第69回(2023) 臨床検査技師国家試験 午前51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版

第69回 午前51(病理組織細胞学)

血栓の誘因となりにくいのはどれか。

正答: ⑤ビタミンK欠乏

ポイント
血栓形成にはVirchowの三徴(血管内皮障害・血流の停滞や乱流・血液凝固能の亢進)が関与する。喫煙は内皮障害と血小板活性化、悪性腫瘍は組織因子放出による凝固亢進、心房細動は左心房内の血流停滞、脂質異常症は動脈硬化を介して血栓を促進する。一方ビタミンKは第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子およびプロテインC・Sの生合成(γ-カルボキシル化)に必須であり、その欠乏は凝固因子産生低下を招いて出血傾向に傾くため、血栓は形成されにくい。
●Virchowの三徴=血管内皮障害(喫煙・高血圧・動脈硬化)・血流停滞や乱流(心房細動・長期臥床・静脈瘤)・凝固能亢進(悪性腫瘍・妊娠・脱水・抗リン脂質抗体症候群)。
●ビタミンK依存性因子=第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子・プロテインC・プロテインS。
●出血傾向をきたす病態=ビタミンK欠乏・肝障害・播種性血管内凝固〈DIC〉・血友病。

選択肢ごとの解説

第69回 午前52(病理組織細胞学)

我が国における肺の悪性腫瘍のうち最も頻度が高いのはどれか。

正答: ①腺癌

ポイント
我が国の原発性肺癌では腺癌が最も多く、非喫煙者や女性にも発生し肺野末梢に好発する。次いで扁平上皮癌が多く、喫煙との関連が強く肺門部の太い気管支に生じやすい。小細胞癌は神経内分泌腫瘍で増殖が速く早期に転移し、悪性中皮腫はアスベスト(石綿)曝露に関連する胸膜腫瘍で肺実質原発の癌ではない。
●非小細胞癌=腺癌(最多・末梢発生)・扁平上皮癌(喫煙関連・肺門部)・大細胞癌(未分化・まれ)。
●小細胞癌=神経内分泌腫瘍・増殖が速い・抗利尿ホルモン不適合分泌症候群〈SIADH〉等の傍腫瘍症候群。
●胸膜腫瘍=悪性中皮腫(アスベスト曝露関連)。

選択肢ごとの解説

第69回 午前53(病理組織細胞学)

遺伝子解析の際に推奨される脱灰液はどれか。

正答: ④エチレンジアミン四酢酸〈EDTA〉液

ポイント
脱灰には酸脱灰とキレート脱灰があり、強酸(塩酸・硝酸など)は脱灰が速いが核酸を断片化させ、遺伝子解析や免疫染色には不向きである。エチレンジアミン四酢酸〈EDTA〉はカルシウムをキレートして緩徐に脱灰し、DNA・RNAや抗原性の保持に優れるため、遺伝子解析を予定する検体に推奨される。Plank-Rychlo液は塩化アルミニウム・塩酸・ギ酸を含む急速脱灰液で、組織や核酸への損傷が大きい。
●酸脱灰(速いが核酸・抗原に不利)=塩酸・硝酸・ギ酸・トリクロロ酢酸・Plank-Rychlo液。
●キレート脱灰(緩徐で核酸・抗原を保持)=EDTA。
●脱灰終了判定=物理的(穿刺)法・化学的(シュウ酸アンモニウム)法・エックス線法。

選択肢ごとの解説

第69回 午前54(病理組織細胞学)

細胞診検査材料のうち、最も低速遠心で集細胞法を行うのはどれか。

正答: ④髄液

ポイント
細胞診の集細胞(遠心)では、細胞密度が高く粘稠な検体ほど高速で、細胞数が少なく細胞変性を避けたい検体ほど低速で行う。髄液は細胞数がきわめて少なく細胞も脆弱なため、最も低速かつ短時間の遠心、あるいはサイトスピン(オートスメア)が用いられる。尿・胸水・膵液・胆汁はそれよりやや高い回転で集細胞される。
●細胞数が少なく低速集細胞=髄液(サイトスピン併用)。
●体腔液(やや高速)=胸水・腹水・心嚢液。
●その他の細胞診検体=尿(剥離細胞)・喀痰・膵液・胆汁・擦過検体。
●集細胞・標本作製法=遠心沈殿法・サイトスピン法・液状化検体細胞診〈LBC〉。

選択肢ごとの解説

第69回 午前55(病理組織細胞学)

急性炎症で特徴的にみられる現象はどれか。2つ選べ。

正答: ①好中球浸潤・③血漿成分の滲出

ポイント
急性炎症では血管透過性亢進により血漿成分が組織へ滲出して浮腫を生じ、好中球が遊走・浸潤して貪食を行うのが特徴である。リンパ球やマクロファージ・形質細胞の浸潤、線維芽細胞増殖、組織構築の改変(リモデリング)は、より遷延した慢性炎症や修復過程で目立つ所見である。
●急性炎症の徴候=発赤・腫脹・熱感・疼痛・機能障害(炎症の五徴)。
●急性炎症の主体細胞・反応=好中球浸潤・血管透過性亢進と血漿滲出・充血・浮腫。
●慢性炎症の主体=リンパ球・形質細胞・マクロファージ浸潤・肉芽組織形成・線維化(線維芽細胞増殖)。
●滲出液の分類=漿液性・線維素性・化膿性・出血性。

選択肢ごとの解説

第69回 午前56(病理組織細胞学)

静脈血が流れているのはどれか。2つ選べ。

正答: ②肺動脈・③臍帯動脈

ポイント
静脈血とは酸素分圧の低い血液を指し、必ずしも静脈を流れる血液とは限らない。肺循環では肺動脈が右心室から肺へ向かう酸素の少ない静脈血を運び、肺静脈が酸素化された動脈血を心臓へ戻す。胎児循環では臍帯動脈が胎児から胎盤へ向かう静脈血を運び、臍帯静脈が酸素豊富な動脈血を胎児へ運ぶ。
●静脈血(酸素の少ない血液)が流れる動脈=肺動脈・臍帯動脈。
●動脈血(酸素豊富な血液)が流れる静脈=肺静脈・臍帯静脈。
●胎児循環の短絡=卵円孔・動脈管〈Botallo管〉・静脈管〈Arantius管〉。

選択肢ごとの解説

第69回 午前57(病理組織細胞学)

H-E染色のエオジン液に加えるのはどれか。

正答: ②酢酸

ポイント
ヘマトキシリン・エオジン〈H-E〉染色のエオジンは酸性色素で、細胞質や膠原線維などの好酸性成分を赤く染める。エオジン液には酢酸を少量加えて液を弱酸性に保つことで、染色の鮮明さとコントラストを高める。塩酸は分別(脱色)に、アンモニアや炭酸リチウムはヘマトキシリンの色出し(青化)に用いられる。
●エオジン液に加える=酢酸(弱酸性化・コントラスト向上)。
●ヘマトキシリンの分別(脱色)=塩酸(塩酸アルコール)。
●核染色後の色出し(青化)=アンモニア水・炭酸リチウム・水道水。
●代表的ヘマトキシリン=Mayer・Carazzi・Gill。

選択肢ごとの解説

第69回 午前58(病理組織細胞学)

縦隔に含まれない臓器はどれか。

正答: ①肺

ポイント
縦隔は左右の肺に挟まれた胸郭中央の領域で、心臓・大血管・気管・食道・胸腺・神経・リンパ節などを含む。肺は縦隔の両側に位置する臓器であり、縦隔の構成には含まれない。縦隔は上・前・中・後縦隔に区分され、各臓器が分布する。
●上縦隔=胸腺上部・大血管(大動脈弓・上大静脈)・気管・食道。
●前縦隔=胸腺・脂肪・リンパ節。
●中縦隔=心臓・心膜・上行大動脈・気管分岐部。
●後縦隔=食道・下行大動脈・胸管・交感神経幹・奇静脈。

選択肢ごとの解説

第69回 午前59(臨床血液学)

正しいのはどれか。

正答: ②髄外造血は胎生期に認められる。

ポイント
造血は胎生期に卵黄嚢で始まり、肝臓・脾臓などの髄外で行われた後、出生後は骨髄が主体となる。胎生期の髄外造血は生理的な現象である。Tリンパ球は胸腺で成熟し、Bリンパ球は骨髄で成熟する。エリスロポエチンは主に腎臓で、トロンボポエチンは主に肝臓で産生され、免疫グロブリンは形質細胞が産生する。
●リンパ球の成熟部位=T細胞は胸腺・B細胞は骨髄。
●造血を調節する液性因子と産生部位=エリスロポエチン(腎臓)・トロンボポエチン(肝臓)・顆粒球コロニー刺激因子〈G-CSF〉。
●胎生期の造血部位の移行=卵黄嚢→肝臓・脾臓(髄外造血)→骨髄。
●病的髄外造血=骨髄線維症・慢性溶血性貧血。

選択肢ごとの解説

第69回 午前60(臨床血液学)

血液塗抹標本の染色法について誤っているのはどれか。

正答: ⑤特異的エステラーゼ染色はフッ化ナトリウムで阻害される。

ポイント
細胞化学染色は白血病細胞などの系統同定に有用である。特異的(ナフトールAS-Dクロロアセテート)エステラーゼは顆粒球系を染め、非特異的エステラーゼは単球系を染めてフッ化ナトリウムで阻害される。したがってフッ化ナトリウムで阻害されるのは非特異的エステラーゼであり、特異的エステラーゼは阻害されない。
●ペルオキシダーゼ陽性=顆粒球系(成熟好中球など)・骨髄性白血病の鑑別。
●エステラーゼ=特異的(顆粒球系・NaFで非阻害)・非特異的(単球系・NaFで阻害)。
●鉄染色(ベルリン青反応)=鉄芽球性貧血の環状鉄芽球検出。
●PAS染色=赤白血病の赤芽球やリンパ性白血病で陽性、正常赤芽球は陰性。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:血液細胞化学染色(特殊染色)の目的・判定・臨床意義

染色目的・陽性の対象臨床意義
鉄染色3価の非ヘモグロビン鉄(環状鉄芽球など)の証明骨髄異形成症候群〈MDS〉・鉄芽球性貧血の環状鉄芽球の鑑別
ペルオキシダーゼ染色顆粒球系細胞で陽性、リンパ系は陰性AML(3%以上陽性)とALLの鑑別
特異的エステラーゼ染色顆粒球系細胞で陽性非特異的エステラーゼとの二重染色でM4の鑑別
非特異的エステラーゼ染色単球系細胞で陽性、フッ化ナトリウムで阻害される単球性白血病(M4・M5)の鑑別
PAS染色正常赤芽球は陰性、異常な赤芽球やリンパ芽球で陽性赤白血病(M6)・ALL・MDSの異常赤芽球の検出
好中球アルカリホスファターゼ〈NAP〉染色好中球の成熟度を反映CML・PNHで低値、真性多血症・重症感染症で高値

第69回 午前61(臨床血液学)

赤血球沈降速度が遅延するのはどれか。2つ選べ。

正答: ②真性赤血球増加症・⑤先天性無フィブリノゲン血症

ポイント
赤血球沈降速度〈赤沈〉は、赤血球の連銭形成を促す血漿蛋白(フィブリノゲンやグロブリン)の増加で亢進し、赤血球数の増加やフィブリノゲン低下で遅延する。真性赤血球増加症は赤血球数増多により赤沈が遅延し、先天性無フィブリノゲン血症は連銭形成を促す蛋白の欠如で遅延する。関節リウマチ・ネフローゼ症候群・原発性マクログロブリン血症は炎症蛋白やグロブリン増加で赤沈が亢進する。
●赤沈遅延=多血症(真性赤血球増加症)・無/低フィブリノゲン血症(先天性無フィブリノゲン血症・DIC)・著明な赤血球増加。
●赤沈亢進=炎症(関節リウマチ・感染症)・高グロブリン血症(多発性骨髄腫・マクログロブリン血症)・貧血・ネフローゼ症候群(高フィブリノゲン血症)。
●赤沈に影響する因子=血漿蛋白(フィブリノゲン・グロブリン)・赤血球数・赤血球形態。

選択肢ごとの解説

第69回 午前62(臨床血液学)

自動血球計数測定値の誤差要因とその影響の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ①寒冷凝集素 — 赤血球数偽低値・⑤クリオグロブリン — 白血球数偽高値

ポイント
自動血球計数では検体性状により偽値を生じる。寒冷凝集素は赤血球を凝集させて赤血球数を偽低値とし、平均赤血球容積などにも影響する。クリオグロブリンは低温で析出した蛋白凝集塊が粒子として計数され白血球数を偽高値とする。巨大血小板は白血球域に計数され血小板偽低値、破砕赤血球は血小板域に計数され血小板偽高値、有核赤血球は白血球域に計数され白血球偽高値となる。
●赤血球数偽低値=寒冷凝集素(凝集)。
●白血球数偽高値=クリオグロブリン・有核赤血球・凝集塊・未溶血赤血球。
●血小板数偽低値=巨大血小板・血小板凝集(EDTA依存性偽性血小板減少)。
●血小板数偽高値=破砕赤血球・小型の脂質粒子や細胞断片。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:自動血球計数装置における主な偽値(測定誤差)要因

誤差要因影響
寒冷凝集素赤血球の凝集により赤血球数偽低値
クリオグロブリン低温で析出した粒子が血球としてカウントされ偽高値(集塊形成時は白血球数偽高値)
巨大血小板(容積20fL超)血小板としてカウントされず血小板数偽低値
破砕赤血球(容積2〜20fL)血小板としてカウントされ血小板数偽高値
有核赤血球溶血剤で除去されず残存し白血球数偽高値

第69回 午前63(臨床血液学)

引きガラス(ウェッジ)法での末梢血液塗抹標本の作製について誤っているのはどれか。

正答: ②塗抹後は速やかに温風で十分に乾燥させる。

ポイント
ウェッジ(引きガラス)法では塗抹後に振り乾燥や室温乾燥で速やかに自然乾燥させる。温風で過度に乾燥させると赤血球の収縮や変形などのアーチファクトを生じるため、温風で十分乾燥させるのは適切でない。塗抹の厚さや長さは引きガラスの角度・速度・血液量で変化し、大型細胞は引き終わり(末梢部や辺縁)に分布しやすい。
●良好な塗抹標本の条件=適切な厚さ・舌状で先端に厚い部分(フェザーエッジ)・気泡や穴がない。
●塗抹に影響する因子=引きガラスの角度(大で厚い)・塗抹速度(速いと短い)・血液量・ヘマトクリット。
●乾燥・固定=速やかな自然乾燥(温風は避ける)→メタノール固定。
●大型細胞の分布=単球・芽球・巨大血小板は辺縁や引き終わりに偏る。

選択肢ごとの解説

第69回 午前64(臨床血液学)

末梢血細胞のMay-Giemsa染色標本とフローサイトメトリの所見を別に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69aA064.52999a269d.jpg
第69回 午前64 の図

正答: ⑤慢性リンパ性白血病

ポイント
成人で成熟した小型リンパ球が著増し、塗抹標本で壊れた核(バスケット細胞・smudge cell)がみられ、フローサイトメトリでCD5・CD19・CD23陽性のB細胞単クローン性増殖を示す所見は慢性リンパ性白血病〈CLL〉に合致する。芽球が主体となる急性白血病や、花弁状核を示す成人T細胞白血病とは形態・表面マーカーが異なる。
●成熟リンパ系腫瘍=慢性リンパ性白血病(CD5・CD19・CD23陽性B細胞・smudge cell)・成人T細胞白血病〈ATL〉(花弁状核・HTLV-1)。
●急性白血病(芽球主体)=急性リンパ性白血病・急性単球性白血病(単芽球・前単球)。
●骨髄異形成/骨髄増殖=慢性骨髄単球性白血病〈CMML〉(単球増多・異形成)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な白血病・骨髄腫の細胞表面マーカー(CD抗原)パターン

疾患陽性となる主なCD抗原
急性骨髄性白血病〈AML〉CD13、CD33
B前駆細胞性急性リンパ性白血病CD19(必須)、CD34・CD10が陽性なら診断に有用
慢性リンパ性白血病〈CLL〉CD19、CD20、CD5、CD23
成人T細胞白血病〈ATL〉CD3、CD4、CD25
ヘアリー細胞白血病〈HCL〉CD19、CD20、CD11c、CD25、CD103
多発性骨髄腫CD38、CD138
発作性夜間ヘモグロビン尿症〈PNH〉CD55・CD59が欠損(陰性)
CD5は本来T細胞抗原だが、CLLでは腫瘍性B細胞に共発現する。軽鎖(κ/λ)の偏り(軽鎖制限)もB細胞腫瘍性増殖の指標となる。

第69回 午前65(臨床血液学)

骨髄芽球に当てはまるのはどれか。2つ選べ。

正答: ①核小体を認める。・④細胞質は好塩基性が強い。

ポイント
骨髄芽球は最も未熟な顆粒球系細胞で、核細胞質比〈N/C比〉が大きく、明瞭な核小体を認め、クロマチンは繊細(網状)で細胞質は好塩基性が強く、特異的(二次)顆粒を欠く。二次顆粒の出現や核クロマチンの粗剛化は、より成熟した段階の特徴である。
●骨髄芽球の特徴=N/C比大・明瞭な核小体・繊細なクロマチン・強い好塩基性細胞質・二次顆粒なし。
●顆粒球系の成熟過程=骨髄芽球→前骨髄球(アズール顆粒/一次顆粒)→骨髄球(二次顆粒出現)→後骨髄球→桿状核球→分葉核球。
●成熟に伴う変化=N/C比低下・核小体消失・クロマチン粗剛化・特異顆粒出現。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:好中球(顆粒球)系の分化・成熟段階

段階核小体細胞質・顆粒
骨髄芽球核小体2〜3個みられる顆粒なし、強い好塩基性
前骨髄球核小体は不明瞭化アズール顆粒(一次顆粒)が出現
骨髄球核小体消失二次顆粒(特異顆粒)が出現、塩基性は消失
この後、後骨髄球→桿状核球→分節核好中球へとさらに成熟する。

第69回 午前66(臨床血液学)

フィブリノゲンについて正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ①急性炎症で上昇する。・③トロンビン時間法により測定される。

ポイント
フィブリノゲン(第Ⅰ因子)は肝臓で産生される急性相反応蛋白で、炎症時に上昇する。トロンビンによりフィブリンへ転換され、その時間を測定するトロンビン時間法(Clauss法)で機能的に測定される。分子はAα・Bβ・γ鎖が2本ずつ計6本からなる二量体構造で、プラスミンによる分解産物のうちDダイマーは安定化フィブリンの分解で生じる。血中で最も高濃度な蛋白はアルブミンである。
●フィブリノゲン=肝産生・急性相反応蛋白・トロンビンでフィブリン化・Clauss法で測定。
●分子構造=(Aα・Bβ・γ)が2組の二量体(6本鎖)。
●線溶系マーカー=FDP(フィブリン/フィブリノゲン分解産物)・Dダイマー(安定化フィブリン分解で特異的に上昇)。
●血漿蛋白の濃度=アルブミンが最多、次いでグロブリン・フィブリノゲン。

選択肢ごとの解説

第69回 午前67(臨床血液学)

正しいのはどれか。

正答: ②鉄は血漿中でトランスフェリンに結合している。

ポイント
ヘム鉄は2価(Fe²⁺)の状態で酸素を可逆的に結合する。血漿中の鉄はトランスフェリンに結合して運搬される。成熟赤血球はミトコンドリアを欠くため、解糖系(Embden-Meyerhof経路)でATPを得る。ヘモグロビンの酸素親和性はpH上昇(アルカリ化)で増大し、ヘモグロビンA2は健常成人で約2〜3%を占めるにすぎない。
●鉄代謝=吸収(十二指腸・2価で吸収)・運搬(トランスフェリン・3価)・貯蔵(フェリチン・ヘモジデリン)。
●赤血球のエネルギー代謝=解糖系(ATP産生)・ペントースリン酸経路(NADPH・抗酸化)。
●酸素解離曲線の右方移動(親和性低下)=pH低下・二酸化炭素分圧上昇・体温上昇・2,3-DPG増加(Bohr効果)。
●正常成人ヘモグロビン分画=HbA(約97%)・HbA2(約2〜3%)・HbF(約1%未満)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:ヘモグロビン〈Hb〉の分画と異常ヘモグロビン

種類構成特徴
HbA(健常成人の約95〜96%)α2β2主要な成人型Hb
HbA2(健常成人の約2〜3%)α2δ2βサラセミアで増加
HbF(健常成人の約1%)α2γ2胎児期の主要Hb、出生後急速に減少、アルカリ抵抗性が強い
HbSα2βS2鎌状赤血球症でみられる異常Hb
HbHβ4αサラセミアでみられ、酸素親和性が強く低酸素症をきたす
ヘム鉄は2価(Fe²⁺)。鉄は血漿中でトランスフェリンに結合して運搬され、成熟赤血球は解糖系(嫌気的)でATPを産生する。

第69回 午前68(臨床微生物学)

世代時間が最も長いのはどれか。

正答: ③Mycobacterium tuberculosis

ポイント
世代時間(分裂に要する時間)は菌種で大きく異なる。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)は脂質(ミコール酸)に富む細胞壁をもち増殖が極めて遅く、世代時間は十数時間に及び、培養に数週間を要する。大腸菌・黄色ブドウ球菌・腸炎ビブリオ・セレウス菌などは世代時間が20〜30分程度と短い。
●世代時間が長い(発育が遅い)=抗酸菌(結核菌・非結核性抗酸菌)。
●世代時間が短い(発育が速い)=大腸菌・黄色ブドウ球菌・腸炎ビブリオ・セレウス菌・腸内細菌科。
●抗酸菌の特徴=Ziehl-Neelsen染色陽性・脂質に富む細胞壁・小川培地など特殊培地・週単位の培養。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:抗酸菌(Mycobacterium属)の分類(Runyon分類・発育速度・結核菌の特徴)

分類特徴代表菌
結核菌群小川培地でR型(粗造)コロニー形成、ニコチン酸(ナイアシン)試験陽性、Gram染色に染まりにくい(抗酸性)Mycobacterium tuberculosis
Runyon I群(光発色菌群)暗所培養では無色、光曝露後に黄色色素産生M. kansasii、M. marinum
Runyon III群(非光発色菌群)光曝露の有無に関わらず非色素産生、発育は比較的遅いM. avium complex
Runyon IV群(迅速発育菌群)7日以内に発育M. fortuitum
培養不能菌人工培地では培養できないM. leprae(らい菌)
抗酸菌は世代時間が長く発育が遅い(培養に数週間を要する)。BCGワクチンには結核菌ではなくMycobacterium bovisの弱毒株が用いられる。Nocardia属は抗酸菌ではないが部分的な抗酸性を示す点で紛らわしい。

第69回 午前69(臨床微生物学)

多剤耐性結核菌の判定に用いないのはどれか。

正答: ⑤ストレプトマイシン

ポイント
多剤耐性結核菌〈MDR-TB〉はイソニアジドとリファンピシンの両方に耐性を示すものと定義され、超多剤耐性〈XDR-TB〉ではこれにフルオロキノロン(レボフロキサシンなど)や注射薬(アミカシンなど)への耐性が加わる。これらは耐性判定の対象薬となる。ストレプトマイシンは古くからの抗結核薬だが、現行のMDR/XDR-TBの定義上の判定薬には含まれない。
●一次抗結核薬=イソニアジド・リファンピシン・エタンブトール・ピラジナミド・ストレプトマイシン。
●MDR-TBの定義=イソニアジドとリファンピシンへの耐性。
●XDR-TBの定義に関わる薬=フルオロキノロン(レボフロキサシン)・注射用二次薬(アミカシン・カナマイシン)。

選択肢ごとの解説

第69回 午前70(臨床微生物学)

腸管感染症患者の下痢便のGram染色標本を別に示す。矢印で示すのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69aA070.8299fd2a3e.jpg
第69回 午前70 の図

正答: ②Campylobacter jejuni

ポイント
腸管感染症患者の下痢便のGram染色で、らせん状またはカモメ翼状(gull-wing)に湾曲したGram陰性桿菌が観察される場合はCampylobacter属が代表的で、カンピロバクター腸炎の所見として矢印で示される。便の直接Gram染色で特徴的な菌形態を捉えることは迅速な推定診断に役立つ。図に示された湾曲した陰性桿菌は本菌に合致する。
●便Gram染色でみる湾曲・らせん菌=Campylobacter(カモメ翼状・微好気培養)・Vibrio(コンマ状)・Helicobacter(らせん状)。
●カンピロバクター腸炎=鶏肉等が原因・微好気で発育・Skirrow培地・Guillain-Barré症候群の先行感染。
●他の細菌性下痢起因菌=サルモネラ・赤痢菌・腸管出血性大腸菌・腸炎ビブリオ。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:便のGram染色でみられる彎曲・らせん状グラム陰性桿菌の鑑別

菌形態特徴
Campylobacter jejuniカモメの翼状(S字状)に彎曲微好気性、42℃発育、Skirrow培地、Guillain-Barré症候群の先行感染菌
Vibrio parahaemolyticusコンマ状(単一の屈曲)好塩性、TCBS寒天培地、海産物による食中毒
Helicobacter pyloriらせん状(複数回転)ウレアーゼ産生、胃粘膜に生息、胃炎・胃潰瘍・胃MALTリンパ腫の原因

第69回 午前71(臨床微生物学)

カルバペネム系抗菌薬が有効なのはどれか。

正答: ⑤基質拡張型β-ラクタマーゼ〈ESBL〉産生大腸菌

ポイント
カルバペネム系はβ-ラクタム系抗菌薬で、ESBLには分解されにくい。このため、本問ではESBL産生大腸菌が該当する。MRSAは低親和性PBP2'の獲得、MDRP・MDRAはカルバペネマーゼ、膜透過性低下、排出機構などによりカルバペネム耐性を示す。VREという名称はバンコマイシン耐性を表し、その主な機序であるD-Ala-D-Ala末端の変化を、カルバペネム耐性の機序として説明してはいけない。腸球菌のβ-ラクタム感受性は菌種やPBPなどに左右され、VRE感染症の治療薬としてカルバペネムを一律に選択することはできない。
●ESBL産生大腸菌=本問ではカルバペネムが有効。
●カルバペネムが無効な主な耐性菌=MRSA(PBP2')・MDRP・MDRA・カルバペネム耐性腸内細菌目細菌〈CRE〉。
●VREの代表的機序=VanA/VanB型では末端がD-Ala-D-Lacとなり、バンコマイシンの結合が低下する。
●代表的薬剤=MRSAにバンコマイシン/リネゾリド・VREにリネゾリド。

選択肢ごとの解説

第69回 午前72(臨床微生物学)

真菌に分類されるのはどれか。2つ選べ。

正答: ②Cryptococcus neoformans・④Pneumocystis jirovecii

ポイント
真菌は真核生物で、細胞膜に主要ステロールとしてエルゴステロールを、細胞壁にβ-グルカンやキチンなどの多糖を含む(Pneumocystis jiroveciiは例外的に細胞膜のエルゴステロールを欠く)。Cryptococcus neoformansは莢膜をもつ酵母様真菌、Pneumocystis jiroveciiは分類上真菌に位置づけられる。一方Chlamydia trachomatisとTreponema pallidumは細菌、Nocardia asteroidesは放線菌(細菌)である。
●真菌=Cryptococcus neoformans(莢膜・墨汁法)・Pneumocystis jirovecii(β-D-グルカン上昇・免疫不全で肺炎)・Candida・Aspergillus。
●偏性細胞内寄生の細菌=Chlamydia trachomatis(クラミジア)。
●スピロヘータ(細菌)=Treponema pallidum(梅毒)。
●放線菌(細菌)=Nocardia・Actinomyces。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:紛らわしい微生物の分類(真核生物か原核生物か)

微生物分類
原虫(赤痢アメーバ・トキソプラズマ等)真核生物
真菌(酵母・糸状菌等)真核生物
細菌(一般細菌・抗酸菌)原核生物
リケッチア・クラミジア原核生物
マイコプラズマ原核生物(細胞壁をもたない)
ウイルス原核生物・真核生物のいずれにも分類されない
Pneumocystis jirovecii真菌
Cryptococcus neoformans真菌
Actinomyces israelii細菌(放線菌)
Nocardia asteroides細菌(放線菌)
Mycobacterium avium細菌(抗酸菌)
Treponema pallidum細菌(スピロヘータ)
Chlamydia trachomatis細菌(偏性細胞内寄生)
Bifidobacterium dentium細菌
原虫・真菌は核膜をもつ核を有する真核生物、細菌・リケッチア・クラミジア・マイコプラズマは核膜のない核様体をもつ原核生物である。ウイルスは細胞構造をもたないため、いずれにも分類されない。Pneumocystis jiroveciiとCryptococcus neoformansは名称や性状から誤認しやすいが真菌に分類される。逆にActinomyces・Nocardiaは放線菌、Treponemaはスピロヘータで、いずれも細菌(原核生物)である。

第69回 午前73(臨床微生物学)

培地と使用目的の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ①Bordet-Gengou培地 — 選択分離・⑤Mueller-Hinton寒天培地 — 薬剤感受性検査

ポイント
Bordet-Gengou培地は百日咳菌の選択分離に用いる。Mueller-Hinton寒天培地は薬剤感受性試験(ディスク拡散法など)の標準培地である。Cary-Blair培地は腸管病原菌の輸送培地、King A培地は緑膿菌のピオシアニン産生確認、LIM培地はリジン脱炭酸・インドール・運動性を確認する性状確認培地である。
●選択分離培地=Bordet-Gengou(百日咳菌)・SS寒天(サルモネラ・赤痢菌)・TCBS(ビブリオ)・マンニット食塩(ブドウ球菌)。
●輸送培地=Cary-Blair(腸管病原菌)・Amies・Stuart。
●性状確認培地=King A/B(緑膿菌色素)・LIM(リジン・インドール・運動性)・TSI/SIM。
●薬剤感受性検査用=Mueller-Hinton寒天(CLSI標準)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:細菌の選択分離培地・輸送/性状確認/感受性検査用培地

培地名目的菌・用途分類
TCBS寒天培地Vibrio属(コレラ菌・腸炎ビブリオ等)選択分離
SS寒天培地Salmonella属・Shigella属選択分離
DHL寒天培地腸内細菌(Salmonella・Shigella等)選択分離
マッコンキー寒天培地腸内細菌(乳糖分解の鑑別)選択分離
CIN寒天培地Yersinia属(Y. enterocolitica等)選択分離
BBE寒天培地Bacteroides fragilis群選択分離
CCFA寒天培地Clostridioides difficile選択分離
NAC寒天培地Pseudomonas aeruginosa選択分離
Thayer-Martin寒天培地・GC寒天培地Neisseria属(淋菌・髄膜炎菌)選択分離
Skirrow寒天培地・CCDA培地Campylobacter属・Helicobacter属選択分離
Bordet-Gengou培地Bordetella pertussis(百日咳菌)選択分離(セファレキシン添加が一般的)
PPLO寒天培地Mycoplasma pneumoniae選択分離
WYOα寒天培地Legionella属選択分離
BCYEα寒天培地Legionella属非選択分離
マンニット食塩培地Staphylococcus属選択分離
小川培地Mycobacterium tuberculosis等の抗酸菌選択分離(マラカイトグリーンが選択剤)
Sabouraud寒天培地真菌全般分離・形態観察用(酸性培地)
Cary-Blair培地腸管病原菌検体輸送
King A培地Pseudomonas aeruginosaのピオシアニン産生確認性状確認
LIM培地腸内細菌のリジン脱炭酸・インドール・運動性確認性状確認
Mueller-Hinton寒天培地薬剤感受性試験(ディスク拡散法・希釈法)薬剤感受性検査

第69回 午前74(臨床微生物学)

WHOが提唱している手指衛生のタイミングに含まれないのはどれか。

正答: ④患者周辺の物品に触れる前

ポイント
WHOの「手指衛生の5つのタイミング(My 5 Moments for Hand Hygiene)」は、患者に触れる前・清潔/無菌操作の前・体液曝露リスクの後・患者に触れた後・患者周辺の物品に触れた後、である。患者周辺の物品については「触れた後」が対象であり、「触れる前」は含まれない。
●WHOの5つのタイミング=(1)患者に触れる前 (2)清潔/無菌操作の前 (3)体液曝露の可能性の後 (4)患者に触れた後 (5)患者周辺の物品に触れた後。
●手指衛生の方法=アルコール手指消毒・流水と石けんによる手洗い(目に見える汚染や芽胞形成菌では流水手洗い)。
●標準予防策〈スタンダードプリコーション〉=手指衛生・個人防護具・呼吸器衛生・器具/環境管理。

選択肢ごとの解説

第69回 午前75(臨床微生物学)

細菌と毒素の組合せで誤っているのはどれか。

正答: ④Streptococcus pyogenes — 毒素性ショック症候群毒素

ポイント
毒素性ショック症候群毒素〈TSST-1〉はStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)が産生するスーパー抗原であり、Streptococcus pyogenes(化膿レンサ球菌)ではない。化膿レンサ球菌は発熱毒素(発赤毒・SPE)を産生する。破傷風菌は神経毒素、腸管出血性大腸菌はベロ毒素、黄色ブドウ球菌はエンテロトキシン、腸炎ビブリオは耐熱性溶血毒を産生する。
●神経毒素=Clostridium tetani(テタノスパスミン)・Clostridium botulinum(ボツリヌス毒素)。
●下痢/食中毒毒素=腸管出血性大腸菌(ベロ毒素/志賀毒素様毒素)・黄色ブドウ球菌(エンテロトキシン)・腸炎ビブリオ(耐熱性溶血毒TDH)。
●スーパー抗原=黄色ブドウ球菌(TSST-1・エンテロトキシン)・化膿レンサ球菌(発熱毒素SPE)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な細菌毒素

菌種毒素症状・作用
大腸菌(ETEC)耐熱性/易熱性腸管毒〈ST/LT〉下痢(水様性)
コレラ菌コレラ毒素下痢(水様性)
赤痢菌志賀毒素下痢(粘血便)
腸管出血性大腸菌〈EHEC〉ベロ毒素(志賀毒素類似)下痢(粘血便)、溶血性尿毒症症候群〈HUS〉
腸炎ビブリオ耐熱性溶血毒〈TDH〉下痢(粘血便)
ジフテリア菌ジフテリア毒素(A-B毒素)末梢神経障害(軟口蓋麻痺など)・心筋炎
百日咳菌百日咳毒素インスリン分泌促進、リンパ球増多
破傷風菌破傷風毒素(テタノスパスミン)硬直性麻痺
ボツリヌス菌ボツリヌス毒素弛緩性麻痺(神経毒)
Clostridioides difficileトキシンB偽膜性腸炎
黄色ブドウ球菌エンテロトキシン嘔吐
黄色ブドウ球菌表皮剝脱毒素皮膚剝離(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群〈SSSS〉)
黄色ブドウ球菌毒素性ショック症候群毒素-1〈TSST-1〉発熱・発疹・低血圧(スーパー抗原)
黄色ブドウ球菌コアグラーゼ血漿凝固作用
化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)発赤毒素(Dick毒素)猩紅熱の発疹(スーパー抗原)
化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)ストレプトリジンO・S、ストレプトキナーゼ溶血、自己免疫疾患の一因
TSST-1・エンテロトキシン・発赤毒素はスーパー抗原として働く。EHECのベロ毒素は志賀毒素(Stx)とも呼ばれ、Stx1・Stx2などに分けられる。Stx1はShigella dysenteriae 1型の志賀毒素と極めて近縁であり、「別々の無関係な毒素」として覚えない。

第69回 午前76(臨床微生物学)

ハートインフュージョンブイヨンで培養した菌の染色標本を別に示す。染色法はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69aA076.4c75092606.jpg
第69回 午前76 の図

正答: ③Leifson法

ポイント
Leifson法は鞭毛染色法で、タンニン酸や塩化第二鉄などの媒染剤と塩基性フクシンなどの色素を併用し、細い鞭毛の表面に染色物質を沈着させて肥厚させることで光学顕微鏡で可視化する。ハートインフュージョンブイヨンのような栄養豊富な液体培地は鞭毛を良好に保った若い運動性菌を得やすく、鞭毛の本数や配置(単毛・束毛・周毛)の観察に適する。鞭毛は菌の運動性と関連し、菌種同定の補助所見となる。
●鞭毛染色=Leifson法・Gray法。
●芽胞染色=Wirtz法(Wirtz-Conklin、マラカイトグリーン)・Möller法。
●莢膜染色=Hiss法・墨汁法(陰性染色)・Anthony法。
●異染小体染色=Neisser法・Albert法(ジフテリア菌の同定)。
●細胞内寄生菌の染色=Giménez染色(レジオネラ・リケッチア)。

選択肢ごとの解説

第69回 午前77(臨床微生物学)

血中薬物濃度測定による治療薬物モニタリング〈TDM〉の対象となるのはどれか。

正答: ④ゲンタマイシン

ポイント
治療薬物モニタリング(therapeutic drug monitoring:TDM)は、有効域と中毒域が近接し治療域の狭い薬剤や、血中濃度の個人差が大きい薬剤で血中濃度を測定し投与設計を最適化する手法である。アミノグリコシド系のゲンタマイシンは腎毒性・聴器毒性(耳毒性)を生じうるためピーク値・トラフ値の測定が必要で、抗菌薬のなかでTDM対象の代表である。β-ラクタム系やマクロライド系は一般に安全域が広く、ルーチンのTDM対象ではない。
●抗菌薬のTDM対象=アミノグリコシド系(ゲンタマイシン・アミカシン・トブラマイシン)・グリコペプチド系(バンコマイシン・テイコプラニン)。
●その他のTDM対象薬=抗てんかん薬(フェニトイン・バルプロ酸)・強心配糖体(ジゴキシン)・気管支拡張薬(テオフィリン)・免疫抑制薬(シクロスポリン・タクロリムス)・抗不整脈薬。

選択肢ごとの解説

第69回 午前78(臨床微生物学)

ウイルスと疾患の組合せで正しいのはどれか。

正答: ④ヒトパルボウイルス — 伝染性紅斑

ポイント
ヒトパルボウイルスB19は伝染性紅斑(りんご病)の原因ウイルスで、両頬の紅斑と四肢のレース状(網状)紅斑を呈する。赤芽球前駆細胞に感染して増殖を抑制するため、溶血性貧血の患者では一過性赤芽球癆(aplastic crisis)を、妊婦感染では胎児水腫を起こしうる。他の選択肢のウイルスはそれぞれ別の疾患を起こす。
●ピコルナウイルス科=コクサッキーウイルス・エンテロウイルス(手足口病・ヘルパンギーナ・無菌性髄膜炎)。
●ヘルペスウイルス科=サイトメガロウイルス(先天感染・免疫不全者の網膜炎/肺炎)・単純ヘルペス・水痘帯状疱疹。
●フラビウイルス科=デングウイルス(デング熱・出血熱)・日本脳炎ウイルス。
●パラミクソウイルス=麻疹・ムンプス(RSウイルスは2016年の分類変更でニューモウイルス科へ移された。細気管支炎・肺炎の主因)。
●パルボウイルス科=ヒトパルボウイルスB19(伝染性紅斑・赤芽球癆・胎児水腫)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主なウイルスと疾患

ウイルス核酸エンベロープ疾患
ヒトパルボウイルスB19DNA−伝染性紅斑(リンゴ病)
単純ヘルペスウイルスDNA+1型:口唇/角膜ヘルペス、2型:性器ヘルペス
水痘・帯状疱疹ウイルスDNA+水痘、帯状疱疹、脳炎
EBウイルスDNA+伝染性単核球症、Burkittリンパ腫
サイトメガロウイルスDNA+巨細胞封入体症、間質性肺炎
ヒトヘルペスウイルス6、7DNA+突発性発疹
B型肝炎ウイルスDNA+B型肝炎
アデノウイルスDNA−咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎
アデノウイルス40、41DNA−乳児の急性胃腸炎
パピローマウイルスDNA−疣贅(いぼ)、子宮頸癌
エンテロウイルス71RNA−手足口病
ロタウイルスRNA−乳児嘔吐下痢症
ノロウイルスRNA−ウイルス性食中毒・胃腸炎
日本脳炎ウイルスRNA+日本脳炎
エコーウイルスRNA−夏風邪、無菌性髄膜炎
コクサッキーウイルスRNA−A群:ヘルパンギーナ・手足口病、B群:流行性筋痛症・心筋炎
ライノウイルスRNA−風邪症候群(成人の普通感冒)
ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉RNA+AIDS
風疹ウイルスRNA+風疹、先天性風疹症候群
ムンプスウイルスRNA+流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
インフルエンザウイルスRNA+流行性感冒
デングウイルスRNA+デング熱、デング出血熱
C型肝炎ウイルスRNA+C型肝炎、肝硬変、肝癌
RSウイルスRNA+乳児の冬季肺炎(細気管支炎)
コロナウイルスRNA+普通感冒など

第69回 午前79(臨床免疫学)

主要組織適合性遺伝子複合体〈MHC〉について正しいのはどれか。

正答: ③CD4分子の結合部位はβ₂ドメインに存在する。

ポイント
主要組織適合性遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC、ヒトではHLA)は第6染色体短腕に存在する。クラスⅠ分子はほぼ全有核細胞に発現し、CD8と結合して細胞傷害性T細胞に抗原を提示する。クラスⅡ分子は抗原提示細胞に限局して発現し、CD4はそのβ₂ドメインに結合してヘルパーT細胞に提示する。クラスⅠの軽鎖であるβ₂-ミクログロブリンは多型性に乏しい。
●MHCクラスⅠ=HLA-A/B/C、全有核細胞に発現、CD8(細胞傷害性T細胞)に提示、内因性抗原。
●MHCクラスⅡ=HLA-DR/DQ/DP、抗原提示細胞(樹状細胞・マクロファージ・B細胞)に発現、CD4(ヘルパーT細胞)に提示、外因性抗原。
●関連事項=β₂-ミクログロブリン(クラスⅠ軽鎖・非多型)・HLAは第6染色体短腕。

選択肢ごとの解説

第69回 午前80(臨床免疫学)

B細胞はどれか。

正答: ④CD19陽性細胞

ポイント
細胞表面分化抗原(cluster of differentiation:CD)は白血球系統の同定に用いられる。CD19はB細胞系統で発現する代表的マーカーであり、フローサイトメトリーでのB細胞同定に用いる。CD3はT細胞全般、CD4はヘルパーT細胞、CD8は細胞傷害性T細胞、CD56はNK細胞のマーカーである。
●B細胞マーカー=CD19・CD20・CD79a・表面免疫グロブリン。
●T細胞マーカー=CD3(汎T)・CD4(ヘルパー)・CD8(細胞傷害性)・CD2・CD5・CD7。
●NK細胞マーカー=CD16・CD56(CD3陰性)。
●骨髄系・幹細胞マーカー=CD13・CD33(骨髄系)・CD34(造血幹/前駆細胞)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な細胞表面マーカー(CD分類)と発現細胞

CD発現細胞・特徴
CD3汎T細胞、T細胞受容体
CD4ヘルパーT細胞(単球でも弱陽性)
CD10幼若B細胞(CALLA)
CD13顆粒球系細胞(CD33とともにFAB分類M0の診断に有用)
CD14成熟単球
CD19B細胞
CD20B細胞
CD25活性化T細胞(IL-2受容体α鎖、成人T細胞白血病でも陽性)
CD33顆粒球系細胞(CD13とともにFAB分類M0の診断に有用)
CD34造血幹細胞
CD38多発性骨髄腫細胞・形質細胞で強陽性(形質細胞に特異的ではない)
CD41巨核球(FAB分類M7の診断に有用)
CD45白血球全般(共通白血球抗原)
CD56NK細胞
CD61血小板(FAB分類M7の診断に有用)
CD138形質細胞に特異的

第69回 午前81(臨床免疫学)

間接(受身)凝集反応で検出できないのはどれか。

正答: ⑤Donath-Landsteiner抗体

ポイント
間接(受身)凝集反応は、抗原または抗体をラテックスやゼラチン粒子、赤血球などの担体に結合させ、対応する抗体・抗原が存在すると粒子が架橋されて凝集する現象を検出する方法である。HBs抗体・HCV抗体・HTLV-1抗体・マイコプラズマ抗体はいずれも受身凝集法(粒子凝集法)で検出できる。Donath-Landsteiner抗体は発作性寒冷ヘモグロビン尿症でみられる二相性溶血素で、低温で赤血球に結合し加温で補体を活性化して溶血を起こすため、凝集ではなくDonath-Landsteiner試験(二相性溶血反応)で検出する。
●凝集反応=直接凝集(赤血球・細菌そのものの凝集)・間接(受身)凝集(ラテックス凝集・ゼラチン粒子凝集・受身赤血球凝集)。
●溶血反応で検出=Donath-Landsteiner抗体(二相性溶血素)・補体結合反応。
●標識抗体法=ELISA・蛍光抗体法・化学発光免疫測定。

選択肢ごとの解説

第69回 午前82(臨床免疫学)

間接蛍光抗体法による抗核抗体検査所見を別に示す。この所見から考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69aA082.6f38edbfaa.jpg
第69回 午前82 の図

正答: ①CREST症候群

ポイント
間接蛍光抗体法による抗核抗体検査で、分裂中期細胞の染色体(セントロメア)に一致した点状の蛍光(discrete speckled=散在斑紋型/セントロメア型)を示す像は、抗セントロメア抗体を反映する。抗セントロメア抗体は限局皮膚硬化型全身性強皮症の一型であるCREST症候群と関連が深く、診断の手がかりとなる。Sjögren症候群・SLE・薬剤誘発性ループス・混合性結合組織病(MCTD)はそれぞれ異なる染色パターンと自己抗体を示す。
●抗核抗体の染色パターンと対応抗体=均質型(homogeneous)=抗DNA・抗ヒストン、斑紋型(speckled)=抗SS-A/SS-B・抗U1-RNP・抗Sm、辺縁型(peripheral)=抗二本鎖DNA、核小体型(nucleolar)=抗Scl-70・抗RNAポリメラーゼ、セントロメア型=抗セントロメア抗体。
●疾患特異的自己抗体=抗Sm(SLE)・抗U1-RNP(MCTD)・抗ヒストン(薬剤誘発性ループス)・抗SS-A/SS-B(Sjögren症候群)・抗セントロメア/抗Scl-70(全身性強皮症)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:抗核抗体の染色パターンと関連する自己免疫疾患

染色パターン推定される抗体代表的な疾患
辺縁(peripheral)型抗DNA抗体全身性エリテマトーデス〈SLE〉
均質(homogeneous)型抗ヒストン抗体/抗DNP抗体SLE・薬剤誘発性ループス/SLE・RA・全身性強皮症
斑紋(speckled)型 — 抗U1-RNP抗体抗ENA抗体混合性結合組織病〈MCTD〉
斑紋(speckled)型 — 抗Sm抗体抗ENA抗体SLE
斑紋(speckled)型 — 抗SS-B抗体抗ENA抗体Sjögren症候群
斑紋(speckled)型 — 抗Scl-70抗体抗ENA抗体全身性強皮症
核小体(nucleolar)型抗核小体抗体・抗PM-Scl抗体全身性強皮症
散在斑紋(discrete speckled)型抗セントロメア抗体CREST症候群
細胞質(cytoplasmic)型抗ミトコンドリア抗体/抗Jo-1抗体/抗SS-A抗体原発性胆汁性胆管炎/多発性筋炎・皮膚筋炎/Sjögren症候群

第69回 午前83(臨床免疫学)

抗ミトコンドリア抗体が検出されるのはどれか。

正答: ④原発性胆汁性胆管炎

ポイント
抗ミトコンドリア抗体(とくにM2分画)は原発性胆汁性胆管炎の血清診断マーカーで、中年女性に多く、肝内小型胆管の慢性非化膿性破壊性胆管炎による胆汁うっ滞を特徴とする。胆道系酵素(ALPやγ-GTP)の上昇やIgMの上昇を伴うことが多い。他の選択肢の疾患はそれぞれ別の自己抗体と関連する。
●臓器特異的自己抗体と疾患=抗ミトコンドリア抗体(原発性胆汁性胆管炎)・抗アセチルコリン受容体抗体(重症筋無力症)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ/抗サイログロブリン抗体(慢性甲状腺炎)・抗糸球体基底膜抗体(Goodpasture症候群)・抗血小板抗体(特発性血小板減少性紫斑病)。
●肝関連自己抗体=抗ミトコンドリア抗体(原発性胆汁性胆管炎)・抗平滑筋抗体/抗LKM-1抗体(自己免疫性肝炎)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:臓器特異的自己抗体と自己免疫疾患

自己抗体対応する疾患
抗内因子抗体・抗胃壁細胞抗体悪性貧血
抗TSH受容体抗体Basedow病
抗サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ(抗マイクロソーム)抗体橋本病(慢性甲状腺炎)
抗アセチルコリン受容体抗体重症筋無力症
抗ミトコンドリア抗体原発性胆汁性胆管炎〈PBC〉
抗赤血球抗体自己免疫性溶血性貧血
抗血小板抗体特発性血小板減少性紫斑病〈ITP〉
抗糸球体基底膜抗体Goodpasture症候群
抗平滑筋抗体・抗核抗体自己免疫性肝炎
抗副腎皮質抗体特発性Addison病
リウマトイド因子・抗CCP抗体関節リウマチ〈RA〉
抗GAD抗体1型糖尿病
抗dsDNA抗体・抗Sm抗体全身性エリテマトーデス〈SLE〉
抗Scl-70抗体・抗セントロメア抗体全身性強皮症(全身性硬化症)
抗Jo-1抗体多発性筋炎・皮膚筋炎
抗SS-A抗体・抗SS-B抗体Sjögren症候群
抗ENA抗体・抗U1-RNP抗体混合性結合組織病〈MCTD〉
サイロキシン結合グロブリン〈TBG〉は甲状腺ホルモンの運搬蛋白であり、自己抗体の標的とはならない。

第69回 午前84(臨床免疫学)

抗体を精製する方法でないのはどれか。

正答: ④塩化セシウム密度勾配遠心分離法

ポイント
抗体(免疫グロブリン)の精製には、硫安などによる塩析(タンパク質の溶解度差を利用した粗精製)、分子量差を利用するゲル濾過、電荷差を利用するイオン交換クロマトグラフィ、プロテインA/Gや特異抗原を担体に結合させたアフィニティクロマトグラフィなどが用いられる。塩化セシウム密度勾配遠心分離は密度差を利用してDNAなどの核酸やウイルス粒子を分離する方法で、抗体精製には一般に用いない。
●タンパク質(抗体)精製法=塩析(硫安沈殿)・ゲル濾過・イオン交換クロマトグラフィ・アフィニティクロマトグラフィ(プロテインA/G)・等電点電気泳動。
●密度勾配遠心分離の用途=核酸(DNA/RNA)・ウイルス・細胞分画(リンパ球分離など)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:クロマトグラフィの分離原理

種類分離の原理
吸着クロマトグラフィ試料と固定相の化学的吸着の差を利用
分配クロマトグラフィ(順相)固定相への溶解度の違いを利用。移動相より極性の高い固定相を用いる
分配クロマトグラフィ(逆相)固定相への溶解度の違いを利用。移動相より極性の低い固定相を用いる
イオン交換クロマトグラフィ試料の荷電による固定相との静電的相互作用を利用
ゲル濾過クロマトグラフィ分子の大きさ(分子量)の差=分子ふるい効果を利用
アフィニティクロマトグラフィ抗原抗体反応・酵素と基質などの生物学的親和性を利用

第69回 午前85(臨床免疫学)

受血者と供血者の血液型を以下に示す。輸血を行った場合、受血者が産生する可能性のある不規則抗体はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69aA085.d528d6f1c9.jpg
第69回 午前85 の図

正答: ③抗C、抗Jkb、抗Fyb、抗Dia

ポイント
輸血後に産生されうる不規則抗体は、受血者が持たず供血者赤血球が持つ抗原に対して生じる。本例では、受血者ccに対し供血者がCを持つため抗C、受血者Jk(b−)で供血者Jk(b+)のため抗Jkb、受血者Fy(b−)で供血者Fy(b+)のため抗Fyb、受血者Di(a−)で供血者Di(a+)のため抗Diaが産生されうる。受血者がすでに持つ抗原(c・E・Jka・Fya・Dib)やDのように双方が陽性の抗原に対する抗体は産生されない。
●Rh系=D・C・c・E・eの抗原。本例は受血者DccEE、供血者DCCEEで、欠く抗原はCのみ。
●Kidd系=Jka・Jkb(抗Jka/抗Jkbは遅発性溶血反応の原因となりうる)。
●Duffy系=Fya・Fyb。
●Diego系=Dia・Dib(Diaは日本人で陽性者が比較的多い)。

選択肢ごとの解説

第69回 午前86(臨床免疫学)

緊急輸血が必要な患者が搬送された。血液型の確定ができない状況下で使用する輸血用血液製剤と血液型の組合せで正しいのはどれか。

正答: ②赤血球製剤 — O型RhD陽性

ポイント
血液型の確定ができない緊急輸血では、赤血球製剤としてA・B抗原を持たないO型を選択する。O型赤血球はどの患者の抗A・抗B抗体とも反応せず破壊されにくいため、異型適合血として用いられる(RhD陰性が望ましいが、確保困難時はO型RhD陽性も状況により用いる)。血漿製剤では逆に抗A・抗Bを含まないAB型を選ぶのが原則である。
●異型適合輸血の原則=赤血球は供血者赤血球抗原を受血者抗体が攻撃しない型(緊急時はO型)、血漿は供血者血漿中抗体が受血者赤血球を攻撃しない型(緊急時はAB型)。
●RhDの考慮=妊娠可能女性ではRhD陰性を優先し、抗D産生(次回妊娠時の新生児溶血性疾患)を避ける。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:ABO血液型の抗原・抗体と輸血用血液製剤の適合

血液型赤血球の抗原血清中の抗体適合する赤血球製剤(供血者型)適合する血漿・血小板製剤(供血者型)血液製剤ラベル色
A型A抗原抗B抗体A型・O型A型・AB型黄色
B型B抗原抗A抗体B型・O型B型・AB型白色
O型抗原なし抗A抗体・抗B抗体O型のみO型・A型・B型・AB型青色
AB型A抗原・B抗原抗体なしA型・B型・O型・AB型AB型のみ桃色
赤血球製剤は、供血者赤血球の抗原が患者血清中の抗体と反応しない型を選ぶため「抗原の少ない型」ほど適合範囲が広い(O型が万能供血者、AB型が万能受血者)。血漿・血小板製剤は逆に、供血者血漿中の抗体が患者赤血球の抗原と反応しない型を選ぶため、赤血球とは適合関係が左右反対になる(AB型血漿が万能供血)。血液型が確定できない緊急輸血では、赤血球製剤はO型、血漿・血小板製剤はAB型を用いる(RhD陰性製剤は病院在庫が乏しく供給に時間を要するため、救命優先でRhD陽性製剤を応急的に使用することがある)。ラベル色は日本赤十字社の規定で取り違い防止のために用いられる。

第69回 午前87(臨床免疫学)

輸血検査の内部精度管理で、確認する必要性が低い項目はどれか。

正答: ①検査室気圧

ポイント
輸血検査の内部精度管理では、抗原抗体反応や凝集判定に直接影響する環境・機器条件を点検する。室温・湿度は反応性や試薬・試料の保存状態に、恒温槽の温度は反応温度に、判定用遠心機の回転数(遠心力)は凝集の形成と判定に影響するため確認が必要である。検査室の気圧は輸血検査の結果に実質的な影響を与えず、確認の必要性は低い。
●内部精度管理で点検する項目=試薬の有効期限・性能(既知陽性/陰性のコントロール)・機器(恒温槽温度・遠心機回転数)・環境(室温・湿度)・手技。
●外部精度管理=施設間比較(サーベイ)による精度評価。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:輸血検査の精度管理で確認すべき項目

区分確認項目
確認が必要検査室の室温・湿度、恒温槽の温度、判定用遠心機の回転数、試薬の有効期限・性能(既知陽性/陰性コントロール)
確認の必要性が低い検査室の気圧
室温・湿度・恒温槽温度・遠心条件は抗原抗体反応や凝集の判定に直接影響するため内部精度管理で点検する。

第69回 午前88(臨床免疫学)

ABO血液型について誤っているのはどれか。

正答: ④抗Aおよび抗B抗体の産生は胎児期に始まる。

ポイント
ABO血液型では、Landsteinerの法則により自己が持たない抗原に対する規則抗体(抗A・抗B)を血清中に持つ。これらの自然抗体は出生時にはほとんど検出されず、生後数か月以降に腸内細菌などの環境抗原刺激によって産生され始めるため、胎児期から産生されるわけではない。ABO遺伝子は第9染色体長腕にあり、新生児・乳児では抗原量が成人より少なく、獲得性BはA型者のA抗原が細菌酵素などで後天的に変化したものである。
●ABO血液型の基本=Landsteinerの法則・第9染色体長腕の遺伝子・H物質を基質としてA/B転移酵素がA/B抗原を産生。
●亜型・変異=Bombay型(H欠損)・獲得性B・cisAB・亜型(A2など)。
●自然抗体(抗A・抗B)=IgM主体・生後産生・規則抗体。

選択肢ごとの解説

第69回 午前89(臨床免疫学)

Th2細胞が産生するサイトカインはどれか。2つ選べ。

正答: ②インターロイキン4・③インターロイキン10

ポイント
ヘルパーT細胞はサイトカイン産生パターンによりTh1とTh2に大別される。Th2細胞はインターロイキン4・5・6・10・13などを産生し、B細胞の抗体産生(とくにIgE)やアレルギー・寄生虫に対する液性免疫を促進する。Th1細胞はインターロイキン2やインターフェロンγを産生して細胞性免疫を担い、インターロイキン12は樹状細胞などが産生してTh1分化を誘導する。
●Th1サイトカイン=インターロイキン2・インターフェロンγ・腫瘍壊死因子β(細胞性免疫・マクロファージ活性化)。
●Th2サイトカイン=インターロイキン4・5・6・10・13(液性免疫・IgE産生・好酸球活性化)。
●その他のヘルパーT=Th17(インターロイキン17)・制御性T細胞(インターロイキン10・TGF-β)。

選択肢ごとの解説

第69回 午前90(公衆衛生学)

特定原材料として食品への表示が義務付けられているのはどれか。2つ選べ。

正答: ②卵・③小麦

ポイント
食物アレルギー表示制度では、発症数が多いか重篤化しやすいため容器包装への表示が義務付けられている「特定原材料」が定められており、えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)の8品目に、2026年4月からカシューナッツが追加され9品目が該当する(カシューナッツの表示には約2年の経過措置がある)。卵と小麦はこの義務表示対象である。さば・大豆は表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」に分類され、表示は義務ではない。米は特定原材料にも特定原材料に準ずるものにも含まれない。
●特定原材料(表示義務)=えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生・カシューナッツ(カシューナッツは2026年4月追加・経過措置約2年)。
●特定原材料に準ずるもの(表示推奨)=大豆・さば・あわび・いか・いくら・オレンジ・キウイ・牛肉・豚肉・鶏肉・さけ・ゼラチン・バナナ・もも・やまいも・りんご・ごま・アーモンド・ピスタチオなど(カシューナッツは2026年4月に表示義務へ移行、ピスタチオは同時に推奨へ追加)。

選択肢ごとの解説

第69回 午前91(公衆衛生学)

統合失調症で入院が必要と診断されたが、本人が入院を拒んだため、父親の同意によって入院させた。この場合の入院形態はどれか。

正答: ④医療保護入院

ポイント
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)では、精神保健指定医が入院の必要を認めたが本人の同意が得られない場合に、家族等のうちいずれかの者の同意があれば医療保護入院となる。父親は家族等にあたり、本人が入院を拒んでいるため医療保護入院に該当する。任意入院は本人の同意による入院、措置・緊急措置入院は自傷他害のおそれに基づく行政措置、応急入院は家族等の同意も得られない緊急時の72時間以内の入院である。
●精神科入院形態=任意入院(本人同意)・医療保護入院(指定医1名+家族等の同意)・応急入院(指定医1名・同意者なし・72時間以内)・措置入院(指定医2名・自傷他害・知事権限)・緊急措置入院(指定医1名・急を要する措置・72時間以内)。

選択肢ごとの解説

第69回 午前92(公衆衛生学)

保健所の業務はどれか。2つ選べ。

正答: ④医療機関への立入検査・⑤食中毒発生時の原因調査

ポイント
保健所は地域保健法に基づく広域的・専門的な公衆衛生の拠点で、都道府県・指定都市・中核市などが設置する。医療法に基づく医療機関への立入検査(医療監視)や、食中毒・感染症発生時の原因調査・防疫、難病・精神保健・結核対策などを担う。医療計画の策定は都道府県、乳幼児健康診査や障害者手帳に関わる身近な対人保健サービスは市町村(保健センター)が主に担う。
●保健所の業務=医療監視(立入検査)・食中毒/感染症の調査と防疫・難病/精神/結核対策・環境衛生/食品衛生監視・人口動態統計。
●市町村(保健センター)の業務=乳幼児/妊産婦健康診査・予防接種・健康相談・健康教育などの身近な対人サービス。

選択肢ごとの解説

第69回 午前93(公衆衛生学)

公的医療保険の給付対象に含まれないのはどれか。

正答: ⑤予防接種

ポイント
公的医療保険は疾病・負傷の治療に対して給付する制度であり、健康増進や疾病予防を目的とする行為は原則として給付対象外である。予防接種は感染症の予防を目的とするため保険給付に含まれず、予防接種法に基づく定期接種は公費負担で行われる。禁煙治療(条件を満たすニコチン依存症管理料)、人工透析、帝王切開(異常分娩)、訪問看護はいずれも保険給付の対象である。
●公的医療保険の対象外(原則)=予防接種・健康診断/人間ドック・正常妊娠/正常分娩・予防目的の処置・美容目的の施術。
●公費が関わる予防=予防接種法(定期接種)・感染症法・がん検診(健康増進法)。

選択肢ごとの解説

第69回 午前94(公衆衛生学)

水道水質基準において、人の健康の保護のため「検出されないこと」と規定されているのはどれか。

正答: ③大腸菌

ポイント
水道法に基づく水質基準では、大腸菌は「検出されないこと」と規定され、糞便汚染の指標として陰性であることが求められる。ヒ素・フッ素・アルキル水銀・シアン化合物などの化学物質は健康影響の観点から基準値(濃度の上限値以下)として規定されており、完全な不検出を求めるものではない。
●「検出されないこと」と規定=大腸菌。
●基準値(上限濃度)で規定される主な項目=ヒ素・フッ素・水銀(アルキル水銀含む)・シアン・鉛・カドミウム・硝酸態/亜硝酸態窒素・総トリハロメタンなど。
●水質の分類=健康に関する項目(化学物質・病原微生物)と性状に関する項目(味・臭気・色度・濁度など)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:水質基準における「検出されないこと」の規定(水道法/公共用水域環境基準)

規定「検出されないこと」の対象基準値(数値)が定められる対象の例
水道法(水道水質基準)大腸菌ヒ素・フッ素・水銀・シアン化合物 等
水質汚濁に係る環境基準(公共用水域・人の健康の保護に関する基準)アルキル水銀・全シアン・PCB鉛・ヒ素・フッ素 等
同じ「検出されないこと」でも、水道法と公共用水域の環境基準とでは対象項目が異なる。

第69回 午前95(医用工学概論)

100 Ωの負荷につながれた装置の消費電力が100 Wであった。この装置の負荷を200 Ωに変えたときの消費電力[W]はどれか。

正答: ②50

ポイント
電源電圧が一定の条件では、消費電力Pは電圧Vと抵抗Rを用いてP=V²/Rで表され、抵抗に反比例する。100Ωで100Wのとき電圧はV=√(P×R)=√(100×100)=100Vである。同じ電圧のまま抵抗を200Ωにすると、P=100²/200=50Wとなる。
●電力の式=P=VI=V²/R=I²R。
●電圧一定なら抵抗を2倍で電力1/2、電流一定なら抵抗を2倍で電力2倍(条件で結論が変わる)。
●関連単位=電力[W]・電圧[V]・電流[A]・抵抗[Ω]。

選択肢ごとの解説

第69回 午前96(医用工学概論)

医用電気機器のクラス別分類で正しいのはどれか。

正答: ④クラスⅡ機器は2 Pプラグで使用することができる。

ポイント
医用電気機器のクラス分類は、感電に対する保護手段(追加保護手段)の種類による区分である。クラスⅠ機器は基礎絶縁に加えて保護接地を追加保護手段とし、3Pプラグを用いる。クラスⅡ機器は二重絶縁(基礎絶縁と補助絶縁)またはこれと同等の保護を持つ補強絶縁によって感電を防止する。保護接地に依存しないため、2Pプラグで使用できる。内部電源機器も外部電源に接続して使用できる場合がある。装着部の型(B・BF・CF)は患者漏れ電流による区分で、クラス分類とは別である。
●感電保護のクラス分類=クラスⅠ(保護接地・3P)・クラスⅡ(補強絶縁/二重絶縁・2P)・内部電源機器。
●装着部による分類=B形・BF形(フローティング)・CF形(心臓直接適用可)。
●関連=漏れ電流(接地漏れ・接触/外装漏れ・患者漏れ電流)の許容値管理。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:医用電気機器のクラス分類と保護手段

区分保護手段追加保護手段備考
クラスⅠ機器基礎絶縁保護接地保護接地設備が必要で3Pプラグを使用する。多くの医用電気機器はクラスⅠ機器である。
クラスⅡ機器基礎絶縁補助絶縁(基礎絶縁と合わせて二重絶縁)二重絶縁と同等の保護をもつ補強絶縁を用いる構造もある。保護接地に依存しないため、使用上の設備による制限はなく2Pプラグでも使用できる。
内部電源機器基礎絶縁内部電源外部電源に接続する時はクラスⅠまたはクラスⅡ機器として働く。
基礎絶縁とは感電に対する基本的な保護を行う絶縁。必要な空間距離・沿面距離は適用規格や使用電圧などの条件で決まる。追加保護手段とは、保護手段である基礎絶縁が破壊されても電気的安全を保つための手段である。

第69回 午前97(医用工学概論)

静止画の標準的なファイル拡張子はどれか。2つ選べ。

正答: ③JPEG・⑤TIFF

ポイント
静止画の標準的なファイル形式の拡張子には、写真などの非可逆圧縮に用いるJPEGや、医用・印刷用途の高画質保存に用いるTIFFがある。CSVはカンマ区切りの表形式データ、FLVはFlash Video形式の動画、MP3は音声の圧縮ファイル形式であり、いずれも静止画ではない。
●静止画形式=JPEG・TIFF・PNG・GIF・BMP。
●動画形式=FLV・MP4・AVI・MOV・WMV。
●音声形式=MP3・WAV・AAC・FLAC。
●データ/文書形式=CSV・TXT・XML・PDF。

選択肢ごとの解説

第69回 午前98(医用工学概論)

医療情報システムで保健医療情報交換の標準規格はどれか。

正答: ②HL7

ポイント
HL7(Health Level Seven)は、医療情報システム間で患者情報や検査・処方・予約などのデータを交換するための標準規格である。DICOMは医用画像の保存・通信規格、ICD11は世界保健機関による疾病分類、JLAC10/11は臨床検査項目分類コード、PACSは医用画像の保存・伝送・表示システムであり、保健医療情報交換の標準規格はHL7である。
●医療情報の標準規格=HL7(情報交換)・DICOM(医用画像)・FHIR(Web技術ベースの交換規格)。
●コード/分類=ICD(疾病分類)・JLAC10/11(臨床検査項目)・レセプト電算コード・HOT(医薬品)。
●システム=PACS(画像)・電子カルテ・オーダリングシステム。

選択肢ごとの解説

第69回 午前99(医用工学概論)

37 ℃の媒質中における音速[m/s]として誤っているのはどれか。

正答: ②脂肪:900

ポイント
生体内の音速は媒質の密度と弾性で決まる。概ね空気で約340〜350m/s、脂肪で約1,450m/s、水で約1,480m/s、血液で約1,570m/s、頭蓋骨など硬組織で約4,000m/s台である。脂肪の音速は約1,450m/sであり、900m/sという値は実際より大幅に低く誤りである。超音波診断では軟部組織の代表値として約1,530m/sが用いられる。
●生体の音速の目安=空気約350・脂肪約1,450・水約1,480・軟部組織約1,530・血液約1,570・骨約4,000m/s。
●音響インピーダンス=密度×音速で決まり、界面での反射の強さを左右する。
●関連=音速が大きい媒質ほど一般に硬く密度が高い(気体<軟部組織<骨)。

選択肢ごとの解説

第69回 午前100(医用工学概論)

物理量の変化が電気抵抗の変化として現れるトランスデューサはどれか。2つ選べ。

正答: ①サーミスタ・②ストレインゲージ

ポイント
トランスデューサ(変換素子)は物理量を電気信号に変換する素子で、出力される電気量の種類によって分類される。サーミスタは温度変化を電気抵抗の変化として、ストレインゲージは機械的ひずみを電気抵抗の変化として検出する抵抗変化型である。熱電対は温度差を起電力(電圧)に、フォトダイオードは光を電流に、ホール素子は磁界を電圧に変換するため、抵抗変化を利用するものではない。
●抵抗変化型=サーミスタ(温度)・ストレインゲージ(ひずみ/圧力)・測温抵抗体(白金)・感光抵抗(CdS)。
●起電力(電圧)型=熱電対(温度差)・ホール素子(磁界)・圧電素子(圧力・超音波)。
●電流型=フォトダイオード(光)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:トランスデューサ(センサ)の変換原理による分類

変換後の出力主なトランスデューサ検出する物理量
電気抵抗サーミスタ温度
電気抵抗ストレンゲージ・ポテンショメータ力・変位
電気抵抗CdS・CdSe(光導電素子)光量
電気抵抗HgCdTe赤外線
起電力(電圧)熱電対(ゼーベック効果)温度差
起電力(電圧)圧電素子力・振動
起電力(電圧)Hall素子磁場
起電力(電圧)太陽電池・LiTaO3光量・赤外線
電流フォトダイオード・フォトトランジスタ・光電管光量
電流SQUID磁場(リング電流)
電流半導体放射線検出素子・Geiger計数管放射線
その他差動トランス(変位→相互インダクタンス)・可動極板型コンデンサ(変位→容量)変位