第71回(2025) 臨床検査技師国家試験 午後51〜100|ケンゼミ過去問ドリル テキスト版

第71回 午後51(病理組織細胞学)

病理解剖で誤っているのはどれか。

正答: ②臨床経過の把握は不要である。

ポイント
病理解剖(剖検)は、生前の臨床経過と照らし合わせて死因や病態の進展を最終的に解明することが目的であり、臨床経過の把握はむしろ不可欠の前提である。実施にあたっては遺体への畏敬の念を保ち、感染防御に努め、死後変化が進む前に速やかに行い、準備が整うまでは冷蔵で保存する。これらに照らすと「臨床経過の把握は不要」とする記述だけが目的に反する。●解剖の種類=病理解剖(剖検・遺族の承諾による)・行政解剖・司法解剖。●解剖に必要な手続=遺族の承諾・死亡診断書/死体検案書・剖検前カンファレンス。●死後変化=死斑・死後硬直・自家融解・腐敗。

選択肢ごとの解説

第71回 午後52(病理組織細胞学)

術中迅速組織標本作製で最初に行うのはどれか。

正答: ⑤切り出し

ポイント
術中迅速組織標本(凍結標本)は手術中に短時間で良悪性や切除断端を判定するための検査で、通常のパラフィン包埋で行う固定・脱水・包埋といった工程を省く。提出された組織からまず切り出しで観察すべき部位を選び、その小片を凍結し、クリオスタットで薄切して染色する流れとなる。したがって最初の操作は切り出しである。脱灰・脱脂は迅速標本の標準工程には含まれない。●凍結標本の工程=切り出し→包埋剤での凍結→クリオスタット薄切→固定・迅速H-E染色→鏡検。●通常標本(パラフィン)の工程=固定→切り出し→脱水→透徹→パラフィン浸透・包埋→ミクロトーム薄切→染色。●脱灰が必要な検体=骨・石灰化組織。

選択肢ごとの解説

第71回 午後53(病理組織細胞学)

免疫組織化学染色の検査対象となるのはどれか。

正答: ④蛋白質

ポイント
免疫組織化学染色は、抗原抗体反応を利用して組織切片中の特定の蛋白質(抗原)の局在を可視化する手法で、標識酵素や蛍光色素を介して発色・発光させる。検出対象はあくまで蛋白質であり、DNAやRNAなどの核酸はin situハイブリダイゼーションで、重金属や酵素活性はそれぞれ別の手法で検出する。●蛋白質の検出=免疫組織化学染色・酵素抗体法・蛍光抗体法。●核酸の検出=in situハイブリダイゼーション(DNA・RNA)・FISH。●酵素活性の検出=酵素組織化学(ALP・ACP等)。●重金属・色素の検出=特殊染色(鉄染色・銅染色等)。

選択肢ごとの解説

第71回 午後54(病理組織細胞学)

細胞学的検査法の特徴で誤っているのはどれか。

正答: ④腫瘍の病期を確定できる。

ポイント
細胞学的検査(細胞診)は擦過・穿刺・喀出などで得た細胞を観察するもので、患者への侵襲が少なく検体採取が容易で、尿や体腔液といった液状検体も扱える点が利点である。悪性の有無の判定や組織型の推定に有用だが、腫瘍の広がり(深達度・転移)をみる病期(ステージ)の確定はできない。病期診断は画像検査や組織検査を要するため、「病期を確定できる」が誤りとなる。●細胞診の利点=低侵襲・採取が容易・反復可能・液状検体可・組織型の推定可。●細胞診の限界=病期確定不可・組織構築の評価が限られる・採取部位の偏りによる偽陰性。●検体の種類=剝離(喀痰・尿)・擦過(子宮頸部)・穿刺吸引(甲状腺・乳腺)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:細胞診と組織診の比較

項目細胞診組織診
侵襲少ない大きい(生検・切除を要する)
検体剝離・擦過・穿刺吸引で採取した細胞組織片
液状検体(尿・喀痰・体腔液等)可不可
腫瘍の組織型推定可能確定可能
病期(深達度・浸潤の評価)判定不可判定可能
反復採取容易容易ではない
細胞診は組織構築を評価できないため、悪性の有無や組織型の推定はできても病期(ステージ)の確定はできない。

第71回 午後55(病理組織細胞学)

H-E染色標本を別に示す。この臓器はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k71pB055.ba345a130a.jpg
第71回 午後55 の図

正答: ④皮膚

ポイント
H-E染色標本では、表面に角化を伴う重層扁平上皮(表皮)があり、その直下の真皮に毛包・脂腺・汗腺といった皮膚付属器が分布する像から皮膚と判断できる。気管は線毛円柱上皮と軟骨、食道は角化を欠く重層扁平上皮、大腸は杯細胞を含む腺上皮、膀胱は移行上皮(尿路上皮)でそれぞれ被覆される点が鑑別点となる。●重層扁平上皮の臓器=皮膚(角化あり)・食道(角化なし)・口腔・咽頭・子宮腟部。●円柱上皮の臓器=胃・腸・胆嚢。●線毛上皮=気管・気管支・卵管。●移行上皮(尿路上皮)=腎盂・尿管・膀胱。

選択肢ごとの解説

第71回 午後56(病理組織細胞学)

アスベストばく露と関連する腫瘍はどれか。

正答: ⑤悪性中皮腫

ポイント
アスベスト(石綿)ばく露は胸膜・腹膜に生じる悪性中皮腫の最大の原因であり、肺癌のリスクも高める。ばく露から発症までの潜伏期は20〜50年と長いのが特徴である。胃癌・肝癌・乳癌・悪性黒色腫はアスベストとの因果関係が確立していない。●アスベスト関連疾患=悪性中皮腫・肺癌・石綿肺・胸膜プラーク・びまん性胸膜肥厚。●職業性発癌物質と腫瘍=ベンゼン(白血病)・塩化ビニル(肝血管肉腫)・芳香族アミン/ベンジジン(膀胱癌)。●悪性黒色腫の危険因子=紫外線・色素性母斑。

選択肢ごとの解説

第71回 午後57(病理組織細胞学)

アミロイドβ蛋白の沈着を特徴とする疾患はどれか。

正答: ①Alzheimer病

ポイント
Alzheimer病はアミロイドβ蛋白が脳実質に沈着して老人斑を形成し、加えてタウ蛋白の異常リン酸化による神経原線維変化が出現する神経変性疾患である。Creutzfeldt-Jakob病は異常プリオン蛋白、進行性多巣性白質脳症はJCウイルス、Guillain-Barré症候群は末梢神経の自己免疫性脱髄、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンの変性が病態の中心で、いずれもアミロイドβ沈着を特徴としない。●蓄積蛋白と疾患=アミロイドβ/タウ(Alzheimer病)・α-シヌクレイン(Parkinson病・Lewy小体型認知症)・TDP-43(一部のALS・前頭側頭葉変性症)・異常プリオン(Creutzfeldt-Jakob病)。●脱髄性疾患=多発性硬化症・Guillain-Barré症候群・進行性多巣性白質脳症。

選択肢ごとの解説

第71回 午後58(病理組織細胞学)

走査型電子顕微鏡標本の作製工程に含まれないのはどれか。

正答: ①超薄切

ポイント
走査型電子顕微鏡(SEM)は試料表面に電子線を走査して微細な凹凸(立体像)を観察する装置で、グルタルアルデヒドおよびオスミウム酸による固定、タンニン酸による導電性処理、乾燥、金や白金などの金属イオン蒸着を経て試料を作製する。内部の微細構造を観察する透過型電子顕微鏡(TEM)と異なり、切片を作る超薄切は行わない。●走査型電顕(SEM)=表面の立体像・固定→乾燥→金属蒸着、超薄切なし。●透過型電顕(TEM)=内部微細構造・固定→脱水→樹脂包埋→超薄切→電子染色。●電顕用固定液=グルタルアルデヒド(前固定)・オスミウム酸(後固定)。

選択肢ごとの解説

第71回 午後59(臨床血液学)

自動血球計数装置による測定で誤っているのはどれか。

正答: ⑤目視より正確に血球の形態異常を判別できる。

ポイント
自動血球計数装置は細胞数や細胞容積(サイズ)の計測を高い再現性で行えるが、芽球・幼若球・異常リンパ球などの形態異常を最終的に判別するには塗抹標本の目視観察が必要で、装置が目視より正確に形態異常を判別できるわけではない。装置から異常フラグが出た検体は目視確認を要する。散乱光法による白血球分画、溶血処理によるヘモグロビン測定などは正しい記述である。●自動血球計数の原理=電気抵抗(インピーダンス)法・フローサイトメトリ(散乱光・蛍光)法・吸光度法(Hb)。●目視確認を要する場合=芽球・赤芽球出現・血小板凝集・異常フラグ。●測定誤差要因=破砕赤血球・血小板凝集・高ビリルビン・脂質。

選択肢ごとの解説

第71回 午後60(臨床血液学)

末梢血検査で赤血球数200万/μL、ヘモグロビン濃度7.5 g/dL、ヘマトクリット値24.0%を認めた。原因の特定に有用な検査項目はどれか。

正答: ②葉酸

ポイント
平均赤血球容積(MCV)=ヘマトクリット値(%)÷赤血球数(10⁶/μL)×10で算出でき、24.0÷2.00×10=120fLと大球性貧血を示す。大球性のうち巨赤芽球性貧血は葉酸またはビタミンB₁₂の欠乏で生じるため、葉酸測定が原因の特定に有用である。鉄やフェリチンは小球性(鉄欠乏)、エリスロポエチンは正球性(腎性)の評価に適し、本病態には合わない。●大球性貧血=巨赤芽球性(葉酸欠乏・ビタミンB₁₂欠乏・悪性貧血)・非巨赤芽球性(肝障害・甲状腺機能低下・骨髄異形成症候群)。●小球性貧血=鉄欠乏性・サラセミア・鉄芽球性・慢性疾患の貧血。●正球性貧血=溶血性・再生不良性・腎性。

選択肢ごとの解説

第71回 午後61(臨床血液学)

APTT延長を認めたため、APTTにてクロスミキシング試験を実施した。結果を表に示す。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k71pB061.348139493b.jpg
第71回 午後61 の図

正答: ④抗リン脂質抗体症候群

ポイント
クロスミキシング試験は患者血漿と正常血漿を種々の比で混和してAPTTを測定し、凝固因子欠乏(補正される=下に凸)かインヒビター(補正されない=上に凸)かを判別する検査である。本例は正常血漿を多く加えても延長が十分には補正されず、混和直後と2時間後の差も小さいことからループスアンチコアグラントを示すインヒビターパターンで、抗リン脂質抗体症候群が考えられる。因子欠乏なら正常血漿で補正される。●補正される(因子欠乏型)=血友病A・血友病B・von Willebrand病・ビタミンK欠乏症・DICの一部。●補正されない(インヒビター型)=ループスアンチコアグラント(抗リン脂質抗体症候群)・第Ⅷ因子インヒビター。●第Ⅷ因子インヒビターは2時間後(37℃加温)にさらに延長する時間依存性を示す。

選択肢ごとの解説

第71回 午後62(臨床血液学)

血清に含まれないのはどれか。

正答: ④フィブリノゲン

ポイント
血清は採血した血液が凝固した後に得られる上清で、凝固の過程でフィブリノゲンがフィブリンに転化して消費されるため、血清にはフィブリノゲンが含まれない。一方、アルブミン・γ-グロブリン・ハプトグロビン・トランスフェリンはいずれも血清に存在する。フィブリノゲンを測定するには抗凝固剤入りで採血した血漿を用いる。●血漿に含まれ血清に含まれないもの=フィブリノゲン・第Ⅴ因子・第Ⅷ因子など凝固で消費される因子。●血清にも含まれるもの=アルブミン・グロブリン・ハプトグロビン・トランスフェリン・補体。●抗凝固剤=EDTA・クエン酸ナトリウム・ヘパリン。

選択肢ごとの解説

第71回 午後63(臨床血液学)

骨髄穿刺液のフローサイトメトリ法のCD45ゲーティングを別に示す。黒い円で囲まれている部分の細胞はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k71pB063.d4254f12b4.jpg
第71回 午後63 の図

正答: ④骨髄芽球

ポイント
CD45と側方散乱光(SSC)を軸にとるゲーティングでは、芽球はCD45が弱陽性でSSCが低い領域(ブラストゲート)に分布する。黒円で示された集団はこの領域に位置することから骨髄芽球と判断される。成熟リンパ球はCD45強陽性・低SSC、顆粒球はCD45陽性・高SSC、単球はその中間、赤芽球はCD45がほぼ陰性の領域に位置する。●CD45/SSCの分布=リンパ球(CD45強陽性・低SSC)・単球(中等度SSC)・顆粒球(高SSC)・芽球(CD45弱陽性・低SSC)・赤芽球(CD45陰性)。●芽球マーカー=CD34・HLA-DR・CD117。●系統判定=骨髄系(MPO・CD13・CD33)・B細胞(CD19・CD10)・T細胞(CD3)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:CD45/側方散乱光〈SSC〉ゲーティングにおける血球分画の位置

細胞CD45SSC(側方散乱光)
リンパ球強陽性(発現量が最も多い)低い
単球陽性中程度
顆粒球陽性(リンパ球より弱い)高い
骨髄芽球弱陽性低い
赤芽球陰性低い
幼若な芽球はCD45発現が少ないことを利用し、急性白血病の微小残存病変(MRD)検出などに用いる。

第71回 午後64(臨床血液学)

28歳の男性。血液検査で異常を指摘されたため来院した。血液所見:白血球199,000/μL、赤血球228万/μL、Hb8.2 g/dL、血小板25.7万/μL。末梢血のMay-Giemsa染色標本の弱拡大写真と強拡大写真を別に示す。染色体検査で予想される所見はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k71pB064.bddb8f5521.jpg
第71回 午後64 の図

正答: ②t(9;22)

ポイント
白血球が約20万/μLと著明に増加し、末梢血に各成熟段階の好中球系(骨髄球・後骨髄球・桿状核球など)がそろってみられる像は慢性骨髄性白血病に典型的で、染色体検査ではt(9;22)(フィラデルフィア染色体)が予想される。これによりBCR-ABL1融合遺伝子が生じ、好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコアは低下する。●白血病と染色体異常=t(9;22)(慢性骨髄性白血病・BCR-ABL1)・t(8;21)(急性骨髄性白血病M2)・t(15;17)(急性前骨髄球性白血病M3・PML-RARA)・inv(16)(急性骨髄性白血病M4Eo)・t(12;21)(小児B前駆細胞性急性リンパ性白血病)。●慢性骨髄性白血病の所見=NAPスコア低下・好塩基球増加・血小板増加傾向。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:急性骨髄性白血病〈AML〉と慢性骨髄性白血病〈CML〉の鑑別点

項目AMLCML
芽球比率20%以上慢性期は5%未満
白血病裂孔(芽球と成熟好中球の間の中間段階を欠く所見)みられるみられない(各成熟段階が連続的に存在)
好中球アルカリホスファターゼ〈NAP〉スコア様々著明に低下
好塩基球増加目立たない特徴的にみられる
代表的な遺伝子異常t(8;21)・inv(16)・t(15;17)などt(9;22) BCR-ABL1(ほぼ全例)

第71回 午後65(臨床血液学)

血清鉄と鉄結合能の関係を別に示す。この患者で考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k71pB065.6f4a9922e3.jpg
第71回 午後65 の図

正答: ④鉄欠乏性貧血

ポイント
鉄欠乏性貧血では貯蔵鉄の枯渇により血清鉄が低下し、これを運ぶトランスフェリンが増加するため総鉄結合能(TIBC)・不飽和鉄結合能(UIBC)が上昇し、トランスフェリン飽和度とフェリチンは低下する。図の低血清鉄・高鉄結合能というパターンはこれに一致する。慢性疾患(感染症)の貧血では血清鉄・TIBCともに低下し、溶血性・再生不良性貧血では血清鉄はむしろ上昇する。●鉄欠乏性貧血=血清鉄↓・TIBC↑・フェリチン↓・小球性低色素性。●慢性疾患の貧血=血清鉄↓・TIBC↓・フェリチン正常〜↑。●鉄過剰・溶血=血清鉄↑・フェリチン↑。

選択肢ごとの解説

第71回 午後66(臨床血液学)

真性赤血球増加症における検査項目とその結果の組合せで正しいのはどれか。

正答: ③NAPスコア — 高値

ポイント
真性赤血球増加症は造血幹細胞のクローン性増殖(多くはJAK2変異)による骨髄増殖性腫瘍で、赤血球が増加し、好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコアと血清ビタミンB₁₂が高値、エリスロポエチンは低値となる。細胞回転の亢進により血清LD(乳酸脱水素酵素)も上昇しやすい。よって正しい組合せはNAPスコア高値である。●真性赤血球増加症の所見=赤血球増加・NAPスコア↑・ビタミンB₁₂↑・エリスロポエチン↓・LD↑・血小板/白血球増加。●骨髄増殖性腫瘍=真性赤血球増加症・本態性血小板血症・原発性骨髄線維症・慢性骨髄性白血病。●二次性赤血球増加=エリスロポエチン↑(低酸素・腎腫瘍)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:真性赤血球増加症(PV)の主な検査所見

検査項目結果
赤血球数・Hb・Ht高値(著増)
血清LD高値(赤血球絶対数・破壊の増加による)
NAPスコア(好中球アルカリホスファターゼ)高値
血清ビタミンB12高値(白血球増加に伴うトランスコバラミン放出)
血清エリスロポエチン低値
JAK2変異陽性が多い
PVは造血幹細胞のクローン性増殖による骨髄増殖性腫瘍で、赤血球系だけでなく白血球(顆粒球系)・血小板も増加しやすい。

第71回 午後67(臨床血液学)

線溶亢進による出血傾向を認める先天性疾患はどれか。

正答: ①PAI-1欠損症

ポイント
PAI-1(プラスミノゲンアクチベータインヒビター1)は組織プラスミノゲンアクチベータを阻害して線溶を抑える因子で、これが先天的に欠損すると線溶が過度に亢進し、形成された血栓が早期に溶解して出血傾向(特に外傷・手術後の遅発性出血)をきたす。これに対しプロテインS欠損やアンチトロンビン欠損は血栓性素因となり、高ホモシステイン血症も血栓との関連がある。プラスミノゲン欠損症は線溶亢進による出血性疾患ではないが、その欠損だけを確立した静脈血栓症の危険因子と断定することには注意が必要である。●出血傾向をきたす線溶異常=PAI-1欠損症・α2-プラスミンインヒビター欠損症。●先天性血栓性素因=アンチトロンビン欠損・プロテインC欠損・プロテインS欠損・高ホモシステイン血症。●線溶系=プラスミノゲン→プラスミン(t-PAで活性化、PAI-1・α2-PIで抑制)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:先天性血栓性素因と線溶亢進による出血傾向の対比

分類疾患(欠損・異常)機序
先天性血栓性素因(生理的凝固阻止物質の欠損)アンチトロンビン欠損症トロンビン等の凝固因子の不活化が働かず凝固が亢進する
先天性血栓性素因(生理的凝固阻止物質の欠損)プロテインC欠損症活性化第Ⅴ・Ⅷ因子の分解が働かず凝固が亢進する
先天性血栓性素因(生理的凝固阻止物質の欠損)プロテインS欠損症活性化プロテインCの補助因子が働かず凝固が亢進する
先天性線溶異常プラスミノゲン欠損症Ⅰ型では粘膜へのフィブリン沈着などを呈する。欠損単独を血栓症の確立した危険因子とする根拠は乏しい
先天性血栓性素因(その他)高ホモシステイン血症血管内皮細胞が障害され動脈硬化・血栓傾向をきたす
線溶亢進による出血傾向PAI-1〈プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1〉欠損症t-PAの阻害が働かず線溶が過度に亢進し、血栓が早期に溶解して出血傾向をきたす
先天性の凝固・線溶異常の大半は血栓傾向をきたすが、PAI-1欠損症は例外的に線溶亢進による出血傾向をきたす点が国家試験で問われるポイント。

第71回 午後68(臨床微生物学)

消毒薬と消毒レベルの組合せで正しいのはどれか。

正答: ④消毒用エタノール — 中水準

ポイント
消毒薬は抗微生物スペクトルの広さにより高・中・低水準に分類される。消毒用エタノールは中水準消毒薬で、一般細菌・結核菌・真菌・多くのウイルスに有効だが芽胞には無効である。フタラールはグルタラールと同じく高水準、クロルヘキシジンや第四級アンモニウム塩は低水準、次亜塩素酸ナトリウムやポビドンヨードは中水準に分類される。●高水準消毒薬=グルタラール・フタラール・過酢酸。●中水準消毒薬=次亜塩素酸ナトリウム・ポビドンヨード・消毒用エタノール・イソプロパノール。●低水準消毒薬=クロルヘキシジン・第四級アンモニウム塩(ベンザルコニウム)・両性界面活性剤。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:消毒薬の水準分類と主な薬剤・効果

水準主な薬剤効果の目安
高水準グルタルアルデヒド(グルタラール)、フタラール、過酢酸短時間では大量の芽胞を除き全ての微生物を殺滅
中水準次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、消毒用エタノール、クレゾール石けんほとんどの細菌・真菌を殺滅しウイルスを不活化。芽胞は必ずしも殺滅しない
低水準グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム(逆性石けん)、両性界面活性剤結核菌・芽胞・一部のウイルスや真菌には無効
消毒用エタノールは適切な濃度・接触時間で一般細菌、結核菌、真菌、多くのウイルスに有効。ただし、細菌芽胞には無効で、一部のノンエンベロープウイルスにも効果が不十分である。

第71回 午後69(臨床微生物学)

市中肺炎が疑われた患者の喀痰のGram染色標本を別に示す。分離菌はヒツジ血液寒天培地に発育しなかった。考えられるのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k71pB069.81c9a54eb9.jpg
第71回 午後69 の図

正答: ②Haemophilus influenzae

ポイント
ヒツジ血液寒天培地に発育せず、発育にはX因子(ヘミン)とV因子(NAD)が必要でチョコレート寒天で発育するグラム陰性小桿菌は、市中肺炎や気道感染の起炎菌であるHaemophilus influenzaeである。ブドウ球菌の周囲でのみ発育する衛星現象もみられる。Gram染色では小型で多形性のあるグラム陰性桿菌として観察される。●発育に特殊因子を要する菌=Haemophilus(X・V因子)・Legionella(システイン・鉄)・Campylobacter(微好気)。●市中肺炎の主な起炎菌=肺炎球菌・Haemophilus influenzae・Moraxella catarrhalis・マイコプラズマ・レジオネラ。●チョコレート寒天で発育=Haemophilus・Neisseria(淋菌・髄膜炎菌)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:特殊な発育因子・培養条件を必要とする細菌

菌特殊な発育要求主な培地・条件備考
Haemophilus influenzaeX因子(ヘミン)+V因子(NAD)チョコレート寒天培地(CO₂培養)ヒツジ血液寒天には発育しない、V因子産生菌の周囲で発育増強(衛星現象)
Haemophilus parainfluenzaeV因子のみチョコレート寒天培地X因子は不要
Neisseria gonorrhoeae・meningitidis二酸化炭素(CO₂ 5〜10%)チョコレート寒天培地・GC培地普通寒天培地には発育しない好炭酸ガス性菌
Legionella pneumophilaシステイン・鉄BCYEα培地通常のGram染色では染まりにくい
Campylobacter jejuni微好気(酸素約5%)、高温(42℃前後)Skirrow培地など下痢症の原因、Guillain-Barré症候群の先行感染菌

第71回 午後70(臨床微生物学)

蛋白合成阻害作用を有する抗菌薬はどれか。

正答: ⑤テトラサイクリン系

ポイント
テトラサイクリン系抗菌薬は細菌リボソームの30Sサブユニットに結合し、アミノアシルt-RNAのA部位への結合を妨げて蛋白合成を阻害する静菌的抗菌薬である。キノロン系はDNA複製(DNAジャイレース・トポイソメラーゼ)、カルバペネム系とホスホマイシン系は細胞壁合成、サルファ剤は葉酸合成を阻害し、いずれも蛋白合成阻害ではない。●蛋白合成阻害=テトラサイクリン系・アミノグリコシド系(30S)・マクロライド系・クロラムフェニコール・リンコマイシン系(50S)。●細胞壁合成阻害=βラクタム系(ペニシリン・セフェム・カルバペネム)・グリコペプチド系・ホスホマイシン。●核酸合成阻害=キノロン系(DNA)・リファンピシン(RNA)。●葉酸合成阻害=サルファ剤・トリメトプリム。

選択肢ごとの解説

第71回 午後71(臨床微生物学)

DNAウイルスはどれか。

正答: ②サイトメガロウイルス

ポイント
サイトメガロウイルスはヘルペスウイルス科に属する二本鎖DNAウイルスで、潜伏感染と再活性化を起こし、先天感染や免疫不全者の日和見感染の原因となる。インフルエンザウイルス・デングウイルス・ヒトRSウイルス・ムンプスウイルスはいずれもRNAウイルスである。●主なDNAウイルス=ヘルペスウイルス(単純ヘルペス・水痘帯状疱疹・サイトメガロ・EB)・アデノウイルス・パピローマウイルス・B型肝炎ウイルス・パルボウイルス・痘瘡ウイルス。●主なRNAウイルス=インフルエンザ・コロナ・麻疹・風疹・ムンプス・RS・デング・ポリオ・ノロ・C型肝炎・HIV。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主なウイルスの核酸型(DNA/RNA)による分類

核酸型代表的なウイルス
DNAウイルスB型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルスなどヘルペスウイルス科(単純ヘルペス・水痘帯状疱疹・EBウイルス等)、アデノウイルス
RNAウイルスインフルエンザウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ポリオウイルス、A型・C型・D型・E型肝炎ウイルス
肝炎ウイルスの中ではB型肝炎ウイルスのみがDNAウイルスであり、A・C・D・E型はRNAウイルスである。

第71回 午後72(臨床微生物学)

細菌と毒素の組合せで誤っているのはどれか。

正答: ⑤Streptococcus pyogenes — toxic shock syndrome toxin-1〈TSST-1〉

ポイント
toxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が産生するスーパー抗原で、毒素性ショック症候群を起こす毒素であり、Streptococcus pyogenesの産生毒素ではない。S. pyogenesは発熱毒素(発赤毒素)やストレプトリジンを産生する。他の細菌と毒素の組合せはいずれも正しい。●外毒素の例=C. difficile(トキシンA・B)・ボツリヌス菌(神経毒素)・腸管出血性大腸菌(ベロ毒素/志賀毒素)・黄色ブドウ球菌(腸管毒・表皮剝脱毒素・TSST-1)・破傷風菌(テタノスパスミン)・ジフテリア菌(ジフテリア毒素)。●スーパー抗原=TSST-1・腸管毒・連鎖球菌発熱毒素。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な細菌毒素

菌種毒素症状・作用
大腸菌(ETEC)耐熱性/易熱性腸管毒〈ST/LT〉下痢(水様性)
コレラ菌コレラ毒素下痢(水様性)
赤痢菌志賀毒素下痢(粘血便)
腸管出血性大腸菌〈EHEC〉ベロ毒素(志賀毒素類似)下痢(粘血便)、溶血性尿毒症症候群〈HUS〉
腸炎ビブリオ耐熱性溶血毒〈TDH〉下痢(粘血便)
ジフテリア菌ジフテリア毒素(A-B毒素)末梢神経障害(軟口蓋麻痺など)・心筋炎
百日咳菌百日咳毒素インスリン分泌促進、リンパ球増多
破傷風菌破傷風毒素(テタノスパスミン)硬直性麻痺
ボツリヌス菌ボツリヌス毒素弛緩性麻痺(神経毒)
Clostridioides difficileトキシンB偽膜性腸炎
黄色ブドウ球菌エンテロトキシン嘔吐
黄色ブドウ球菌表皮剝脱毒素皮膚剝離(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群〈SSSS〉)
黄色ブドウ球菌毒素性ショック症候群毒素-1〈TSST-1〉発熱・発疹・低血圧(スーパー抗原)
黄色ブドウ球菌コアグラーゼ血漿凝固作用
化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)発赤毒素(Dick毒素)猩紅熱の発疹(スーパー抗原)
化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)ストレプトリジンO・S、ストレプトキナーゼ溶血、自己免疫疾患の一因
TSST-1・エンテロトキシン・発赤毒素はスーパー抗原として働く。EHECのベロ毒素は志賀毒素(Stx)とも呼ばれ、Stx1・Stx2などに分けられる。Stx1はShigella dysenteriae 1型の志賀毒素と極めて近縁であり、「別々の無関係な毒素」として覚えない。

第71回 午後73(臨床微生物学)

Cryptococcus neoformans と Cryptococcus gattii の共通の性状はどれか。

正答: ④ウレアーゼを産生する。

ポイント
設問の2菌に共通する性状はウレアーゼ産生である。ウレアーゼは尿素を分解してアンモニアと二酸化炭素を生じる酵素で、酵母様真菌のCryptococcus neoformansやCandidaの一部などが産生し、同定の指標となる。二形性・発芽管形成・仮性菌糸形成・分節型分生子形成は菌種により有無が分かれ、両者に共通する性状とはいえない。●ウレアーゼ陽性の微生物=Cryptococcus neoformans・Trichosporon・Helicobacter pylori・Proteus。●真菌の鑑別性状=発芽管(Candida albicans)・仮性菌糸(Candida)・厚膜胞子(C. albicans)・莢膜(Cryptococcus)・二形性(Histoplasma等の輸入真菌)。

選択肢ごとの解説

第71回 午後74(臨床微生物学)

耐性菌と薬剤耐性の組合せで典型的でないのはどれか。

正答: ②ESBL産生菌 — メロペネム耐性

ポイント
ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)産生菌はペニシリンや第三世代セフェムを分解して耐性を示すが、カルバペネム系(メロペネム)には通常感受性が保たれるため、ESBL—メロペネム耐性は典型的でない組合せである。BLNAR—アンピシリン耐性、多剤耐性緑膿菌(MDRP)—アミカシン耐性、MRSA—セファゾリン耐性、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)—バンコマイシン耐性はいずれも典型的である。●βラクタマーゼ=ペニシリナーゼ・ESBL(セフェム分解/カルバペネム感受性)・カルバペネマーゼ(メタロβラクタマーゼ等)。●主な耐性菌=MRSA・VRE・MDRP・ESBL産生菌・CRE(カルバペネム耐性腸内細菌)・BLNAR。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:主な薬剤耐性菌と有効な治療薬

耐性菌(略称)主な耐性の対象薬有効な治療薬
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)ほとんどのβ-ラクタム系(ペニシリン系・セフェム系)バンコマイシン、テイコプラニン、リネゾリド
VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)バンコマイシン(グリコペプチド系)リネゾリドなど
MDRP(多剤耐性緑膿菌)カルバペネム系・アミノグリコシド系・ニューキノロン系コリスチンなど、有効薬は限られる
MDRA(多剤耐性アシネトバクター)カルバペネム系等の多系統コリスチンなど、有効薬は限られる
ESBL産生菌(基質拡張型β-ラクタマーゼ)ペニシリン系・第3/4世代セフェム系・モノバクタム系カルバペネム系(メロペネム等)
BLNAR(β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌)アンピシリン第3世代セフェム系等
ESBLはカルバペネム系を分解しないため、ESBL産生菌はメロペネムに感性を示すことが多い(メロペネム耐性ではない点に注意)。

第71回 午後75(臨床微生物学)

妊婦が初感染すると胎児奇形のリスクが高いのはどれか。

正答: ④風疹ウイルス

ポイント
妊娠初期に風疹ウイルスへ初感染すると、胎盤を介した経胎盤感染により先天性風疹症候群(白内障・先天性心疾患・感音性難聴を三主徴とする)を高率に生じる。選択肢のなかで胎児奇形のリスクが高いのは風疹ウイルスである。サイトメガロウイルスやトキソプラズマも先天感染をきたすが、本選択肢には含まれない。●先天感染(TORCH)=トキソプラズマ・風疹・サイトメガロ・単純ヘルペス・梅毒トレポネーマ。●先天性風疹症候群の三徴=白内障・心奇形・感音性難聴。●母子(垂直)感染=B型/C型肝炎ウイルス・HIV・成人T細胞白血病ウイルス・梅毒。

選択肢ごとの解説

第71回 午後76(臨床微生物学)

血液培養で検出された場合、汚染菌である可能性が高いのはどれか。

正答: ②Cutibacterium acnes

ポイント
Cutibacterium acnes(旧Propionibacterium acnes)は皮膚の毛包・脂腺に常在するグラム陽性嫌気性桿菌で、血液培養から検出されても多くは穿刺時に皮膚から混入したコンタミネーション(汚染菌)と判断される。判定には複数セット採血での陽性率や陽性化までの時間、患者背景(人工弁・人工関節・脳室シャント等の異物留置)を加味し、真の起炎菌か汚染かを総合的に評価する。一方、Bacillus anthracis・Pseudomonas aeruginosa・Staphylococcus aureus・Enterococcus faecalisは検出されれば原則として起炎菌として扱う。●代表的な血液培養汚染菌=コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidisなど)・Cutibacterium acnes・Corynebacterium属(ジフテリア菌を除く)・Bacillus属(炭疽菌を除く)。●検出されれば重視すべき菌=Staphylococcus aureus・腸内細菌目細菌・緑膿菌・腸球菌・Candida属・肺炎球菌。●汚染判定の指標=複数セットでの陽性割合・陽性化時間・同一菌種の一致性・臨床経過。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:血液培養における汚染菌(コンタミネーション)と起因菌として重視する菌

分類代表菌
汚染菌の可能性が高いコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌等)、Cutibacterium acnes、Corynebacterium属(ジフテリア菌を除く)、Bacillus属(炭疽菌を除く)
起因菌として重視すべきStaphylococcus aureus、腸内細菌目細菌、緑膿菌、腸球菌、Candida属、肺炎球菌
判定には複数セット採血での陽性率・陽性化までの時間・患者背景(人工弁・人工関節等の異物留置)なども加味して総合的に評価する。

第71回 午後77(臨床微生物学)

微生物検査において担当医師への緊急連絡を要する検査結果はどれか。2つ選べ。

正答: ②糞便から腸管出血性大腸菌が検出された。・⑤血液からStreptococcus pyogenesが検出された。

ポイント
微生物検査では、結果が患者の生命や公衆衛生上重大で迅速な対応を要する場合に担当医師へ緊急連絡を行う。糞便からの腸管出血性大腸菌(EHEC)は溶血性尿毒症症候群(HUS)の危険があり感染症法上の届出と感染対策が必要で、血液からのStreptococcus pyogenes(A群溶血性レンサ球菌)は劇症型溶血性レンサ球菌感染症の可能性があり緊急性が高い。鼻腔のMRSA・尿の淋菌・喀痰のMycobacterium aviumは重要だが、即時連絡を要する緊急度は相対的に低い。●緊急連絡を要する代表例=血液培養陽性・髄液からの起炎菌検出・腸管出血性大腸菌(志賀毒素産生)・劇症型溶血性レンサ球菌・髄膜炎菌・抗酸菌塗抹陽性。●感染症法の届出=腸管出血性大腸菌感染症(三類)・結核・侵襲性髄膜炎菌感染症等。●菌血症で緊急性の高い菌=Staphylococcus aureus・腸内細菌目細菌・緑膿菌・Candida属。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:微生物検査で担当医師への緊急連絡を要する代表的な検出所見

検出状況緊急性の理由
髄液から細菌・真菌(Neisseria meningitidis、Cryptococcus neoformans等)を検出本来無菌の部位からの検出であり、重篤な髄膜炎を意味する
血液培養陽性(菌血症・敗血症)全身性感染症の可能性がある
糞便から腸管出血性大腸菌(EHEC)を検出溶血性尿毒症症候群(HUS)のリスクがあり、感染症法上の届出・感染対策が必要
血液からStreptococcus pyogenes(A群溶血性レンサ球菌)を検出劇症型溶血性レンサ球菌感染症のリスクがある
喀痰からMycobacterium tuberculosisを検出(抗酸菌塗抹陽性)結核として隔離等の感染対策が必要

第71回 午後78(臨床微生物学)

染色法と対象となる微生物の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

正答: ②KOH法 — Trichophyton rubrum・③Grocott染色 — Pneumocystis jirovecii

ポイント
染色法は対象微生物の性状に合わせて選択する。KOH(水酸化カリウム)法は角質をアルカリで溶解して皮膚糸状菌(Trichophyton rubrumなど)の菌糸・分節胞子を観察する直接鏡検法である。Grocott染色(メセナミン銀染色)は細胞壁の多糖を含む真菌やニューモシスチス(Pneumocystis jirovecii)の菌体を黒褐色に染める。墨汁法はCryptococcus neoformansの莢膜を陰性染色で観察し、Giménez染色はLegionellaやRickettsiaに、Ziehl-Neelsen染色は抗酸菌に用いる。●莢膜の観察=墨汁法(Cryptococcus)。●真菌・ニューモシスチス=Grocott染色・PAS染色・KOH法(糸状菌)。●抗酸菌=Ziehl-Neelsen染色・Kinyoun染色・蛍光(オーラミン)染色。●Legionella・Rickettsia=Giménez染色。●らせん菌・スピロヘータ=鍍銀染色・暗視野顕微鏡。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:微生物の染色法と検出対象(構造・真菌・特殊病原体)

染色法検出対象備考
Wirtz法〈Wirtz-Conklin法〉芽胞(Bacillus属・Clostridium属)マラカイトグリーンで加温染色、対比染色はサフラニン
Hiss法莢膜フクシン液またはゲンチアナ紫液、加温染色
Leifson法鞭毛ホルマリン固定後に色素で塗抹染色
Neisser法・Albert法異染小体(Corynebacterium diphtheriae)異染小体は黒褐色、菌体は黄色に染まる
Ziehl-Neelsen法抗酸菌(結核菌等)石炭酸フクシンで加温染色、赤色に呈色
Kinyoun法(冷染色)抗酸菌・Nocardia属(弱抗酸性)加温せずに抗酸性を証明できる
オーラミン・ローダミン法(蛍光法)抗酸菌(結核菌等)蛍光顕微鏡でのスクリーニングに用いる
Giménez〈ヒメネス〉染色Legionella属・リケッチア属菌体は赤色、背景はマラカイト緑により緑〜青緑色に染まる
墨汁法(陰性染色)Cryptococcus属の莢膜髄液中のクリプトコックスの莢膜観察に用いる
KOH法(水酸化カリウム法)皮膚糸状菌(Trichophyton属等)角質を溶解し直接鏡検する
Grocott〈メセナミン銀〉染色真菌全般・Pneumocystis jirovecii黒褐色に染色、主に病理標本で用いる
Gram染色(パイフェル液使用)グラム陽性菌・陰性菌の鑑別クリスタル紫→ヨウ素液〈ルゴール液〉(媒染)→アルコール脱色→パイフェル液〈希釈石炭酸フクシン〉またはサフラニン(後染色)

第71回 午後79(臨床免疫学)

急性期反応性蛋白でないのはどれか。

正答: ④トランスサイレチン

ポイント
急性期反応性蛋白(急性相反応物質)は炎症・組織損傷で肝臓での合成が増加する蛋白で、CRP・ハプトグロビン・セルロプラスミン・α₁-アンチトリプシン・フィブリノゲン・血清アミロイドA・補体などが含まれる。これに対しトランスサイレチン(プレアルブミン)は炎症時に合成が低下する負の急性期反応性蛋白で、栄養状態の指標として用いられる。設問は「でないもの」を問うため、減少側のトランスサイレチンが該当する。●正(増加する)急性期蛋白=CRP・血清アミロイドA・ハプトグロビン・フィブリノゲン・セルロプラスミン・α₁-アンチトリプシン・α₁-酸性糖蛋白・補体(C3・C4)。●負(減少する)急性期蛋白=アルブミン・トランスサイレチン(プレアルブミン)・トランスフェリン・レチノール結合蛋白。●栄養動態の指標(rapid turnover protein)=トランスサイレチン・トランスフェリン・レチノール結合蛋白。

選択肢ごとの解説

第71回 午後80(臨床免疫学)

血清の非働化により失活する補体成分はどれか。

正答: ①C1

ポイント
血清の非働化(非動化)は56℃・30分間の加熱により、易熱性の補体を不活化する操作で、血清学的検査での非特異反応を防ぐ目的で行う。補体成分のうち最も熱に弱いのはC1(およびC2・B因子)で、加熱により活性が失われる。選択肢の中ではC1が該当する。C3・C4・C6・D因子はC1に比べ熱安定性が高い。●補体の活性化経路=古典経路(C1q・C1r・C1s→C4→C2)・第二(副)経路(C3・B因子・D因子・プロパージン)・レクチン経路(MBL・MASP)。●易熱性で非働化により失活=C1・C2・B因子・プロパージン。●比較的耐熱性=C3・C4・C6。●非働化の目的=補体による溶血や非特異的活性化の抑制(梅毒血清反応・補体結合反応の前処理)。

選択肢ごとの解説

第71回 午後81(臨床免疫学)

Ⅲ型アレルギーに分類される疾患はどれか。

正答: ⑤全身性エリテマトーデス

ポイント
Coombsらの分類でⅢ型アレルギー(免疫複合体型)は、抗原と抗体(IgG・IgM)が形成する免疫複合体が組織や血管壁に沈着し、補体を活性化して好中球を集積させ組織障害を起こす型である。全身性エリテマトーデス(SLE)はDNAなどに対する免疫複合体が腎・皮膚・関節に沈着する代表的Ⅲ型疾患で、ほかに血清病や急性糸球体腎炎が含まれる。花粉症はⅠ型、重症筋無力症と自己免疫性溶血性貧血はⅡ型、サルコイドーシスは肉芽腫を形成するⅣ型関連の疾患である。●Ⅰ型(即時型・IgE)=花粉症・気管支喘息・アナフィラキシー・蕁麻疹。●Ⅱ型(細胞傷害型)=自己免疫性溶血性貧血・特発性血小板減少性紫斑病・重症筋無力症・Goodpasture症候群・不適合輸血。●Ⅲ型(免疫複合体型)=SLE・血清病・急性糸球体腎炎・過敏性肺炎(Ⅲ型とⅣ型が関与)。●Ⅳ型(遅延型・T細胞)=接触皮膚炎・ツベルクリン反応・移植拒絶・サルコイドーシス。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:アレルギー(過敏症)の分類(Coombs-Gell分類)

型機序代表的な疾患・免疫現象
Ⅰ型(アナフィラキシー型)IgE抗体とアレルゲンの架橋による肥満細胞・好塩基球の脱顆粒気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、蕁麻疹、アナフィラキシーショック、食物アレルギー
Ⅱ型(細胞傷害型)自己細胞に結合した抗体が補体やNK細胞・貪食を介して細胞を傷害自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、輸血副作用
Ⅲ型(免疫複合体型)抗原抗体複合体が組織に沈着し補体活性化・好中球誘引ループス腎炎、血清病、急性糸球体腎炎、Arthus反応
Ⅳ型(遅延型過敏症)感作T細胞・細胞傷害性T細胞が抗原と反応(抗体は関与しない)接触性皮膚炎、ツベルクリン反応、GVHD
Ⅴ型(抗レセプター抗体型/刺激型)細胞表面の受容体に対する抗体により細胞機能が亢進(Ⅱ型の亜型)Basedow病

第71回 午後82(臨床免疫学)

試験管内補体寒冷活性化現象〈コールドアクチベーション〉でみられる検査結果の組合せで正しいのはどれか。各検査〔血清補体価/血漿補体価/C3蛋白量〕の組合せを表に示す。

図: https://medwide.jp/drill/img/k71pB082.b1caf1d747.jpg
第71回 午後82 の図

正答: ③

ポイント
コールドアクチベーション(寒冷補体活性化現象)は、一部の検体で採血後の血清を低温(4℃)で放置すると、試験管内で補体の古典経路が活性化され、C1・C4・C2などの機能が低下するため、血清補体価(CH50)が見かけ上低下する現象である。これは試験管内のアーチファクトであり、生体内の補体消費を反映しない。EDTA血漿では補体活性化が阻止されるため血漿補体価は基準範囲内に保たれ、C3蛋白量(抗原量測定)も基準範囲内のままとなる。したがって血清補体価のみ低値となる③が該当する。●補体価が真に低下する病態=SLE・膜性増殖性糸球体腎炎・クリオグロブリン血症・遺伝性血管性浮腫(C1インヒビター欠損)・敗血症。●試験管内アーチファクト=コールドアクチベーション(血清のみ低値)。●補体測定=機能的測定(CH50)・各成分の抗原量(C3・C4蛋白)。●EDTA採血の意義=Ca依存性の補体活性化を阻止。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:補体価〈CH50〉異常パターンと考えられる病態

CH50(血清補体価)C3C4考えられる病態
低値低値低値免疫複合体による補体消費(急性糸球体腎炎・SLE等)、肝での補体産生低下(慢性肝炎・肝硬変等)
低値低値正常補体第二経路(副経路)の活性化(膜性増殖性糸球体腎炎等)
低値正常低値C1インヒビター〈C1-INH〉欠損(遺伝性血管性浮腫〈HANE〉。HANEではC1qは正常。C1qが低値の場合は後天性血管性浮腫)
低値(血清のみ。血漿補体価・C3蛋白量は正常)正常正常試験管内アーチファクト=コールドアクチベーション(寒冷活性化)。C型肝炎に伴うクリオグロブリンが低温で補体と結合し血清中でのみ補体が消費される。EDTA血漿では低温下の活性化が阻止されるため血漿補体価は基準範囲内に保たれる
高値——炎症性疾患・感染症・悪性腫瘍など(補体は炎症マーカーの一種)
コールドアクチベーションは生体内の病態ではなく採血後の試験管内で生じる現象である点に注意。血清と血漿でCH50に乖離を認める場合はこの現象を疑う。

第71回 午後83(臨床免疫学)

中和抗体はどれか。2つ選べ。

正答: ①HBs抗体・③IgG-HA抗体

ポイント
中和抗体はウイルスの細胞への吸着・侵入を阻止して感染性を失わせる防御的抗体で、ワクチン効果や感染防御・既往の指標となる。HBs抗体(B型肝炎ウイルス表面抗原に対する抗体)はHBVの感染を防御する中和抗体で、ワクチン接種や既感染で陽性化する。A型肝炎のIgG-HA抗体も感染防御・既往を示す中和抗体である。一方、HCV抗体・HIV-1/2抗体・IgG-HBc抗体はいずれも感染の有無を示すスクリーニング・診断指標であり、防御的な中和抗体ではない。●中和(防御)抗体=HBs抗体・IgG-HA抗体・風疹IgG抗体・麻疹IgG抗体・ワクチン誘導抗体。●感染診断・既往指標(中和抗体でない)=HCV抗体・HIV抗体・HBc抗体・HBe抗体/抗原。●HBV関連マーカー=HBs抗原(感染)・HBs抗体(防御/既往)・HBc抗体(既感染)・HBe抗原(増殖)・HBe抗体・HBV-DNA。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:肝炎ウイルスマーカーの解釈

マーカー意味
HBs抗原HBV感染の存在(現在感染している)
HBs抗体HBV感染の既往または免疫獲得(ワクチン接種後を含む)
HBe抗原HBVの活発な増殖・高い感染性
HBe抗体セロコンバージョン後、ウイルス増殖・感染性の低下
IgM型HBc抗体B型肝炎の急性期(発症)の指標
IgG型HBc抗体B型肝炎の既往感染
HBV-DNAウイルスの増殖量(量的指標)
IgM型HA抗体A型肝炎の急性期
IgG型HA抗体A型肝炎の既往感染・免疫
HCV抗体C型肝炎の感染既往または持続感染(単独では治癒の指標にならない)
HCV-RNAC型肝炎ウイルスの現在の感染・治癒判定に用いる

第71回 午後84(臨床免疫学)

血液型で正しいのはどれか。

正答: ③Di(a+)の日本人は約10%である。

ポイント
Diego式血液型のDi(a)抗原はモンゴロイド(東アジア・南米先住民)に多く、日本人では約10%がDi(a+)である。Bombay型はH遺伝子の欠損によりH抗原をもたず、結果としてA・B抗原も発現できない型である。Xg式はX染色体連鎖でXg(a)は女性に多く、weak DはD抗原の量(数)が少ない型で、D抗原のエピトープ(部分)が欠損するのはpartial Dである。三日熱マラリア原虫はDuffy抗原を侵入受容体とするため、Duffy陰性(Fy a−b−)が感染抵抗性を示す。●ABO/H関連=Bombay型(H抗原欠損)・分泌型/非分泌型。●Rh式=D抗原・weak D(量的減少)・partial D(質的欠損)。●人種差のある血液型=Diego(Di a・東アジアに多い)・Duffy(Fy a−b−・アフリカに多い)。●感染抵抗性=Duffy陰性と三日熱マラリア・S/s/Uと熱帯熱マラリア。●性染色体連鎖=Xg式(女性に多い)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:特殊な血液型抗原の性質(Diego・Duffy・Kell・Xg等)

血液型系特徴
Diego式(Di)白人・黒人ではDi(a+)はまれだが、日本人では約10%がDi(a+)。Di(a)抗原は東アジア系・アメリカ先住民などで比較的多い。Di(b)抗原は広く分布する
Duffy式(Fy)Fy(a-b-)は黒人に多くみられ(白人・アジア人ではまれ)、Duffy抗原が三日熱マラリア原虫のレセプターであるため、マラリア感染に抵抗性を示す
Kell式(K)免疫原性はABO・Rh抗原に次いで強い。日本人ではほぼ100%がK抗原陰性(k+)
Xg式X染色体連鎖のためXg(a+)は男性より女性に多い
Rh式のweak D・partial Dweak DはD抗原の発現量が全体的に減弱、partial DはD抗原のエピトープの一部が欠損

第71回 午後85(臨床免疫学)

試験管法の交差適合試験で使用する試薬はどれか。2つ選べ。

正答: ②反応増強剤・④抗ヒトグロブリン試薬

ポイント
試験管法の交差適合試験(クロスマッチ)は、患者血清と供血者赤血球(主試験)、患者赤血球と供血者血清(副試験)の不適合を確認する検査で、IgG抗体を検出するため間接抗グロブリン試験を組み込む。このとき抗原抗体反応の感作を促進する反応増強剤(PEG・LISS・ウシアルブミンなど)と、感作赤血球を凝集させる抗ヒトグロブリン試薬(クームス試薬)を用いる。抗A試薬はABO型判定、O型赤血球試薬やスクリーニング赤血球試薬は不規則抗体スクリーニングに用いる。●交差適合試験の試薬=反応増強剤(PEG・LISS・アルブミン)・抗ヒトグロブリン試薬・IgG感作赤血球(陰性確認用)。●ABO/Rh判定=抗A・抗B・抗D試薬。●不規則抗体スクリーニング=スクリーニング赤血球(O型・既知抗原構成)・パネル赤血球。●反応増強の原理=イオン強度低下(LISS)・水分子排除(PEG)・ゼータ電位低下(アルブミン)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:交差適合試験の検査法と検出する抗体

検査法検出される抗体代表例
生理食塩液法(室温〜低温)完全抗体〈IgM〉抗A・抗B、寒冷凝集素
間接抗グロブリン試験(37℃+抗ヒトグロブリン試薬)不完全抗体〈IgG〉抗Jka、抗D、抗E、抗Fya、抗K
酵素法(ブロメリンなど)IgG抗体の反応増強Rh系抗体の検出感度向上
反応増強剤(PEG・LISS・ウシアルブミンなど)は感作を促進し、抗ヒトグロブリン試薬(クームス試薬)は感作赤血球を凝集させる。

第71回 午後86(臨床免疫学)

不規則抗体同定検査結果と使用した試薬の抗原表を別に示す。可能性の高い不規則抗体はどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k71pB086.af55953b8a.jpg
第71回 午後86 の図

正答: ③抗E

ポイント
不規則抗体同定は、抗原構成が既知のパネル赤血球と患者血清の反応の有無を一覧化し、反応陽性の赤血球すべてに共通する抗原を特定する作業である。E抗原陽性の赤血球のみが反応し、E抗原陰性の赤血球が反応しないパターンであれば抗Eと判断でき、図の反応はこれに一致する。同定では消去法で他の抗体(抗D・抗C・抗c・抗e)を除外し、統計的有意性(3+3の法則など)を確認する。●Rh系抗原=D・C・E・c・eと対応抗体。●不規則抗体同定の手順=パネル反応の記録→消去法→共通抗原の特定→確認(自己対照・統計)。●臨床的に重要な抗体=抗D・抗E・抗c・抗Jka・抗Fya・抗K(溶血性輸血副作用・新生児溶血性疾患の原因)。●抗グロブリン相=IgG抗体検出に間接抗グロブリン試験を用いる。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:不規則抗体同定検査:反応相と抗体推定の原則

反応相・検出法検出される抗体クラス代表的な血液型系
生理食塩液法(室温)IgM(冷式抗体)MNS系(抗M)・Lewis系・P1系
酵素法(パパイン・ブロメリン処理)IgG(一部の抗体で反応増強)Rh系
間接抗グロブリン試験(37℃)IgG(温式抗体)Rh系(抗D・抗E・抗c等)・Kidd系・Duffy系
同定は既知抗原表(アンチグラム)とパネル赤血球の反応を照合し、陰性反応を示した赤血球がもつ抗原に対応する抗体を消去していく消去法で行う。消去されずに残った抗体が「否定できない抗体」であり、陽性反応を示した赤血球に共通する抗原に対応する抗体を「可能性の高い抗体」と推定する。抗原量が少ないと反応が弱まる量的効果(dosage)があるため、量的効果のある抗原はホモ接合の血球で陰性の場合に消去するのが原則である。間接抗グロブリン試験の反応増強剤にはLISS(低イオン強度溶液)やPEG(ポリエチレングリコール)が用いられる。

第71回 午後87(臨床免疫学)

我が国で輸血による感染の頻度が最も高いのはどれか。

正答: ①HBV

ポイント
日本で輸血により感染する頻度が最も高いのはB型肝炎ウイルス(HBV)である。核酸増幅検査(NAT)の導入により輸血後肝炎は大幅に減少したが、感染初期のウインドウ期(抗原・核酸が検出感度以下の期間)に採血された血液による感染がまれに残り、HBVは他のウイルスより報告例が多い。HCVやHIVもNATで監視され感染は極めてまれ、HTLV-1は抗体スクリーニングで防止される。●輸血感染対策=問診・血清学的検査(HBs抗原・HCV抗体・HIV抗体・HTLV-1抗体・梅毒)・NAT(HBV・HCV・HIV)・保存前白血球除去。●ウインドウ期=検査が陰性でも感染している期間。NATで短縮。●輸血で伝播しうる病原体=HBV・HCV・HIV・HTLV-1・梅毒トレポネーマ・サイトメガロウイルス・細菌(血小板汚染)。●非溶血性副作用=発熱・アレルギー・TRALI・輸血関連循環過負荷(TACO)・GVHD(放射線照射で予防)。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:肝炎ウイルスマーカーの解釈

マーカー意味
HBs抗原HBV感染の存在(現在感染している)
HBs抗体HBV感染の既往または免疫獲得(ワクチン接種後を含む)
HBe抗原HBVの活発な増殖・高い感染性
HBe抗体セロコンバージョン後、ウイルス増殖・感染性の低下
IgM型HBc抗体B型肝炎の急性期(発症)の指標
IgG型HBc抗体B型肝炎の既往感染
HBV-DNAウイルスの増殖量(量的指標)
IgM型HA抗体A型肝炎の急性期
IgG型HA抗体A型肝炎の既往感染・免疫
HCV抗体C型肝炎の感染既往または持続感染(単独では治癒の指標にならない)
HCV-RNAC型肝炎ウイルスの現在の感染・治癒判定に用いる

第71回 午後88(臨床免疫学)

造血幹細胞移植ドナーの選択で最も重要なのはどれか。

正答: ④HLA型

ポイント
造血幹細胞移植では、ドナーとレシピエントのHLA(ヒト白血球抗原)型の適合が最も重要である。HLAの不一致は生着不全(拒絶)や移植片対宿主病(GVHD)の主因となるため、HLA-A・B・C・DR等の一致を優先する。ABO血液型の不一致は赤血球除去や血漿除去などの処理で移植可能であり、性別・体重・年齢は適合の主要因ではない。●HLAクラスⅠ=HLA-A・B・C(全有核細胞に発現・CD8 T細胞が認識)。●HLAクラスⅡ=HLA-DR・DQ・DP(抗原提示細胞に発現・CD4 T細胞が認識)。●移植の合併症=拒絶反応・急性/慢性GVHD・生着不全・感染症。●ドナー選択=HLA一致同胞→非血縁者バンク→臍帯血→HLA半合致(ハプロ)。●GVHD予防=免疫抑制剤・放射線照射血液製剤の使用。

選択肢ごとの解説

第71回 午後89(臨床免疫学)

有効期間が最も短いのはどれか。

正答: ②血小板濃厚液

ポイント
血液製剤の有効期間は保存条件と細胞の脆弱性で決まる。血小板濃厚液は採血後4日間と最も短く、機能維持のため20〜24℃で振盪(攪拌)保存し細菌増殖の危険も高い。赤血球液は2〜6℃で約28日、新鮮凍結血漿は−20℃以下で約1年、アルブミン製剤・グロブリン製剤などの血漿分画製剤は数年保存できる。●赤血球液=2〜6℃・約28日(MAP液)。●血小板濃厚液=20〜24℃・振盪・4日と最短。●新鮮凍結血漿(FFP)=−20℃以下・約1年。●血漿分画製剤(アルブミン・免疫グロブリン・凝固因子製剤)=加熱処理済み・数年。●放射線照射=GVHD予防(赤血球・血小板製剤に実施)。

選択肢ごとの解説

第71回 午後90(公衆衛生学)

令和4(2022)年度における死亡数の年齢階級別死因順位をまとめた表を別に示す。(ア)に該当するのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k71pB090.30dc8c14ca.jpg
第71回 午後90 の図

正答: ①自殺

ポイント
令和4(2022)年の人口動態統計では、年齢階級別の死因順位において10歳代から30歳代の若年層で自殺が第1位を占める。表の(ア)はこの若年層の死因に該当し、自殺が当てはまる。一方、肺炎や腎不全・心疾患は高齢層で順位が上がり、悪性新生物(がん)は中年以降で上位を占める。●若年層(10〜39歳)の死因上位=自殺・不慮の事故・悪性新生物。●全年齢の死因順位(近年)=悪性新生物・心疾患・老衰・脳血管疾患・肺炎。●高齢層で増える死因=老衰・肺炎・心不全・腎不全。●人口動態統計=出生・死亡・婚姻・離婚・死産を扱う厚生労働省の統計。

選択肢ごとの解説

第71回 午後91(公衆衛生学)

症例対照研究で正しいのはどれか。

正答: ④まれな疾患の検討に適している。

ポイント
症例対照研究(ケースコントロール研究)は、疾患のある群(症例)とない群(対照)を選び、過去の曝露要因の有無を比較する後ろ向きの観察研究である。発生がまれな疾患でも少数の症例から効率よく検討でき、関連の指標としてオッズ比を算出する。罹患率や相対危険度は対象集団を追跡しないため直接求められず、研究者が要因を割り付ける介入研究でもない。研究期間はコホート研究より短いことが多い。●観察研究=記述研究・横断研究・症例対照研究・コホート研究。●介入研究=ランダム化比較試験(RCT)など。●症例対照研究=後ろ向き・まれな疾患に有利・オッズ比・想起バイアス。●コホート研究=前向き・罹患率と相対危険度の算出可・コスト大。●関連の指標=相対危険度(コホート)・オッズ比(症例対照)・寄与危険度。

選択肢ごとの解説

第71回 午後92(公衆衛生学)

メチル水銀〈有機水銀〉が原因となったのはどれか。

正答: ①水俣病

ポイント
水俣病は化学工場の排水に含まれたメチル水銀(有機水銀)が魚介類に生物濃縮され、それを摂取した住民に感覚障害・運動失調・視野狭窄などの神経症状をきたした公害病である。熊本県水俣湾と新潟県阿賀野川流域で発生した。四大公害病の他の3つや薬害とは原因物質が異なる。●四大公害病=水俣病(メチル水銀)・新潟水俣病(メチル水銀)・イタイイタイ病(カドミウム)・四日市ぜんそく(硫黄酸化物等の大気汚染)。●その他の公害・中毒=カネミ油症(PCB・ダイオキシン)・慢性ヒ素中毒(土呂久)・森永ヒ素ミルク事件。●薬害=サリドマイド(アザラシ肢症)・キノホルム(スモン)・薬害エイズ・薬害肝炎。●重金属中毒の標的=水銀(中枢神経)・カドミウム(腎・骨)・鉛(造血・神経)・ヒ素(皮膚・末梢神経)。

選択肢ごとの解説

第71回 午後93(公衆衛生学)

被用者保険に含まれないのはどれか。

正答: ③国民健康保険

ポイント
被用者保険(職域保険)は企業などに雇用される被保険者と、一定の要件を満たす被扶養者が加入する医療保険で、組合管掌健康保険・全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)・共済組合・船員保険が含まれる。国民健康保険は自営業者・農業者・無職者などが市町村単位で加入する地域保険であり、被用者保険には含まれない。●被用者保険(職域)=協会けんぽ(中小企業)・組合健保(大企業)・共済組合(公務員・教職員)・船員保険。●地域保険=国民健康保険(自営業者等)。●高齢者医療=後期高齢者医療制度(75歳以上)。●公的医療保険の特徴=国民皆保険・現物給付・一部負担・保険者による運営。

選択肢ごとの解説

第71回 午後94(公衆衛生学)

生活保護で原則として現物給付されるのはどれか。

正答: ①医療扶助

ポイント
生活保護法の扶助は原則として金銭給付だが、医療扶助と介護扶助は原則現物給付で、医療機関での診療や介護サービスそのものが給付される。教育・住宅・出産・葬祭・生活・生業の各扶助は金銭給付が原則である。●生活保護の8扶助=生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭。●現物給付が原則=医療扶助・介護扶助。●金銭給付が原則=生活・教育・住宅・出産・生業・葬祭の各扶助。●生活保護の原理・原則=国家責任・無差別平等・最低生活保障・補足性。●実施機関=福祉事務所。

選択肢ごとの解説

第71回 午後95(医用工学概論)

生体内に照射された超音波の性質で正しいのはどれか。

正答: ①周波数が高いほど指向性が高い。

ポイント
超音波は周波数が高いほど指向性が高く分解能も向上するが、減衰が大きく深部に届きにくいため、深部観察には低周波を用いる。生体内(軟部組織)では超音波は縦波(疎密波)として伝播し、横波としては伝わらない。含気の多い肺は音響インピーダンス差が大きく反射・散乱が強いため減衰が大きい。反射しても周波数は基本的に変化しない(動く反射体ではドプラ効果で周波数偏移が生じる)。●超音波の性質=周波数が高い→指向性・分解能が高いが減衰大・深達度小。●波の種類=生体軟部組織では縦波(疎密波)。●減衰=周波数が高いほど大きい・含気組織(肺)や骨で大きい。●ドプラ効果=動く反射体(血流)で周波数が変化し血流速度を測定。●音響インピーダンス=媒質の密度×音速、差が大きいほど反射が強い。

選択肢ごとの解説

第71回 午後96(医用工学概論)

我が国の標準臨床検査コード〈臨床検査マスター〉はどれか。

正答: ④JLAC

ポイント
JLAC(臨床検査マスター。JLAC10など)は日本臨床検査医学会が定めた我が国の標準臨床検査コードで、検査項目・材料・測定法などを統一的なコードで表し、施設間のデータ交換や統計に用いる。HL7は医療情報交換のための国際規約、ICDは国際疾病分類、HISは病院情報システム、LISは検査情報システムを指し、いずれも検査コード体系そのものではない。●標準コード/分類=JLAC(臨床検査)・ICD(疾病分類)・ICD-O(腫瘍)・手術コード。●情報交換規約=HL7・DICOM(画像)・SS-MIX(標準化ストレージ)。●医療情報システム=HIS(病院)・LIS(検査)・RIS(放射線)・PACS(画像保管)。●コードの目的=項目の標準化・施設間互換・電子カルテ連携。

選択肢ごとの解説

第71回 午後97(医用工学概論)

コンピュータが瞬間的な停電により電源を失った場合、途切れることなく電源を供給する装置はどれか。

正答: ⑤UPS

ポイント
UPS(無停電電源装置)は、停電や瞬時電圧低下が起きた際に内蔵バッテリーから途切れることなく電力を供給し、コンピュータを安全に稼働・終了させる装置である。CPUは中央演算処理装置、RAMは主記憶装置、MODEMは信号の変復調を行う通信装置、SCSIは周辺機器を接続する規格で、いずれも電源供給装置ではない。●電源・電力関連=UPS(無停電電源装置)・自家発電・サージプロテクタ。●演算・記憶=CPU(演算)・RAM(主記憶・揮発性)・ROM(不揮発性)・補助記憶(HDD・SSD)。●入出力・接続=MODEM(変復調)・SCSI/USB/PCIe(接続規格)・NIC(ネットワーク)。●データ保全=UPS・バックアップ・冗長化(RAID)。

選択肢ごとの解説

第71回 午後98(医用工学概論)

AとBの論理演算を模式化した図を示す。斜線部分を示すのはどれか。

図: https://medwide.jp/drill/img/k71pB098.c25443af45.jpg
第71回 午後98 の図

正答: ⑤NAND

ポイント
ベン図でAとBの2つの円を描くとき、AND(論理積)は両円が重なる中央部、OR(論理和)は両円を合わせた領域全体を示す。NAND(否定論理積)はANDの否定であり、中央の重なり部分を除いたすべての領域(両円の外側+重ならない部分)が該当する。図の斜線部が中央以外を示すのでNANDに相当する。NORは両円の外側のみ、NOTは1入力の否定で2入力の図には当たらない。●基本論理演算=AND(論理積)・OR(論理和)・NOT(否定)。●複合論理演算=NAND(ANDの否定)・NOR(ORの否定)・XOR(排他的論理和)・XNOR。●ベン図対応=AND=重なり/OR=和集合/NAND=重なりの補/NOR=和集合の補。●ド・モルガンの法則=NAND・NORで他の演算を構成可能。

選択肢ごとの解説

第71回 午後99(医用工学概論)

商用交流によるマクロショックで、自分の筋肉を動かして離脱できる限界電流[mA]はどれか。

正答: ③10

ポイント
商用交流(50/60Hz)によるマクロショックでは、電流値により人体反応が異なる。最小感知電流は約1mA、自分の意思で筋肉を動かして電極から離脱できる限界(離脱電流・最大離脱電流)は約10mA、これを超えると筋が硬直して離脱できなくなる。心室細動を起こす電流は約100mAとされる。設問の離脱限界は10mAである。●マクロショックの電流閾値(商用交流)=最小感知電流 約1mA・離脱電流 約10mA・心室細動誘発 約100mA。●ミクロショック=心臓に直接電流が流れる場合で、心室細動が約0.1mA(100μA)で起こりうる。●感電の影響因子=電流値・通電経路・通電時間・周波数。●安全対策=漏れ電流の管理・等電位化・追加保護接地・絶縁。

選択肢ごとの解説

📋 まとめの表を見る:感電(マクロショック・ミクロショック)の電流閾値

区分電流閾値内容
マクロショック(体表)最小感知電流 1mAわずかにチクチク・ビリビリ感じ始める
マクロショック(体表)最大許容電流 5mA手足に許し得る最大電流量
マクロショック(体表)離脱(限界)電流 10〜20mA超えると筋肉が収縮し自分で接触部から離れられなくなる
マクロショック(体表)心室細動誘発電流 100mA商用交流(50/60Hz)による
ミクロショック(心臓カテーテル等)心室細動誘発電流 100μA(0.1mA)心臓に直接電流が流れる場合
上記は成人男性の値であり、女性は男性の2/3、小児は1/2とされる。

第71回 午後100(医用工学概論)

動画の標準的なファイル拡張子はどれか。2つ選べ。

正答: ②FLV・④MP4

ポイント
動画(動画像)ファイルの標準的な拡張子にはMP4(MPEG-4)やFLV(Flash Video)があり、ほかにAVI・MOV・WMV・MPEGなどがある。CSVはカンマ区切りの表形式データ、JPEGとTIFFは静止画(画像)の拡張子で、いずれも動画ではない。●動画ファイル=MP4・FLV・AVI・MOV・WMV・MPEG。●静止画(画像)ファイル=JPEG・TIFF・PNG・GIF・BMP・DICOM(医用画像)。●音声ファイル=MP3・WAV・AAC。●文書・データ=CSV・TXT・PDF・XML。●圧縮方式=可逆圧縮(PNG・TIFF)と非可逆圧縮(JPEG・MP4)。

選択肢ごとの解説