第69回(2023) 臨床検査技師国家試験 午後51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版

第69回 午後51(病理組織細胞学)

Papanicolaou染色と比較したGiemsa染色の特徴として正しいのはどれか。

正答: ②細胞が大きく見える。

ポイント
Papanicolaou染色は95%エタノールによる湿固定を前提とし、ヘマトキシリンで核を、オレンジGとEA(エオジン・ライトグリーン等の混合色素)で細胞質を染め、扁平上皮の角化度に応じて橙色から青緑色へ染め分けられる。Giemsa染色は塗抹後に空気乾燥してから固定するため、細胞が平面的に伸展して扁平に広がり、同じ細胞でもPapanicolaou染色より大きく観察される。核小体・細胞質内顆粒・粘液・間質などの評価に優れ、血液・リンパ系細胞の観察に強い。●固定法=Papanicolaou染色は湿固定(95%エタノール)、Giemsa染色は乾燥固定後にメタノール固定。●Papanicolaou染色が得意=扁平上皮の角化評価、核クロマチン構造の評価。●Giemsa染色が得意=核小体・細胞質顆粒・粘液・血液リンパ系細胞、原虫(Trichomonas等)。●細胞の見え方=乾燥固定(Giemsa)で大きく、湿固定(Papanicolaou)でやや収縮し小さく見える。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:パパニコロウ染色とギムザ染色の比較

項目パパニコロウ染色ギムザ染色
固定法95%エタノールによる湿固定(塗抹後ただちに固定)風乾後に固定する乾燥固定
細胞の見え方湿固定のためやや収縮し小さく見える乾燥伸展のため大きく見える
得意分野扁平上皮の角化評価、核クロマチン構造の評価核小体・細胞質顆粒・粘液・血液リンパ系細胞・原虫の観察
乾燥固定を要する染色にはギムザ染色のほかペルオキシダーゼ染色などの血液学的染色がある。

第69回 午後52(病理組織細胞学)

パラフィン包埋による標本作製時の工程で切り出しを行うのはいつか。

正答: ②固定後

ポイント
パラフィン包埋標本は固定→切り出し→脱水→脱脂(透徹)→パラフィン浸透→包埋→薄切→染色の順に作製される。切り出しは固定により組織を硬化・安定させた後に行い、目的部位を適切な大きさと厚さに整えることで、以降の脱水・透徹・浸透を均一に進められる。固定前は組織が軟らかく変形・自家融解しやすく、脱水以降では包埋に適した形へ切り直す段階を過ぎている。●標本作製の工程順=固定→切り出し→脱水→透徹(脱脂)→パラフィン浸透→包埋→薄切→染色。●固定の目的=自家融解防止・組織硬化・蛋白凝固による形態保持。●固定液=ホルマリン(中性緩衝ホルマリン)が一般的、電顕用はグルタルアルデヒド。●薄切=ミクロトームで数μmに薄切し伸展・乾燥後に染色。

選択肢ごとの解説

第69回 午後53(病理組織細胞学)

特定の遺伝子配列を検出するのはどれか。

正答: ①FISH法

ポイント
FISH法(蛍光in situハイブリダイゼーション)は蛍光標識した核酸プローブを標的のDNA配列と相補的に結合させ、特定の遺伝子配列や染色体領域を組織・細胞上で可視化する手法で、遺伝子増幅・転座・欠失の検出に用いられる。DOPA反応・Feulgen反応・direct fast scarlet染色・methyl green-pyronin染色はいずれも酵素活性や核酸量・特定物質の検出を目的とし、塩基配列そのものは検出できない。塩基配列特異的に標的を認識する点がFISH法の本質である。●遺伝子・染色体検査=FISH法・PCR・サザンブロット・染色体分染(G分染)。●核酸を染める組織化学=Feulgen反応(DNA)・methyl green-pyronin(DNA緑/RNA赤)。●物質特異的染色=DOPA反応(チロシナーゼ/メラニン)・direct fast scarlet(アミロイド)・Masson-Fontana(メラニン)。

選択肢ごとの解説

第69回 午後54(病理組織細胞学)

細胞診検査材料で乾燥固定しないのはどれか。

正答: ④子宮頸部擦過検体

ポイント
細胞診の固定法には湿固定と乾燥固定があり、Papanicolaou染色を行う検体は核クロマチン所見を保つため塗抹直後に95%エタノールなどで湿固定する。子宮頸部擦過検体はPapanicolaou染色が前提のため乾燥させると核の腫大や染色不良を生じ、湿固定して乾燥固定はしない。髄液・腹水などの体腔液、気管支洗浄液、生検スタンプ検体はGiemsa染色を併用することが多く、乾燥固定が用いられる。●湿固定が前提の検体=子宮頸部・腟部などPapanicolaou染色主体の婦人科材料。●乾燥固定を併用する検体=体腔液(胸水・腹水・心嚢液)・髄液・気管支洗浄液・捺印(スタンプ)標本。●固定法と染色の対応=湿固定→Papanicolaou染色、乾燥固定→May-Giemsa染色。

選択肢ごとの解説

第69回 午後55(病理組織細胞学)

心臓の内腔を展開した肉眼写真を別に示す。枠内の名称はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB055.b3756895a5.jpg
第69回 午後55 の図

正答: ④大動脈弁

ポイント
心臓の弁は、左心室から大動脈への大動脈弁と右心室から肺動脈への肺動脈弁という2つの半月弁、左房室間の僧帽弁と右房室間の三尖弁という2つの房室弁からなる。大動脈弁は3枚の半月状弁尖をもち、弁尖直上の大動脈壁が膨らんだバルサルバ洞に左右の冠動脈起始部(冠動脈口)を伴うことが、ほかの弁と区別する決め手となる。枠内が大動脈弁であり、左心室流出路の出口に位置し冠動脈口を伴う3弁尖の半月弁という所見が手がかりとなる。●半月弁=大動脈弁(冠動脈口を伴う)・肺動脈弁(冠動脈口なし)。●房室弁=僧帽弁(左房室間・2尖)・三尖弁(右房室間・3尖)。●弁膜症=大動脈弁狭窄症・僧帽弁狭窄症(リウマチ性)・僧帽弁逆流など。●心内構造=右心房・右心室・左心房・左心室、心室中隔。

選択肢ごとの解説

第69回 午後56(病理組織細胞学)

病理解剖において、剖検医の直接指示のもとで行う臨床検査技師の役割として適切でないのはどれか。

正答: ⑤遺族への説明

ポイント
病理解剖(剖検)は剖検医の指示・監督のもとで行われ、臨床検査技師は解剖の補助として臓器の取り出し、開頭・開胸などの切開、解剖後の縫合、検体としての血液採取などの手技を補助できる。一方、遺族への病状や解剖結果の説明は医師が行う医療行為であり、技師の役割としては適切でない。死体解剖保存法と臨床検査技師等に関する法律に基づく業務範囲の理解が問われる。●技師が補助できる手技=臓器摘出・切開(開頭・開胸・開腹)・縫合・検体採取(血液・体液)。●医師が行う行為=解剖の実施判断・診断・遺族への説明・死亡診断。●関連法規=死体解剖保存法・臨床検査技師等に関する法律。

選択肢ごとの解説

第69回 午後57(病理組織細胞学)

銀液を加温しないのはどれか。

正答: ③渡辺の鍍銀法

ポイント
鍍銀法は銀イオンを組織成分に結合させて還元・析出させ黒色に可視化する染色で、多くは銀液を加温して反応を促進する。PAM染色(基底膜)、Grocott染色(真菌)、Grimelius染色(好銀性顆粒)、Masson-Fontana染色(メラニン・銀親和性細胞)はいずれも加温した銀液を用いる。一方、渡辺の鍍銀法は細網線維を染める方法で、銀液を加温せず室温で反応させる点が特徴である。●細網線維の鍍銀=渡辺の鍍銀法(室温)・鍍銀染色(Gomori等)。●基底膜=PAM(periodic acid-methenamine silver)染色。●真菌=Grocott染色。●神経内分泌顆粒=Grimelius染色(好銀性)・Masson-Fontana染色(銀親和性、メラニンも染める)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:病理組織の主な特殊染色と対象

染色法主な対象
HE染色核・細胞質の基本染色
EVG染色弾性線維(黒紫)・膠原線維(赤)
Masson trichrome・azan染色膠原線維(青)
PAS染色糖原・中性粘液・基底膜
PAM染色糸球体基底膜・細網線維
PTAH染色横紋筋・グリア線維・フィブリン
鍍銀法細網線維(好銀線維)
Ziehl-Neelsen染色抗酸菌

第69回 午後58(病理組織細胞学)

腫瘍と免疫組織化学的マーカーの組合せで正しいのはどれか。

正答: ④大腸癌 — CEA

ポイント
免疫組織化学では腫瘍の由来や種類に特異的なマーカーを用いて鑑別を行う。CEA(癌胎児性抗原)は大腸癌などの消化管腺癌で陽性となる。ER(エストロゲン受容体)は乳癌、CD117(c-kit)は消化管間質腫瘍(GIST)、PSA(前立腺特異抗原)は前立腺癌、AFP(α-フェトプロテイン)は肝細胞癌・卵黄嚢腫瘍に対応し、それぞれ陽性となる腫瘍が決まっている。組合せの誤りを見抜くには各マーカーの対応臓器を把握する必要がある。●上皮性腫瘍=CEA(大腸・消化管腺癌)・PSA(前立腺癌)・AFP(肝細胞癌・卵黄嚢腫瘍)・ER/PgR(乳癌)。●間葉系腫瘍=CD117/DOG1(GIST)・desmin/α-SMA(平滑筋)・S-100(神経・メラノーマ)。●造血器腫瘍=CD20(B細胞)・CD3(T細胞)・CD30/CD15(Hodgkinリンパ腫)。●上皮一般=サイトケラチン(CK)・EMA。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:腫瘍と免疫組織化学的マーカーの対応

マーカー陽性となる代表的な腫瘍由来・意義
CD20B細胞リンパ腫B細胞系マーカー
CD3T細胞リンパ腫T細胞系マーカー
HER2乳癌過剰発現が分子標的治療の適応判定に関与
エストロゲン受容体〈ER〉乳癌ホルモン受容体・内分泌療法の適応判定
AFP肝細胞癌・卵黄嚢腫瘍胚細胞・肝細胞由来マーカー
CEA大腸癌など消化管腺癌腺癌に共通するマーカー
PSA前立腺癌前立腺特異抗原
CA125卵巣漿液性癌卵巣癌マーカー
hCG絨毛癌栄養膜(トロホブラスト)由来
c-kit(CD117)消化管間質腫瘍〈GIST〉カハール介在細胞由来、分子標的治療の適応判定
ALK肺腺癌の一部・未分化大細胞リンパ腫遺伝子融合(EML4-ALK等)を反映
S100蛋白悪性黒色腫・神経鞘腫瘍神経堤由来細胞マーカー
サイトケラチン・EMAは上皮性腫瘍全般に、CD45は造血器腫瘍全般に陽性となる。免疫組織化学は形態のみでは由来判別が難しい低分化腫瘍・転移巣の原発巣推定や、分子標的治療の適応判定に用いる。

第69回 午後59(臨床血液学)

PT正常、APTT延長のときに考えられるのはどれか。2つ選べ。

正答: ①血友病A・⑤抗リン脂質抗体症候群

ポイント
PT(プロトロンビン時間)は外因系・共通系(第Ⅶ・Ⅹ・Ⅴ・Ⅱ因子、フィブリノゲン)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は内因系・共通系(第Ⅻ・Ⅺ・Ⅸ・Ⅷ因子ほか)を反映する。PT正常・APTT延長は内因系のみの異常を示し、第Ⅷ因子欠乏の血友病Aが典型である。抗リン脂質抗体症候群ではループスアンチコアグラントがリン脂質依存性の凝固反応を阻害してAPTTを延長させるが、in vivoでは血栓傾向を示す点が特徴である。●PT正常・APTT延長=血友病A(第Ⅷ)・血友病B(第Ⅸ)・第Ⅺ/Ⅻ因子欠乏・ループスアンチコアグラント。●PT延長・APTT正常=第Ⅶ因子欠乏。●PT・APTT両方延長=共通系異常(第Ⅹ・Ⅴ・Ⅱ・フィブリノゲン)・肝障害・ビタミンK欠乏・DIC。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:PT・APTTの延長パターンと欠乏(異常)凝固因子

PTAPTT欠乏(異常)凝固因子
延長正常第Ⅶ因子
正常延長第Ⅷ・Ⅸ・Ⅺ・Ⅻ因子
延長延長第Ⅰ・Ⅱ・Ⅴ・Ⅹ因子
正常正常第ⅩⅢ因子
PTは外因系・共通系、APTTは内因系・共通系の凝固活性を反映する。

第69回 午後60(臨床血液学)

末梢血検査で赤血球数300万/μL、ヘモグロビン6.0 g/dL、ヘマトクリット22.5%であった。診断に最も有用な血液検査項目はどれか。

正答: ①フェリチン

ポイント
MCV(平均赤血球容積)はヘマトクリット22.5%÷赤血球数300万/μLから約75 fLと算出され、Hb 6.0 g/dLと併せて小球性低色素性貧血である。小球性低色素性貧血の代表は鉄欠乏性貧血であり、血清フェリチンは体内貯蔵鉄を反映するため診断に最も有用で、低値であれば鉄欠乏が確定する。ビタミンB₁₂は大球性貧血、ハプトグロビンは溶血、エリスロポエチンは腎性貧血の評価に用い、本病態の鑑別には適さない。●小球性貧血=鉄欠乏性貧血(フェリチン低下)・サラセミア・鉄芽球性貧血・慢性炎症に伴う貧血。●大球性貧血=巨赤芽球性貧血(ビタミンB₁₂・葉酸欠乏)。●正球性貧血=溶血性貧血(ハプトグロビン低下)・腎性貧血(エリスロポエチン低下)・再生不良性貧血。●鉄代謝指標=血清鉄・総鉄結合能(TIBC)・フェリチン・トランスフェリン飽和度。

選択肢ごとの解説

第69回 午後61(臨床血液学)

32歳の男性。アフリカ系アメリカ人。貧血の精査で採血した末梢血のMay-Giemsa染色標本を別に示す。この疾患について誤っているのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB061.09ef83f896.jpg
第69回 午後61 の図

正答: ②赤血球は高酸素状態で変形する。

ポイント
鎌状赤血球症はβグロビン遺伝子の点変異により第6番のグルタミン酸がバリンに置換した異常ヘモグロビンS(HbS)による常染色体性の遺伝性疾患である。HbSは低酸素・脱酸素状態で重合(ポリマー化)して赤血球を鎌状に変形させ、変形赤血球は柔軟性を失って溶血や血管閉塞を起こす。アフリカ系に多く、ヘテロ接合体はマラリア原虫感染に抵抗性を示す。鎌状変形は高酸素ではなく低酸素状態で生じるため、「高酸素状態で変形する」が誤りとなる。●ヘモグロビン異常症=鎌状赤血球症(HbS)・HbC症・HbE症。●サラセミア=αサラセミア・βサラセミア(グロビン鎖合成低下)。●変形のきっかけ=低酸素・脱水・感染・寒冷。●マラリア抵抗性に関わる遺伝形質=HbSヘテロ接合体・G6PD欠損症・サラセミア。

選択肢ごとの解説

第69回 午後62(臨床血液学)

放射線の影響を最も受けにくいのはどれか。

正答: ④赤血球

ポイント
電離放射線の感受性は分裂が盛んで未分化な細胞ほど高い(Bergonié-Tribondeauの法則)。造血系ではリンパ球が最も放射線感受性が高く、単球・好酸球・好中球はそれより低いが分裂・成熟段階を経るため一定の感受性をもつ。成熟赤血球は無核で分裂能をもたず寿命の長い終末細胞であるため、放射線の影響を最も受けにくい。●放射線高感受性=リンパ球・造血幹細胞・精原細胞・腸上皮・生殖細胞。●低感受性=成熟赤血球・神経細胞・筋細胞・骨細胞。●末梢血の放射線変化=早期にリンパ球減少、続いて好中球・血小板減少、赤血球は寿命が長く減少が遅い。

選択肢ごとの解説

第69回 午後63(臨床血液学)

染色体異常とそれに伴う融合遺伝子との組合せで正しいのはどれか。

正答: ③t(9;22)(q34;q11.2) — BCR-ABL1

ポイント
白血病の代表的な染色体異常と融合遺伝子は対応が決まっている。t(9;22)(q34;q11.2)はBCR-ABL1融合遺伝子を生じ、慢性骨髄性白血病やフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対応する。t(8;21)はRUNX1-RUNX1T1、t(15;17)はPML-RARA(急性前骨髄球性白血病)、inv(16)はCBFB-MYH11、t(9;11)はKMT2A-MLLT3に対応し、本問はこれらを入れ替えた誤りを見抜く必要がある。●急性骨髄性白血病=t(8;21):RUNX1-RUNX1T1、inv(16)/t(16;16):CBFB-MYH11、t(15;17):PML-RARA(APL)、t/11q23:KMT2A(MLL)再構成。●慢性骨髄性白血病・Ph陽性ALL=t(9;22):BCR-ABL1。●Burkittリンパ腫=t(8;14):MYC-IGH。●濾胞性リンパ腫=t(14;18):BCL2-IGH。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:白血病の染色体異常と融合遺伝子

染色体異常融合遺伝子主な関連疾患
t(8;21)RUNX1::RUNX1T1急性骨髄性白血病(FAB M2)
t(15;17)PML::RARA急性前骨髄球性白血病(APL、FAB M3)
inv(16)またはt(16;16)CBFB::MYH11急性骨髄性白血病(FAB M4Eo)
t(9;22)(フィラデルフィア染色体)BCR::ABL1慢性骨髄性白血病(CML)、Ph陽性ALLの一部
t(9;11)KMT2A::MLLT3〈MLL-AF9〉小児に多い急性骨髄性白血病(単球系)
t(8;14)IGH::MYCバーキットリンパ腫
t(11;14)IGH::CCND1マントル細胞リンパ腫
t(14;18)IGH::BCL2濾胞性リンパ腫
(特異的な融合遺伝子を伴わない)JAK2遺伝子変異(点変異)真性赤血球増加症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症
予後との関連は疾患・遺伝子異常・治療によって異なる(急性骨髄性白血病ではt(8;21)・inv(16)・t(15;17)が予後良好群、t(9;11)のKMT2A::MLLT3は中間群。t(11;14)を伴うマントル細胞リンパ腫やPh陽性急性リンパ性白血病はむしろ予後不良とされる)。CMLではBCR-ABL1が診断・治療標的である。融合遺伝子の表記は「A-B」「A::B」のどちらの過去問表記にも対応する。

第69回 午後64(臨床血液学)

67歳の男性。汎血球減少症の精査のため骨髄検査を行った。骨髄穿刺液のMay-Giemsa染色標本及び鉄染色標本(別冊No. 10C)を別に示す。最も考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB064.764ed90408.jpg
第69回 午後64 の図

正答: ⑤骨髄異形成症候群

ポイント
汎血球減少症で骨髄に異形成を伴う場合、骨髄異形成症候群(MDS)が考えられる。鉄染色で核周囲に環状に並ぶ鉄顆粒をもつ環状鉄芽球がみられれば、MDSの一型を強く示唆する。MDSでは赤芽球系・顆粒球系・巨核球系に異形成(核の過分葉や偽ペルゲル核異常、微小巨核球など)と無効造血を認める。再生不良性貧血は骨髄低形成で異形成を欠き、巨赤芽球性貧血は巨大赤芽球と核・細胞質の成熟解離が主体で鑑別される。●汎血球減少を来す疾患=骨髄異形成症候群・再生不良性貧血・巨赤芽球性貧血・急性白血病・骨髄癌転移・発作性夜間ヘモグロビン尿症。●MDSの形態異常=偽ペルゲル核異常・環状鉄芽球・微小巨核球・顆粒減少。●鉄染色(プルシアンブルー反応)=環状鉄芽球・貯蔵鉄(ヘモジデリン)の評価。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:骨髄異形成症候群〈MDS〉の血球系統別 異形成所見

系統主な異形成所見
好中球(顆粒球)系偽Pelger核異常、脱顆粒、過分葉、NAPスコア減少
血小板(巨核球)系微小巨核球、円形単核巨核球、円形分離多核巨核球、巨大血小板
赤血球(赤芽球)系環状鉄芽球、多核赤芽球、巨赤芽球様変化
骨髄は一般に正〜過形成だが、低形成を示す病型(低形成MDS)も存在する。芽球比率は20%未満(20%以上は急性骨髄性白血病)。染色体異常は5q-・-7/7q-・+8など多様で、病型特異的なものは少ない。

第69回 午後65(臨床血液学)

79歳の女性。貧血と腰椎の溶骨性病変を指摘されて受診した。血清と尿の免疫固定法による蛋白電気泳動の結果を別に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB065.a2fc30c47e.jpg
第69回 午後65 の図

正答: ③多発性骨髄腫

ポイント
高齢者の貧血と腰椎の溶骨性病変があり、血清・尿の免疫固定法でM蛋白(単クローン性免疫グロブリンや尿中Bence Jones蛋白)を認める場合、多発性骨髄腫が考えられる。骨髄腫では形質細胞が単クローン性に増殖してM蛋白を産生し、骨破壊(溶骨)、高カルシウム血症、貧血、腎障害を来す。原発性マクログロブリン血症はIgM型M蛋白を呈するリンパ形質細胞性腫瘍で、溶骨性病変が乏しい点で鑑別される。●単クローン性免疫グロブリン血症=多発性骨髄腫(IgG/IgA/Bence Jones)・原発性マクログロブリン血症(IgM)・MGUS。●骨髄腫の四徴(CRAB)=高カルシウム血症・腎障害・貧血・骨病変(溶骨)。●検査=血清/尿蛋白電気泳動・免疫固定法・遊離軽鎖・骨髄形質細胞比率。

選択肢ごとの解説

第69回 午後66(臨床血液学)

末梢血のMay-Giemsa染色標本を別に示す。最も考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB066.96699eeb6a.jpg
第69回 午後66 の図

正答: ③Bernard-Soulier症候群

ポイント
末梢血で大型の血小板(巨大血小板)と血小板減少を示す場合、Bernard-Soulier症候群が考えられる。本症は血小板膜糖蛋白GPIb/Ⅸ/Ⅴ複合体の欠損によりvon Willebrand因子との結合(リストセチン凝集)が障害される常染色体潜性遺伝の出血性疾患である。血小板無力症はGPⅡb/Ⅲa異常で血小板サイズは正常、von Willebrand病は血漿因子の異常で血小板形態は正常な点が鑑別となる。●巨大血小板を伴う疾患=Bernard-Soulier症候群・May-Hegglin異常・特発性血小板減少性紫斑病の一部。●小型血小板=Wiskott-Aldrich症候群。●リストセチン凝集低下=Bernard-Soulier症候群(VWF添加でも回復せず)・von Willebrand病(VWF添加で回復)。●ADP/コラーゲン凝集低下=血小板無力症(GPⅡb/Ⅲa異常)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:血小板凝集能検査における疾患・薬剤による低下パターン

疾患リストセチン凝集ADP・コラーゲン凝集
von Willebrand病低下(正常血漿・vWF添加で回復)正常
Bernard-Soulier症候群低下(vWF添加でも回復せず)正常
血小板無力症正常低下
Bernard-Soulier症候群では巨大血小板を伴う。

第69回 午後67(臨床血液学)

MCVが正常である患者の赤血球の大きさを測定し、健常人と比較した成績を別に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB067.11546d1080.jpg
第69回 午後67 の図

正答: ⑤遺伝性球状赤血球症

ポイント
MCV(平均赤血球容積)は赤血球容積の平均値であり、赤血球の大小不同があっても平均が正常範囲となることがある。赤血球サイズの分布を健常人と比較し、小型側に偏って濃染する小球がみられるがMCVが正常範囲にとどまる場合は遺伝性球状赤血球症が考えられる。球状赤血球は膜異常により表面積/体積比が低下して小型・濃染(球状)となるが、容積自体は正常範囲のことがある。サラセミアや鉄欠乏は小球性、再生不良性貧血は正球性で像が異なる。●赤血球膜異常症=遺伝性球状赤血球症・遺伝性楕円赤血球症。●小球性貧血=鉄欠乏性貧血・サラセミア。●正球性貧血=腎性貧血・再生不良性貧血・溶血性貧血。●球状赤血球の検査=浸透圧抵抗試験(脆弱性亢進)・MCHC高値・直接Coombs陰性。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:赤血球指数〈MCV〉による貧血の分類と主な疾患

補足事項内容
遺伝性球状赤血球症MCVが正常範囲でも赤血球サイズの分布は小型側に偏ることがある(球状赤血球)
巨赤芽球性貧血大球性(MCV高値)

第69回 午後68(臨床微生物学)

薬剤感受性検査でスキップ現象が認められたため再検査を行った。初回と再検査の微量液体希釈法の結果を別に示す。最小発育阻止濃度〈MIC値〉[μg/mL]はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB068.062dc8cccf.jpg
第69回 午後68 の図

正答: ④8

ポイント
微量液体希釈法のMIC(最小発育阻止濃度)は、菌の発育が認められない最小の薬剤濃度である。スキップ現象は連続する希釈系列の途中で発育が飛んで現れる現象で、技術的要因が疑われるため再検査を行い、再現性のある結果で判定する。再検査で発育阻止が連続して認められる最小濃度がMICとなり、本問では8 μg/mLが該当する。図の発育(混濁)・非発育(清澄)の境界を正しく読み取る必要がある。●薬剤感受性検査=微量液体希釈法(MIC測定)・ディスク拡散法(阻止円径)・Eテスト(MIC測定)。●判定の落とし穴=スキップ現象・トレーリング(発育の尾引き)・コンタミネーション。●MIC関連指標=MIC50/MIC90・ブレイクポイント(感性S/中間I/耐性R)。

選択肢ごとの解説

第69回 午後69(臨床微生物学)

初尿を用いて検索を行うのはどれか。

正答: ③Neisseria gonorrhoeae

ポイント
淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による男性尿道炎では、尿道前部に存在する菌を捉えるため、排尿の最初の部分である初尿(first-void urine)を用いて核酸増幅検査や培養を行う。中間尿は膀胱内の状態を反映し尿道前部の菌が洗い流されるため淋菌検出には適さない。膀胱炎の起炎菌である大腸菌などでは外陰部の汚染を避けるために中間尿を用いる点が対照的である。●初尿を用いる検査=淋菌・クラミジア(Chlamydia trachomatis)の核酸増幅検査(性感染症の尿道炎)。●中間尿を用いる検査=一般細菌の尿培養(膀胱炎・腎盂腎炎)。●尿検体の種類=初尿・中間尿・カテーテル尿・膀胱穿刺尿。●淋菌の性状=グラム陰性双球菌・オキシダーゼ陽性・好炭酸ガス。

選択肢ごとの解説

第69回 午後70(臨床微生物学)

ブドウ糖発酵菌はどれか。2つ選べ。

正答: ①Aeromonas hydrophila・⑤Yersinia pestis

ポイント
ブドウ糖発酵菌は嫌気的にブドウ糖を分解して酸を産生する菌で、腸内細菌目(Yersinia・Escherichia・Klebsiellaなど)、Aeromonas、Vibrioが含まれる。一方、ブドウ糖非発酵菌はPseudomonas・Burkholderia・Stenotrophomonas・Acinetobacterなどで、酸化的にしか糖を利用しない。OF試験(酸化・発酵試験)やTSI寒天培地での発酵性が鑑別の基本となる。●ブドウ糖発酵菌=腸内細菌目(大腸菌・Klebsiella・Salmonella・Yersinia)・Aeromonas・Vibrio・Plesiomonas。●ブドウ糖非発酵菌=Pseudomonas・Burkholderia・Stenotrophomonas・Acinetobacter・Moraxella。●鑑別法=OF試験・TSI/クリグラー培地・オキシダーゼ試験(非発酵菌の多くが陽性)。

選択肢ごとの解説

第69回 午後71(臨床微生物学)

Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhiについて正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ②インドールテストが陰性である。・③リジン脱炭酸試験が陽性である。

ポイント
Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi(チフス菌)は腸内細菌目のグラム陰性桿菌で、乳糖非分解、インドール陰性、リジン脱炭酸試験陽性、オキシダーゼ陰性が特徴である。TSI寒天培地ではブドウ糖を分解して酸性(黄色)を呈するがガス産生はほとんどなく、硫化水素は少量産生する。これらの生化学的性状で他のSalmonellaや腸内細菌と鑑別される。●チフス菌の性状=乳糖非分解・インドール陰性・リジン脱炭酸陽性・オキシダーゼ陰性・ガス産生ほぼなし・硫化水素少量。●腸内細菌目共通=オキシダーゼ陰性・ブドウ糖発酵・硝酸塩還元陽性。●インドール陽性の代表=Escherichia coli・Proteus vulgaris。●関連疾患=腸チフス(Typhi)・パラチフス(Paratyphi A)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:腸内細菌科の生化学的性状の鑑別(乳糖分解・硫化水素・リジン脱炭酸・インドール)

菌乳糖分解硫化水素(H₂S)リジン脱炭酸インドール
Escherichia coli分解陰性陽性陽性
Salmonella Typhi非分解陽性(弱)陽性陰性
Salmonella Paratyphi A非分解陰性陰性陰性
Salmonella(その他大部分の血清型)非分解陽性陽性陰性
Shigella属非分解陰性陰性菌種により異なる
Proteus mirabilis非分解陽性陰性陰性
Proteus vulgaris非分解陽性陰性陽性
Citrobacter属分解(菌株により遅分解)陽性陰性陰性
Serratia marcescens非分解陰性陽性陰性
サルモネラ・赤痢菌など乳糖非分解菌はTSI培地で高層部のみ黄変し斜面は赤色のまま残るが、大腸菌など乳糖分解菌は斜面・高層とも黄変する。チフス菌(Typhi)はTSI培地でガスをほとんど産生せず硫化水素も少量にとどまる点が他の多くのSalmonella血清型と異なる。尿素分解(ウレアーゼ)陽性の代表はProteus属・Morganella属・Providencia属。

第69回 午後72(臨床微生物学)

肺炎が疑われた患者の喀痰のGram染色標本を別に示す。分離菌はブドウ糖を発酵し、オキシダーゼ試験と運動性は陰性であった。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB072.abd371342d.jpg
第69回 午後72 の図

正答: ②Klebsiella pneumoniae

ポイント
ブドウ糖発酵性・オキシダーゼ陰性・運動性陰性のグラム陰性桿菌で肺炎の起炎菌として考えられるのはKlebsiella pneumoniaeである。本菌は莢膜を有する非運動性の腸内細菌目で、喀痰のGram染色では太い陰性桿菌として観察される。Pseudomonas aeruginosaはオキシダーゼ陽性・非発酵・運動性陽性、Acinetobacterは非発酵・グラム陰性球桿菌、肺炎球菌はグラム陽性双球菌、マイコプラズマは細胞壁を欠き染色されない点で鑑別される。●ブドウ糖発酵・オキシダーゼ陰性のグラム陰性桿菌=Klebsiella pneumoniae・Escherichia coliなど腸内細菌目。●ブドウ糖非発酵・オキシダーゼ陽性=Pseudomonas aeruginosa。●非発酵・オキシダーゼ陰性・球桿菌=Acinetobacter baumannii。●Gram染色されない肺炎起炎菌=Mycoplasma pneumoniae・Legionella(染色不良)・Chlamydophila。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:グラム陰性桿菌の分類(腸内細菌目・ビブリオ科・パスツレラ科・非発酵菌群)とオキシダーゼ・糖代謝

分類群代表属オキシダーゼグルコース代謝
腸内細菌目Escherichia属・Salmonella属・Klebsiella属など陰性(例外:Plesiomonas shigelloidesは陽性)発酵的
ビブリオ科Vibrio属陽性発酵的
エロモナス科Aeromonas属陽性発酵的
パスツレラ科Pasteurella属・Haemophilus属など陽性発酵的
非発酵菌群Pseudomonas属・Acinetobacter属・Burkholderia属など菌種により異なる(Pseudomonasは陽性)酸化的

第69回 午後73(臨床微生物学)

真菌について正しいのはどれか。

正答: ④Exophiala dermatitidis は黒色コロニーを形成する。

ポイント
真菌の鑑別では分生子・菌糸・胞子の形態と隔壁の有無、色素の有無が重要である。Exophiala dermatitidisはメラニンを産生する黒色真菌で、黒色のコロニーを形成する。Aspergillus fumigatusはフィアライドから小型の分生子を連鎖状に形成し大分生子はつくらず、Mucor属は隔壁のない(無隔壁)幅広い菌糸が特徴、Cryptococcus neoformansは莢膜をもつ酵母で厚膜胞子は形成しない点が鑑別となる。●黒色真菌=Exophiala・Cladosporium・Fonsecaea(クロモミコーシス・黒色真菌症)。●糸状菌(隔壁あり)=Aspergillus・Penicillium・皮膚糸状菌。●接合菌(無隔壁)=Mucor・Rhizopus(ムーコル症)。●酵母=Candida(仮性菌糸を形成)・Cryptococcus(莢膜・厚膜胞子なし)。

選択肢ごとの解説

第69回 午後74(臨床微生物学)

検査が有用でないのはどれか。

正答: ③尿路感染症を疑う患者の尿中レジオネラ抗原検査

ポイント
尿中抗原検査は対象菌と対象病態に応じて使い分ける。レジオネラ尿中抗原検査は肺炎を起こすLegionella pneumophila血清群1による肺炎(レジオネラ症)の診断に用いるもので、尿路感染症の診断には有用でない。喀痰抗酸菌培養(結核)、血液培養(感染性心内膜炎)、髄液クリプトコックス抗原(クリプトコックス髄膜炎)、糞便C. difficileトキシン(抗菌薬関連下痢症)はいずれも対応する病態の診断に適している。●尿中抗原検査=レジオネラ(肺炎)・肺炎球菌(肺炎)。●培養検査=喀痰抗酸菌培養(結核)・血液培養(菌血症・心内膜炎)・尿培養(尿路感染症)。●抗原・毒素検査=髄液クリプトコックス莢膜抗原(髄膜炎)・糞便C. difficileトキシン/GDH(偽膜性腸炎)。

選択肢ごとの解説

第69回 午後75(臨床微生物学)

蛋白合成阻害薬はどれか。2つ選べ。

正答: ①アミカシン・④ミノサイクリン

ポイント
抗菌薬は作用機序により分類される。アミノグリコシド系(アミカシン)とテトラサイクリン系(ミノサイクリン)はいずれもリボソームに作用して蛋白合成を阻害する。ダプトマイシンは細胞膜に作用する環状リポペプチド、バンコマイシンは細胞壁合成を阻害するグリコペプチド、シプロフロキサシン(フルオロキノロン系)はDNAジャイレース・トポイソメラーゼを阻害する核酸合成阻害薬であり、標的部位が異なる。●蛋白合成阻害薬=アミノグリコシド系(アミカシン)・テトラサイクリン系(ミノサイクリン)・マクロライド系・クロラムフェニコール・リンコマイシン系。●細胞壁合成阻害薬=βラクタム系(ペニシリン・セフェム)・グリコペプチド系(バンコマイシン)。●細胞膜傷害=ダプトマイシン・ポリミキシン。●核酸合成阻害薬=フルオロキノロン系(シプロフロキサシン)・リファンピシン。●葉酸合成阻害=ST合剤(サルファ剤・トリメトプリム)。

選択肢ごとの解説

第69回 午後76(臨床微生物学)

Mycobacterium属について正しいのはどれか。

正答: ④M. fortuitum は培養7日目には肉眼的に観察できる。

ポイント
Mycobacterium属(抗酸菌)は発育速度により遅発育菌と迅速発育菌に大別され、培地・生化学性状・至適温度で鑑別する。M. fortuitum は迅速発育菌で7日以内に肉眼的コロニーを形成する代表菌である。M. leprae(らい菌)は人工培地で発育せず培養できないのが大きな特徴で、M. marinum は皮膚・四肢末梢の感染を起こし至適発育温度は30℃前後と低い。M. tuberculosis と M. bovis は遺伝的に極めて近く、一般的な結核菌検出用PCR試薬では鑑別できない。●遅発育菌(7日超)=M. tuberculosis・M. bovis・M. avium・M. intracellulare・M. kansasii・M. marinum。●迅速発育菌(7日以内)=M. fortuitum・M. chelonae・M. abscessus。●培養不能=M. leprae。●低温発育(30℃前後)=M. marinum・M. ulcerans。

選択肢ごとの解説

第69回 午後77(臨床微生物学)

選択分離培地と目的菌の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ③CIN寒天培地 — Yersinia enterocolitica・④NAC寒天培地 — Pseudomonas aeruginosa

ポイント
選択分離培地は目的菌の発育を促し、夾雑菌の発育を抑える組成で設計される。CIN寒天培地(セフスロジン・イルガサン・ノボビオシン加マンニトール寒天)は Yersinia enterocolitica の選択培地で、菌は中心が暗赤色の bull's eye 状コロニーを形成する。NAC寒天培地(ナリジクス酸・セトリミド加)は Pseudomonas aeruginosa の選択培地である。組合せの入れ替えを見抜く必要がある。●腸内細菌・腸管病原菌=SS寒天・DHL寒天(サルモネラ・赤痢菌)、CIN(エルシニア)、TCBS(ビブリオ)、スキロー培地(カンピロバクター)。●嫌気性菌=BBE寒天(Bacteroides fragilisグループ)、CCFA寒天(Clostridioides difficile)。●Neisseria=Thayer-Martin培地・Modified Thayer-Martin(淋菌・髄膜炎菌)。●緑膿菌=NAC寒天。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:細菌の選択分離培地・輸送/性状確認/感受性検査用培地

培地名目的菌・用途分類
TCBS寒天培地Vibrio属(コレラ菌・腸炎ビブリオ等)選択分離
SS寒天培地Salmonella属・Shigella属選択分離
DHL寒天培地腸内細菌(Salmonella・Shigella等)選択分離
マッコンキー寒天培地腸内細菌(乳糖分解の鑑別)選択分離
CIN寒天培地Yersinia属(Y. enterocolitica等)選択分離
BBE寒天培地Bacteroides fragilis群選択分離
CCFA寒天培地Clostridioides difficile選択分離
NAC寒天培地Pseudomonas aeruginosa選択分離
Thayer-Martin寒天培地・GC寒天培地Neisseria属(淋菌・髄膜炎菌)選択分離
Skirrow寒天培地・CCDA培地Campylobacter属・Helicobacter属選択分離
Bordet-Gengou培地Bordetella pertussis(百日咳菌)選択分離(セファレキシン添加が一般的)
PPLO寒天培地Mycoplasma pneumoniae選択分離
WYOα寒天培地Legionella属選択分離
BCYEα寒天培地Legionella属非選択分離
マンニット食塩培地Staphylococcus属選択分離
小川培地Mycobacterium tuberculosis等の抗酸菌選択分離(マラカイトグリーンが選択剤)
Sabouraud寒天培地真菌全般分離・形態観察用(酸性培地)
Cary-Blair培地腸管病原菌検体輸送
King A培地Pseudomonas aeruginosaのピオシアニン産生確認性状確認
LIM培地腸内細菌のリジン脱炭酸・インドール・運動性確認性状確認
Mueller-Hinton寒天培地薬剤感受性試験(ディスク拡散法・希釈法)薬剤感受性検査

第69回 午後78(臨床微生物学)

消毒用エタノールに対して抵抗性を示すのはどれか。

正答: ③ノロウイルス

ポイント
消毒用エタノールは脂質二重膜であるエンベロープを溶解して効果を発揮するため、エンベロープを持つウイルスには有効だが、エンベロープを持たないノンエンベロープウイルスには効果が乏しい。ノロウイルスはエンベロープを持たず環境抵抗性が高くアルコールに抵抗性を示すため、消毒には次亜塩素酸ナトリウムが推奨される。B型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルスはいずれもエンベロープを有し、エタノールが有効である。●ノンエンベロープウイルス(アルコール抵抗性)=ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルス・ポリオウイルス・A型/E型肝炎ウイルス。●エンベロープウイルス(アルコール感受性)=インフルエンザ・ヘルペス・B型/C型肝炎ウイルス・ヒト免疫不全ウイルス・コロナウイルス。●ノロ・C. difficile対策=次亜塩素酸ナトリウム。

選択肢ごとの解説

第69回 午後79(臨床免疫学)

抗原抗体反応で正しいのはどれか。

正答: ⑤酸性にすると抗体は解離しやすくなる。

ポイント
抗原抗体反応は静電気的引力・水素結合・疎水結合・ファンデルワールス力など非共有結合による可逆的な結合で、温度・pH・イオン強度といった環境条件に影響される。酸性条件にすると結合力が弱まり抗体が抗原から解離しやすくなるため、抗体解離試験(acid elution)に応用される。抗体過剰や抗原過剰では反応が抑制される地帯現象(プロゾーン・ポストゾーン)により偽陰性を生じ、リウマトイド因子などによる非特異反応も起こりうる。●結合の性質=可逆的・非共有結合・特異的だが交差反応あり。●反応に影響する因子=温度・pH・イオン強度・反応時間・抗原抗体比。●地帯現象=抗体過剰のプロゾーン/抗原過剰のポストゾーン(いずれも偽陰性)。●解離法=酸処理・加熱・有機溶媒。

選択肢ごとの解説

第69回 午後80(臨床免疫学)

RPRカードテストについて正しいのはどれか。

正答: ③被検血清は不活化しなくてよい。

ポイント
RPR(rapid plasma reagin)カードテストはカルジオリピンを抗原として梅毒の脂質抗体(非特異的反応・レアギン)を検出する非トレポネーマ検査で、スクリーニングや治療効果判定の指標に用いられる。被検血清は不活化せずにそのまま用いてよい。抗体過剰では地帯現象(プロゾーン)が起こり偽陰性を生じうるほか、膠原病・妊娠・感染症などで生物学的偽陽性が生じうる。梅毒トレポネーマに特異的な抗体の検出はTPHA・TPLA・FTA-ABSなどのトレポネーマ検査が担う。●非トレポネーマ検査(脂質抗体)=RPR・VDRL・凝集法。活動性を反映し治療で陰転。●トレポネーマ検査(特異抗体)=TPHA・TPLA・FTA-ABS。治療後も陽性が持続。●生物学的偽陽性の原因=膠原病・妊娠・急性感染症・加齢。

選択肢ごとの解説

第69回 午後81(臨床免疫学)

フローサイトメトリで誤っているのはどれか。

正答: ③蛍光強度は細胞数を反映する。

ポイント
フローサイトメトリは蛍光標識抗体で標識した細胞を1個ずつ流路に流してレーザー光を照射し、前方散乱光(細胞の大きさ)・側方散乱光(内部構造)と蛍光を測定して細胞を解析する。蛍光強度は1細胞あたりに結合した蛍光標識抗体の量、すなわち抗原(分子)の発現量を反映するもので、細胞数を反映するわけではない。細胞数はイベント数として数えられる。膜表面マーカーだけでなく、細胞膜を透過処理すれば細胞質内・核内抗原も測定できる。●測定パラメータ=前方散乱光(大きさ)・側方散乱光(内部構造・顆粒)・蛍光強度(抗原量)。●用途=リンパ球サブセット解析(CD4/CD8)、白血病・リンパ腫の細胞表面マーカー、CD34陽性細胞数、PNH(CD55/CD59欠失)。●光源=レーザー光。

選択肢ごとの解説

第69回 午後82(臨床免疫学)

自然免疫に関与するのはどれか。2つ選べ。

正答: ③好中球・④肥満細胞 または ③好中球・⑤マクロファージ または ④肥満細胞・⑤マクロファージ(いずれの組合せも正解)

ポイント
自然免疫は抗原特異性をもたず病原体に対して迅速に働く防御機構で、好中球・マクロファージ・樹状細胞・NK細胞・肥満細胞・好酸球・好塩基球などが担う。これらはToll様受容体などのパターン認識受容体で病原体関連分子パターンを認識し、貪食やサイトカイン・化学伝達物質の放出を行う。一方、B細胞とT細胞は抗原受容体遺伝子の再構成により多様な特異性をもち、免疫記憶を形成する獲得(適応)免疫の中心細胞であり、自然免疫には含めない。●自然免疫の細胞=好中球・マクロファージ・樹状細胞・NK細胞・肥満細胞・好酸球・好塩基球。●獲得免疫の細胞=T細胞(細胞性)・B細胞/形質細胞(液性)。●認識機構=自然免疫=パターン認識受容体(Toll様受容体等)、獲得免疫=抗原受容体(TCR・BCR)。●複数正答の認定=本問は公式正答表で「3・4」「3・5」「4・5」のいずれの組合せも正解と認められている。本ドリルでは公式に認められたいずれの組合せ(2つ)を選んでも正解になる。

選択肢ごとの解説

第69回 午後83(臨床免疫学)

自己免疫性膵炎で上昇するのはどれか。

正答: ⑤IgG4

ポイント
自己免疫性膵炎(1型)はIgG4関連疾患の膵病変で、血清IgG4が上昇し、膵組織にIgG4陽性形質細胞が密に浸潤して花筵(むしろ)状線維化や閉塞性静脈炎を呈する。IgGはIgG1〜IgG4の4つのサブクラスに分かれ、IgG4は通常IgG全体のうち最も少ないが、本疾患では選択的に増加する。ステロイドが著効する点も特徴である。●IgG4関連疾患=自己免疫性膵炎・ミクリッツ病(涙腺唾液腺腫大)・後腹膜線維症・硬化性胆管炎・腎尿細管間質性腎炎。●IgGサブクラスの特徴=IgG1(最多・補体活性化)・IgG2(多糖体抗原)・IgG3(補体活性化強)・IgG4(最少・補体活性化弱)。●免疫グロブリンの増加する疾患=IgA腎症(IgA)・多発性骨髄腫(M蛋白)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:IgG4関連疾患の主な特徴

項目内容
血清学的所見血清IgG4高値
代表的病型自己免疫性膵炎(1型)、Mikulicz病(涙腺・唾液腺腫大)
自己免疫性膵炎の症状膵腫大、胆管圧迫による閉塞性黄疸、膵管狭窄
病理所見リンパ球・IgG4陽性形質細胞の高度な浸潤と線維化
鑑別腫瘤形成例は膵癌との鑑別が重要(超音波内視鏡下穿刺吸引法で細胞採取)
自己免疫性膵炎には1型と2型の亜型があり、日本では1型(IgG4関連)が多い。

第69回 午後84(臨床免疫学)

HLAについて正しいのはどれか。

正答: ①HLAクラスⅠは高度な多型性を示す。

ポイント
HLA(ヒト白血球抗原)は第6染色体短腕にあるMHC(主要組織適合遺伝子複合体)遺伝子群がコードする糖蛋白で、多数のアレルをもち極めて多型性が高い。クラスⅠ(HLA-A・B・C)はほぼ全ての有核細胞と血小板に発現し、CD8陽性T細胞に内因性(細胞内)抗原を提示して細胞性免疫を誘導する。クラスⅡ(HLA-DR・DQ・DP)は樹状細胞・マクロファージ・B細胞などの抗原提示細胞に発現し、CD4陽性T細胞に外来抗原を提示する。●クラスⅠ=HLA-A/B/C、全有核細胞、CD8T細胞、内因性抗原提示。●クラスⅡ=HLA-DR/DQ/DP、抗原提示細胞、CD4T細胞、外来抗原提示。●臨床応用=臓器移植の適合性、輸血(白血球抗体)、HLAと疾患感受性(HLA-B27と強直性脊椎炎等)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:MHCクラスⅠ・クラスⅡの違い

項目クラスⅠクラスⅡ
発現する細胞赤血球を除くすべての有核細胞と血小板抗原提示細胞(マクロファージ、樹状細胞、B細胞など)に限られる
遺伝子(HLA)HLA-A・HLA-B・HLA-CHLA-DR・HLA-DQ・HLA-DP
提示する抗原内因性抗原(細胞内で産生された抗原)外来性抗原(貪食・取り込んだ抗原)
結合するT細胞CD8陽性細胞傷害性T細胞CD4陽性ヘルパーT細胞
HLA遺伝子は第6染色体短腕上に存在する。NK細胞はMHCクラスⅠの発現が低下した細胞(missing self)を傷害する。

第69回 午後85(臨床免疫学)

不規則抗体同定検査の結果を以下に示す(+=陽性、0=陰性、Sal=生理食塩液法、IAT=間接抗グロブリン試験)。可能性の高い抗体はどれか。2つ選べ。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB085.480e377275.jpg
第69回 午後85 の図

正答: ③抗E・⑤抗M

ポイント
不規則抗体同定はパネル赤血球の抗原表と各細胞の反応の有無を照合し、反応した細胞すべてに共通して陽性で反応しない細胞すべてに陰性の抗原を残す消去法で行う。本パネルではE抗原陽性の細胞(細胞1・2・6)でIATが陽性、E陰性細胞でIATが陰性という対応から抗E(37℃・間接抗グロブリン試験で反応する温式IgG抗体)が疑われる。またM抗原陽性の細胞(細胞2・3)で生理食塩液法(Sal)が陽性という対応から、低温・生理食塩液法で反応する抗M(冷式IgM抗体)が疑われる。●Rh系(温式IgG・IAT反応・遅発性溶血)=抗D・抗E・抗c・抗C・抗e。●MNS系=抗M(多くは冷式IgM・Sal反応)・抗S・抗s。●Kidd系(抗Jka・抗Jkb・遅発性溶血・補体結合)。●Duffy系(抗Fya・抗Fyb・酵素で失活)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:不規則抗体同定検査:反応相と抗体推定の原則

反応相・検出法検出される抗体クラス代表的な血液型系
生理食塩液法(室温)IgM(冷式抗体)MNS系(抗M)・Lewis系・P1系
酵素法(パパイン・ブロメリン処理)IgG(一部の抗体で反応増強)Rh系
間接抗グロブリン試験(37℃)IgG(温式抗体)Rh系(抗D・抗E・抗c等)・Kidd系・Duffy系
同定は既知抗原表(アンチグラム)とパネル赤血球の反応を照合し、陰性反応を示した赤血球がもつ抗原に対応する抗体を消去していく消去法で行う。消去されずに残った抗体が「否定できない抗体」であり、陽性反応を示した赤血球に共通する抗原に対応する抗体を「可能性の高い抗体」と推定する。抗原量が少ないと反応が弱まる量的効果(dosage)があるため、量的効果のある抗原はホモ接合の血球で陰性の場合に消去するのが原則である。間接抗グロブリン試験の反応増強剤にはLISS(低イオン強度溶液)やPEG(ポリエチレングリコール)が用いられる。

第69回 午後86(臨床免疫学)

多特異性抗グロブリン試薬に含まれるのはどれか。2つ選べ。

正答: ①抗C3・⑤抗IgG

ポイント
多特異性抗グロブリン試薬(広スペクトル抗ヒトグロブリン試薬)は、赤血球に結合した不完全抗体(IgG)と補体成分を同時に検出するため、抗IgGと抗C3d(抗C3)を含む。直接抗グロブリン試験では生体内で感作された赤血球を、間接抗グロブリン試験では試験管内で感作させた赤血球を検出する。抗C4・抗IgD・抗IgEは通常含まれない。●多特異性抗グロブリン試薬=抗IgG+抗C3d。●単特異性抗グロブリン試薬=抗IgG・抗C3d・抗C3bなど個別。●直接抗グロブリン試験陽性=自己免疫性溶血性貧血・新生児溶血性疾患・薬剤性溶血・遅発性溶血性輸血反応。●間接抗グロブリン試験=不規則抗体スクリーニング・交差適合試験・抗体同定。

選択肢ごとの解説

第69回 午後87(臨床免疫学)

同一患者の試験管法とカラム凝集法の反応像を別に示す。凝集反応の判定として正しいのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB087.3b728369b4.jpg
第69回 午後87 の図

正答: ⑤部分凝集

ポイント
輸血検査の凝集判定では、凝集した赤血球と凝集しない赤血球が同一視野内に混在する像を部分凝集(mixed field、混合凝集)と判定する。ABO亜型、輸血後(異型赤血球の混在)、骨髄移植後のキメラ、二重集団などで生じる。試験管法では小さな凝集塊を背景に遊離赤血球が散在し、カラム凝集法ではカラム上層に凝集塊が捕捉される一方で底部に赤血球が落ち込む像となる。これは凝集強度の段階(1+〜4+)とは区別して判定する。●部分凝集を呈する病態=ABO亜型(A3・B3等)・輸血後の異型赤血球残存・骨髄移植後キメラ・Tn多凝集。●凝集強度=4+(一塊)〜1+(多数の小凝集)〜0(陰性)。●判定法=試験管法・カラム凝集法・マイクロプレート法。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:ABO血液型判定オモテ・ウラ検査不一致の主な原因

原因の種類現象具体例
技術的な問題偽陽性/偽陰性洗浄不十分、最適比のずれ、遠心操作の強弱、検体取り違え
オモテ検査(赤血球側)の問題偽陽性直接抗グロブリン試験陽性の赤血球、汎血球凝集反応、後天性B、輸血歴のある赤血球
オモテ検査(赤血球側)の問題偽陰性白血病・Hodgkinリンパ腫による抗原量低下、亜型(variant)赤血球
ウラ検査(血清側)の問題偽陽性寒冷凝集素、血清中の不規則抗体、連銭形成(高γ-グロブリン血症など)
ウラ検査(血清側)の問題偽陰性生後1年未満の新生児、高齢者、液性免疫不全症患者の血清
新生児は自己の規則抗体(抗A・抗B)をまだ十分に産生していないためウラ検査が陰性化しやすい。混合視野凝集(mixed field)はキメラ・異型輸血後・骨髄移植後などでみられ、通常の不一致とは区別して考える。

第69回 午後88(臨床免疫学)

末梢血幹細胞の採取時期の指標となるのはどれか。

正答: ④CD34陽性細胞数

ポイント
末梢血幹細胞採取(アフェレーシス)では、造血幹細胞のマーカーであるCD34陽性細胞数が採取時期の指標となる。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などで骨髄中の幹細胞を末梢血へ動員し、末梢血中のCD34陽性細胞数がフローサイトメトリで一定値以上に達した時点で採取を行う。好中球数や血小板数は移植後の生着・回復の目安にはなるが、採取時期の直接的指標ではない。●CD34=造血幹/前駆細胞のマーカー(採取・生着の指標)。●動員法=G-CSF単独、化学療法併用、CXCR4阻害薬(プレリキサホル)。●移植後の生着指標=好中球数(500/μL以上)・血小板数の回復。●CD3=T細胞マーカー(GVHD・免疫再構築の指標)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な細胞表面マーカー(CD分類)と発現細胞

CD発現細胞・特徴
CD3汎T細胞、T細胞受容体
CD4ヘルパーT細胞(単球でも弱陽性)
CD10幼若B細胞(CALLA)
CD13顆粒球系細胞(CD33とともにFAB分類M0の診断に有用)
CD14成熟単球
CD19B細胞
CD20B細胞
CD25活性化T細胞(IL-2受容体α鎖、成人T細胞白血病でも陽性)
CD33顆粒球系細胞(CD13とともにFAB分類M0の診断に有用)
CD34造血幹細胞
CD38多発性骨髄腫細胞・形質細胞で強陽性(形質細胞に特異的ではない)
CD41巨核球(FAB分類M7の診断に有用)
CD45白血球全般(共通白血球抗原)
CD56NK細胞
CD61血小板(FAB分類M7の診断に有用)
CD138形質細胞に特異的

第69回 午後89(臨床免疫学)

間接抗グロブリン試験で使用される反応増強剤はどれか。2つ選べ。

正答: ③低イオン強度溶液〈LISS〉・⑤ポリエチレングリコール溶液〈PEG〉

ポイント
間接抗グロブリン試験では、抗原抗体反応を促進する反応増強剤を加えて感度を高める。低イオン強度溶液(LISS)は反応液のイオン強度を下げて赤血球周囲のイオン雲を減らし、抗体の赤血球への結合を促進する。ポリエチレングリコール溶液(PEG)は水分子を排除して反応系の抗体濃度を相対的に高め反応を増強する。フィシン・パパインは赤血球表面のシアル酸を含む糖蛋白などを切断する蛋白分解酵素で、赤血球の表面荷電を低下させるため酵素法に用い、ジチオスレイトール(DTT)はジスルフィド結合を切るIgM解離・抗原処理用の還元剤である。●反応増強剤=低イオン強度溶液(LISS)・ポリエチレングリコール(PEG)・アルブミン。●酵素(赤血球処理)=フィシン・パパイン・ブロメリン・トリプシン(Rh・Kidd系を増強、Duffy・MNS系を失活)。●還元剤=ジチオスレイトール(DTT)・2-メルカプトエタノール(IgMを解離)。

選択肢ごとの解説

第69回 午後90(公衆衛生学)

法律とそれに規定されている内容の組合せで正しいのはどれか。

正答: ②老人福祉法 — ケアハウス

ポイント
福祉・保健関連法と制度の対応の理解が問われる。老人福祉法はケアハウス(軽費老人ホーム)をはじめ特別養護老人ホーム・養護老人ホームなどの老人福祉施設を規定する。母子健康手帳は母子保健法、療育手帳は厚生事務次官通知に基づく知的障害児・者向けの制度、福祉事務所は社会福祉法、地域包括支援センターは介護保険法を根拠とし、本問は組合せの入れ替えを見抜く必要がある。●老人福祉法=特別養護老人ホーム・養護老人ホーム・ケアハウス(軽費老人ホーム)。●母子保健法=母子健康手帳・乳幼児健康診査・妊産婦健康診査。●社会福祉法=福祉事務所・社会福祉協議会。●介護保険法=地域包括支援センター・介護認定。●身体障害者手帳=身体障害者福祉法、療育手帳=通知、精神障害者保健福祉手帳=精神保健福祉法。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:保健・福祉関連法規と規定内容の対応

法律規定している主な内容
医薬品医療機器等法(薬機法)毒薬・劇薬の表示、医薬品等の製造販売承認
母子保健法母子健康手帳の交付、乳幼児・妊産婦健康診査
労働基準法産前・産後の就業制限
食品表示法食品のアレルギー表示
麻薬及び向精神薬取締法麻薬中毒者の措置
老人福祉法ケアハウス(軽費老人ホーム)の設置
社会福祉法福祉事務所の設置
介護保険法地域包括支援センターの設置
精神保健福祉法精神障害者保健福祉手帳の交付
母子健康手帳の交付を規定するのは地域保健法・児童福祉法ではなく母子保健法。療育手帳は法律ではなく厚生労働省事務次官通知に基づく制度である点に注意。

第69回 午後91(公衆衛生学)

女性労働者の産前産後休暇を規定しているのはどれか。

正答: ②労働基準法

ポイント
労働基準法は労働条件の最低基準を定める法律で、女性労働者の母性保護として産前6週間(多胎妊娠は14週間)・産後8週間の休業(産前産後休暇)、妊産婦の危険有害業務の就業制限、軽易業務への転換などを規定する。母子保健法は母子の健康保持増進、育児・介護休業法は子の養育のための育児休業、男女雇用機会均等法は雇用上の性差別禁止や妊娠中・出産後の健康管理措置を定めるが、産前産後休暇そのものを規定するのは労働基準法である。●労働基準法=産前産後休暇・労働時間・休日・年次有給休暇・危険有害業務の就業制限。●育児・介護休業法=育児休業・介護休業・子の看護休暇。●男女雇用機会均等法=募集採用昇進の性差別禁止・セクハラ防止・母性健康管理措置。●労働安全衛生法=健康診断・作業環境管理・安全衛生管理体制。

選択肢ごとの解説

第69回 午後92(公衆衛生学)

医療計画に含まれないのはどれか。

正答: ①保健所の設置

ポイント
医療計画は医療法に基づき都道府県が策定する医療提供体制の整備計画で、5疾病6事業および在宅医療に係る目標と医療連携体制、基準病床数、二次医療圏・三次医療圏、地域医療支援病院、医師確保計画、外来医療計画などを定める。保健所の設置は地域保健法に基づくものであり、医療計画の記載事項ではない。各事項とその根拠法・位置づけの区別が問われる。●医療計画の記載事項=5疾病(がん・脳卒中・心筋梗塞等の心血管疾患・糖尿病・精神疾患)・6事業(救急・災害・へき地・周産期・小児・新興感染症)・在宅医療・基準病床数・医療圏・地域医療支援病院・医師確保。●地域保健法=保健所・市町村保健センターの設置。●医療法=病院/診療所の開設・人員施設基準・医療安全。

選択肢ごとの解説

第69回 午後93(公衆衛生学)

健康診断と根拠法の組合せで正しいのはどれか。

正答: ③乳幼児健康診査 — 母子保健法

ポイント
各種健康診断と根拠法の対応が問われる。乳幼児健康診査は母子保健法に基づき市町村が実施する(1歳6か月児・3歳児健診など)。特定健康診査・特定保健指導は高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)、特殊健康診断および一般定期健康診断は労働安全衛生法、妊産婦健康診査は母子保健法を根拠とする。本問は組合せの入れ替えを正しく見抜く必要がある。●母子保健法=乳幼児健康診査・妊産婦健康診査・新生児訪問・母子健康手帳。●労働安全衛生法=雇入時/定期一般健康診断・特殊健康診断(有害業務)・給食従業員の検便。●高齢者医療確保法=特定健康診査・特定保健指導(メタボ健診)。●学校保健安全法=児童生徒・職員の健康診断・就学時健康診断。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:健康診査(健診)の種類と根拠法

健康診査根拠法
特定健康診査・特定保健指導高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)
特殊健康診断・一般定期健康診断労働安全衛生法
給食従業員の検便労働安全衛生法
乳幼児健康診査・妊産婦健康診査母子保健法
学校健康診断学校保健安全法
母体保護法は不妊手術・人工妊娠中絶に関する法律であり、妊産婦健康診査の根拠法ではない。

第69回 午後94(公衆衛生学)

ある疾患の罹患率を調べるために行うのはどれか。

正答: ③コホート研究

ポイント
罹患率は一定期間に集団内で新たに発生した患者の割合で、新規発生(発症)を追跡できる研究デザインが必要である。コホート研究は曝露の有無で集団を分けて前向きに追跡し、観察期間中の新規発生を捉えられるため罹患率の算出や相対危険度・寄与危険度の推定に適する。横断研究は一時点の有病率を、症例対照研究はオッズ比を、介入研究は治療・予防の効果を評価するもので、罹患率の直接測定にはコホート研究が適している。●コホート研究=罹患率・相対危険度・寄与危険度(前向き追跡)。●症例対照研究=オッズ比(後ろ向き・まれな疾患に有利)。●横断研究=有病率(一時点)。●介入研究(ランダム化比較試験)=因果関係の検証・治療効果。●症例集積研究=記述的・仮説生成。

選択肢ごとの解説

第69回 午後95(医用工学概論)

正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ④測容器は20 ℃で表示容積になるように製造されている。・⑤オストワルドピペットは粘性の大きい試料の採取に適する。

ポイント
ガラス製測容器は通常20℃で表示容積になるよう製造・検定され、目盛にもその旨が記される。器具により精度(検定公差)が異なり、メスフラスコやホールピペットなどの精密器具はメスシリンダーより精度が高く検定公差は小さい。オストワルドピペットは球部が下端近くにあり粘性の大きい試料の正確な採取に適する。一方、メスフラスコ内で固体を直接溶解させると発熱や体積変化で誤差を生むため避け、濡れたガラス測容器を乾熱滅菌器で加熱乾燥すると変形・容積変化を招くため適さない。●体積計(出量用TD・受用TC)=ホールピペット・メスピペット・メスフラスコ・ビュレット・メスシリンダー。●精度の順=メスフラスコ/ホールピペット>メスピペット>メスシリンダー。●オストワルドピペット=粘性試料用。●基準温度=20℃。

選択肢ごとの解説

第69回 午後96(医用工学概論)

DNAシークエンサーの原理(Sanger法)について誤っているのはどれか。

正答: ⑤ddNTPがDNA合成反応に取り込まれてもDNA伸長は継続する。

ポイント
Sanger法(ジデオキシ法)は、伸長中のDNA鎖に3'-OH基を欠くジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)が取り込まれると、次のヌクレオチドとのホスホジエステル結合を形成できずDNA合成がその位置で停止する原理を利用する。通常のdNTPと微量のddNTPを混ぜて反応させ、停止位置の異なる多数の断片を生じさせる。蛍光標識したddNTPを用いるダイターミネーター法では、キャピラリー電気泳動で短い断片ほど速く泳動され、塩基配列を決定できる。ddNTP取り込み後も伸長が継続するという記述は原理に反する。●Sanger法=ddNTPによる鎖伸長停止・キャピラリー電気泳動・塩基配列決定/変異/欠失検出。●次世代シークエンサー(NGS)=合成時/半導体検出・大量並列。●関連用語=dNTP(基質)・ddNTP(停止剤)・ダイターミネーター(蛍光標識ddNTP)。

選択肢ごとの解説

第69回 午後97(医用工学概論)

電子レンジと同じ2.4 GHzの電波を使用しているのはどれか。2つ選べ。

正答: ①Bluetooth・⑤Wi-Fi

ポイント
2.4 GHz帯(ISMバンド)は電子レンジがマイクロ波加熱に用いる周波数帯と同じで、Wi-Fi(無線LAN)やBluetoothなどの近距離無線通信にも利用される。そのため電子レンジ稼働時にはこれらの無線通信に干渉が生じうる。GPSは約1.2〜1.6 GHzの衛星測位システム、HDMI・USBはいずれも有線インターフェースであり、2.4 GHzの電波を用いる無線通信ではない。●2.4 GHz帯(ISMバンド)の無線=Wi-Fi(一部5 GHzも)・Bluetooth・Zigbee・電子レンジ・無線マウス。●GPS=約1.2〜1.6 GHz(衛星測位)。●有線インターフェース=HDMI・USB・LANケーブル。●医療機器との電磁干渉=携帯電話・無線LANと植込み型機器の離隔。

選択肢ごとの解説

第69回 午後98(医用工学概論)

判断を表すフローチャート記号はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k69pB098.07bdf7f5ed.jpg
第69回 午後98 の図

正答: ④

ポイント
フローチャート(流れ図)では記号ごとに意味が定められている。判断(分岐)はひし形で表し、条件の真偽に応じて処理の流れを2方向以上に分ける。角丸四角(端子)は開始・終了を、長方形は処理を、平行四辺形は入出力を、円柱は記憶(データ・ファイル)を表す。記号と意味の対応の理解が問われる。●端子(角丸四角)=開始・終了。●処理(長方形)=演算・代入。●判断(ひし形)=条件分岐。●入出力(平行四辺形)=データの入出力。●記憶(円柱)=データベース・ファイル。●定義済み処理(二重線の長方形)=サブルーチン。

選択肢ごとの解説

第69回 午後99(医用工学概論)

遠心分離機において、回転数を1/2にすると遠心力は何倍になるか。

正答: ①1/4

ポイント
遠心分離における相対遠心力は回転半径が一定であれば角速度の2乗、すなわち回転数(毎分回転数)の2乗に比例する。したがって回転数を1/2にすると遠心力は(1/2)の2乗=1/4倍になる。逆に回転数を2倍にすれば遠心力は4倍となる。回転数と遠心力の二乗関係の理解が問われる。●相対遠心力(RCF)=1.118×10⁻⁵×回転半径(cm)×回転数²(rpm)。●回転数2倍→遠心力4倍、回転数1/2→遠心力1/4。●遠心分離の用途=血清/血漿分離・尿沈渣・血球洗浄・密度勾配遠心。●関連量=角速度ω=2πN/60、遠心力∝rω²。

選択肢ごとの解説

第69回 午後100(医用工学概論)

1,000種類の検査項目をコード化する場合、最小限必要な記憶容量[bit]はどれか。

正答: ⑤10

ポイント
nビットで表現できる状態数は2のn乗である。1,000種類の検査項目を区別するには2のn乗が1,000以上となる最小のnが必要で、2の9乗=512は1,000に届かず不足、2の10乗=1,024は1,000を超えるため、最小限必要なのは10ビットとなる。情報量とビット数(2のべき乗)の関係の理解が問われる。●ビットと表現可能数=nビットで2ⁿ通り(1bit=2、4bit=16、8bit=256、10bit=1024)。●1バイト=8ビット=256通り。●情報量の単位=bit・byte・KB・MB。●コード化=必要な種類数を超える最小の2のべき乗を満たすビット数を選ぶ。

選択肢ごとの解説