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第68回(2022) 臨床検査技師国家試験 午後51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版
第68回 午後51(病理組織細胞学)
癌抑制遺伝子はどれか。
①BRAF ②BRCA1 ③ERBB2(HER2) ④KIT ⑤KRAS
正答: ②BRCA1
ポイント 癌抑制遺伝子は、その機能喪失(不活化)が発癌に寄与する遺伝子で、原則として両アレルの不活化(Knudsonの2ヒット説)を要する。これに対し癌遺伝子は活性化型変異や遺伝子増幅による機能獲得型で、片アレルの異常でも発癌に働く。BRCA1はDNA二本鎖切断の相同組換え修復に関わる癌抑制遺伝子で、その機能喪失により遺伝性乳癌卵巣癌症候群を生じる。●代表的な癌抑制遺伝子=TP53(Li-Fraumeni症候群)・RB1(網膜芽細胞腫)・APC(家族性大腸腺腫症)・BRCA1/BRCA2(遺伝性乳癌卵巣癌)・VHL・PTEN・NF1。●代表的な癌遺伝子=RAS(KRAS/NRAS)・RAF(BRAF)・MYC・ERBB2(HER2)・KIT・EGFR・ABL1。●機能の違い=癌抑制遺伝子は機能喪失型・劣性(両アレル必要)、癌遺伝子は機能獲得型・優性(片アレルで作用)。
選択肢ごとの解説
① BRAFはRAF/MAPK経路のセリン・スレオニンキナーゼをコードする癌遺伝子で、V600E変異により恒常的に活性化し悪性黒色腫などに関与する。 ② 正しい。BRCA1はDNA二本鎖切断の相同組換え修復に関わる癌抑制遺伝子で、その機能喪失により遺伝性乳癌卵巣癌のリスクが上昇する。 ③ ERBB2(HER2)は上皮成長因子受容体型の癌遺伝子で、遺伝子増幅・過剰発現により乳癌などで増殖シグナルを亢進させる。 ④ KITは受容体型チロシンキナーゼをコードする癌遺伝子で、活性化変異は消化管間質腫瘍(GIST)に関与する。 ⑤ KRASはRASファミリーの低分子量Gタンパクをコードする癌遺伝子で、活性化変異により増殖シグナルが持続する。
第68回 午後52(病理組織細胞学)
乳腺で癌が発生しやすい部位はどれか。
正答: ③外側上部
ポイント 乳腺は乳頭を中心に放射状に乳腺葉が分布し、外側上部(上外側四分円)に乳腺組織の量が最も多い。腋窩へ向かう乳腺尾部(Spence尾)もこの領域に存在するため、組織量を反映して乳癌の好発部位は外側上部が最多となる。触診・マンモグラフィでもこの領域を重点的に評価する。●乳癌の好発部位(頻度順の目安)=外側上部>内側上部>乳輪・乳頭部>外側下部>内側下部。●乳腺の四分円区分=乳頭を中心に上下・内外で4区画に分け、加えて乳輪部を区別する。●関連解剖=乳腺尾部(Spence尾)は腋窩方向に伸びる乳腺組織で、腋窩リンパ節転移とも関連が深い。
選択肢ごとの解説
① 内側上部は乳腺組織量が中等度で、外側上部に比べ乳癌の発生頻度は低い。 ② 内側下部は乳腺組織量が比較的少なく、乳癌の発生頻度は最も低い領域である。 ③ 正しい。外側上部(上外側四分円)は乳腺組織量が最も多く腋窩へ向かう乳腺尾部も含むため、乳癌が最も発生しやすい部位である。 ④ 外側下部は組織量が外側上部より少なく、発生頻度はそれほど高くない。 ⑤ 乳頭部は乳管が集中するが乳腺実質量は少なく、最も発生しやすい部位ではない。
第68回 午後53(病理組織細胞学)
電子顕微鏡標本作製時の工程と用いる試薬との組合せで正しいのはどれか。
①前固定 — オスミウム酸液 ②後固定 — グルタルアルデヒド液 ③脱水 — エタノール ④置換 — キシレン ⑤包埋 — カーボワックス
正答: ③脱水 — エタノール
ポイント 電子顕微鏡標本作製では、グルタルアルデヒドによる前固定でタンパク質を架橋固定し、オスミウム酸(四酸化オスミウム)による後固定で脂質を固定して電子密度を高める。次いでエタノールやアセトンで段階的に脱水し、プロピレンオキシドで置換した後、エポキシ樹脂で包埋する。各工程の試薬の役割の対応が正誤の判定点となる。●固定=前固定はグルタルアルデヒド、後固定はオスミウム酸。●脱水=エタノールまたはアセトンを低濃度から段階的に用いる。●置換(中間剤)=プロピレンオキシド(光顕パラフィン法ではキシレン)。●包埋=エポキシ樹脂(電顕)、パラフィン(光顕)、カーボワックス(水溶性包埋剤)。
選択肢ごとの解説
① オスミウム酸液は後固定に用いる試薬で、前固定にはグルタルアルデヒドを用いるため組合せが逆である。 ② グルタルアルデヒド液は前固定に用いる試薬で、後固定にはオスミウム酸を用いるため組合せが逆である。 ③ 正しい。脱水にはエタノール(またはアセトン)を低濃度から段階的に用い、組織内の水分を除去する。 ④ 置換にはプロピレンオキシドを用いる。キシレンは光学顕微鏡用パラフィン包埋の置換剤であり電顕には適さない。 ⑤ 包埋にはエポキシ樹脂を用いる。カーボワックスは水溶性包埋剤で電顕の超薄切片作製には適さない。
📋 まとめの表を見る:透過型電子顕微鏡標本作製の工程と試薬・器具
光学顕微鏡標本(パラフィン法)は固定=ホルマリン、脱水=エタノール、置換=キシレン、包埋=パラフィンであり、電顕標本の試薬とは異なる。
第68回 午後54(病理組織細胞学)
外胚葉から発生するのはどれか。2つ選べ。
正答: ④中枢神経・⑤副腎髄質
ポイント 三胚葉のうち外胚葉からは表皮・神経系(中枢神経・末梢神経)・感覚器・副腎髄質などが発生する。中胚葉からは骨格・筋・心血管・脾臓・副腎皮質・泌尿生殖器が、内胚葉からは消化管上皮・気管・肺・肝・膵が発生する。副腎は皮質(中胚葉由来)と髄質(神経堤=外胚葉由来)で発生起源が異なる点に注意する。●外胚葉由来=表皮・毛・爪・中枢神経・末梢神経・網膜・内耳・副腎髄質。●中胚葉由来=骨・軟骨・骨格筋・心血管・血球・脾臓・腎・性腺・副腎皮質。●内胚葉由来=消化管上皮・肝・膵・気管・肺・甲状腺・膀胱上皮。
選択肢ごとの解説
① 気管は内胚葉由来の前腸(喉頭気管溝)から発生する呼吸器で、外胚葉由来ではない。 ② 結腸は内胚葉由来の腸管上皮から発生し、外胚葉由来ではない。 ③ 脾臓は中胚葉(背側胃間膜)由来のリンパ系臓器で、外胚葉由来ではない。 ④ 正しい。中枢神経は外胚葉が陥入してできる神経管に由来し、外胚葉から発生する。 ⑤ 正しい。副腎髄質は外胚葉由来の神経堤細胞から発生し、カテコールアミンを産生する。
第68回 午後55(病理組織細胞学)
細胞診検体のGiemsa染色で正しいのはどれか。
①核が異染性を示す。 ②細胞質の角化が明瞭となる。 ③細胞質内顆粒が観察しやすい。 ④乾燥により細胞が小さく見える。 ⑤クロマチン構造が観察しやすい。
正答: ③細胞質内顆粒が観察しやすい。
ポイント Giemsa(ギムザ)染色は風乾した塗抹標本をメタノール固定後に行うロマノフスキー系染色で、細胞質や顆粒の染色性に優れ、細胞質内顆粒や原虫・寄生体の観察に適する。乾燥固定のため細胞は大きく広がって見える。一方Papanicolaou染色は湿固定で核クロマチン構造や扁平上皮の角化・成熟度の評価に優れる。●Giemsa染色の利点=細胞質・顆粒の染め分け、リンパ造血系細胞・原虫の観察、乾燥固定で細胞が大きく広がる。●Papanicolaou染色の利点=核クロマチン構造の明瞭化、扁平上皮の角化(オレンジG)・成熟度評価、湿固定。●異染性(メタクロマジー)=トルイジンブルー等で肥満細胞顆粒・軟骨基質などが原色と異なる色に染まる現象。
選択肢ごとの解説
① Giemsa染色で核が青紫色に染まることは、ここでいう異染性を意味しない。異染性の代表例は、トルイジンブルーで肥満細胞顆粒や軟骨基質が青色とは異なる赤紫色に染まる現象であり、通常の核は青色に染まる。 ② 細胞質の角化が明瞭となるのはPapanicolaou染色のオレンジG染色性によるもので、Giemsa染色では評価しにくい。 ③ 正しい。Giemsa染色は細胞質や顆粒の染め分けに優れ、細胞質内顆粒が観察しやすい。 ④ 乾燥固定では細胞が広がるため大きく見え、小さく見えるとするのは誤りである。 ⑤ クロマチン構造の微細な観察にはPapanicolaou染色(湿固定)が優れ、Giemsaは核内構造の評価には不向きである。
第68回 午後56(病理組織細胞学)
パラフィン包埋に用いられる硬パラフィンの融点に最も近いのはどれか。
①38 ℃ ②48 ℃ ③58 ℃ ④68 ℃ ⑤78 ℃
正答: ③58 ℃
ポイント パラフィン包埋に用いる硬パラフィンの融点はおよそ56〜58℃で、組織の硬さや切片厚に応じて軟パラフィンと混合し融点を調整する。融点が高すぎると組織が過熱されて収縮・硬化し、低すぎると切片が薄切しにくくなる。一般的な薄切では58℃前後のパラフィンが用いられる。●パラフィン包埋の流れ=固定→脱水(エタノール)→透徹(キシレン)→浸透・包埋(パラフィン)→薄切。●融点の目安=軟パラフィン約45〜50℃、硬パラフィン約56〜58℃。●包埋剤の種類=パラフィン(光顕一般)、カーボワックス(水溶性)、セロイジン、エポキシ樹脂(電顕)。
選択肢ごとの解説
① 38℃は軟パラフィンに近い低融点で、薄切に必要な硬さが得られず適さない。 ② 48℃は軟パラフィンの融点域で、硬パラフィンの融点としては低い。 ③ 正しい。硬パラフィンの融点は56〜58℃前後で、58℃が最も近い。 ④ 68℃は硬パラフィンの融点より高く、組織が過熱され収縮しやすい。 ⑤ 78℃はさらに高融点で、組織損傷を招くため適さない。
第68回 午後57(病理組織細胞学)
病理解剖時に摘出された臓器の肉眼写真を別に示す。臓器はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB057.857c515f3d.jpg
正答: ④脾臓
ポイント 脾臓は左上腹部に位置するそら豆状の暗赤色臓器で、被膜に包まれ割面では赤脾髄と白脾髄が観察される。老化赤血球の破壊やリンパ球の産生・免疫応答を担う。肉眼像では暗赤褐色で表面平滑な実質臓器として認識され、形態・色調から他の腹腔臓器と鑑別される。●脾臓の機能=老化赤血球・血小板の処理、抗体産生・免疫応答(白脾髄)、胎生期の造血。●割面所見=赤脾髄(血液で満たされ暗赤色)と白脾髄(リンパ濾胞=白色点状)。●臓器の肉眼鑑別=肝臓(赤褐色・大型)、膵臓(淡黄白色・分葉状)、腎臓(そら豆状・割面で皮質髄質)、心臓(円錐状・心筋)。
選択肢ごとの解説
① 心臓は円錐状で心筋からなり冠動脈が走行する胸腔内臓器で、本図の所見とは異なる。 ② 膵臓は後腹膜に横走する細長い淡黄白色の腺組織で、本図の暗赤色実質臓器とは異なる。 ③ 肝臓は右上腹部の大型で赤褐色の臓器だが、本図の臓器とは大きさ・形態が異なる。 ④ 正しい。暗赤色で被膜に包まれたそら豆状の実質臓器という肉眼所見から脾臓と判断される。 ⑤ 腎臓は左右一対のそら豆状臓器だが、割面の皮質髄質構造を欠き本図からは脾臓が妥当である。
第68回 午後58(病理組織細胞学)
ミトコンドリアが存在しないのはどれか。
①好中球 ②赤血球 ③形質細胞 ④リンパ球 ⑤マクロファージ
正答: ②赤血球
ポイント 成熟赤血球は分化の過程で核とともにミトコンドリアなどの細胞内小器官を失い、解糖系(嫌気的代謝)でATPを産生する。そのため酸化的リン酸化を行わず、自らは酸素を消費せず酸素運搬に専念できる。網赤血球には残存RNAやミトコンドリアが少量残るが、成熟赤血球には存在しない。●赤血球の代謝=Embden-Meyerhof経路(解糖系)でATP産生、ペントースリン酸回路でNADPH産生(酸化的障害防御)。●赤血球が欠くもの=核・ミトコンドリア・小胞体・リボソーム。●ミトコンドリアをもつ血球=好中球・リンパ球・形質細胞・単球・マクロファージなど有核細胞すべて。
選択肢ごとの解説
① 好中球は核と細胞小器官を有し、ミトコンドリアも存在する。 ② 正しい。成熟赤血球は脱核とともにミトコンドリアを失い、解糖系のみでATPを産生する。 ③ 形質細胞は抗体産生のため粗面小胞体やミトコンドリアが豊富である。 ④ リンパ球は核と細胞小器官を有し、ミトコンドリアも存在する。 ⑤ マクロファージは貪食・代謝が活発で、ミトコンドリアを多数有する。
第68回 午後59(臨床血液学)
細胞形態の特徴と疾患の組合せで誤っているのはどれか。
①異型リンパ球 — 伝染性単核球症 ②環状鉄芽球 — サラセミア ③巨大血小板 — May-Hegglin異常症 ④中毒性顆粒 — 重症感染症 ⑤微小巨核球 — 骨髄異形成症候群
正答: ②環状鉄芽球 — サラセミア
ポイント 環状鉄芽球は赤芽球のミトコンドリア内に鉄が沈着し核周囲を取り囲んだもので、鉄芽球性貧血や骨髄異形成症候群で認められる。サラセミアはグロビン鎖合成障害による小球性低色素性貧血で、標的赤血球の増加が特徴であり、環状鉄芽球とは結びつかない。各形態異常と疾患の正しい対応を問う問題である。●環状鉄芽球=鉄芽球性貧血・骨髄異形成症候群(環状鉄芽球を伴うMDS)。●サラセミアの所見=標的赤血球・小球性低色素・好塩基性斑点。●異型リンパ球=伝染性単核球症(EBウイルス)・サイトメガロウイルス感染。●巨大血小板=May-Hegglin異常症・Bernard-Soulier症候群。●中毒性顆粒・Döhle小体=重症細菌感染症。●微小巨核球=骨髄異形成症候群。
選択肢ごとの解説
① 異型リンパ球は伝染性単核球症(EBウイルス感染)で増加する反応性リンパ球で、正しい組合せである。 ② 誤り。環状鉄芽球は鉄芽球性貧血や骨髄異形成症候群で認められ、サラセミアの特徴は標的赤血球であり組合せが誤っている。 ③ 巨大血小板はMay-Hegglin異常症(MYH9異常症)の特徴で、好中球封入体(Döhle様小体)を伴い正しい組合せである。 ④ 中毒性顆粒は重症感染症などで好中球に出現する粗大なアズール顆粒で、正しい組合せである。 ⑤ 微小巨核球は骨髄異形成症候群でみられる異形成所見で、正しい組合せである。
📋 まとめの表を見る:赤血球の形態異常と関連疾患
破砕赤血球はTTP・HUS・DICなど微小血管症性溶血性貧血でみられる。
第68回 午後60(臨床血液学)
血栓性血小板減少性紫斑病で認められるのはどれか。2つ選べ。
①網赤血球減少 ②ハプトグロビン高値 ③ADAMTS13活性低下 ④超高分子量VWFマルチマー出現 ⑤ループスアンチコアグラント陽性
正答: ③ADAMTS13活性低下・④超高分子量VWFマルチマー出現
ポイント 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、von Willebrand因子(VWF)多量体を切断する酵素ADAMTS13の活性低下により超高分子量VWFマルチマーが残存し、微小血管内で血小板血栓を形成する病態である。溶血性貧血・血小板減少・腎障害・発熱・動揺性精神神経症状の五徴を呈し、溶血を反映して網赤血球は増加しハプトグロビンは低下する。●TTPの本態=ADAMTS13活性著減(先天性または自己抗体性)→超高分子量VWFマルチマー残存→血小板血栓。●検査所見=破砕赤血球出現・LDH上昇・間接ビリルビン上昇・網赤血球増加・ハプトグロビン低下・血小板減少。●鑑別=溶血性尿毒症症候群(HUS、志賀毒素・腎障害優位)、播種性血管内凝固(DIC、凝固系の消費)、抗リン脂質抗体症候群(ループスアンチコアグラント陽性)。
選択肢ごとの解説
① TTPは血管内溶血を伴うため網赤血球は減少ではなく増加する。 ② 血管内溶血により遊離ヘモグロビンと結合するハプトグロビンは消費され低値となるため、高値は誤りである。 ③ 正しい。ADAMTS13活性低下がTTPの本態で、VWF多量体の切断障害をきたす。 ④ 正しい。ADAMTS13活性低下により切断されない超高分子量VWFマルチマーが出現し、血小板血栓を形成する。 ⑤ ループスアンチコアグラント陽性は抗リン脂質抗体症候群でみられるもので、TTPに特徴的ではない。
📋 まとめの表を見る:血栓性血小板減少性紫斑病〈TTP〉の病態と検査所見
第68回 午後61(臨床血液学)
鉄欠乏性貧血および慢性炎症に伴う貧血で共通するのはどれか。2つ選べ。
①小球性貧血である。 ②血清鉄が低値である。 ③鉄の利用障害を認める。 ④血清フェリチンが低値である。 ⑤総鉄結合能〈TIBC〉が高値である。
正答: ①小球性貧血である。・②血清鉄が低値である。
ポイント 鉄欠乏性貧血は体内鉄の絶対的欠乏により、慢性炎症に伴う貧血(炎症性貧血)はヘプシジン上昇による鉄の利用障害により、いずれも小球性〜正球性で血清鉄が低下する。両者の鑑別には血清フェリチンとTIBCが有用で、鉄欠乏ではフェリチン低値・総鉄結合能(TIBC)高値、炎症性貧血ではフェリチン正常〜高値・TIBC低下となる。●共通点=小球性傾向・血清鉄低値。●相違点(鉄欠乏性貧血)=フェリチン低値・TIBC高値・トランスフェリン飽和度低下・貯蔵鉄枯渇。●相違点(炎症性貧血)=フェリチン正常〜高値・TIBC低下・ヘプシジン上昇による鉄の隔離。●小球性貧血の鑑別=鉄欠乏性貧血・サラセミア・鉄芽球性貧血・慢性炎症に伴う貧血。
選択肢ごとの解説
① 正しい。両者とも血清鉄低下を反映し小球性(ないし正球性)貧血を呈する点が共通する。 ② 正しい。鉄欠乏では鉄不足、炎症性貧血ではヘプシジンによる鉄の隔離により、いずれも血清鉄が低値となる。 ③ 鉄の利用障害は炎症性貧血の特徴で、鉄欠乏性貧血は鉄の絶対量不足であり共通しない。 ④ 血清フェリチン低値は鉄欠乏性貧血に特徴的で、炎症性貧血ではフェリチンは正常〜高値となり共通しない。 ⑤ 総鉄結合能(TIBC)高値は鉄欠乏性貧血の特徴で、炎症性貧血ではTIBCは低下するため共通しない。
第68回 午後62(臨床血液学)
細胞浮遊液の細胞数を算定した。Bürker-Türk計算盤を別に示す。図中に赤字で示す数字は、赤点線で囲った各大区画にある細胞数である。検体は、希釈せず使用し、大区画の容積は0.1 μLとする。細胞浮遊液の細胞数〈/μL〉はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB062.ef937f8ca8.jpg
正答: ③90
ポイント Bürker-Türk計算盤では大区画1個の容積が0.1μLである。希釈なしで計数する場合、計数した細胞数を容積で割って1μL当たりの細胞数を求める。大区画1個あたりの細胞数が9個であれば、9÷0.1=90/μLとなる。算定では計数した区画数と容積、希釈倍率を正しく用いることが要点である。●計算式=細胞数/μL=計数細胞数÷(区画容積×計数区画数)×希釈倍率。●Bürker-Türk計算盤=深さ0.1mm、大区画1mm×1mm=容積0.1μL。●類似計算盤=Thoma(赤血球・白血球算定)、Fuchs-Rosenthal(髄液細胞算定、容積3.2μL)。
選択肢ごとの解説
① 9は大区画1個あたりの細胞数そのもので、容積補正を行っていないため誤りである。 ② 36は計数値の扱いを誤った値で、正しい換算とならない。 ③ 正しい。大区画あたり9個を容積0.1μLで割ると90/μLとなる。 ④ 360は希釈倍率などを誤って乗じた値で、本問の条件には合致しない。 ⑤ 900は容積補正を過大に行った値で、正しい換算結果ではない。
第68回 午後63(臨床血液学)
肝臓で合成されないのはどれか。
①Dダイマー ②フィブリノゲン ③プラスミノゲン ④アンチトロンビン ⑤プラスミンインヒビター
正答: ①Dダイマー
ポイント 凝固・線溶系因子の多くは肝臓で合成され、フィブリノゲン、プラスミノゲン、アンチトロンビン、プラスミンインヒビター(α2-プラスミンインヒビター)などが含まれる。Dダイマーは合成される因子ではなく、安定化フィブリン(第ⅩⅢ因子で架橋されたフィブリン)がプラスミンにより分解されて生じる分解産物で、二次線溶亢進を示すマーカーである。●肝臓で合成される凝固・線溶系因子=フィブリノゲン・プロトロンビン・第Ⅴ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ・Ⅺ因子・アンチトロンビン・プロテインC/S・プラスミノゲン・α2-プラスミンインヒビター。●ビタミンK依存性因子=第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子・プロテインC・プロテインS。●Dダイマー=安定化フィブリンの分解産物で、DICや深部静脈血栓症・肺塞栓症で上昇。
選択肢ごとの解説
① 正しい。Dダイマーは肝臓で合成される因子ではなく、安定化フィブリンの分解産物として生じる。 ② フィブリノゲンは肝臓で合成される凝固因子(第Ⅰ因子)である。 ③ プラスミノゲンは肝臓で合成され、プラスミンの前駆体である。 ④ アンチトロンビンは肝臓で合成される生理的凝固阻害因子である。 ⑤ プラスミンインヒビター(α2-プラスミンインヒビター)は肝臓で合成される線溶阻害因子である。
第68回 午後64(臨床血液学)
末梢血のMay-Giemsa染色標本を別に示す。認められるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB064.cd9f8ef32b.jpg
①鎌状赤血球 ②菲薄赤血球 ③標的赤血球 ④有核赤血球 ⑤涙滴赤血球
正答: ⑤涙滴赤血球
ポイント 涙滴赤血球(涙滴状赤血球)は一端が引き伸ばされた涙のしずく形を示す赤血球で、骨髄が線維化や腫瘍浸潤で置換される原発性骨髄線維症や髄外造血で増加する。赤血球が線維化した骨髄や脾洞を通過する際に変形して生じると考えられ、白赤芽球症(幼若顆粒球・有核赤血球の出現)を伴うことが多い。●涙滴赤血球=原発性骨髄線維症・骨髄癆(転移性骨髄浸潤)・サラセミア。●標的赤血球=サラセミア・肝疾患・閉塞性黄疸・脾摘後。●鎌状赤血球=鎌状赤血球症(HbS)。●菲薄赤血球=鉄欠乏性貧血。●有核赤血球=髄外造血・溶血性貧血・白血病。
選択肢ごとの解説
① 鎌状赤血球は鎌状(三日月)形で鎌状赤血球症にみられ、本図の所見とは異なる。 ② 菲薄赤血球は中心淡明部が広い薄い赤血球で、鉄欠乏などでみられるが本図の所見とは異なる。 ③ 標的赤血球は中心に濃染部をもつ的状の赤血球で、サラセミアや肝疾患でみられるが本図とは異なる。 ④ 有核赤血球は核を有する未熟赤血球で、髄外造血などでみられるが本図の所見とは異なる。 ⑤ 正しい。一端が伸びた涙のしずく形を示す涙滴赤血球で、骨髄線維症などでみられる。
第68回 午後65(臨床血液学)
リン脂質依存性凝固反応に関与するのはどれか。
①第Ⅷ因子 ②第Ⅺ因子 ③第Ⅻ因子 ④フィブリノゲン ⑤プレカリクレイン
正答: ①第Ⅷ因子
ポイント 凝固反応の活性化複合体(テナーゼ複合体・プロトロンビナーゼ複合体)は活性化血小板などのリン脂質膜上で形成され、補因子である第Ⅷ因子・第Ⅴ因子がこれを促進する。第Ⅷ因子は活性化第Ⅸ因子とともにリン脂質依存性のテナーゼ複合体を構成し第Ⅹ因子を活性化する。一方、接触相因子(第Ⅺ・Ⅻ因子、プレカリクレイン、高分子キニノゲン)はリン脂質に依存せず作用する。●リン脂質依存性の複合体=テナーゼ複合体(第Ⅸa・Ⅷa・Ca²⁺)、プロトロンビナーゼ複合体(第Ⅹa・Ⅴa・Ca²⁺)。●補因子=第Ⅷ因子・第Ⅴ因子(カルシウムとリン脂質を介して結合)。●接触相(リン脂質非依存)=第Ⅻ・Ⅺ因子・プレカリクレイン・高分子キニノゲン。
選択肢ごとの解説
① 正しい。第Ⅷ因子は補因子としてリン脂質膜上のテナーゼ複合体に関与する、リン脂質依存性凝固反応の因子である。 ② 第Ⅺ因子は内因系の接触相に関与する因子で、リン脂質膜上の複合体形成には直接関与しない。 ③ 第Ⅻ因子は接触相の起点となる因子で、リン脂質依存性反応には関与しない。 ④ フィブリノゲンは最終的にフィブリンとなる基質で、リン脂質膜上の複合体には関与しない。 ⑤ プレカリクレインは接触相因子で、リン脂質依存性凝固反応には関与しない。
第68回 午後66(臨床血液学)
骨髄穿刺液のMay-Giemsa染色標本を別に示す。矢印の細胞が腫瘍化した疾患はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB066.2c2c81d00b.jpg
①赤白血病 ②多発性骨髄腫 ③Burkittリンパ腫 ④急性骨髄性白血病 ⑤急性リンパ性白血病
正答: ②多発性骨髄腫
ポイント 多発性骨髄腫は形質細胞が腫瘍化する疾患で、骨髄塗抹では偏在核・核周明庭(ゴルジ野)・好塩基性細胞質をもつ形質細胞や異型形質細胞の増加がみられる。単クローン性免疫グロブリン(Mタンパク)産生、溶骨性病変、高カルシウム血症、腎障害、貧血を呈する。矢印で示された形質細胞様細胞の腫瘍化が手がかりとなる。●多発性骨髄腫の所見=骨髄形質細胞増加・Mタンパク(血清/尿)・溶骨性病変・高カルシウム血症・腎障害・貧血(CRAB)。●形質細胞の形態=偏在核・車軸状クロマチン・核周明庭・好塩基性細胞質。●類縁疾患=MGUS(意義不明の単クローン性γグロブリン血症)・原発性マクログロブリン血症(Waldenström)・形質細胞性白血病。
選択肢ごとの解説
① 赤白血病は赤芽球系と骨髄芽球が腫瘍化する病態で、矢印の形質細胞像とは合致しない。 ② 正しい。偏在核と核周明庭をもつ形質細胞の腫瘍化であり、多発性骨髄腫が考えられる。 ③ Burkittリンパ腫は空胞をもつ好塩基性のリンパ芽球が増殖する疾患で、形質細胞像とは異なる。 ④ 急性骨髄性白血病は骨髄芽球の増殖で、Auer小体などを伴うことがあり形質細胞像とは異なる。 ⑤ 急性リンパ性白血病はリンパ芽球の増殖で、形質細胞の腫瘍化とは異なる。
📋 まとめの表を見る:多発性骨髄腫の特徴的所見
第68回 午後67(臨床血液学)
骨髄細胞の染色体核型を別に示す。矢印の染色体異常に関与するのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB067.6d838c75be.jpg
①BCR-ABL1 ②IGH/BCL2 ③IGH/BCL6 ④IGH/MYC ⑤PML-RARA
正答: ⑤PML-RARA
ポイント 急性前骨髄球性白血病(APL)は15番と17番染色体の相互転座t(15;17)によりPML-RARA融合遺伝子が形成され、前骨髄球の分化が停止する。ファゴット細胞や多数のAuer小体を伴い、播種性血管内凝固(DIC)を高率に合併する。全トランス型レチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法が奏効する点が特徴である。●代表的な融合遺伝子=PML-RARA/t(15;17)=APL、BCR-ABL1/t(9;22)=慢性骨髄性白血病・一部の急性白血病、RUNX1-RUNX1T1/t(8;21)・CBFB-MYH11/inv(16)=AML。●リンパ系の転座=IGH/BCL2/t(14;18)=濾胞性リンパ腫、IGH/MYC/t(8;14)=Burkittリンパ腫、BCL6転座/3q27=びまん性大細胞型B細胞リンパ腫。
選択肢ごとの解説
① BCR-ABL1はt(9;22)(Philadelphia染色体)による融合遺伝子で、慢性骨髄性白血病などに関与する。 ② IGH/BCL2はt(14;18)による融合で、濾胞性リンパ腫に関与する。 ③ IGH/BCL6は3q27のBCL6転座に関わり、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などに関与する。 ④ IGH/MYCはt(8;14)による融合で、Burkittリンパ腫に関与する。 ⑤ 正しい。t(15;17)によるPML-RARA融合遺伝子で、急性前骨髄球性白血病に関与する。
📋 まとめの表を見る:白血病の染色体異常と融合遺伝子
予後との関連は疾患・遺伝子異常・治療によって異なる(急性骨髄性白血病ではt(8;21)・inv(16)・t(15;17)が予後良好群、t(9;11)のKMT2A::MLLT3は中間群。t(11;14)を伴うマントル細胞リンパ腫やPh陽性急性リンパ性白血病はむしろ予後不良とされる)。CMLではBCR-ABL1が診断・治療標的である。融合遺伝子の表記は「A-B」「A::B」のどちらの過去問表記にも対応する。
第68回 午後68(臨床微生物学)
髄液のGram染色標本を別に示す。分離菌はヒツジ血液寒天培地に発育し、グルコース及びマルトースを分解した。推定されるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB068.d4236bd665.jpg
①Haemophilus influenzae ②Moraxella catarrhalis ③Neisseria meningitidis ④Neisseria gonorrhoeae ⑤Pseudomonas aeruginosa
正答: ③Neisseria meningitidis
ポイント Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)はGram陰性双球菌で、髄液から検出されれば細菌性髄膜炎の起因菌となる。ヒツジ血液寒天培地に発育し、糖分解試験ではグルコースとマルトースを分解する点が淋菌(グルコースのみ分解)との鑑別点となる。Gram染色での腎臓形の双球菌像と糖分解パターンが推定の根拠である。●Neisseria属の糖分解=髄膜炎菌=グルコース+マルトース、淋菌=グルコースのみ、Moraxella catarrhalis=糖非分解。●細菌性髄膜炎の主な起因菌=新生児=B群連鎖球菌・大腸菌、乳幼児〜成人=肺炎球菌・髄膜炎菌・インフルエンザ菌。●髄膜炎菌の特徴=莢膜を有し飛沫感染、劇症型でWaterhouse-Friderichsen症候群を起こしうる。
選択肢ごとの解説
① Haemophilus influenzaeはGram陰性の多形性小球桿菌で双球菌像を示さず、発育にX・V因子を要するためヒツジ血液寒天培地には発育しない。 ② Moraxella catarrhalisはGram陰性双球菌だが糖を分解せず(アサッカロリティック)、本問の所見と異なる。 ③ 正しい。Gram陰性双球菌でグルコースとマルトースを分解する所見から髄膜炎菌が推定される。 ④ Neisseria gonorrhoeae(淋菌)はグルコースのみ分解しマルトースは分解しないため、本問の所見と異なる。 ⑤ Pseudomonas aeruginosaはGram陰性桿菌でブドウ糖非発酵菌であり、双球菌像とは合致しない。
📋 まとめの表を見る:Neisseria属・Moraxella属の糖分解パターンによる鑑別
Haemophilus influenzaeは双球菌ではなく多形性の小球桿菌で、発育にX・V因子を要しヒツジ血液寒天培地に発育しない点で鑑別する。
第68回 午後69(臨床微生物学)
エンベロープを持つのはどれか。
①ノロウイルス ②ロタウイルス ③アデノウイルス ④ポリオウイルス ⑤インフルエンザウイルス
正答: ⑤インフルエンザウイルス
ポイント エンベロープはウイルスが宿主細胞膜由来の脂質二重膜をまとった外被で、これをもつウイルスはアルコールや界面活性剤などの脂溶性消毒薬に感受性が高い。インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科のエンベロープウイルスで、ヘマグルチニンとノイラミニダーゼをもつ。ノロ・ロタ・アデノ・ポリオウイルスはいずれもエンベロープをもたない。●エンベロープを持つ主なウイルス=インフルエンザ・ヘルペス・コロナ・風疹・麻疹・B型/C型肝炎・HIV。●エンベロープを持たないウイルス=ノロ・ロタ・アデノ・ポリオ・コクサッキー・A型/E型肝炎・パルボ・パピローマ。●消毒の要点=ノンエンベロープウイルスはアルコール抵抗性で、次亜塩素酸ナトリウムが有効。
選択肢ごとの解説
① ノロウイルスはカリシウイルス科のノンエンベロープウイルスで、消毒には次亜塩素酸ナトリウムが有効である。 ② ロタウイルスはレオウイルス科のノンエンベロープウイルスで、エンベロープをもたない。 ③ アデノウイルスは正二十面体カプシドをもつノンエンベロープウイルスである。 ④ ポリオウイルスはピコルナウイルス科のノンエンベロープウイルスである。 ⑤ 正しい。インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科のエンベロープウイルスである。
第68回 午後70(臨床微生物学)
微生物検査結果について緊急報告が必要でないのはどれか。
①静脈血からEscherichia coliが検出された場合 ②髄液からCryptococcus neoformansが検出された場合 ③皮膚からStaphylococcus epidermidisが検出された場合 ④喀痰からMycobacterium tuberculosisが検出された場合 ⑤胸水からカルバペネム耐性腸内細菌科細菌が検出された場合
正答: ③皮膚からStaphylococcus epidermidisが検出された場合
ポイント 緊急報告(パニック値報告)は、生命に関わる重篤な感染症や治療に直結する結果が得られた際に主治医へ速やかに伝えるものである。血液・髄液・胸水などの本来無菌的な検体からの起因菌検出、結核菌の検出、多剤耐性菌の検出は緊急報告の対象となる。皮膚など常在菌が存在しうる部位からの表皮ブドウ球菌は汚染や常在菌の可能性が高く、緊急性は低い。●緊急報告の対象=無菌検体(血液・髄液・胸水・関節液)からの細菌・真菌検出、抗酸菌(結核菌)検出、多剤耐性菌(CRE・MRSA・VRE・MDRP)検出。●無菌的検体=血液・髄液・胸水・腹水・関節液・心嚢液。●常在菌(解釈に注意)=皮膚=表皮ブドウ球菌・コリネバクテリウム、口腔=レンサ球菌・ナイセリア、腸管=腸内細菌。
選択肢ごとの解説
① 静脈血(無菌部位)からの大腸菌検出は菌血症を示唆し、緊急報告が必要である。 ② 髄液からのCryptococcus neoformans検出は真菌性髄膜炎を示唆し、緊急報告が必要である。 ③ 誤り。皮膚からのStaphylococcus epidermidisは常在菌・汚染の可能性が高く、緊急報告は必要でない。 ④ 喀痰からのMycobacterium tuberculosis検出は結核を示唆し、感染対策上も緊急報告が必要である。 ⑤ 胸水からのカルバペネム耐性腸内細菌科細菌検出は重大な耐性菌であり、緊急報告が必要である。
第68回 午後71(臨床微生物学)
喀痰のGram染色で染まりにくいのはどれか。
①Haemophilus influenzae ②Klebsiella pneumoniae ③Legionella pneumophila ④Moraxella catarrhalis ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ③Legionella pneumophila
ポイント Legionella pneumophilaはGram陰性桿菌だが細胞壁の構造上Gram染色では染まりにくく、喀痰の通常Gram染色では検出困難である。診断には特殊培地(B-CYEα培地)での培養、尿中抗原検査、ヒメネス(Gimenez)染色などが用いられる。レジオネラ肺炎では喀痰のGram染色所見と臨床像が乖離する点に注意する。●Gram染色で染まりにくい・観察困難な菌=Legionella・抗酸菌(Mycobacterium、Ziehl-Neelsen染色)・Mycoplasma(細胞壁を欠く)・Treponema・Chlamydia・Rickettsia。●レジオネラの検査=B-CYEα培地・尿中抗原(血清群1)・ヒメネス染色・遺伝子検査。●喀痰Gram染色で観察される肺炎起因菌=肺炎球菌・インフルエンザ菌・クレブシエラ・モラクセラ。
選択肢ごとの解説
① Haemophilus influenzaeはGram陰性小桿菌でGram染色で観察できる。 ② Klebsiella pneumoniaeは莢膜をもつGram陰性桿菌で、Gram染色で明瞭に観察できる。 ③ 正しい。Legionella pneumophilaはGram染色で染まりにくく、喀痰の通常染色では検出困難である。 ④ Moraxella catarrhalisはGram陰性双球菌でGram染色で観察できる。 ⑤ Streptococcus pneumoniaeはGram陽性双球菌でGram染色に明瞭に染まる。
📋 まとめの表を見る:特殊な発育因子・培養条件を必要とする細菌
第68回 午後72(臨床微生物学)
5%炭酸ガス培養下のヒツジ血液寒天培地に発育するのはどれか。2つ選べ。
①Fusobacterium nucleatum ②Haemophilus influenzae ③Legionella pneumophila ④Moraxella catarrhalis ⑤Streptococcus pneumoniae
正答: ④Moraxella catarrhalis・⑤Streptococcus pneumoniae
ポイント 5%炭酸ガス培養下のヒツジ血液寒天培地に発育するかは菌の発育要求性による。Streptococcus pneumoniaeは血液寒天培地に発育しα溶血を示す。Moraxella catarrhalisも普通の血液寒天培地に発育する。一方、Haemophilus influenzaeはX・V因子を要しチョコレート寒天が必要、Legionellaは専用培地が必要、Fusobacteriumは偏性嫌気性で好気・炭酸ガス下では発育しない。●血液寒天培地に発育=肺炎球菌(α溶血)・モラクセラ・黄色ブドウ球菌・レンサ球菌など多くの好気性・通性嫌気性菌。●発育に特殊培地・条件を要する菌=インフルエンザ菌(チョコレート寒天、X・V因子)・レジオネラ(B-CYEα)・百日咳菌(Bordet-Gengou)・偏性嫌気性菌(嫌気培養)。●炭酸ガス(CO₂)要求菌=Neisseria・一部のレンサ球菌・Campylobacter(微好気)。
選択肢ごとの解説
① Fusobacterium nucleatumは偏性嫌気性菌で、炭酸ガス培養下のヒツジ血液寒天培地では発育しない。 ② Haemophilus influenzaeはX・V因子を要し血液寒天培地には発育しにくく、チョコレート寒天培地を要する。 ③ Legionella pneumophilaはB-CYEα培地など専用培地を要し、血液寒天培地には発育しない。 ④ 正しい。Moraxella catarrhalisは普通の血液寒天培地に発育する。 ⑤ 正しい。Streptococcus pneumoniaeはヒツジ血液寒天培地に発育しα溶血を示す。
第68回 午後73(臨床微生物学)
血液培養の採血時に皮膚の消毒に用いるのはどれか。2つ選べ。
①過酢酸 ②フタラール ③ポビドンヨード ④次亜塩素酸ナトリウム ⑤グルコン酸クロルヘキシジンアルコール
正答: ③ポビドンヨード・⑤グルコン酸クロルヘキシジンアルコール
ポイント 血液培養の汚染(コンタミネーション)を防ぐには採血部位の皮膚消毒が重要で、ポビドンヨードやグルコン酸クロルヘキシジンアルコールが用いられる。クロルヘキシジンアルコールは速乾性で持続効果に優れ広く推奨される。過酢酸・フタラールは器具の高水準消毒薬、次亜塩素酸ナトリウムは環境・物品消毒に用いられ、皮膚消毒には適さない。●皮膚消毒に用いる薬剤=ポビドンヨード・クロルヘキシジンアルコール・消毒用エタノール・ヨードチンキ。●高水準消毒薬(器具用)=グルタラール・フタラール・過酢酸。●環境・物品の消毒=次亜塩素酸ナトリウム・第四級アンモニウム塩。●血液培養の要点=消毒の乾燥を待つ・好気/嫌気2本セット・適正採血量で検出感度を高める。
選択肢ごとの解説
① 過酢酸は内視鏡など器具の高水準消毒に用いられ、皮膚消毒には適さない。 ② フタラールは高水準消毒薬で器具消毒に用いられ、皮膚には使用しない。 ③ 正しい。ポビドンヨードは皮膚消毒に広く用いられ、血液培養の採血時に使用される。 ④ 次亜塩素酸ナトリウムは環境・器具の消毒に用いられ、皮膚消毒には適さない。 ⑤ 正しい。グルコン酸クロルヘキシジンアルコールは速乾性で持続効果に優れ、血液培養採血時の皮膚消毒に用いられる。
第68回 午後74(臨床微生物学)
多剤耐性緑膿菌〈MDRP〉の判定に使用される抗菌薬はどれか。
①イミペネム ②オキサシリン ③セフォキシチン ④テイコプラニン ⑤バンコマイシン
正答: ①イミペネム
ポイント 多剤耐性緑膿菌(MDRP)はカルバペネム系・フルオロキノロン系・アミノグリコシド系の3系統すべてに耐性を示す緑膿菌と定義される。判定にはカルバペネム系のイミペネム、フルオロキノロン系のシプロフロキサシンやレボフロキサシン、アミノグリコシド系のアミカシンの感受性を評価する。代表薬としてカルバペネム系のイミペネムが用いられる。●MDRP判定の3系統=カルバペネム系(イミペネム)・フルオロキノロン系(シプロフロキサシン)・アミノグリコシド系(アミカシン)。●他の耐性菌の判定薬剤=MRSA=オキサシリン・セフォキシチン(mecA)、VRE=バンコマイシン、ESBL産生菌=第3世代セフェムとクラブラン酸併用。●緑膿菌の特徴=ブドウ糖非発酵Gram陰性桿菌・湿潤環境に生息・日和見感染の起因菌。
選択肢ごとの解説
① 正しい。イミペネムはカルバペネム系薬で、多剤耐性緑膿菌の判定に用いる3系統のひとつである。 ② オキサシリンはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の判定に用いる薬剤で、緑膿菌の判定には用いない。 ③ セフォキシチンはMRSA検出(mecA発現)の判定に用いられ、緑膿菌には用いない。 ④ テイコプラニンはグラム陽性菌に用いるグリコペプチド系薬で、緑膿菌には無効である。 ⑤ バンコマイシンはグラム陽性菌用のグリコペプチド系薬で、緑膿菌には無効である。
第68回 午後75(臨床微生物学)
偏性細胞内寄生性を有するのはどれか。
①Cryptococcus neoformans ②Listeria monocytogenes ③Mycobacterium tuberculosis ④Mycoplasma pneumoniae ⑤Rickettsia prowazekii
正答: ⑤Rickettsia prowazekii
ポイント 偏性細胞内寄生性とは、宿主細胞の中でしか増殖できない性質をいう。Rickettsia・Chlamydia・ウイルスがこれに該当する。Rickettsia prowazekiiは発疹チフスの起因菌で、節足動物(コロモジラミ)を介してヒトに感染し細胞内で増殖する。他の選択肢は人工培地で増殖可能なため偏性細胞内寄生性ではない。●偏性細胞内寄生性の微生物=Rickettsia・Chlamydia・Coxiella・Orientia・すべてのウイルス。●通性細胞内寄生菌(細胞内でも人工培地でも増殖)=結核菌・サルモネラ・リステリア・ブルセラ・レジオネラ。●らい菌(Mycobacterium leprae)=細胞内寄生性だが人工培地では培養できない(ヌードマウスの足底などで増殖させる)。●Rickettsia prowazekii=発疹チフス、媒介はコロモジラミ。Weil-Felix反応が補助診断に用いられる。
選択肢ごとの解説
① Cryptococcus neoformansは培地で発育する真菌で、細胞外でも増殖できる。 ② Listeria monocytogenesは細胞内増殖もするが人工培地で発育可能で、偏性ではなく通性である。 ③ Mycobacterium tuberculosisは細胞内寄生もするが小川培地などで培養可能であり、偏性細胞内寄生性ではない。 ④ Mycoplasma pneumoniaeは細胞壁を欠くが無細胞培地で増殖可能で、偏性細胞内寄生性ではない。 ⑤ 正しい。Rickettsia prowazekiiは偏性細胞内寄生性で、宿主細胞内でのみ増殖する。
第68回 午後76(臨床微生物学)
スライド培養の顕微鏡写真を別に示す。大分生子を矢印で示す。考えられるのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB076.068b738c7d.jpg
①Aspergillus fumigatus ②Epidermophyton floccosum ③Microsporum canis ④Sporothrix schenckii ⑤Trichophyton rubrum
正答: ⑤Trichophyton rubrum
ポイント Trichophyton rubrumは皮膚糸状菌(白癬菌)の代表菌種で、足白癬・爪白癬・体部白癬の主要起因菌である。スライド培養では菌糸の側方に細長い棍棒状〜鉛筆状の大分生子と、多数の涙滴状小分生子を形成する。皮膚糸状菌3属の鑑別は大分生子の形態が手がかりとなり、Microsporumは紡錘形で厚壁・表面粗造、Epidermophytonは棍棒状で小分生子を欠く、Trichophytonは細い棍棒状で小分生子に富むという違いがある。 ●皮膚糸状菌3属=Trichophyton(白癬菌・細い棍棒状大分生子+多数の小分生子)・Microsporum(小胞子菌・紡錘形厚壁大分生子)・Epidermophyton(表皮菌・棍棒状大分生子で小分生子なし)。 ●二形性真菌=Sporothrix schenckii・Histoplasma capsulatum・Blastomyces dermatitidis・Coccidioides immitis。 ●代表的糸状菌=Aspergillus(分生子柄先端に放射状分生子)・Penicillium(筆状体)・Rhizopus(仮根と胞子嚢)。
選択肢ごとの解説
① Aspergillus fumigatusは分生子柄の先端にフィアライドと分生子を放射状に形成する糸状菌で、大分生子像とは異なる。 ② Epidermophyton floccosumは棍棒状の大分生子を多数つくるが小分生子を欠くため、多数の小分生子を伴う本図の所見とは異なる。 ③ Microsporum canisは紡錘形で厚壁・表面粗造の大分生子をつくり、細い棍棒状を示す本図の所見とは異なる。 ④ Sporothrix schenckiiは二形性真菌で分生子柄先端に花弁状の分生子配列を示し、大分生子像とは異なる。 ⑤ 正しい。細い棍棒状の大分生子と多数の小分生子を菌糸側方に形成しており、Trichophyton rubrumが考えられる。
第68回 午後77(臨床微生物学)
TSI培地に腸内細菌科細菌を接種して1日後の写真を別に示す。判定として誤っているのはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB077.776f1e8dda.jpg
①白糖分解 ②乳糖非分解 ③ブドウ糖発酵 ④硫化水素産生 ⑤ブドウ糖からのガス産生
正答: ①白糖分解
ポイント TSI(Triple Sugar Iron、三糖鉄)培地はブドウ糖・乳糖・白糖の分解と硫化水素・ガス産生を一度に判定する確認培地である。斜面(slant)の黄変は乳糖・白糖の分解、高層(butt)底部の黄変はブドウ糖の発酵を示し、亀裂・気泡・寒天の押し上げはガス産生、黒変は硫化水素産生を示す。斜面が赤いまま(アルカリ)であれば乳糖・白糖は非分解であり、その状態を白糖分解と判定するのは誤りである。 ●糖分解判定培地=TSI培地(三糖鉄)・クリグラー鉄(KIA、ブドウ糖と乳糖の二糖)・OF培地(酸化発酵の鑑別)。 ●腸内細菌科の同定性状=硫化水素産生(Salmonella・Proteus陽性)・インドール・VP・クエン酸利用(IMViC)。 ●ガス産生=大腸菌は陽性、Shigellaは多くが陰性。
選択肢ごとの解説
① 誤り。斜面が赤い(アルカリ性)所見は乳糖・白糖が非分解であることを示し、白糖分解と判定するのは誤りである。 ② 斜面の赤色(アルカリ)は乳糖が非分解であることを示す正しい判定である。 ③ 高層底部の黄変はブドウ糖の発酵による酸産生を示す正しい判定である。 ④ 高層の黒変は硫化第一鉄の生成すなわち硫化水素産生を示す正しい判定である。 ⑤ 高層内の亀裂・気泡・寒天の浮き上がりはブドウ糖からのガス産生を示す正しい判定である。
📋 まとめの表を見る:TSI培地の判定基準(斜面・高層の変色とガス・硫化水素の読み方)
大腸菌など乳糖分解菌は斜面・高層とも黄変するが、サルモネラ・赤痢菌など乳糖非分解菌は高層のみ黄変し斜面は赤色のまま残る。
第68回 午後78(臨床微生物学)
Listeria monocytogenesについて誤っているのはどれか。
①Gram陽性短桿菌である。 ②CAMPテスト陽性である。 ③馬尿酸塩加水分解試験陽性である。 ④エスクリン加水分解試験陽性である。 ⑤ヒツジ血液寒天培地でα溶血性を示す。
正答: ⑤ヒツジ血液寒天培地でα溶血性を示す。
ポイント Listeria monocytogenesはGram陽性の短桿菌で、ヒツジ血液寒天培地ではβ溶血(弱いβ溶血)を示す。4℃でも増殖する低温発育性をもち、髄膜炎・敗血症や妊婦の経胎盤感染(新生児リステリア症)を起こす。CAMPテスト陽性、馬尿酸塩加水分解陽性、エスクリン加水分解陽性、室温(20〜25℃)でタンブリング運動や半流動培地での傘状発育が確認しやすく、35〜37℃では鞭毛発現・運動性が低下することが同定の手がかりとなり、α溶血と記すのは誤りである。 ●Gram陽性桿菌(カタラーゼ陽性)=Listeria・Corynebacterium・Bacillus。 ●CAMPテスト陽性=Listeria monocytogenes・B群レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)。 ●低温発育(4℃増殖)=Listeria monocytogenes・Yersinia enterocolitica。 ●溶血性=β溶血(Listeria・A群/B群レンサ球菌)/α溶血(肺炎球菌・緑色レンサ球菌)。
選択肢ごとの解説
① Gram陽性短桿菌であり、正しい記述である。 ② CAMPテストはB群レンサ球菌とともに本菌で陽性となり、正しい記述である。 ③ 馬尿酸塩加水分解試験陽性は本菌の同定性状で、正しい記述である。 ④ エスクリン加水分解試験陽性は本菌の同定性状で、正しい記述である。 ⑤ 誤り。Listeria monocytogenesはヒツジ血液寒天培地でβ溶血を示し、α溶血ではない。
第68回 午後79(臨床免疫学)
38歳の女性。発熱を主訴に来院した。間接蛍光抗体法による抗核抗体検査所見(別冊No.19)を別に示す。この所見の染色パターンはどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB079.86ea47f72d.jpg
正答: ②辺縁型
ポイント 抗核抗体の間接蛍光抗体法では蛍光の染色パターンから対応抗原が推定される。辺縁型(周辺型、peripheral)は核膜周縁部が強く縁取られて染まるパターンで、抗二本鎖DNA抗体に対応し全身性エリテマトーデス〈systemic lupus erythematosus;SLE〉に特異性が高い。斑紋型は抗ENA抗体、核小体型は強皮症関連抗体、細胞質型は抗ミトコンドリア抗体などに対応し、それぞれ疾患特異性が異なる。 ●抗核抗体の染色型と対応抗原=均質型/辺縁型(抗DNA・抗ヒストン)・斑紋型(抗ENA:抗U1-RNP・抗Sm・抗SS-A/B)・核小体型(抗RNAポリメラーゼ・抗トポイソメラーゼ等)・散在斑紋型/discrete speckled(抗セントロメア)。 ●細胞質型=抗ミトコンドリア抗体・抗Jo-1抗体。 ●辺縁型=SLEを示唆。
選択肢ごとの解説
① 斑紋型は核内が顆粒状に染まるパターンで、抗ENA抗体(抗U1-RNP・抗Sm・抗SS-A/B)などに対応する。 ② 正しい。核膜周縁部が強く縁取られて染まる辺縁型で、抗DNA抗体に対応しSLEを示唆する。 ③ 核小体型は核小体が染まるパターンで、抗RNAポリメラーゼ抗体など強皮症関連抗体に対応する。 ④ 細胞質型は細胞質が染まるパターンで、抗ミトコンドリア抗体や抗Jo-1抗体などに対応する。 ⑤ 散在斑紋型は核内の散在性顆粒状染色で抗セントロメア抗体に対応し、本所見の辺縁型とは異なる。
📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患
第68回 午後80(臨床免疫学)
38歳の女性。発熱を主訴に来院した。間接蛍光抗体法による抗核抗体検査所見(別冊No.19)を別に示す。この所見を示す自己抗体はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB080.86ea47f72d.jpg
①抗DNA抗体 ②抗核小体抗体 ③抗ヒストン抗体 ④抗ミトコンドリア抗体 ⑤抗ENA〈可溶性核抗原〉抗体
正答: ①抗DNA抗体
ポイント 辺縁型(周辺型)の蛍光パターンは抗二本鎖DNA抗体(抗DNA抗体)に対応する。抗DNA抗体は全身性エリテマトーデス〈systemic lupus erythematosus;SLE〉に特異性が高く、疾患活動性やループス腎炎などの腎病変と相関する。鞭毛基部にキネトプラスト(二本鎖DNA塊)をもつCrithidia luciliaeを基質とした蛍光抗体法でも検出され、辺縁型を呈する代表的自己抗体である。 ●SLEに特異性が高い抗体=抗二本鎖DNA抗体・抗Sm抗体。 ●染色型と自己抗体=辺縁型/均質型(抗DNA・抗ヒストン)・斑紋型(抗ENA)・核小体型(強皮症関連)・細胞質型(抗ミトコンドリア=原発性胆汁性胆管炎)。 ●薬剤誘発性ループス=抗ヒストン抗体。
選択肢ごとの解説
① 正しい。辺縁型を呈する自己抗体は抗二本鎖DNA抗体で、SLEに特異性が高い。 ② 抗核小体抗体は核小体型のパターンを呈し、本所見の辺縁型とは対応しない。 ③ 抗ヒストン抗体は均質型(homogeneous)を呈し、薬剤誘発性ループスでみられる。 ④ 抗ミトコンドリア抗体は細胞質型を呈し、原発性胆汁性胆管炎でみられる。 ⑤ 抗ENA抗体は斑紋型を呈し、辺縁型とは対応しない。
📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患
第68回 午後81(臨床免疫学)
検査まで検体を全血のまま冷蔵保存してもよいのはどれか。
①抗核抗体 ②寒冷凝集素測定 ③クリオグロブリン ④直接抗グロブリン試験 ⑤Donath-Landsteiner試験
正答: ①抗核抗体
ポイント 検体の保存温度は測定項目により異なり、冷蔵により誤った結果を招く項目がある。抗核抗体は比較的安定で、全血のまま冷蔵保存しても測定への影響が少ない。一方、寒冷凝集素・クリオグロブリン・Donath-Landsteiner試験は低温で抗体が赤血球へ結合・析出するため血清分離まで37℃保温が必要で、直接抗グロブリン試験も低温では寒冷抗体の結合により非特異的に陽性化しうる。 ●血清分離まで37℃保温が必要な検査=寒冷凝集素測定・クリオグロブリン・Donath-Landsteiner試験(発作性寒冷ヘモグロビン尿症の二相性溶血素)。 ●冷蔵が許容される項目=抗核抗体など安定な血清項目。 ●温度依存性自己抗体=寒冷凝集素(IgM)・Donath-Landsteiner抗体(IgG・抗P)。
選択肢ごとの解説
① 正しい。抗核抗体は安定で、全血のまま冷蔵保存しても測定に支障が少ない。 ② 寒冷凝集素は低温で赤血球に結合するため、37℃で血清を分離する必要があり全血冷蔵は不適である。 ③ クリオグロブリンは低温で析出するため、採血から血清分離までは37℃に保つ必要があり全血冷蔵は不適である。分離後の血清は4℃で数日間(最長7日程度)放置して析出の有無を観察する。 ④ 直接抗グロブリン試験は低温で寒冷抗体が結合し非特異的陽性となりうるため、冷蔵保存は不適である。 ⑤ Donath-Landsteiner試験は低温で結合し復温で溶血する二相性抗体を調べるため、全血冷蔵保存は不適である。
第68回 午後82(臨床免疫学)
抗原抗体反応に関与しないのはどれか。
①共有結合 ②水素結合 ③疎水結合 ④イオン結合 ⑤ファンデルワールス力
正答: ①共有結合
ポイント 抗原抗体反応は抗原決定基と抗体結合部位が非共有結合的な分子間力により可逆的に結合する。関与する力は水素結合、疎水結合、イオン結合(静電的相互作用)、ファンデルワールス力である。共有結合のような強固で不可逆な結合は関与しないため、反応は温度・pH・イオン強度などの条件により解離しうる。この可逆性が解離試験や反応増強剤による感度調整の基礎となる。 ●抗原抗体反応に関与する結合=水素結合・疎水結合・イオン結合(静電的相互作用)・ファンデルワールス力(いずれも非共有結合)。 ●関与しない結合=共有結合(不可逆・強固)。 ●反応増強剤=アルブミン・低イオン強度溶液(LISS)・ポリエチレングリコール(PEG)。
選択肢ごとの解説
① 誤り。共有結合は不可逆的で強い結合であり、可逆的な抗原抗体反応には関与しない。 ② 水素結合は抗原抗体反応に関与する非共有結合のひとつである。 ③ 疎水結合は抗原抗体反応に関与し、結合部位から水を排除して安定化に寄与する。 ④ イオン結合(静電的相互作用)は荷電基どうしの引力として抗原抗体反応に関与する。 ⑤ ファンデルワールス力は近距離で働く弱い引力で、抗原抗体反応に関与する。
第68回 午後83(臨床免疫学)
乳癌の腫瘍マーカーはどれか。
①CA15-3 ②CA19-9 ③CYFRA21-1 ④NSE ⑤SCC
正答: ①CA15-3
ポイント CA15-3は乳癌の代表的腫瘍マーカーで、進行・再発乳癌のモニタリングに用いられる。腫瘍マーカーには臓器特異性があり、CA19-9は膵癌・胆道癌、CYFRA21-1とSCC(扁平上皮癌関連抗原)は肺扁平上皮癌、NSE(神経特異エノラーゼ)は小細胞肺癌や神経内分泌腫瘍に用いられる。乳癌ではCA15-3のほかCEAも補助的に用いられる。 ●乳癌=CA15-3・CEA。 ●膵癌・胆道癌=CA19-9・SPan-1・DUPAN-2。 ●肺扁平上皮癌=SCC・CYFRA21-1。 ●小細胞肺癌・神経内分泌腫瘍=NSE・ProGRP。 ●卵巣癌=CA125。 ●前立腺癌=PSA。 ●肝細胞癌=AFP・PIVKA-II。
選択肢ごとの解説
① 正しい。CA15-3は乳癌の腫瘍マーカーで、進行・再発乳癌の経過観察に用いられる。 ② CA19-9は膵癌・胆道癌の腫瘍マーカーで、乳癌の指標ではない。 ③ CYFRA21-1は非小細胞肺癌、とくに肺扁平上皮癌の腫瘍マーカーである。 ④ NSE(神経特異エノラーゼ)は小細胞肺癌や神経内分泌腫瘍の腫瘍マーカーである。 ⑤ SCC(扁平上皮癌関連抗原)は子宮頸癌・肺扁平上皮癌などの腫瘍マーカーである。
第68回 午後84(臨床免疫学)
直接抗グロブリン試験について正しいのはどれか。
①患者の血清を使用する。 ②反応増強剤にPEGが使用される。 ③交差適合試験の主試験に必要である。 ④不規則抗体スクリーニングに必要である。 ⑤溶血性輸血副反応が生じた際に必要である。
正答: ⑤溶血性輸血副反応が生じた際に必要である。
ポイント 直接抗グロブリン試験は、患者赤血球にすでに結合している抗体や補体を、抗グロブリン試薬(抗IgG・抗補体)で凝集させて検出する試験である。自己免疫性溶血性貧血、胎児・新生児溶血性疾患、溶血性輸血副反応の評価に用いる。患者血清中の遊離抗体を検出する間接抗グロブリン試験(交差適合試験主試験・不規則抗体スクリーニング)とは目的が異なり、増強剤や血清は直接法では用いない。 ●直接抗グロブリン試験の適応=自己免疫性溶血性貧血・新生児溶血性疾患・溶血性輸血副反応・薬剤起因性溶血。 ●間接抗グロブリン試験の適応=不規則抗体スクリーニング・抗体同定・交差適合試験主試験。 ●反応増強剤(間接法)=アルブミン・LISS・PEG。
選択肢ごとの解説
① 直接抗グロブリン試験は患者の赤血球を用いるもので、血清を用いるのは間接法であるため誤りである。 ② PEGなどの反応増強剤は間接抗グロブリン試験で用いられ、直接法では用いないため誤りである。 ③ 交差適合試験の主試験は患者血清と供血者赤血球を反応させる間接法であり、直接法ではない。 ④ 不規則抗体スクリーニングは患者血清中の遊離抗体を調べる間接法であり、直接法ではない。 ⑤ 正しい。溶血性輸血副反応の発生時、赤血球に結合した抗体を調べるため直接抗グロブリン試験が必要である。
第68回 午後85(臨床免疫学)
血液型検査の結果を以下に示す。血液型を確定するために必要な検査はどれか。
図: https://medwide.jp/drill/img/k68pB085.de8ff95d7b.jpg
①吸着解離試験 ②抗体同定試験 ③糖転移酵素測定 ④D陰性確認試験 ⑤直接抗グロブリン試験
正答: ④D陰性確認試験
ポイント 提示結果はオモテ検査で抗A・抗Bともに陰性(O型を示唆)、ウラ検査でA1・B赤血球とも4+(O型と矛盾しない)で、ABO血液型はO型と判定できる。一方、抗D陰性かつRhコントロール陰性のため見かけ上RhD陰性となるが、ABO型がO型に確定している以上、追加で必要なのはRhD側の確認である。RhD陰性を確定するには弱いD(weak D・部分D)を否定するD陰性確認試験(間接抗グロブリン法による確認)が必要である。 ●D陰性確認試験=weak D・partial Dを否定するため間接抗グロブリン法で確認。 ●オモテ・ウラ不一致の原因検査=抗体同定試験・吸着解離試験・糖転移酵素測定(ABO亜型)。 ●Rh血液型=D・C・c・E・eの5抗原。
選択肢ごとの解説
① 吸着解離試験は弱い抗原や亜型の証明に用いるが、本例のABO型確定には不要である。 ② 抗体同定試験は不規則抗体の特定に用いるもので、オモテ・ウラが一致する本例では不要である。 ③ 糖転移酵素測定はABO亜型の研究的同定に用いるもので、本例の確定検査としては選択されない。 ④ 正しい。抗D陰性かつコントロール陰性のため、弱いDを否定するD陰性確認試験でRhD血液型を確定する必要がある。 ⑤ 直接抗グロブリン試験は赤血球結合抗体の検出に用いるもので、本例の血液型確定には必要でない。
第68回 午後86(臨床免疫学)
胎児・新生児溶血性疾患の原因となる不規則抗体はどれか。2つ選べ。
正答: ②抗c・③抗E
ポイント 胎児・新生児溶血性疾患〈hemolytic disease of the fetus and newborn;HDFN〉は、母体のIgG型不規則抗体が胎盤を通過し胎児赤血球を破壊することで生じる。原因となりやすいのはIgGで産生され抗原性の強いRh系(抗D・抗E・抗c)やKell系の抗体である。一方、Lewis系(抗Lea)やBg(HLA関連)、抗Nは主にIgMであるか抗原性が弱く、胎盤通過性や臨床的意義に乏しい。 ●HDFNの原因となる抗体=抗D・抗c・抗E(Rh系)・抗K(Kell系)・抗Fya・抗Jka。 ●原因となりにくい抗体=抗Lea・抗Leb(Lewis系・主にIgM)・抗N・抗P1・抗Bg(HLA関連)。 ●抗体クラス=胎盤通過はIgGのみ、IgMは通過しない。
選択肢ごとの解説
① 抗BgaはHLA関連抗原に対する抗体で抗原性が弱く、胎児・新生児溶血性疾患の原因とはなりにくい。 ② 正しい。抗cはRh系のIgG型抗体で胎盤を通過し、胎児・新生児溶血性疾患の原因となる。 ③ 正しい。抗EはRh系のIgG型抗体で胎盤を通過し、胎児・新生児溶血性疾患の原因となる。 ④ 抗LeaはLewis系の抗体で主にIgMであり胎盤を通過しにくく、原因とはなりにくい。 ⑤ 抗NはMNS系の抗体で多くがIgMで抗原性も弱く、胎児・新生児溶血性疾患の原因とはなりにくい。
第68回 午後87(臨床免疫学)
貯血式自己血輸血について正しいのはどれか。2つ選べ。
①手術前日に貯血する。 ②待機手術患者が適応となる。 ③80歳以上の高齢者は禁忌である。 ④体重50 kg未満の患者は禁忌である。 ⑤肝炎ウイルス感染症のリスクを回避できる。
正答: ②待機手術患者が適応となる。・⑤肝炎ウイルス感染症のリスクを回避できる。
ポイント 貯血式自己血輸血は、待機(予定)手術の患者から術前に自己血を採取・保存し手術時に返血する方法で、同種血輸血に伴う輸血感染症(肝炎ウイルスなど)や同種免疫・GVHDの回避に有効である。通常は手術の数週間前から複数回に分けて採血する。年齢や体重のみで一律に禁忌とはせず、貧血の有無や全身状態を考慮して採血量を調整し適応を判断する。 ●自己血輸血の種類=貯血式(術前に採取・保存)・希釈式(麻酔導入後に採血し晶質液で補充)・回収式(術中・術後の出血を回収し返血)。 ●自己血輸血の利点=輸血感染症の回避・同種免疫の回避・移植片対宿主病(GVHD)の回避。 ●貯血の禁忌・注意=活動性感染症・重度貧血・狭心症等の循環不全。
選択肢ごとの解説
① 貯血は通常手術の数週間前から複数回に分けて行い、手術前日のみに行うものではない。 ② 正しい。貯血式自己血輸血は採血の時間的余裕がある待機(予定)手術患者が適応となる。 ③ 80歳以上を一律に禁忌とはせず、全身状態に応じて適応を判断するため誤りである。 ④ 体重のみで一律に禁忌とはせず、採血量を調整して実施を判断するため誤りである。 ⑤ 正しい。自己血を用いるため、肝炎ウイルスなど同種血輸血による感染症リスクを回避できる。
第68回 午後88(臨床免疫学)
A型患者の骨髄移植で、ドナー血液型と移植後1週間の輸血用血液製剤の血液型との組合せで正しいのはどれか。
①ドナーO型 — 赤血球輸血はA型 ②ドナーO型 — 血小板輸血はO型 ③ドナーB型 — 新鮮凍結血漿輸血はO型 ④ドナーB型 — 赤血球輸血はAB型 ⑤ドナーB型 — 新鮮凍結血漿輸血はAB型
正答: ⑤ドナーB型 — 新鮮凍結血漿輸血はAB型
ポイント ABO不適合骨髄移植では、生着過程でレシピエント由来とドナー由来の抗原・抗体が混在するため、輸血用血液製剤の血液型は溶血を避けるよう厳密に選択する。一般に赤血球はレシピエントとドナーの双方に適合する型(しばしばO型)を、血漿製剤は抗A・抗Bを含まないAB型を選ぶ。A型患者にドナーB型の場合、新鮮凍結血漿はAB型を選べばレシピエントのA抗原ともドナーのB抗原とも反応せず安全である。 ●赤血球輸血(ABO不適合移植早期)=レシピエント・ドナー双方に安全な型(多くはO型)。 ●血漿・血小板(血漿成分)=抗体を含まないAB型が安全。 ●ABO不適合移植の溶血=major(レシピエント抗体がドナー赤血球を攻撃)/minor(ドナー抗体がレシピエント赤血球を攻撃)。
選択肢ごとの解説
① ドナーO型では移植早期の赤血球輸血はレシピエント・ドナー双方に安全なO型を選ぶのが原則で、A型は適切でない。 ② ドナーO型でも血小板の血漿成分にO型由来の抗A・抗Bが含まれ問題となり得るため、O型固定は適切でない。 ③ ドナーB型で新鮮凍結血漿をO型とするのは、O型血漿が抗A・抗Bを含み患者のA抗原と反応するため適切でない。 ④ 赤血球輸血をAB型とするのはA抗原・B抗原を含み溶血リスクがあるため、適切でない。 ⑤ 正しい。新鮮凍結血漿は抗A・抗Bを含まないAB型を選ぶことで、レシピエント・ドナー双方の赤血球と反応せず安全である。
📋 まとめの表を見る:ABO血液型不適合造血幹細胞移植(骨髄移植)における移植早期の血液製剤選択
移植後は患者由来の血球とドナー由来の血球が混在する状態(血液型キメラ)になるため、上記の選択で移植早期の溶血を回避する。移植後の期間経過とともに患者の血液型はドナー型へ置き換わっていく。
第68回 午後89(臨床免疫学)
オモテ検査でB型、ウラ検査でO型と判定された。原因となるのはどれか。2つ選べ。
①後天性B ②寒冷凝集素 ③不規則抗体 ④無ガンマグロブリン血症 ⑤直接抗グロブリン試験陽性
正答: ②寒冷凝集素・③不規則抗体
ポイント オモテ検査とウラ検査の不一致は血液型判定上の問題となる。本例はオモテでB型、ウラでO型(A1・B赤血球とも凝集)と判定されており、ウラ検査側に過剰な凝集を起こす因子が考えられる。寒冷凝集素や不規則抗体が患者血漿中に存在すると、ウラ検査用赤血球に非特異的または特異的に反応し、本来凝集しないB赤血球まで凝集して見かけ上O型と判定されうる。 ●ウラ検査が過剰凝集する原因=寒冷凝集素・不規則抗体・連銭形成(高グロブリン血症)。 ●ウラ検査が弱くなる原因=無ガンマグロブリン血症・高齢・新生児・免疫抑制。 ●オモテ検査の偽所見=後天性B(A型がB様反応)・亜型・汎血球凝集。
選択肢ごとの解説
① 後天性BはオモテのA型患者がB様反応を示す現象で、オモテB・ウラO型という本例の不一致の原因とはならない。 ② 正しい。寒冷凝集素が存在すると低温でウラ検査用赤血球に非特異的に凝集し、B赤血球まで凝集してO型様となりうる。 ③ 正しい。患者血漿中の不規則抗体がウラ検査用赤血球と反応すると、本来凝集しないB赤血球も凝集しO型様の判定となりうる。 ④ 無ガンマグロブリン血症は抗体が欠如する病態でウラ検査の凝集が弱くなる方向であり、過剰凝集の原因とはならない。 ⑤ 直接抗グロブリン試験陽性は赤血球結合抗体を示すが、それ自体がウラ検査用赤血球の過剰凝集の原因とはならない。
第68回 午後90(公衆衛生学)
2019年の我が国の簡易生命表で0歳男性と0歳女性の平均余命の差に最も近いのはどれか。
正答: ③6年
ポイント 2019年の我が国の簡易生命表における平均寿命(0歳の平均余命)は男性約81歳、女性約87歳で、その差はおよそ6年である。女性が男性より長命である傾向は先進国に共通してみられる。平均余命とは各年齢の人がその後平均何年生きられるかを示す指標で、生命表から算出され、0歳の平均余命を特に平均寿命とよぶ。 ●生命表の指標=平均余命・平均寿命(0歳平均余命)・死亡率・生存数。 ●平均寿命の男女差=近年はおよそ6年で女性が長い。 ●健康寿命=健康上の問題で日常生活が制限されずに生活できる期間。
選択肢ごとの解説
① 1年は実際の男女差約6年より小さく、最も近い値ではない。 ② 3年は実際の男女差約6年より小さく、最も近い値ではない。 ③ 正しい。2019年の平均寿命の男女差は約6年で、選択肢の中で最も近い。 ④ この値は男女差約6年より大きく、最も近い値ではない。 ⑤ 12年は実際の男女差約6年より大きく、最も近い値ではない。
第68回 午後91(公衆衛生学)
要因Aは疾患Bのリスクファクターであると判定するために不可欠なのはどれか。
①疾患Bの患者は要因Aを持つ。 ②要因Aが疾患Bの発症に先行する。 ③要因Aが存在しないと疾患Bを発症しない。 ④要因Aと疾患Bの間に量-反応関係が成り立つ。 ⑤要因Aに曝露されると疾患Bを発症することを動物実験で再現できる。
正答: ②要因Aが疾患Bの発症に先行する。
ポイント ある要因が疾患のリスクファクター(原因)であると判定するには因果関係の検討が必要で、その必須条件のひとつが時間的前後関係である。すなわち要因への曝露が疾患の発症に先行していなければならない。量反応関係・生物学的妥当性・関連の一致性・関連の強固性なども因果性を補強するが、これらは必須ではなく、時間的先行性のみが欠かせない必要条件である。 ●因果関係判定の基準(Hillの視点)=関連の時間性(必須)・関連の強固性・量反応関係・一致性・整合性(生物学的妥当性)・特異性・実験的証拠。 ●時間性=要因曝露が発症に先行することが必要条件。 ●疫学研究の型=コホート研究・症例対照研究・横断研究・介入研究。
選択肢ごとの解説
① 患者が要因をもつことは関連を示唆するに過ぎず、時間的前後関係を示さないため必須条件ではない。 ② 正しい。要因への曝露が疾患発症に先行する時間的前後関係は、因果関係判定に不可欠な条件である。 ③ 要因がなければ必ず発症しないという条件は、多くの多因子疾患では成立せず必須条件ではない。 ④ 量反応関係は因果性を補強する根拠だが、必ずしも成立せず不可欠の条件ではない。 ⑤ 動物実験での再現は生物学的妥当性を補強するが、ヒトでの因果判定の不可欠条件ではない。
第68回 午後92(公衆衛生学)
ヘルスプロモーションに含まれないのはどれか。
①公共の場での禁煙の推進 ②家庭で使える医療機器の開発 ③地域住民への健康教育の実施 ④ウォーキングが行える歩道の整備 ⑤救急医療機関への搬送体制の整備
正答: ⑤救急医療機関への搬送体制の整備
ポイント ヘルスプロモーションは、世界保健機関〈World Health Organization;WHO〉のオタワ憲章で「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし改善できるようにするプロセス」と定義され、健康教育や環境整備など健康増進・一次予防を中心とする。禁煙推進、健康教育、運動できる環境整備、家庭用医療機器の開発は健康づくりに資する。救急搬送体制の整備は発症後の医療提供(救急医療)であり、ヘルスプロモーションには含まれない。 ●ヘルスプロモーションの活動領域(オタワ憲章)=健康的な公共政策づくり・健康を支援する環境づくり・地域活動の強化・個人技術の開発・ヘルスサービスの方向転換。 ●予防医学の段階=一次予防(健康増進・予防接種)・二次予防(早期発見・早期治療)・三次予防(リハビリ・再発防止)。
選択肢ごとの解説
① 公共の場での禁煙推進は受動喫煙防止による健康増進策で、ヘルスプロモーションに含まれる。 ② 家庭で使える医療機器の開発は健康管理を支える取組で、ヘルスプロモーションに含まれる。 ③ 地域住民への健康教育は健康増進の代表的活動で、ヘルスプロモーションに含まれる。 ④ ウォーキングできる歩道の整備は身体活動を促す環境づくりで、ヘルスプロモーションに含まれる。 ⑤ 誤り。救急医療機関への搬送体制整備は発症後の医療提供であり、ヘルスプロモーションには含まれない。
第68回 午後93(公衆衛生学)
がん対策基本法の基本的施策に含まれないのはどれか。
①がん登録の推進 ②がん検診の受診率の向上 ③がんに関する研究の推進 ④がん治療にかかる医療費の適正化 ⑤専門的な知識・技術を有する医療従事者の育成
正答: ④がん治療にかかる医療費の適正化
ポイント がん対策基本法は、がん予防・早期発見の推進、がん医療の均てん化、研究の推進などを基本的施策とする。具体的にはがん検診受診率の向上、がん登録の推進、専門的な知識・技術をもつ医療従事者の育成、がんに関する研究の推進などが含まれる。医療費の適正化は医療保険制度に関わる課題であり、がん対策基本法の基本的施策には含まれない。 ●がん対策基本法の基本的施策=がん予防・早期発見の推進(検診受診率向上)・がん医療の均てん化・研究の推進・がん登録の推進・専門的医療従事者の育成・緩和ケアの推進・がん患者の就労支援。 ●がん登録=全国がん登録(がん登録推進法に基づく)。
選択肢ごとの解説
① がん登録の推進はがん対策基本法の基本的施策に含まれる。 ② がん検診の受診率向上は早期発見を目的とする基本的施策に含まれる。 ③ がんに関する研究の推進は基本的施策に含まれる。 ④ 誤り。がん治療にかかる医療費の適正化は医療保険制度の課題であり、がん対策基本法の基本的施策には含まれない。 ⑤ 専門的な知識・技術を有する医療従事者の育成は基本的施策に含まれる。
第68回 午後94(公衆衛生学)
公衆衛生の事業とそれを規定する法律との組合せで正しいのはどれか。
①労働者の健康診断の実施 — 労働基準法 ②市町村保健センターの設置 — 健康増進法 ③自動車排出ガスの排出規制 — 環境基本法 ④医療安全支援センターの設置 — 医療法 ⑤公共の場所での受動喫煙の防止 — 地域保健法
正答: ④医療安全支援センターの設置 — 医療法
ポイント 公衆衛生の各事業はそれぞれ根拠法によって規定される。医療安全支援センターの設置は医療法に基づく。労働者の健康診断は労働安全衛生法、市町村保健センターの設置は地域保健法、自動車排出ガスの排出規制は大気汚染防止法、公共の場所での受動喫煙防止は健康増進法に規定される。事業と根拠法の正しい対応を問う問題である。 ●医療法=医療安全支援センター・医療計画・病院等の開設。 ●労働安全衛生法=労働者の健康診断・作業環境測定。 ●地域保健法=保健所・市町村保健センターの設置。 ●大気汚染防止法=自動車排出ガス・ばい煙の規制。 ●健康増進法=受動喫煙防止・特定給食施設・国民健康・栄養調査。
選択肢ごとの解説
① 労働者の健康診断の実施は労働安全衛生法に規定され、労働基準法ではないため誤りである。 ② 市町村保健センターの設置は地域保健法に規定され、健康増進法ではないため誤りである。 ③ 自動車排出ガスの排出規制は大気汚染防止法に規定され、環境基本法ではないため誤りである。 ④ 正しい。医療安全支援センターの設置は医療法に規定されており、正しい組合せである。 ⑤ 公共の場所での受動喫煙の防止は健康増進法に規定され、地域保健法ではないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:公衆衛生の事業と根拠法
労働基準法は労働時間・賃金など労働条件の最低基準を定める法律で、健康診断など具体的な安全衛生対策は労働安全衛生法が別に規定する。環境基本法は環境保全の基本理念・施策の枠組みを定める法律で、個別の排出規制は大気汚染防止法などが担う。
第68回 午後95(医用工学概論)
2byteで表せる状態の数はどれか。
①16通り ②256通り ③1,024通り ④16,384通り ⑤65,536通り
正答: ⑤65,536通り
ポイント 1バイトは8ビットで、表せる状態の数は2の8乗で256通りである。2バイトは16ビットとなり、2の16乗すなわち65,536通りの状態を表せる。情報量はビット数の指数で増加し、nビットで2のn乗の状態を区別できるという基本原理に基づく計算である。 ●ビット数と状態数=4ビット=16通り・8ビット(1バイト)=256通り・10ビット=1,024通り・14ビット=16,384通り・16ビット(2バイト)=65,536通り。 ●情報の単位=ビット(2進1桁)・バイト(8ビット)。 ●nビット=2のn乗の状態を表現。
選択肢ごとの解説
① 16通りは4ビット(2の4乗)に相当し、2バイト(16ビット)の状態数ではない。 ② 256通りは1バイト(8ビット、2の8乗)に相当し、2バイトの状態数ではない。 ③ 1,024通りは10ビット(2の10乗)に相当し、2バイトの状態数ではない。 ④ 16,384通りは14ビット(2の14乗)に相当し、2バイトの状態数ではない。 ⑤ 正しい。2バイトは16ビットで、2の16乗=65,536通りの状態を表せる。
第68回 午後96(医用工学概論)
臨床検査情報の一次利用はどれか。
①保健所への報告 ②医学研究への利用 ③教育用資料の作成 ④疾患の診断への利用 ⑤データベースへの利用
正答: ④疾患の診断への利用
ポイント 臨床検査情報の一次利用とは、検査を受けた本人の診療目的(診断・治療・経過観察)に直接用いることをいう。二次利用は本来の診療目的以外の利用で、医学研究、教育、統計・データベース化、保健所への報告などが該当する。一次利用と二次利用の区別を問う問題で、疾患の診断への利用が一次利用に該当する。 ●一次利用=本人の診療目的(診断・治療・経過観察)への利用。 ●二次利用=医学研究・教育・統計/データベース化・保健所等への届出・精度管理。 ●個人情報保護=二次利用では匿名化・同意取得などへの配慮が必要。
選択肢ごとの解説
① 保健所への報告は感染症対策など本来の診療目的以外の利用で、二次利用に該当する。 ② 医学研究への利用は診療目的以外の利用で、二次利用に該当する。 ③ 教育用資料の作成は診療目的以外の利用で、二次利用に該当する。 ④ 正しい。疾患の診断への利用は患者本人の診療に直接用いるもので、一次利用に該当する。 ⑤ データベースへの利用は集積・統計目的の利用で、二次利用に該当する。
第68回 午後97(医用工学概論)
滅菌について正しいのはどれか。2つ選べ。
①γ線は包装後の滅菌に有効である。 ②濾過滅菌は血清の滅菌に適さない。 ③乾熱滅菌はエンドトキシンを無毒化する。 ④高圧蒸気滅菌は芽胞を有する細菌に無効である。 ⑤過酸化水素プラズマ滅菌はカテーテルの滅菌に無効である。
正答: ①γ線は包装後の滅菌に有効である。・③乾熱滅菌はエンドトキシンを無毒化する。
ポイント 滅菌はすべての微生物(芽胞を含む)を死滅させる処理である。γ線照射は透過性が高く包装した後の医療器具の滅菌に有効で、ディスポーザブル製品に広く用いられる。乾熱滅菌は高温長時間処理により、通常の滅菌に加えてエンドトキシン(発熱性物質)の無毒化(脱パイロジェン)にも有効である。高圧蒸気滅菌は芽胞にも有効であり、過酸化水素ガスプラズマ滅菌は熱に弱い器具やカテーテルに用いられる。 ●加熱滅菌=高圧蒸気滅菌(オートクレーブ・芽胞に有効)・乾熱滅菌(脱パイロジェン可)。 ●非加熱滅菌=γ線・電子線(放射線、包装後可)・酸化エチレンガス(EOG)・過酸化水素ガスプラズマ・濾過滅菌(熱に弱い血清・薬液)。 ●濾過滅菌=0.22μmフィルターで血清・タンパク溶液に適する。
選択肢ごとの解説
① 正しい。γ線は透過性が高く、包装した後の医療器具の滅菌に有効である。 ② 濾過滅菌は熱に弱い血清やタンパク溶液の滅菌に適しており、適さないとするのは誤りである。 ③ 正しい。乾熱滅菌は高温処理によりエンドトキシン(発熱性物質)を無毒化(脱パイロジェン)できる。 ④ 高圧蒸気滅菌は芽胞を有する細菌にも有効であり、無効とするのは誤りである。 ⑤ 過酸化水素プラズマ滅菌は熱に弱いカテーテルなどの滅菌に有効であり、無効とするのは誤りである。
第68回 午後98(医用工学概論)
トランスデューサでないのはどれか。
①圧電素子 ②OPアンプ ③サーミスタ ④ストレンゲージ ⑤ポテンショメータ
正答: ②OPアンプ
ポイント トランスデューサ(変換器)は物理量を電気信号などへ変換する素子である。圧電素子は圧力・振動を電圧に、サーミスタは温度を電気抵抗に、ストレンゲージはひずみを抵抗変化に、ポテンショメータは変位を抵抗・電圧に変換する。これに対しOPアンプ(演算増幅器)は入力信号を増幅・演算する能動素子であり、物理量を電気信号に変換するトランスデューサではない。 ●物理量変換トランスデューサ=圧電素子(圧力・振動)・サーミスタ(温度)・ストレンゲージ(ひずみ・圧力)・ポテンショメータ(変位)・熱電対(温度)・光電素子(光)。 ●増幅・演算素子=OPアンプ(演算増幅器・能動素子)。 ●生体計測の変換器=血圧トランスデューサ・体温センサ・超音波振動子(圧電素子)。
選択肢ごとの解説
① 圧電素子は圧力・振動を電圧に変換するトランスデューサである。 ② 誤り。OPアンプは信号の増幅・演算を行う能動素子で、物理量を変換するトランスデューサではない。 ③ サーミスタは温度変化を電気抵抗の変化に変換するトランスデューサである。 ④ ストレンゲージはひずみを電気抵抗の変化に変換するトランスデューサである。 ⑤ ポテンショメータは変位を電気抵抗・電圧に変換するトランスデューサである。
第68回 午後99(医用工学概論)
カラーRGB各1byteの階調、1,000 × 1,000画素、60フレーム/秒、15秒の動画がある。データを圧縮しない場合、動画ファイルのおよそのサイズ〔byte〕はどれか。
①2.7 ×10⁶ ②9 ×10⁶ ③2.7 ×10⁹ ④9 ×10⁹ ⑤9 ×10¹²
正答: ③2.7 ×10⁹
ポイント 非圧縮動画のデータ量は、1画素あたりのバイト数×画素数×フレーム数で求められる。RGB各1バイトで1画素は3バイト、画素数は1,000×1,000=10⁶、フレーム数は60フレーム/秒×15秒=900フレームである。3×10⁶×900=2.7×10⁹バイトとなる。圧縮しない場合のデータ量が画素数とフレーム数に比例して膨大になることを示す計算問題である。 ●データ量の要素=色深度(RGB各1バイト=3バイト/画素)・解像度(画素数)・フレームレート・再生時間。 ●計算=3バイト×10⁶画素×60フレーム×15秒=2.7×10⁹バイト。 ●圧縮=動画ではMPEG・H.264等で大幅に削減。
選択肢ごとの解説
① 2.7×10⁶はフレーム数や時間を乗じ忘れた値で、本問の条件には合致しない。 ② 9×10⁶は計算過程の桁を誤った値で、適切でない。 ③ 正しい。3バイト×10⁶画素×60フレーム/秒×15秒=約2.7×10⁹バイトとなる。 ④ 9×10⁹は係数3を9と誤るなどした値で、適切でない。 ⑤ 9×10¹²は桁を過大に見積もった値で、適切でない。
第68回 午後100(医用工学概論)
光学顕微鏡について正しいのはどれか。
①開口数が大きいほど分解能が低下する。 ②尿沈渣の観察はコンデンサを上げて行う。 ③像の明るさは対物レンズの開口数の2乗に比例する。 ④総合倍率は接眼レンズと対物レンズの倍率の和で表される。 ⑤実視野は接眼レンズの視野数と対物レンズの倍率の積で表される。
正答: ③像の明るさは対物レンズの開口数の2乗に比例する。
ポイント 光学顕微鏡の像の明るさは対物レンズの開口数〈numerical aperture;NA〉の2乗に比例し、総合倍率の2乗に反比例する。開口数が大きいほど分解能は向上し、識別できる最小距離(分解能を表す値)は小さくなる。総合倍率は接眼レンズ倍率と対物レンズ倍率の積で表され、実視野は接眼レンズの視野数を対物レンズの倍率で割って求める。これら光学の基本関係を問う問題である。 ●分解能=0.61×波長/開口数(NAが大・波長が短いほど分解能が高い)。 ●像の明るさ=開口数の2乗に比例・総合倍率の2乗に反比例。 ●総合倍率=接眼レンズ倍率×対物レンズ倍率。 ●実視野=接眼レンズの視野数÷対物レンズ倍率。 ●尿沈渣など低コントラスト試料=コンデンサを下げて観察。
選択肢ごとの解説
① 開口数が大きいほど分解能は向上する(識別できる最小距離が小さくなる)ため、低下するとするのは誤りである。 ② 尿沈渣など低コントラスト試料の観察ではコンデンサを下げて行うのが基本で、上げて行うとするのは誤りである。 ③ 正しい。像の明るさは対物レンズの開口数(NA)の2乗に比例する。 ④ 総合倍率は接眼レンズと対物レンズの倍率の積で表され、和ではないため誤りである。 ⑤ 実視野は接眼レンズの視野数を対物レンズの倍率で割って求めるもので、積ではないため誤りである。
📋 まとめの表を見る:光学顕微鏡の基本公式と用語
視野数は対物レンズではなく接眼レンズの特性を表す値である点に注意。
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