン受容体(ER)は乳癌、PSAは前立腺癌、AFPは肝細胞癌・卵黄嚢腫瘍、CEAは腺癌で発現する。●上皮性マーカー=サイトケラチン・EMA。●間葉系=ビメンチン、平滑筋=デスミン・α-SMA。●GIST=c-kit(CD117)・DOG1・CD34。●神経内分泌=クロモグラニンA・シナプトフィジン・CD56。●リンパ系=CD20(B細胞)・CD3(T細胞)・CD45。●メラノーマ=S-100・HMB-45・Melan-A。
選択肢ごとの解説
- ① エストロゲン受容体〈ER〉は乳癌で陽性となるマーカーで、肺癌とは結びつかない。
- ② AFPは肝細胞癌や卵黄嚢腫瘍のマーカーで、乳癌とは結びつかない。
- ③ 正しい。消化管間質腫瘍〈GIST〉はc-kit(CD117)陽性が特徴である。
- ④ PSAは前立腺癌のマーカーで、大腸癌とは結びつかない。
- ⑤ CEAは腺癌系のマーカーで、B細胞リンパ腫の同定には用いない。
📋 まとめの表を見る:腫瘍と免疫組織化学的マーカーの対応
サイトケラチン・EMAは上皮性腫瘍全般に、CD45は造血器腫瘍全般に陽性となる。免疫組織化学は形態のみでは由来判別が難しい低分化腫瘍・転移巣の原発巣推定や、分子標的治療の適応判定に用いる。
第66回 午後59(臨床血液学)
生体中の総鉄量に対するヘモグロビン鉄の割合に最も近いのはどれか。
正答: ②66%
ポイント
成人の生体内総鉄量は約3〜4 gで、その約60〜70%がヘモグロビン鉄として赤血球に存在する。残りは貯蔵鉄(フェリチン・ヘモジデリン)が約20〜30%、ミオグロビンや酵素鉄が数%、血清鉄(トランスフェリン結合)はごくわずかである。選択肢の中では66%が最も近い。●機能鉄=ヘモグロビン鉄(約65%)・ミオグロビン鉄・酵素鉄。●貯蔵鉄=フェリチン・ヘモジデリン(約20〜30%)。●輸送鉄=トランスフェリン結合鉄(血清鉄)。●鉄代謝指標=血清鉄・TIBC・UIBC・フェリチン・トランスフェリン飽和度。
選択肢ごとの解説
- ① 75%はやや過大で、ヘモグロビン鉄の割合に最も近い値ではない。
- ② 正しい。ヘモグロビン鉄は総鉄量の約60〜70%を占め、66%が最も近い。
- ③ 50%ではやや低く、最も近い値ではない。
- ④ 33%はヘモグロビン鉄の割合としては低すぎる。
- ⑤ 25%は貯蔵鉄の割合に近い値で、ヘモグロビン鉄ではない。
第66回 午後60(臨床血液学)
自動血球計数装置において、実測している項目はどれか。2つ選べ。
- ①ヘマトクリット値〈Ht〉
- ②ヘモグロビン濃度〈Hb〉
- ③平均赤血球容積〈MCV〉
- ④平均赤血球ヘモグロビン量〈MCH〉
- ⑤平均赤血球ヘモグロビン濃度〈MCHC〉
正答: ①ヘマトクリット値〈Ht〉・②ヘモグロビン濃度〈Hb〉 または ①ヘマトクリット値〈Ht〉・③平均赤血球容積〈MCV〉 または ②ヘモグロビン濃度〈Hb〉・③平均赤血球容積〈MCV〉(いずれの組合せも正解)
ポイント
自動血球計数装置が直接測定するのは血球数(電気抵抗法やレーザー散乱法)・ヘモグロビン濃度(シアンメトヘモグロビン法など)、および赤血球粒度分布から求める平均赤血球容積(MCV)である。ヘマトクリットはMCVと赤血球数から算出されるが、本問では実測項目として扱われている。MCH・MCHCはこれらの値から計算で求める算出項目である。●実測項目=赤血球数・白血球数・血小板数・ヘモグロビン濃度・MCV。●算出項目=MCH(Hb÷RBC)・MCHC(Hb÷Ht)。●赤血球指数の臨床=MCVによる小球性・正球性・大球性の分類。●複数正答の認定=本問は公式正答表で「1・2」「1・3」「2・3」のいずれの組合せも正解と認められている。本ドリルでは公式に認められたいずれの組合せ(2つ)を選んでも正解になる。
解説
採点上、選択肢1・2・3のうち2つを選べば正答(複数の組合せを正答とする)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。ヘマトクリット値はMCVと赤血球数の積から求める算出項目だが、本問では実測項目として扱う。
- ② 正しい。ヘモグロビン濃度は比色法などで直接測定する実測項目である。
- ③ 正しい。平均赤血球容積〈MCV〉は赤血球粒度分布から直接得られる実測項目である。
- ④ 平均赤血球ヘモグロビン量〈MCH〉はHbと赤血球数から算出する計算項目である。
- ⑤ 平均赤血球ヘモグロビン濃度〈MCHC〉はHbとHtから算出する計算項目である。
第66回 午後61(臨床血液学)
赤芽球の鉄染色標本の模式図を別に示す。環状鉄芽球はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66pB061.f10ba968b2.jpg

正答: ③c
ポイント
環状鉄芽球は赤芽球のミトコンドリアに鉄が異常沈着し、鉄染色(ベルリン青反応)で核の周囲を環状に取り囲む青い顆粒として観察される。鉄顆粒が核周の1/3周以上を5個以上で取り囲むものを指し、骨髄異形成症候群や鉄芽球性貧血で増加する。図のcが核周性の環状配列を示す。●鉄染色=ベルリン青反応で鉄を青色に証明。●鉄芽球=細胞質に鉄顆粒をもつ赤芽球。●環状鉄芽球の出現=環状鉄芽球を伴う骨髄異形成症候群・先天性/後天性鉄芽球性貧血・鉛中毒。●パッペンハイマー小体=末梢血赤血球内の鉄顆粒(鉄染色陽性)。
選択肢ごとの解説
- ① aは核周性の環状配列を示さず、環状鉄芽球には該当しない。
- ② bは核周囲を取り囲む環状の鉄顆粒配列を示していない。
- ③ 正しい。cは核周囲を環状に取り囲む鉄顆粒を示し、環状鉄芽球に該当する。
- ④ dは環状の鉄沈着パターンを示していない。
- ⑤ eは環状鉄芽球に特徴的な核周性の鉄顆粒配列を示していない。
📋 まとめの表を見る:血液細胞化学染色(特殊染色)の目的・判定・臨床意義
第66回 午後62(臨床血液学)
過分葉好中球が認められる欠乏症はどれか。
- ①ビタミンB₁
- ②ビタミンB₆
- ③ビタミンB₁₂
- ④ビタミンC
- ⑤ビタミンK
正答: ③ビタミンB₁₂
ポイント
過分葉好中球(核分葉が5葉以上)は巨赤芽球性貧血の末梢血所見で、ビタミンB₁₂または葉酸欠乏によるDNA合成障害を反映する。ビタミンB₁₂欠乏は悪性貧血・胃切除後・回腸末端病変・吸収不良などで生じ、神経症状を伴うことがある。●巨赤芽球性貧血=ビタミンB₁₂欠乏・葉酸欠乏(過分葉好中球・大球性貧血)。●ビタミンB₁欠乏=脚気・Wernicke脳症。●ビタミンB₆欠乏=鉄芽球性貧血・末梢神経障害。●ビタミンC欠乏=壊血病。●ビタミンK欠乏=凝固因子産生障害による出血傾向。
選択肢ごとの解説
- ① ビタミンB₁欠乏は脚気やウェルニッケ脳症を起こすが、過分葉好中球は伴わない。
- ② ビタミンB₆欠乏は鉄芽球性貧血や末梢神経障害と関連するが、過分葉好中球は典型ではない。
- ③ 正しい。ビタミンB₁₂欠乏はDNA合成障害により巨赤芽球性貧血を生じ、過分葉好中球がみられる。
- ④ ビタミンC欠乏は壊血病を起こすが、過分葉好中球は伴わない。
- ⑤ ビタミンK欠乏は凝固因子産生障害による出血傾向を起こすが、過分葉好中球は伴わない。
第66回 午後63(臨床血液学)
骨髄穿刺液塗抹のMay-Giemsa染色標本を別に示す。この疾患で認められないのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66pB063.f0ffe2c3b4.jpg

- ①PT延長
- ②FDP上昇
- ③血小板数減少
- ④赤血球沈降速度遅延
- ⑤アンチトロンビン上昇
正答: ⑤アンチトロンビン上昇
ポイント
図は急性前骨髄球性白血病(APL)と考えられ、アウエル小体を束状にもつファゴット細胞や異常前骨髄球がみられる。APLは播種性血管内凝固(DIC)を高率に合併し、PT延長・FDP上昇・血小板減少・フィブリノゲン低下を呈する。アンチトロンビンは消費されて低下するのが特徴で、上昇は認められない。●DICの凝固検査=PT延長・APTT延長・フィブリノゲン低下・FDP/Dダイマー上昇・血小板減少・アンチトロンビン低下。●APLの特徴=t(15;17)・PML-RARA・ATRA(全トランス型レチノイン酸)療法。●赤沈遅延=フィブリノゲン低下・多血症で生じる。
選択肢ごとの解説
- ① DIC合併では凝固因子消費によりPTが延長し、この疾患で認められる。
- ② DICでは線溶亢進によりFDPが上昇し、この疾患で認められる。
- ③ DICでは血小板が消費され減少し、この疾患で認められる。
- ④ 赤血球沈降速度遅延はフィブリノゲン低下時にみられ、この疾患で認められうる。
- ⑤ 誤り。DICではアンチトロンビンは消費され低下するため、上昇は認められない。
📋 まとめの表を見る:播種性血管内凝固〈DIC〉の検査所見
凝固因子・血小板が消費性に低下し、線溶亢進によりD-ダイマーが上昇する。
第66回 午後64(臨床血液学)
血小板顆粒に含まれ、血管の収縮作用をもつのはどれか。
- ①セロトニン
- ②P-セレクチン
- ③フィブリノゲン
- ④トロンボスポンジン
- ⑤β-トロンボグロブリン
正答: ①セロトニン
ポイント
血小板の濃染顆粒(δ顆粒)にはセロトニン・ADP・ATP・カルシウムが含まれ、放出されたセロトニンは血管平滑筋を収縮させ止血に寄与する。一方、α顆粒にはP-セレクチン・フィブリノゲン・トロンボスポンジン・β-トロンボグロブリン・血小板第4因子などが含まれる。●濃染顆粒(δ顆粒)=セロトニン・ADP・ATP・カルシウム・ヒスタミン。●α顆粒=フィブリノゲン・von Willebrand因子・P-セレクチン・トロンボスポンジン・β-トロンボグロブリン・血小板第4因子・血小板由来増殖因子。●血小板の止血機能=粘着・放出・凝集。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。セロトニンは血小板濃染顆粒に含まれ、血管収縮作用をもつ。
- ② P-セレクチンはα顆粒に含まれる接着分子で、血管収縮作用はない。
- ③ フィブリノゲンはα顆粒に含まれ、血小板凝集に関与するが血管収縮作用はない。
- ④ トロンボスポンジンはα顆粒由来の接着蛋白で、血管収縮作用はない。
- ⑤ β-トロンボグロブリンはα顆粒に含まれるが、血管収縮作用はもたない。
第66回 午後65(臨床血液学)
骨髄穿刺液のフローサイトメトリ法のCD45ゲーティングを別に示す。囲まれている部分の細胞はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66pB065.ef9b434880.jpg

正答: ⑤リンパ球
ポイント
CD45ゲーティングは横軸にCD45発現、縦軸に側方散乱光(SSC)をとって白血球を分画する手法である。リンパ球はCD45を強く発現しSSCが低い領域に位置し、単球はCD45強陽性でSSC中等度、顆粒球はCD45中等度でSSC高値、骨髄芽球はCD45弱陽性・SSC低めのブラストゲートに分布する。●フローサイトメトリの散乱光=前方散乱光(FSC=細胞サイズ)・側方散乱光(SSC=内部構造・顆粒)。●CD45=白血球共通抗原(汎白血球マーカー)。●ブラストゲート=CD45弱陽性・SSC低値領域(急性白血病解析で利用)。●系統マーカー=CD3(T)・CD19/CD20(B)・CD13/CD33(骨髄系)・CD14(単球)。
選択肢ごとの解説
- ① 単球はCD45強陽性でSSCが中等度の領域に分布する。
- ② 顆粒球はCD45中等度・SSC高値の領域に分布する。
- ③ 赤血球はCD45陰性で、白血球ゲーティングでは通常溶血除去される。
- ④ 骨髄芽球はCD45弱陽性・SSC低めのブラスト領域に分布する。
- ⑤ 正しい。CD45強陽性・SSC低値の領域に位置するのはリンパ球である。
📋 まとめの表を見る:CD45/側方散乱光〈SSC〉ゲーティングにおける血球分画の位置
幼若な芽球はCD45発現が少ないことを利用し、急性白血病の微小残存病変(MRD)検出などに用いる。
第66回 午後66(臨床血液学)
赤血球に出現する封入体はどれか。2つ選べ。
- ①中毒性顆粒
- ②Döhle小体
- ③Russell小体
- ④好塩基性斑点
- ⑤Schüffner斑点
正答: ④好塩基性斑点・⑤Schüffner斑点
ポイント
赤血球内の封入体には好塩基性斑点(リボソーム残存、鉛中毒やサラセミアで増加)、シュフナー斑点(三日熱・卵形マラリア感染赤血球)、ハウエル・ジョリー小体(核残遺物)、パッペンハイマー小体(鉄顆粒)、ハインツ小体(変性ヘモグロビン)などがある。中毒性顆粒・デーレ小体は好中球、ラッセル小体は形質細胞の封入体で、赤血球のものではない。●赤血球封入体=好塩基性斑点・ハウエル-ジョリー小体・パッペンハイマー小体・ハインツ小体・カボット環・マラリア原虫(シュフナー斑点)。●好中球封入体=中毒性顆粒・デーレ小体。●形質細胞封入体=ラッセル小体(免疫グロブリン蓄積)。
選択肢ごとの解説
- ① 中毒性顆粒は好中球内に出現する顆粒で、赤血球の封入体ではない。
- ② Döhle小体(デーレ小体)は好中球の細胞質にみられる封入体である。
- ③ Russell小体(ラッセル小体)は形質細胞内の免疫グロブリン蓄積であり、赤血球の封入体ではない。
- ④ 正しい。好塩基性斑点はリボソーム残存による赤血球内封入体で、鉛中毒などでみられる。
- ⑤ 正しい。Schüffner斑点は三日熱・卵形マラリア感染赤血球にみられる封入体様所見である。
第66回 午後67(臨床血液学)
特殊染色と試薬の組合せで正しいのはどれか。
- ①鉄染色 — 過ヨウ素酸溶液
- ②PAS染色 — 過酸化水素水
- ③ペルオキシダーゼ染色 — 塩酸溶液
- ④非特異的エステラーゼ染色 — αナフチルブチレート
- ⑤アルカリホスファターゼ染色 — ナフトールAS-Dクロロアセテート
正答: ④非特異的エステラーゼ染色 — αナフチルブチレート
ポイント
血液の特殊染色は細胞系統の同定に用いる。非特異的エステラーゼ染色はα-ナフチルブチレートを基質として単球系を染め、フッ化ナトリウムで阻害される。ペルオキシダーゼ染色は骨髄系芽球の鑑別、PAS染色はリンパ系や赤白血病の評価、鉄染色は鉄芽球の評価に用いる。●ミエロペルオキシダーゼ染色=骨髄系(陽性)/リンパ系(陰性)の鑑別。●非特異的エステラーゼ(α-ナフチルブチレート)=単球系(NaFで阻害)。●特異的エステラーゼ(ナフトールAS-Dクロロアセテート)=顆粒球系。●PAS染色=急性リンパ性白血病・赤白血病。●鉄染色=鉄芽球・環状鉄芽球の評価。
選択肢ごとの解説
- ① 鉄染色はベルリン青反応(フェロシアン化カリウムと塩酸)を用い、過ヨウ素酸溶液ではない。
- ② PAS染色は過ヨウ素酸でアルデヒド基を生じシッフ試薬で発色させるもので、過酸化水素水は用いない。
- ③ ペルオキシダーゼ染色は基質と過酸化水素を用いるもので、塩酸溶液との組合せは誤りである。
- ④ 正しい。非特異的エステラーゼ染色はα-ナフチルブチレートを基質とし、単球系を染める。
- ⑤ アルカリホスファターゼ染色はナフトールAS基質とジアゾ塩を用い、ナフトールAS-Dクロロアセテートは特異的エステラーゼの基質である。
📋 まとめの表を見る:血液細胞化学染色(特殊染色)と試薬・陽性細胞
特異的エステラーゼ染色はナフトールAS-Dクロロアセテート、非特異的エステラーゼ染色はα-ナフチルブチレートを基質とする点、ペルオキシダーゼ染色に過酸化水素水を用いる点が誤答パターンとして頻出。
第66回 午後68(臨床微生物学)
Gram陰性菌の菌体でリポ多糖体からなるのはどれか。
- ①外膜
- ②細胞壁
- ③細胞膜
- ④ペリプラズム
- ⑤ポーリン蛋白
正答: ①外膜
ポイント
グラム陰性菌は薄いペプチドグリカン層の外側に外膜をもつ二重膜構造である。外膜の外葉にはリポ多糖(LPS)が存在し、その脂質A部分が内毒素(エンドトキシン)として発熱やショックを引き起こす。外膜にはポーリン蛋白による物質透過孔がある。●グラム陰性菌の構造=細胞膜・薄いペプチドグリカン・ペリプラズム・外膜(LPS・ポーリン)。●グラム陽性菌=厚いペプチドグリカン・タイコ酸(外膜なし)。●内毒素=LPSの脂質A(耐熱性・発熱・敗血症性ショック)。●外毒素=菌体外に分泌される蛋白毒素(易熱性・特異的作用)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。グラム陰性菌の外膜外葉はリポ多糖〈LPS〉から構成され、内毒素活性をもつ。
- ② 細胞壁の主成分はペプチドグリカンで、リポ多糖そのものではない。
- ③ 細胞膜はリン脂質二重層であり、リポ多糖からなるのではない。
- ④ ペリプラズムは外膜と細胞膜の間隙でペプチドグリカンや酵素を含み、リポ多糖の本体ではない。
- ⑤ ポーリン蛋白は外膜に存在する透過孔の蛋白であり、リポ多糖ではない。
第66回 午後69(臨床微生物学)
加温染色を行うのはどれか。
- ①Gram染色
- ②Neisser染色
- ③Giménez染色
- ④オーラミンO染色
- ⑤Ziehl-Neelsen染色
正答: ⑤Ziehl-Neelsen染色
ポイント
抗酸菌は細胞壁の脂質(ミコール酸)が多く色素が浸透しにくいため、Ziehl-Neelsen染色では石炭酸フクシンを加温して浸透させる加温染色を行う。染色後は酸アルコールでも脱色されない抗酸性を示す。蛍光法のオーラミンO染色は加温を要しない冷染色である。●抗酸菌染色=Ziehl-Neelsen染色(加温・石炭酸フクシン)・Kinyoun染色(冷染色)・オーラミンO蛍光染色。●異染小体=Neisser染色・Albert染色(ジフテリア菌)。●莢膜=墨汁法・Hiss染色。●芽胞=Wirtz-Conklin染色(マラカイトグリーン加温)。
選択肢ごとの解説
- ① Gram染色は常温で行い、加温は不要である。
- ② Neisser染色は異染小体(ジフテリア菌など)の染色で、加温は行わない。
- ③ Giménez染色はレジオネラなどの染色で、加温染色ではない。
- ④ オーラミンO染色は抗酸菌の蛍光染色だが、加温を要しない冷染色である。
- ⑤ 正しい。Ziehl-Neelsen染色は石炭酸フクシンを加温して浸透させる加温染色である。
第66回 午後70(臨床微生物学)
選択物質として抗菌薬を含むのはどれか。2つ選べ。
- ①SS寒天培地
- ②TCBS寒天培地
- ③Skirrow寒天培地
- ④B-CYEα寒天培地
- ⑤Thayer-Martin寒天培地
正答: ③Skirrow寒天培地・⑤Thayer-Martin寒天培地
ポイント
選択培地は目的外の菌の発育を抑える選択物質を含む。Skirrow培地はカンピロバクター用でバンコマイシン・トリメトプリム・ポリミキシンBを含み、Thayer-Martin培地は淋菌・髄膜炎菌用でバンコマイシン・コリスチン・ナイスタチンを含む。SS・TCBS培地は胆汁酸塩や高pHなど抗菌薬以外の選択物質を用いる。●抗菌薬を含む選択培地=Skirrow培地(カンピロバクター)・Thayer-Martin培地(淋菌・髄膜炎菌)。●胆汁酸塩・色素・高pHを用いる培地=SS培地・TCBS培地・マッコンキー培地。●発育促進(栄養要求)培地=B-CYEα培地(レジオネラ)・チョコレート寒天。
選択肢ごとの解説
- ① SS寒天培地は胆汁酸塩などを選択物質とし、抗菌薬は含まない。
- ② TCBS寒天培地は高pHと胆汁酸塩でビブリオを選択し、抗菌薬は含まない。
- ③ 正しい。Skirrow寒天培地はバンコマイシン・トリメトプリム・ポリミキシンBなどの抗菌薬を含む。
- ④ B-CYEα寒天培地はレジオネラ用の発育促進培地で、選択物質として抗菌薬を必須とはしない。
- ⑤ 正しい。Thayer-Martin寒天培地はバンコマイシン・コリスチン・ナイスタチンなどの抗菌薬を含む。
第66回 午後71(臨床微生物学)
Pseudomonas aeruginosaについて正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①鞭毛をもたない。
- ②硝酸塩を還元しない。
- ③ピオシアニンを産生する。
- ④TSI培地の高層部が黄変する。
- ⑤アシルアミダーゼ試験陽性である。
正答: ③ピオシアニンを産生する。・⑤アシルアミダーゼ試験陽性である。
ポイント
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)はブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌で、極単毛の鞭毛をもち運動性がある。緑色色素ピオシアニンと蛍光色素ピオベルジンを産生し、オキシダーゼ陽性・硝酸塩還元陽性・アシルアミダーゼ陽性を示す。ブドウ糖を発酵しないためTSI培地は変化しない。●ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌=Pseudomonas・Acinetobacter・Stenotrophomonas・Burkholderia。●緑膿菌の性状=オキシダーゼ陽性・酸化的(OF試験O)・硝酸塩還元陽性・ピオシアニン/ピオベルジン産生・42 ℃発育。●院内感染=弱毒だが免疫不全で日和見感染、多剤耐性緑膿菌が問題。
選択肢ごとの解説
- ① 緑膿菌は極単毛の鞭毛をもち運動性があるため、鞭毛をもたないは誤りである。
- ② 緑膿菌は硝酸塩を還元し、脱窒能を有する。
- ③ 正しい。緑膿菌は緑色色素ピオシアニンを産生する。
- ④ 緑膿菌はブドウ糖非発酵のためTSI培地の高層部は黄変せず、変化しない。
- ⑤ 正しい。緑膿菌はアシルアミダーゼ試験陽性である。
📋 まとめの表を見る:細菌が産生する色素と代表菌
Pseudomonas aeruginosaはアシルアミダーゼ試験も陽性を示す。
第66回 午後72(臨床微生物学)
バクテリオファージが起こす現象はどれか。
- ①形質転換
- ②形質導入
- ③接合伝達
- ④突然変異
- ⑤DNA修復
正答: ②形質導入
ポイント
細菌の遺伝子伝達には、環境中の裸のDNAを取り込む形質転換、バクテリオファージ(細菌に感染するウイルス)を介してDNAを運ぶ形質導入、線毛を介した接合伝達がある。バクテリオファージが宿主菌の遺伝子を別の菌へ運ぶ現象が形質導入である。●形質転換=裸のDNAの取り込み(肺炎球菌のGriffithの実験)。●形質導入=バクテリオファージによる遺伝子伝達。●接合伝達=性線毛を介したプラスミド(Fプラスミド・Rプラスミド)の伝達。●トランスポゾン=可動性遺伝因子による遺伝子の移動。
選択肢ごとの解説
- ① 形質転換は環境中の裸のDNAを取り込む現象で、ファージは介在しない。
- ② 正しい。形質導入はバクテリオファージが宿主菌のDNAを別の菌へ運ぶ現象である。
- ③ 接合伝達は線毛を介した菌同士の直接接触によるプラスミド等の伝達である。
- ④ 突然変異はDNA配列の自然変化であり、ファージが起こす遺伝子伝達現象ではない。
- ⑤ DNA修復は損傷したDNAを修復する機構であり、ファージによる現象ではない。
第66回 午後73(臨床微生物学)
作用機序が核酸合成阻害によるのはどれか。
- ①イミペネム
- ②エリスロマイシン
- ③ゲンタマイシン
- ④バンコマイシン
- ⑤レボフロキサシン
正答: ⑤レボフロキサシン
ポイント
抗菌薬は作用機序で分類される。フルオロキノロン系(レボフロキサシン)はDNAジャイレース・トポイソメラーゼⅣを阻害して核酸合成を妨げる。βラクタム系(イミペネム)やバンコマイシンは細胞壁合成阻害、マクロライド(エリスロマイシン)・アミノグリコシド(ゲンタマイシン)は蛋白合成阻害である。●細胞壁合成阻害=βラクタム系(ペニシリン・セフェム・カルバペネム)・グリコペプチド(バンコマイシン)。●蛋白合成阻害=マクロライド・アミノグリコシド・テトラサイクリン・クロラムフェニコール。●核酸合成阻害=キノロン系(DNA合成)・リファンピシン(RNA合成)。●葉酸合成阻害=ST合剤(サルファ剤・トリメトプリム)。
選択肢ごとの解説
- ① イミペネム(カルバペネム系)は細胞壁合成阻害薬である。
- ② エリスロマイシン(マクロライド系)は50Sリボソームに作用する蛋白合成阻害薬である。
- ③ ゲンタマイシン(アミノグリコシド系)は30Sリボソームに作用する蛋白合成阻害薬である。
- ④ バンコマイシン(グリコペプチド系)は細胞壁合成阻害薬である。
- ⑤ 正しい。レボフロキサシン(フルオロキノロン系)はDNAジャイレースを阻害し核酸合成を妨げる。
第66回 午後74(臨床微生物学)
高水準消毒薬はどれか。2つ選べ。
- ①過酢酸
- ②クロルヘキシジン
- ③消毒用エタノール
- ④グルタルアルデヒド
- ⑤次亜塩素酸ナトリウム
正答: ①過酢酸・④グルタルアルデヒド
ポイント
消毒薬は抗微生物スペクトルにより高水準・中水準・低水準に分けられる。高水準消毒薬は芽胞を含むほぼすべての微生物に有効で、グルタルアルデヒド・過酢酸・フタラールがこれに当たる。次亜塩素酸ナトリウムや消毒用エタノールは中水準、クロルヘキシジンは低水準である。●高水準消毒薬=グルタルアルデヒド・過酢酸・フタラール(内視鏡などの器具消毒)。●中水準消毒薬=次亜塩素酸ナトリウム・消毒用エタノール・ポビドンヨード(結核菌に有効、芽胞に弱い)。●低水準消毒薬=クロルヘキシジン・第四級アンモニウム塩・両性界面活性剤(芽胞・結核菌に無効)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。過酢酸は芽胞にも有効な高水準消毒薬である。
- ② クロルヘキシジンは芽胞・結核菌に無効な低水準消毒薬である。
- ③ 消毒用エタノールは芽胞に無効な中水準消毒薬である。
- ④ 正しい。グルタルアルデヒドは芽胞にも有効な高水準消毒薬である。
- ⑤ 次亜塩素酸ナトリウムは芽胞には作用が弱く、中水準消毒薬に分類される。
第66回 午後75(臨床微生物学)
腎臓移植後に肺炎をきたした患者の喀痰のGram染色標本及びKinyoun染色標本を別に示す。推定されるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66pB075.fdfc0b8b70.jpg

- ①Bacillus属
- ②Clostridium属
- ③Corynebacterium属
- ④Listeria属
- ⑤Nocardia属
正答: ⑤Nocardia属
ポイント
図はGram染色で糸状に分枝するグラム陽性桿菌を、Kinyoun染色(弱抗酸性染色)で部分的な抗酸性を示すことから、ノカルジア(Nocardia属)が推定される。腎移植後など免疫抑制状態の患者で肺ノカルジア症をきたし、脳膿瘍などへ播種することがある。糸状に分枝し弱抗酸性を示す点が鑑別の要点である。●分枝するグラム陽性桿菌=Nocardia(弱抗酸性・好気性)・Actinomyces(抗酸性なし・嫌気性)。●抗酸菌=Mycobacterium(強抗酸性)。●日和見・移植後感染=Nocardia・Aspergillus・サイトメガロウイルス・ニューモシスチス・Listeria。●芽胞形成グラム陽性桿菌=Bacillus(好気)・Clostridium(嫌気)。
選択肢ごとの解説
- ① Bacillus属は大型のグラム陽性桿菌で芽胞をもつが、弱抗酸性や分枝は示さない。
- ② Clostridium属は嫌気性の芽胞形成グラム陽性桿菌で、弱抗酸性の分枝は示さない。
- ③ Corynebacterium属はV字・柵状配列のグラム陽性桿菌で、弱抗酸性の分枝は示さない。
- ④ Listeria属は短いグラム陽性桿菌で、分枝や抗酸性は示さない。
- ⑤ 正しい。Nocardia属は分枝するグラム陽性桿菌で弱抗酸性を示し、免疫抑制患者の肺炎の起因菌となる。
第66回 午後76(臨床微生物学)
細胞壁にメラニン色素を保有するのはどれか。
- ①Aspergillus属
- ②Epidermophyton属
- ③Exophiala属
- ④Penicillium属
- ⑤Rhizopus属
正答: ③Exophiala属
ポイント
黒色真菌(dematiaceous fungi)は細胞壁にメラニン色素を含み、菌糸や酵母様細胞、集落が褐色〜黒色を呈する一群である。Exophiala属はその代表で、黒色酵母様の発育を示し、皮下に黒色分芽菌症(chromoblastomycosis)やフェオヒフォミコーシスを起こす。Aspergillus属・Penicillium属・Rhizopus属は硝子(透明)の菌糸でメラニンをもたず、Epidermophyton属の皮膚糸状菌もメラニン産生菌ではない。
●黒色真菌=Exophiala・Fonsecaea・Cladophialophora・Phialophora・Alternaria・Bipolaris。
●硝子糸状菌=Aspergillus・Penicillium・Fusarium・Acremonium。
●接合菌(ムーコル症)=Rhizopus・Mucor・Absidia。
●皮膚糸状菌=Trichophyton・Microsporum・Epidermophyton。
選択肢ごとの解説
- ① Aspergillus属は隔壁のある硝子様菌糸で、細胞壁にメラニンをもたない。
- ② Epidermophyton属は皮膚糸状菌で、黒色のメラニン色素は保有しない。
- ③ 正しい。Exophiala属は黒色真菌で、細胞壁にメラニン色素を保有し集落が黒色を呈する。
- ④ Penicillium属は硝子様の分生子柄をもつ真菌で、メラニンを保有しない。
- ⑤ Rhizopus属は無隔壁の接合菌で、細胞壁にメラニンをもたない。
第66回 午後77(臨床微生物学)
ウイルスと疾患の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- ①EBウイルス — 伝染性単核球症
- ②ロタウイルス — 乳幼児急性胃腸炎
- ③アデノウイルス — 伝染性紅斑
- ④コクサッキーウイルス — 先天性巨細胞封入体症
- ⑤サイトメガロウイルス — 咽頭結膜熱
正答: ①EBウイルス — 伝染性単核球症・②ロタウイルス — 乳幼児急性胃腸炎
ポイント
ウイルスと疾患の対応は基本的な知識である。EBウイルス〈Epstein-Barrウイルス〉は伝染性単核球症のほかBurkittリンパ腫や上咽頭癌に関与し、ロタウイルスは乳幼児急性胃腸炎(白色便性下痢症)の主要原因である。伝染性紅斑(リンゴ病)はパルボウイルスB19、咽頭結膜熱(プール熱)はアデノウイルス、先天性巨細胞封入体症はサイトメガロウイルスが原因であり、それぞれ組合せが異なる。
●ヘルペスウイルス科=単純ヘルペス(口唇・性器ヘルペス)・水痘帯状疱疹・EBウイルス・サイトメガロウイルス・ヒトヘルペスウイルス6(突発性発疹)。
●急性胃腸炎=ロタウイルス・ノロウイルス・アデノウイルス・サポウイルス・アストロウイルス。
●発疹性疾患=麻疹・風疹・パルボウイルスB19(伝染性紅斑)・コクサッキー(手足口病)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。EBウイルスは伝染性単核球症の原因ウイルスである。
- ② 正しい。ロタウイルスは乳幼児の急性胃腸炎の主要な原因ウイルスである。
- ③ 伝染性紅斑(リンゴ病)はパルボウイルスB19が原因で、アデノウイルスではない。
- ④ 先天性巨細胞封入体症はサイトメガロウイルスが原因で、コクサッキーウイルスではない。
- ⑤ 咽頭結膜熱はアデノウイルスが原因で、サイトメガロウイルスではない。
📋 まとめの表を見る:主なウイルスと疾患
第66回 午後78(臨床微生物学)
β-ラクタマーゼ分類でクラスBに属するのはどれか。
- ①ペニシリナーゼ
- ②オキサシリナーゼ
- ③セファロスポリナーゼ
- ④メタロ-β-ラクタマーゼ
- ⑤基質拡張型β-ラクタマーゼ
正答: ④メタロ-β-ラクタマーゼ
ポイント
β-ラクタマーゼのAmbler分子分類はアミノ酸配列に基づきクラスA〜Dに分けられる。クラスBは活性中心に亜鉛を要するメタロ-β-ラクタマーゼで、カルバペネムを含む広範なβ-ラクタム薬を分解し、クラブラン酸では阻害されずEDTA(金属キレート剤)で阻害される。クラスA・C・Dはセリンを活性中心とするセリン型で、クラスAはペニシリナーゼと基質拡張型β-ラクタマーゼ〈ESBL〉、クラスCはセファロスポリナーゼ(AmpC型)、クラスDはオキサシリナーゼ(OXA型)を含む。
●クラスA(セリン型)=ペニシリナーゼ・ESBL・KPC型カルバペネマーゼ。
●クラスB(金属型)=メタロ-β-ラクタマーゼ(IMP・VIM・NDM)。
●クラスC(セリン型)=AmpC型セファロスポリナーゼ。
●クラスD(セリン型)=オキサシリナーゼ(OXA型)。
選択肢ごとの解説
- ① ペニシリナーゼはセリンを活性中心とするクラスAに属する。
- ② オキサシリナーゼ(OXA型)はクラスDに属する。
- ③ セファロスポリナーゼ(AmpC型)はクラスCに属する。
- ④ 正しい。メタロ-β-ラクタマーゼは亜鉛を活性中心とするクラスBに属する。
- ⑤ 基質拡張型β-ラクタマーゼ〈ESBL〉はセリン型のクラスAに属する。
📋 まとめの表を見る:β-ラクタマーゼの分子分類(Amblerクラス)と分解する主な薬剤
クラスA・C・Dは活性中心にセリン残基をもつセリン型β-ラクタマーゼ、クラスBは活性中心に亜鉛をもつ金属酵素(メタロ-β-ラクタマーゼ)である。基質拡張型β-ラクタマーゼ〈ESBL〉は主にクラスAのβ-ラクタマーゼが変異した酵素で、ペニシリン系に加えセフェム系(第一〜第四世代)も分解するが、カルバペネム系は分解しにくいためカルバペネム系抗菌薬(イミペネム等)が有効。
第66回 午後79(臨床免疫学)
ABO不適合輸血において低下するのはどれか。
- ①AST
- ②LD
- ③カリウム
- ④ハプトグロビン
- ⑤遊離ヘモグロビン
正答: ④ハプトグロビン
ポイント
ABO不適合輸血では受血者血漿中の抗A・抗B抗体が供血赤血球と反応し、補体を活性化して血管内溶血を起こす。破壊された赤血球から遊離ヘモグロビン・カリウム・乳酸脱水素酵素〈LD〉・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ〈AST〉が血中に放出され上昇し、間接ビリルビンも増加する。一方、遊離ヘモグロビンはハプトグロビンと結合して網内系で処理されるため、ハプトグロビンは消費されて低下する。
●溶血で上昇する指標=遊離ヘモグロビン・LD・AST・間接ビリルビン・カリウム・網赤血球。
●溶血で低下する指標=ハプトグロビン・ヘモペキシン・血清鉄結合能の関連項目。
●血管内溶血の例=ABO不適合輸血・発作性夜間ヘモグロビン尿症・微小血管障害性溶血。
選択肢ごとの解説
- ① ASTは溶血で赤血球から逸脱して上昇するため、低下しない。
- ② LDは赤血球に多く含まれ、溶血で上昇するため低下しない。
- ③ カリウムは赤血球内から放出され、溶血で上昇するため低下しない。
- ④ 正しい。ハプトグロビンは遊離ヘモグロビンと結合して消費されるため低下する。
- ⑤ 遊離ヘモグロビンは赤血球破壊により血漿中で上昇するため、低下しない。
第66回 午後80(臨床免疫学)
輸血関連急性肺障害について正しいのはどれか。
- ①心陰影拡大を認める。
- ②全身に蕁麻疹を認める。
- ③大量輸血が原因である。
- ④男性ドナー由来血漿製剤で発生率が高い。
- ⑤輸血開始から輸血終了後6時間以内に発症する。
正答: ⑤輸血開始から輸血終了後6時間以内に発症する。
ポイント
輸血関連急性肺障害〈TRALI〉は輸血開始から輸血終了後6時間以内に発症する非心原性肺水腫で、急激な低酸素血症と両側肺浸潤影を呈する。ドナー血漿中の抗白血球抗体(抗HLA抗体・抗顆粒球抗体)が受血者の好中球を活性化して肺毛細血管を傷害する機序が中心で、妊娠歴のある女性ドナー由来血漿で発生率が高い。心拡大や中心静脈圧上昇を伴わない点で、循環過負荷による輸血関連循環過負荷〈TACO〉と区別する。
●TRALI=非心原性肺水腫・6時間以内・抗白血球抗体・心拡大なし・利尿薬無効。
●TACO=心原性(循環過負荷)・心拡大あり・高血圧・利尿薬有効。
●その他の輸血副反応=アレルギー反応(蕁麻疹)・アナフィラキシー・発熱性非溶血性反応・溶血性反応・輸血後GVHD。
選択肢ごとの解説
- ① TRALIは非心原性肺水腫で、心陰影拡大は通常認めない(心拡大はTACOの所見)。
- ② 全身の蕁麻疹はアレルギー反応の所見で、TRALIの主徴ではない。
- ③ TRALIは大量輸血を必須とせず、少量の血漿含有製剤でも発症しうる。
- ④ TRALIは妊娠歴のある女性ドナー由来血漿で発生率が高く、男性ドナーではない。
- ⑤ 正しい。TRALIは輸血開始から輸血終了後おおむね6時間以内に発症する。
第66回 午後81(臨床免疫学)
赤血球製剤の輸血で急性溶血反応を起こさない組合せはどれか。
- ①患者A型 — 供血者B型
- ②患者B型 — 供血者A型
- ③患者B型 — 供血者AB型
- ④患者O型 — 供血者A型
- ⑤患者AB型 — 供血者A型
正答: ⑤患者AB型 — 供血者A型
ポイント
赤血球輸血における急性溶血反応は、受血者血漿中の抗体が供血赤血球の対応抗原と反応して血管内溶血を起こすことで生じる。AB型患者は血漿中に抗A・抗B抗体をいずれももたないため、A型赤血球を輸血しても凝集・溶血を起こさない。逆にO型患者は抗A・抗B両抗体をもつため不適合となりやすく、A型患者は抗B、B型患者は抗A抗体により対応抗原をもつ赤血球で溶血する。
●ABO抗体保有=A型(抗B)・B型(抗A)・O型(抗A+抗B)・AB型(なし)。
●赤血球の適合(major側)=O型は万能供血者、AB型は万能受血者。
●急性溶血反応=血管内溶血・ヘモグロビン尿・ショック・播種性血管内凝固・急性腎不全。
選択肢ごとの解説
- ① 患者A型は抗B抗体をもち、B型赤血球と反応して溶血する。
- ② 患者B型は抗A抗体をもち、A型赤血球と反応して溶血する。
- ③ 患者B型は抗A抗体をもち、AB型赤血球(A抗原を含む)と反応して溶血する。
- ④ 患者O型は抗A・抗B抗体をもち、A型赤血球と反応して溶血する。
- ⑤ 正しい。患者AB型は抗A・抗B抗体をもたず、A型赤血球を輸血しても急性溶血を起こさない。
📋 まとめの表を見る:ABO血液型の抗原・抗体と輸血用血液製剤の適合
赤血球製剤は、供血者赤血球の抗原が患者血清中の抗体と反応しない型を選ぶため「抗原の少ない型」ほど適合範囲が広い(O型が万能供血者、AB型が万能受血者)。血漿・血小板製剤は逆に、供血者血漿中の抗体が患者赤血球の抗原と反応しない型を選ぶため、赤血球とは適合関係が左右反対になる(AB型血漿が万能供血)。血液型が確定できない緊急輸血では、赤血球製剤はO型、血漿・血小板製剤はAB型を用いる(RhD陰性製剤は病院在庫が乏しく供給に時間を要するため、救命優先でRhD陽性製剤を応急的に使用することがある)。ラベル色は日本赤十字社の規定で取り違い防止のために用いられる。
第66回 午後82(臨床免疫学)
補体成分C3bの作用について正しいのはどれか。
- ①好中球を遊走させる。
- ②好中球の貪食を促進する。
- ③白血球からリソソームを放出させる。
- ④アナフィラトキシンとしての活性がある。
- ⑤リンパ球に結合し抗体産生を亢進させる。
正答: ②好中球の貪食を促進する。
ポイント
補体C3bは古典経路・第二経路の活性化で生じる中心的な分子で、微生物表面に共有結合してオプソニンとして働く。好中球やマクロファージがもつC3b受容体(補体受容体CR1)を介して結合し、貪食を促進する。走化性やアナフィラトキシン活性(肥満細胞の脱顆粒・血管透過性亢進)はC3a・C5aが担い、膜侵襲複合体による細胞溶解はC5b-9が形成する。
●オプソニン作用=C3b・C4b・免疫グロブリンG(IgG)のFc部分。
●アナフィラトキシン=C3a・C4a・C5a(肥満細胞・好塩基球を活性化)。
●走化性因子=C5a(好中球遊走)。
●膜侵襲複合体=C5b-6-7-8-9(細胞膜に孔を形成し溶解)。
選択肢ごとの解説
- ① 好中球の遊走(走化性)はC5aなどが担い、C3bの主作用ではない。
- ② 正しい。C3bはオプソニンとして微生物に結合し、好中球の貪食を促進する。
- ③ リソソーム(顆粒)放出はC5aなどによる好中球活性化で起こり、C3b固有の作用ではない。
- ④ アナフィラトキシン活性はC3a・C4a・C5aがもち、C3bにはない。
- ⑤ C3bは貪食促進が主作用であり、リンパ球に結合して抗体産生を直接亢進させるものではない。
第66回 午後83(臨床免疫学)
血液型の亜型について正しいのはどれか。
- ①RhD陰性は亜型である。
- ②後天性Bは亜型である。
- ③日本人ではB亜型が最も多い。
- ④cis AB型は突然変異で生じる。
- ⑤亜型の出現頻度は2%程度である。
正答: ③日本人ではB亜型が最も多い。
ポイント
ABO血液型の亜型は抗原量が少ない、あるいは抗原構造が変化した変異型で、A亜型(A2・A3・Ax・Am等)とB亜型に分けられる。日本人のABO亜型ではB亜型の頻度が比較的高いとされる。後天性Bは大腸菌などのグラム陰性桿菌感染で細菌酵素がA抗原を修飾して一過性に生じる獲得性の変化、RhD陰性はRh血液型の表現型でABO亜型とは別概念、cis AB型はA・B両方の糖転移酵素活性をもつ酵素をコードする単一のABO対立遺伝子による稀な型で、AとBの形質が片方の親からまとまって遺伝する。
●A亜型=A1・A2・A3・Ax・Aend・Am・Ael。
●B亜型=B3・Bx・Bm・Bel。
●特殊型=cis AB(A・B両活性をもつ単一対立遺伝子)・Bombay型(H抗原欠損)・後天性B(一過性・細菌感染)。
選択肢ごとの解説
- ① RhD陰性はRh血液型の表現型で、ABO亜型ではない。
- ② 後天性Bは細菌感染等で一過性に生じる獲得性の変化で、遺伝的な亜型ではない。
- ③ 正しい。日本人のABO亜型ではB亜型の頻度が比較的高いとされる。
- ④ cis AB型はA・B両方の転移酵素活性をもつ酵素をコードする単一のABO対立遺伝子が親から遺伝して生じるもので、症例ごとに突然変異で新たに生じるものではない。
- ⑤ 亜型の出現頻度は2%ほど高くなく、ごく稀である。
📋 まとめの表を見る:ABO血液型亜型の特徴
後天性Bはグラム陰性桿菌感染によるA抗原の一過性修飾であり、亜型(先天性)とは区別される。
第66回 午後84(臨床免疫学)
溶血性輸血副反応の原因となる不規則抗体はどれか。2つ選べ。
正答: ①抗E・②抗Jka
ポイント
溶血性輸血副反応を起こす臨床的に重要な不規則抗体は、37 ℃・間接抗グロブリン試験で反応するIgG型で、補体結合能や赤血球破壊能をもつものである。Rh系(抗D・抗E・抗c)、Kidd系(抗Jka・抗Jkb)、Duffy系(抗Fya)、Kell系(抗K)、Diego系が代表で、とくにKidd系抗体は遅発性溶血性輸血副反応の原因として重要である。抗N・抗P1は多くが室温反応性のIgMで、臨床的意義は低い。抗XgaはIgGが多いが、溶血性輸血副反応や新生児溶血性疾患の原因とはならず、臨床的意義は低い。
●臨床的意義の高い抗体(IgG・37 ℃・温式)=抗D・抗E・抗c・抗Jka・抗Jkb・抗Fya・抗K・抗Dia。
●臨床的意義の低い抗体=抗M・抗N・抗P1・抗Lea(多くはIgM・冷式・室温)・抗Xga(IgGが多いが溶血を起こさない)。
●遅発性溶血性副反応の代表=Kidd系(抗Jka)。
選択肢ごとの解説
- ① 正しい。抗EはRh系のIgG抗体で、溶血性輸血副反応の原因となる。
- ② 正しい。抗JkaはKidd系の抗体で、遅発性溶血性輸血副反応の代表的原因となる。
- ③ 抗NはMNSs系の室温反応性IgMが多く、臨床的意義は低い。
- ④ 抗P1は通常室温反応性で、溶血性副反応を起こすことは稀である。
- ⑤ 抗Xgaは溶血性輸血副反応を起こさず、臨床的意義はほとんどない。
第66回 午後85(臨床免疫学)
カラム凝集法の結果を別に示す。最も考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66pB085.59f06dcc7d.jpg

- ①Ax型
- ②汎血球凝集反応
- ③不規則抗体保有患者
- ④O型赤血球の異型適合血輸血後
- ⑤直接抗グロブリン試験陽性患者
正答: ③不規則抗体保有患者
ポイント
カラム凝集法(ゲルカラム法)は赤血球と抗体の反応をゲル充填カラム内の遠心で判定する方法で、凝集塊がゲル上層やゲル中に捕捉されれば陽性、底に沈めば陰性となる。本図はABO・RhD判定カードで、抗A・抗Bの陽性反応からオモテ検査はAB型を示す。しかし、AB型なら陰性となるはずのウラ検査のA1血球・B血球にも反応があるため、不規則抗体の関与を考える。抗体スクリーニング・同定などで原因を確認する。Ax型はABO亜型でオモテ・ウラ不一致、汎血球凝集反応は病的変化を生じた患者赤血球がほとんどの正常成人血清と凝集する状態で区別する。
●カラム凝集法の用途=ABO・RhD判定・不規則抗体スクリーニング・交差適合試験・直接抗グロブリン試験。
●不規則抗体=同種抗体(輸血・妊娠由来)と自己抗体。
●鑑別=Ax型(ABO亜型)・汎血球凝集(T活性化等)・直接抗グロブリン試験陽性(自己免疫性溶血)・異型適合血輸血後(混合視野像)。
選択肢ごとの解説
- ① Ax型ではABO血液型のオモテ・ウラ不一致を示すパターンとなり、本図の所見とは異なる。
- ② 汎血球凝集反応はすべての成人血清と凝集する病的赤血球の状態で、本図の所見とは異なる。
- ③ 正しい。図はABO・RhD判定のカラムであり、オモテ検査の抗A・抗Bは陽性でAB型を示す。一方、ウラ検査のA1血球・B血球にも反応があり、本来のAB型と一致しない。この予期しないウラ反応から、不規則抗体の関与を考える。
- ④ O型赤血球の異型適合血輸血後では特有の混合視野像を示し、本図とは異なる。
- ⑤ 直接抗グロブリン試験陽性患者では自己赤血球の凝集を示すが、本図の所見とは合致しない。
📋 まとめの表を見る:ABO血液型判定オモテ・ウラ検査不一致の主な原因
新生児は自己の規則抗体(抗A・抗B)をまだ十分に産生していないためウラ検査が陰性化しやすい。混合視野凝集(mixed field)はキメラ・異型輸血後・骨髄移植後などでみられ、通常の不一致とは区別して考える。
第66回 午後86(臨床免疫学)
腫瘍マーカーと腫瘍の組合せで誤っているのはどれか。
- ①CYFRA — 肺扁平上皮癌
- ②hCG — 絨毛癌
- ③NSE — 肺小細胞癌
- ④PIVKA-Ⅱ — 肝細胞癌
- ⑤ProGRP — 膵癌
正答: ⑤ProGRP — 膵癌
ポイント
腫瘍マーカーは特定の腫瘍と対応づけて補助診断に用いる。ガストリン放出ペプチド前駆体〈ProGRP〉は神経特異エノラーゼ〈NSE〉と並ぶ肺小細胞癌のマーカーであり、膵癌とは結びつかない。膵癌ではCA19-9などが用いられる。サイトケラチン19フラグメント〈CYFRA〉は肺扁平上皮癌、ヒト絨毛性ゴナドトロピン〈hCG〉は絨毛癌・胚細胞腫瘍、PIVKA-Ⅱは肝細胞癌のマーカーである。
●肺癌=CYFRA(扁平上皮)・SCC(扁平上皮)・NSE・ProGRP(小細胞)・CEA(腺癌)。
●消化器癌=CEA(大腸)・CA19-9(膵・胆道)・AFP・PIVKA-Ⅱ(肝細胞)。
●生殖器・絨毛=hCG(絨毛癌・胚細胞)・AFP(卵黄嚢腫瘍)・CA125(卵巣)・PSA(前立腺)。
選択肢ごとの解説
- ① CYFRA(サイトケラチン19フラグメント)は肺扁平上皮癌のマーカーで、正しい組合せである。
- ② hCGは絨毛癌・胚細胞腫瘍のマーカーで、正しい組合せである。
- ③ NSE(神経特異エノラーゼ)は肺小細胞癌・神経内分泌腫瘍のマーカーで、正しい組合せである。
- ④ PIVKA-Ⅱは肝細胞癌のマーカーで、正しい組合せである。
- ⑤ 誤り。ProGRPは肺小細胞癌のマーカーであり、膵癌との組合せは誤りである。
📋 まとめの表を見る:主な腫瘍マーカーと高値を示す代表疾患
第66回 午後87(臨床免疫学)
発作性寒冷ヘモグロビン尿症でみられる所見はどれか。
- ①Ham試験陽性
- ②補体価〈CH50〉高値
- ③直接Coombs試験陰性
- ④P血液型のP抗原陽性
- ⑤Donath-Landsteiner反応陰性
正答: ④P血液型のP抗原陽性
ポイント
発作性寒冷ヘモグロビン尿症〈PCH〉は寒冷曝露を契機に発作性の血管内溶血を起こす疾患で、Donath-Landsteiner抗体(二相性溶血素、IgG)が原因となる。この抗体はP血液型のP抗原を標的とし、低温で赤血球に結合して補体C1を固定し、復温(37 ℃)に伴い補体活性化が進行して溶血する二相性反応を示す。Donath-Landsteiner反応が陽性となり、直接Coombs試験は補体成分(C3d)で陽性となりうる。
●PCH=Donath-Landsteiner抗体(IgG・二相性)・P抗原標的・寒冷曝露で発作・ウイルス感染後・梅毒。
●冷式自己抗体による溶血=寒冷凝集素症(I抗原標的・IgM)。
●温式自己免疫性溶血性貧血=IgG・37 ℃反応・直接Coombs陽性。
●PNHとの鑑別=Ham試験・砂糖水試験・CD55/CD59欠損。
選択肢ごとの解説
- ① Ham試験陽性は発作性夜間ヘモグロビン尿症〈PNH〉の所見で、PCHではない。
- ② PCHでは補体が消費されるため、補体価〈CH50〉が高値になるとは限らない。
- ③ PCHではDonath-Landsteiner抗体や補体が赤血球に結合し、直接Coombs試験は陽性となりうるため陰性は合致しない。
- ④ 正しい。Donath-Landsteiner抗体はP血液型のP抗原を標的とするため、P抗原陽性赤血球が溶血に関与する。
- ⑤ PCHではDonath-Landsteiner反応が陽性であり、陰性は誤りである。
第66回 午後88(臨床免疫学)
モノクローナル抗体について正しいのはどれか。
- ①沈降反応に適している。
- ②IgMクラスの抗体は作製できない。
- ③リンパ球サブセットの解析に用いる。
- ④複数のエピトープに対する抗体である。
- ⑤Bリンパ球とTリンパ球のハイブリドーマから作製する。
正答: ③リンパ球サブセットの解析に用いる。
ポイント
モノクローナル抗体は単一のBリンパ球クローンに由来し、単一のエピトープにのみ特異的に結合する均一な抗体である。免疫した動物の脾B細胞と骨髄腫(ミエローマ)細胞を細胞融合させたハイブリドーマを培養して産生させる。均一な特異性を活かし、フローサイトメトリによるリンパ球サブセット(CD分類)の解析や各種標識試薬、治療用抗体に広く用いられる。
●モノクローナル抗体=単一クローン・単一エピトープ・均一・ハイブリドーマ法。
●ポリクローナル抗体=複数クローン・複数エピトープ・沈降反応に適する。
●用途=CD抗原解析(フローサイトメトリ)・免疫組織化学・ELISA・治療用抗体。
選択肢ごとの解説
- ① モノクローナル抗体は単一エピトープにのみ結合するため、抗原を架橋する沈降反応には不向きである。
- ② IgMクラスのモノクローナル抗体も作製可能であり、作製できないは誤りである。
- ③ 正しい。モノクローナル抗体は単一特異性を活かしリンパ球サブセットの解析に用いる。
- ④ モノクローナル抗体は単一エピトープに対する抗体であり、複数エピトープに対するのはポリクローナル抗体である。
- ⑤ ハイブリドーマはBリンパ球とミエローマ細胞の融合で作製し、Bリンパ球とTリンパ球の融合ではない。
第66回 午後89(臨床免疫学)
抗HLA抗体が原因となるのはどれか。2つ選べ。
- ①輸血後GVHD
- ②血小板輸血不応
- ③遅発性溶血性輸血副作用
- ④臓器移植後の急性拒絶反応
- ⑤輸血関連循環過負荷〈TACO〉
正答: ②血小板輸血不応・④臓器移植後の急性拒絶反応
ポイント
抗HLA抗体(ヒト白血球抗原に対する抗体)は妊娠・輸血・移植によって感作され産生される。血小板はHLAクラスⅠ抗原を発現するため、抗HLA抗体は血小板輸血不応(輸血後の血小板数上昇不良)の原因となる。臓器移植ではドナーHLAに対する抗体が血管内皮を攻撃して抗体関連型の急性拒絶反応を引き起こす。輸血後GVHDはドナーTリンパ球が宿主を攻撃する反応、TACOは循環過負荷、遅発性溶血性副反応は赤血球不規則抗体が原因で機序が異なる。
●抗HLA抗体が関与=血小板輸血不応・抗体関連型移植拒絶・TRALI(一部)・発熱性非溶血性輸血反応。
●ドナーリンパ球が関与=輸血後GVHD。
●赤血球抗体が関与=溶血性輸血副反応(即時・遅発)。
●容量負荷が関与=輸血関連循環過負荷〈TACO〉。
選択肢ごとの解説
- ① 輸血後GVHDはドナーのTリンパ球が宿主を攻撃する反応で、抗HLA抗体が原因ではない。
- ② 正しい。血小板はHLA抗原を発現するため、抗HLA抗体により血小板輸血不応が生じる。
- ③ 遅発性溶血性輸血副作用は赤血球に対する不規則抗体が原因で、抗HLA抗体ではない。
- ④ 正しい。臓器移植後の急性拒絶反応には抗HLA抗体(抗体関連型拒絶)が関与する。
- ⑤ 輸血関連循環過負荷〈TACO〉は輸血量・速度による容量負荷が原因で、抗HLA抗体は関与しない。
第66回 午後90(公衆衛生学)
職場の受動喫煙防止対策の推進を規定しているのはどれか。2つ選べ。
- ①環境基本法
- ②健康増進法
- ③地域保健法
- ④労働基準法
- ⑤労働安全衛生法
正答: ②健康増進法・⑤労働安全衛生法
ポイント
職場の受動喫煙防止対策は、健康増進法と労働安全衛生法の2法が規定する。健康増進法は受動喫煙防止を国民全体に対する一般的義務として定め、改正により多数の者が利用する施設の屋内を原則禁煙とした。労働安全衛生法は事業者に対し、労働者の受動喫煙を防止する措置を講ずる努力義務を課している。環境基本法・地域保健法・労働基準法は受動喫煙防止を直接規定しない。
●健康増進法=受動喫煙防止(施設の屋内原則禁煙)・国民健康づくり・がん検診等の健康増進事業。
●特定健康診査=高齢者の医療の確保に関する法律(第20条)が根拠で、健康増進法ではない。
●労働安全衛生法=職場の安全衛生・受動喫煙防止の努力義務・作業環境測定・健康診断。
●労働基準法=労働条件の最低基準・産前産後の就業制限・労働時間。
選択肢ごとの解説
- ① 環境基本法は環境保全の基本理念を定める法で、職場の受動喫煙対策を規定しない。
- ② 正しい。健康増進法は受動喫煙防止対策を規定している。
- ③ 地域保健法は保健所等の地域保健体制を定める法で、受動喫煙対策の規定ではない。
- ④ 労働基準法は労働条件の最低基準を定める法で、受動喫煙防止の規定ではない。
- ⑤ 正しい。労働安全衛生法は職場の受動喫煙防止対策を規定している。
第66回 午後91(公衆衛生学)
法律と規定している項目との組合せで正しいのはどれか。
- ①地域保健法 — 母子健康手帳の交付
- ②母子保健法 — 産前・産後の就業制限
- ③食品衛生法 — 食品のアレルギー表示
- ④毒物劇物取締法 — 麻薬中毒者の治療
- ⑤医薬品医療機器等法 — 毒薬・劇薬の表示
正答: ⑤医薬品医療機器等法 — 毒薬・劇薬の表示
ポイント
法律と規定事項の対応では、医薬品医療機器等法〈薬機法〉が毒薬・劇薬の表示や貯蔵・取扱いを定める。母子健康手帳の交付は母子保健法、産前・産後の就業制限は労働基準法、食品のアレルギー表示は食品表示法、麻薬中毒者の治療・措置入院は麻薬及び向精神薬取締法が規定する。各法の所管事項を取り違えやすいので対応を確認する。
●医薬品医療機器等法=毒薬・劇薬の表示・医薬品の承認・製造販売・医療機器の規制。
●母子保健法=母子健康手帳交付・妊産婦健診・乳幼児健診・未熟児養育医療。
●労働基準法=産前産後の就業制限・労働時間・最低基準。
●食品表示法=アレルギー表示・栄養成分表示・期限表示。
●麻薬及び向精神薬取締法=麻薬中毒者の措置・麻薬の取扱い。
選択肢ごとの解説
- ① 母子健康手帳の交付は母子保健法が規定し、地域保健法ではない。
- ② 産前・産後の就業制限は労働基準法が規定し、母子保健法ではない。
- ③ 食品のアレルギー表示は食品表示法が規定し、食品衛生法ではない。
- ④ 麻薬中毒者の治療は麻薬及び向精神薬取締法が規定し、毒物及び劇物取締法ではない。
- ⑤ 正しい。医薬品医療機器等法は毒薬・劇薬の表示を規定している。
📋 まとめの表を見る:保健・福祉関連法規と規定内容の対応
母子健康手帳の交付を規定するのは地域保健法・児童福祉法ではなく母子保健法。療育手帳は法律ではなく厚生労働省事務次官通知に基づく制度である点に注意。
第66回 午後92(公衆衛生学)
検疫感染症でないのはどれか。
- ①コレラ
- ②ペスト
- ③デング熱
- ④マラリア
- ⑤エボラ出血熱
正答: ①コレラ
ポイント
検疫感染症は検疫法に基づき、国内に常在しない感染症の侵入を空港・港湾で水際阻止する対象として定められる。エボラ出血熱・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱に加え、マラリア・デング熱・チクングニア熱・ジカウイルス感染症・鳥インフルエンザ・中東呼吸器症候群〈MERS〉・新型コロナウイルス感染症が含まれる。コレラは検疫法の検疫感染症からは外れている。
●検疫感染症(出血熱系)=エボラ出血熱・マールブルグ病・ラッサ熱・南米出血熱・クリミア・コンゴ出血熱。
●検疫感染症(蚊媒介)=マラリア・デング熱・チクングニア熱・ジカウイルス感染症。
●その他=ペスト・痘そう・MERS・鳥インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症。
選択肢ごとの解説
- ① 誤り。コレラは検疫法の検疫感染症から外れており、検疫感染症ではない。
- ② ペストは検疫感染症に含まれる。
- ③ デング熱は検疫感染症に含まれる。
- ④ マラリアは検疫感染症に含まれる。
- ⑤ エボラ出血熱は検疫感染症に含まれる。
第66回 午後93(公衆衛生学)
保健所に仕出し弁当の食中毒発生の通報があった。喫食調査の結果を以下に示す。原因として最も考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66pB093.d864ce1880.jpg

正答: ②野菜
ポイント
食中毒の原因食品は喫食調査で、摂取群と非摂取群の発症率を比較し、その比(相対危険)や差(寄与危険)が大きい食品を疑う。野菜は摂取者95人(発症85人+非発症10人)のうち85人が発症して発症率約89%と高く、非摂取者65人では発症15人(約23%)と低いため、発症率の比・差とも他のどの食品よりも大きい。煮魚・果物・卵焼き・鶏の唐揚げは摂取群と非摂取群の発症率の開きが野菜ほど明瞭でなく、原因として弱い。
●食中毒疫学=摂取群発症率・非摂取群発症率・相対危険・寄与危険・オッズ比。
●コホート型調査=喫食者と非喫食者の発症率比較(仕出し弁当など名簿のある集団)。
●症例対照型調査=発症者と非発症者の喫食歴比較。
選択肢ごとの解説
- ① 煮魚は摂取者・非摂取者間の発症率差が野菜ほど明瞭でない。
- ② 正しい。野菜は摂取者で発症率が高く非摂取者で低く、発症率差が最大で原因として最も考えられる。
- ③ 果物は摂取・非摂取で発症率の差が小さく、原因として弱い。
- ④ 卵焼きは摂取・非摂取の発症率差が野菜ほど大きくない。
- ⑤ 鶏の唐揚げは摂取・非摂取の発症率差が野菜ほど大きくない。
第66回 午後94(公衆衛生学)
統計指標について誤っているのはどれか。
- ①死産率は出産数1,000対の率である。
- ②平均寿命とは0歳における平均余命である。
- ③乳児死亡率は地域の保健・医療の水準を反映する。
- ④総再生産率は1人の女性が一生の間に生む平均女児数である。
- ⑤周産期死亡は妊娠満22週以降の死産と新生児死亡との合計である。
正答: ⑤周産期死亡は妊娠満22週以降の死産と新生児死亡との合計である。
ポイント
周産期死亡は妊娠満22週以降の死産と早期新生児死亡(生後1週未満)との合計と定義され、新生児死亡(生後4週未満)全体ではない。死産率は出産(出生+死産)千対、平均寿命は0歳における平均余命、総再生産率は1人の女性が生涯に産む平均女児数、乳児死亡率は地域の保健・医療水準を反映する指標として正しい。
●母子保健統計=周産期死亡(満22週以降死産+早期新生児死亡)・新生児死亡(生後4週未満)・乳児死亡(生後1年未満)・死産。
●出生力指標=合計特殊出生率・総再生産率(女児のみ)・純再生産率(死亡を考慮)。
●寿命指標=平均寿命(0歳平均余命)・健康寿命。
選択肢ごとの解説
- ① 死産率は出産(出生+死産)千対の率で、正しい記述である。
- ② 平均寿命は0歳における平均余命であり、正しい記述である。
- ③ 乳児死亡率は地域の保健・医療水準を反映する指標で、正しい記述である。
- ④ 総再生産率は1人の女性が一生に産む平均女児数で、正しい記述である。
- ⑤ 誤り。周産期死亡は妊娠満22週以降の死産と早期新生児死亡(生後1週未満)の合計で、新生児死亡全体ではない。
第66回 午後95(医用工学概論)
生体信号をデジタル記録する場合、最も高いサンプリング周波数が必要となるのはどれか。
正答: ③筋電図
ポイント
デジタル記録では標本化定理(ナイキスト定理)により、サンプリング周波数は信号に含まれる最高周波数の2倍以上が必要である。筋電図は活動電位に由来する周波数成分が数Hz〜数kHzに及び、生体信号のなかで最も高い周波数帯域をもつため、最も高いサンプリング周波数を要する。脳波・心電図・脈波・心音図はいずれもより低い周波数帯域である。
●生体信号の周波数帯域(おおよそ)=脈波(数Hz以下)・心電図(〜100 Hz)・脳波(〜数十Hz)・心音図(〜数百Hz)・筋電図(数Hz〜数kHz)。
●標本化=ナイキスト周波数(標本化周波数の1/2)・必要な標本化周波数(信号の最高周波数の2倍以上)・エイリアシング(折り返し雑音)。
●量子化=分解能(ビット数)・量子化誤差。
選択肢ごとの解説
- ① 脳波の周波数は概ね数十Hz以下で、必要なサンプリング周波数は低い。
- ② 脈波は緩徐な波形で、必要なサンプリング周波数は低い。
- ③ 正しい。筋電図は周波数成分が数kHzに及び、最も高いサンプリング周波数を要する。
- ④ 心音図は数百Hz程度で、筋電図ほど高くない。
- ⑤ 心電図の主成分は概ね100Hz以下で、必要なサンプリング周波数は低い。
第66回 午後96(医用工学概論)
100 kHzの交流電流が体表の2か所に張り付けた電極間に流れたとき、およその最小感知電流と考えられるのはどれか。
- ①10 μA
- ②100 μA
- ③1 mA
- ④100 mA
- ⑤1 A
正答: ④100 mA
ポイント
最小感知電流は人体が電流を感じはじめる最小値で、商用周波数(50/60 Hz)の交流では成人で約1 mAとされる。数kHz以上では神経・筋を刺激するために必要な電流が大きくなり、100 kHzでは本問の目安となる最小感知電流は約100 mAである。ただし、神経刺激が起こりにくくなることと、熱作用が小さくなることは同じではない。高周波でも通電による発熱・熱傷に注意が必要である。
●電流の生体作用(商用周波数・体表)=最小感知電流約1 mA・離脱限界電流約10 mA・心室細動誘発約100 mA。
●ミクロショック=心臓直接で心室細動約100 μA。
●周波数依存性=低周波(10 Hz〜数百Hz)で最も危険、高周波で生体作用は低下。
選択肢ごとの解説
- ① 10 μAは商用周波数でも体表からは感知に至らない微小電流である。
- ② 100 μA程度は心臓に直接電流が流れるミクロショックで問題となる値で、体表の最小感知電流ではない。
- ③ 1 mAは商用周波数での最小感知電流で、100 kHzでは過小である。
- ④ 正しい。100 kHzの高周波では生体作用が低下し、最小感知電流は約100 mAとなる。
- ⑤ 1 Aは離脱不能電流をはるかに超える大電流で、最小感知電流ではない。
第66回 午後97(医用工学概論)
ME機器のCF形装着部を表す医療機器関連図記号はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k66pB097.27ed4c180a.jpg

正答: ④
ポイント
医用電気機器の装着部は患者への適用部位と漏れ電流許容値によりB形・BF形・CF形に分類される。CF形は心臓への直接適用が可能で、最も漏れ電流許容値が厳しいフローティング(F形)装着部である。CF形は四角枠の中に心臓(ハート)型を描いた図記号で表され、BF形は四角枠の中に人型、B形は枠なしの人型で示される。
●装着部の分類=B形(体表・非絶縁)・BF形(体表・絶縁/フローティング)・CF形(心臓直接・絶縁)。
●図記号=B形/BF形(人型)・CF形(心臓型)・F形(枠で囲む)。
●その他の安全記号=保護接地(円に接地記号)・クラスⅡ機器(二重四角)・一般警告(三角に感嘆符)。
選択肢ごとの解説
- ① 円の中に接地記号は保護接地を表す記号で、CF形装着部ではない。
- ② 三角形の中に感嘆符は注意喚起(取扱説明書参照)の一般警告記号である。
- ③ 四角形の中に人型はBF形装着部を表す記号である。
- ④ 正しい。四角形の中にハート(心臓)型はCF形装着部を表す記号である。
- ⑤ 二重の四角形はクラスⅡ機器(二重絶縁)を表す記号で、CF形装着部ではない。
📋 まとめの表を見る:装着部の分類(B形・BF形・CF形)と図記号
第66回 午後98(医用工学概論)
コンピュータの入出力インターフェースの規格はどれか。
- ①OS
- ②USB
- ③HTML
- ④TCP/IP
- ⑤IPアドレス
正答: ②USB
ポイント
USB〈Universal Serial Bus〉はコンピュータと周辺機器を接続する入出力インターフェースの規格である。OSはコンピュータを制御する基本ソフトウェア、HTMLはWeb文書を記述するマークアップ言語、TCP/IPはネットワーク通信のプロトコル、IPアドレスはネットワーク上の機器を識別する番号であり、いずれも入出力インターフェース規格ではない。
●入出力インターフェース規格=USB・RS-232C・IEEE1394・HDMI・Bluetooth。
●通信プロトコル=TCP/IP・HTTP・FTP。
●ソフトウェア/言語=OS(基本ソフト)・HTML・XML(記述言語)。
●識別=IPアドレス・MACアドレス。
選択肢ごとの解説
- ① OSはコンピュータを制御する基本ソフトウェアで、入出力インターフェース規格ではない。
- ② 正しい。USBは周辺機器を接続する入出力インターフェースの規格である。
- ③ HTMLはWeb文書を記述するマークアップ言語で、インターフェース規格ではない。
- ④ TCP/IPはネットワーク通信のプロトコルで、入出力インターフェース規格ではない。
- ⑤ IPアドレスはネットワーク上の機器を識別する番号で、インターフェース規格ではない。
第66回 午後99(医用工学概論)
医療情報システムで病名コードとして用いられるのはどれか。
- ①HL7
- ②ICD10
- ③DICOM
- ④JLAC10
- ⑤MEDLINE
正答: ②ICD10
ポイント
ICD-10は世界保健機関〈WHO〉が定める疾病及び関連保健問題の国際統計分類で、病名(傷病名)コードとして医療情報システムや死因統計に用いられる。HL7は医療情報交換のための通信規格、DICOMは医用画像の保存・通信規格、JLAC10は臨床検査項目分類コード、MEDLINEは医学文献データベースであり、いずれも病名コードではない。
●病名・分類コード=ICD-10/ICD-11(疾病)・ICD-O(腫瘍形態)。
●検査コード=JLAC10(臨床検査項目)。
●情報交換規格=HL7(医療情報)・DICOM(医用画像)。
●文献データベース=MEDLINE・医中誌。
選択肢ごとの解説
- ① HL7は医療情報の交換規格で、病名コードそのものではない。
- ② 正しい。ICD10は疾病の国際統計分類で、病名コードとして用いられる。
- ③ DICOMは医用画像の保存・通信規格で、病名コードではない。
- ④ JLAC10は臨床検査項目の分類コードで、病名コードではない。
- ⑤ MEDLINEは医学文献のデータベースで、病名コードではない。
第66回 午後100(医用工学概論)
回転半径20 cmの遠心器を3,000 rpmで運用するとき、およその比較遠心力はどれか。ただし重力加速度を9.8 m/s2とする。
- ①100
- ②500
- ③1,000
- ④2,000
- ⑤4,000
正答: ④2,000
ポイント
比較遠心力〈RCF〉は重力加速度の倍数(×g)で表され、RCF=1.118×10⁻⁵×r(cm)×N²(rpm)で計算する。回転半径20 cm、回転数3,000 rpmを代入すると、1.118×10⁻⁵×20×3,000²=1.118×10⁻⁵×20×9,000,000=約2,012となり、最も近い値は約2,000である。回転半径と回転数の二乗に比例して大きくなる。
●比較遠心力〈RCF〉=1.118×10⁻⁵×r(cm)×N²(rpm)、単位は×g。
●回転数〈rpm〉=1分間あたりの回転数。
●遠心分離の用途=血清・血漿分離・尿沈渣・血球比容・密度勾配遠心。
選択肢ごとの解説
- ① 100はRCFの計算値約2,000より大幅に小さく、誤りである。
- ② 500はRCFの計算値約2,000より小さく、誤りである。
- ③ 1,000はRCFの計算値約2,000の半分で、誤りである。
- ④ 正しい。RCF=1.118×10⁻⁵×20×3,000²=約2,000である。
- ⑤ 4,000はRCFの計算値約2,000の倍で、誤りである。